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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】ミクロフィブリル化セルロース成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 1/00 20060101AFI20240822BHJP
   C08L 61/28 20060101ALI20240822BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
C08L1/00
C08L61/28
C08J5/04 CEZ
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024071194
(22)【出願日】2024-04-25
(62)【分割の表示】P 2024500497の分割
【原出願日】2023-09-13
【審査請求日】2024-05-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591045703
【氏名又は名称】利昌工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136098
【弁理士】
【氏名又は名称】北野 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100137246
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勝也
(72)【発明者】
【氏名】古田 尚
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-50780(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109532147(CN,A)
【文献】特表2012-530857(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00
C08L 61/28
C08J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミクロフィブリル化セルロースと、メラミン樹脂と、から構成されており、
前記メラミン樹脂の含有割合は、20.0質量%以上30.3質量%以下であり、
残部がミクロフィブリル化セルロースであり、
20℃の水に24時間浸漬させた際の吸水率が、1.6%以下である、ミクロフィブリル化セルロース成形体。
【請求項2】
ミクロフィブリル化セルロースと、メラミン樹脂と、染料と、から構成されており、
前記メラミン樹脂の含有割合は、20.0質量%以上28.8質量%以下であり、
前記染料の含有割合は、0.3%以上であり、
残部がミクロフィブリル化セルロースであり、
20℃の水に24時間浸漬させた際の吸水率が、0.6%以下である、ミクロフィブリル化セルロース成形体。
【請求項3】
前記吸水率が、0.6%以下である、請求項1または請求項2に記載のミクロフィブリル化セルロース成形体。
【請求項4】
板状であって、ミクロフィブリル化セルロースと、メラミン樹脂と、から構成されており、
前記メラミン樹脂の含有割合は、20.0質量%以上30.3質量%以下であり、
残部がミクロフィブリル化セルロースであり、
20℃の水に24時間浸漬させた際の厚さ方向の寸法変化率が、0.6%以下である、ミクロフィブリル化セルロース成形体。
【請求項5】
板状であって、ミクロフィブリル化セルロースと、メラミン樹脂と、染料と、から構成されており、
前記メラミン樹脂の含有割合は、20.0質量%以上28.8質量%以下であり、
残部がミクロフィブリル化セルロースであり、
20℃の水に24時間浸漬させた際の厚さ方向の寸法変化率が、0.2%以下である、ミクロフィブリル化セルロース成形体。
【請求項6】
曲げ弾性率が、13.0GPa以上である、請求項4または請求項5に記載のミクロフィブリル化セルロース成形体。
【請求項7】
20℃の水に24時間浸漬させた際の長さ方向の寸法変化率が、0.1%以下である、請求項4または請求項5に記載のミクロフィブリル化セルロース成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ミクロフィブリル化セルロース成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セルロースミクロフィブリルを用いた高強度材料が、特許第3641690号(特許文献1)に開示されている。また、ミクロフィブリル化セルロースの成形品の製造方法が、特開2009-96167号公報(特許文献2)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3641690号
【文献】特開2009-96167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
比較的高い強度を有するミクロフィブリル化セルロース成形体は、種々の環境下において使用されるが、ミクロフィブリル化セルロース成形体については、高い寸法安定性が求められる。もちろん、耐環境性を考慮して採用される材料として、ミクロフィブリル化セルロース以外に含まれる物質は、できるだけ少ないことが望ましい。上記した特許文献1および特許文献2に開示の技術では、これらのような問題に対応することが困難である。
【0005】
