(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 1/14 20060101AFI20240823BHJP
H02K 16/02 20060101ALI20240823BHJP
H02K 3/34 20060101ALI20240823BHJP
H02K 1/17 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
H02K1/14 Z
H02K16/02
H02K3/34 B
H02K1/17
(21)【出願番号】P 2020051378
(22)【出願日】2020-03-23
【審査請求日】2022-12-05
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】米田 博
(72)【発明者】
【氏名】宇賀治 元
(72)【発明者】
【氏名】国友 浩勝
(72)【発明者】
【氏名】藤崎 勉
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-163431(JP,A)
【文献】特開2016-082624(JP,A)
【文献】特開2003-180044(JP,A)
【文献】特開2015-139243(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/14
H02K 16/02
H02K 3/34
H02K 1/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のティースを有するステータと、
前記ステータに対向するロータと、を備え、
前記ステータは、
前記複数のティースの各々に巻回されたコイルと、
隣り合う2つの前記ティースの間のスロット開口部に位置する磁石と、を有し、
前記複数のティースの各々は、前記コイルを保持するコイル保持部よりも当該ティースの先端側に位置し、且つ、前記磁石を保持する磁石保持部を有し、
前記ティースにおける前記コイル保持部より前記ティースの先端側に位置する部分の最大幅は、前記コイル保持部の最大幅以下であり、
前記コイル保持部と前記ティースの先端側に位置する部分との境界部分には、段差部が形成され
、
前記ティースの先端部の内周側の先端に、前記先端から前記ステータの周方向の両側の各々に突出する一対の突起が設けられ、前記一対の突起の間隔は、前記コイル保持部の最大幅よりも狭くなっている、
回転電機。
【請求項2】
前記複数のティースの各々は、当該ティースの一部として前記コイル保持部を有し、
前記ステータは、さらに、前記複数のティースの各々における前記コイル保持部に装着された絶縁枠を有し、
前記コイルは、前記絶縁枠に巻回されることで前記絶縁枠を介して前記ティースに巻回されている、
請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記ステータは、さらに、前記コイル保持部として前記複数のティースの各々に装着された絶縁枠を有し、
前記コイルは、前記絶縁枠に挿入されることで前記絶縁枠を介して前記ティースに巻回されている、
請求項1に記載の回転電機。
【請求項4】
前記ロータの回転軸の軸心の方向から見たときに、前記磁石は、4辺を有する略矩形であり、
前記磁石保持部は、前記磁石の前記4辺を構成する4つの平面のうちの一つの平面と接する磁石接触面を有する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項5】
前記複数のティースの各々において、
前記磁石接触面は、前記磁石保持部の幅方向の両側面に一対で設けられており、
前記一対の磁石接触面の最大幅は、前記コイル保持部の最大幅以下である、
請求項4に記載の回転電機。
【請求項6】
前記磁石は、隣り合う2つの前記ティースに跨って配置されている、
請求項1~5のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項7】
前記ロータは、前記ステータの起磁力により回転する第1ロータと、前記第1ロータよりも低速で回転する第2ロータとを有し、
前記第1ロータ、前記第2ロータ及び前記ステータは、同軸で配置されている、
請求項1~6のいずれか1項に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
モータ等の回転電機は、家電製品をはじめとして自動車及びロボット等の様々な製品に用いられている。回転電機として、磁気ギアードモータが知られている。
【0003】
磁気ギアードモータは、高調波磁束を用いた磁気減速機機構(磁気ギア)が内蔵された回転電機であり、高速ロータ、低速ロータ及びステータを有する(例えば、特許文献1)。磁気ギアードモータでは、ステータのコイルの起磁力で高速ロータを回転させることで、出力軸を有する低速ロータを所定のギア比にしたがって回転させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
