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特許7542248データ送信システム、データ受信システム、データ送信方法、データ送信システムの作動方法、及び、データ受信方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】データ送信システム、データ受信システム、データ送信方法、データ送信システムの作動方法、及び、データ受信方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0245 20060101AFI20240823BHJP
【FI】
A61B5/0245 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020075713
(22)【出願日】2020-04-21
(65)【公開番号】P2021171219
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-04-14
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和元年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業「生体情報操作を活用したウェアラブルセンシング基盤の拡張」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(74)【代理人】
【識別番号】100111567
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 寛
(72)【発明者】
【氏名】村尾 和哉
【審査官】▲高▼木 尚哉
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-187229(JP,A)
【文献】特開2016-032487(JP,A)
【文献】特開昭62-038137(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0030494(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106249849(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02-5/03
G06F 3/01
H04B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の脈波を利用してデータを送信するデータ送信システムであって、
前記生体の外部の位置であって、前記データの受信のために前記脈波を検出するよう前記生体に取り付けられる検出部から離れた位置において、前記データに応じて、前記生体の内部の前記脈波の波形形状を変形させる駆動部を動作させることで、離れた位置にある前記検出部へ、脈波を利用して前記データを送信するよう構成された
データ送信システム。
【請求項2】
前記動作は、前記生体の部位を圧迫する動作、振動を与える動作、及び、電圧を与える動作、のうちの少なくとも一つを含む
請求項1に記載のデータ送信システム。
【請求項3】
生体の脈波を利用してデータを送信するデータ送信システムであって、
前記データの受信のために前記脈波を検出するよう前記生体に取り付けられる検出部から離れた位置の血管内において、前記データに応じて、前記血管を流れる血液の前記脈波の波形形状を変形させる駆動部を動作させることで、離れた位置にある前記検出部へ、脈波を利用して前記データを送信するよう構成され、
前記動作は、前記血管の容積を変化させるように内側から血管壁を圧迫する動作、血流方向又は逆方向の力を前記血液に与える動作、の少なくとも一方を含む
データ送信システム。
【請求項4】
生体の脈波を利用してデータを送信するデータ送信システムであって、
前記データの受信のために前記脈波を検出するよう前記生体に取り付けられる検出部から離れた位置において、前記データに応じて、前記生体の内部の前記脈波の波形形状を変形させる駆動部を動作させることで、離れた位置にある前記検出部へ、脈波を利用して前記データを送信するよう構成され、
前記動作は、さらに、前記波形形状を変形させる動作を行う位置まで前記駆動部を移動させる動作を含む
データ送信システム。
【請求項5】
前記動作の内容は、前記駆動部が可能な複数種類の動作の組み合わせを含む
請求項1~4のいずれか一項に記載のデータ送信システム。
【請求項6】
前記波形形状の前記変形は、血圧値の変化、駆出時間の変化、及び、ピーク検出間隔の変化、のうちの少なくとも1つを含む
請求項1~5のいずれか一項に記載のデータ送信システム。
【請求項7】
メッセージの入力を受け付ける入力部をさらに備え、
入力された前記メッセージに応じて送信すべき前記データを識別する
請求項1~6のいずれか一項に記載のデータ送信システム。
【請求項8】
生体の脈波を利用してデータを送信するデータ送信方法であって、
前記生体の外部の位置であって、前記データの受信のために前記脈波を検出するよう前記生体に取り付けられる検出部から離れた位置において、前記データに応じて、前記生体の内部の前記脈波の波形形状を変形させる駆動部を動作させることで、離れた位置にある前記検出部へ、脈波を利用して前記データを送信する、
データ送信方法。
【請求項9】
生体の脈波を利用してデータを送信するデータ送信システムの作動方法であって、
前記データ送信システムは、制御装置と、前記制御装置によって制御される駆動装置と、を含み、
