(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】固体電解質組成物、および、固体電解質粒子
(51)【国際特許分類】
H01B 1/06 20060101AFI20240823BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20240823BHJP
【FI】
H01B1/06 A
H01M10/0562
(21)【出願番号】P 2021566922
(86)(22)【出願日】2020-11-19
(86)【国際出願番号】 JP2020043098
(87)【国際公開番号】W WO2021131426
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-08-29
(31)【優先権主張番号】P 2019238471
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100168273
【氏名又は名称】古田 昌稔
(72)【発明者】
【氏名】宮武 和史
(72)【発明者】
【氏名】西尾 勇祐
(72)【発明者】
【氏名】久保 敬
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-256130(JP,A)
【文献】特開平10-321256(JP,A)
【文献】国際公開第2019/151373(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/135315(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/06
H01M 10/0562
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲン化物固体電解質材料と、
有機溶媒と、
を備え、
前記ハロゲン化物固体電解質材料は、1μm以下の平均粒子径を有し、
前記有機溶媒は、官能基を有する化合物、および炭化水素からなる群より選択される少なくとも1つであり、
前記官能基は、エーテル基およびハロゲン基からなる群より選択される少なくとも1つを含
み、
前記ハロゲン化物固体電解質材料は、リチウムイオン伝導性を有し、かつ、
Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Sn、Al、Sc、Ga、Bi、Sb、Zr、Hf、Ti、Ta、Nb、W、Y、Gd、Tb、およびSmからなる群より選択される少なくとも1つと、
F、Cl、Br、およびIからなる群より選択される少なくとも1つと、
を含む、
固体電解質組成物。
【請求項2】
前記有機溶媒は、前記ハロゲン基を有する化合物を含む、
請求項1に記載の固体電解質組成物。
【請求項3】
前記ハロゲン基は、クロロ基である、
請求項2に記載の固体電解質組成物。
【請求項4】
前記有機溶媒は、前記官能基を有する芳香族化合物、および芳香族炭化水素からなる群より選択される少なくとも1つを含む、
請求項1から3のいずれか一項に記載の固体電解質組成物。
【請求項5】
前記ハロゲン化物固体電解質材料は、
F、Cl、Br、およびIからなる群より選択される少なくとも1つと、
Liと、
Yと、
を含む、
請求項
1から4のいずれか一項に記載の固体電解質組成物。
【請求項6】
前記ハロゲン化物固体電解質材料は、Li、Y、Cl、およびBrを含む、
請求項
5に記載の固体電解質組成物。
【請求項7】
前記ハロゲン化物固体電解質材料は、Li
3YBr
2Cl
4である、
請求項
6に記載の固体電解質組成物。
【請求項8】
前記有機溶媒は、テトラリン、エチルベンゼン、メシチレン、プソイドクメン、キシレン、クメン、アニソール、1,2,4-トリクロロベンゼン、クロロベンゼン、2,4-ジクロロトルエン、o-クロロトルエン、1,3-ジクロロベンゼン、p-クロロトルエン、1,2-ジクロロベンゼン、3,4-ジクロロトルエン、ジブチルエーテル、および1,4-ジクロロブタンからなる群より選択される少なくとも1つを含む、
請求項1から
7のいずれか一項に記載の固体電解質組成物。
【請求項9】
請求項1から
8のいずれか一項に記載の固体電解質組成物の固化物である、
固体電解質粒子。
【請求項10】
平均粒子径が、1μm以下である、
請求項
9に記載の固体電解質粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固体電解質組成物、および、固体電解質粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ハロゲン化物固体電解質材料を用いた電池を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的は、固体電解質材料のイオン伝導度の低下を抑制しつつ、固体電解質材料の粒子径を低減できる固体電解質組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の固体電解質組成物は、
ハロゲン化物固体電解質材料と、
有機溶媒と、
を備え、
前記ハロゲン化物固体電解質材料は、1μm以下の平均粒子径を有し、
前記有機溶媒は、官能基を有する化合物、および炭化水素からなる群より選択される少なくとも1つを含み、
