(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】補助装置による製品間多管式熱交換器用の管束を構成する内管と管支持プレートとの間の溶接接続を製造する方法およびこのタイプの製造方法に用いられる補助装置
(51)【国際特許分類】
B23K 37/053 20060101AFI20240822BHJP
B23K 9/028 20060101ALI20240822BHJP
F28D 7/16 20060101ALI20240822BHJP
F28F 9/18 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
B23K37/053 D
B23K9/028 P
F28D7/16 A
F28F9/18
(21)【出願番号】P 2022553191
(86)(22)【出願日】2021-02-05
(86)【国際出願番号】 EP2021000014
(87)【国際公開番号】W WO2021180355
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-11-30
(31)【優先権主張番号】102020001599.9
(32)【優先日】2020-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】310004541
【氏名又は名称】ゲーエーアー テーデーエス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(74)【代理人】
【識別番号】100142572
【氏名又は名称】水内 龍介
(72)【発明者】
【氏名】ウィンキング ケビン
(72)【発明者】
【氏名】イスフェルディング カーステン
(72)【発明者】
【氏名】ジャッカリング ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】スピーマン ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】シュミード アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】タッケ ルドガー
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0075759(US,A1)
【文献】米国特許第02996600(US,A)
【文献】特表2015-533411(JP,A)
【文献】特開昭54-069540(JP,A)
【文献】特開昭61-108482(JP,A)
【文献】特開2011-117656(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第02341808(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 31/00 - 31/02、
31/10 - 33/00、
37/00 - 37/08
F28D 7/16
F28F 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
補助装置(50)により、製品間多管式熱交換器(100)用の管束(10)を構成する内管(16)と管支持プレート(12、14)との間の溶接接続を製造する方法であって、前記管支持プレート(12、14)は、前記内管(16)と対向する端面で溶接され、前記方法は、
(i)前記内管(16)とプレート内孔(17)とが互いに整列するように、前記管支持プレート(12、14)に配置され、割り当てられた前記プレート内孔(17)を用いて前記内管(16)を配向することと、
(ii)径方向および反対方向において有効な形状嵌合部により、無溶接開始位置において、前記内管(16)および前記管支持プレート(12、14)を互いに固定することであって、
互いに平行に配置され、割り当てられた前記内管(16)の配置のための管レイアウトパターン(M)が、2個以上の前記プレート内孔(17)を有する前記管支持プレート(12、14)により設定されることと、
(iii)それぞれ必要な(n)個の内管(16)を、前記管レイアウトパターン(M)に従って、前記補助装置(50)による前記管支持プレート(12、14)との前記形状嵌合部によって、すべて互いに堅固に固定することを含み、
さらに、
(iv)径方向と軸方向の両方、およびそれぞれの反対方向において有効な第1形状嵌合部(F1)を有するすべての前記内管(16)への溶接作業中、前記内管(16)の内管長手方向軸(R)の方向に、前記内管(16)の前記端面に対して前記管支持プレート(12、14)の端面を押圧することであって、
前記プレート内孔(17)および前記内管(16)の管内孔(16a)は、等しい内径(D)を有することと、
(v)それぞれ必要な(n)個の前記内管(16)を、前記管レイアウトパターン(M)に従って、前記補助装置(50)の取外し可能な第2形状嵌合部(F2)によって、すべて互いに堅固に固定することと、
(vi)前記プレート内孔と前記管内孔(17、16a)から、単一経路で径方向内側から外側に連続的に軌道に沿って円周溶接(36)を実施することであって、前記第1形状嵌合部(F1)の少なくとも1つの軸形状嵌合部の深さ(B1)が、前記円周溶接(36)の溶接幅(b)によってカバーされることと、
(vii)前記内管(16)を、前記管支持プレート(12、14)に順次溶接することと、
(viii)前記溶接された管の配置から、前記補助装置(50)を取外して除去すること
と、を含み、
溶接手順において、存在する場合、最初に、前記管支持プレート(12、14)の中心に1個の前記内管(16)を配置し、次に前記中心に配置した内管(16)の周囲のピッチ円(T)上に配置された外側の前記内管(16)が、前記管支持プレート(12、14)にそれぞれ逆順に溶接されることを特徴とする、製造方法。
【請求項2】
製品間多管式熱交換器(100)用の管束(10)を構成する内管(16)と管支持プレート(12、14)との間の溶接接続を製造する方法に用いられる補助装置(50)であって、
前記溶接接続は、
・管内孔(16a)を有する前記内管(16)が、内管長手方向軸(R)に垂直な平面において前記内管(16)と対向する、プレート内孔(17)を有する円盤状の前記管支持プレート(12、14)の端面に接続され、
・前記管内孔(16a)および前記プレート内孔(17)が、等しい大きさの内径(D)を有し、互いに整列されるように配向され、
・無溶接開始位置において、前記内管(16)および前記管支持プレート(12、14)が、径方向および軸方向のいずれにおいても有効な第1形状嵌合部(F1)により、それぞれ反対方向に互いに固定され、
・径方向内側から径方向外側へと単一経路で連続的に前記プレート内孔および前記管内孔(17、16a)から軌道に沿って円周溶接(36)が実施され、