そこで、耐環境性が良好であり、高い寸法安定性を実現することができるミクロフィブリル化セルロース成形体を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従ったミクロフィブリル化セルロース成形体は、ミクロフィブリル化セルロースと、メラミン樹脂と、から構成されている。メラミン樹脂の含有割合は、20.0質量%以上である。20℃の水に24時間浸漬させた際の吸水率が、1.6%以下である。
【発明の効果】
【0007】
このようなミクロフィブリル化セルロース成形体は、耐環境性が良好であり、高い寸法安定性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の一実施形態に係るミクロフィブリル化セルロース成形体の構成を示す概略斜視図である。
図2図2は、図1に示すミクロフィブリル化セルロース成形体の概略断面図である。
図3図3は、本開示の一実施形態に係るミクロフィブリル化セルロース成形体の製造方法における代表的な製造工程を示すフローチャートである。
図4図4は、第1予備成形シートの一例を示す概略断面図である。
図5図5は、図4に示す第1予備成形シートの概略断面図である。
図6図6は、水により第1予備成形シートを膨潤させる状態を示す概略断面図である。
図7図7は、メラミン樹脂を含有する溶液に浸漬した状態を示す概略断面図である。
図8図8は、熱プレスを実施する際の概略断面図である。
図9図9は、4枚のミクロフィブリル化セルロース含有組成物を4枚積層して熱プレスする場合の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
以下、この発明の実施の形態について説明する。本開示に係るミクロフィブリル化セルロース成形体は、ミクロフィブリル化セルロースと、メラミン樹脂と、から構成されている。メラミン樹脂の含有割合は、20.0質量%以上である。20℃の水に24時間浸漬させた際の吸水率が、1.6%以下である。
【0010】
本開示に係るミクロフィブリル化セルロース成形体(以下、単に「成形体」ということもある。)は、ミクロフィブリル化セルロースと、メラミン樹脂と、から構成される。このようなミクロフィブリル化セルロース成形体は、ミクロフィブリル化セルロース以外の材料がメラミン樹脂だけであるため、耐環境性を良好にすることができる。また、このようなメラミン樹脂の含有割合が非常に高いミクロフィブリル化セルロース成形体は、メラミン樹脂がミクロフィブリル化セルロースの繊維間に十分に入り込んでいるため、繊維間において、水分が入り込むような空隙が極めて少ない。そうすると、湿気の多い環境下に曝されたとしても、水分をほとんど吸収しない。したがって、高い寸法安定性を実現することができる。
【0011】
また、本開示に係るミクロフィブリル化セルロース成形体は、ミクロフィブリル化セルロースと、メラミン樹脂と、染料と、から構成されている。メラミン樹脂の含有割合は、20.0質量%以上である。染料の含有割合は、0.3%以上である。20℃の水に24時間浸漬させた際の吸水率が、0.6%以下である。昨今においては、ミクロフィブリル化セルロース成形体を種々の色に着色して用いたいとの要望もある。メラミン樹脂は無色透明で、染料による発色を容易に実現しやすい。上記構成のミクロフィブリル化セルロース成形体を採用することにより、耐環境性が良好であり、高い寸法安定性を実現しながら、要望する色に着色したミクロフィブリル化セルロース成形体とすることができる。
【0012】
上記ミクロフィブリル化セルロース成形体において、メラミン樹脂の含有割合は、31質量%以下であってもよい。このようにすることにより、より確実に耐環境性を良好としながら、高い寸法安定性を実現することができる。
【0013】
上記ミクロフィブリル化セルロース成形体において、吸水率が、0.6%以下であってもよい。このようなミクロフィブリル化セルロース成形体は、さらに高い寸法安定性を実現することができる。
【0014】
また、本開示に係るミクロフィブリル化セルロース成形体は、板状であって、ミクロフィブリル化セルロースと、メラミン樹脂と、から構成されている。メラミン樹脂の含有割合は、20.0質量%以上である。20℃の水に24時間浸漬させた際の厚さ方向の寸法変化率が、0.6%以下である。
【0015】
このようなミクロフィブリル化セルロース成形体は、高い湿度の環境下においても、水分を吸収し、膨潤して強度不足が発生したり、反りが発生するおそれを低減することができる。したがって、利便性を向上したミクロフィブリル化セルロース成形体とすることができる。
【0016】
また、本開示に係るミクロフィブリル化セルロース成形体は、板状であって、ミクロフィブリル化セルロースと、メラミン樹脂と、染料と、から構成されている。メラミン樹脂の含有割合は、20.0質量%以上である。20℃の水に24時間浸漬させた際の厚さ方向の寸法変化率が、0.2%以下である。
【0017】
このようなミクロフィブリル化セルロース成形体は、着色性が良好な上、高い湿度の環境下においても、水分を吸収し、膨潤して強度不足が発生したり、反りが発生するおそれを低減することができる。したがって、より利便性を向上したミクロフィブリル化セルロース成形体とすることができる。
【0018】
上記ミクロフィブリル化セルロース成形体において、曲げ弾性率が、13.0GPa以上であってもよい。このようなミクロフィブリル化セルロース成形体は、変形しにくい成形体を実現することができ、材料としての利便性の向上を図ることができる。
【0019】
上記ミクロフィブリル化セルロース成形体において、20℃の水に24時間浸漬させた際の長さ方向の寸法変化率が、0.1%以下であってもよい。このようなミクロフィブリル化セルロース成形体は、高い寸法安定性を実現することができ、さらに材料としての利便性の向上を図ることができる。
