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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】ポリマータンパク質微粒子
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/17 20060101AFI20240822BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240822BHJP
   A61K 9/50 20060101ALI20240822BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240822BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240822BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20240822BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240822BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240822BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240822BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20240822BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20240822BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240822BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240822BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20240822BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20240822BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20240822BHJP
   C07K 16/18 20060101ALN20240822BHJP
   A61K 39/395 20060101ALN20240822BHJP
【FI】
A61K38/17
A61K9/14 ZNA
A61K9/50
A61K47/34
A61K47/38
A61K47/42
A61P27/02
A61P35/00
A61P9/00
A61P19/00
A61P1/02
A61P17/00
A61P37/06
A61P1/00
C07K16/28
C07K19/00
C07K16/18
A61K39/395 N
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023007775
(22)【出願日】2023-01-23
(62)【分割の表示】P 2020112359の分割
【原出願日】2012-11-18
(65)【公開番号】P2023052564
(43)【公開日】2023-04-11
【審査請求日】2023-02-21
(31)【優先権主張番号】61/561,525
(32)【優先日】2011-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507302748
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】チェン ハンター
(72)【発明者】
【氏名】ウォルシュ スコット
【審査官】六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】Toxicological Sciences,1999年,Vol.52,No.1,p101-106
【文献】Nature Medicine,1996年,Vol.2,No.7,p795-799
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00-45/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性ポリマーでコーティングされた治療タンパク質粒子を含む徐放性医薬組成物を製造する方法であって、
(a)水性治療タンパク質溶液を噴霧乾燥して治療タンパク質微粒子を形成する工程であって、噴霧乾燥機の入口温度が水の沸点より高い温度に設定され、および該噴霧乾燥機の出口温度が54~55℃で、該治療タンパク質微粒子の集団を含む粉末が形成され、該水性治療タンパク質溶液が2mL/min~15mL/minの速度で噴霧乾燥機に注入される、工程;
(b)該治療タンパク質微粒子の集団を含む粉末を、生分解性ポリマーおよび有機溶媒とを含む溶液中に懸濁し、懸濁液を形成する工程;および
(c)該懸濁液を噴霧乾燥し、生分解性ポリマーでコーティングされた治療タンパク質微粒子の集団を含む徐放性医薬組成物を形成する工程であって、該噴霧乾燥する工程が、該懸濁液を微粒化する工程、および次いで、該微粒化した懸濁液に、該有機溶媒の引火点より高い温度で熱を加え、有機溶媒を蒸発させ生分解性ポリマーでコーティングされた治療タンパク質微粒子の集団を形成する工程を含み、および該微粒子が、3重量%未満の水を含む、前記方法
を含み、
徐放性医薬組成物が、癌、心血管疾患、血管障害、整形外科障害、歯科障害、創傷、自己免疫疾患、胃腸障害および眼疾患からなる群から選択される症状を処置することができる、
方法。
【請求項2】
該生分解性ポリマーが、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸-ポリグリコール酸コポリマー(PLGA)、ポリ-D,L-ラクチド-コ-グリコリド(PLGA)、PLGA-エチレンオキシドフマレート、ポリエチレングリコール1000とエステル化したPLGA-α-トコフェリルスクシネート(PLGA-TGPS)、ポリ酸無水物であるポリ[1,6-ビス(p-カルボキシフェノキシ)ヘキサン](pCPH)、ポリ(ヒドロキシ酪酸-コヒドロキシ吉草酸)(PHB-PVA)、ポリエチレングリコール-ポリ(乳酸)コポリマー(PEG-PLA)、ポリ-ε-カプロラクトン(PCL)、ポリ-アルキル-シアノ-アクリレート(PAC)、ポリ(エチル)シアノアクリレート(PEC)、ポリイソブチルシアノアクリレート、ポリ-N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(ポリ(HPMA))、ポリ-β-R-ヒドロキシブチレート(PHB)、ポリ-β-R-ヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリ-β-R-リンゴ酸、リン脂質-コレステロールポリマー、2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン/ポリエチレングリコール-ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DOPC/PEG-DSPE)/コレステロール、ポリサッカライド、セルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、アルジネート、デキストランおよびデキストランヒドロゲルポリマー、アミロース、イヌリン、ペクチンおよびガーゴム、キトサン、キチン、ヘパリン、ヒアルロン酸、シクロデキストリン(CD)ベースのポリロタキサンおよびポリ擬ロタキサン、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリロイシン、ロイシン-グルタミン酸コポリマー、ポリブチレンスクシネート(PBS)、ゼラチン、コラーゲン、フィブリン、フィブロン、ポリオルトエステル、ポリオルトエステル-ポリアミジンコポリマー、ポリオルトエステル-ジアミンコポリマー、潜在性酸(latent acid)を組み込んだポリオルトエステル、ポリ(エチレングリコール)/ポリ(ブチレンテレフタレート)コポリマー、ならびにその組み合わせおよびコポリマーからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該有機溶媒が、酢酸エチルである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
生分解性ポリマーでコーティングされた治療タンパク質微粒子の集団の平均直径が、約15ミクロン~約30ミクロンである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
該治療タンパク質微粒子の集団の各治療タンパク質微粒子が、約2ミクロン~約14ミクロンの直径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
該症状が、癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
該症状が、心血管疾患である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
該症状が、血管障害である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
該症状が、整形外科障害である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
該症状が、歯科障害である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
該症状が、創傷である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
該症状が、自己免疫疾患である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
該症状が、胃腸障害である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
該症状が、眼疾患である、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本発明は、徐放性タンパク質治療剤の製造、組成物、および使用に関する。具体的には、本発明は、水性環境または生理学的環境中でタンパク質を経時的に長期にわたってかつ均一に放出するための複数のポリマーコーティングタンパク質マイクロスフェアの製造、組成物、および使用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
癌、心血管疾患、血管状態、整形外科障害、歯科障害、創傷、自己免疫疾患、胃腸障害、および眼疾患を含む多くの異なる状態を処置するためには、生物学的標的、例えば、網膜もしくは腫瘍に投与された、または非経口投与された治療タンパク質が徐放されることが望ましい。制御されかつ長期にわたる薬物の送達のための生体適合性かつ生分解性のポリマーが何十年もわたって用いられてきた。ポリマーが経時的に分解するにつれて、治療薬物がゆっくりと放出される。
【0003】
眼内治療剤の場合、できる限り少ない眼内注射を用いてタンパク質治療剤を経時的に効果的に送達するための徐放性製剤の重大な医学的ニーズは未だ満たされていない。癌、炎症疾患、および他の疾患などの他の疾患の場合、タンパク質治療剤を含有する、改善された移植可能な徐放性製剤のニーズがある。
【0004】
出願人は、治療的有効量の治療タンパク質を長期間にわたって均一に放出することができる、生分解性ポリマーおよび治療タンパク質を含有する微粒子を製造および使用する方法を発見し、本明細書において開示および主張する。
【発明の概要】
【0005】
概要
一局面において、本発明は、ポリマーでコーティングされたタンパク質を含む微粒子を提供する。一態様において、微粒子の直径は約2ミクロン~約70ミクロンである。一態様において、微粒子の直径は約15ミクロンである。
【0006】
一態様において、タンパク質は抗原結合タンパク質である。一態様において、タンパク質はFcドメインを含む。一態様において、タンパク質は受容体ドメインを含む。一態様において、タンパク質は抗体である。別の態様において、タンパク質は受容体-Fc融合タンパク質である。別の態様において、タンパク質は、コグネイト受容体断片およびFcドメインを含むtrap型タンパク質である。特定の一態様において、タンパク質はVEGF-Trapタンパク質である。一態様において、VEGF-Trapタンパク質は、SEQ ID NO:1に示したアミノ酸配列を含む。
【0007】
