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特許7542198レーザ加工ヘッド及びレーザ加工システム並びにレーザ加工システムの異常判定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】レーザ加工ヘッド及びレーザ加工システム並びにレーザ加工システムの異常判定方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/042 20140101AFI20240823BHJP
   B23K 26/064 20140101ALI20240823BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20240823BHJP
【FI】
B23K26/042
B23K26/064 K
B23K26/00 M
B23K26/00 Q
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021063723
(22)【出願日】2021-04-02
(65)【公開番号】P2022158669
(43)【公開日】2022-10-17
【審査請求日】2023-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大口 恒之
(72)【発明者】
【氏名】西尾 正敏
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-029964(JP,A)
【文献】特開2020-110845(JP,A)
【文献】特開2012-035307(JP,A)
【文献】特開2013-092688(JP,A)
【文献】特開2016-097412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/042
B23K 26/064
B23K 26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、前記筐体の内部に配置された複数の光学部品とを有するレーザ加工ヘッドであって、
前記筐体には、
第1レーザ光が入射される第1光入射口と、
第2レーザ光が入射される第2光入射口と、
前記第1レーザ光及び前記第2レーザ光を外部に出射する光照射口と、
前記第1光入射口から入射された前記第1レーザ光の光路を前記第2光入射口から入射された前記第2レーザ光の光路と分離する隔壁と、がそれぞれ設けられ、
前記第2レーザ光は、前記第1レーザ光よりも波長が短く、
前記第1光入射口から入射された前記第1レーザ光の光路の周りに設けられた第1光検出器と、
前記第2光入射口から入射された前記第2レーザ光の光路の周りに設けられた第2光検出器と、をさらに備え、
前記第1光検出器は、前記隔壁を挟んで、前記第2光検出器と反対側に配置され、
前記第1光検出器は、前記第2レーザ光の波長を含む第2波長帯の光を受光し、
前記第2光検出器は、前記第1レーザ光の波長を含む第1波長帯の光を受光し、
前記複数の光学部品の少なくとも一部は、前記第1レーザ光及び前記第2レーザ光の少なくとも一方の光路を変更して、前記光照射口から出射される前記第1レーザ光の光軸と前記第2レーザ光の光軸とが略一致するように前記筐体の内部に配置されていることを特徴とするレーザ加工ヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ加工ヘッドにおいて、
前記複数の光学部品は、
前記第2レーザ光の光路中に設けられ、前記第2レーザ光を反射して光路を変更させるベンドミラーと、
前記第1レーザ光の光路中であってかつ前記ベンドミラーで反射された前記第2レーザ光の光路中に設けられたダイクロイックミラーと、
前記光照射口を覆う保護ガラスと、を少なくとも含み、
前記ダイクロイックミラーは、
前記第1レーザ光の大部を透過して前記光照射口に向かわせ、かつ
前記第2レーザ光の大部を反射して前記光照射口に向かわせることを特徴とするレーザ加工ヘッド。
【請求項3】
請求項2に記載のレーザ加工ヘッドにおいて、
前記筐体の内部には、
前記第1光入射口と前記ダイクロイックミラーとの間に第1コリメートレンズが、
前記第2光入射口と前記ベンドミラーとの間に第2コリメートレンズが、
前記ダイクロイックミラーと前記光照射口との間にワーク側集光レンズが、それぞれ設けられており、
前記第1コリメートレンズは、前記第1レーザ光を平行化して前記ダイクロイックミラーに入射させ、
前記第2コリメートレンズは、前記第2レーザ光を平行化して前記ベンドミラーに入射させ、
前記ワーク側集光レンズは、入射された前記第1レーザ光及び前記第2レーザ光をそれぞれ所定の集光位置に集光させることを特徴とするレーザ加工ヘッド。
【請求項4】
請求項2または3に記載のレーザ加工ヘッドにおいて、
前記複数の光学部品は、
前記ダイクロイックミラーを透過した前記第2レーザ光の光路中であってかつ前記ダイクロイックミラーで反射された前記第1レーザ光の光路中に設けられたアパーチャーと、
前記アパーチャーを通過した前記第1レーザ光及び前記第2レーザ光の光路中に設けられた検出側集光レンズと、をさらに含み、
前記筐体の内部であって、前記検出側集光レンズを透過した前記第1レーザ光及び前記第2レーザ光をそれぞれ受光可能な位置に第5光検出器が配置され、
前記第5光検出器は、前記第1レーザ光及び前記第2レーザ光の少なくとも一方の出力をモニターすることを特徴とするレーザ加工ヘッド。
【請求項5】
請求項4に記載のレーザ加工ヘッドにおいて、
前記第5光検出器は、
前記第1レーザ光の波長を含む波長帯の光を受光する複数の第1受光部と、
前記第2レーザ光の波長を含む波長帯の光を受光する複数の第2受光部と、を少なくとも有しており、
前記複数の第1受光部及び前記複数の第2受光部は、前記第5光検出器の受光面上にそれぞれ周期的に配列されていることを特徴とするレーザ加工ヘッド。
【請求項6】
請求項5に記載のレーザ加工ヘッドにおいて、
前記第5光検出器は、近赤外光または赤外光、赤色光、緑色光及び青色光をそれぞれ受光する4つの画素が、受光面上に周期的に配列されたイメージセンサであることを特徴とするレーザ加工ヘッド。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載のレーザ加工ヘッドにおいて、
前記第1波長帯は、900nm以上、1200nm以下であり、
前記第2波長帯は、400nm以上、700nm以下であることを特徴とするレーザ加工ヘッド。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載のレーザ加工ヘッドにおいて、
前記第1光入射口から入射された前記第1レーザ光の光路の周りに設けられた第3光検出器と、
前記第2光入射口から入射された前記第2レーザ光の光路の周りに設けられた第4光検出器と、をさらに備え、
前記第3光検出器は、前記隔壁を挟んで、前記第4光検出器と反対側に配置され、
前記第3光検出器は、前記第1波長帯の光を受光し、
前記第4光検出器は、前記第2波長帯の光を受光することを特徴とするレーザ加工ヘッド。
【請求項9】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載のレーザ加工ヘッドと、
前記第1レーザ光を出射する第1レーザ発振器と、
前記第2レーザ光を出射する第2レーザ発振器と、
前記第1光入射口に接続され、前記第1レーザ発振器から出射された前記第1レーザ光を前記レーザ加工ヘッドに伝送する第1光ファイバと、
前記第2光入射口に接続され、前記第2レーザ発振器から出射された前記第2レーザ光を前記レーザ加工ヘッドに伝送する第2光ファイバと、を少なくとも備え、
前記レーザ加工ヘッドは、前記第1レーザ光及び前記第2レーザ光の少なくとも一方をワークに向けて照射することを特徴とするレーザ加工システム。
【請求項10】
請求項8に記載のレーザ加工ヘッドと、
前記第1レーザ光を出射する第1レーザ発振器と、
前記第2レーザ光を出射する第2レーザ発振器と、
前記第1光入射口に接続され、前記第1レーザ発振器から出射された前記第1レーザ光を前記レーザ加工ヘッドに伝送する第1光ファイバと、
前記第2光入射口に接続され、前記第2レーザ発振器から出射された前記第2レーザ光を前記レーザ加工ヘッドに伝送する第2光ファイバと、を少なくとも備え、
前記レーザ加工ヘッドは、前記第1レーザ光及び前記第2レーザ光の少なくとも一方をワークに向けて照射することを特徴とするレーザ加工システム。
【請求項11】
請求項10に記載のレーザ加工システムにおいて、
前記第1レーザ発振器には、前記第1光ファイバとの接続部の近傍であって、前記第1光ファイバからの反射戻り光を受光可能な位置に第6光検出器が配置され、
前記第2レーザ発振器には、前記第2光ファイバとの接続部の近傍であって、前記第2光ファイバからの反射戻り光を受光可能な位置に第7光検出器が配置されていることを特徴とするレーザ加工システム。
【請求項12】
請求項9に記載のレーザ加工システムにおける異常の有無を判定する異常判定方法であって、
前記第2レーザ光を前記ワークに向けて照射している場合に、
前記第1光検出器の出力信号に基づいて、前記ワークの加工状態または前記筐体の内部の光学部品の状態に異常があるか否かを判定し、
前記第1レーザ光を前記ワークに向けて照射している場合に、
前記第2光検出器の出力信号に基づいて、前記ワークの加工状態または前記筐体の内部の光学部品の状態に異常があるか否かを判定することを特徴とするレーザ加工システムの異常判定方法。
【請求項13】
請求項10に記載のレーザ加工システムにおける異常の有無を判定する異常判定方法であって、
