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特許7542060教師あり学習によって訓練された予測モデルによるMRI画像の予測
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】教師あり学習によって訓練された予測モデルによるMRI画像の予測
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
A61B5/055 380
A61B5/055 383
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022517510
(86)(22)【出願日】2020-09-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-28
(86)【国際出願番号】 EP2020075593
(87)【国際公開番号】W WO2021052896
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2023-06-26
(31)【優先権主張番号】19197989.7
(32)【優先日】2019-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516245885
【氏名又は名称】バイエル、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】BAYER AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(72)【発明者】
【氏名】マルティン、ローラー
(72)【発明者】
【氏名】アルトゥール、ユベール、ザ、サード
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-165775(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0122348(US,A1)
【文献】特開2017-064370(JP,A)
【文献】特表2003-519200(JP,A)
【文献】特許第6491391(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0108634(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0198054(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G06T 1/00 , 7/00
G16H 30/00 -30/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータ実装方法であって、
-複数のMRI画像を受信するステップであり、前記複数のMRI画像のうちの受信した少なくとも1つのMRI画像を、造影剤を投与する前の検査領域を示すものとし、前記複数のMRI画像のうちの受信した少なくとも1つのMRI画像前記造影剤を投与した後の第1時間スパン時の前記検査領域を示すものとするステップと、
-前記複数のMRI画像を、予測モデルに対して供給するステップであり、前記予測モデルを、前記造影剤を投与した後の前記第1時間スパン時の前記検査領域を少なくともいくつかのものが示しているMRI画像に基づいて、第2時間スパン時の前記検査領域を示す1つまたは複数のMRI画像を予測するよう、教師あり学習によって訓練されたものとし、前記第2時間スパンを、前記第1時間スパンの後に時系列的に続くものとするステップと、
-前記予測モデルによって、前記第2時間スパン時の前記検査領域を示す1つまたは複数の予測MRI画像を生成するステップであり、前記第2時間スパンを、前記第1時間スパンの後に時系列的に続くものとするステップと、
-前記1つまたは複数の予測MRI画像を、表示および/または出力するステップ、ならびに/あるいは、前記1つまたは複数の予測MRI画像をデータ記憶媒体内に格納するステップと、
を含むコンピュータ実装方法。
【請求項2】
前記検査領域は、哺乳類肝臓または肝臓の一部である、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記第1時間スパンは、前記検査領域を異なる相で示すように選択され、前記相は、ネイティブ相と、動脈相と、門脈相と、後期相とを含み、前記ネイティブ相における前記検査領域を示す少なくとも1つのMRI画像が受信され、前記動脈相時の前記検査領域を示す少なくとも1つのMRI画像が受信され、前記門脈相における前記検査領域を示す少なくとも1枚のMRI画像が受信され、前記後期相における前記検査領域を示す少なくとも1枚のMRI画像が受信される、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記第1時間スパンは、前記造影剤の投与の1分前から1秒前までの時間スパン内に開始されるあるいは前記造影剤の投与とともに開始されるとともに、前記造影剤の投与から、2分間から15分間までの時間スパンで継続する、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記造影剤は、肝胆道造影剤である請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
システムであって、
・受信ユニットと、
・制御計算ユニットと、
・出力ユニットと、
を含み、
-前記制御計算ユニットは、前記受信ユニットが複数のMRI画像を受信することを促進するように構成され、前記複数のMRI画像のうちの受信した少なくとも1つのMRI画像は、造影剤を投与する前の検査領域を示すものとされ、前記複数のMRI画像のうちの受信した少なくとも1つのMRI画像前記造影剤を投与した後の第1時間スパン時の前記検査領域を示すものとされ、
-前記制御計算ユニットは、受信した前記MRI画像に基づいて、第2時間スパン時の前記検査領域を示す1つまたは複数の予測MRI画像を予測するように構成され、前記第2時間スパンは、前記第1時間スパンの後に時系列的に続くものとされ、
-前記制御計算ユニットは、前記出力ユニットが、前記1つまたは複数の予測MRI画像を表示することを、または前記1つまたは複数の予測MRI画像を出力することを、または前記1つまたは複数の予測MRI画像をデータ記憶媒体内に保存することを、促進するように構成されている、