一態様において、ポリマーは生分解性ポリマーである。一部の態様において、ポリマーは、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸-ポリグリコール酸コポリマー(PLGA)、ポリ-D,L-ラクチド-コ-グリコリド(PLGA)、PLGA-エチレンオキシドフマレート、ポリエチレングリコール1000とエステル化したPLGA-α-トコフェリルスクシネート(PLGA-TGPS)、ポリ酸無水物であるポリ[1,6-ビス(p-カルボキシフェノキシ)ヘキサン](pCPH)、ポリ(ヒドロキシ酪酸-コヒドロキシ吉草酸)(PHB-PVA)、ポリエチレングリコール-ポリ(乳酸)コポリマー(PEG-PLA)、ポリ-ε-カプロラクトン(PCL)、ポリ-アルキル-シアノ-アクリレート(PAC)、ポリ(エチル)シアノアクリレート(PEC)、ポリイソブチルシアノアクリレート、ポリ-N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(ポリ(HPMA))、ポリ-β-R-ヒドロキシブチレート(PHB)、ポリ-β-R-ヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリ-β-R-リンゴ酸、リン脂質-コレステロールポリマー、2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン/ポリエチレングリコール-ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DOPC/PEG-DSPE)/コレステロール、ポリサッカライド、セルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、アルジネート、デキストランおよびデキストランヒドロゲルポリマー、アミロース、イヌリン、ペクチンおよびガーゴム、キトサン、キチン、ヘパリン、ヒアルロン酸、シクロデキストリン(CD)ベースのポリロタキサンおよびポリ擬ロタキサン、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリロイシン、ロイシン-グルタミン酸コポリマー、ポリブチレンスクシネート(PBS)、ゼラチン、コラーゲン、フィブリン、フィブロン、ポリオルトエステル、ポリオルトエステル-ポリアミジンコポリマー、ポリオルトエステル-ジアミンコポリマー、潜在性酸(latent acid)を組み込んだポリオルトエステル、ポリ(エチレングリコール)/ポリ(ブチレンテレフタレート)コポリマー、ならびにその組み合わせおよびコポリマーからなる群より選択される。一態様において、ポリマーはポリ-ε-カプロラクトン(PCL)またはその誘導体もしくはコポリマーである。一態様において、ポリマーはPLGAまたはその誘導体もしくはコポリマーである。一態様において、ポリマーはエチルセルロースまたはその誘導体もしくはコポリマーである。一態様において、ポリマーはポリオルトエステルまたはその誘導体もしくはコポリマーである。
【0008】
一態様において、微粒子は、10ミクロン未満の微粒子化タンパク質コアおよびポリマー表層を含む。一態様において、微粒子化タンパク質コアは少なくとも50%がポリマーでコーティングされている。これは、微粒子化タンパク質コアの表面の50%以下が露出していることを意味する。一態様において、微粒子化タンパク質コアの表面の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%はポリマーでコーティングされている。
【0009】
一態様において、サイズが10ミクロンより大きな微粒子は、(a)タンパク質が、抗体または抗体断片、受容体またはその可溶性断片、可溶性T細胞受容体断片、可溶性MHC断片、受容体-Fc融合タンパク質、trap型タンパク質、およびVEGF-Trapタンパク質のいずれか1つまたは複数である、10ミクロン未満の微粒子化タンパク質コア;ならびに(b)ポリマーが、生体適合性ポリマー、生分解性ポリマー、生体腐食性ポリマー、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸-ポリグリコール酸コポリマー(PLGA)、ポリ-D,L-ラクチド-コ-グリコリド(PLGA)、PLGA-エチレンオキシドフマレート、ポリエチレングリコール1000とエステル化したPLGA-α-トコフェリルスクシネート(PLGA-TGPS)、ポリ酸無水物であるポリ[1,6-ビス(p-カルボキシフェノキシ)ヘキサン](pCPH)、ポリ(ヒドロキシ酪酸-コヒドロキシ吉草酸)(PHB-PVA)、ポリエチレングリコール-ポリ(乳酸)コポリマー(PEG-PLA)、ポリ-ε-カプロラクトン(PCL)、ポリ-アルキル-シアノ-アクリレート(PAC)、ポリ(エチル)シアノアクリレート(PEC)、ポリイソブチルシアノアクリレート、ポリ-N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(ポリ(HPMA))、ポリ-β-R-ヒドロキシブチレート(PHB)、ポリ-β-R-ヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリ-β-R-リンゴ酸、リン脂質-コレステロールポリマー、2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン/ポリエチレングリコール-ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DOPC/PEG-DSPE)/コレステロール、ポリサッカライド、セルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、アルジネート、デキストランおよびデキストランヒドロゲルポリマー、アミロース、イヌリン、ペクチンおよびガーゴム、キトサン、キチン、ヘパリン、ヒアルロン酸、シクロデキストリン(CD)ベースのポリロタキサンおよびポリ擬ロタキサン、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリロイシン、ロイシン-グルタミン酸コポリマー、ポリブチレンスクシネート(PBS)、ゼラチン、コラーゲン、フィブリン、フィブロン、ポリオルトエステル、ポリオルトエステル-ポリアミジンコポリマー、ポリオルトエステル-ジアミンコポリマー、潜在性酸を組み込んだポリオルトエステル、ポリ(エチレングリコール)/ポリ(ブチレンテレフタレート)コポリマー、ならびにその組み合わせおよびコポリマーのいずれか1つまたは複数である、ポリマーコートを含む。
【0010】
一態様において、平均直径が約15ミクロン~約30ミクロンの微粒子は、(a)タンパク質がVEGF-Trapタンパク質である、約10~約12ミクロンの微粒子化タンパク質コア;および(b)ポリマーがPCL、PLGA、エチルセルロースおよびポリオルトエステル、ならびにそのコポリマーまたは誘導体のいずれか1つまたは複数である、ポリマーコートを含む。
【0011】
一局面において、本発明は、サイズが約2ミクロン~約70ミクロンの範囲であり、約2ミクロン~約30ミクロンの微粒子化タンパク質コアとポリマー表層とを含む、複数の微粒子を提供する。
【0012】
一態様において、タンパク質は抗原結合タンパク質である。一部の態様において、抗原結合タンパク質は、抗体または抗体断片、受容体またはその可溶性断片、可溶性T細胞受容体断片、可溶性MHC断片、受容体-Fc融合タンパク質、trap型タンパク質、およびVEGF-Trapタンパク質のいずれか1つまたは複数である。一態様において、タンパク質はFcドメインを含む。一態様において、タンパク質は抗体である。別の態様において、タンパク質は受容体-Fc融合タンパク質である。別の態様において、タンパク質は、コグネイト受容体断片およびFcドメインを含むtrap型タンパク質である。特定の一態様において、タンパク質はVEGF-Trapタンパク質である。特定の態様において、VEGF-Trapタンパク質は、SEQ ID NO:1に示したアミノ酸配列を含む。
【0013】
一態様において、ポリマーは生体適合性ポリマーである。一態様において、ポリマーは生体腐食性ポリマーである。一態様において、ポリマーは生分解性ポリマーである。一部の態様において、ポリマーは、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸-ポリグリコール酸コポリマー(PLGA)、ポリ-D,L-ラクチド-コ-グリコリド(PLGA)、PLGA-エチレンオキシドフマレート、ポリエチレングリコール1000とエステル化したPLGA-α-トコフェリルスクシネート(PLGA-TGPS)、ポリ酸無水物であるポリ[1,6-ビス(p-カルボキシフェノキシ)ヘキサン](pCPH)、ポリ(ヒドロキシ酪酸-コヒドロキシ吉草酸)(PHB-PVA)、ポリエチレングリコール-ポリ(乳酸)コポリマー(PEG-PLA)、ポリ-ε-カプロラクトン(PCL)、ポリ-アルキル-シアノ-アクリレート(PAC)、ポリ(エチル)シアノアクリレート(PEC)、ポリイソブチルシアノアクリレート、ポリ-N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(ポリ(HPMA))、ポリ-β-R-ヒドロキシブチレート(PHB)、ポリ-β-R-ヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリ-β-R-リンゴ酸、リン脂質-コレステロールポリマー、2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン/ポリエチレングリコール-ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DOPC/PEG-DSPE)/コレステロール、ポリサッカライド、セルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、アルジネート、デキストランおよびデキストランヒドロゲルポリマー、アミロース、イヌリン、ペクチンおよびガーゴム、キトサン、キチン、ヘパリン、ヒアルロン酸、シクロデキストリン(CD)ベースのポリロタキサンおよびポリ擬ロタキサン、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリロイシン、ロイシン-グルタミン酸コポリマー、ポリブチレンスクシネート(PBS)、ゼラチン、コラーゲン、フィブリン、フィブロン、ポリオルトエステル、ポリオルトエステル-ポリアミジンコポリマー、ポリオルトエステル-ジアミンコポリマー、潜在性酸を組み込んだポリオルトエステル、ポリ(エチレングリコール)/ポリ(ブチレンテレフタレート)コポリマー、ならびにその組み合わせおよびコポリマーからなる群より選択される。一態様において、ポリマーはポリ-ε-カプロラクトン(PCL)またはその誘導体もしくはコポリマーである。一態様において、ポリマーはPLGAまたはその誘導体もしくはコポリマーである。一態様において、ポリマーはエチルセルロースまたはその誘導体もしくはコポリマーである。一態様において、ポリマーは、潜在性酸を組み込んだポリオルトエステルである。
【0014】
一態様において、複数の微粒子の中の大部分の微粒子の微粒子化タンパク質コアは少なくとも50%がポリマーでコーティングされている。これは、微粒子化タンパク質コアの表面の50%以下が露出していることを意味する。一態様において、微粒子化タンパク質コアの表面の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%はポリマーでコーティングされている。
【0015】
一態様において、複数の微粒子はサイズが約2ミクロン~約70ミクロンの範囲であり、(a)タンパク質が抗体または抗体断片、受容体またはその可溶性断片、可溶性T細胞受容体断片、可溶性MHC断片、受容体-Fc融合タンパク質、trap型タンパク質、およびVEGF-Trapタンパク質のいずれか1つまたは複数である、約2ミクロン~約30ミクロンの微粒子化タンパク質コア;ならびに(b)ポリマーが、生体適合性ポリマー、生分解性ポリマー、生体腐食性ポリマー、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸-ポリグリコール酸コポリマー(PLGA)、ポリ-D,L-ラクチド-コ-グリコリド(PLGA)、PLGA-エチレンオキシドフマレート、ポリエチレングリコール1000とエステル化したPLGA-α-トコフェリルスクシネート(PLGA-TGPS)、ポリ-ε-カプロラクトン(PCL)、ポリ-アルキル-シアノ-アクリレート(ポリ酸無水物であるポリ[1,6-ビス(p-カルボキシフェノキシ)ヘキサン](pCPH)、ポリ(ヒドロキシ酪酸-コヒドロキシ吉草酸)(PHB-PVA)、ポリエチレングリコール-ポリ(乳酸)コポリマー(PEG-PLA))、ポリ(エチル)シアノアクリレート(PEC)、ポリイソブチルシアノアクリレート、ポリ-N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(ポリ(HPMA))、ポリ-β-R-ヒドロキシブチレート(PHB)、ポリ-β-R-ヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリ-β-R-リンゴ酸、リン脂質-コレステロールポリマー、2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン/ポリエチレングリコール-ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DOPC/PEG-DSPE)/コレステロール、ポリサッカライド、セルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、アルジネート、デキストランおよびデキストランヒドロゲルポリマー、アミロース、イヌリン、ペクチンおよびガーゴム、キトサン、キチン、ヘパリン、ヒアルロン酸、シクロデキストリン(CD)ベースのポリロタキサンおよびポリ擬ロタキサン、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリロイシン、ロイシン-グルタミン酸コポリマー、ポリブチレンスクシネート(PBS)、ゼラチン、コラーゲン、フィブリン、フィブロン、ポリオルトエステル、ポリオルトエステル-ポリアミジンコポリマー、ポリオルトエステル-ジアミンコポリマー、潜在性酸を組み込んだポリオルトエステル、ポリ(エチレングリコール)/ポリ(ブチレンテレフタレート)コポリマー、ならびにその組み合わせおよびコポリマーのいずれか1つまたは複数である、ポリマー表層を含む。