前記駆動装置は、前記データの受信のために前記脈波を検出するよう前記生体に取り付けられる検出部から離れた位置の血管内において、前記データに応じて、前記血管を流れる血液の前記脈波の波形形状を変形させる駆動部を動作させることで、離れた位置にある前記検出部へ、脈波を利用して前記データを送信するよう構成され、前記駆動部は、前記動作として、前記血管の容積を変化させるように内側から血管壁を圧迫する動作、血流方向又は逆方向の力を前記血液に与える動作、の少なくとも一方を含む動作をするよう構成され、
前記作動方法は、前記制御装置が、送信する前記データに対応した動作を前記駆動装置に実行させる制御信号を、前記駆動装置へ送信することを含む
データ送信システムの作動方法。
【請求項10】
生体の脈波を利用してデータを送信するデータ送信方法であって、
前記データの受信のために前記脈波を検出するよう前記生体に取り付けられる検出部から離れた位置において、前記データに応じて、前記生体の内部の前記脈波の波形形状を変形させる駆動部を動作させることで、離れた位置にある前記検出部へ、脈波を利用して前記データを送信し、
前記動作は、さらに、前記波形形状を変形させる動作を行う位置まで前記駆動部を移動させる動作を含む
データ送信方法。
【請求項11】
生体の脈波を利用してデータを送受信するデータ伝送システムであって、
前記生体の外部の位置であって、前記データの受信のために前記脈波を検出するよう前記生体に取り付けられる検出部から離れた位置において、前記データに応じて、前記生体の内部の前記脈波の波形形状を変形させる駆動部を動作させることで、離れた位置にある前記検出部へ、脈波を利用して前記データを送信し、
前記検出部によって前記脈波を検出し、
検出された前記脈波の波形形状に基づいて、前記波形形状に応じた前記データを識別するよう構成されたデータ伝送システム。
【請求項12】
生体の脈波を利用してデータを送受信するデータ伝送システムであって、
前記データの受信のために前記脈波を検出するよう前記生体に取り付けられる検出部から離れた位置の血管内において、前記データに応じて、前記血管を流れる血液の前記脈波の波形形状を変形させる駆動部を動作させることで、離れた位置にある前記検出部へ、脈波を利用して前記データを送信し、
前記検出部によって前記脈波を検出し、
検出された前記脈波の波形形状に基づいて、前記波形形状に応じた前記データを識別するよう構成され、
前記動作は、前記血管の容積を変化させるように内側から血管壁を圧迫する動作、血流方向又は逆方向の力を前記血液に与える動作、の少なくとも一方を含む
データ伝送システム。
【請求項13】
生体の脈波を利用してデータを送受信するデータ伝送システムであって、
前記データの受信のために前記脈波を検出するよう前記生体に取り付けられる検出部から離れた位置において、前記データに応じて、前記生体の内部の前記脈波の波形形状を変形させる駆動部を動作させることで、離れた位置にある前記検出部へ、脈波を利用して前記データを送信し、
前記検出部によって前記脈波を検出し、
検出された前記脈波の波形形状に基づいて、前記波形形状に応じた前記データを識別するよう構成され、
前記動作は、さらに、前記波形形状を変形させる動作を行う位置まで前記駆動部を移動させる動作を含む
データ伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、データ送信システム、データ受信システム、データ送信方法、及び、データ受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
データを伝送する方法は、通信が一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-217817号公報
【発明の概要】
【0004】
しかしながら、電気的な通信路を用いた通信は、電気的な通信路が存在しない場面ではデータの伝送ができない場合がある。そこで、データの伝送を、電気的な通信路を用いずに実現できるデータ送信システム、データ受信システム、データ送信方法、及び、データ受信方法を提供する。
【0005】
他の実施の形態に従うと、データ送信システムは、データと動作内容との関係を記憶するメモリと、動作することで脈波の波形形状を変形させる駆動部と、駆動部を制御する制御部と、を備え、制御部は、メモリを参照して送信するデータに応じた動作内容を識別し、識別した動作内容で駆動部を動作させる。
【0006】
他の実施の形態に従うと、データ受信システムは、脈波を検出する検出部と、検出された脈波の波形形状に基づいて、波形形状に応じたデータを識別する処理を行う処理部と、を備える。
【0007】
ある実施の形態に従うと、データ送信方法は脈波を利用してデータを送信する方法であって、伝播中の脈波の波形形状をデータに応じて変形させ、波形の前記変形によって、脈波の伝播先にデータを送信する。
【0008】
他の実施の形態に従うと、データ受信方法は、脈波を利用してデータを受信する方法であって、計測された脈波の波形形状に基づいて、波形形状に応じたデータを識別する。
【0009】
更なる詳細は、後述の実施形態として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施の形態に係るデータ伝送システムの構成を表した概略図である。
図2図2は、データ伝送システムに備えられるデータ送信システムに含まれる制御装置の構成の概略ブロック図である。
図3図3は、制御装置のメモリに記憶されているメッセージとデータとの対応関係の一例を表した図である。
図4図4は、制御装置のメモリに記憶されているデータと駆動装置の行う送信動作との対応関係の一例を表した図である。
図5図5は、データ送信システムにおけるデータ送信方法を表したフローチャートである。
図6図6は、通常時の脈波波形と、データ送信時の脈波波形と、を表した図である。
図7図7は、データ伝送システムに備えられるデータ受信システムに含まれる処理装置の構成の概略ブロック図である。
