(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】人検出装置、人検出方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G01V 8/20 20060101AFI20240823BHJP
【FI】
G01V8/20 Q
(21)【出願番号】P 2021024341
(22)【出願日】2021-02-18
【審査請求日】2024-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】上泉 悠
(72)【発明者】
【氏名】浜崎 岳史
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-150909(JP,A)
【文献】特開2019-148525(JP,A)
【文献】特開平02-228584(JP,A)
【文献】特開昭62-206482(JP,A)
【文献】特開昭58-213396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 8/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内に設置され、人の存在を検知する第1焦電センサおよび第2焦電センサで得られた人の存在に関する波形信号を取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記第1焦電センサの波形信号と前記第2焦電センサの波形信号とに基づいて、在室者数を判定する判定部と、を備え、
前記判定部は、
所定期間内における前記第1焦電センサの波形信号と前記第2焦電センサの波形信号との差分の絶対値の第1総和を算出し、前記第1総和が第1閾値以下であるか否かを判定し、
前記所定期間内における前記第1焦電センサの波形信号を微分した波形信号と前記第2焦電センサの波形信号を微分した波形信号との差分の絶対値の第2総和を算出し、前記第2総和が第2閾値以下であるか否かを判定し、
前記第1総和が前記第1閾値以下であると判定した場合、または、前記第2総和が前記第2閾値以下であると判定した場合、在室者は一人であると判定し、
前記第1総和が前記第1閾値以下でないと判定し、かつ、前記第2総和が前記第2閾値以下でないと判定した場合、在室者は複数人であると判定する
人検出装置。
【請求項2】
前記第2総和は、前記所定期間内における前記第1焦電センサの波形信号を一階微分した波形信号と前記第2焦電センサの波形信号を一階微分した波形信号との差分の絶対値の総和である
請求項1記載の人検出装置。
【請求項3】
前記第2総和は、前記所定期間内における前記第1焦電センサの波形信号を二階微分した波形信号と前記第2焦電センサの波形信号を二階微分した波形信号との差分の絶対値の総和である
請求項1記載の人検出装置。
【請求項4】
前記第2総和は、前記所定期間内における前記第1焦電センサの波形信号を一階微分した波形信号と前記第2焦電センサの波形信号を一階微分した波形信号との差分の絶対値の総和であり、
前記判定部は、
さらに、前記所定期間内における前記第1焦電センサの波形信号を二階微分した波形信号と前記第2焦電センサの波形信号を二階微分した波形信号との差分の絶対値の第3総和を算出し、前記第3総和が第3閾値以下であるか否かを判定し、
前記第1総和が前記第1閾値以下であると判定した場合、前記第2総和が前記第2閾値以下であると判定した場合、または、前記第3総和が前記第3閾値以下であると判定した場合、在室者は一人であると判定し、
前記第1総和が前記第1閾値以下でないと判定し、かつ、前記第2総和が前記第2閾値以下でないと判定し、かつ、前記第3総和が前記第3閾値以下でないと判定した場合、在室者は複数人であると判定する
請求項1記載の人検出装置。
【請求項5】
室内に設置され、人の存在を検知する第1焦電センサおよび第2焦電センサで得られた人の存在に関する波形信号を取得する取得ステップと、
前記取得ステップで取得した前記第1焦電センサの波形信号と前記第2焦電センサの波形信号とに基づいて、在室者数を判定する判定ステップと、を含み、
前記判定ステップでは、
所定期間内における前記第1焦電センサの波形信号と前記第2焦電センサの波形信号との差分の絶対値の第1総和を算出し、前記第1総和が第1閾値以下であるか否かを判定し、
前記所定期間内における前記第1焦電センサの波形信号を微分した波形信号と前記第2焦電センサの波形信号を微分した波形信号との差分の絶対値の第2総和を算出し、前記第2総和が第2閾値以下であるか否かを判定し、
前記第1総和が前記第1閾値以下であると判定した場合、または、前記第2総和が前記第2閾値以下であると判定した場合、在室者は一人であると判定し、
前記第1総和が前記第1閾値以下でないと判定し、かつ、前記第2総和が前記第2閾値以下でないと判定した場合、在室者は複数人であると判定する
人検出方法。
【請求項6】
請求項5記載の人検出方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、人検出装置、人検出方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、焦電センサ(焦電型赤外線センサ)に関する技術が開示されている。焦電センサは、焦電センサの検知範囲を人が通過したときの検知範囲における温度変化に基づいて人の検知を行う。例えば、焦電センサはエアコンなどに搭載され、焦電センサの検知結果(人の有無など)に応じたエアコンの制御が可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、焦電センサでは在室者の有無を容易に判定することはできるが、在室者が1人か複数人かを高精度に判定することが難しい。
【0005】