前記第2レーザ光を前記ワークに向けて照射している場合に、
前記第1光検出器の出力信号に基づいて、前記ワークの加工状態に異常があるか否かを判定し、
前記第1レーザ光を前記ワークに向けて照射している場合に、
前記第2光検出器の出力信号に基づいて、前記ワークの加工状態に異常があるか否かを判定し、
前記第2光検出器及び前記第3光検出器の出力信号に基づいて、前記第1レーザ光の出力を推定し、また、前記筐体の内部の光学部品の状態に異常があるか否かを判定し、
前記第1光検出器及び前記第4光検出器の出力信号に基づいて、前記第2レーザ光の出力を推定し、また、前記筐体の内部の光学部品の状態に異常があるか否かを判定することを特徴とするレーザ加工システムの異常判定方法。
【請求項14】
請求項11に記載のレーザ加工システムにおける異常の有無を判定する異常判定方法であって、
前記第2レーザ光を前記ワークに向けて照射している場合に、
前記第1光検出器の出力信号に基づいて、前記ワークの加工状態に異常があるか否かを判定し、
前記第1レーザ光を前記ワークに向けて照射している場合に、
前記第2光検出器の出力信号に基づいて、前記ワークの加工状態に異常があるか否かを判定し、
前記第2光検出器及び前記第3光検出器の出力信号に基づいて、前記第1レーザ光の出力を推定し、
前記第1光検出器及び前記第4光検出器の出力信号に基づいて、前記第2レーザ光の出力を推定し、
前記第3光検出器及び前記第6光検出器の出力信号に基づいて、前記第1レーザ光の光路中に配置された前記光学部品に異常があるか否かを判定し、
前記第4光検出器及び前記第7光検出器の出力信号に基づいて、前記第2レーザ光の光路中に配置された前記光学部品に異常があるか否かを判定することを特徴とするレーザ加工システムの異常判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ加工ヘッド、特に互いに波長の異なる2本のレーザ光を出射するレーザ加工ヘッド及びこれを備えたレーザ加工システム並びにレーザ加工システムの異常判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ加工システムは、ワークの切断、溶接、穴開け等のレーザ加工を行う。レーザ加工システムにおいて、レーザ加工ヘッドは、レーザ発振器から出射され、光ファイバを介して導かれたレーザ光を、ワークに照射する。レーザ加工ヘッドには、レーザ光を集光してワークに照射するための集光光学系が設けられている。
【0003】
レーザ加工時に、レーザ加工ヘッドに設けられた光学部品に、ワークが溶融して飛び散ったスパッタ等が付着する場合がある。このようなスパッタの付着が起こると、レーザ加工ヘッドの内部でレーザ光が散乱され、所望のパワーでレーザ光をワークに照射できず、加工不良や加工品質の低下を招くことがある。
【0004】
このような不具合に対応するため、例えば、特許文献1には、加工用レーザ光よりも低出力の検査用レーザ光をレーザ発振器で発生させ、検査用レーザ光をレーザ加工ヘッドを経由してワークに向けて照射するレーザ加工システムが開示されている。レーザ加工ヘッドの内部には、ワークで反射された戻り光を受光する受光部が設けられている。受光部で検出された戻り光の強度に基づいて、レーザ加工ヘッドの光照射口を覆う保護ガラスの汚れ具合を判断し、また、ワークに照射される加工用レーザ光のパワー低下の度合いを判断する。パワー低下の度合いが小さければ、加工用レーザ光の出力を補正してレーザ加工を行い、当該度合いが大きければ、レーザ加工を中断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-097412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、例えば近赤外と青色のような互いに波長の異なる2種類のレーザ光を用いたハイブリットレーザ加工システムが知られている。ハイブリットレーザ加工システムは、互いに波長の異なる2種類のレーザ光をレーザ加工ヘッドで同一光軸上に組み合わせて、当該組み合わされた2種類のレーザ光をそれぞれ集光してワークに照射する。ハイブリットレーザ加工システムは、各レーザ光の長所を活かしたり、短所を補完したりすることができるので、1種類のレーザ光のみを用いた従来のレーザ加工システムに比較して、多くの利点を有する。
【0007】
このようなハイブリッドレーザ加工システムにおいても、特許文献1と同様に、レーザ加工ヘッドの内部の状態を判定することが求められている。また、ワークからの反射戻り光を検出し、その結果に基づいてワークの加工状態を判定することも求められてきている。
【0008】
しかし、特許文献1に開示された従来の構成では、ワークからの反射戻り光とレーザ加工ヘッドの内部の光学部品でのケラレ光とを切り分けて、ワークの加工状態とレーザ加工ヘッドの内部の状態とを判定することは難しかった。特に、ハイブリットレーザ加工システムでは、それぞれのレーザ光の光路中に複数の光学部品が配置されており、これらの状態判定がさらに困難となっていた。
【0009】
本開示はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、互いに波長の異なるレーザ光をワークに向けて照射するレーザ加工ヘッドにおいて、反射戻り光に基づいてワークの加工状態を判定可能なレーザ加工ヘッド及びこれを備えたレーザ加工システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係るレーザ加工ヘッドは、筐体と、前記筐体の内部に配置された複数の光学部品とを有するレーザ加工ヘッドであって、前記筐体には、第1レーザ光が入射される第1光入射口と、第2レーザ光が入射される第2光入射口と、前記第1レーザ光及び前記第2レーザ光を外部に出射する光照射口と、前記第1光入射口から入射された前記第1レーザ光の光路を前記第2光入射口から入射された前記第2レーザ光の光路と分離する隔壁と、がそれぞれ設けられ、前記第2レーザ光は、前記第1レーザ光よりも波長が短く、前記第1光入射口から入射された前記第1レーザ光の光路の周りに設けられた第1光検出器と、前記第2光入射口から入射された前記第2レーザ光の光路の周りに設けられた第2光検出器と、をさらに備え、前記第1光検出器は、前記隔壁を挟んで、前記第2光検出器と反対側に配置され、前記第1光検出器は、前記第2レーザ光の波長を含む第2波長帯の光を受光し、前記第2光検出器は、前記第1レーザ光の波長を含む第1波長帯の光を受光し、前記複数の光学部品の少なくとも一部は、前記第1レーザ光及び前記第2レーザ光の少なくとも一方の光路を変更して、前記光照射口から出射される前記第1レーザ光の光軸と前記第2レーザ光の光軸とが略一致するように前記筐体の内部に配置されていることを特徴とする。
【0011】
本開示に係るレーザ加工システムは、前記レーザ加工ヘッドと、前記第1レーザ光を出射する第1レーザ発振器と、前記第2レーザ光を出射する第2レーザ発振器と、前記第1光入射口に接続され、前記第1レーザ発振器から出射された前記第1レーザ光を前記レーザ加工ヘッドに伝送する第1光ファイバと、前記第2光入射口に接続され、前記第2レーザ発振器から出射された前記第2レーザ光を前記レーザ加工ヘッドに伝送する第2光ファイバと、を少なくとも備え、前記レーザ加工ヘッドは、前記第1レーザ光及び前記第2レーザ光の少なくとも一方をワークに向けて照射することを特徴とする。
【0012】
本開示に係るレーザ加工システムの異常判定方法は、前記レーザ加工システムにおける異常の有無を判定する異常判定方法であって、前記第2レーザ光を前記ワークに向けて照射している場合に、前記第1光検出器の出力信号に基づいて、前記ワークの加工状態または前記筐体の内部の光学部品の状態に異常があるか否かを判定し、前記第1レーザ光を前記ワークに向けて照射している場合に、前記第2光検出器の出力信号に基づいて、前記ワークの加工状態または前記筐体の内部の光学部品の状態に異常があるか否かを判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、ハイブリットレーザ加工システムにおいて、ワークの加工状態を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態1に係るレーザ加工システムの概略構成図である。
図2】レーザ加工ヘッドの内部構造を示す概略構成図である。
図3】イメージセンサの画素構造を示す模式図である。
図4】RGB画素の受光効率と波長との関係の一例を示す図である。
図5A】イメージセンサの受光面に集光された第1レーザ光及び第2レーザ光のスポットを示す画像の一例である。
図5B】ワークの表面に集光された第1レーザ光及び第2レーザ光のスポットを示す画像の一例である。
図6A】第1光検出器及び第3光検出器の模式図である。
図6B】第2光検出器及び第4光検出器の模式図である。
図7】第1レーザ光をワークに照射した場合の反射光の状態を示す模式図である。
図8】第2レーザ光をワークに照射した場合の反射光の状態を示す模式図である。
図9】第1レーザ光及び第2レーザ光をワークに照射した場合の第1~第4光検出器の出力を示す一例である。
図10】実施形態2に係る第1レーザ光をワークに照射した場合の第2及び第3光検出器の出力を示す一例である。
図11】実施形態3に係るレーザ加工システムの概略構成図である。
図12】第1レーザ光をワークに照射した場合の第2、第3及び第6光検出器の出力を示す一例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0016】
(実施形態1)
[レーザ加工システムの構成]
