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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】アームレスト
(51)【国際特許分類】
   B60N 3/10 20060101AFI20240822BHJP
   B60N 2/75 20180101ALI20240822BHJP
   B60R 7/04 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
B60N3/10 A
B60N2/75
B60R7/04 S
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024104396
(22)【出願日】2024-06-27
【審査請求日】2024-07-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】有馬 博志
(72)【発明者】
【氏名】國江 智久
(72)【発明者】
【氏名】岡▲崎▼ 辰徳
(72)【発明者】
【氏名】内海 純一
【審査官】松山 雛子
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2013-0062976(KR,A)
【文献】特開2023-10766(JP,A)
【文献】特開2019-84434(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 3/10
A47C 7/54
A47C 7/62
B60N 2/75
B60R 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、
前記フレームに支持される発泡体からなるパッドと、
前記パッドの外面から第1方向の一方側へ凹ませた凹部に収容される収容部材と、を備え、
前記フレームは、前記収容部材に対して前記第1方向に垂直な第2方向の一方側に位置する第1被係合部と、
前記収容部材に対して前記第2方向の他方側に位置する第2被係合部と、を備え、
前記収容部材は、前記凹部の内周壁面に対向する外周面を有する本体部と、
前記外周面に設けられて、前記第1被係合部を支点に前記収容部材を前記第1方向へ回転可能に、前記第1被係合部に取り付けられる第1係合部と、
前記第2被係合部に引っ掛けられる弾性変形可能な第2係合部と、を備え、
前記第2係合部は、前記本体部に連結される基部と、
前記基部から前記第1方向の一方側へ延びて、前記外周面から前記第2方向に離れて配置される延出部と、
前記延出部から前記外周面とは反対側へ突出して、前記第1方向の他方側の面に前記第2被係合部が引っ掛けられる爪部と、を備え、
前記第2被係合部に前記爪部を引っ掛けた状態から前記基部側を支点に前記延出部を弾性変形させ、前記延出部を前記外周面に当てた状態において、前記爪部と前記第2被係合部とが前記第1方向に対向する掛かり代があることを特徴とするアームレスト。
【請求項2】
前記第1方向および前記第2方向に垂直な第3方向から見て、前記爪部の前記延出部側の根本の厚さが5mm以上10mm以下であり、
前記延出部の前記基部側の根本において、前記第1方向に垂直な断面における断面二次モーメントが100mm以上であることを特徴とする請求項1記載のアームレスト。
【請求項3】
前記第2被係合部は、前記第1方向および前記第2方向に垂直な第3方向に延びる丸棒状に形成され、
前記掛かり代は、前記第2被係合部の直径の半分以上であることを特徴とする請求項1記載のアームレスト。
【請求項4】
前記本体部は、前記外周面の上端から外側へ向かって張り出すフランジを備え、
前記基部は、前記外周面および前記フランジに連結され、
前記延出部の前記第1方向の長さは、前記基部の前記第1方向の長さよりも大きいことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のアームレスト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アームレストに関し、特にフレームへの収容部材の組付性の悪化を抑制しつつ、収容部材をフレームから外れ難くできるアームレストに関する。
【背景技術】
【0002】
