(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】繊維強化樹脂の製造装置および繊維強化樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 70/54 20060101AFI20240822BHJP
B29C 70/16 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
B29C70/54
B29C70/16
(21)【出願番号】P 2023509030
(86)(22)【出願日】2022-03-14
(86)【国際出願番号】 JP2022011391
(87)【国際公開番号】W WO2022202449
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-04-24
(31)【優先権主張番号】P 2021053388
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢野 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】宮田 篤史
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-034737(JP,A)
【文献】特開2002-249945(JP,A)
【文献】特開2009-222195(JP,A)
【文献】特開2013-063592(JP,A)
【文献】特開2001-226044(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/00-70/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化繊維に第1の樹脂を含浸させる含浸部と、
前記含浸部よりも上流側で、前記強化繊維を、先行する強化繊維から新たな強化繊維に切り替え切替装置と、を有し、
前記切替装置は、前記強化繊維の切り替え時に、溶融された薄膜状の第2の樹脂の融着により、前記先行する強化繊維と新たな強化繊維とが接合した接合体を形成して、前記新たな強化繊維と前記先行する強化繊維とを接続する、
強化繊維が一方向に配向して配列された繊維強化樹脂の製造装置。
【請求項2】
前記切替装置は、前記先行する強化繊維および新たな強化繊維の双方に前記第2の樹脂が接触するように、前記第2の樹脂を供給する供給部、および
前記第2の樹脂を加熱して溶融させつつ、前記先行する強化繊維および新たな強化繊維に接触した前記第2の樹脂を押圧する押圧部を有する
請求項1に記載の繊維強化樹脂の製造装置。
【請求項3】
前記第2の樹脂は、前記第1の樹脂と同種の樹脂である、請求項1または2に記載の繊維強化樹脂の製造装置。
【請求項4】
前記含浸部は、平面状に配列された前記強化繊維に溶融した前記第1の樹脂を供給して、前記強化繊維に第1の樹脂を含浸させる、請求項1~3のいずれか1項に記載の繊維強化樹脂の製造装置。
【請求項5】
複数の前記繰り出された強化繊維を、互いに異なる位置で保持する複数の保持部と、
前記複数の保持部から前記複数の強化繊維を受け取って合一させて、前記含浸部へと送る合一部と、を有し、
複数の前記切替装置が、前記複数の保持部のそれぞれに配置されている、
請求項4に記載の繊維強化樹脂の製造装置。
【請求項6】
前記複数の保持部は、いずれも複数の前記強化繊維を保持し、
前記合一部では、前記複数の保持部から受け取った複数本の強化繊維を、互い違いに配置してシート状に合一させ、かつ、前記切替装置による前記強化繊維の切り替えの前後で、前記複数の保持部から受け取った複数の強化繊維の配置が変更される、
請求項5に記載の繊維強化樹脂の製造装置。
【請求項7】
前記含浸部は、ダイ孔の内部を通過する前記強化繊維の束に溶融した前記第1の樹脂を供給して、前記強化繊維の束ごとに第1の樹脂を含浸させる、請求項1~3のいずれか1項に記載の繊維強化樹脂の製造装置。
【請求項8】
前記接合体を、前記強化繊維の束ごとに分割して、前記分割された接合体を、前記強化繊維の束ごとに異なる前記ダイ孔に導入する分割部を有する、請求項7に記載の繊維強化樹脂の製造装置。
【請求項9】
前記含浸部で樹脂を含浸されてなる繊維強化樹脂から、前記接合体が形成された部位を除去する除去部を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の繊維強化樹脂の製造装置。
【請求項10】
前記強化繊維は、炭素繊維である、請求項1~9のいずれか1項に記載の繊維強化樹脂の製造装置。
【請求項11】
前記樹脂は、熱可塑性樹脂である、請求項1~10のいずれか1項に記載の繊維強化樹脂の製造装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の繊維強化樹脂の製造装置を用いて、強化繊維を接続しながら繊維強化樹脂を製造する、強化繊維が一方向に配向して配列された繊維強化樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化樹脂の製造装置および繊維強化樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一方向に配向して配列された複数の強化繊維と、上記強化繊維に含浸された樹脂組成物(マトリクス樹脂)と、を含む薄膜状の繊維強化樹脂(以下、単に「Uni-Direction(UD)シート」ともいう。)が知られている。このUDシートは、金属よりも軽量であり、一方で機械的強度が高いため、樹脂成形体の表面を被覆する補強材などとしての用途が検討されている。
【0003】
UDシートは、通常、ロール体から繰り出された強化繊維に、樹脂材料を含浸させる方法で、製造される(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
UDシートの製造時には、クリールに複数のロール体を配置し、ロール体から強化繊維を繰り出していく。そして、1つのロール体からの強化繊維の繰り出しが終了するときには、樹脂を含浸させる強化繊維を、他のロール体から新たに繰り出す強化繊維(以下、単に「新たな強化繊維」ともいう)に切り替える。このとき、繰り出しが終了するロール体からの強化繊維(以下、単に「先行する強化繊維」ともいう)に新たな強化繊維を接続することで、新たな強化繊維にも連続的に樹脂を含浸させていく。
【0005】
強化繊維の接続方法として、特許文献2には、両端から引いても結び目が解けにくく、切断後には結び目が解けやすい等の特性を有する、繊維状材料の結び方が記載されている。
