(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】部品実装装置および部品実装方法
(51)【国際特許分類】
H05K 13/04 20060101AFI20240823BHJP
H05K 13/08 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
H05K13/04 M
H05K13/08 P
(21)【出願番号】P 2020158434
(22)【出願日】2020-09-23
【審査請求日】2023-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩田 維里
【審査官】森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-160645(JP,A)
【文献】国際公開第2007/063763(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00 - 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に部品を実装する部品実装装置であって、
基板を保持する基板保持部と、
部品を保持するノズルを有し、前記基板保持部に保持された基板の上方に移動し、部品を保持した前記ノズルを下降させて前記基板の実装点に部品を実装する実装ヘッドと、
前記基板保持部に保持された基板の上面の所定の計測点の高さを計測する高さ計測部と、
前記高さ計測部が計測した定点計測点の高さと、前記高さ計測部が計測した前記定点計測点とは異なる追加計測点の高さに基づき、学習データを作成する学習データ作成部と、
前記学習データに基づき、学習モデルを生成する学習部と、
生成された前記学習モデルを用いて、計測された前記定点計測点の高さから前記追加計測点の高さを推定する追加点高さ推定部と、
計測された前記定点計測点の高さと、推定された前記追加計測点の高さに基づき、前記部品を保持した前記ノズルを基板の実装点に下降させる実装ヘッド制御部を備える、部品実装装置。
【請求項2】
全ての基板では前記追加計測点の高さを計測しない、請求項1に記載の部品実装装置。
【請求項3】
基板に応じて、計測する前記追加計測点の数を変更する、請求項1または2に記載の部品実装装置。
【請求項4】
前記基板保持部に基板を保持した後、前記基板に部品を実装するまでの待ち時間に応じて、計測する前記追加計測点の数を変更する、請求項1または2に記載の部品実装装置。
【請求項5】
基板に部品を実装する部品実装方法であって、
基板保持部に保持された基板の上面の定点計測点の高さを計測する定点計測工程と、
前記基板保持部に保持された前記基板の上面の前記定点計測点とは異なる追加計測点の高さを計測する追加計測工程と、
計測された前記定点計測点の高さと、計測された前記追加計測点の高さに基づき、学習データを作成する学習データ作成工程と、
前記学習データに基づき、学習モデルを生成する学習工程と、
生成された前記学習モデルを用いて、計測された前記定点計測点の高さから当該基板の前記追加計測点の高さを推定する追加点高さ推定工程と、
計測された前記定点計測点の高さと、推定された前記追加計測点の高さに基づき、前記部品を保持し
たノズルを下降させて当該基板の実装点に前記部品を実装する部品実装工程と、を含む、部品実装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に部品を実装する部品実装装置および部品実装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
部品実装装置は、基板を基板保持部に保持した状態で、実装ヘッドが部品を基板の実装点に実装する。ところで、基板保持部に保持された基板は、実装面が変形して上方や下方に反ってしまうことがある。このように反った基板への部品の実装品質を確保するため、高さセンサなどによって基板の実装点までの高さを計測して、計測結果に基づいて実装ヘッドによる部品の実装動作を補正することが行われている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の部品実装装置(実装機)は、部品の実装工程のための指令値データと、実装工程前に基板の三次元形状を測定した測定データと、実装工程後に測定した部品の位置ずれを許容値と比較した適否判定結果と、指令値データに対する補正量を関連付けて機械学習している。そして、実装工程前の測定データから補正量を算出して、指令値データを補正量で補正して実装工程を実行している。この学習を繰り繰り返して、測定値データから信頼できる補正量を算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1を含む従来技術では、機械学習によって最適な補正値を取得することができるものの、学習段階では実装後の部品の位置ずれなどが許容できない場合が発生するおそれがある。また、ダミーの実装工程を使用した学習によって信頼できる補正量が算出可能となってから生産を開始することもできるが、学習中は生産が中断するために生産効率が低下するという問題点があった。
【0006】
そこで本発明は、基板に反りがあっても実装品質を確保して効率的に部品を実装することができる部品実装装置および部品実装方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の部品実装装置は、基板に部品を実装する部品実装装置であって、基板を保持する基板保持部と、部品を保持するノズルを有し、前記基板保持部に保持された基板の上方に移動し、部品を保持した前記ノズルを下降させて前記基板の実装点に部品を実装する実装ヘッドと、前記基板保持部に保持された基板の上面の所定の計測点の高さを計測する高さ計測部と、前記高さ計測部が計測した定点計測点の高さと、前記高さ計測部が計測した前記定点計測点とは異なる追加計測点の高さに基づき、学習データを作成する学習データ作成部と、前記学習データに基づき、学習モデルを生成する学習部と、生成された前記学習モデルを用いて、計測された前記定点計測点の高さから前記追加計測点の高さを推定する追加点高さ推定部と、計測された前記定点計測点の高さと、推定された前記追加計測点の高さに基づき、前記部品を保持した前記ノズルを基板の実装点に下降させる実装ヘッド制御部を備える。