磁気ギアードモータ等の回転電機におけるステータは、例えば、複数のティースが設けられたステータコアと、複数のティースの各々に巻回されたコイルとを備える。このようなステータに対して、さらにティースに磁石を配置する場合がある。
【0006】
この場合、ティースに磁石を固定するために、各ティースにはステータの周方向に突出する凸部を設けることになる。このような凸部を有するティースにコイルを巻回する場合は、インサート巻きによってコイルをティースに巻回することになる。このため、コイルを高密度に巻回することができなくなり、コイルの線占積率が低くなる。この結果、回転電機の性能が低下する。
【0007】
そこで、ステータコアをティースごとに複数に分割した分割コアを用いることで、コイルの線占積率を高くすることが考えられる。つまり、分割コアのティースに予めコイルを高密度に巻回しておいて、高密度にコイルが巻回された分割コアを連結してステータを組み立てることで、コイルの線占積率を高くすることが考えられる。
【0008】
しかしながら、分割コアを用いた場合は、複数の分割コアを精度よく組み合わせることが難しく、結局、回転電機としての性能が低下してしまう。しかも、分割コアを用いた場合はティースに磁石を保持させることが難しく、磁石を有するステータに対して分割コアを採用することは難しい。
【0009】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであり、ステータのティースに磁石を配置する場合であっても、ティースに巻回されたコイルの線占積率を高くすることができる回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本開示に係る回転電機の一態様は、複数のティースを有するステータと、前記ステータに対向するロータと、を備え、前記ステータは、前記複数のティースの各々に巻回されたコイルと、隣り合う2つの前記ティースの間のスロット開口部に位置する磁石と、を有し、前記複数のティースの各々は、前記コイルを保持するコイル保持部よりも当該ティースの先端側に位置し、且つ、前記磁石を保持する磁石保持部を有し、前記ティースにおける前記コイル保持部より前記ティースの先端側に位置する部分の最大幅は、前記コイル保持部の最大幅以下である。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、ステータのティースに磁石が配置されているにもかかわらず、ティースに巻回されたコイルの線占積率を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2A】実施の形態に係る回転電機におけるステータの部分拡大図である。
【
図2B】実施の形態に係る回転電機のステータにおいて、ステータコアとコイルと絶縁枠との構成を示す図である。
【
図3A】比較例の回転電機におけるステータの部分拡大図である。
【
図3B】比較例のステータにおけるステータコアとコイルと絶縁枠との構成を示す図である。
【
図4】実施の形態に係る回転電機において、コイルが巻回された絶縁枠をティースに挿入する様子を説明するための図である。
【
図5】変形例1に係る回転電機のステータにおいて、ステータコアとコイルと絶縁枠との構成を示す図である。
【
図6】変形例2に係る回転電機のステータにおいて、ステータコアとコイルと絶縁枠との構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施の形態について説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される、数値、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態等は、一例であって本開示を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本開示の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0014】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。なお、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0015】
(実施の形態)
まず、実施の形態に係る回転電機1の構成について、
図1を用いて説明する。
図1は、実施の形態に係る回転電機1の断面図である。
図1は、回転軸300の軸心と直交する平面で切断したときの断面を示している。
【0016】
図1に示すように、回転電機1は、モータであり、ステータ100と、ステータ100に対向するロータ200とを備える。
【0017】
