(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】剥離紙剥離装置、エンドエフェクタ、およびロボットアームの制御装置
(51)【国際特許分類】
B25J 13/00 20060101AFI20240823BHJP
【FI】
B25J13/00 Z
(21)【出願番号】P 2020054673
(22)【出願日】2020-03-25
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊地 毅
(72)【発明者】
【氏名】河野 秀行
(72)【発明者】
【氏名】磯邉 柚香
(72)【発明者】
【氏名】松山 吉成
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-247537(JP,A)
【文献】特開2019-156499(JP,A)
【文献】特開平07-097055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 41/00
B25J 1/00- 21/02
B65H 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥離紙を剥離する剥離紙剥離装置であって、
針を備えた第1部品と、前記第1部品を支持し回転軸に沿って回転可能な第2部品とを有し、
前記回転軸から前記針の針先までの第1距離が、前記回転軸から前記第2部品の端部までの最短距離である第2距離よりも大きく、前記第1距離が、前記回転軸から前記第2部品の端部までの最長距離である第3距離より小さく、前記第2部品は、前記剥離紙を付勢しながら回転し、前記第2部品の回転は、
前記針を前記剥離紙に刺す方向に回転する、
剥離紙剥離装置。
【請求項2】
前記第2部品の回転時に、前記第1部品を前記第2部品の回転方向に付勢する、付勢手段を備える、
請求項1に記載の剥離紙剥離装置。
【請求項3】
筐体と、
ロボットアームに接続可能な接続部と、
請求項1または請求項2に記載の剥離紙剥離装置と、を備える、
エンドエフェクタ。
【請求項4】
支持部材と、
前記支持部材に対してスライド可能なスライダと、
前記スライダと共に移動するギアと、
前記ギアとかみ合う第1歯車と、
前記第1歯車とかみ合う第2歯車とを備え、
前記第2歯車と前記第2部品が、前記回転軸を中心に回転する、
請求項3に記載のエンドエフェクタ。
【請求項5】
前記剥離紙剥離装置の、前記剥離紙を剥離する回転方向とは逆方向への回転を妨げる、ロック手段を備える、
請求項4に記載のエンドエフェクタ。
【請求項6】
前記スライダの移動方向が、前記剥離紙に前記針を刺す時の前記剥離紙を設置した面に対して略垂直となる、請求項4または請求項5に記載のエンドエフェクタ。
【請求項7】
前記スライダの移動方向が、前記剥離紙に前記針を刺す時の前記剥離紙を設置した面に対して斜め方向となる、請求項4または請求項5に記載のエンドエフェクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、剥離紙剥離装置、エンドエフェクタ、およびロボットアームの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、多関節型ロボットとしての双腕ロボットの一方の腕のハンドによって所定位置に保持されたワークの粘着シート上に貼り付けられたフィルムをその双腕ロボットの他方の腕のハンドによってその粘着シートから剥離させて、前記双腕ロボットの前記一方の腕のハンドによって前記ワークを所定部位に貼り付け装着する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、剥離紙を効率よく剥がすことができる剥離紙剥離装置、エンドエフェクタ、およびロボットアームの制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、剥離紙を剥離する剥離紙剥離装置であって、針を備えた第1部品と、前記第1部品を支持し回転軸に沿って回転可能な第2部品とを有し、前記回転軸から前記針の針先までの第1距離が、前記回転軸から前記第2部品の端部までの最短距離である第2距離よりも大きく、前記第1距離が、前記回転軸から前記第2部品の端部までの最長距離である第3距離より小さく、前記第2部品は、前記剥離紙を付勢しながら回転し、前記第2部品の回転は、前記針を前記剥離紙に刺す方向に回転する、剥離紙剥離装置を提供する。
【0006】
また、本開示は、筐体と、ロボットアームに接続可能な接続部と、剥離紙剥離装置と、を備える、エンドエフェクタを提供する。
【発明の効果】
【0008】
剥離紙を効率よく剥がすことができる剥離紙剥離装置、エンドエフェクタ、およびロボットアームの制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】ロボットアーム2を備えたロボット装置1の一例を示す斜視図
【
図2】ロボットアーム2を備えたロボット装置1の一例を示す側面図
【
図3】本開示の第1の実施形態に係る剥離紙剥離装置20およびエンドエフェクタ3を示す斜視図であり、(a)エンドエフェクタ3を示す斜視図、(b)エンドエフェクタ3から筐体5が取り除かれた状態を示す斜視図、(c)エンドエフェクタ3から筐体5および支持部材6が取り除かれた状態を示す斜視図
【
図4】本開示の第1の実施形態に係る剥離紙剥離装置20であり、(a)斜視図、(b)側面図、(c)分解斜視図
【
図5】付勢手段26が設けられた剥離紙剥離装置20の動作例を示し、(a)初期状態の斜視図、(b)付勢力が働く状態の斜視図、(c)前記(a)のA-A断面図、(d)前記(b)のB-B断面図
