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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】加工工具判別装置及び加工工具判別方法
(51)【国際特許分類】
   B23Q 17/24 20060101AFI20240823BHJP
   B23Q 17/00 20060101ALI20240823BHJP
   G01B 11/24 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
B23Q17/24 Z
B23Q17/00 A
G01B11/24 K
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020025946
(22)【出願日】2020-02-19
(65)【公開番号】P2021130152
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2023-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】513161689
【氏名又は名称】ACS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】田中 淳史
【審査官】中田 善邦
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-085583(JP,A)
【文献】特開2002-273643(JP,A)
【文献】国際公開第2018/220776(WO,A1)
【文献】特開2017-049656(JP,A)
【文献】特開平09-085584(JP,A)
【文献】特開平11-267949(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0187121(US,A1)
【文献】特開2005-177957(JP,A)
【文献】特開2001-277018(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 17/00、 17/24、
17/09
G01B 11/24
B23Q 11/00
B23Q 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の加工工具の中から選択された加工工具をヘッドに保持させ、前記ヘッドを被加工材に対して相対的に移動させながら被加工材を加工する加工装置において、前記ヘッドに保持された前記加工工具について判別する加工工具判別装置であって、
各加工工具の種類と、予め定めた第一判別部位に関する第一判別基準情報及び第二判別部位に関する第二判別基準情報とを対応付けた種類判別情報を保持する情報保持手段と、
前記ヘッドに保持された前記加工工具から第一判別部位に関する第一判別部位画像及び第二判別部位に関する第二判別部位画像を取得する判別情報取得手段と、
前記ヘッドを所定の位置まで移動させるための制御信号を前記加工装置に送信して、前記判別情報取得手段により前記加工工具の前記第一判別部位画像を取得させ、前記第一判別部位画像から前記種類判別情報に基づいて前記加工工具の種類についての選択候補を抽出し、前記加工装置に制御信号を送信して所定の移動距離だけ前記ヘッドを移動させ、前記判別情報取得手段により前記加工工具の前記第二判別部位画像を取得し、当該第二判別部位画像と前記種類判別情報とに基づいて、前記選択候補の中から前記ヘッドに保持された前記加工工具の種類を判別する判別手段と、を備え、
前記加工装置は、前記被加工材に上方から当接して前記被加工材を押さえるワーク押さえを前記ヘッドの下方に備え、
前記ワーク押さえは、前記ヘッドに対し上下方向に移動可能且つ前記被加工材の上面に当接する当接部を備え、
前記判別情報取得手段は、筐体と、前記筐体に挿入された前記加工工具の所定の部位を撮像する撮像手段とを備え、
前記筐体の上面には、前記加工工具が上方から挿入される挿入孔が設けられ、
前記第一判別部位画像及び前記第二判別部位画像を取得する際に前記ヘッドを下降させると、前記当接部は前記筐体の前記上面に当接して下降が停止され、前記加工工具は前記当接部に対し下降して前記挿入孔から前記筐体に挿入される加工工具判別装置。
【請求項2】
前記判別情報取得手段は、
前記筐体内に光を照射する照明部と、
前記筐体の内壁面に設けられた反射防止手段と、
を備え、
前記筐体内に前記加工工具が挿入されたとき、前記筐体に対する外部からの光の入射が遮断されている請求項1に記載の加工工具判別装置。
【請求項3】
前記判別手段は、前記ヘッドに保持された前記加工工具の種類を判別した後、前記判別情報取得手段により取得した前記加工工具の形状に関する形状情報と、前記情報保持手段に予め保持させた前記加工工具の形状に関する基準情報とを対比することで、前記加工工具の交換時期が到来したか否かを判別する請求項1または請求項2に記載の加工工具判別装置。
【請求項4】
前記判別情報取得手段により取得した前記第一判別部位画像及び前記第二判別部位画像のうち少なくともいずれか一方と、前記判別手段による前記加工工具の種類の判別結果とを紐付けて記憶する記憶手段を備える請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の加工工具判別装置。
【請求項5】
複数種類の加工工具の中から選択された加工工具をヘッドに保持させ、前記ヘッドを被加工材に対して相対的に移動させながら被加工材を加工する加工装置において、前記ヘッドに保持された前記加工工具について判別する加工工具判別方法であって、