図8図8は、処理装置のメモリに記憶されている脈波波形から検出された基準の波形からの変形とデータとの対応関係の一例を表した図である。
図9図9は、処理装置のメモリに記憶されているデータとメッセージとの対応関係の一例を表した図である。
図10図10は、データ受信システムにおけるデータ受信方法を表したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<1.データ送信システム、データ受信システム、データ送信方法、及び、データ受信方法の概要>
【0012】
(1)本実施の形態に係るデータ送信システムは、データと動作内容との関係を記憶するメモリと、動作することで脈波の波形形状を変形させる駆動部と、駆動部を制御する制御部と、を備え、制御部は、メモリを参照して送信するデータに応じた動作内容を識別し、識別した動作内容で駆動部を動作させる。駆動部を動作させることにより、駆動部が影響を及ぼす血管の内部に流れる血液の脈波波形を、送信するデータに応じて変形させることができる。
【0013】
データに応じた脈波の波形形状の変形は、血圧値の変化、駆出時間の変化、及び、ピーク検出間隔の変化などであって、脈波の伝播先において検出可能である。これにより、電気的な通信路がない場合であってもデータを送信することができる。
【0014】
(2)好ましくは、駆動部は生体の外部に取り付けられ、外部において生体の内部の脈波の波形形状を変形させる動作を行う。外部に取り付け可能なことによって、着脱が容易で、簡単にデータの伝送を行うことができる。
【0015】
(3)好ましくは、動作は、取り付けられた生体の部位を圧迫する動作、振動を与える動作、及び、電圧を与える動作、のうちの少なくとも一つを含む。これにより、取り付けられた部位近傍の血管内を流れる血液の脈波の波形を変形させることができる。
【0016】
(4)好ましくは、駆動部は血管内に配置され、血管内において血管を流れる血液の脈波の波形形状を変形させる動作を行う。血管内に配置されることで、外部への露出なくデータ伝送を行うことができる。そのため、装着の手間や不便を排することができる。
【0017】
(5)好ましくは、動作は、血管の容積を変化させるように内側から血管壁を圧迫する動作、血流方向又は逆方向の力を血液に与える動作、の少なくとも一方を含む。これにより、近傍の血管内を流れる血液の脈波の波形を変形させることができる。
【0018】
(6)好ましくは、動作は、さらに、波形形状を変形させる動作を行う位置まで駆動部を移動させる動作を含む。これにより、データ送信を行っていないときには動作を行う位置以外に退避させることができる。そのため、データ送信時以外にも生体に取り付けられている場合の負担を低下したり、他の用途に用いる装置と兼用したりすることができる。
【0019】
(7)好ましくは、動作の内容は、駆動部が可能な複数種類の動作の組み合わせを含む。これにより、多くのデータを伝送できる。
【0020】
(8)好ましくは、波形形状の変形は、血圧値の変化、駆出時間の変化、及び、ピーク検出間隔の変化、のうちの少なくとも1つを含む。このため、波形形状に基づいてデータを識別できる。
【0021】
(9)好ましくは、データ送信システムはメッセージの入力を受け付ける入力部をさらに備え、制御部は、さらに、入力されたメッセージに応じて送信するデータを識別する。これにより、入力されたメッセージをデータ化して送信できる。
【0022】
(10)本実施の形態に係るデータ受信システムは、脈波を検出する検出部と、検出された脈波の波形形状に基づいて、波形形状に応じたデータを識別する処理を行う処理部と、を備える。これにより、(1)~(9)のデータ送信システムによって送信されたデータを、脈波の伝播先において受信することができる。
【0023】
(11)好ましくは、データ受信システムは脈波形状の変形とデータとの関係を記憶するメモリをさらに備え、処理は、関係に基づいて、波形形状の波形モデルからの変形に応じたデータを識別することを含む。
【0024】
波形モデルは、変形前の波形形状に相当する波形形状であって、比較することによって変形が検出される。脈波形状の変形とデータとの関係を予め記憶しておくことで、検出された波形形状の変形からデータを識別することができる。
【0025】
(12)好ましくは、処理は、検出された脈波の波形形状と、記憶されている波形モデルとを比較して変形を検出することを含む。これにより、容易に変形を検出できる。
【0026】
(13)好ましくは、波形モデルは、処理の対象とする脈波の検出とは異なるタイミングに、検出部によって検出された脈波の波形形状である。これにより、同一の生体の脈波波形を波形モデルとして用いることができる。そのため、変形の検出精度を向上させることができる。
【0027】
(14)好ましくは、比較は、検出された脈波の波形形状と、記憶されている波形モデルとの、血圧値、駆出時間、及び、ピーク検出間隔、のうちの少なくとも1つを比較することを含む。これにより、(1)のデータ送信方法によってデータを送信するための脈波波形に与えられた変形を検出することができる。
【0028】
(15)好ましくは、上記の関係は、血圧値の変化、駆出時間の変化、及び、ピーク検出間隔の変化、の少なくとも1つの組み合わせとデータとの対応関係を含む。これにより、検出した変形に基づいてデータを受信することができる。
【0029】
(16)好ましくは、検出部は、無線通信を行って脈波の検出結果に応じた信号を処理部に送信する。これにより、検出部と処理部とを異なる装置とすることができる。
【0030】
(17)好ましくは、処理は、識別されたデータに対応したメッセージを識別する処理をさらに含む。これにより、伝送されたデータに対応したメッセージを識別することができる。つまり、メッセージ自体の伝送が可能になる。
【0031】
(18)好ましくは、処理は、識別されたメッセージを出力装置に出力させる処理をさらに含む。これにより、ユーザは、出力装置での出力によって、識別されたメッセージを把握できる。