【0008】
本発明の部品実装方法は、基板に部品を実装する部品実装方法であって、基板保持部に保持された基板の上面の定点計測点の高さを計測する定点計測工程と、前記基板保持部に保持された前記基板の上面の前記定点計測点とは異なる追加計測点の高さを計測する追加計測工程と、計測された前記定点計測点の高さと、計測された前記追加計測点の高さに基づき、学習データを作成する学習データ作成工程と、前記学習データに基づき、学習モデルを生成する学習工程と、生成された前記学習モデルを用いて、計測された前記定点計測点の高さから当該基板の前記追加計測点の高さを推定する追加点高さ推定工程と、計測された前記定点計測点の高さと、推定された前記追加計測点の高さに基づき、前記部品を保持したノズルを下降させて当該基板の実装点に前記部品を実装する部品実装工程と、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基板に反りがあっても実装品質を確保して効率的に部品を実装することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施の形態の部品実装装置の構成説明図
【
図2】本発明の一実施の形態の部品実装装置の機能説明図
【
図3】本発明の一実施の形態の部品実装装置によって部品が実装される基板の説明図
【
図4】本発明の第1の実施の形態の部品実装装置の制御系の構成を示すブロック図
【
図5】(a)(b)(c)(d)本発明の第1の実施の形態の形態の部品実装装置によって追加計測点を計測する追加計測モードの説明図
【
図6】本発明の第1の実施の形態の部品実装装置によって作成される実装点高さ計算式と補正実装点高さ計算式の一例の説明図
【
図7】本発明の第1の実施の形態の追加点高さ推定方法の説明図
【
図8】本発明の第1の実施の形態の部品実装方法のフロー図
【
図9】本発明の第2の実施の形態の部品実装装置の制御系の構成を示すブロック図
【
図10】(a)(b)本発明の第2の実施の形態の形態の部品実装装置による基板の上面の撮像の説明図
【
図11】(a)(b)(c)本発明の第2の実施の形態の部品実装装置によって撮像された撮像画像の一例の説明図
【
図12】本発明の第2の実施の形態の実装点高さ推定方法の説明図
【
図13】本発明の第2の実施の形態の部品実装方法のフロー図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に図面を用いて、本発明の一実施の形態を詳細に説明する。以下で述べる構成、形状等は説明のための例示であって、部品実装装置の仕様に応じ、適宜変更が可能である。以下では、全ての図面において対応する要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
図1、及び後述する一部では、水平面内で互いに直交する2軸方向として、基板搬送方向のX方向(
図1における左右方向)、基板搬送方向に直交するY方向(
図3における上下方向)が示される。
図1、及び後述する一部では、水平面と直交する高さ方向としてZ方向(
図1における上下方向)が示される。Z方向は、部品実装装置が水平面上に設置された場合の上下方向または直交方向である。
【0014】
まず
図1を参照して、部品実装装置1の構成を説明する。部品実装装置1は、基板BのY方向の両側部を下方から支持する搬送コンベア2を有する基板搬送機構3を備えている。基板搬送機構3は、搬送コンベア2を駆動させて作業対象となる基板BをX方向に搬送する。基板搬送機構3の中間地点には、基板Bを後述する実装ヘッドによる作業位置Wで保持する基板保持部4が設けられている。基板保持部4は、基板Bの下面を支える下受け部材5や基板Bの両側部を固定するクランプ部材(図示省略)からなる基板クランプ機構6(
図4参照)を備えている。基板保持部4は、基板搬送機構3によって作業位置Wに搬送された基板Bを基板クランプ機構6によって上下方向(Z方向)および水平方向(X方向、Y方向)に固定して保持する。
【0015】
基板搬送機構3の上方には、実装ヘッド7が配置されている。実装ヘッド7は、下端で部品Pを真空吸引によって保持するノズル8と、ノズル8を上下方向に昇降させるノズル昇降機構9を備えている。実装ヘッド7は、実装ヘッド移動機構10によって部品供給部(図示省略)と基板保持部4によって作業位置Wに保持された基板Bの上方との間を往復移動する。そして、実装ヘッド7は、部品供給部が供給する部品Pを保持したノズル8を下降させて基板Bの実装点Kn(
図2参照)に部品Pを搭載する機能を有している。なお、実装ヘッド7は、複数のノズル8とノズル昇降機構9を備える構成であってもよい。また、ノズル8は、チャックにより部品Pを把持して保持する構成であってもよい。
【0016】
図2において、基板の実装点Kn(n=1,2,・・・)の周囲には、ランドEが形成されている。ランドEは、部品Pの端子と接合される電極である。また、ランドEの上には、印刷装置(図示省略)によって厚みMtのペースト状のクリームはんだCが印刷されている。ノズル昇降機構9は、ノズル8が保持する部品Pの下面が押込み量FだけランドE上のクリームはんだCの上面を押しつぶす高さまでノズル8を下降量Zknだけ下降させる(矢印a)。
【0017】
部品実装装置1には、基準面B0が設定されている。基準面B0の高さは、基板Bに見立てた金属板など剛性のある基準プレートを基板保持部4で保持した状態で計測した部品実装装置1の基準高さH0である。基準高さH0は、反りや変形のない理想的な基板Bの上面Baの高さ位置と一致する。下降量Zknは、ノズル8の下面から基準高さH0までの距離である基準下降量Z0、部品Pの厚みPt、実装点の高さHkn、クリームはんだCの厚みMt、押込み量Fに基づいて算出される。
【0018】
図1において、実装ヘッド7には、基板保持部4によって作業位置Wに保持された基板Bの上面Baに設けられた認識マークA1,A2(
図3参照)を撮像するヘッドカメラ11が装着されている。ヘッドカメラ11は、実装ヘッド移動機構10によって認識マークA1,A2を撮像可能な位置に移動する。ヘッドカメラ11が撮像した認識マークA1,A2の位置に基づいて、後述する定点計測点Sn(n=1,2,・・・,9)の位置、追加計測点Tn(n=1,2,・・・,12)の位置(