システム。
【請求項7】
コンピュータシステムのメモリ内へとロードされ得るコンピュータプログラムを含むコンピュータプログラム製品であって、
前記コンピュータシステムに、
-複数のMRI画像を受信するステップであり、前記複数のMRI画像のうちの受信した少なくとも1つのMRI画像を、造影剤を投与する前の検査領域を示すものとし、前記複数のMRI画像のうちの受信した少なくとも1つのMRI画像前記造影剤を投与した後の第1時間スパン時の前記検査領域を示すものとするステップと、
-前記複数のMRI画像を、予測モデルに対して供給するステップであり、前記予測モデルを、前記造影剤を投与した後の前記第1時間スパン時の前記検査領域を少なくともいくつかのものが示しているMRI画像に基づいて、第2時間スパン時の前記検査領域を示す1つまたは複数のMRI画像を予測するよう、教師あり学習によって訓練されたものとし、前記第2時間スパンを、前記第1時間スパンの後に時系列的に続くものとするステップと、
-前記予測モデルによって、前記第2時間スパン時の前記検査領域を示す1つまたは複数の予測MRI画像を生成するステップであり、前記第2時間スパンを、前記第1時間スパンの後に時系列的に続くものとするステップと、
-前記1つまたは複数の予測MRI画像を、表示および/または出力するステップ、ならびに/あるいは、前記1つまたは複数の予測MRI画像をデータ記憶媒体内に格納するステップと、
を実行させることを促進するコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MRI検査の迅速化に関し、特に、動的コントラスト増強型の磁気共鳴画像法(MRI)による肝臓の局所病変に関する検出および鑑別診断におけるMRI検査の迅速化に関する。本発明の主題は、MRI画像を予測するための、特に肝胆道相時の肝臓のMRI画像を予測するための、方法、システム、およびコンピュータプログラム製品、である。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴画像法、略してMRIは、特に医療診断において、人体内のまたは動物の体内の、組織や臓器の構造および機能を描写するために使用される画像診断法である。
【0003】
MRIでは、検査対象物内の陽子の磁気モーメントが、基本磁場内において整列し、その結果、縦方向に沿って巨視的な磁化が発生する。これは、その後、高周波(HF)パルスの入射放射(励起)により、静止位置から偏向される。励起状態から静止位置への復帰(緩和)または磁化ダイナミクスは、その後、緩和信号として1つまたは複数のHF受信器コイルによって検出される。
【0004】
空間的エンコードの場合、高速スイッチング磁気勾配場が、基本磁場上に重畳される。捕捉された緩和信号は、すなわち、検出されて空間的に分解されたMRIデータは、初期的には空間周波数空間内の生データとして存在し、その後のフーリエ変換によって実空間(画像空間)内へと変換することができる。
【0005】
ネイティブMRIの場合には、組織のコントラストは、異なる緩和時間(T1、T2)および陽子密度によって生成される。
【0006】
T1緩和は、縦方向の磁化が平衡状態へと遷移することを表すものであり、T1は、共鳴励起前の平衡磁化の63.21%へと到達するのに必要な時間である。これは、また、縦緩和時間またはスピン-格子緩和時間とも称される。
【0007】
同様に、T2緩和は、横方向の磁化が平衡状態へと遷移することを表す。
【0008】
MRI造影剤は、造影剤を取り込んだ構造体の緩和時間を変更することによって、その作用を発現する。常磁性物質および超常磁性物質という2つの物質群へと、区別することができる。どちらの物質群も、個々の原子または分子の周囲に磁場を誘起する不対電子を有している。
【0009】
超常磁性造影剤は、T2の顕著な短縮をもたらし、他方、常磁性造影剤は、主に、T1の短縮をもたらす。T1時間の短縮は、T1強調MRI画像における信号強度の増加をもたらし、T2時間の短縮は、T2強調MRI画像における信号強度の減少をもたらす。
【0010】
造影剤自体は、信号を発することがなく、その代わりに、その周囲の水素陽子の信号強度に影響を与えるだけであるので、造影剤の作用は、間接的である。
【0011】
超常磁性造影剤の一例は、酸化鉄ナノ粒子(SPIO:超常磁性酸化鉄)である。
【0012】
常磁性造影剤の例は、ガドペンテト酸ジメグルミン(商標名:Magnevist(登録商標)、および他のもの)、ガドベン酸ジメグルミン(商標名:Multihance(登録商標))、ガドテル酸(Dotarem(登録商標)、Dotagita(登録商標)、Cyclolux(登録商標))、ガドジアミド(Omniscan(登録商標))、ガドテリドール(ProHance(登録商標))、ガドブトロール(Gadovist(登録商標))、などのガドリニウムキレートである。
【0013】
細胞外の造影剤と、細胞内の造影剤と、血管内の造影剤とは、組織内での広がり方のパターンに基づいて、区別することができる。
【0014】
ガドキセト酸をベースとした造影剤は、肝臓細胞や肝細胞による特異的な取り込みと、機能組織(実質)内における濃縮と、健康な肝臓組織におけるコントラストの増強と、を特徴としている。嚢胞の細胞、転移の細胞、および大部分の肝細胞癌の細胞は、もはや正常な肝細胞のようには機能することがなく、造影剤を取り込まないかまたはほとんど吸収せず、増強して描出されず、結果として識別可能であって位置の特定が可能である。
【0015】
ガドキセト酸をベースとした造影剤の例は、米国特許第6,039,931(A)号明細書に記載されており、これらは、例えばPrimovist(登録商標)またはEovist(登録商標)という商標名で市販されている。
【0016】
Primovist(登録商標)/Eovist(登録商標)のコントラスト増強効果は、安定なガドリニウム錯体Gd-EOB-DTPA(ガドリニウム・エトキシベンジル・ジエチレントリアミン五酢酸)によって、媒介される。DTPAは、常磁性ガドリニウムイオンとともに、熱力学的に高い安定性を有した錯体を形成する。エトキシベンジルラジカル(EOB)は、造影剤の肝胆道への取り込みにおける媒介物質である。
【0017】
