(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】半導体ウエーハの接合装置及び接合方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20240823BHJP
【FI】
H01L21/02 B
(21)【出願番号】P 2024096617
(22)【出願日】2024-06-14
(62)【分割の表示】P 2024023263の分割
【原出願日】2024-02-19
【審査請求日】2024-06-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523316736
【氏名又は名称】エスエイチダブリュウテクノロジーズ(シャンハイ)ユウゲンコウシ
(74)【代理人】
【識別番号】100120226
【氏名又は名称】西村 知浩
(72)【発明者】
【氏名】長田厚
(72)【発明者】
【氏名】王笑寒
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第6008113(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0164606(US,A1)
【文献】特開2023-138896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
H01L 21/60
H01L 21/67
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸回りに回転しない一対のステージ上で相互に対向する半導体ウエーハ同士を真空環境下においてセンタープッシュピンを用いずに接合するための半導体ウエーハの接合装置であって、
相互に対向する前記半導体ウエーハ同士を相互の離間距離が10μm以上50μm以下となる微小空間に収容し、真空制御部により前記微小空間を真空環境にして、
一対の前記ステージに前記半導体ウエーハとの接触面積を低減するための接触面積低減部を介して支持された前記半導体ウエーハ同士を当該半導体ウエーハの平面姿勢を維持しながら接合する、半導体ウエーハの接合装置。
【請求項2】
前記接触面積低減部が、複数の突状部材で構成される、請求項1に記載の半導体ウエーハの接合装置。
【請求項3】
前記突状部材は、着脱自在である、請求項2に記載の半導体ウエーハの接合装置。
【請求項4】
前記突状部材の先端部が、突状部材の先端部と前記半導体ウエーハとの接触面積を小さくするための曲面で形成される、請求項2に記載の半導体ウエーハの接合装置。
【請求項5】
前記真空制御部は、前記微小空間と連通し当該微小空間よりも体積が大きい制御空間であり、前記微小空間と連通することにより前記微小空間の真空制御を実行する、請求項1に記載の半導体ウエーハの接合装置。
【請求項6】
軸回りに回転しない一対のステージ上で相互に対向する半導体ウエーハ同士を真空環境下においてセンタープッシュピンを用いずに接合するための半導体ウエーハの接合方法であって、
相互に対向する前記半導体ウエーハ同士を相互の離間距離が10μm以上50μm以下となる微小空間に収容し、真空制御部により前記微小空間を真空環境にして、
一対の前記ステージに前記半導体ウエーハとの接触面積を低減するための接触面積低減部を介して支持された前記半導体ウエーハ同士を当該半導体ウエーハの平面姿勢を維持しながら接合する、半導体ウエーハの接合方法。
【請求項7】
前記接触面積低減部として、複数の突状部材を用いた、請求項6に記載の半導体ウエーハの接合方法。
【請求項8】
前記突状部材は、着脱自在である、請求項7に記載の半導体ウエーハの接合方法。
【請求項9】
前記半導体ウエーハと接触する前記突状部材の先端部が曲面状に形成されている、請求項7に記載の半導体ウエーハの接合方法。
【請求項10】
前記真空制御部は、前記微小空間と連通し当該微小空間よりも体積が大きい制御空間であり、前記微小空間と連通することにより前記微小空間の真空制御を実行する、請求項6に記載の半導体ウエーハの接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体製造プロセスにおいて半導体ウエーハ同士を接合するための半導体ウエーハの接合装置及び接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体製造プロセスの一部であるハイブリッドボンディングは、例えば、プラズマ処理工程と、洗浄工程と、乾燥工程と、接合工程と、を有している。
【0003】
プラズマ処理工程では、半導体ウエーハに対して大気圧プラズマ又は真空プラズマを作用させて半導体ウエーハの表面を活性化させる。洗浄工程では、例えば、半導体ウエーハを中心軸回りに回転させながら、洗浄液(純水又は薬液)を滴下して半導体ウエーハの表面を洗浄する。乾燥工程では、半導体ウエーハを中心軸回りに高速で回転させながら遠心力を利用して半導体ウエーハの表面の水滴を散らす。接合工程では、プラズマ処理工程から乾燥工程を経た上下2枚の半導体ウエーハ同士を対向させて接合装置により接合する。
【0004】
ここで、従来の接合装置では、相互対向して配置された平面状のステージ上に半導体ウエーハを載置し、相互に対向した一対の半導体ウエーハの一方の中心をセンタープッシュピン(ロッド)で押圧することにより、半導体ウエーハ同士を接合していた(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ロッドで半導体ウエーハを押圧する過程で半導体ウエーハに応力集中が作用するとともに半導体ウエーハが撓み、半導体ウエーハの品質が悪化する技術問題が生じていた。特にSiCウエーハは硬くて脆いため、SiCウエーハが撓む過程で致命的な品質劣化が生じることがあった。