図1は、本実施形態に係るレーザ加工システム(レーザ加工装置)1を示す。レーザ加工システム1は、互いに波長の異なる2種類のレーザ光を用いたハイブリットレーザ加工システムであり、ワークWの切断、溶接、穴開け等のレーザ加工を行う。
【0017】
レーザ加工システム1は、レーザ加工ヘッド(レーザ照射ヘッド)10と、第1レーザ発振器2及び第2レーザ発振器3と、第1光ファイバ4及び第2光ファイバ5と、マニピュレータ6と、制御装置7と、を備える。
【0018】
第1レーザ発振器2は、第1レーザ光Aを出射する。第2レーザ発振器3は、第2レーザ光Bを出射する。第1レーザ光Aと第2レーザ光Bとは、互いに波長が異なる。第1レーザ光Aは、近赤外光であり、その波長が900nm~1200nm程度である。第2レーザ光Bは、青色光であり、その波長が400nm~450nm程度である。一般に、レーザ加工には近赤外光が適用されるが、銅への吸収率が良い等との理由から、近年、青色光もレーザ加工に適用されつつある。なお、第2レーザ光Bを緑色光(波長:450nm~550nm程度)としてもよい。
【0019】
第1光ファイバ4は、第1レーザ光Aを、第1レーザ発振器2からレーザ加工ヘッド10へ伝送する。第2光ファイバ5は、第2レーザ光Bを、第2レーザ発振器3からレーザ加工ヘッド10へ伝送する。
【0020】
レーザ加工ヘッド10は、第1レーザ光A及び第2レーザ光Bの少なくとも一方をワークWの表面W1に照射する。その場合、レーザ加工ヘッド10からワークWに向かう第1レーザ光Aの光軸と第2レーザ光Bの光軸とが同じになるようにする。例えば、第1レーザ光A及び第2レーザ光Bの両方が同時にワークWの表面W1に照射される場合、第1レーザ光Aの光軸と第2レーザ光Bの光軸とが重ね合わされた状態でワークWに照射される。レーザ加工ヘッド10の詳細については、後述する。
【0021】
マニピュレータ6は、先端にレーザ加工ヘッド10が取り付けられ、レーザ加工ヘッド10を移動させる。制御装置7は、マニピュレータ6の動作及び各レーザ発振器2,3によるレーザ光A,Bの発振を制御する。制御装置7は、レーザ加工ヘッド10の内部における後述するアクチュエータの動作を制御してもよい。
【0022】
[レーザ加工ヘッドの構成]
図2は、レーザ加工ヘッド10の内部構造を示す。なお、図2におけるX,Y,Zは直交座標系における各方向を示し、X,Yが前後左右の水平方向、Zが上下方向(鉛直方向)である。また、各レーザ光A,Bの光軸(各レーザ光A,Bにおける光束の代表となる仮想的な光線)の延びる方向を、「光軸方向」という。光軸方向は、直交座標系X,Y,Zにおいて常に一定ではなく、各レーザ光A,Bの進行に応じて変化し得る。
【0023】
レーザ加工ヘッド10は、筐体11の内部に設けられた集光光学系によって、第1レーザ光A及び第2レーザ光Bをそれぞれ集光してワークWに照射する。レーザ加工ヘッド10は、集光光学系として、第1コリメートレンズ20と、第2コリメートレンズ21と、ベンドミラー30と、ダイクロイックミラー40と、ワーク側集光レンズ50と、と、を備える。また、レーザ加工ヘッド10は、調整手段の一部としてのミラー側アクチュエータ80と、調整手段の一部としての第1レンズ側アクチュエータ81と、調整手段の一部としての第2レンズ側アクチュエータ82と、を備える。
【0024】
レーザ加工ヘッド10は、第3光検出器91aと、第1光検出器91bと、第2光検出器92aと、第4光検出器92bと、を備える。また、レーザ加工ヘッド10は、イメージセンサ(第5光検出器)60と、検出側集光レンズ70と、アパーチャー71と、を備える。筐体11の内部における第1~第4光検出器91b,92a,91a,92bの配置関係及び各光検出器の機能については、後で詳しく述べる。
【0025】
筐体11には、Z方向で上側に第1光入射口12aと第2光入射口12bとが設けられている。第1光入射口12aと第2光入射口12bとは所定の間隔をあけて設けられている。第1光ファイバ4は第1光入射口12aに接続され、第1レーザ光Aは第1光入射口12aを通して筐体11の内部に入射される。第2光ファイバ5は第2光入射口12bに接続され、第2レーザ光Bは第2光入射口12bを通して筐体11の内部に入射される。なお、第1光入射口12aと第2光入射口12bとを総称して、入射部12と呼ぶことがある。
【0026】
また、筐体11には、Z方向で下側に光照射口(照射部)13が設けられている。第1レーザ光A及び第2レーザ光Bは光照射口13に設けられた保護ガラス14を通してワークWの表面W1に照射される。
【0027】
筐体11には、隔壁11aが設けられている。隔壁11aは、Y方向において、第1光入射口12aと第2光入射口12bとの間に設けられている。Z方向において、筐体11の上側の内壁から第1コリメートレンズ20及び第2コリメートレンズ21の近傍まで延びている。隔壁11aは、第1光入射口12aから入射された第1レーザ光Aの光路を第2光入射口12bから入射された第2レーザ光Bの光路と分離する。
【0028】
第1コリメートレンズ20は、第1レーザ光Aを平行光線に変換する。第2コリメートレンズ21は、第2レーザ光Bを平行光線に変換するなお、第1コリメートレンズ20及び第2コリメートレンズ21にそれぞれ入射するまで、第1レーザ光A及び第2レーザ光Bは、互いに並行に、Z方向に直進する。
【0029】
ベンドミラー30は、第1レーザ光Aの光軸に並行な第2レーザ光Bの光軸を、第1レーザ光Aの光軸に交差する方向に、具体的には直交する方向(Y方向)に変更させる。
【0030】
ダイクロイックミラー40は、特定の波長領域の光の大部分を透過し、それ以外の波長領域の光の大部分を反射するミラーである。本実施形態では、ダイクロイックミラー40は、裏面41側から入射した第1レーザ光Aの大部分を表面42側に略真直ぐに透過するとともに、表面42側から入射した第2レーザ光Bの大部分を表面42側に略直角に反射する。一方、ダイクロイックミラー40は、裏面41側から入射した第1レーザ光Aの残部を裏面41側に略直角に反射するとともに、表面42側から入射した第2レーザ光Bの残部を裏面41側に略真直ぐに透過する。
【0031】
ダイクロイックミラー40を透過した第1レーザ光Aの大部分及びダイクロイックミラー40により反射した第2レーザ光Bの大部分の光軸方向進行側には、光照射口13が配置されている。すなわち、ダイクロイックミラー40は、第1レーザ光Aの大部分をワークW側に透過するとともに、第2レーザ光Bの大部分をワークW側に反射する。
【0032】
なお、各レーザ光A,Bの大部分とは、例えば、エネルギー換算で、ダイクロイックミラー40に入射する前の各レーザ光A,Bの95%~99.9%程度である。各レーザ光A,Bの残部とは、例えば、エネルギー換算で、ダイクロイックミラー40に入射する前の各レーザ光A,Bの0.1%~5%程度である。
【0033】
ワーク側集光レンズ50は、光軸方向において、ダイクロイックミラー40とワークWとの間に、配置されている。ワーク側集光レンズ50は、第1レーザ光A及び第2レーザ光Bをそれぞれ集光する。集光した第1レーザ光A及び第2レーザ光Bは、光照射口13を介して、ワークWの表面W1にそれぞれ照射される。ワーク側集光レンズ50は、色収差補正機能を有してもよい。この場合、ワーク側集光レンズ50を透過した第1レーザ光A及び第2レーザ光Bのそれぞれの集光位置は、Z方向において略一致する。
【0034】
イメージセンサ(第5光検出器)60は、その受光面61に結像させた光の明暗を電荷の量に光電変換し、それを読み出して電気信号に変換する撮像素子である。イメージセンサ60は、ダイクロイックミラー40の裏面41側に、配置されている。具体的には、イメージセンサ60は、ダイクロイックミラー40により反射した第1レーザ光Aの残部及びダイクロイックミラー40を透過した第2レーザ光Bの残部の光軸方向進行側に配置されている。すなわち、イメージセンサ60は、ダイクロイックミラー40により反射した第1レーザ光Aの残部及びダイクロイックミラー40を透過した第2レーザ光Bの残部のそれぞれを受光面61で受光する。
【0035】
アパーチャー71は、光軸方向において、ダイクロイックミラー40と検出側集光レンズ70との間に配置されている。
【0036】
検出側集光レンズ70は、光軸方向において、アパーチャー71とイメージセンサ60との間に配置されている。検出側集光レンズ70は、第1レーザ光A及び第2レーザ光Bをそれぞれ集光する。そして、検出側集光レンズ70は、集光した第1レーザ光A及び第2レーザ光Bのそれぞれを、イメージセンサ60の受光面61に照射する。検出側集光レンズ70は、色収差補正機能を有してもよい。この場合、検出側集光レンズ70を透過した第1レーザ光A及び第2レーザ光Bのそれぞれの集光位置は、Y方向において略一致する。
【0037】
ワークWの表面W1に照射される第1レーザ光Aの集光状態に対応するように、検出側集光レンズ70のサイズや曲率、また、検出側集光レンズ70とイメージセンサ60との距離が設定されている。つまり、イメージセンサ60の受光面61に照射される第1レーザ光Aの集光状態は、ワークWの表面W1に照射される第1レーザ光Aの集光状態に対応している。
【0038】
同様に、ワークWの表面W1に照射される第2レーザ光Bの集光状態に対応するように、検出側集光レンズ70のサイズや曲率、また、検出側集光レンズ70とイメージセンサ60との距離が設定されている。つまり、イメージセンサ60の受光面61に照射される第2レーザ光Bの集光状態は、ワークWの表面W1に照射される第2レーザ光Bの集光状態に対応している。
【0039】