Primovist(登録商標)は、肝臓内の腫瘍の検出に際して、使用することができる。健康な肝臓組織に対しての血液供給は、主に、門脈(vena portae)を介して行われ、他方、大部分の原発性腫瘍に対しては、肝動脈(arteria hepatica)が供給する。したがって、造影剤をボーラス投与で静脈内注射した後には、健康な肝実質と腫瘍との間で、信号の立ち上がりに関して、時間的な遅延を観察することができる。
【0018】
悪性腫瘍に加えて、肝臓内で頻繁に見受けられるものは、嚢胞、血管腫、および限局性結節性過形成(FNH)、などの良性病変である。適切な治療計画を立てるには、これらを悪性腫瘍と区別する必要がある。Primovist(登録商標)は、肝臓の局所病変の良性と悪性とを区別するために、使用することができる。T1強調MRIにより、病変の特徴に関する情報が提供される。区別は、肝臓と腫瘍とに対しての異なる血液供給を利用することにより、また、コントラスト増強の時間プロファイルを利用することにより、達成される。
【0019】
Primovist(登録商標)によって得られるコントラスト増強は、少なくとも2つの段階へと分割することができる、すなわち、動的段階(いわゆる、動脈相と、門脈相と、後期相と、を含む)と、肝細胞内へのPrimovist(登録商標)の充分な取り込みが既に行われている肝胆道相と、へと分割することができる。
【0020】
分布相時にPrimovist(登録商標)によって達成されるコントラスト増強の場合、観測されるものは、典型的な灌流パターンであり、これは、病変の特性評価のための情報を提供する。血管の描出は、病変のタイプを特徴づけることを補助し、さらに、腫瘍と血管との間の空間的関係性を決定することを補助する。
【0021】
T1強調MRI画像の場合、Primovist(登録商標)は、注入から10分間後~20分間後において(肝胆道相)、健康な肝実質内の明確な信号増強を示すものの、例えば転移または中程度から低分化までの肝細胞癌(HCCs)などの、肝細胞を含有していないあるいは肝細胞をわずかしか含まない病変は、より暗い領域として現れる。
【0022】
動的相と肝胆道相とにわたって造影剤の広がりを経時的に追跡することにより、局所的肝臓病変の検出と鑑別診断とに関する良好な可能性が提供されるけれども、検査は、比較的長い時間スパンにわたって行われる。そのような時間スパンにわたって、MRI画像内でのモーションアーティファクトを最小化するためには、患者が動くことが、回避されるべきである。動きを長時間にわたって制限することは、患者にとっては不快であり得る。
【発明の概要】
【0023】
上記の従来技術を踏まえて、技術的な目的は、患者にとって不快感の少ない検査を行うことである。
【0024】
この目的は、独立請求項の主題によって達成される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項内に、本明細書内に、および図面内に、見出される。本発明により、MRI検査の時間スパンが、大幅に短縮され、これにより、患者にとっては、体験することがより容易となる。
【0025】
本発明は、第1態様では、コンピュータ実装方法であって、
-複数の第1MRI画像を受信するステップであり、第1MRI画像の少なくともいくつかを、造影剤を投与した後の第1時間スパン時の検査領域を示すものとするステップと、
-複数の第1MRI画像を、予測モデルに対して供給するステップであり、予測モデルを、造影剤を投与した後の第1時間スパン時の検査領域を少なくともいくつかのものが示している第1参照MRI画像から、第2時間スパン時の検査領域を示す1つまたは複数の第2参照MRI画像を生成するよう、教師あり学習によって参照MRI画像に基づいて訓練されたものとし、ここで、第2時間スパンを、第1時間スパンの後に時系列的に続くものとするステップと、
-予測モデルによって、第2時間スパン時の検査領域を示す1つまたは複数の予測MRI画像を生成するステップであり、ここで、第2時間スパンを、第1時間スパンの後に時系列的に続くものとするステップと、
-1つまたは複数の予測MRI画像を、表示および/または出力するステップ、ならびに/あるいは、1つまたは複数の予測MRI画像をデータ記憶媒体内に格納するステップと、を含む、コンピュータ実装方法を提供する。
【0026】
本発明は、さらに、システムであって、
・受信ユニットと、
・制御計算ユニットと、
・出力ユニットと、を含み、
-制御計算ユニットは、受信ユニットが複数の第1MRI画像を受信することを促進するように構成され、第1MRI画像の少なくとも一部は、造影剤を投与した後の第1時間スパン時の検査領域を示すものとされ、
-制御計算ユニットは、受信した第1MRI画像に基づいて、第2時間スパン時の検査領域を示す1つまたは複数の第2MRI画像を予測するように構成され、ここで、第2時間スパンは、第1時間スパンの後に時系列的に続くものとされ、
-制御計算ユニットは、出力ユニットが、1つまたは複数の第2MRI画像を表示することを、または1つまたは複数の第2MRI画像を出力することを、または1つまたは複数の第2MRI画像をデータ記憶媒体内に保存することを、促進するように構成されている、システムを提供する。
【0027】
本発明は、さらに、コンピュータシステムのメモリ内へとロードされ得るコンピュータプログラムを含むコンピュータプログラム製品であって、コンピュータシステムに、
-複数の第1MRI画像を受信するステップであり、第1MRI画像の少なくともいくつかを、造影剤を投与した後の第1時間スパン時の検査領域を示すものとするステップと、
-複数の第1MRI画像を、予測モデルに対して供給するステップであり、予測モデルを、造影剤を投与した後の第1時間スパン時の検査領域を少なくともいくつかのものが示している第1参照MRI画像から、第2時間スパン時の検査領域を示す1つまたは複数の第2参照MRI画像を予測するよう、教師あり学習によって参照MRI画像に基づいて訓練されたものとし、ここで、第2時間スパンを、第1時間スパンの後に時系列的に続くものとするステップと、
-予測モデルによって、第2時間スパン時の検査領域を示す1つまたは複数の予測MRI画像を生成するステップであり、ここで、第2時間スパンを、第1時間スパンの後に時系列的に続くものとするステップと、
-1つまたは複数の予測MRI画像を、表示および/または出力するステップ、ならびに/あるいは、1つまたは複数の予測MRI画像をデータ記憶媒体内に格納するステップと、を実行させることを促進する、コンピュータプログラム製品を提供する。
【0028】
本発明は、さらに、MRI方法における造影剤の使用であって、MRI方法は、
-造影剤を投与するステップであり、造影剤を、検査領域内に広げるステップと、
