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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】マルチセル対応蓄電装置の電源管理回路
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20240822BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20240822BHJP
【FI】
H02J7/00 302B
H02J7/02 H
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2022567187
(86)(22)【出願日】2020-05-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-04
(86)【国際出願番号】 US2020031341
(87)【国際公開番号】W WO2021225576
(87)【国際公開日】2021-11-11
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】502208397
【氏名又は名称】グーグル エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Google LLC
【住所又は居所原語表記】1600 Amphitheatre Parkway 94043 Mountain View, CA U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フェイ,チャオ
(72)【発明者】
【氏名】オスターハウト,ダグラス
(72)【発明者】
【氏名】ラクシュミカンタン,スリカンス
【審査官】対馬 英明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0020621(US,A1)
【文献】国際公開第2013/048539(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/100035(WO,A1)
【文献】特開平07-322516(JP,A)
【文献】特開2019-030180(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
折りたたみ式デバイスであって、
第1部分と、
第2部分とを備え、前記折りたたみ式デバイスが軸に沿って折りたたまれたとき前記第1部分は前記第2部分の少なくとも一部を覆い、前記折りたたみ式デバイスはさらに、
前記第1部分の内部に収納された第1蓄電装置と、
前記第1蓄電装置と直列接続された第2蓄電装置とを備え、前記第2蓄電装置は前記第2部分の内部に収納され、前記第1蓄電装置の蓄電容量は、前記第2蓄電装置とは異なり前記折りたたみ式デバイスはさらに、
第1組の部品に電力を供給するための第1電力信号を、前記第1蓄電装置および前記第2蓄電装置から供給される電気エネルギーを用いて生成するように構成された第1パワーコンバータと、
第2組の部品に電力を供給するための第2電力信号を、前記第2蓄電装置ではなく前記第1蓄電装置から供給される電気エネルギーを用いて生成するように構成された第2パワーコンバータと
前記第1蓄電装置と前記第2蓄電装置とに接続され、前記第1蓄電装置と前記第2蓄電装置との間でエネルギーを転送するように構成されたアクティブ平衡回路とを備える、折りたたみ式デバイス。
【請求項2】
前記アクティブ平衡回路は、前記第1蓄電装置と前記第2蓄電装置との間で前記エネルギーを転送するように構成された第3パワーコンバータを少なくとも含む、請求項に記載の折りたたみ式デバイス。
【請求項3】
前記第1蓄電装置と前記第2蓄電装置との間で前記エネルギーを転送するように構成された第4パワーコンバータをさらに備え、前記第3パワーコンバータおよび前記第4パワーコンバータの各々は、DC/DCパワーコンバータを含む、請求項に記載の折りたたみ式デバイス。
【請求項4】
前記第3パワーコンバータは、前記第2蓄電装置から前記第1蓄電装置に前記エネルギーを転送するためのバックコンバータとして動作するように構成される、請求項に記載の折りたたみ式デバイス。
【請求項5】
前記第1蓄電装置と前記第2蓄電装置との間で前記エネルギーを転送するように構成された第4パワーコンバータをさらに備え、前記第4パワーコンバータは、前記第1蓄電装置から前記第2蓄電装置に前記エネルギーを転送するためのブーストコンバータとして動作するように構成される、請求項2または4に記載の折りたたみ式デバイス。
【請求項6】
前記折りたたみ式デバイスは、前記第2蓄電装置と前記アクティブ平衡回路とに接続された充電器をさらに備え、前記充電器は、前記第1蓄電装置および前記第2蓄電装置にエネルギーを転送するように構成される、請求項2~5のいずれか1項に記載の折りたたみ式デバイス。
【請求項7】
前記充電器が前記エネルギーを転送することは、前記第3パワーコンバータが、前記充電器から前記第1蓄電装置への電圧に変更を加えることを含む、請求項6に記載の折りたたみ式デバイス。
【請求項8】
前記第1蓄電装置は、X mAhの容量を有し、
前記第2蓄電装置は、Y mAhの容量を有し、
前記充電器は、(X+Y)/2 mAの出力電流能力を有するように設計され、
前記アクティブ平衡回路は、|X-Y|/2 mAの電流平衡能力を有するように設計される、請求項6または7に記載の折りたたみ式デバイス。
【請求項9】
前記第1組の部品は、通常、前記第2組の部品よりも多くの電力を消費する、請求項1~のいずれか1項に記載の折りたたみ式デバイス。
【請求項10】
前記第1組の部品は、ディスプレイを含み、
前記第2組の部品は、プロセッサを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の折りたたみ式デバイス。
【請求項11】
第1パワーコンバータが、第1蓄電装置および第2蓄電装置から供給される電気エネルギーを用いて、第1組の部品に電力を供給するための第1電力信号を生成するステップと、
第2パワーコンバータが、前記第2蓄電装置ではなく前記第1蓄電装置から供給される電気エネルギーを用いて、第2組の部品に電力を供給するための第2電力信号を生成するステップと
前記第1蓄電装置と前記第2蓄電装置とに接続されたアクティブ平衡回路が、前記第1蓄電装置と前記第2蓄電装置との間でエネルギーを転送するステップとを含み、
前記第1蓄電装置の蓄電容量は、前記第2蓄電装置とは異なり、
