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特許7542132スキンパック用樹脂組成物、スキンパック用フィルム、スキンパック用フィルムの製造方法、スキンパック包装材、及びスキンパック包装体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】スキンパック用樹脂組成物、スキンパック用フィルム、スキンパック用フィルムの製造方法、スキンパック包装材、及びスキンパック包装体
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/26 20060101AFI20240822BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
C08L23/26
B65D65/40 D
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023509025
(86)(22)【出願日】2022-03-11
(86)【国際出願番号】 JP2022011136
(87)【国際公開番号】W WO2022202424
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-05-15
(31)【優先権主張番号】P 2021047869
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000174862
【氏名又は名称】三井・ダウポリケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】向井 健太
(72)【発明者】
【氏名】谷口 義輝
(72)【発明者】
【氏名】町屋 宏昭
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-064540(JP,A)
【文献】特開2002-200719(JP,A)
【文献】特開平03-148460(JP,A)
【文献】国際公開第2019/181942(WO,A1)
【文献】特表2011-505489(JP,A)
【文献】国際公開第89/04853(WO,A1)
【文献】特開平02-140253(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
B65D 65/00-65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)を含み、
前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)は以下の式(1)を満たし、前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)の少なくとも一部がナトリウムイオンで中和されている、スキンパック用樹脂組成物。
11≦(X×Y×0.01)/Z 式(1)
(式(1)中、Xは、前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)を構成する共重合体の全構成単位に対する、不飽和カルボン酸に由来する構成単位の含有量[質量%]を表し、Xは18以上25以下であり、
Yは、前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)の中和度[%]を表し、
Zは、JIS K 7210:1999に準拠し190℃及び2160g荷重の条件で測定される、前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)のメルトフローレート[g/10分]を表す。)
【請求項2】
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)を含み、
前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)の少なくとも一部はナトリウムイオンで中和されていて、
前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)を構成する共重合体の全構成単位に対する、不飽和カルボン酸に由来する構成単位の含有量は18質量%以上25質量%以下であり、
以下の測定方法により測定される前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)の溶融張力が320mN以上である、スキンパック用樹脂組成物。
測定方法:
前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)を、180℃に加熱した直径9.55mmのバレルに充填する。前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)を、直径2.095mmのキャピラリーダイから、ピストン降下速度5mm/分にて、紐状に押し出す。紐状の前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)を、前記キャピラリーダイの下方300mmの位置に設置したロードセル付きプーリーに通過させ、紐状の前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)を巻取りロールで巻き取る。このとき、紐状の前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)の巻き取り速度を初速度5.0m/分から1分後に200m/分となるように直線的に増加させ、紐状の前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)が破断したときの前記ロードセル付きプーリーにかかる荷重を溶融張力[mN]とする。
【請求項3】
前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)の中和度が30%以上100%以下である、請求項1又は請求項2に記載のスキンパック用樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のスキンパック用樹脂組成物を含む基材層を備える、スキンパック用フィルム。
【請求項5】
前記基材層の厚みが40μm以上300μm以下である、請求項4に記載のスキンパック用フィルム。
【請求項6】
シーラント層をさらに備える、請求項4又は請求項5に記載のスキンパック用フィルム。
【請求項7】
前記スキンパック用樹脂組成物を用いてキャスト法により前記基材層を成形することを含む、請求項4請求項6のいずれか1項に記載のスキンパック用フィルムの製造方法。
【請求項8】
底材と、請求項4請求項6のいずれか1項に記載のスキンパック用フィルムと、を備えるスキンパック包装材。
【請求項9】
底材と、前記底材上に配置された被包装物と、請求項4請求項6のいずれか1項に記載のスキンパック用フィルムと、を備えるスキンパック包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スキンパック用樹脂組成物、スキンパック用フィルム、スキンパック用フィルムの製造方法、スキンパック包装材、及びスキンパック包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
スキンパック包装では、例えば内容物(つまり、被包装物)を載せた底材を、下側チャンバーと上側チャンバーとを備えた真空チャンバーに入れ、真空チャンバー内を真空にし、蓋材フィルムを加熱し、上側チャンバーを解放した際の差圧で蓋材フィルムが内容物と密着及び疑似接着することにより、内容物を真空包装する。スキンパック包装は、他の包装形態と比較して、被包装物の鮮度保持が向上する、ドリップを抑制できる、及び被包装物を固定できる等の機能に優れた包装形態である。
【0003】