-第1時間スパン時の検査領域に関して複数の第1MRI画像を生成するステップと、
-生成した第1MRI画像を、予測モデルに対して供給するステップであり、予測モデルを、第1時間スパン時の検査領域を示す第1参照MRI画像から、第2時間スパン時の検査領域を示す1つまたは複数の第2参照MRI画像を予測するよう、教師あり学習によって参照MRI画像に基づいて訓練されたものとし、ここで、第2時間スパンを、第1時間スパンの後に時系列的に続くものとするステップと、
-予測モデルからの出力として、第2時間スパン時の検査領域を示す1つまたは複数の予測MRI画像を受信するステップであり、ここで、第2時間スパンを、第1時間スパンの後に時系列的に続くものとするステップと、
-1つまたは複数の予測MRI画像を、表示および/または出力するステップ、ならびに/あるいは、1つまたは複数の予測MRI画像をデータ記憶媒体内に格納するステップと、を含む、使用を提供する。
【0029】
さらに提供されるものは、MRI方法において使用するための造影剤であって、MRI方法は、
-造影剤を投与するステップであり、造影剤を、検査領域内に広げるステップと、
-第1時間スパン時の検査領域に関して複数の第1MRI画像を生成するステップと、
-生成した第1MRI画像を、予測モデルに対して供給するステップであり、予測モデルを、第1時間スパン時の検査領域を示す第1参照MRI画像から、第2時間スパン時の検査領域を示す1つまたは複数の第2参照MRI画像を予測するよう、教師あり学習によって参照MRI画像に基づいて訓練されたものとし、ここで、第2時間スパンを、第1時間スパンの後に時系列的に続くものとするステップと、
-予測モデルからの出力として、第2時間スパン時の検査領域を示す1つまたは複数の予測MRI画像を受信するステップであり、ここで、第2時間スパンを、第1時間スパンの後に時系列的に続くものとするステップと、
-1つまたは複数の予測MRI画像を、表示および/または出力するステップ、ならびに/あるいは、1つまたは複数の予測MRI画像をデータ記憶媒体内に格納するステップと、を含む。
【0030】
さらに提供されるものは、本発明による造影剤と、本発明によるコンピュータプログラム製品と、を含むキットである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下においては、本発明の主題(方法、システム、コンピュータプログラム製品、使用、使用のための造影剤、キット)どうしを区別することなく、本発明について、より具体的に説明する。それどころか、以下の説明は、どの文脈(方法、システム、コンピュータプログラム製品、使用、使用のための造影剤、キット)で起こっているかに関係なく、本発明のすべての主題に対して同様に適用されることを意図している。
【0032】
本明細書または請求項において、ステップがある順序で記載されている場合、これは、本発明がその記載された順序に限定されることを必ずしも意味するものではない。それどころか、あるステップが他のステップの上に構築されない限り、そして、その構築ステップをその後に実行することが絶対に必要とされない限り(ただし、これは個々の事例において明らかである)、ステップが異なる順序で実行されること、あるいは、ステップが互いに並行して実行されることも、また、想定される。よって、記載された順序は、本発明の好ましい実施形態である。
【0033】
本発明は、MRI画像の生成において、検査対象物の検査の時間スパンを短縮するものである。これは、検査対象物の検査領域のMRI画像が第1時間スパンで測定され(磁気共鳴測定)、その後、測定されたMRI画像を使用することにより、自己学習アルゴリズムを使用して、第2時間スパンにおける検査領域を示す1つまたは複数のMRI画像が予測されることによって、達成される。よって、検査対象物上への実際の磁気共鳴測定は、第1時間スパンに限定され、第2時間スパンは含まれない。第1時間スパン時の検査領域を示すMRI画像は、第2時間スパンに関する予測を可能とする情報を含有している。
【0034】
「検査対象物」は、通常、生物であり、好ましくは哺乳類であり、非常に特に好ましくは、人間である。検査領域は、検査対象物の一部であり、例えば、臓器または臓器の一部である。好ましくは、検査領域は、哺乳類(好ましくは、人間)の、肝臓または肝臓の一部である。
【0035】
「検査領域」は、画像ボリューム(視野、FOV)とも称されるものであり、特に、磁気共鳴画像内に撮像されるボリュームである。検査領域は、典型的には、放射線技師によって、例えば概観画像(ローカライザ)上で規定される。検査領域が、代替的にまたは追加的に、例えば選択されたプロトコルに基づいて自動的に規定され得ることは、自明である。
【0036】
検査領域は、基本磁場内へと導入される。検査領域は、MRI法を受け、これにより、第1時間スパン時の検査領域を示す複数のMRI画像が生成される。第1時間スパン時の測定によって生成されたこれらのMRI画像は、また、本明細書では、第1MRI画像とも称される。
【0037】
複数という用語は、少なくとも2つの(第1)MRI画像が生成されること、好ましくは少なくとも3つの(第1)MRI画像が生成されること、非常に特に好ましくは少なくとも4つの(第1)MRI画像が生成されること、を意味している。
【0038】
検査対象物に対して、検査領域内で広がる造影剤が投与される。造影剤は、好ましくは、ボーラスとして、体重に応じて静脈内投与される(例えば、腕の静脈内へと投与される)。
【0039】
「造影剤」とは、磁気共鳴測定においてその存在が信号変化をもたらす物質または物質混合物を意味するものとして、理解される。好ましくは、造影剤は、T1緩和時間の短縮および/またはT2緩和時間の短縮をもたらす。
【0040】
好ましくは、造影剤は、例えばGd-EOB-DTPAまたはGd-BOPTAなどの、肝胆道造影剤である。
【0041】
特に好ましい実施形態では、造影剤は、コントラスト増強活性物質としてガドキセト酸を有したまたはガドキセト酸塩を有した、物質または物質混合物である。非常に特に好ましいことは、ガドキセト酸の二ナトリウム塩(Gd-EOB-DTPA二ナトリウム)として与えられることである。
【0042】
好ましくは、第1時間スパンは、造影剤の投与前にまたは造影剤の投与とともに、開始される。造影剤を投与していない検査領域を示す1つまたは複数のMRI画像(ネイティブ画像)が生成されることが有利であり、これは、放射線技師が、そのような画像内において、検査対象物の健康状態に関する重要な情報を既に得ることができるからである。例えば、放射線技師は、そのようなネイティブMRI画像において、出血を識別することができる。