前記第1蓄電装置は、折りたたみ式デバイスの第1部分の内部に収納され、前記第2蓄電装置は、前記折りたたみ式デバイスの第2部分の内部に収納され、前記折りたたみ式デバイスが軸に沿って折りたたまれたとき前記第1部分は前記第2部分の少なくとも一部を覆う、方法。
【請求項12】
前記アクティブ平衡回路は、第3パワーコンバータを少なくとも含み、前記転送するステップは、前記第3パワーコンバータが、前記第2蓄電装置に供給される前記第1蓄電装置からの電圧に変更を加えるステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記アクティブ平衡回路は、第4パワーコンバータをさらに含み、前記転送するステップは、前記第4パワーコンバータが、前記第1蓄電装置に供給される前記第2蓄電装置からの電圧に変更を加えるステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記エネルギーを転送するステップは、前記第3パワーコンバータを、前記第2蓄電装置から前記第1蓄電装置に前記エネルギーを転送するためのバックコンバータとして動作させるステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記エネルギーを転送するステップは、前記第4パワーコンバータを、前記第1蓄電装置から前記第2蓄電装置に前記エネルギーを転送するためのブーストコンバータとして動作させるステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記第2蓄電装置と前記アクティブ平衡回路とに接続された充電器が、前記第1蓄電装置および前記第2蓄電装置にエネルギーを転送するステップをさらに含む、請求項12~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記充電器が前記エネルギーを転送するステップは、前記第3パワーコンバータが、前記充電器から前記第1蓄電装置への電圧に変更を加えるステップを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1蓄電装置は、X mAhの容量を有し、
前記第2蓄電装置は、Y mAhの容量を有し、
前記充電器は、(X+Y)/2 mAの出力電流能力を有するように設計され、
前記アクティブ平衡回路は、|X-Y|/2 mAの電流平衡能力を有するように設計される、請求項16または17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
ポータブル電子装置(たとえば、携帯電話、折りたたみ式電話、ラップトップコンピュータなど)のディスプレイは、ますます大きくなっている。ディスプレイは、サイズが大きくなると、その他の部品(たとえば、カメラ、プロセッサなど)と比較してポータブル電子装置の大量の電力を消費してしまう場合がある。ディスプレイが大きくなったことで電力消費が増えると、特に再充電用電源が近くになかったり都合が付かなかったりした場合、ポータブル電子装置のユーザビリティが低下してしまう可能性がある。大容量バッテリー(たとえば、より多くのセルを有するまたはアンペア数がより高い)を特徴とするポータブル電子装置もあるが、このようなバッテリーは重量を増やしてしまう可能性があるので、ポータブル電子装置のポータビリティを低下させてしまう。さらには、マルチセル対応バッテリーの場合、マルチセル対応バッテリー間のエネルギー蓄積を平衡にするために電源管理回路を追加する必要がある可能性があり、アンペア時(バッテリセルが動作できる期間に等しい)の点でマルチセル対応バッテリーの効率を低下させてしまう可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
概要
開示する主題の実施例によると、電源管理回路は、マルチセル対応蓄電装置を有するデバイスにおけるシステム電力、電源管理および蓄電装置の充電機能を提供し得る。マルチセル対応蓄電装置は、同じエネルギー蓄積容量または異なるエネルギー蓄積容量の直列接続された2つ以上の蓄電装置(マルチセル対応蓄電装置の各セルを指す場合がある)を備え得る。電源管理回路は、マルチセル対応蓄電装置の各セル間で(たとえば、パッシブ平衡回路と比較して)効率よくエネルギーを転送するためのアクティブ平衡回路を備え得ることにより、蓄電セルが動作できる期間を改善する。効率を向上させることがより長い動作期間につながり、マルチセル対応蓄電装置を折りたたみ式モバイル機器やタブレット端末などフォームファクターが小さいデバイス(ラップトップコンピュータなどと比較して)に適するようにすることができるであろう。
【0003】
アクティブ平衡回路に加えて、ディスプレイおよびカメラなど、(消費電力が低い電子部品に比べて)消費電力が高い電子部品は、直列に結合された2つ以上の蓄電装置(すなわち、複数のセル)の合成出力に接続され得る。プロセッサおよびアンテナなど、(消費電力が高い電子部品に比べて)消費電力が低い電子部品は、複数の蓄電セルのうち、出力が低い可能性がある蓄電セル(または、すべての蓄電セルではない一部の蓄電セル)の出力に電気的に接続され得る。消費電力が低い電子部品が低電力の蓄電装置からの電力を消費すると、所望のセル容量の割合が実現されるであろう。消費電力が高い電子部品は、低電力の蓄電装置および比較的高電力の蓄電装置の両方からの電力を消費してもよく、これにより、消費電力が少ない電子部品の動作効率に影響を与えてしまう恐れなく、消費電力が高い電子部品の動作効率(たとえば、電力消費の点で)を改善できるであろう。
【0004】
一例では、本技術の様々な態様は、直列接続された第1蓄電装置と第2蓄電装置とを有するデバイスを対象とする。第1パワーコンバータは、第1組の部品に電力を供給するための第1電力信号を、第1蓄電装置および第2蓄電装置から供給される電気エネルギーを用いて生成してもよい。第2パワーコンバータは、第2組の部品に電力を供給するための第2電力信号を、第2蓄電装置ではなく第1蓄電装置から供給される電気エネルギーを用いて生成してもよい。
【0005】
別の例では、本技術の様々な態様は、第1パワーコンバータが、第1組の部品に電力を供給するための第1電力信号を、第1蓄電装置および第2蓄電装置から供給される電気エネルギーを用いて生成し、第2パワーコンバータが、第2組の部品に電力を供給するための第2電力信号を、第2蓄電装置ではなく第1蓄電装置から供給される電気エネルギーを用いて生成し、そして、第1蓄電装置および第2蓄電装置に並列接続されるアクティブ平衡回路が、第1蓄電装置と第2蓄電装置との間でエネルギーを転送するための方法を対象とする。
【0006】
別の例では、本技術の様々な態様は、第1蓄電装置に並列接続される第1パワーコンバータと、第2蓄電装置に並列接続される第2パワーコンバータとを有する電源管理回路を対象とする。第1パワーコンバータおよび第2パワーコンバータは、第1蓄電装置と第2蓄電装置との間でエネルギーを転送するように構成される。第1蓄電装置は、第2蓄電装置に直列接続される。