【0007】
なお、SiCウエーハとは、シリコン(Si)と炭素(C)とで構成される化合物半導体材料をいう。
【0008】
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、簡易な構成により、半導体製造プロセスにおける半導体ウエーハ同士の接合時において半導体ウエーハの劣化を防止することができる半導体ウエーハの接合装置及び接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、軸回りに回転しない一対のステージ上で相互に対向する半導体ウエーハ同士を真空環境下においてセンタープッシュピンを用いずに接合するための半導体ウエーハの接合装置であって、
相互に対向する前記半導体ウエーハ同士を相互の離間距離が10μm以上50μm以下となる微小空間に収容し、真空制御部により前記微小空間を真空環境にして、一対の前記ステージに前記半導体ウエーハとの接触面積を低減するための接触面積低減部を介して支持された前記半導体ウエーハ同士を当該半導体ウエーハの平面姿勢を維持しながら接合する。
【0010】
第2の発明は、軸回りに回転しない一対のステージ上で相互に対向する半導体ウエーハ同士を真空環境下においてセンタープッシュピンを用いずに接合するための半導体ウエーハの接合方法であって、
相互に対向する前記半導体ウエーハ同士を相互の離間距離が10μm以上50μm以下となる微小空間に収容し、真空制御部により前記微小空間を真空環境にして、一対の前記ステージに前記半導体ウエーハとの接触面積を低減するための接触面積低減部を介して支持された前記半導体ウエーハ同士を当該半導体ウエーハの平面姿勢を維持しながら接合する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡易な構成により、半導体製造プロセスにおける半導体ウエーハ同士の接合時において半導体ウエーハの劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の本発明の第1実施形態の半導体製造プロセスの工程図である。
【
図2】本発明の第1実施形態で使用するプラズマチャンバの一例である。
【
図3】本発明の第1実施形態で洗浄機の一例である。
【
図4】本発明の第1実施形態の半導体製造プロセスにおける洗浄処理とアルゴンガス供給処理と乾燥処理を示した図である。
【
図5】本発明の第1実施形態の半導体製造プロセスのフローである。
【
図6】本発明の第1実施形態の半導体製造プロセスの改良プロセスのフローである。
【
図7】本発明の第2実施形態の半導体ウエーハの接合装置における移載プロセスとプレボンディングプロセスを示した構成図である。
【
図8】本発明の第1実施例の半導体ウエーハの接合装置におけるプレボンディングプロセスを示した構成図である。
【
図9】本発明の第2実施例の半導体ウエーハの接合装置のステージの構成を示した構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の第1実施形態に係る半導体製造プロセスに適用される、半導体ウエーハの静電気帯電除去方法について説明する。例えば、ハイブリッドボンディングが採用される半導体製造プロセスに適用した実施形態について説明する。
【0014】
[半導体製造プロセス]
先ず、半導体製造プロセスについて説明する。
図1及び
図5に示すように、半導体製造プロセスは、例えば、半導体ウエーハW1、W2に対するパーティクル除去工程P100と、プラズマ処理工程P200と、大気開放工程P300と、洗浄工程P400と、乾燥工程P500と、アライメント工程P600と、接合工程P700と、検査工程P800と、アニール工程P900と、を有している。
【0015】
パーティクル除去工程P100では、半導体ウエーハW1、W2に付着したパーティクルが歩率的又は化学的に除去される。
【0016】
プラズマ処理工程P200では、真空プラズマ処理又は大気圧プラズマ処理等により、半導体ウエーハW1、W2の表面が活性化される。
【0017】
真空プラズマ処理は、公知の装置を用いて実施できる。真空プラズマ処理の方式としては、高周波誘導方式、容量結合型電極方式、コロナ放電電極-プラズマジェット方式、平行平板方式、リモートプラズマ方式、ICP型高密度プラズマ方式等が挙げられる。真空プラズマ処理に用いるガスとしては、酸素ガス、窒素ガス、希ガス(アルゴンガス等)、水素ガス、アンモニアガス等が挙げられ、希ガス又は窒素ガスが好ましい。ガスは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。例えば、アルゴンガス100体積%であってもよく、水素ガス/窒素ガスが70/30(体積比)の混合ガスでもよく、水素ガス/窒素ガス/アルゴンガスが35/15/50(体積比)の混合ガスでもよい。
【0018】
真空プラズマ処理の雰囲気としては、希ガス又は窒素ガスの体積分率が50体積%以上の雰囲気が好ましく、70体積%以上の雰囲気がより好ましく、90体積%以上の雰囲気がさらに好ましく、100体積%の雰囲気が特に好ましい。希ガス又は窒素ガスの体積分率が前記範囲の下限値以上であれば、処理対象の表面を充分に粗面化できる。
【0019】
真空プラズマ処理におけるガス流量、真空度、処理時間は、表面処理される無機層の組成や真空プラズマ処理装置の構造により適宜選択される。