【0020】
本開示に係るミクロフィブリル化セルロース成形体の製造方法は、ミクロフィブリル化セルロースと、メラミン樹脂と、から構成されるミクロフィブリル化セルロース成形体の製造方法であって、ミクロフィブリル化セルロースおよび0質量%以上10質量%以下の水から構成された第1予備成形シートを準備する工程と、第1予備成形シートを1時間以上水に曝して膨潤させ、第2予備成形シートを得る工程と、第2予備成形シートに含まれる水を、メラミン樹脂を含有する溶液に置換して、第3予備成形シートを得る工程と、得られた第3予備成形シートを乾燥する工程と、乾燥した第3予備成形シートを、120℃以上200℃以下の温度で、厚さ方向に1MPa以上10MPa以下の圧力をかけて熱プレスする工程と、を含む。
【0021】
本開示に係るミクロフィブリル化セルロース成形体の製造方法は、ミクロフィブリル化セルロースおよび0質量%以上10質量%以下の水から構成された第1予備成形シートを準備し、第1予備成形シートを1時間以上水に曝して膨潤させ、第2予備成形シートを得る工程を含む。水はセルロースとの親和性が高い分子なので、第1予備成形シートにおいて押し固められたミクロフィブリル化セルロースの繊維間に十分に浸透して、第1予備成形シートを十分に膨潤させて第2予備成形シートを得ることができる。次に、第2予備成形シートに含まれる水を、メラミン樹脂を含有する溶液に置換して第3予備成形シートを得る工程を含む。ここで、水によって第2予備成形シートは十分に膨潤しており、ミクロフィブリル化セルロースの繊維間の間隔が広くなっているため、ミクロフィブリル化セルロースの繊維間にメラミン樹脂を含有する溶液を十分に染みわたらせることができる。すなわち、ミクロフィブリル化セルロースの繊維間にある水を、メラミン樹脂を含有する溶液に置き換えて、ミクロフィブリル化セルロースの繊維間にメラミン樹脂を含有する溶液を配置することができる。そして、これを乾燥し、120℃以上200℃以下の温度で、厚さ方向に1MPa以上10MPa以下の圧力をかけて熱プレスすることにより、ミクロフィブリル化セルロースの繊維間のメラミン樹脂を熱硬化させて、ミクロフィブリル化セルロース成形体を得ることができる。このようなミクロフィブリル化セルロース成形体については、メラミン樹脂が繊維間に十分に染みわたっているため、繊維間において、水分が入り込むような空隙を極めて少なくすることができる。そうすると、湿気の多い環境下に曝されたとしても、水分をほとんど吸収しない。したがって、高い寸法安定性を実現することができる。また、熱プレスにおいては、上記した温度および圧力で実施することができるため、例えば100MPaといった高い圧力は不要であり、生産性が良好である。
【0022】
上記ミクロフィブリル化セルロース成形体の製造方法において、熱プレスする工程は、第3予備成形シートを複数枚重ねて熱プレスする工程を含んでもよい。このようにすることにより、所望の厚さを有するミクロフィブリル化セルロース成形体を得やすくすることができると共に、ミクロフィブリル化セルロース成形体の内部にメラミン樹脂をより染みわたらせて、より寸法安定性を向上することができる。
【0023】
上記ミクロフィブリル化セルロース成形体の製造方法において、第2予備成形シートを得る工程は、容器に溜められた水に第1予備成形シートを1.5時間以上24時間以下の時間浸漬する工程を含んでもよい。このようにすることにより、より効率的に水による膨潤を実施することができる。
【0024】
上記ミクロフィブリル化セルロース成形体の製造方法において、第3予備成形シートにおけるメラミン樹脂の含有割合は、20.0質量%以上31.0質量%以下であってもよい。このようにすることにより、ミクロフィブリル化セルロースにおける高強度を維持しながら、高い寸法安定性を実現することができる。
【0025】
[本開示の実施形態の詳細]
次に、本開示の実施形態に係るミクロフィブリル化セルロース成形体の構成について説明する。図1は、本開示の一実施形態に係るミクロフィブリル化セルロース成形体の構成を示す概略斜視図である。図2は、図1に示すミクロフィブリル化セルロース成形体の概略断面図である。
【0026】
図1および図2を参照して、本開示の一実施形態に係るミクロフィブリル化セルロース成形体11は、例えば板状とすることができる。成形体11の厚さTは、例えば、0.1mm以上2.0mm以下とすることができる。成形体11の厚さは、ミクロフィブリル化セルロース成形体11の厚さ方向(Z方向)の一方の面12aから厚さ方向の他方の面12bまでの長さである。成形体11の横方向(幅方向)は、X方向で示され、成形体11の縦方向(奥行方向)は、Y方向で示される。
【0027】
ミクロフィブリル化セルロース成形体11は、ミクロフィブリル化セルロースと、メラミン樹脂と、から構成されている。このようなミクロフィブリル化セルロース成形体は、ミクロフィブリル化セルロース以外の材料がメラミン樹脂だけであるため、耐環境性を良好にすることができる。
【0028】
本開示に係るミクロフィブリル化セルロース成形体11において用いられるミクロフィブリル化セルロースは、セルロースナノファイバーとも呼ばれるものであり、ミクロフィブリル状のセルロース繊維である。ミクロフィブリル化セルロースの原材料としては、例えば、植物由来の例として木材や綿花があり、動物由来の例としては、キチン由来のもの、キトサン由来のものを用いることとしてもよい。
【0029】