・前記円周溶接(36)の溶接幅(b)が、前記第1形状嵌合部(F1)の少なくとも1つの軸形状嵌合部の深さ(B1)をカバーするように、公知の方法で設計され、
前記補助装置は、
・閉じたリングを形成する、第1および第2保持リング半部(50.1、50.2)が供給され、
・前記保持リング半部(50.1、50.2)が、前記補助装置(50)の中心(Z)を通って延びる分離面(E)に接触し、前記分離面(E)において変位不可能な第2形状嵌合部(F2)を形成し、
・前記管支持プレート(12、14)が、2個以上の前記プレート内孔(17)を画定することにより、互いに平行に配置された前記内管(16)の配置のための管レイアウトパターン(M)を設定し、
・単一ピッチ円(T)の周囲に均等に分散するように配置された前記内管(16)が、それぞれ最大で前記保持リング半部(50.1、50.2)の半分に包囲されるように、前記管レイアウトパターン(M)が前記保持リング半部(50.1、50.2)で再現され、関連の包囲外形の開口部が前記保持リング半部(50.1、50.2)の前記中心(Z)に対向し、
・前記分離面(E)が、前記ピッチ円(T)上の少なくとも1つの内管長手方向軸(R)を通ってさらに延び、
・保持手段(52)が、それぞれ前記保持リング半部(50.1、50.2)の周囲において、取外し可能に係合し、前記中心(Z)に向かって配向される星型形状に設けられ、
・前記保持手段(52)の両側が、それぞれ前記ピッチ円(T)上に配置された、隣接する前記内管(16)に接しており、
・前記保持手段(52)が、必要に応じて、前記中心(Z)に対向するそれぞれの端面によって前記中心(Z)に配置された1つの前記内管(16)を固定し、それぞれ当該位置に取外し可能に固定されることを特徴とする、補助装置。
【請求項3】
前記第2形状嵌合部(F2)は、径方向において前記第1および第2保持リング半部(50.1、50.2)同士を固定することを特徴とする、
請求項2に記載の補助装置(50)。
【請求項4】
前記保持手段(52)は、固定手段(54)によって、割り当てられた前
記保持リング半部(50.1、50.2)にそれぞれ固定されることを特徴とする、
請求項2または3に記載の補助装置(50)。
【請求項5】
前記第1および第2保持リング半部(50.1、50.2)は、直径方向に互いに対向するように、その周囲に配置された接続手段(56)によって取外し可能に相互接続されることを特徴とする、
請求項2~4のいずれか一項に記載の補助装置(50)。
【請求項6】
・7個の前記内管(16)が設けられ、1個の前記内管(16)は、前記中心(Z)と同軸に位置し、6個の前記内管(16)は、前記ピッチ円(T)の周囲に均等に分散するように配置され、
・前記分離面(E)は、直径方向に対向する2個の前記内管(16)を通ってさらに延びることを特徴とする、
請求項2~5のいずれか一項に記載の補助装置(50)。
【請求項7】
製品間多管式熱交換器(100)用の管束(10)であって、前記管束は、
請求項1に記載の内管(16)と管支持プレート(12、14)との間の溶接接続を製造する方法を用いて溶接され、前記溶接接続は、円周溶接(36)として設計されるとともに、前記円周溶接(36)の外側に径方向に離間した前記管支持プレート(12、14)は、周方向かつ軸方向に延びる環状間隙の形状のプレート切欠き(34)を含み、前記円周溶接(36)に溶接される前記管支持プレート(12、14)の厚さは、1つの管厚から2つの管厚(d)の間の値となるように設計され、
前記内管(16)と前記管支持プレート(12、14)とを備え、前記内管(16)と前記管支持プレート(12、14)との間の溶接接続を含み、
前記溶接接続は、
・管内孔(16a)を有する前記内管(16)が、内管長手方向軸(R)に垂直な平面において前記内管(16)と対向するプレート内孔(17)を有する円盤状の前記管支持プレート(12、14)の端面に接続され、
・前記管内孔(16a)および前記プレート内孔(17)が、等しい内径(D)を有し、互いに整列されるように配向され、
・無溶接開始位置において、前記内管(16)および前記管支持プレート(12、14)が、径方向および軸方向のいずれにおいても有効な第1形状嵌合部(F1)により、それぞれ反対方向に互いに固定され、
・径方向内側から径方向外側へと単一経路で連続的に前記プレート内孔および前記管内孔(17、16a)から軌道に沿って円周溶接(36)が実施され、
・前記円周溶接(36)の溶接幅(b)が、前記第1形状嵌合部(F1)の少なくとも1つの軸形状嵌合部の深さ(B1)をカバーし、
・前記円周溶接(36)が、前記内管(16)側から見た場合、最大で前記軸形状嵌合部の深さ(B1)の範囲において、前記溶接幅(b)が前記管支持プレート(12、14)に係合するように位置決めされるように設計される、管束。
【請求項8】
前記内管(16)と前記管支持プレート(12、14)との間の溶接接続を製造する方法は、
請求項2~6のいずれか一項に記載の補助装置(50)によって実施されることを特徴とする、
請求項7に記載の管束(10)。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のようにそれぞれ溶接されている少なくとも1つの管束(10)を含む製品間多管式熱交換器(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補助装置により、製品間多管式熱交換器用の管束を構成する内管と管支持プレートと間の溶接接続を製造する方法に関し、関連の管支持プレートは、内管と対向する端面で溶接される。製造方法は、(i)内管とプレート内孔とが互いに整列するように、管支持プレートに配置され、割り当てられたプレート内孔を用いて内管を配向することと、(ii)径方向および反対方向において有効な形状嵌合部により、無溶接開始位置において、関連の内管および管支持プレートとを互いに固定することであって、互いに平行に配置され、割り当てられた内管の配置のための管レイアウトパターンが、2個以上のプレート内孔を有する管支持プレートにより設定されることと、(iii)それぞれ必要な個数の内管を、管レイアウトパターンに従って、補助装置による管支持プレートとの関連の形状嵌合部によって、すべて互いに堅固に固定することを含む工程を用いてそれ自体公知の方法で実施される。
【0002】
また、本発明は、このタイプの製造方法に用いられる補助装置、このタイプの製造方法により溶接された管束またはこのタイプの補助装置、および少なくとも1つのこのタイプの管束を含む製品間多管式交換器に関する。
【背景技術】
【0003】
食品および飲料産業では、食品を熱処理するために様々な熱交換器が使用されている。熱交換器は、例えばプレート式または管式など、非常に多様な設計の中から、処理される食品に基づいて選択される。管式熱交換器は、濃縮物、スープ、またはデザートなど、さらには繊維および/または果肉状物質が添加された、中粘度から高粘度の製品だけでなく、牛乳およびその他の乳製品、飲料、およびジュースなどの低粘度の製品にも適している。一般に、このような製品は、熱処理を目的として所謂内管を流動し、例えば蒸気または水などの熱交換媒体は、内管を包囲するハウジング、好ましくはシェル管において外側から、内管の周囲を、好ましくは反対方向に流動する。