【0020】
大気圧プラズマ処理も、公知の装置を用いて実施できる。大気圧プラズマ処理においては、0.8~1.2気圧下において不活性ガス(アルゴンガス、窒素ガス、ヘリウムガス等)下で放電することで、グロー放電を発生させる。不活性ガス中には微量の活性ガス(酸素ガス、水素ガス、炭酸ガス、エチレン、4フッ化エチレン等)を混合する。ガスとしては、処理対象の表面を充分に粗面化できる点から、窒素ガスに水素ガスを混合したガスが好ましい。
【0021】
図2にプラズマチャンバを示す。プラズマチャンバ10のゲートバルブ12を開け、チャンバ14の内部にロボットで半導体ウエーハW1、W2を搬送してステージ16に載せた後、ゲートバルブ12を閉じてチャンバ14の内部を密閉する。その後、チャンバ14の内部の真空引きを行う。半導体ウエーハW1、W2にプラズマ処理を施工して、半導体ウエーハW1、W2の表面を活性化させる。
【0022】
ここで、プラズマ処理工程P200の後に、半導体ウエーハW1、W2を大気環境下に置く大気開放工程P300をさらに備えることが好ましい。
【0023】
大気開放工程P300では、プラズマチャンバ10のゲートバルブ12を開けて、チャンバ10の内部を大気に曝してもよく、プラズマチャンバ10とは別に大気に開放した大気開放チャンバ(図示省略)を設け、半導体ウエーハW1、W2を大気開放チャンバに搬送したうえで大気環境下においてもよい。
【0024】
大気開放工程P300では、半導体ウエーハW1、W2に対して、アルゴンガス30を供給する。アルゴンガス30は所定の揺動ノズル32を用いて、半導体ウエーハW1、W2の平面中心から径方向外側(外周側)に向けて吹き付けて供給することが好ましい。
【0025】
大気開放工程P300でアルゴンガス30を半導体ウエーハW1、W2に供給する理由は、例えば、従来のように大気開放時に窒素(N2)パージすると、半導体ウエーハW1、W2とパージガスとの摩擦により半導体ウエーハW1、W2の表面に静電気が帯電し、パージ時の圧力変動によりパーティクルが舞い上がり、パーティクルが静電気に引き付けられて、半導体ウエーハW1、W2の表面にパーティクルが付着しやすくなる。これを防止するために、本実施形態では、窒素(N2)パージではなく、アルゴンガス30を半導体ウエーハW1、W2に吹き付けることにより、半導体ウエーハW1、W2の表面における静電気の帯電量を少なくすることができる。この結果、半導体ウエーハW1、W2の表面に付着するパーティクルを低減することができる。
【0026】
なお、チャンバ14の内部をアルゴンガス30で充満させてアルゴンガス雰囲気を作り、アルゴンガス雰囲気に置かれた半導体ウエーハW1、Wに静電気が帯電しないようにしてもよい。
【0027】
洗浄工程P400では、
図4に示すように、例えば、プラズマ処理後の半導体ウエーハW1、W2を回転テーブル20に載せて所定速度で回転させながら、半導体ウエーハW1、W2の表面に洗浄水28を滴下する。洗浄水28として、例えば、純水又は薬液を利用できる。
【0028】
ここで、洗浄水28を半導体ウエーハW1、W2に供給する場合には、回転する半導体ウエーハW1、W2の平面中心に洗浄水28を垂らし、回転する半導体ウエーハW1、W2の遠心力で洗浄水28を径方向外側に誘導させる方法が好ましい。これにより、半導体ウエーハW1、W2の全表面を洗浄することができ、洗浄水28の洗浄ムラを防止できる。
【0029】
図3に洗浄機を示す。洗浄機18は洗浄工程P400で用いられる。洗浄機18は、回転テーブル20と、回転テーブル20を回転駆動させる回転モータ22と、洗浄水28(
図4参照)を半導体ウエーハW1、W2に供給する洗浄ノズル24と、を有している。洗浄ノズル24は、洗浄水28を噴出するものであり、揺動モータ26の駆動により揺動可能に構成されている。これにより、半導体ウエーハW1、W2が回転テーブルに載せられて回転モータ22により回転駆動されながら、洗浄ノズル24から洗浄水28が半導体ウエーハW1、W2の平面中心に滴下できる。これにより、半導体ウエーハW1、W2の洗浄が行われ、半導体ウエーハW1、W2の表面にOH基(水酸基)が付着する。
【0030】
ここで、洗浄工程P400の後に、乾燥工程P500を設けることが好ましい。
【0031】
乾燥工程P500では、例えば洗浄機18がそのまま使用される。具体的には、回転テーブル20が洗浄工程時の速度よりも高速で回転させられて、洗浄ノズル24又は別のガス供給ノズル(図示省略)からアルゴンガス30が半導体ウエーハW1、W2に向かって吹き付けられる。この場合、
図4に示すように、回転する半導体ウエーハW1、W2の平面中心から径方向外側(外周側)に向かってアルゴンガス30が供給されると、回転する半導体ウエーハW1、W2の遠心力の作用を受けて、アルゴンガス30が洗浄水28を押すようにして広がっていく。換言すれば、アルゴンガス30が回転する半導体ウエーハW1、W2の遠心力で攪拌されながら半導体ウエーハW1、W2の表面に付着した洗浄水28を半導体ウエーハW1、W2の表面から剥離させる。これにより、半導体ウエーハW1、W2の全表面にアルゴンガス30を接触させることができ、アルゴンガス30の接触ムラを防止できる。
【0032】
乾燥工程P500でアルゴンガス30を半導体ウエーハW1、W2に供給する他の理由は、洗浄後の半導体ウエーハW1、W2を高速で回転させて乾燥する場合、半導体ウエーハW1、W2と空気との摩擦により半導体ウエーハW1、W2の表面に静電気が帯電する。このため、乾燥工程P500でアルゴンガス30を半導体ウエーハW1、W2の表面に曝すことにより、半導体ウエーハW1、W2の表面における静電気の帯電量を少なくすることができる。この結果、半導体ウエーハW1、W2の表面に付着するパーティクルを低減することができる。
