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特許7542128複数層の正孔輸送層を有するペロブスカイト電池及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】複数層の正孔輸送層を有するペロブスカイト電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10K 30/50 20230101AFI20240822BHJP
   H10K 30/40 20230101ALI20240822BHJP
   H10K 30/86 20230101ALI20240822BHJP
   H10K 85/50 20230101ALI20240822BHJP
   C23C 14/08 20060101ALI20240822BHJP
   C23C 14/34 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
H10K30/50
H10K30/40
H10K30/86
H10K85/50
C23C14/08 J
C23C14/34 M
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2023500387
(86)(22)【出願日】2021-10-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-05
(86)【国際出願番号】 CN2021126525
(87)【国際公開番号】W WO2023070338
(87)【国際公開日】2023-05-04
【審査請求日】2023-01-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】王燕東
(72)【発明者】
【氏名】陳国棟
(72)【発明者】
【氏名】林維楽
(72)【発明者】
【氏名】劉召輝
(72)【発明者】
【氏名】蘇碩剣
(72)【発明者】
【氏名】郭永勝
【審査官】原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-012819(JP,A)
【文献】特開2018-190928(JP,A)
【文献】国際公開第2020/261347(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第111640867(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第112086535(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第113363393(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111293229(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 30/00-30/89
H10K 39/00-39/38
H10K 50/00-50/88
H10K 59/00-59/95
H10K 71/00-71/80
H10K 85/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数層の正孔輸送層を有するペロブスカイト電池を製造する方法であって、前記複数層の正孔輸送層を形成する工程を含み、前述した、複数層の正孔輸送層を形成する工程は、
酸化ニッケルターゲット材を利用して第一の雰囲気においてスパッタリングを行い、第一の正孔輸送層を形成するステップであって、前記第一の雰囲気は、酸素ガス雰囲気、またはアルゴンガスと酸素ガスとを含む雰囲気であり、アルゴンガスと酸素ガスとを含む雰囲気である場合、アルゴンガスと酸素ガスとの体積比は、0.1:1から1.5:1であるステップ(1)と、
前記第一の正孔輸送層に対してアニール処理を行うステップ(2)と、
酸化ニッケルターゲット材を利用して、第二の雰囲気において、アニール処理後の前記第一の正孔輸送層上にスパッタリングを行い、第二の正孔輸送層を形成するステップであって、前記第二の雰囲気は、アルゴン含有ガス雰囲気、またはアルゴン含有ガスと酸素ガスとを含む雰囲気であり、アルゴン含有ガスと酸素ガスとを含む雰囲気である場合、アルゴン含有ガスと酸素ガスとの体積比は、100:1から4:1であり、アルゴン含有ガスは、アルゴンガスと任意の水素ガスとを含むステップ(3)とを含む、方法。
【請求項2】
前記酸化ニッケルターゲット材における酸化ニッケルの純度は、95重量%以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップ(1)及び/又は前記ステップ(3)におけるスパッタリングは、マグネトロンスパッタリングである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第一の正孔輸送層及び/又は前記第二の正孔輸送層の厚さは、5~50nmである、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第一の雰囲気は、アルゴンガスと酸素ガスを含む雰囲気であり、アルゴンガスと酸素ガスとの体積比は、0.1:1から1:1である、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップ(2)において、アニール処理は、200~500℃の温度で1~45min行われる、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ステップ(2)において、アニール処理は、真空中で行われる、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記ステップ(2)において、アニール処理は、温度が、250~450℃であり、アニール処理時間が、5~40minである、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記第二の雰囲気は、アルゴン含有ガスと酸素ガスを含む雰囲気であり、アルゴン含有ガスと酸素ガスとの体積比は、100:1から5:1である、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
アルゴン含有ガスは、アルゴンガスと水素ガスとを含み、そのうち、アルゴンガスと水素ガスとの体積比は、90:10から99:1である、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
アルゴン含有ガスは、アルゴンガスと水素ガスとを含み、そのうち、アルゴンガスと水素ガスとの体積比は、95:5である、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記ステップ(1)及び/又は前記ステップ(3)において、スパッタリングのパワーは、300W~10kWであり、気圧は、1×10-4~100Paである、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
透明基板を提供するステップと、
前記透明基板上に透明導電層を形成するステップと、
前記透明導電層上に前記複数層の正孔輸送層を形成するステップと、
前記複数層の正孔輸送層の最外層上にペロブスカイト層を形成するステップと、