本実施の形態における回転電機1は、磁気ギアードモータであり、ロータ200は、ステータ100の起磁力により回転する第1ロータ210と、第1ロータ210とは異なる速度で回転する第2ロータ220とを有する。具体的には、第1ロータ210は、第2ロータ220よりも高速で回転する高速ロータであり、第2ロータ220は、第1ロータ210よりも低速で回転する低速ロータである。
【0018】
なお、ロータ200の中心には、回転軸300が配置されている。具体的には、回転軸300は、第1ロータ210の中心に固定されている。回転軸300は、ロータ200が回転する際の中心となるシャフトである。一例として、回転軸300は、金属棒である。
【0019】
ステータ100は、第1ロータ210及び第2ロータ220の各々と対向している。本実施の形態において、ステータ100と第2ロータ220と第1ロータ210とは、この順で径方向外側から径方向内側に向かって配置されている。したがって、ステータ100は、第2ロータ220とは直接対向しており、第1ロータ210とは第2ロータ220を介して対向している。なお、ステータ100と第2ロータ220と第1ロータ210とは、互いに微小なエアギャップを介して同軸で配置されている。
【0020】
ステータ100は、ロータ200に作用する起磁力を発生させる。本実施の形態において、ステータ100は、第1ロータ210に作用する起磁力を発生させる。ステータ100は、ロータ200とともに磁気回路を構成している。ステータ100は、ロータ200に対面するエアギャップ面にN極とS極とが周方向に交互に表れるように構成されている。なお、ステータ100の詳細な構造については、後述する。
【0021】
ロータ200における第1ロータ210は、周方向に配置された複数の磁極対211を有する。また、第1ロータ210は、磁性材料によって構成された円筒状のロータコア212を有しており、複数の磁極対211は、ロータコア212に設けられている。ロータコア212は、例えば複数枚の電磁鋼板を積層することで構成されている。
【0022】
複数の磁極対211の各々は、ロータコア212の周方向に沿ってN極とS極とが交互に均等に存在するように構成された永久磁石である。複数の磁極対211(永久磁石)は、ロータコア212の外周面全体を覆うように周方向に連続して配置されている。また、複数の磁極対211は、第1ロータ210の中心軸を中心として放射状に配置されている。
【0023】
複数の磁極対211は、第2ロータ220に対向している。したがって、磁極対211を構成する永久磁石の表面は、エアギャップ面になっている。なお、本実施の形態において、複数の磁極対211の極対数は5である。したがって、第1ロータ210の極数は、10である。
【0024】
また、ロータ200における第2ロータ220は、周方向に配置された複数の磁極片221(ポールピース)を有する。複数の磁極片221は、磁性材料によって構成された磁束集中手段である。また、第2ロータ220は、非磁性材料によって構成された円環状のホルダ222を有しており、複数の磁極片221は、ホルダ222に保持されている。複数の磁極片221は、ホルダ222の周方向に沿って等間隔で配置されている。また、複数の磁極片221は、第2ロータ220の中心軸を中心として放射状に配置されている。本実施の形態において、第2ロータ220は、41個の磁極片221を有する。したがって、第2ロータ220の極対数は、41である。
【0025】
複数の磁極片221は、第1ロータ210の磁極対211と対向している。また、複数の磁極片221は、ステータ100のティース11及び複数の磁石30と対向している。複数の磁極片221の表面は、エアギャップ面になっている。具体的には、各磁極片221において、第1ロータ210側の面とステータ100側の面とは、エアギャップ面になっている。
【0026】
なお、第2ロータ220は、複数の磁極片221の各々がステータ100に向かって突出するように構成された歯車状の磁性体であってもよい。この場合、歯車状の電磁鋼板を積層することで、第2ロータ220を作製することができる。
【0027】
次に、ステータ100の詳細な構造について、
図1を参照しつつ、
図2A及び
図2Bを用いて説明する。
図2Aは、実施の形態に係る回転電機1におけるステータ100の部分拡大図であり、
図1の破線で囲まれる領域IIAを拡大した図である。
図2Bは、同ステータ100におけるステータコア10とコイル20と絶縁枠40との構成を示す図である。
【0028】
図1に示すように、ステータ100は、電機子であり、複数のティース11及びヨーク12を有するステータコア10と、複数のティース11の各々に巻回されたコイル20とを有する。ステータ100は、さらに、ステータコア10のティース11に保持された磁石30と、ステータコア10のティース11に装着された絶縁枠40とを有する。
【0029】
