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特許7542168可溶化装置、有機性廃棄物の処理システム及び処理方法
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  • 特許-可溶化装置、有機性廃棄物の処理システム及び処理方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】可溶化装置、有機性廃棄物の処理システム及び処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/18 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
C02F11/18 ZAB
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024525254
(86)(22)【出願日】2023-07-19
(86)【国際出願番号】 JP2023026452
【審査請求日】2024-04-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000176752
【氏名又は名称】三菱化工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗原 元
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-221443(JP,A)
【文献】特開平10-080700(JP,A)
【文献】特開2014-061509(JP,A)
【文献】特開2012-135705(JP,A)
【文献】特開2011-131159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 11/00-11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥に対して熱可溶化処理を行う熱可溶化タンクと、
前記熱可溶化タンク内の前記汚泥にスチームを供給するスチーム供給装置と、
前記熱可溶化タンクから排出された可溶化汚泥に前記熱可溶化タンク内の気体を排出する気体排出管と、
前記熱可溶化タンク内の圧力を測定する圧力センサと、
前記気体排出管を開閉する圧力調節弁と、
前記圧力センサの測定値が目標値となるように前記圧力調節弁の開度を調節する圧力制御手段と、を備えることを特徴とする可溶化装置。
【請求項2】
前記熱可溶化タンクから前記可溶化汚泥を排出する出口管を備えており、
前記気体排出管が前記出口管に連通していることを特徴とする請求項1に記載の可溶化装置。
【請求項3】
前記熱可溶化タンク内の前記汚泥の液面高さに相関する物理量を測定する液位センサと、
前記出口管を開閉する液位調節弁と、
前記液位センサの測定値が目標値となるように前記液位調節弁の開度を調整する液位制御手段と、を備えることを特徴とする請求項2に記載の可溶化装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の可溶化装置と、
前記可溶化汚泥に対して消化処理を行う消化タンクとを備えることを特徴とする有機性廃棄物の処理システム。
【請求項5】
汚泥に対して熱可溶化処理を行う熱可溶化タンク内に熱源としてスチームを供給するスチーム供給工程と、
前記熱可溶化タンク内の圧力を測定する測定工程と、
圧力調整弁を開閉させることで、前記熱可溶化タンクから排出された可溶化汚泥が流れる出口管に前記熱可溶化タンク内の気体を逃す圧力制御工程と、を備えることを特徴とする有機性廃棄物の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可溶化装置、有機性廃棄物の処理システム及び処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生ごみ(食品廃棄物)、畜産糞尿、下水汚泥等の有機性廃棄物を処理する方法として、嫌気性生物を用いた嫌気性消化処理が知られている。この嫌気性消化処理では、消化タンクに投入される汚泥等の有機性廃棄物を、可溶化、加水分解及び酸発酵を経てメタン発酵させ、固形分をメタンガスと二酸化炭素とに分解することで固形分を減容化する。メタンガスはエネルギーとして利用する。