【
図6】歯車装置10および剥離紙剥離装置20の動作例を示す側面図であり、(a)剥離紙剥離装置20の回転開始直後、(b)回転進行中の第1状態、(c)回転進行中の第2状態、(d)回転終了時
【
図7】
図6に対応する斜視図であり、(a)剥離紙剥離装置20の回転開始直後、(b)回転進行中の第1状態、(c)回転進行中の第2状態、(d)回転終了時
【
図8】
図5(a)のA-A断面図に基づく、剥離紙剥離装置20の回転動作を示し、(a)初期状態、(b)回転開始直後、(c)回転進行中の第1状態、(d)回転進行中の第2状態、(e)回転終了時
【
図9】エンドエフェクタ3を接続可能なロボットアーム2の制御装置100の一例を示すブロック図
【
図10】剥離紙剥離装置20の動作を示す説明図であり、(a)針21が剥離紙70に接触した状態、(b)針21が剥離紙70を刺した状態、(c)針21が剥離紙70を把持した状態
【
図11】剥離紙剥離装置20の動作を示す説明図であり、(a)針21が剥離紙70の先端を持ち上げた状態、(b)針21が剥離紙70を剥がす途中の状態、(c)針21が剥離紙を剥離した状態
【
図12】本開示のエンドエフェクタ3および剥離紙剥離装置20の他の実施形態を示し、(a)第2の実施形態に係るエンドエフェクタ3および剥離紙剥離装置20を示す斜視図、(b)第3の実施形態に係るエンドエフェクタ3および剥離紙剥離装置20の左面斜視図、(c)第3の実施形態に係るエンドエフェクタ3および剥離紙剥離装置20の右側面斜視図
【
図13】第3の実施形態に係るエンドエフェクタ3および剥離紙剥離装置20によって剥離紙70を剥離する動作を示す側面図であり、(a)剥離紙70への接触時、(b)剥離紙70の剥離開始時、(c)剥離紙70の巻き上げ時
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本開示に至る経緯)
工場等で用いられるロボット装置は、ロボットアームにエンドエフェクタを取り付けることで、種々の作業を行うことができる。例えば、エンドエフェクタとしてロボットハンドを用いて、工場の生産ライン上を流れるワーク(作業対象物)をピッキングする、部品を組み立てる、等の作業である。
【0011】
エンドエフェクタの種類としては、フィンガを有しており、ワークをフィンガで把持するものや、いわゆるソフトハンドのようにハンドの先端が変形可能であるもの等がある。
【0012】
工場で部品を組み立てる際に、両面テープなどの粘着シートによって、ワーク同士を接着する場合がある。この粘着シートは、接着工程が行われる前の段階においては、剥離紙によって保護されている。そのため、上記の接着工程を行うには、粘着シートから剥離紙を剥がさねばならない。
【0013】
特許文献1に記載の発明においては、爪部の先端部を両面テープの縁部とそれに対応する剥離紙の縁部との間の境界部分に入り込ませる必要がある。このような操作をロボット装置が自動で行うには、ロボット装置の精確な制御が必要となる。
【0014】
本開示では、針を備えた剥離紙剥離装置を用いて、より簡便な方法で剥離紙をはがす剥離紙剥離装置、剥離紙剥離装置を備えたエンドエフェクタ、およびロボットアームの制御装置について詳述する。
【0015】
以下、適宜図面を参照しながら、本開示に係る剥離紙剥離装置、エンドエフェクタ、およびロボットアームの制御装置を具体的に開示した実施形態(以下、「本実施形態」という)を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0016】
(ロボット装置1の概要)
図1は、ロボットアーム2を備えたロボット装置1の一例を示す斜視図である。
図2は、ロボットアーム2を備えたロボット装置1の一例を示す側面図である。
図1及び
図2に基づいて、ロボット装置1を説明する。
【0017】
ロボット装置1は、多関節のロボットアーム2を備える。ロボットアーム2の先端部に、エンドエフェクタ3が接続される。後述の通り、エンドエフェクタ3が剥離紙剥離装置20(図示省略)を備える。
図1は、エンドエフェクタ3がロボットアーム2に接続された状態を、
図2は、エンドエフェクタ3がロボットアーム2から取り外された状態を、それぞれ示している。
【0018】
ロボットアーム2上や、ロボットアーム2とエンドエフェクタ3との接続部分近傍等に、カメラ等の撮像手段が設けられてよい。ロボットアーム2の3次元上の動きは、ロボットアーム2に接続された後述の制御装置100(
図9参照)によって制御される。ロボットアーム2やエンドエフェクタ3の動きは、カメラ等の撮像手段によって撮像された画像に基づいて制御されてよい。
【0019】
(エンドエフェクタ3および剥離紙剥離装置20)
図3は、本開示の第1の実施形態に係る剥離紙剥離装置20およびエンドエフェクタ3を示す斜視図であり、(a)エンドエフェクタ3を示す斜視図、(b)エンドエフェクタ3から筐体5が取り除かれた状態を示す斜視図、(c)エンドエフェクタ3から筐体5および支持部材6が取り除かれた状態を示す斜視図である。
図4は、本開示の第1の実施形態に係る剥離紙剥離装置20であり、(a)斜視図、(b)側面図、(c)分解斜視図である。
図3および
図4に基づいて、エンドエフェクタ3および剥離紙剥離装置20を説明する。
【0020】
本開示の第1の実施形態に係るエンドエフェクタ3は、ロボットアームに接続可能な接続部4と、筐体5と、歯車装置10と、剥離紙剥離装置20と、支持部材6と、を備えている。歯車装置10は、剥離紙剥離装置20を駆動する。支持部材6が、剥離紙剥離装置20を覆うように配置される。筐体5が、歯車装置10と支持部材6とを収容し、本例においては筐体5の上部に設けられた接続部4が、ロボットアーム2に差し込まれて接続される(