本開示は、在室者が一人か複数人かを高精度に判定することができる人検出装置などを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示における人検出装置は、室内に設置され、人の存在を検知する第1焦電センサおよび第2焦電センサで得られた人の存在に関する波形信号を取得する取得部と、前記取得部が取得した前記第1焦電センサの波形信号と前記第2焦電センサの波形信号とに基づいて、在室者数を判定する判定部と、を備え、前記判定部は、所定期間内における前記第1焦電センサの波形信号と前記第2焦電センサの波形信号との差分の絶対値の第1総和を算出し、前記第1総和が第1閾値以下であるか否かを判定し、前記所定期間内における前記第1焦電センサの波形信号を微分した波形信号と前記第2焦電センサの波形信号を微分した波形信号との差分の絶対値の第2総和を算出し、前記第2総和が第2閾値以下であるか否かを判定し、前記第1総和が前記第1閾値以下であると判定した場合、または、前記第2総和が前記第2閾値以下であると判定した場合、在室者は一人であると判定し、前記第1総和が前記第1閾値以下でないと判定し、かつ、前記第2総和が前記第2閾値以下でないと判定した場合、在室者は複数人であると判定する。
【0007】
本開示における人検出方法は、室内に設置され、人の存在を検知する第1焦電センサおよび第2焦電センサで得られた人の存在に関する波形信号を取得する取得ステップと、前記取得ステップで取得した前記第1焦電センサの波形信号と前記第2焦電センサの波形信号とに基づいて、在室者数を判定する判定ステップと、を含み、前記判定ステップでは、所定期間内における前記第1焦電センサの波形信号と前記第2焦電センサの波形信号との差分の絶対値の第1総和を算出し、前記第1総和が第1閾値以下であるか否かを判定し、前記所定期間内における前記第1焦電センサの波形信号を微分した波形信号と前記第2焦電センサの波形信号を微分した波形信号との差分の絶対値の第2総和を算出し、前記第2総和が第2閾値以下であるか否かを判定し、前記第1総和が前記第1閾値以下であると判定した場合、または、前記第2総和が前記第2閾値以下であると判定した場合、在室者は一人であると判定し、前記第1総和が前記第1閾値以下でないと判定し、かつ、前記第2総和が前記第2閾値以下でないと判定した場合、在室者は複数人であると判定する。
【0008】
本開示におけるプログラムは、上記の人検出方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本開示における人検出装置などによれば、在室者が一人か複数人かを判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】
図1Aは、焦電センサの検知範囲を説明するための図である。
【
図1B】
図1Bは、焦電センサを搭載したエアコンの一例を示す図である。
【
図2A】
図2Aは、焦電センサの構成を示すブロック図である。
【
図2B】
図2Bは、焦電センサの電気的動作を説明した図である。
【
図3】
図3は、実施の形態に係る人検出装置の構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施の形態に係る人検出装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図5A】
図5Aは、在室者が一人の場合の第1焦電センサの波形信号の一例を示す図である。
【
図5B】
図5Bは、在室者が一人の場合の第2焦電センサの波形信号の一例を示す図である。
【
図5C】
図5Cは、在室者が一人の場合の第1焦電センサの波形信号と第2焦電センサの波形信号との差分の一例を示す図である。
【
図5D】
図5Dは、在室者が一人の場合の第1焦電センサの波形信号を一階微分した波形信号および第2焦電センサの波形信号を一階微分した波形信号の一例を示す図である。
【
図5E】
図5Eは、在室者が一人の場合の第1焦電センサの波形信号の周波数成分の一例を示す図である。
【
図5F】
図5Fは、在室者が一人の場合の第2焦電センサの波形信号の周波数成分の一例を示す図である。
【
図6A】
図6Aは、在室者が複数人の場合の第1焦電センサの波形信号の一例を示す図である。
【
図6B】
図6Bは、在室者が複数人の場合の第2焦電センサの波形信号の一例を示す図である。
【
図6C】
図6Cは、在室者が複数人の場合の第1焦電センサの波形信号と第2焦電センサの波形信号との差分の一例を示す図である。
【
図6D】
図6Dは、在室者が複数人の場合の第1焦電センサの波形信号を一階微分した波形信号および第2焦電センサの波形信号を一階微分した波形信号の一例を示す図である。
【
図6E】
図6Eは、在室者が複数人の場合の第1焦電センサの波形信号の周波数成分の一例を示す図である。
【
図6F】
図6Fは、在室者が複数人の場合の第2焦電センサの波形信号の周波数成分の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0012】
なお、発明者は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0013】
(実施の形態)
以下、
図1Aから
図6Fを用いて実施の形態に係る人検出装置を説明する。
【0014】
まず、実施の形態に係る人検出装置が備える焦電センサの検知範囲について、
図1A、
図1Bを用いて説明する。
【0015】
図1Aは、焦電センサの検知範囲を説明するための図である。
図1Bは、焦電センサを搭載したエアコンの一例を示す図である。
図1Aには、部屋1の室内に設けられた第1焦電センサ100および第2焦電センサ200を備える人検出装置10を示している。例えば、
図1Bに示すように、人検出装置10は、部屋1の壁などに設けられたエアコン2などに搭載される。例えば、第1焦電センサ100および第2焦電センサ200は部屋1の床から約2mの位置にある。
図1Aでは説明上、各焦電センサの検知範囲として、部屋1の床上の領域を示しているが、実際には各焦電センサから床上の各領域までの間の空間にも検知範囲が存在している。
【0016】
第1焦電センサ100および第2焦電センサ200は、それぞれフレネルレンズが装着されており、フレネルレンズによって、多くの領域から赤外線を集光することができる。例えば、第1焦電センサ100および第2焦電センサ200の視野が交差するように、第1焦電センサ100および第2焦電センサ200が設置されてもよい。この場合、第1焦電センサ100は、部屋1の右側(
図1Aの紙面右下側)を向いており、フレネルレンズによって、部屋1の右側における領域A3、A4、A5、A8、A9およびA10を検知範囲とする。一方、第2焦電センサ200は、部屋1の左側(