前記ペロブスカイト層上に電子輸送層を形成するステップと、
前記電子輸送層上に裏面電極を形成するステップとのうちの少なくとも一つをさらに含む、請求項1から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
透明基板を提供するステップと、
前記透明基板上に透明導電層を形成するステップと、
前記透明導電層上に電子輸送層を形成するステップと、
前記電子輸送層上にペロブスカイト層を形成するステップと、
前記ペロブスカイト層に前記複数層の正孔輸送層を形成するステップと、
前記複数層の正孔輸送層の最外層上に裏面電極を形成するステップとのうちの少なくとも一つをさらに含む、請求項1から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記ペロブスカイト電池は、複数層の正孔輸送層を含み、前記複数層の正孔輸送層は、少なくとも前記第一の正孔輸送層と前記第二の正孔輸送層とを含む、請求項1から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記ペロブスカイト電池は、透明基板と、透明導電層と、前記複数層の正孔輸送層と、ペロブスカイト層と、電子輸送層と、裏面電極とをこの順に含むか、又は、透明基板と、透明導電層と、電子輸送層と、ペロブスカイト層と、前記複数層の正孔輸送層と、裏面電極とをこの順に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記複数層の正孔輸送層は、前記第一の正孔輸送層と前記第二の正孔輸送層とからなる二層酸化ニッケルフィルムであり、フィルムの厚さは、10~100nmである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記透明導電層は、酸化インジウムスズ(ITO)とフッ素ドープ酸化スズ(FTO)とのうちの一つ又は複数から選択される、請求項16から請求項17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記電子輸送層は、[6,6]-フェニル-C61-酪酸メチルエステル(PCBM)、C60、BCP(2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、SnO2のうちの一つ又は複数から選択される、請求項16から18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記裏面電極は、ITO、タングステンドープ酸化インジウム(IWO)、AZO、Au、Ag、Cu、Al、Ni、Cr、Bi、Pt、Mgのうちの一つ又は複数から選択される、請求項16から19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記透明基板は、ガラスである、請求項16から20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記ペロブスカイト層は、CH3NH3PbI3、CH3NH3PbI3-xClx、CH3NH3PbI3-xBrxのうちの一つ又は複数を含み、そのうち0<x<3である、請求項16から21のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、太陽電池技術分野に関し、特に複数層の正孔輸送層を有するペロブスカイト電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
世界的気候変動問題は、すでに世界中で益々重視され、人々は、普遍的に炭素排出を徐々に削減するという合意に達している。しかしながら、実際の行動では、各国は、いずれも炭素排出の削減と経済発展との矛盾を解決する必要がある。エネルギーは、経済の命脈であるため、主要な炭素排出源である化石エネルギーは、依然としてエネルギー仕組みにおいて絶対的な地位を占めている。そのため、新エネルギーの開発を加速させることは、非常に差し迫った任務になっている。新エネルギーは、太陽エネルギー、風力エネルギー、原子力エネルギーなどを含む。多くの新エネルギー技術の中で、太陽電池は、汚染がなく、炭素排出がなく、使用が便利で、応用範囲が広いなどの多くの利点がある。
【0003】
ペロブスカイト太陽電池は、新規な太陽電池ファミリーの重要な一員であり、そのエネルギー変換効率は、2009年の3.8%から2020年の28%近くに向上しており、非常に大きな発展の見通しがある。ペロブスカイト太陽電池は、一般的に、導電ガラス層と、電子輸送層と、ペロブスカイト層と、正孔輸送層と、裏面電極とを含む。これまで、ペロブスカイト太陽電池における正孔輸送層は、主に酸化ニッケルを用いて製造されており、使用される主流の方法は、溶液スピンコーティング法と焼結法である。しかしながら、溶液スピンコーティング法を用いてペロブスカイト太陽電池を製造するには、有毒な溶媒の使用を必要とするだけでなく、大面積の成膜の均一性を制御することが困難であり、ペロブスカイト太陽電池の実際の商業応用を極めて制限している。焼結法は、大規模生産に不利であり、かつ製造される膜層が単一であり、界面の問題を改善することができない。そのため、向上された性能を有するだけでなく、大規模生産にも適するとともに環境に優しい新規なペロブスカイト太陽電池が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本出願の発明者は、鋭意検討した結果、環境に優しく、大規模生産に適し、製造されるペロブスカイト電池の性能が著しく向上する新規なペロブスカイト電池の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一方面によれば、複数層の正孔輸送層を有するペロブスカイト電池を製造する方法であって、複数層の正孔輸送層を形成する工程を含み、前述した、複数層の正孔輸送層を形成する工程は、
酸化ニッケルターゲット材を利用して第一の雰囲気においてスパッタリングを行い、第一の正孔輸送層を形成するステップであって、第一の雰囲気は、アルゴンガスと酸素ガスとを含み、そのうち、アルゴンガスと酸素ガスとの体積比は、約0:1から約1.5:1であるステップ(1)と、
第一の正孔輸送層に対してアニール処理を行うステップ(2)と、
酸化ニッケルターゲット材を利用して、第二の雰囲気において、アニール処理後の第一の正孔輸送層上にスパッタリングを行い、第二の正孔輸送層を形成するステップであって、第二の雰囲気は、アルゴン含有ガスと酸素ガスとを含み、アルゴン含有ガスと酸素ガスとの体積比は、約1:0から約4:1であり、アルゴン含有ガスは、アルゴンガスと任意の水素ガスとを含むステップ(3)とを含む方法を提供する。
【0006】
いくつかの実施の形態では、前記酸化ニッケルの純度は、約95重量%以上である。
【0007】
いくつかの実施の形態では、ステップ(1)及び/又はステップ(3)におけるスパッタリングは、マグネトロンスパッタリングである。
【0008】
いくつかの実施の形態では、前記第一の正孔輸送層及び/又は第二の正孔輸送層の厚さは、約5~50nmである。
【0009】
いくつかの実施の形態では、第一の雰囲気において、アルゴンガスと酸素ガスとの体積比は、約0:1から1:1である。
【0010】
いくつかの実施の形態では、ステップ(2)において、アニール処理は、約200~500℃の温度で約1~45min行われる。
【0011】