前記加工装置は、前記被加工材に上方から当接して前記被加工材を押さえるワーク押さえを前記ヘッドの下方に備え、
前記ワーク押さえは、前記ヘッドに対し上下方向に移動可能且つ前記被加工材の上面に当接する当接部を備え、
体と、前記筐体に挿入された前記加工工具の所定の部位を撮像する撮像手段とを備える判別情報取得手段が設けられ
前記筐体の上面には、前記加工工具が上方から挿入される挿入孔が設けられ、
各加工工具の種類と、予め定めた第一判別部位に関する第一判別基準情報及び第二判別部位に関する第二判別基準情報とを対応付けた種類判別情報を用意しておき、
前記加工装置を制御して、前記ヘッドを所定の位置まで下降させて、前記当接部を前記筐体の前記上面に当接させるとともに前記加工工具を前記当接部に対し下降させて前記挿入孔から前記筐体に挿入して前記撮像手段により前記加工工具の第一判別部位画像を取得させ、
前記第一判別部位画像から前記種類判別情報に基づいて前記加工工具の種類についての選択候補を抽出し、
前記加工装置を制御して、所定の移動距離だけ前記ヘッドをさらに下降させて、前記撮像手段により前記加工工具の第二判別部位画像を取得させ、
当該第二判別部位画像と前記種類判別情報とに基づいて、前記選択候補の中から前記ヘッドに保持された前記加工工具の種類を判別する加工工具判別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工工具を移動させて被加工材を加工する加工装置で用いられる加工装置の識別装置、当該加工工具の測定装置及び加工工具の識別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本件出願人は、特許文献1に示すように、切断刃などの加工工具を前後、左右、上下方向に移動させ、さらにこれを回転、傾倒させることが可能な加工装置を提案している。この加工装置によれば、加工工具を直線状に動かすだけでなく、曲線状にも動かすことができるため、被加工材を多様な形状で切断等することが可能である。
【0003】
このような加工装置は種々の加工工具を取り付け可能に構成されており、ユーザは被加工材の材質や厚み、加工方法に応じて、適宜適切な加工工具を選択することができるようになっている。例えば、加工工具としては、被加工材を切断するための平刃(片刃、両刃等)や鋸刃、被加工材を切削加工するための回転刃(エンドミル等)、段ボール紙に折り目をつけるための罫線刃等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-237215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種の加工装置では被加工材をベースに載置し、ヘッドを被加工材に近接させて加工工具を被加工材に当接させる。ヘッドの加工工具の取付部位周囲にはワーク押さえが設けられる場合が多い。ワーク押さえにより、加工工具と被加工材との当接部位の周囲を押圧することで、加工時に被加工材が動くことのないように保持することができる。しかしながら、ヘッドに加工工具が保持された状態で、加工工具の全体形状を確認することは困難であり、ヘッドにこのようなワーク押さえが設けられると、加工工具の全体形状を確認することがより困難になる。
【0006】
また、加工工具は、上述したとおり、平刃、鋸刃、回転刃、罫線刃等の種々のものが存在し、各刃種毎に刃幅、刃長等種々のものが存在する。一方、加工工具は使用と共に摩耗し、刃の形状や刃幅などが変化する。また、刃に欠けなどが生じる場合もある。そのため、ユーザは加工工具を交換しようとしたときに、交換すべき加工工具の種類を正しく判別することができない場合があった。
【0007】
また、使用に伴い、加工工具が偏芯したり傾くなどヘッドに対する取り付け姿勢が変化することもある。この場合、切断精度が低下する。一方、加工工具が摩耗して刃の形状等が変化した場合にも切断精度が低下する。しかしながら、上述のとおり、ヘッドに加工工具が保持された状態で、ユーザが加工工具の状態を確認することは困難である。また、偏芯の有無等をユーザが把握することは困難である。そのため、切断精度の低下の原因が加工工具の摩耗等によるものか、加工工具の取り付け姿勢の変化によるものかを判別することはできなかった。
【0008】
本発明の課題は、このような問題点を解決することを課題とするものであり、ヘッドに加工工具が保持された状態で、その加工工具の種類を判別することができる加工工具判別装置及び加工工具判別方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、複数種類の加工工具の中から選択された加工工具をヘッドに保持させ、前記ヘッドを被加工材に対して相対的に移動させながら被加工材を加工する加工装置において、前記ヘッドに保持された前記加工工具について判別する加工工具判別装置であって、各加工工具の種類と、予め定めた第一判別部位に関する第一判別基準情報及び第二判別部位に関する第二判別基準情報とを対応付けた種類判別情報を保持する情報保持手段と、前記ヘッドに保持された前記加工工具から第一判別部位に関する第一判別部位画像及び第二判別部位に関する第二判別部位画像を取得する判別情報取得手段と、前記ヘッドを所定の位置まで移動させるための制御信号を前記加工装置に送信して、前記判別情報取得手段により前記加工工具の前記第一判別部位画像を取得させ、前記第一判別部位画像から前記種類判別情報に基づいて前記加工工具の種類についての選択候補を抽出し、前記加工装置に制御信号を送信して所定の移動距離だけ前記ヘッドを移動させ、前記判別情報取得手段により前記加