【0004】
公知の管式熱交換器のうち特にエネルギー効率の高い設計は、所謂多管式熱交換器である(
図1を参照)。前記熱交換器は、複数の管束から構成され(
図2a、
図2b、および
図3)、複数の管束の各々は、並列に接続された複数の内管と、製品の共用入口および共用出口とを備える。関連の内管群またはそれぞれ所謂内管組は、シェル管に包囲され、それぞれ両端部の近くに熱交換媒体のための接続片が設けられる。この接続片は、前記シェル管に対して径方向に開口し突出している。伝熱媒体は、シェル管内を、好ましくは内管内の流れ方向、即ち製品流とは反対方向に流動する。
【0005】
内管は、所謂管支持プレート(
図3)の両側および各端面のプレート内孔を貫通し、詳細には、内管から離れた端面(管支持プレートの前面)で、管端部が、好ましくは円周溶接により、管支持プレートに接続される。溶接接続の代わりに、他材料の付加の有無を問わず他材料による接続が可能である。したがって、内管の外側と管支持プレートの割り当てられた内孔との間に周囲環状間隙が存在する。この周囲環状間隙は、内管と管支持プレートとの間の周囲材料接続点から管支持プレートを通り、管束または伝熱媒体が供給されるシェル管のそれぞれの内部スペース内へ延在する。水または蒸気などの伝熱媒体のみが留まり、食品に置き換えられなければ、前記周囲環状間隙は問題とならない。
【0006】
しかしながら、多管式熱交換器の伝熱効率の向上を目的とした所謂製品間熱交換が実施される場合、前述の周囲環状間隙により製品が凝固するという問題が発生する。最良の場合でも、前記製品は、後続の製造運転のため周囲環状間隙を微生物学的に正常に戻す目的で、過剰流量で特に集中的に長時間、即ち所謂CIP(定置洗浄)でしか洗浄できない。
【0007】
特に、例えば、最終製品の冷却時に生成された熱を、未処理の製品の予熱に利用する、回生熱交換システムの場合、製品間(P-P)の熱交換でのエネルギー効率またはそれぞれ費用対効果は、製品-伝熱媒体-製品間(P-HTM-P)の熱交換の場合よりも高いことが知られている。これは対数温度差が大きく、製品の流動速度(レイノルズ数が高い)が高く、その結果熱交換面を小さくすることができ、伝熱が向上するためである。レイノルズ数が高いため、管束の管をより長くすることができ、コストも下がる。
【0008】
公知の形態において、衛生上または防腐上の観点から、多管式熱交換器だけが、過剰流量洗浄を必要とする製品間熱交換に適している。したがって、特開第2020117121号公報(特許文献1)において、製品の流入に対して問題のある環状間隙を塞ぐため、管支持プレートの後部面、即ち内管に対向する管支持プレートの端面にさらに円形溶接を施すことが提案されている。管支持プレートの前面、さらには後面にそれぞれの円周溶接を施す場合、密閉された環状スペースまたは各環状間隙が2箇所の円形溶接部間、あるいは2箇所の別種の材料接続部間に形成され、円形溶接部またはそれぞれ材料接続部に傷があり、少しでも孔が存在する場合、食品の安全性にリスクが及ぶという欠点が生じる。これをチェックすることは、非常に困難あるいは不可能である。これにより、密閉された環状スペースに微生物が定着する恐れがあり、後続製品が再汚染される可能性がある。
【0009】
独国特許出願第2341808A1号(特許文献2)は、孔付の対向するヘッドプレートを有する熱交換器を開示している。孔により、割り当てられた内管が一致するように相互接続される。内管の径は、各ヘッドプレートの径と同じである。ヘッドプレートは、内管に向けて孔の周囲領域に突出する形状で設計されている。突出部と内管は、内管の管厚全体への突合せ溶接により相互接続される。突合せ溶接は、内管の内部から球状溶接として設計されている。内管は、溶接工程において適切な保持手段を介してヘッドプレートに対して固定される。
【0010】
米国特許第2996600A号(特許文献3)は、管式熱交換器として、管と管支持プレートとの間の溶接接続を開示している。管は、管支持プレートにおいて管に割り当てられた孔の径に対応する内径を有する。管の内径と孔径とが互いに整列されるように、管と管支持プレートが互いに溶接される。管が係合する管支持プレートの凹部により、溶接時に必要な管支持プレート上での管の配向とセンタリングが達成される。上記原理が逆になる場合も開示されている。凹部は、接続される管端部に形成され、管支持プレートの孔の周囲の首部を外側から包囲する。管と管支持プレートとの間の関連の形状嵌合領域は、管の内径の内側と管支持プレートの孔から、単一経路において径方向内側から外側に連続して軌道に沿って回転する溶接ツールにより溶接される。
【0011】
仏国特許第2349395A号(特許文献4)は、所謂内孔溶接により、管板内の管を固定する装置を開示している。管は、所定距離にわたって管板の孔に挿入され、溶接電極が孔と管の内部に挿入され、溶接電極は、管の縁と孔に相対して回転移動を実施する。これにより、管と対向する中実の管板の角部領域に、管厚全体が溶接接続される。
【0012】
国際出願第2014060425A1号(特許文献5)またはそれぞれ米国特許出願第2015/267973A1号(特許文献6)は、多管式熱交換器の管束を構成する内管と管支持プレートとの間の接続を、内管の外側と管支持プレートの孔との間の周囲環状間隙の形成を防止しながら行うことができる様々な方法を提案している。
【0013】
独国特許第1501463A号(特許文献7)は、熱交換器を水平方向に組付ける装置を開示している。管束は、ホルダによって保持され、その管の端部が管板の割り当てられた孔に向けて開口しており、熱交換器のシェルへと挿入される。シェルは、両側が開口している。ホルダは、組付け後および熱交換器の動作中でも、管束上とその内部に残っている。
【0014】
管板への管束の管の埋め込みおよび前記管と前記管板との間の接続(例えば溶接接続)に関する特徴は、開示されていない。管束の個々の管を、管板の割り当てられた孔へ押し込み、管の開口端によって管から離れた管板の端面に、実質的に接続されると想定できる。前述のように、このタイプの溶接接続により、関連の管の外径と管板の受容孔の内径との間の環状間隙が問題となる。
【0015】
内管と管支持プレートとの間の溶接接続(米国特許第2996600A号(特許文献3))および管束の管同士を保持可能なホルダまたはそれぞれ補助装置(独国特許第1501463A号(特許文献7))の構成に、上述の先行技術の特徴を互いに組み合わせて、本発明の主題の一般的基礎を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】特開第2020117121号
【文献】独国特許出願第2341808A1号
【文献】米国特許第2996600A号
【文献】仏国特許第2349395A号