【0033】
以上のように、乾燥工程P500でアルゴンガス30を半導体ウエーハW1、W2に供給することにより、半導体ウエーハW1、W2の表面から洗浄水28を除去させて乾燥させるとともに、半導体ウエーハW1、W2の表面への静電気の帯電量を低減することができる。
【0034】
なお、大気開放工程P300において、アルゴンガス30に少量の水素と酸素を適宜混合した混合ガスを半導体ウエーハW1、W2に供給してもよい。例えば、アルゴンに3体積%程度の水素を混合した混合ガスを半導体ウエーハW1、W2の表面に吹き付けて静電気及びパーティクルを除去し、その後、酸素ガスを半導体ウエーハW1、W2の表面に吹き付けて半導体ウエーハW1、W2の表面にOH基(水酸基)を付着させてもよい。
【0035】
ここで、半導体ウエーハW1、W2が回転可能になる構成では、混合ガス及び酸素ガスは、回転する半導体ウエーハW1、W2の平面中心から径方向外側に向かって揺動ノズル等により供給することが好ましい。これにより、回転する半導体ウエーハW1、W2に作用する遠心力によって混合ガス及び酸素ガスが攪拌されるため、半導体ウエーハW1、W2の全表面にムラなく混合ガス及び酸素ガスを曝すことができる。
【0036】
この結果、
図5及び
図6に示すように、洗浄工程P400及び乾燥工程P500を省略することができ、半導体製造プロセスにおけるスループットが向上する。また、アニール工程P900の後において半導体ウエーハW1、W2にマイクロバブルが発生することを防止できる。さらに、プラズマ処理により活性化した半導体ウエーハW1、W2の表面にOH基(水酸基)が付着することにより、フュージョンボンディングが可能になり、ドライプロセスが実現できる。
【0037】
アライメント工程P600では、相互に対向する2枚の半導体ウエーハW1、W2が位置決めされる。
【0038】
接合工程P700では、アライメント工程P600を経た2枚の半導体ウエーハW1、W2同士が接合される。このとき、パーティクルが少ない半導体ウエーハW1、W2同士を接合するため、半導体ウエーハW1、W2間に発生する気泡バブルの大きさが極めて小さくなり、半導体ウエーハW1、W2の品質不良を回避でき、また半導体製造プロセスの歩留まりが低下することを防止できる。
【0039】
検査工程P800では、接合された半導体ウエーハW1、W2に対して形状観察や欠陥検査等が行われる。
【0040】
アニール工程P900では、半導体ウエーハW1、W2の表面を加熱後、冷却して材料表面を改変させるものである。例えば、炉・ランプでの加熱や、レーザーアニールなどの方法がある。
【0041】
以上のように、第1実施形態によれば、半導体製造プロセスにおいて半導体ウエーハW1、W2に帯電する静電気の帯電量を低減できる。これにより、静電気で引き寄せられて半導体ウエーハW1、W2の表面に付着するパーティクルを削減できる。
【0042】
しかも半導体ウエーハW1、W2の表面に付着した洗浄水28を除去しながら、半導体ウエーハW1、W2に静電気が帯電し難い性質へと改質することができる。
【0043】
また、半導体ウエーハW1、W2同士のフュージョンボンディングが可能になり、マイクロバブル(気泡)が発生することを防止できる。この結果、半導体ウエーハW1、W2の不良を防止できる。
【0044】
次に、本発明の第2実施形態に係る半導体ウエーハの接合装置について説明する。当該半導体ウエーハの接合装置は、第1実施形態の半導体製造プロセスにおける接合工程P700に使用可能なアライメント装置である。なお、第1実施形態の半導体製造プロセスの接合装置として用いられることに限定されるものではなく、一般的な半導体ウエーハの接合装置として使用される。
【0045】
図7に示すように、半導体ウエーハの接合装置34(以下、単に「接合装置34」という。)は、例えば上方に位置する第1のステージ36と、例えば下方に位置する第2のステージ38と、を備えている。第1のステージ36と第2のステージ38とは対向配置されており、相互に対向している。なお、上方と下方は本実施形態を説明するための方向の一例であり、限定されるものではない。例えば、上方と下方は、左方向と右方向に置き換えることもできる。
【0046】
ここで説明の便宜上、第1のステージ36で保持される半導体ウエーハを半導体ウエーハW1と称し、第2のステージ38で保持される半導体ウエーハを半導体ウエーハW2と称する。
【0047】
第1のステージ36は、半導体ウエーハW1を支持する第1の水平面40を有している。第1のステージ36には吸引機構(図示省略)が接続されており半導体ウエーハW1を所定の吸引力により保持することができる。同様にして、第2のステージ38は、半導体ウエーハW2を支持する第2の水平面42を有している。第2のステージ38には吸引機構(図示省略)が接続されており半導体ウエーハW2を所定の吸引力により保持することができる。特に、後述の微小空間SPを真空状態にする際にも、各半導体ウエーハW1、W2は、それぞれのステージ36、38により保持された状態になる。
【0048】
第1のステージ36及び第2のステージ38は、所定の温度に制御するための温度調整機構(図示省略)を備えていることが好ましい。温度調整機構とは、例えば、ヒータである。
【0049】