例えば、イメージセンサ60の受光面61で第1レーザ光Aのスポット径(検出側第1スポット径Daj)が拡がれば、ワークWの表面W1に照射される第1レーザ光Aのスポット径(ワーク側第1スポット径Dai)も拡がる。イメージセンサ60の受光面61で第2レーザ光Bの集光位置がシフトすれば、ワークWの表面W1に照射される第2レーザ光Bの集光位置も同様にシフトする。なお、本実施形態において、「スポット径」とは、任意の像面(例えば、ワークWの表面W1やイメージセンサ60の受光面61)におけるレーザ光の直径を意味し、必ずしも、レーザ光の集光点における直径に限定されない。
【0040】
ミラー側アクチュエータ80は、ベンドミラー30の傾きを、変化させる。ミラー側アクチュエータ80は、例えば、チルト軸及び当該チルト軸を回転させるモータで構成されている。ミラー側アクチュエータ80によるベンドミラー30の傾き変化によって、ベンドミラー30により曲げられる第2レーザ光Bの光軸の向きが変化する。これにより、第2レーザ光Bの集光位置が変化する。
【0041】
第1レンズ側アクチュエータ81は、第1コリメートレンズ20を、光軸方向(Z方向)に移動させる。第1レンズ側アクチュエータ81は、例えば、リニアモータで構成されている。第2レンズ側アクチュエータ82は、第2コリメートレンズ21を、光軸方向(Z方向)に移動させる。第2レンズ側アクチュエータ82は、例えば、リニアモータで構成されている。各レンズ側アクチュエータ81,82による各コリメートレンズ20,21の光軸方向(Z方向)における移動によって、第1レーザ光A及び第2レーザ光Bの後述するスポット径がそれぞれ変化する。
【0042】
なお、各レンズ側アクチュエータ81,82によって各コリメートレンズ20,21を光軸方向(Z方向)に移動させる際、各コリメートレンズ20,21は、必ずしも光軸方向(Z方向)に真直ぐに移動するのではなく、光軸方向に直交する水平方向(X方向及びY方向)に多少動いたり、多少傾いたりすることがある。
【0043】
以上説明したように、複数の光学部品の少なくとも一部、この場合は、ベンドミラー30とダイクロイックミラー40とは、第2レーザ光Bの光路を変更して、光照射口13から出射される第1レーザ光Aの光軸と第2レーザ光Bの光軸とが略一致するように筐体11の内部に配置されている。
【0044】
[イメージセンサの構成]
図3は、イメージセンサの画素構造を模式的に示す。図4は、RGB画素の受光効率と波長との関係を示す。
【0045】
図3に示すように、イメージセンサ60は、近赤外光または赤外光を受光する画素(以下、N画素と呼ぶ。)、赤色光を受光する画素(以下、R画素と呼ぶ。)、緑色光を受光する画素(以下、G画素と呼ぶ。)、及び青色光を受光する画素(以下、B画素と呼ぶ。)の計4つの画素を一単位として配列されている。具体的には、公知のべイヤー配列に対して、一方のG画素がN画素に置換されたカラーフィルター配列となっている。
【0046】
図4に示すように、R画素は、波長帯が600nm~850nm程度の光を光電変換する量子効率が高くなっており、通常の赤色光(600nm~700nm程度)の光を効率良く電気信号に変換する。G画素は、波長帯が500nm~550nm程度の光を光電変換する量子効率が高くなっており、通常の緑色光(500nm~550nm程度)の光を効率良く電気信号に変換する。B画素は、波長帯が400nm~500nm程度の光を光電変換する量子効率が高くなっており、通常の青色光(420nm~480nm程度)の光を効率良く電気信号に変換する。なお、図示しないが、N画素は、波長帯が900nm~1200nm程度の光を光電変換する量子効率が高くなっており、近赤外光または赤外光(900nm~1200nm程度)の光を効率良く電気信号に変換する。
【0047】
前述したように、第1レーザ光Aの波長は900nm~1200nm程度であり、第2レーザ光Bの波長は400nm~450nm程度である。したがって、図3に示すイメージセンサ60を用いることにより、検出側集光レンズ70を透過した第1レーザ光A及び第2レーザ光Bを確実に電気信号に変換できる。また、各画素のサイズを適切に設定することにより、受光面61での第1レーザ光A及び第2レーザ光Bのそれぞれの2次元分布を把握できる。後で述べるように、当該2次元分布や受光面61での第1レーザ光A及び第2レーザ光Bのそれぞれのスポット径に基づいて、ワークWの表面W1での第1レーザ光A及び第2レーザ光Bの集光位置やスポット径を修正することができる。
【0048】
なお、第1レーザ光A及び第2レーザ光Bをそれぞれ確実に電気信号に変換するという観点で言えば、例えば、図3に示すR画素をB画素に置き換え、さらに、G画素をN画素に置き換えてもよい。つまり、B画素とN画素の2種類のみを周期的に配列するようにしてもよい。また、第2レーザ光Bが緑色光である場合は、B画素をG画素に置き換えてもよい。
【0049】
[集光状態のモニター及び調整]
実際にワークWをレーザ加工する場合、表面W1での第1レーザ光A及び第2レーザ光Bのそれぞれの集光状態をモニターすることはできない。一方、本実施形態によれば、前述したように、イメージセンサ60の受光面61に照射される第1レーザ光A及び第2レーザ光Bのそれぞれの集光状態は、ワークWの表面W1に照射される第1レーザ光A及び第2レーザ光Bのそれぞれの集光状態に対応している。つまり、イメージセンサ60の受光面61に照射された第1レーザ光A及び第2レーザ光Bのスポット画像に基づいて、ワークWの表面W1での集光状態をモニターすることができる。
【0050】
図5Aは、イメージセンサの受光面に集光された第1レーザ光及び第2レーザ光のスポット画像の一例を示し、図5Bは、ワークの表面に集光された第1レーザ光及び第2レーザ光のスポット画像の一例を示す。
【0051】
後で述べるように、レーザ加工ヘッド10の内部の各光学部品の配置関係を調整して適切に設定することで、図5Bに示すように、第1レーザ光A及び第2レーザ光Bが、ワークWの表面W1で一致または近接して集光される。また、第1レーザ光Aのワーク側第1スポットSaiと第2レーザ光Bのワーク側第2スポットSbiは、ともに加工に適したサイズになるように調整される。第1レーザ光Aのワーク側第1スポット径Dai及び第2レーザ光Bのワーク側第2スポット径Dbiは、ともに加工に適したサイズになるように調整される。
【0052】
イメージセンサ60で取得された第1レーザ光A及び第2レーザ光Bの画像に基づいて、ワークWの表面W1での第1レーザ光A及び第2レーザ光Bの集光位置を調整することができる。
【0053】
例えば、第1レーザ光Aの集光位置と第2レーザ光Bの集光位置とが2つのレーザ光の光軸ずれに起因してずれている場合、ミラー側アクチュエータ80を傾動させて、2つのレーザ光の集光位置を一致させることができる。また、例えば、イメージセンサ60の受光面61に照射された第1レーザ光Aのスポット画像がデフォーカスしている場合、第1レンズ側アクチュエータ81を駆動してデフォーカス状態を解消させる。このようにすることで、ワークWの表面W1で第1レーザ光Aが焦点を結ぶようにすることができる。同様に、イメージセンサ60の受光面61に照射された第2レーザ光Bのスポット画像がデフォーカスしている場合、第2レンズ側アクチュエータ82を駆動してデフォーカス状態を解消させる。このようにすることで、ワークWの表面W1で第2レーザ光Bが焦点を結ぶようにすることができる。
【0054】
[第1~第4光検出器の構成]
図6Aは、第1光検出器及び第3光検出器の構成を模式的に示し、図6Bは、第2光検出器及び第4光検出器の構成を模式的に示す。
【0055】
図6Aに示すように、第1光検出器91bは、フォトダイオード91b1と波長選択フィルター91b2とで構成されている。波長選択フィルター91b2は、青色光の波長を含む第2波長帯の光を透過し、それ以外の波長の光を遮断するように構成されている。第3光検出器91aは、フォトダイオード91a1と波長選択フィルター91a2とで構成されている。波長選択フィルター91a2は、近赤外光または赤外光の波長を含む第1波長帯の光を透過し、それ以外の波長の光を遮断するように構成されている。
【0056】
図6Bに示すように、第2光検出器92aは、フォトダイオード92a1と波長選択フィルター92a2とで構成されている。波長選択フィルター92a2は、近赤外光または赤外光の波長を含む第1波長帯の光を透過し、それ以外の波長の光を遮断するように構成されている。第4光検出器92bは、フォトダイオード92b1と波長選択フィルター92b2とで構成されている。波長選択フィルター92b2は、青色光の波長を含む第2波長帯の光を透過し、それ以外の波長の光を遮断するように構成されている。
【0057】
後で述べるように、第1~第4光検出器91b,92a,91a,92bのそれぞれは、ワークWまたは筐体11の内部の光学部品、例えば、保護ガラスで反射された第1レーザ光Aまたは第2レーザ光を受光可能な位置に配置される必要がある。したがって、図2に示すように、第1光検出器91b及び第3光検出器91aは、第1光入射口12aから入射された第1レーザ光Aの光路の周りに設けられている。第2光検出器92a及び第4光検出器92bは、第2光入射口12bから入射された第2レーザ光Bの光路の周りに設けられている。
【0058】
また、第1光検出器91b及び第3光検出器91aと第2光検出器92a及び第4光検出器92bとの間には隔壁11aが設けられている。このようにすることで、第1光検出器91b及び第3光検出器91aが受光可能な光路と第2光検出器92a及び第4光検出器92bが受光可能な光路とが分離される。
【0059】