ステータコア10は、複数の鋼板が回転軸300の軸心の方向に積層された積層体である。ステータコア10を構成する鋼板は、例えば打ち抜き電磁鋼板である。本実施の形態において、ステータコア10は、回転軸300の軸心を中心とする円の周方向に分割されていない。つまり、ステータコア10は、複数の分割コアによって構成されていない。なお、ステータコア10は、複数の鋼板の積層体に限るものではなく、磁性材料によって構成されたバルク体であってもよい。
【0030】
ステータコア10に設けられた複数のティース11は、回転軸300の軸心を中心とする円の周方向に沿って等間隔に配置されている。つまり、複数のティース11は、ステータ100の中心軸(つまり、回転軸300)を中心として放射状に設けられている。本実施の形態において、ステータコア10には、24個のティース11が設けられている。
【0031】
複数のティース11は、ロータ200と対向している。本実施の形態において、複数のティース11の各々は、第2ロータ220の複数の磁極片221と対向している。また、複数のティース11は、ヨーク12の内側に形成されている。具体的には、複数のティース11は、円環状のヨーク12から径方向内側に突出するように延在している。ヨーク12は、複数のティース11の外側に形成されたバックヨークである。ヨーク12は、回転軸300の軸心を中心とする円の周方向に沿って円環状に形成されている。ティース11とヨーク12とは、ステータコア10として一体に構成されている。つまり、ステータコア10を構成する鋼板は、ティース11に対応する部分とヨーク12に対応する部分とによって構成されている。
【0032】
各ティース11は、磁極ティースであり、ティース11に巻回されたコイル20に通電されることで磁力を発生させる電磁石である。コイル20は、ステータ100の電機子巻線である巻線コイルであり、電流が流れることで第1ロータ210に作用する磁力を発生するように巻き回されている。本実施の形態において、コイル20は、複数のティース11の各々に巻回された集中巻コイルである。また、コイル20は、3相同期モータとして第1ロータ210を回転できるように3相巻線となっている。なお、コイル20を構成する電線は、例えば絶縁被覆線であり、芯線となる銅等の導電材料からなる導電線と、この導電線を被膜する絶縁膜とを有する。
【0033】
隣り合う2つのティース11の間には、スロット開口部101が存在している。したがって、ステータ100には、複数のスロット開口部101が存在している。具体的には、スロット開口部101は、隣り合う2つのティース11の先端同士の間に存在する隙間である。本実施の形態では、ステータ100には24個のティース11が設けられているので、スロット開口部101の数は、24である。
【0034】
各スロット開口部101には、ステータ磁石として磁石30が配置されている。したがって、ステータ100には、複数の磁石30が配置されている。各スロット開口部101において、磁石30は、スロット開口部101を塞ぐように隣り合う2つのティース11に跨って配置されている。
【0035】
本実施の形態において、磁石30は、所定の磁極方向で着磁された永久磁石である。本実施の形態では、磁極方向がステータ100の径方向となるように着磁されている。磁石30は、例えば、略直方体の焼結マグネットである。したがって、回転軸300の軸心の方向から見たときに、磁石30は、4辺を有する略矩形である。なお、磁石30は、厳密な直方体である場合に限らず、角が丸みを帯びた直方体であってもよいし、各辺が面取りされた直方体であってもよい、その両方であってもよい。
【0036】
複数のティース11の各々は、第1ティース部である本体部11aと、本体部11aよりもティース11の先端側(つまりロータ200側)に位置する第2ティース部である先端部11bとを有する。
【0037】
ティース11の本体部11aの外周側部分は、ヨーク12に接続されている。つまり、本体部11aは、先端部11bとヨーク12との間の部分である。本実施の形態において、ティース11の本体部11aは、コイル20を保持するコイル保持部である。したがって、複数のティース11の各々は、当該ティース11の一部としてコイル保持部を有する。
【0038】
具体的には、本体部11aには、コイル20が巻回されている。本実施の形態において、各ティース11aの本体部11aには、絶縁枠40(インシュレータ)が装着されており、コイル20は、絶縁枠40に巻回されている。つまり、コイル20は、絶縁枠40に巻回されることで絶縁枠40を介して本体部11aに巻回されている。
【0039】
絶縁枠40は、コイルボビンであり、コイル20が巻回される枠状の枠体部41と、枠体部41の筒軸方向の両端部に設けられたフランジ状の鍔部42とを有する。絶縁枠40は、絶縁材料によって構成されている。例えば、絶縁枠40は、絶縁樹脂材料によって一体に形成された樹脂成形品である。
【0040】