【0003】
嫌気性消化処理を行う前に、汚泥に対して熱可溶化処理を行う場合がある。熱可溶化処理は、汚泥(有機性廃棄物)を所定温度に加熱し固形分を加水分解する処理である。例えば、特許文献1~5には、高温のスチームを汚泥に供給することによって汚泥を熱可溶化する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2003-500208号公報
【文献】特開2007-117801号公報
【文献】特開2009-148650号公報
【文献】特表2011-516246号公報
【文献】特許第6159573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
熱可溶化処理では、熱可溶化タンク内の温度を所定の設定温度に維持することが好ましい。しかし、熱可溶化タンクにおいて熱可溶化処理を連続して行う場合には、汚泥の供給と排出に伴って熱の出入りが発生するため、温度を一定に保つことが難しい。
スチームにより汚泥を加熱する場合には、スチームの流入量を変化させることで、温度を調節できる。しかし、スチームの流入量は、微調節が難しく、必要以上に変動する場合があるため、熱可溶化タンク内の温度を調節する目的でスチームの流入量を変化させても、温度が安定しない虞がある。
【0006】
本発明は、熱可溶化タンク内の温度を一定に保つことが可能な可溶化装置、有機性廃棄物の処理システム及び処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決する本発明の可溶化装置は、汚泥に対して熱可溶化処理を行う熱可溶化タンクと、前記熱可溶化タンク内の前記汚泥にスチームを供給するスチーム供給装置と、前記熱可溶化タンクから排出された可溶化汚泥に前記熱可溶化タンク内の気体を排出する気体排出管と、前記熱可溶化タンク内の圧力を測定する圧力センサと、前記気体排出管を開閉する圧力調節弁と、前記圧力センサの測定値が目標値となるように前記圧力調節弁の開度を調節する圧力制御手段と、を備える。
【0008】
また、本発明の有機性廃棄物の処理方法は、汚泥に対して熱可溶化処理を行う熱可溶化タンク内に熱源としてスチームを供給するスチーム供給工程と、前記熱可溶化タンク内の圧力を測定する測定工程と、圧力調節弁を開閉させることで、前記熱可溶化タンクから排出された可溶化汚泥が流れる出口管に前記熱可溶化タンク内の気体を逃す圧力制御工程と、を備える。
【0009】
本発明によると、熱可溶化タンク内の圧力の測定値に基づいて、熱可溶化タンク内の気体(気相部ガス)が気体排出管を通じて熱可溶化タンク外に導出されるため、熱可溶化タンク内の圧力を一定に保つことができる。つまり、本発明によると、熱可溶化タンク内の気相中の飽和水蒸気圧を一定に保つことができるので、気相中の温度を飽和水蒸気圧に対応した温度に保つことができ、ひいては、熱可溶化処理にバラツキが生じ難くなる。また、気体排出管を通じて熱可溶化タンク外に導出された気体(排熱)は、熱可溶化タンクから排出された可溶化汚泥に供給されるため、可溶化汚泥を加熱することができ、ひいては、可溶化汚泥を消化処理する際のエネルギー消費量を削減することが可能となる。
【0010】
前記熱可溶化タンクから前記可溶化汚泥を排出するための出口管を備えている場合には、前記気体排出管を前記出口管に連通させることが好ましい。
このようにすると、可溶化汚泥を効率良く加熱することができる。
【0011】
可溶化装置は、前記熱可溶化タンク内の前記汚泥の液面高さに相関する物理量を測定する液位センサと、前記出口管を開閉する液位調設弁と、前記液位センサの測定値が目標値となるように前記液位調節弁の開度を調整する液位制御手段と、を備えることが好ましい。