【0007】
本開示の主題のその他の特徴、利点、および実施の形態は、以下の詳細な説明、添付の図面および特許請求の範囲を考慮して説明されるまたは明らかになるであろう。また、上記概要および以下の詳細な説明は、いずれも例示であって、特許請求の範囲を限定することなくさらに詳しい説明を提供する意図であることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の実施例に係る折りたたみ式モバイル機器を表現したものを示すブロック図である。
図2】本開示の実施例に係るディスプレイ電力蓄電装置および充電電力蓄電装置のパワーアーキテクチャ回路の概略を示す図である。
図3】本開示の実施例に係るアクティブ平衡回路を有するパワーアーキテクチャ回路の概略を示す図である。
図4】本開示の実施例に係る、2つ以上の蓄電装置の間でのアクティブ電荷平衡法の例示的な動作を示すフロー図である。
図5】本開示の実施例に係る充電器に結合されたアクティブ平衡回路を有するパワーアーキテクチャ回路の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
詳細な説明
図1は、本開示において説明する本技術の様々な態様に係る折りたたみ式モバイル機器100を表現したものを示すブロック図である。折りたたみ式モバイル機器100は、軸104に沿って(軸の中心に沿うまたは軸の中心から外れて沿う場合も含む)折りたたみ可能な任意の種類のデバイスを表し得る。折りたたみ式モバイル機器100について説明するが、2つ以上の蓄電装置によって電力が供給されることが可能な任意の種類のデバイスが、本開示において説明する技術に従って構成されてもよい。このようなデバイスとして、携帯電話(所謂、「スマートフォン」を含む)、スマートグラス、スマートウォッチ、ポータブルスピーカー(ポータブルスマートスピーカーを含む)、ラップトップコンピュータ、ポータブルゲームシステム、ワイヤレスゲームシステムコントローラなどが挙げられ得る。
【0010】
折りたたみ式モバイル機器100は、ヒンジを有するまたは軸104に沿って折りたたむことを可能にするその他の要素を有する筐体102を備え得、第1の半分106Aと第2の半分106Bとを有する。筐体102は、金属(アルミニウムを含む)、プラスチック(ほとんどすべてのポリマーを含む)、硝材、炭素繊維など、ほとんどすべての素材から形成され得、これに加えて、第1の半分106Aの素材が第2の半分106Bと異なるまたは同じ素材の複数の素材の組合せからも形成され得る。「半分」で説明しているが、折りたたみ式モバイル機器100の第1部分と第2部分は不均等であってもよく、そうでない場合、ほぼ(製造公差内で)同じ大きさであってもよい。このように、いくつかの例では、第1の半分106Aは、第2の半分106Bとは異なる大きさであってもよく、この場合、第1の半分106Aは、軸104に沿って折りたたまれた場合、(第2の半分106Bのほぼ全体を覆うのではなく)第2の半分106Bの一部のみを覆い得る。
【0011】
折りたたみ式モバイル機器100は、処理回路108、ディスプレイ110、ならびに、GPS(Global Positioning System)電子機器、加速度計、ジャイロスコープ、オーディオ処理回路(たとえば、ヘッドホンジャックおよびそれに付随する回路)、1つ以上のスピーカー、1つ以上のLED(発光ダイオード)、1つ以上のカメラなど、その他の構成要素および/または回路(説明を容易にするために図1の例では図示せず)を備え得る。
【0012】
処理回路108は、折りたたみ式モバイル機器100の動作をサポートするように構成された回路を表し得、ユーザによって利用される様々な機能を提示するための階層化されたソフトウェアレイヤーの実行を可能にし得るソフトウェア(すなわち、一連の命令)を実行し得る。処理回路108は、たとえば、オペレーティングシステムがカメラ、マイクロフォン、センサーなど様々なその他の処理装置と接続するためのベースレイヤーを形成するカーネルを実行すし得る。また、処理回路108は、ユーザとやり取りするためのグラフィカルユーザーインタフェースを提示するために1つ以上のアプリケーション(たとえば、当事者のアプリケーションおよび/またはサードパーティのアプリケーション)が動作し得るアプリケーション空間を提示するオペレーティングシステムを実行し得る。
【0013】
処理回路108は、マイクロプロセッサ、コントローラ、DSP(Digital Signal Processor)、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、または同等の離散論理回路もしくは集積論理回路のうち、1つ以上を含み得る。本開示における処理回路108に起因する機能は、(上記のような)ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、およびそれらの組合せとして具体化され得る。図1の例示的な折りたたみ式モバイル機器100は1つの処理回路108を備えると示されているが、本開示に係るその他の例示的な折りたたみ式モバイル機器は、折りたたみ式モバイル機器100の処理回路108に起因する1つ以上の機能を個別にまたはそれぞれ異なる協調的組合せで実行するように構成された複数のプロセッサ(または、複数の所謂「コア」を備えてもよい。これらは、まとめてパッケージ化された場合は複数のプロセッサとも称される)を備え得る。
【0014】
ディスプレイ110は、画素アレイを介して光を出射することにより1つの画像または一連の画像(たとえば、映像)を出力するように構成されたデバイスを表し得る。ディスプレイ110は、LCD(液晶ディスプレイ)、ドットマトリックスディスプレイ、LED(発光ダイオード)ディスプレイ、OLED(有機発光ダイオード)ディスプレイ、タッチスクリーン、e-ink、または、折りたたみ式モバイル機器100のユーザに視覚的情報を提供可能な同様のモノクロディスプレイもしくはカラーディスプレイ、のうち1つ以上を含み得る。ディスプレイ110は、折りたたみ式モバイル機器100が提供する機能に関するユーザーインタフェースを提供し得る。ディスプレイ110は、ディスプレイ110が提示するグラフィカルユーザーインタフェースとのやり取りを可能にし得る存在感知ディスプレイおよび/またはタッチセンサー式ディスプレイを含み得る。
【0015】