【0032】
(19)本実施の形態に係るデータ送信方法は、脈波を利用してデータを送信する方法であって、伝播中の脈波の波形形状をデータに応じて変形させ、波形形状の変形によって、脈波の伝播先にデータを送信する。これにより、電気的な通信路がない場合であってもデータを送信することができる。
【0033】
(20)本実施の形態に係るデータ受信方法は、脈波を利用してデータを受信する方法であって、計測された脈波の波形形状に基づいて、波形形状に応じたデータを識別する。これにより、(19)のデータ送信方法によって送信されたデータを、脈波の伝播先において受信することができる。
【0034】
<2.データ送信システム、データ受信システム、データ送信方法、及び、データ受信方法の概要>
【0035】
図1を参照して、本実施の形態に係るデータ伝送システム1は、生体の脈波を利用してデータを送信し、又、受信するシステムである。生体は、例えばヒトSであって、例えば、ヒトSの腕の動脈を流れる血液の脈波を利用する。
【0036】
データ伝送システム1は、図1に示されたように、データ送信システム100と、データ受信システム200と、を含む。これらは、1つのデータ伝送システム1にそれぞれ1つ以上含まれる。例えば、1つのデータ伝送システム1に2以上のデータ受信システム200が含まれてもよいし、2つ以上のデータ送信システム100が含まれてもよい。又は、データ送信システム100とデータ受信システム200とは、それぞれ単独で用いられてもよい。
【0037】
データ送信システム100は、送信対象のデータを脈波に重畳させて、脈波の進行方向、つまり脈波の伝播先に送信する処理(以下、送信処理)を行うシステムである。データ受信システム200は、脈波を測定し、検出された脈波から重畳されたデータを識別する処理(以下、受信処理)を行うシステムである。以下、それぞれのシステムについて説明する。
【0038】
(データ送信システム)
【0039】
図1を参照して、データ送信システム100は、制御装置10と、制御装置10によって制御される駆動装置20と、を含む。駆動装置20は、脈波の波形形状を変形させる動作を行う装置である。一例として、駆動装置20は、ヒトSの外部に取り付けられ、外部においてヒトSの内部の血管Tを流れる血液の脈波の波形形状を変形させる動作を行う。取り付けられる部位は、具体的には、血管T内の血液に対して外部から影響を与えやすい位置であって、かつ、好ましくは血管Tの上流側である。血管Tが動脈である場合、心臓に近い位置である。一例として、図1に示されたように、上腕に取り付けられる。部位は上腕の他に、首、股間、腋下、などが挙げられる。
【0040】
詳しくは、図1を参照して、駆動装置20は、脈波の波形形状を変形させる動作を行う第1の駆動部21と、制御装置10と無線通信する通信部22と、を有している。通信部22が制御装置10からの制御信号を受信し、第1の駆動部21がその制御信号に従って動作する。
【0041】
脈波の波形形状を変形させる動作は、取り付けられた部位を圧迫する動作、振動を与える動作、電圧を与える動作、などである。また、これら動作のうちの2つ以上を組み合わせた動作であってもよい。以降の説明において、データ送信のための脈波の波形形状を変形させる動作を、送信動作とも称する。以下の例では、駆動装置20は、送信動作として、取り付けられた部位を圧迫する動作を行うものとする。
【0042】
この場合、第1の駆動部21は、取り付けられた上腕を外部から圧迫することで、血管Tに外部より圧力を与えるための部材を含む。一例として、図1を参照して、第1の駆動部21は、1以上のカフ211と、カフ211の内圧(以下、カフ圧とも称する)を調整する調整部212と、を含む。調整部212は、エアチューブ213を介してカフ211へ給気するための図示しないポンプ、及び、開閉されることでカフ211内の空気をエアチューブ213を介して排出したり、カフ211内に封入したりする弁を含む。
【0043】
調整部212は、制御装置10からの制御信号に応じてカフ圧を調整する。カフ圧の調整は、ポンプの駆動量、駆動タイミング、駆動時間、弁の開閉タイミング、開閉時間、及びそれらの組み合わせ、などである。また、カフ211が複数のカフから構成される場合、さらに、給気や排気行う対象とするカフの数も含む。
【0044】
好ましくは、駆動装置20は、第2の駆動部23を有する。第2の駆動部23は、駆動装置20自身を移動させる動作を行う。一例として、第2の駆動部23は、ベルト23A上を移動可能なアクチュエータを有する。この場合、図1に示されたように、ヒトSの上腕に巻き回したベルト23Aに沿って駆動装置20が移動可能となる。図1のホーム位置Ph及び送信位置Psの通るようにベルト23Aを上腕に巻き回すことで、第2の駆動部23は、制御装置10からの制御信号に従って、ホーム位置Phと送信位置Psとの間を移動する。
【0045】
送信動作を行う際、カフ211が血管Tの直上にあるほど内部の血液に効率的に影響を及ぼすことができる。そのため、血管Tの直上に近い位置を送信動作を行う送信位置Psとする。一方で、駆動装置20を装着しており、かつ、データ送信を行わないタイミングでは、送信位置に駆動装置20が位置していると他の動作に不便となる場合もある。そのため、データ送信を行わないタイミングでは、送信位置Psとは異なる、不便とならない位置をホーム位置Phとする。
【0046】
図2を参照して、制御装置10は、プロセッサ11とメモリ12とを有するコンピュータで構成される。制御装置10には、入力部30が接続されている。入力部30は、ユーザ操作を受け付けて操作信号をプロセッサ11に入力する。入力部30は、一例としてキーボードである。
【0047】