図2参照)。
【0021】
歯車装置10は、溝付きスライダ11と、溝付きスライダ11共に移動するギア12と、ギア12とかみ合う第1歯車13と、第1歯車13とかみ合う第2歯車14とを備える。第1の実施形態においては、ギア12、第1歯車13および第2歯車14は、左右一対にある。溝付きスライダ11は支持部材6に対してスライド可能である。図示された例においては、溝付きスライダ11の溝部が、支持部材6が備えるレール61を受け入れて、溝付きスライダ11がレール61に対してスライド可能になっている。
【0022】
図示されている歯車装置10は、ラック・ピニオン機構を構成している。溝付きスライダ11およびギア12が、第1方向X1(例えば図面下方向)に、または第1方向X1と反対の方向である第2方向X2(例えば図面上方向)にスライドすると、第1歯車13が回転する。
【0023】
説明の便宜上、ギア12が移動する第1方向X1は図面下方向であるとし、ギア12の、第1方向X1と反対の方向である第2方向X2は、図面上方向であるとして説明する。また、ギア12が第1方向X1に動く場合、第1歯車13が回転する方向を第1回転方向R1(例えば図面時計回り)、第1回転方向R1と反対の回転方向を第2回転方向R2(例えば図面半時計回り)と説明する。
【0024】
第1歯車13は、第1歯車回転軸13aを中心に回転し、第2歯車14は、第2歯車回転軸14aを中心に回転する。第1歯車回転軸13a及び第2歯車回転軸14aは、エンドエフェクタ3の筐体5に固定された支持部材6に軸支されている。
【0025】
第2歯車14は剥離紙剥離装置20と結合しており、第1歯車13が回転することにより、第2歯車14と剥離紙剥離装置20とが、第2歯車回転軸14aを中心に回転駆動されるようになっている。なお、後述するように、第2回転方向R2が、剥離紙を剥離する時の、剥離紙剥離装置20の回転方向となる。
【0026】
エンドエフェクタ3は、剥離紙剥離装置20の、剥離紙を剥離する回転方向(第2回転方向R2)とは逆方向(第1回転方向R1)への回転を妨げる、ロック手段を備えてよい。当該ロック手段は、一般的な逆戻り防止機構を用いてよい。
【0027】
また、本実施形態においては、歯車装置10によって剥離紙剥離装置20が回転駆動される例を示している。しかしながら、例えばベルトやローラー等の、歯車装置10以外の手段によって剥離紙剥離装置20が回転駆動されてもよい。
【0028】
図3と
図4をあわせて参照すると、剥離紙剥離装置20は、複数の針21(本実施形態では2つの針)を備えた第1部品22と、第1部品22を支持し第2歯車回転軸14aに沿って回転可能な第2部品23と有している。第2歯車14は、第2部品23の側面に固定されており、第2歯車14の回転と同時に第2部品23も第2歯車回転軸14aを中心に回転する。ギア12が第1方向X1に動いた場合には、第1部品22と第2部品23は、
図3(c)に示した第2回転方向R2に回転する。
【0029】
本実施形態においては、第2部品23は、第1部品22を挟むように第1部品22の両側面に配置される一対の部品である。しかし、剥離紙剥離装置20の構成はこれには限られない。例えば、1つの第1部品22と、1つの第2部品とを組み合わせて剥離紙剥離装置20を構成してよい。第1部品22が、第2部品23を挟むように第2部品23の両側面に配置される一対の部品であってもよい。
【0030】
針21は、第1部品22が貫通する第2歯車回転軸14a(
図4(c)参照)に近い側に配置されている。針21の先端は、剥離紙剥離装置20から突出し、剥離紙を刺すことが可能である。具体的には、第2歯車回転軸14aから第1部品22の針21の先端(針先)までの第1距離D1が、第2歯車回転軸14aから第2部品23の端部までの最短距離である第2距離D2よりも大きい関係にある(D1>D2)。すなわち、針21の先端が第2部品23の端部から突出するように針21が配置されている(
図4(b)参照)。後述するように、この突出した針21が剥離紙を刺し、剥離紙剥離装置20が回転しながら剥離紙を剥離する。なお、第1距離D1は、第2歯車回転軸14aから第2部品23の端部までの最長距離である第3距離D3より小さい。そのため、第2部品23が剥離紙を付勢しながら回転し、当該第2部品23の回転が、第2歯車回転軸14aから第2部品23の端部までの距離が短くなる方向に回転した時(
図10等参照)に、第2部品23が回転中に剥離紙を抑えながら、回転につれて突出する針を剥離紙に刺す。これにより、針は剥離紙に正確に刺さることができ、剥離紙を剥離しやすくすることができる。
【0031】
図4(c)に示すように、一方の第2部品23aには、複数の棒状の突起24が設けられ、突起24は、他方の第2部品23bに形成された嵌合孔25に嵌合固定される。また、第1部品22の側面と第2部品23bの側面との間には、コイルスプリングなどの付勢手段26が配置され、付勢手段26は一つの突起24aに支持されている。
【0032】
また、第1部品22には、第2歯車回転軸14aを貫通させる湾曲した長穴27が設けられている。長穴27は、第2歯車回転軸14aに対して遊びをもった状態であれば良く、本実施形態では突起24aを中心とした円周上に沿う円弧状に形成されている。当該長穴27により、付勢手段26を支持する突起24aを中心にして、第1部品22が第2部品23に対して回転可能となる。下記に説明するように、付勢手段26は、第2部品23の回転時に、第1部品22を第2部品23の回転方向に付勢する。
【0033】
(付勢手段及び長穴の機能)
付勢手段26および長穴27の機能について、
図4および
図5を参照して説明する。