図3参照)、実装点Knの位置などが補正される。このように、ヘッドカメラ11は、実装ヘッド7と一体的に移動し、基板Bの上面Baを撮像する撮像部である。
【0019】
図1、
図2において、実装ヘッド7には、レーザ変位センサなどの高さセンサ12が装着されている。高さセンサ12は、レーザ光12aを下方に向けて投射するレーザ光源と、レーザ光源が投射したレーザ光12aの反射光を受光する受光素子を含んで構成される。高さセンサ12は、レーザ光12aの投射・受光を行い、三角測量の原理で計測対象の高さを計測する。
【0020】
図2、
図3に示すように、基板Bの上面Baには、複数(ここでは9点)の定点計測点Snと、定点計測点Snとは異なる複数(ここでは12点)の追加計測点Tnが設定されている。実装ヘッド移動機構10によって定点計測点Snおよび追加計測点Tnの上方に移動した高さセンサ12は、定点計測点Snおよび追加計測点Tnに向けてレーザ光12aを投射して定点計測点の高さHsn(n=1,2,・・・,9)および追加計測点の高さHtn(n=1,2,・・・,12)を計測する。
【0021】
すなわち、実装ヘッド移動機構10と高さセンサ12は、基板保持部4に保持された基板Bの上面Baの所定の計測点(定点計測点Sn、追加計測点Tn)の高さ(定点計測点の高さHsn、追加計測点の高さHtn)を計測する高さ計測部として機能する。なお、定点計測点Snおよび追加計測点Tnの数と位置は
図3に示す例に限定されることなく、基板Bの形状、サイズ、材質、実装点Knの位置などに応じて自由に設定される。
【0022】
次に
図4を参照して、第1の実施形態の部品実装装置(以下、単に「部品実装装置1A」と称する。)の制御系の構成について説明する。部品実装装置1Aは、制御装置20A、基板搬送機構3、基板保持部4、実装ヘッド7、実装ヘッド移動機構10、ヘッドカメラ11、高さセンサ12、タッチパネル13を備えている。制御装置20Aは、記憶部21A、実装動作処理部22A、高さ計測処理部23A、実装点高さ算出部24、学習データ作成部25A、学習部26A、追加点高さ推定部27A、補正実装点高さ算出部28Aを備えている。タッチパネル13は、各種データの他、操作画面などを液晶パネルなどに表示する機能と、操作コマンドやデータを入力する機能を備えている。
【0023】
記憶部21Aは記憶装置であり、実装データ29、定点計測点高さデータ30、追加計測点高さデータ31A、学習データ32A、学習モデル33A、推定追加点高さデータ34Aなどが記憶されている。実装データ29には、実装基板に実装される部品Pの部品種やサイズ(厚みPtなど)、基板Bにおける実装点Knの座標、定点計測点Snの座標、追加計測点Tnの座標などの各種情報が、生産する実装基板の基板種ごとに記憶されている。
【0024】
図4において、高さ計測処理部23Aは、実装データ29に記憶される定点計測点Snの座標に基づいて高さ計測部(実装ヘッド移動機構10、高さセンサ12)を制御して、基板保持部4に保持された基板Bの定点計測点の高さHsnを計測する。高さ計測処理部23Aは、計測した定点計測点の高さHsnと、計測対象の基板Bを特定する情報、計測日時などを関連付けて、定点計測点高さデータ30として記憶部21Aに記憶させる。
【0025】
また、高さ計測処理部23Aは、実装データ29に記憶される追加計測点Tnの座標に基づいて高さ計測部を制御して、基板保持部4に保持された基板Bの追加計測点の高さHtnを計測する。高さ計測処理部23Aは、計測した追加計測点の高さHtnと、計測対象の基板Bを特定する情報、計測日時などを関連付けて、追加計測点高さデータ31Aとして記憶部21Aに記憶させる。
【0026】
図4において、高さ計測処理部23Aは、追加計測点Tnを計測するに際して、前後又は並行に作業されている基板Bの状況に基づく待ち時間に応じて、追加計測モード(計測する追加計測点Tnの位置)を決定する。例えば、待ち時間がない場合、高さ計測処理部23Aは、定点計測点S1~S9のみを計測し、追加計測点Tnは計測しない追加計測モード0に決定する(
図5(a))。また、十分に待ち時間がある場合、高さ計測処理部23Aは、定点計測点S1~S9に加えて、全ての追加計測点T1~T12を計測する追加計測モード3に決定する(
図5(d))。
【0027】
また、全ての追加計測点T1~T12を計測するのに十分な待ち時間がない場合、高さ計測処理部23Aは、定点計測点S1~S9に加えて、一部の追加計測点Tnを計測する追加計測モードに決定する。例えば、追加計測モード1(
図5(b))では、定点計測点S1~S9に加えて、6箇所の追加計測点T4~T9が計測される。また、追加計測モード2(
図5(c))では、定点計測点S1~S9に加えて、6箇所の追加計測点T1~T3,T10~T12が計測される。なお、
図5に示す追加計測モード0~3は一例であり、基板Bのサイズ、実装される部品Pのサイズや密集度などに応じて自由に設定される。
【0028】
このように、第1の実施形態の部品実装装置1Aは、基板保持部4に基板Bを保持した後、基板Bに部品Pを実装するまでの待ち時間に応じて、計測する追加計測点Tnの数を変更する(追加計測モード0~3)。すなわち、高さ計測処理部23Aは、基板Bに応じて、計測する追加計測点Tnの数を変更し(追加計測モード0~3)、全ての基板Bでは追加計測点Tnの高さを計測しない(追加計測モード0)。これによって、基板Bに反りがあっても実装品質を確保して効率的に部品Pを実装することができる。
【0029】
図4において、実装点高さ算出部24は、計測された定点計測点の高さHsnに基づいて、部品Pを実装する基板Bの実装点の高さHknを算出する。その際、実装点高さ算出部24は、計測された定点計測点の高さHsnより基板Bの上面Baの形状(
図6参照)を近似した曲面モデルを抽出し、実装点高さ計算式Zs(X,Y)を導出する。そして、実装点高さ算出部24は、実装点高さ計算式Zs(X,Y)に実装点Knの座標(X,Y)を入力して実装点の高さHkn(以下、「算出実装点高さ」と称する。)を算出する。算出された算出実装点高さは、実装動作処理部22Aによる部品Pの実装動作におけるノズル8の下降量Zknの算出に使用される。
【0030】