【0016】
一態様において、サイズが約2ミクロン~約70ミクロンの範囲であり、サイズの中央値が約15ミクロン~約30ミクロンである複数の微粒子は、(a)タンパク質がVEGF-Trapタンパク質である、約2ミクロン~約30ミクロンであり、サイズの中央値が約10ミクロン~約12ミクロンである微粒子化タンパク質コア;ならびに(b)ポリマーがPLA、PCL、PLGA、エチルセルロースおよびポリオルトエステル、ならびにそのコポリマーまたは誘導体のいずれか1つまたは複数である、ポリマー表層を含む。
【0017】
一局面において、本発明は、タンパク質コアおよびポリマー表層を含む微粒子を製造する方法を提供する。一態様において、製造された微粒子の直径は約2ミクロン~約70ミクロンである、または製造された微粒子の直径の中央値は約15ミクロン~約30ミクロンである。一態様において、微粒子を製造する方法は、(1)タンパク質粒子を得る工程;(2)該タンパク質粒子を、ポリマーと溶媒とを含む溶液中に懸濁する工程;および(3)該溶媒を除去する工程を含み、ここで、ポリマー表層でコーティングされたタンパク質コアを含む微粒子が形成される。
【0018】
一態様において、工程(1)のタンパク質粒子は、タンパク質を含む溶液を噴霧乾燥することによって得られた微粒子化タンパク質粒子である。一部の態様において、タンパク質溶液は、デュアルノズル超音波処理、シングルノズル超音波処理、またはエレクトロスプレーを介して噴霧乾燥される。一部の態様において、製造された微粒子のコアを形成する、結果として得られた微粒子化タンパク質粒子の直径は約2ミクロン~約30ミクロンであり、直径の中央値は約10ミクロン~約12ミクロンである。
【0019】
一部の態様において、コアを形成するタンパク質は抗原結合タンパク質である。一部の態様において、抗原結合タンパク質は、抗体(例えば、IgG)または抗体断片、受容体またはその可溶性断片、可溶性T細胞受容体断片、可溶性MHC断片、受容体-Fc融合タンパク質、trap型タンパク質、およびVEGF-Trapタンパク質のいずれか1つまたは複数である。特定の態様において、タンパク質は、SEQ ID NO:1に示したアミノ酸配列を含むVEGF-Trapである。
【0020】
一態様において、工程(3)において、溶媒は、工程(2)のタンパク質-ポリマー溶媒混合物の分散液を作製し、分散液によって作製された液滴から溶媒を蒸発させることによって溶媒は除去される。一態様において、分散液は噴霧乾燥によって作製される。噴霧乾燥は、デュアルノズル超音波処理、シングルノズル超音波処理、またはエレクトロスプレーによって行われてもよい。一態様において、溶媒は、熱もしくは空気を適用することによって、または化学抽出によって液滴から除去される。
【0021】
一態様において、ポリマーは生分解性、生体腐食性、および/または生体適合性である。一部の態様において、ポリマーは、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸-ポリグリコール酸コポリマー(PLGA)、ポリ-D,L-ラクチド-コ-グリコリド(PLGA)、PLGA-エチレンオキシドフマレート、ポリエチレングリコール1000とエステル化したPLGA-α-トコフェリルスクシネート(PLGA-TGPS)、ポリ酸無水物であるポリ[1,6-ビス(p-カルボキシフェノキシ)ヘキサン](pCPH)、ポリ(ヒドロキシ酪酸-コヒドロキシ吉草酸)(PHB-PVA)、ポリエチレングリコール-ポリ(乳酸)コポリマー(PEG-PLA)、ポリ-ε-カプロラクトン(PCL)、ポリ-アルキル-シアノ-アクリレート(PAC)、ポリ(エチル)シアノアクリレート(PEC)、ポリイソブチルシアノアクリレート、ポリ-N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(ポリ(HPMA))、ポリ-β-R-ヒドロキシブチレート(PHB)、ポリ-β-R-ヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリ-β-R-リンゴ酸、リン脂質-コレステロールポリマー、2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン/ポリエチレングリコール-ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DOPC/PEG-DSPE)/コレステロール、ポリサッカライド、セルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、アルジネート、デキストランおよびデキストランヒドロゲルポリマー、アミロース、イヌリン、ペクチンおよびガーゴム、キトサン、キチン、ヘパリン、ヒアルロン酸、シクロデキストリン(CD)ベースのポリロタキサンおよびポリ擬ロタキサン、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリロイシン、ロイシン-グルタミン酸コポリマー、ポリブチレンスクシネート(PBS)、ゼラチン、コラーゲン、フィブリン、フィブロン、ポリオルトエステル、ポリオルトエステル-ポリアミジンコポリマー、ポリオルトエステル-ジアミンコポリマー、潜在性酸を組み込んだポリオルトエステル、ポリ(エチレングリコール)/ポリ(ブチレンテレフタレート)コポリマー、ならびにその組み合わせおよびコポリマーのいずれか1つまたは複数である。一態様において、ポリマーはポリ-ε-カプロラクトン(PCL)またはその誘導体またはコポリマーである。一態様において、ポリマーはPLGAまたはその誘導体もしくはコポリマーである。一態様において、ポリマーはエチルセルロースまたはその誘導体もしくはコポリマーである。一態様において、ポリマーは、ポリオルトエステル、または酸不安定要素を含有するその誘導体である。別の態様において、ポリマーはPLAである。
【0022】
一局面において、本発明は、微粒子を製造する方法であって、(1)タンパク質を含有する溶液を噴霧乾燥することによって、直径が約2ミクロン~約30ミクロンであり、直径の中央値が約10ミクロン~12ミクロンの微粒子化タンパク質粒子を形成する工程であって、タンパク質が抗原結合タンパク質であり、一部の態様において、抗原結合タンパク質が、抗体または抗体断片、受容体またはその可溶性断片、可溶性T細胞受容体断片、可溶性MHC断片、受容体-Fc融合タンパク質、trap型タンパク質、およびVEGF-Trapタンパク質(例えば、SEQ ID NO:1の配列を有するもの)のいずれか1つまたは複数である工程;(2)微粒子化タンパク質粒子を、ポリマーと溶媒とを含む溶液中に懸濁する工程であって、ポリマーが、生分解性ポリマー、生体腐食性ポリマー、生体適合性ポリマー、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸-ポリグリコール酸コポリマー(PLGA)、ポリ-D,L-ラクチド-コ-グリコリド(PLGA)、PLGA-エチレンオキシドフマレート、ポリエチレングリコール1000とエステル化したPLGA-α-トコフェリルスクシネート(PLGA-TGPS)、ポリ酸無水物であるポリ[1,6-ビス(p-カルボキシフェノキシ)ヘキサン](pCPH)、ポリ(ヒドロキシ酪酸-コヒドロキシ吉草酸)(PHB-PVA)、ポリエチレングリコール-ポリ(乳酸)コポリマー(PEG-PLA)、ポリ-ε-カプロラクトン(PCL)、ポリ-アルキル-シアノ-アクリレート(PAC)、ポリ(エチル)シアノアクリレート(PEC)、ポリイソブチルシアノアクリレート、ポリ-N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(ポリ(HPMA))、ポリ-β-R-ヒドロキシブチレート(PHB)、ポリ-β-R-ヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリ-β-R-リンゴ酸、リン脂質-コレステロールポリマー、2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン/ポリエチレングリコール-ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DOPC/PEG-DSPE)/コレステロール、ポリサッカライド、セルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、アルジネート、デキストランおよびデキストランヒドロゲルポリマー、アミロース、イヌリン、ペクチンおよびガーゴム、キトサン、キチン、ヘパリン、ヒアルロン酸、シクロデキストリン(CD)ベースのポリロタキサンおよびポリ擬ロタキサン、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリロイシン、ロイシン-グルタミン酸コポリマー、ポリブチレンスクシネート(PBS)、ゼラチン、コラーゲン、フィブリン、フィブロン、ポリオルトエステル、ポリオルトエステル-ポリアミジンコポリマー、ポリオルトエステル-ジアミンコポリマー、潜在性酸を組み込んだポリオルトエステル、ポリ(エチレングリコール)/ポリ(ブチレンテレフタレート)コポリマー、ならびにその組み合わせおよびコポリマーのいずれか1つまたは複数である工程;ならびに(3)微粒子化タンパク質粒子-ポリマー溶媒懸濁液を噴霧乾燥することによって、および熱もしくは空気を適用することによって溶媒を飛ばすことによって、または溶媒を抽出することによって溶媒を除去する工程であって、直径が約2ミクロン~約70ミクロンであり、直径の中央値が約15ミクロン~約30ミクロンであり、タンパク質コアおよびポリマー表層を含む微粒子が形成される工程を含む、方法を提供する。
【0023】
一部の態様において、工程(1)または工程(3)の噴霧乾燥は、デュアルノズル超音波処理、シングルノズル超音波処理、またはエレクトロスプレーを介して行われる。
【0024】
一態様において、微粒子を製造する方法は、(1)VEGF Trapタンパク質を含有する溶液を噴霧乾燥することによって、直径が約10ミクロン~12ミクロンの微粒子化VEGF-Trap粒子を形成する工程;(2)微粒子化VEGF Trap粒子を、潜在性酸を組み込んだポリオルトエステルおよび適合性溶媒、またはエチルセルロースおよび適合性溶媒を含む溶液中に懸濁する工程;ならびに(3)(a)微粒子化VEGF Trap粒子-ポリオルトエステル-潜在性酸-溶媒懸濁液または微粒子化VEGF Trap粒子-エチルセルロース-溶媒懸濁液を噴霧乾燥し、(b)熱もしくは空気を適用することによって溶媒を飛ばすことによって、または溶媒を抽出することによって溶媒を除去する工程であって、直径が約15ミクロン~約30ミクロンであり、VEGF-Trapコア、ならびにポリオルトエステルならびにそのコポリマーまたは誘導体のポリマー表層を含む微粒子が形成される工程を含む。
【0025】
一局面において、本発明は、一定レベルの治療タンパク質を経時的に放出または送達するための治療タンパク質の徐放性製剤を提供する。徐放性製剤は、サイズが約2ミクロン~約70ミクロンの範囲である複数の微粒子を含み、複数の微粒子はそれぞれ、約2ミクロン~約30ミクロンの微粒子化タンパク質コア、およびポリマー表層を含む。
【0026】
一態様において、治療タンパク質は抗原結合タンパク質である。一部の態様において、抗原結合タンパク質は、抗体(例えば、IgG)または抗体断片、受容体またはその可溶性断片、可溶性T細胞受容体断片、可溶性MHC断片、受容体-Fc融合タンパク質、trap型タンパク質、およびVEGF-Trapタンパク質(例えば、このうちの1つはSEQ ID NO:1の一次構造を有する)のいずれか1つまたは複数である。一態様において、治療タンパク質はFcドメインを含む。一態様において、タンパク質は抗体である。別の態様において、タンパク質はIgGである。別の態様において、治療タンパク質は受容体-Fc融合タンパク質である。別の態様において、治療タンパク質は、コグネイト受容体断片およびFcドメインを含むtrap型タンパク質である。特定の一態様において、治療タンパク質はVEGF-Trapタンパク質である。さらに別の態様において、VEGF-Trapは、SEQ ID NO:1に示したアミノ酸配列を含む。
【0027】