図1Aの紙面左下側)を向いており、フレネルレンズによって、部屋1の左側における領域A1、A2、A3、A6、A7およびA8を検知範囲とする。第1焦電センサ100の検知範囲には、第2焦電センサ200の検知範囲と重複しない領域が含まれ、第2焦電センサ200の検知範囲には、第1焦電センサ100の検知範囲と重複しない領域が含まれる。
【0017】
図1Aに示される例では、第1焦電センサ100の検知範囲のうち領域A4、A5、A9およびA10は、第2焦電センサ200の検知範囲と重複せず、第2焦電センサ200の検知範囲のうち領域A1、A2、A6およびA7は、第1焦電センサ100の検知範囲と重複しない。これにより、室内の人が領域A4、A5、A9およびA10のいずれかを通過したときに、第1焦電センサ100によって室内の右側に人が存在することを検知することができる。また、室内の人が領域A1、A2、A6およびA7のいずれかを通過したときに、第2焦電センサ200によって室内の左側に人が存在することを検知することができる。また、第1焦電センサ100および第2焦電センサ200の視野を交差させることで、死角を少なくできる。
【0018】
なお、必ずしも第1焦電センサ100および第2焦電センサ200の視野を交差させる必要はない。例えば、第1焦電センサ100は、部屋1の左側(
図1Aの紙面左下側)を向いていてもよく、フレネルレンズによって、部屋1の左側における領域A1、A2、A3、A6、A7およびA8を検知範囲としてもよい。一方、第2焦電センサ200は、部屋1の右側(
図1Aの紙面右下側)を向いていてもよく、フレネルレンズによって、部屋1の右側における領域A3、A4、A5、A8、A9およびA10を検知範囲としてもよい。第1焦電センサ100の検知範囲には、第2焦電センサ200の検知範囲と重複しない領域が含まれ、第2焦電センサ200の検知範囲には、第1焦電センサ100の検知範囲と重複しない領域が含まれる。
【0019】
第1焦電センサ100および第2焦電センサ200の視野を交差させない場合についても、
図1Aに示される例では、第1焦電センサ100の検知範囲のうち領域A1、A2、A6およびA7は、第2焦電センサ200の検知範囲と重複せず、第2焦電センサ200の検知範囲のうち領域A4、A5、A9およびA10は、第1焦電センサ100の検知範囲と重複しない。これにより、室内の人が領域A1、A2、A6およびA7のいずれかを通過したときに、第1焦電センサ100によって室内の左側に人が存在することを検知することができる。また、室内の人が領域A4、A5、A8およびA10のいずれかを通過したときに、第2焦電センサ200によって室内の右側に人が存在することを検知することができる。
【0020】
また、上記した第1焦電センサ100および第2焦電センサ200の視野の2通りの設定について、第1焦電センサ100の検知範囲と第2焦電センサ200の検知範囲とは、一部重複している。
図1Aに示される例では、第1焦電センサ100の検知範囲のうち領域A3およびA8と、第2焦電センサ200の検知範囲のうち領域A3およびA8とは重複している。これにより、室内の人が領域A3およびA8のいずれかを通過したときに、第1焦電センサ100および第2焦電センサ200によって室内の中央に人が存在することを検知することができる。
【0021】
また、
図1Aでは、検知範囲を簡略化して示している。第1焦電センサ100および第2焦電センサ200の検知範囲は、フレネルレンズの形状に応じて設定することができる。
【0022】
人検出装置10が備える焦電センサについて
図2Aおよび
図2Bを用いて説明する。
【0023】
図2Aは、焦電センサの構成を示すブロック図である。
図2Bは、焦電センサの電気的動作を説明した図である。
【0024】
図2Aに示されるように、焦電センサの検出部4は直列接続された2個の焦電素子5aおよび5bと、焦電素子5aおよび5bと並列に接続された負荷抵抗6と、FET7とで構成され、焦電素子5aおよび5bに入射した熱線の変化量に応じた大きさの熱線検知信号S1が出力される。なお、焦電素子は強誘電体セラミックなどで構成される。なお、焦電センサの後段に接続されるオペアンプ(不図示)で熱線検知信号S1が増幅される。
【0025】
図2B(a)、
図2B(b)は焦電センサの動作原理を示している。
図2B(a)で示すように、焦電素子は材料内に温度に依存する自発分極をもっており、分極の結果、材料の表面に正負の電荷が現れ、この電荷は空気中の浮遊電荷などによって中和されている。この平衡状態で焦電素子が赤外線を受光すると、赤外線の熱エネルギを吸収して温度が急激に変化し、この中和作用が間に合わず、電荷が余ってしまう状態となる。すなわち、焦電センサは赤外線を受光すると自発分極状態に変化を起し、その変化量に比例して表面に電荷が励起される(非平衡状態)。その後焦電センサは平衡状態に戻ろうとし、このとき逆極性の電荷が励起される。このため、平衡状態から非平衡状態になるときと、非平衡状態から再度平衡状態に戻るときに、逆極性の信号が出力される。
図2B(b)はこの出力波形を示す。
【0026】
次に、人検出装置10の構成について、
図3を用いて説明する。
【0027】
図3は、実施の形態に係る人検出装置10の構成の一例を示す図である。
【0028】
人検出装置10は、室内に存在する人を検出するための装置である。人検出装置10はプロセッサおよびメモリなどを有するコンピュータである。メモリは、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などであり、プロセッサにより実行されるプログラムを記憶することができる。人検出装置10は、第1焦電センサ100、第2焦電センサ200、取得部20および判定部30を備える。取得部20および判定部30は、メモリに格納されたプログラムを実行するプロセッサ等によって実現される。
【0029】
第1焦電センサ100は、室内に設置され、室内における人の存在を検知し、人の存在に関する波形信号を取得する。第2焦電センサ200は、室内に設置され、室内における人の存在を検知し、人の存在に関する波形信号を取得する。人の存在に関する波形信号は、人が検知範囲を通過したときに検知された人の温度(すなわち人から発生する赤外線)に応じて変化する信号であり、後述する
図5A、
図5B、
図6Aおよび
図6Bのような、波形信号である。