このようにすると、可溶化タンク内の液位を一定に保つことができるので、熱可溶化処理にバラツキが生じ難くなる。
【0012】
本発明の有機性廃棄物の処理システムは、前記可溶化装置と、前記可溶化汚泥に対して消化処理を行う消化タンクとを備えるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、熱可溶化処理にバラツキが生じ難くなるとともに、可溶化汚泥を消化処理する際のエネルギー消費量を削減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】有機性廃棄物の処理システムの処理フロー図である。
図2】可溶化装置の断面図である。
図3】有機性廃棄物の処理システムの他の処理フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(処理システム1)
図1を参照して本発明に係る有機性廃棄物の処理システム1の構成を説明する。有機性廃棄物の処理システム1は、脱水汚泥W3を熱可溶化処理する可溶化装置2と、可溶化装置2で熱可溶化処理された可溶化汚泥W4を消化処理する消化槽3とを備えて構成されている。さらに、本実施形態の有機性廃棄物の処理システム1は、消化槽3で消化処理された有機性廃棄物(汚泥W2)を蓄える消化汚泥貯槽5、消化汚泥貯槽5から送り出された汚泥W2を脱水して脱水汚泥W3を生成する汚泥脱水機6、汚泥を移送する手段(脱水汚泥供給管路7、還流管路8、汚泥ポンプP等)を備えている。
【0016】
可溶化装置2は、脱水汚泥W3に対して前処理を行う混合ポット12と、混合ポット12から排出された処理汚泥W5に対して熱可溶化処理を行う熱可溶化タンク11と、熱可溶化タンク11および混合ポット12内の汚泥にスチームを供給するスチーム供給装置4と、タンク11内の気体を排出する気体排出管31と、気体排出管31を開閉する圧力調節弁31aと、を備えている。
図2に示すように、本実施形態の可溶化装置2は、熱可溶化タンク11内の圧力を測定する圧力センサ32と、圧力センサ32の測定値が目標値となるように圧力調節弁31aの開度を調節する圧力制御手段33と、熱可溶化タンク11から可溶化汚泥W4を排出する出口管24と、熱可溶化タンク11内の汚泥の液面高さに相関する物理量を測定する液位センサ34と、出口管24を開閉する液位調節弁24aと、液位センサ34の測定値が目標値となるように液位調節弁24aの開度を調整する液位制御手段35とを備えている。
【0017】
図1を参照して、有機性廃棄物の処理システム1の処理フローを説明する。先ず新たに処理する有機性廃棄物W1が消化槽3に投入される。有機性廃棄物W1としては、例えば下水汚泥や浄化槽汚泥等の有機性汚泥、食品廃棄物、生ごみ、畜産糞尿等である。消化槽3において、有機性廃棄物W1は、嫌気性のメタン発酵菌によりメタン発酵(消化処理)する。消化槽3の運転温度はメタン発酵菌の種類やダブリングタイム等を考慮して適宜に設定される。メタン発酵に伴い、消化槽3から主にCH、COからなる消化ガスGが発生し、その一部または全てがスチーム供給装置4の蒸気ボイラに送出される。スチーム供給装置4はこの消化ガスGを燃料として高温スチームを発生し、可溶化装置2の熱可溶化タンク11および混合ポット12に供給する。なお、蒸気ボイラに代えて消化ガスGを消化ガス発電機に供給して発電させ、消化ガス発電機(消化ガスエンジンと発電機から構成される)の排熱から回収した高温スチームを熱可溶化タンク11および混合ポット12に供給してもよい。
【0018】
消化槽3で消化処理された有機性廃棄物(汚泥W2)は、消化汚泥貯槽5に貯えられる。消化汚泥貯槽5で貯えられた汚泥W2の一部は、汚泥脱水機6に送出される。
汚泥脱水機6は、例えば遠心脱水機(デカンター)、スクリュー圧搾式脱水機、ベルトプレス脱水機等から構成される。汚泥脱水機6から排出される脱水ろ液は、図示しない水処理系に送られる。
汚泥脱水機6により脱水処理された脱水汚泥W3は、消化汚泥貯槽5から送出される汚泥W2の残部と合流したうえで、汚泥ポンプPにより脱水汚泥供給管路7を介して可溶化装置2に送出される。