一態様において、ポリマー表層は生体適合性ポリマーを含む。一態様において、ポリマー表層は生体腐食性ポリマーを含む。一態様において、ポリマー表層は生分解性ポリマーを含む。一部の態様において、ポリマー表層は、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸-ポリグリコール酸コポリマー(PLGA)、ポリ-D,L-ラクチド-コ-グリコリド(PLGA)、PLGA-エチレンオキシドフマレート、ポリエチレングリコール1000とエステル化したPLGA-α-トコフェリルスクシネート(PLGA-TGPS)、ポリ酸無水物であるポリ[1,6-ビス(p-カルボキシフェノキシ)ヘキサン](pCPH)、ポリ(ヒドロキシ酪酸-コヒドロキシ吉草酸)(PHB-PVA)、ポリエチレングリコール-ポリ(乳酸)コポリマー(PEG-PLA)、ポリ-ε-カプロラクトン(PCL)、ポリ-アルキル-シアノ-アクリレート(PAC)、ポリ(エチル)シアノアクリレート(PEC)、ポリイソブチルシアノアクリレート、ポリ-N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(ポリ(HPMA))、ポリ-β-R-ヒドロキシブチレート(PHB)、ポリ-β-R-ヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリ-β-R-リンゴ酸、リン脂質-コレステロールポリマー、2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン/ポリエチレングリコール-ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DOPC/PEG-DSPE)/コレステロール、ポリサッカライド、セルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、アルジネート、デキストランおよびデキストランヒドロゲルポリマー、アミロース、イヌリン、ペクチンおよびガーゴム、キトサン、キチン、ヘパリン、ヒアルロン酸、シクロデキストリン(CD)ベースのポリロタキサンおよびポリ擬ロタキサン、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリロイシン、ロイシン-グルタミン酸コポリマー、ポリブチレンスクシネート(PBS)、ゼラチン、コラーゲン、フィブリン、フィブロン、ポリオルトエステル、ポリオルトエステル-ポリアミジンコポリマー、ポリオルトエステル-ジアミンコポリマー、潜在性酸を組み込んだポリオルトエステル、ポリ(エチレングリコール)/ポリ(ブチレンテレフタレート)コポリマー、ならびにその組み合わせおよびコポリマーからなる群より選択されるポリマーを含む。一態様において、ポリマーはポリ-ε-カプロラクトン(PCL)またはその誘導体もしくはコポリマーである。一態様において、ポリマー表層はPLGAを含む。一態様において、ポリマー表層はエチルセルロースを含む。一態様において、ポリマー表層は、PLA、PLGA、エチルセルロース、およびポリオルトエステル、ならびにそのコポリマーまたは誘導体のいずれか1つまたは複数を含む。
【0028】
一態様において、複数の微粒子は、微粒子の収集物の中の微粒子1つ1つが異なる速度で分解して治療タンパク質の放出速度が均一になるように、ある範囲の厚みのポリマー表層を有する微粒子の収集物を含む。
【0029】
一態様において、複数の微粒子は、コーティングされていない微粒子化タンパク質粒子、および表層の厚みに基づいて定期的な間隔で治療タンパク質の放出を可能にする、ある範囲の厚みのポリマー表層を有する微粒子の混合物を含む。
【0030】
一態様において、複数の微粒子は、分解およびその後の放出のタイミングまたは期間を制御するために、様々なレベルの疎水性のポリマー表層を有する微粒子の混合物を含む。一態様において、微粒子はそれぞれポリマー内層およびポリマー外層を含み、ポリマー外層は、治療タンパク質の放出を制御するようにポリマー内層の水和を制限する。
【0031】
一態様において、微粒子が水性環境にある時に、治療タンパク質は、複数の微粒子から約0.01mg/週~約0.30mg/週の速度で少なくとも60日間、放出される。一態様において、水性環境はインビトロ緩衝液である。一態様において、水性環境はインビボにある。一態様において、水性環境はエクスビボにある。一態様において、水性環境は硝子体液である。
【0032】
一態様において、徐放性製剤は、サイズが約2ミクロン~約70ミクロンの範囲である複数の微粒子であって、(a)約2ミクロン~約30ミクロンの微粒子化治療タンパク質のコアであって、治療タンパク質が抗原結合タンパク質であり、抗原結合タンパク質が、場合によっては、抗体または抗体断片、受容体またはその可溶性断片、可溶性T細胞受容体断片、可溶性MHC断片、受容体-Fc融合タンパク質、trap型タンパク質、およびVEGF-Trapタンパク質のいずれか1つまたは複数でもよい、コア;ならびに(b)ある範囲の厚みのポリマー表層であって、ポリマーが、生体適合性ポリマー、生分解性ポリマー、生体腐食性ポリマー、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸-ポリグリコール酸コポリマー(PLGA)、ポリ-D,L-ラクチド-コ-グリコリド(PLGA)、PLGA-エチレンオキシドフマレート、ポリエチレングリコール1000とエステル化したPLGA-α-トコフェリルスクシネート(PLGA-TGPS)、ポリ酸無水物であるポリ[1,6-ビス(p-カルボキシフェノキシ)ヘキサン](pCPH)、ポリ(ヒドロキシ酪酸-コヒドロキシ吉草酸)(PHB-PVA)、ポリエチレングリコール-ポリ(乳酸)コポリマー(PEG-PLA)、ポリ-ε-カプロラクトン(PCL)、ポリ-アルキル-シアノ-アクリレート(PAC)、ポリ(エチル)シアノアクリレート(PEC)、ポリイソブチルシアノアクリレート、ポリ-N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(ポリ(HPMA))、ポリ-β-R-ヒドロキシブチレート(PHB)、ポリ-β-R-ヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリ-β-R-リンゴ酸、リン脂質-コレステロールポリマー、2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン/ポリエチレングリコール-ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DOPC/PEG-DSPE)/コレステロール、ポリサッカライド、セルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、アルジネート、デキストランおよびデキストランヒドロゲルポリマー、アミロース、イヌリン、ペクチンおよびガーゴム、キトサン、キチン、ヘパリン、ヒアルロン酸、シクロデキストリン(CD)ベースのポリロタキサンおよびポリ擬ロタキサン、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリロイシン、ロイシン-グルタミン酸コポリマー、ポリブチレンスクシネート(PBS)、ゼラチン、コラーゲン、フィブリン、フィブロン、ポリオルトエステル、ポリオルトエステル-ポリアミジンコポリマー、ポリオルトエステル-ジアミンコポリマー、潜在性酸を組み込んだポリオルトエステル、ポリ(エチレングリコール)/ポリ(ブチレンテレフタレート)コポリマー、ならびにその組み合わせおよびコポリマーのいずれか1つまたは複数である、ポリマー表層を含む複数の微粒子を含み、微粒子は、一定レベルの治療タンパク質を約0.01mg/週~約0.30mg/週の速度で少なくとも60日間、放出または送達する。
【0033】
一態様において、徐放性製剤は、サイズが約2ミクロン~約70ミクロンの範囲であり、サイズの中央値が約15ミクロン~約30ミクロンである複数の微粒子であって、(a)タンパク質がVEGF-Trapタンパク質である、約2ミクロン~約30ミクロンであり、サイズの中央値が約10ミクロン~約12ミクロンである微粒子化タンパク質コア;ならびに(b)水性環境中で微粒子が一定レベルのVEGF Trapを約0.06±0.02mg/週の速度で少なくとも60日間、放出または送達するように、ポリマーが、PLGA、エチルセルロース、およびポリオルトエステル、ならびにそのコポリマーまたは誘導体のいずれか1つまたは複数である、ある範囲の厚みのあるポリマー表層を含む複数の微粒子を含む。
【0034】
一局面において、本発明は、タンパク質の放出を調節するための方法を提供する。一態様において、前記方法は、前局面に記載のように複数の微粒子を作製する工程の後に、微粒子を溶媒の中に入れる工程を含む。一部の態様において、溶媒は水性である。溶媒はリン酸緩衝溶液などインビトロにあってもよい。溶媒は、例えば、硝子体液などインビボにあってもよい。
[本発明1001]
ポリマーでコーティングされたタンパク質を含む組成物であって、直径が約5μm~約40μmの粒子である、組成物。
[本発明1002]
タンパク質が抗原結合タンパク質である、本発明1001の組成物。
[本発明1003]
タンパク質がFcドメインを含む、本発明1001または本発明1002の組成物。
[本発明1004]
タンパク質が抗体である、本発明1001~1003のいずれかの組成物。
[本発明1005]
タンパク質が受容体-Fc融合タンパク質である、本発明1001~1003のいずれかの組成物。
[本発明1006]
タンパク質が抗体断片である、本発明1001~1004のいずれかの組成物。
[本発明1007]
タンパク質がVEGF-Trapである、本発明1005の組成物。
[本発明1008]
抗体がヒトモノクローナル抗体である、本発明1004の組成物。
[本発明1009]
ポリマーが生分解性ポリマーである、本発明1001~1008のいずれかの組成物。
[本発明1010]
ポリマーが、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ酸無水物であるポリ[1,6-ビス(p-カルボキシフェノキシ)ヘキサン](pCPH)、ポリ(ヒドロキシ酪酸-コヒドロキシ吉草酸)(PHB-PVA)、ポリエチレングリコール-ポリ(乳酸)コポリマー(PEG-PLA)、ポリ-D,L-ラクチド-コ-グリコリド(PLGA)、ポリオルトエステル(POE)、エチルセルロース(EC)、およびポリ-ε-カプロラクトン(PCL)からなる群より選択される、本発明1001~1009のいずれかの組成物。
[本発明1011]
タンパク質がtrapまたは抗体のいずれかであり、ポリマーがPOEである、本発明1010の組成物。
[本発明1012]
粒子の平均直径が約15μmである、本発明1001~1011のいずれかの組成物。
[本発明1013]
タンパク質がtrapまたは抗体のいずれかであり、ポリマーがPLGAである、本発明1001~1010のいずれかの組成物。
[本発明1014]
直径が約2μm~約12μmのタンパク質粒子コアと、生分解性ポリマー表層とを含む、直径が約2μm~約70μmの微粒子。
[本発明1015]
生分解性ポリマーが、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ酸無水物であるポリ[1,6-ビス(p-カルボキシフェノキシ)ヘキサン](pCPH)、ポリ(ヒドロキシ酪酸-コヒドロキシ吉草酸)(PHB-PVA)、ポリエチレングリコール-ポリ(乳酸)コポリマー(PEG-PLA)、ポリ-D,L-ラクチド-コ-グリコリド(PLGA)、ポリオルトエステル(POE)、エチルセルロース(EC)、およびポリ-ε-カプロラクトン(PCL)からなる群より選択される、本発明1014の微粒子。
[本発明1016]
タンパク質粒子コアが抗原結合タンパク質を含む、本発明1014または本発明1015の微粒子。
[本発明1017]
抗原結合タンパク質が受容体-Fc融合タンパク質である、本発明1014~1016のいずれかの微粒子。
[本発明1018]
タンパク質粒子コアがVEGF-Trapを含み、ポリマー表層がPOE、PLA、またはPLGAを含む、本発明1014~1017のいずれかの微粒子。
[本発明1019]
抗原結合タンパク質が抗体である、本発明1014~1016のいずれかの微粒子。
[本発明1020]
抗体がヒトIgG分子であり、ポリマー表層がPOE、PLA、またはPLGAを含む、本発明1014~1016および1019のいずれかの微粒子。
[本発明1021]
直径が約2μm~約12μmのタンパク質粒子コアと、生分解性ポリマー表層とを含む、直径が約2μm~約70μmの範囲の複数の微粒子。
[本発明1022]
前記複数の微粒子が異なる速度で分解し、タンパク質が水性環境中で長期間にわたって放出される、本発明1021の複数の微粒子。
[本発明1023]
前記期間が少なくとも3日である、本発明1022の複数の微粒子。
[本発明1024]
前記期間が少なくとも60日である、本発明1022または本発明1023の複数の微粒子。
[本発明1025]
タンパク質が抗原結合タンパク質である、本発明1021~1024のいずれかの複数の微粒子。
[本発明1026]
タンパク質が受容体-Fc融合タンパク質である、本発明1021~1025のいずれかの複数の微粒子。
[本発明1027]
受容体-Fc融合タンパク質がVEGF Trapであり、ポリマー表層がPOE、PLA、またはPLGAを含む、本発明1021~1026のいずれかの複数の微粒子。
[本発明1028]
抗原結合タンパク質が抗体である、本発明1021~1025のいずれかの複数の微粒子。
[本発明1029]
抗体がヒトIgG分子であり、ポリマー表層がPOE、PLA、またはPLGAを含む、本発明1028の複数の微粒子。
[本発明1030]
本発明1021~1029のいずれかの複数の微粒子の治療的有効量を患者に投与する工程を含む、疾患を処置する方法であって、治療タンパク質が長期間にわたって該微粒子から放出される、方法。
[本発明1031]
タンパク質がVEGF-Trapであり、ポリマーがPOE、PLA、またはPLGAである、本発明1030の方法。
[本発明1032]
疾患が眼疾患であり、微粒子が60日以上の間隔をおいて患者の硝子体に送達される、本発明1030または本発明1031の方法。
[本発明1033]
タンパク質と生分解性ポリマーとを含む組成物を製造する方法であって、該方法が、
a.タンパク質粒子を得る工程;