用いられるミクロフィブリル化セルロースの繊維径としては、10nm以上1000nm以下のものが採用される。このようにすることにより、成形体11におけるミクロフィブリル化セルロースをより緻密に絡ませることができる。したがって、得られた成形体11の強度を高くすることができる。
【0030】
メラミン樹脂としては、メラミンおよびその誘導体とホルムアルデヒドを縮合して得られ、単量体および2量体以上の多量体からなる縮合物であれば公知のものを採用することができる。メラミンの誘導体は、例えば、イミノ基やメチロール基やメトキシメチル基、ブトキシメチル基等のアルコキシメチル基を有する誘導体が挙げられる。また、メチロール基を有するメラミン誘導体をアルコールと反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物をモノマーとして用いることもできる。
【0031】
メラミン樹脂の含有割合は、全体の20.0質量%以上である。また、メラミン樹脂の含有割合は、全体の31.0質量%以下であることが好ましい。ミクロフィブリル化セルロースの含有割合は、全体の69.0質量%以上80.0質量%以下であることが好ましい。ミクロフィブリル化セルロースの含有割合を69.0質量%以上80.0質量%以下とすることにより、成形体11として十分な強度を確保することができる。また、メラミン樹脂の含有割合を20.0質量%以上とすることにより、繊維間にメラミン樹脂を十分に染みわたらせて、繊維間の空隙を少なくすることができ、高い寸法安定性をより確実に実現することができる。また、メラミン樹脂の含有割合を、31.0質量%以下とすることにより、より確実に耐環境性を良好としながら、高い寸法安定性を実現することができる。
【0032】
ここで、成形体11の吸水率については、20℃の水に24時間浸漬させた際の吸水率が、1.6%以下である。このような成形体11は、高い湿度の環境下においても、水分を吸収し、膨潤して強度不足が発生したり、反りが発生するおそれを低減することができる。したがって、より利便性を向上した成形体11とすることができる。なお、吸水率は、0.6%以下であってもよい。このような成形体11は、さらに高い寸法安定性を実現することができる。
【0033】
また、成形体11の寸法変化率については、20℃の水に24時間浸漬させた際の厚さ方向の寸法変化率(以下、「厚さ変化率」と呼ぶ場合もある。)が、0.6%以下である。このような成形体11は、高い湿度の環境下においても、水分を吸収し、膨潤して強度不足が発生したり、反りが発生するおそれを低減することができる。したがって、より利便性を向上した成形体11とすることができる。なお、厚さ変化率については、0.4%以下であってもよい。このような成形体11は、さらに高い寸法安定性を実現することができる。
【0034】
また、成形体11の寸法変化率については、20℃の水に24時間浸漬させた際の長さ方向の寸法変化率(以下、「長さ変化率」と呼ぶ場合もある。)が、0.1%以下である。このような成形体11は、高い湿度の環境下においても、水分を吸収し、膨潤して強度不足が発生したり、反りが発生するおそれを低減することができる。したがって、より利便性を向上した成形体11とすることができる。なお、長さ変化率については、0.06%以下であってもよい。このような成形体11は、さらに高い寸法安定性を実現することができる。
【0035】
また、成形体11において、メラミン樹脂の含有割合は、20.0質量%以上31.0質量%以下である。よって、より確実に利便性を向上した成形体11とすることができる。
【0036】
また、成形体11において、曲げ弾性率が、13.0GPa以上である。このような成形体11は、高い強度を実現することができ、さらに材料としての利便性の向上を図ることができる。なお、曲げ弾性率は、14.0GPa以上であってもよい。
【0037】
また、成形体11において、曲げ強度が、210MPa以上である。このような成形体11は、高い強度を実現することができ、さらに材料としての利便性の向上を図ることができる。なお、曲げ強度は、230MPa以上であってもよい。
【0038】
また、成形体は、ミクロフィブリル化セルロースと、メラミン樹脂と、染料と、から構成されていてもよい。メラミン樹脂の含有割合は、20.0質量%以上であってもよい。染料の含有割合は、0.3%以上であってもよい。20℃の水に24時間浸漬させた際の吸水率が、0.6%以下であってもよい。昨今においては、ミクロフィブリル化セルロース成形体を種々の色に着色して用いたいとの要望もある。メラミン樹脂は比較的透明性が高く、染料による発色を容易に実現しやすい。上記構成の成形体を採用することにより、耐環境性が良好であり、高い寸法安定性を実現しながら、要望する色に着色した成形体とすることができる。
【0039】
次に、このような成形体11を製造する際の製造方法について説明する。図3は、本開示の一実施形態に係るミクロフィブリル化セルロース成形体の製造方法における代表的な製造工程を示すフローチャートである。
【0040】
図3を参照して、まず、第1予備成形シートを準備する(図3において、ステップS11、以下「ステップ」を省略する)。第1予備成形シートは、ミクロフィブリル化セルロースと、0質量%以上10質量%以下の水と、から構成されている。
【0041】
図4は、第1予備成形シートの一例を示す概略断面図である。図5は、図4に示す第1予備成形シートの概略断面図である。図4および図5を参照して、第1予備成形シート21aは、シート状であって、厚さTとしては、例えば、0.1mm以上0.5mm以下のものが採用される。第1予備成形シート21aは、例えば、以下のようにして得ることができる。まず、ミクロフィブリル化セルロースを水に分散させた分散液を準備し、この分散液を吸引濾過してシート状とすることにより、例えば含水率が65質量%以上85質量%以下のミクロフィブリル化セルロース含有組成物を得る。このミクロフィブリル化セルロース含有組成物を厚さ方向に圧縮して水分をある程度除去し、固形分を90質量%以上100質量%以下とする第1予備成形シート21aを得る。同様にして、複数枚の第1予備成形シートを得る。