【0043】
第1時間スパンは、好ましくは、検査領域内に造影剤が分布することを、包含する。好ましくは、第1時間スパンは、検査対象物の肝臓または肝臓の一部に関する動的コントラスト増強磁気共鳴断層撮影における、動脈相および/または門脈相および/または後期相を包含する。記載された相は、例えば、J. Magn. Reson. Imaging, 2012, 35(3): 492-511, doi:10.1002/jmri.22833、Clujul Medical, 2015, Vol. 88 no. 4: 438-448, DOI: 10.15386/cjmed-414、Journal of Hepatology, 2019, Vol. 71: 534-542, http://dx.doi.org/10.1016/j.jhep.2019.05.005)、という出版物において規定されて説明されている。
【0044】
好ましい実施形態では、第1時間スパンは、検査対象物の肝臓または肝臓の一部に関するそのようなMRI画像が、
(i)造影剤が無い状態での検査領域を示すものとして、
(ii)造影剤が動脈を介して検査領域内に広がっている動脈相時の検査領域を示すものとして、
(iii)造影剤が門脈を介して検査領域へと到達している門脈相時の検査領域を示すものとして、さらに、
(iv)動脈内のおよび静脈内の造影剤の濃度が低下しかつ肝細胞内における造影剤の濃度が上昇している後期相時の検査領域を示すものとして、生成されるように選択される。
【0045】
好ましくは、第1時間スパンは、造影剤の投与の1分前から1秒前までの時間スパン内に開始されるあるいは造影剤の投与とともに開始されるとともに、造影剤の投与から、2分間から15分間までの、好ましくは2分間から13分間までの、さらに好ましくは3分間から10分間までの、時間スパンで継続する。造影剤が、腎臓を通しておよび肝胆道を通して非常にゆっくりと排泄されるため、第2時間スパンは、造影剤の投与から2時間以上にまで及ぶことがあり得る。
【0046】
造影剤が、異なる検査対象物内において様々な速さで広がり得ることのために、第1時間スパンは、また、検査領域の異なる部位内における造影剤の濃度によって、規定することもできる。1つの可能性が、図1に図示されている。図1は、肝動脈(A)と、肝静脈(V)と、健康な肝細胞(P)と、における造影剤濃度の時間プロファイルを、概略的に示している。濃度は、時間tの関数として、磁気共鳴測定における記載部位(肝動脈、肝静脈、肝細胞)内の信号強度Iという形態で、図示されている。静脈内ボーラス注入時には、最初に、肝動脈(A)内において、造影剤濃度が上昇する(破線で示す曲線)。濃度は、最大値を通過し、その後、低下する。肝静脈(V)内における濃度は、肝動脈内と比較して、より遅れて上昇し、遅れて最大値へと到達する(点線で示す曲線)。健康な肝細胞(P)内における造影剤濃度は、遅れて上昇し(連続した曲線)、非常に遅い時点でのみ、最大値へと到達する(図1には、最大値は図示されていない)。いくつかの特徴的な時点を規定することができる。時点TP0では、造影剤を、ボーラスとして静脈内に投与する。時点TP1では、肝動脈内の造影剤濃度(信号強度)が、最大値へと到達する。時点TP2では、肝動脈に関する信号強度曲線と、肝静脈に関する信号強度曲線とが、交差する。時点TP3では、肝静脈内の造影剤濃度(信号強度)が、最大値を通過する。時点TP4では、肝動脈に関する信号強度曲線と、肝細胞に関する信号強度曲線とが、交差する。時点T5では、肝動脈内の濃度と肝静脈の濃度とが、もはや測定可能なコントラスト増強を引き起こさないレベルにまで、低下している。
【0047】
好ましい実施形態では、第1時間スパンは、少なくとも時点TP0、TP1、TP2、TP3、およびTP4を、包含する。
【0048】
好ましい実施形態では、以下のすべての相に関して、すなわち、TP0よりも前の時間スパン、TP0からTP1までの時間スパン、TP1からTP2までの時間スパン、TP2からTP3までの時間スパン、および、TP3からTP4までの時間スパン、に関して、少なくともMRI画像が(測定によって)生成される。
【0049】
TP0よりも前の時間スパン、TP0からTP1までの時間スパン、TP1からTP2までの時間スパン、TP2からTP3までの時間スパン、および、TP3からTP4までの時間スパン、のそれぞれにおいて、1つまたは複数のMRI画像が(測定によって)生成されることが、想定される。また、1つまたは複数の時間スパンの際に、複数のMRI画像からなるシーケンスが(測定によって)生成されることが、想定される。
【0050】
シーケンスという用語は、時系列を意味する、すなわち、生成されるものは、連続した時点において検査領域を示す複数のMRI画像である。
【0051】
時点が、各MRI画像に対して割り当てられる、あるいは、時点を、各MRI画像に対して割り当てることができる。通常、この時点は、MRI画像が生成された時点(絶対時間)である。当業者であれば、MRI画像の生成が所定時間スパンを使用することを、認識している。MRI画像に対して割り当てられ得るものは、例えば、撮影開始時点または撮影完了時点である。しかしながら、MRI画像に対して任意の時点を割り当てること(例えば、相対的な時点)も、また、想定される。
【0052】
時点に基づいて、MRI画像は、別のMRI画像に対して時系列的に配置することができる、すなわち、MRI画像の時点に基づいて、MRI画像に示された瞬間が、別のMRI画像に示された瞬間と比較して、時系列的に前に行われたかまたは時系列的に後に行われたかを、確立することが可能である。
【0053】
好ましくは、MRI画像は、複数のものがシーケンスとして時系列的に順序づけられ、これにより、検査領域の早期段階を示すMRI画像は、検査領域の後期段階を示すMRI画像と比較して前となるように、複数のものがシーケンスとして配置される。
【0054】
シーケンスおよび/または複数内において互いに前後した2つのMRI画像どうしの間の時間スパンは、好ましくは、シーケンスおよび/または複数内において互いに前後したすべてのMRI画像の対に関して、同一である、すなわち、MRI画像は、好ましくは、一定の取得速度で生成されたものである。
【0055】