b.該タンパク質粒子を、該ポリマーと溶媒とを含む溶液中に懸濁する工程;および
c.該溶媒を除去する工程
を含み、該ポリマーでコーティングされた該タンパク質を含む粒子が形成される、方法。
[本発明1034]
前記タンパク質を含む溶液を噴霧乾燥することによって前記タンパク質粒子が得られる、本発明1033の方法。
[本発明1035]
噴霧乾燥がデュアルノズル超音波処理、シングルノズル超音波処理、またはエレクトロスプレーによって行われる、本発明1034の方法。
[本発明1036]
噴霧乾燥により工程(b)のタンパク質懸濁液の分散液を作製することによって、溶媒を蒸発させる、本発明1033~1035のいずれかの方法。
[本発明1037]
加熱蒸発、空気蒸発、または抽出によって溶媒が除去される、本発明1033~1036のいずれかの方法。
[本発明1038]
ポリマーが、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ酸無水物であるポリ[1,6-ビス(p-カルボキシフェノキシ)ヘキサン](pCPH)、ポリ(ヒドロキシ酪酸-コヒドロキシ吉草酸)(PHB-PVA)、ポリエチレングリコール-ポリ(乳酸)コポリマー(PEG-PLA)、ポリ-D,L-ラクチド-コ-グリコリド(PLGA)、ポリオルトエステル(POE)、エチルセルロース(EC)、およびポリ-ε-カプロラクトン(PCL)からなる群より選択される、本発明1033~1037のいずれかの方法。
[本発明1039]
タンパク質が受容体-Fc融合タンパク質または抗体である、本発明1033~1038のいずれかの方法。
[本発明1040]
タンパク質がVEGF-TrapまたはIgG分子であり、ポリマーがPOE、PLA、またはPLGAである、本発明1033~1039のいずれかの方法。
[本発明1041]
粒子の平均直径が約15μmである、本発明1033~1040のいずれかの方法。
[本発明1042]
タンパク質を生分解性ポリマーと組み合わせてタンパク質-ポリマー複合体を形成する工程(a);続いて、該タンパク質-ポリマー複合体を溶媒と接触させる工程(b)を含む、タンパク質の放出を調節するための方法であって、ポリマーが経時的に分解し、タンパク質が溶媒中に徐々に放出される、方法。
[本発明1043]
本発明1033~1041のいずれかに従って工程(a)が行われる、本発明1042の方法。
[本発明1044]
タンパク質がVEGF-TrapまたはIgG分子であり、ポリマーがPOE、PLA、またはPLGAである、本発明1042または本発明1043の方法。
[本発明1045]
粒子の平均直径が約15μmである、本発明1042~1044のいずれかの方法。
[本発明1046]
タンパク質が少なくとも3日にわたってタンパク質-ポリマー複合体から放出される、本発明1042~1045のいずれかの方法。
[本発明1047]
タンパク質が少なくとも60日にわたってタンパク質-ポリマー複合体から放出される、本発明1042~1046のいずれかの方法。
[本発明1048]
溶媒が緩衝生理食塩水である、本発明1042~1047のいずれかの方法。
[本発明1049]
溶媒がインビボにある、本発明1042~1047のいずれかの方法。
[本発明1050]
溶媒が硝子体液である、本発明1042~1047および本発明1049のいずれかの方法。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】50mg/mLのVEGF Trapタンパク質、25mg/mLのVEGF Trapタンパク質、および25mg/mLのVEGF Trapタンパク質+0.1%ポリソルベート80から製造されたタンパク質粒子の集団における、ある特定の直径(ECD(μm))の、ポリマー表層の無いタンパク質粒子の相対量(%体積)を示す。
図2】50mg/mLのVEGF Trapタンパク質+50mg/mL POE、250mg/mL POE、および50mg/mL ECから製造された微粒子の集団における、ある特定の直径(ECD(μm))の微粒子の相対量(MFIによって求められた%体積)を示す。
図3】50mg/mL POE、250mg/mL POE、または50mg/mL ECから製造された微粒子から約60日にわたって放出されたVEGF Trapタンパク質の量をミリグラム単位で示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
詳細な説明
本発明の微粒子およびタンパク質コア粒子は形がほぼ球である。微粒子およびタンパク質コアの中には球体に近いものもあるが、形が不規則なものもある。従って、本明細書で使用する「直径」という用語は、以下:(a)微粒子もしくはタンパク質コアの境界を定める球体の直径、(b)微粒子もしくはタンパク質コアの範囲内にある最も大きな球体の直径、(c)(a)の境界が定められた球体と(b)の境界が定められた球体との間の平均を含む、これらの2つの間の任意の尺度、(d)微粒子もしくはタンパク質コアの最も長い軸の長さ、(e)微粒子もしくはタンパク質コアの最も短い軸の長さ、(f)長軸の長さ(d)と短軸の長さ(e)との間の平均を含む、これらの2つの間の任意の尺度、および/または(g)マイクロフローイメージング(MFI)、ナノ粒子トラッキング解析(NTA)、もしくは光遮断法(light obscuration method)、例えば、動的光散乱(DLS)によって求められた円相当径(equivalent circular diameter(ECD))のそれぞれ、およびいずれかを意味する。一般的に、Sharma et al., Micro-flow imaging: flow microscopy applied to subvisible particulate analysis in protein formulations, AAPS J. 2010 Sep; 12(3): 455-64を参照されたい。直径は一般的にマイクロメートル(μmまたはミクロン)で表される。直径は光学測定によって求めることができる。
【0037】
「微粒子化タンパク質粒子」または「タンパク質粒子」は、少量、ごく少量、または0に近い量の水(例えば、3重量%未満の水)を含む、複数のタンパク質分子を含有する粒子を意味する。本明細書で使用する微粒子化タンパク質粒子は一般的に形が球形であり、2ミクロン~約35ミクロンの範囲のECDを有する。微粒子化タンパク質粒子は特定のタンパク質実体に限定されず、治療タンパク質の調製および送達に適している。一般的な治療タンパク質には、特に、抗原結合タンパク質、例えば、可溶性受容体断片、抗体(IgGを含む)および抗体の誘導体または断片、Fc融合タンパク質を含む他のFc含有タンパク質、ならびにtrap型タンパク質を含む受容体-Fc融合タンパク質(Huang, C, Curr. Opin. Biotechnol. 20: 692-99 (2009))、例えば、VEGF-Trapが含まれる。
【0038】
本発明の微粒子化タンパク質粒子は、ミクロンサイズのタンパク質粒子を作製するための当技術分野において公知の任意の方法によって作製することができる。例えば、タンパク質粒子は、特に、噴霧乾燥(下記)、凍結乾燥、ジェットミル、懸垂滴結晶化(Ruth et al., Acta Crystallographica D56: 524-28 (2000))、段階的な沈殿(US7,998,477(2011))、タンパク質-PEG(ポリエチレングリコール)水性混合物の凍結乾燥(Morita et al., Pharma. Res. 17: 1367-73 (2000))、超臨界流体沈殿(US6,063,910(2000))、または高圧二酸化炭素によって誘導される粒子形成(Bustami et al., Pharma. Res. 17: 1360-66 (2000))によって作製されてもよい。
【0039】
本明細書で使用する「タンパク質」という用語は、ペプチド結合で互いにつながった2個以上のアミノ酸残基を含む分子をいう。ペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質はまた、グリコシル化、脂質付加、硫酸化、グルタミン酸残基のγ-カルボキシル化、ヒドロキシル化、およびADP-リボシル化を含むが、これに限定されない改変も含む。ポリペプチドは、タンパク質ベースの薬物を含めて科学的または商業的な興味の対象となる場合がある。ポリペプチドには、特に、抗体およびキメラタンパク質または融合タンパク質が含まれる。ポリペプチドは細胞培養法を用いて組換え動物細胞株によって産生される。
【0040】
「抗体」とは、2本の重(H)鎖および2本の軽(L)鎖がジスルフィド結合によって相互に接続している4本のポリペプチド鎖からなる免疫グロブリン分子をいうことが意図される。それぞれの重鎖には重鎖可変領域(HCVRまたはVH)および重鎖定常領域がある。重鎖定常領域は3つのドメインCH1、CH2、およびCH3を含有する。それぞれの軽鎖には軽鎖可変領域および軽鎖定常領域がある。軽鎖定常領域は1つのドメイン(CL)からなる。VH領域およびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、よく保存されている領域が挿入された相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域にさらに分けることができる。それぞれのVHおよびVLは3つのCDRおよび4つのFRからなり、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で並べられている。「抗体」という用語は、任意のアイソタイプまたはサブクラスのグリコシル化された免疫グロブリンおよびグリコシル化されていない免疫グロブリンの両方についての言及を含む。「抗体」という用語は、組換え手段によって調製された、発現された、作製された、または単離された抗体、例えば、抗体を発現するようにトランスフェクトされた宿主細胞から単離された抗体を含むが、これに限定されない。IgGは抗体のサブセットを含む。
【0041】
「Fc融合タンパク質」は2種類以上のタンパク質の一部または全てを含む。これらの中の1つは、天然状態では融合していない免疫グロブリン分子Fc部分である。抗体由来ポリペプチドの様々な部分(Fcドメインを含む)と融合した、ある特定の異種ポリペプチドを含む融合タンパク質の調製は、例えば、Ashkenazi et al., Proc. Natl. Acad. ScL USA 88: 10535, 1991 ; Byrn et al., Nature 344:677, 1990;およびHollenbaugh et al., 「Construction of Immunoglobulin Fusion Proteins」, Current Protocols in Immunology, Suppl. 4, 10.19.1-10.19.11頁, 1992に記載されている。「受容体Fc融合タンパク質」は、Fc部分と結合した受容体の1つまたは複数の細胞外ドメインの1つまたは複数を含む。一部の態様において、Fc部分は免疫グロブリンのヒンジ領域に続いてCH2ドメインおよびCH3ドメインを含む。一部の態様において、Fc融合タンパク質は、1種類または複数種のリガンドに結合する2種類以上の異なる受容体鎖を含有する。例えば、Fc融合タンパク質は、trap、例えば、IL-1 trap(例えば、Rilonacept、hIgG1のFcと融合したIL-1 R1細胞外領域と融合したIL-1 RAcPリガンド結合領域を含有する;その全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,927,004号を参照されたい)またはVEGF Trap(例えば、Aflibercept、hIgG1のFcと融合したVEGF受容体Flk1のIgドメイン3と融合したVEGF受容体Flt1のIgドメイン2を含有する;例えば、SEQ ID NO:1;その全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第7,087,411号および同第7,279,159号を参照されたい)である。
【0042】
本明細書で使用する「ポリマー」という用語は、共有化学結合でつながった反復単量体を含む高分子をいう。本発明の実施において用いられるポリマーは生体適合性かつ生分解性である。生体適合性かつ生分解性のポリマーは天然でもよく、合成でもよい。天然ポリマーには、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、例えば、天然タンパク質、組換えタンパク質、ゼラチン、コラーゲン、フィブリン、フィブロン、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリロイシン、ロイシン-グルタミン酸コポリマー;ならびにポリサッカライド、例えば、セルロース、アルジネート、デキストランおよびデキストランヒドロゲルポリマー、アミロース、イヌリン、ペクチンおよびガーゴム、キトサン、キチン、ヘパリン、およびヒアルロン酸が含まれる。生体適合性または生分解性の合成ポリマーには、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸-ポリグリコール酸コポリマー(PLGA)、ポリ-D,L-ラクチド-コ-グリコリド(PLGA)、PLGA-エチレンオキシドフマレート、ポリエチレングリコール1000とエステル化したPLGA-α-トコフェリルスクシネート(PLGA-TGPS)、ポリ酸無水物であるポリ[1,6-ビス(p-カルボキシフェノキシ)ヘキサン](pCPH)、ポリ(ヒドロキシ酪酸-コヒドロキシ吉草酸)(PHB-PVA)、ポリエチレングリコール-ポリ(乳酸)コポリマー(PEG-PLA)、ポリ-ε-カプロラクトン(PCL)、ポリ-アルキル-シアノ-アクリレート(PAC)、ポリ(エチル)シアノアクリレート(PEC)、ポリイソブチルシアノアクリレート、ポリ-N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(ポリ(HPMA))、ポリ-β-R-ヒドロキシブチレート(PHB)、ポリ-β-R-ヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリ-β-R-リンゴ酸、リン脂質-コレステロールポリマー、2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン/ポリエチレングリコール-ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DOPC/PEG-DSPE)/コレステロール、エチルセルロース、シクロデキストリン(CD)ベースのポリロタキサンおよびポリ擬ロタキサン、ポリブチレンスクシネート(PBS)、ポリオルトエステル、ポリオルトエステル-ポリアミジンコポリマー、ポリオルトエステル-ジアミンコポリマー、分解速度を制御するために潜在性酸を組み込んだポリオルトエステル、特に、ポリ(エチレングリコール)/ポリ(ブチレンテレフタレート)コポリマーが含まれる。
