(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】レンズ鏡筒およびこれを備えたカメラ
(51)【国際特許分類】
G02B 7/04 20210101AFI20240823BHJP
G03B 17/14 20210101ALI20240823BHJP
【FI】
G02B7/04 D
G03B17/14
(21)【出願番号】P 2021039852
(22)【出願日】2021-03-12
【審査請求日】2023-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 大介
【審査官】岡田 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-134654(JP,A)
【文献】実開昭61-171016(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02-7/16
G03B 17/04-17/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つ以上のレンズ群と、
前記レンズ群を内周面側において保持するとともに、径方向に突出するカム筒カムフォロアを有する略円筒状の固定筒と、
前記固定筒と略同軸に配置されており、前記レンズ群を光軸方向に移動させるために前記光軸方向に対して交差する方向に形成され前記カム筒カムフォロアが係合するカム溝を有しており、前記カム筒カムフォロアと前記カム溝とが係合した状態で前記固定筒に対して相対回転させることで前記レンズ群を前記光軸方向において移動させる略円筒状のカム筒と、
前記固定筒と前記カム筒との間の径方向におけるガタツキを抑制するように前記固定筒から前記径方向に突出して前記カム筒に当接
するスペーサと、
を備え、
前記スペーサは、前記光軸方向に沿って前後に配置される第1スペーサおよび第2スペーサを含み、
前記第1スペーサおよび第2スペーサの少なくとも一方は、前記光軸方向における長さが前記固定筒に対する前記カム筒の前記光軸方向における
最大移動量以上である
、
レンズ鏡筒。
【請求項2】
前記カム筒は、前記固定筒の外周側に配置されており、内周側に前記スペーサが当接した状態で摺動する摺動面を有し、
前記摺動面は、前記カム筒の前記摺動面以外の部分の内径よりも小さい、
請求項1に記載のレンズ鏡筒。
【請求項3】
前記第1スペーサは、前記固定
筒の前記光軸方向における被写体側の第1端部付近に配置され、
前記第2スペーサは、前記固定
筒の前記第1端部の反対側の前記光軸方向における像面側の第2端部付近に配置されている、
請求項
1または2に記載のレンズ鏡筒。
【請求項4】
前記カム筒は、その内周面側における前記第1端
部側に第1摺動面を、前記第2端
部側に第2摺動面を、それぞれ有し、
前記カム筒が前記光軸方向に移動する範囲内において、前記第1スペーサは前記第1摺動面に対して、前記第2スペーサは前記第2摺動面に対して、それぞれ常に当接している、
請求項
3に記載のレンズ鏡筒。
【請求項5】
前記固定筒は、前記スペーサが取り付けられる凹部を有している、
請求項1から
4のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項6】
前記スペーサは、前記凹部に対して着脱可能に取り付けられる、
請求項
5に記載のレンズ鏡筒。
【請求項7】
前記スペーサは、前記凹部に対して着脱可能に取り付けられる着脱スペーサと、前記固定筒と一体成形されている固定スペーサと、を含む、
請求項
6に記載のレンズ鏡筒。
【請求項8】
前記スペーサは、前記カム筒に対して当接する面に、略R形状を有している、
請求項1から
7のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項9】
前記スペーサは、前記カム筒に対して当接する面の曲率が前記摺動面の曲率よりも小さくなるように形成されている、
請求項
2に記載のレンズ鏡筒。
【請求項10】
前記スペーサは、前記光軸を中心とする円周方向に所定角度間隔で複数配置されている、
請求項1から
9のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項11】
前記スペーサは、略120度間隔で、前記固定筒の外周面に設けられており、前記カム筒の内周面を3点で支持する、
請求項1
0に記載のレンズ鏡筒。
【請求項12】
請求項1から1
1のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒と、
前記レンズ鏡筒が取り付けられるカメラ本体と、
を備えたカメラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、カメラ本体に装着されるレンズ鏡筒およびこれを備えたカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
カメラ本体に装着されるレンズ鏡筒は、光学系を支持する複数の枠体を備えている。複数の枠体に含まれる第1の枠体は、カム部材を有しており、第2の枠体は、カム部材が挿入された状態で摺動する案内溝を有している。
第1および第2の枠体が相対的に回転すると、カム部材が案内溝に案内され、両枠体が光軸方向に相対移動することで、沈胴式のレンズ鏡筒が実現される。
【0003】
例えば、特許文献1には、案内溝を有する固定筒と、固定筒に対して回動自在に配設されテーパ部を持つカム溝を有するカム筒と、移動レンズを保持し案内溝に沿って移動するカムフォロアを運動可能に保持する移動レンズ保持部材とを備え、カムフォロアは、カム溝のテーパ部と面接し得るテーパ当接部を有し、カムフォロア付勢部材によって径方向外側に付勢されるレンズ鏡筒について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際特許出願公開第2014/136162号
【文献】特開2005-274704号公報