発泡体からなるパッドをフレームに支持させて構成されるアームレストにおいて、パッドに設けた凹部にカップホルダ等の収容部材を収容させるものが知られている。特許文献1では、アームレストの上面に設けた凹部に収容部材が収容され、その収容部材がフレームのワイヤで囲まれている。収容部材の本体部の前側からは、左右方向から見てU字状の第1係合部が突出し、本体部の後側にはフック状の第2係合部が設けられる。第2係合部は、本体部に連結される基部と、その基部から下方へ延びて本体部から後方へ離れた位置にある延出部と、延出部の下端から後方へ突出する爪部と、を備える。
【0003】
この収容部材をフレームに組み付けるには、U字状の第1係合部をワイヤ(第1被係合部)に嵌めた後、第1係合部を中心に収容部材を下方へ回転させ、爪部の下面をワイヤ(第2被係合部)に押し付ける。更に下方への回転によりワイヤに対して爪部が滑ることで、延出部が収容部材側へ弾性変形し、爪部がワイヤを乗り越えてワイヤに引っ掛かり、組み付けが完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2023-010766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記従来技術では、第2係合部の延出部の剛性が低いと、フレームへの収容部材の組付時に小さな力で延出部を弾性変形させることができる一方で、収容部材を上方へ引っ張った時に延出部が簡単に弾性変形してしまい、爪部がワイヤから(収容部材がフレームから)外れ易くなる。これに対して延出部の剛性が高いと、爪部をワイヤから外れ難くできるが、収容部材の組付時に大きな力が必要となって組付性が悪化する。
【0006】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、フレームへの収容部材の組付性の悪化を抑制しつつ、収容部材をフレームから外れ難くできるアームレストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために本発明のアームレストは、フレームと、前記フレームに支持される発泡体からなるパッドと、前記パッドの外面から第1方向の一方側へ凹ませた凹部に収容される収容部材と、を備え、前記フレームは、前記収容部材に対して前記第1方向に垂直な第2方向の一方側に位置する第1被係合部と、前記収容部材に対して前記第2方向の他方側に位置する第2被係合部と、を備え、前記収容部材は、前記凹部の内周壁面に対向する外周面を有する本体部と、前記外周面に設けられて、前記第1被係合部を支点に前記収容部材を前記第1方向へ回転可能に、前記第1被係合部に取り付けられる第1係合部と、前記第2被係合部に引っ掛けられる弾性変形可能な第2係合部と、を備え、前記第2係合部は、前記本体部に連結される基部と、前記基部から前記第1方向の一方側へ延びて、前記外周面から前記第2方向に離れて配置される延出部と、前記延出部から前記外周面とは反対側へ突出して、前記第1方向の他方側の面に前記第2被係合部が引っ掛けられる爪部と、を備え、前記第2被係合部に前記爪部を引っ掛けた状態から前記基部側を支点に前記延出部を弾性変形させ、前記延出部を前記外周面に当てた状態において、前記爪部と前記第2被係合部とが前記第1方向に対向する掛かり代がある。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載のアームレストによれば、第2被係合部に爪部を引っ掛けた状態から基部側を支点に延出部を弾性変形させ、本体部の外周面に延出部を当てた状態において、爪部と第2被係合部とが第1方向に対向する掛かり代がある。そのため、延出部の剛性とは殆ど無関係に(延出部が大きく弾性変形した場合でも)、この掛かり代によって爪部を第2被係合部から外れ難くできる。また、このように外れ難くするために延出部を高剛性化しなくても良いので、高剛性化に伴う第2被係合部への第2係合部の組付性の悪化を抑制できる。以上の結果、フレームへの収容部材の組付性の悪化を抑制しつつ、収容部材をフレームから外れ難くできる。
【0009】
請求項2記載のアームレストによれば、請求項1記載のアームレストが奏する効果に加え、次の効果を奏する。第1方向および第2方向に垂直な第3方向から見て、爪部の延出部側の根本の厚さが5mm以上10mm以下である。延出部の基部側の根本において、第1方向に垂直な断面における断面二次モーメントが100mm以上である。これらの結果、爪部および延出部の剛性のバランスを良好にでき、収容部材をフレームから更に外れ難くしつつ、フレームへの収容部材の組付性を更に向上できる。