スキンパック包装に用いられるフィルムの材料となる樹脂としては、例えば特開2020-93417号公報又は特開2016-222259号公報に記載されたアイオノマーが、広く一般的に使用されている。中でも、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマーを材料として作製されたフィルムは、透明性、ヒートシール性、及びホットタック性等に優れることが知られている。また、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体のアイオノマーは、アメリカ食品医薬品局(FDA)及び日本の食品包装材としての規制にも合格している。そのため、特に被包装物が食品である場合は、エチレン・(メタ)アクリル酸系共重合体のアイオノマーが、スキンパック包装に用いられるフィルムの材料となる樹脂として好適に使用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したように、スキンパック包装を行う際は蓋材であるフィルムを加熱する必要があり、その加熱温度は包装に用いる機械及び装置の種類等によって異なる。しかし、従来のアイオノマーを材料として作製したフィルムは、高温でスキンパック包装を行うとフィルムに破れやピンホールが発生する場合があった。従って、スキンパック包装が可能である温度は、特定の一部の温度範囲のみに限定されていた。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであり、幅広い温度範囲においてスキンパック包装が可能であるフィルムが得られるスキンパック用樹脂組成物、前記スキンパック用樹脂組成物を含む基材層を備えるスキンパック用フィルム、前記スキンパック用フィルムの製造方法、前記スキンパック用フィルムを備えるスキンパック包装材、及び前記スキンパック用フィルムを備えるスキンパック包装体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための具体的な手段には、以下の態様が含まれる。
<1> エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)を含み、
前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)は以下の式(1)を満たす、スキンパック用樹脂組成物。
11≦(X×Y×0.01)/Z 式(1)
(式(1)中、Xは、前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)を構成する共重合体の全構成単位に対する、不飽和カルボン酸に由来する構成単位の含有量[質量%]を表し、
Yは、前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)の中和度[%]を表し、
Zは、JIS K 7210:1999に準拠し190℃及び2160g荷重の条件で測定される、前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)のメルトフローレート[g/10分]を表す。)
<2> エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)を含み、
以下の測定方法により測定される前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)の溶融張力が320mN以上である、スキンパック用樹脂組成物。
測定方法:
前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)を、180℃に加熱した直径9.55mmのバレルに充填する。前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)を、直径2.095mmのキャピラリーダイから、ピストン降下速度5mm/分にて、紐状に押し出す。紐状の前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)を、前記キャピラリーダイの下方300mmの位置に設置したロードセル付きプーリーに通過させ、紐状の前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)を巻取りロールで巻き取る。このとき、紐状の前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)の巻き取り速度を初速度5.0m/分から1分後に200m/分となるように直線的に増加させ、紐状の前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)が破断したときの前記ロードセル付きプーリーにかかる荷重を溶融張力[mN]とする。
<3> 前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)を構成する共重合体の全構成単位に対して、不飽和カルボン酸に由来する構成単位を8質量%以上30質量%以下含む、前記<1>又は<2>に記載のスキンパック用樹脂組成物。
<4> 前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)の中和度が30%以上100%以下である、前記<1>~<3>のいずれか1つに記載のスキンパック用樹脂組成物。
<5> 前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)の少なくとも一部が1価の金属イオンで中和されている、前記<1>~<4>のいずれか1つに記載のスキンパック用樹脂組成物。
<6> 前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)の少なくとも一部がナトリウムイオンで中和されている、前記<1>~<5>のいずれか1つに記載のスキンパック用樹脂組成物。
<7> 前記<1>~<6>のいずれか1つに記載のスキンパック用樹脂組成物を含む基材層を備える、スキンパック用フィルム。
<8> 前記基材層の厚みが40μm以上300μm以下である、前記<7>に記載のスキンパック用フィルム。
<9> シーラント層をさらに備える、前記<7>又は<8>に記載のスキンパック用フィルム。
<10> 前記スキンパック用樹脂組成物を用いてキャスト法により前記基材層を成形することを含む、<7>~<9>のいずれか1つに記載のスキンパック用フィルムの製造方法。
<11> 底材と、前記<7>~<9>のいずれか1つに記載のスキンパック用フィルムと、を備えるスキンパック包装材。
<12> 底材と、前記底材上に配置された被包装物と、前記<7>~<9>のいずれか1つに記載のスキンパック用フィルムと、を備えるスキンパック包装体。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、幅広い温度範囲においてスキンパック包装が可能であるフィルムが得られるスキンパック用樹脂組成物、前記スキンパック用樹脂組成物を含む基材層を備えるスキンパック用フィルム、前記スキンパック用フィルムの製造方法、前記スキンパック用フィルムを備えるスキンパック包装材、及び前記スキンパック用フィルムを備えるスキンパック包装体が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示に係る実施形態について詳細に説明する。但し、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の開示において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本開示を制限するものではない。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ下限値及び上限値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本文中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において組成物中の各成分の含有率は、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率を意味する。
本開示において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリル酸アルキルエステル」は、アクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステルの両方を包含する概念であり、「(共)重合体」は、重合体及び共重合体の両方を包含する概念である。
【0009】
なお以下の説明において、「エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)を構成する共重合体の全構成単位に対する、不飽和カルボン酸に由来する構成単位の含有量X[質量%]」は、単に「含有量X」ともいう。「エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)の中和度Y[%]」は、単に「中和度Y」ともいう。「JIS K 7210:1999に準拠し190℃及び2160g荷重の条件で測定される、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)のメルトフローレートZ[g/10分]」は、単に「メルトフローレートZ」ともいう。「メルトフローレート」は、単に「MFR」ともいう。「エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)」は、単に「アイオノマー(A)」ともいう。
