(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】無線通信装置、無線通信方式及び無線通信プログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 74/00 20090101AFI20240823BHJP
H04W 28/04 20090101ALI20240823BHJP
H04W 28/18 20090101ALI20240823BHJP
【FI】
H04W74/00
H04W28/04
H04W28/18 110
(21)【出願番号】P 2020135290
(22)【出願日】2020-08-07
【審査請求日】2023-07-04
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、総務省、電波資源拡大のための研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】大須賀 徹
(72)【発明者】
【氏名】板谷 聡子
(72)【発明者】
【氏名】児島 史秀
【審査官】岡本 正紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/038127(WO,A1)
【文献】特開2016-191248(JP,A)
【文献】国際公開第2011/093123(WO,A1)
【文献】特開2007-60625(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線ネットワークを介してデータ通信を行う無線通信装置であって、
前記無線ネットワークを介して送信データを送信する送信装置及び受信データを受信する受信装置を有する送受信部と、
通信中のデータに発生するビットエラーを含む訂正可能なエラーに対し、データを再送することなく前記エラーを訂正可能なように、データ送信においては前記送信データの符号化処理を行い、データ受信においては前記受信データの復号化処理を行う誤り訂正部と、
前記誤り訂正部によって前記エラーが訂正できたか否かを含む前記無線ネットワークを介したデータ通信の成否及び前記無線ネットワークの電波環境を測定した結果の少なくとも1つに基づいて、周期的に発生するノイズを含む通信障害要素の発生タイミングと前記通信障害要素の継続時間とを含んだノイズ発生パターンを推定するノイズ推定部と、
前記ノイズ発生パターンに基づいて、前記無線ネットワークにデータを送信しても受信側装置に前記送信データが正常に届かない時間を設定し、前記送信データが正常に届かない時間の間は、前記送受信部の前記送信装置に前記無線ネットワークへの前記送信データの送信を待機させる送信待機時間を設定する送信待機時間設定部と、
を備え
、
前記ノイズ推定部は
(e)前記送信データのうち、前記受信側装置に正常に届かなかった数又は割合
(f)前記受信データのうち、前記送受信部が正常に受信できなかった数又は割合
(g)前記電波環境の測定において観測された信号強度が予め定められた閾値以上であった中で、前記送受信部がデータを送受信していた場合を除いた回数又は割合
(h)前記電波環境の測定において観測されたチャネル使用時間が予め定められた閾値以上であった中で、前記送受信部がデータを送受信していた場合を除いた時間又は割合
の少なくとも1つの値が予め定められた閾値以上であった場合をもって前記通信障害要素が発生したと検知し、
予め定められた時間間隔を周期として区切り、前記区切られた周期に対して、
前記区切られた周期中の、ある周期において、このある周期でのノイズ発生パターンでは前記通信障害要素が発生していないと推定された第1時間帯と、前記通信障害要素が発生したと推定された第2時間帯とを記憶し、
前記区切られた周期中の、前記ある周期以外で予め定められた回数以上連続した周期において、これらの前記第1時間帯と、前記第2時間帯とを記憶し、
前記連続した周期でのノイズ発生パターンでは前記第1時間帯と記憶された時間帯のうち、前記ある周期でのノイズ発生パターンでは前記第2時間帯と記憶された場合に、前記時間帯が前記第2時間帯に含まれるように、前記ノイズ発生パターンを更新し、
前記連続した周期でのノイズ発生パターンでは前記第2時間帯と記憶された時間帯のうち、前記ある周期でのノイズ発生パターンでは前記第1時間帯と記憶された場合に、前記時間帯が前記第1時間帯に徐々に含まれるように、予め定められた時間又は割合で前記第2時間帯を前記第1時間帯に変更するように、前記ノイズ発生パターンを更新すること