絶縁枠40は、ティース11の本体部11aに固定されている。絶縁枠40は、ステータ100に形成された係止構造と係止することで本体部11aに固定されていてもよいし、接着剤によって本体部11aに固定されていてもよい。絶縁枠40は、ティース11の本体部11aに嵌合している。したがって、ティース11の本体部11aの幅と絶縁枠40の枠体部41の幅とはほぼ同じである。具体的には、本体部11aの断面形状と絶縁枠40の枠体部41の開口形状とは同じである。この場合、本体部11aの外面と枠体部41の内面とは全周において接していてもよいし部分的に接していてもよい。
【0041】
なお、本明細書において、ティース11における幅とは、回転軸300の軸心の方向から見たときに、ステータ100の径方向に直交する方向の長さのことである。つまり、本体部11aの幅及び先端部11bの幅は、ステータ100の径方向に直交する方向の長さのことである。また、磁石30の幅もステータ100の径方向に直交する方向の長さのことである。
【0042】
ティース11の先端部11bは、磁極部であり、本体部11aからステータ100の径方向に突出している。ティース11の先端部11bにおける幅方向の両端部の各々に凹部が設けられており、この凹部によって先端部11bが凸状に構成されている。
【0043】
また、ティース11の先端部11bは、磁石30を保持する磁石保持部である。つまり、複数のティース11の各々は、当該ティース11の一部として磁石保持部を有する。磁石保持部である先端部11bは、回転軸300の軸心の方向から見たときに磁石30の4辺を構成する4つの平面のうちの一つの平面と接する磁石接触面11b1を有する。各ティース11において、磁石接触面11b1は、先端部11bの幅方向の両側面に一対で設けられている。
【0044】
上記のように、1つの磁石30は、隣り合う2つのティース11に跨って配置されている。したがって、1つの磁石30は、隣り合う2つのティース11のうちの一方のティース11の先端部11bと他方のティース11の先端部11bとに保持される。具体的には、1つの磁石30は、隣り合う2つのティース11のうちの一方のティース11の先端部11bの磁石接触面11b1と他方のティース11の先端部11bの磁石接触面11b1とに挟まれることで2つのティース11によって保持されている。
【0045】
また、各ティース11において、一対の磁石接触面11b1の最大幅は、本体部11a(コイル保持部)の最大幅以下である。本実施の形態において、一対の磁石接触面11b1の最大幅は、本体部11aの最大幅よりも小さい。つまり、各ティース11において、先端部11bの最大幅は、本体部11aの最大幅よりも狭くなっている。したがって、先端部11bと本体部11aとの境界部分には、段差部11cが形成されている。磁石30は、この段差部11cに係止されている。
【0046】
また、ティース11における本体部11a(コイル保持部)よりティース11の先端側に位置する部分の最大幅は、本体部11a(コイル保持部)の最大幅以下になっている。つまり、各ティース11は、本体部11aよりもティース11の先端側において、本体部11aの最大幅よりも広い幅を有する部分を有していない。例えば、本体部11aよりもティース11の先端側において、ティース11には本体部11aの幅よりも突出する部分が設けられていない。
【0047】
なお、ティース11の先端部11bの内周側の先端には、この先端からステータ100の周方向の両側の各々に突出する一対の突起11dが設けられているが、一対の突起11dの間隔は、本体部11aの最大幅よりも狭くなっている。突起11dによって磁石30が固定されている。具体的には、磁石30のステータ100の周方向における一方の端部は、隣り合う2つのティース11の一方のティース11における突起11dと段差部11cとに挟持されている。また、磁石30のステータ100の周方向における他方の端部は、隣り合う2つのティース11の他方のティース11における突起11dと段差部11cとに挟持されている。これにより、磁石30は、隣り合う2つのティース11に跨った状態で固定されている。磁石30は、例えば、回転軸300の軸心の方向から2つのティース11の先端部11bの間に挿入することで固定することができる。
【0048】
ティース11の先端部11bと磁石30とは、第2ロータ220の複数の磁極片221と対向している。また、ティース11の先端部11bにおけるロータ200側の表面と磁石30におけるロータ200側の表面とは、ステータ100のエアギャップ面になっており、ステータ100の周方向に沿って隙間なく連続して設けられている。なお、本実施の形態において、ティース11の先端部11bにおけるロータ200側の表面と磁石30におけるロータ200側の表面とはほぼ面一であるが、これに限らない。
【0049】