【文献】国際出願第2014060425A1号
【文献】米国特許出願第2015/267973A1号
【文献】独国特許第1501463A号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上述した先行技術から進んで、本発明の目的は、保健衛生の視点から安全であり、寸法が正確かつ再現品質が高い製品間多管式熱交換器用の管束を構成する内管と管支持プレートとの間の溶接接続を確実に実施する、補助装置による汎用タイプの製造方法を提供することである。さらに、本発明の目的は、本発明に係る製造方法を実施するための補助装置を明示することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この目的は、請求項1の特徴を有する製造方法によって達成される。本発明に係る製造方法の好都合な実施形態は、関連する従属請求項の主題である。このタイプの製造方法のための本発明に係る補助装置は、さらなる独立請求項3の主題である。補助装置の好都合な実施形態は、関連の従属請求項に記載されている。本発明に係る管束は、さらなる独立請求項8の主題である。管束の好都合な実施形態は、関連の従属請求項に記載されている。本発明に係るこのタイプの少なくとも1つの管束を含む製品間多管式熱交換器は、さらなる独立請求項11の主題である。
【0019】
前記方法に関し、本発明は、補助装置により、製品間多管式熱交換器用の管束を構成する内管と管支持プレートとの間の溶接接続を製造する方法であって、管支持プレートは、内管と対向する端面で溶接され、前記方法は、以下のそれ自体公知の工程(i)~(iii)で実施される。
(i)内管とプレート内孔とが互いに整列するように、即ち内管とプレート内孔の回転軸が同軸に延びるように、管支持プレートに配置され、割り当てられたプレート内孔を用いて内管を配向する。
(ii)径方向および反対方向において有効な形状嵌合部により、無溶接開始位置において、内管および管支持プレートを互いに固定することであって、互いに平行に配置され、割り当てられた内管の配置のための管レイアウトパターンが、2個以上のプレート内孔を有する管支持プレートにより設定される。径方向の固定は両方向に作用し、軸方向の固定は管支持プレートに一方向に当接する内管に制限され、反対方向に取外し可能である。
(iii)それぞれ必要な個数の内管を、管レイアウトパターンに従って、補助装置による管支持プレートとの形状嵌合部によって、すべて互いに堅固に固定する。管支持プレートにより、2個以上の内孔を画定することによって、互いに平行に配置され、割り当てられた内管を配置するための管レイアウトパターンが設定される。設定可能な内孔数nは、2個以上であり、内孔の数nを7に設定して配置することが好ましい。そのうちの1個を管支持プレートの中心に配置し、残りを管支持プレートの中心と同心円状に延びる単一ピッチ円の周囲に均等に分散させる。補助装置は、内管同士が堅固に固定する機能を果たす。
【0020】
本発明に係る製造方法の場合、その発明性は、先行技術に開示のように、単一の内管だけでなく、互いに平行に延びる複数の内管を有する群またはそれぞれ組において、すべての内管に順次実施される連続溶接工程で生じる問題の解決策を提供することにある。
【0021】
本発明の目的は、以下のさらなる工程(iv)~(viii)を用いる製造方法により達成される。
(iv)径方向と軸方向の両方、およびそれぞれの反対方向において有効な第1形状嵌合部を有するすべての内管への溶接作業中、内管の内管長手方向軸の方向に、内管の端面に対して管支持プレートの端面を押圧する。押圧により、溶接中の熱入力により生じ得る、内管の端面と管支持プレートとの間に不要な間隙の形成が防止されるか、またはそれぞれ最小限に抑えられる。
(v)それぞれ必要な個数の内管を、管レイアウトパターンに従って、補助装置の取外し可能な第2形状嵌合部によって、すべて互いに堅固に固定する。第2形状嵌合部は、好ましくは圧入構成要素を使用せず、本実施形態はまた、中央内管の任意の使用を含む。
(vi)プレート内孔と管内孔から、単一経路で径方向内側から外側に連続的に軌道に沿って円周溶接を実施し、第1形状嵌合部の少なくとも1つの軸形状嵌合部の深さが、円周溶接の溶接幅によってカバーされる。溶接は、好ましくは材料を付加することなく、接続される材料に適した不活性ガス雰囲気において実施される。軸形状嵌合部の深さは、所与の溶接および厚さの条件から得られる溶接幅と一致する。軸形状嵌合部の深さは、発生し得る溶接幅を越えなくてもよい。円周溶接は、自己包囲する、即ち局所的な処理が中断されることがない溶接であることを理解されたい。
(vii)内管を、管支持プレートに順次溶接する。補助装置によって内管の配置位置が確実に設定されてから、すべての溶接接続が実施される。
(viii)溶接された管の配置から、補助装置を取外して除去する。
【0022】
溶接工程においてすべての溶接接続に耐えうる材料の応力を最小限にするため、溶接手順において、存在する場合、最初に、管支持プレートの中心に1個の内管を配置し、次に中心に配置した内管の周囲のピッチ円上に配置された外側の内管が、管支持プレートにそれぞれ逆順に溶接される。
【0023】
前記装置に関し、本発明は、製品間多管式熱交換器用の管束を構成する内管と管支持プレートとの間の溶接接続を製造する方法に用いられる補助装置から前進し、溶接接続は、以下のようにそれ自体公知の方法で設計される。
・管内孔を有する内管は、内管長手方向軸に垂直な平面において内管と対向するプレート内孔を有する円盤状の管支持プレートの端面に接続される。
・管内孔およびプレート内孔は、等しい内径を有し、互いに整列されるように配向される。
・無溶接開始位置において、内管および管支持プレートは、径方向および軸方向のいずれにおいても有効な第1形状嵌合部により、それぞれ反対方向に互いに固定される。
・径方向内側から径方向外側へと単一経路で連続的にプレート内孔および管内孔から軌道に沿って円周溶接が実施される。
・円周溶接の溶接幅は、第1形状嵌合部の少なくとも1つの軸形状嵌合部の深さをカバーする。
【0024】
本発明の目的は、以下の特徴を有する本発明に係る製造方法に用いられる本発明に係る補助装置によって達成される。
・補助装置の適用範囲内において、閉じたリングを形成する、第1および第2保持リング半部が供給される。
・保持リング半部は、補助装置の中心を通って延出する分離面に接触し、分離面において変位不可能な第2形状嵌合部を形成する。
・管支持プレートは、2個以上のプレート内孔を画定することによって、互いに平行に配置された内管の配置のための管レイアウトパターンを設定する。
・単一ピッチ円の周囲に均等に分散するように配置された内管が、それぞれ最大で保持リング半部の半分に包囲されるように、管レイアウトパターンが保持リング半部で再現され、関連の包囲外形の開口部が保持リング半部の中心(Z)に対向する。これらの条件は、保持リング半部同士を合わせてリングを形成する保持リング半部の内径に対応する寸法によって満たされ、この寸法は、ピッチ円に位置する内管の数に依存する。