工工具の前記第二判別部位画像を取得し、当該第二判別部位画像と前記種類判別情報とに基づいて、前記選択候補の中から前記ヘッドに保持された前記加工工具の種類を判別する判別手段と、を備え、前記加工装置は、前記被加工材に上方から当接して前記被加工材を押さえるワーク押さえを前記ヘッドの下方に備え、前記ワーク押さえは、前記ヘッドに対し上下方向に移動可能且つ前記被加工材の上面に当接する当接部を備え、前記判別情報取得手段は、筐体と、前記筐体に挿入された前記加工工具の所定の部位を撮像する撮像手段とを備え、前記筐体の上面には、前記加工工具が上方から挿入される挿入孔が設けられ、前記第一判別部位画像及び前記第二判別部位画像を取得する際に前記ヘッドを下降させると、前記当接部は前記筐体の前記上面に当接して下降が停止され、前記加工工具は前記当接部に対し下降して前記挿入孔から前記筐体に挿入される加工工具判別装置である。
【0011】
当該加工工具判別装置において、前記判別情報取得手段は、前記筐体内に光を照射する照明部と、前記筐体の内壁面に設けられた反射防止手段とを備え、前記筐体内に前記加工工具が挿入されたとき、前記筐体に対する外部からの光の入射が遮断されていることが好ましい。
【0012】
当該加工工具判別装置において、前記判別手段は、前記ヘッドに保持された前記加工工具の種類を判別した後、前記判別情報取得手段により取得した前記加工工具の形状に関する形状情報と、前記情報保持手段に予め保持させた前記加工工具の形状に関する基準情報とを対比することで、前記加工工具の交換時期が到来したか否かを判別することが好ましい。
【0013】
当該加工工具判別装置において、前記判別情報取得手段により取得した前記第一判別部位画像及び前記第二判別部位画像のうち少なくともいずれか一方と、前記判別手段による前記加工工具の種類の判別結果とを紐付けて記憶する記憶手段を備えることが好ましい。
【0014】
課題を解決するため、本発明は、複数種類の加工工具の中から選択された加工工具をヘッドに保持させ、前記ヘッドを被加工材に対して相対的に移動させながら被加工材を加工する加工装置において、前記ヘッドに保持された前記加工工具について判別する加工工具判別方法であって、前記加工装置は、前記被加工材に上方から当接して前記被加工材を押さえるワーク押さえを前記ヘッドの下方に備え、前記ワーク押さえは、前記ヘッドに対し上下方向に移動可能且つ前記被加工材の上面に当接する当接部を備え、体と、前記筐体に挿入された前記加工工具の所定の部位を撮像する撮像手段とを備える判別情報取得手段が設けられ、前記筐体の上面には、前記加工工具が上方から挿入される挿入孔が設けられ、各加工工具の種類と、予め定めた第一判別部位に関する第一判別基準情報及び第二判別部位に関する第二判別基準情報とを対応付けた種類判別情報を用意しておき、前記加工装置を制御して、前記ヘッドを所定の位置まで下降させて、前記当接部を前記筐体の前記上面に当接させるとともに前記加工工具を前記当接部に対し下降させて前記挿入孔から前記筐体に挿入して前記撮像手段により前記加工工具の第一判別部位画像を取得させ、前記第一判別部位画像から前記種類判別情報に基づいて前記加工工具の種類についての選択候補を抽出し、前記加工装置を制御して、所定の移動距離だけ前記ヘッドをさらに下降させて、前記撮像手段により前記加工工具の第二判別部位画像を取得させ、当該第二判別部位画像と前記種類判別情報とに基づいて、前記選択候補の中から前記ヘッドに保持された前記加工工具の種類を判別する加工工具判別方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、種々の加工工具をヘッドに保持させることのできる加工装置において、ヘッドに保持された加工工具の種類を判別する際に、予め定めた第一判別部位に関する第一判別基準情報と、判別情報取得部により取得した第一判別部位情報とに基づき、第一判別部位情報により選択候補を抽出した上で、予め定めた第二判別部位に関する第二判別基準情報と、判別情報取得部により取得した第二判別部位情報によりその種類を判別する方法を採用している。加工工具は使用と共に摩耗し、刃の形状や刃幅などが変化する。また、刃に欠けなどが生じる場合もある。このように第一判別部位情報と、第二判別部位情報とにより加工工具の種類を特定することで、正確に加工工具の種類を特定することが容易になる。また、この種の加工装置のヘッドに保持させることのできる加工工具の種類が多い場合に、第一判別部位情報により選択候補を絞り込むことで、第二判別部位情報に基づき加工工具の種類を特定する際の判別に伴う演算処理を簡易にすることができる。
【0016】
さらに、ヘッドに保持された加工工具の種類が判別した後は、第一判別部位情報又は第二判別部位情報等に基づいて、加工工具の偏芯や傾きなどを確認することも可能である。
【0017】
以上のように、本発明によれば、ヘッドに加工工具が保持された状態で、その加工工具の種類を判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る加工工具判別装置を利用可能な加工装置の一例を概略的に示した平面図である。
図2図1の加工装置に設けられるヘッド周辺を示す側面図である。
図3図2に示すヘッドのZ軸方向下方に設けられるワーク押さえの構造を模式的に示す図である。
図4】本発明に係る加工工具判別装置を説明するための図であり、(a)は実施の形態の加工工具判別装置の機能的構成を示すブロック図であり、(b)は(a)の加工工具判別装置に設けられる判別情報取得部の構成例を示す模式図である。
図5図4(a)に示す判別部により実行される加工工具判別処理時の動作を説明するためのフローチャートである。