【0006】
また、特許文献3には、エア噴射により繊維同士を絡ませることで、強化繊維同士を連結する方法が記載されており、特許文献4には、当該連結方法を行うスプライサーを有する強化繊維を供給するボビンを自動で交換する装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表2001-525749号公報
【文献】特開2011-94244号公報
【文献】特開2006-52043号公報
【文献】特開2009-66917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
UDシートの製造時には、強化繊維にテンションをかけながら樹脂の含浸部へと移動させる。そのため、強化繊維の切り替え時には、上記テンションでも解けない程度に強く、強化繊維同士を接続させる必要がある。特許文献2には、両端から引いても(テンションをかけても)結び目が解けにくい、強化繊維の結び方が記載されている。しかし、この結び方は煩雑であり、機械による自動化が困難であるため、作業員の手作業で強化繊維を接続しなければならない。強化繊維を手作業で接続すると、接続時に製造装置を長時間にわたって停止させる必要があるため、UDシートの製造効率を向上させにくい。
【0009】
一方で、特許文献3および特許文献4には、エア噴射により繊維同士を絡ませて強化繊維を接続する方法、および当該方法を用いた強化繊維の自動切り替え装置が記載されている。しかし、エア噴射による強化繊維の接続は、比較的弱い接続であり、テンションによって解けてしまう可能性がある。
【0010】
また、UDシートを製造する際には、複数のロール体から繰り出した複数本の強化繊維を横方向に並べてシート状とし、このシート状に並んだ強化繊維に樹脂を含浸させていく。そのため、特許文献3および特許文献4に記載の方法で強化繊維の切り替えを自動化させようとすると、同時に強化繊維を繰り出すロール体の数と同数の切り替え装置を容易する必要があり、実用的ではない。
【0011】
これらの問題は、繊維強化樹脂として、一方向に配向されて配列した強化繊維を含むペレット状の樹脂組成物(LFT)を製造するときにも発生し得る。
【0012】
本発明は、上記従来技術の課題に鑑みなされたものであり、比較的簡易な構成で、強化繊維の切り替え時に前後の強化繊維を接続できる、強化繊維が一方向に配向して配列された繊維強化樹脂の製造装置、および当該装置を用いたおよび繊維強化樹脂の製造方法を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に関する強化繊維が一方向に配向して配列された繊維強化樹脂の製造装置は、強化繊維に第1の樹脂を含浸させる含浸部と、前記含浸部よりも上流側で、前記強化繊維を、先行する強化繊維から新たな強化繊維に切り替え切替装置と、を有する。前記切替装置は、前記強化繊維の切り替え時に、溶融された薄膜状の第2の樹脂の融着により、前記先行する強化繊維と新たな強化繊維とが接合した接合体を形成して、前記新たな強化繊維と前記先行する強化繊維とを接続する。
【0014】
また、上記課題を解決するための本発明の他の実施形態に関する強化繊維が一方向に配向して配列された繊維強化樹脂の製造方法は、繊維強化樹脂の製造装置を用いて、強化繊維を接続しながら繊維強化樹脂を製造する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、比較的簡易な構成で、強化繊維の切り替え時に前後の強化繊維を接続できる、強化繊維が一方向に配向して配列された繊維強化樹脂の製造装置、および当該装置を用いたおよび繊維強化樹脂の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に関する強化繊維が一方向に配向して配列された繊維強化樹脂の製造装置の例示的な構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、合一部において強化繊維が合一される様子を示す模式図である。
【
図3】
図3A~
図3Dは、切替装置が、保持部が保持する強化繊維を、新たな強化繊維に切り替える様子を示す模式図である。
【
図4】
図4は、平面状に配列された先行する強化繊維および新たな強化繊維に、樹脂フィルムが融着してなる接合体を示す模式図である。
【
図5】
図5Aは、切り替え前の合一部を示す模式図であり、
図5Bは、切り替え後の合一部を示す模式図である。
【
図6】
図6は、複合体が形成された部位を除去する除去部を有する繊維強化樹脂の製造装置の例示的な構成を示す模式図である。
【
図7】
図7は、本発明の他の実施形態に関する強化繊維が一方向に配向して配列された繊維強化樹脂の製造装置の例示的な構成を示す模式図である。
【
図8】
図8A~
図8Dは、切替装置が、保持部が保持する強化繊維を、新たな強化繊維に切り替える様子を示す模式図である。
【
図9】
図9は、重なって配列された先行する強化繊維および新たな強化繊維に、樹脂フィルムが融着してなる接合体を示す模式図である。
【
図10】
図10は、切断部および含浸部に、接合体が形成された強化繊維を導入する様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の一実施形態に関する強化繊維が一方向に配向して配列された繊維強化樹脂の製造装置の例示的な構成を示す模式図である。
図1は、繊維強化樹脂としてUDシートを製造する製造装置の例示的な構成を示す模式図である。
【0018】
関する強化繊維が一方向に配向して配列された繊維強化樹脂の製造装置100は、給糸部110、ガイド路120、切替装置130aおよび切替装置130b、アキューム140、含浸部150、ならびに巻取部160を有する。
【0019】
給糸部110は、含浸部150において樹脂を含浸されて繊維強化樹脂を構成することになる強化繊維を、供給する。本実施形態において、給糸部110は、複数のスピンドル112が配置されたクリール114であって、それぞれのスピンドル112には、強化繊維200が巻き付けられたボビン116が回転可能に設置されている。
【0020】
本実施形態において、強化繊維200は炭素繊維である。ただし、強化繊維200は、ガラス繊維およびアラミド繊維などの、繊維強化樹脂に用いられるいかなる繊維であってもよい。
【0021】