・分離面は、ピッチ円上の少なくとも1つの内管長手方向軸を通ってさらに延びる。これにより、保持リング半部はすべての内管を包囲かつ全体を固定することができ、すべての内管が管支持プレートに対して溶接されると、溶接された管の配置から保持リング半部を外して除去することができる。
・保持手段は、それぞれ保持リング半部の周囲において、取外し可能に係合し、中心に向かって配向される星型形状に設けられる。
・保持手段の両側は、それぞれピッチ円上に配置された、隣接する内管に接する。
・保持手段は、必要に応じて、中心に対向するそれぞれ関連の端面によって中心に配置された1つの内管を固定し、それぞれ前記位置に取外し可能に固定される。
【0025】
上記特徴に従って設計された本発明に係る補助装置は、少なくとも2個の内管の配置をその内部に適切に受容する。
【0026】
第2形状嵌合部は、径方向において第1および第2保持リング半部同士を固定する。後述するように、保持リング半部は、軸方向に互いに固定される。第1および第2保持リング半部は、直径方向に互いに対向するように、その周囲に配置された接続手段、例えば接続ねじによって取外し可能に相互接続される。
【0027】
補助装置が閉位置にあり、必要な数の内管をこの位置に固定し、それらの内管が、本発明に係る製造方法により、割り当てられた管支持プレートに溶接可能となる場合、第2形状嵌合部で内管を固定する保持手段は、例えば固定ねじなどの固定手段によって、割り当てられた保持リング半部にそれぞれ固定される。
【0028】
特に好都合な管レイアウトパターンは、7個の内管が設けられ、1個の内管は、補助装置の中心と同軸に位置し、6個の内管は、ピッチ円の周囲に均等に分散するように配置され、分離面は、直径方向に対向する2個の内管を通ってさらに延びることを特徴とする。このような配置では、隣接する3個の内管の内管長手方向軸は、正三角形の頂点を形成する。すべての内管の外径が等しいので、結果として、隣接するすべての内管間の径方向の距離は等しくなる。このような境界条件下では、すべての内管への伝熱および熱伝達条件は概ね同じで、ピッチ円に位置する他の内管に対して中心の内管への特殊な流動条件は考慮されていない。
【0029】
それ自体公知であるように、管支持プレート内への部分的または完全な円周溶接の進行により、結果として内管の比較的小さい接続断面から管支持プレートの中実断面へと接続断面は非連続的になる。このような進行は、強度面から望ましくない。
【0030】
本発明に係る製造方法と、内管と管支持プレートとの間の溶接接続に用いられる本発明に係る補助装置とにより、本発明に提起された課題に係る製品間多管式熱変換器に用いられる複数の内管からなる管束の製造が可能となり、上記の望ましくない断面の進行が回避できる。これは、溶接接続が円周溶接として設計されるとともに、円周溶接の外側に径方向に離間した管支持プレートが、周方向かつ軸方向に延びる環状間隙の形状のプレート切欠きを含み、円周溶接に溶接される管支持プレートの厚さが、1つの管厚から2つの管厚の間の値となるように設計されることによって達成される。
【0031】
本発明において、内管と管支持プレートとの間の溶接接続方法は、本発明で提案される実施形態に記載の補助装置を使用して実施される。
【0032】
本発明に係る製造方法および本発明に係る補助装置は、製品間多管式熱交換器用の本発明に係る内管と管支持プレートとの間の本発明に係る溶接接続に基づく。前記溶接接続は、保健衛生上問題のある内管の外径と割り当てられたプレート内孔の内径との間の上記周囲環状間隙の形成を確実に防ぐ。
【0033】
本発明のさらなる目的は、本発明に係る溶接接続により製造された本発明に係る管を追加の設計の範囲内で最適化することにある。基本的に、本実施形態は、
・管内孔を有する内管が、内管長手方向軸に垂直な平面において内管と対向するプレート内孔を有する円盤状の管支持プレートの端面に接続され、
・管内孔およびプレート内孔が、等しい内径を有し、互いに整列されるように配向され、
・無溶接開始位置において、内管および管支持プレートが、径方向および軸方向のいずれにおいても有効な第1形状嵌合部により、それぞれ反対方向に互いに固定され、
・径方向内側から径方向外側へと単一経路で連続的にプレート内孔および管内孔から軌道に沿って円周溶接が実施され、
・円周溶接の溶接幅は、第1形状嵌合部の少なくとも1つの軸形状嵌合部の深さをカバーし、
・円周溶接は、内管側から見た場合、最大で軸形状嵌合部の深さの範囲において、溶接幅が管支持プレートに係合するように位置決めされることを特徴とする。
【0034】
内管側から見て、溶接幅が、最大で形状嵌合部の深さで管支持プレートと係合するように円周溶接を位置決めする場合、管支持プレートは、最大で形状嵌合部の深さまで内管の外径への差し込みまたはそれぞれドリルアウトが必要である。このような定量的設計により、内管の外径と円周溶接が適用されない管支持プレートの内孔との間に間隙は形成されない。形状嵌合部の深さに達しない差し込みにより、円周溶接の幅の一部が、管支持プレートの上流に配置された管領域へと移行する。
【0035】
別の公知の提案も、望ましくない断面進行を改善している。特に、機械的および/または熱負荷の変化における強度特性が向上する。前記提案では、管支持プレートに対して、管支持プレートから第1形状嵌合部までの上流軸形状嵌合部に相当する距離分、円周溶接が位置決めされる。上記領域にある管支持プレートに首部が1つの管厚から2つの管厚の間の厚さに形成される。
【0036】
さらに、本発明は、提案された任意の実施形態に従って溶接された少なくとも1つの管束を含む製品間多管式熱交換器の製造が可能である。
【0037】
本発明のさらに詳細な提示は、以下の詳細な説明、添付の図面ならびに特許請求の範囲で明らかにすることができる。本発明は、一般的なタイプの製造方法の様々な実施形態により実現される。さらに、本発明は、本発明に係る製造方法に用いられる本発明に係る補助装置の様々な実施形態により達成される。補助装置を用いて内管と管支持プレートとの間の溶接接続を製造する方法を使用して溶接された製品間多管式熱変換器の管束と、少なくとも1つの管束とを含む製品間熱交換器は、本発明の主題の一部を構成する。好ましい例示的な実施形態に基づき、製造方法、補助装置、管束、および製品間熱交換器について、図面を参照して以下に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】
図1は、先行技術に係る多管式熱変換器の概略図および透視図である。
【
図2a】
図2aは、複数の内管を備え、内管から離間した方向を向く管支持サポートの端面(前面)と内管に対向する管支持プレートの端面(後面)上の先行技術に係る管束の透視図である。
【
図3】
図3は、伝熱媒体を供給および排出するためのハウジングに統合された、先行技術による
図2aおよび
図2bに係る管束を通る子午線断面図である。