第1時間スパン時に(測定によって)生成された(第1)MRI画像に基づいて、第2時間スパン時の検査領域を示す、1つの第2MRI画像が、または複数の第2MRI画像が、予測される。第2時間スパンに関して予測されたMRI画像は、また、本明細書では、第2MRI画像とも称される。
【0056】
本発明の好ましい実施形態では、第2時間スパンは、第1時間スパンに続くものである。
【0057】
第2時間スパンは、好ましくは、肝胆道相内の時間スパンであり、好ましくは、造影剤投与から少なくとも10分後に開始される時間スパンであり、好ましくは、造影剤投与から少なくとも20分後に開始される時間スパンである。
【0058】
第1時間スパン時の検査領域を示す複数の測定MRI画像は、予測モデルに対して供給される。予測モデルは、第1時間スパン時の検査領域を示す複数のMRI画像に基づいて、第2時間スパン時の検査領域を示す1つまたは複数のMRI画像を予測するように構成されたモデルである。
【0059】
この関連で、「予測」という用語は、第2時間スパン時の検査領域を示すMRI画像が、第1時間スパン時の検査領域を示すMRI画像を使用して計算されることを、意味する。
【0060】
予測モデルは、好ましくは、教師あり機械学習プロセスにおける自己学習アルゴリズムを使用して作成されたものである。学習は、第1時間スパンおよび第2時間スパンにおける複数のMRI画像を含む訓練データを使用することによって、達成される。これらの訓練データは、また、本明細書では、参照MRI画像とも称される。第1時間スパン時に生成された参照MRI画像は、また、第1参照MRI画像とも称され、第2時間スパン時に生成された参照MRI画像は、また、第2参照MRI画像とも称される。
【0061】
自己学習アルゴリズムは、機械学習時に、訓練データに基づく統計モデルを生成する。これは、例を、単に丸暗記するのではなく、アルゴリズムが、訓練データ内のパターンおよび規則性を「認識する」ことを意味する。よって、予測モデルは、未知のデータを評価することもできる。検証データを使用することにより、未知のデータに関する評価の品質をテストすることができる。
【0062】
予測モデルは、教師あり学習によって訓練される、すなわち、第1時間スパンからの複数の第1参照MRI画像が、アルゴリズムに連続して提示され、第2時間スパンにおけるどの第2参照MRI画像がこれら複数にものに対して関連付けられるかが、「知らされる」。次に、アルゴリズムは、第1時間スパンの未知の複数のMRI画像に対して第2時間スパンの1つまたは複数のMRI画像を予測するために、第1時間スパンの複数の参照MRI画像と、第2時間スパンの参照MRI画像と、の間の関係を学習する。
【0063】
教師あり学習によって訓練される自己学習システムは、従来技術において広く説明されている(例えば、C. Perez: Machine Learning Techniques: Supervised Learning and Classification, Amazon Digital Services LLC - Kdp Print Us, 2019, ISBN 1096996545, 9781096996545を参照されたい)。
【0064】
好ましくは、予測モデルは、人工ニューラルネットワークである。
【0065】
このような人工ニューラルネットワークは、入力ニューロン(ノード)を有した第1層、少なくとも1つの出力ニューロン(ノード)を有した第N層、および、Nを、2よりも大きな自然数としたときにN-2個の内部層、という、処理要素からなる少なくとも3つの層を含む。
【0066】
入力ニューロンは、入力値として、デジタルMRI画像を受信するように機能する。通常、デジタルMRI画像の各ピクセルまたは各ボクセルに対して、1つの入力ニューロンが存在する。追加的な入力値(例えば、検査領域に関する情報、検査対象物に関する情報、MRI画像を生成する時に優勢であった条件に関する情報、および/または、MRI画像が生成された時点または時間スパンに関する情報)に対して、追加的な入力ニューロンが存在することができる。
【0067】
このようなネットワークにおいて、出力ニューロンは、第1時間スパンの複数のMRI画像に対して、第2時間スパンの1つまたは複数のMRI画像を予測するように機能する。
【0068】
入力ニューロンと出力ニューロンとの間の層をなす処理要素は、所定の接続重みを有した所定パターン内で互いに接続されている。
【0069】
好ましくは、人工ニューラルネットワークは、いわゆる畳み込みニューラルネットワーク(略してCNN)である。
【0070】
畳み込みニューラルネットワークは、入力データをマトリクス形態で処理することが可能である。このため、マトリクス(例えば、幅×高さ×色チャンネル)として描かれたデジタルMRI画像を、入力データとして使用することが可能である。対照的に、例えば多層パーセプトロン(MLP)の形態などの、通常のニューラルネットワークは、入力としてベクトルを必要とする、すなわち、入力としてMRI画像を使用するためには、MRI画像のピクセルまたはボクセルは、長いチェーンで連続して繰り出されなければならない。その結果、通常のニューラルネットワークは、例えば、MRI画像内の対象物の位置と無関係には、MRI画像内の対象物を認識することができない。MRI画像内の異なる位置にある同じ対象物は、全く異なる入力ベクトルを有することとなる。
【0071】
CNNは、交互に繰り返されるフィルタ(畳み込み層)および集約層(プーリング層)と、最後に位置した「通常の」完全連結ニューロン(密に/完全に連結された層)からなる1つの層または複数の層と、から本質的になる。
【0072】
シーケンス(MRI画像のシーケンス)を解析する時には、空間と時間とを、等価な次元として扱うことができる、例えば3Dフォールドを介して処理することができる。これは、Baccouche et al.による論文において(例えば、Baccouche et al.: Sequential Deep Learning for Human Action Recognition; International Workshop on Human Behavior Understanding, Springer 2011, pages 29-39を参照されたい)、および、Ji et al.による論文において(3D Convolutional Neural Networks for Human Action Recognition, IEEE Transactions on Pattern Analysis and Machine Intelligence, 35(1), 221-231)示されている。