可溶化装置2は、連続して投入される脱水汚泥W3を熱可溶化処理し、処理された可溶化汚泥W4は、還流管路8を介して消化槽3に戻される。
なお、消化汚泥貯槽5から汚泥W2の全量を汚泥脱水機6に送出する場合もあり得る。また、消化汚泥貯槽5を設けることなく、消化槽3から汚泥W2を汚泥脱水機6に直接送出する場合もあり得る。可溶化装置2内の汚泥の滞留時間は例えば10~60分程度である。
【0019】
(可溶化装置2)
次に図2を参照して、可溶化装置2の構成を詳細に説明する。
本実施形態の可溶化装置2では、脱水汚泥W3に対する前処理が混合ポット12において行われ、混合ポット12で処理された処理汚泥W5に対して熱可溶化タンク11において熱可溶化処理が行われる。
本実施形態のスチーム供給装置4は、熱可溶化タンク11内の汚泥にスチームを供給するとともに、混合ポット12内の脱水汚泥W3にスチームを供給する。
【0020】
混合ポット12は、脱水汚泥供給管路7の下流端に接続されている。混合ポット12は、脱水汚泥供給管路7の一部として配される略円筒状のポット本体14と、ポット本体14の周面からポット本体14の内部に挿入されるスチーム管15とを備えて構成されている。
【0021】
ポット本体14は、中央部が大径に形成され、上端寄りおよび下端寄りは緩やかに縮径して小径に形成されている。ポット本体14の一端側(下端側)のフランジ13は、脱水汚泥供給管路7のフランジとボルト締結されている。ポット本体14の下端側の開口径は、脱水汚泥供給管路7の管内径と略同寸法であり、上端側の開口径は後記する排出ノズル20の下端側の内径と略同寸法である。
スチーム管15は、本実施形態では2本配されており、互いがポット本体14の軸方向にずれて、ポット本体14の軸方向と直交する方向に延設するようにポット本体14の内部に挿入されている。スチーム管15の先端周りは、ポット本体14の内周面に凹設されたスチーム管支持部16に内嵌される。
【0022】
熱可溶化タンク11は、密閉された円筒形状の筒体である。熱可溶化タンク11内の気相部の設定圧力(目標値)は概ね0.2MPa~1.0MPa、好ましくは0.5MPa~0.8MPaであり、設定温度は120℃~180℃、好ましくは150℃~170℃である。
【0023】
熱可溶化タンク11の下端には、太径のドレン管18が熱可溶化タンク11と同軸に取り付けられており、このドレン管18の内部には排出ノズル20が同軸状に配置されている。
排出ノズル20は、下端が開口形成された管部材からなり、混合ポット12の上流端に接続されている。排出ノズル20の下端のフランジ21は、ポット本体14の上端側のフランジ22とボルト締結されている。排出ノズル20は、その上端周りが下端寄りの管径よりも若干大径に形成されており、熱可溶化タンク11の底部に配置される。排出ノズル20の上端部は、開口することなく塞がれている。そして、大径に形成された排出ノズル20の上端(排出端)周りには、小径のノズル孔23が周方向に等間隔で複数穿孔されている。つまり、複数のノズル孔23は、熱可溶化タンク11)の軸心O周りに等間隔で形成されている。ノズル孔23の孔径は、例えば15ミリメートル程度である。
【0024】
熱可溶化タンク11の周壁には、可溶化汚泥W4を外部に排出するための出口管24が取り付けられている。出口管24は、還流管路8の一部を構成している。出口管24には、出口管24を開閉する液位調節弁24aが取り付けられている。液位調節弁24aは、例えば空気作動式ボール弁である。
【0025】
熱可溶化タンク11の側面には、液位センサ34が取り付けられている。液位センサ34は、可溶化装置2内の汚泥の液面高さに相関する物理量を測定する。本実施形態の液位センサ34は、差圧式であり、熱可溶化タンク11内の気相部の圧力を計測するセンサと、熱可溶化タンク11内の液相部(汚泥)の圧力を計測するセンサを備えている。液位センサ34の計測結果は、液位制御手段35に出力される。
【0026】