図4において、学習データ作成部25Aは、高さ計測部(実装ヘッド移動機構10、高さセンサ12)が計測した複数の基板Bの定点計測点の高さHsnと、追加計測点の高さHtnに基づき、学習データ32Aを作成する。作成された学習データ32Aは、記憶部21Aに記憶される。学習部26Aは、学習データ32Aを教師データとして、後述する学習モデル33Aを、機械学習等を用いた学習アルゴリズムにより生成する。
【0031】
学習アルゴリズムとしては、ニューラルネットワーク(多層のニューラルネットワークを用いた深層学習を含む)、遺伝的プログラミング、決定木、ベイジアン・ネットワーク、サポート・ベクター・マシン(SVM)等を使用し得る。生成された学習モデル33Aは、記憶部21Aに記憶される。追加点高さ推定部27Aは、生成された学習モデル33Aを用いて、計測された定点計測点の高さHsnから追加計測点の高さHtnを推定(算出)する。推定された追加計測点の高さHtn(以下、単に「推定追加点高さ」と称する。)は、推定追加点高さデータ34Aとして記憶部21Aに記憶される。
【0032】
ここで、
図7を参照して、第1の実施形態の部品実装装置1Aにより推定追加点高さを推定する追加点高さ推定方法について説明する。まず、学習データ作成部25Aは、記憶部21Aに記憶されている定点計測点高さデータ30と追加計測点高さデータ31Aのうち、同一の基板Bを計測した定点計測点の高さHsnと追加計測点の高さHtnに基づき、学習データ32Aを作成する(ST1A:学習データ作成工程)。すなわち、学習データ作成部25Aは、追加計測モード1~3で追加計測点Tnが計測された複数(例えば、50枚)の基板Bの定点計測点の高さHsn、追加計測点の高さHtn、および基板Bを特定する情報を関連付けた教師データを作成し、学習データ32Aとして記憶させる。
【0033】
図7では、追加計測モード3で計測された基板B1の定点計測点の高さHsnと追加計測点の高さHtnを関連付けた教師データが学習データ32Aとして作成される。また、追加計測モード2で計測された基板B3の定点計測点の高さHsnと追加計測点の高さHtnを関連付けた教師データが学習データ32Aとして作成される。なお、基板B2は追加計測モード0で計測されているため追加計測点の高さHtnがなく、学習データ32Aは作成されない。
【0034】
図7において、次いで学習部26Aは、学習データ32Aに基づき、学習モデル33Aを生成する(ST2A:学習工程)。作成された学習モデル33Aは記憶部21Aに記憶される。次いで追加点高さ推定部27Aは、生成された学習モデル33Aを用いて、学習モデル33Aの作成後に計測された基板B99の定点計測点の高さHs1~Hs9から当該基板B99の推定追加点高さ(追加計測点の高さHt1~Ht12)を推定(算出)する(ST3A:追加点高さ推定工程)。推定された推定追加点高さは、推定追加点高さデータ34Aとして記憶部21Aに記憶される。
【0035】
すなわち、追加点高さ推定部27Aは、学習モデル33Aを用いて、基板B99の定点計測点の高さHs1~Hs9から基板B99を追加計測モード3で計測すると得られると推定される追加計測点の高さHt1~Ht12を計算する。言い換えると、学習モデル33Aは、計測された定点計測点の高さHs1~Hs9から追加計測点の高さHt1~Ht12を推定(算出)する計算式や計算方法である。
【0036】
図4において、補正実装点高さ算出部28Aは、計測された定点計測点の高さHs1~Hs9と、推定追加点高さ(追加点高さ推定部27Aにより推定された追加計測点の高さHt1~Ht12)より、基板Bの上面Baの形状(
図6参照)を近似した曲面モデルを抽出し、補正実装点高さ計算式Zst(X,Y)を導出する。そして、補正実装点高さ算出部28Aは、補正実装点高さ計算式Zst(X,Y)に実装点Knの座標(X,Y)を入力して実装点の高さHkn(以下、「補正実装点高さ」と称する。)を算出する。算出された補正実装点高さは、実装動作処理部22Aによる部品Pの実装動作におけるノズル8の下降量Zknの算出に使用される。
【0037】
図6は、
図3に示す基板Bの定点計測点S2,S5,S8を通る断面を模式的に示している。
図6に示す定点計測点S2,S5,S8の高さHs2,Hs5,Hs8は、高さ計測部(実装ヘッド移動機構10、高さセンサ12)による計測値である。実装点高さ計算式Zs(X,Y)により算出される上面Baの形状は、点線で表示されている。また、追加計測点T2,T5,T8,T11の高さHt2,Ht5,Ht8,Ht11は、学習モデル33Aを用いて推定された推定値である。補正実装点高さ計算式Zst(X,Y)により算出される上面Baの形状は、点線で表示されている。
【0038】
この例では、定点計測点の高さHsnのみから導出する実装点高さ計算式Zs(X,Y)は、基板Bの両端部で誤差が大きい。一方、定点計測点の高さHsnに推定追加点高さを加えて導出する補正実装点高さ計算式Zst(X,Y)は、基板Bの両端部でも誤差が小さい。例えば、定点計測点S2より基板Bの端部側に位置する実装点K1は(
図3参照)、算出実装点高さは現実の基板Bの上面Baの高さとの誤差が大きい。一方、補正された補正実装点高さは誤差が小さく、補正実装点高さに基づいてノズル8の下降量Zknを算出することで、実装品質を向上することができる。
【0039】
なお、補正実装点高さ算出部28Aは、実装点高さ計算式Zs(X,Y)を用いて算出される算出実装点高さと補正実装点高さ計算式Zst(X,Y)を用いて算出される補正実装点高さの差(実装点補正値)を、直接算出する補正高さ計算式ΔZt(X,Y)を導出するようにしてもよい。その場合、実装動作におけるノズル8の下降量Zknは、実装点高さ計算式Zs(X,Y)から算出される算出実装点高さと、補正高さ計算式ΔZt(X,Y)から算出される実装点補正値より算出される。
【0040】
図4において、実装動作処理部22Aは、算出実装点高さ、または、補正実装点高さ基づいてノズル8の下降量Zknを算出、部品Pを保持したノズル8を実装点Knに下降させて部品Pを基板Bに実装する。すなわち、実装動作処理部22Aは、計測された定点計測点の高さHsnと、推定された追加計測点の高さHtn(推定追加点高さ)に基づき、部品Pを保持したノズル8を基板Bの実装点Knに下降させる実装ヘッド制御部である。学習モデル33Aの作成後は、全ての基板Bについて計測される定点計測点の高さHsnから、追加点計測点の高さHtnを推定してノズル8の下降量Zknを算出することで、基板Bに反りがあっても実装品質を確保して効率的に部品Pを実装することができる。