【0010】
請求項3記載のアームレストによれば、請求項1記載のアームレストが奏する効果に加え、次の効果を奏する。第2被係合部は、第1方向および第2方向に垂直な第3方向に延びる丸棒状に形成される。上述した爪部と第2被係合部との掛かり代は、第2被係合部の直径の半分以上である。これにより、掛かり代を確保でき、収容部材をフレームからより外れ難くできる。
【0011】
請求項4記載のアームレストによれば、請求項1から3のいずれかに記載のアームレストが奏する効果に加え、次の効果を奏する。延出部の第1方向の長さは、基部の第1方向の長さよりも大きいので、組付時に延出部を第1方向の全長に亘って撓むように弾性変形させ易くでき、フレームへの収容部材の組付性を向上できる。一方、基部が小さいことで、延出部の弾性変形時の応力が基部と本体部との連結部分に集中し易くなり、その連結部分の耐久性が低下するおそれがある。
【0012】
ここで、本体部は、外周面の上端から外側へ向かって張り出すフランジを備える。第2係合部の基部が本体部の外周面およびフランジに連結されるので、基部が外周面またはフランジのいずれか一方のみに連結される場合と比べて、連結部分に加わる延出部の弾性変形時の応力が分散され易くなり、連結部分の耐久性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態におけるアームレストが設けられた座席の斜視図である。
図2図1のII-II線におけるアームレストの断面図である。
図3】収容部材の底面図である。
図4】フレームへの収容部材の組付方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1は、一実施形態におけるアームレスト20が設けられた座席10の斜視図である。なお、各図面の矢印U方向(第1方向の他方側)、矢印D方向(第1方向の一方側)、矢印L方向、矢印R方向、矢印F方向(第2方向の一方側)、矢印B方向(第2方向の他方側)は、それぞれ座席10の上方向、下方向、左方向、右方向、前方向、後方向を示している。これらの各方向は、座席10に座った着座者から見た各方向と同一である。また、上下方向(第1方向)と左右方向(第3方向)と前後方向(第2方向)とは互いに垂直である。
【0015】
座席10は、車両(例えば自動車)に搭載されるシートである。座席10は、座面を構成するシートクッション11と、そのシートクッション11に回転可能に支持されて背もたれを構成するシートバック12と、基端部がシートバック12に回転可能に支持されて肘置きを構成可能なアームレスト20と、を主に備える。
【0016】
シートクッション11は、金属や合成樹脂からなるクッションフレーム(図示せず)に、軟質ポリウレタンフォーム等の発泡体からなるクッションパッド(図示せず)を支持させ、そのクッションパッドを表皮材(図示せず)で覆って形成される。本実施形態におけるシートクッション11は、車両の後部座席のうち2名分の座面を構成する。
【0017】
同様にシートバック12は、金属や合成樹脂からなるバックフレーム(図示せず)に、軟質ポリウレタンフォーム等の発泡体からなるバックパッド(図示せず)を支持させ、そのバックパッドを表皮材(図示せず)で覆って形成される。
【0018】
本実施形態におけるシートバック12は、車両の後部座席のうち2名分の背もたれを構成可能なものである。この2名分のうち左側の背もたれの一部は、図1の状態から上方へ立ち上げた収納状態のアームレスト20によって構成される。シートバック12の前面には、このアームレスト20を収納するための収納凹部13が形成されている。収納凹部13は、シートバック12の左側面にも開口している。
【0019】
アームレスト20をシートクッション11と略平行になるよう倒した図1の状態がアームレスト20の使用状態である。使用状態のアームレスト20には、座席10の右側に座った着座者の腕や、座席10に対し左側に別途設けた座席に座った着座者の腕を置くことができる。
【0020】
以下、アームレスト20については、基本的に使用状態における各方向を用いて説明する。アームレスト20は、前側の先端部の上面に収容部材30が埋め込まれている。本実施形態における収容部材30は、飲み物などのカップを受け入れて保持するためのカップホルダである。
【0021】