本実施形態において、第1波長帯は、900nm~1200nmの範囲を言い、第2波長帯は、400nm~600nmの範囲を言う。ただし、特にこれに限定されない。後で述べるように、第1~第4光検出器91b,92a,91a,92bのそれぞれは、ワークWまたは筐体11の内部の光学部品、例えば、保護ガラスで反射された第1レーザ光Aまたは第2レーザ光を受光する。しかし、レーザ光が金属に照射された場合、金属の表面でプラズモンと相互作用を生じて、反射光の波長がシフトすることがある。第1~第4光検出器91b,92a,91a,92bは、それぞれ、このように波長がシフトした反射光を受光できる必要がある。
【0060】
このため、第1光検出器91b及び第4光検出器92bの受光可能な波長域を第2レーザ光Bの波長域と同じかそれよりも広くして、例えば、前述の第2波長帯とする必要がある。同様に、第2光検出器92a及び第3光検出器91aの受光可能な波長域を第1レーザ光Aの波長域と同じかそれよりも広くして、例えば、前述の第1波長帯とする必要がある。
【0061】
つまり、第1光検出器91bは、第1レーザ光Aの光路の周りに設けられ、ワークW等で反射された第2レーザ光Bを受光する。第2光検出器92aは、第2レーザ光Bの光路の周りに設けられ、ワークW等で反射された第1レーザ光Aを受光する。第3光検出器91aは、第1レーザ光Aの光路の周りに設けられ、ワークW等で反射された第1レーザ光Aを受光する。第4光検出器92bは、第2レーザ光Bの光路の周りに設けられ、ワークW等で反射された第2レーザ光Bを受光する。
【0062】
また、波長選択フィルター91a2,92a2は、第1波長帯及びこれよりも長い波長の光を透過し、第1波長帯よりも短い波長域の光を遮断するようにしてもよい。第2波長帯の光に対して所定以下の受光感度であればよい。同様に、波長選択フィルター91b2,92b2は、第2波長帯及びこれよりも短い波長の光を透過し、第2波長帯よりも長い波長域の光を遮断するようにしてもよい。第1波長帯の光に対して所定以下の受光感度であればよい。
【0063】
なお、図6A,6Bに示す例では、第1~第4光検出器91b,92a,91a,92bのそれぞれが、フォトダイオード及びこれと別体に設けられた波長選択フィルターとで構成されているが、特にこれに限定されず、フォトダイオードの表面に波長選択フィルターを直接形成する等して、一体化してもよい。また、フォトダイオード91b1,91a1,92a1,92b1は、フォトダイオードアレイであってもよい。
【0064】
[レーザ加工システムの異常判定手順]
図7は、第1レーザ光をワークに照射した場合の反射光の状態を模式的に示す。図8は、第2レーザ光をワークに照射した場合の反射光の状態を模式的に示す。図9は、第1レーザ光及び第2レーザ光をワークに照射した場合の第1~第4光検出器の出力を示す一例である。
【0065】
なお、説明の便宜上、図7,8において、レーザ加工ヘッド10を構成する各部品のうち、第1~第4光検出器91b,92a,91a,92bとベンドミラー30とダイクロイックミラー40と保護ガラス14のみを図示している。
【0066】
前述したように、レーザ加工時にワークWの加工状態をモニターし、また、レーザ加工システム1の異常を検出することで、加工異常の発生や加工品質の低下を抑制することができる。レーザ加工システム1の異常として、例えば、レーザ加工ヘッド10の内部の光学部品の異常や第1光ファイバ4及び第2光ファイバ5の異常等が挙げられる。また、第1レーザ発振器2や第2レーザ発振器3の出力異常も含まれる。
【0067】
しかし、第1レーザ光A及び第2レーザ光BをワークWに照射するレーザ加工ヘッド10の内部では、ワークWからの反射戻り光や保護ガラス14等の光学部品でのケラレ光が混在する。また、それぞれに第1レーザ光Aに起因する成分と第2レーザ光Bに起因する成分とが含まれる。
【0068】
特許文献1に開示されるように、単にレーザ加工ヘッド10の内部に光検出器を設けるだけでは、それぞれの成分の切り分けがうまくいかず、ワークWの加工状態やレーザ加工ヘッド10の内部の光学部品の状態を判定するのが難しいことは既に述べたとおりでる。
【0069】
そこで、本実施形態のレーザ加工ヘッド10では、筐体11の内部の前述の位置に第1~第4光検出器91b,92a,91a,92bをそれぞれ配置している。また、第1~第4光検出器91b,92a,91a,92bの光検出機能、具体的には受光可能な光の波長帯を前述のように設定している。
【0070】
このようにすることで、第1~第4光検出器91b,92a,91a,92bでそれぞれ検出される反射光の強度に基づいて、ワークWの加工状態やレーザ加工ヘッド10の内部の光学部品の状態を判定することができる。本実施形態では、レーザ溶接時にワークWの加工状態を判定する場合について述べる。
【0071】
ワークWをレーザ溶接する場合、溶接不良が生じると、ワークWの表面W1の凹凸が正常な部分と比べて変化する。このため、ワークWからの反射戻り光の強度も変化する。例えば、ワークWからの反射戻り光の強度が所定値以上に増加すれば、溶接異常が発生していると判定できる。
【0072】
第1レーザ光AをワークWの表面W1に照射する場合、図7に示すように、いくつかの反射戻り光の成分が発生する。
【0073】
まず、ワークWで反射された戻り光は、もとの光路をそのまま戻ってダイクロイックミラー40を透過し、第1光入射口12aに返っていく。さらに第1光ファイバ4を通って第1レーザ発振器2に戻ることもある。この戻り光成分をA0とする。
【0074】
一方、ワークWの表面W1は必ずしも平たんではない。また、溶接時に形成される溶接ビード(図示せず)の表面にも凹凸が形成されている。このため、ワークWからの反射戻り光が散乱され、もとの光路をそのまま通らずに第1光入射口12aに向かう戻り光成分A1が発生する。
【0075】
また、保護ガラス14の表面がスパッタ等により汚れていると、保護ガラス14の表面でも、第1レーザ光Aの一部が反射され、戻り光成分A2(以下、ケラレ成分A2と呼ぶことがある。)が発生する。ケラレ成分A2は、ダイクロイックミラー40を透過し、第1光入射口12aに向かう。なお、保護ガラス14に限らず、筐体11の内部における第1レーザ光Aの光路中に配置された光学部品のそれぞれで、同様の反射戻り光(ケラレ光)が発生しうる。
【0076】
一方、前述したように、ダイクロイックミラー40は、第1レーザ光Aに対して有限の反射率(例えば、0.数%)を有している。したがって、ワークWからの反射戻り光の一部は、ダイクロイックミラー40とさらにベンドミラー30で反射されて、第2光入射口12bに向かう。この戻り光成分をA3とする。同様に、保護ガラス14からの反射戻り光の一部は、ダイクロイックミラー40とさらにベンドミラー30で反射されて、第2光入射口12bに向かう。この戻り光成分をA4とする。
【0077】
また、第2レーザ光BをワークWの表面W1に照射する場合も、同様にいくつかの反射戻り光の成分が発生する。図8に示す戻り光成分B0~B4は、図7に示す戻り光成分A0~A4にそれぞれ対応している。なお、ダイクロイックミラー40は、第2レーザ光Bに対して有限の透過率(例えば、0.数%)を有している。このため、戻り光成分B0~B4のそれぞれの光路は、戻り光成分A0~A4のそれぞれの光路と一致はしていない。例えば、ワークWの表面W1で反射された戻り光成分B0は、ダイクロイックミラー40とベンドミラー30とで反射されて、第2光入射口12bに返っていく。さらに第2光ファイバ5を通って第2レーザ発振器3に戻ることもある。保護ガラス14の表面で反射された戻り光成分B2(以下、ケラレ成分B2と呼ぶことがある。)は、ダイクロイックミラー40とベンドミラー30とで反射されて、第2光入射口12bに返っていく。
【0078】
このように、ワークWや保護ガラス14で反射された第1レーザ光Aの戻り光は、第1光入射口12aに向かう成分A0,A1,A2と第2光入射口12bに向かう成分A3,A4とに分かれる。ワークWや保護ガラス14で反射された第2レーザ光Bの戻り光は、第1光入射口12aに向かう成分B3,B4と第2光入射口12bに向かう成分B0,B1,B2とに分かれる。ただし、通常、保護ガラス14からの反射戻り光は、ワークWからの反射戻り光に比べて、非常に小さい。これは、ワークWの表面W1でのレーザ光の反射率に比べて、保護ガラス14の表面でのレーザ光の反射率が極めて小さくなるためである。また、保護ガラス14に限らず、他の光学部品の表面での反射率も、ワークWの表面W1での反射率よりは、通常小さくなる。よって、前述の戻り光成分A4,B4は、他の戻り光成分よりもきわめて小さくなり、通常は無視しうる。
【0079】
したがって、第1レーザ光Aの光路の周りに設けられた第1光検出器91bでは、前述の戻り光成分のうち、成分B3を検出しうる。また、第3光検出器91aでは、戻り光成分A1及びケラレ成分A2を検出しうる。第2レーザ光Bの光路の周りに設けられた第2光検出器92aでは、前述の戻り光成分のうち、成分A3を検出しうる。また、第4光検出器92bでは、戻り光成分B1及びケラレ成分B2を検出しうる。
【0080】
これらのことに鑑みると、ワークWの表面W1での第1レーザ光Aの反射戻り光をS/N比を高めて検出しようとする場合、第3光検出器91aの出力信号を使うよりも第2光検出器92aの出力信号を使う方が有利であることがわかる。第3光検出器91aの出力信号には、保護ガラス14からの反射戻り光成分であるケラレ成分A2が混入するからである。同様の理由により、ワークWの表面W1での第2レーザ光Bの反射戻り光をS/N比を高めて検出しようとする場合、第4光検出器92bの出力信号を使うよりも第1光検出器91bの出力信号を使う方が有利である。
【0081】
例えば、第1レーザ光Aの出力を6000W、第2レーザ光Bの出力を1000Wとする。また、ダイクロイックミラー40での第1レーザ光Aの透過率を99.9%(反射率を0.1%)とし、第2レーザ光Bの反射率を99.9%(透過率を0.1%)とする。