液位制御手段35は、液位センサ34の測定値に応じて液位調節弁24aの開度を調節し、液面高さが目標値となるように調節を行う。液位制御手段35は、液位調節弁24aの駆動部に制御信号を送信する。
【0027】
熱可溶化タンク11の頂部には、気体排出管31と圧力センサ32が取り付けられている。気体排出管31の一端側は、熱可溶化タンク11の頂部に連通しており、気体排出管31の他端側は、出口管24に連通している。気体排出管31には、気体排出管31を開閉する圧力調節弁31aが取り付けられている。圧力調節弁31aは、例えば空気作動式調節弁である。
【0028】
圧力センサ32は、熱可溶化タンク11内の気相部の圧力を計測する。圧力センサ32の計測結果は、圧力制御手段33に出力される。
圧力制御手段33は、圧力センサ32の測定値が目標値となるように圧力調節弁31aの開度を調節する。つまり、熱可溶化タンク11内の気相部の圧力は、圧力制御手段33によって制御される。
圧力センサ32の測定値が目標値(設定圧力)となるように制御すると、熱可溶化タンク11内の気相中の飽和水蒸気圧を一定に保つことができるので、気相中の温度を飽和水蒸気圧に対応した温度に保つことができる。
【0029】
本実施形態のスチーム供給装置4は、混合ポット12およびスチーム管15とは別に、熱可溶化タンク11内に高温スチームS2を供給するスチーム噴射管25を備えている。スチーム噴射管25は、熱可溶化タンク11の底部寄りの周壁に取り付けられている。スチーム噴射管25には複数のスチーム噴射孔26が穿孔されている。スチーム噴射孔26の孔径は6ミリメートル程度である。
【0030】
(有機性廃棄物の処理方法)
次に、有機性廃棄物の処理方法について説明する。有機性廃棄物の処理方法では、供給工程と、測定工程と、制御工程と、を行う。
【0031】
供給工程は、スチーム供給装置4の蒸気ボイラで発生したスチームを可溶化装置2(熱可溶化タンク11および混合ポット12)内に熱源として供給する工程である。熱可溶化タンク11内が所定の圧力に達した後、可溶化装置2に脱水汚泥W3を投入し、所定温度範囲において、熱可溶化を開始する。
【0032】
スチーム供給装置4から供給される高温スチームS1,S2の温度は便宜的に略同温度に設定されている。仮に熱可溶化タンク11内の気相部の設定温度が160℃である場合、高温スチームS1,S2の温度はこれよりも若干高い175~180℃程度に設定される。これらの温度条件で発明者が試験した結果、1トンの脱水汚泥W3に対して高温スチームS1,S2を合計0.1~0.4トン/hr、より好ましくは0.15~0.35トン/hrで供給し、かつ混合ポット12への高温スチームS1の単位時間当たりの熱量を熱可溶化タンク11への高温スチームS2の単位時間当たりの熱量よりも多く、好ましくは「高温スチームS1:高温スチームS2=7:3」程度の割合に設定すると、効果的に汚泥を熱可溶化できることが確認できた。
【0033】
また、熱可溶化タンク11への高温スチームS1及びS2の供給量の合計は熱可溶化タンク11、気体排出管31aからの放熱及び排気を考慮して、供給する脱水汚泥W3の加温に必要な量より少し多めにすることが好ましい。具体的には、加温に必要な高温スチームの量を100質量%としたときの増分量は、3質量%~50質量%である。
【0034】
脱水汚泥供給管路7を搬送されてきた脱水汚泥W3は、混合ポット12においてスチーム管15のスチーム噴射孔17から噴射される高温スチームS1と直接混合されることにより、加熱されるとともにスチーム凝縮水分が付与されて粘度が下がる。なお、脱水汚泥供給管路7内の脱水汚泥W3の温度は、概ね25~35℃程度である。混合ポット12において粘度が下がった汚泥は、処理汚泥W5として排出ノズル20を介して熱可溶化タンク11に投入される。熱可溶化タンク11に投入された処理汚泥W5は、スチーム噴射管25のスチーム噴射孔26から噴射される高温スチームS2によって熱可溶化処理され、所定の滞留時間の後、出口管24から排出されて消化槽3に搬送される。
【0035】
測定工程は、圧力センサ32により、熱可溶化タンク11内の気相部の圧力を連続的に測定する工程である。圧力センサ32の測定値は、圧力制御手段33に送られる。