【0030】
取得部20は、第1焦電センサ100および第2焦電センサ200で得られた波形信号を取得する。
【0031】
判定部30は、取得部20が取得した第1焦電センサ100の波形信号と第2焦電センサ200の波形信号とに基づいて、在室者数を判定する。具体的には、判定部30は、所定期間内における第1焦電センサ100の波形信号と第2焦電センサ200の波形信号との差分の絶対値の第1総和を算出し、第1総和が第1閾値以下であるか否かを判定し、所定期間内における第1焦電センサ100の波形信号を微分した波形信号と第2焦電センサ200の波形信号を微分した波形信号との差分の絶対値の第2総和を算出し、第2総和が第2閾値以下であるか否かを判定する。また、判定部30は、第1総和が第1閾値以下であると判定した場合、または、第2総和が第2閾値以下であると判定した場合、在室者は一人であると判定し、第1総和が第1閾値以下でないと判定し、かつ、第2総和が第2閾値以下でないと判定した場合、在室者は複数人であると判定する。例えば、第2総和は、所定期間内における第1焦電センサ100の波形信号を一階微分した波形信号と第2焦電センサ200の波形信号を一階微分した波形信号との差分の絶対値の総和である。なお、所定期間は、人が部屋を横切るのに要する時間を考慮して設定され、例えば2~3秒である。
【0032】
具体的には、判定部30は、第1判定部31、第2判定部32および第3判定部33を備え、第1判定部31、第2判定部32および第3判定部33の判定結果に基づいて、在室者数を判定する。
【0033】
第1判定部31は、所定期間内における第1焦電センサ100の波形信号と第2焦電センサ200の波形信号との差分の絶対値の第1総和を算出し、第1総和が第1閾値以下であるか否かを判定する。
【0034】
第2判定部32は、所定期間内における第1焦電センサ100の波形信号を一階微分し、また、所定期間内における第2焦電センサ200の波形信号を一階微分する。第2判定部32は、第1焦電センサ100の波形信号を一階微分した波形信号と第2焦電センサ200の波形信号を一階微分した波形信号との差分の絶対値の第2総和を算出し、第2総和が第2閾値以下であるか否かを判定する。
【0035】
第3判定部33は、所定期間内における第1焦電センサ100の波形信号を二階微分し、また、所定期間内における第2焦電センサ200の波形信号を二階微分する。第2判定部32は、第1焦電センサ100の波形信号を二階微分した波形信号と第2焦電センサ200の波形信号を二階微分した波形信号との差分の絶対値の第3総和を算出し、第3総和が第3閾値以下であるか否かを判定する。
【0036】
例えば、第1閾値、第2閾値および第3閾値は、予め在室者数が複数人であるとわかっているときに算出された、第1総和、第2総和および第3総和に基づいて設定される。例えば、第1閾値は、予め在室者数が複数人であるとわかっているときに算出された第1総和の半分の値に設定され、第2閾値は、予め在室者数が複数人であるとわかっているときに算出された第2総和の半分の値に設定され、第3閾値は、予め在室者数が複数人であるとわかっているときに算出された第3総和の半分の値に設定される。
【0037】
例えば、判定部30は、在室者が一人であるか複数人であるかを示す情報を出力する。例えば、出力された情報は、エアコンの制御などに用いられる。
【0038】
次に、人検出装置10の動作について
図4を用いて説明する。なお、以下では
図1Aを例にあげて説明するが、例えば、第1焦電センサ100は、部屋1の左側における領域A1、A2、A3、A6、A7およびA8を検知範囲とし、第2焦電センサ200は、部屋1の右側における領域A3、A4、A5、A8、A9およびA10を検知範囲とする。
【0039】
図4は、実施の形態に係る人検出装置10の動作の一例を示すフローチャートである。
【0040】
まず、取得部20は、第1焦電センサ100および第2焦電センサ200で得られた人の存在に関する波形信号を取得する(ステップS100)。
【0041】
判定部30は、第1焦電センサ100の波形信号と第2焦電センサ200の波形信号とに基づいて、第1焦電センサ100および第2焦電センサ200で共に人の存在を検知しているか否かを判定する(ステップS101)。
【0042】
第1焦電センサ100でのみ人の存在を検知している場合、
図1Aの例で説明すると、室内における左側(領域A1、A2、A6およびA7)に人が存在することはわかるが、室内における左側に存在する人が一人なのか複数人なのかはわからない。同じように、第2焦電センサ200でのみ人の存在を検知している場合、
図1Aの例で説明すると、室内における右側(領域A4、A5、A9およびA10)に人が存在することはわかるが、室内における右側に存在する人が一人なのか複数人なのかはわからない。このため、在室者が一人か複数人かを判定する場合には、第1焦電センサ100および第2焦電センサ200で共に人の存在を検知している必要がある。したがって、第1焦電センサ100および第2焦電センサ200で共に人の存在を検知していない場合(ステップS101でNo)、第1焦電センサ100および第2焦電センサ200で共に人の存在を検知するまで、ステップS100およびステップS101での処理が繰り返される。
【0043】
第1焦電センサ100および第2焦電センサ200で共に人の存在を検知している場合には、
図1Aの例で説明すると、室内における左側(領域A1、A2、A6およびA7)に人が存在し、かつ、室内における中央(領域A3およびA8)に人が存在し、在室者が複数人である場合と、室内における右側(領域A4、A5、A9およびA10)に人が存在し、かつ、室内における中央(領域A3およびA8)に人が存在し、在室者が複数人である場合と、室内における中央(領域A3およびA8)に人が存在し、在室者が一人もしくは複数人である場合とがある。そこで、第1焦電センサ100および第2焦電センサ200で共に人の存在を検知している場合(ステップS101でYes)、在室者が一人であるか複数人であるかを判定するために、以下のステップS102からステップS104までの処理が行われる。なお、ここでは、ステップS102、ステップS103、ステップS104の順序で処理が行われる例が示されているが、この順序に限定されず、処理が行われる順序が入れ替えられてもよい。