【文献】特開2015-040971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のレンズ鏡筒では、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、上記公報に開示されたレンズ鏡筒では、レンズ鏡筒が衝撃力を受けた場合でも、カムフォロアがカム溝から外れ、あるいは、カムフォロアやカム溝が変形するおそれを少なくするために、カムフォロアを径方向外側に付勢している。しかし、このような構成では、バネ等の付勢力によってカムフォロアをカム溝のテーパ部へ押し当てる構成になっているため、回転トルクが大きくなりやすい等の問題がある。
【0006】
特に、複数のレンズ群を光軸方向において駆動する構成では、カム筒の回転によって駆動されるレンズ群を保持するレンズ枠の重量が大きくなるため、回転トルク等の問題がより生じやすくなってしまう。
本開示の課題は、カム筒の回転トルクを増大させることなく、固定筒とカム筒との間に形成される隙間によって生じるガタツキを効果的に抑制することが可能なレンズ鏡筒およびこれを備えたカメラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係るレンズ鏡筒は、少なくとも1つ以上のレンズ群と、略円筒状の固定筒と、略円筒状のカム筒と、スペーサと、を備えている。略円筒状の固定筒は、レンズ群を内周面側において保持するとともに、径方向に突出するカム筒カムフォロアを有する。略円筒状のカム筒は、固定筒と略同軸に配置されており、レンズ群を光軸方向に移動させるために光軸方向に対して交差する方向に形成されカム筒カムフォロアが係合するカム溝を有しており、カム筒カムフォロアとカム溝とが係合した状態で固定筒に対して相対回転させることでレンズ群を光軸方向において移動させる。スペーサは、固定筒とカム筒との間の径方向におけるガタツキを抑制するように固定筒から径方向に突出してカム筒に当接しており、光軸方向における長さが固定筒に対するカム筒の光軸方向における移動量と同等以上である。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係るレンズ鏡筒によれば、カム筒の回転トルクを増大させることなく、固定筒とカム筒との間に形成される隙間によって生じるガタツキを効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係るレンズ鏡筒がカメラ本体へ装着されたカメラの構成を示す全体斜視図。
【
図3A】
図2のレンズ鏡筒がWide位置にある状態を示す断面図。
【
図3B】
図2のレンズ鏡筒がTele位置にある状態を示す断面図。
【
図4A】
図3AのWide位置における3,4,7群ユニットのカムフォロアがカム筒のカム溝に係合している状態を示す断面図。
【
図4B】
図3BのTele位置における3,4,7群ユニットのカムフォロアがカム筒のカム溝に係合している状態を示す断面図。
【
図5】
図2のレンズ鏡筒に含まれる直進筒の外周面に着脱可能に装着されるスペーサを示す斜視図。
【
図6A】
図5の直進筒とその外周面側に配置されたカム筒と各群ユニットのカムフォロアとのWide位置における位置関係を示す斜視図。
【
図6B】
図5の直進筒とその外周面側に配置されたカム筒と各群ユニットのカムフォロアとのTele位置における位置関係を示す斜視図。
【
図7A】
図5の直進筒とその外周面側に配置されたカム筒とがWide位置にある状態でスペーサと摺動面との位置関係を示す側面図。
【
図7B】
図5の直進筒とその外周面側に配置されたカム筒とがTele位置にある状態でスペーサと摺動面との位置関係を示す側面図。
【
図9】
図5の直進筒とその外周面側に配置されたカム筒とがスペーサによって3点支持された状態を示す光軸方向における被写体側から見た正面図。
【
図11】カム筒に設けられたサブカムフォロアが直進筒に設けられたサブカム溝に所定の隙間を介して係合した状態を示す断面図。
【
図12A】
図6Aのカム筒の外周面側に1群ユニットおよびベース枠が配置された構成を示す斜視図。
【
図12B】
図12Aの構成の外周面側にズームリングが配置された構成を示す斜視図。
【
図14】
図13のズームリングにその外周面側からズーム駆動ピンを取り付ける工程を示す斜視図。
【
図15A】
図14のズーム駆動ピンがカム筒に固定された状態でWide位置に移行した構成を示す断面図。
【
図15B】
図14のズーム駆動ピンがカム筒に固定された状態でTele位置に移行した構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
なお、出願人は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0011】
(実施形態1)
本開示の一実施形態に係るレンズ鏡筒100およびこれを備えたカメラ1について、
図1~
図15Bを用いて説明すれば以下の通りである。
(1)レンズ鏡筒100の構成
以下、図面を参照しつつ、本開示の一実施形態に係るレンズ鏡筒100の構成を説明する。
図1は、本実施形態に係るレンズ鏡筒100が、カメラ本体101に装着されて構成されるカメラ1を示す斜視図である。
【0012】
レンズ鏡筒100は、
図1に示すように、カメラ本体101に対して着脱自在に取り付けられた沈胴式のレンズ鏡筒である。
レンズ鏡筒100は、
図2に示すように、主として、直進筒(固定筒)11、カム筒12、1群ユニット(レンズ群ユニット)21、2群ユニット(レンズ群ユニット)22、3群ユニット(レンズ群ユニット)23、4群ユニット(レンズ群ユニット)24、5群ユニット(レンズ群ユニット)25、6群ユニット(レンズ群ユニット)26、7群ユニット(レンズ群ユニット)27、フォーカスリング31、ズームリング32およびベース枠40を備えている。
【0013】
また、レンズ鏡筒100は、直進筒11およびカム筒12を含むレンズ支持機構10を備えている。なお、レンズ支持機構10の詳細な構成については、後段にて詳述する。
1群ユニット21は、直進筒11の外周面側に配置された略円筒状の部材であって、
図2に示すように、光軸OP方向における被写体側の端部に1群レンズL1を保持している。1群ユニット21は、レンズ鏡筒100の光軸OP方向において最も被写体側へ配置されている。