【0043】
エチルセルロース(EC)は、製薬および食品科学において用いられる周知であり、かつ容易に入手可能な生体材料である。エチルセルロース(EC)は、グルコースヒドロキシル基の一部がエチルエーテルで置換されたセルロース誘導体である。マイクロスフェア製造においてエチルセルロースを生体適合性ポリマーとして使用する方法について説明している、Martinac et al., J. Microencapsulation, 22(5): 549-561 (2005)およびおよびこの中の参考文献を参照されたい。エチル セルロースおよびエチルセルロース誘導体を作製する方法の詳細な説明についてはUS4,210,529 (1980)およびこの中の参考文献も参照されたい。
【0044】
ポリ-D,L-ラクチド-コ-グリコリド(PLGA)もまた、米食品医薬品局(FDA)により認可された、組織工学および薬学的送達系において用いられる周知の生体適合性かつ生分解性のポリマーである。PLGAは、グリコール酸単量体および乳酸単量体を含むポリエステルである。PLGAの合成およびPLGAナノ粒子の製造の説明については、Astete and Sabliov, Biomater. Sci. Polym. Ed., 17(3): 247-89 (2006)およびこの中の参考文献を参照されたい。
【0045】
ポリ-ε-カプロラクトン(PCL)は、薬物送達装置としてヒトでの使用にFDAによって認可された生体適合性かつ生分解性の別のポリマーである。PCLは、体内で急速に加水分解して無毒または低毒性のヒドロキシカルボン酸を形成するε-カプロラクトンポリエステルである。PCLの製造の説明については、Labet and Thielemans, Chemical Society Reviews 38: 3484-3504 (2009)およびこの中の参考文献を参照されたい。送達系としてのPCLベースのマイクロスフェアおよびナノスフェアの製造および使用の説明については、Sinha et al., Int. J. Pharm.、278(1):1-23(2004)およびこの中の参考文献を参照されたい。
【0046】
ポリオルトエステル(POE)は、薬物送達用に設計された生体腐食性ポリマーである。ポリオルトエステル(POE)は、一般的に、ケテンアセタール、好ましくは、環式ジケテンアセタール、例えば、グリコール縮合を介して重合してオルトエステル結合を形成した3,9-ジメチレン-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]-ウンデカンのポリマーである。ポリオルトエステルの合成および様々なタイプの説明は、例えば、US4,304,767において見られる。様々な疎水性のジオールおよびポリオールを出し入れすることによって、例えば、ヘキサントリオールをデカントリオールで置換することによって;ならびにpH感受性を高めるために、潜在性酸、例えば、オクタン二酸などをバックボーンに付加することによってポリオルトエステルを改変して、その薬物放出プロファイルおよび分解速度を制御することができる。ポリオルトエステルへの他の改変には、機能性を高めるアミンの組込みが含まれる。ポリオルトエステルの形成、説明、および使用は、US5,968,543; US4,764,364; Heller and Barr, Biomacromolecules, 5(5): 1625-32 (2004);およびHeller, Adv. Drug. Deliv. Rev., 57: 2053-62 (2005)に記載される。
【0047】
本明細書で使用する「噴霧乾燥」という句は、噴霧乾燥機を使用することによってスラリーまたは懸濁液からミクロンサイズの粒子を含む乾燥粉末を生成する方法を意味する。噴霧乾燥機は、懸濁液またはスラリーを制御された液滴サイズのスプレーに分散させるためにアトマイザーまたはスプレーノズルを使用する。噴霧乾燥によって10~500μmの液滴サイズを生じることができる。溶媒(水または有機溶媒)が乾燥するにつれて、タンパク質物質はミクロンサイズの粒子に乾燥し、粉末様物質を形成する。または、タンパク質-ポリマー懸濁液の場合、乾燥中にポリマーはタンパク質装填材料(load)を取り囲んで外殻を硬化させた。
【0048】
本発明の微粒子は、ポリマー表層またはコートで囲まれたタンパク質コアを含む。簡単に述べると、微粒子化タンパク質粒子を形成し、次いで、ポリマー溶液(溶媒に溶解したポリマー)に分散させて、タンパク質-ポリマー懸濁液を形成する。次いで、タンパク質-ポリマー懸濁液を分散させて、微粒子化(微粒化)した液滴にし、溶媒を飛ばして微粒子を形成する。
【0049】
一態様において、微粒子化タンパク質粒子は、タンパク質溶液を作製し、次いで、そのタンパク質溶液を分散に供し、加熱してタンパク質を含む乾燥粉末を形成することによって形成される。微粒子化タンパク質粒子を形成する方法の1つは噴霧乾燥による方法である。一態様において、タンパク質は、治療タンパク質の薬学的製剤を作製するために緩衝液、安定剤、および他の薬学的に許容される賦形剤を含むように処方された治療タンパク質である。例示的な薬学的製剤は、US7,365,165、US7,572,893、US7,608,261、US7,655,758、US7,807,164、US2010-0279933、US2011-0171241、およびPCT/US11/54856に記載されている。
【0050】
本発明の薬学的製剤の中に含まれる治療タンパク質の量は、製剤に望ましい具体的な特性、ならびに製剤が使用されることが意図される特定の状況および目的に応じて変化してもよい。ある特定の態様において、薬学的製剤は、約1mg/mL~約500mg/mLのタンパク質;約5mg/mL~約400mg/mLのタンパク質;約5mg/mL~約200mg/mLのタンパク質;約25mg/mL~約180mg/mLのタンパク質;約25mg/mL~約150mg/mLのタンパク質;または約50mg/mL~約180mg/mLのタンパク質を含有してもよい。例えば、本発明の製剤は、約1mg/mL;約2mg/mL;約5mg/mL;約10mg/mL;約15mg/mL;約20mg/mL;約25mg/mL;約30mg/mL;約35mg/mL;約40mg/mL;約45mg/mL;約50mg/mL;約55mg/mL;約60mg/mL;約65mg/mL;約70mg/mL;約75mg/mL;約80mg/mL;約85mg/mL;約86mg/mL;約87mg/mL;約88mg/mL;約89mg/mL;約90mg/mL;約95mg/mL;約100mg/mL;約105mg/mL;約110mg/mL;約115mg/mL;約120mg/mL;約125mg/mL;約130mg/mL;約131mg/mL;約132mg/mL;約133mg/mL;約134mg/mL;約135mg/mL;約140mg/mL;約145mg/mL;約150mg/mL;約155mg/mL;約160mg/mL;約165mg/mL;約170mg/mL;約175mg/mL;約180mg/mL;約185mg/mL;約190mg/mL;約195mg/mL;約200mg/mL;約205mg/mL;約210mg/mL;約215mg/mL;約220mg/mL;約225mg/mL;約230mg/mL;約235mg/mL;約240mg/mL;約245mg/mL;約250mg/mL;約255mg/mL;約260mg/mL;約265mg/mL;約270mg/mL;約275mg/mL;約280mg/mL;約285mg/mL;約200mg/mL;約200mg/mL;または約300mg/mLの治療タンパク質を含んでもよい。
【0051】
本発明の薬学的製剤は1種類または複数種の賦形剤を含む。本明細書で使用する「賦形剤」という用語は、望ましい均質性、粘性、または安定作用をもたらすように製剤に添加される任意の非治療剤を意味する。
【0052】
本発明の薬学的製剤は、1種類または複数種の炭水化物、例えば、1種類または複数種の糖も含んでよい。糖は還元糖でもよく、非還元糖でもよい。「還元糖」は、例えば、ケトン基またはアルデヒド基のある糖を含み、反応性ヘミアセタール基を含有する。反応性ヘミアセタール基があると糖は還元剤として作用することができる。還元糖の具体例には、フルクトース、グルコース、グリセルアルデヒド、ラクトース、アラビノース、マンノース、キシロース、リボース、ラムノース、ガラクトース、およびマルトースが含まれる。非還元糖は、アセタールであり、かつアミノ酸またはポリペプチドと実質的に反応してメイラード反応を開始しないアノマー炭素を含んでもよい。非還元糖の具体例には、スクロース、トレハロース、ソルボース、スクラロース(sucralose)、メレチトース、およびラフィノースが含まれる。糖酸には、例えば、サッカリン酸、グルコン酸塩、ならびに他のポリヒドロキシ糖およびその塩が含まれる。
【0053】
本発明の薬学的製剤の中に含まれる糖の量は、製剤が使用される具体的な状況および所期の目的に応じて変化する。ある特定の態様において、製剤は、約0.1%~約20%の糖;約0.5%~約20%の糖;約1%~約20%の糖;約2%~約15%の糖;約3%~約10%の糖;約4%~約10%の糖;または約5%~約10%の糖を含有してもよい。例えば、本発明の薬学的製剤は、約0.5%;約1.0%;約1.5%;約2.0%;約2.5%;約3.0%;約3.5%;約4.0%;約4.5%;約5.0%;約5.5%;約6.0%;6.5%;約7.0%;約7.5%;約8.0%;約8.5%;約9.0%;約9.5%;約10.0%;約10.5%;約11.0%;約11.5%;約12.0%;約12.5%;約13.0%;約13.5%;約14.0%;約14.5%;約15.0%;約15.5%;約16.0%;16.5%;約17.0%;約17.5%;約18.0%;約18.5%;約19.0%;約19.5%;または約20.0%の糖(例えば、スクロース)を含んでもよい。
【0054】
本発明の薬学的製剤はまた1種類または複数種の界面活性剤も含んでよい。本明細書で使用する「界面活性剤」という用語は、溶解している液体の表面張力を下げる、および/または油と水との界面張力を下げる物質を意味する。界面活性剤はイオン性でもよく、非イオン性でもよい。本発明の製剤に含めることができる例示的な非イオン性界面活性剤には、例えば、アルキルポリ(エチレンオキシド)、アルキルポリグルコシド(例えば、オクチルグルコシドおよびデシルマルトシド)、脂肪アルコール、例えば、セチルアルコールおよびオレイルアルコール、コカミド(cocamide)MEA、コカミドDEA、およびコカミドTEAが含まれる。本発明の製剤に含めることができる具体的な非イオン性界面活性剤には、例えば、ポリソルベート、例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート28、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート80、ポリソルベート81、およびポリソルベート85;ポロキサマー、例えば、ポロキサマー188、ポロキサマー407;ポリエチレン-ポリプロピレングリコール;またはポリエチレングリコール(PEG)が含まれる。ポリソルベート20はTWEEN20、ソルビタンモノラウレートおよびポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートとも知られる。
【0055】
本発明の薬学的製剤の中に含まれる界面活性剤の量は、製剤に望ましい具体的な特性、ならびに製剤が使用されることが意図される特定の状況および目的に応じて変化してもよい。ある特定の態様において、製剤は、約0.05%~約5%の界面活性剤;または約0.1%~約0.2%の界面活性剤を含有してもよい。例えば、本発明の製剤は、約0.05%;約0.06%;約0.07%;約0.08%;約0.09%;約0.10%;約0.11%;約0.12%;約0.13%;約0.14%;約0.15%;約0.16%;約0.17%;約0.18%;約0.19%;約0.20%;約0.21%;約0.22%;約0.23%;約0.24%;約0.25%;約0.26%;約0.27%;約0.28%;約0.29%;または約0.30%の界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)を含んでもよい。