を特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記ノイズ推定部は、
前記ノイズ発生パターンにおいて、前記通信障害要素が発生したと推定された前記第2時間帯が一定のタイミング及び一定の継続時間に収束するように制御する仕組みを、さらに備えること
を特徴とする請求項
1記載の無線通信装置。
【請求項3】
無線ネットワークを介してデータ通信を行う無線通信装置であって、
前記無線ネットワークを介して送信データを送信する送信装置及び受信データを受信する受信装置を有する送受信部と、
通信中のデータに発生するビットエラーを含む訂正可能なエラーに対し、データを再送することなく前記エラーを訂正可能なように、データ送信においては前記送信データの符号化処理を行い、データ受信においては前記受信データの復号化処理を行う誤り訂正部と、
前記誤り訂正部によって前記エラーが訂正できたか否かを含む前記無線ネットワークを介したデータ通信の成否及び前記無線ネットワークの電波環境を測定した結果の少なくとも1つに基づいて、周期的に発生するノイズを含む通信障害要素の発生タイミングと前記通信障害要素の継続時間とを含んだノイズ発生パターンを推定するノイズ推定部と、
前記ノイズ発生パターンに基づいて、前記無線ネットワークにデータを送信しても受信側装置に前記送信データが正常に届かない時間を設定し、前記送信データが正常に届かない時間の間は、前記送受信部の前記送信装置に前記無線ネットワークへの前記送信データの送信を待機させる送信待機時間を設定する送信待機時間設定部と、
を備え
、
前記ノイズ推定部は、
(a)前記送信データのうち、前記受信側装置に正常に届かなかった数又は割合
(b)前記受信データのうち、前記送受信部が正常に受信できなかった数又は割合
(c)前記電波環境の測定において観測された信号強度が予め定められた閾値以上であった中で、前記送受信部がデータを送受信していた場合を除いた回数又は割合
(d)前記電波環境の測定において観測されたチャネル使用時間が予め定められた閾値以上であった中で、前記送受信部がデータを送受信していた場合を除いた時間又は割合
の少なくとも1つの値が予め定められた閾値以上であった場合をもって前記通信障害要素が発生したと検知し、
前記通信障害要素が発生したこと又は前記通信障害要素の値を、前記通信障害要素が発生した時刻とともに時系列情報として記憶し、
さらに、
予め定められた時間間隔を周期として区切り、前記周期ごとに同じ前記ノイズ発生パターンが繰り返されることを前提条件とし、前記時系列情報に基づいて、前記通信障害要素の発生をモデル化して前記ノイズ発生パターンを推定すること
を特徴とする無線通信装置。
【請求項4】
無線ネットワークを介してデータ通信を行う無線通信装置であって、
前記無線ネットワークを介して送信データを送信する送信装置及び受信データを受信する受信装置を有する送受信部と、
通信中のデータに発生するビットエラーを含む訂正可能なエラーに対し、データを再送することなく前記エラーを訂正可能なように、データ送信においては前記送信データの符号化処理を行い、データ受信においては前記受信データの復号化処理を行う誤り訂正部と、
前記誤り訂正部によって前記エラーが訂正できたか否かを含む前記無線ネットワークを介したデータ通信の成否及び前記無線ネットワークの電波環境を測定した結果の少なくとも1つに基づいて、周期的に発生するノイズを含む通信障害要素の発生タイミングと前記通信障害要素の継続時間とを含んだノイズ発生パターンを推定するノイズ推定部と、
前記ノイズ発生パターンに基づいて、前記無線ネットワークにデータを送信しても受信側装置に前記送信データが正常に届かない時間を設定し、前記送信データが正常に届かない時間の間は、前記送受信部の前記送信装置に前記無線ネットワークへの前記送信データの送信を待機させる送信待機時間を設定する送信待機時間設定部と、
を備
え、
前記ノイズ推定部によって推定された前記ノイズ発生パターンにおいて、前記通信障害
要素が発生したと推定された時間帯に対し、
(i)前記推定された時間帯における前記ノイズの強さ又は頻度の情報
(j)前記推定された時間帯の時間幅
(k)前記推定された時間帯の近隣の時間帯又は他の周期の同じ時間帯における通信スループット及びデータレートを含む無線通信に係る情報
の少なくとも1つに基づいて、