メモリ12は、一次記憶装置であってもよいし、二次記憶装置であってもよい。メモリ12は、プロセッサ11によって実行されるコンピュータプログラム121を記憶している。また、メモリ12は、データと動作との対応関係を記憶する第1の対応記憶部122と、メッセージとデータとの対応関係を記憶する第2の対応記憶部123とを含む。
【0048】
制御装置10は、無線通信を行うための通信装置13をさらに有する。プロセッサ11はコンピュータプログラム121を実行することで制御信号を生成し、通信装置13から駆動装置20に送信させる。これにより、プロセッサ11は、駆動装置20の駆動を制御する。
【0049】
詳しくは、プロセッサ11は、コンピュータプログラム121を実行することによってデータ識別処理111を実行する。データ識別処理111は、入力部30から入力された情報から、伝送対象のデータを識別する処理である。入力部30は、例えば、「こんばんは」などの、伝送を所望するメッセージを入力するユーザ操作を受け付け、操作に従った入力情報をプロセッサ11に渡す。
【0050】
データ識別処理111において、プロセッサ11は第2の対応記憶部123を参照して、図3に示されたメッセージとデータとの対応関係を用いる。すなわち、図3を参照して、第2の対応記憶部123には、メッセージと対応するデータとが予め規定されている。データ識別処理111でプロセッサ11は、第2の対応記憶部123に記憶されている対応関係から入力されたメッセージに対応するデータを読み出すことで、伝送対象のデータを識別する。
【0051】
プロセッサ11は、コンピュータプログラム121を実行することによって動作識別処理112を実行する。動作識別処理112は、駆動装置20に実行させる送信動作を識別する処理である。動作識別処理112において、プロセッサ11は、第1の対応記憶部122を参照して、図4に示されたデータと送信動作との対応関係を用いる。すなわち、図4を参照して、第1の対応記憶部122には、データと対応する送信動作の種類とが予め規定されている。
【0052】
ここでの送信動作は、上記のように、取り付けられた部位を圧迫する動作であって、送信動作の種類は、一例として、カフ211への給気時間の種類とする。単位時間当たりの給気量を一定とすると給気時間が長いほどカフ圧が大きくなり、血管に与えられる圧力が大きくなるためである。また、給気時間が長いほど血管に圧力を与える時間が長くなるためである。送信動作の種類は、その他、カフ圧そのものであったり、給気間隔であったりしてもよい。図4では、一例として、脈波1拍ごとの給気時間の組み合わせをデータごとに規定している。
【0053】
動作識別処理112でプロセッサ11は、第1の対応記憶部122に記憶されている対応関係から、データ識別処理111で識別されたデータに対応する送信動作を読み出すことで、駆動装置20に実行させる送信動作を識別する。
【0054】
プロセッサ11は、コンピュータプログラム121を実行することによって移動制御処理113を実行する。移動制御処理113は、駆動装置20を移動させる処理であって、移動を指示する制御信号を通信装置13に渡し、駆動装置20に送信させる処理を含む。移動制御処理113によって移動させることは、データ送信時にはホーム位置Phから送信位置Psに移動させることを含む。また、データ送信が終了すると、送信位置Psからホーム位置Phに移動させることを含む。
【0055】
プロセッサ11は、コンピュータプログラム121を実行することによって駆動制御処理114を含む。駆動制御処理114は、駆動装置20に動作識別処理112で識別した送信動作を行わせる処理である。駆動制御処理114は、送信動作を行わせるための制御信号を通信装置13に渡し、駆動装置20に送信させる処理を含む。
【0056】
図5のフローチャートを用いて、データ送信システム100で行われるデータ送信方法について説明する。図5のフローチャートで示された処理は、制御装置10のプロセッサ11がコンピュータプログラム121を読み出して実行することによって実現される処理の流れの一例を表している。処理は、一例として、入力部30からデータ送信の開始を指示する操作信号の入力を受け付けることによって開始される。
【0057】
図5を参照して、処理を開始すると、プロセッサ11は、入力部30からのメッセージを示す操作信号の入力を待機する。受信した操作信号からメッセージの入力を受け付けると(ステップS101でYES)、プロセッサ11は、第2の対応記憶部123のメッセージとデータとの対応関係を参照して、入力されたメッセージに応じたデータを識別する(ステップS103)。さらにプロセッサ11は、第1の対応記憶部122のデータと送信動作との対応関係を参照して、識別されたデータに対応した送信動作を識別する(ステップS105)。そして、プロセッサ11は、ステップS105で識別した送信動作を駆動装置20に実行させるための制御信号を生成する(ステップS107)。
【0058】
プロセッサ11は、駆動装置20に送信動作を行わせるのに先立って、送信位置Psに移動させるための制御信号を通信装置13に渡し、駆動装置20に送信させる(ステップS109)。これにより、駆動装置20は、ホーム位置Phから送信位置Psに移動する。
【0059】
その後、プロセッサ11は、ステップS107で生成した制御信号を通信装置13に渡し、駆動装置20に送信させる(ステップS111)。これにより、駆動装置20は、送信位置PsにてステップS105で識別された送信動作を行う。
【0060】
プロセッサ11は、以上の処理をデータ送信の終了まで繰り返し行う(ステップS113でNO)。これにより、入力部30で入力されたメッセージが、順次データ化されて、送信動作として駆動装置20に指示される。
【0061】