【0044】
第1判定部31は、所定期間内における第1焦電センサ100の波形信号と第2焦電センサ200の波形信号との差分の絶対値の第1総和を算出し、第1総和が第1閾値以下であるか否かを判定する(ステップS102)。第1焦電センサ100の波形信号と第2焦電センサ200の波形信号とが類似しているほど、第1総和は小さくなる。このため、第1判定部31は、第1焦電センサ100の波形信号と第2焦電センサ200の波形信号とが類似しているか否かを判定していることになる。
【0045】
第2判定部32は、所定期間内における第1焦電センサ100の波形信号を一階微分した波形信号と第2焦電センサ200の波形信号を一階微分した波形信号との差分の絶対値の第2総和を算出し、第2総和が第2閾値以下であるか否かを判定する(ステップS103)。第1焦電センサ100の波形信号を一階微分した波形信号と第2焦電センサ200の波形信号を一階微分した波形信号とが類似しているほど、第2総和は小さくなる。このため、第2判定部32は、第1焦電センサ100の波形信号を一階微分した波形信号と第2焦電センサ200の波形信号を一階微分した波形信号とが類似しているか否かを判定していることになる。
【0046】
第3判定部33は、所定期間内における第1焦電センサ100の波形信号を二階微分した波形信号と第2焦電センサ200の波形信号を二階微分した波形信号との差分の絶対値の第3総和を算出し、第3総和が第3閾値以下であるか否かを判定する(ステップS104)。第1焦電センサ100の波形信号を二階微分した波形信号と第2焦電センサ200の波形信号を二階微分した波形信号とが類似しているほど、第3総和は小さくなる。このため、第3判定部33は、第1焦電センサ100の波形信号を二階微分した波形信号と第2焦電センサ200の波形信号を二階微分した波形信号とが類似しているか否かを判定していることになる。
【0047】
ここで、類似性の高い2つの波形信号の差分の絶対値の総和が小さな値になることについて説明する。
【0048】
波形信号として時間関数f(t)の所定期間0~Tでの積分は、以下の式1で表すことができ、波形信号として時間関数g(t)の所定期間0~Tでの積分は、以下の式2で表すことができる。
【0049】
【0050】
【0051】
ここで、所定期間0~Tにおいて、f(t)≧0、g(t)≧0とすると、上記Fは、f(t)と時間軸の間にできる図形の面積となり、上記Gは、g(t)と時間軸の間にできる図形の面積となる。f(t)とg(t)との波形の類似性が高い場合、上記Fと上記Gとは同じ値に近づくと考えられ、以下の式3で表される値(波形信号の差分の総和)は、小さくなると考えられる。
【0052】
【0053】
同様に、f(t)を一階微分したf’(t)とg(t)を一階微分したg’(t)との波形の類似性が高い場合、以下の式4で表される値(一階微分した波形信号の差分の総和)は、小さくなると考えられる。
【0054】
【0055】
同様に、f(t)を二階微分したf’’(t)とg(t)を二階微分したg’’(t)との波形の類似性が高い場合、以下の式5で表される値(二階微分した波形信号の差分の総和)は、小さくなると考えられる。
【0056】
【0057】
また、類似性の高い2つの波形信号の差分の総和が小さな値(0に近い値)になることについて、以下のようにも説明することができる。
【0058】
波形信号として時間関数f(t)およびg(t)の相互相関関数は、以下の式6で表すことができる。
【0059】
【0060】
一方で、周期Tを有する時間関数f(t)のフーリエ変換は、以下の式7で表すことができ、周期Tを有する時間関数g(t)のフーリエ変換は、以下の式8で表すことができる。
【0061】
【0062】
【0063】
よって、フーリエ変換F(t)は、f(t)とexp(-j2πft)との相関関数とみなすことができ、フーリエ変換G(t)は、g(t)とexp(-j2πft)との相関関数とみなすことができる。
【0064】
f(t)とg(t)との波形の類似性が高い場合、それぞれに含まれる周波数成分の類似性が高くなり、F(t)とG(t)との類似性も高くなると考えられ、以下の式9で表される値は、0に近い値になると考えられる。
【0065】
【0066】
これは、f(t)-g(t)とexp(-j2πft)との相関が低いことを意味するため、f(t)-g(t)は0に近い値かランダム値を有する関数であると考えられる。したがって、f(t)とg(t)との波形の類似性が高い場合、以下の式10で表される値(波形信号の差分の総和)は、0に近い値になると考えられる。
【0067】
【0068】
また、上記式9は、部分積分の公式を使うことで、以下の式11のように展開することができる。
【0069】
【0070】
式9の値が0に近い値である場合には、式11における各項の値も0に近い値となるので、{f(t)-g(t)}、{f(t)-g(t)}’および{f(t)-g(t)}’’はいずれもexp(-j2πft)と相関が低いことになり、以下の式12で表される値(一階微分した波形信号の差分の総和)および以下の式13で表される値(二階微分した波形信号の差分の総和)も0に近い値となる。
【0071】
【0072】
【0073】
図4での説明に戻り、判定部30は、第1総和が第1閾値以下であると判定した場合(ステップS102でYes)、第2総和が第2閾値以下であると判定した場合(ステップS103でYes)、または、第3総和が第3閾値以下であると判定した場合(ステップS104でYes)、在室者は一人であると判定する(ステップS106)。言い換えると、判定部30は、所定期間内における第1焦電センサ100の波形信号と第2焦電センサ200の波形信号とが類似している場合、所定期間内における第1焦電センサ100の波形信号を一階微分した波形信号と第2焦電センサ200の波形信号を一階微分した波形信号とが類似している場合、または、所定期間内における第1焦電センサ100の波形信号を二階微分した波形信号と第2焦電センサ200の波形信号を二階微分した波形信号とが類似している場合、在室者は一人であると判定する。
【0074】