前記官能基は、エーテル基およびハロゲン基からなる群より選択される少なくとも1つを含む。
【発明の効果】
【0006】
本開示は、固体電解質材料のイオン伝導度の低下を抑制しつつ、固体電解質材料の粒子径を低減できる固体電解質組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、固体電解質粒子のリチウムイオン伝導度を評価するために用いられる加圧成形ダイス200の模式図を示す。
【
図2】
図2は、固体電解質組成物の製造方法を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、固体電解質粒子の製造方法を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察された実施例1から6による固体電解質粒子の画像である。
【
図5】
図5は、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察された実施例7から12による固体電解質粒子の画像である。
【
図6】
図6は、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察された実施例13から17および比較例4による固体電解質粒子の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態が説明される。
【0009】
従来、高エネルギー密度化と大容量化が求められる二次電池の分野では、有機溶媒に電解質塩を溶解させた有機電解液を用いることが主流である。有機電解液を用いる二次電池では、液漏れの懸念があり、短絡等が生じた場合の発熱量が大きくなる可能性も指摘されている。
【0010】
一方、有機電解液の代わりに無機固体電解質を用いる全固体二次電池が注目されつつある。全固体二次電池は、液漏れを起こさない。無機固体電解質が可燃性を有さないため、短絡等が生じた場合の発熱も抑制されると期待されている。
【0011】
全固体二次電池に用いる無機固体電解質として、硫黄を主成分として含む硫化物系固体電解質と、金属酸化物を主成分として含む酸化物系固体電解質とが知られている。しかし、硫化物系固体電解質は、水分と反応した場合に毒性を有する硫化水素が発生し得る。酸化物系固体電解質のイオン伝導度は低い。そのため、高いイオン伝導度を有する新たな固体電解質材料の開発が望まれている。
【0012】
新たな固体電解質材料として、例えば、リチウム、イットリウム、およびハロゲン元素を含む固体電解質材料が期待されている。この固体電解質材料は、イオン結合性を有する。イオン結合性を有する固体電解質材料を用いた全固体二次電池を実用化するためには、イオン結合性を有する固体電解質材料を含み、かつ、流動性を有する組成物を調製する必要がある。さらに、流動性を有する組成物を電極または集電体の表面に塗布して固体電解質膜等の部材を形成する技術が必要である。さらに、薄層を形成するために、固体電解質材料の粒子径を低減できる技術も必要である。
【0013】
マイクロメートルオーダーの粒子径を有する固体電解質材料を得るためには、溶媒を使用せずに固体電解質材料を粉砕すればよい。一方、1μm以下の粒子径を有する固体電解質材料を得るためには、固体電解質材料を特定の有機溶媒と混合して粉砕する必要がある。固体電解質材料を有機溶媒と混合することにより、粉砕された固体電解質材料が凝集するのを抑制できる傾向がある。
【0014】
そこで、本発明者らは、検討の結果、特定の有機溶媒を、固体電解質材料と混合すると、固体電解質材料のリチウムイオン伝導度が低下し得ることが判明した。さらに、有機溶媒と固体電解質材料との組み合わせによっては、固体電解質材料の粒子径を1μm以下まで低減できないことも判明した。以上の着眼点から、本開示の構成が得られた。
【0015】
(第1実施形態)
第1実施形態による固体電解質組成物は、ハロゲン化物固体電解質材料と、有機溶媒と、を備えている。ハロゲン化物固体電解質材料は、1μm以下の平均粒子径を有する。有機溶媒は、官能基を有する化合物、および炭化水素からなる群より選択される少なくとも1つを含む。官能基は、エーテル基およびハロゲン基からなる群より選択される少なくとも1つを含む。第1実施形態による固体電解質組成物は、高いリチウムイオン伝導度を有する固体電解質粒子を得るために用いられ得る。
【0016】
ハロゲン化物固体電解質材料の平均粒子径は、1μm以下であってもよく、0.8μm以下であってもよく、0.7μm以下であってもよく、0.6μm以下であってもよい。ハロゲン化物固体電解質材料の平均粒子径の下限値は、特に限定されず、0.1μmであってもよく、0.3μmであってもよい。これにより、固体電解質組成物は、電解質層および電極層の薄膜を形成するために用いられ得る。その結果、高いエネルギー密度を有する電池を実現できる。当該電池の例は、全固体二次電池である。
【0017】
有機溶媒は、官能基を有する化合物、および炭化水素からなる群より選択される少なくとも1つを含む。
【0018】
炭化水素は、炭素および水素のみからなる化合物である。炭化水素は、脂肪族炭化水素であってもよい。炭化水素は、飽和炭化水素であってもよく、不飽和炭化水素であってもよい。炭化水素は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