図5は、付勢手段26が設けられた剥離紙剥離装置20の動作例を示し、(a)初期状態の斜視図、(b)付勢力が働く状態の斜視図、(c)前記(a)のA-A断面図、(d)前記(b)のB-B断面図である。
【0034】
上述のように、第1部品22と第2部品23(剥離紙剥離装置20の全体)は、第2歯車14の回転に合わせて、第2歯車回転軸14aを中心に回転する。なお、この回転については
図6以降に基づいて後述するので、
図5には示されていない。一方、第1部品22は、付勢手段26を支持する突起24aを中心にして、第2部品23に対して回転可能である(
図5(a)および
図5(b)参照)。第1部品22の第2部品23に対する回転角度の上限を、長穴27が規定している。第1部品22および第2部品23の双方の回転軸である第2歯車回転軸14aが、長穴27を貫通するように配置されている。そのため、第1部品22は、第2歯車回転軸14aが長穴27の第1端に当接した状態(
図5(a)および
図5(c))から、第2歯車回転軸14aが長穴27の第2端に当接した状態(
図5(b)および
図5(d))までの間の角度範囲で、第2部品23に対して回転可能である。
【0035】
図4(c)に示した付勢手段26は、第1部品22を第2部品23の回転方向に付勢している。剥離紙剥離装置20が剥離紙を剥がす際、第1部品22と第2部品23は、全体として第2回転方向R2に回転する(
図5(d)参照)。
図5(b)および
図5(d)に示された状態は、針21が剥離紙を刺し、剥離紙が置かれた台座等からの力(応力)を受けた状態に対応しており、第1部品22が第2部品23に対して第1回転方向R1に回転した状態となっている。ここで、
図4(c)に示した付勢手段26は、第1部品22を初期状態(
図5(a)および
図5(c))へ戻すように、第1部品22および第2部品23に力を加える。そのため、針21に対して台座等からの外力(応力)が働かなくなると、付勢手段26の付勢力が働いて、第1部品22が第2部品23に対して第2回転方向R2へと回転し、
図5(a)および
図5(c)に示した初期状態へと戻る。
【0036】
(剥離紙剥離装置20の動作例)
図6は、歯車装置10および剥離紙剥離装置20の動作例を示す側面図であり、(a)剥離紙剥離装置20の回転開始直後、(b)回転進行中の第1状態、(c)回転進行中の第2状態、(d)回転終了時である。
図7は、
図6に対応する斜視図であり、(a)剥離紙剥離装置20の回転開始直後、(b)回転進行中の第1状態、(c)回転進行中の第2状態、(d)回転終了時である。
図6および
図7に基づいて、剥離紙剥離装置20の動作例を説明する。
【0037】
ロボットアーム2あるいは図示を省略するアクチュエータの動きに応じて、溝付きスライダ11が第1方向X1に移動する。溝付きスライダ11と共にギア12が第1方向X1に移動し、ギア12とかみ合う第1歯車13が第1歯車回転軸13aを中心に第1回転方向R1に回転する。そして、第1歯車13とかみ合う第2歯車14が、第2歯車回転軸14aを中心に第2回転方向R2に回転し、剥離紙剥離装置20も第2回転方向R2に回転する。
【0038】
溝付きスライダ11の第1方向X1の移動量に合わせて、剥離紙剥離装置20が第2歯車回転軸14aを中心に更に第2回転方向R2に、徐々に回転する。すると、針21は、剥離紙(図示省略)を刺し、剥離紙をすくい上げる。
【0039】
(針21が剥離紙を強く刺しすぎないための構成)
ここで、回転する剥離紙剥離装置20が備える針21が、剥離紙を強く刺しすぎると、針21が剥離紙を引き裂き、剥離作業が失敗することが考えられる。この剥離の失敗を回避するために、剥離紙剥離装置20において、第1部品22が第2部品23に対して回転可能であり、付勢手段26が付勢力を発揮する。
【0040】
図8は、
図5(a)のA-A断面図に基づく、剥離紙剥離装置20の回転動作を示し、(a)初期状態、(b)回転開始直後、(c)回転進行中の第1状態、(d)回転進行中の第2状態、(e)回転終了時である。なお、図示は省略したが、剥離紙剥離装置20の下方には、剥離紙が台座等の上に置かれているものとする。
【0041】
図8(a)の初期状態において、針21は第1方向X1と同じ方向(ほぼ平行)に向いている。溝付きスライダ11の第1方向X1への移動に追従して、剥離紙剥離装置20が第2回転方向R2に回転を始めると、針21は第1方向X1に対して傾き始め、斜めになりつつある針21が剥離紙を刺す位置関係になる(
図8(b)参照)。この時、針21に、剥離紙が置かれた台座等からの力(応力)が加わる。針21に力(応力)が加わるため、第2歯車回転軸14aは長穴27の中をスライドするように移動し、第1部品22は第2部品23に対して突起24aを中心に第1回転方向R1に回転する(
図8(c)参照)。突出していた針21が引っ込むことにより、針21が剥離紙を刺す力が適度に調節される。
【0042】
そして、針21が剥離紙を巻き上げると、針21に対する台座等からの応力がなくなる。すると付勢手段26の付勢力によって、第1部品22は第2部品23に対して第2回転方向R2に回転し、第1部品22は第2部品23とが、初期状態と同様の相互位置関係に戻る(
図8(d)参照)。この時、針21は剥離紙を刺したまま、前方へと押し出されるように再び突出する。そして、第1部品22および第2部品23が共に第2回転方向R2に回転して、針21が剥離紙をすくい上げる(
図8(e)参照)。
【0043】
(制御装置100の構成例)
図9は、エンドエフェクタ3を接続可能なロボットアーム2の制御装置100の一例を示すブロック図である。
【0044】