データ送信の終了は、一例として、入力部30からの操作信号によって指示される。終了の指示を受け付けると(ステップS113でYES)、プロセッサ11は、ホーム位置Phに帰還させるための制御信号を通信装置13に渡し、駆動装置20に送信させる(ステップS115)。これにより、駆動装置20は、送信位置Psからホーム位置Phに帰還する。そして、プロセッサ11は一連の処理を終了する。
【0062】
図6を用いて、駆動装置20の送信動作による脈波波形の変形について説明する。図6に示されたように、駆動装置20の送信動作は、送信動作が行われていないときの脈波波形、つまり、通常波形W1を変形させて送信時波形W2とする。
【0063】
図6の送信時波形W2は、通常波形W1の変形の具体例として3種類の変形A,B,Cを例示したものである。
【0064】
詳しくは、図6を参照して、変形Aはピーク低下変化であって、通常波形W1のピークP1-1の測定値を低下させ、ピークP1-2とする変形である。測定値は、例えば、血圧値である。ピークP1-2の血圧値v2は、ピークP1-1の血圧値v1に対してv2<v1となる。
【0065】
変形Bは駆出時間変化であって、通常波形W1の駆出時間ET1を長くし、駆出時間ET2(ET2>ET1)とする変形である。駆出時間ET1は、脈波波形の立ち上がり点P2から切痕P3-1までの時間を指す。従って、駆出時間ET1を長くすることは切痕P3-1の出現タイミングを遅くして切痕P3-2とすることである。
【0066】
変形Cは脈波間隔変化であって、通常波形W1の脈波間隔TP1を長くし、脈波間隔TP2(TP2>TP1)とする変形である。脈波間隔TP1は一例として、ピークP4-1と次のピークP5-1との間隔で得られる。また、脈波間隔TP2は、ピークP4-2と次のピークP5-2との間隔で得られる。従って、脈波間隔TP1を長くすることは、ある時点のピークP4-1,4-2の出現タイミングを同一とすると、続くピークP5-1の出現タイミングを遅くしてピークP5-2とすることである。なお、脈波間隔TP1を長くすることには、通常波形W1では直後に現れる1以上の波形又を消失させることも含む。
【0067】
変形A,B,Cは、いずれも、駆動装置20によって血管を外部から圧迫することによって通常波形W1を変形させることができる。変形A,B,Cそれぞれを生じさせるための駆動装置20での送信動作の種類、一例として、カフ211への給気時間の種類は、実験的に求められてもよいし、予め規定されていてもよい。
【0068】
駆動装置20は、制御装置10からの制御信号に従って送信動作を実行することで、変形A~Cのうちのいずれか1つを通常波形W1に生じさせる。又は、2つ以上を組み合わせて生じさせてもよい。すなわち、送信するデータに応じて変形A~Cのうちのいずれか1つ、又は、2つ以上を組み合わせの変形を通常波形W1に生じさせる。
【0069】
これにより、データ受信システム200において、脈波波形を検出し、検出結果を処理することによって、データ送信システム100が送信したデータを受信することが可能になる。従って、データ送信システム100において通常波形W1をデータに応じて変形させて送信時波形W2とすることは、通常波形W1にデータを重畳することに該当する。
【0070】
(変形例1)
【0071】
駆動装置20は、ヒトSの外部に取り付けられるものに限定されない。他の例として、ヒトSの血管T内に配置される装置であってもよい。血管T内に配置される駆動装置20は、血管Tの直径よりも小さく、血管T内を移動可能なカプセル型の装置、などが挙げられる。また、駆動装置20は、血管T内で生体情報を測定するセンサを搭載した小型ロボットなどの他の装置に組み込まれているものであってもよい。
【0072】
好ましくは、血管T内に配置可能な駆動装置20は、第2の駆動部23を駆動させることによって血管T内を移動可である。この場合の第2の駆動部23は、一例としてひれ状のアクチュエータなど、液体中の移動機構を含む。これにより、他の用途に用いる装置にと兼用するような場合であっても、データ送信時に駆動装置20を送信位置Psに移動させることができる。
【0073】
駆動装置20は、血管T内において、血管Tを流れる血液の脈波の波形形状を変形させる動作、つまり、送信動作を実行する。この場合の送信動作は、例えば、血管Tの容積を変化させるように内側から血管壁を圧迫する動作、血流方向又は逆方向の力を血液に与える動作、の少なくとも一方を含む。
【0074】
このような送信動作によっても、血圧値の変化、駆出時間の変化、及び、ピーク検出間隔の変化などを生じさせることができる。従って、駆動装置20が取り付けられる位置は、ヒトSなどの生体の外部、及び、血管Tの内部のいずれであってもよく、血管Tに流れる血液に影響を与え得る位置であればよい。
【0075】
(変形例2)
【0076】
メッセージの入力を受け付ける入力部30は、キーボードなどの、ユーザの手によるユーザ操作を受け付ける装置のみに限定されず、手以外の部位での入力操作を受け付けるものであってもよい。手以外の部位での入力操作は、例えば、瞬き、呼気、吸気、発声、手以外の部位での接触、視線などが挙げられる。また、声帯の振動や脳波などを測定するセンサを用いて、このセンサでのセンシング結果に基づいたメッセージを入力するようにしてもよい。この場合であっても、ユーザの指示したメッセージをデータ化して脈波を利用して伝送することができる。
【0077】
(データ受信システム)
【0078】
図1を参照して、データ受信システム200は、脈波を検出する検出装置60と、検出装置60での検出結果の処理を行う処理装置50と、を含む。検出装置60は、一例として、ヒトSの外部に取り付けられ、外部からヒトSの内部の血管Tを流れる血液の脈波を検出する。取り付けられる部位は、具体的には、脈波を検出しやすい位置であって、かつ、データ送信システム100の駆動装置20よりも血管Tの下流側である。一例として、図1に示されたように、検出装置60はウェアラブルの装置であって、手首などの脈拍を検出しやすい位置に装着される。検出装置60は、腕時計などのウェアラブルな他の装置に組み込まれてもよい。取り付けられる部位は手首の他に、首、足首、などが挙げられる。