一方で、判定部30は、第1総和が第1閾値以下でないと判定し、かつ、第2総和が第2閾値以下でないと判定し、かつ、第3総和が第3閾値以下でないと判定した場合(ステップS102でNo、かつ、ステップS103でNo、かつ、ステップS104でNo)、在室者は複数人であると判定する(ステップS105)。言い換えると、判定部30は、所定期間内における第1焦電センサ100の波形信号と第2焦電センサ200の波形信号とが類似しておらず、かつ、所定期間内における第1焦電センサ100の波形信号を一階微分した波形信号と第2焦電センサ200の波形信号を一階微分した波形信号とが類似しておらず、かつ、所定期間内における第1焦電センサ100の波形信号を二階微分した波形信号と第2焦電センサ200の波形信号を二階微分した波形信号とが類似していない場合、在室者は複数人であると判定する。
【0075】
ここで、在室者が一人の場合における各種波形信号および波形の類似性について、
図5Aから
図5Fを用いて説明する。
図1Aの例で説明すると、在室者が一人の場合では、一人の人が部屋1の中央を、例えば領域A3から領域A8の方向に歩いているとする。
【0076】
図5Aは、在室者が一人の場合の第1焦電センサ100の波形信号の一例を示す図である。
【0077】
図5Bは、在室者が一人の場合の第2焦電センサ200の波形信号の一例を示す図である。
【0078】
図5Cは、在室者が一人の場合の第1焦電センサ100の波形信号と第2焦電センサ200の波形信号との差分の一例を示す図である。
【0079】
図5Dは、在室者が一人の場合の第1焦電センサ100の波形信号を一階微分した波形信号および第2焦電センサ200の波形信号を一階微分した波形信号の一例を示す図である。第1焦電センサ100の波形信号を一階微分した波形信号を実線、第2焦電センサ200の波形信号を一階微分した波形信号を破線で示している。
【0080】
図5Eは、在室者が一人の場合の第1焦電センサ100の波形信号の周波数成分の一例を示す図である。
【0081】
図5Fは、在室者が一人の場合の第2焦電センサ200の波形信号の周波数成分の一例を示す図である。
【0082】
例えば、
図5A、
図5Bにおいて、波形信号(熱線検知信号S1)は、一人の人が領域A3、領域A8を通過すると、上下に振幅する波形となる。波形信号に対して、人を検出していないときのオフセット電圧(
図5Aでは1.8V)を基準として閾値(例えば、オフセット電圧に対して±0.5Vである2.3Vと1.3V)が設定され、取得部20は取得した第1焦電センサ100の波形信号と第2焦電センサ200の波形信号について、閾値を超えていないときは検知範囲に人が存在していないと判断し、閾値を超えたときは検知範囲に人が存在していると判断する。
【0083】
例えば、
図5Aでは、出力電圧の波形が増加を始める0.7s頃に人が領域A3に侵入し、出力電力の波形が減少し始める1.1s頃に人が領域A3から出て、再び出力電力の波形が増加を始める1.9sに人が領域A8に侵入したと判断する。なお、
図1では、領域A3および領域A8は、それぞれ同じ大きさで示しているが、実際には、検知範囲は同心円状に広がるため、焦電センサから遠い位置にある領域A8は、領域A3と比べて大きくなる。このため、人が領域A3を通過するのにかかる時間と比較して、領域A8を通過するのにかかる時間が長くなり、焦電素子が赤外線を受光する時間が増加する。その影響で2.0s以降も飽和電圧(4V)が維持されている。
【0084】
なお、
図5A、
図5Bでは、5V電源のオペアンプを使用しているため、オペアンプの電源電圧限界以下の4Vで出力が制限されている。
【0085】
図5Aおよび
図5Bに示されるように、第1焦電センサ100の波形信号と第2焦電センサ200の波形信号とは、類似していることがわかる。第1焦電センサ100および第2焦電センサ200が、部屋1の中央にいる同じ一人の人を検知しているためである。なお、部屋1の中央における第1焦電センサ100の検知範囲と第2焦電センサ200の検知範囲とは、
図1Aでは同じ領域A3およびA8として説明したが、実際には検知範囲にずれがある。このため、第1焦電センサ100および第2焦電センサ200が部屋1の中央で歩いている人を検出するタイミングに多少のずれが生じており、
図5Aおよび
図5Bに示されるように、波形信号が変化し始めるタイミングもずれている。したがって、
図5Cに示されるように、そのずれが第1焦電センサ100の波形信号と第2焦電センサ200の波形信号との差分として表れている。しかし、当該差分は、部屋1の中央において互いに近い位置にある検知範囲で同じ一人の人を検知したときの波形信号の差分なので、差分が生じている期間も少なく、差分の総和も小さくなっている。
【0086】
また、
図5Dに示されるように、第1焦電センサ100の波形信号を一階微分した波形信号と、第2焦電センサ200の波形信号を一階微分した波形信号とは、類似していることがわかる。
【0087】
また、
図5Eおよび
図5Fに示されるように、第1焦電センサ100の波形信号および第2焦電センサ200の波形信号の周波数成分も類似していることがわかる。
【0088】
このように、在室者が一人の場合に、当該一人の在室者を検知している第1焦電センサ100および第2焦電センサ200の各種波形信号は類似することがわかる。
【0089】
次に、在室者が複数人の場合における各種波形信号および波形の類似性について、
図6Aから
図6Fを用いて説明する。
図1Aの例で説明すると、在室者が複数人の場合では、一人が部屋1の左側(領域A1、A2、A6またはA7)で手を振っており、かつ、他の一人が部屋1の右側(領域A4、A5、A9またはA10)を歩いているとする。
【0090】
図6Aは、在室者が複数人の場合の第1焦電センサ100の波形信号の一例を示す図である。
【0091】
図6Bは、在室者が複数人の場合の第2焦電センサ200の波形信号の一例を示す図である。
【0092】
図6Cは、在室者が複数人の場合の第1焦電センサ100の波形信号と第2焦電センサ200の波形信号との差分の一例を示す図である。
【0093】
図6Dは、在室者が複数人の場合の第1焦電センサ100の波形信号を一階微分した波形信号および第2焦電センサ200の波形信号を一階微分した波形信号の一例を示す図である。第1焦電センサ100の波形信号を一階微分した波形信号を実線、第2焦電センサ200の波形信号を一階微分した波形信号を破線で示している。
【0094】
図6Eは、在室者が複数人の場合の第1焦電センサ100の波形信号の周波数成分の一例を示す図である。