【0056】
本発明の薬学的製剤はまた1種類または複数種の緩衝液も含んでよい。一部の態様において、緩衝液は、pH5.5~7.4の範囲と完全または部分的に重複する緩衝範囲を有する。一態様において、緩衝液のpKaは約6.0±0.5である。ある特定の態様において、緩衝液はリン酸緩衝液を含む。ある特定の態様において、リン酸は、5mM±0.75mM~15mM±2.25mM;6mM±0.9mM~14mM±2.1mM;7mM±1.05mM~13mM±1.95mM;8mM±1.2mM~12mM±1.8mM;9mM±1.35mM~11mM±1.65mM;10mM±1.5mM;または約10mMの濃度で存在する。ある特定の態様において、緩衝系は、pH6.0±0.5で10mM±1.5mMのヒスチジンを含む。
【0057】
本発明の薬学的製剤のpHは約5.0~約8.0でもよい。例えば、本発明の製剤のpHは、約5.0;約5.2;約5.4;約5.6;約5.8;約6.0;約6.2;約6.4;約6.6;約6.8;約7.0;約7.2;約7.4;約7.6;約7.8;または約8.0でもよい。
【0058】
特定の一態様において、治療タンパク質はVEGF Trapタンパク質である。微粒子化VEGF Trapタンパク質粒子を形成するための薬学的製剤は、約10mg/mL~約100mg/mLのVEGF Trapタンパク質、約10mg/mL、約15mg/mL、約20mg/mL、約25mg/mL、約30mg/mL、約35mg/mL、約40mg/mL、約45mg/mL、約50mg/mL、約55mg/mL、約60mg/mL、約65mg/mL、約70mg/mL、約75mg/mL、約80mg/mL、約85mg/mL、約90mg/mL、約95mg/mL、または約100mg/mLのVEGF Trapタンパク質を含有してもよい。溶液は、約5mM~約50mMの1種類または複数種の緩衝液を含有してもよい。一態様において、緩衝液は、pH約6±0.5の約10mMリン酸である。溶液はまた約1%~約10%の濃度のスクロースも含有してよい。一態様において、溶液は約2%w/wのスクロースを含有する。
【0059】
一部の態様において、治療タンパク質溶液は、10mMリン酸、pH6.2、2%スクロース、任意で、0.1%ポリソルベートの中に約25mg/mLまたは約50mg/mLのVEGF Trapタンパク質を含有する。
【0060】
次いで、治療タンパク質製剤を分散および乾燥に供して、微粒子化タンパク質粒子を形成する。微粒子化タンパク質粒子を作製する方法の1つは、タンパク質溶液を噴霧乾燥に供する方法である。噴霧乾燥は当技術分野において一般に公知であり、例えば、BUCHI Mini Spray Dryer B-290(Buchi Labortechnik AG, Flawil, CH)などの機器において実施することができる。特定の一態様において、タンパク質溶液(例えば、前記のVEGF Trap製剤のいずれか1つであるが、これに限定されない)を約2mL/min~約15mL/minまたは約7mL/minの速度で噴霧乾燥機に注入する。噴霧乾燥機の入口温度を、水の沸点より高い温度、例えば、約130℃に設定する。出口温度を、水の沸点より低く、かつ周囲温度より高い温度、例えば、55℃に設定する。特定の一態様では、タンパク質溶液(例えば、VEGF Trap溶液またはIgG溶液)をBUCHI Mini Spray Dryer B-290に約7mL/minで注入し、入口温度を約130℃、出口温度を約55℃、アスピレーターを33m3/hに設定し、スプレーガスを530L/hに設定する。
【0061】
結果として生じた微粒子化タンパク質粒子のサイズは特定の製剤ならびにタンパク質および賦形剤の濃度に応じて直径が約1μm~約100μmの範囲である。一部の態様において、微粒子化タンパク質粒子の直径は、約1μm~約100μm、約1μm~約40μm、約2μm~約15μm、約2.5μm~約13μm、約3μm~約10μm、約5μm、約6μm、約7μm、約8μm、約9μm、約10μm、約11μm、または約12μmである。
【0062】
次いで、微粒子化タンパク質粒子を生体適合性かつ生分解性のポリマーでコーティングする。これは、微粒子化タンパク質粒子をポリマー溶液中に懸濁することによって実現することができる。ポリマー溶液は、本質的には、溶媒に溶解したポリマーである。例えば、生体適合性かつ生分解性のポリマーを、特に、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、または他のいくつかの有用な溶媒に溶解してもよい。酢酸エチルは安全な溶媒として広く知られており、薬物、移植片、および食料品の調製において用いられることが多い。
【0063】
一部の態様において、ポリマーはエチルセルロース(「EC」)、ポリ(乳酸)(「PLA」)、ポリオルトエステル(「POE」)、ポリ-D,L-ラクチド-コ-グリコリド(「PLGA」)、またはポリ-ε-カプロラクトン(「PCL」)でもよい。ポリマーは、約10mg/mL~約300mg/mL、約15mg/mL~約295mg/mL、約20mg/mL~約290mg/mL、約25mg/mL~約280mg/mL、約30mg/mL~約270mg/mL、約35mg/mL~約265mg/mL、約40mg/mL~約260mg/mL、約45mg/mL~約260mg/mL、約50mg/mL~約255mg/mL、約55mg/mL~約250mg/mL、約20mg/mL、約25mg/mL、約30mg/mL、約35mg/mL、約40mg/mL、約45mg/mL、約50mg/mL、約75mg/mL、約100mg/mL、約125mg/mL、約150mg/mL、約175mg/mL、約200mg/mL、約225mg/mL、または約250mg/mLの濃度で溶媒(例えば、酢酸エチル)に溶解することができる。
【0064】
微粒子化タンパク質粒子は、約10mg/mL~約100mg/mL、約15mg/mL~約95mg/mL、約20mg/mL~約90mg/mL、約25mg/mL~約85mg/mL、約30mg/mL~約80mg/mL、約35mg/mL~約75mg/mL、約40mg/mL~約70mg/mL、約45mg/mL~約65mg/mL、約50mg/mL~約60mg/mL、約25mg/mL、約30mg/mL、約35mg/mL、約40mg/mL、約45mg/mL、または約50mg/mLでポリマー溶液に添加される。粒子を混合してスラリーまたは懸濁液を形成する。次いで、スラリーまたは懸濁液を分散および乾燥に供して、ポリマーコーティングされたタンパク質粒子(すなわち、微粒子)を形成する。
【0065】
一態様において、タンパク質粒子-ポリマー溶液懸濁液は噴霧乾燥に供される。噴霧乾燥は、微粒子化タンパク質粒子を製造するための方法と同様に行われるが、有機溶媒またはポリマーの着火を防ぐために取り入れ口温度を下げる。簡単に述べると、タンパク質粒子-ポリマー溶液懸濁液を約5mL/min~約20mL/minまたは約12.5mL/minの速度で噴霧乾燥機に注入する。懸濁液を、約530L/hのアスピレーター空気流速および35m3/h(mm)のスプレーガス流速で12.5mL/minで噴霧乾燥機に注入した。入口温度を90°に設定し、出口温度を約54℃に設定した。噴霧乾燥機の入口温度を、溶媒の引火点より高い温度、例えば、約90℃に設定する。出口温度を、取り入れ口温度より低く、かつ周囲温度より高い温度、例えば、54℃に設定する。特定の一態様において、約50mg/mL~約250mg/mLのポリマー/酢酸エチル溶液に溶解した約50mg/mLのタンパク質粒子(例えば、VEGF Trap)を含有する懸濁液を、約90℃の入口温度および約54℃の出口温度でBUCHI Mini Spray Dryer B-290に約12.5mL/minで注入する。アスピレーターを約35m3/hに設定し、スプレーガスを約530L/hに設定する。
【0066】
結果として生じた微粒子はポリマー表層内にタンパク質粒子コアを含有し、約2μm~約70μm、約5μm~約65μm、約10μm~約60μm、約15μm~約55μm、約20μm~約50μm、約15μm、約20μm、約25μm、または約30μmの範囲の直径を有する。サイズのばらつきは主にポリマー表層の厚みを反映しているが、タンパク質コアの直径は、ある程度、サイズのばらつきの一因となり得る。ポリマー溶液の開始濃度および/またはポリマーそれ自体を操作することによって微粒子の直径を制御することができる。例えば、50mg/mLポリマーを用いて製造された微粒子のサイズの中央値は約15μm~20μmであるのに対して、250mg/mLポリマーを用いて製造された微粒子のサイズの中央値は約30μmである。
【0067】
本発明の微粒子はタンパク質治療剤の持続放出または徐放において有用である。例えば、VEGF Trap微粒子は、VEGF Trap治療タンパク質の徐放において、例えば、血管性眼障害の処置のために硝子体において、または癌もしくは他の障害の処置のためにVEGF Trap徐放のための皮下移植において有用であると考えられる。
【0068】
本発明の微粒子は生理学的水性環境中で約37℃でタンパク質を比較的一定の速度で長期間にわたって少なくとも60日まで放出する。一般的に、高濃度のポリマー(例えば、250mg/mL)で製造された微粒子は比較的直線的なタンパク質放出プロファイルを示す傾向があったのに対して、低濃度のポリマー(例えば、50mg/mL)で製造された微粒子は初期バーストの後に遅延性バースト放出の開始を示す傾向があった。
【0069】
さらに、高濃度のポリマーから形成された微粒子は、低濃度の粒子から形成された微粒子よりゆっくりとしたタンパク質放出速度を示した。経時的に微粒子から放出されたタンパク質の質は開始タンパク質材料の質と一致した。タンパク質分解ほとんどまたは全く生じなかった。
【実施例
【0070】
以下の実施例は、当業者に、本発明の方法および組成物を作製および使用するやり方を完璧に開示および説明するために示され、本発明者らが本発明者らの発明とみなすものの範囲を限定することを目的としない。使用される数値(例えば、量、サイズなど)に関する精度を保証する取り組みがなされたが、いくらかの実験の誤差および偏差が占めるはずである。
【0071】
以下の実施例では、アミノ酸配列SEQ ID NO:1を含むポリペプチドの二量体であるVEGF-Trapタンパク質(「VGT」)は代表的な受容体-Fc融合タンパク質として役立つ。
【0072】
実施例1:微粒子化タンパク質
10mMリン酸、2%スクロース、pH6.2に溶解した、25mg/mL VEGF Trapタンパク質(「VGT」)を含有する溶液、25mg/mL VGT+0.1%ポリソルベート80を含有する溶液、および50mg/mL VGTを含有する溶液をそれぞれ独立して噴霧乾燥マイクロナイザー(micronizer)(BUCHI Mini Spray Dryer B-290, Buchi Labortechnik AG, Flawil, CH)に入れて微粒化して、VEGF Trapを含有する液滴を形成した。熱を加えて液滴から水を蒸発させて、VEGF Trapを含有する粉末を得た。入口温度を130℃に設定し、出口温度を約55℃に設定した。アスピレーターを33m3/hに設定し、スプレーガスを530L/hに設定した。VGT溶液を約7mL/minで注入した。
【0073】
結果として得られたVGT粒子のサイズをマイクロフローイメージング(MFI)および動的光イメージング(DLS)によって測定した。図1は、25mg/mL VGT、25mg/mL VGT+0.1%ポリソルベート80、および50mg/mL VGT濃度のそれぞれから得られたVGT粒子のMFIによって求められた粒径分布を示す。全ての濃度についてVGT粒子の円相当径(ECD)は約1μm~約39μmの範囲であり、粒子の大半のサイズが約2μm~約14μmの範囲であった。25mg/mL VGT溶液については、粒子は約2.5μm~約8.8μmの範囲内でクラスター化し、最頻値は約6μmであった。25mg/mL VGT+0.1%ポリソルベート80溶液については、粒子は約2.5μm~約9.7μmの範囲内でクラスター化し、最頻値は約6μmであった。50mg/mL VGT溶液については、粒子は約2.7μm~約12.8μmの範囲内でクラスター化し、最頻値は約7μmであった。MFI法およびDLS法によって求められた、それぞれの製剤の直径の中央値を表1に示した。
【0074】
VGT粒子を注射用水に溶解して再構成し、タンパク質純度を求めるためにサイズ排除、すなわち、サイズ排除-超高速液体クロマトグラフィー(SE-UPLC)によって調べた。出発材料と比べて微粒子化後に純度の変化は認められなかった(表3を参照されたい)。
【0075】
(表1)MFIおよびDLSによって求められたタンパク質粒径の中央値(μm)
【0076】
実施例2:有機ポリマー溶液に溶解した微粒子化タンパク質懸濁液
様々なポリマーを使用した。または、様々なポリマーは微粒子のポリマー表層の製造において使用されることが意図される。これらのポリマーには、特に、エチルセルロース(「EC」)、ポリオルトエステル(「POE」)、ポリ-D,L-ラクチド-コ-グリコリド(「PLGA」)、およびポリ-ε-カプロラクトン(「PCL」)が含まれる。
【0077】
エチルセルロースコーティング
微粒子化VEGF Trap粒子を、酢酸エチルに溶解した50mg/mLエチルセルロースの溶液中に約50mg/mL VGTの濃度で懸濁した。本明細書では「VGT-50-EC懸濁液」と呼ぶ。
【0078】