【0079】
詳しくは、図1を参照して、検出装置60は、脈波を検出する検出部61と、制御装置10と無線通信する通信部62と、を有している。検出部61は、光電式、容積変位式、及び、電気的インピーダンス式などのいずれの方法であってもよく、血管の容積変化を検出することで脈波を検出する。通信部62は、検出部61での検出結果を処理装置50に送信する。
【0080】
図7を参照して、処理装置50は、プロセッサ51とメモリ52とを有するコンピュータで構成される。コンピュータは、図1に示されたようなパーソナルコンピュータであってもよいし、スマートフォンやタブレットなどの携帯型のコンピュータであってもよい。
【0081】
また、この例では処理装置50は検出装置60とは異なる装置であるものとしているが、検出装置60と一体型であってもよい。その場合、処理装置50もまた、ウェアラブルな装置として手首などに装着されてもよい。
【0082】
処理装置50には、出力装置が接続されている。出力装置は、処理装置50における処理の結果を出力可能な装置であって、一例としてディスプレイである。
【0083】
メモリ52は、一次記憶装置であってもよいし、二次記憶装置であってもよい。メモリ52は、プロセッサ51によって実行されるコンピュータプログラム521を記憶している。また、メモリ52は、脈波波形の変形とデータとの対応関係を記憶する第1の対応記憶部523と、データとメッセージとの対応関係を記憶する第2の対応記憶部524とを含む。
【0084】
また、メモリ52は、脈波波形の変形を検出する基準として用いる波形モデルを記憶する波形モデル記憶部522を含む。波形モデルは、一般的なヒトの脈波の波形形状であってもよいし、データが重畳されていない、つまり、処理の対象とする脈波の検出とは異なるタイミングに検出された脈波の波形形状であってもよい。一例として、後述するデータ受信の処理を実行する前にヒトSのデータが重畳されていない脈波を検出し、その波形形状を波形モデルとして波形モデル記憶部522に記憶しておいてもよい。
【0085】
処理装置50は、無線通信を行うための通信装置53をさらに有する。通信装置53は、検出装置60からの検出結果を受信し、プロセッサ51に入力する。プロセッサ51は、コンピュータプログラム521を実行することで検出結果を用いた処理を実行する。処理は、検出された脈波の波形形状に基づいて、波形形状に応じたデータを識別する処理を含む。
【0086】
詳しくは、プロセッサ51は、コンピュータプログラム521を実行することによって変形検出処理511を実行する。変形検出処理511は、検出装置60からの検出結果より脈波の波形形状を識別する処理を含む。さらに、変形検出処理511は、脈波の波形形状と、波形モデル記憶部522に記憶されている波形モデルとを比較することを含む。
【0087】
波形モデルは、例えば、図6の通常波形W1である。そして、図6の送信時波形W2が検出された脈波の波形形状として識別される。変形検出処理511でプロセッサ51は、波形W1,W2を比較することによって、変形A,B,Cを検出する。
【0088】
具体的に、変形検出処理511においてプロセッサ51は、検出された脈波波形について波形モデルとの、血圧値、駆出時間、及び、ピーク検出間隔、のうちの少なくとも1つを比較する。すなわち、図6の通常波形W1をモデル波形、送信時波形W2を測定された波形とすると、波形W2のピークP1-2の血圧値v2と波形W1のピークP1-1の血圧値v1とを比較することで、ピーク低下変化である変形Aを検出する。また、波形W2の駆出時間ET2と波形W1の駆出時間ET1とを比較することで、駆出時間変化である変形Bを検出する。また、波形W2の脈波間隔TP2と波形W1の脈波間隔TP1とを比較することで、脈波間隔変化である変形Cを検出する。
【0089】
プロセッサ51は、コンピュータプログラム521を実行することによってデータ識別処理512を実行する。データ識別処理512は、検出された脈波の波形形状の波形モデルからの変形から、伝送されたデータを識別する処理である。
【0090】
データ識別処理512において、プロセッサ51は第1の対応記憶部523を参照して、図8に示されたメッセージとデータとの対応関係を用いる。すなわち、図8を参照して、第1の対応記憶部523には、変形の種類と対応するデータとが予め規定されている。
【0091】
図8の対応関係は、図4の対応関係に関連したものである。すなわち、図4に規定された送信動作と図8の変形とが対応しているため、送信動作を対応する変形と置き換えることで、図8の対応関係は図4の対応関係と同じとなる。つまり、データ送信システム100で脈波波形にデータを重畳することを暗号化ととらえると、図8の対応関係を用いて脈波波形からデータを取り出すことは復号化の関係となる。
【0092】
図8の例では、変形の種類として「A」「B」「C」の表記で変形A,B,Cが表されている。「AAA」と表記された変形は、脈波波形の3拍連続して変形Aが検出された場合を表しており、その場合の対応するデータとしてデータ「111」が規定されている。なお、図8の示された変形の種類や対応のさせ方は一例に過ぎない。
【0093】
データ識別処理512でプロセッサ51は、第1の対応記憶部523に記憶されている対応関係から、変形検出処理511で検出された変形に対応するデータを読み出すことで、送信されたデータを識別する。つまり、脈波波形に重畳されたデータを取り出す。
【0094】
プロセッサ51は、コンピュータプログラム521を実行することによってメッセージ識別処理513を実行する。メッセージ識別処理513は、識別されたデータからメッセージを識別する処理である。