第1のステージ36は、例えば、真空チャック又は静電チャック(ESCチャック)で構成してもよい。真空チャックを利用する場合には、SOIウエーハ等の配線アライメントが必要とならないプロセスが望ましい。SOIウエーハとは、電気絶縁性の高い酸化膜層をウエーハ内部に形成させることにより、半導体デバイスの高集積化、低消費電力化、高速化、高信頼性を実現したウエーハである。必要に応じて、活性層にヒ素(As)やアンチモン(Sb)の拡散層を形成することも可能である。
【0050】
第1のステージ36を真空チャックで構成する場合には、ボンディングクリアランス(微小距離)を限りなく狭くして、真空制御圧力が同圧になる前の半導体ウエーハが保持できる圧力差であることが好ましい。また、上方の第1のステージ36で保持される半導体ウエーハW1が落下することを防止し、又は半導体ウエーハW1が落下しても支障を回避するためのエッジガイド(周辺ガイド)等を設置することが好ましい。
【0051】
第2のステージ38は、支持台44により支持されている。また、第2のステージ38は、上下方向に駆動可能な駆動装置46が接続されている。このため、駆動装置46が駆動することにより、第2のステージ38が水平を維持した状態で上下方向に沿って移動可能になる。駆動装置46は、例えばボールねじ機構のほか、油圧シリンダー又は空気圧シリンダー等を用いることができ、上下方向に沿って直線運動することにより第2のステージ38が上下方向に沿って1ミクロン単位で移動可能になる。
【0052】
第2のステージ38についても、第1のステージ36と同様にして、例えば、真空チャック又は静電チャック(ESCチャック)で構成してもよい。
【0053】
なお、第1のステージ36についても、同様にして、駆動装置(図示省略)が接続されており、上下方向に沿って1ミクロン単位で移動できるように構成してもよい。なお、第2のステージ38に駆動装置46が取り付けられている構成では、第1のステージ36は支持部材(図示省略)により上下方向に沿って移動せずに固定されている構成でもよい。
【0054】
第1のステージ36の半導体ウエーハW1を支持する支持面は、例えば第1の水平面40で構成されている。同様にして、第2のステージ38の半導体ウエーハW2を支持する支持面は、例えば第2の水平面42で構成されている。しかしながら、
図9に示すように、第1のステージ36の半導体ウエーハW1を支持する第1の水平面40には突状部材74が着脱可能に設けられており、突状部材74の先端部で半導体ウエーハW1を支持する構成でもよい。同様にして、第2のステージ38の半導体ウエーハW2を支持する第2の水平面42には突状部材76が着脱可能に設けられており、突状部材76の先端部で半導体ウエーハW2を支持する構成でもよい。
【0055】
第1のステージ36は、半導体ウエーハW1、W2同士の接合時に接合圧力を計測できるロードセル(図示省略)を備えている。これにより、半導体ウエーハW1、W2同士の接合圧力をグラム単位で測定でき、ロードセルの計測結果に基づき駆動装置46を制御することで半導体ウエーハの接合圧力をグラム単位で制御することができる。
【0056】
第1のステージ36及び第2のステージ38のいずれか一方又は両方には、シール部材48が取り付けられている。シール部材48は、第1のステージ36の縁部又は第2のステージ38の縁部に配置されていることが好ましい。なお、シール部材48は、例えばゴムで構成されており、気密部材ともいう。
図7は、第2のステージ38のみにシール部材48が設けられた構成を示すが、これは一例である。例えば、
図9に示すように、第1のステージ36と第2のステージ38の両方に対向する位置で接触が可能となる位置に、各々シール部材48が設けられていてもよい。
【0057】
ここで、第1のステージ36と第2のステージ38は、両者の水平面が平行になるように対向配置した状態で、駆動装置46の駆動に基づき上下方向することにより、相互に接近又は離間することができる。第1のステージ36と第2のステージ38が相互に接近してくると、やがて第1のステージ36とシール部材48が接触する。第1のステージ36とシール部材48が接触すると、第1のステージ36と第2のステージ38の移動が停止される。このとき、第1のステージ36で支持された半導体ウエーハW1と、第2のステージ38で支持された半導体ウエーハW2との離間距離が、微小空間(ミニマル空間)SPを形成するための微小距離となるように設定されている。この意味で、シール部材48は、微小距離又は微小空間を形成するためのガイド部材又は制御部材として機能することになる。
【0058】
なお、微小空間SPの水平方に沿った長さは、半導体ウエーハW1、W2の直径寸法と同じであるか、又は半導体ウエーハW1、W2の直径寸法に当該直径寸法の1~2割程度の予備寸法を追加した長さに設定されていることが好ましい。
【0059】
換言すれば、シール部材48は、第1のステージ36及び第2のステージ38の上下方向の移動により半導体ウエーハW1、W2同士を接合する際に、各半導体ウエーハW1、W2で形成される空間が微小空間SPとして成立するように寸法設定がされている。すなわち、シール部材48の例えば高さ方向の寸法により、半導体ウエーハW1、W2同士が接合されるミニマル空間が所定の微小空間SP(又は微小体積)となるように制御されている。または、シール部材48の例えば高さ方向の寸法は、第1のステージ36で支持された半導体ウエーハW1と第2のステージ38で支持された半導体ウエーハW2との離間距離が所望の最小値になるように制御する機能を持つ。
【0060】
なお、第1のステージ36で支持された半導体ウエーハW1と第2のステージ38で支持された半導体ウエーハW2との離間距離とは、10μm以上50μm以下の微小距離(マイクロディスタンス)であることが好ましい。