【0010】
〔スキンパック用樹脂組成物〕
本開示の一実施形態のスキンパック用樹脂組成物は、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)を含み、前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)は以下の式(1)を満たす。
11≦(X×Y×0.01)/Z 式(1)
式(1)中、Xは、前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)を構成する共重合体の全構成単位に対する、不飽和カルボン酸に由来する構成単位の含有量[質量%]を表し、
Yは、前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)の中和度[%]を表し、
Zは、JIS K 7210:1999に準拠し190℃及び2160g荷重の条件で測定される、前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)のメルトフローレート[g/10分]を表す。
【0011】
本開示の一実施形態のスキンパック用樹脂組成物が、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)を含み、前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)は上記の式(1)を満たすと、幅広い温度範囲においてスキンパック包装が可能であるフィルムが得られる。
【0012】
本開示の一実施形態のスキンパック用樹脂組成物においてアイオノマー(A)が式(1)を満たすことによる作用は明確ではないが、以下のように推定される。
前記アイオノマー(A)が上記の式(1)を満たすとき、例えば含有量X及び中和度Yの値が大きいとき、前記アイオノマー(A)は、高度な酸性状態かつ高度な中和状態となり、アイオノマー(A)間のイオン結合による相互作用がより強くなる。よって、このようなアイオノマー(A)を含むスキンパック用樹脂組成物をフィルム化した際、幅広い温度範囲において局部的にフィルムが薄くならず破れにくい。
【0013】
また、前記アイオノマー(A)が上記の式(1)を満たすとき、例えばメルトフローレートZの値が小さいとき、前記アイオノマー(A)の溶融時の流動性は低くなる。よって、アイオノマー(A)のメルトフローレートの値が小さいとき、このようなアイオノマー(A)を含むスキンパック用樹脂組成物をフィルム化した際、幅広い温度範囲において局部的にフィルムが薄くならず破れにくい。
なお、本開示は、上記推定機構には何ら制限されない。
【0014】
11≦(X×Y×0.01)/Z(式(1))において、より幅広い温度範囲におけるスキンパック包装が可能となる観点から、前記アイオノマー(A)は、
12≦(X×Y×0.01)/Zを満たすことがより好ましく、
13≦(X×Y×0.01)/Zを満たすことがさらに好ましく、
14≦(X×Y×0.01)/Zを満たすことが特に好ましく、
15≦(X×Y×0.01)/Zを満たすことが一層好ましく、
17≦(X×Y×0.01)/Zを満たすことがより一層好ましく、
19≦(X×Y×0.01)/Zを満たすことが最も好ましい。
【0015】
また、加工性及び成形性の観点から、前記アイオノマー(A)は、
(X×Y×0.01)/Z≦150を満たすことが好ましく、
(X×Y×0.01)/Z≦50を満たすことがより好ましく、
(X×Y×0.01)/Z≦30を満たすことがさらに好ましく、
(X×Y×0.01)/Z≦25を満たすことが特に好ましい。
【0016】
なお前記アイオノマー(A)が上記式(1)を満たすための方法としては、前記アイオノマー(A)を構成する共重合体の全構成単位に対する、不飽和カルボン酸に由来する構成単位の含有量[質量%]の値を大きくする、前記アイオノマー(A)の中和度[%]の値を大きくする、又は前記アイオノマー(A)のメルトフローレート[g/10分]の値を小さくすればよい。
【0017】
上記した(X×Y×0.01)/Zの上限値と下限値の値は、矛盾が生じない限り、任意に組み合わせて数値範囲を形成してよい。例えば、前記アイオノマー(A)は、13≦(X×Y×0.01)/Z≦30であってもよい。
【0018】
また、本開示の他の一実施形態のスキンパック用樹脂組成物は、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)を含み、以下の測定方法により測定される前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)の溶融張力が320mN以上である。
測定方法:
前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)を、180℃に加熱した直径9.55mmのバレルに充填する。前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)を、直径2.095mmのキャピラリーダイから、ピストン降下速度5mm/分にて、紐状に押し出す。紐状の前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)を、前記キャピラリーダイの下方300mmの位置に設置したロードセル付きプーリーに通過させ、紐状の前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)を巻取りロールで巻き取る。このとき、紐状の前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)の巻き取り速度を初速度5.0m/分から1分後に200m/分となるように直線的に増加させ、紐状の前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)が破断したときの前記ロードセル付きプーリーにかかる荷重を溶融張力[mN]とする。
【0019】
本開示の他の一実施形態のスキンパック用樹脂組成物が、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)を含み、上記の測定方法により測定される前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)の溶融張力が320mN以上であると、幅広い温度範囲においてスキンパック包装が可能であるフィルムが得られる。
【0020】
本開示の他の一実施形態のスキンパック用樹脂組成物においてアイオノマー(A)の溶融張力が320mN以上であることによる作用は明確ではないが、以下のように推定される。
上記の測定方法により求められる溶融張力は、アイオノマー(A)を加熱したときの、アイオノマー(A)の張力に対する破断のしにくさを表す。また、スキンパック包装を行う際は、スキンパック用フィルムを加熱する必要がある。よって、アイオノマー(A)の溶融張力の値が大きいとき、このようなアイオノマー(A)を含むスキンパック用組成物をフィルム化した際、幅広い温度範囲において局部的にフィルムが薄くならず破れにくい。
なお、本開示は、上記推定機構には何ら制限されない。
【0021】
上記の測定方法により測定される前記アイオノマー(A)の溶融張力は、320mN以上である。より幅広い温度範囲におけるスキンパック包装が可能となる観点から、上記の測定方法により測定される前記アイオノマー(A)の溶融張力は、330mN以上が好ましく、340mN以上がより好ましく、350mN以上がさらに好ましく、360mN以上が一層好ましく、380mN以上がより一層好ましく、400mN以上がさらに一層好ましく、450mN以上が最も好ましい。これらは、アイオノマー(A)の溶融張力の下限値の例を提示するものである。
【0022】
上記の測定方法により測定される前記アイオノマー(A)の溶融張力は、加工性及び成形性の観点から、600mN以下であることが好ましく、550mN以下であることがより好ましく、500mN以下であることがさらに好ましく、470mN以下であることが特に好ましい。これらは、アイオノマー(A)の溶融張力の上限値の例を提示するものである。
【0023】
上記の測定方法により測定される前記アイオノマー(A)の溶融張力の上限値と下限値の値は、矛盾が生じない限り、任意に組み合わせて数値範囲を形成してよい。例えば、上記の測定方法により測定される前記アイオノマー(A)の溶融張力は、320mN以上600mN以下であってもよく、330mN以上550mN以下であってもよく、340mN以上500mN以下であってもよく、350mN以上470mN以下であってもよく、360mN以上470mN以下であってもよく、380mN以上470mN以下であってもよく、400mN以上470mN以下であってもよく、450mN以上470mN以下であってもよい。