【0095】
メッセージ識別処理513において、プロセッサ51は第2の対応記憶部524を参照して、図9に示されたデータとメッセージとの対応関係を用いる。すなわち、図9を参照して、第2の対応記憶部524には、メデータと対応するッセージとが予め規定されている。図9の対応関係は、図3の対応関係と同じものである。
【0096】
メッセージ識別処理513でプロセッサ51は、第2の対応記憶部524に記憶されている対応関係から入力されたデータに対応するメッセージを読み出すことで、伝送されたデータに対応したメッセージを識別する。
【0097】
プロセッサ51は、コンピュータプログラム521を実行することによって表示制御処理514を実行する。表示制御処理514は、メッセージ識別処理513によって識別されたメッセージを、ディスプレイ70で表示させる処理である。表示制御処理514は、メッセージ識別処理513によって識別されたメッセージを表示させるための画面データを生成し、表示を指示する制御信号とともに通信装置53に渡し、ディスプレイ70に送信される処理を含む。これにより、データ送信システム100によって脈波に重畳されて送信されたデータから得られたメッセージがディスプレイ70に表示される。
【0098】
図10のフローチャートを用いて、データ受信システム200で行われるデータ受信方法について説明する。図10のフローチャートで示された処理は、処理装置50のプロセッサ51がコンピュータプログラム521を読み出して実行することによって実現される処理の流れの一例を表している。処理は、一例として、図示しない操作部によってコンピュータプログラム521の実行が指示されることによって開始される。例えば、コンピュータプログラム521であるアプリケーションの起動が指示されることによって開始される。
【0099】
図10を参照して、処理を開始すると、プロセッサ51は検出装置6からの検出結果の受信を待機する。検出装置6から検出結果を受信すると(ステップS201でYES)、プロセッサ51は、検出結果から脈波の波形形状を識別する。そして、波形モデル記憶部522に記憶されている波形モデルと比較することによって、検出された脈波の波形形状の、波形モデルからの変形を識別する(ステップS203)。
【0100】
次に、プロセッサ51は、第1の対応記憶部523の変形とデータとの対応関係を参照して、識別された変形に対応したデータを識別する(ステップS205)。さらに、プロセッサ51は、第2の対応記憶部524のデータとメッセージとの対応関係を参照して、ステップS205で識別したデータに対応するメッセージを識別する(ステップS207)。
【0101】
プロセッサ51は、識別されたメッセージをディスプレイ70に表示させるための表示データを生成し(ステップS209)、表示データとともに表示を指示するための制御信号を通信装置53に渡し、ディスプレイ70に送信させる(ステップS211)。これにより、検出された脈波から得られたメッセージがディスプレイ70に表示される。
【0102】
プロセッサ51は、以上の処理をデータ受信の終了まで繰り返し行う(ステップS213でNO)。これにより、検出装置60で検出された脈波から順次データが取り出され、対応するメッセージがディスプレイ70に表示される。
【0103】
データ受信の終了は、一例として、図示しない操作部によって指示されてもよいし、一定期間、検出結果が受信されないと終了と判定されてもよい。データ受信が終了すると(ステップS213でYES)、プロセッサ51は、一連の処理を終了する。
【0104】
以上の処理によって、データ伝送システム1では、脈波の波形形状を利用してデータの伝送を行うことができる。脈波の伝播は生体の生命活動を利用するものであり、電気的な通信路を必要としない。そのため、このデータ伝送方法では、電気的な通信路がない場合であってもデータの伝送を実現できる。
【0105】
また、脈波の波形形状を用いているため、外部からデータの伝送が察知されにくい。そのため、外部に伝送を秘匿したい場合などに好適に用いることができる。
【0106】
<3.付記>
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0107】
1 :データ伝送システム
6 :検出装置
10 :制御装置
11 :プロセッサ
12 :メモリ
13 :通信装置
20 :駆動装置
21 :第1の駆動部
22 :通信部
23 :第2の駆動部
23A :ベルト
30 :入力部
50 :処理装置
51 :プロセッサ
52 :メモリ
53 :通信装置
60 :検出装置
61 :検出部
62 :通信部
70 :ディスプレイ
100 :データ送信システム
111 :データ識別処理
112 :動作識別処理
113 :移動制御処理
114 :駆動制御処理
121 :コンピュータプログラム
122 :第1の対応記憶部
123 :第2の対応記憶部
200 :データ受信システム
211 :カフ
212 :調整部
213 :エアチューブ
511 :変形検出処理
512 :データ識別処理
513 :メッセージ識別処理
514 :表示制御処理
521 :コンピュータプログラム
522 :波形モデル記憶部
523 :第1の対応記憶部
524 :第2の対応記憶部
A :変形
B :変形
C :変形
ET1 :駆出時間
ET2 :駆出時間
P1-1 :ピーク
P1-2 :ピーク
P2 :立ち上がり点
P3-1 :切痕
P3-2 :切痕
P4-1 :ピーク
P4-2 :ピーク
P5-1 :ピーク
P5-2 :ピーク
Ph :ホーム位置
Ps :送信位置
S :ヒト
T :血管
TP1 :脈波間隔
TP2 :脈波間隔
W1 :波形
W2 :波形
v1 :血圧値
v2 :血圧値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10