図2は、図1のII-II線におけるアームレスト20の断面図である。図3は、収容部材30の底面図である。アームレスト20は、金属や合成樹脂からなるフレーム21に、軟質ポリウレタンフォーム等の発泡体からなるパッド22を支持させ、そのパッド22を表皮材23で覆って形成される。
【0022】
表皮材23の上面には、収容部材30が挿入される開口23aが形成されている。更に、パッド22には、パッド22の上面(外面)から下方へ凹ませた凹部22aが形成されている。この凹部22aに収容部材30が収容される。
【0023】
フレーム21は、フレーム本体にワイヤが溶接などにより接合されて構成され、パッド22内に埋め込まれている。ワイヤは、凹部22a内の収容部材30を囲む金属製の丸棒状の部材である。ワイヤは、収容部材30に対して前側に位置する第1被係合部24と、収容部材30に対して後側に位置する第2被係合部25と、を備える。
【0024】
第1被係合部24及び第2被係合部25は、左右方向に沿って互いに並行に延び、互いの相対位置が固定されている。なお図2では、第1被係合部24及び第2被係合部25は、凹部22a内に露出しているが、凹部22aの内周壁面の近傍に位置すれば、凹部22a内に露出せずにパッド22に埋め込まれても良い。
【0025】
収容部材30は、上端が開口して下端が閉塞した略四角筒状に形成される本体部31と、第1被係合部24に取り付けられる第1係合部33と、第1被係合部24から第1係合部33を外れ難くするための規制部34と、第2被係合部25に引っ掛けられる弾性変形可能な第2係合部40と、を備える。これらの各部が合成樹脂によって一体成形されている。
【0026】
本体部31は、凹部22aの内周壁面と対向して前後左右のそれぞれを向く外周面31aと、外周面31a(本体部31)の上端の全周から外側へ向かって張り出すフランジ32と、を備える。フランジ32は、開口23aを塞ぐように表皮材23の上面に重ねられる部位である。
【0027】
第1係合部33は、本体部31の外周面31aの前側から突出する部位であり、左右方向に互いに離れて2個設けられる。各々の第1係合部33は、左右方向から見て前方に開口したU字状に形成される。U字状の第1係合部33の内部に丸棒状の第1被係合部24が挿入されて取り付けられる。そのため、第2係合部40を第2被係合部25に引っ掛けていない状態では、第1被係合部24を中心に収容部材30を上下方向へ回転可能となっている。
【0028】
規制部34は、本体部31の外周面31aの後側から略垂直に立ち上がる部位であり、左右方向に互いに離れて2個設けられる。規制部34は、フランジ32から下方へ延びて形成され、上下方向の全長に亘って外周面31aに接続される。規制部34の下端縁34aは、後方へ向かうにつれて上昇傾斜している。
【0029】
第2係合部40を本体部31の外周面31aに近づくよう弾性変形させて、第1被係合部24及び第2被係合部25に対して収容部材30を後方へ相対移動させると、第1被係合部24から第1係合部33が外れるおそれがある。しかし、これが外れる前に第2被係合部25が規制部34の後端縁に接触し、収容部材30の後方への相対移動が規制される。このようにして、規制部34により第1被係合部24から第1係合部33が外れることを抑制できる。
【0030】
第2係合部40は、本体部31の後側に設けられる部位であり、2個の規制部34を間に挟むよう左右方向に互いに離れて2個設けられる。各々の第2係合部40は、本体部31の外周面31a及びフランジ32に連結される基部41と、基部41から下方へ延びる延出部42と、延出部42の下端から外周面31aとは反対側の後方へ突出する爪部43と、爪部43よりも上方で延出部42から後方へ突出する突起部44と、を備える。
【0031】
基部41は、外周面31a及びフランジ32の下面からそれぞれ略垂直に立ち上がる左右一対の側面板41aと、それらの側面板41aの後端同士を連結する連結板41bとによって、上下方向に垂直な断面がコ字状に形成されている。側面板41aは、左右方向に垂直な平板である。連結板41bは、前後方向に垂直な平板である。
【0032】
延出部42は、上下方向の全長に亘って外周面31aから後方に離れて配置され、延出部42の上端が基部41の下端の後側に連結される。延出部42は、基部41の側面板41aを下方へ延長した延出側面板42aと、基部41の連結板41bを下方へ延長した延出連結板42bとによって、上下方向に垂直な断面がコ字状に形成されている。延出連結板42bは、上半分が前後方向に垂直な平板状に形成され、下半分が下方へ向かうにつれて後方へ傾斜した平板状に形成されている。