ガイド路120は、給糸部110から供給された強化繊維200を、切替装置130、アキューム140、含浸部150および巻取部160の各構成部に、この順番で導く。ガイド路120は、複数のガイドロール122、および強化繊維200を挟んで対向する2つのロールにより構成されるフィーダー124を有する。フィーダー124を構成する2つのロールが、互いに逆方向かつ強化繊維を挟み込むように回転することにより、ガイドロール122により構成された移動経路上に、強化繊維200を移動させる。
【0022】
ボビン116から強化繊維200が連続的に繰り出され、フィーダー124により移動させられることにより、ガイド路120上には、途切れることなく強化繊維200が移動し続ける。
【0023】
このとき、フィーダー124は、強化繊維200に所定のテンションを付与する。上記テンションにより、強化繊維は移動方向に直線状に配向する。この状態で含浸部150において樹脂を含浸されることにより、一方向に配向して配列された複数の強化繊維200と、強化繊維200に含浸されたマトリクス樹脂と、を有するUDシートが製造される。
【0024】
本実施形態において、ガイド路120は、2つのフィーダー124aおよびフィーダー124bを有する。フィーダー124aは、強化繊維200の移動方向における切替装置130の下流側、かつアキューム140の上流側に配置され、給糸部110から繰り出されて切替装置130を通過するまでの、強化繊維200の移動速度を調整する。フィーダー124bは、強化繊維200の移動方向における含浸部150の下流側、かつ巻取部160の上流側に配置され、含浸部150を通過する強化繊維200の移動速度を調整する。フィーダー124bによる強化繊維200の移動速度が、製造装置100による繊維強化樹脂の製造速度を規定する。
【0025】
また、本実施形態において、ガイド路120は、互いに異なるボビン116aおよびボビン116bからそれぞれ繰り出された強化繊維200aおよび強化繊維200bを、互いに異なる位置で保持する複数の保持部126aおよび保持部126bを有する。さらに、ガイド路120は、保持部126aおよび保持部126bのそれぞれが保持する強化繊維200aおよび強化繊維200bを合一させる、合一部128を有する。そして、ガイド路120は、合一部128において合一された強化繊維200を、アキューム140および含浸部150へと導く。
【0026】
図2は、合一部128において強化繊維200aおよび強化繊維200bが合一される様子を示す模式図である。本実施形態において、保持部126aは、複数のボビン116aから繰り出された複数の強化繊維200a(
図2では、6つのボビン116aから繰り出された6本の強化繊維200a)を、合一部128に導入する。また、保持部126bは、複数のボビン116bから繰り出された複数の強化繊維200b(
図2では、6つのボビン116bから繰り出された6本の強化繊維200b)を、合一部128に導入する。なお、
図2中では、1つのボビン116から繰り出された強化繊維200をまとめて1本の強化繊維として記載しているが、実際は、それぞれの強化繊維200は、複数の単繊維が集合して結束材により結束された、単繊維の束(トウ)である。本明細書では、理解を容易にするため、1本1本のトウを1本の強化繊維200として表している。
【0027】
保持部126aおよび保持部126bはいずれも、複数の強化繊維200を、互いに間隔を空けて保持している。そして、合一部128は、保持部126aが保持していた強化繊維200a間の間隔に、保持部126bが保持していた強化繊維200bのうち1本を配置する。そして、合一部128は、保持部126aが保持していた強化繊維200aと、保持部126bが保持していた強化繊維200bとを、互い違いに配置して、一対のロール128aおよびロール128bにより厚み方向に加圧することで、これらの強化繊維200をシート状に配列させつつ、合一させる。これにより、複数のボビン116から繰り出された複数の強化繊維200を、隙間なく平面状(シート状)に配列させることができる。なお、このとき、隣り合う強化繊維200の端部同士がわずかに重なるように配置することで、強化繊維200の間の隙間をさらに生じにくくしてもよい。また、これにより、複数のボビン116から繰り出された複数の強化繊維200を、より均等に配置することができ、開繊時の繊維の干渉による、製造されるUDシート内で繊維が不均一に配置されることによるUDシートの物性のばらつきを抑制することもできる。
【0028】
切替装置130aおよび切替装置130bは、それぞれの保持部に配置され、それぞれの保持部が保持する強化繊維を、先行する強化繊維から新たな強化繊維に切り替える。
【0029】
切替装置130aおよび切替装置130bによる強化繊維200の切り替えは、ボビン116aから繰り出すことができる、強化繊維200aの残量が少なくなってきたときに、行う。強化繊維200aの残量が少なくなってきたか否かは、ボビン116aから繰り出した強化繊維200aの量をもとに判断してもよいし、ボビン116aに巻かれている強化繊維200aの量を測定(たとえば巻かれている厚みなどの測定)したり、強化繊維200aに予め付してある、残量が少ないことを示すマークを、繰り出された強化繊維200aから読み取ったりして、判断してもよい。
【0030】
図3A~
図3Dは、本実施形態に関する切替装置130aが、保持部126aが保持する先行する強化繊維210を、新たな強化繊維220に切り替える様子を示す模式図である。
【0031】
図3Aは、切り替え前の切替装置130aを示す模式図である。切替装置130aは、移動する強化繊維を挟んで対向する位置に配置された、加圧ヘッド1310および台座部1320を有する。加圧ヘッド1310は、不図示の加熱部により加熱され、かつシリンダー1330により台座部1320に近づく方向および遠ざかる方向(図中上下方向)に移動する。台座部1320は、不図示の加熱部により加熱され、かつシリンダー1340により加圧ヘッド1310に近づく方向および遠ざかる方向(図中上下方向)に移動する。なお、台座部1320はシリンダー1340により上下移動せず、加圧ヘッド1310の上下移動により強化繊維200を台座部1320に押し付ける構成であってもよい。
【0032】
図3Bおよび
図3Cは、樹脂を含浸させる強化繊維を、新たな強化繊維に切り替えるときの、切替装置130aを示す模式図である。
図3Bは、ボビン116aから繰り出すことができる強化繊維200a(先行する強化繊維210)の残量が少なくなってきたときの、切替装置130aの動作を示す。