【0095】
図6Fは、在室者が複数人の場合の第2焦電センサ200の波形信号の周波数成分の一例を示す図である。
【0096】
図6Aおよび
図6Bに示されるように、第1焦電センサ100の波形信号と第2焦電センサ200の波形信号とは、類似していないことがわかる。第1焦電センサ100は部屋1の左側で手を振っている人を検知しており、第2焦電センサ200は部屋1の右側で歩いている人を検知しており、それぞれ異なる人を検知しているためである。したがって、
図6Cに示されるように、第1焦電センサ100の波形信号と第2焦電センサ200の波形信号との差分の総和が大きくなっている。
【0097】
また、
図6Dに示されるように、第1焦電センサ100の波形信号を一階微分した波形信号と、第2焦電センサ200の波形信号を一階微分した波形信号とは、類似していないことがわかる。
【0098】
また、
図6Eおよび
図6Fに示されるように、第1焦電センサ100の波形信号および第2焦電センサ200の波形信号の周波数成分も類似していないことがわかる。
【0099】
このように、在室者が複数人の場合に、それぞれ異なる在室者を検知している第1焦電センサ100および第2焦電センサ200の各種波形信号は類似しないことがわかる。
【0100】
なお、判定部30は、第3判定部33を備えていなくてもよい。この場合、判定部30は、第1総和が第1閾値以下であると判定した場合、または、第2総和が第2閾値以下であると判定した場合、在室者は一人であると判定し、第1総和が第1閾値以下でないと判定し、かつ、第2総和が第2閾値以下でないと判定した場合、在室者は複数人であると判定する。
【0101】
あるいは、判定部30は、第2判定部32を備えていなくてもよい。この場合、第2総和は、所定期間内における第1焦電センサ100の波形信号を二階微分した波形信号と第2焦電センサ200の波形信号を二階微分した波形信号との差分の絶対値の総和となり、判定部30は、第1総和が第1閾値以下であると判定した場合、または、第2総和が第2閾値以下であると判定した場合、在室者は一人であると判定し、第1総和が第1閾値以下でないと判定し、かつ、第2総和が第2閾値以下でないと判定した場合、在室者は複数人であると判定する。
【0102】
つまり、第2総和は、微分した波形信号についての差分の絶対値の総和であれば、一階微分した波形信号についての差分の絶対値の総和であってもよいし、二階微分した波形信号についての差分の絶対値の総和であってもよい。また、在室者が一人か複数人かを判定する際に、(i)波形信号の差分の絶対値の第1総和についての判定結果と、一階微分した波形信号の差分の絶対値の第2総和についての判定結果と、二階微分した波形信号の差分の絶対値の第3総和についての判定結果と、が用いられてもよいし、(ii)波形信号の差分の絶対値の第1総和についての判定結果と、一階微分した波形信号の差分の絶対値の第2総和についての判定結果と、が用いられてもよいし、(iii)波形信号の差分の絶対値の第1総和についての判定結果と、二階微分した波形信号の差分の絶対値の第2総和についての判定結果と、が用いられてもよい。
【0103】
以上説明したように、人検出装置10は、室内に設置され、人の存在を検知する第1焦電センサ100および第2焦電センサ200で得られた人の存在に関する波形信号を取得する取得部20と、取得部20が取得した第1焦電センサ100の波形信号と第2焦電センサ200の波形信号とに基づいて、在室者数を判定する判定部30と、を備える。判定部30は、所定期間内における第1焦電センサ100の波形信号と第2焦電センサ200の波形信号との差分の絶対値の第1総和を算出し、第1総和が第1閾値以下であるか否かを判定し、所定期間内における第1焦電センサ100の波形信号を微分した波形信号と第2焦電センサ200の波形信号を微分した波形信号との差分の絶対値の第2総和を算出し、第2総和が第2閾値以下であるか否かを判定する。そして、判定部30は、第1総和が第1閾値以下であると判定した場合、または、第2総和が第2閾値以下であると判定した場合、在室者は一人であると判定し、第1総和が第1閾値以下でないと判定し、かつ、第2総和が第2閾値以下でないと判定した場合、在室者は複数人であると判定する。
【0104】
これによれば、第1総和が第1閾値以下であると判定された場合、すなわち、第1焦電センサ100の波形信号と第2焦電センサ200の波形信号とが類似している場合、第1焦電センサ100および第2焦電センサ200が共に同じ一人の人を検知している可能性が高く、在室者は一人であると判定できる。一方で、第1総和が第1閾値以下でないと判定された場合、すなわち、第1焦電センサ100の波形信号と第2焦電センサ200の波形信号とが類似していない場合、第1焦電センサ100および第2焦電センサ200がそれぞれ異なる人を検知している可能性があり、在室者は複数人である可能性がある。ただし、本開示では、第1総和が第1閾値以下でないという判定だけでは、在室者は複数人であると判定されない。室内の環境などによって、第1焦電センサ100および第2焦電センサ200の波形信号が変化する場合があり、在室者は一人であり、第1焦電センサ100および第2焦電センサ200が共に同じ一人の人を検知している場合であっても、第1焦電センサ100の波形信号と第2焦電センサ200の波形信号とが類似しない場合があるためである。そこで、本開示では、微分した波形信号についての第2総和が第2閾値以下であるか否かの判定も行われる。これにより、第1総和が第1閾値以下であると判定された場合、または、第1総和が第1閾値以下であると判定された場合には、在室者は一人であると判定でき、第1総和が第1閾値以下でないと判定され、かつ、第2総和が第2閾値以下でないと判定された場合に、在室者は複数人であると判定できる。このように、本開示では、微分した波形信号についての判定結果も用いることで、在室者が一人か複数人かを高精度に判定することができる。
【0105】
例えば、第2総和は、所定期間内における第1焦電センサ100の波形信号を一階微分した波形信号と第2焦電センサ200の波形信号を一階微分した波形信号との差分の絶対値の総和であってもよい。
【0106】
本態様では、一階微分した波形信号についての判定結果も用いることで、在室者が一人か複数人かを高精度に判定することができる。