【
図4】
図4は、
先行技術に係る溶接ツールと連動した内管と管支持プレートとの間の第1溶接接続を通る子午線断面図である。
【
図4a】
図4aは、
図4に係る第1溶接接続の実施形態に対する
先行技術に係る第2代替実施形態の拡大図である。
【
図4b】
図4bは、
図4に係る第1溶接接続の実施形態に対する
先行技術に係る第3代替実施形態の拡大図である。
【
図5】
図5は、
本発明に係る第4実施形態の形態における溶接ツールと共に内管と管支持プレートとの間の本発明に係る溶接接続を通る子午線断面図である。
【
図6】
図6は、
先行技術による図4に係る第1溶接接続の実施形態に対する第5代替実施形態
を通る子午線断面図である。
【
図7】
図7は、7個の内管用の
本発明に係る管支持プレートの
一実施形態の透視図である。
【
図7a】
図7aは、
図7において「C-C」で示される断面線に沿った管支持プレートの子午線断面における透視図である。
【
図7b】
図7bは、
図7aに係る管支持プレートの子午線方向の断面図である。
【
図8】
図8は、
本発明に係る内管のない閉じた補助装置の全体図における透視図である。
【
図9】
図9は、内部に固定された内管を有する
図8に係る閉じた補助装置の全体図における透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1は、先行技術に係る多管式熱変換器100の例示的な実施形態を示す。一般的に、接続ベンド5を有する複数の管束10は、直列に流体接続されている。先行技術に係る管束10は、複数の内管16の組からなり(
図2aおよび
図2b参照)、これらの内管は、互いに平行に延出し、平行に流体接続され、第1および第2管支持プレート12、14の関連の各端部のそれぞれの内孔17を貫通する(
図3)。内管16は、上記プレートに支持され、管端部の外周において、対向する管支持プレート12、14の端面(前面)で溶接される。内管16の各組は、外管またはそれぞれシェル管(
図1および
図3)に配置される。製品、例えば食品は、内管16を通って搬送され、例えば水または蒸気などの、所謂伝熱媒体が外管15内の内管16の外側を流動する。また、
図2aおよび
図2bはそれぞれ、各内管16の外径と管支持プレート12、14内のそれぞれ割り当てられたプレート内孔17との間に形成された環状間隙Sを示す(
図3)。
【0040】
先行技術に係る公知の管束10(
図3-本明細書に関連の構成要素のみを示す。ドイツ特許第9403913U1号も参照。)は、中心部で途切れているが、外部経路15*を画定する外管15(またはそれぞれ外シェル)と、例示位置に基づき、固定された軸受の左側に配置された外管フランジ(図示せず)と、浮動軸受の右側に配置された外シェルフランジ(図示せず)とを含む。遊動軸受の外シェルフランジは、第2入口22を備える第1ハウジングに隣接し、固定軸受の外シェルフランジは、第2出口24を備える第2ハウジングに隣接する。外部経路15*を経由して外管15と軸方向に平行に延び、共に内部経路16*を形成するn個の内管16は、固定軸受の一部である左側の管支持プレート12の端部にそれぞれ支持されている。右側の管支持プレート14は浮動軸受の一部であり、円周溶接SNを介して管の外径上の内管16と対向するそれぞれ割り当てられた管支持プレート12、14の端面に溶接される。上記の配置全体が、第2ハウジングの開口部(他に識別されない場合)を介して外管15に挿入され、第1入口18を受容する固定軸受変換器フランジ経由でシールを介在させて、第2ハウジングと共に締められる。長手方向軸Rによって示される内管16は、内径Dの管内孔16aを含む。それぞれ回転軸Aを有する固定軸受側と浮動軸受側の管支持プレート12、14は、同軸に配置され、中心に内管16がある場合、その内管長手方向軸Rと同軸に延長する。浮動軸受側の管支持プレート14は、第1出口20を受容する浮動軸受接続片に接続される。
【0041】
多管式熱交換器100における関連の管束10の配置およびその回路構成に応じて、例示位置に基づき、熱処理対象の第1製品P1は、第1入口18経由で左側から右側に第1出口20に向けて、またはその逆方向に、内管16内を流動することができる。接続ベンド5を介して上記管束10と直列接続される、それぞれ隣接する管束10の場合、入口と出口の関係は、それに応じて逆になる。
【0042】
外部経路15*に、水または蒸気などの伝熱媒体を供給してもよい。所謂製品間熱交換器の場合、伝熱媒体が、第2製品P2となる。第2入口22から第2出口24へと、またはその反対方向に、外部経路15*の流動が発生してもよい。内管16および内部経路15*の流れの案内の向きに応じて、同じ方向あるいは反対方向の流れで熱交換が発生する。
【0043】
製品間熱交換の場合、
図2aおよび
図2bに関連して上述した環状間隙Sは、洗浄に関して問題となる。この場合、生産工程中に貫通する、第2製品P2は、過剰流量のCIPでのみ完全に洗浄できる。あるいは、特に困難な条件では、この方法では次の生産工程の前に十分な洗浄ができない。
溶接接続
【0044】
内管16と管支持プレート12、14との間の溶接接続が
図4に示すそれ自体公知の第1溶接接続に基づき設計される場合、
図2a、
図2bおよび
図3に開示の環状間隙Sは、除去される。第1溶接接続は、管内孔16aを有する内管16が、内管長手方向軸Rに垂直な平面において内管16と対向するプレート内孔17を有する円盤状の管支持プレート12、14のそれぞれの端面に接続されることを特徴とする、管内孔16aおよびプレート内孔17は、好ましくは等しい内径Dを有し、互いに整列されるように配向される。円周溶接36は、第1形状嵌合部F1の上流軸形状嵌合距離B2だけ管支持プレート12、14から離れた位置にあり、管支持プレート12、14の前記領域に、管厚dに対して首部が形成される。
【0045】
無溶接開始位置において、内管16および管支持プレート12、14は、径方向および軸方向のいずれにおいても有効な第1形状嵌合部F1により、それぞれ反対方向に互いに固定される。このため、管支持プレートの管状の首部は、内管長手方向軸Rと同軸に配向され、軸方向に軸形状嵌合部の深さB1を有し、同じ形状嵌合部の深さB1を有する管外凹部32の外側に同軸に係合するプレート内凹部26を含む。
【0046】
溶接ツール40は、内管長手方向軸Rの方向に、溶接36の予定適用位置までプレート内孔17に挿入され、プレート内孔17と管内孔16aに対して垂直に配向された溶接電極42の軌道運動Uにより円周溶接36を実施し、好ましくは、径方向の内側から外側へと単一経路で連続的に溶接を実施する。円周溶接36の溶接幅bは、少なくとも第1形状嵌合部F1の軸形状嵌合部の深さB1をカバーするように設計される。
【0047】
個々の溶接作業過程および一組の内管16と割り当てられた管支持プレート12、14に対するすべての溶接作業の溶接手順全体を通して、内管16および管支持プレート12、14は、押圧力PRにより互いに押圧される。