図3Bにおいて、把持部1360が、強化繊維を繰り出していないボビン116aに巻かれている強化繊維200a(新たな強化繊維220)の端部を把持して、互いに間隔を空けて移動している先行する強化繊維210の間の間隔を移動させる。
【0033】
このとき、加圧ヘッド1310と台座部1320との間には、先行する強化繊維210が通過し続けている。そのため、一時的に、加圧ヘッド1310と台座部1320との間には、先行する強化繊維210と新たな強化繊維220とは隙間なく平面状(シート状)に配列して移動する。
【0034】
また、このとき同時に、加圧ヘッド1310および台座部1320の互いに対向する面のそれぞれに、不図示の供給部から、薄膜状の第2の樹脂である樹脂フィルム230が供給される。なお、本明細書では樹脂フィルムを例示するが、加熱および加圧により先行する強化繊維210および新たな強化繊維220に融着できる薄膜状の樹脂であればよく、シートなどのより厚みが大きいものを用いてもよい。加熱等により溶融する薄膜状の第2の樹脂を使用することにより、溶着後に第2の樹脂を冷却固化させて、第2の樹脂による製造装置100の他の部品の汚染を抑制することができる。
【0035】
この状態で、加熱部により加圧ヘッド1310および台座部1320を加熱して樹脂フィルム230を溶融させる。同時に、シリンダー1330により加圧ヘッド1310を台座部1320に近づく方向に、シリンダー1340により台座部1320を加圧ヘッド1310に近づく方向に、それぞれ移動させる。これにより、溶融された樹脂フィルム230が先行する強化繊維210および新たな強化繊維220の双方に接触し、これらの強化繊維を挟むように配置されて加圧され、先行する強化繊維210および新たな強化繊維220に融着する。このように、加圧ヘッド1310および台座部1320は、本実施形態における押圧部として作用する。
【0036】
なお、押圧部の構成は上記加圧ヘッド1310および台座部1320に限定されず、たとえば回転するロールにより、先行する強化繊維210および新たな強化繊維220に溶融された樹脂フィルム230を接触させ、これらのロールにより加圧する構成であってもよい。
【0037】
このようにして、
図4に示すように、平面状に配列された先行する強化繊維210および新たな強化繊維220に、樹脂フィルム230が融着してなる接合体240が形成される。接合体240では、樹脂フィルム230の融着により、先行する強化繊維210と新たな強化繊維220とが強固に接続されている。接合体240は、製造装置100により強化繊維200に付与されるテンションによっても、先行する強化繊維210と新たな強化繊維220とが容易にほどけない程度の強度を有すればよい。たとえば、通常、製造装置は1000cN程度のテンションを強化繊維200に付与するので、接合体240は、1000cNのテンションを強化繊維の長さ方向に付与されてもほどけない程度の強度を有すればよい。
【0038】
上記観点から、樹脂フィルム230の厚みは、1μm以上1mm以下であることが好ましく、25μm以上150μm以下であることがより好ましい。
【0039】
また、上記観点から、強化繊維200の移動方向への樹脂フィルム230の長さは、1cm以上であることが好ましく、5cm以上であることがより好ましい。また、製造されたUDシートから除去されることになる接合体240の長さを短くする観点からは、樹脂フィルム230の上記長さは、200cm以下であることが好ましく、100cm以下であることがより好ましい。
【0040】
また、並行して移動しているすべての強化繊維200に樹脂フィルム230を融着させる観点から、強化繊維200の移動方向に直行する方向への樹脂フィルム230の幅は、並行して移動しているすべての強化繊維200の幅よりも広いことが好ましい。
【0041】
樹脂フィルム230は、含浸部150において強化繊維200に含浸される樹脂(第1の樹脂)と同種の樹脂により構成されたフィルムであってもよいし、異なる樹脂により構成されたフィルムであってもよい。これらのうち、含浸部150で強化繊維200および接合体240に接触する第1の樹脂との親和性が高い、同一種の樹脂により構成されたフィルムであることが好ましい。また、含浸部150で軟化した第2の樹脂の滞留による製造効率およびUDシートの品質の低下を抑制する観点からは、樹脂フィルムを構成する樹脂は、含浸部150における加熱温度よりも高い温度にガラス転移温度を有する樹脂であることが好ましい。
【0042】
このようにして、切替装置130aは、先行する強化繊維210と新たな強化繊維220とを、接合体240の形成により接続する。
図3Dは、切り替え後の切替装置130aを示す模式図である。接合体240の形成後、先行する強化繊維210を切断して繰り出しを停止することにより、新たな強化繊維220のみが繰り出されて含浸部150へと送られるようになる。そして、このとき送られる新たな強化繊維220は、接合体240により先行する強化繊維210に接続されているので、製造装置100を停止することなく、強化繊維を切り替えながら連続してのUDシートの製造が可能である。
【0043】
ここまで、一方の切替装置130aにおける強化繊維の切り替えについて説明したが、本実施形態では、他方の切替装置130bでも、同様に接合体を形成しての先行する強化繊維から新たな強化繊維への切り替えが同時に行われる。そして、切り替え後の新たな強化繊維同士を合一部128でシート状に配列させつつ、合一させる。
【0044】
ところで、切替装置130は、互いに間隔を空けて移動している複数の先行する強化繊維210の、隣り合う強化繊維の間に、新たな強化繊維220を配置して、接合体240を形成する。そして、切り替え後には、先行する強化繊維210の繊維間の隙間に相当する位置に、新たな強化繊維220を移動させる。本実施形態では、2つの切替装置130aおよび切替装置130bがそれぞれ、先行する強化繊維210が移動する位置と新たな強化繊維220が移動する位置とを入れ替える。そのため、切り替え前の合一部を示す
図5A、および切り替え後の合一部を示す
図5Bに示されるように、合一部128では、切り替えの前後で、切替装置130a(保持部126a)から受け取る強化繊維210および切替装置130b(保持部126b)から受け取る強化繊維220の位置を入れ替えるように変更される。
【0045】
製造装置100は、切替装置130が強化繊維200を切り替えるときに、給糸部110から、切替装置130aおよび切替装置130bの下流側かつアキューム140の上流側に配置されたフィーダー124aにより、給糸部110から繰り出されて切替装置130を通過するまでの、強化繊維200の移動速度を遅くしてもよい。この範囲における強化繊維200の移動速度を遅くすることで、時間をかけてより強固に樹脂フィルム230を融着させることができ、接合体240の強度をより高めることができる。