【0033】
爪部43は、延出連結板42bの下端に根本が連結され、その根元から後方の先端へ向かうにつれて上方へ傾斜する。爪部43の下面は、左右方向から見て湾曲した凸の曲面である。爪部43の上面は、左右方向から見て湾曲した凹の曲面である。この下面から上面までの寸法である爪部43の厚さは、爪部43の根本から先端へ向かうにつれて小さくなる。本実施形態では、延出連結板42bの下側の後面と並行な方向の寸法を、爪部43の厚さとしている。
【0034】
この爪部43の上面、及び、延出部42の延出連結板42bの後面のそれぞれに第2被係合部25が当たるようにして、第2被係合部25に爪部43が引っ掛けられる。これにより、第1被係合部24を中心とした収容部材30の上方への回転が規制される。更に、第2被係合部25に爪部43を引っ掛けた状態で、フランジ32が表皮材23を介してパッド22の上面に押し付けられるので、パッド22の弾性反力により収容部材30の下方への回転も規制される。これらの結果、収容部材30がフレーム21に組み付けられる。
【0035】
突起部44は、爪部43に引っ掛けた第2被係合部25よりも上方に位置する部位である。収容部材30が下方へ回転するように強く押された場合など、突起部44が第2被係合部25に当たることで、それ以上の下方への回転を規制できる。その結果、収容部材30が凹部22a内に深く入り込むことを抑制できる。
【0036】
次に図4を参照して、第1被係合部24及び第2被係合部25(フレーム21)への収容部材30の組付方法を説明する。図4は、この組付方法を示す模式図であり、図2と同様の断面が示されている。
【0037】
まず、収容部材30の前側を下方に傾けた状態で、第1係合部33を第1被係合部24に嵌めて取り付ける。次いで、第1被係合部24を中心に収容部材30の後側を下方へ回転させていき、第2係合部40の下端を第2被係合部25に接触させる。
【0038】
この接触までの間に、第1被係合部24に対して収容部材30が後方へ相対移動しようとしても、規制部34の下端縁34aが第2被係合部25に当たることで、その相対移動を規制できる。これにより、その相対移動に伴って第1被係合部24から第1係合部33が外れることを抑制できると共に、延出部42と本体部31の外周面31aとの間に第2被係合部25が嵌まり込むことを防止できる。更に、規制部34の下端縁34aが後方へ向かうにつれて上昇傾斜しているので、下端縁34aに沿って第2係合部40の下端へ第2被係合部25を案内し易くできる。
【0039】
第2係合部40の延出部42の下端を第2被係合部25に接触させた後、延出部42を第2被係合部25に押し付け、収容部材30の後側を更に下方へ回転させていく。このとき、第1係合部33に第1被係合部24を奥まで入れた状態で、第2被係合部25と接触する延出部42の下端は、後方へ向かうにつれて上昇傾斜している。この傾斜は、爪部43の先端まで続いている。そのため、更なる下方の回転により、第2係合部40が本体部31の外周面31aへ向かって弾性変形しながら、上記の傾斜に沿って第2被係合部25が滑り爪部43の先端へ案内される。その結果、爪部43が第2被係合部25を乗り越えて引っ掛かり、フレーム21への収容部材30の組み付けが完了する。
【0040】
なお、組付時の第2係合部40の弾性変形は、図4に二点鎖線で示すように、主に基部41側を支点に延出部42が外周面31a(前方)へ向かって弾性変形する。更に爪部43が根元側を支点に上方へ、即ち延出部42側へ折り畳まれるように弾性変形する。
【0041】
図2に示す組付後において、例えば収容部材30に嵌まったカップを持ち上げようとして、収容部材30に上方への力が加わった場合には、第1被係合部24を中心に収容部材30の後側が上方へ回転しようとする。この上方への力が強いと、第2被係合部25に引っ掛かった第2係合部40が弾性変形する。具体的には、組付時と同様に主に基部41側を支点に延出部42が外周面31aへ向かって弾性変形し、組付時とは逆に爪部43が根元側を支点に下方へ弾性変形する。この弾性変形量が大きくなって第2被係合部25と爪部43との引っ掛かりが解除されると、収容部材30がフレーム21から外れてしまう。
【0042】
従って、収容部材30の組付時や収容部材30が外れようとするときに主に弾性変形する延出部42の剛性が低ければ、その組付時に要する力を小さくでき、フレーム21への収容部材30の組付性を向上できる。一方で、第2被係合部25と爪部43との引っ掛かりが解除され易くなり、収容部材30がフレーム21から外れ易くなるおそれがある。これとは逆に、延出部42の剛性が高ければ、収容部材30を外れ難くできる一方で、収容部材30の組付性が悪化するおそれがある。