【0061】
微小空間SPは、接合装置34の外部に設けられた真空制御装置50(
図7のTransfer positionでは図示省略)と連通可能に接続されている。詳細には、真空制御装置50の体積は、微小空間SPの体積よりも数千倍から数万倍だけ大きくなるように設定されている。微小空間SPにはオリフィス52(
図7のTransfer positionでは図示省略)の入口が接続され、オリフィス52の出口には管状部材54の一方側端部が接続されている。管状部材54の他方側端部は真空制御装置50と接続されている。管状部材54には切替バルブ56(真空バルブ)が接続されている。切替バルブ56の開閉により、微小空間SPと真空制御装置50とが連通状態になる。このとき、真空制御装置50の体積が微小空間SPの体積よりも数千倍から数万倍に大きいため、微小空間SPの内部環境が真空制御装置50の内部空間の圧力環境に倣うようにして真空環境になる。このように、体積の小さい微小空間SPを体積の大きい真空制御装置50に連通するだけで、微小空間SPの真空環境が実現されるのである。
【0062】
なお、真空制御装置50の内部環境は、最適な圧力になるように制御されている。このため、微小空間SPの水分が凍結して半導体ウエーハW1、W2同士接合時にパーティクルと同様のバブルが生じることがなく、半導体ウエーハW1、W2の品質劣化の原因になり得る水酸基(OH基)の飛散を防止することができる。
【0063】
真空制御装置50は、本発明の「真空制御部」の一実施態様である。
【0064】
ここで、半導体ウエーハW1、W2同士の接合時の動作について説明する。半導体ウエーハW1、W2同士の離間距離は、微小空間SPの真空環境において相互に微小距離である状態から、駆動装置46が駆動して、第2のステージ38が上方向に沿って水平状態を維持しながら移動する。やがて、第1のステージ36に保持された半導体ウエーハW1と、第2のステージ38に保持された半導体ウエーハW2と、が所定の圧力で接触して接合に至る。
【0065】
このとき、従来技術のようにセンタープッシュピン(ロッド)等を用いて半導体ウエーハW1、W2を押圧することはない。従来技術では、半導体ウエーハ同士の接合時に、一方側の半導体ウエーハの中央部分をセンタープッシュピンで押圧していたため、半導体ウエーハが撓むことにより、また応力集中による歪みが発生することにより、劣化又は破損する等の問題が生じていた。この課題に関し、本実施形態では半導体ウエーハW1、W2同士を、センタープッシュピンを用いることなく水平面を維持した状態で接合するため、半導体ウエーハW1、W2が接合時に劣化又は破損することを防止できる。特に半導体ウエーハW1、W2が硬くて脆いSiCウエーハで構成されている場合には効果的である。
【0066】
半導体ウエーハW1、W2同士の接合圧力は、例えば最大で15kgである。接合圧力は、第1のステージ36に設けられたロードセルにより計測することができる。また、ロードセルでの計測結果に基づき、駆動装置46をフィードバック制御することにより、第2のステージ38の移動をミクロン単位で制御することが可能になる。
【0067】
半導体ウエーハW1、W2同士の接合では、半導体ウエーハW1、W2の離間距離が微小距離である状態から接合されるため、半導体ウエーハ同士の位置ずれを抑制でき、接合精度を高めることができる。
【0068】
なお、第1のステージ36側に駆動装置を設け、第1のステージ36を下方向に移動させて半導体ウエーハW1、W2同士を接合することも可能である。さらには第1のステージ36及び第2のステージ38の両方に駆動装置46を設け、第1のステージ36と第2のステージ38の両方を上下方向に移動させるように構成してもよい。
【0069】
次に、本発明の第2実施形態の半導体ウエーハの接合装置及び接合方法の作用について説明する。
【0070】
[現状と問題点]
真空プラズマ処理において十分な量の水酸基(OH基)を半導体ウエーハの界面に存在させることは困難であった。真空プラズマ処理で発生したOラジカル又はHラジカルを生成することは可能であるが、同時に半導体ウエーハの表面にはプラズマ電子が付着しており、プラズマ電子の作用により半導体ウエーハの表面を活性化させているので、半導体ウエーハの界面に十分な量の水酸基(OH基)を滞在させることは出来なかったのである。
【0071】
半導体ウエーハを活性化させるために真空プラズマ処理を実行するが、ガスを励起させプラズマ化し、イオンで半導体ウエーハの表面を活性化させるためのプロセス圧力は真空度において50Ps以下である。この状態では、大気圧と比較して1/2000程度のガスが存在することになるため、高密度プラズマかつリモートプラズマを用いて水酸基(OH基)を半導体ウエーハの界面に滞在させ、ボンディングに必要となる水酸基(OH基)を得ることはできない。
【0072】
SiO2の親水化接合を考慮すると、水はSiO2上においてSiに比べ、乖離し難いため、水酸基(OH基)が少なく強度が出ない技術的問題があり、この技術的問題を解消するために大量の水を付与すると、水が半導体ウエーハの界面に残留して水酸基(OH基)が過剰になりボイドが発生する原因になる。
【0073】
例えばフュージョンボンディングの工程において、半導体ウエーハをプラズマ活性化した後、洗浄して水酸基(OH基)を付加し、センタープッシュピンを使用して一方側の半導体ウエーハを押し上げて半導体ウエーハを撓ませながら、半導体ウエーハ同士を接合する方法が従来からの一般的な方法である。しかしながら、従来の方法では、半導体ウエーハ自体の変形によりダメージが発生し、半導体ウエーハの破損につながる技術的問題が生じていた。