【0046】
このとき、アキューム140は、強化繊維200の移動経路の長さを調整して、含浸部150における強化繊維の移動速度(アキューム140から巻取部160までの間における強化繊維の移動速度)を、切り替えをしないときと同じ速度に保つ。
【0047】
つまり、アキューム140は、強化繊維200の移動経路の長さを変更して、アキューム140を通過する強化繊維200の長さ(量)を変更できる構成を有する。そして、強化繊維200の切り替えをしないときに、アキューム140における強化繊維200の移動経路を長くしてアキューム140を通過する強化繊維200の長さ(量)を多くし、切替装置130が強化繊維200の切り替えをするときに、上記アキューム140を通過する強化繊維200の長さ(量)を少なくしていく。これにより、切替装置130における強化繊維200の通過速度を遅くしたときにも、アキューム140から含浸部150へと送られる強化繊維200の量を一定に保つことができる。言い換えると、アキューム140は、強化繊維200の切り替えをしないときに、強化繊維200を蓄積しておき、切替装置130が強化繊維200の切り替えをするときに、蓄積した強化繊維200を少しずつ放出することで、アキューム140から含浸部150へと送られる強化繊維200の量を一定に保つことができる。
【0048】
含浸部150は、強化繊維200を開繊して、強化繊維200に樹脂を含浸する。
【0049】
含浸部150では、まず、開繊ローラー152の表面に沿って強化繊維200を移動させ、開繊ローラー152に強化繊維200を擦過させて強化繊維200を開繊する。次に、開繊された強化繊維200を含浸ローラー154に導き、含浸ローラー154の表面に沿って移動させる。含浸ローラー154の表面には、押出機156から押出された溶融した樹脂158(第1の樹脂)が付着して回転移動しており、強化繊維200と含浸ローラー154の表面とが接触することにより、強化繊維200に樹脂158が含浸する。
【0050】
なお、樹脂の開繊方法および含浸方法は上記方法に限定されない。たとえば、開繊時に、強化繊維200を複数の開繊ローラーに擦過させてもよいし、開繊時に強化繊維200に振動を付与してもよい。また、開繊時に、樹脂158を含浸させやすくするためのサイジング剤を強化繊維200に付与してもよい。また、含浸時に、溶融した樹脂の浴に強化繊維を浸漬させるなどの方法で、強化繊維200に樹脂を含浸させてもよい。
【0051】
ところで、製造されたUDシートにおいて、強化繊維200の接続部である接合体240は、樹脂フィルム230に由来する他の樹脂が混入したり、強化繊維200と樹脂との比率が変更されたりする部位である。そのため、製造時または製造後に、接合体240に相当する部位をUDシートから切断して除去してもよい。
【0052】
上記観点から、製造装置100は、樹脂フィルム230の融着により接合体240が形成された部位(接合体240と第1の樹脂とを含む部位)を除去する除去部を有してもよい。
【0053】
たとえば、
図6に示すように、強化繊維が一方向に配向して配列された繊維強化樹脂の製造装置300は、含浸部150の下流側に、強化繊維200に樹脂が含浸されてなる複合体の厚みを測定する厚み測定部310と、複合体を切断する切断部320と、を有してもよい。なお、製造装置300の含浸部150より上流側の構成は
図1に示した製造装置100と同様とし得るため、
図6には、含浸部150より下流側の構成のみを示す。また、厚みの測定および切断をされる複合体は、含浸された樹脂が冷却固化したUDシートであってもよいし、冷却固化する前の複合体であってもよい。
【0054】
厚み測定部310は、樹脂を含浸した後の複合体の厚みを測定する。接合体240が形成された部位は、他の部位より多量の強化繊維200を含んだり、樹脂フィルム230の厚みが加わったりすることにより、他の部位に比べて複合体の厚みが大きくなっている。そのため、厚み測定部310により測定された厚みが大きい部位は、複合体のうち、接合体240が形成された部位であると判断することができる。
【0055】
切断部320は、厚み測定部310により測定された厚みが大きく、接合体240が形成された部位であると判断される部位の前後で、複合体を切断する。これにより、接合体240が形成された部位を複合体から除去することができる。
【0056】
なお、把持部1360により把持された新たな強化繊維220の先端部は、接合体240を形成していない。同様に、先行する強化繊維210の後端部も、接合体240を形成していない。そのため、切断部320は、これらの接合体240を形成していない新たな強化繊維220または先行する強化繊維210の部位も含めて、複合体から除去してもよい。たとえば、切断部320は、接合体240に相当する部位を含めて、強化繊維200の移動方向に沿って上流側および下流側に、接合体240の長さよりも長く、かつ接合体240の長さと同じ長さ(好ましくは接合体240の長さの半分の長さ)よりも短い部位を、複合体から除去してもよい。
【0057】
上記部位を除去されたUDシートは、シート状のUDシートとして回収部330に回収される。なお、本実施形態において、回収部330にはUDシートを複数積み上げて回収するが、ロール状にして回収してもよい。
【0058】
なお、接合体240が形成された部位の除去方法は上記切断に限定されることはなく、たとえば打ち抜き加工等によって上記部位を除去してもよい。
【0059】
また、上記部位の判断方法は、複合体の厚みから判断する方法に限定されることはなく、たとえば所定の長さ(ボビン1個分の長さ)の強化繊維200に樹脂を含浸した時点で除去を行ってもよいし、あるいは切替装置130aおよび切替装置130bにおいて強化繊維の接続を行った旨の信号に基づいて行ってもよい。
【0060】
[第2の実施形態]
図7は、本発明の他の実施形態に関する強化繊維が一方向に配向して配列された繊維強化樹脂の製造装置の例示的な構成を示す模式図である。
図7は、繊維強化樹脂として、一方向に配向されて配列した強化繊維を含むペレット状の樹脂組成物(Long Fiber Thermoplastics:LFT)を製造する製造装置の例示的な構成を示す模式図である。
【0061】
強化繊維が一方向に配向して配列された繊維強化樹脂の製造装置700は、給糸部110、ガイド路720、切替装置730、アキューム140、分割部770、含浸部750、除去部(厚み測定部310および切断部320)、ならびに回収部780を有する。