1つのディスプレイ110として図示しているが、ディスプレイ110は、1つ以上のディスプレイを表し得る。いくつかの例では、ディスプレイ110は、軸104に沿って折りたたみ可能な1つのディスプレイを表し得る。その他の例では、ディスプレイ110は、2つのディスプレイを表し得、1つのディスプレイが半分106A内に収容され、別のディスプレイが半分106B内に収容される。デバイス100に1つ以上のディスプレイが備えられている場合、これらのディスプレイの各々は、連続したユーザーインタフェースまたはそれぞれ別個のユーザーインタフェースを提示するように動作し得る。このように、本技術の様々な態様は、折りたたみ式モバイル機器100が1つのディスプレイまたは複数のディスプレイで動作することを可能にし得る。
【0016】
また、折りたたみ式モバイル機器100は、ディスプレイ電力管理回路111を備え得る。ディスプレイ電力管理回路111は、ディスプレイ110による電力消費を管理するように構成された回路を表し得る。すなわち、ディスプレイ110は、特に最大輝度で動作している時、通常、処理回路108よりも多くの電力を消費し得る。このように、ディスプレイ電力管理回路111は、現在視聴中のコンテキストに適応するようにディスプレイ110の輝度、解像度、コントラスト、またはその他のパラメータを合わせることによってディスプレイ110の電力消費を減らすよう試み得る。たとえば、明るい視聴環境(たとえば、直射日光を浴びる外にいる時)では、ディスプレイ電力管理回路111は、暗い視聴環境(たとえば、直射日光を浴びない暗い部屋にいる時または夜など)よりも高い輝度にディスプレイ110を構成し得る。ディスプレイ電力管理回路111は、その他のパラメータを同様に合わせ得る。
【0017】
また、折りたたみ式モバイル機器100は、蓄電装置112Aと蓄電装置112Bとを備え得る。蓄電装置112Aは、電源(コンセントを介して利用可能な固定電源、および、一例として、ワット数が高いバッテリーから構成されるパワーバンクなどのポータブル電源を含む)を介して充電可能であり、電源から切断されるとエネルギーを蓄積可能な任意の種類の電気装置を表し得る。蓄電装置112Aの一例は、リチウムイオン電池、ニッケルカドミウムバッテリなどのバッテリー、または、ニッケル水素電池、鉛蓄電池もしくはリチウムイオンポリマー二次電池などのその他の種類の二次電池である。
【0018】
蓄電装置112Bは、蓄電装置112Aと同様であり得るが、ワット数、(アンペア時またはmAhで規定される)蓄電容量、大きさ、構成などが異なり得、このようなばらつきは、本明細書において、非対称と称する。蓄電装置112Aおよび蓄電装置112Bは、以下、バッテリー112Aおよび112B、バッテリセル112Aおよび112B、またはセル112Aおよび112Bと称され得る。バッテリー112Aおよび112Bと称するが、折りたたみ式モバイル機器100または本開示の全体を通して説明するその他のデバイスのすべてに電力を供給可能な任意の種類の蓄電装置に関して本技術の様々な態様が実装され得る。
【0019】
ラップトップコンピュータ(「ラップトップ」と称される場合もある)など、マルチセル対応バッテリーを有するデバイスでは、ラップトップまたはその他のマルチセル対応デバイスが2つの端子からのすべての電気負荷を駆動し得、ここで、マルチセルバッテリの各セルは直列に配置され、第1端子は第1セルに結合され、第2端子は第2セルに結合されている。セルが直列に配置されているので、第1セルが第2セルに結合されることにより、第1セルと第2セルに電気が流れて、電気負荷(電気部品とも称され得る)を駆動できるようになっている。
【0020】
また、マルチセル対応デバイスは、パッシブ平衡回路を備え得る。パッシブ平衡回路は、バッテリーの各セルへの電力配分を管理して特定のセル公差(cell tolerance)を超えないように徹底させる。すなわち、マルチセルバッテリの各セルには、バッテリセルが充放電可能である指定のチャージレート(charge rate)がある。たとえば、1Cのチャージレートは、定格が1アンペア時(1Ah)の満充電状態のバッテリーは1アンペア(1A)を1時間提供することを示す。同じ1Ahバッテリーは、0.5Cのチャージレートで500ミリアンペア(mA)を2時間提供し、2Cのチャージレートで2アンペアを30分間提供する。バッテリセルを充電またはそうでない場合再充電(reenergize)するときに指定のチャージレートを超えると、バッテリーを破損してしまう可能性があるので、火災リスク(化学電池の場合)、皮膚のやけど(ここでも化学電池の場合)などの可能性を生じさせてしまう。パッシブ平衡回路は、バッテリーのセル間の電力の平衡を取ることによって、それぞれのバッテリセルのチャージレートを超えないように徹底させ得る。
【0021】
それぞれのバッテリセルのチャージレートおよび電圧が同じである場合は必ずしも必要ではないが、ラップトップまたはその他のマルチセル対応デバイスは、製造公差の結果としてばらつきがあり得るので、異なるバッテリセル間で電圧を平衡にするように構成されたパッシブ平衡回路をやはり備え得る。パッシブ平衡回路は、(直列に結合された場合)バッテリセルの各々に対してスイッチを備え得る。ここで、パッシブ平衡回路は、2つのバッテリセルのうち電圧が高い方のバッテリセルに対応付けられたスイッチを閉じて、抵抗器(または、その他の負荷)によって当該高い方の電圧を放電し得る。
【0022】
スマートフォンまたはその他の(ラップトップコンピュータと比べて)小型モバイル機器のサイズが大きくなっているので、ディスプレイ110のサイズも大きくなっており、電力消費がさらに増えてしまっている。処理回路108または折りたたみ式モバイル機器100内のその他の部品と相対的に比較した割合として、ディスプレイ110は、電力消費の最大の原因の1つを表し得、最大でない場合、電力消費の原因の1つを表し得る。これに加えて、折りたたみ式モバイル機器100が小型~中型のタブレット端末の大きさに達する大きさまで広げられる場合、ディスプレイ110は、バッテリセル112Aおよび112Bの利用可能な電力容量のうちかなりの部分(たとえば、最大輝度で50%)を消費してしまうであろう。
【0023】
折りたたみ式モバイル機器100の使用期間を増やすために、折りたたみ式モバイル機器100は、2つのバッテリセル112Aおよび112Bを利用し得る。さらには、折りたたみ式モバイル機器100の折りたたみ可能なフォームファクターにより、バッテリセル112Aおよび112Bのうち1つを半分106Aおよび106Bの各々に収容できる十分なスペースが折りたたみ式モバイル機器100内にある。バッテリセル112Aおよび112Bによってバッテリー持続期間が増えると折りたたみ式モバイル機器100の使用期間が長くなるが、折りたたみ式モバイル機器100は、上記のラップトップコンピュータに類似した電源管理の態様を必要とし得、これにより、折りたたみ式モバイル機器100の製造に関連する費用が増えてしまう。