【0042】
次に、第1予備成形シート21aを1時間以上水に曝して膨潤させ、第2予備成形シートを得る(S12)。図6は、水により第1予備成形シート21aを膨潤させる状態を示す概略断面図である。
【0043】
図6を参照して、まずこの工程においては、水14を溜めた容器13を準備する。そして、第1予備成形シート21aを浸漬させる。具体的には、第1予備成形シート21aの全面が水14に浸かるように、第1予備成形シート21aを容器13中の水14内に投入する。このようにして、第1予備成形シート21aを水に曝す。その後、所定の時間が経過するまでそのまま放置する。具体的には、20℃の水温の水14に24時間浸漬させて放置する。そうすると、第1予備成形シート21aは水14により膨潤する。すなわち、ミクロフィブリル化セルロース含有組成物を構成するミクロフィブリル化セルロースの繊維間に水14が入り込む。このようにして、第2予備成形シートを得る。第2予備成形シートは、主に厚さ方向において膨潤する。なお、第2予備成形シートを得る工程は、容器に溜められた水に第1予備成形シートを72時間以下の時間浸漬する工程を含んでもよい。このようにすることにより、より効率的に水による膨潤を実施することができる。
【0044】
ここで、第2予備成形シートの厚さは、第1予備成形シート21aの厚さの160%以上であってもよい。このようにすることにより、よりメラミン樹脂を含浸させやすくすることができ、より確実に高い寸法安定性を実現することができる。
【0045】
次に、第2予備成形シートに含まれる水を、メラミン樹脂を含有する溶液に置換して、第3予備成形シートを得る(S13)。図7は、メラミン樹脂を含有する溶液に浸漬した状態を示す概略断面図である。
【0046】
図7を参照して、この工程においては、メラミン樹脂を含有する溶液16を溜めた容器15を準備する。そして、第2予備成形シート23aを浸漬させる。具体的には、第2予備成形シート23aの全面が溶液16に浸かるように、第2予備成形シートを容器15中の溶液16内に投入する。
【0047】
ここで、メラミン樹脂を含有する溶液16として、例えば、メラミン樹脂の水溶液が用いられる。すなわち、メラミン樹脂を含有する溶液16は、水を含む。水の他に、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の水溶性有機溶剤を用いることができる。さらに、水と水溶性有機溶剤との混合物を用いてもよい。
【0048】
次に、得られた第3予備成形シートを乾燥する(S14)。乾燥する工程としては、例えば、室温(25℃)において、24時間の放置により実施する。
【0049】
次に、乾燥した第3予備成形シートを、120℃以上200℃以下の温度で、厚さ方向に1MPa以上10MPa以下の圧力をかけて熱プレスする(S15)。この場合、熱プレスする工程は、第3予備成形シートを複数枚重ねて熱プレスする工程を含む。図8は、熱プレスを実施する際の概略断面図である。
【0050】
図8を参照して、準備された2枚の第3予備成形シート24a,24bを重ねるようにして、120℃以上200℃以下の温度に熱せられた一対の金属板17a,17bの間に配置する。そして、矢印Dで示す方向に1MPa以上10MPa以下の圧力を加える。具体的には、例えば、金属板17a,17bの温度を150℃とし、6.5MPaの圧力を1.5時間加える。
【0051】
このようにして、図1に示す本開示に係るミクロフィブリル化セルロース成形体11を得る。上記ミクロフィブリル化セルロース成形体11の製造方法により製造されるミクロフィブリル化セルロース成形体11は、ミクロフィブリル化セルロースと、メラミン樹脂と、から構成される。このようなミクロフィブリル化セルロース成形体11は、ミクロフィブリル化セルロース以外の材料がメラミン樹脂だけであるため、耐環境性を良好にすることができる。また、上記ミクロフィブリル化セルロース成形体の製造方法によると、ミクロフィブリル化セルロースおよび0質量%以上10質量%以下の水から構成された第1予備成形シート21aを準備し、第1予備成形シート21aを1時間以上水に曝して膨潤させ、第2予備成形シート23aを得る工程を含む。水はセルロースとの親和性が高い分子なので、第1予備成形シート21aにおいて押し固められたミクロフィブリル化セルロースの繊維間に十分に浸透して、第1予備成形シート21aを十分に膨潤させて第2予備成形シート23aを得ることができる。次に、第2予備成形シートに含まれる水を、メラミン樹脂を含有する溶液に置換して、第3予備成形シートを得る工程を含む。ここで、水によって第2予備成形シートは十分に膨潤しており、ミクロフィブリル化セルロースの繊維間の間隔が広くなっているため、ミクロフィブリル化セルロースの繊維間にメラミン樹脂を含有する溶液を十分に染みわたらせることができる。すなわち、ミクロフィブリル化セルロースの繊維間にある水を、メラミン樹脂を含有する溶液に置き換えて、ミクロフィブリル化セルロースの繊維間にメラミン樹脂を含有する溶液を配置することができる。そして、これを乾燥し、120℃以上200℃以下の温度で、厚さ方向に1MPa以上10MPa以下の圧力をかけて熱プレスすることにより、ミクロフィブリル化セルロースの繊維間のメラミン樹脂を熱硬化させて、ミクロフィブリル化セルロース成形体を得ることができる。このようなミクロフィブリル化セルロース成形体については、メラミン樹脂が繊維間に十分に染みわたっているため、繊維間において、水分が入り込むような空隙を極めて少なくすることができる。そうすると、湿気の多い環境下に曝されたとしても、水分をほとんど吸収しない。したがって、高い寸法安定性を実現することができる。また、熱プレスにおいては、上記した温度および圧力で実施することができるため、例えば100MPaといった高い圧力は不要であり、生産性が良好である。