【0062】
本実施形態に関する製造装置700は、含浸部750において、強化繊維200をそれぞれ個別のダイ孔に導入して、強化繊維200ごとに、第1の樹脂を含浸させる。そして、ダイ孔の個数に応じた数の、強化繊維200ごとに第1の樹脂が含浸してなるペレット(LFT)を得る。
【0063】
そのため、製造装置700は、ガイド路720が、異なる保持部126からの強化繊維を合一部128で合一させる構成とはされておらず、互いに間隔を空けて移動する強化繊維200を、間隔を空けたまま(強化繊維200を隙間なく平面状に配列させずに)含浸部750へと導く。そのため、切替装置730も、強化繊維200の切り替え中にも先行する強化繊維210と新たな強化繊維220とを平面状に配列させずに、接合体を形成する。また、製造装置700は、接合体が含浸部750に導入される前に、接合体を縦方向(強化繊維200の移動方向)に切断して、接合体を強化繊維200ごとに分割する分割部770を有する。また、製造装置700は、含浸部750が、ダイ孔の内部を通過する強化繊維200(実際には強化繊維の束)に溶融した第1の樹脂を供給して、強化繊維200ごとに第1の樹脂を含浸させる構成である。そして、製造装置は、回収部780が、強化繊維200に樹脂が含浸されてなる長尺上の複合体をペレットの形状に切断して回収する。本実施形態に関する製造装置700は、これら以外の構成については、第1の実施形態に関する製造装置100と同一の構成とし得るため、以下、同一の構成については説明を省略する。
【0064】
本実施形態では、ガイド路720が、給糸部110から供給された強化繊維200を、互いに間隔を空けて移動させながら、切替装置730、アキューム140、分割部770、含浸部750および巻取部160の各構成部に、この順番で導く。アキューム140および巻取部160の構成および作用動作は、第1の実施形態に関する製造装置100と同一である。
【0065】
図8A~
図8Dは、本実施形態に関する切替装置730が、保持部126が保持する先行する強化繊維210を、新たな強化繊維220に切り替える様子を示す模式図である。
【0066】
図8Aは、切り替え前の切替装置730を示す模式図である。切替装置730は、移動する強化繊維を挟んで対向する位置に配置された、シリンダー7330によって上下移動する加圧ヘッド7310と、シリンダー7340によって上下移動する台座部7320を有する。加圧ヘッド7310および台座部7320の構成および作用は、第1の実施形態に関する切替装置130と同様である。
【0067】
図8Bおよび
図8Cは、樹脂を含浸させる強化繊維を、新たな強化繊維に切り替えるときの、切替装置730を示す模式図である。
図8Bは、ボビン116aから繰り出すことができる強化繊維200a(先行する強化繊維210)の残量が少なくなってきたときの、切替装置730の動作を示す。
図8Bにおいて、把持部7360が、強化繊維を繰り出していないボビン116aに巻かれている強化繊維200a(新たな強化繊維220)の端部を把持して、互いに間隔を空けて移動している先行する強化繊維210と上下方向(加圧ヘッド7310および台座部7320による押圧方向)に重なる位置に移動させる。
【0068】
このとき、加圧ヘッド7310と台座部7320との間には、先行する強化繊維210が通過し続けている。そのため、一時的に、加圧ヘッド7310と台座部7320との間には、先行する強化繊維210と新たな強化繊維220とが重なって配列して移動する。
【0069】
また、このとき同時に、加圧ヘッド1310および台座部1320の互いに対向する面のそれぞれに、不図示の供給部から樹脂フィルム230が供給される。
【0070】
この状態で、加熱部により加圧ヘッド7310および台座部7320を加熱して樹脂フィルム230を溶融させる。同時に、シリンダー7330により加圧ヘッド7310を台座部7320に近づく方向に、シリンダー7340により台座部7320を加圧ヘッド7310に近づく方向に、それぞれ移動させる。これにより、溶融された樹脂フィルム230が先行する強化繊維210および新たな強化繊維220に接触し、これらの強化繊維を挟むように配置されて加圧され、先行する強化繊維210および新たな強化繊維220に融着する。このように、加圧ヘッド7310および台座部7320は、本実施形態における押圧部として作用する。
【0071】
このようにして、
図9に示すように、重なって配列された先行する強化繊維210および新たな強化繊維220に、樹脂フィルム230が融着してなる接合体840が形成される。第1の実施形態と同様に、接合体840では、樹脂フィルム230の融着により、先行する強化繊維210と新たな強化繊維220とが強固に接続されている。接合体840は、製造装置100により強化繊維200に付与されるテンションによっても、先行する強化繊維210と新たな強化繊維220とが容易にほどけない程度の強度を有すればよい。たとえば、通常、製造装置は1000cN程度のテンションを強化繊維200に付与するので、接合体840は、1000cNのテンションを強化繊維の長さ方向に付与されてもほどけない程度の強度を有すればよい。
【0072】
なお、押圧部の構成や、樹脂フィルムの種類などが上記説明に限定されないことは、第1の実施形態と同様である。
【0073】
図10は、分割部770および含浸部750に、接合体240が形成された強化繊維200を導入する様子を示す模式図である。
【0074】
切替装置730を経て分割部770に移動してきた強化繊維200は、先行する強化繊維210から新たな強化繊維220への切り替え時に形成された、樹脂フィルム230の融着により部分的にシート状となっている接合体840を有する。
【0075】
分割部770は、樹脂フィルム230の融着により部分的にシート状となっている接合体240を、強化繊維200ごとに縦方向に切断して分割する。分割部770は、フィルムを移動方向に切断する公知のスリッタと同様の構成とすることができる。
【0076】
含浸部750は、開繊ローラー752と、含浸ダイ754とを有する。含浸ダイ754は、いずれも強化繊維200の移動方向に含浸ダイ754を貫通する、複数のダイ孔754aを有する。
【0077】