【0024】
また、バッテリセル112Aおよび112Bは、ラップトップコンピュータなどの大きなポータブルデバイスに備えられているバッテリセルよりも大きさおよびエネルギー蓄積容量が小さいので、バッテリセル112Aと112Bとの電圧差を消費するためにパッシブ平衡回路が抵抗器を利用することで電力を不必要に消費してしまうという点で、パッシブ平衡回路は非効率であろう。すなわち、パッシブ平衡回路は、機能部品を駆動することなく、抵抗器(または、その他の非機能負荷)を利用してエネルギーを平衡にし得る。これは、「非アクティブ電力消費」とも称され得る。このような非アクティブ電力消費はバッテリセルの持続期間全体のうち比較的ごく一部しか消費しないので、このようなアクティブ電力消費の損失(機能負荷または機能部品による電力消費とも称され得る)は、比較的大きなデバイス(折りたたみ式モバイル機器100よりも比較的大きなラップトップなど)では許容できるであろう。しかしながら、折りたたみ式モバイル機器100における非アクティブ電力消費は、バッテリセル112Aおよび112Bの持続期間全体のうち大部分を不必要に消費し得るので、パッシブ平衡回路が利用できなくなるようにしてしまう可能性がある。
【0025】
本開示に記載の技術の様々な態様によると、折りたたみ式モバイル機器100は、バッテリー112Aおよび112Bの両方を用いて電気部品のすべてを駆動することを回避し得るが、代わりに、バッテリー112Aおよび112Bの両方による出力を用いて第1組の部品に電力を供給し、バッテリー112Aおよび112Bのうちいずれか一方だけ(言い換えると、バッテリー112Aおよび112Bのうち1つ)による出力を用いて第2組の部品に電力を供給する。図1の例に示すように、折りたたみ式モバイル機器100は、上記したようにディスプレイ110よりも消費する電力が通常少ない処理回路108に、バッテリー112A(バッテリ112Bではなく)からの電力を出力し得る。折りたたみ式モバイル機器100は、処理回路108よりも消費する電力が通常多いディスプレイ電力管理回路111に、バッテリー112Aおよび112Bの両方からの電力を出力し得る(これにより、ディスプレイ110に電力が供給される)。
【0026】
このように、消費電力が高い電子部品(たとえば、電源管理集積回路111および/またはディスプレイ110)は、バッテリー112Aおよび112Bの両方からの電力を消費し得、消費電力が低い電子部品(たとえば、処理回路108)は、バッテリー112Aの電力を消費し得る。いくつかの例では、消費電力が低い電子部品が低電力のセル112Aからの電力を消費し、消費電力が高い電子部品が低電力のセル112Aおよび比較的高電力のセル112Bの両方からの電力を消費すると、セル112Aと112Bとのセル容量の割合が実現され得る。場合によっては、電力消費が低い電子部品の動作効率に影響を与えてしまう恐れなく、消費電力が高い電子部品の動作効率(たとえば、消費電力の点で)を改善するように、セル容量の割合を設計し得る。
【0027】
動作中、折りたたみ式モバイル機器100は、処理回路108(第1組の部品の一例)に電力を供給するための第1電力信号を、セル112Aから供給される電気エネルギーを用いて生成するように構成された第1パワーコンバータ114Aを備え得る。パワーコンバータ114Aは、第1電圧のバッテリー112A(バッテリ112Bではない)からの直流信号を、異なる第2電圧の直流信号に変換するDC/DCパワーコンバータを表し得る。パワーコンバータ114Aとして、降圧(バック)パワーコンバータ、trueバックブーストパワーコンバータ、昇圧(ブースト)パワーコンバータ、SEPIC(Single-Ended Primary-Inductor Converter)、反転型(バックブースト)パワーコンバータ、スプリットパイ(split-pi)(ブーストバック)パワーコンバータ、フォワード型パワーコンバータ、プッシュプル(ハーフブリッジ)パワーコンバータ、フルブリッジパワーコンバータ、フライバックパワーコンバータなどが挙げられ得る。
【0028】
図1の例では、パワーコンバータ114Aは、処理回路108に内蔵されてもよい。処理回路108の一部として図示されているが、パワーコンバータ114Aは、場合によっては、処理回路108の外部に配置されてもよく、一部が処理回路108と一体化されてもよい。
【0029】
折りたたみ式モバイル機器100は、第2パワーコンバータ114Bも備え得る。第2パワーコンバータ114Bは、パワーコンバータ114Bと潜在的機能の点で同様、そうでない場合、実質的に同様である。しかしながら、パワーコンバータ114Bは、異なる第3電圧の直流信号を異なる第4電圧の直流信号に変換し得る異なる種類のパワーコンバータを含み得る。いくつかの例では、パワーコンバータ114Bは、パワーコンバータ114Aが変換する直流信号と同じ第1電圧の直流信号を同じ第2電圧の直流信号に変換し得る。パワーコンバータ114Bは、ディスプレイ110(第2組の部品を表し得る)に電力を供給するための第2電力信号を、バッテリー112Aおよび112Bの両方から供給される電気エネルギーを用いて生成するように構成され得る。
【0030】
図1の例に示すように、ディスプレイ電力管理集積回路111は、パワーコンバータ114Bを備え得る。電源管理集積回路111内に備えられていると図示しているが、パワーコンバータ114Bは、電源管理集積回路111とは別個であってもよく、一部が電源管理集積回路111と一体化されてもよい。
【0031】
すなわち、第1電力信号は、第1蓄電装置112Aおよび第2蓄電装置112Bから供給される電気エネルギーを用いて、ディスプレイ110などの第1組の部品に電力を供給し得る。第1蓄電装置112Aは、第2蓄電装置112Bに直列接続され得る。第2電力信号は、第1蓄電装置112Aではなく第2蓄電装置112Bから供給される電気エネルギーを用いて、処理回路108などの第2組の部品に電力を供給し得る。
【0032】
より詳しく後述するが、第1蓄電装置112Aと第2蓄電装置112Bとの間で第1電力信号と第2電力信号とを分割することによって、ディスプレイ電力管理集積回路111は、電力効率をアクティブモードの場合最大で5%向上させることができ、アイドルモードの場合およそ7%向上させることができる。また、提案されているこの構造では、場合によってはスペースやコストを増やすことなく、蓄電装置112Aおよび112Bの寿命を3%超延ばすことができる。
【0033】
さらに、折りたたみ式モバイル機器100は、バッテリー112Aと112Bとの間でエネルギーを転送するように構成されたアクティブ平衡回路(active balance circuit)115を備える。非アクティブまたは動作不能負荷(たとえば、抵抗器)を用いてエネルギーの不平衡を消費するのではなく、アクティブ平衡回路115は、バッテリー112Aと112Bとの間でエネルギーを転送し得る。
