(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】移動体を用いた電力供給システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/38 20060101AFI20240823BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20240823BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240823BHJP
H02J 3/24 20060101ALI20240823BHJP
H02J 1/00 20060101ALI20240823BHJP
H02J 7/34 20060101ALI20240823BHJP
H02J 9/06 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
H02J3/38 110
H02J3/32
H02J3/38 130
H02J7/00 P
H02J3/24
H02J1/00 304G
H02J1/00 304H
H02J3/38 180
H02J7/34 G
H02J9/06 120
(21)【出願番号】P 2020142348
(22)【出願日】2020-08-26
【審査請求日】2023-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】柏原 弘典
(72)【発明者】
【氏名】河▲崎▼ 吉則
(72)【発明者】
【氏名】西村 荘治
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-187107(JP,A)
【文献】特許第6338131(JP,B1)
【文献】特開2017-050230(JP,A)
【文献】特開2019-146331(JP,A)
【文献】特開2018-027010(JP,A)
【文献】特開2013-094026(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/38
H02J 3/32
H02J 7/00
H02J 3/24
H02J 1/00
H02J 7/34
H02J 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統から給電される負荷を有する需要家設備に分散型電源が搭載された移動体を導入し、前記分散型電源を用いてピークカット動作及び電圧補償動作を行う移動体を用いた電力供給システムであって、
前記移動体が、
前記需要家設備において前記電力系統側に一端が接続され、前記負荷側に他端が接続される電力線と、
前記電力線に接続された分散型電源と、
前記電力線において前記分散型電源よりも前記電力系統側に設けられ、前記電力線を開閉する機械式スイッチと、
前記電力線において前記機械式スイッチに並列接続されたコンデンサとを備え、
前記コンデンサは、その静電容量Cが以下の(1)式を満足するものである移動体を用いた電力供給システム。
C×(V/T)>i
SW (1)
ここで、Vは前記電力系統の定格電圧、Tは前記機械式スイッチの開放を開始してから、当該機械式スイッチの両端電圧の変化量が安定するまでの時間である過渡時間、i
SWは前記機械式スイッチの
開放を開始した時点で前記機械式スイッチに
流れている電流である。
【請求項2】
前記需要家設備が、前記電力系統と前記負荷とを遮断する遮断器を有するとともに、前記移動体の電力線が接続される接続ユニットを有しており、
前記移動体の電力線は、前記接続ユニットにおいて、前記遮断器よりも前記電力系統側に前記一端が接続され、前記遮断器よりも前記負荷側に前記他端が接続される請求項1に記載の移動体を用いた電力供給システム。
【請求項3】
前記ピークカット動作を行う場合に、前記分散型電源と前記電力系統とが前記機械式スイッチを介して接続された状態で前記分散型電源を運転させ、
前記補償動作を行う場合に、前記機械式スイッチを開放するとともに、前記分散型電源から前記負荷への電力の供給を開始する請求項1又は2に記載の移動体を用いた電力供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体を用いた電力供給システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示すように、発電機が搭載された移動電源車を用いて停電時の電力供給を行うものが考えられている。この移動電源車は、停電発生時の停電区間の配電線に接続されるとともに、発電機を運転して復旧までのバックアップを行う。
【0003】
また、特許文献2に示すように、電気自動車を用いてピークカットを行う負荷平準化システムが考えられている。このシステムは、再生可能エネルギーの余剰電力や夜間の安価な電気を電気自動車のバッテリーに充電し、需要の増える昼間に放電することで、ピークカットによる負荷平準化を実行する。