【0014】
1群ユニット21は、
図2に示すように、略円筒状の本体部21aと、略円筒状の本体部21aの内周面に設けられたカムフォロア21bと、を有している。
1群ユニット21のカムフォロア21bは、略円筒状の本体部21aの内周面における被写体側の端部付近において、外周面から径方向内側に向かって突出するように設けられている。そして、カムフォロア21bは、直進筒11に形成された直進溝11d(
図5参照)と、カム筒12に形成されたカム溝12d(
図6A参照)とに係合しており、カム筒12の回転に伴って、1群ユニット21を光軸OP方向において前後に移動させる。
【0015】
2群ユニット22は、直進筒11の内周面側に内包された略円環状の部材であって、
図2に示すように、2群レンズL2を保持している。2群ユニット22は、レンズ鏡筒100の光軸OP方向において、1群ユニット21と3群ユニット23との間に配置されている。2群ユニット22は、図示しないネジを用いて、直進筒11の被写体側の端面に固定されている。
【0016】
3群ユニット23は、直進筒11の内周面側に内包された略円環状の部材であって、
図2に示すように、3群レンズL3を保持している。3群ユニット23は、レンズ鏡筒100の光軸OP方向において、2群ユニット22と4群ユニット24との間に配置されている。
3群ユニット23は、外周面から径方向外側に向かって突出するように設けられたカムフォロア23a(
図4A参照)を有している。
【0017】
4群ユニット24は、直進筒11の内周面側に内包された略円筒状の部材であって、
図2に示すように、4群レンズL4を保持している。4群ユニット24は、レンズ鏡筒100の光軸OP方向において、3群ユニット23と5群ユニット25との間に配置されている。
4群ユニット24は、外周面から径方向外側に向かって突出するように設けられたカムフォロア24a(
図4A参照)を有している。
【0018】
5群ユニット25は、直進筒11の内周面側に内包された略円環状の部材であって、
図2に示すように、5群レンズL5を保持している。5群ユニット25は、レンズ鏡筒100の光軸OP方向において、4群ユニット24と6群ユニット26との間に配置されている。5群ユニット25は、一端が4群ユニット24に取り付けられたガイドシャフト28(
図11参照)によって、4群ユニット24に対して吊られた状態で取り付けられている。
【0019】
6群ユニット26は、直進筒11の内周面側に内包された略円環状の部材であって、
図2に示すように、6群レンズL6を保持している。6群ユニット26は、レンズ鏡筒100の光軸OP方向において、5群ユニット25と7群ユニット27との間に配置されている。6群ユニット26は、5群ユニット25と同様に、図示しないガイドシャフトによって、4群ユニット24に対して吊られた状態で取り付けられている。
【0020】
7群ユニット27は、直進筒11の内周面側に内包された略円環状の部材であって、
図2に示すように、7群レンズL7を保持している。7群ユニット27は、レンズ鏡筒100の光軸OP方向において最も被写体側とは反対側の像面側へ配置されている。
7群ユニット27は、外周面から径方向外側に向かって突出するように設けられたカムフォロア27a(
図4A参照)を有している。
【0021】
ここで、1~7群ユニット21~27に保持された1群~7群レンズL1~L7は、光軸OPを中心軸として、被写体側からこの順で配置されている。そして、レンズ鏡筒100は、後述するズームリング32の回転操作によって、
図3Aに示すWide位置と
図3Bに示すTele位置との間において、光軸OP方向に沿って1,3~7群ユニット21,23~27を前後に移動させる。
【0022】
すなわち、レンズ鏡筒100は、ベース枠40の外周面に回転可能な状態で取り付けられたズームリング32が回転されると、ズームリング32の回転に伴ってカム筒12が回転するように構成されている。レンズ鏡筒100は、カム筒12が回転すると、1,3~7群ユニット21,23~27が、光軸OP方向において前後に駆動される。
1群・3群・4群・7群ユニット21,23,24,27は、
図4Aに示すように、カム筒12に形成された複数のカム溝に対してそれぞれ係合する複数のカムフォロア(カムフォロア21b,23a,24a,27a)を有している。また、1群ユニット21のカムフォロア21bは、直進筒11に形成された直進溝11dに対して係合する。また、3群・4群・7群ユニット23,24,27のカムフォロア23a,24a,27aは、直進筒11に形成された直進溝11eに対して係合する。
【0023】
さらに、1群ユニット21のカムフォロア21bは、カム筒12に形成されたカム溝12dに対して係合する。また、3群・4群・7群ユニット23,24,27のカムフォロア23a,24a,27aは、カム筒12に形成されたカム溝12e,12f,12gに対して係合する。
これにより、直進筒11に対してカム筒12を回転させると、1群・3群・4群・7群ユニット21,23,24,27は、
図4Aに示すWide位置と
図4Bに示すTele位置との間において、相対的に光軸OP方向において前後に駆動される。
【0024】
(2)レンズ支持機構10の構成
次に、本実施形態のレンズ支持機構10の構成について詳細に説明する。
レンズ支持機構10は、
図2等に示すように、直進筒11と、カム筒12とを備えている。
(2-1)直進筒11
直進筒11は、
図5に示すように、略円筒状の本体部11aと、メインカムフォロア11bと、サブカム溝11cと、直進溝11d,11eと、凹部11fa,11fbと、スペーサ(第1スペーサ、着脱スペーサ)11gaおよびスペーサ(第2スペーサ、着脱スペーサ)11gbと、スペーサ11ha(第1スペーサ、固定スペーサ)およびスペーサ(第2スペーサ、固定スペーサ)11hbと、スペーサ11ia(第1スペーサ、固定スペーサ)およびスペーサ(第2スペーサ、固定スペーサ)11ibと、を有している。なお、
図5では、
図3A等に示すWide位置における各カムフォロア23a,24a,27aの位置を示している。
【0025】
略円筒状の本体部11aには、