【0034】
この回路を完成させるために、図1の例では、接地116(「アース」とも称され得る)が示されている。接地116は、電圧が測定される電気回路における基準点、電流の共通の復路、またはアースへの直接的な物理接続を表す。電気回路(たとえば、処理回路108およびディスプレイ電力管理集積回路111)は、いくつかの理由(たとえば、静電気の蓄積を限定する)で、接地114に接続され得る。
【0035】
さらには、図1の例に示す電気回路は、端子118Aおよび118Bを備える。端子118Aおよび118Bは、部品、デバイス、またはネットワークからの導体が電気的に結合され得る点を表し得る。すなわち、端子118Aおよび118Bは、エンドポイントにある電気コネクタを指し得、導体への再利用可能な接続点として作用し、外部回路を接続できる点を作る。端子118Aおよび/または118Bは、単に、電線の端部であってもよく、コネクタまたは締結部に取り付けられてもよい。
【0036】
図2は、本開示の実施例に係る、ディスプレイ電力蓄電装置202および充電電力蓄電装置208のパワーアーキテクチャ回路200の概略を示す図である。パワーアーキテクチャ回路200は、折りたたみ式モバイル機器100の回路設計の一例を表し得る。パワーアーキテクチャ回路200は、接地204と端子206とに電気的に接続された第1蓄電装置202を備え得る。第2蓄電装置208は、端子206に電気的に直列接続され得、2セル蓄電装置230を作成し得る。ディスプレイ電力管理集積回路210が、第2蓄電装置208と接地204とに電気的に接続され得る。ディスプレイ電力管理集積回路210には、第1蓄電装置202および第2蓄電装置208の両方によって電力が供給され得る。処理回路212は、端子206と接地204とに電気的に接続され得る。処理回路212には、第1蓄電装置202によって電力が供給され得る。
【0037】
2セル蓄電装置230は、接地204、VCell(端子206)、およびVCell*2(端子218)という、3つの端子を有し得る。高い電源電圧の利益を受ける負荷(たとえば、ディスプレイ110、カメラなど)の場合、当該負荷は、接地204と端子218とに電気的に接続され得る。低い電源電圧の利益を受ける負荷(たとえば、処理回路212)は、接地204と端子206とに電気的に接続され得る。このパワーアーキテクチャ回路200の回路配置は、空間やコストを追加することなく、蓄電装置の寿命を延ばすであろう。
【0038】
ディスプレイ電力管理集積回路210は、端子218において第2蓄電装置208の出力に電気的に結合された高電圧カップリング(たとえば、レール)214および216を有し得る。ディスプレイ電力管理集積回路210の別のカップリング232が端子206に電気的に結合され得る。パワーアーキテクチャ回路200は、高電圧電子機器を端子218に直接結合し、低電圧電子機器を端子206に直接結合することによって、筐体102内にスペースを追加したり折りたたみ式モバイル機器100のコストを追加したりすることなく、蓄電装置の寿命を3%以上延ばすであろう。
【0039】
上述したように、ディスプレイが大きくなると、ディスプレイの電力消費を大幅に増やしてしまう可能性がある。この問題は、ディスプレイ電力管理集積回路への電力配分およびディスプレイ電力管理集積回路内での電力配分に関連する効率が低いとさらに悪化してしまう可能性がある。本開示の技術は、ディスプレイ電力管理集積回路210の効率を改善することにより、蓄電装置202および208の持続期間を延ばすことができるであろう。ディスプレイが大きくなると、消費される電力量も増える。ポータブル電子装置では、小さいディスプレイであっても、輝度が70%で蓄電装置の寿命の35%を消費し、最大輝度ではディスプレイが蓄電装置の寿命の50%超を消費するなど、蓄電装置のたくさんの容量を消費してしまう。この問題は、現在のディスプレイ電力管理集積回路の効率が悪いことでさらに悪化している。通常、現在の電源管理集積回路は、ワンセル蓄電装置の電圧入力の場合、効率が85%である。本開示の技術は、マルチセル対応蓄電装置のこの効率を、95%まで改善できるであろう。
【0040】
1つの蓄電装置に結合されたいくつかのディスプレイ電力管理集積回路では、ディスプレイ電力管理集積回路は、ディスプレイが必要とする可変電圧をすべて提供できるようにするために、複数回の電圧の増幅と、電圧のダウンコンバートを含み得る。いくつかの場合において、ディスプレイ電力集積回路内のブースト回路は、バッテリーの電圧を、約3.7Vから約8Vに増幅し得る。この変換における効率は、約80%になるであろう。この電圧は、その後、シリーズレギュレータを流れて、約95%の効率で電圧を7.6Vに調整する。ディスプレイ電力管理集積回路にある別のブースト回路は、約90%の効率で蓄電装置の3.7Vを4.6Vに変換する。反転型バックブースト回路は、90%の効率で3.7Vの蓄電装置の電圧を約-2.4Vにダウンコンバートする。上述した電力変換のすべてを終えると、1つの蓄電装置に対する従来のディスプレイ電力管理集積回路の全体的な効率は、一例として、約85%である。
【0041】
パワーアーキテクチャ回路200は、ディスプレイ電力管理集積回路の効率を、アクティブモードの場合約5%、アイドルモードの場合約7%向上させるであろう。アクティブモードとは、折りたたみ式モバイル機器100が積極的に使用され得るときであり、アイドルモードとは、折りたたみ式モバイル機器100が積極的に使用され得ないときである。高電圧カップリング214は、ブーストコンバータ220に結合され得る。ブーストコンバータ220は、端子218から入力された電圧を受信し、受信した電圧をディスプレイ電力管理集積回路210が使用する7.6Vの高電圧に変換し、95%の効率で変換する。ブーストコンバータ220(たとえば、昇圧コンバータ)は、入力218(電源)からの電圧を昇圧して(電流をステップダウンしつつ)出力(ディスプレイ110)に出すDC/DCパワーコンバータであり得る。ブーストコンバータ220は、少なくとも2つの半導体(たとえば、ダイオードおよびトランジスタ)と、少なくとも1つのエネルギー蓄積要素:コンデンサ、インダクタ、またはこれら2つの組合せとを含んだ、あるクラスのスイッチング電源であり得る。ブーストコンバータ220は、電圧のリップルを減らして電圧信号を「きれいに」し得る。
【0042】