【0052】
以上より、このようなミクロフィブリル化セルロース成形体の製造方法によれば、生産性が良好であり、得られたミクロフィブリル化セルロース成形体の高い寸法安定性を実現することができる。
【0053】
この場合、第3予備成形シート24a,24bを複数枚重ねて熱プレスする工程を含むため、所望の厚さを有するミクロフィブリル化セルロース成形体11を得やすくすることができると共に、ミクロフィブリル化セルロース成形体11の内部にメラミン樹脂をより染みわたらせて、より寸法安定性を向上することができる。
【0054】
なお、以下のようにして製造することにしてもよい。第1予備成形シートを準備する工程は、ミクロフィブリル化セルロースから構成された複数枚のシート状のミクロフィブリル化セルロース含有組成物を積層して熱プレスすることにより第1予備成形シートを得る工程を含む。図9は、4枚のミクロフィブリル化セルロース含有組成物を4枚積層して熱プレスする場合の概略断面図である。
【0055】
図9を参照して、金属板18a,18bの間に、4枚のシート状のミクロフィブリル化セルロース含有組成物25a,25b,25c,25dを積層して配置し、矢印Dで示す方向に圧力を加えて、第1予備成形シートを得る。このようにして得られた予備成形シートを用いて、上記と同様に第2予備成形シートを得る。そして、第3予備成形シートを得た後、熱プレスを行い、成形体11を得る。
【0056】
この場合、所望の厚さを有するミクロフィブリル化セルロース成形体を得やすくすることができ、より生産性を良好にすることができる。
【0057】
なお、上記の実施の形態においては、容器に溜められた水に浸漬させることにより、第1予備成形シートを水に曝して膨潤させることとしたが、これに限らず、第1予備成形シートを流水に曝すことにより、水による膨潤を実施することにしてもよい。
【0058】
なお、上記の実施の形態において、ミクロフィブリル化セルロース成形体が染料をさらに含む場合、メラミン樹脂を含有する溶液に水溶性の染料を添加して、所望の染料の含有割合になるように調整し、染料をさらに含むミクロフィブリル化セルロース成形体を製造することにしてもよい。
【0059】
なお、上記の実施の形態において、メラミン樹脂の代わりに、尿素-メラミン樹脂を用いることとしてもよい。
【0060】
また、上記の実施の形態においては、第1予備成形シートを準備し、第1予備成形シートを1時間以上水に曝して膨潤させて第2予備成形シートを得た後、第2予備成形シートに含まれる水を、メラミン樹脂を含有する溶液に置換して第3予備成形シートを得ることとしたが、これに限らず、第2予備成形シートを得る工程を省略してもよい。すなわち、第1予備成形シートを準備した後に水に曝さず、メラミン樹脂を含有する溶液に曝し、ミクロフィブリル化セルロースの繊維間にメラミン樹脂を含有する溶液を染みわたらせて第3予備成形シートを得ることにしてもよい。後述するサンプル6においては、この手法で製造している。
【実施例
【0061】
サンプル1~サンプル10に示す配合、手法に沿って成形体を成形し、評価試験を実施した。評価結果については、表1に示す。サンプル1~サンプル7が、本発明の範囲内となる。サンプル8~サンプル10が、本発明の範囲外となる。
【0062】
(サンプル1) 水中に10質量%の濃度で分散させたミクロフィブリル化セルロース(株式会社スギノマシン製「BiNFi-S(ビンフィス) BMa10010」:繊維径10nm~50nm以下)を準備した。そして、水で1質量%となるまで希釈し、その後、濾過により含水量が85質量%となるまで水を除去して、厚さが2.0mmのシート状のMFC含有組成物を得た。
【0063】
次に、このシート状のMFC含有組成物1枚を目付47g/cmの2枚のガラス不織布に挟み、2枚のステンレス製の金属板に挟んで、150℃で2時間加熱加圧成形をして、第1予備成形シートを得た。圧力については、0.5MPaから段階的に上昇させていき、最終的に4MPaとなるように行った。得られた第1予備成形シートの厚さは、0.4mmであり、含水率は、0質量%以上10質量%以下であった。
【0064】
第1予備成形シートを温度20℃の水に24時間浸漬させて、第2予備成形シートを得た。この第2予備成形シートの厚さは、0.7mmであった。
【0065】
次に、第2予備成形シートを、水溶性メチロールメラミン樹脂(日本カーバイド工業株式会社製「ニカレヂンS-260」)を40℃の温水に溶解して作製したメラミン樹脂溶液(固形分40質量%)に24時間浸漬させ、第3予備成形シートを得た。
【0066】
その後、得られた第3予備成形シートを室温(25℃)において24時間乾燥させた。乾燥させた第3予備成形シート2枚を2枚のステンレス製の金属板に挟み、150℃で6.5MPaの圧力で1時間加熱加圧成形をしてミクロフィブリル化セルロースとメラミン樹脂とから構成された成形体を得た。
【0067】