【0074】
特に半導体ウエーハに使用される基板材は、すべてにおいて脆性材料であり、硬くて脆い材料である。SiCはその中でもダイヤモンドに次ぐ硬さであり、化学的耐性に強いため、物理的な加工が極めて難しい材料である。このため、通常のシリコンウエーハ(SIウエーハ)とは異なり、SiCウエーハではセンタープッシュピンを使わない接合処理(void除去ボンディングプロセス)が要求されている。
【0075】
これに対して、第2実施形態におけるウエーハの接合装置及び接合方法は、半導体ウエーハW1、W2同士を微小空間(ミニマル空間)でかつ真空環境において、低真空で接合に必要となる水酸基(OH基)が残存可能な圧力制御を行い、半導体ウエーハW1、W2の接合処理を実行することになる。
【0076】
半導体ウエーハW1、W2の接合処理は、微小空間SPにおいて実行させるため、1秒程度で高速に微小空間が真空制御され、第1のステージ36及び第2のステージ38を所定の温度に温度制御することにより、適切な量の水酸基(OH)を残存させることができる。
【0077】
このように半導体ウエーハの接合処理において、微小空間という最小の空間で、半導体ウエーハW1、W2の貼り合わせ時の真空圧力、温度、時間を制御することにより、半導体ウエーハW1、W2の最適な接合処理が可能になる。
【0078】
特に微小空間SPが1秒程度の短時間で真空環境になるため、半導体ウエーハW1、W2の表面に十分な量の水酸基(OH基)を滞在させることができ、半導体ウエーハW1、W2同士の接合強度が向上する。
【0079】
なお、半導体ウエーハW1、W2の貼り合わせ前のプレボンディング空間では、半導体ウエーハW1、W2の離間距離が微小距離(最小距離)である10μm以上50μm以下であり、ピエゾ制御により半導体ウエーハW1、W2の傾きとアライメントの調整とともに接合時の加圧制御を行うことが好ましい。
【0080】
次に、本発明の第2実施形態に係る半導体ウエーハの接合装置及び接合方法の実施例について説明する。なお、各実施例の図面では、重複する構成には同符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0081】
(実施例1)
図8に示すように、実施例1は、真空制御ユニット58を備えている。真空制御ユニット58は、例えば、真空制御チャンバ60と、真空制御チャンバ60に配管等で接続されたポンプユニット62と、真空制御チャンバ60に配管等で接続されたガスユニット64と、真空制御チャンバ60内の圧力を計測するためのピラニー真空計等の圧力計66と、を備えている。
【0082】
真空制御チャンバ60は、本発明の「真空制御部」の一実施態様である。
【0083】
真空制御チャンバ60とポンプユニット62との間、真空制御チャンバ60とガスユニット64との間に、それぞれ隔壁バルブ68を設けている。さらに、真空制御チャンバ60には、真空制御チャンバ60内の温度を制御するための温度調整機構70を備えている。温度調整機構70は、例えば、ヒータである。温度調整機構70によれば、真空制御チャンバ60の内壁に付着したガスの脱ガス化及び湿度制御が可能である。ポンプユニット62の駆動により真空制御チャンバ60と連通状態にある微小空間SPが真空引きされ、真空環境が実現される。
【0084】
実施例1によれば、接合装置34の微小空間を形成するボンディングチャンバ側は、例えばマスフローコントローラのようなオリフィス52で圧力変化速度を制御する構造である。真空制御チャンバ60は、例えば、温度制御機構70と水蒸気を供給可能なガスユニット64が設けられている。これにより、真空制御チャンバの内部の温度、湿度、圧力などの環境を制御することができる。
【0085】
ここで、接合装置34の微小空間SPとポンプユニット62との間に真空制御チャンバ60を介在させる理由は、接合装置34の微小空間SPをポンプユニット62に直接接続する構成であれば、微小空間SPの体積が余りにも小さいため圧力制御が困難になり、ポンプユニット62の性能(到達真空)に至る急激な真空状態になることで、微小空間SPに存在する水分や他の液体が急速に蒸発し、微小空間SPの温度が低下する。この結果、微小空間SPの半導体ウエーハW1、W2に真空凍結が発生するからである。真空凍結が発生すると、パーティクルと同様にして、バブルが発生するため、半導体ウエーハW1、W2の品質に悪影響が生じるからである。また、ポンプユニット62の性能(到達真空)に至る急激な真空状態により、水酸基(OH基)が揮発して半導体ウエーハW1、W2の品質に悪影響が生じるからである。
【0086】
真空凍結が発生する圧力は、物質の性質及び温度に依存する。一般的には真空凍結が効果的に発生するためには、非常に低い圧力が必要となる。多くの場合、真空凍結は、高真空(10-3Pa(パスカル)以下)の条件で行われる。真空にする際の圧力変化は、凍結の結果に影響を与える。真空中では、物質は気体状態になりやすく、圧力が低下すると蒸発しやすくなる。これにより、物質の温度が低下し、凍結が促進される。圧力が低いほど、真空における凍結が起こりやすくなる。
【0087】
以上から、真空制御チャンバ60を介在させ、真空制御チャンバ60の内部を温度、湿度、圧力を最適に制御した状態で微小空間SPと連通させ、あわせて第1のステージ36及び第2のステージ38の温度制御を行うことにより、微小空間SPにおいて凍結を起こさないように真空環境にして、半導体ウエーハW1、W2の劣化を防止している。
【0088】
(実施例2)