【0041】
上記説明したように、第1の実施形態の部品実装装置1Aは、基板Bの上面Baの所定の計測点の高さを計測する高さ計測部(実装ヘッド移動機構10、高さセンサ12)と、高さ計測部が計測した定点計測点の高さHsnと追加計測点の高さHtnに基づき、学習データ32Aを作成する学習データ作成部25Aと、学習データ32Aに基づき、学習モデル33Aを生成する学習部26Aと、学習モデル33Aを用いて、定点計測点の高さHsnから追加計測点の高さHtnを推定する追加点高さ推定部27Aと、定点計測点の高さHsnと、推定された追加計測点の高さHtnに基づき、ノズル8を基板Bの実装点Knに下降させる実装ヘッド制御部(実装動作処理部22A)を備える。これによって、基板Bに反りがあっても実装品質を確保して効率的に部品Pを実装することができる。
【0042】
次に
図8のフローに沿って、第1の実施形態の部品実装装置1Aにより基板Bに部品Pを実装する部品実装方法について説明する。以下、追加点高さ推定方法と同じ工程には同じ符号を付して、詳細な説明は省略する。まず、実装動作処理部22Aは、基板搬送機構3を制御して、基板Bを搬入する(ST10:基板搬入工程)。次いで実装動作処理部22Aは、基板保持部4を制御して基板Bを作業位置Wで保持する(ST11:基板保持工程)。
【0043】
次いで高さ計測処理部23Aは、高さ計測部(実装ヘッド移動機構10、高さセンサ12)を制御して、基板保持部4に保持された基板Bの上面Baの定点計測点の高さHsnを計測する(ST12:定点計測工程)。計測された定点計測点の高さHsnは、定点計測点高さデータ30として記憶部21Aに記憶される。次いで高さ計測処理部23Aは、高さ計測部を制御して、基板保持部4に保持された基板Bの上面Baの追加計測点の高さHtnを計測する(ST13:追加計測工程)。計測された追加計測点の高さHtnは、追加計測点高さデータ31Aとして記憶部21Aに記憶される。追加計測工程(ST13)では、後述する部品実装工程(ST15)までの待ち時間に応じて、計測する追加計測点Tnの数が変更される(追加計測モード0~4のいずれかが選択される)。
【0044】
図8において、次いで実装点高さ算出部24は、定点計測工程(ST12)で計測した定点計測点の高さHsnに基づき、基板保持部4に保持されている基板Bの実装点の高さHkn(算出実装点高さ)を算出する(ST14:実装点高さ算出工程)。次いで実装動作処理部22Aは、実装ヘッド移動機構10を制御して部品Pを保持するノズル8を基板保持部4に保持された基板Bの実装点Knの上方に移動させる。次いで実装動作処理部22Aは、算出実装点高さに基づいてノズル8の下降量Zknを算出し、ノズル昇降機構9を制御して、ノズル8を下降させて基板Bの実装点Knに部品Pを実装する(ST15:第1部品実装工程)。
【0045】
実装点高さ算出工程(ST14)と第1部品実装工程(ST15)を繰り返し実行し、基板保持部4に保持された基板Bに対する部品Pの実装点Knへの実装が終了すると、実装動作処理部22Aは、基板搬送機構3を制御して、基板Bを搬出させる(ST16:基板搬出工程)。追加計測工程(ST13)において追加計測点の高さHtnの計測がされた基板Bの枚数が所定数より少ない場合(ST17においてNo)、
図8中の左側に示す基板搬入工程(ST10)に戻って、次の基板Bに対する部品実装作業が実行される。なお、最後の第1部品実装工程(ST15)から基板搬出工程(ST16)までの間に待ち時間がある場合は、さらに追加計測工程(ST13)を実行して残りの追加計測点の高さHtnを計測してもよい。
【0046】
図8において、所定の枚数の基板Bで追加計測点の高さHtnの計測がされると(ST17においてYes)、学習データ作成工程(ST1A)が実行されて、計測された定点計測点の高さHsnと、計測された追加計測点の高さHtnに基づき、学習データ32Aが作成される。次いで学習工程(ST2A)が実行されて、学習データ32Aに基づき、学習モデル33Aが生成される。次いで
図8中の右側に示す基板搬入工程(ST10)に進んで、次の作業対象の基板Bが搬入される。
【0047】
次いで基板保持工程(ST11)、定点計測工程(ST12)が実行される。次いで追加点高さ推定工程(ST3A)が実行されて、基板保持部4に保持されている基板Bの定点計測点の高さHsnから当該基板Bの推定追加点高さ(追加計測点の高さHtn)が推定(算出)される。次いで補正実装点高さ算出部28Aは、基板保持部4に保持されている基板Bの定点計測点の高さHsnと、追加点高さ推定工程(ST3A)において推定された推定追加点高さに基づき、基板保持部4に保持されている基板Bの実装点の高さHkn(補正実装点高さ)を算出する(ST18:補正実装点高さ算出工程)。
【0048】
図8において、次いで実装動作処理部22Aは、実装ヘッド移動機構10を制御して部品Pを保持するノズル8を基板保持部4に保持された基板Bの実装点Knの上方に移動させる。次いで実装動作処理部22Aは、第2算出実装高さに基づいてノズル8の下降量Zknを算出し、ノズル昇降機構9を制御して、ノズル8を下降させて基板Bの実装点Knに部品Pを実装させる(ST19:第2部品実装工程)。すなわち、計測された定点計測点の高さHsnと、推定された追加計測点の高さHtn(推定追加点高さ)に基づき、部品Pを保持するノズル8を基板保持部4に保持された基板Bの上方に移動させ、部品Pを保持したノズル8を下降させて基板Bの実装点Knに部品Pを実装させる。
【0049】
以下、推定実装点高さ算出工程(ST18)と第2部品実装工程(ST19)を繰り返し実行し、基板保持部4に保持された基板Bに対する部品Pの実装が終了すると、基板搬出工程(ST16)が実行される。そして、所定枚数の実装基板の生産が終了するまで(ST20においてNo)、
図8中の右側に示す基板搬入工程(ST10)に戻って、次の基板Bに対する部品実装作業が実行される。
【0050】
このように、第1の実施形態の部品実装方法では、所定数の追加計測点の高さHtnが蓄積されるまで(ST17においてNo)、定点計測工程(ST12)と追加計測工程(ST13)を実行し、定点計測点高さデータ30と追加計測点高さデータ31Aを蓄積する。その間は、計測された定点計測点の高さHsnに基づく実装点の高さHkn(算出実装点高さ)からノズル8の下降量Zknを算出し、実装点Knに部品Pを実装する(ST15)。