いくつかの実施の形態では、ステップ(2)において、アニール処理は、真空中で行われる。
【0012】
いくつかの実施の形態では、ステップ(2)において、アニール処理は、マグネトロンスパッタリング装置で完了し、温度は、約250~450℃であり、アニール処理時間は、約5~40minである。
【0013】
いくつかの実施の形態では、第二の雰囲気において、アルゴン含有ガスと酸素ガスとの体積比は、約1:0から5:1である。
【0014】
いくつかの実施の形態では、アルゴン含有ガスは、アルゴンガスと水素ガスとを含み、そのうち、アルゴンガスと水素ガスとの体積比は、約90:10から99:1である。
【0015】
いくつかの実施の形態では、アルゴン含有ガスは、アルゴンガスと水素ガスとを含み、そのうち、アルゴンガスと水素ガスとの体積比は、約95:5である。
【0016】
いくつかの実施の形態では、ステップ(1)及び/又はステップ(3)において、スパッタリングのパワーは、約300W~10kWであり、気圧は、約1×10-4-100Paである。
【0017】
いくつかの実施の形態では、前記方法は、透明基板を提供するステップと、前記透明基板上に透明導電層を形成するステップと、前記透明導電層上に前記複数層の正孔輸送層を形成するステップと、前記複数層の正孔輸送層の最外層上にペロブスカイト層を形成するステップと、前記ペロブスカイト層上に電子輸送層を形成するステップと、前記電子輸送層上に裏面電極を形成するステップとのうちの少なくとも一つをさらに含む。
【0018】
いくつかの実施の形態では、前記方法は、透明基板を提供するステップと、前記透明基板上に透明導電層を形成するステップと、前記透明導電層上に電子輸送層を形成するステップと、前記電子輸送層上にペロブスカイト層を形成するステップと、前記ペロブスカイト層に前記複数層の正孔輸送層を形成するステップと、前記複数層の正孔輸送層の最外層上に裏面電極を形成するステップとのうちの少なくとも一つをさらに含む。
【0019】
本開示の別の方面によれば、上記方法によって製造されるペロブスカイト電池であって、複数層の正孔輸送層を含み、前記複数層の正孔輸送層は、少なくとも第一の正孔輸送層と第二の正孔輸送層とを含むペロブスカイト電池を提供する。
【0020】
いくつかの実施の形態では、前記電池は、透明基板と、透明導電層と、複数層の正孔輸送層と、ペロブスカイト層と、電子輸送層と、裏面電極とをこの順に含むか、又は、透明基板と、透明導電層と、電子輸送層と、ペロブスカイト層と、複数層の正孔輸送層と、裏面電極とをこの順に含む。
【0021】
いくつかの実施の形態では、前記複数層の正孔輸送層は、第一の正孔輸送層と第二の正孔輸送層とからなる二層酸化ニッケルフィルムであり、フィルムの厚さは、10~100nmである。
【0022】
いくつかの実施の形態では、前記透明導電層は、酸化インジウムスズ(ITO)とフッ素ドープ酸化スズ(FTO)とのうちの一つ又は複数から選択される。
【0023】
いくつかの実施の形態では、前記電子輸送層は、[6,6]-フェニル-C61-酪酸メチルエステル(PCBM)、C60、BCP(2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、SnOのうちの一つ又は複数から選択される。
【0024】
いくつかの実施の形態では、前記裏面電極は、ITO(酸化インジウムスズ)、IWO(タングステンドープ酸化インジウム)、AZO(アルミニウムドープ酸化亜鉛)、Au、Ag、Cu、Al、Ni、Cr、Bi、Pt、Mgのうちの一つ又は複数から選択される。
【0025】
いくつかの実施の形態では、前記透明基板は、ガラスである。
【0026】
いくつかの実施の形態では、前記ペロブスカイト層は、CHNHPbI、CHNHPbI3-xCl、CHNHPbI3-xBrのうちの一つ又は複数を含み、そのうち0<x<3である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本出願の実施例の技術案をより明瞭に説明するために、以下は、本出願の実施例の記述において使用される必要がある添付図面を簡単に紹介する。自明なことに、以下の記述における本出願の実施例の添付図面は、ただ例に過ぎず、当業者にとって、創造的な労力を払わない前提で、添付図面に基づき、他の添付図面を得ることもできる。
図1】本出願の一実施例に開示される複数層の正孔輸送層を有するペロブスカイト電池の構造概略図である。
図2】本出願の別の実施例に開示される複数層の正孔輸送層を有するペロブスカイト電池の構造概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面と実施例を結び付けながら、本出願の実施の形態についてさらに詳細に説明する。以下の実施例の詳細な説明と添付図面は、本出願の原理を例示的に説明するためのものであるが、本出願の範囲を限定するものではなく、即ち、本出願は、記述された実施例に限定されない。
【0029】
本出願に開示される「範囲」は、下限と上限の形式で規定され、所定の範囲は、一つの下限と一つの上限を選択することによって規定され、選択された下限と上限は、特定の範囲の境界を規定する。このように規定される範囲は、端値を含んでもよいし、含まなくてもよく、そして任意の組み合わせが可能であり、即ち、任意の下限は、任意の上限と組み合せて、一つの範囲を形成してもよい。例えば、特定のパラメータについて60~120と80~110の範囲が挙げられている場合、60~110と80~120の範囲も想定されると理解される。さらに、最小範囲値として1と2が挙げられ、及び最大範囲値として3、4、及び5が挙げられる場合、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4、及び2~5の範囲は全て想定される。本出願において、特に説明されていない限り、「a~b」という数値範囲は、a~bの間の任意の実数の組み合わせを表す縮約表現であり、そのうち、aとbは、いずれも実数である。例えば、「0~5」という数値範囲は、本明細書において「0~5」の間の全ての実数が列挙されていることを意味し、「0~5」は、これらの数値の組み合わせの縮約表現に過ぎない。また、あるパラメータが≧2の整数であると記載すると、このパラメータが例えば整数2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12などであることが開示されていることに相当する。
【0030】
本出願では、特に説明されていない限り、本明細書で言及されるすべての実施の形態及び好ましい実施の形態は、互いに組み合わせて新たな技術案を形成することができる。
【0031】
本出願では、特に説明されていない限り、本明細書で言及されるすべての技術的特徴及び好ましい技術的特徴は、互いに組み合わせて新たな技術案を形成することができる。
【0032】
本出願では、特に説明されていない限り、本明細書で言及されるすべてのステップは、順次に行われてもよく、ランダムに行われてもよいが、順次に行われることが好ましい。例えば、前記方法がステップ(a)と(b)とを含むとは、前記方法が順次に行われるステップ(a)と(b)とを含んでもよく、順次に行われるステップ(b)と(a)とを含んでもよいことを表す。例えば、以上で言及した前記方法がステップ(c)をさらに含むとは、例えば、前記方法は、ステップ(a)と(b)と(c)を含んでもよく、ステップ(a)と(c)と(b)を含んでもよく、ステップ(c)と(a)と(b)を含んでもよいなどのように、ステップ(c)が任意の順で前記方法に追加されてもよいことを表す。