図5に示すように、1群ユニット21に設けられたカムフォロア21bが係合する直進溝11dと、3群・4群・7群ユニット23,24,27に設けられた各カムフォロア23a,24a,27aが係合する直進溝11eとが形成されている。そして、本体部11aの外周面における略中央付近には、メインカムフォロア11bが周方向に沿って3つ取り付けられている。
【0026】
3つのメインカムフォロア(第1カムフォロア)11bは、
図5に示すように、略円筒状の本体部11aの外周面から突出するように取り付けられる。
なお、
図5では、説明の便宜上、直進筒11の外周面に直接取り付けられているが、実際のレンズ鏡筒100の組み立て工程においては、直進筒11の外周面側にカム筒12が挿入された状態で、メインカムフォロア11bが直進筒11の外周面に取り付けられるものとする。
【0027】
メインカムフォロア11bは、
図6Aおよび
図6Bに示すように、カム筒12側に形成されたメインカム溝12bに係合し、カム筒12の回転に伴ってメインカム溝12bに沿って移動する。
サブカム溝11cは、
図5に示すように、光軸OP方向に対して斜めに形成された凹部であって、カム筒12の本体部12aの内周面から径方向内側に向かって突出するように設けられたサブカムフォロア12cが所定の隙間を介して係合する。そして、サブカム溝11cは、
図6Aおよび
図6Bに示すように、後述するカム筒12側に設けられたメインカム溝12bと略平行になるように形成されている。
【0028】
また、サブカム溝11cには、像面側の端面に挿入口11caが設けられている。
これにより、レンズ鏡筒100の組み立て時において、カム筒12の本体部12aの内周面側にサブカムフォロア12cが取り付けられた状態のまま、直進筒11の像面側の端面からカム筒12を挿入して、サブカムフォロア12cをサブカム溝11cに係合させることができる。
【0029】
直進溝11dは、1群ユニット21を光軸OP方向において移動させる貫通穴であって、
図5に示すように、光軸OP方向における被写体側寄りの位置に、光軸OP方向に沿って直線状に形成されている。
直進溝11eは、3群・4群・7群ユニット23,24,27を光軸OP方向において移動させる貫通穴であって、
図5に示すように、各ユニット23,24,27のカムフォロア23a,24a,27aが係合している。そして、直進溝11eは、略円筒状の本体部11aの光軸OP方向における略全体に渡って、光軸OP方向に沿って直線状に形成されている。
【0030】
凹部11fa,11fbは、
図5に示すように、直進筒11の本体部11aの外周面に形成された凹み部分であって、スペーサ11ga,11gbが取り付けられる。凹部11fa,11fbは、
図5に示すように、光軸OP方向に沿って、直進筒11の外周面に形成されており、光軸OP方向における被写体側の端部付近と像面側の端部付近とにそれぞれ形成されている。
【0031】
これにより、スペーサ11ga,11gbが装着される位置を正確に位置決めすることができる。また、凹部11fa,11fbの凹みによって、ここに装着されるスペーサ11ga,11gbの厚みを確保してスペーサ11ga,11gbの成形性を向上させることができる。
また、凹部11fa,11fbは、装着されるスペーサ11ga,11gbよりも、光軸OP方向に直交する方向の幅寸法が大きい。
【0032】
これにより、接着剤によってスペーサ11ga,11gbが装着された際に接着剤がスペーサ11ga,11gbの横に染み出てきた場合でも、その凹み部分を接着剤溜まりとして活用することができる。
スペーサ11ga,11gbは、
図5に示すように、直進筒11の本体部11aの外周面に形成された凹部11fa,11fbに、例えば、接着剤を用いて、それぞれ取り付けられる。スペーサ11ga,11gbは、他のスペーサ11ha,11hb,11ia,11ibとともに、光軸OP方向から見て、カム筒12の本体部12aの本体部12aの内周面を3点で支持するように略120度間隔で配置されている(
図9参照)。
【0033】
また、スペーサ11ga,11gbは、
図7Aおよび
図7Bに示すように、光軸OP方向において、カム筒12の直進筒11に対する最大移動量(繰り出し量)の長さd2よりも大きい長さd1を有している。
これにより、カム筒12が
図6Aに示すWide位置から
図6Bに示すTele位置まで移動した際に、カム筒12の本体部12aの内周面が3点支持されているスペーサ11ga,11gbから脱落することを防止することができる。
【0034】
さらに、スペーサ11ga,11gbは、カム筒12の本体部12aの内周面と当接した状態で摺動する上端面が、光軸OP方向に直交する断面視において、略R形状を有している。
また、スペーサ11ga,11gbの当接面の略R形状は、その曲率がカム筒12の本体部12aの内周面側の摺動面の曲率よりも小さくなるように形成されている。
【0035】
これにより、カム筒12が直進筒11の外周面に対して周方向に回転しながら光軸OP方向において前後に移動する場合でも、カム筒12の本体部12aの内周面を3点支持するスペーサ11ga,11gbの当接面が引っかかることなくスムーズに回転移動させることができる。
なお、ガタツキの原因となる直進筒11の外周面とカム筒12の本体部12aの内周面との間に形成される隙間には、成形時の寸法差によって個体差がある。このため、その個体差に合わせて、適切な大きさ(高さ)を有するスペーサ11ga,11gbが選択できるように、異なる大きさ(高さ)を有する複数のスペーサ11ga,11gbが用意されていることがより好ましい。
【0036】
スペーサ11ha,11hb,11ia,11ibは、直進筒11の本体部11aと一体成形された凸部分であって、径方向外側に向かって突出するように形成されている。スペーサ11ha,11hbは、光軸OP方向における被写体側から見て、スペーサ11ga,11gbに対して時計回りに略120度の位置に配置されている(
図9参照)。スペーサ11ia,11ibは、光軸OP方向における被写体側から見て、スペーサ11ga,11gbに対して反時計回りに略120度の位置に配置されている(
図9参照)。
【0037】
また、スペーサ11ha,11hb,11ia,11ibは、スペーサ11ga,11gbと同様に、