ガイド路720は、分割部770により分割された接合体240を含む強化繊維200を、開繊ローラー752で開繊した後に、含浸部750が有するそれぞれ異なるダイ孔754aに、強化繊維200ごとに導入する。それぞれのダイ孔754aの内部には、押出機756から押出された溶融した樹脂(第1の樹脂)が供給されており、強化繊維200が、ダイ孔754aの内部で溶融した樹脂と接触し、かつダイ孔754aの異なる壁面と接触して強化繊維200の束の内部への樹脂の進入を促進されることにより、強化繊維200に樹脂158が含浸する。
【0078】
その後、冷却槽による冷却や外形の成形(フォーミング)等を経て、強化繊維の束に第1の樹脂が含浸されてなる、長尺状の複合体を得ることができる。本実施形態でも、
図7に示したように、第1の実施形態と同様に、除去部(厚み測定部310および切断部320)により、樹脂フィルム230の融着により接合体240が形成された部位(接合体240と第1の樹脂とを含む部位)を除去してもよい。なお、除去部の構成が厚み測定部310および切断部320を有する構成に限定されないことは、第1の実施形態と同様である。
【0079】
さらに、本実施形態では、
図7に示したように、回収部780は、上記長尺状の複合体を所定の長さに切断するペレット化カッター782と、切断されたペレット状の複合体を回収する回収容器784と、を有する。このようにして、切断されたペレット状の複合体(LFT)を得ることができる。なお、製造装置700は、ペレット化する前の長尺状の複合体を回収してもよい。
【0080】
[材料等]
上記強化繊維の材料は、特に限定されない。たとえば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、ボロン繊維、および金属繊維などを、上記強化繊維として用いることができる。
【0081】
上記強化繊維は、強化繊維による強度の向上効果を十分に高める観点からは、平均直径が1μm以上20μm以下であることが好ましく、4μm以上10μm以下であることがより好ましい。
【0082】
また、上記強化繊維は、サイジング剤によりサイジング処理されていてもよい。
【0083】
上記サイジング剤は特に限定されないが、変性ポリオレフィンが好ましく、特には、カルボン酸金属塩を含む変性ポリオレフィンであることがより好ましい。上記変性ポリオレフィンは、たとえば、未変性ポリオレフィンの重合体鎖に、カルボン酸基、カルボン酸無水物基またはカルボン酸エステル基をグラフト導入し、かつ上記官能基と金属カチオンとの間で塩を形成させたものである。
【0084】
上記未変性ポリオレフィンは、エチレンに由来する構成単位の含有量が50モル%以上であるエチレン系重合体、またはプロピレンに由来する構成単位の含有量が50モル%以上であるプロピレン系重合体であることが好ましい。上記エチレン系重合体の例には、エチレン単独重合体、およびエチレンと炭素原子数3以上10以下のα-オレフィンとの共重合体が含まれる。上記プロピレン系重合体の例には、プロピレン単独重合体、およびプロピレンとエチレンまたは炭素原子数4以上10以下のα-オレフィンとの共重合体が含まれる。上記未変性ポリオレフィンは、ホモポリプロピレン、ホモポリエチレン、エチレン・プロピレン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体、またはエチレン・プロピレン・1-ブテン共重合体であることが好ましい。
【0085】
また、上記強化繊維は、集束されて繊維束となっていてもよい。このとき集束された強化繊維束あたりの単糸数は、100本以上100,000本以下であることが好ましく、1,000本以上50,000本以下であることがより好ましい。
【0086】
上記マトリクス樹脂の材料は、特に限定されず、熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂であってもよい。上記熱可塑性樹脂の例には、ポリプロピレン系樹脂およびポリエチレン系樹脂などを含むポリオレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ならびにポリスルホン樹脂などが含まれる。これらのうち、ポリプロピレン系樹脂およびポリアミド系樹脂が好ましい。また、上記サイジング剤によりサイジング処理された強化繊維との親和性を高める観点から、上記マトリクス樹脂は、上述した変性ポリオレフィンを含んでいてもよい。
【0087】
[その他の実施形態]
なお、上述の各実施形態はそれぞれ本発明の一例を示すものであり、本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の思想の範囲内において、他の種々多様な各実施形態も可能であることは言うまでもない。
【0088】
たとえば、上述の各実施形態では、先行する強化繊維210と新たな強化繊維220とは同じ材料からなる強化繊維である例を示したが、先行する強化繊維210と新たな強化繊維220とは異なる材料からなる強化繊維でもよい。
【0089】
また、第1の実施形態では、2つの保持部のそれぞれが切替装置を有する例を示したが、3つ以上の保持部のそれぞれが切替装置を有していて、合一部でこれらの保持部からの強化繊維を合一してもよいし、第2の実施形態と同様に、1つの保持部に1つの切替装置が配置されて、合一部を有さない構成であってもよい。
【0090】
また、第1の実施形態では、先行する強化繊維と新たな強化繊維とが隙間なく平面状に配列された接合体を形成する構成を例示したが、第2の実施形態と同様に、先行する強化繊維と新たな強化繊維とが重なって配列された接合体を形成してもよい。
【0091】
また、第2の実施形態で、複数の保持部がそれぞれ切替装置を有し、合一部でこれらの保持部からの強化繊維を合一する構成としてもよい。このとき、合一部では、それぞれの保持部からの強化繊維を間隔を空けて配置したり、あるいは重ね合わせて配置したりするなどして、合一後の強化繊維の配置が、異なるダイ孔の内部に強化繊維の束のそれぞれが導入される配置になるように、強化繊維を合一させればよい。
【0092】
また、上述の各実施形態では、強化繊維に上下2枚の樹脂フィルムを融着させる構成を例示したが、いずれか一方のみに樹脂フィルムを融着させてもよい。また複数枚の樹脂フィルムを融着させてもよい。樹脂フィルムの融着により形成される接合体も、切り替え時ごとに1つ形成させるのみでもよいし、樹脂フィルムの融着を複数回行って、複数個の接合体を形成してもよい。
【0093】
上記樹脂フィルムの材料は、溶融および融着を容易にする観点から、熱可塑性樹脂であることが好ましい。上記熱可塑性樹脂の例には、ポリプロピレン系樹脂およびポリエチレン系樹脂などを含むポリオレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ならびにポリスルホン樹脂などが含まれる。これらのうち、ポリプロピレン系樹脂およびポリアミド系樹脂が好ましい。