【0033】
本出願では、特に説明されていない限り、本明細書で言及される「含む」と「包含」は、オープン形式を表し、クローズド形式であってもよい。例えば、前記「含む」と「包含」は、リストアップされていない他の成分をさらに含むか又は包含してもよく、リストアップされた成分のみを含むか又は包含してもよいことを表してもよい。
【0034】
本明細書の記述では、説明すべきこととして、特に説明されていない限り、「以上」、「以下」は、その数を含み、「一つ又は複数」のうちの「複数」の意味は、2つ以上である。「第一の」、「第二の」、「第三の」の用語は、単に説明の目的にのみ使用され、相対的な重要性を指示又は暗示すると理解してはならない。
【0035】
本明細書の記述では、特に説明されていない限り、用語「又は」は、包括的である。例えば、「A又はB」という語句は、「A、B、又はAとBの両方」を表す。より具体的には、Aが真であり(又は存在し)かつBが偽である(又は存在しない)という条件、Aが偽である(又は存在しない)がBが真である(又は存在する)という条件、または、AとBが共に真である(又は存在する)という条件は、いずれも「A又はB」という条件を満たしている。
【0036】
<複数層の正孔輸送層を有するペロブスカイト電池の製造方法>
従来技術におけるペロブスカイト電池は、一般的には、一つの透明基板と、一つの透明導電層と、一つの正孔輸送層と、一つのペロブスカイト層と、一つの電子輸送層と、一つの裏面電極とを含む。
【0037】
本開示は、複数層の正孔輸送層を有するペロブスカイト電池を製造する方法であって、複数層の正孔輸送層を形成する工程を含み、前述した、複数層の正孔輸送層を形成する工程は、
酸化ニッケルターゲット材を利用して第一の雰囲気においてスパッタリングを行い、第一の正孔輸送層を形成するステップであって、第一の雰囲気は、アルゴンガスと酸素ガスとを含み、そのうち、アルゴンガスと酸素ガスとの体積比は、約0:1から約1.5:1であるステップ(1)と、
第一の正孔輸送層に対してアニール処理を行うステップ(2)と、
酸化ニッケルターゲット材を利用して、第二の雰囲気において、アニール処理後の第一の正孔輸送層上にスパッタリングを行い、第二の正孔輸送層を形成するステップであって、第二の雰囲気は、アルゴン含有ガスと酸素ガスとを含み、アルゴン含有ガスと酸素ガスとの体積比は、約1:0から約4:1であり、アルゴン含有ガスは、アルゴンガスと任意の水素ガスとを含むステップ(3)とを含む方法を提供する。
【0038】
いくつかの実施の形態では、ステップ(1)におけるスパッタリングは、マグネトロンスパッタリングである。いくつかの実施の形態では、ステップ(3)におけるスパッタリングは、マグネトロンスパッタリングである。いくつかの実施の形態では、ステップ(1)とステップ(3)におけるスパッタリングは、いずれもマグネトロンスパッタリングである。
【0039】
本開示の方法で用いる酸化ニッケルターゲット材は、純度が約95重量%以上である酸化ニッケルを含んでもよい。例えば、酸化ニッケルの純度は、約95重量%以上、約96重量%以上、約97重量%以上、約98重量%以上、ひいては約99重量%以上であってもよい。
【0040】
本開示の方法では、例えばマグネトロンスパッタリングのようなスパッタリングは、適切な雰囲気で行われる。第一の正孔輸送層を形成するステップ(1)におけるスパッタリングは、第一の雰囲気で行われる。第一の雰囲気は、アルゴンガスと酸素ガスとを含む。第一の雰囲気において、アルゴンガスと酸素ガスとの体積比は、約0:1から約1.5:1であり、約0:1、約0.1:1、約0.2:1、約0.3:1、約0.4:1、約0.5:1、約0.6:1、約0.7:1、約0.8:1、約0.9:1、約1.0:1、約1.1:1、約1.2:1、約1.3:1、約1.4:1、約1.5:1及び上記任意の二つの体積比を端点として構成される範囲を含むが、それらに限らない。いくつかの実施の形態では、第一の雰囲気において、アルゴンガスと酸素ガスとの体積比は、約0:1から約1:1であり、約0:1、約0.1:1、約0.2:1、約0.3:1、約0.4:1、約0.5:1、約0.6:1、約0.7:1、約0.8:1、約0.9:1、約1.0:1及び上記任意の二つの体積比を端点として構成される範囲を含むが、それらに限らない。いくつかの実施の形態では、第一の雰囲気において、アルゴンガスと酸素ガスとの体積比は、約0:1であり、このとき、第一の雰囲気はアルゴンガスを含まない。いくつかの実施の形態では、第一の雰囲気は、酸素ガスからなる。いくつかの実施の形態では、第一の雰囲気において、アルゴンガスと酸素ガスとの体積比は、約0.2:1である。いくつかの実施の形態では、第一の雰囲気において、アルゴンガスと酸素ガスとの体積比は、約1:1である。いくつかの実施の形態では、第一の雰囲気は、アルゴンガスと酸素ガスとからなる。
【0041】
第二の正孔輸送層を形成するステップ(3)におけるスパッタリングは、第二の雰囲気で行われる。第二の雰囲気は、アルゴン含有ガスと酸素ガスとを含む。当業者に理解されるとおり、本明細書に記載のアルゴン含有ガスは、酸素ガスを含まない。いくつかの実施の形態では、アルゴン含有ガスと酸素ガスとの体積比は、約1:0から約4:1であり、約1:0、約100:1、約90:1、約80:1、約70:1、約60:1、約50:1、約40:1、約30:1、約20:1、約10:1、約9:1、約8:1、約7:1、約6:1、約5:1、約4:1及び上記任意の二つの体積比を端点として構成される範囲を含むが、それらに限らない。いくつかの実施の形態では、アルゴン含有ガスと酸素ガスとの体積比は、約1:0から約5:1であり、約1:0、約100:1、約90:1、約80:1、約70:1、約60:1、約50:1、約40:1、約30:1、約20:1、約10:1、約9:1、約8:1、約7:1、約6:1、約5:1及び上記任意の二つの体積比を端点として構成される範囲を含むが、それらに限らない。いくつかの実施の形態では、第二の雰囲気において、アルゴン含有ガスと酸素ガスとの体積比は、約1:0であり、このとき、第二の雰囲気は酸素ガスを含まない。いくつかの実施の形態では、第二の雰囲気は、アルゴン含有ガスからなる。いくつかの実施の形態では、第一の雰囲気において、アルゴン含有ガスと酸素ガスとの体積比は、約5:1である。いくつかの実施の形態では、第二の雰囲気は、アルゴン含有ガスと酸素ガスとからなる。本明細書では、アルゴン含有ガスは、アルゴンガスと任意の水素ガスとを含む。いくつかの実施の形態では、アルゴン含有ガスは、アルゴンガスからなる。いくつかの実施の形態では、アルゴン含有ガスは、アルゴンガスと水素ガスとを含む。いくつかの実施の形態では、アルゴンガスと水素ガスとの体積比は、約90:10から約99:1であり、約90:10、約91:9、約92:8、約93:7、約94:6、約95:5、約96:4、約97:3、約98:2、約99:1及び上記任意の二つの体積比を端点として構成される範囲を含むが、それらに限らない。いくつかの実施の形態では、アルゴンガスと水素ガスとの体積比は、約95:5である。いくつかの実施の形態では、アルゴン含有ガスは、アルゴンガスと水素ガスとからなる。
【0042】