図7Aおよび
図7Bに示すように、光軸OP方向において、カム筒12の直進筒11に対する最大移動量の長さd2よりも大きい長さd1を有している。
これにより、カム筒12が
図6Aに示すWide位置から
図6Bに示すTele位置まで移動した際に、カム筒12の本体部12aの内周面が3点支持されているスペーサ11ha,11hb,11ia,11ibから脱落することを防止することができる。
【0038】
さらに、スペーサ11ha,11hb,11ia,11ibは、スペーサ11ga,11gbと同様に、カム筒12の本体部12aの内周面と当接した状態で摺動する上端面が、光軸OP方向に直交する断面視において、略R形状を有している。
また、スペーサ11ha,11hb,11ia,11ibの当接面の略R形状は、その曲率がカム筒12の本体部12aの内周面側の摺動面の曲率よりも小さくなるように形成されている。
【0039】
これにより、カム筒12が直進筒11の外周面に対して周方向に回転しながら光軸OP方向において前後に移動する場合でも、カム筒12の本体部12aの内周面を3点支持するスペーサ11ha,11hb,11ia,11ibの当接面が引っかかることなくスムーズに回転移動させることができる。
(2-2)カム筒12
カム筒12は、
図6Aおよび
図6Bに示すように、上述した略円筒状の直進筒11の外周面側に配置され、略円筒状の本体部12aと、メインカム溝12bと、サブカムフォロア12cと、カム溝12d,12e,12f,12gとを有している。
【0040】
本実施形態のレンズ鏡筒100では、直進筒11およびカム筒12は、ベース枠40の内周面側に挿入され、直進筒11は、図示しないネジを用いて、ベース枠40に固定される。
これにより、カム筒12は、
図6Aおよび
図6Bに示すように、ベース枠40に対して固定配置された直進筒11の外周面側において、光軸OP方向において前後に移動する。
【0041】
略円筒状の本体部12aは、
図6Aに示すように、メインカム溝12b、カム溝12d,12e,12f,12gを含む複数のカム溝が形成されている。
メインカム溝12bは、
図6Aおよび
図6Bに示すように、上述した直進筒11側に設けられた3つのメインカムフォロア11bに対応するように、略円筒状の本体部12aの略中央付近に3つ設けられている。3つのメインカム溝12bは、光軸OP方向に対して斜めに形成された略直線状の貫通孔として設けられている。
【0042】
なお、メインカム溝12bは、略直線状である必要はなく、自由曲線に沿って形成されていてもよい。
これにより、直進筒11に対してカム筒12を回転させると、カム筒12は、直進筒11側に設けられたメインカムフォロア11bがメインカム溝12bに沿って移動することにより、光軸OP方向において前後に移動する。
【0043】
また、メインカム溝12bは、
図6Aに示すように、外周面側から見て、サブカム溝11cの一部と重複する位置に配置されている。
サブカムフォロア12cは、カム筒12の本体部12aの内周面から径方向内側に向かって突出するように設けられている。サブカムフォロア12cは、上述した直進筒11側に設けられたサブカム溝11cに対して、所定の隙間を介して係合している。
【0044】
なお、本実施形態では、サブカムフォロア12cがカム筒12とは別体として成形された後、カム筒12の本体部12aの内周面に埋め込まれるように取り付けられているが、サブカムフォロア12cは、カム筒12と一体成形されていてもよい。
カム溝12dは、
図6Aおよび
図6Bに示すように、カム筒12における被写体側の端部から略中央付近までの位置に、光軸OP方向に交差する方向に沿って形成された貫通穴であって、
図2に示すように、1群ユニット21のカムフォロア21bが係合している。そして、カム溝12dは、
図6Aに示すWide位置では、1群ユニット21のカムフォロア21bが右端部(像面側)に位置し、
図6Bに示すTele位置では、カムフォロア21bが左端部(被写体側)に位置する。
【0045】
これにより、直進筒11に対してカム筒12を回転させると、1群ユニット21のカムフォロア21bが、直進筒11の直進溝11dに係合しながらカム筒12のカム溝12dに沿って移動することにより、1群ユニット21を光軸OP方向において前後に移動させることができる。
カム溝12eは、
図6Aおよび
図6Bに示すように、カム筒12における被写体側の端部付近に、光軸OP方向に交差する方向に沿って形成された貫通穴であって、3群ユニット23のカムフォロア23aが係合している。そして、カム溝12eは、
図6Aに示すWide位置では、3群ユニット23のカムフォロア23aが右端部(像面側)に位置し、
図6Bに示すTele位置では、3群ユニット23のカムフォロア23aが左端部(被写体側)に位置する。
【0046】
これにより、直進筒11に対してカム筒12を回転させると、3群ユニット23のカムフォロア23aが、直進筒11の直進溝11eに係合しながらカム溝12eに沿って移動することにより、3群ユニット23を光軸OP方向において前後に移動させることができる。
カム溝12fは、
図6Aおよび
図6Bに示すように、カム筒12における被写体側の端部付近に形成されたカム溝12eに隣接する位置に、光軸OP方向に交差する方向に沿って形成された貫通穴であって、4群ユニット24のカムフォロア24aが係合している。そして、カム溝12fは、
図6Aに示すWide位置では、4群ユニット24のカムフォロア24aが右端部(像面側)に位置し、
図6Bに示すTele位置では、4群ユニット24のカムフォロア24aが左端部(被写体側)に位置する。
【0047】
これにより、直進筒11に対してカム筒12を回転させると、4群ユニット24のカムフォロア24aが、直進筒11の直進溝11eに係合しながらカム溝12fに沿って移動することにより、4群ユニット24を光軸OP方向において前後に移動させることができる。
カム溝12gは、
図6Aおよび
図6Bに示すように、カム筒12における像面側の端部付近の位置に、光軸OP方向に交差する方向に沿って形成された貫通穴であって、7群ユニット27のカムフォロア27aが係合している。そして、カム溝12gは、