得られた成形体については、乳白色であり、厚さが1.0mmであり、密度が1.41g/cmであった。メラミン樹脂の含有割合は、30.3質量%であった。また、温度20℃および相対湿度65%の環境下において、曲げ弾性率は、14.2GPaであり、曲げ強度が247MPaであった。そして、20℃の水に24時間浸漬させた際の吸水率は、0.6%であり、厚さ方向の寸法変化率は、0.3%であった。20℃の水に24時間浸漬させた際の長さ方向の寸法変化率(以下、「長さ変化率」と呼ぶ場合もある。)は、0.06%であった。
【0068】
吸水率については、「JIS A5905」に準拠した以下の方法により求めた。予め温度20℃相対湿度65%の環境下で72時間以上養生した成形体の試験片(10cm×10cm)を20℃の水に24時間浸漬した。その後、測定された浸漬前の試験片の質量(W)と浸漬後の試験片の質量(W)とを用い、下記の式(1)により吸水率を算出した。
【0069】
吸水率(%)=((W-W)/W)×100・・・(1)
【0070】
また、厚さ変化率については、「JIS A5905」に準拠した以下の方法により求めた。予め温度20℃相対湿度65%の環境下で72時間以上養生した成形体の試験片(10cm×10cm)を20℃の水に24時間浸漬した。その後、測定された浸漬前の試験片の厚さ(T)と浸漬後の試験片の厚さ(T)とを用い、下記の式(2)により厚さ変化率を算出した。
【0071】
厚さ変化率(%)=((T-T)/T)×100・・・(2)
【0072】
また、長さ変化率については、「JIS A5905」に準拠した以下の方法により求めた。予め温度20℃相対湿度65%の環境下で72時間以上養生した成形体の試験片(10cm×10cm)を20℃の水に24時間浸漬した。その後、測定された浸漬前の試験片の一辺の長さ(L)と浸漬後の試験片の一辺の長さ(L)とを用い、下記の式(3)により長さ変化率を算出した。ここで、長さ(L)、長さ(L)の試験片の一辺の長さについては、縦方向および横方向のうち変化率が大きい方を採用した。
【0073】
長さ変化率(%)=((L-L)/L)×100・・・(3)
【0074】
また、この成形体について、曲げ弾性率、曲げ強度および密度を測定した。測定は、JIS-K6911に準拠した。以下のサンプルの測定についても同様である。
【0075】
(サンプル2)
メラミン樹脂水溶液(固形分40質量%)に1.5時間浸漬させ、第3予備成形シートを得た以外はサンプル1と同様の方法で成形体を得た。得られた成形体については、乳白色であり、厚さが0.95mmであり、密度が1.39g/cmであった。メラミン樹脂の含有割合は、21.6質量%であった。また、温度20℃、相対湿度65%の環境下において、曲げ弾性率は15.4GPaであり、曲げ強度は225MPaであった。そして、20℃の水に24時間浸漬させた際の吸水率は1.6%であり、長さ変化率および厚さ変化率はそれぞれ、0.09%、0.6%であった。
【0076】
(サンプル3)
メラミン樹脂水溶液(固形分40質量%)に3時間浸漬させ、第3予備成形シートを得た以外はサンプル1と同様の方法で成形体を得た。得られた成形体については、乳白色であり、厚さが1.0mmであり、密度が1.41g/cmであった。メラミン樹脂の含有割合は、25.7質量%であった。また、温度20℃、相対湿度65%の環境下において、曲げ弾性率は15.1GPaであり、曲げ強度は213MPaであった。そして、20℃の水に24時間浸漬させた際の吸水率は1.1%であり、長さ変化率および厚さ変化率はそれぞれ、0.07%、0.4%であった。
【0077】
(サンプル4)
第3予備成形シートを8枚積層して加熱加圧成形した以外はサンプル1と同様の方法で成形体を得た。得られた成形体については、乳白色であり、厚さが4.0mmであり、密度が1.41g/cmであった。メラミン樹脂の含有割合は、30.3質量%であった。また、温度20℃、相対湿度65%の環境下において、曲げ弾性率は14.2GPaであり、曲げ強度は247MPaであった。そして、20℃の水に24時間浸漬させた際の吸水率は0.3%であり、長さ変化率および厚さ変化率はそれぞれ、0.04%、0.2%であった。
【0078】
(サンプル5)
第3予備成形シートを20枚積層して加熱加圧成形した以外はサンプル1と同様の方法で成形体を得た。得られた成形体については、乳白色であり、厚さが10.0mmであり、密度が1.41g/cmであった。メラミン樹脂の含有割合は、30.3質量%であった。また、温度20℃、相対湿度65%の環境下において、曲げ弾性率は14.2GPaであり、曲げ強度は247MPaであった。そして、20℃の水に24時間浸漬させた際の吸水率は0.2%であり、長さ変化率および厚さ変化率はそれぞれ、0.02%、0.2%であった。
【0079】
(サンプル6)
第1予備成形シートを温度20℃の水に浸漬させなかった以外はサンプル1と同様の方法で成形体を得た。得られた成形体については、乳白色であり、厚さが1.0mmであり、密度が1.42g/cmであった。メラミン樹脂の含有割合は、29.1質量%であった。また、温度20℃、相対湿度65%の環境下において、曲げ弾性率は13.7GPaであり、曲げ強度は218MPaであった。そして、20℃の水に24時間浸漬させた際の吸水率は0.8%であり、長さ変化率および厚さ変化率はそれぞれ、0.09%、0.4%であった。
【0080】
(サンプル7)
メラミン樹脂溶液において、さらに1重量部の水溶性黒色染料(株式会社岡本染料製「Direct Fast Black B 300%」)を加えた以外はサンプル1と同様の方法で成形体を得た。得られた成形体については、黒色であり、厚さが1.0mmであり、密度が1.39g/cmであった。メラミン樹脂の含有割合は、28.8質量%であった。染料の含有割合は、0.3質量%であった。また、温度20℃、相対湿度65%の環境下において、曲げ弾性率は13.4GPaであり、曲げ強度は230MPaであった。そして、20℃の水に24時間浸漬させた際の吸水率は0.6%、長さ変化率および厚さ変化率はそれぞれ、0.02%、0.2%であった。