【0043】
これに対し本実施形態では、第2被係合部25に爪部43を引っ掛けた状態から、それらが外れるときのように、基部41側を支点に延出部42を弾性変形させて本体部31の外周面31aに当てた図2に二点鎖線で示す状態において、爪部43と第2被係合部25とが上下方向に対向する掛かり代Aがある。そのため、延出部42の剛性とは殆ど無関係に(延出部42が大きく弾性変形した場合でも)、掛かり代Aによって爪部43を第2被係合部25から外れ難くできる。また、このように外れ難くするために延出部42を高剛性化しなくても良いので、高剛性化に伴う第2被係合部25への第2係合部40の組付性の悪化を抑制できる。以上の結果、フレーム21への収容部材30の組付性の悪化を抑制しつつ、収容部材30をフレーム21から外れ難くできる。
【0044】
この掛かり代A(前後方向の寸法)は、第2被係合部25の直径C(前後方向の寸法)の半分以上である。これにより、第2被係合部25のサイズに対して適切な掛かり代Aを確保でき、収容部材30をフレーム21からより外れ難くできる。
【0045】
延出部42の上下方向の長さL2は、基部41の上下方向の長さL1よりも大きい。そのため、組付時に延出部42を上下方向の全長に亘って撓むように弾性変形させ易くでき、フレーム21への収容部材30の組付性を向上できる。一方、基部41が小さいことで、延出部42の弾性変形時の応力が基部41と本体部31との連結部分に集中し易くなり、その連結部分の耐久性が低下するおそれがある。
【0046】
しかし、本実施形態では、基部41が本体部31の外周面31a及びフランジ32に連結されるので、基部41が外周面31a又はフランジ32のいずれか一方のみに連結される場合と比べて、連結部分に加わる延出部42の弾性変形時の応力が分散され易くなり、連結部分の耐久性を確保できる。
【0047】
更に、断面コ字状の基部41から下方へ延長するように延出部42も断面コ字状に形成されているので、本体部31に拘束された基部41から遠い、延出部42の下端に向かう程、延出側面板42aが開き易くて延出部42の剛性が低くなる。これにより、延出部42の下端に向かう程大きく弾性変形させることができ、その弾性変形時に基部41と延出部42との境界部分に応力が集中することを抑制できる。その結果、第2係合部40の耐久性を向上できる。
【0048】
爪部43の上下両面が後方へ向かうにつれて上方へ傾斜しているので、組付時に爪部43が第2被係合部25を乗り越えるとき、爪部43が延出部42側へ折り畳まれるように弾性変形し易い。これにより、掛かり代Aのために爪部43を長くしても爪部43を第2被係合部25に引っ掛け易くできる。従って、爪部43の長さにより収容部材30をフレーム21から外れ難くしつつ、爪部43の形状および厚さによりフレーム21への収容部材30の組付性を向上できる。
【0049】
更に、左右方向から見て、爪部43の厚さが根本から先端へ向かうにつれて小さくなるので、その先端側ほど爪部43が厚さ方向に弾性変形し易い。爪部43の下面が、左右方向から見て湾曲している凸の曲面であるので、爪部43が下方へ曲がり難く上方へ曲がり易い。
【0050】
これらの結果、爪部43が延出部42側へ折り畳まれるように更に弾性変形し易くなり、爪部43を長くしても爪部43を第2被係合部25に更に引っ掛け易くできる。従って、爪部43の長さにより収容部材30をフレーム21から更に外れ難くしつつ、爪部43の形状および厚さによりフレーム21への収容部材30の組付性を更に向上できる。
【0051】
図4に示すように左右方向から見て、爪部43の根本の厚さT1が5mm以上10mm以下であることが好ましい。厚さT1が5mm以上であれば、収容部材30に100N程度の力が加わっても、爪部43を第2被係合部25から外れ難くできる。厚さT1が10mm以下であれば、爪部43を、延出部42側へ折り畳まれるように弾性変形させ易くできる。よって、厚さT1が5mm以上10mm以下であれば、収容部材30をフレーム21からより一層外れ難くできると共に、フレーム21への収容部材30の組付性をより一層向上できる。
【0052】