【0024】
なお上記の測定方法により測定される前記アイオノマー(A)の溶融張力を、320mN以上とするための方法としては、前記アイオノマー(A)を構成する共重合体の全構成単位に対する、不飽和カルボン酸に由来する構成単位の含有量[質量%]の値を大きくする、前記アイオノマー(A)の中和度[%]の値を大きくする、又は前記アイオノマー(A)のメルトフローレート[g/10分]の値を小さくすればよい。
【0025】
<アイオノマー(A)>
-アイオノマー(A)の構成-
以下の説明において、「本開示のスキンパック用樹脂組成物」は、特に明記しない限り、上記した「本開示の一実施形態のスキンパック用樹脂組成物」及び上記した「本開示の他の一実施形態のスキンパック用樹脂組成物」の両方を包含する概念である。
以下の説明において、「本開示のアイオノマー(A)」は、特に明記しない限り、上記した「本開示の一実施形態のスキンパック用樹脂組成物に含まれるアイオノマー(A)」及び上記した「本開示の他の一実施形態のスキンパック用樹脂組成物に含まれるアイオノマー(A)」の両方を包含する概念である。
【0026】
本開示のスキンパック用樹脂組成物は、アイオノマー(A)を含む。すなわち本開示のアイオノマー(A)は、ベースポリマーとしての前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体中の酸性基(例えば、カルボキシ基)の少なくとも一部が、金属イオンで中和されている。
【0027】
本開示のアイオノマー(A)を構成し得るエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体(ベースポリマー)は、少なくとも、エチレンと、不飽和カルボン酸と、を共重合させて得られる共重合体であり、エチレンに由来する構成単位と、不飽和カルボン酸に由来する構成単位と、を有している。
【0028】
前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体は、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体であってもよく、又はエチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル共重合体であってもよい。本開示のエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体は、好ましくは、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体である。
【0029】
(エチレンに由来する構成単位)
前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体においてエチレンに由来する構成単位の含有量としては、幅広い温度範囲におけるスキンパック包装が可能となる観点から、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体の全構成単位に対して、70質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましく、78質量%以上であることがさらに好ましい。これらは、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体においてエチレンに由来する構成単位の含有量の下限値の例を提示するものである。
【0030】
前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体においてエチレンに由来する構成単位の含有量としては、幅広い温度範囲におけるスキンパック包装が可能となる観点から、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体の全構成単位に対して、99質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下であることがさらに好ましい。これらは、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体においてエチレンに由来する構成単位の含有量の上限値の例を提示するものである。
【0031】
上記の上限値と下限値の値は、矛盾が生じない限り、任意に組み合わせて数値範囲を形成してよい。例えば、前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体においてエチレンに由来する構成単位の含有量としては、70質量%以上99質量%以下であってもよく、75質量%以上95質量%以下であってもよく、78質量%以上90質量%以下であってもよい。
【0032】
(不飽和カルボン酸に由来する構成単位)
前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体において不飽和カルボン酸に由来する構成単位としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸などに由来する構成単位が挙げられる。これらの中でも、不飽和カルボン酸に由来する構成単位としては、アクリル酸に由来する構成単位又はメタクリル酸に由来する構成単位であることが好ましく、メタクリル酸に由来する構成単位であることがより好ましい。
【0033】
前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体において不飽和カルボン酸に由来する構成単位の含有量(すなわち、本開示の含有量X)としては、幅広い温度範囲におけるスキンパック包装が可能となる観点から、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体の全構成単位に対して、8質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることがさらに好ましく、18質量%以上であることが特に好ましい。これらは、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体において不飽和カルボン酸に由来する構成単位の含有量の下限値の例を提示するものである。
【0034】
前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体において不飽和カルボン酸に由来する構成単位の含有量(すなわち、本開示の含有量X)としては、幅広い温度範囲におけるスキンパック包装が可能となる観点から、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体の全構成単位に対して、30質量%以下であることが好ましく、27質量%以下であることがより好ましく、25質量%以下であることがさらに好ましく、22質量%以下であることが特に好ましい。これらは、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体において不飽和カルボン酸に由来する構成単位の含有量の上限値の例を提示するものである。
【0035】
上記の上限値と下限値の値は、矛盾が生じない限り、任意に組み合わせて数値範囲を形成してよい。例えば、前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体において不飽和カルボン酸に由来する構成単位の含有量(すなわち、本開示の含有量X)としては、8質量%以上30質量%以下であってもよく、10質量%以上27質量%以下であってもよく、15質量%以上25質量%以下であってもよく、18質量%以上22質量%以下であってもよい。
【0036】
前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体の好ましい具体例としては、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体が挙げられる。
【0037】
(その他のモノマーに由来する構成単位)
前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体は、エチレンに由来する構成単位と、不飽和カルボン酸に由来する構成単位に加えて、エチレン及び不飽和カルボン酸以外のその他のモノマーに由来する構成単位を含んでいてもよい。
【0038】
前記その他のモノマーに由来する構成単位としては、例えば、不飽和カルボン酸エステル、エチレン以外の不飽和炭化水素(例えば、プロピレン、ブテン、1,3-ブタジエン、ペンテン、1,3-ペンタジエン、1-ヘキセン等)、ビニルエステル(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等)、ビニル硫酸、ビニル硝酸等の酸化物、ハロゲン化合物(例えば、塩化ビニル、フッ化ビニル等)、ビニル基含有の1級及び2級アミン化合物、一酸化炭素、二酸化硫黄等に由来する構成単位が挙げられる。