【0081】
(サンプル8)
含水率が85質量%で厚さが2.5mmであるシート状のミクロフィブリル化セルロース含有組成物を2枚積層し、プレス温度を150℃、プレス圧力を4MPa、プレス時間を2時間として加熱加圧成形して成形体を得た。得られた成形体については、乳白色であり、厚さが1.0mmであり、密度が1.33g/cmであった。また、温度20℃、相対湿度65%の環境下において、曲げ弾性率は10.5GPaであり、曲げ強度は146MPaであった。そして、20℃の水に24時間浸漬させた際の吸水率は55.8%であり、長さ変化率および厚さ変化率はそれぞれ、0.94%、62.0%であった。
【0082】
(サンプル9)
メラミン樹脂の代わりにフェノール樹脂を用いた以外はサンプル1と同様の方法で成形体を得た。得られた成形体については、茶褐色であり、厚さが1.0mmであり、密度が1.40g/cmであった。フェノール樹脂の含有割合は、26.5質量%であった。また、温度20℃、相対湿度65%の環境下において、曲げ弾性率は11.0GPaであり、曲げ強度は245MPaであった。そして、20℃の水に24時間浸漬させた際の吸水率は1.9%であり、長さ変化率および厚さ変化率はそれぞれ、0.19%、1.4%であった。
【0083】
(サンプル10)
樹脂の含浸時間を0.2時間とした以外はサンプル1と同様の方法で成形体を得た。得られた成形体については、乳白色であり、厚さが0.9mmであり、密度が1.38g/cmであった。メラミン樹脂の含有割合は、11.7質量%であった。また、温度20℃、相対湿度65%の環境下において、曲げ弾性率は13.8GPaであり、曲げ強度は218MPaであった。そして、20℃の水に24時間浸漬させた際の吸水率は2.0%であり、長さ変化率および厚さ変化率はそれぞれ、0.12%、2.0%であった。
【0084】
【表1】
【0085】
表1を参照して、サンプル1~サンプル7についてはいずれも、メラミン樹脂の含有割合は、20.0質量%以上であり、吸水率が1.6%以下である。具体的には、フェノール樹脂の含有割合は、31.0質量%以下である。また、20℃の水に24時間浸漬させた際の厚さ方向の寸法変化率がいずれも、1.6%以下である。そして、20℃の水に24時間浸漬させた際の長さ方向の寸法変化率がいずれも、0.10%以下である。また、曲げ弾性率がいずれも、13.0GPa以上である。なお、曲げ強度はいずれも、210MPa以上である。また、サンプル1~6については、色は乳白色であり、サンプル7については、色は、黒色である。サンプル7については、黒色染料の色を十分に発現している。
【0086】
これに対し、サンプル8については、樹脂を含有しておらず、吸水率は55.8%であり、厚さ変化率は62.0%である。そして、長さ変化率は、0.94%である。このような成形体については、成形体の積層の界面に樹脂が存在せず、成形体を構成する繊維間に水が浸み込んで膨潤した結果、吸水率、厚さ変化率および長さ変化率が大きくなると考えられる。また、曲げ弾性率および曲げ強度もサンプル1~7と比較して低くなっている。
【0087】
サンプル9については、メラミン樹脂の代わりにフェノール樹脂を用いているが、吸水率は1.9%であり、厚さ変化率は1.4%である。そして、長さ変化率は、0.19%である。このような成形体については、成形体の積層の界面をフェノール樹脂で十分に濡らすことができず、層間における接着強度が弱くなり、吸水率、厚さ変化率および長さ変化率が大きくなると考えられる。また、曲げ弾性率もサンプル1~7と比較して低くなっている。
【0088】
サンプル10については、メラミン樹脂の樹脂含浸時間が短く、樹脂含有割合が11.7質量%であり、吸水率は2.0%であり、厚さ変化率は2.0%である。そして、長さ変化率は、0.12%である。このような成形体については、このような成形体については、成形体の積層の界面をメラミン樹脂で十分に濡らすことができず、層間における接着強度が弱くなり、吸水率、厚さ変化率および長さ変化率が大きくなると考えられる。
【0089】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、どのような面からも制限的なものではないと理解されるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、請求の範囲によって規定され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0090】
11 ミクロフィブリル化セルロース成形体、12a,12b 面、13,15 容器、14 水、16 溶液、17a,17b,18a,18b 金属板、21a 第1予備成形シート、23a 第2予備成形シート、24a,24b 第3予備成形シート、25a,25b,25c,25d ミクロフィブリル化セルロース含有組成物。
【要約】      (修正有)
【課題】耐環境性が良好であり、高い寸法安定性を実現することができるミクロフィブリル化セルロース成形体を提供する。
【解決手段】ミクロフィブリル化セルロース成形体11は、ミクロフィブリル化セルロースと、メラミン樹脂と、から構成されており、メラミン樹脂の含有割合は、20.0質量%以上30.3質量%以下であり、20℃の水に24時間浸漬させた際の吸水率が、1.6%以下である。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9