図6Aに示すWide位置では、7群ユニット27のカムフォロア27aが右端部(像面側)に位置し、
図6Bに示すTele位置では、7群ユニット27のカムフォロア27aが左端部(被写体側)に位置する。
【0048】
これにより、直進筒11に対してカム筒12を回転させると、7群ユニット27のカムフォロア27aが、直進筒11の直進溝11eに係合しながらカム溝12gに沿って移動することにより、7群ユニット27を光軸OP方向において前後に移動させることができる。
なお、
図6Aおよび
図6Bに示すように、カム筒12の外周面には、すでにズーム駆動ピン33が取り付けられている。しかし、実際の組み立て工程では、ズーム駆動ピン33は、カム筒12の外周面側にベース枠40とズームリング32とが組み付けられた状態で、後述するピン挿入穴32bから挿入されて、カム筒12の外周面に固定されるものとする。
【0049】
ここで、カム筒12は、直進筒11の外周側に配置されており、
図7Aに示すように、本体部12aの内周面に対してスペーサ11ga,11gb,11ha,11hb,11ia,11ibが当接した状態で摺動する摺動面F1,F2を有している。摺動面F1,F2は、
図8に示すように、摺動面F1,F2以外の部分の内径よりも小さい。
なお、
図8は、光軸OP方向における像面側の端部に設けられたスペーサ11gbの摺動面F2について説明するが、被写体側に設けられたスペーサ11gaの摺動面F1についても同様である。また、他のスペーサ11ha,11hb,11ia,11ibについても同様である。
【0050】
すなわち、カム筒12は、
図8に示すように、凹部11fbに固定されたスペーサ11gbに対して、スペーサ11gbの上端面の全体が当接するのではなく、像面側の一部のみが当接する位置に摺動面F2を有している。
このため、
図8に示すように、スペーサ11gbの上端面とカム筒12の本体部12aの内周面との間には、カム筒12の本体部12aの内周面側に形成された凹みによって隙間G1が形成される。
【0051】
これにより、摺動面をスペーサ11gbの一部に限定することで、カム筒12の直進筒11に対する回転トルクを軽減して、スムーズに回転移動させることができる。
また、カム筒12は、その内周面側における光軸OP方向の被写体側(第1端側)に摺動面(第1摺動面)F1を、像面側(第2端側)に摺動面(第2摺動面)F2を、それぞれ有している。カム筒12が光軸OP方向に移動する範囲内において、スペーサ11gaは摺動面F1に対して、スペーサ11gbは摺動面F2に対して、それぞれ常に当接している。
【0052】
これにより、スペーサ11ga,11gb,11ha,11hb,11ia,11ibがカム筒12の本体部12aの内周面に設けられた摺動面F1,F2に対して常に当接した状態であるため、カム筒12の本体部12aの内周面が、スペーサ11ga,11gb,11ha,11hb,11ia,11ibによって摺動面F1,F2において3点支持される。
【0053】
<スペーサによるカム筒の3点支持構造>
本実施形態のレンズ鏡筒100では、
図9に示すように、直進筒11の本体部11aの外周面に設けられたスペーサ11ga,11gb,11ha,11hb,11ia,11ibを用いて、カム筒12の本体部12aの内周面を回転移動可能な状態で3点支持している。
【0054】
なお、
図9では、光軸OP方向における被写体側から見た図であるため、スペーサ11ga,11ha,11iaのみが示されているが、像面側に配置されたスペーサ11gb,11hb,11ibについても同様である。
すなわち、上述したように、スペーサ11ga,11gbと、スペーサ11ha,11hbと、スペーサ11ia,11ibとは、互いに略120度間隔で、直進筒11の本体部11aの外周面に配置されており、カム筒12の本体部12aの内周面を3点支持する。
【0055】
スペーサ11gaは、上述したように、
図10Aに示すように、直進筒11の本体部11aの外周面に形成された凹部11faに対して接着剤によって固定されている。そして、スペーサ11gaは、直進筒11の本体部11aの外周面から径方向外向きに向かって突出し、その上端面のR形状の部分において、カム筒12の本体部12aの内周面に対して常に当接した状態でカム筒12の本体部12aの内周面を支持する。
【0056】
スペーサ11haは、上述したように、
図10Bに示すように、直進筒11の本体部11aと一体成形されている。そして、スペーサ11gaは、直進筒11の本体部11aの外周面から径方向外向きに向かって突出し、その上端面のR形状の部分において、カム筒12の本体部12aの内周面に対して常に当接した状態でカム筒12の本体部12aの内周面を支持する。
【0057】
スペーサ11iaは、上述したように、
図10Cに示すように、直進筒11の本体部11aと一体成形されている。そして、スペーサ11gaは、直進筒11の本体部11aの外周面から径方向外向きに向かって突出し、その上端面のR形状の部分において、カム筒12の本体部12aの内周面に対して常に当接した状態でカム筒12の本体部12aの内周面を支持する。
【0058】
これにより、3つのスペーサ11ga,11ha,11iaが、カム筒12の本体部12aの内周面を、光軸OP方向における被写体側の端部において3点支持することができる。
同様に、3つのスペーサ11gb,11hb,11ibが、カム筒12の本体部12aの内周面を、光軸OP方向における像面側の端部において3点支持することができる。
【0059】
<レンズ鏡筒100の組み立て>
本実施形態のレンズ支持機構10を含むレンズ鏡筒100の組み立て工程について、
図12A~
図15Bを用いて説明すれば以下の通りである。
すなわち、直進筒11とカム筒12とは、上述したように、直進筒11の外周面側にカム筒12が配置され、光軸OPを中心とする円の径方向において嵌合している。
【0060】
まず、直進筒11のメインカムフォロア11bは、直進筒11の外周面側にカム筒12が挿入された状態で、
図6Aに示すように、直進筒11の外周面に、径方向外側から図示しないネジを用いて固定される。
同様に、3群・4群・7群ユニット23,24,27の各カムフォロア23a,24a,27aは、直進筒11の外周面側にカム筒12が挿入された状態で、3群・4群・7群ユニット21,23,24,27の本体部等に対して、径方向外側から図示しないネジを用いて固定される。