【0039】
これらの中でも、幅広い温度範囲におけるスキンパック包装が可能となる観点から、その他のモノマーに由来する構成単位としては、不飽和カルボン酸エステルに由来する構成単位であってもよい。
【0040】
前記不飽和カルボン酸エステルとしては、エチレン及び不飽和カルボン酸と共重合可能であれば特に制限はなく、例えば、不飽和カルボン酸アルキルエステルが挙げられる。
【0041】
前記不飽和カルボン酸アルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソオクチル等のアクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソオクチル等のメタクリル酸アルキルエステル;マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル等のマレイン酸アルキルエステル;等が挙げられる。中でも、前記アルキルエステル中のアルキル基の炭素数が1~12である不飽和カルボン酸アルキルエステルであってもよい。
【0042】
これらの中でも、前記不飽和カルボン酸アルキルエステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソオクチル等のアクリル酸アルキルエステル又はメタクリル酸アルキルエステルであってもよく、アクリル酸の低級アルキルエステル又はメタクリル酸の低級アルキルエステル(例えば、アルキル基の炭素数が2~5のアルキルエステル)であってもよい。
【0043】
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体が、不飽和カルボン酸エステルに由来する構成単位を含む場合、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体の具体例としては、エチレン・(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(例えば、エチレン・(メタ)アクリル酸・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸・アクリル酸n-ブチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸・アクリル酸イソブチル共重合体等が挙げられる。
【0044】
前記その他のモノマーに由来する構成単位の含有量としては、柔軟性確保の観点から、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体の全構成単位に対して、0.1質量%以上であってもよく、1質量%以上であってもよい。これらは、その他のモノマーに由来する構成単位の含有量の下限値の例を提示するものである。
【0045】
前記その他のモノマーに由来する構成単位の含有量としては、柔軟性確保の観点から、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体の全構成単位に対して、20質量%以下であってもよく、15質量%以下であってもよい。これらは、その他のモノマーに由来する構成単位の含有量の上限値の例を提示するものである。
【0046】
上記の上限値と下限値の値は、矛盾が生じない限り、任意に組み合わせて数値範囲を形成してよい。例えば、前記他のモノマーに由来する構成単位の含有量としては、0.1質量%以上20質量%以下であってもよく、1質量%以上15質量%以下であってもよい。
【0047】
なお前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、又はグラフト共重合体のいずれであってもよい。工業的に入手可能な観点から、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体としては、ランダム共重合体であることが好ましい。
【0048】
(金属イオン)
本開示のエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)が有する酸性基の中和に用いられる金属イオンとしては、特に制限はない。金属イオンは、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0049】
前記金属イオンとしては、1価の金属イオンであってもよく、多価金属イオンであってもよい。1価の金属イオンとしては、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、及びセシウムイオン等のアルカリ金属イオンが挙げられる。多価金属イオンとしては、例えば、2価の金属イオン、3価の金属イオン、又は4価の金属イオンであってもよく、アルカリ土類金属がイオン化した多価金属イオン、遷移元素がイオン化した多価金属イオン、又はその他の金属元素がイオン化した多価金属イオンであってもよい。
【0050】
前記2価の金属イオンとしては、例えばマグネシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオン、マンガンイオン、鉄イオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、銅イオン、及び亜鉛イオン等が挙げられる。
前記3価の金属イオンとしては、例えばアルミニウムイオン、マンガンイオン、及び鉄イオン等が挙げられる。
前記4価の金属イオンとしては、例えばマンガンイオン等が挙げられる。
【0051】
前記アルカリ土類金属がイオン化した多価金属イオンとしては、例えばカルシウムイオン、ストロンチウムイオン、及びバリウムイオン等が挙げられる。
前記遷移元素がイオン化した多価金属イオンとしては、例えばマンガンイオン、鉄イオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、及び銅イオン等が挙げられる。
前記その他の金属元素がイオン化した多価金属イオンとしては、例えばマグネシウムイオン、アルミニウムイオン、及び亜鉛イオン等が挙げられる。
【0052】
幅広い温度範囲におけるスキンパック包装が可能となる観点から、本開示のエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)の少なくとも一部は、1価の金属イオンで中和されていることが好ましい。すなわち、本開示のエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)は2種以上の金属イオンで中和されていてもよいが、1価の金属イオンで中和されている部分が存在することが好ましい。本開示のエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)は、1価の金属イオンで中和されていることがより好ましい。
【0053】
幅広い温度範囲におけるスキンパック包装が可能となる観点から、本開示のエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)の少なくとも一部は、ナトリウムイオンで中和されていることが好ましい。すなわち、本開示のエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)は2種以上の金属イオンで中和されていてもよいが、ナトリウムイオンで中和されている部分が存在することが好ましい。本開示のエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)は、ナトリウムイオンで中和されていることがより好ましい。
【0054】
本開示のアイオノマー(A)の中和度(すなわち、本開示の中和度Y)は、30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましく、55%以上であることが一層好ましく、60%以上であることがより一層好ましい。中和度が10%以上であると、アイオノマーとしての性能をより効果的に発揮することが可能である。これらは、本開示のアイオノマー(A)の中和度の下限値の例を提示するものである。
【0055】
本開示のアイオノマー(A)の中和度は(すなわち、本開示の中和度Y)、99%以下であることが好ましく、96%以下であることがより好ましく、94%以下であることがさらに好ましく、92%以下であることが一層好ましく、90%以下であることがより一層好ましい。中和度が99%以下であると、基材層を形成する際、イオン凝集を適度に抑制でき、かつ、流動性の低下をより抑制でき、成形加工性をより好適に維持できる。これらは、本開示のアイオノマー(A)の中和度の上限値の例を提示するものである。