【0019】
炭化水素は、環構造を有していてもよい。環構造は、脂環式炭化水素であってもよく、芳香族炭化水素であってもよい。環構造は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。炭化水素が環構造を有することによって、ハロゲン化物固体電解質材料は、有機溶媒に容易に分散し得る。固体電解質組成物におけるハロゲン化物固体電解質材料の分散性を高める観点から、炭化水素は、芳香族炭化水素を含んでいてもよい。炭化水素は、芳香族炭化水素であってもよい。
【0020】
官能基を有する化合物は、官能基を除き炭素および水素のみから構成されていてもよい。すなわち、官能基を有する化合物は、炭化水素に含まれている水素原子の少なくとも1つを官能基に置換した化合物を意味する。官能基として、エーテル基およびハロゲン基が挙げられる。官能基は、エーテル基およびハロゲン基からなる群より選択される少なくとも1つを含んでいてもよい。ハロゲン基として、F、Cl、Br、およびIからなる群より選択される少なくとも1つが用いられてもよい。官能基は、エーテル基およびハロゲン基からなる群より選択される少なくとも1つであってもよい。
【0021】
官能基を有する化合物は、エーテル基およびハロゲン基以外の官能基を実質的に含まなくてもよい。すなわち、官能基を有する化合物は、官能基としてエーテル基またはハロゲン基のみを有する。このような化合物を使用することによって、ハロゲン化物固体電解質材料は容易に分散し得る。ハロゲン化物固体電解質材料は、官能基を有する化合物に容易に分散し得るため、より緻密な固体電解質粒子を形成し得る。これにより、例えば、ピンホールまたは凹凸の少ない固体電解質層を形成し得る。その結果、高いエネルギー密度を有する電池を実現できる。
【0022】
有機溶媒は、ハロゲン基を有する化合物を含んでいてもよい。ハロゲン化物固体電解質材料は、ハロゲン基を有する化合物に容易に分散し得る。その結果、固体電解質組成物は、イオン伝導度の低下を抑制し得る。ハロゲン化物固体電解質材料の分散性の観点から、当該ハロゲン基はクロロ基であってもよい。
【0023】
官能基を有する化合物は、環構造を有していてもよい。環構造は、脂環式炭化水素であってもよく、芳香族炭化水素であってもよい。環構造は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。官能基を有する化合物が環構造を有することによって、ハロゲン化物固体電解質材料は、有機溶媒に容易に分散し得る。
【0024】
ハロゲン化物固体電解質材料の分散性を高める観点から、有機溶媒は、芳香族化合物であってもよい。すなわち、炭化水素は、芳香族炭化水素であってもよい。官能基を有する化合物は、官能基を有する芳香族化合物であってもよい。有機溶媒は、官能基を有する芳香族化合物および芳香族炭化水素からなる群より選択される少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0025】
有機溶媒は、具体的には、テトラリン、エチルベンゼン、メシチレン、プソイドクメン、キシレン、クメン、アニソール、1,2,4-トリクロロベンゼン、クロロベンゼン、2,4-ジクロロトルエン、o-クロロトルエン、1,3-ジクロロベンゼン、p-クロロトルエン、1,2-ジクロロベンゼン、3,4-ジクロロトルエン、ジブチルエーテル、および1,4-ジクロロブタンからなる群より選択される少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0026】
固体電解質組成物の質量に対する有機溶媒の質量の比率は、10質量%以上であってもよく、50質量%以上であってもよい。これにより、固体電解質組成物は、高い分散安定性を有し得る。固体電解質組成物の質量に対する有機溶媒の質量の比率の上限値は、特に限定されず、80質量%であってもよく、90質量%であってもよい。固体電解質組成物の質量に対する有機溶媒の質量の比率は、一例として、30質量%以上かつ70質量%以下であってもよい。
【0027】
有機溶媒の沸点は、特に限定されず、100℃以上であってもよく、130℃以上であってもよく、200℃以上であってもよい。有機溶媒の沸点の上限値は、特に限定されず、250℃であってもよい。有機溶媒は、ハロゲン化物固体電解質材料を分散し得る液体であればよく、ハロゲン化物固体電解質材料が有機溶媒に完全に溶解していなくてもよい。
【0028】
本開示において、「ハロゲン化物固体電解質材料」とは、ハロゲン元素を含み、かつ、硫黄を含まない固体電解質材料を意味する。また、本開示において、「硫黄を含まない固体電解質材料」とは、硫黄元素が含まれない組成式で表される固体電解質材料を意味する。したがって、ごく微量の硫黄成分、例えば硫黄が0.1質量%以下である固体電解質材料は、硫黄を含まない固体電解質材料に含まれる。ハロゲン化物固体電解質材料は、ハロゲン元素以外のアニオンとして、さらに酸素を含んでもよい。
【0029】
ハロゲン化物固体電解質材料は、リチウムイオン伝導性を有していてもよい。
【0030】
ハロゲン化物固体電解質材料は、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Sn、Al、Sc、Ga、Bi、Sb、Zr、Hf、Ti、Ta、Nb、W、Y、Gd、Tb、およびSmからなる群より選択される少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0031】