【0004】
しかしながら、特許文献1の移動電源車は、停電発生後にブラックアウトスタート(BOS)で発電機を起動して電力を供給するものであり、瞬時電圧低下時や停電発生時の無瞬断でのバックアップには対応していない。また、特許文献2の負荷平準化システムでは、負荷に対する瞬時電圧低下や停電に対応することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-231579号公報
【文献】特開2007-282383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、本願発明者は、分散型電源が搭載された移動体を用いて、電力系統の電圧異常を補償する電圧補償動作及び電力系統に対する需要家設備の消費電力を抑制するピークカット動作を行う電力供給システムを考えている。この移動体を用いた電力供給システムでは、各動作の始動を高速で行いつつも、できるだけコストの増大を抑えることが望まれている。
【0007】
そこで本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、需要家設備に移動体を導入して電圧補償動作及びピークカット動作を行う電力供給システムを安価で提供することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明に係る移動体を用いた電力供給システムは、電力系統から給電される負荷を有する需要家設備に分散型電源が搭載された移動体を導入し、前記分散型電源を用いてピークカット動作及び電圧補償動作を行うものであって、前記移動体が、前記需要家設備において前記電力系統側に一端が接続され、前記負荷側に他端が接続される電力線と、前記電力線に接続された分散型電源と、前記電力線において前記分散型電源よりも前記電力系統側に設けられ、前記電力線を開閉する機械式スイッチと、前記電力線において前記機械式スイッチに並列接続されたコンデンサとを備え、前記コンデンサは、その静電容量Cが以下の(1)式を満足するものであることを特徴とする。
C×(V/T)>iSW (1)
ここで、Vは前記電力系統の定格電圧、Tは前記機械式スイッチの開放を開始してから、当該機械式スイッチの両端電圧の変化量が安定するまでの時間である過渡時間、iSWは前記機械式スイッチの開放時に前記機械式スイッチに流れる遮断電流である。
【0009】
このような本発明であれば、例えば需要家設備の受電電圧がデマンド規制値に到達した場合には、移動体の分散型電源を動作させることで、瞬時にピークカット動作を開始することができる。
また、例えば電力系統において瞬時電圧低下などの系統異常が生じた場合には、機械式スイッチを開放するとともに、移動体の分散型電源から負荷への電力の供給を開始することで、電圧補償動作を瞬時に開始することができる。この時、電力系統と分散型電源とは、機械式スイッチに並列接続されたコンデンサを介して接続された状態となり、電力系統からの電流はコンデンサによって限流されるため、潮流は殆ど発生しない。
ここで、機械式スイッチに並列接続されたコンデンサは、そのインピーダンスが機械式スイッチのアーク抵抗よりも小さくなるようにしているので、機械式スイッチの開放時に、アークを生じさせることなくコンデンサに転流及び限流させることができる。そのため、電力系統の異常が検出された場合には、機械式スイッチをゼロ点関係なく高速に遮断することができ、高圧・特別高圧のような高電圧環境下でも、高価な半導体スイッチを用いることなく、安価な機械式スイッチを遮断器として使用することができる。
これにより、需要家設備に移動体を導入して電圧補償動作及びピークカット動作を行う電力供給システムを安価で提供することができる。
【0010】
前記移動体を用いた電力供給システムの具体的態様としては、前記需要家設備が、前記電力系統と前記負荷とを遮断する遮断器を有するとともに、前記移動体の電力線が接続される接続ユニットを有しており、前記移動体の電力線は、前記接続ユニットにおいて、前記遮断器よりも前記電力系統側に前記一端が接続され、前記遮断器よりも前記負荷側に前記他端が接続されるものを挙げることができる。
【0011】
前記移動体を用いた電力供給システムの動作の具体的態様としては、前記ピークカット動作を行う場合に、前記分散型電源と前記電力系統とが前記機械式スイッチを介して接続された状態で前記分散型電源を運転させ、前記補償動作を行う場合に、前記機械式スイッチを開放するとともに、前記分散型電源から前記負荷への電力の供給を開始するものが挙げられる。
【発明の効果】
【0012】
このように構成した本発明によれば、需要家設備に移動体を導入して電圧補償動作及びピークカット動作を行う電力供給システムを安価で提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態に係る移動体を用いた電力供給システムの構成を示す模式図である。