【0056】
上記の上限値と下限値の値は、矛盾が生じない限り、任意に組み合わせて数値範囲を形成してよい。例えば、本開示のアイオノマー(A)の中和度(すなわち、本開示の中和度Y)は、30%以上100%以下であってもよく、30%以上99%以下であってもよく、40%以上96%以下であってもよく、50%以上94%以下であってもよく、55%以上92%以下であってもよく、55%以上90%以下であってもよく、60%以上90%以下であってもよい。
【0057】
なお、本開示において「中和度」とは、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体(ベースポリマー)が有する酸性基(例えばカルボキシ基)のモル数に対する、金属イオンの配合比率(モル%)を示す。
【0058】
-アイオノマー(A)のメルトフローレート-
本開示のアイオノマー(A)のメルトフローレート(JIS K 7210:1999に準拠して、190℃及び2160g荷重の条件で測定される値[g/10分])(すなわち、本開示のメルトフローレートZ)は、加工性の観点から、0.01g/10分以上であることが好ましく、0.05g/10分以上であることがより好ましく、0.1g/10分以上であることがさらに好ましい。これらは、本開示のアイオノマー(A)のメルトフローレートの下限値の例を提示するものである。
【0059】
本開示のアイオノマー(A)のメルトフローレート(JIS K 7210:1999に準拠して、190℃及び2160g荷重の条件で測定される値[g/10分])(すなわち、本開示のメルトフローレートZ)は、幅広い温度範囲におけるスキンパック包装が可能となる観点から、100g/10分以下が好ましく、30g/10分以下がより好ましく、10g/10分以下がさらに好ましく、3.0g/10分以下が特に好ましく、1.0g/10分以下が一層好ましく、0.8g/10分以下がより一層好ましい。これらは、本開示のアイオノマー(A)のメルトフローレートの上限値の例を提示するものである。
【0060】
上記の上限値と下限値の値は、矛盾が生じない限り、任意に組み合わせて数値範囲を形成してよい。例えば、本開示のアイオノマー(A)のメルトフローレート(すなわち、本開示のメルトフローレートZ)は、0.01g/10分以上100g/10分以下であってもよく、0.05g/10分以上30g/10分以下であってもよく、0.05g/10分以上10g/10分以下であってもよく、0.05g/10分以上3.0g/10分以下であってもよく、0.05g/10分以上1.0g/10分以下であってもよく、0.05g/10分以上0.8g/10分以下であってもよく、0.1g/10分以上0.8g/10分以下であってもよい。
【0061】
-スキンパック用樹脂組成物中のアイオノマー(A)の含有量-
本開示のスキンパック用樹脂組成物においてアイオノマー(A)の含有量としては、幅広い温度範囲におけるスキンパック包装が可能となる観点から、スキンパック用樹脂組成物の全質量に対して、80質量%以上100質量%以下であることが好ましく、90質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、95質量%以上100質量%以下であることがさらに好ましい。
【0062】
本開示のスキンパック用樹脂組成物に含まれるアイオノマー(A)は、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体を2種以上含んでもよい。例えば、前記アイオノマー(A)は、エチレン・アクリル酸共重合体とエチレン・メタクリル酸共重合体とを含んでもよく、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体とエチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル系共重合体とを含んでもよい。
【0063】
-含有量X、中和度Y、及びメルトフローレートZの数値の組み合わせ-
本開示のスキンパック用樹脂組成物に含まれるアイオノマー(A)において、前記アイオノマー(A)を構成する共重合体の全構成単位に対する、不飽和カルボン酸に由来する構成単位の含有量X[質量%]、前記アイオノマー(A)の中和度Y[%]、及びJIS K 7210:1999に準拠し190℃及び2160g荷重の条件で測定される、前記アイオノマー(A)のメルトフローレートZ[g/10分]、の数値の組み合わせは、上記式(1)を満たす限り特に制限されない。
【0064】
本開示のアイオノマー(A)において、含有量X、中和度Y、及びメルトフローレートZの数値の組み合わせは、幅広い温度範囲におけるスキンパック包装が可能となる観点、及び取り扱い容易性の観点から、
含有量Xが18質量%以上30質量%以下であって、中和度Yが50%以上90%以下であって、かつメルトフローレートZが0.1g/10分以上30g/10分以下であることがより好ましく;
含有量Xが20質量%以上30質量%以下であって、中和度Yが50%以上80%以下であって、かつメルトフローレートZが0.1g/10分以上3.0g/10分以下であることがさらに好ましく;
含有量Xが20質量%以上30質量%以下であって、中和度Yが55%以上80%以下であって、かつメルトフローレートZが0.1g/10分以上0.8g/10分以下であることがさらに好ましい。
【0065】
-アイオノマー(A)の具体例-
本開示のアイオノマー(A)としては、上市されている市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、三井・ダウポリケミカル株式会社製のハイミラン(登録商標)シリーズ等が挙げられる。
【0066】
なお本開示のアイオノマー(A)は、2種以上のアイオノマー(A)を含んでもよい。
【0067】
<その他の成分>
本開示のスキンパック用樹脂組成物は、アイオノマー(A)の他に、その他の成分を含んでいてもよい。
【0068】
前記その他の成分としては、例えば、成形加工性、生産性等の諸性質を改良又は調整する目的で、アイオノマー(A)以外の樹脂;シリカ、タルク、カオリン、及び炭酸カルシウム等の無機粒子、酸化チタン及びカーボンブラック等の顔料、染料、加工助剤、流れ強化添加剤、耐衝撃性改良剤、難燃剤、耐候性安定剤、UV吸収剤、UV安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、粘着付与剤、粘着防止剤、溶融粘度改良剤、分散剤、界面活性剤、キレート化剤、架橋剤、カップリング剤、接着剤、プライマ、滑剤、核剤、可塑剤、並びに老化防止剤等の添加剤;を適宜添加できる。
【0069】
前記アイオノマー(A)以外の樹脂の含有量としては、スキンパック用樹脂組成物の全質量に対して、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましく、3質量%以下がさらにより好ましい。
前記添加剤の含有量としては、スキンパック用樹脂組成物の全質量に対して、無機添加剤の場合は0.1質量%以上3質量%以下の範囲が好ましく、無機添加剤以外の場合は0.01質量%以上1質量%以下の範囲が好ましい。
【0070】
〔スキンパック用フィルム〕
本開示のスキンパック用フィルムは、本開示のスキンパック用樹脂組成物を含む基材層を備える。
【0071】
本開示のスキンパック用フィルムは、本開示のスキンパック用樹脂組成物を含む基材層を備えるので、幅広い温度範囲におけるスキンパック包装が可能となる。
【0072】
本開示のスキンパック用フィルムの形状には特に制限はないが、例えば、シート形状(即ち、フィルム形状)が好適である。
【0073】
本開示のスキンパック用フィルムの厚みは特に限定されず、スキンパック包装用として要求される強度などに応じて選択すればよい。フィルムの厚みは、強度、取扱い性、被包装物に対する密着性、及び製造容易性などの観点から、40μm以上300μm以下の厚みであることが好ましく、50μm以上250μm以下であることがより好ましく、60μm以上200μm以下であることがさらに好ましい。
【0074】
<基材層>
本開示のスキンパック用フィルムが備える基材層は、上述した本開示のスキンパック用樹脂組成物を含む層である。基材層の構造は、単層構造であってもよいし、2層以上からなる積層構造であってもよい。基材層は、例えば、本開示のスキンパック用樹脂組成物(及び、必要に応じ添加剤等の他の成分)を用いたキャスト法又は溶融押出しによって製造される。
【0075】