任意の特定の理論に束縛されるものではないが、第一の雰囲気と第二の雰囲気との違いにより、形成される第一の正孔輸送層では、ニッケルイオンが主に三価の形態で存在し、第二の正孔輸送層では、ニッケルイオンが主に二価の形態で存在すると考えられる。本明細書に記載の「主に」は、約50モル%以上、例えば約55モル%以上、約60モル%以上、約70モル%以上、約80モル%以上、約90モル%以上、約95モル%以上、約98モル%以上、又は約100モル%を意味する。
【0043】
第一の正孔輸送層を形成するステップ(1)におけるスパッタリングのパワーは、約300W~10kWであり、約400W、約500W、約600W、約700W、約800W、約900W、約1kW、約2kW、約3kW、約4kW、約5kW、約6kW、約7kW、約8kW、約9kW、約10kW及び上記任意の二つのパワー値を端点として構成される範囲を含むが、それらに限らない。ステップ(1)におけるスパッタリングのパワーは、必要に応じて調整することができる。例えば、いくつかの実施の形態では、ステップ(1)におけるスパッタリングのパワーは、約1kWである。
【0044】
第一の正孔輸送層を形成するステップ(1)におけるスパッタリングの気圧は、約1×10-4~100Paである。いくつかの実施の形態では、このスパッタリングの気圧は、約1×10-3~90Pa、約1×10-2~80Pa、約0.1~70Pa、約1~60Pa、約2~50Pa、約3~40Pa、約4~50Pa、約5~40Pa、約6~30Pa、約7~20Pa、約8~10Paを含むが、それらに限らない。例えば、いくつかの実施の形態では、このスパッタリングの気圧は、約0.001Pa、約0.005Pa、約0.01Pa、約0.015Pa、約0.020Pa、約0.025Pa、約0.030Pa、約0.035Pa及び上記任意の二つの気圧値を端点として構成される範囲を含むが、それらに限らない。いくつかの実施の形態では、スパッタリングの気圧は、約0.020Paである。
【0045】
第二の正孔輸送層を形成するステップ(3)におけるスパッタリングのパワーは、約300W~10kWであり、約400W、約500W、約600W、約700W、約800W、約900W、約1kW、約2kW、約3kW、約4kW、約5kW、約6kW、約7kW、約8kW、約9kW、約10kW及び上記任意の二つのパワー値を端点として構成される範囲を含むが、それらに限らない。ステップ(3)におけるスパッタリングのパワーは、必要に応じて調整することができる。例えば、いくつかの実施の形態では、ステップ(3)におけるスパッタリングのパワーは、約1kWである。ステップ(1)におけるスパッタリングのパワーは、ステップ(3)におけるスパッタリングのパワーと同じであってもよく、異なってもよい。
【0046】
第二の正孔輸送層を形成するステップ(3)におけるスパッタリングの気圧は、約1×10-4~100Paである。いくつかの実施の形態では、このスパッタリングの気圧は、約1×10-3~90Pa、約1×10-2~80Pa、約0.1~70Pa、約1~60Pa、約2~50Pa、約3~40Pa、約4~50Pa、約5~40Pa、約6~30Pa、約7~20Pa、約8~10Paを含むが、それらに限らない。例えば、いくつかの実施の形態では、このスパッタリングの気圧は、約0.001Pa、約0.005Pa、約0.01Pa、約0.015Pa、約0.020Pa、約0.025Pa、約0.030Pa、約0.035Pa及び上記任意の二つの気圧値を端点として構成される範囲を含むが、それらに限らない。いくつかの実施の形態では、スパッタリングの気圧は、約0.020Paである。ステップ(1)におけるスパッタリングの気圧は、ステップ(3)におけるスパッタリングの気圧と同じであってもよく、異なってもよい。
【0047】
ステップ(1)とステップ(3)におけるスパッタリング時間は、特に限定されるものではなく、必要とされる第一の正孔輸送層の厚さと第二の正孔輸送層の厚さに応じてそれぞれ選択及び調整することができる。例えば、いくつかの実施の形態では、ステップ(1)におけるスパッタリング時間は、約0.5~10分間、約1~9分間、約1.5~8分間、約2~7分間、約2.5~6分間、約3~5分間を含むが、それらに限らない。いくつかの実施の形態では、ステップ(3)におけるスパッタリング時間は、約0.5~10分間、約1~9分間、約1.5~8分間、約2~7分間、約2.5~6分間、約3~5分間を含むが、それらに限らない。ステップ(1)におけるスパッタリング時間は、ステップ(3)におけるスパッタリング時間と同じであってもよく、異なってもよい。
【0048】
第一の正孔輸送層の厚さは、特に限定されるものではなく、例えば約5~50nmであってもよく、約6nm、約7nm、約8nm、約9nm、約10nm、約11nm、約12nm、約13nm、約14nm、約15nm、約16nm、約17nm、約18nm、約19nm、約20nm、約21nm、約22nm、約23nm、約24nm、約25nm、約26nm、約27nm、約28nm、約29nm、約30nm、約31nm、約32nm、約33nm、約34nm、約35nm、約36nm、約37nm、約38nm、約39nm、約40nm、約41nm、約42nm、約43nm、約44nm、約45nm、約46nm、約47nm、約48nm、約49nm、約50nm及び上記任意の二つの厚さ値を端点として構成される範囲を含むが、それらに限らない。
【0049】
第二の正孔輸送層の厚さは、特に限定されるものではなく、例えば約5~50nmであってもよく、約6nm、約7nm、約8nm、約9nm、約10nm、約11nm、約12nm、約13nm、約14nm、約15nm、約16nm、約17nm、約18nm、約19nm、約20nm、約21nm、約22nm、約23nm、約24nm、約25nm、約26nm、約27nm、約28nm、約29nm、約30nm、約31nm、約32nm、約33nm、約34nm、約35nm、約36nm、約37nm、約38nm、約39nm、約40nm、約41nm、約42nm、約43nm、約44nm、約45nm、約46nm、約47nm、約48nm、約49nm、約50nm及び上記任意の二つの厚さ値を端点として構成される範囲を含むが、それらに限らない。
【0050】
第一の正孔輸送層と第二の正孔輸送層の総厚さは、約10~100nmの範囲内にあってもよい。例えば、第一の正孔輸送層と第二の正孔輸送層の総厚さは、約10~100nm、約15~95nm、約20~90nm、約25~85nm、約30~80nm、約35~75nm、約40~70nm、約45~65nm、又は約50~60nmであってもよい。
【0051】
ステップ(2)において、アニール処理は、約200~500℃の温度で行われてもよい。いくつかの実施の形態では、アニール処理温度は、約200℃、約210℃、約220℃、約230℃、約240℃、約250℃、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、約300℃、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、約350℃、約360℃、約370℃、約380℃、約390℃、約400℃、約410℃、約420℃、約430℃、約440℃、約450℃、約460℃、約470℃、約480℃、約490℃、約500℃及び上記任意の二つの温度値を端点として構成される範囲を含むが、それらに限らない。いくつかの実施の形態では、アニール処理温度は、約250~450℃、例えば、約300~400℃である。
【0052】