ハロゲン化物固体電解質材料は、さらに、F、Cl、Br、およびIからなる群より選択される少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0032】
以上の構成によれば、固体電解質組成物は、イオン伝導度の低下を抑制し得る。
【0033】
ハロゲン化物固体電解質材料は、F、Cl、Br、およびIからなる群より選択される少なくとも1つと、Liと、Yとを含んでいてもよい。
【0034】
ハロゲン化物固体電解質材料は、Li、Y、Cl、およびBrを含んでいてもよい。より具体的には、ハロゲン化物固体電解質材料は、Li3YBr2Cl4であってもよい。
【0035】
以上の構成によれば、固体電解質組成物は、イオン伝導度の低下を抑制し得る。
【0036】
ハロゲン化物固体電解質材料は、組成式(1):LiαMβXγにより表される材料であってもよい。ここで、α、βおよびγは、それぞれ独立して0より大きい値である。Mは、Li以外の金属元素および半金属元素からなる群より選択される少なくとも1つである。Xは、Cl、Br、およびIからなる群より選択される少なくとも1つである。
【0037】
本開示において、「半金属元素」とは、B、Si、Ge、As、Sb、およびTeからなる群より選択される少なくとも1つを意味する。
【0038】
本開示において、「金属元素」とは、
(i)水素を除く、周期表第1族から第12族中に含まれるすべての元素、および、
(ii)B、Si、Ge、As、Sb、Te、C、N、P、O、S、およびSeを除く、周期表第13族から第16族中に含まれるすべての元素、
を意味する。
【0039】
組成式(1)において、Mは、Y(イットリウム)を含んでいてもよい。すなわち、ハロゲン化物固体電解質材料は、金属元素MとしてYを含んでいてもよい。ハロゲン化物固体電解質材料は、高いイオン導電度を有する。このため、ハロゲン化物固体電解質材料は、優れた充放電効率を有する全固体電池を得るために用いられ得る。
【0040】
Yを含むハロゲン化物固体電解質材料は、組成式(2):LiaMebYcX6により表される化合物であってもよい。ここで、a+mb+3c=6、および、c>0が充足される。Meは、LiおよびY以外の金属元素および半金属元素からなる群より選択される少なくとも1つである。mは、Meの価数である。
【0041】
Meは、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Sc、Al、Ga、Bi、Zr、Hf、Ti、Sn、Ta、およびNbからなる群より選択される少なくとも1つであってもよい。これにより、ハロゲン化物固体電解質材料は、より高いイオン導電度を有する。
【0042】
ハロゲン化物固体電解質材料は、組成式(3):Li6-3δYδX6により表される材料であってもよい。ここで、Xは、Cl、Br、およびIからなる群より選択される少なくとも1つであり、かつ、0<δ<2が充足される。
【0043】
組成式(3)において、δ=1が充足されてもよい。すなわち、ハロゲン化物固体電解質材料は、組成式(4):Li3YX6により表される材料であってもよい。
【0044】
ハロゲン化物固体電解質材料は、組成式(5):Li3-3δY1+δCl6により表される材料であってもよい。ここで、0<δ≦0.15が充足される。
【0045】
ハロゲン化物固体電解質材料は、組成式(6):Li3-3δY1+δBr6により表される材料であってもよい。ここで、0<δ≦0.25が充足される。
【0046】
ハロゲン化物固体電解質材料は、組成式(7):Li3-3δ+aY1+δ-aMeaCl6-x-yBrxIyにより表される材料であってもよい。ここで、Meは、Mg、Ca、Sr、Ba、およびZnからなる群より選択される少なくとも1つであり、かつ、-1<δ<2、0<a<3、0<(3-3δ+a)、0<(1+δ-a)、0≦x≦6、0≦y≦6、および(x+y)≦6が充足される。
【0047】
ハロゲン化物固体電解質材料は、組成式(8):Li3-3δY1+δ-aMeaCl6-x-yBrxIyにより表される材料であってもよい。ここで、Meは、Al、Sc、Ga、およびBiからなる群より選択される少なくとも1つであり、かつ、-1<δ<1、0<a<2、0<(1+δ-a)、0≦x≦6、0≦y≦6、および(x+y)≦6が充足される。
【0048】
ハロゲン化物固体電解質材料は、組成式(9):Li3-3δ-aY1+δ-aMeaCl6-x-yBrxIyにより表される材料であってもよい。ここで、Meは、Zr、Hf、およびTiからなる群より選択される少なくとも1つであり、かつ、-1<δ<1、0<a<1.5、0<(3-3δ-a)、0<(1+δ-a)、0≦x≦6、0≦y≦6、および(x+y)≦6が充足される。
【0049】
ハロゲン化物固体電解質材料は、組成式(10):Li3-3δ-2aY1+δ-aMeaCl6-x-yBrxIyにより表される材料であってもよい。ここで、Meは、TaおよびNbからなる群より選択される少なくとも1つであり、かつ、-1<δ<1、0<a<1.2、0<(3-3δ-2a)、0<(1+δ-a)、0≦x≦6、0≦y≦6、および(x+y)≦6が充足される。
【0050】