【0061】
このとき、カム筒12を直進筒11に対して回転させると、1群・3群・4群・7群ユニット21,23,24,27は、各直進溝11d,11eによって回転規制されているため、各カム溝12d,12e,12f,12gの軌跡に沿って光軸OP方向に沿って移動する。
そして、カム筒12自体も、直進筒11側のメインカムフォロア11bが係合しているメインカム溝12bの軌跡に沿って回転しながら光軸OP方向に移動する。
【0062】
このように、
図6Aおよび
図6Bに示す直進筒11に対してカム筒12が繰り出される構成により、1群、3群~7群ユニット21~27の移動量の合計値は、カム溝12d,12e,12f,12gの軌跡の光軸OP方向における長さとメインカム溝12bの軌跡の光軸OP方向における長さとの合計値と一致する。
次に、直進筒11およびカム筒12は、1群~7群ユニット21~27が組み付けられた状態で、
図12Aに示すように、ベース枠40の中に挿入され、直進筒11は、図示しないネジを用いてベース枠40に固定される。
【0063】
次に、
図12Bに示すように、略円筒状のベース枠40の本体部40aの外周面側に、略円筒状のズームリング32が挿入される。
ズームリング32は、
図13に示すように、略円筒状の本体部32aと、ピン挿入穴32bと、直進規制溝32cとを有している。
ピン挿入穴32bは、本体部32aに形成された貫通穴であって、ズーム駆動ピン33がカム筒12の外周面に取り付けられる際に、ズーム駆動ピン33が挿入される。
【0064】
直進規制溝32cは、ピン挿入穴32bから挿入されベース枠40のピン逃げ穴41(
図12A参照)を介してカム筒12の外周面に取り付けられたズーム駆動ピン33の頭部が係合して移動するために、光軸OP方向に沿って形成されている。
ズーム駆動ピン33は、
図14に示すように、ズームリング32のピン挿入穴32bおよびベース枠40のピン逃げ穴41(
図12A参照)を介して外周面側から挿入される。そして、ズーム駆動ピン33は、図示しないネジを用いて、外周面側からカム筒12の外周面に固定される。
【0065】
このとき、ズーム駆動ピン33は、
図15Aおよび
図15Bに示すように、その頭部が直進規制溝32cと係合し、ズームリング32に対して相対的に光軸OP方向に移動可能に支持される。
ここで、ズームリング32を回転させるとズームリング32と係合したズーム駆動ピン33に周方向への回転力が加えられることで、カム筒12が回転駆動される。
【0066】
すると、カム筒12は、上述した直進筒11側に設けられたメインカムフォロア11bがメインカム溝12bに沿って移動することにより、回転しながら光軸OP方向に移動する。
このとき、ズーム駆動ピン33は、直進規制溝32cと係合したまま光軸OP方向に摺動する。
【0067】
なお、ズーム駆動ピン33がカム筒12の外周面にねじで固定された後、
図15Aおよび
図15Bに示すように、ズームリング32の外周面に、ゴム製のズームリングラバー32dが取り付けられる。
これにより、ピン挿入穴32bを塞いで、外観からズーム駆動ピン33が見えないようにすることができる。
【0068】
<主な特徴>
本実施形態のレンズ鏡筒100は、1群~7群ユニット21~27と、略円筒状の直進筒11と、略円筒状のカム筒12と、スペーサ11ga,11gb,11ha,11hb,11ia,11ibと、を備えている。略円筒状の直進筒11は、3群~7群ユニット23~27を内周面側において保持するとともに、径方向に突出するメインカムフォロア11bを有する。略円筒状のカム筒12は、直進筒11と略同軸に配置されており、3群~7群ユニット23~27を光軸OP方向に移動させるために光軸OP方向に対して交差する方向に形成されメインカムフォロア11bが係合するメインカム溝12bを有しており、メインカムフォロア11bとメインカム溝12bとが係合した状態で直進筒11に対して相対回転させることで3群~7群ユニット23~27を光軸OP方向において移動させる。スペーサ11ga,11gb,11ha,11hb,11ia,11ibは、直進筒11とカム筒12との間の径方向におけるガタツキを抑制するように直進筒11から径方向に突出してカム筒12に当接しており、光軸OP方向における長さが直進筒11に対するカム筒12の光軸OP方向における移動量と同等以上である。
【0069】
ここでは、スペーサ11ga,11gb,11ha,11hb,11ia,11ibは、
図7Aおよび
図7Bに示すように、光軸OP方向において、カム筒12の直進筒11に対する最大移動量(繰り出し量)の長さd2と同等以上の長さd1を有している。
これにより、カム筒12が
図6Aに示すWide位置から
図6Bに示すTele位置まで移動した際に、カム筒12の本体部12aの内周面が3点支持されているスペーサ11ha,11hb,11ia,11ibから脱落することを防止するとともに、カム筒12の回転トルクを増大させることなく、直進筒11とカム筒12との間に形成される隙間によって生じるガタツキを効果的に抑制することができる。
【0070】
[他の実施形態]
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、開示の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
(A)
上記実施形態では、直進筒11の本体部11aの外周面に、光軸OP方向に沿って前後に分割された2つのスペーサ11ga,11gbが着脱可能な状態で取り付けられる例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0071】
例えば、スペーサは、光軸方向に沿って1本が設けられた構成であってもよい。
また、スペーサは、直進筒(固定筒)とカム筒との間の隙間の個体差に合わせて、適切な大きさのスペーサが着脱可能に装着される必要はなく、全てのスペーサが直進筒の外周面に一体成形されていてもよい。
(B)