【0051】
そして、所定数の追加計測点の高さHtnが蓄積されると(ST17においてYes)、定点計測点高さデータ30と追加計測点高さデータ31Aから学習データ32Aを作成し(ST1A)、機械学習により学習モデル33Aを生成する(ST2A)。その後は、定点計測工程(ST12)のみ実行し、計測された定点計測点の高さHsnと、学習モデル33Aを用いて推定した推定追加点高さに基づき算出した実装点の高さHkn(補正実装点高さ)からノズル8の下降量Zknを算出し、実装点Knに部品Pを実装する(ST19)。これによって、基板Bに反りがあっても実装品質を確保して効率的に部品Pを実装することができる。
【0052】
次に
図9を参照して、第2の実施形態の部品実装装置(以下、単に「部品実装装置1B」と称する。)の制御系の構成について説明する。以下、第1の実施形態の部品実装装置1Aと同じ構成要素には同じ符号を付して、詳細な説明は省略する。部品実装装置1Bは、制御装置20B、基板搬送機構3、基板保持部4、実装ヘッド7、実装ヘッド移動機構10、ヘッドカメラ11、高さセンサ12、タッチパネル13を備えている。制御装置20Bは、記憶部21B、実装動作処理部22B、高さ計測処理部23B、撮像処理部35B、実装点高さ算出部24、学習データ作成部25B、学習部26B、実装点高さ推定部36B、評価部37Bを備えている。
【0053】
記憶部21Bは記憶装置であり、実装データ29、定点計測点高さデータ30、撮像画像データ38B、算出実装点高さデータ39B、学習データ32B、学習モデル33B、推定実装点高さデータ40Bなどが記憶されている。高さ計測処理部23Bは、実装データ29に記憶される定点計測点Snの座標に基づいて高さ計測部(実装ヘッド移動機構10、高さセンサ12)を制御して、基板保持部4に保持された基板Bの定点計測点の高さHsnを計測する。高さ計測処理部23Bは、計測した定点計測点の高さHsnと、計測対象の基板Bを特定する情報、計測日時などを関連付けて、定点計測点高さデータ30として記憶部21Bに記憶させる。
【0054】
図9において、実装点高さ算出部24は、計測された定点計測点の高さHsnに基づいて、部品Pを実装する基板Bの実装点の高さHkn(算出実装点高さ)を算出する。実装点高さ算出部24は、算出した算出実装点高さを、基板Bを特定する情報と関連付けて、算出実装点高さデータ39Bとして記憶部21Bに記憶させる。撮像処理部35Bは、部品実装作業中に部品Pを保持したノズル8が実装点Knの上方に水平方向(XY方向)に移動して位置合わせを行った後、ノズル8を下降させる前に、ヘッドカメラ11を制御して基板Bの上面Baを撮像させる。すなわち、ヘッドカメラ11(撮像部)は、ノズル8が実装点Knに部品Pを実装する毎に、基板Bの上面Baを撮像する。
【0055】
図10(a)は、部品P5を保持したノズル8が実装点K5の上方で水平方向を位置合わせして停止した状態を示している。
図10(b)は、部品P5を基板Bに実装する直前の実装点K5付近の基板Bの上面Baの状態を示している。撮像処理部35Bは、ノズル8が実装点K5の上方に停止した状態でヘッドカメラ11を制御して、基板Bの上面Baを撮像させる。この例では、ヘッドカメラ11の撮像範囲に、基板Bの実装点K4に実装済みの部品P4が含まれている。撮像処理部35Bは、撮像された基板Bの上面Baの撮像画像、計測対象の基板Bを特定する情報、ノズル8が停止した実装点K5を特定する情報、撮像日時などを関連付けて、撮像画像データ38Bとして記憶部21Bに記憶させる。
【0056】
図11(a)~(c)は、ノズル8が実装点K5の上方に停止した状態において、ヘッドカメラ11によって撮像された撮像画像11aの例を示している。実装点K5に対応する撮像画像11aに含まれる部品P4の大きさ(撮像画像11aに占める面積の割合)は、基板Bの反りにより変化する。すなわち、基板Bの上方への反り量が大きい場合は、基板Bの上面Baがヘッドカメラ11に近づくため、部品P4が大きく写る。
図11(a)、
図11(b)、
図11(c)に示す撮像画像11aは、実装点K5の実装点の高さHk5が低い順に並べてある。このように、実装点の高さHk5により撮像画像11a中の部品P4の大きさが変化することから、実装点K5に対応する撮像画像11aに占める部品P4の割合等からその実装点の高さHk5を推定することができる。
【0057】
図9において、学習データ作成部25Bは、算出実装点高さデータ39Bに含まれる実装点Knの算出実装点高さ(算出された実装点の高さHkn)と、撮像画像データ38Bに含まれる実装点Knに対応する撮像画像11a(撮像された基板Bの上面Baの画像)に基づき、学習データ32Bを作成する。すなわち、学習データ32Bは、実装点Kn毎に作成される。作成された学習データ32Bは、記憶部21Bに記憶される。学習部26Bは、実装点Knに対応する学習データ32Bを教師データとして、後述する実装点Knに対応する学習モデル33Bを、機械学習等を用いた学習アルゴリズムにより生成する。生成された学習モデル33Bは、記憶部21Bに記憶される。
【0058】
実装点高さ推定部36Bは、生成された実装点Knに対応する学習モデル33Bを用いて、実装点Knに対応する撮像画像11a(撮像された画像)から実装点の高さHknを推定(算出)する。推定された実装点の高さHkn(以下、単に「推定実装点高さ」と称する。)は、推定実装点高さデータ40Bとして記憶部21Bに記憶される。算出された推定実装点高さは、実装動作処理部22Bによる部品Pの実装動作におけるノズル8の下降量Zknの算出に使用される。
【0059】
ここで、
図12を参照して、第2の実施形態の部品実装装置1Bにより推定実装点高さを推定する実装点高さ推定方法について説明する。まず、学習データ作成部25Bは、記憶部21Bに記憶されている算出実装点高さデータ39Bと撮像画像データ38Bより、同一の基板Bにおける同一の実装点Knの算出実装点高さ(算出された実装点の高さHkn)と、撮像画像11a(撮像された基板Bの上面Baの画像)に基づき、学習データ32Bを作成する(ST1B:学習データ作成工程)。
【0060】