バックブーストコンバータ222は、端子218からの電圧を受信して、やはり95%の効率で電圧を4.6Vにダウンコンバートし得る。バックブーストコンバータ222は、出力電圧の大きさが入力電圧の大きさよりも小さいDC/DCコンバータであり得る。反転型ブーストバックコンバータ224は、端子206からの電圧を反転させて、95%の効率で-2.4Vにダウンコンバートし得る。出力電圧は、入力電圧の極性とは反対の極性を有し得る。反転型ブーストバックコンバータ224は、ブーストコンバータ220およびバックコンバータ222の回路トポロジーと同様の回路トポロジーを有するスイッチング電源であり得る。出力電圧は、スイッチングトランジスタのデューティ比に基づいて調整可能である。
【0043】
本説明の本技術の様々な態様によると、パワーアーキテクチャ回路200は、高電圧の電子機器が蓄電装置202と208との組合せからのエネルギーを消費し、低電圧の電子機器がわずか1つの蓄電装置202(または、その他の例では、複数の低蓄電装置)からのエネルギーを消費することを可能にする蓄電装置の容量構造を用い得る。蓄電装置の容量構造を説明する上で、使用量に基づいて蓄電装置の容量比を判断する目的で、低電圧のデバイス(たとえば、処理回路212、RF送信器(図示せず)など)をシステム#1に分類し、高電圧のデバイス(たとえば、ディスプレイ電力管理集積回路210、カメラ(図示せず)など)をシステム#2に分類し得る。蓄電装置の公差およびユーザの習慣(たとえば、すべての人が電子機器を同じように使用するわけではなく、電子機器を不定期に利用するユーザもいれば、電子機器のヘビーユーザであるユーザもいる)が様々であることを理由に、パワーアーキテクチャ回路200の蓄電装置の平衡回路設計が利用され得る。蓄電装置202は、システム#1の電力を提供し得る。システム#2向けの電力のうち、半分は蓄電装置208によって提供されるが、半分は蓄電装置202から提供され得る。容量比を、以下のように設定する。
【0044】
【数1】
【0045】
電気的に直列接続された蓄電装置202および208の場合、通常、2つの端子(206および218)しかない。正極側の端子(たとえば、VCell*2218)と、負極側の端子(たとえば、接地204)である。電気的に直列接続された2つの蓄電装置セル202および208は、同一であってもよいし、非対称であってもよい(詳細については後述する)。蓄電装置を同一にすることは困難であり、公差も存在するが、これらの公差については、いわゆるパッシブ平衡回路が対応することが多い。
【0046】
上述したように、蓄電装置202と208とが異なるということは、それぞれ異なる速度で放電することを意味する。上述したが、パッシブ平衡回路は有効であるが、蓄電装置202と208との間の充電を平衡にするには、この平衡によって放熱およびエネルギー損失が生じるため、非効率である。後述する本開示の実施例では、どのようにこのエネルギー散逸を抑えることができるか、代わりにアクティブ平衡回路を通して一方の蓄電装置から他方の蓄電装置にどのように移動できるかについて説明する。アクティブ平衡回路は、双方向に動作して、直列に結合された2つの非対称な蓄電装置セル202と208との間で電圧を平衡にし、セル公差を満たし得る。アクティブ平衡回路は、1つの蓄電装置セルから別の蓄電装置セルにエネルギーを転送することによって電圧を平衡にする。これは、非対称な蓄電装置セルにとっては特に利点である。
【0047】
図3は、本開示の実施例に係るアクティブ平衡回路302を有するパワーアーキテクチャ回路300の概略を示す図である。パワーアーキテクチャ回路300は、接地306と第1端子308とに電気的に接続された第1蓄電装置304を有し得る。第2蓄電装置310は、第1端子308と第2端子312とに電気的に接続され得る。第1パワーコンバータ324Aを有する高電力電気回路316が、第2端子312に結合され得る。第2パワーコンバータ324Bを有する低電力電気回路314が、第1端子308に結合され得る。アクティブ平衡回路302が、接地306、第1端子308、および第2端子312に電気的に接続され得る。
【0048】
パワーアーキテクチャ回路200および/または300には、パッシブ平衡回路は有用ではないであろう。パッシブ平衡回路は、本質的には、蓄電装置の各々と並列なスイッチを有する回路である。一方の蓄電装置の比例電圧が他方の蓄電装置の比例電圧よりも高い場合、比例電圧が高い方の蓄電装置に対応付けられたスイッチが閉じ、抵抗器を通してバッテリーを放電し、過電圧を消散させる。パッシブ平衡回路の場合、2つ以上の蓄電装置の間で蓄電装置の電圧が不平衡であると、抵抗器を通して電圧が消散されて損失する。
【0049】
アクティブ平衡回路302は、第1蓄電装置304および第2蓄電装置310に並列接続され、第1蓄電装置304と第2蓄電装置310との間でエネルギーを転送するように構成され得る。アクティブ平衡回路302は、第1蓄電装置304と第2蓄電装置310との間でエネルギーを転送するように構成された第3パワーコンバータ340と第4パワーコンバータ342とを有し得る。第3パワーコンバータ340および第4パワーコンバータ342は、DC/DCパワーコンバータであり得る。第3パワーコンバータ340は、エネルギーを第2蓄電装置310から第1蓄電装置304に転送するバックコンバータとして動作し得る。第4パワーコンバータ342は、エネルギーを第1蓄電装置から第2蓄電装置に転送するブーストコンバータとして動作し得る。
【0050】
アクティブ平衡回路302の場合、この不平衡エネルギーを、一方の蓄電装置304または310から他方の蓄電装置310または304に高効率で転送することができる(たとえば、パッシブ平衡回路における全エネルギー損失に対して、98%または100mAhのうち約2mAhが消散される)。さらには、蓄電装置304および310は、同一である必要はなく、非対称であってもよい。
【0051】
アクティブ平衡回路302は、蓄電装置304と310との間で電圧を平衡にし得る。装置318と320とを切り替えるためのIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)が用いられてもよい。ダイオードブリッジ整流器とは対照的に、PWM整流器によって、双方向の電力フローが実現される(すなわち、矢印330で示されているように、電力は、両方向に流れ得る)。第3パワーコンバータ340および第4パワーコンバータ342は、少なくとも2つの半導体と、スイッチ320および318と、少なくとも1つのエネルギー蓄積要素:インダクタ322との組合せを含んでいる、あるクラスのスイッチング電源であり得る。
【0052】
アクティブ平衡回路302は、端子308に結合されたポート1と、端子312に結合されたポート2と、接地306という、3つのポートを有し得る。蓄電装置の電圧が不平衡であり、蓄電装置310から蓄電装置304にエネルギーを転送することが望ましかった場合、アクティブ平衡回路302は、第3パワーコンバータ340をバックコンバータとして動作させ、ポート2を蓄電装置310からの入力として動作させ、ポート1を蓄電装置304への出力として動作させる。電荷は、矢印330に沿って蓄電装置310から蓄電装置304に流れる。