上記実施形態では、スペーサ11ga,11gb、スペーサ11ha,11hbおよびスペーサ11ia,11ibがそれぞれ略120度間隔で、直進筒11の本体部11aの外周面に配置されており、スペーサ11ga,11gb等によってカム筒12の本体部12aの内周面を3点支持する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0072】
例えば、スペーサの数は、6つに限定されるものではなく、6つより少なくてもよいし、6つより多くてもよい。
また、スペーサによってカム筒を支持する点は、3点に限らず、3点支持を基本として、さらに支持点を増やした構成であってもよい。
(C)
上記実施形態では、直進筒11の本体部11aの外周面側においてカム筒12の本体部12aの内周面を3点支持するスペーサ11ga,11gb、スペーサ11ha,11hbおよびスペーサ11ia,11ibのうち、スペーサ11ga,11gbを着脱可能とし、他のスペーサ11ha,11hb,11ia,11ibが直進筒11に一体成形(固定配置)された例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0073】
例えば、3点支持する3つのスペーサのうち、3つのスペーサを着脱可能な構成としてもよいし、3つのスペーサを固定配置された構成としてもよい。
あるいは、3点支持する3つのスペーサのうち、2つのスペーサを着脱可能、1つのスペーサを固定配置とした構成としてもよい。
(D)
上記実施形態では、スペーサ11ga,11gbが、直進筒11の本体部11aの外周面の光軸OP方向における被写体側および像面側の両端付近にそれぞれ配置された例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0074】
例えば、スペーサが配置される位置は、直進筒11の本体部11aの外周面の光軸OP方向における被写体側および像面側の両端付近に限らず、他の位置であってもよい。
(E)
上記実施形態では、スペーサ11ga,11gbが、接着剤によって凹部11fa,11fbに固定される例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0075】
例えば、スペーサが嵌合によって凹部に固定される構成であってもよい。
この場合には、例えば、一旦、凹部に固定されたスペーサのサイズが合わない、スペーサに不良がある等の理由により、交換する必要が生じた場合でも、接着剤を用いて固定されていないため、嵌合を解除して容易に適切なスペーサに交換することができる。
(F)
上記実施形態では、スペーサ11ga,11gbが、直進筒11の本体部11aの外周面に形成された凹部11fa,11fbにそれぞれ装着される例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0076】
例えば、凹部が形成されていない直進筒の外周面にスペーサが装着される構成であってもよい。
(G)
上記実施形態では、固定配置された直進筒11に対して、その外周側に配置されたカム筒12が光軸OP方向において前後に駆動される例を挙げて説明した。しかし、本開示はこれに限定されるものではない。
【0077】
例えば、カム筒に対して相対的に直進筒が光軸方向において前後に駆動される構成であってもよい。
(H)
上記実施形態では、スペーサ11ga,11gb、スペーサ11ha,11hbおよびスペーサ11ia,11ibのカム筒12の本体部12aの内周面に対して摺動する部分が、カム筒12側の摺動面の曲率よりも小さい、断面視において略R形状を有している例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0078】
例えば、スペーサの摺動部分の形状は略R形状に限らず、複数の球を組み合わせた形状等のように他の形状であってもよい。
(I)
上記実施形態では、カメラ本体101に対して着脱可能なレンズ鏡筒100に対して、本開示を適用した例を挙げて説明した。しかし、本開示はこれに限定されるものではない。
【0079】
例えば、本開示は、着脱可能なレンズ鏡筒ではなく、カメラ本体と一体化され着脱不能なレンズ鏡筒に対して、適用されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本開示のレンズ鏡筒は、カム筒の回転トルクを増大させることなく、固定筒とカム筒との間に形成される隙間によって生じるガタツキを効果的に抑制することができるという効果を奏することから、カム筒の回転によってレンズ群を光軸方向において駆動する各種レンズ鏡筒に対して広く適用可能である。
【符号の説明】
【0081】
1 カメラ
10 レンズ支持機構
11 直進筒(固定筒)
11a 本体部
11b メインカムフォロア
11c サブカム溝
11ca 挿入口
11d 直進溝
11e 直進溝
11fa,11fb 凹部
11ga スペーサ(第1スペーサ、着脱スペーサ)
11gb スペーサ(第2スペーサ、着脱スペーサ)
11ha スペーサ(第1スペーサ、固定スペーサ)
11hb スペーサ(第2スペーサ、固定スペーサ)
11ia スペーサ(第1スペーサ、固定スペーサ)
11ib スペーサ(第2スペーサ、固定スペーサ)
12 カム筒
12a 本体部
12b メインカム溝
12c サブカムフォロア
12d カム溝
12e カム溝
12f カム溝
12g カム溝
21 1群ユニット(レンズ群ユニット)
21a 本体部
21b カムフォロア
22 2群ユニット(レンズ群ユニット)
23 3群ユニット(レンズ群ユニット)
23a カムフォロア
24 4群ユニット(レンズ群ユニット)
24a カムフォロア
25 5群ユニット(レンズ群ユニット)
26 6群ユニット(レンズ群ユニット)
27 7群ユニット(レンズ群ユニット)
27a カムフォロア
28 ガイドシャフト
31 フォーカスリング
32 ズームリング
32a 本体部
32b ピン挿入穴
32c 直進規制溝
32d ズームリングラバー
33 ズーム駆動ピン
40 ベース枠
40a 本体部
41 ピン逃げ穴
100 レンズ鏡筒
101 カメラ本体
F1 摺動面(第1摺動面)
F2 摺動面(第2摺動面)
G1 隙間
L1~L7 第1~第7レンズ群
OP 光軸