組成式(1)から組成式(10)により表されるハロゲン化物固体電解質材料は、高いイオン導電度を有する。したがって、組成式(1)から組成式(10)のハロゲン化物固体電解質材料は、優れた充放電効率を有する全固体電池を得るために用いられ得る。
【0051】
以下、固体電解質組成物の製造方法が、
図2を参照しながら説明される。
図2は、固体電解質組成物の製造方法を示すフローチャートである。
【0052】
固体電解質組成物の製造方法は、工程S01および工程S02を含んでいてもよい。工程S01は、有機溶媒およびハロゲン化物固体電解質材料を混合する工程である。工程S02は、ハロゲン化物固体電解質材料の粒子径を低減する工程である。工程S01および工程S02がこの順番で実施されてもよい。
【0053】
工程S01では、有機溶媒およびハロゲン化物固体電解質材料が混合される。これにより、有機溶媒およびハロゲン化物固体電解質材料の混合物が得られる。混合物に含まれる有機溶媒の含有量およびハロゲン化物固体電解質材料の含有量は、特に限定されない。混合物の質量に対するハロゲン化物固体電解質材料の質量は、10質量%以上90質量%以下であってもよく、30質量%以上70質量%以下であってもよい。
【0054】
工程S02では、ハロゲン化物固体電解質材料の粒子径が低減される。例えば、ハロゲン化物固体電解質材料が粉砕される。粉砕には、粉砕用メディアが用いられる。粉砕用メディアは、例えば、ジルコニアボールである。粉砕用メディアの形状は、例えば、球状または俵型である。ハロゲン化物固体電解質材料の粉砕後の粒子径は、粉砕用メディアのサイズに大きく依存する。粉砕用メディアの形状が球状である場合、粉砕用メディアの直径は、例えば、1.0mm以下である。
【0055】
工程S02では、容器の中に、有機溶媒、ハロゲン化物固体電解質材料、および粉砕用メディアが入れられる。次いで、容器が回転することにより、ハロゲン化物固体電解質材料が粉砕される。これは、ロールミル、ポットミル、または遊星型ボールミルと呼ばれる粉砕方法である。ローター付きの粉砕室に粉砕用メディアを入れた後、ローターを回転させる。回転している粉砕室に有機溶媒およびハロゲン化物固体電解質材料を含む混合物を入れて、ハロゲン化物固体電解質材料が粉砕されてもよい。
【0056】
粉砕後、ふるいなどを用いて、固体電解質組成物を粉砕用メディアと分離する。粉砕後のハロゲン化物固体電解質材料および有機溶媒を含む混合物が「固体電解質組成物」と呼ばれる。このような製造方法によれば、ハロゲン化物固体電解質材料は有機溶媒に容易に分散し得るため、分散性に優れた固体電解質組成物を得ることができる。その結果、固体電解質組成物は、優れたリチウムイオン伝導度を有する固体電解質粒子を得ることができる。固体電解質組成物は、例えば、ピンホール、凹凸等の少ない緻密な固体電解質膜を容易に形成し得る。
【0057】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態が説明される。
【0058】
固体電解質粒子は、固体電解質組成物の固化物である。固体電解質粒子は、例えば、固体電解質組成物から有機溶媒を除去することにより得られる。すなわち、固体電解質組成物を固化することによって、固体電解質粒子を得ることができる。固体電解質粒子は、高いイオン伝導度を有する。このため、固体電解質粒子は、優れた充放電効率を有する電池を得るために用いられ得る。
【0059】
固体電解質粒子の平均粒子径は、1μm以下であってもよく、0.8μm以下であってもよく、0.7μm以下であってもよく、0.6μm以下であってもよい。固体電解質粒子の平均粒子径の下限値は、特に限定されず、0.1μmであってもよく、0.3μmであってもよい。固体電解質粒子は、電解質層および電極層の薄膜を形成するために用いられ得る。
【0060】
固体電解質粒子の粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)により測定される。粒子群を電子顕微鏡で観察し、電子顕微鏡像における特定の粒子の定方向径が測定される。任意の個数(例えば30個)の粒子の定方向径が算出され、それらの平均値が固体電解質粒子の平均粒子径とみなされる。
【0061】
固体電解質粒子は、固体電解質組成物から有機溶媒を除去した後でも、当該有機溶媒をわずかに含み得る。当該有機溶媒は、例えば、ガスクロマトグラフによって検出される。
【0062】
以下、固体電解質粒子の製造方法が、
図3を参照しながら説明される。
図3は、固体電解質粒子の製造方法を示すフローチャートである。
【0063】
固体電解質組粒子の製造方法は、工程S01、工程S02、および工程S03を含んでいてもよい。
図3における工程S01および工程S02は、第1実施形態において説明された。固体電解質粒子の製造方法は、上述の第1実施形態における固体電解質組成物から、有機溶媒を除去する工程S03を含む。工程S01、工程S02、および工程S03がこの順番で実施されてもよい。
【0064】
工程S03では、固体電解質組成物から有機溶媒が除去される。
【0065】
有機溶媒は、減圧乾燥により固体電解質組成物から除去されてもよい。すなわち、大気圧よりも低い圧力雰囲気中で固体電解質組成物から有機溶媒が除去されてもよい。大気圧よりも低い圧力雰囲気は、ゲージ圧で、例えば-0.01MPa以下であってもよい。減圧乾燥は、50℃以上かつ250℃以下で行われてもよい。