本実施形態における制御装置100は、制御部101と、メモリ102と、入力装置103と、画像取得部104と、エンドエフェクタ接続部105と、通信装置106と、入出力インターフェース107とを含む構成である。メモリ102、入力装置103、画像取得部104、エンドエフェクタ接続部105、通信装置106、入出力インターフェース107及び図示しない撮像手段は、それぞれ制御部101との間でデータもしくは情報の入出力が可能な内部バス等で接続される。
【0045】
制御部101は、例えばCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、あるいはFPGA(Field Programmable Gate Array)を用いて構成される。制御部101は、制御装置100の各部の動作を全体的に統括するための制御処理、制御装置100の各部との間のデータもしくは情報の入出力処理、データの計算処理、およびデータもしくは情報の記憶処理を行う。
【0046】
メモリ102は、HDDやROM、RAM等を含んでいてよく、制御部101によって実行される各種プログラム(OS、アプリケーションソフト等)や各種データを格納している。
【0047】
入力装置103は、キーボードやマウス等を含んでいてよく、ユーザとの間のヒューマンインターフェースとしての機能を有し、ユーザの操作を入力する。言い換えると、入力装置103は、制御装置100により実行される各種の処理における、入力または指示に用いられる。なお、入力装置103は、制御装置100に接続されたプログラミングペンダントであってよい。
【0048】
画像取得部104は、例えばロボットアーム2等に取付けられたカメラ等の撮像手段と、有線あるいは無線を介して接続可能であり、カメラが撮像した画像を取得する。制御装置100は、画像取得部104が取得した画像に対し、画像処理を適宜行うことができる。この画像処理の主体は、制御部101であって良い。また、制御装置100が、図示を省略する画像処理ユニットを更に備えていても良く、当該画像処理ユニットが制御装置100に接続される構成でもよい。制御部101による制御下で、この画像処理ユニットによって、画像処理を行うことができる。
【0049】
エンドエフェクタ接続部105は、エンドエフェクタ3との接続を確保する構成要素であり、エンドエフェクタ接続部105を介して制御装置100とエンドエフェクタ3(およびロボットアーム2)とが接続される。この接続は、コネクタおよびケーブル等を用いた有線接続であってよいが、無線による接続であってもよい。この接続の際、エンドエフェクタ接続部105は、エンドエフェクタ3を識別する識別情報をエンドエフェクタ3から取得してよい。すなわち、エンドエフェクタ接続部105は、識別情報取得部として機能する。なお、識別情報を、制御部101がエンドエフェクタ接続部105からさらに取得してよい。この識別情報によって、接続されたエンドエフェクタ3の種類を特定することが可能である。
【0050】
通信装置106は、ネットワークを介して外部と通信を行うための構成要素である。なお、この通信は有線通信であっても、無線通信であってもよい。
【0051】
入出力インターフェース107は、制御装置100の間でデータもしくは情報の入出力を行うインターフェースとしての機能を有する。
【0052】
なお、制御装置100の上記構成は一例であり、必ずしも上記の構成要素を全て備えていなくともよい。また、制御装置100は追加の構成要素をさらに備えていてもよい。例えば、箱型の制御装置100が車輪を有し、制御装置100の上にロボットアーム2およびエンドエフェクタ3を載せて自走してもよい。
【0053】
(針21と剥離紙の関係)
図10は、剥離紙剥離装置20の動作を示す説明図であり、(a)針21が剥離紙70に接触した状態、(b)針21が剥離紙70を刺した状態、(c)針21が剥離紙70を把持した状態である。
図11は、剥離紙剥離装置20の動作を示す説明図であり、(a)針21が剥離紙70の先端を持ち上げた状態、(b)針21が剥離紙70を剥がす途中の状態、(c)針21が剥離紙を剥離した状態である。
図10および
図11に基づいて、針21と剥離紙70の関係をより詳細に説明する。
【0054】
ワークである粘着シート71が台座等の上に置かれている。粘着シート71の上部には粘着シート71の粘着剤等を保護するためのフィルム(剥離紙70)が貼られている。本開示の剥離紙剥離装置20を担持したロボット装置1(
図1等参照)が、当該フィルム(剥離紙70)を剥がす。剥離紙70を剥がす作業において、多関節のロボットアーム2が3次元上を移動可能であり、ロボットアーム2や図示を省略するアクチュエータが溝付きスライダ11を第1方向X1や第2方向X2に移動させる。カメラ等の撮像手段が撮像した画像に基づいて、制御装置100の制御部101が上記各種の移動を制御する。
【0055】
制御装置100によって制御されたロボットアーム2が、剥離紙70に針21を刺す適切な位置に剥離紙剥離装置20を移動させる(
図10(a)参照)。ここでいう適切な位置は、例えば、粘着シート71の端部付近であり、針21の先端が剥離紙70に接触する位置である。本実施形態においては、溝付きスライダ11やギア12(
図3等参照)が移動する方向である第1方向X1は、第2部品23の回転進行方向である第3方向Y1に対して略垂直となる。なお、後述の他の実施形態に示すように、第1方向X1と、第3方向Y1とは、略垂直以外の角度関係であってもよい。
【0056】
制御装置100によって制御されたロボットアーム2あるいは図示を省略するアクチュエータが、溝付きスライダ11を第1方向X1に移動させる(
図3、
図6等参照)。溝付きスライダ11の移動に応じて、剥離紙剥離装置20が第2回転方向R2に回転を始める。この時、第2部品23は、剥離紙70を付勢しながら第2回転方向R2に回転する。第2部品23の回転は、第2部品23が剥離紙70と接触する部分について、第2歯車回転軸14aから第2部品23の端部までの距離が短くなる方向に回転する。