微粒子化VEGF Trap粒子を、酢酸エチルに溶解した100mg/mLエチルセルロースの溶液中に約50mg/mL VGTの濃度で懸濁した。本明細書では「VGT-100-EC懸濁液」と呼ぶ。
【0079】
微粒子化VEGF Trap粒子を、酢酸エチルに溶解した250mg/mLエチルセルロースの溶液中に約50mg/mL VGTの濃度で懸濁する。本明細書では「VGT-250-EC懸濁液」と呼ぶ。
【0080】
ポリオルトエステルコーティング
微粒子化VEGF Trap粒子を、酢酸エチルに溶解した約5%潜在性酸を含有する50mg/mLポリオルトエステルの溶液中に約50mg/mL VGTの濃度で懸濁した。本明細書では「VGT-50-POE懸濁液」と呼ぶ。
【0081】
微粒子化VEGF Trap粒子を、酢酸エチルに溶解した約5%潜在性酸を含有する250mg/mLポリオルトエステルの溶液中に約50mg/mL VGTの濃度で懸濁した。本明細書では「VGT-250-POE懸濁液」と呼ぶ。
【0082】
ポリ-D,L-ラクチド-コ-グリコリドコーティング
微粒子化VEGF Trap粒子を、酢酸エチルに溶解した50mg/mL PLGAの溶液中に約50mg/mL VGTの濃度で懸濁した。本明細書では「VGT-50-PLGA懸濁液」と呼ぶ。
【0083】
微粒子化VEGF Trap粒子を、酢酸エチルに溶解した200mg/mL PLGAの溶液中に約50mg/mL VGTの濃度で懸濁した。本明細書では「VGT-200-PLGA懸濁液」と呼ぶ。
【0084】
微粒子化VEGF Trap粒子を、酢酸エチルに溶解した250mg/mL PLGAの溶液中に約50mg/mL VGTの濃度で懸濁した。本明細書では「VGT-250-PLGA懸濁液」と呼ぶ。
【0085】
ポリ-ε-カプロラクトンコーティング
微粒子化VEGF Trap粒子を、酢酸エチルに溶解した50mg/mL PCLの溶液中に約50mg/mL VGTの濃度で懸濁する。本明細書では「VGT-50-PCL懸濁液」と呼ぶ。
【0086】
微粒子化VEGF Trap粒子を、酢酸エチルに溶解した250mg/mL PCLの溶液中に約50mg/mL VGTの濃度で懸濁する。本明細書では「VGT-250-PCL懸濁液」と呼ぶ。
【0087】
PCLのTgは低く、下記のような加熱乾燥に適していない場合があるが、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)を含む水浴での溶媒抽出に使用することができる。
【0088】
実施例3:タンパク質-ポリマー微細液滴の分散および溶媒の除去
実施例2(前記)に従って作製した、それぞれのVGTポリマー懸濁液を、BUCHI Mini Spray Dryer B-290(Buchi Labortechnik AG, Flawil, CH)を用いて噴霧乾燥に供した。簡単に述べると、それぞれの懸濁液を微粒化して微小滴を形成した。その後に、微小滴を加熱乾燥して溶媒を除去し、ポリマーコーティングされたタンパク質微粒子を形成した。懸濁液を12.5mL/minで噴霧乾燥機に注入した。アスピレーター空気およびスプレーガスの流速はそれぞれ約530L/hおよび35m3/hであった。入口温度を90°に設定し、出口温度を約54℃に設定した。
【0089】
実施例4:タンパク質-ポリマー微粒子の特徴付け
例示されたプロセスに従って製造された、噴霧乾燥され、ポリマーコーティングされたタンパク質粒子は、約2.5μm~約65μmの範囲の円相当径を有する複数の微粒子を生じる(図2)。サイズのばらつきは主にポリマー表層の厚みを反映しているが、タンパク質コアの直径は、ある程度、サイズのばらつきの一因となり得る。
【0090】
微粒子の直径はポリマー溶液の開始濃度と相関関係にある(表2、図2)。50mg/mLポリマーを用いて製造された微粒子のサイズの中央値は約17μm±2.8μmであった。250mg/mLポリマーを用いて製造された微粒子のサイズの中央値は約29μmであった。
【0091】
実施例5:噴霧乾燥後のタンパク質安定性
VEGF-Trapタンパク質の安定性を、定量サイズ排除クロマトグラフィー(SE-UPLC)を用いて評価した。定量サイズ排除クロマトグラフィー(SE-UPLC)を用いると、無傷の単量体に対する小さな分解産物および大きな凝集産物の定量が可能になる。結果を表3に記載した。本質的に、噴霧乾燥およびスプレーコーティングプロセスの全体を通してタンパク質は安定なままであった。
【0092】
製造された微粒子について、重量によるタンパク質とポリマーとの比の平均も求めた。様々なポリマーおよびポリマー濃度で製造された微粒子の収集物を抽出し、定量逆相クロマトグラフィー(RP-HPLC)に供した。結果を表3に示した。高い開始濃度のポリマーが微粒子上に厚いポリマー表層を生じるという理論を支持するようにデータを解釈することができる。
【0093】
(表2)円相当径の値
【0094】
(表3)タンパク質安定性および装填
1コーティングされていないVEGF Trapを除去するために1時間、再構成した後に、抽出されたVEGF Trapに基づく。
2SE-UPLCによるパーセントネイティブの平均(n=4)。
3RP-HPLCによるポリマーに対するVGT装填材料の重量:重量パーセントの平均(n=4)。
【0095】
実施例6:微粒子からのタンパク質放出
様々な微粒子バッチを緩衝液(10mMリン酸、0.03%ポリソルベート20、pH7.0)中に懸濁し、37℃でインキュベートしながら、経時的に溶液に放出されたタンパク質の量および質を測定することによって微粒子からのタンパク質の放出を確かめた。1~2週間の間隔をおいて微粒子を穏やかな遠心分離によってペレット化し、放出されたタンパク質を含有する上清の80%を後の分析のために収集した。等量の新鮮な緩衝液を交換し、穏やかにボルテックスすることによって微粒子を再懸濁し、37℃のインキュベーションチャンバーに戻した。上清中のタンパク質の量および質をサイズ排除クロマトグラフィーによって評価した。
【0096】
一般的に、高濃度のポリマー(例えば、250mg/mL)で製造された微粒子は比較的直線的なタンパク質放出プロファイルを示す傾向があったのに対して、低濃度のポリマー(例えば、50mg/mL)で製造された微粒子は初期バーストの後に遅延性バースト放出の開始を示す傾向があった。安定なままであったタンパク質の約60日までの徐放を示すデータを図3に図示した(放出データ)。表4は、直線的な放出速度データをまとめたものである。
【0097】
(表4)タンパク質放出の動態
【0098】
実施例7:粒径はポリマー濃度およびスプレーガス流によって操作することができる
粒径分布をポリマー濃度および微粒化スプレーガス流によって制御した。ポリマー濃度を高めると大きな粒子に分布がシフトした(200mg/mL PLGA、45mmスプレーガス流対100mg/mL PLGA、45mmスプレーガス流;表5を参照されたい)。同様に、微粒化スプレーガス流を弱めると液滴が大きくなり、従って、粒子が大きくなった(100mg/mL PLGA、25mmスプレーガス流対100mg/mL PLGA、45mmスプレーガス流;表5を参照されたい)。
【0099】
(表5)粒径(全ての計量は近似値である)
【0100】
実施例8:粒径および様々なポリマーを通過するタンパク質放出
VEGF TrapまたはIgGを、低分子量(202S)ポリ(乳酸)(PLA-LMW)、高分子量(203S)ポリ(乳酸)(PLA-HMW)、ポリ酸無水物であるポリ[1,6-ビス(p-カルボキシフェノキシ)ヘキサン](pCPH)、ポリ(ヒドロキシ酪酸-コヒドロキシ吉草酸)(PHB-PVA)、PEG-ポリ(乳酸)ブロック共重合体(PEG-PLA)、およびポリ-D,L-ラクチド-コ-グリコリド(PLGA)でスプレーコーティングした。25mg/mLの噴霧乾燥済タンパク質を50~100mg/mLポリマーと組み合わせた。インビトロ放出アッセイを10mMリン酸緩衝液、pH7.2中、37℃で行った。結果を表6に示した。
【0101】
(表6)ポリマー依存性の粒径およびタンパク質放出(全ての計量は近似値である)
【0102】
実施例9:様々なポリマーにおけるタンパク質安定性
VEGF TrapおよびIgGをそれぞれのポリマーコートから抽出し、SE-UPLCによって純度について測定した。結果を表7にまとめた。一般的に、タンパク質は、試験されたポリマーのスプレーコーティングプロセスと適合した。タンパク質を放出し続けたポリマーについて、タンパク質は少なくとも14日間、安定なままであった。
【0103】
(表7)
【0104】
配列情報
SEQUENCE LISTING
<110> Regeneron Pharmaceuticals, Inc.
<120> Polymer Protein Microparticles
<150> US 61/561,525
<151> 2011-11-18
<160> 1
<170> PatentIn version 3.5

<210> 1
<211> 415
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> synthetic
<400> 1
Ile Ile His Met Thr Glu Gly Arg Glu Leu Val Ile Pro Cys Arg Val
1 5 10 15
Thr Ser Pro Asn Ile Thr Val Thr Leu Lys Lys Phe Pro Leu Asp Thr
20 25 30
Leu Ile Pro Asp Gly Lys Arg Ile Ile Trp Asp Ser Arg Lys Gly Phe
35 40 45
Ile Ile Ser Asn Ala Thr Tyr Lys Glu Ile Gly Leu Leu Thr Cys Glu
50 55 60
Ala Thr Val Asn Gly His Leu Tyr Lys Thr Asn Tyr Leu Thr His Arg
65 70 75 80
Gln Thr Asn Thr Ile Ile Asp Val Val Leu Ser Pro Ser His Gly Ile
85 90 95
Glu Leu Ser Val Gly Glu Lys Leu Val Leu Asn Cys Thr Ala Arg Thr
100 105 110
Glu Leu Asn Val Gly Ile Asp Phe Asn Trp Glu Tyr Pro Ser Ser Lys
115 120 125
His Gln His Lys Lys Leu Val Asn Arg Asp Leu Lys Thr Gln Ser Gly
130 135 140
Ser Glu Met Lys Lys Phe Leu Ser Thr Leu Thr Ile Asp Gly Val Thr
145 150 155 160
Arg Ser Asp Gln Gly Leu Tyr Thr Cys Ala Ala Ser Ser Gly Leu Met
165 170 175
Thr Lys Lys Asn Ser Thr Phe Val Arg Val His Glu Lys Asp Lys Thr
180 185 190
His Thr Cys Pro Pro Cys Pro Ala Pro Glu Leu Leu Gly Gly Pro Ser
195 200 205
Val Phe Leu Phe Pro Pro Lys Pro Lys Asp Thr Leu Met Ile Ser Arg
210 215 220
Thr Pro Glu Val Thr Cys Val Val Val Asp Val Ser His Glu Asp Pro
225 230 235 240
Glu Val Lys Phe Asn Trp Tyr Val Asp Gly Val Glu Val His Asn Ala
245 250 255
Lys Thr Lys Pro Arg Glu Glu Gln Tyr Asn Ser Thr Tyr Arg Val Val
260 265 270
Ser Val Leu Thr Val Leu His Gln Asp Trp Leu Asn Gly Lys Glu Tyr
275 280 285
Lys Cys Lys Val Ser Asn Lys Ala Leu Pro Ala Pro Ile Glu Lys Thr
290 295 300
Ile Ser Lys Ala Lys Gly Gln Pro Arg Glu Pro Gln Val Tyr Thr Leu
305 310 315 320
Pro Pro Ser Arg Asp Glu Leu Thr Lys Asn Gln Val Ser Leu Thr Cys
325 330 335
Leu Val Lys Gly Phe Tyr Pro Ser Asp Ile Ala Val Glu Trp Glu Ser
340 345 350
Asn Gly Gln Pro Glu Asn Asn Tyr Lys Thr Thr Pro Pro Val Leu Asp
355 360 365
Ser Asp Gly Ser Phe Phe Leu Tyr Ser Lys Leu Thr Val Asp Lys Ser
370 375 380
Arg Trp Gln Gln Gly Asn Val Phe Ser Cys Ser Val Met His Glu Ala
385 390 395 400
Leu His Asn His Tyr Thr Gln Lys Ser Leu Ser Leu Ser Pro Gly
405 410 415
図1
図2
図3
【配列表】
0007542090000001.xml