【0082】
この場合、図9に示すように、ワークWに向かう往路では、第1レーザ光A及び第2レーザ光Bのパワーは、それぞれ1%低下する。また、保護ガラス14を含む光学部品でけられるレーザ光のパワーは、第1レーザ光A及び第2レーザ光でそれぞれ1%程度である。
【0083】
一方、ワークWの表面W1で反射された第1レーザ光Aは、大部分がダイクロックミラー40を透過する一方、一部がダイクロイックミラーで反射される。戻り光成分A0がゼロであると仮定すると、前者が戻り光成分A1に相当し、第3光検出器91aで検出される。後者が戻り光成分A3(実際には戻り光成分A4も含む)に相当し、第2光検出器92aで検出される。
【0084】
また、光学部品の表面でけられた第1レーザ光Aも、大部分がダイクロックミラー40を透過する。よって、当該成分であるケラレ成分A2も、第3光検出器91aで検出される。
【0085】
したがって、ワークWの表面W1で反射された第1レーザ光Aを第3光検出器91aで検出しようとする場合、ケラレ成分A2も検出してしまうため、S/N比が低下する。図9から明らかなように、信号成分である戻り光成分A1に起因した信号成分に対し、ケラレ成分A2に起因したノイズ成分は約20%程度もある。
【0086】
一方、第2光検出器92aには、光学部品の表面でけられた第1レーザ光Aが実質的に入射されない。このため、第2光検出器92aの出力信号に基づいて、ワークWの表面W1で反射された第1レーザ光Aのパワーを正確に評価することができる。
【0087】
同様に、ワークWの表面W2で反射された第1レーザ光Aは、大部分がダイクロックミラー40で反射される一方、一部がダイクロイックミラーを透過する。戻り光成分B0がゼロであると仮定すると、前者が戻り光成分B1に相当し、第1光検出器91bで検出される。後者が戻り光成分B3(実際には戻り光成分B4も含む)に相当し、第4光検出器92bで検出される。
【0088】
しかし、光学部品の表面でけられた第2レーザ光Bも、大部分がダイクロックミラー40を反射される。よって、当該成分であるケラレ成分B2も、第4光検出器92bで検出される。
【0089】
したがって、ワークWの表面W1で反射された第2レーザ光Bを第4光検出器92bで検出しようとする場合、ケラレ成分B2も検出してしまうため、S/N比が低下する。図9から明らかなように、信号成分である戻り光成分B1に起因した信号成分に対し、ケラレ成分B2に起因したノイズ成分は約20%程度もある。
【0090】
一方、第1光検出器91bには、光学部品の表面でけられた第2レーザ光Bが実質的に入射されない。このため、第1光検出器91bの出力信号に基づいて、ワークWの表面W1で反射された第2レーザ光Bのパワーを正確に評価することができる。
【0091】
[効果等]
以上説明したように、本実施形態に係るレーザ加工ヘッド10は、筐体11と、筐体11の内部に配置された複数の光学部品とを有している。
【0092】
筐体11には、第1レーザ光Aが入射される第1光入射口12aと、第2レーザ光Bが入射される第2光入射口12bと、第1レーザ光A及び第2レーザ光Bを外部に出射する光照射口13と、がそれぞれ設けられている。また、筐体11には、第1光入射口12aから入射された第1レーザ光Aの光路を第2光入射口12bから入射された第2レーザ光Bの光路と分離する隔壁11aが設けられている。なお、第2レーザ光Bは、第1レーザ光Aよりも波長が短い。
【0093】
レーザ加工ヘッド10は、第1光入射口12aから入射された第1レーザ光Aの光路の周りに設けられた第1光検出器91bと、第2光入射口12bから入射された第2レーザ光Bの光路の周りに設けられた第2光検出器92aと、をさらに備えている。
【0094】
第1光検出器91bは、隔壁11aを挟んで、第2光検出器92aと反対側に配置されている。第1光検出器91bは、第2レーザ光Bの波長を含む第2波長帯の光を受光し、第2光検出器92aは、第1レーザ光Aの波長を含む第1波長帯の光を受光する。
【0095】
複数の光学部品の少なくとも一部は、第2レーザ光Bの光路を変更して、光照射口13から出射される第1レーザ光Aの光軸と第2レーザ光Bの光軸とが略一致するように筐体11の内部に配置されている。
【0096】
本実施形態によれば、第2レーザ光Bの光路の周りに第1レーザ光Aを受光可能な第2光検出器92aを設けることで、ワークWの表面W1で反射された第1レーザ光Aのパワーを正しく評価することができる。このことにより、ワークWの表面W1の状態を精度良く推定することができ、第1レーザ光AをワークWに照射したときの加工不良の発生や加工品質の低下を抑制することができる。
【0097】
同様に、第1レーザ光Aの光路の周りに第2レーザ光Bを受光可能な第1光検出器91bを設けることで、ワークWの表面W1で反射された第2レーザ光Bのパワーを正しく評価することができる。このことにより、ワークWの表面W1の状態を精度良く推定することができ、第2レーザ光BをワークWに照射したときの加工不良の発生や加工品質の低下を抑制することができる。
【0098】
また、第1光検出器91bは、第2レーザ光Bの波長域よりも広い帯域の第2波長帯の光を受光可能に構成されている。第2光検出器92aは、第1レーザ光Aの波長域よりも広い帯域の第1波長帯の光を受光可能に構成されている。このことにより、ワークWの表面W1で第1レーザ光Aや第2レーザ光Bの波長がシフトしても、反射戻り光を確実に検出することができる。
【0099】
なお、第1波長帯は、900nm以上、1200nm以下であることが好ましい。また、第2波長帯は、400nm以上、700nm以下であることが好ましい。
【0100】
第1レーザ光Aとして近赤外光を、第2レーザ光として青色光を用いる場合、第1波長帯及び第2波長帯の範囲をそれぞれこのように設定することで、ワークWの表面W1におけるレーザ光の波長シフトが起こった場合も、反射戻り光を確実に検出することができる。なお、第1レーザ光Aとして赤外光を用いる場合、第1波長帯を800nm以上、1200nm以下としてもよい。また、第2レーザ光Bとして緑色光を用いる場合、第2波長帯を500nm以上、750nm以下としてもよい。
【0101】
また、光照射口13から出射される第1レーザ光Aの光軸と第2レーザ光Bの光軸とが略一致することで、第1レーザ光Aと第2レーザ光Bとを重ね合わせた状態で、ワークWをレーザ加工する場合にも、加工品質を維持できる。
【0102】
複数の光学部品は、第2レーザ光Bの光路中に設けられ、第2レーザ光Bを反射して光路を変更させるベンドミラー30と、第1レーザ光Aの光路中であってかつベンドミラー30で反射された第2レーザ光Bの光路中に設けられたダイクロイックミラー40と、光照射口13を覆う保護ガラス14と、を少なくとも含んでいる。
【0103】
ダイクロイックミラー40は、第1レーザ光Aの大部分を透過して光照射口13に向かわせるとともに、第1レーザ光Aの残部を反射してアパーチャー71に向かわせる。また、アパーチャー71は、第2レーザ光Bの大部分を反射して光照射口13に向かわせるとともに、第2レーザ光Bの残部を透過してアパーチャー71に向かわせる。
【0104】
このようにすることで、第1レーザ光Aの光軸と第2レーザ光Bの光軸とが略一致するようにして、第1レーザ光Aと第2レーザ光Bとを光照射口13から出射させることができる。このことにより、第1レーザ光Aと第2レーザ光Bとを重ね合わせた状態で、ワークWをレーザ加工する場合にも、加工品質を維持できる。
【0105】
筐体11の内部には、Z方向において、第1光入射口12aとダイクロイックミラー40との間に第1コリメートレンズ20が設けられている。第2光入射口12bとベンドミラー30との間に第2コリメートレンズ21が設けられている。ダイクロイックミラー40と光照射口13との間にワーク側集光レンズ50が設けられている。
【0106】
第1コリメートレンズ20は、第1レーザ光Aを平行化してダイクロイックミラー40に入射させる。第2コリメートレンズ21は、第2レーザ光Bを平行化してベンドミラー30に入射させる。ワーク側集光レンズ50は、入射された第1レーザ光A及び第2レーザ光Bをそれぞれ所定の集光位置に集光させる。
【0107】
本実施形態によれば、以上の構成を備えることにより、光照射口13からワークWに向かう第1レーザ光A及び第2レーザ光Bのそれぞれの光軸を略一致させることができる。また、ワークWの表面W1で第1レーザ光A及び第2レーザ光Bがそれぞれ焦点を結ぶようにすることができる。これらのことにより、ワークWの表面W1における第1レーザ光A及び第2レーザ光Bのそれぞれの集光位置を略一致させることができる。
【0108】
複数の光学部品は、ダイクロイックミラー40を透過した第2レーザ光Bの光路中であってかつダイクロイックミラー40で反射された第1レーザ光Aの光路中に設けられたアパーチャー71と、アパーチャー71を通過した第1レーザ光A及び第2レーザ光Bの光路中に設けられた検出側集光レンズ70と、を少なくとも含んでいる。
【0109】
筐体11の内部であって、検出側集光レンズ70を透過した第1レーザ光A及び第2レーザ光Bをそれぞれ受光可能な位置にイメージセンサ(第5光検出器)60が配置されている。
【0110】
このようにすることで、イメージセンサ60の受光面61に第1レーザ光Aのスポット(検出側第1スポットSaj)及び第2レーザ光Bのスポット(検出側第2スポットSbj)を結像させることができる。検出側第1スポットSaj及び検出側第2スポットSbjの画像、さらにそれぞれの直径である検出側第1スポット径Daj及び検出側第2スポット径Dbjを評価することにより、ワークWの表面W1における第1レーザ光Aや第2レーザ光Bの集光状態を推定することができる。