【0057】
ここで、第2部品23の回転について、より詳しく説明する。第2部品23が、剥離紙70を付勢することにより、第2部品23が剥離紙70の抑えとして働く。これにより、針が剥離紙70を引っかくなど、針が剥離紙70にきれいに刺さらない事態を回避することができる。そのため、効率よく剥離紙70を剥離することができる。
【0058】
剥離紙70を抑えながら針を刺すという動きを実現するために、第2部品23は上述のように回転する。そして、回転しながら針を刺す動作を実現するために、第2部品23の回転に応じて、第2部品23が剥離紙70と接触する部分について、第2歯車回転軸14aから第2部品23の端部までの距離が短くなる。前記距離が短くなるにつれて、相対的に、針は剥離紙70に対して突出する。
【0059】
剥離紙70を基準に見た場合、最初は第2部品23のみが、剥離紙70に接している。第2部品23の回転に応じて、針が剥離紙70に対して突出する。これにより、剥離紙70を第2部品23で抑えながら、針を刺すという動きを実現している。
【0060】
また、剥離紙剥離装置20が第2回転方向R2に回転を始めると、針21が第3方向Y1に倒れこむように傾いた状態になり、剥離紙70を刺す(
図10(b)参照)。そして、付勢手段26の付勢力が働き始め、針21が剥離紙70を刺す力を調整し始める。剥離紙剥離装置20は、剥離紙70の上面を第3方向Y1に回転しながら移動する(
図10(c)参照)。
【0061】
引き続き、制御装置100の制御に基づき、さらに剥離紙剥離装置20の回転が進むと、針21はより傾き、剥離紙70に食い込むように剥離紙70を刺して行くが、付勢手段26と長穴27によって、針21の刺す力が適切に調整される(
図10(c)参照)。
【0062】
次に、
図11を参照する。剥離紙剥離装置20の回転により、針21が剥離紙70を刺した状態で、針21が剥離紙70の端部付近をすくい上げる(
図11(a)参照)。剥離紙剥離装置20のさらなる回転により、剥離紙70は、針21が刺さっている箇所を起点として、粘着シート71から徐々に剥がされていく(
図11(b)参照)。この時、剥離紙70は、剥離紙剥離装置20の外形に沿うようにして剥がされる。剥離紙剥離装置20の回転が止まった段階(
図11(b)参照)で、剥離紙70うちかなりの部分が粘着シート71から剥離されている。続いて、制御装置100の制御によりロボットアーム2が移動する。ロボットアーム2の移動と共に、剥離紙剥離装置20が粘着シート71から離れる方向(例えば第2方向X2)に移動し、剥離紙70が粘着シート71から完全に剥離される(
図11(c)参照)。
【0063】
(針21の刺さり具合の調整)
針21の刺さり具合の調整は、少なくとも下記の2つの要素によって行われることができる。第1の要素は、付勢手段26の付勢力(バネの弾性力等)である。付勢手段26の付勢力を強くすることにより、針21が、より強く剥離紙70に刺さることになる(
図10(b)参照)。これとは反対に、針21が剥離紙70に刺さる力が強すぎると、剥離紙剥離装置20の回転に応じて、針21が剥離紙70を破いてしまい、剥離が失敗する。この剥離失敗を回避するために、付勢手段26の付勢力を弱めるように調整することができる。
【0064】
針21の刺さり具合を調整する第2の要素は、回転しながら剥離紙に針を刺す回転部品の、回転進行方向(第3方向Y1)への移動量である。制御装置100は、剥離紙剥離装置20を備えるエンドエフェクタ3が接続されたロボットアーム2の、三次元方向の移動や、図示を省略するアクチュエータを制御している(
図1、
図2、
図9等参照)。そのため制御装置100は、粘着シート71上に対する、第1部品22や第2部品23を備えた剥離紙剥離装置20の、第3方向Y1への移動量を制御することができる。本実施形態においては、上記の移動量は、剥離紙剥離装置20が第3方向Y1へ回転(
図10参照)することに基づく移動量と、剥離紙剥離装置20自体をロボットアーム2が移動させる移動量との合計量(以下、「合計移動量」と表記する)と解釈することができる。
【0065】
合計移動量が大きすぎる場合、剥離紙剥離装置20が回転しても、剥離紙70に針21が刺さらず、針21が剥離紙70の上を滑るだけになり、剥離は失敗する。ここで上述のように、制御装置100の制御部101は、カメラ等の撮像手段から、撮像画像を取得することができる。制御装置100の制御部101は、剥離紙70の少なくとも一部を撮像可能な撮像手段から撮像画像を取得し、当該撮像画像に基づいて剥離紙剥離装置20の移動態様を修正する。より具体的な一例として、制御装置100の制御部101は、上述の撮像画像に基づいて、針21が剥離紙70に刺さらなかった事を検出した場合、合計移動量を減らすように、剥離紙剥離装置20の移動態様を修正する。例えば、剥離紙剥離装置20の回転速度を上げる、ロボットアーム2が剥離紙剥離装置20を第3方向Y1へと押す速度を下げる、または、ロボットアーム2が剥離紙剥離装置20を第3方向Y1とは逆方向へと引く、等の移動態様修正を、制御装置100が行うことができる。剥離紙剥離装置20の移動態様が修正された状態で剥離紙70の剥離を行えば、この剥離が成功する。
【0066】