【
図2】同実施形態における移動体の構成を示す模式図である。
【
図3】転流回路がない場合における電流遮断時の動作波形の一例を示すグラフである。
【
図4】同実施形態における移動体に搭載された分散型電源の動作内容を示す図である。
【
図5】他の実施形態における移動体の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る移動体を用いた電力供給システムの一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0015】
本実施形態の移動体を用いた電力供給システム100は、
図1に示すように、電力系統10から給電される負荷20を有する需要家設備30に、分散型電源1が搭載された移動体40を導入し、この分散型電源1を用いて、電力系統10に対する需要家設備30の消費電力を抑制するピークカット動作及び電力系統10の電圧異常を補償する電圧補償動作を行うものである。
【0016】
需要家設備30には、移動体40に搭載された分散型電源1が接続される接続ユニット50が設けられている。この接続ユニット50は、一端が電力系統10側に接続されるとともに他端が負荷20側に接続される需要家側電力線L1を有しており、当該需要家側電力線L1には、電力系統10と負荷20とを遮断するために遮断器50aが設けられている。なお移動体40の分散型電源1が接続ユニット50に接続されている間、遮断器50aは開放している。
【0017】
移動体40は、コンテナ40aを備えた、例えば貨物自動車(トラック)等の自動車である。具体的に移動体40は、
図2に示すように、需要家側電力線L1に接続される電力線L2と、分散型電源1と、電力線L2を開閉する開閉スイッチ2と、開閉スイッチ2に並列接続された転流回路3と、開閉スイッチ2よりも電力系統10側に設けられた解列スイッチ5と、開閉スイッチ2よりも電力系統10側の電圧を検出する系統側電圧検出部6と、系統側電圧検出部6の検出電圧により電力系統10の電圧異常を検出する系統異常検出部7と、分散型電源1による給電を制御する制御部8とを備えている。
【0018】
電力線L2は、電力系統10と負荷20との間を接続するものであり、需要家側電力線L1において、その一端が遮断器50aよりも電力系統10側に接続され、その他端が遮断器50aよりも負荷20側に接続されるように構成されている。この電力線L2は、端部に設けられたパンタグラフ等を介して需要家側電力線L1に着脱可能に接続される。
【0019】
分散型電源1は、電力線L2に接続されている。この分散型電源1は、電力系統10に連系されるものであり、例えば太陽光発電や燃料電池などの直流発電設備11、二次電池(蓄電池)等の電力貯蔵装置(蓄電デバイス)12、風力発電やマイクロガスタービンなどの交流で出力された電気エネルギーを直流に整流したうえで、電力変換装置を用いて系統連系をされる発電設備(不図示)、又は同期発電機や誘導発電機等の交流発電設備13である。直流発電設備11及び電力貯蔵装置(蓄電デバイス)12は、AC/DC変換器14を介して電力線L2に接続されている。なお、移動体40は、少なくとも電力貯蔵装置12を備えており、その他上記何れかの分散型電源1を有するものであってもよい。また、移動体40が電気自動車(EV)又はプラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車の場合には、それらに搭載された蓄電池を分散型電源1として用いてもよい。
【0020】
開閉スイッチ2は、電力系統10と分散型電源1及び負荷20とを接続するものであり、電力線L2において分散型電源1の接続点よりも電力系統10側に設けられている。この開閉スイッチ2は、具体的には機械式スイッチ(以下、機械式スイッチ2ともいう)である。この機械式スイッチ2は、制御部8から送信される信号に応じて、所定の開極時間で開閉駆動されるように構成されている。
【0021】
転流回路3は、機械式スイッチ2を開放した際に電流が流れ込む(転流)ように構成され、これを限流させるものである。具体的にこの転流回路3は、機械式スイッチ2に対して並列接続され、互いに直列接続されているコンデンサ31と抵抗素子32とを備える。コンデンサ31は、具体的には例えばフィルムコンデンサ等である。
【0022】
コンデンサ31は、機械式スイッチ2を開放した際に、機械式スイッチ2に流れる電流を、アークを生じさせることなく瞬時に転流回路3に転流させ、機械式スイッチ2をゼロ点関係なく高速に遮断できるようにその静電容量Cが定められている。
【0023】
ここで、移動体40が転流回路3を備えておらず、機械式スイッチ2を開放してアークが発生した場合の動作波形の一例を
図3に示す。本実施形態の電力供給システム100において、機械式スイッチ2を開放時にアークを生じさせることなく転流回路3に電流を転流させるには、転流回路3の抵抗が
図3に示すアーク抵抗R
arkの最小値(遮断電流i