【0053】
蓄電装置304から蓄電装置310にエネルギーを転送することが望ましかった場合、アクティブ平衡回路302は、第4パワーコンバータ342をブーストコンバータとして動作させ、ポート1を蓄電装置304からの入力として動作させ、ポート2を蓄電装置310への出力として動作させる。電荷は、矢印330に沿って蓄電装置304から蓄電装置310に流れる。
【0054】
アクティブ平衡回路302は、蓄電装置304と310との不平衡を訂正するのに有用であり得る。これは、蓄電装置304および310の各々が放電するために起こり得る。上述したように、すべてのユーザが折りたたみ式モバイル機器100などのモバイル機器を同じように使用するわけではない。かなりのアクティブユーザであって、ディスプレイ110を多用する者もいる。ディスプレイ110は、蓄電装置304および310の両方からかなりの電力を消費する。しかしながら、たくさんの処理能力を必要とするいくつかのタスクも折りたたみ式モバイル機器100が実行していると、低電力電気回路314は、バッテリー304からの電力を利用する。この利用によって不平衡が生じ、アクティブ平衡回路302によって不平衡として扱われるものが検出されるので、高効率の転送速度で蓄電装置の充電を継続して平衡にすることを徹底させることができる。この転送プロセスと効率よい速度は、充電中にも実現できる。
【0055】
図4は、本開示の実施例に係る、2つ以上の蓄電装置304と310との間でのアクティブ電荷平衡法の例示的な動作を説明するフロー図である。第1パワーコンバータ324Aは、第1組の部品に電力を供給するための第1電力信号を、第1蓄電装置304および第2蓄電装置310から供給される電気エネルギーを用いて生成し得る(402)。第2パワーコンバータ324Bは、第2組の部品に電力を供給するための第2電力信号を、第2蓄電装置310ではなく第1蓄電装置304から供給される電気エネルギーを生成して用いて生み出し得る(404)。
【0056】
第1蓄電装置304および第2蓄電装置310に並列接続されたアクティブ平衡回路302は、第1蓄電装置304と第2蓄電装置310との間でエネルギーを転送し得る(406)。アクティブ平衡回路302は、第3パワーコンバータ340と、第4パワーコンバータ342とを有し得る。第3パワーコンバータ340は、第1のDC/DCパワーコンバータであり得る。第4パワーコンバータ342は、第2のDC/DCパワーコンバータであり得る。エネルギーを転送するステップは、第3パワーコンバータ340を、第2蓄電装置310から第1蓄電装置304にエネルギーを転送するためのバックコンバータとして動作させるステップを含み得る。エネルギーを転送するステップは、第4パワーコンバータ342を、第1蓄電装置304から第2蓄電装置310にエネルギーを転送するためのブーストコンバータとして動作させるステップを含み得る。
【0057】
第1蓄電装置304および第2蓄電装置310の充電電圧を提供するために、端子312に充電器が接続され得る。この充電器は、アクティブ平衡回路302を介して充電器から第2蓄電装置310および第1蓄電装置304にエネルギーを転送し得る(408)。より詳しく後述するが、充電器から第2蓄電装置310にエネルギーを転送するステップは、直接行うことができる。第1蓄電装置304を充電するために、第3パワーコンバータ340は、充電器から第1蓄電装置304にエネルギーを転送するためのバックコンバータとして機能する。この動作についても、より詳しく後述する。
【0058】
図5は、本開示の実施例に係る、充電器504に結合されたアクティブ平衡回路502を有するパワーアーキテクチャ回路500の概略を示す図である。パワーアーキテクチャ回路500は、パワーアーキテクチャ回路300と同様であり得、接地508と第1端子510とに電気的に接続された第1蓄電装置506を有し得る。第2蓄電装置512は、第1端子510と第2端子514とに電気的に接続され得る。第1パワーコンバータ524Aを有する高電力電気回路518は、第2端子514に結合され得る。第2パワーコンバータ524Bを有する低電力電気回路516は、第1端子510に結合され得る。インダクタ522とスイッチ518とを有する第3パワーコンバータ540と、インダクタ522とスイッチ520とを有する第4パワーコンバータ542とを有するアクティブ平衡回路502は、接地508、第1端子510、および第2端子514に電気的に接続され得る。充電器504は、第2端子514に電気的に接続されるように構成されてもよい。
【0059】
蓄電装置506および510ならびに充電器504は、特定の充電(たとえば、1C充電)に対応するように設計され得る。1つの蓄電装置システムでは、これは比較的容易なプロセスである。蓄電装置が2000mAhの蓄電装置セルであった場合、充電器は、最大で2000mAの充電電流をセルに提供するように設計され得る。しかしながら、パワーアーキテクチャ回路500は、第1蓄電装置506と第2蓄電装置512とを有する2セル蓄電装置である。さらには、蓄電装置506と蓄電装置512とは非対称であり得、充電器504およびアクティブ平衡回路502の設計をさらに複雑化する。
【0060】
【数2】
【0061】
【数3】
【0062】
【数4】
【0063】
充電器設計とアクティブ平衡回路設計とによって、パワーアーキテクチャ回路200、300、および500が対称の蓄電装置を有する必要がなくなることが可能になる。本開示の実施例および技術のパワーアーキテクチャ回路設計では、(折りたたみ式モバイル機器100のサイズ制約の範囲内で)ほぼすべてのサイズおよびさまざまなサイズの蓄電装置を利用できるようになり、これらは引き続き良好に機能できる。さらには、アクティブ平衡回路502によって、蓄電装置506および512が釣り合いを保って充電されることが徹底され、低電力電気回路516および高電力電気回路518のそれぞれに適正な電力供給を提供できるようになる。
【0064】
上記の説明では、説明の便宜上、具体的な実施態様を例に説明した。しかしながら、上記例示的説明は、すべてを網羅したり、開示した形態に開示の主題の実施態様を厳密に限定したりする意図はない。上記教示に鑑みて、多くの変更および変形が可能である。開示の主題の実施態様の原理およびそれらの実際の応用を説明するためにこれらの実施態様を選んで説明したことにより、当業者がこれらの実施態様および様々な変更を加えた実施態様を、考えられる特定の用途に適するように利用することを可能にする。
図1
図2
図3
図4
図5