また、延出部42の基部41側の根本において、延出部42が延びる方向(フレーム21に収容部材30を組み付けた図2の上下方向)に垂直な断面Mにおける断面二次モーメントは、100mm以上であることが好ましく、300mm以上であることがより好ましい。なお、断面Mの位置は、延出部42の根本のうち基部41の下端と滑らかに繋ぐためのカーブよりも下方にある。
【0053】
上記の断面二次モーメントが100mm以上であれば、収容部材30をフレーム21から更に外れ難くでき、300mm以上であれば、収容部材30をフレーム21からより一層外れ難くできる。更に、上記の断面二次モーメントが100mm以上であって、厚さT1が5mm以上10mm以下であれば、爪部43及び延出部42の剛性のバランスを良好にでき、収容部材30をフレーム21から更に外れ難くしつつ、フレーム21への収容部材30の組付性を更に一層向上できる。
【0054】
以上、上記実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、フレーム21やパッド22、収容部材30等の各部は、形状や寸法、数などが適宜変更されても良い。第1被係合部24がU字状の部材とされ、第1係合部33が丸棒状の部材とされても良い。
【0055】
上記実施形態では、シートバック12の左側にアームレスト20が回転可能に支持される場合を説明したが、必ずしもこれに限られない。例えば座席10が左右反転されて、シートバック12の右側にアームレスト20が設けられても良い。また、収納状態のアームレスト20が背もたれの一部を構成する場合に限らず、アームレスト20が背もたれの一部を構成しなくても良い。アームレスト20を備える座席10は、車両の後部座席に限らず前部座席でも良く、車両以外の乗物に搭載されるものでも良く、乗物に搭載されないものでも良い。
【0056】
上記実施形態では、収容部材30がカップホルダである場合を説明したが、必ずしもこれに限られない。例えば灰皿や小物入れ、車載機器の操作機器などが収容部材30とされても良い。また、収容部材30の各部が一体成形される場合に限らず、例えば本体部31と第1係合部33や第2係合部40とが別部材から形成されても良い。また収容部材30の一部または全部が金属製でも良い。
【0057】
上記実施形態では、収容部材30の前側に第1係合部33が設けられ、収容部材30の後側に第2係合部40が設けられる場合を説明したが、必ずしもこれに限られない。収容部材30の後側に第1係合部33が設けられ、収容部材30の前側に第2係合部40が設けられても良い。収容部材30の左右方向の一方側に第1係合部33が設けられ、他方側に第2係合部40が設けられても良い。また例えば、収容部材30の右前に第1係合部33が、収容部材30の左後に第2係合部40がそれぞれ設けられても良い。また、第1係合部33や第2係合部40は、2個に限らず1個でも3個以上でも良く、規制部34に対する位置も特に限定されない。いずれの場合も、第1係合部33が取り付けられる位置に第1被係合部24が設けられ、第2係合部40が引っ掛けられる位置に第2被係合部25が設けられれば良い。
【0058】
上記実施形態では、第2係合部40の基部41が本体部31の外周面31a及びフランジ32に連結される場合を説明したが、必ずしもこれに限られない。例えば基部41が外周面31aのみに連結されても良く、基部41がフランジ32のみに連結されても良い。
【符号の説明】
【0059】
20 アームレスト
21 フレーム
22 パッド
22a 凹部
24 第1被係合部
25 第2被係合部
30 収容部材
31 本体部
31a 外周面
32 フランジ
33 第1係合部
40 第2係合部
41 基部
42 延出部
43 爪部
A 掛かり代
【要約】
【課題】フレームへの収容部材の組付性の悪化を抑制しつつ、収容部材をフレームから外れ難くできるアームレストを提供することを目的とする。
【解決手段】第2被係合部25に第2係合部40の爪部43を引っ掛けた状態から基部41側を支点に第2係合部40の延出部42を弾性変形させ、本体部31の外周面31aに延出部42を当てた状態において、爪部43と第2被係合部25とが第1方向(矢印U-D方向)に対向する掛かり代Aがある。この掛かり代Aによって爪部43を第2被係合部25から外れ難くできる。外れ難くするために延出部42を高剛性化しなくても良いので、高剛性化に伴う第2被係合部25への第2係合部40の組付性の悪化を抑制できる。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4