ステップ(2)において、アニール処理時間は、約1~45minであってもよく、約1min、約5min、約10min、約15min、約20min、約25min、約30min、約35min、約40min、約45min及び上記任意の二つの時間値を端点として構成される範囲を含むが、それらに限らない。
【0053】
いくつかの実施の形態では、ステップ(2)において、アニール処理は、真空中で行われる。
【0054】
いくつかの実施の形態では、ステップ(2)において、アニール処理は、スパッタリング装置、例えばマグネトロンスパッタリング装置で完了される。
【0055】
第二の正孔輸送層を形成するステップ(3)が完了した後、ステップ(2)の方式に従ってアニールしてもよいし、アニールしなくてもよい。
【0056】
ステップ(1)~ステップ(3)は、第一の正孔輸送層と第二の正孔輸送層とを含む二層の正孔輸送層を形成する。
【0057】
容易に理解できるように、必要であれば、スパッタリングステップとアニールステップとを上記方法に従って継続することによって、三層、四層、ひいてはより多くの層の正孔輸送層を形成してもよい。これらの変形形態は、全て本出願の保護範囲に含まれる。
【0058】
いくつかの実施の形態では、前記方法は、透明基板を提供するステップをさらに含む。いくつかの実施の形態では、透明基板は、ガラス板である。
【0059】
いくつかの実施の形態では、前記方法は、透明基板上に透明導電層を形成するステップをさらに含む。透明導電層は、酸化インジウムスズ(ITO)とフッ素ドープ酸化スズ(FTO)とのうちの一つ又は複数から選択される。透明基板上に透明導電層を形成するステップは、透明導電層を形成する本分野で既知の任意の技術及び透明導電層を形成するための将来開発される技術に従って行うことができる。
【0060】
いくつかの実施の形態では、前記方法は、ペロブスカイト層を形成するステップをさらに含む。ペロブスカイト層に用いられるペロブスカイト材料は、ペロブスカイト太陽電池の製造に適する本分野で既知の任意のペロブスカイト材料とペロブスカイト太陽電池の製造に適する将来開発されるペロブスカイト材料であってもよい。例えば、ペロブスカイト層は、CHNHPbI、CHNHPbI3-xCl、CHNHPbI3-xBrのうちの一つ又は複数を含み、そのうち0<x<3である。ペロブスカイト層を形成するステップは、ペロブスカイト層を形成する本分野で既知の任意の技術及びペロブスカイト層を形成するための将来開発される技術に従って行うことができる。
【0061】
いくつかの実施の形態では、前記方法は、電子輸送層を形成するステップをさらに含む。電子輸送層を形成するための材料は、電子輸送層の形成に適する本分野で既知の任意の材料と電子輸送層の形成に適する将来開発される材料であってもよい。例えば、電子輸送層を形成するための材料は、[6,6]-フェニル-C61-酪酸メチルエステル(PCBM)、C60、BCP(2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、SnOのうちの一つ又は複数であってもよい。電子輸送層を形成するステップは、電子輸送層を形成する本分野で既知の任意の技術及び電子輸送層を形成するための将来開発される技術に従って行うことができる。
【0062】
いくつかの実施の形態では、前記方法は、裏面電極を提供するステップをさらに含む。裏面電極を形成するための材料は、裏面電極の形成に適する本分野で既知の任意の材料と裏面電極の形成に適する将来開発される材料であってもよい。例えば、裏面電極材料は、ITO、IWO、AZO、Au、Ag、Cu、Al、Ni、Cr、Bi、Pt、Mgのうちの一つ又は複数であってもよい。裏面電極を提供するステップは、裏面電極を提供する本分野で既知の任意の技術及び裏面電極を提供する将来開発される技術に従って行うことができる。
【0063】
いくつかの実施の形態では、本出願に記載の複数層の正孔輸送層は、透明導電層上に形成されてもよい。例えば、透明導電層上に第一の正孔輸送層を形成し、第一の正孔輸送層上に第二の正孔輸送層を形成してもよい。無論、これにより、より多くの正孔輸送層を形成してもよい。この場合、ペロブスカイト層は、この複数層の正孔輸送層上に形成されてもよく、電子輸送層は、ペロブスカイト層上に形成されてもよく、裏面電極は、電子輸送層上に提供されてもよい。
【0064】
いくつかの実施の形態では、電子輸送層は、透明導電層上に形成されてもよい。この場合、ペロブスカイト層は、電子輸送層上に形成されてもよい。本出願に記載の複数層の正孔輸送層は、ペロブスカイト層上に形成されてもよい。例えば、ペロブスカイト層上に第一の正孔輸送層を形成し、第一の正孔輸送層上に第二の正孔輸送層を形成してもよい。無論、これにより、より多くの正孔輸送層を形成してもよい。裏面電極は、本出願に記載の複数層の正孔輸送層上に提供されてもよい。
【0065】
なお、上述した「……は、……上に形成される」という記述は、単に記述を容易にするためのものであり、何ら制限的な意味を有するものではない。例えば、裏面電極上に複数層の正孔輸送層又は電子輸送層を形成し、複数層の正孔輸送層又は電子輸送層上にペロブスカイト層を形成し、ペロブスカイト層上に電子輸送層又は複数層の正孔輸送層を形成し、電子輸送層又は複数層の正孔輸送層に透明導電層を形成し、透明導電層上に透明基板を提供する実施の形態も本出願の保護範囲に含まれる。
【0066】
<複数層の正孔輸送層を有するペロブスカイト電池>
上述した方法を利用して、本開示は、複数層の正孔輸送層を含み、前記複数層の正孔輸送層は、少なくとも第一の正孔輸送層と第二の正孔輸送層とを含む新規なペロブスカイト電池を提供する。
【0067】
第一の正孔輸送層の厚さは、特に限定されるものではなく、例えば約5~50nmであってもよく、約6nm、約7nm、約8nm、約9nm、約10nm、約11nm、約12nm、約13nm、約14nm、約15nm、約16nm、約17nm、約18nm、約19nm、約20nm、約21nm、約22nm、約23nm、約24nm、約25nm、約26nm、約27nm、約28nm、約29nm、約30nm、約31nm、約32nm、約33nm、約34nm、約35nm、約36nm、約37nm、約38nm、約39nm、約40nm、約41nm、約42nm、約43nm、約44nm、約45nm、約46nm、約47nm、約48nm、約49nm、約50nm及び上記任意の二つの厚さ値を端点として構成される範囲を含むが、それらに限らない。
【0068】
第二の正孔輸送層の厚さは、特に限定されるものではなく、例えば約5~50nmであってもよく、約6nm、約7nm、約8nm、約9nm、約10nm、約11nm、約12nm、約13nm、約14nm、約15nm、約16nm、約17nm、約18nm、約19nm、約20nm、約21nm、約22nm、約23nm、約24nm、約25nm、約26nm、約27nm、約28nm、約29nm、約30nm、約31nm、約32nm、約33nm、約34nm、約35nm、約36nm、約37nm、約38nm、約39nm、約40nm、約41nm、約42nm、約43nm、約44nm、約45nm、約46nm、約47nm、約48nm、約49nm、約50nm及び上記任意の二つの厚さ値を端点として構成される範囲を含むが、それらに限らない。
【0069】
第一の正孔輸送層では、ニッケルイオンが主に三価の形態で存在し、第二の正孔輸送層では、ニッケルイオンが主に二価の形態で存在する。本明細書に記載の「主に」は、約50モル%以上、例えば約55モル%以上、約60モル%以上、約70モル%以上、約80モル%以上、約90モル%以上、約95モル%以上、約98モル%以上、又は100モル%を意味する。