【0073】
さらに、Karpathy et al.による、および、Simonyan & Zissermanによる出版物に記載されているように(例えば、Karpathy et al.: Large-scale Video Classification with Convolutional Neural Networks; Proceedings of the IEEE conference on Computer Vision and Pattern Recognition, 2014, pages 1725-1732、および、Simonyan & Zisserman: Two-stream Convolutional Networks for Action Recognition in Videos; Advances in Neural Information Processing Systems, 2014, pages 568-576を参照されたい)、時間と空間とを担当する異なるネットワークを訓練し得るとともに、最後に特徴どうしを結合することができる。
【0074】
リカレントニューラルネットワーク(RNNs)は、層どうしの間のフィードバック接続を含有したニューラルネットワークの一種である。RNNsは、ニューラルネットワークの異なる部分を介したパラメータデータの共通利用により、シーケンシャルデータのモデル化を可能とする。RNNのためのアーキテクチャは、サイクルを含有している。RNNからの出力データの少なくとも一部が、シーケンス内の後続の入力を処理するためのフィードバックとして使用されることにより、サイクルは、変数の現在の値が、将来の時点でそれ自体の値に与える影響を、表す。
【0075】
詳細は、従来技術から収集することができる(例えば、S. Khan et al.: A Guide to Convolutional Neural Networks for Computer Vision, Morgan & Claypool Publishers 2018, ISBN 1681730227, 9781681730226、国際公開第2018/183044(A1)号パンフレット、国際公開第2018/200493号パンフレット、国際公開第2019/074938(A1)号パンフレット、国際公開第2019/204406(A1)号パンフレット、国際公開第2019/241659(A1)号パンフレット、を参照されたい)。
【0076】
ニューラルネットワークの訓練は、例えば、バックプロパゲーション法により実施することができる。この関連で、ネットワークのために、努力されることは、所与の入力データを所与の出力データ上へと、可能な限り信頼できるようにマッピングすることである。マッピングの品質は、誤差関数によって表される。目標は、誤差関数を最小化することである。バックプロパゲーション法の場合、人工ニューラルネットワークは、接続重みを変更することによって、訓練される。
【0077】
訓練された状態では、処理要素どうしの間の接続重みは、第1時間スパンの複数の参照MRI画像と、第1時間スパン時の検査領域を示す新たな複数のMRI画像に対して第2時間スパン時の検査領域を示す1つまたは複数のMRI画像を予測するために使用され得る第2時間スパンの参照MRI画像と、の間の関係に関する情報を含有する。
【0078】
データを、訓練データセットと検証データセットとに分割するために、交差検証法を使用することができる。訓練データセットは、ネットワーク重みのバックプロパゲーション訓練において使用される。検証データセットは、訓練されたネットワークを未知の複数のMRI画像に対して適用し得る予測精度をチェックするために、使用される。
【0079】
上述したように、検査対象物に関する更なる情報、検査領域に関する更なる情報、検査条件に関する更なる情報、および/または、測定されたMRI画像に関する更なる情報も、また、訓練、検証、および予測のために、使用することができる。
【0080】
検査対象物に関する情報の例は、性別、年齢、体重、身長、既往症、摂取した医薬品の種類と期間と量、血圧、中心静脈圧、呼吸数、血清アルブミン、総ビリルビン、血糖、鉄分、呼吸能力、および同種のもの、である。また、これらは、例えば、データベースまたは電子患者ファイルから収集することもできる。
【0081】
検査領域に関する情報の例は、既往症、手術、部分切除、肝移植、鉄肝、脂肪肝、および同種のもの、である。
【0082】
第1時間スパン時の検査領域を示す複数のMRI画像が、予測モデルに対して供給される前に、動き補正を受けることが、想定される。このような動き補正は、第1MRI画像の画素またはボクセルが、時間的に後の第2MRI画像の対応画素または対応ボクセルと同じ検査領域を示すことを、確保する。動き補正の方法は、従来技術において説明されている(例えば、欧州特許第3118644号明細書、欧州特許第3322997号明細書、米国特許出願公開第20080317315号明細書、米国特許出願公開第20170269182号明細書、米国特許出願公開第20140062481号明細書、欧州特許第2626718号明細書、を参照されたい)。
【0083】
本発明は、本発明による方法を実行することを可能とするシステムを提供する。
【0084】
システムは、受信ユニットと、制御計算ユニットと、出力ユニットと、を含む。
【0085】
記載されたユニットが、単一のコンピュータシステムの構成要素であることが想定されるけれども、記載されたユニットが、また、あるユニットから別のユニットへとデータおよび/または制御信号を送信するために、ネットワークを介して互いに接続された複数の別個のコンピュータシステムの構成要素であることも、想定される。
【0086】
「コンピュータシステム」とは、プログラム可能な計算規則によってデータを処理する電子的データ処理のためのシステムである。このようなシステムは、通常、論理演算を実行するためのプロセッサを含むユニットである「コンピュータ」と、周辺機器と、を含む。
【0087】
コンピュータ技術では、「周辺機器」とは、コンピュータに対して接続されていて、コンピュータを制御するように機能するおよび/または入出力デバイスとして機能する、すべてのデバイスを指す。その例は、モニタ(スクリーン)、プリンタ、スキャナ、マウス、キーボード、ドライブ、カメラ、マイクロホン、ラウドスピーカ、等である。内部ポートおよび拡張カードも、また、コンピュータ技術では周辺機器と見なされる。