図9に示すように、実施例2では、第1のステージ36に半導体ウエーハW1との接触面積を低減するための接触面積低減部72としての第1の突状部材74が設けられている。また、第2のステージ38に半導体ウエーハW2との接触面積を低減するための接触面積低減部72としての第2の突状部材76が設けられている。第1のステージ36及び第2のステージ38は、各々水平面40、42を有し、各々水平面40、42上で半導体ウエーハW1、W2が面接触して支持される構成となっていたが、第2実施例では複数の突状部材74、76により支持される構成である。このため、半導体ウエーハW1、W2と各ステージ36、38との接触面積の総和が減少する。これにより、半導体ウエーハW1、W2と突状部材74、76との間にゴミや埃等のパーティクル(異物)が介在することが少なくなり、半導体ウエーハW1、W2同士が接合したときの応力集中が軽減され、製品が完成したときの製品の品質劣化を抑制することができる。
【0089】
複数の突状部材74、76の先端部は、半導体ウエーハW1、W2との接触面積を小さくするために曲面状に形成されていることが好ましい。各々の突状部材74、76の先端部を曲面としたことにより、突状部材74、76の先端部に付着するゴミや埃等のパーティクル(異物)の量が軽減されると同時に、半導体ウエーハW1、W2と突状部材74、76との接触面積がさらに低減される。これらにより、半導体ウエーハW1、W2と突状部材74、76との間に介在するゴミや埃等のパーティクル(異物)の量が格段少なくなり、半導体ウエーハW1、W2同士が接合されて製品が完成したときの製品の品質劣化をより一層抑制することができる。
【0090】
以上のように、実施例2によれば、従来のステージが平面状であるため、ステージ上に付着したパーティクルや半導体ウエーハの表面に付着したパーティクルが、半導体ウエーハ同士の接合時の加圧時に応力集中を促進し、半導体ウエーハの破損又は半導体ウエーハに気泡が発生するなどの技術的問題を根本的に解決することができる。
【0091】
特に、半導体ウエーハW1、W2が複数の突状部材74、76により支持される構成では、隣接する各々の突状部材74、76の間に隙間が形成される。微小空間SPを真空吸引する場合には、各々の突状部材74、76の間に形成された隙間を気流が通り、オリフィス52に向かうようになる。これにより、半導体ウエーハW1、W2が複数の突状部材74、76に対して強固に支持され、確実な位置決めが可能になる。この結果、半導体ウエーハW1、W2同士の高精度な接合処理が実現できる。
【0092】
なお、突状部材74、76は、突起、柱状部材、棒状部材でもよい。突状部材74、76として、第1のステージ36及び第2のステージ38の各水平面40、42上に凸凹を形成するための部材又は施工であればよい。突状部材74は、76は、各水平面40、42上に着脱自在に設けられている構成に限られず、各水平面40、42上に固定されていてもよく、又は各水平面40、42の表面が突起状又は突部状に加工されていてもよい。
【0093】
また、第1のステージ36と第2のステージ38の両方には、半導体ウエーハW1、W2の接合時に微小空間SPの真空環境を維持するためのシール部材48を備えている。シール部材48は、例えばゴムである。
【0094】
一対の各ステージ36、38が相互に接近したときに各々のシール部材48同士が接触することにより半導体ウエーハW1、W2同士の離間距離が調整される。換言すれば、シール部材48の厚み寸法(高さ寸法)は、半導体ウエーハW1、W2同士の離間距離が所望の微小距離に調整できる寸法に設定されている。
【0095】
なお、本実施形態及び実施例は、本発明の一態様を示したものであり、本発明がこれに限られるものではない。本実施形態及び実施例に対する設計変更程度の差異は、当然に、本発明の技術的思想の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0096】
10 プラズマチャンバ
12 ゲートバルブ
14 チャンバ
16 ステージ
18 洗浄機
20 回転テーブル
22 回転モータ
24 洗浄ノズル
26 揺動モータ
28 洗浄水
30 アルゴンガス
32 揺動ノズル
34 半導体ウエーハの接合装置
36 第1のステージ
38 第2のステージ
40 第1の水平面
42 第2の水平面
44 支持台
46 駆動装置
48 シール部材
50 真空制御装置(真空制御部)
52 オリフィス
54 管状部材
56 切替バルブ
58 真空制御ユニット
60 真空制御チャンバ(真空制御部)
62 ポンプユニット
64 ガスユニット
66 圧力計
68 隔壁バルブ
70 温度調整機構
72 接触面積低減部
74 第1の突状部材
76 第2の突状部材
SP 微小空間(ミニマル空間)
W1 半導体ウエーハ
W2 半導体ウエーハ
【要約】
【課題】簡易な構成により、半導体製造プロセスにおける半導体ウエーハ同士の接合時において半導体ウエーハの劣化を防止する半導体ウエーハの接合装置及び接合方法を提供する。
【解決手段】軸回りに回転しない対向配置された一対のステージ36、38上で相互に対向する半導体ウエーハW1、W2同士を真空環境下においてセンタープッシュピンを用いずに接合するための半導体ウエーハの接合装置であって、相互に対向する半導体ウエーハW1、W2同士を相互の離間距離が10μm以上50μm以下となる微小空間に収容し、真空制御部50により前記微小空間SPを真空環境にして、突状部材74、76で構成されるステージ36、38で支持された半導体ウエーハW1、W2同士を当該半導体ウエーハW1、W2の平面姿勢を維持しながら接合する。
【選択図】
図9