【0070】
理解できるように、本明細書に記載の複数層の正孔輸送層は、三層以上の正孔輸送層をさらに含んでもよく、各層の厚さは、上述した第一の正孔輸送層及び/又は第二の正孔輸送層にかかる上記の厚さ範囲内にあってもよい。
【0071】
いくつかの実施の形態では、前記複数層の正孔輸送層は、第一の正孔輸送層と第二の正孔輸送層とからなる二層酸化ニッケルフィルムである。第一の正孔輸送層と第二の正孔輸送層の総厚さは、約10~100nmの範囲内にあってもよい。例えば、第一の正孔輸送層と第二の正孔輸送層の総厚さは、約10~100nm、約15~95nm、約20~90nm、約25~85nm、約30~80nm、約35~75nm、約40~70nm、約45~65nm、又は約50~60nmであってもよい。
【0072】
いくつかの実施の形態では、前記電池は、透明基板と、透明導電層と、複数層の正孔輸送層と、ペロブスカイト層と、電子輸送層と、裏面電極とをこの順に含む。いくつかの実施の形態では、前記電池は、透明基板と、透明導電層と、電子輸送層と、ペロブスカイト層と、複数層の正孔輸送層と、裏面電極とをこの順に含む。
【0073】
例えば、図1に示すように、複数層の正孔輸送層を含むペロブスカイト電池100は、透明基板102と、透明導電層104と、第一の正孔輸送層106と、第二の正孔輸送層108と、ペロブスカイト層110と、電子輸送層112と、裏面電極114とを含む。図2に示すように、複数層の正孔輸送層を含む別のペロブスカイト電池100は、透明基板102と、透明導電層104と、電子輸送層112と、ペロブスカイト層110と、第一の正孔輸送層106と、第二の正孔輸送層108と、裏面電極114とを含む。
【0074】
透明導電層は、透明導電層として用いられる従来技術で既知の任意の材料及び透明導電層として用いられることができる将来開発される材料であってもよい。例えば、前記透明導電層は、酸化インジウムスズ(ITO)とフッ素ドープ酸化スズ(FTO)とのうちの一つ又は複数から選択される。
【0075】
電子輸送層は、電子輸送層として用いられる従来技術で既知の任意の材料及び電子輸送層として用いられることができる将来開発される材料であってもよい。例えば、前記電子輸送層は、[6,6]-フェニル-C61-酪酸メチルエステル(PCBM)、C60、BCP(2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、SnOのうちの一つ又は複数から選択される。
【0076】
裏面電極は、裏面電極として用いられる従来技術で既知の任意の材料及び裏面電極として用いられることができる将来開発される材料であってもよい。例えば、前記裏面電極は、ITO、IWO、AZO、Au、Ag、Cu、Al、Ni、Cr、Bi、Pt、Mgのうちの一つ又は複数から選択される。
【0077】
透明基板は、透明基板として用いられる従来技術で既知の任意の材料及び透明基板として用いられることができる将来開発される材料であってもよい。例えば、前記透明基板は、ガラスである。
【0078】
ペロブスカイト層は、ペロブスカイト層として用いられる従来技術で既知の任意の材料及びペロブスカイト層として用いられることができる将来開発される材料であってもよい。例えば、前記ペロブスカイト層は、CHNHPbI、CHNHPbI3-xCl、CHNHPbI3-xBrのうちの一つ又は複数を含み、そのうち0<x<3である。
【0079】
<技術効果>
従来技術では、ペロブスカイト電池における正孔輸送層は、一般的には、溶液スピンコーティングと焼結の方法を採用して製造される。溶液スピンコーティング法は、有毒な溶媒の使用を必要とし、製造される膜層が単一であり、大面積の成膜の均一性を制御することが困難であり、大規模生産に不利であり、ペロブスカイト太陽電池の工業上の実際の応用を極めて制限している。本開示では、スパッタリングの方式を採用して酸化ニッケル膜層を製造することにより、同一装置で異なる機能層の連続製造を達成し、同一材料は、異なるプロセスによって異なる機能を実現し、それによって連続的な大規模生産に有利であり、高品質なペロブスカイト太陽電池デバイスをより容易に得ることができる。また、アニール回数を減らすことにより、エネルギー消費を削減する役割を果たしている。
【0080】
本開示の方法により、高品質な正孔輸送層フィルムを容易に製造し、酸化ニッケル正孔輸送層の表面欠陥を著しく減少させるとともに、酸化ニッケル正孔輸送層の電気的性能を著しく向上させ、それによってペロブスカイト電池の変換効率を向上させる。なお、めっき膜の均一性が明らかに向上し、プロセスの制御性が明らかに向上し、それによってペロブスカイト電池の安定性を高める。
【0081】
<実施例>
以下、実施例を結び付けながら本発明についてさらに詳細に説明する。理解すべきこととして、これらの実施例を列挙することは、単に説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するためのものではない。
【0082】
電気伝導率試験方法:
ECOPIA社製HMS-3000シリーズホールテスターを用いて、膜層の電気伝導率を測定した。酸化ニッケル膜層をガラス基板上に直接にスパッタリングし、そして1cm×1cmの試料を採取し、電流:1nA、厚さ:20nmのパラメータでホール試験を行った。
【0083】
光透過率試験方法:
島津株式会社製UV-3600i Plus分光光度計を用いて、酸化ニッケル膜層の光透過率を測定した。酸化ニッケル膜層をガラス基板上に直接にスパッタリングし、そして5cm×5cmの試料を採取し、300~1100nmの波長範囲内で光透過率を測定した。
【0084】
モジュール効率試験方法:
規格IEC61215:2016効率試験方法に基づいて、光炎科技有限会社製IVS-KA6000を用いてモジュール効率を試験した。
【0085】
実施例1
(I)1.5cm×1.5cmのサイズのFTO導電性ガラスシートを1組採取し、M3防水テープによってその2/3の部分を保護し、Zn粉末と1mol/Lの塩酸を用いて1/3のFTOをエッチング除去した。エッチング後のFTO導電性ガラスシートをアセトン、イソプロピルアルコールで順次に数回洗浄し、最後に脱イオン水に浸漬して超音波処理を10min行った。
【0086】
(II)処理後のFTO導電性ガラスシートを送風乾燥箱内にて乾燥した後、ママグネトロンスパッタリング装置で酸化ニッケルをスパッタリングし、それによってFTO導電性ガラスシート上に第一の正孔輸送層を形成した。スパッタリングには、RF電源を採用し、パワーは1kW、チャンバ内気圧は0.02Pa、アルゴンガス流量は200sccm(標準立方センチメートル/分間)、酸素ガス流量は200sccmである。したがって、アルゴンガスと酸素ガスとの体積比は1:1であった。めっき時間は5min、膜層の厚さは30nmであった。そして、マグネトロンスパッタリング機でアニールを行った。アニール温度は350℃、時間は30minであった。
【0087】
(III)アニール後の、酸化ニッケル膜層がめっきされたFTOガラスシートに再びマグネトロンスパッタリング装置で酸化ニッケルをスパッタリングし、それによって第一の正孔輸送層上に第二の正孔輸送層を形成した。スパッタリングには、RF電源を採用し、パワーは1kW、チャンバ内気圧は0.02Pa、アルゴン含有ガス流量は200sccm、酸素ガス流量は50sccmである。したがって、アルゴン含有ガスと酸素ガスとの体積比は4:1であった。アルゴン含有ガスは、アルゴンガスと水素ガスとの混合ガスであり、そのうちアルゴンガスと水素ガスとの体積比は、95:5であった。めっき時間は1min、膜層の厚さは5nmであった。