【0066】
有機溶媒は、真空乾燥により固体電解質組成物から除去されてもよい。すなわち、有機溶媒の沸点よりも20℃低い温度で、かつ蒸気圧以下の雰囲気中で固体電解質組成物から有機溶媒が除去されてもよい。
【0067】
有機溶媒は、不活性ガスをフローした環境下で固体電解質組成物が加熱されることにより、固体電解質組成物から除去されてもよい。不活性ガスの例は、窒素またはアルゴンである。加熱温度は、例えば、50℃以上かつ250℃以下である。
【0068】
有機溶媒の除去は、例えば、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)、X線光電子分光法(XPS)、ガスクロマトグラフィー(GC)、またはガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)によって確認できる。なお、乾燥後の固体電解質粒子がイオン伝導度を有していればよく、有機溶媒は、完全に除去されていなくてもよい。
【実施例】
【0069】
以下、実施例を参照しながら、本開示がより詳細に説明される。
【0070】
[実施例1]
(ハロゲン化物固体電解質材料の作製)
-60℃以下の露点を有するアルゴン雰囲気(以下、「乾燥アルゴン雰囲気」と称する)中で、原料粉としてLiBr、LiCl、およびYCl3が、LiBr:LiCl:YCl3=2:1:1のモル比となるように用意された。これらの原料粉が、乳鉢中で粉砕され、混合された。得られた混合粉は、アルミナ製るつぼ中で、500℃で1時間焼成された後、乳鉢中で粉砕された。このようにして、組成式Li3YBr2Cl4により表されるハロゲン化物固体電解質材料(以下、「LYBC」と称する)が得られた。LYBCの平均粒子径は約20μmであった。
【0071】
(固体電解質組成物の作製)
遊星ボールミル粉砕用ポットに、LYBCが、4g加えられた。遊星ボールミル粉砕用ポットに、テトラリンが、16g加えられ、スパチュラを用いて撹拌された。
【0072】
上記の遊星ボールミル粉砕用ポットに、0.5mmの直径を有するジルコニアボールが25g加えられた。遊星型ボールミル(フリッチュ社製、P-7型)を用いて、300rpmで60分間粉砕した。次いで、目開き212μmのふるいを用いて、ジルコニアボールと固体電解質組成物とが分離された。このようにして、実施例1による固体電解質組成物が得られた。
【0073】
(有機溶媒の除去)
ガラス製ビーカーに実施例1による固体電解質組成物が入れられ、ビーカーが密閉された。窒素を10L/分で流しながら、200度まで加熱し、2時間かけてテトラリンが除去された。このようにして、実施例1による固体電解質粒子が得られた。有機溶媒の除去は、目視により確認された。
【0074】
(リチウムイオン伝導度の測定)
図1は、固体電解質粒子のリチウムイオン伝導度を評価するために用いられた加圧成形ダイス200の模式図を示す。
【0075】
加圧成形ダイス200は、パンチ上部201、枠型202、およびパンチ下部203を具備していた。枠型202は、絶縁性のポリカーボネートから形成されていた。パンチ上部201およびパンチ下部203は、いずれも電子伝導性のステンレス鋼から形成されていた。
【0076】
図1に示される加圧成形ダイス200を用いて、下記の方法により、固体電解質粒子のイオン伝導度が測定された。
【0077】
乾燥アルゴン雰囲気中で実施例1による固体電解質粒子101が、加圧成形ダイス200の内部に充填された。パンチ上部201およびパンチ下部203を用いて、実施例1による固体電解質粒子に400MPaの圧力が印加された。
【0078】
圧力が印加されたまま、パンチ上部201およびパンチ下部203は、周波数応答アナライザが搭載されたポテンショスタット(Princeton Applied Research社、VersaSTAT4)に接続された。パンチ上部201は、作用極および電位測定用端子に接続された。パンチ下部203は、対極および参照極に接続された。電気化学的インピーダンス測定法により、25℃において、実施例1による固体電解質粒子のリチウムイオン伝導度が測定された。測定結果は、表1に示される。
【0079】
(平均粒子径の測定)
実施例1による固体電解質粒子の平均粒子径は、走査電子顕微鏡(SEM)により測定された。ランダムに30個の一次粒子が選択され、各一次粒子の定方向径が測定された。各一次粒子の定方向径の平均値が、平均粒子径として算出された。SEMには、日立ハイテクノロジーズ社製のRegulus8230が用いられた。観測倍率は10000倍に設定された。測定結果は、
図4に示される。
【0080】
(分散性の評価)
1cmの内径を有するガラス製スクリュー管に、実施例1による固体電解質組成物が、約2cc入れられ、スクリュー管が密閉された。24時間静置した後、実施例1による固体電解質組成物の上部が約1cc取り出され、固形分比率が測定された。同様に、実施例1による固体電解質組成物の下部が約1cc取り出され、固形分比率が測定された。さらに、上部の固形分比率と下部の固形分比率との差が算出された。固形分比率の値は、表1に示される。固形分比率の測定には、加熱乾燥式水分計(エー・アンド・デイ社製、MX-50)が用いられた。固形分比率とは、固体電解質組成物全体の質量に対するハロゲン化物固体電解質材料の質量の比率を意味する。