【0094】
また、上述の各実施形態では、薄膜状の第2の樹脂を加熱により溶融させて先行する強化繊維および新たな強化繊維に融着させていたが、電磁波(赤外線など)や超音波などの照射により融着させてもよい。
【0095】
また、上述の各実施形態における切替装置は、融着させた第2の樹脂を冷却して固化させる冷却部を有してもよい。冷却部は、接触式であっても非接触式であってもよい。
【0096】
また、上述の各実施形態で繰り出していた強化繊維は、UDシートまたはLFTの製造に用いるのみならず、たとえば切断(チョップ)してマトリクス樹脂と混錬し、強化繊維がランダムに配向および配置された繊維強化樹脂の製造に用いてもよい。
【0097】
上記製造装置により製造されたUDシートまたはLFTは、インストルメントパネル、ドアビーム、アンダーカバー、ランプハウジング、ペダルハウジング、ラジエータサポート、スペアタイヤカバー、およびフロントエンドなどの各種モジュールなどを含む自動車部品、ノートパソコン、携帯電話、デジタルスチルカメラ、PDA、およびプラズマディスプレーなどを含む電気・電子部品、ならびに、電話、ファクシミリ、VTR、コピー機、テレビ、電子レンジ、音響機器、トイレタリー用品、レーザーディスク(登録商標)、冷蔵庫、エアコンなどを家庭・事務電気製品部品などに用いることができる。また、UDシートをさらに成形して、パイプおよび圧力容器などに用いることもできる。
【0098】
上記用途の具体例には、主翼、垂直および水平尾翼などを含む一次構造材、補助翼、方向舵および昇降舵などを含む二次構造材、座席およびテーブルなどを含む内装材、動力装置、油圧シリンダー、ならびにコンポジットブレーキなどを含む、航空機およびヘリコプターなどの一般的な飛行体の部品部材、ノズルコーンおよびモーターケースなどを含むロケット部品部材、アンテナ、構造体、太陽電池パネル、バッテリーケースおよび望遠鏡などを含む人工衛星部品部材、フレーム、シャフト、ローラー、板バネ、工作機械ヘッド、ロボットアーム、搬送ハンドおよび合成繊維ポットなどを含む機械部品部材、遠心分離機ローターおよびウラン濃縮筒などを含む高速回転体部品部材、パラボラアンテナ、電池部材、レーダー、音響スピーカーコーン、コンピューター部品、プリンター部品、パソコン筐体およびタブレット筐体などを含む電子電機部品部材、骨格部品、準構造部品、外板部品、内外装部品、動力装置、他機器-油圧シリンダー、ブレーキ、バッテリーケース、ドライブシャフト、エンジンパーツ、スポイラー、レーシングカーボディー、クラッシュコーン、イス、タブレット、電話カバー、アンダーカバー、サイドカバー、トランスミッションカバー、バッテリートレイ、リアステップ、スペアタイア容器、バス車体壁およびトラック車体壁などを含む自動車・バイク部品部材、内装材、床板パネル、天井パネル、リニアモーターカー車体、新幹線・鉄道車体、窓拭きワイパー、台車および座席などを含む車両部品部材、ヨット、クルーザーおよびボートなどを含む船舶船体、マスト、ラダー、プロペラ、硬帆、スクリュー、軍用艦胴体、潜水艦胴体および深海探査船などを含む船舶部品部材・機体、アクチュエーター、シリンダー、ボンベ、水素タンク、CNGタンクおよび酸素タンクなどを含む圧力容器部品部材、攪拌翼、パイプ、タンク、ピットフロアーおよびプラント配管などを含む科学装置部品・部材、ブレード、スキン、骨格構造および除氷システムなどを含む風力発電部品部材、X線診断装置部品、車椅子、人工骨、義足・義手、松葉杖、介護補助器具・ロボット(パワーアシストスーツ)、歩行機および介護用ベッドなどを含む医療・介護機器部品部材・用品、CFコンポジットケーブル、コンクリート補強部材、ガードレール、橋梁、トンネル壁、フード、ケーブル、テンションロッド、ストランドロッドおよびフレキシブルパイプなどを含む土木建築・インフラ部品部材、マリンライザー、フレキシブルジャンパー、フレキシブルライザーおよびドリリングライザーなどを含む海底油田採掘用部品部材、釣竿、リール、ゴルフクラブ、テニスラケット、バドミントンラケット、スキー板、ストック、スノーボード、アイスホッケースティック、スノーモービル、弓具、剣道竹刀、野球バット、水泳飛び込み台、障害者用スポーツ用品およびスポーツヘルメットなどを含むスポーツ・レジャー用品。)フレーム、ディスクホイール、リム、ハンドルおよびサドルなどを含む自転車部品、メガネ、鞄、洋傘およびボールペンなどを含む生活用品、ならびに、プラスチックパレット、コンテナ、物流資材、樹脂型、家具、洋傘、ヘルメット、パイプ、足場板、安全靴、プロテクター、燃料電池カバー、ドローンブレード、フレーム、ジグおよびジグフレームなどを含むその他産業用途の部品部材・用品などが含まれる。
【0099】
本出願は、2021年3月26日出願の日本国出願番号2021-053388号に基づく優先権を主張する出願であり、当該出願の特許請求の範囲、明細書および図面に記載された内容は本出願に援用される。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明に関する強化繊維が一方向に配向して配列された繊維強化樹脂の製造装置は、比較的簡易な構成で、強化繊維の切り替え時に前後の強化繊維を接続できる。そのため、本発明は、繊維強化樹脂の連続製造をより容易にして、繊維強化樹脂、特にはUDシートまたはLFTを使用する各種分野の発展に寄与すると期待される。
【符号の説明】
【0101】
100、300、700 繊維強化樹脂の製造装置
110 給糸部
112 スピンドル
114 クリール
116、116a、116b ボビン
120、720 ガイド路
122 ガイドロール
124、124a、124b フィーダー
126a、126b 保持部
128 合一部
128a、128b ロール
130a、130b、730 切替装置
140 アキューム
150,750 含浸部
152、752 開繊ローラー
154 含浸ローラー
156、756 押出機
158 溶融した樹脂
160 巻取部
200、200a、200b 強化繊維
210 先行する強化繊維
220 新たな強化繊維
230 樹脂フィルム
240、840 接合体
310 厚み測定部
320 切断部
330、780 回収部
754 含浸ダイ
754a ダイ孔
770 分割部
782 ペレット化カッター
784 回収容器
1310、7310 加圧ヘッド
1320、7320 台座部
1330、1340、7330、7340 シリンダー
1360、7360 把持部