swが最大時)よりも小さくなるように、抵抗32を決定する必要がある。
【0024】
本実施形態のコンデンサ31をより具体的に説明すると、電力系統10の定格電圧をV、機械式スイッチ2の開放(又は開極)を開始してから、当該機械式スイッチ2の両端電圧の変化量が安定するまでの時間(過渡時間ともいう)をT、機械式スイッチ2の開放時に流れる遮断電流(最大時)をiSWとして、以下の(1)式を満たすようにコンデンサ31を構成している。また各パラメータの誤差を考慮すると、余裕をもって(1)’式を満たすようにコンデンサ31を構成するのが好ましい。
C×(V/T)>iSW (1)
C×(V/T)>1.3×iSW (1)’
【0025】
上記(1)式の意味を説明する。コンデンサ31に流れる電流をic、コンデンサ31に印加される電位差をdv/dtとすると、当該電流icは下記(2)式で表すことができる。
ic=C×(dv/dt) (2)
機械式スイッチ2が閉じた状態では、電流はその殆どが低インピーダンスである機械式スイッチ2を介して流れるため、ic≒0となり、すなわちコンデンサ31に印加される電位差dv/dt≒0、となっている。機械式スイッチ2を開放した瞬間、機械式スイッチ2の端子間の電圧変化によって、コンデンサ31に流れる電流icが大きくなる。このとき、アークを生じさせさせることなく転流回路3への転流を完了できると仮定すれば、機械式スイッチ2を開放した瞬間にスイッチの端子間が回路の定格電圧まで上昇するといえる。従ってこの場合、(2)式のdv/dtは、“定格電圧V/スイッチの過渡時間T”となり、コンデンサ31に流れる電流icは、(3)式となる。
ic=C×(V/T) (3)
【0026】
(3)式から、過渡時間Tがより長い場合でもコンデンサ31に流れる電流icを維持するためには、(過渡時間Tの長さに比例した)より大きなCが必要であることがわかる。(3)式において、このことを「右辺の過渡時間Tの値を変えずに計算して算出される左辺のコンデンサ31に流れる電流ic」と機械式スイッチ2の遮断電流iSWとの関係で述べると、以下となる。機械式スイッチ2を開放時に、アークを生じさせることなく遮断電流を転流回路3に転流させるためには、コンデンサ31に流れる電流icと、機械式スイッチ2の遮断電流iSWとが以下の(4)式を満たすようにする必要がある。
ic>iSW (4)
当該(4)式に上記(2)式を当てはめることにより、上記(1)式が導かれる。
【0027】
解列スイッチ5は、電力線L2において分散型電源1よりも(ここでは機械式スイッチ2よりも)電力系統10側に設けられており、例えば機械式スイッチである。この解列スイッチ5は制御部8により開閉制御される。
【0028】
系統側電圧検出部6は、電力線L2において機械式スイッチ2よりも電力系統10側の電圧を、計器用変圧器を介して常時検出するものである。具体的に系統側電圧検出部6は、機械式スイッチ2及び転流回路3からなる並列回路よりも電力系統10側に計器用変圧器を介して接続されている。系統側電圧検出部6は、検出した電圧を系統異常検出部7に入力する。
【0029】
系統異常検出部7は、系統側電圧検出部6により検出された検出電圧と、予め定められた整定値とを比較して、前記検出電圧が整定値以下である場合に、瞬時電圧低下を検出する。また系統異常検出部7は、系統側電圧検出部6により検出された検出電圧から周波数変動(周波数上昇(OF)、周波数低下(UF))を検出する。なお、この周波数変動は、例えばステップ上昇や、ランプ上昇・下降である。その他、系統異常検出部7は、瞬時電圧低下、周波数変動及び停電に加えて、電圧上昇、位相変動、電圧不平衡、高調波異常又はフリッカの少なくとも1つを検出してもよい。
【0030】
移動体40はまた、分散型電源1が出力した直流電力及び交流電力を外部から取り出すための、直流用コンセント91と交流用コンセント92とを備えている。直流用コンセント91及び交流用コンセント92は、コンテナ40aに設けられており、電力線L2に接続されている。
【0031】
制御部8は、移動体が備える各機器の運転/停止、開放/閉止等を制御するものである。この制御部8は、系統異常検出部7からの信号に応じて、(1)正常時モード、(2)ピークカットモード、(3)電圧補償モードの複数の制御モードを取るように構成されている。以下に、各制御モードの一例について
図4を参照して説明する。
【0032】
(1)正常時モード
系統異常検出部7により系統異常が検出されていない場合(すなわち電力系統10の正常時)、制御部8は機械式スイッチ2及び解列スイッチ5を閉じている。この場合、電力系統10は、機械式スイッチ2を介して負荷20に交流電力を供給する。転流回路3は機械式スイッチ2に並列接続されているが、機械式スイッチ2のインピーダンスは転流回路3のインピーダンスよりも小さいため、電力系統10と負荷20とは、機械式スイッチ2側で電力をやり取りする。またこの正常時モードでは、電力貯蔵装置12に充電を行う。
【0033】