【0088】
(IV)3000~4500rpmの速度で第二の正孔輸送層上にペロブスカイト層をスピンコーティングした直後に、グローブボックスホットステージ上で110℃で30min加熱し、そして室温までアニールさせた。ペロブスカイト層の活物質は、CHNHPbIであった。
【0089】
(V)ペロブスカイト膜層を形成した後、試料を真空フィルムコータ内に入れ、石英ルツボ内にC60とBCP粉末をそれぞれ入れ、まずC60を蒸着し、厚さ5nmの膜が形成されるまで0.05Å/sで蒸発させ、次いで厚さ30nmの膜が形成されるまで0.1Å/sで蒸発させた。そしてBCPを蒸着し、厚さ2nmの膜が形成されるまで0.05Å/sで蒸発させ、次いで厚さ8nmの膜が形成されるまで0.1Å/sで蒸発させ、それによってペロブスカイト膜層上に電子輸送層を形成した。
【0090】
(VI)試料を蒸着機に入れ、電子輸送層上に一層のAg電極を蒸着し、ペロブスカイト太陽電池デバイスを得た。
【0091】
実施例2
実施例1と同様であり、異なるところは、ステップ(II)におけるアルゴンガス流量を0sccmに変更し、酸素ガス流量は200sccmのままとすることにある。したがって、アルゴンガスと酸素ガスとの体積比は、0:1であった。
【0092】
実施例3
実施例1と同様であり、異なるところは、ステップ(II)におけるアルゴンガス流量を50sccmに変更し、酸素ガス流量は200sccmのままとすることにある。したがって、アルゴンガスと酸素ガスとの体積比は、1:4であった。
【0093】
実施例4
実施例1と同様であり、異なるところは、ステップ(II)におけるアニール温度を250℃に変更したことにある。
【0094】
実施例5
実施例1と同様であり、異なるところは、ステップ(II)におけるアニール温度を450℃に変更したことにある。
【0095】
実施例6
実施例1と同様であり、異なるところは、ステップ(II)におけるアニール時間を5minに変更したことにある。
【0096】
実施例7
実施例1と同様であり、異なるところは、ステップ(II)におけるアニール時間を40minに変更したことにある。
【0097】
実施例8
実施例1と同様であり、異なるところは、ステップ(III)における酸素ガス流量を0sccmに変更し、アルゴン含有ガス流量は200sccmのままとすることにある。したがって、アルゴン含有ガスと酸素ガスとの体積比は、1:0であった。
【0098】
実施例9
実施例1と同様であり、異なるところは、ステップ(III)における酸素ガス流量を40sccmに変更し、アルゴン含有ガス流量は200sccmのままとすることにある。したがって、アルゴン含有ガスと酸素ガスとの体積比は、5:1であった。
【0099】
実施例10
実施例1と同様であり、異なるところは、ステップ(III)におけるアルゴン含有ガスを純アルゴンガスに変更し、流量が200sccmで、酸素ガス流量を40sccmに変更したことにある。したがって、アルゴンガスと酸素ガスとの体積比は、5:1であった。
【0100】
比較例1
実施例1と同様であり、異なるところは、ステップ(II)を無くしたことにある。
【0101】
比較例2
実施例1と同様であり、異なるところは、ステップ(III)を無くしたことにある。
【0102】
比較例3
実施例1と同様であり、異なるところは、ステップ(II)におけるアニール処理を無くしたことにある。
【0103】
比較例4
(I)1.5cm×1.5cmのサイズのFTO導電性ガラスシートを1組採取し、M3防水テープによってその2/3の部分を保護し、Zn粉末と1mol/Lの塩酸を用いて1/3のFTOをエッチング除去した。エッチング後のFTO導電性ガラスシートをアセトン、イソプロピルアルコールで順次に数回洗浄し、最後に脱イオン水に浸漬して超音波処理を10min行った。
【0104】
(II)硝酸ニッケル六水和物を電子天秤で48.3mg秤量し、そしてグローブボックスにメタノール1mLを加えた。2h磁気攪拌した後、淡緑色の透明上澄み液を得て、ろ過し、NiOx層前駆体液として用意する。溶液をスピンコーティングする前に、まず、FTO導電性ガラスシートを紫外線で10min処理して用意する(間隔時間は15minを超えないようにする)。スピンコーティング回転数を6krpm、加速度を1krpm、スピンコーティング時間を30sとした。FTO導電性ガラスシートをスピンコーター試料台上に置き、NiOx層前駆体液を80μL採取してFTO導電性ガラスシートに滴下した。スピンコーティング完了後、プログラムアニールさせ、80℃まで加熱し、10min保持し、30min以内に345℃まで昇温し、345℃で30min保持した。100℃まで冷却した後、取り外して試料箱に入れた。
【0105】
(III)ステップ(II)で形成された正孔輸送層上に3000~4500rpmの速度でペロブスカイト層をスピンコーティングした直後に、グローブボックスホットステージ上で110℃で30min加熱し、そして室温までアニールさせた。ペロブスカイト層の活物質は、CHNHPbIであった。
【0106】
(IV)ペロブスカイト膜層を形成した後、試料を真空フィルムコータ内に入れ、石英ルツボ内にC60とBCP粉末をそれぞれ入れ、まずC60を蒸着し、厚さ5nmの膜が形成されるまで0.05Å/sで蒸発させ、次いで厚さ30nmの膜が形成されるまで0.1Å/sで蒸発させた。そしてBCPを蒸着し、厚さ2nmの膜が形成されるまで0.05Å/sで蒸発させ、次いで厚さ8nmの膜が形成されるまで0.1Å/sで蒸発させ、それによってペロブスカイト膜層上に電子輸送層を形成した。
【0107】
(V)試料を蒸着機に入れ、電子輸送層上に一層のAg電極を蒸着し、ペロブスカイト太陽電池デバイスを得た。
【0108】
上述の実施例と比較例で製造した酸化ニッケル膜層の電気伝導率と光透過率を測定し、上述の実施例と比較例で製造したペロブスカイト太陽薄膜電池のモジュール効率を測定し、その結果を表1に示す。
【0109】
【表1】
【0110】
膜層自体の原因により、電気伝導率と光透過率を両立することができず、相対的に反比例する現象を示した。表1に示すように、本出願は、同一材料(即ち酸化ニッケルNiOx)膜層の価数分布を改善することにより、比較的に良い電気伝導率と比較的に高い光透過率を兼ね備えるとともに、モジュール効率の向上を実現した。
【0111】
実施例を参照しながら、本出願について説明したが、本出願の範囲を逸脱することなく、種々の改良を行うことができ、且つそのうちの部品を等価物で置換することができる。特に、各実施例で言及された各技術的特徴は、構造の矛盾が生じない限り、任意に組み合わせることができる。本出願は、本明細書に開示された特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に含まれる全ての技術案を含むものである。
【符号の説明】
【0112】
添付図面において、各部分は、実際の比例に合わせて図示したものではない。
100:ペロブスカイト電池
102:透明基板
104:透明導電層
106:第一の正孔輸送層
108:第二の正孔輸送層
110:ペロブスカイト層
120:電子輸送層
140:裏面電極
図1
図2