【0081】
[参考例1]
テトラリンと混合する前のLYBCについても、実施例1と同様にしてイオン伝導度が測定された。その結果、LYBCのイオン伝導度は、1.5×10-3S/cmであった。実施例1による固体電解質粒子のリチウムイオン伝導度は、0.9×10-3S/cmであった。実施例1による有機溶媒を使用することによって、イオン伝導度の低下が抑制されたことが確認された。
【0082】
[実施例2]
有機溶媒としてテトラリンの代わりにエチルベンゼンを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2による固体電解質組成物および固体電解質粒子が得られた。
【0083】
[実施例3]
有機溶媒としてテトラリンの代わりにメシチレンを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3による固体電解質組成物および固体電解質粒子が得られた。
【0084】
[実施例4]
有機溶媒としてテトラリンの代わりにプソイドクメンを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4による固体電解質組成物および固体電解質粒子が得られた。
【0085】
[実施例5]
有機溶媒としてテトラリンの代わりにキシレンを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例5による固体電解質組成物および固体電解質粒子が得られた。
【0086】
[実施例6]
有機溶媒としてテトラリンの代わりにクメンを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例6による固体電解質組成物および固体電解質粒子が得られた。
【0087】
[実施例7]
有機溶媒としてテトラリンの代わりにアニソールを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例7による固体電解質組成物および固体電解質粒子が得られた。
【0088】
[実施例8]
有機溶媒としてテトラリンの代わりに1,2,4-トリクロロベンゼンを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例8による固体電解質組成物および固体電解質粒子が得られた。
【0089】
[実施例9]
有機溶媒としてテトラリンの代わりにクロロベンゼンを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例9による固体電解質組成物および固体電解質粒子が得られた。
【0090】
[実施例10]
有機溶媒としてテトラリンの代わりに2,4-ジクロロトルエンを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例10による固体電解質組成物および固体電解質粒子が得られた。
【0091】
[実施例11]
有機溶媒としてテトラリンの代わりにo-クロロトルエンを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例11による固体電解質組成物および固体電解質粒子が得られた。
【0092】
[実施例12]
有機溶媒としてテトラリンの代わりに1,3-ジクロロベンゼンを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例12による固体電解質組成物および固体電解質粒子が得られた。
【0093】
[実施例13]
有機溶媒としてテトラリンの代わりにp-クロロトルエンを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例13による固体電解質組成物および固体電解質粒子が得られた。
【0094】
[実施例14]
有機溶媒としてテトラリンの代わりに1,2-ジクロロベンゼンを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例14による固体電解質組成物および固体電解質粒が得られた。
【0095】
[実施例15]
有機溶媒としてテトラリンの代わりに3,4-ジクロロトルエンを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例15による固体電解質組成物および固体電解質粒子が得られた。
【0096】
[実施例16]
有機溶媒としてテトラリンの代わりにジブチルエーテルを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例16による固体電解質組成物および固体電解質粒子が得られた。
【0097】
[実施例17]
有機溶媒としてテトラリンの代わりに1,4-ジクロロブタンを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例17による固体電解質組成物および固体電解質粒子が得られた。
【0098】
実施例2から17による固体電解質粒子のイオン伝導度が、実施例1と同様に測定された。測定結果は、表1に示される。実施例2から17による固体電解質粒子の平均粒子径が、実施例1と同様に測定された。測定結果は、表1に示される。実施例2から17による固体電解質組成物の分散性が、実施例1と同様に評価された。固形分比率の値は、表1に示される。