図6図4(b)に示す判別情報取得装置を用いて、加工工具の判別部位に関する情報を取得するための動作を説明する図であり、(a)は判別情報取得装置の上面にワーク押さえが当接した状態を示す模式図であり、(b)は判別情報取得装置の内部に加工工具が挿入された状態を示す模式図である。
図7図4(a)に示す判別部により実行される交換時期判別処理を説明するための図であり、(a)は基準情報(判別部位基準画像)と判別部位画像とを示し、(b)は基準情報(判別部位基準画像)と判別部位画像を二値化した二値化画像である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る加工工具判別装置100及び当該加工工具判別装置100が適用される加工装置10の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1に本実施の形態の加工装置10の上面図を示す。図1に示す加工装置10は、例えば、カッティングプロッタ等と称されるカッティング装置である。当該加工装置10は、被加工材Wが載置されるベース11と、加工工具S(図1において不図示)を保持するヘッド20とを備え、ヘッド20をベース11に対して相対的にX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に移動させつつ、ヘッド20に保持された加工工具SをZ軸周りに回転又は傾斜させることで被加工材Wに所望の加工を施すものである。当該加工装置10には種々の加工工具S(u)を搭載することができ、加工装置10で使用する加工工具Sの数に応じてヘッド20を複数設けることができる。なお、図1に示す加工装置10は、1つのヘッド20に対して1つの加工工具Sが保持されるものとする。また、加工工具S(u)は、ヘッド20に保持させることのできる種々の加工工具を指し、加工工具Sはヘッド20に実際に保持されている加工工具を指すものとする。以下、順に各要素について説明する。
【0021】
被加工材Wは、例えば、紙材、木材、樹脂材、金属材等の加工に供される種々の材料である。図1に示す被加工材Wは平面視において長尺な薄板状を呈するが、被加工材Wの厚みや形状は特に限定されるものではない。また、段ボール紙、ポリプロピレン等のプラスチック製の段ボール状シート(プラダン)、発泡ポリスチロール等の発泡材など、空気を内包する材料であってもよい。
【0022】
ベース11は、被加工材Wが載置される載置台である。ベース11の載置面には、図示しない吸着孔等が複数設けられており、被加工材Wが載置されるとエア源、電源等の付帯設備(図示略)などから構成される吸着手段により、吸着孔を介して被加工材Wが載置面に吸着保持される。
【0023】
ベース11には、ヘッド20をXY平面上でX軸方向及び/又はY軸方向に移動させるXY方向移動手段12、ヘッド20をZ軸方向に移動させるZ方向移動手段13が設けられている。
【0024】
XY方向移動手段12は、ベース11に設けられた一対のX軸レール(図示略)に懸架され、X軸方向に移動可能なY軸フレーム12aを備えている。また、当該Y軸フレーム12aはZ方向移動手段13をY軸方向に移動可能に保持する。XY方向移動手段12は、図示しない駆動手段を備え、Y軸フレーム12aをX軸レールに沿ってX軸方向のX軸上のY軸上の所望の位置に移動させる。これらの動作によって、ヘッド20(Z方向移動手段13)をXY平面上の所望の座標位置に移動させることができる。
【0025】
Z方向移動手段13は、Y軸フレーム12aに対してY軸方向に移動可能に保持されるZ軸レール(図示略)、駆動手段(図示略)等を備えている。当該駆動手段により、Z軸レールに保持されたヘッド20をZ軸方向に沿って移動させることで、ヘッド20をZ軸上の所望の座標位置に移動させることができる。
【0026】
ヘッド20は、図2に示すように、ヘッド本体20aの下方に設けられるホルダ部21と、当該ホルダ部21をZ軸周りに回転可能なθ方向移動手段22と、当該ホルダ部21をZ軸に直交するα軸周りに回転可能なα方向移動手段23とを備えている。なお、ここでヘッド本体20aの「下方」とは、ヘッド本体20aからベース11に向かう方向をいい、図2に示す状態では図面に向かってZ軸方向下方をいう。
【0027】
ホルダ部21は、ヘッド本体20aに保持される保持部21aと、保持部21aに対して進退可能に設けられるスプライン軸21bと、当該スプライン軸21bに設けられて加工工具Sが取り付けられる取付部21cとを備えている。なお、当該ホルダ部21には、振動手段24が連結されており、振動手段24により保持部21aに対してスプライン軸21bが軸方向に進退させることで、加工工具Sをスプライン軸21bの軸方向に振動させることができるように構成されている。なお、振動手段24の具体的な構成の説明は省略する。
【0028】
θ方向移動手段22は、Z軸方向に間隔をあけて設けられる一対のベアリング22aに回転可能に支持されるθ回転軸22b等を備え、ヘッド本体20aを図示しない駆動手段によりθ回転軸22bを回転させることで、ヘッド本体20aをZ軸周りに回転させる。
【0029】
α方向移動手段23は、回転軸23aと、α軸プーリ23bと、タイミングベルト23cを介してα軸プーリ23bを回転させるα軸モータ23d等を備え、図2に示すようにホルダ部21をα軸周りに回転させることで、加工工具Sを被加工材Wに対して傾斜させた状態で被加工材Wに加工工具Sを当接又は侵入させることができる。
【0030】