すなわち、学習データ作成部25Bは、複数(例えば、50枚)の基板Bについて、定点計測点の高さHsnから算出された実装点Knの算出実装点高さ、実装点Knに対応する撮像画像11a、および基板Bと実装点Knを特定する情報を関連付けた教師データを作成し、学習データ32Bとして記憶させる。
図12の例では、基板B1の実装点Knの算出実装点高さと、実装点Knに対応する撮像画像11aを関連付けた教師データが、実装点Knの学習データ32Bとして作成される。また、基板B2の実装点Knの算出実装点高さと、実装点Knに対応する撮像画像11aを関連付けた教師データが、実装点Knの学習データ32Bとして作成される。
【0061】
図12において、次いで学習部26Bは、実装点Knの学習データ32Bに基づき、実装点Knの学習モデル33Bを生成する(ST2B:学習工程)。作成された学習モデル33Bは記憶部21Bに記憶される。次いで実装点高さ推定部36Bは、生成された実装点Knの学習モデル33Bを用いて、学習モデル33Bの作成後に撮像された基板B99の実装点Knに対応する撮像画像11aから当該基板B99の実装点Knの推定実装点高さ(実装点の高さHkn)を推定(算出)する(ST3B:実装点高さ推定工程)。推定された推定実装点高さは、推定実装点高さデータ40Bとして記憶部21Bに記憶される。
【0062】
すなわち、実装点高さ推定部36Bは、実装点Knの学習モデル33Bを用いて、ノズル8を基板B99の実装点Knの上方に停止させて撮像した実装点Knに対応する撮像画像11aから基板B99の実装点Knの推定実装点高さを計算する。言い換えると、学習モデル33Bは、ノズル8を実装点Knの上方に停止させて撮像した実装点Knに対応する撮像画像11aから、実装点Knの実装点の高さHknを推定(算出)する計算式や計算方法である。
【0063】
図9において、評価部37Bは、算出実装点高さデータ39Bに含まれる実装点Knの算出実装点高さ(算出された実装点の高さHkn)と、推定実装点高さデータ40Bに含まれる実装点Knの推定実装点高さ(推定された実装点の高さHkn)の差を評価する。具体的には、ある基板Bの実装点Knの算出実装点高さと、その基板Bの実装点Knの推定実装点高さの差が、所定の範囲より小さいか否かを判断する。すなわち、評価部37Bは、実装点Knの学習モデル33Bの精度が所定の精度に到達したか否かを学習モデル33B毎に判断する。
【0064】
例えば、
図12の例では、評価部37Bは、算出実装点高さデータ39Bに記憶されている基板B1の実装点Knの算出実装点高さと、撮像画像データ38Bに記憶されている基板B1の実装点Knに対応する撮像画像11aから実装高さ推定部36Bが実装点Knの学習モデル33Bを用いて推定した推定実装点の高さの差を算出する。そして、評価部37Bは、実装点Knの算出実装点高さと推定実装点の高さの差が、所定の範囲(例えば±10%)より小さい場合は、実装点Knの学習モデル33Bが所定の精度に到達したと判断する。
【0065】
図9において、実装動作処理部22Bは、生成された実装点Knの学習モデル33Bの精度が所定の精度に達していない(差が所定範囲より大きい)場合は、定点計測点の高さHsnから算出された実装点Knの算出実装点高さに基づいて、ノズル8の下降量Zknを算出する。また、実装動作処理部22Bは、生成された実装点Knの学習モデル33Bの精度が所定の精度に達した(差が所定範囲より小さい)場合は、実装点Knの学習モデル33Bを用いて推定された実装点Knの推定実装点高さに基づいて、ノズル8の下降量Zknを算出する。
【0066】
すなわち、実装動作処理部22Bは、実装点Knの算出実装点高さ、または、推定実装点高さに基づいて、部品Pを保持したノズル8を基板Bの実装点Knに下降させる実装ヘッド制御部である。評価部37Bによって全ての実装点Knの学習モデル33Bの精度が所定の精度に達した(差が所定の範囲より小さくなった)と判断されると、その後、実装動作処理部22Bは、実装点Knの推定実装点高さに基づいて、部品Pを保持したノズル8を基板Bの実装点Knに下降させる。全ての実装点Knの学習モデル33Bの精度が所定の精度に達すると、その後、高さ計測部(実装ヘッド移動機構10、高さセンサ12)は、定点計測点の高さHsnを計測しない。これによって、基板Bに反りがあっても実装品質を確保して効率的に部品Pを実装することができる。
【0067】
上記説明したように、第2の実施形態の部品実装装置1Bは、基板Bを保持する基板保持部4と、部品Pを保持するノズル8を有する実装ヘッド7と、基板Bの定点計測点の高さHsnを計測する高さ計測部(実装ヘッド移動機構10、高さセンサ12)と、計測された定点計測点の高さHsnに基づいて、実装点の高さHknを算出する実装点高さ算出部24と、ノズル8が実装点Knに部品Pを実装する際に、基板Bを撮像する撮像部(ヘッドカメラ11)を備える。
【0068】
さらに部品実装装置1Bは、算出実装点高さと、撮像画像11aに基づき、学習データ32Bを作成する学習データ作成部25Bと、学習データ32Bに基づき、学習モデル33Bを生成する学習部26Bと、生成された学習モデル33Bを用いて、実装点Knに対応する撮像画像11aから実装点の高さHknを推定する実装点高さ推定部36Bと、算出実装点高さ、または、推定実装点高さに基づいて、ノズル8を基板Bの実装点Knに下降させる実装ヘッド制御部(実装動作処理部22B)を備える。これによって、基板Bに反りがあっても実装品質を確保して効率的に部品Pを実装することができる。
【0069】
次に
図13のフローに沿って、第2の実施形態の部品実装装置1Bにより基板Bに部品Pを実装する部品実装方法について説明する。以下、第1の実施形態の部品実装装置1Aによる部品実装方法、実装点高さ推定方法と同じ工程には同じ符号を付して、詳細な説明は省略する。まず、基板搬入工程(ST10)、基板保持工程(ST11)が実行されて、基板Bが基板保持部4の作業位置Wに保持される。次いで定点計測工程(ST12)が実行されて、基板保持部4に保持された基板Bの上面Baの定点計測点の高さHsnが計測される。計測された定点計測点の高さHsnは、定点計測点高さデータ30として記憶部21Bに記憶される。
【0070】