本開示のスキンパック用フィルムが備える基材層における、本開示のスキンパック用樹脂組成物の含有量は、基材層の全質量に対し、好ましくは80質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは90質量%以上100質量%以下であり、さらに好ましくは95質量%以上100質量%以下であり、一層好ましくは97質量%以上100質量%以下である。
【0076】
本開示のスキンパック用フィルムが備える基材層の厚みは特に限定されず、スキンパック包装用として要求される強度などに応じて選択すればよい。基材層の厚みは、強度、取扱い性、被包装物に対する密着性、及び製造容易性などの観点から、40μm以上300μm以下の厚みであることが好ましく、50μm以上250μm以下であることがより好ましく、60μm以上200μm以下であることがさらに好ましい。
【0077】
前記基材層は、本開示の効果が得られる範囲において、成形加工性、生産性等の諸性質を改良又は調整する目的で、アイオノマー(A)以外の樹脂;シリカ、タルク、カオリン、及び炭酸カルシウム等の無機粒子、酸化チタン及びカーボンブラック等の顔料、染料、加工助剤、流れ強化添加剤、耐衝撃性改良剤、難燃剤、耐候性安定剤、UV吸収剤、UV安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、粘着付与剤、粘着防止剤、溶融粘度改良剤、分散剤、界面活性剤、キレート化剤、架橋剤、カップリング剤、接着剤、プライマ、滑剤、核剤、可塑剤、並びに老化防止剤等の添加剤;を適宜添加できる。
【0078】
前記アイオノマー(A)以外の樹脂の含有量としては、基材層の全質量に対して、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。
前記添加剤の含有量としては、基材層の全質量に対して、無機添加剤の場合は0.1質量%以上3質量%以下の範囲が好ましく、無機添加剤以外の場合は0.01質量%以上1質量%以下の範囲が好ましい。
【0079】
<シーラント層>
本開示のスキンパック用フィルムは、シーラント層をさらに備えてもよい。前記シーラント層は、本開示のスキンパック用樹脂組成物を含む基材層が直接又は他の層を介して積層され、他の部材と接着するための層である。
【0080】
前記シーラント層の材質には特に制限はない。また、シーラント層の構造は、単層構造であってもよいし、2層以上からなる積層構造であってもよい。
【0081】
前記シーラント層は、樹脂を含有することが好ましい。樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましい。
熱可塑性樹脂としては特に限定されないが、例えば、高密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)等のポリエチレン、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体またはそのアイオノマー、エチレン・不飽和エステル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・α-オレフィン共重合体エラストマー、ポリプロピレン、プロピレン系共重合体(プロピレンとプロピレン以外のα-オレフィンとの共重合体)、ポリブテン、及びその他のオレフィン系(共)重合体、並びにこれらのポリマーブレンド等のポリオレフィン等を挙げることができる。上記α-オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、4-メチル-1-ペンテン等が挙げられる。シーラント層は、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマー及びエチレン・不飽和エステル共重合体からなる群から選択される少なくとも1種を含有することがより好ましい。
特に、シーラント層が、上記の群から選択される少なくとも1種を含有する場合には、スキンパック用フィルムの伸長性が向上する。伸長性を有するスキンパック用フィルムは、被包装物の形状への追従性、及び、被包装物に対する密着性がより向上する。
【0082】
前記シーラント層の厚さ(2層以上からなる積層構造である場合には総厚)には特に制限はないが、好ましくは10μm以上300μm以下であり、より好ましくは20μm以上250μm以下であり、更に好ましくは30μm以上200μm以下である。
【0083】
前記シーラント層は、本開示の効果が得られる範囲において、成形加工性、生産性等の諸性質を改良又は調整する目的で、シリカ、タルク、カオリン、及び炭酸カルシウム等の無機粒子、酸化チタン及びカーボンブラック等の顔料、染料、加工助剤、流れ強化添加剤、耐衝撃性改良剤、難燃剤、耐候性安定剤、UV吸収剤、UV安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、粘着付与剤、粘着防止剤、溶融粘度改良剤、分散剤、界面活性剤、キレート化剤、架橋剤、カップリング剤、接着剤、プライマ、滑剤、核剤、可塑剤、並びに老化防止剤等の添加剤を適宜添加できる。
【0084】
前記添加剤の含有量としては、シーラント層の全質量に対して、無機添加剤の場合は0.1質量%以上3質量%以下の範囲が好ましく、無機添加剤以外の場合は0.01質量%以上1質量%以下の範囲が好ましい。
【0085】
<スキンパック用フィルムの製造方法>
本開示のスキンパック用フィルムを製造する方法は特に限定されない。
本開示のスキンパック用フィルムは、例えば、インフレーション、キャスト法等の一般的方法を用いて基材層を成形することにより作製することができる。スキンパック用フィルムの厚み制御の観点から、キャスト法を用いて基材層を成形する方法が好ましい。つまり、本開示のスキンパック用フィルムの製造方法は、前記スキンパック用樹脂組成物を用いてキャスト法により前記基材層を成形することを含むことが好ましい。
【0086】
本開示のスキンパック用フィルムがシーラント層をさらに備える場合、当該スキンパック用フィルムを製造する方法としては、例えば、スキンパック用樹脂組成物を押出機で押出成形して得られた基材層を直接又は他の層を介してシーラント層に押出ラミネートする方法、インフレーションやT-ダイキャスト成形によりフィルム状にした基材層をシーラント層とラミネートさせる、いわゆるサーマルラミネート法、ドライラミネート法、サンドラミネート法、共押出インフレーション法、共押出Tダイ法等の一般的方法が挙げられる。スキンパック用フィルムの厚み制御の観点から、シーラント層をさらに備えるスキンパック用フィルムの製造方法としては、共押出Tダイ法を用いることが好ましい。
【0087】
また、本開示のスキンパック用フィルムの製造方法におけるフィルムの延伸前あるいは後において、公知の方法により前記フィルムに放射線照射してもよい。これにより、前記基材層を構成するアイオノマー(A)又はシーラント層を構成する樹脂が架橋され、延伸性、耐熱性、機械強度が向上する傾向にある。照射する放射線としては、α線、β線、電子線、γ線、及びX線等が挙げられる。これらのうち、照射前後での架橋効果が大きいという観点から、電子線及びγ線であってもよく、電子線であってもよい。
【0088】
放射線の照射条件としては、例えば、電子線照射の場合、加速電圧が150kV以上500kV以下であってもよく、照射線量が10kGy(キログレイ)以上200kGy以下であってもよい。γ線の場合、線量率が0.05kGy/時間以上3kGy/時間以下であってもよい。加速電圧や照射線量が前記下限以上では、前記樹脂を十分に架橋することができる傾向にあり、他方、前記上限以下では、前記シーラント層に含まれる樹脂がポリ塩化ビニリデンの場合、ポリ塩化ビニリデンの分解を抑制できる。
【0089】
また、本開示のスキンパック用フィルムの内表面、外表面、又は両表面に、コロナ放電処理、プラズマ処理、又は炎処理を行ってもよい。
【0090】
〔スキンパック包装材〕
本開示のスキンパック包装材は、底材と、本開示のスキンパック用フィルムと、を備える。
【0091】
本開示のスキンパック包装材は、本開示のスキンパック用フィルムを備えるので、幅広い温度範囲におけるスキンパック包装が可能であり、突き刺し強度に優れ、さらに、底材に対しても優れたヒートシール性を発揮する。また、本開示のスキンパック包装材は、複雑な形状の被包装物に対しても密着性に優れる。
【0092】
<底材>
本開示のスキンパック包装材が備える底材としては、特に制限はなく、例えば、従来のスキンパック包装に用いられている汎用の平板状底材フィルム(例えば、板紙、プラスチックシート、ポリプロピレン(PP)シートなどの平板状ベースシート)が挙げられる。また、底材は、平板状底材フィルムを所望の形状に成形した成形体を使用してもよい。
【0093】
<スキンパック用フィルム>
本開示のスキンパック包装材が備えるスキンパック用フィルムとしては、前述のスキンパック用フィルムを用いることができる。