逆に、合計移動量が小さすぎる場合、針21が剥離紙70に刺さる力が強すぎるものとなり、剥離紙剥離装置20の回転に応じて、針21が剥離紙70を破いて(引き裂いて)しまい、剥離が失敗する。ここで上述のように、制御装置100の制御部101は、カメラ等の撮像手段から、撮像画像を取得することができる。制御装置100の制御部101は、剥離紙70の少なくとも一部を撮像可能な撮像手段から撮像画像を取得し、当該撮像画像に基づいて剥離紙剥離装置20の移動態様を修正する。より具体的な一例として、制御装置100の制御部101は、上述の撮像画像に基づいて、針21が剥離紙70を破った事を検出した場合、合計移動量を増やすように、前記剥離紙剥離装置20の移動態様を修正する。例えば、剥離紙剥離装置20の回転速度を下げる、または、ロボットアーム2が剥離紙剥離装置20を第3方向Y1へと押す速度を上げる等の移動態様修正を、制御装置100が行うことができる。剥離紙剥離装置20の移動態様が修正された状態で剥離紙70の剥離を行えば、この剥離が成功する。
【0067】
ここで、針21が剥離紙70に刺さる力が強すぎた場合、剥離紙70に針21を刺した箇所は、破れてしまっている。すると、制御装置100が剥離紙剥離装置20の移動態様を修正して、剥離作業をやり直したとしても、剥離紙70における前回と同じ場所に針21を刺すことによっては、剥離紙70をうまく剥離することはできないことがある。そこで、制御装置100の制御部101は、上述の撮像画像に基づいて、針21が剥離紙70を破った事を検出した場合、針21を剥離紙70に刺す箇所を変えるように、剥離紙剥離装置20の移動態様を修正する。例えば
図10(a)に示されている工程において、「剥離紙70に針21を刺す適切な位置」を変更する。制御装置100は、変更後の「適切な位置」に針21が移動するように、ロボットアーム2を制御する。剥離紙剥離装置20の移動態様が修正された状態で剥離紙70の剥離を行えば、この剥離が成功する。
【0068】
(第2および第3の実施形態)
図12は、本開示のエンドエフェクタ3および剥離紙剥離装置20の他の実施形態を示し、(a)第2の実施形態に係るエンドエフェクタ3および剥離紙剥離装置20を示す斜視図、(b)第3の実施形態に係るエンドエフェクタ3および剥離紙剥離装置20の左面斜視図、(c)第3の実施形態に係るエンドエフェクタ3および剥離紙剥離装置20の右側面斜視図である。
図13は、第3の実施形態に係るエンドエフェクタ3および剥離紙剥離装置20によって剥離紙70を剥離する動作を示す側面図であり、(a)剥離紙70への接触時、(b)剥離紙70の剥離開始時、(c)剥離紙70の巻き上げ時である。
図12および
図13に基づいて、エンドエフェクタ3および剥離紙剥離装置20の第2および第3の実施形態を説明する。
【0069】
第2の実施形態、第3の実施形態の双方において、用いられている剥離紙剥離装置20自体は、第1の実施形態における剥離紙剥離装置20と同様である。いずれの実施形態においても、剥離紙剥離装置20が回転しながら剥離紙に針を刺し、剥離紙を剥がす。剥離紙剥離装置20を備えたエンドエフェクタ3の構造が、実施形態ごとに異なっている。
【0070】
第2の実施形態におけるエンドエフェクタ3は、接続部4および筐体5が、回転軸3aを中心にして互いに回転可能に接続されている(
図12(a)参照)。この構成であれば、図示を省略するロボットアーム2と接続された接続部4が、図示されているような水平状態でなくとも(接続部4が斜めになっていたとしても)、筐体5にかかる重力により、筐体5および剥離紙剥離装置20が所定の角度を保つことができる。また、筐体5の背部51と当接する当接面41を接続部4が備えていることにより、エンドエフェクタ3が剥離紙剥離装置20を回転進行方向(第3方向Y1)に押すことができる。剥離紙を剥離する際には、エンドエフェクタ3が剥離紙剥離装置20を図面下方向(第1方向X1)に軽く押し付けながら、剥離紙剥離装置20の回転進行方向(第3方向Y1)に押すように、ロボットアーム2が制御される。この制御は、制御装置100の制御部101が行う。剥離紙剥離装置20は回転進行方向(第3方向Y1)に回転しながら、第1の実施形態における剥離紙剥離装置20と同様にして剥離紙を剥離する。
【0071】
第3の実施形態に係るエンドエフェクタ3(
図12(b)および
図12(c)参照)は、歯車装置10を用いる点について第1の実施形態と同様である。ただし、第3の実施形態においては、溝付きスライダ11の移動方向(例えば第1方向X1)が、第2部品23の回転進行方向(第3方向Y1)に対して斜め方向となる(
図13(a)~
図13(c)参照)。
【0072】
さらに、第3の実施形態に係るエンドエフェクタ3は、剥離された剥離紙70を巻き上げる収納部15を有している。収納部15は、湾曲した溝であってよい。
【0073】
ロボットアーム2に接続されたエンドエフェクタ3の移動により、剥離紙剥離装置20が、剥離紙70の剥離作業を行う適切な位置に配置される(
図13(a)参照)。第1の実施形態と同様に、剥離紙剥離装置20が回転することにより針21が剥離紙70に刺さり、剥離紙70の端部付近を粘着シート71から剥離する(
図13(b)参照)。剥離紙70の、既に粘着シート71から剥がされた部分は、針21の回転に伴い収納部15へと巻き上げられていく(
図13(c)参照)。図示は省略するが、ロボットアーム2の移動と共に、剥離紙剥離装置20が粘着シート71から離れる方向(例えば図面上方向)へと移動し、剥離紙70が粘着シート71から完全に剥離される。
【0074】
上述の第2の実施形態および第3の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、制御装置100がロボットアーム2の移動や図示を省略するアクチュエータを制御して、針21を備えた剥離紙剥離装置20を回転させ、剥離紙70を粘着シート71から剥離する。また、上述の第2の実施形態および第3の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、制御装置100の制御部101が、剥離紙70の少なくとも一部を撮像可能な撮像手段から撮像画像を取得し、撮像画像に基づいて、剥離紙剥離装置20の移動態様を修正する。