ティース11の先端部11bと磁石30とは、エアギャップ面にN極とS極とが交互に表れるように配置されている。つまり、ステータ100において、全てのティース11の先端部11bは、エアギャップ面に対して互いに同一の極性を有しており、全ての磁石30は、エアギャップ面に対して互いに同一の極性を有している。例えば、全てのティース11の先端部11bがエアギャップ面にS極を有するようにコイル20が巻回されており、全ての磁石30がエアギャップ面にN極を有するように着磁されている。
【0050】
このように構成される磁気ギアードモータである回転電機1では、ステータ100のコイル20の起磁力によって第1ロータ210が回転する。具体的には、ステータ100のコイル20に通電すると、界磁電流がコイル20に流れてティース11に磁束が発生する。このティース11で発生した磁束と第1ロータ210の磁極対211から生じる磁束との相互作用によって生じた磁気力が第1ロータ210を回転させるトルクとなり、第1ロータ210が回転する。そして、第1ロータ210が回転することで、高調波磁束によって、出力軸を有する第2ロータ220が所定のギア比(減速比)にしたがって減速されて回転する。
【0051】
次に、本実施の形態に係る回転電機1の効果について、
図3A及び
図3Bに示される比較例の回転電機と比較して説明する。
図3Aは、比較例の回転電機におけるステータ100Xの部分拡大図である。
図3Bは、同ステータ100Xにおけるステータコア10Xとコイル20Xと絶縁枠40Xとの構成を示す図である。
【0052】
図3A及び
図3Bに示すように、比較例のステータ100Xは、複数のティース11Xが設けられたステータコア10Xと、複数のティース11Xの各々に装着された絶縁枠40Xと、絶縁枠40Xに巻回されたコイル20Xと、隣り合う2つのティース11Xに跨って配置された磁石30Xとを備える。
【0053】
比較例のステータ100Xでは、ティース11Xに磁石30Xを固定するために、各ティース11Xにはステータ100Xの周方向に突出する凸部11bXが設けられている。このため、コイル20Xは、絶縁枠40Xが配置されたティース11Xに対してインサート巻きによって絶縁枠40Xに巻線を施している。このため、比較例のステータ100Xでは、コイル20を高密度に巻回することができず、コイル20の線占積率が低くなっている。
【0054】
これに対して、本実施の形態におけるステータ100では、ティース11における本体部11a(コイル保持部)よりティース11の先端側に位置する部分の最大幅が、本体部11a(コイル保持部)の最大幅以下になっている。つまり、各ティース11において、本体部11aよりもティース11の先端側には、本体部11aの幅よりも突出する部分が設けられていない。具体的には、本体部11aよりもティース11の先端側に位置する先端部11bの最大幅が本体部11aの最大幅よりも小さくなっている。
【0055】
これにより、
図4に示すように、先に絶縁枠40にコイル20を巻回しておいて、その後、コイル20が巻回された絶縁枠40をティース11に挿入して装着することができる。
図4は、実施の形態に係る回転電機1において、コイル20が巻回された絶縁枠40をティース11に挿入する様子を説明するための図である。
【0056】
具体的には、
図4の(a)に示すように、予め絶縁枠40にコイル20を巻回しておく。このとき、ティース11に絶縁枠40に装着された状態でコイル20を巻回する必要がないので、コイル20を高密度で絶縁枠40に巻回することができる。
【0057】
次に、
図4の(b)に示すように、コイル20が巻回された絶縁枠40をステータコア10のティース11に挿入する。これにより、コイル20が巻回された絶縁枠40がティース11に装着される。この結果、コイル20は、絶縁枠40を介してティース11に巻回される。
【0058】
このように、本実施の形態では、ステータコア10の外部で予めコイル20を巻線しておくことができるので、高密度でコイル20を巻回することができる。これにより、比較例のステータ100Xと比べて、コイル20の線占積率を高くすることができる。
【0059】
以上、本実施の形態に係る回転電機1によれば、ステータ100のティース11に磁石30が配置されているにもかかわらず、ティース11に巻回されたコイル20の線占積率を高くすることができる。したがって、高性能かつ高出力の回転電機1を実現することができる。
【0060】
また、本実施の形態における回転電機1において、回転軸300の軸心の方向から見たときに、磁石30は、4辺を有する略矩形であり、ティース11の先端部11bは、磁石30の4辺を構成する4つの平面のうちの一つの平面と接する磁石接触面11b1を有する。
【0061】
このように、磁石30として矩形磁石を用いることで、磁石30を歩留まりよく低コストで作製することができる。つまり、