ここで、図2には、加工工具Sとして切断刃がホルダ部21に取り付けられた例を示している。切断刃は、平刃、鋸刃等に区分される。また、平刃はさらに片刃、両刃などに区分される。片刃、両刃、鋸刃等それぞれにおいて、刃幅、刃長等の異なる種々のものが存在する。なお、本実施の形態の加工装置10では、ホルダ部21に、被加工材Wを切削加工するための回転刃(エンドミル等)や段ボール紙に折り目をつけるための罫線刃等の切断刃以外の加工工具S(u)を取り付けることができるが、ここでは説明を簡略にするためにホルダ部21には加工工具Sとして切断刃が取り付けられているものとして以下説明する。
【0031】
図2では図示を省略したが、ヘッド本体20aの下方には図3に示すワーク押さえ30が設けられる。図3に示すように、ワーク押さえ30はヘッド20の下方に、ヘッド20の外周に沿って設けられる円環平板状のリング部31と、当該リング部31に設けられた複数の挿通孔32と、当該挿通孔32に挿通される長尺な挿通部材33と、当該挿通部材33の先端に取り付けられ、被加工材Wの表面に当接される当接部34とを備えている。なお、図3においてヘッド20の構成は簡略化して示している。
【0032】
ヘッド20を被加工材Wに向けて、Z軸方向に降下させると、まず当接部34が被加工材Wの表面に当接する。挿通部材33は挿通孔32に挿通されている。ヘッド20をさらにZ軸方向に降下させると、被加工材Wの厚みに応じて、当接部34がリング部31に近接する方向に移動し、加工工具Sの先端が被加工材Wに当接する。さらにヘッド2をZ
軸方向に降下させると、加工工具Sのみを被加工材Wに侵入させることができる。なお、当接部34がリング部31に近接した状態は図6(b)を参照することができる。但し、図6についての説明は後述する。
【0033】
図3に示すようなワーク押さえ30を設けることで、ベース11に載置された被加工材Wの加工を安定して行わせることができる。しかしながら、このようなワーク押さえ30がホルダ部21の周囲に設けられているため、ホルダ部21に取り付けられた加工工具Sの全体形状を確認することは困難である。また、使用に伴い加工工具Sの刃先の部分は摩耗や欠けが生じ、未使用時の形状から、加工工具Sの形状が変化し、加工工具Sの全体形状を確認することができたとしても、加工工具Sの種類を正しく特定することは困難である。
【0034】
そこで、本実施の形態では図4に示す加工工具判別装置100により、ホルダ部21に加工工具Sが取り付けられた状態で、加工工具Sの種類を判別可能とした。さらに、加工工具Sの種類を判別したあと、その加工工具Sの交換時期が到来しているか否かを判別可能にした。
【0035】
図4(a)に示す加工工具判別装置100は、上記加工装置10のように種々の加工工具S(u)の中から選択された一種類の加工工具Sをヘッド20に保持させ、ヘッド20を被加工材Wに対して相対的に移動させながら被加工材Wを加工する加工装置10において、ヘッド20に保持された加工工具Sの種類を判別するために用いられる装置である。
【0036】
図4(a)に示すように当該加工工具判別装置100は、判別部40と、情報保持部50と、判別情報取得部60とを機能的構成として備えている。なお、判別部40、情報保持部50、判別情報取得部60とは機能的にブロック分けしたものであり、これらは必ずしも別体である必要はない。また、加工工具判別装置100としてこれらが一体に構成される必要もない。
【0037】
本実施の形態では、判別部40及び情報保持部50は、例えば、制御装置、演算装置及び主記憶装置等により構成されたパーソナルコンピュータ(PC)等の情報処理装置により具現化される。例えば、主記憶装置等に記憶された加工工具判別プログラム、加工工具交換時期判別プログラム等に従って、これらの協動により各種処理を実行することにより、これらの手段を実現することができる。また、当該加工工具判別装置100は、キーボード、マウス、タッチパネル等の各種入力装置や、液晶ディスプレイ等の画像表示装置等の出力装置を備えていてもよい。
【0038】
情報保持部50は、ヘッド20に取り付けられた加工工具Sの種類を判別するために用いられる種類判別情報51と、加工工具Sの交換時期を判別するために用いられる基準情報52とを保持している。また、情報保持部50に判別情報取得部60により取得した情報(後述する第一判別部位情報、第二判別部位情報)や判別部40による判別結果などを単独で或いはこれらを紐付けて記憶するようにしてもよい。
【0039】
種類判別情報51は、ヘッド20に保持させることができる加工工具S(u)の種類と、予め定めた第一判別部位に関する第一判別基準情報及び第二判別部位の形状に関する第二判別基準情報とを対応付けたものである。例えば、各加工工具S(u)の種類(例えば、品番)と、その第一判別部位の形状、第二判別部位の形状に関する情報とが対応付けられている。その他、当該種類判別情報51には、各加工工具S(u)を分類するための区分や、工具長に関する情報等を含んでいてもよい。
【0040】
ここで、加工工具Sの種類は、ヘッド20に保持された加工工具Sと同じ物を特定することが可能な情報をいうものとする。例えば、加工工具Sを製造する製造者がそれぞれの加工工具Sに付した番号や記号等の品番に相当する情報がここでいう加工工具Sの種類に相当する。また、上記加工工具Sを分類するための区分とは、例えば、平刃、鋸刃、回転刃、罫線刃などの大区分に加えて、例えば、平刃については片刃、両刃などの刃の形状をさらに細かく分類するための小区分を含んでもよい。これらの大区分、小区分に各品番を対応付けることで、後述する選択候補の抽出を容易にすることができる。なお、ユーザのニーズに応じて、例えば、ある品番の加工工具Sに対して、それと同種の他社製品(代替製品)が存在する場合、その品番に対して代替製品の品番に関する情報なども併せて保持させてもよい。