【0088】
今日のコンピュータシステムは、デスクトップPCs、ポータブルPCs、ラップトップ、ノートブック、ネットブック、タブレットPCs、いわゆるハンドヘルド(例えば、スマートフォン)、へと多くの場合に分類されるけれども、すべてのこれらのシステムは、本発明の実施に際して利用することができる。
【0089】
コンピュータシステムへの入力は、例えば、キーボード、マウス、マイクロホン、および/または、同種のもの、などの入力手段を介して、達成される。
【0090】
本発明によるシステムは、第1時間スパン時の検査領域を示す複数のMRI画像を受信するように、さらに、これらのデータに基づいておよび任意選択的な更なるデータに基づいて、第2時間スパン時の検査領域を示す1つまたは複数のMRI画像を生成するように(予測するように、計算するように)、構成されている。
【0091】
制御計算ユニットは、受信ユニットの制御のために、様々なユニットどうしの間にわたっての、データおよび信号の流れ調整のために、さらに、MRI画像の計算のために、機能する。複数の制御計算ユニットが存在することも、想定される。
【0092】
受信ユニットは、複数のMRI画像を受信するように機能する。複数の画像は、例えば、磁気共鳴システムから送信され得る、あるいは、データ記憶媒体から読み出され得る。磁気共鳴システムは、本発明によるシステムの構成要素とすることができる。しかしながら、また、本発明によるシステムが、磁気共鳴システムの構成要素であることも、想定される。
【0093】
MRI画像のシーケンスと任意選択的な更なるデータとが、受信ユニットから、制御計算ユニットへと、送信される。
【0094】
制御計算ユニットは、第1時間スパン時の検査領域を示す複数のMRI画像に基づいて、1つまたは複数のMRI画像を予測するように構成され、ここで、予測MRI画像は、第2時間スパン時の検査領域を示すものである。好ましくは、制御計算ユニットのメモリ内へとロードされ得るものは、第2時間スパンのMRI画像を計算するために使用される予測モデルである。予測モデルは、好ましくは、教師あり学習による自己学習アルゴリズムを使用して生成(訓練)されたものである。
【0095】
出力ユニットを介して、予測MRI画像を、表示することができる(例えば、スクリーン上に)、または、出力することができる(例えば、プリンタを介して)、または、データ記憶媒体内に格納することができる。
【0096】
本発明について、図面に図示した特徴点または特徴点どうしの組合せへと本発明を限定することを望むことなく、図面を参照して、以下においてより詳細に説明する。
図1は、肝動脈(A)、肝静脈(V)、および肝細胞(P)、内における造影剤の濃度に関する時間プロファイルを概略的に示しており、詳細に上述したとおりである。
図2は、本発明によるシステムの好ましい実施形態を、概略的に示している。システム(10)は、受信ユニット(11)と、制御計算ユニット(12)と、出力ユニット(13)と、を含む。
図3は、本発明による方法の一実施形態を、概略的にかつ例示的に示している。方法(100)は、
(110)複数の第1MRI画像を受信するステップであり、第1MRI画像の少なくともいくつかを、造影剤を投与した後の第1時間スパン時の検査領域を示すものとするステップと、
(120)複数の第1MRI画像を、予測モデルに対して供給するステップであり、予測モデルを、第1時間スパン時の検査領域を示す第1参照MRI画像から、第2時間スパン時の検査領域を示す1つまたは複数の第2参照MRI画像を予測するよう、教師あり学習によって参照MRI画像を基に訓練されたものとし、ここで、第2時間スパンを、第1時間スパンの後に時系列的に続くものとするステップと、
(130)予測モデルによって、第2時間スパン時の検査領域を示す1つまたは複数の予測MRI画像を生成するステップであり、ここで、第2時間スパンを、第1時間スパンの後に時系列的に続くものとするステップと、
(140)1つまたは複数の予測MRI画像を、表示および/または出力するステップ、ならびに/あるいは、1つまたは複数の予測MRI画像をデータ記憶媒体内に格納するステップと、を含む。
図4は、動的相時および肝胆道相時における肝臓の複数のMRI画像を、概略的にかつ例示的に示している。図4(a)、図4(b)、図4(c)、図4(d)、図4(e)、および図4(f)では、異なる時点における肝臓を通しての同じ断面が、常に描かれている。図4(a)、図4(b)、図4(d)、および図4(f)内に記入した参照符号は、図4(a)、図4(b)、図4(c)、図4(d)、図4(e)、および図4(f)のすべてに対して適用されるものであり、明瞭化のために、それぞれ1回だけ記入されている。図4(a)は、肝胆道造影剤を静脈内投与する前の肝臓(L)を通しての断面を示している。図4(a)の時点と図4(b)の時点との間で、肝胆道造影剤を、ボーラスとして静脈内投与した。これは、図4(b)内の肝動脈(A)を経由して、肝臓へと到達する。したがって、肝動脈は、信号強調されて描出されている(動脈相)。主に動脈を介して血液が供給される腫瘍(T)も、同様に、肝細胞組織と比較して、より明るい(信号が増強された)領域として際立っている。図4(c)に示す時点で、造影剤は、静脈を経由して肝臓へと到達する。図4(d)では、静脈血管(V)が、肝組織と比較して、明るい(信号が強調された)領域として際立っている(静脈相)。同時に、主に静脈を介して造影剤が供給される健康な肝細胞内の信号強度は、連続的に上昇する(図4(c)→図4(d)→図4(e)→図4(f))。図4(f)に示す肝胆道相では、肝細胞(P)が、信号強調されて描出され、血管および腫瘍は、もはや造影剤を有していないため、暗く描出される。
図5は、第1時間スパンにおいて肝臓を示す3つのMRI画像(1)、(2)、および(3)が、予測モデル(PM)に対してどのようにして供給されるかを、例示的にかつ概略的に示している。予測モデルは、3つのMRI画像(1)、(2)、および(3)から、第2時間スパンにおいて肝臓を示すMRI画像(4)を、計算する。MRI画像(1)、(2)、および(3)は、例えば、図4(b)、図4(c)、および図4(d)に示すMRI画像を示すことができる。MRI画像(4)は、例えば、図4(f)に示すMRI画像とすることができる。
図1
図2
図3
図4(a)】
図4(b)】
図4(c)】
図4(d)】
図4(e)】
図4(f)】
図5