【0048】
内径D、管厚d、および内管長Lを有する内管16は細くかつ肉薄で、それぞれ厚さBを有する中実の管支持プレート12、14に溶接される。それぞれ特定の量的寸法は、管束10の大きさおよびその移送容量に左右されるため、以下の寸法比によってのみおおよそ定めることができる。
D/d>10;L/D>100andB/d>10
【0049】
先行技術に係る内孔16aを有する内管16と等しい径のプレート内孔17とを有する管支持プレート12、14との間の第2溶接接続を
図4aに示す。無溶接開始位置において、管厚dを有する内管16および管支持プレート12、14は、径方向および軸方向のいずれにおいても有効な第1形状嵌合F1により、反対方向に互いに固定される。このため、上流の軸形状嵌合距離B2を有する管支持プレート12、14の筒状首部は、プレート外凹部28を含み、これは、内管長手方向軸Rと同軸に配向され、凹部管厚aを有し、軸方向に軸形状嵌合部の深さB1を有し、同じ形状嵌合部の深さB1を有する管内凹部30内に同軸に係合する。
【0050】
先行技術に係る管内孔16aを有する内管16と等しい径のプレート内孔17を有する管支持プレート12、14との間の第3溶接接続を
図4bに示す。ここで、第1形状嵌合部F1を形成するため、軸形状嵌合部の深さB1で全管厚dの外側周囲に同軸状に係合するプレート内凹部26は、管支持プレート12、14の首部の位置のみに存在する。上流軸形状嵌合距離B2にわたり延出している首部の径方向の厚さの寸法は、凹部の管厚aだけ管厚dを越えている。
【0051】
図4、
図4a、および
図4bの第1から第3溶接接続はそれぞれ、管支持プレート12、14に対して円周溶接36が、第1形状嵌合部F1の上流軸形状部の距離だけ管支持プレート12、14から離れた位置にあり、この領域内において、管支持プレート12、14に、首部が1つの管厚dから2つの管厚dの間の厚さに形成されることを特徴とする。
【0052】
本発明に係る第4溶接接続(
図5)および
先行技術に係る第5溶接接続(
図6)において、内管16の管内孔16aは、管支持プレート12、14のプレート内孔17と等しい内径Dを有し、第1形状嵌合部F1を形成するため、内管16は、管厚d全体および軸形状嵌合部の深さB1にわたり、管支持プレート12、14の端面に直接係合される。
【0053】
図6に係る実施形態では、プレート内凹部26の軸形状嵌合部の深さB1は、内管16側から見て、所望溶接幅bが軸形状嵌合部の深さB1を完全にカバーし、管支持プレート12、13と完全に係合するように寸法設定される。このような状況は、内管16側から見たときに、溶接幅bが最大で軸形状嵌合部の深さだけ管支持プレート12、14に係合するように円周溶接36が位置決めされた場合に発生する。
【0054】
図5に係る実施形態では、円周溶接36の所望溶接幅bの一部のみが管支持プレート12、14内に存在し、残りは外側に露出した内管16の一部をカバーするようにプレート内凹部26の軸形状嵌合部の深さB1が寸法設定される。
【0055】
溶接対象の管厚の非連続性、および本実施形態では横断面の突然の変化を防止するために、
図5に示す
本発明に係る第4溶接接続は、
図6に示す
先行技術に係る第5溶接接続に対してさらに改変されたものである。具体的には、円周溶接36の外側に径方向に離間した管支持プレート12、14は、環状間隙形状の軸方向に延長するプレート切欠き34を備える。溶接36からの径方向の距離および径方向の幅に関して、前記切欠きは、管支持プレート12、14の円周溶接が施される部分の厚さが1つの管厚dから2つの管厚d(
図7a、
図7bも参照)の間の値をとるように設計されている。
方法
【0056】
図4、
図4a、
図4b、
図5および
図6に記載の第1から第5溶接接続の実施形態は、本発明に係る補助装置50(
図8、
図9および
図10)により、本発明に係る製造方法を用いて目的に従って実施される。本製造方法は、管支持プレート12、14により、2個以上の内孔17を画定することによって平行に配置された対応する内管16の配置が管レイアウトパターンM(
図7)として設定されることから進行する。管支持プレート12、14の関連の回転軸Aのプレート軸は、必ずしも内管16によって占有されなくてもよい。可能な単一のピッチ円T(
図10;複数のピッチ円配置は、提案した補助装置50では成立しない。)が、所望伝熱条件(内管16間の所望距離)下で配置される内管16を受容できない場合、内管16の個数が制限される。
【0057】
補助装置50は、管レイアウトパターンMに基づき、所望数n個の内管16すべてを、管支持プレート12、14に関連する第1形状嵌合部F1において、第2形状嵌合部F2(
図9および
図10)によってそれぞれ堅固に固定する。すべての内管16の溶接作業時間を通して、管支持プレート12、14は内管長手方向軸R(
図9;管支持プレート12、14は図示せず)方向の押圧力PRにより内管16に対して押圧され、内管16は管支持プレート12、14に対して順次溶接される。
【0058】
この点に関して、好都合な溶接手順は、最初に中心に1個の内管16、次にその中心内管16の周りのピッチ円Tに配置された外側の内管16が備えられると想定した場合、その逆順に内管が管支持プレート12、14に溶接されることを提供する。
補助装置
【0059】
本発明に係る補助装置50(
図8、
図9および
図10)により、以下のように設計された溶接接続が可能となる。
・管内孔16aを有する内管16は、内管長手方向軸Rに垂直な平面において内管16と対向するプレート内孔17を有する円盤状の管支持プレート12、14の端面に接続される。
・管内孔16aおよびプレート内孔17は、等しい内径Dを有し、互いに整列されるように配向される。
・無溶接開始位置において、内管16および管支持プレート12、14は、径方向および軸方向のいずれにおいても有効な第1形状嵌合部F1により、それぞれ反対方向に互いに固定される。
・径方向内側から径方向外側へと単一経路で連続的にプレート内孔および管内孔17、16aから軌道に沿って円周溶接36が実施される。
・円周溶接36の溶接幅bは、第1形状嵌合部F1の少なくとも1つの軸形状嵌合部の深さB1をカバーする。
【0060】
補助装置50は、第1および第2保持リング半部50.1、50.2からなり、これらを接合することで閉じたリングが形成される。保持リング半部50.1、50.2は、補助装置50の中心Zを通って延出する分離面Eで接触して、分離面Eにおいて、保持リング半部50.1、50.2は、分離面外形50.1aと分離面外形50.2a(
図8および
図10)とを介して変位不可能な第2形状嵌合部F2をそれぞれ形成する。
【0061】
好ましくは、第2形状嵌合部F2は、第1および第2保持リング半部50.1、50.2を径方向に固定する。第1および第2保持リング半部50.1、50.2は、その周囲に配置された接続手段56、例えば接続ねじによって取外し可能に簡便に相互接続され、直径方向に対向するように配置される。その結果、径方向に配向された第2形状嵌合部F2はさらに固定され、保持リング半部50.1、50.2が軸方向に互いに変位することを防止する。