【0036】
制御工程は、測定工程において測定された熱可溶化タンク11内の気相部の圧力が目標値となるように圧力調節弁31aの開度を制御する工程である。熱可溶化タンク11内の圧力が目標値を超えた場合は、圧力調節弁31aの開度を大きくすることで、熱可溶化タンク11内の気体(水蒸気を含む気体)を気体排出管31を介して出口管24へと逃がす。熱可溶化タンク11内の圧力が目標値を下回った場合は、圧力調節弁31aの開度を小さく、あるいは全閉にすることで、熱可溶化タンク11内の圧力を高める。熱可溶化タンク11の気相部の圧力を目標値となるように制御することで、熱可溶化タンク11内の飽和水蒸気圧を所定の大きさに保つことができるので、熱可溶化タンク11内の気相部の温度を所定の温度設定範囲(例えば165±2℃)に保つことができる。
【0037】
以上説明した可溶化装置2によれば、熱可溶化タンク11内の気相部の圧力の測定値に基づいて、熱可溶化タンク11内の気体(水蒸気を含む気体)が気体排出管31を通じて熱可溶化タンク11外に導出されるため、熱可溶化タンク11内の圧力を一定に保つことができる。また、気体排出管31を通じて熱可溶化タンク11外に導出された気体(排熱)は、熱可溶化タンク11から排出された可溶化汚泥W4に供給されるため、可溶化汚泥W4を加熱することができ、ひいては、消化槽3を加温するためのエネルギー消費量を削減することができる。
【0038】
また、本実施形態では、熱可溶化タンク11の気体(排熱)を出口管24内の可溶化汚泥W4へ供給するため、熱の損失が少なく、可溶化汚泥W4を効率良く加熱することができる。つまり、可溶化汚泥W4を消化槽3の加熱源とすることができる。
【0039】
また、可溶化装置2は、液位調節弁24aの開度を調整することにより熱可溶化タンク11内の液位を一定に保つことができるので、熱可溶化処理にバラツキが生じ難くなる。
【0040】
(変形例)
図3に有機性廃棄物の処理システム1の処理フローの変形例を示す。この処理フローでは、新たに処理する有機性廃棄物W1を先ず汚泥脱水機6で脱水処理する。脱水汚泥W3は、脱水汚泥供給管路7を介して可溶化装置2に送出される。可溶化装置2で熱可溶化処理された可溶化汚泥W4はフラッシュタンク9、冷却器10を介して消化槽3に連続的に送出される。
可溶化汚泥W4は、消化槽3においてメタン発酵し、消化ガスGがスチーム供給装置4に送出される。消化汚泥は、外部に回収されるか或いは可溶化装置2に戻される。スチーム供給装置4は、消化ガスGを燃料として高温スチームを発生し、可溶化装置2に供給する。
【0041】
以上発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨に反しない範囲において適宜設計変更が可能である。例えば、気体排出管31を消化槽3に連通させて熱可溶化タンク11内のガスを消化槽3に逃すように構成してもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 処理システム
2 可溶化装置
3 消化槽
4 スチーム供給装置
7 脱水汚泥供給管路
11 熱可溶化タンク
12 混合ポット
24 出口管
31 気体排出管
32 圧力センサ
33 圧力制御手段
34 液位センサ
35 液位制御手段
S1,S2 高温スチーム
W1 有機性廃棄物
W3 脱水汚泥
W4 可溶化汚泥
W5 処理汚泥
【要約】
本発明は、汚泥に対して熱可溶化処理を行う熱可溶化タンク(11)と、熱可溶化タンク(11)内の汚泥にスチームを供給するスチーム供給装置(4)と、熱可溶化タンク(11)から排出された可溶化汚泥(W4)に熱可溶化タンク(11)内の気体を排出する気体排出管(31)と、熱可溶化タンク(11)内の圧力を測定する圧力センサ(32)と、気体排出管(31)を開閉する圧力調節弁(31a)と、圧力センサ(32)の測定値が目標値となるように圧力調節弁(31a)の開度を調節する圧力制御手段(33)と、を備えることを特徴とする。
図1
図2
図3