【0041】
第一判別部位及び第二判別部位は、加工工具Sの先端から基端までの範囲内で予め定めた部位であり、第一判別部位と第二判別部位とは異なる部位であるものとする。第一判別部位及び第二判別部位はそれぞれ任意の部位を選択することができるが、加工工具Sの種類を特定するために、その加工工具Sの形状に基づき、他の加工工具S(u)と区別することが可能な特徴を有する部位であるものとする。また、第一判別部位は第二判別部位と比較すると加工工具Sの先端側の部位であるものとし、第一判別部位と、第二判別部位とは予め定めた所定の長さLだけ異なる位置であることが好ましい。例えば、第一判別部位を加工工具Sの先端部分とし、第二判別部位を加工工具Sの先端から所定の長さLだけ基端側に位置する部分等とすることができる。
【0042】
具体的に説明する。例えば、同じ平刃であっても、刃の先端から刃の基端までの長さ(刃長)の短い短刃もあれば、刃長の長い長刃もある。短刃の先端から基端までの長さをL1(=L+a)とし、長刃の先端から基端までの長さをL2(=L+a+b)とする。また、ヘッド20のホルダ部21に短刃が取り付けられたとき、短刃の先端からLの長さよりも基端側が保持部21aにより保持されるものとする。このとき、第一判別部位を加工工具S(u)の先端部位とし、第二判別部位を加工工具S(u)の先端からLの長さだけ基端側の部位、例えば、長刃の場合は刃の中央の部位、短刃の場合は刃の基端側の位置の部位に相当する部位とする。
なお、本発明にいう「所定の距離」は上記長さLに相当する距離であり、選択候補に応じて予め定めておくものとする。
【0043】
基準情報52は、判別部40によりヘッド20に保持された加工工具Sが判別した後に用いる情報である。例えば、基準情報52として、各加工工具S(u)の交換時期を判別するために予め定めた所定部位の未使用時の状態における形状に関する情報、より具体的には、所定部位の未使用時の状態を撮像した判別部位の画像(以下、判別部位基準画像)を用いることができる。所定部位は特に限定されるものではないが、例えば、各加工工具S(u)の先端部位とすることができる。また、所定部位は、上記第一判別部位と同じ部位であってもよいし、異なる部位であってもよい。例えば、切断刃については「刃」の摩耗の程度や刃の欠けなどから交換時期を判別する。従って、所定部位は、「刃」等の加工手段が設けられた部分の形状を確認することができる部位とすることが求められる。
【0044】
判別情報取得部60は、ヘッド20に保持された加工工具Sから上記第一判別部位に関する第一判別部位情報及び上記第二判別部位に関する第二判別部位情報を取得する。本実施の形態では、第一判別部位情報として、ヘッド20に保持された加工工具Sの第一判別部位画像及び第二判別部位画像を取得する撮像装置として構成されるものとする。より具体的には、当該判別情報取得部60として、例えば、図4(b)に示す筐体61と、筐体61内に挿入される撮像手段(図示略)とを備えた撮像装置として構成することができる。図4(b)に示すように、筐体61は、例えば立方体形状の箱体として構成することができる。また、当該筐体61の上面62には加工工具Sが挿入される挿入孔63を設け、その側面64に略円筒形状の筒体65を設け、当該筒体65からマイクロスコープ等の小型であり、且つ、狭い場所に侵入させることのできる撮像手段を挿入可能に構成することが好ましい。
【0045】
このとき、筐体61の内壁面には筐体61内に入射した光の反射を防止するための反射防止手段(図示略)を設け、筐体61内には内部を照明するための照明手段(図示略)を設けることも好ましい。反射防止手段として、例えば、筐体61の内壁面に黒色塗料を塗布することや、黒色フエルト等を貼着することなどが挙げられる。また、照明手段として、例えば、LEDランプ等を挙げることができる。
【0046】
このように判別情報取得部60を用いることで、筐体61内に加工工具Sを挿入させて、加工工具Sの判別部位情報として、判別部位の画像を取得する。そのため、判別部位情報に、加工工具Sの形状以外の情報が入り込むのを防止することができる。すなわち、加工工具S以外の物が画像内に映り込むのを防止することができる。その結果、加工工具Sの種類を判別する際の外乱要因を低減することができる。さらに、挿入孔63に加工工具Sを挿入したとき、筐体61に対する外部からの光の入射が遮断されていることが好ましい。
【0047】
そして、筐体61の上面62に設けた挿入孔63から加工工具Sを挿入させ、筐体61の側面64に設けた筒体65からマイクロスコープ等を挿入させることで、加工工具Sと撮像手段との位置関係を固定することができ、加工工具Sと撮像手段との位置関係が変動することにより生じる判別誤差を防ぐことができる。
【0048】
判別部40は、加工工具判別プログラム、加工工具交換時期判別プログラムに従って、判別情報取得部60及び情報保持部50に制御信号を送信して加工工具判別処理、加工工具交換時期判別処理を実行する。また、判別部40(加工工具判別装置100)は、加工装置10と無線又は有線により通信接続されており、加工装置10に制御信号を送信することで、ヘッド20の動作等を制御することができる。
【0049】
図5に示すフローチャートを参照しながら、判別部40の動作を説明する。判別部40は、次のようにして、ヘッド20に保持された加工工具Sの品番を判別する。なお、事前準備として、加工装置10のベース11上の所定の位置に上記判別情報取得部60の筐体61を配置し、筐体61の側面64に設けた筒体65からマイクロスコープを挿入し、マイクロスコープのレンズ部が筐体61内の所定の位置に配置されるように位置決めしておくものとする。