【0075】
以上のように、剥離紙を剥離する剥離紙剥離装置が、針を備えた第1部品と、前記第1部品を支持し回転軸に沿って回転可能な第2部品とを有し、前記回転軸から前記針の針先までの第1距離が、前記回転軸から前記第2部品の端部までの最短距離である第2距離よりも大きく、前記第1距離が、前記回転軸から前記第2部品の端部までの最長距離である第3距離より小さく、前記第2部品は、前記剥離紙を付勢しながら回転し、前記第2部品の回転は、前記回転軸から前記第2部品の端部までの距離が短くなる方向に回転する。これにより、剥離紙剥離装置が回転しながら剥離紙に針を刺し、粘着シートから剥離紙を効率よく剥離することができる。
【0076】
前記第2部品の回転時に、前記第1部品を前記第2部品の回転方向に付勢する、付勢手段を備える。これにより、針が剥離紙に刺さる力を調整し、剥離の失敗を回避することができる。
【0077】
エンドエフェクタが、筐体と、ロボットアームに接続可能な接続部と、上述の剥離紙剥離装置とを備える。これにより、剥離紙を効率よく剥離するエンドエフェクタを提供することができる。
【0078】
上記エンドエフェクタが、支持部材と、前記支持部材に対してスライド可能なスライダと、前記スライダと共に移動するギアと、前記ギアとかみ合う第1歯車と、前記第1歯車とかみ合う第2歯車とを備え、前記第2歯車と前記第2部品が、前記回転軸を中心に回転する。これにより、歯車装置を用いて剥離紙剥離装置の第2部品を回転させ、剥離紙を剥離することができる。
【0079】
上記エンドエフェクタが、前記剥離紙剥離装置の、剥離紙を剥離する回転方向とは逆方向への回転を妨げる、ロック手段を備える。これにより、剥離紙が置かれた台座等からの力(応力)によって剥離紙剥離装置の回転が逆戻りすることを、防止することができる。
【0080】
前記スライダの移動方向が、剥離紙に前記針を刺す時の前記剥離紙を設置した面に対して略垂直となる。あるいは、前記スライダの移動方向が、剥離紙に前記針を刺す時の前記剥離紙を設置した面に対して斜め方向となる。これにより、剥離紙剥離装置を備えた、スライダを用いるエンドエフェクタを、用いられるロボットアームの動きに合致した適切な構成で実装することができる。
【0081】
エンドエフェクタを接続可能なロボットアームの制御装置において、前記エンドエフェクタは、回転しながら剥離紙に針を刺す回転部品を備えた剥離紙剥離装置を備え、前記制御装置は制御部を備え、前記制御部は、前記剥離紙の少なくとも一部を撮像可能な撮像手段から撮像画像を取得し、前記撮像画像に基づいて、前記剥離紙剥離装置の移動態様を修正する。これにより、剥離作業が失敗した場合であっても、その失敗した状態を撮像した撮像画像に基づいて、異なる移動態様で剥離作業をやりなおすことができる。その結果、剥離作業を成功させることができる。
【0082】
前記制御部は、前記撮像画像に基づいて、前記針が前記剥離紙に刺さらなかった事を検出した場合、前記回転部品の回転進行方向への移動量を減らすように、前記剥離紙剥離装置の移動態様を修正する。これにより、針を剥離紙に刺す力が足りずに剥離作業が失敗した場合であっても、その失敗した状態を撮像した撮像画像に基づいて、異なる移動態様で剥離作業をやりなおすことができる。その結果、剥離作業を成功させることができる。
【0083】
前記制御部は、前記撮像画像に基づいて、前記針が前記剥離紙を破った事を検出した場合、前記回転部品の回転進行方向への移動量を増やすように、前記剥離紙剥離装置の移動態様を修正する。これにより、針を剥離紙に刺す力が強すぎて剥離作業が失敗した場合であっても、その失敗した状態を撮像した撮像画像に基づいて、異なる移動態様で剥離作業をやりなおすことができる。その結果、剥離作業を成功させることができる。
【0084】
前記制御部は、前記撮像画像に基づいて、前記針が前記剥離紙を破った事を検出した場合、前記針を前記剥離紙に刺す箇所を変えるように、前記剥離紙剥離装置の移動態様を修正する。これにより、針を剥離紙に刺す力が強すぎて剥離紙が破れてしまった場合であっても、針を刺す箇所を変えて再度剥離作業を行うことができる。その結果、剥離作業を成功させることができる。
【0085】
以上、図面を参照して、本開示に係る剥離紙剥離装置、エンドエフェクタ、およびロボットアームの制御装置の各種の実施形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した各種の実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本開示の剥離紙剥離装置、エンドエフェクタ、およびロボットアームの制御装置は、剥離紙を効率よく剥がすことを望む分野に有用である。
【符号の説明】
【0087】
1 ロボット装置
2 ロボットアーム
3 エンドエフェクタ
3a 回転軸
4 接続部
41 当接面
5 筐体
51 背部
6 支持部材
61 レール
10 歯車装置
11 溝付きスライダ
12 ギア
13 第1歯車
13a 第1歯車回転軸
14 第2歯車
14a 第2歯車回転軸
15 収納部
20 剥離紙剥離装置
21 針
22 第1部品
23、23a、23b 第2部品
24、24a 突起
25 嵌合孔
26 付勢手段
27 長穴
70 剥離紙
71 粘着シート
100 制御装置
101 制御部
102 メモリ
103 入力装置
104 画像取得部
105 エンドエフェクタ接続部
106 通信装置
107 入出力インターフェース
D1 第1距離
D2 第2距離
R1 第1回転方向
R2 第2回転方向
X1 第1方向
X2 第2方向
Y1 第3方向