図3Aに示される比較例のステータ100Xでは、ステータ100Xに磁石30Xを固定するために磁石30Xを瓦型形状にしたり磁石30Xに保持用の加工を施したりして矩形磁石に対して追加の加工を施す必要があるので、コストアップしたり品質にバラツキが生じたりしていた。これに対して、本実施の形態では、矩形磁石に対して追加の加工を施すことなく磁石30として矩形磁石をそのまま用いることができる。したがって、コストアップしたり品質にバラツキが生じたりすることがないので、高品質でバラツキのない回転電機1を実現することができる。
【0062】
さらに、本実施の形態における回転電機1では、複数のティース11の各々において、磁石接触面11b1がティース11の先端部11bの幅方向の両側面に一対で設けられている。そして、一対の磁石接触面11b1の最大幅がティース11の本体部11aの最大幅以下になっている。
【0063】
この構成により、本実施の形態のように、磁石30が隣り合う2つのティース11に跨って配置されていても、磁石30を取り付ける前に、コイル20が巻回された絶縁枠40をティース11に容易に挿入して装着させることができる。
【0064】
(変形例)
以上、本開示に係る回転電機1について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0065】
上記実施の形態において、ステータ100におけるコイル保持部は、ティース11の本体部11a(つまりティース11の一部)であったが、これに限らない。例えば、ステータにおけるコイル保持部は、ティース11の一部ではなく、コイルが巻回される絶縁枠であってもよい。
【0066】
この場合、
図5に示されるステータ100Aのように、ティース11Aには、ステータ100Aの周方向又はティース11Aの幅方向に突出する凸部11a1が設けられていてもよい。凸部11a1を設けることで絶縁枠40Aの動きを規制して絶縁枠40Aの位置を固定することができる。ただし、凸部11a1の突出方向の先端面は、絶縁枠40Aの枠体部41の外面(コイル接触面)と面一になっているとよい。また、絶縁枠40Aの内周側には鍔部42を設けない方がよい。
【0067】
このように構成することで、ステータ100Aにおけるコイル保持部がティース11Aの一部ではなく絶縁枠40Aであったとしても、ステータ100Aの外部でコイル20Aを予め巻線しておいて、この巻線されたコイル20Aをティース11Aに装着された絶縁枠40Aに挿入して絶縁枠40Aに装着することができる。つまり、コイル20Aは、絶縁枠40Aに挿入されて装着されることで絶縁枠40Aを介してティース11Aに巻回されている。なお、
図5において、ティース11Aに固定された磁石は省略している。
【0068】
また、
図5に示される変形例では、予め巻線したコイル20Aのみを絶縁枠40Aに挿入したが、これに限らない。例えば、
図6に示されるステータ100Bのように、凸部11a1が形成されたティース11Aに装着された絶縁枠40Aに対して、予めコイル20が巻回された絶縁枠40をさらに挿入することで、コイル20が巻回された絶縁枠40をティース11Aに装着してもよい。これにより、コイル20を、絶縁枠40及び絶縁枠40Aを介してティース11Aに巻回することができる。なお、
図6において、ティース11Aに固定された磁石は省略している。
【0069】
また、上記実施の形態において、ステータ100、第2ロータ220及び第1ロータ210は、この順で径方向外側から径方向内側に向かって配置されていたが、これに限らない。
【0070】
また、上記実施の形態において、ステータ100のコイル20として集中巻コイルを用いたが、これに限らない。例えば、コイル20として、分布巻コイルを用いてもよい。
【0071】
また、上記実施の形態において、回転電機1として磁気ギアードモータを例示したが、これに限らない。本開示は、その他のモータに適用することもできる。
【0072】
その他、上記各実施の形態に対して当業者が思い付く各種変形を施して得られる形態や、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で上記各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本開示は、家電製品をはじめとして自動車及びロボット等の様々な製品に用いられる回転電機として利用することができる。例えば、本開示の回転電機は、FAロボットのアクチュエータに用いられる波動歯車装置の代替装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 回転電機
10 ステータコア
11、11A ティース
11a 本体部
11a1 凸部
11b 先端部
11b1 磁石接触面
11c 段差部
11d 突起
12 ヨーク
20、20A コイル
30 磁石
40、40A 絶縁枠
41 枠体部
42 鍔部
100、100A、100B ステータ
101 スロット開口部
200 ロータ
210 第1ロータ
211 磁極対
212 ロータコア
220 第2ロータ
221 磁極片
222 ホルダ
300 回転軸