【0099】
[比較例1]
有機溶媒としてテトラリンの代わりにN,N-ジメチルアニリンを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1による固体電解質組成物および固体電解質粒子が得られた。
【0100】
比較例1による固体電解質粒子のイオン伝導度が、実施例1と同様に測定された。その結果、イオン伝導度は、0.02×10-3S/cmであった。
【0101】
[比較例2]
有機溶媒としてテトラリンの代わりに2-エチル-1-ヘキサノールを用いたこと以外は、実施例1と同様の実験が行われた。しかし、比較例2による固体電解質組成物は得られなかった。LYBCが有機溶媒と反応してひとつのかたまりとなり、粉砕されていなかった。
【0102】
[比較例3]
有機溶媒としてテトラリンの代わりにオルトケイ酸テトラエチルを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例3による固体電解質組成物および固体電解質粒子が得られた。
【0103】
比較例3において、オルトケイ酸テトラエチルを用いることによって、ハロゲン化物固体電解質材料が劣化した。これにより、比較例3による固体電解質粒子の抵抗値が大きく増加した。そのため、実施例3による固体電解質粒子のイオン伝導度は、測定できなかった。
【0104】
[比較例4]
(硫化物固体電解質の作製)
乾燥アルゴン雰囲気中で、原料粉としてLi2SおよびP2S5が、Li2S:P2S5=75:25のモル比となるように用意された。これらの原料粉は、遊星型ボールミル(フリッチュ社製、P-7型)を用いて、10時間、510rpmでミリング処理された。このようにして、ガラス状の固体電解質が得られた。得られたガラス状の固体電解質を、乾燥アルゴン雰囲気中で、270℃、2時間熱処理することにより、Li2S-P2S5により表されるガラスセラミックス状の硫化物固体電解質(以下、「LPS」と称する)が得られた。
【0105】
固体電解質材料としてLYBCの代わりにLPSを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例4による固体電解質組成物および固体電解質粒子が得られた。ただし、比較例4による固体電解質組成物は、固体電解質材料であるLPSを1μm以下の平均粒子径まで粉砕されなかった。
【0106】
比較例4による固体電解質粒子のイオン伝導度が、実施例1と同様に測定された。その結果、イオン伝導度は、5.8×10-4S/cmであった。比較例4による固体電解質粒子の平均粒子径が、実施例1と同様に測定された。その結果、平均粒子径は、1.55μmであった。
【0107】
[参考例2]
テトラリンと混合する前のLPSについても、実施例1と同様にしてイオン伝導度が測定された。その結果、LPSのイオン伝導度は、7.7×10-4S/cmであった。
【0108】
図4は、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察された、実施例1から6による固体電解質粒子の画像である。
図5は、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察された、実施例7から12による固体電解質粒子の画像である。
図6は、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察された、実施例13から17および比較例4による固体電解質粒子の画像である。実施例による固体電解質粒子は、1μm以下の粒子径を有していた。比較例4による固体電解質粒子は、1μmを超える粒子径を有していた。
【0109】
【0110】
(考察)
表1から明らかなように、実施例1から17の固体電解質粒子は、いずれも1μm以下の平均粒子径を有していた。実施例1から17の固体電解質粒子は、ハロゲン化物固体電解質材料と、エーテル基またはハロゲン基を有する化合物、および炭化水素からなる群より選択される少なくとも1つを含む有機溶媒と、を備えた固体電解質組成物から形成されている。この結果から、実施例1から17の固体電解質組成物に含まれる固体電解質材料の平均粒子径も1μm以下であったことが推察される。さらに、表1から明らかなように、実施例1から17の固体電解質組成物では、固体電解質材料のイオン伝導度の低下が十分に抑制された。
【0111】
実施例1から15と実施例16および17とを比較すると明らかなように、有機溶媒が芳香族化合物であることによって、ハロゲン化物固体電解質材料の粉砕によるイオン伝導度の低下がより抑制された。
【0112】
実施例8から15および17と、実施例1から7および16と比較すると明らかなように、有機溶媒としてクロロ基を有する化合物を用いることによって、固体電解質組成物は、より高い分散性を有する。
【0113】
以上のように、本開示の固体電解質組成物は、高いイオン伝導性および高いエネルギー密度を有する電池を得るために適切である。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本開示の固体電解質組成物は、例えば、全固体リチウム二次電池において利用される。
【符号の説明】
【0115】
101 固体電解質材料の粉末
200 加圧成形ダイス
201 パンチ上部
202 枠型
203 パンチ下部