【0050】
加工工具判別処理の実行に際し、判別部40は、加工装置10に対して制御信号を送信し、ヘッド20の動作を制御して、ヘッド20に保持された加工工具Sを上記筐体61の上面62に移動させ、ワーク押さえ30の当接部34が筐体61の上面62に当接するようにする。このとき、挿入孔63の中心に加工工具Sの軸中心が配置されるようにする(ステップS1)。この位置を加工工具判別処理開始のスタート位置とする。図6(a)にスタート位置にヘッド20を移動させたときの状態を示す。
【0051】
次に、再度ヘッド20を制御して、上記スタート位置から予め定めた所定の第一の深さ位置まで加工工具Sを筐体内に挿入させる(ステップS2)。ここで、加工工具Sを第一の深さ位置まで挿入させて、加工工具Sの第一判別部位が判別情報取得部60のレンズ部に対向するようにする。ここで、ヘッド20を降下させると、ワーク押さえ30の当接部34が判別情報取得部60の筐体61の上面62に当接されたまま、加工工具Sがヘッド20と共にZ軸方向に降下するため、筐体61の内部には加工工具Sのみを挿入させることができる。
【0052】
次いで、判別部40は判別情報取得部60に制御信号を送信し、加工工具Sの第一判別部位情報(第一判別部位画像)を取得させる(ステップS3)。そして、判別部40は、情報保持部50から種類判別情報51を読み出し(ステップS4)、第一判別部位情報と、種類判別情報51とに基づいて、種類判別情報51に含まれる加工工具S(u)の中から第一判別部位の形状が同じであると判別された加工工具S(u)を選択候補として抽出する(ステップS5)。
【0053】
選択候補が複数存在する場合(ステップS6:Y)、判別部40はヘッド20を制御して、第一の深さ位置から第二の深さ位置まで加工工具Sをさらに筐体61内に挿入させる。このとき、図6(b)に示すように、当接部34とリング部31とが当接し、筐体61の内側に加工工具Sがさらに深く挿入された状態になる。次いで、判別情報取得部60に第二判別部位情報を取得させる(ステップS8)。そして、判別部40は、情報保持部50から種類判別情報51を読み出し(ステップS9)、第二判別部位情報と、種類判別情報51とに基づいて、種類判別情報51に含まれる加工工具S(u)の中からヘッド20に保持された加工工具Sの種類を特定する(ステップS10)。
【0054】
以上の加工工具種類判別処理により、ヘッド20に保持された加工工具Sの種類を判別することができる。加工工具Sの種類を判別した後、加工工具交換時期判別処理を実行し、加工工具Sの交換時期の到来の有無を次のようにして判別することができる。
【0055】
まず、判別情報取得部60により加工工具Sの形状に関する情報を取得する。このとき、加工工具Sの所定部位の画像を加工工具Sの形状に関する情報として取得することができる。以下、加工工具Sの形状に関する情報を判別部位基準画像と称する。そして、情報保持部50に予め保持させた基準情報52を判別部位画像と称する。図7に示すように、判別部位基準画像と、判別部位画像とを対比する際には、それぞれを所定の閾値に基づき黒色と白色に二値化した二値化画像に基づいて対比することが好ましい。図7(a)には、二値化前の画像例を示す。また、図7(b)にはその二値化画像を示す。図7(b)に示す二値化画像では、刃の部分を白色で表し、他の部分を黒色で表している。そして、白色の部分の面積をピクセル数で表している。
【0056】
例えば、所定部位において未使用時の刃の面積に対して刃の面積が90%未満になったときには、交換要である等、予め各加工工具について交換時期が到来したか否かを判別するための基準値を定めておき、その基準値に基づいて、その加工工具Sの交換時期の到来の有無を判別することができる。
【0057】
なお、上記加工工具判別処理及び加工工具交換時期判別処理を実行する際に、画像表示装置等に加工工具Sの第一判別部位情報、第二判別部位情報、選択候補の画像、判別部位画像、基準情報52等のこれらの処理に用いる画像を表示させたり、判別結果等を表示させるようにしてもよい。
【0058】
例えば、切断精度が低下しているにも関わらず、交換時期判別処理において交換時期が到来していないと判別された際に、判別部位基準画像を二値化した後、ハフ変換を行うことなどにより、その加工工具Sの軸線を求め、当該軸線に基づき加工工具Sの偏芯、傾き等を判別するようにしてもよい。なお、判別部位基準画像に基づき、目視等により加工工具Sの刃の状態や刃の傾き等を確認してもよいのは勿論である。
【0059】
以上説明した実施の形態の加工工具判別装置100によれば、種々の加工工具Sをヘッド20に保持させることのできる加工装置10に対して、加工工具判別処理によりヘッド20に保持された加工工具Sの種類を判別することができる。その際、本実施の形態の加工工具判別装置100では、第一判別部位情報により選択候補を絞り込んだ上で(図5「ステップS5」参照)、第二判別部位情報によりその種類を判別する方法(図5「ステップS10」参照)を採用している。加工工具Sは使用と共に摩耗し、刃の形状や刃幅などが変化する。また、刃に欠けなどが生じる場合もある(図7(a)参照)。このように第一判別部位情報と、第二判別部位情報により加工工具Sの種類を特定することで、正確に加工工具Sの種類を特定することが容易になる。また、この種の加工装置10のヘッド20に保持させることのできる加工工具Sの種類が多い場合に、第一判別部位情報により選択候補を絞り込むことで、第二判別部位情報に基づき加工工具Sの種類を特定する際の判別に伴う演算処理を簡易にすることができる。
【0060】