【0094】
〔スキンパック包装体〕
本開示のスキンパック包装体は、底材と、前記底材上に配置された被包装物と、本開示のスキンパック用フィルムと、を備える。
【0095】
本開示のスキンパック包装体は、本開示のスキンパック用フィルムを備えるので、幅広い温度範囲におけるスキンパック包装が可能であり、突き刺し強度に優れ、さらに、底材に対しても優れたヒートシール性を発揮し、また、複雑な形状の被包装物に対しても密着性に優れた包装体である。
【0096】
<底材>
本開示のスキンパック包装体が備える底材としては、特に制限はなく、例えば、従来のスキンパック包装に用いられている汎用の平板状底材フィルム(例えば、板紙、プラスチックシート、ポリプロピレン(PP)シートなどの平板状ベースシート)が挙げられる。また、底材は、平板状底材フィルムを所望の形状に成形した成形体を使用してもよい。
【0097】
<被包装物>
本開示のスキンパック包装体が備える被包装物としては、特に制限はなく、本開示のスキンパック用フィルムによって包装できるものであれば特に限定されるものでない。前記被包装物としては、例えば、食品、飲料品、化粧品、生活雑貨、文房具、医薬部外品、医薬品、医療器具、文房具、玩具、電子部品搭載基板、及び生活雑貨等の各種物品が挙げられる。前記食品としては、例えば、肉類、肉製品、肉料理、魚介類、魚介料理、水産加工食品、総菜、調理パスタ、乳加工食品、及び冷凍食品等が挙げられる。食品については、厚生省告示第370号(「食品、添加物等の規格基準」)を参照できる。なお突き刺し強度、ヒートシール性及び密着性の観点から、被包装物としては、ベーコン、ソーセージ、ハム、食肉、チーズ等の複雑な形状を有する食品であることが好ましい。
【0098】
<スキンパック用フィルム>
本開示のスキンパック包装体が備えるスキンパック用フィルムとしては、前述のスキンパック用フィルムを用いることができる。
【実施例
【0099】
以下、本開示を実施例により更に具体的に説明するが、本開示はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0100】
<メルトフローレートの測定方法>
以下の実施例及び比較例において、アイオノマーのメルトフローレート(MFR)は、JIS K 7210:1999に準拠して、190℃及び2160g荷重の条件で測定した。
【0101】
<溶融張力の測定方法>
以下の実施例及び比較例において、アイオノマーの溶融張力は、メルトテンションテスター(株式会社東洋精機製作所製)を用いて、以下の方法で測定した。
アイオノマーを、180℃に加熱した直径9.55mmのバレルに充填した。前記アイオノマーを、直径2.095mmのキャピラリーダイから、ピストン降下速度5mm/分にて、紐状に押し出した。紐状の前記アイオノマーを、前記キャピラリーダイの下方300mmの位置に設置したロードセル付きプーリーに通過させ、紐状の前記アイオノマーを巻取りロールで巻き取った。このとき、紐状の前記アイオノマーの巻き取り速度を初速度5.0m/分から1分後に200m/分となるように直線的に増加させ、紐状の前記アイオノマーが破断したときの前記ロードセル付きプーリーにかかる荷重を溶融張力[mN]として求めた。
【0102】
<エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)>
本開示のエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)として、以下のアイオノマーをそれぞれ準備した。
【0103】
・アイオノマー1:エチレン・メタクリル酸共重合体のNa中和物
(エチレンに由来する構成単位の含有量80質量%、メタクリル酸に由来する構成単位の含有量20質量%、Naイオンによる中和度70%、MFR0.7g/10分、本開示のアイオノマー(A))
・アイオノマー2:エチレン・メタクリル酸共重合体のNa中和物
(エチレンに由来する構成単位の含有量80質量%、メタクリル酸に由来する構成単位の含有量20質量%、Naイオンによる中和度55%、MFR0.8g/10分、本開示のアイオノマー(A))
・アイオノマー3:エチレン・メタクリル酸共重合体のNa中和物
(エチレンに由来する構成単位の含有量85質量%、メタクリル酸に由来する構成単位の含有量15質量%、Naイオンによる中和度54%、MFR0.9g/10分)
・アイオノマー4:エチレン・メタクリル酸共重合体のNa中和物
(エチレンに由来する構成単位の含有量90質量%、メタクリル酸に由来する構成単位の含有量10質量%、Naイオンによる中和度50%、MFR1.3g/10分)
・アイオノマー5:エチレン・メタクリル酸共重合体のNa中和物
(エチレンに由来する構成単位の含有量85質量%、メタクリル酸に由来する構成単位の含有量15質量%、Naイオンによる中和度30%、MFR2.8g/10分)
・アイオノマー6:エチレン・メタクリル酸共重合体のNa中和物
(エチレンに由来する構成単位の含有量89質量%、メタクリル酸に由来する構成単位の含有量11質量%、Naイオンによる中和度38%、MFR10g/10分)
・アイオノマー7:製品名:ハイミラン1601、三井・ダウポリケミカル株式会社製
【0104】
〔実施例1~実施例2及び比較例1~比較例4および参考例1〕
<スキンパック用フィルムの作製>
ベント式単軸スクリュー押出機(スクリュー径65mm、L/D=33)を使用して、エチレン・メタクリル酸共重合体のカルボキシ基の一部をイオン化することにより、アイオノマー1~アイオノマー6(スキンパック用樹脂組成物)を作製した。前記スキンパック用樹脂組成物を、40mmφ単層のキャスト成形機を用いて、加工速度10m/分のキャスト法により、100μm厚の単層スキンパック用フィルム(すなわち、基材層のみを備えるスキンパック用フィルム)を得た。同様にして、スキンパック用樹脂組成物としてアイオノマー7を用い、40mmφ単層のキャスト成形機を用いて、加工速度10m/分のキャスト法により、100μm厚の単層スキンパック用フィルム(すなわち、基材層のみを備えるスキンパック用フィルム)を得た。
【0105】
<スキンパック性の評価>
幅7cm、奥行き5cm、高さ2cmの木片を、深さ1.2cm、縦15cm、横15cmの発泡ポリスチレン底材(表層にポリエチレンとポリブチレンのブレンド層のフィルムを積層したもの)の上に置いた。ムルチバック社製トレーシーラーT200を用いて、以下の表1に示す各設定温度、加熱時間1秒、初期真空度1000mbar、及び真空度10mbarの条件にて、前記スキンパック用フィルムを用いて、前記木片及び底材を一緒にスキンパック包装した。
【0106】
スキンパック包装後に、前記スキンパック用フィルムの破れ及びピンホールの有無について確認することで、スキンパック性を評価した。なおスキンパック性は以下の基準で評価した。評価の結果を表1に示す。
A:スキンパック用フィルムに破れがなく、ピンホールもない。
B:スキンパック用フィルムに破れ又はピンホールがある。
【0107】
【表1】
【0108】
なお表1中、「-」は、該当するアイオノマーを含有していないこと又は未測定であることを示す。表1中、アイオノマー1~アイオノマー7の項目に記載された各数値は、作製したフィルムが備える基材層に含まれる樹脂組成物中の各アイオノマーの含有量を示す。表1中、Xは、前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)を構成する共重合体の全構成単位に対する、不飽和カルボン酸に由来する構成単位の含有量[質量%]を表し、Yは、前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)の中和度[%]を表し、Zは、JIS K 7210:1999に準拠し190℃及び2160g荷重の条件で測定される、前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)のメルトフローレート[g/10分]を表す。
【0109】
表1に示される結果から明らかなように、実施例1~実施例2のスキンパック用樹脂組成物を用いたスキンパック用フィルムは、スキンパック包装の際、幅広い温度において良好なスキンパック性を示した。これに対し、比較例1~比較例4および参考例1の組成物を用いたフィルムは、スキンパック包装の際、幅広い温度における良好なスキンパック性を示さなかった。
【0110】
以上示したように、本開示のスキンパック用樹脂組成物によれば、幅広い温度範囲において良好なスキンパック性を示すスキンパック包装を実現できることは明らかである。
【0111】
2021年3月22日に出願された日本国特許出願2021-047869号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。