(2)ピークカットモード
制御部8は、図示しない電力量計等から需要家設備30の受電電力を取得する。そして、その受電電圧がデマンド規制値に到達した場合に、制御部8は、機械式スイッチ2及び解列スイッチ5を閉じた状態で発電機13を起動させる。ここで制御部8は、発電機13の出力電圧が安定するまでは、電力貯蔵装置12を放電させることによって負荷20に電力を供給する。そして、制御部8は、発電機13の出力電圧が安定した後は、電力貯蔵装置12に代えて発電機13からの電力を負荷20に供給する。その後、制御部8は、受電電圧がデマンド規制値を下回った場合に、発電機13を停止する。
【0034】
(3)電圧補償モード
系統異常検出部7により瞬時電圧低下等の系統異常が検出された場合、制御部8は、機械式スイッチ2を開放させるとともに、分散型電源1から負荷20への電力の供給を開始する。この時、電力系統10と分散型電源1とは転流回路3を介して接続された状態となるが、電力系統10から分散型電源1に流れる電流は転流回路3のコンデンサ31によって限流されるため、潮流は殆ど発生しない。この状態で制御部8は解列スイッチ5を開放し、電力系統10と負荷20とを完全に遮断する。ここで制御部8は、発電機13の出力電圧が安定するまでは、電力貯蔵装置12を放電させることによって負荷20に電力を供給する。そして、制御部8は、発電機13の出力電圧が安定した後は、電力貯蔵装置12に代えて発電機13からの電力を負荷に供給する。その後、制御部8は、電力系統10が復電した場合に、発電機13を停止させるとともに電力貯蔵装置12を放電させた後に機械式スイッチ2を閉じる。
【0035】
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態の移動体を用いた電力供給システム100によれば、需要家設備30の受電電圧がデマンド規制値に到達した場合には、移動体40の分散型電源1を動作させることで、瞬時にピークカット動作を開始することができる。一方、電力系統10において瞬時電圧低下などの系統異常が生じた場合には、機械式スイッチ2を開放するとともに、移動体40の分散型電源から負荷20への電力の供給を開始することで、電圧補償動作を瞬時に開始することができる。この時、電力系統10と分散型電源1とは、機械式スイッチ2に並列接続されたコンデンサ31を介して接続された状態となり、電力系統10からの電流はコンデンサ31によって限流されるため、潮流は殆ど発生しない。
ここで、機械式スイッチ2に並列接続されたコンデンサ31は、転流回路3のインピーダンスが機械式スイッチ2のアーク抵抗よりも小さくなるようにしているので、機械式スイッチ2の開放時に、アークを生じさせることなく転流回路3に電流を転流及び限流させることができる。そのため、電力系統10の異常が検出された場合には、機械式スイッチ2をゼロ点関係なく高速に遮断することができ、高圧・特別高圧のような高電圧環境下でも、高価な半導体スイッチを用いることなく、安価な機械式スイッチ2を遮断器として使用することができる。
これにより、需要家設備30に移動体40を導入して電圧補償動作及びピークカット動作を行う電力供給システム100を安価で提供することができる。
【0036】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0037】
例えば、転流回路3は、直列接続されたコンデンサ31と抵抗素子32の両方を含んでいなくてもよく、コンデンサ31のみを含んでいてもよい。
【0038】
他の実施形態の電力供給システム100は、
図5に示すように、機械式スイッチ2及び転流回路3に対して並列接続された自己放電回路4を備えてもよい。このようにすれば、機械式スイッチ2と転流回路3により限流遮断した後、転流回路3のコンデンサ31に残留する電荷を、自己放電回路4により放電することができる。自己放電回路4は、例えば、機械式スイッチ2及び転流回路3に対して並列接続され、互いに直列接続された抵抗素子41及び開閉スイッチ42等が挙げられる。この場合、自己放電回路4に含まれる開閉スイッチ42は、機械式スイッチ2が開放している状態でのみ投入するようにする。自己放電回路4は、開閉スイッチ42を含まなくてもよいが、その場合、自己放電回路4の抵抗値は、少なくとも機械式スイッチ2の通電抵抗よりも大きい値となるように構成する。
【0039】
解列スイッチ5は、電力線L2において機械式スイッチ2よりも電力系統10側に設けられていたが、これに限らず、機械式スイッチ2よりも分散型電源1側に設けられてもよく、その両方に設けられていてもよい。
【0040】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0041】
100・・・移動体を用いた電力供給システム
10 ・・・電力系統
20 ・・・負荷
30 ・・・需要家設備
40 ・・・移動体
L2 ・・・電力線
1 ・・・分散型電源
2 ・・・機械式スイッチ
31 ・・・コンデンサ