【0062】
管支持プレート12、14は、それらに設けられた2つ以上のプレート内孔17を画定することによって、互いに平行に配置された内管16の配置のための管レイアウトパターンMを設定する(
図7、
図7aおよび
図7b)。好ましくは、単一ピッチ円Tの周囲に均等に分散するように配置された内管16が、それぞれ最大で保持リング半部50.1、50.2(
図10)の半分に包囲されるように、管レイアウトパターンMが保持リング半部50.1、50.2で再現される。ここで、関連の包囲外形の開口部は、補助装置50の中心Zに対して対向する。分離面Eは、ピッチ円T上の内管16の少なくとも1つの内管長手方向軸Rを通ってさらに延びる。保持手段52は、好ましくは、例えば円筒状の保持ボルトであり、保持リング半部50.1、50.2に係合してその周囲の保持リング長手方向軸rの方向に変位可能とし、保持手段長手方向軸rに対して中心Zに向かって星型形状に設けられる。保持手段52は、それぞれの両側がピッチ円Tに配置された隣接する内管16に接している。さらに、必要に応じて、保持手段52は、中心Zに対向するそれぞれの端面によって中心Zに配置された内管16を、前記位置に取外し可能に固定する(
図10)。保持手段52は、好ましくは止めねじなどの固定手段54によって保持リング半部50.1、50.2にそれぞれ堅固に固定されることが好ましい。
【0063】
図7、
図7aおよび
図7bに係る特に好都合な管レイアウトの例示的な実施形態では、7個のプレート内孔17が設けられている。プレート内孔17は、管支持プレート12、14のプレート回転軸Aと同軸であり、6個のプレート内孔17は、ピッチ円Tの周囲に均等に分散するように配置される(
図8、9および10)。この場合、分離面Eは、2つの内管16、または直径方向に互いに対向するように配置されたプレート内孔17を通ってさらに延びる(
図10)。
【0064】
上述の方法とは別に、補助装置50内の内管16を保持手段52により固定してもよい。例えば、管支持プレート12、14から離れている補助装置50側から、内管16間に、環状で取外し可能かつ分離可能な補助装置50へと軸方向に挿入可能であり、前記内管16を互いに堅固に固定可能な、変位可能かつ固定可能な成型部品が使用される。第2形状嵌合部F2によって溶接手順中に内管16の組を互いに固定し、第1形状嵌合部F1内の内管16全体を、管支持プレート12、14に対して調節し、押圧力PRによって管支持プレートに対して前記内管を押圧する任意の補助装置50は、製品間多管式交換器100用の管束10を構成する内管16と管支持プレート12、14との間の溶接接続のための本発明に係る製造方法を実施することができる。
管束
【0065】
本発明はまた、先行技術の基本設計において公知であり、図2aおよび図2bと共に図3に例示の製品間多管式熱交換器用の管束10を述べる。このような公知の設計とは対照的に、請求項1または2に記載の内管16と管キャリアプレート12、14との間の溶接接続を製造する方法により、管束10が前記領域に溶接され、問題となる環状間隙Sの形成が防止される。溶接接続は、円周溶接36として設計され、円周溶接36の外側の径方向に離間した管支持プレート12、14は、環状間隙の形状で、周方向かつ軸方向に延びる切欠き34を含む。円周溶接36に溶接される管支持プレート12、14の厚さが、1つの管厚dから2つの管厚dの間の値となるように、切欠き34が設計されている。
【0066】
本発明はまた、先行技術の基本設計において公知であり、
図2aおよび
図2bと共に
図3に例示の製品間多管式熱交換器100用の管束10を述べる。
【0067】
このような公知の設計とは対照的に、請求項3~7のいずれか一項に記載の補助装置50によって内管16と管支持プレート12、14との間の溶接接続を製造する方法により、前記領域に管束10が実施され、問題となる環状間隙Sの形成が防止される。
【0068】
請求項9に係る補助装置50により実施される、請求項8に記載の内管16と管支持プレート12、14との間の溶接接続を製造する方法を用いて溶接される管束10は、
・管内孔16aを有する内管16が、内管長手方向軸Rに垂直な平面において内管16と対向するプレート内孔17を有する円盤状の管支持プレート12、14の端面に接続され、
・管内孔16aおよびプレート内孔17が、等しい内径Dを有し、互いに整列されるように配向され、
・無溶接開始位置において、内管16および管支持プレート12、14が、径方向および軸方向のいずれにおいても有効な第1形状嵌合部F1により、それぞれ反対方向に互いに固定され、
・径方向内側から径方向外側へと単一経路で連続的にプレート内孔および管内孔17、16aから軌道に沿って円周溶接36が実施され、
・円周溶接36の溶接幅bが、第1形状嵌合部F1の少なくとも1つの軸形状嵌合部の深さB1をカバーし、
・円周溶接36が、内管16側から見た場合、最大で軸形状嵌合部の深さB1の範囲において、溶接幅bが管支持プレート12、14に係合するように位置決めされるように設計される溶接接続を含む。
【0069】
本発明はまた、先行技術の基本設計において公知であり、
図2aおよび
図2bと共に
図3に例示の少なくとも1つの管束10を含む製品間多管式熱交換器を述べる。このような公知の設計とは対照的に、
請求項8~10のいずれか一項に記載の前記領域に管束10が溶接され、問題となる環状間隙Sの形成が防止される。
【符号の説明】
【0070】
100 多管式熱変換器
5 接続ベンド
10 管束
12 第1管支持プレート
14 第2管支持プレート
15 外管(シェル管)
15* 外部経路
16 内管
16a 管内孔
16* 内部経路
17 プレート内孔
18 第1入口
20 第1出口
22 第2入口
24 第2出口
26 プレート内凹部
28 プレート外凹部
30 管内凹部
32 管外凹部
34 プレート切欠き
36 円周溶接
40 溶接ツール
42 溶接電極
50 補助装置
50.1 第1保持リング半部
50.1a 分離面外形
50.2 第2保持リング半部
50.2a 分離面反対外形
52保持手段(ボルト)
54 固定手段(ねじ)
56 接続手段(ねじ)
A プレートの回転軸
B プレートの厚さ
B1 軸形状嵌合部の深さ
B2 上流軸形状嵌合距離
D 内径
E 分離面
F1 第1形状嵌合部
F2 第2形状嵌合部
L 内管長
M 管レイアウトパターン
P1 第1製品
P2 第2製品
PR 押圧力
R 内管長手方向軸
S 環状間隙
SN 円周溶接
T ピッチ円
U 軌道運動
Z 中心
a 凹部管厚
b 溶接幅
d 管厚
n 数(内管、内孔)
r 保持リング長手方向軸
D/d>10 内管16の管の内径Dと管厚dとの比
L/D>100 内管長と内管16の管の内径Dとの比
B/d>100 プレートの厚さBと管厚dとの比