【0111】
また、アパーチャー71により、イメージセンサ60に向かう第1レーザ光A及び第2レーザ光Bにおいて、それぞれ余分な光束を遮断することができる。このことにより、受光面61に入射される第1レーザ光A及び第2レーザ光Bのパワーを低減して、検出側第1スポットSaj及び検出側第2スポットSbjの画像の乱れやイメージセンサ60に設けられたカラーフィルター等の焼き付き等の不具合が発生するのを抑制できる。
【0112】
また、イメージセンサ60は、第1レーザ光A及び第2レーザ光Bの少なくとも一方の出力をモニターする。モニターされた出力に基づいて、レーザ加工時にワークWに照射される第1レーザ光A及び/または第2レーザ光Bの出力を推定することができる。
【0113】
イメージセンサ(第5光検出器)60は、第1レーザ光Aの波長を含む波長帯の光を受光する複数の第1受光部(N画素)と、第2レーザ光Bの波長を含む波長帯の光を受光する複数の第2受光部(B画素)と、を少なくとも有している。複数の第1受光部及び複数の第2受光部は、イメージセンサ60の受光面61上にそれぞれ周期的に配列されている。
【0114】
イメージセンサ60をこのように構成することで、第1レーザ光A及び第2レーザ光Bのそれぞれのスポット画像を高い解像度で取得することができる。このことにより、ワークWの表面W1における第1レーザ光A及び第2レーザ光Bのそれぞれの集光位置を精密に調整できる。
【0115】
イメージセンサ60は、近赤外光または赤外光、赤色光、緑色光及び青色光をそれぞれ受光する4つの画素が、受光面61上に周期的に配列された構造であることが好ましい。
【0116】
この画素構造は公知の構成であり、特殊な構造の光検出器を使用しないため、レーザ加工ヘッド10のコスト増加を抑制できる。また、イメージセンサ60の出力信号を公知の信号処理装置を用いて処理できるため、信号処理の負荷が増加するのを抑制できる。
【0117】
本実施形態に係るレーザ加工システム(レーザ加工装置)1は、レーザ加工ヘッド10と、第1レーザ光Aを出射する第1レーザ発振器2と、第2レーザ光Bを出射する第2レーザ発振器3と、を少なくとも備えている。
【0118】
また、レーザ加工システム1は、第1光入射口12aに接続され、第1レーザ発振器2から出射された第1レーザ光Aをレーザ加工ヘッド10に伝送する第1光ファイバ4と、第2光入射口12bに接続され、第2レーザ発振器3から出射された第2レーザ光Bをレーザ加工ヘッド10に伝送する第2光ファイバ5と、を備えている。
【0119】
レーザ加工ヘッド10は、第1レーザ光A及び第2レーザ光Bの少なくとも一方をワークWに向けて照射する。
【0120】
本実施形態によれば、ワークWの表面W1における第1レーザ光A及び第2レーザ光Bのそれぞれの集光位置を略一致させることができる。このことにより、第1レーザ光Aと第2レーザ光Bとを重ね合わせた状態でワークWをレーザ加工する場合、加工精度及び加工品質を向上させることができる。
【0121】
レーザ加工システム1は、レーザ加工ヘッド10を移動可能に保持するマニピュレータ6をさらに備えていてもよい。このようにすることで、複雑な構造のワークWに対してもレーザ加工を行うことが容易となる。
【0122】
レーザ加工システム1は、イメージセンサ60で取得された第1レーザ光A及び第2レーザ光Bの画像に基づいて、ワークWの表面W1での第1レーザ光A及び第2レーザ光Bの集光位置を調整可能に構成されている。このようにすることで、ワークWの表面W1での第1レーザ光A及び第2レーザ光Bの集光位置を所望の位置にすることが容易となる。このことにより、レーザ加工時の加工精度及び加工品質を向上させることができる。
【0123】
本実施形態に係る異常判定方法は、レーザ加工システム1における異常の有無を判定する異常判定方法である。
【0124】
第2レーザ光Bをワークに向けて照射している場合に、第1光検出器91bの出力信号に基づいて、ワークWの加工状態に異常があるか否かを判定する。第1レーザ光AをワークWに向けて照射している場合に、第2光検出器92aの出力信号に基づいて、ワークWの加工状態に異常があるか否かを判定する。
【0125】
本実施形態によれば、第2レーザ光Bの光路の周りに第1レーザ光Aを受光可能な第2光検出器92aを設けるという簡便な構成で、第1レーザ光AをワークWに照射したときの表面W1の状態を精度良く推定することができる。また、第1レーザ光Aの光路の周りに第2レーザ光Bを受光可能な第1光検出器91bを設けるという簡便な構成で、第2レーザ光BをワークWに照射したときの表面W1の状態を精度良く推定することができる。これらのことにより、レーザ加工時の加工不良の発生や加工品質の低下を抑制することができる。
【0126】
(実施形態2)
図10は、本実施形態に係る第1レーザ光をワークに照射した場合の第2及び第3光検出器の出力の一例を示す。
【0127】
前述したように、イメージセンサ60を用いることで、レーザ加工時にワークWに照射される第1レーザ光Aや第2レーザ光Bのパワーを精度良く評価することができる。
【0128】
しかし、この評価を行うにあたって、筐体11の内部に、アパーチャー71と検出用集光レンズ70をイメージセンサ60とを配置関係を規定した上で設置する必要がある。レーザ加工ヘッド10のさらなる小型化が要求される場合、これらの部品を省略することもありうる。
【0129】
また、イメージセンサ60の検出結果を補完する形で、さらに第1レーザ光Aや第2レーザ光Bのパワーを評価したい場合もある。
【0130】
本開示のレーザ加工ヘッド10及びレーザ加工システム1によれば、第1~第4光検出器91b,92a,91a,92bの出力信号に基づいて、ワークWの表面W1の状態推定と第1レーザ光Aや第2レーザ光Bのパワー評価とを同時に行うことができる。以下、さらに詳しく説明する。なお、説明の便宜上、本実施形態では、ワークWに第1レーザ光Aを照射した場合について考える。
【0131】
前述したように、第3光検出器91aでは、ワークWからの第1レーザ光Aの反射戻り光成分のうち戻り光成分A1を検出することができる。戻り光成分A1は、ワークWに照射される第1レーザ光Aのパワーに略比例していると考えられる。
【0132】
なお、第3光検出器91aの出力信号P3には、光学部品でのケラレ成分A2を含むが、実験等により、予め、戻り光成分A1とケラレ成分A2との比を求めておくことで、出力信号P3における戻り光成分A1の寄与を評価することが可能である。
【0133】
また、第2光検出器92aでは、ワークWからの第1レーザ光Aの反射戻り光成分である成分A3を検出することができる。
【0134】
したがって、第2光検出器92aの出力信号P2から、ワークWからの第1レーザ光Aの反射戻り光のパワーを推定し、この値に基づいて、第3光検出器91aの出力信号P3をさらに補正することで、ワークWに照射される第1レーザ光Aのパワーを推定することができる。
【0135】
例えば、図10のcase1,2に示すように、ワークWから反射戻り光が発生していないか微弱な場合を考える。この場合、第2光検出器92aの出力信号P2はいずれもゼロである。一方、第3光検出器91aの出力信号P3は、ワークWに照射される第1レーザ光Aのパワーに比例して増加している。第1レーザ光Aのパワーが500Wの場合、出力信号P3が5Wであり(case1)、第1レーザ光Aのパワーが1000Wの場合、出力信号P3が10Wである(case2)。
【0136】
ここで、ワークWからの反射戻り光が発生した場合(図10のcase3,4)を考える。なお、実験等により、第1レーザ光Aの出力変化に対する出力信号P2と出力信号P3との比が予め求められている。この場合、P2:P3は、1:5である。つまり、出力信号P3におけるワークWからの反射戻り光成分の寄与は、出力信号P2の5倍である。
【0137】
このことに鑑みて、図10に示す数値を評価した場合、case3(第1レーザ光Aのパワーが1000W)では、第2光検出器92aの出力信号P2が1Wである。一方、第3光検出器91aの出力信号P3は15Wである。出力信号P3のうち、ワークWからの反射戻り光に関係する分(=1W×5=5W)を差し引くと、ワークWに照射される第1レーザ光Aのパワーに直接関係する分は、10Wであると推定される。この値は、第1レーザ光Aのパワーが同じであるcase2の出力信号P3と同じ値である。
【0138】
同様に、case4(第1レーザ光Aのパワーが500W)では、第2光検出器92aの出力信号P2が0.5Wである。一方、第3光検出器91aの出力信号P3は7.5Wである。出力信号P3のうち、ワークWからの反射戻り光に関係する分(=0.5W×5=2.5W)を差し引くと、ワークWに照射される第1レーザ光Aのパワーに直接関係する分は、5Wであると推定される。この値は、第1レーザ光Aのパワーが同じであるcase1の出力信号P3と同じ値である。
【0139】
以上から明らかなように、第2光検出器92aの出力信号P2を用いて、第3光検出器91aの出力信号P3を補正することで、出力信号P3からワークWに照射される第1レーザ光Aのパワーを推定することができる。
【0140】
また、第2レーザ光BをワークWに照射した場合、第1光検出器91bの出力信号P1から、ワークWからの第2レーザ光Bの反射戻り光のパワーを推定し、この値に基づいて、第4光検出器92bの出力信号P4をさらに補正することで、ワークWに照射される第2レーザ光Bのパワーを推定することができることは明らかである。
【0141】