次いで実装動作処理部22Bは、実装ヘッド移動機構10を制御して実装ヘッド7を水平方向に移動させて、部品Pを保持したノズル8を実装点Knの上方に水平移動させる(ST30:ノズル水平移動工程)。この時、ヘッドカメラ11(撮像部)は実装ヘッド7と一体に移動して、実装点Knに対応する位置に移動する。次いでヘッドカメラ11は、基板Bの上面Baの実装点Knに対応する位置を撮像する(ST31:撮像工程)。すなわち、実装ヘッド7と一体に移動するヘッドカメラ11により、ノズル8が基板Bの実装点Knに部品Pを実装する際に、基板Bの上面Baが撮像される。撮像された実装点Knに対応する撮像画像11aは、撮像画像データ38Bとして記憶部21Bに記憶される。
【0071】
図13において、次いで実装点高さ算出工程(ST14)が実行され、定点計測工程(ST12)において計測された定点計測点の高さHsnに基づき、基板保持部4に保持されている基板Bの実装点Knの実装点の高さHkn(算出実装点高さ)が算出される。算出された実装点Knの算出実装点高さは、算出実装点高さデータ39Bとして記憶部21Bに記憶される。
【0072】
次いで実装動作処理部22Bは、ノズル8が停止している実装点Knの算出実装点高さに基づいてノズル8の下降量Zknを算出し、ノズル昇降機構9を制御して、ノズル8を下降させて基板Bの実装点Knに部品Pを実装させる(ST32:第1ノズル下降工程)。すなわち、算出された実装点Knの実装点の高さHknに基づいて、部品Pを保持したノズル8を下降させて基板Bの実装点Knに部品Pを実装する。以下、次の実装点Knへのノズル水平移動工程(ST30)、撮像工程(ST31)、実装点高さ算出工程(ST14)、第1ノズル下降工程(ST32)が、繰り返し実行される。基板保持部4に保持された基板Bに対する部品Pの実装が終了すると、基板搬出工程(ST16)が実行される。
【0073】
図13において、次いで学習データ作成工程(ST1B)が実行されて、実装点Knの算出実装点高さと、実装点Knに対応する撮像画像11aに基づき、実装点Knの学習データ32Bが作成される。次いで学習工程(ST2B)が実行されて、実装点Knの学習データ32Bに基づき、実装点Knの学習モデル33Bが生成される。次いで評価部37Bは、実装点Knの算出実装点高さと、実装点高さ推定部36Bが実装点Knの学習モデル33Bを用いて推定した実装点Knの推定実装点高さの差に基づいて、実装点Knの学習モデル33Bの精度が所定の精度に到達したか否かを評価する(ST33:評価工程)。
【0074】
全ての実装点Knの学習モデル33Bの精度が所定の精度に到達していないと判断された場合(ST34においてNo)、
図13中の左側に示す基板搬入工程(ST10)に戻って、次の基板Bに対する部品実装作業が実行される。なお、所定枚数(例えば、50枚)分の定点計測点の高さHsnと撮像画像11aが蓄積されるまで、学習データ作成工程(ST1B)、学習工程(ST2B)、評価工程(ST32)はスキップされる。
【0075】
図13において、全ての実装点Knの学習モデル33Bの精度が所定の精度に到達した判断された場合(ST34においてYes)、次いで
図13中の右側に示す基板搬入工程(ST10)に進んで、次の作業対象の基板Bが搬入され、基板保持工程(ST11)が実行される。次いで定点計測工程(ST12)は実行せれずに、ノズル水平移動工程(ST30)、撮像工程(ST31)が実行される。これにより、基板保持部4に保持されている基板Bの実装点Knに対応する撮像画像11aが取得される。このように、定点計測工程(ST12)をスキップすることで、部品実装作業の作業時間が短縮される。
【0076】
次いで実装点高さ推定工程(ST3B)が実行される。これにより、基板保持部4に保持されている基板Bの実装点Knに対応する撮像画像11aから、当該基板Bの実装点Knの推定実装点高さ(実装点の高さHkn)が推定(算出)される。次いで実装動作処理部22Bは、実装点Knの推定実装点高さに基づいてノズル8の下降量Zknを算出し、ノズル昇降機構9を制御して、ノズル8を下降させて基板Bの実装点Knに部品Pを実装させる(ST35:第2ノズル下降工程)。すなわち、推定された実装点の高さHknに基づいて、部品Pを保持したノズル8を下降させて基板Bの実装点Knに部品Pを実装する。
【0077】
以下、次の実装点Knへのノズル水平移動工程(ST30)、撮像工程(ST31)、実装点高さ推定工程(ST3B)、第2ノズル下降工程(ST35)が、繰り返し実行される。基板保持部4に保持された基板Bに対する部品Pの実装が終了すると、基板搬出工程(ST16)が実行される。そして、所定枚数の実装基板の生産が終了するまで(ST20においてNo)、
図13中の右側に示す基板搬入工程(ST10)に戻って、次の基板Bに対する部品実装作業が実行される。
【0078】
このように、第2の実施形態の部品実装方法では、所定数の実装点Knに対応する撮像画像11aが蓄積され、生成された全ての実装点Knの学習モデル33Bの精度が所定の精度に到達するまで(ST34においてNo)、定点計測工程(ST12)と撮像工程(ST31)を実行する。その間は、計測された定点計測点の高さHsnに基づき算出される実装点Knの実装点の高さHkn(算出実装点高さ)からノズル8の下降量Zknを算出し、実装点Knに部品Pを実装する(ST32)。
【0079】
そして、所定の精度の学習モデル33Bが生成されると(ST34においてYes)、その後、定点計測工程(ST12)はスキップされる。その後は、撮像工程(ST31)と実装点高さ推定工程(ST3B)を実行し、実装点Knの推定実装点高さからノズル8の下降量Zknを算出して、実装点Knに部品Pを実装する(ST35)。これによって、基板Bに反りがあっても実装品質を確保して効率的に部品Pを実装することができる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の部品実装装置および部品実装方法は、基板に反りがあっても実装品質を確保して効率的に部品を実装することができるという効果を有し、部品を基板に実装する分野において有用である。
【符号の説明】
【0081】
1、1A、1B 部品実装装置
4 基板保持部
7 実装ヘッド
8 ノズル
10 実装ヘッド移動機構(高さ計測部)
11 ヘッドカメラ(撮像部)
12 高さセンサ(高さ計測部)
B 基板
Ba 上面
Hkn、Hk5 実装点の高さ
Hsn 定点計測点の高さ
Htn 追加計測点の高さ
K1~K5、Kn 実装点
P、P4、P5 部品
S1~S9、Sn 定点計測点
T1~T12 追加計測点