また、ヘッド20に保持された加工工具Sの種類が判別した後は、第一判別部位情報又は第二判別部位情報、或いは判別部位基準画像等に基づいて、加工工具Sの偏芯や傾きなどを確認することも可能である。
【0061】
さらに、本実施の形態の加工工具判別装置100では、判別部40は、ヘッド20に保持された加工工具Sの種類を判別した後、判別情報取得部60により判別部位画像(加工工具の形状に関する情報)を取得し、情報保持部50に予め保持させた基準情報52を読み出して、加工工具Sの種類に応じた基準情報52と判別部位画像とを対比することで、判別対象の加工工具Sの交換時期が到来したか否かを判別することができる。
【0062】
この際、本実施の形態の加工工具判別装置100では、判別部位基準画像と判別部位画像とを図7(b)に示すように二値化画像に変換した上で、刃の面積に基づき決定することができるため、判別基準を明確に定めることが容易であり、判別に伴う演算処理も簡易にすることができる。
【0063】
さらに、本実施の形態の加工装置10はヘッド本体20aの下方にワーク押さえ30を備え、ヘッド20に加工工具Sが保持された状態では、加工工具Sの形状を確認することが困難である。しかしながら、本実施の形態の加工工具判別装置100では、判別情報取得部60として、筐体61の上面62に加工工具Sを挿入するための挿入孔63を備え、筐体61の側面64に略円筒形状の筒体65を設け、当該筒体65からマイクロスコープ等の撮像手段を挿入可能に構成した判別情報取得部60を用いる。そのため、筐体61の上面62にワーク押さえ30の当接部34を当接させて、ヘッド20をZ軸方向に降下させることで加工工具Sのみを撮像手段により撮像することができる。そのため、加工工具Sの第一判別部位情報、第二判別部位情報に、ワーク押さえ30等の他の画像が入り込むのを防ぐことができる。
【0064】
以上説明した本実施の形態は、本発明に係る加工工具判別装置及び加工工具判別方法の一形態であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能であるのは勿論である。例えば、上記実施の形態では、加工装置10としてカッティング装置を例に挙げて説明したが、本発明はカッティング装置以外にもマシニングセンタ等の種々の加工工具(エンドミル、ドリル、フライス等)を用いる工作機械等において加工工具の種類(品番)の判別や交換時期の判別に適用することができる。
【0065】
また、上記実施の形態では、例えば図4に示すように、加工装置10と加工工具判別装置100とが別体に構成されるものとして説明したが、加工装置10の動作を制御する制御装置や記憶装置等を用いて本発明に係る加工工具判別装置100を具現化してもよい。
【0066】
また、上記実施の形態では、第一判別部位に関する第一基準情報及び第二判別部位に関する第二基準情報のいずれについても第一判別部位及び第二判別部位の形状に関する情報を用いたが、例えば、第一判別部位に関する第一基準情報を第一判別部位の形状に関する情報とし、第二判別部位に関する第二基準情報を加工工具S(u)の工具長に関する情報としてもよい。第一判別部位の形状に基づき、選択候補を抽出しつつ、判別対象とする加工工具Sの工具長に基づきその加工工具Sが長刃であるか短刃であるかを判別することなどにより、加工工具Sの種類を判別するようにしてもよい。
【0067】
上記実施の形態では、加工工具Sが主として切断刃である場合を例に挙げて説明したが、上述したとおり加工工具Sは切断刃に限定されるものではなく、罫線刃等であってもよい。加工工具Sが罫線刃である場合も、上記と同様にして、加工工具Sの種類を判別することができる。その際、上記実施の形態では図4(b)に示す筐体61に設けられた挿入孔63に加工工具Sを挿入させるものとしたが、筐体61の形状や挿入孔63の形状を適宜変化させて罫線刃を挿入可能な形状にさせることが好ましく、加工工具Sの種類に応じて判別情報取得部60の具体的な構成を適宜変更してもよいことは勿論である。
【0068】
さらに、判別を行う際に、刃の劣化の程度と元の加工工具Sの形状との関係等をディープラーニングさせていくことも好ましい。ディープラーニング手法を採用することにより、第一判別部位情報と第二判別部位情報とを用いてより正確な加工工具Sの種類を判別することが可能になる。このとき、上記実施の形態の加工工具判別装置100の判別情報取得部60により取得した第一判別部位情報及び第二判別部位情報のうち少なくともいずれか一方と、判別部40により判別した加工工具の種類(判別結果)とを紐付けて記憶する記憶手段を設け、例えば、加工工具毎或いはその加工工具の材料や使用用途等によって刃の劣化部位や劣化形状等に関する情報を蓄積していくことにより、それらの情報を利用することで劣化しにくい形状又は材料等からなる新たな加工工具を開発する際のデータ等として利用することもできる。さらに、当該加工工具判別装置100をネットワーク等を介して複数の加工装置10と接続することで、より多くのこれらの情報を収集し、ビックデータとしての活用も可能になる。なお、当該記憶手段は、情報保持部50であってもよいし、外部記憶装置等の他の記憶手段であってもよい。
【符号の説明】
【0069】
10 :加工装置
20 :ヘッド
30 :ワーク押さえ
31 :リング部
32 :挿通孔
33 :挿通部材
34 :当接部
40 :判別部
50 :情報保持部
51 :種類判別情報
52 :基準情報
60 :判別情報取得部
61 :筐体
62 :上面
63 :挿入孔
64 :側面
65 :筒体
100 :加工工具判別装置
S :加工工具
W :被加工材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7