また、第1レーザ光Aと第2レーザ光Bとを同時にワークWに照射した場合、第2光検出器92aの出力信号P2から、ワークWからの第1レーザ光Aの反射戻り光のパワーを推定し、この値に基づいて、第3光検出器91aの出力信号P3をさらに補正することで、ワークWに照射される第1レーザ光Aのパワーを推定することができる。これと同時に、第1光検出器91bの出力信号P1から、ワークWからの第2レーザ光Bの反射戻り光のパワーを推定し、この値に基づいて、第4光検出器92bの出力信号P4をさらに補正することで、ワークWに照射される第2レーザ光Bのパワーを推定することができる。
【0142】
なお、出力信号P3や出力信号P4の補正方法は、ワークWの材質、具体的には、第1レーザ光Aの波長帯の光や第2レーザ光Bの波長帯の光に対するワークWの反射率に応じて、適宜変更されうるのは言うまでもない。
【0143】
また、レーザ加工システム1を長期使用しているときに、出力信号P3や出力信号P4が異常に増加して、前述した補正関係が成立しなくなる場合がある。このような場合は、保護ガラス14等の光学部品の表面でのケラレ光が増加していることが疑われる。つまり、光学部品の表面に汚れが付着し、前述のケラレ成分A2やB2が増加していることが推測される。
【0144】
つまり、本実施形態に係る異常判定方法は、以下の構成を備えていると言える。
【0145】
第2レーザ光BをワークWに向けて照射している場合に、第1光検出器91bの出力信号P1に基づいて、ワークWの加工状態に異常があるか否かを判定する。
【0146】
第1レーザ光AをワークWに向けて照射している場合に、第2光検出器92aの出力信号P2に基づいて、ワークWの加工状態に異常があるか否かを判定する。
【0147】
第2光検出器92a及び第3光検出器91aの出力信号P2,P3に基づいて、第1レーザ光Aの出力を推定する。
【0148】
第1光検出器91b及び第4光検出器92bの出力信号P1,P4に基づいて、第2レーザ光Bの出力を推定する。
【0149】
(実施形態3)
図11は、本実施形態に係るレーザ加工システムの概略構成図を示し、図12は、第1レーザ光をワークに照射した場合の第2、第3及び第6光検出器の出力の一例を示す。なお、説明の便宜上、図11において、実施形態1と同様の箇所については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0150】
図11に示す本実施形態のレーザ加工システム1は、第1レーザ発振器2に第6光検出器2aを、第2レーザ発振器3に第7光検出器3aをそれぞれ備える点で、図1に示すレーザ加工システム1と異なる。
【0151】
第6光検出器2aは、第1波長帯の光を受光し、例えば、図6Aに示す第3光検出器91aと同様の構造である。第6光検出器2aは、第1レーザ発振器2と第1光ファイバ4との接続部の近傍に設けられている。また、第6光検出器2aは、第1光ファイバ4を通って伝送された第1レーザ光Aの反射戻り光を受光可能な位置に配置されている。
【0152】
第7光検出器3aは、第2波長帯の光を受光し、例えば、図6Aに示す第1光検出器91bと同様の構造である。第7光検出器3aは、第2レーザ発振器3と第2光ファイバ5との接続部の近傍に設けられている。また、第7光検出器3aは、第2光ファイバ5を通って伝送された第2レーザ光Bの反射戻り光を受光可能な位置に配置されている。
【0153】
本実施形態によれば、第1~第4光検出器91b,92a,91a,92bと第6光検出器2a及び第7光検出器3aとを用いて、第1レーザ光Aや第2レーザ光BをワークWに向けて照射した場合に、ワークWの加工状態に異常があるか否かを判定できる。また、ワークWに照射される第1レーザ光Aや第2レーザ光Bのパワーを推定できる。筐体11の内部の光学部品、例えば、保護ガラス14に異常があるか否かを判定できる。このことについて、図12を用いてさらに説明する。なお、説明の便宜上、図12は、第1レーザ光AをワークWに照射した場合の例のみを示している。
【0154】
図12におけるcase1,2は、図10におけるcase1,2とそれぞれ同じである。図12におけるcase5,6は、図10におけるcase3,4とそれぞれ同じである。したがって、これらについての詳細な説明は省略する。なお、図12におけるcase1,2では、第6光検出器2aの出力信号P6は、0Wである。これは、ワークWからの反射戻り光が発生していないか微弱であるためである。一方、図12におけるcase5,6では、第6光検出器2aの出力信号P6は、第3光検出器91aの出力信号P3と同じになるように設定されている。
【0155】
第6光検出器2aは、図7に示す戻り光成分のうち、成分A0を主に受光し、出力信号P6を出力する。戻り光成分A0は、戻り光成分A1と同様に、ワークWに照射される第1レーザ光Aのパワーに略比例していると考えられる。
【0156】
一方、図12におけるcase3,4は、ワークWからの反射戻り光に加えて、保護ガラス14の表面でケラレ光が発生している場合である。
【0157】
この場合、第3光検出器91aの出力信号P3にケラレ成分A2が含まれることは前述した通りである。一方、ケラレ成分A2は、スパッタやヒュームが保護ガラス14等の表面に付着し、表面に生じた凹凸により第1レーザ光Aが反射されて生じる。この凹凸は、第1レーザ光Aの波長と同程度のサイズを多く含むため、第1レーザ光Aの散乱角が大きくなる。このことにより、ケラレ成分A2が、第1光ファイバ4に入射して第6光検出器2aで検出されることはほぼ無い。このことに鑑みれば、第6光検出器2aの出力信号P6よりも第3光検出器91aの出力信号P3が大きくなっている場合、出力信号P3にケラレ成分A2が含まれていると判断できる。
【0158】
case3における出力信号P3の値は、case5における値(=15W)と同じである一方、出力信号P6は0Wである。この場合、予め求めておいた戻り光成分A1とケラレ成分A2との比または差から、保護ガラス14からの反射戻り光の寄与分は、1W程度と推定される。
【0159】
case3においても、出力信号P6は0Wである。予め求めておいた戻り光成分A1とケラレ成分A2との比または差から、保護ガラス14からの反射戻り光の寄与分は、1W程度と推定される。
【0160】
以上から明らかなように、第3光検出器91aの出力信号P3と第6光検出器2aの出力信号P6とを比較して、第1レーザ光Aのうち、保護ガラス14等の光学部品の表面でけられる分のパワーを推定することができる。
【0161】
また、第2レーザ光BをワークWに照射した場合、第4光検出器92bの出力信号P4と第7光検出器3aの出力信号P7とを比較して、第2レーザ光Bのうち、保護ガラス14等の光学部品の表面でけられる分のパワーを推定することができることは明らかである。
【0162】
また、第1レーザ光Aと第2レーザ光Bとを同時にワークWに照射した場合、第3光検出器91aの出力信号P3と第6光検出器2aの出力信号P6とを比較して、第1レーザ光Aのうち、保護ガラス14等の光学部品の表面でけられる分のパワーを推定することができる。これと同時に、第7光検出器3aの出力信号P7と第4光検出器92bの出力信号P4とを比較して、第2レーザ光Bのうち、保護ガラス14等の光学部品の表面でけられる分のパワーを推定することができる。
【0163】
また、本実施形態によれば、実施形態1,2に示す構成が奏するのと同様の効果を奏することができることは言うまでもない。つまり、本実施形態に係る異常判定方法は、以下の構成を備えていると言える。
【0164】
第2レーザ光BをワークWに向けて照射している場合に、第1光検出器91bの出力信号P1に基づいて、ワークWの加工状態に異常があるか否かを判定する。
【0165】
第1レーザ光AをワークWに向けて照射している場合に、第2光検出器92aの出力信号P2に基づいて、ワークWの加工状態に異常があるか否かを判定する。
【0166】
第2光検出器92a及び第3光検出器91aの出力信号P2,P3に基づいて、第1レーザ光Aの出力を推定する。
【0167】
第1光検出器91b及び第4光検出器92bの出力信号P1,P4に基づいて、第2レーザ光Bの出力を推定する。
【0168】
第3光検出器91a及び第6光検出器2aの出力信号P3、P6に基づいて、第1レーザ光Aの光路中に配置された光学部品に異常があるか否かを判定する。
【0169】
第4光検出器92b及び第7光検出器3aの出力信号P4、P7に基づいて、第2レーザ光Bの光路中に配置された光学部品に異常があるか否かを判定する。
【産業上の利用可能性】
【0170】
本開示は、互いに波長の異なるレーザ光を出射するレーザ加工ヘッド及びレーザ加工システムに適用できるので、有用である。
【符号の説明】
【0171】
F レーザ加工方向
W ワーク
W1 表面(像面)
A 第1レーザ光
Sai ワーク側第1スポット
Dai ワーク側第1スポット径
Saj 検出側第1スポット
Daj 検出側第1スポット径
B 第2レーザ光
Sbi ワーク側第2スポット
Dbi ワーク側第2スポット径
Sbj 検出側第2スポット
Dbj 検出側第2スポット径
1 レーザ加工システム
2 第1レーザ発振器
2a 第6光検出器
3 第2レーザ発振器
3a 第7光検出器
4 第1光ファイバ
5 第2光ファイバ
10 レーザ加工ヘッド
20 第1コリメートレンズ
21 第2コリメートレンズ
30 ベンドミラー
40 ダイクロイックミラー
50 ワーク側集光レンズ
60 イメージセンサ(第5光検出器)
61 受光面
70 検出側集光レンズ
72 減光フィルター
80 ミラー側アクチュエータ(調整手段)
81 第1レンズ側アクチュエータ(調整手段)
82 第2レンズ側アクチュエータ(調整手段)
91a 第3光検出器
91b 第1光検出器
92a 第2光検出器
92b 第4光検出器
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12