【0107】
あるいは、例えば、第2総和は、所定期間内における第1焦電センサ100の波形信号を二階微分した波形信号と第2焦電センサ200の波形信号を二階微分した波形信号との差分の絶対値の総和であってもよい。
【0108】
本態様では、二階微分した波形信号についての判定結果も用いることで、在室者が一人か複数人かを高精度に判定することができる。
【0109】
あるいは、例えば、第2総和は、所定期間内における第1焦電センサ100の波形信号を一階微分した波形信号と第2焦電センサ200の波形信号を一階微分した波形信号との差分の絶対値の総和であってもよい。また、判定部30は、さらに、所定期間内における第1焦電センサ100の波形信号を二階微分した波形信号と第2焦電センサ200の波形信号を二階微分した波形信号との差分の絶対値の第3総和を算出し、第3総和が第3閾値以下であるか否かを判定してもよい。そして、判定部30は、第1総和が第1閾値以下であると判定した場合、第2総和が第2閾値以下であると判定した場合、または、第3総和が第3閾値以下であると判定した場合、在室者は一人であると判定し、第1総和が第1閾値以下でないと判定し、かつ、第2総和が第2閾値以下でないと判定し、かつ、第3総和が第3閾値以下でないと判定した場合、在室者は複数人であると判定してもよい。
【0110】
本態様では、一階微分した波形信号についての判定結果および二階微分した波形信号についての判定結果も用いることで、在室者が一人か複数人かをより高精度に判定することができる。
【0111】
(その他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略等を行った実施の形態にも適応可能である。また、上記実施の形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
【0112】
例えば、上記実施の形態では、人検出装置10は、2つの焦電センサを備える例について説明したが、3つ以上の焦電センサを備えていてもよい。これにより、室内における人が存在する場所をより細かく特定することができるようになる。なお、人検出装置10は、焦電センサを備えていなくてもよい。この場合、人検出装置10は、人検出装置10の外部に設けられた第1焦電センサ100および第2焦電センサ200から波形信号を取得する。
【0113】
例えば、本開示は、人検出装置10として実現できるだけでなく、人検出装置10を構成する構成要素が行うステップ(処理)を含む人検出方法として実現できる。
【0114】
具体的には、人検出方法は、
図4に示されるように、室内に設置され、人の存在を検知する第1焦電センサおよび第2焦電センサで得られた人の存在に関する波形信号を取得する取得ステップ(ステップS100)と、取得ステップで取得した第1焦電センサの波形信号と第2焦電センサの波形信号とに基づいて、在室者数を判定する判定ステップと、を含み、判定ステップでは、所定期間内における第1焦電センサの波形信号と第2焦電センサの波形信号との差分の絶対値の第1総和を算出し、第1総和が第1閾値以下であるか否かを判定し(ステップS102)、所定期間内における第1焦電センサの波形信号を微分した波形信号と第2焦電センサの波形信号を微分した波形信号との差分の絶対値の第2総和を算出し、第2総和が第2閾値以下であるか否かを判定し(ステップS103)、第1総和が第1閾値以下であると判定した場合(ステップS102でYes)、または、第2総和が第2閾値以下であると判定した場合(ステップS103でYes)、在室者は一人であると判定し(ステップS106)、第1総和が第1閾値以下でないと判定し、かつ、第2総和が前記第2閾値以下でないと判定した場合(ステップS102でNo、かつ、ステップS103でNo)、在室者は複数人であると判定する(ステップS105)。
【0115】
例えば、人検出方法は、コンピュータ(コンピュータシステム)によって実行されてもよい。そして、本開示は、人検出方法に含まれるステップを、コンピュータに実行させるためのプログラムとして実現できる。さらに、本開示は、そのプログラムを記録したCD-ROM等である非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体として実現できる。
【0116】
例えば、本開示が、プログラム(ソフトウェア)で実現される場合には、コンピュータのCPU、メモリおよび入出力回路等のハードウェア資源を利用してプログラムが実行されることによって、各ステップが実行される。つまり、CPUがデータをメモリまたは入出力回路等から取得して演算したり、演算結果をメモリまたは入出力回路等に出力したりすることによって、各ステップが実行される。
【0117】
また、上記実施の形態の人検出装置10に含まれる構成要素は、集積回路(IC:Integrated Circuit)であるLSI(Large Scale Integration)として実現されてもよい。
【0118】
また、集積回路はLSIに限られず、専用回路または汎用プロセッサで実現されてもよい。プログラム可能なFPGA、または、LSI内部の回路セルの接続および設定が再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサが、利用されてもよい。
【0119】
さらに、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて、人検出装置10に含まれる構成要素の集積回路化が行われてもよい。
【0120】
以上のように、本開示における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、添付図面および詳細な説明を提供した。
【0121】
したがって、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0122】
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本開示は、人の存在を検出する装置などに適用できる。
【符号の説明】
【0124】
1 部屋
2 エアコン
10 人検出装置
20 取得部
30 判定部
31 第1判定部
32 第2判定部
33 第3判定部
100 第1焦電センサ
200 第2焦電センサ