前記送信待機時間設定部に、前記推定された時間帯を前記送信待機時間に設定するか又は前記誤り訂正部に誤り訂正の符号化率を増加させるかを決定するノイズ対応方法決定部
を、さらに備えること
を特徴とする無線通信装置。
【請求項5】
無線ネットワークを介してデータ通信を行う無線通信方式であって、
通信中のデータに発生するビットエラーを含む訂正可能なエラーに対し、データを再送することなく前記エラーを訂正可能なように、データ送信においては送信データの符号化処理を行い、データ受信においては受信データの復号化処理を行い、
前記エラーが訂正できたか否かを含む前記無線ネットワークを介したデータ通信の成否及び前記無線ネットワークの電波環境を測定した結果の少なくとも1つに基づいて、周期的に発生するノイズを含む通信障害要素の発生タイミングと前記通信障害要素の継続時間とを含んだノイズ発生パターンを推定し、
前記ノイズ発生パターンに基づいて、前記無線ネットワークにデータを送信しても受信側装置に前記送信データが正常に届かない時間を設定し、前記送信データが正常に届かない時間の間は、
送信側装置から前記無線ネットワークへの前記送信データの送信を待機させ
、
前記ノイズ発生パターンの推定では、
(e)前記送信データのうち、前記受信側装置に正常に届かなかった数又は割合
(f)前記受信データのうち、前記送受信装置が正常に受信できなかった数又は割合
(g)前記電波環境の測定において観測された信号強度が予め定められた閾値以上であった中で、前記送受信装置がデータを送受信していた場合を除いた回数又は割合
(h)前記電波環境の測定において観測されたチャネル使用時間が予め定められた閾値以上であった中で、前記送受信装置がデータを送受信していた場合を除いた時間又は割合
の少なくとも1つの値が予め定められた閾値以上であった場合をもって前記通信障害要素が発生したと検知し、
予め定められた時間間隔を周期として区切り、前記区切られた周期に対して、
前記区切られた周期中の、ある周期において、このある周期でのノイズ発生パターンでは前記通信障害要素が発生していないと推定された第1時間帯と、前記通信障害要素が発生したと推定された第2時間帯とを記憶し、
前記区切られた周期中の、前記ある周期以外で予め定められた回数以上連続した周期において、これらの前記第1時間帯と、前記第2時間帯とを記憶し、
前記連続した周期でのノイズ発生パターンでは前記第1時間帯と記憶された時間帯のうち、前記ある周期でのノイズ発生パターンでは前記第2時間帯と記憶された場合に、前記時間帯が前記第2時間帯に含まれるように、前記ノイズ発生パターンを更新し、
前記連続した周期でのノイズ発生パターンでは前記第2時間帯と記憶された時間帯のうち、前記ある周期でのノイズ発生パターンでは前記第1時間帯と記憶された場合に、前記時間帯が前記第1時間帯に徐々に含まれるように、予め定められた時間又は割合で前記第2時間帯を前記第1時間帯に変更するように、前記ノイズ発生パターンを更新すること
を特徴とする無線通信方式。
【請求項6】
無線ネットワークを介してデータ通信を行う無線通信方式であって、
通信中のデータに発生するビットエラーを含む訂正可能なエラーに対し、データを再送することなく前記エラーを訂正可能なように、データ送信においては送信データの符号化処理を行い、データ受信においては受信データの復号化処理を行い、
前記エラーが訂正できたか否かを含む前記無線ネットワークを介したデータ通信の成否及び前記無線ネットワークの電波環境を測定した結果の少なくとも1つに基づいて、周期的に発生するノイズを含む通信障害要素の発生タイミングと前記通信障害要素の継続時間とを含んだノイズ発生パターンを推定し、
前記ノイズ発生パターンに基づいて、前記無線ネットワークにデータを送信しても受信側装置に前記送信データが正常に届かない時間を設定し、前記送信データが正常に届かない時間の間は、
送信側装置から前記無線ネットワークへの前記送信データの送信を待機させ
、
前記ノイズ発生パターンの推定では、
(a)前記送信データのうち、前記受信側装置に正常に届かなかった数又は割合
(b)前記受信データのうち、前記送受信部が正常に受信できなかった数又は割合
(c)前記電波環境の測定において観測された信号強度が予め定められた閾値以上であった中で、前記送受信部がデータを送受信していた場合を除いた回数又は割合
(d)前記電波環境の測定において観測されたチャネル使用時間が予め定められた閾値以上であった中で、前記送受信部がデータを送受信していた場合を除いた時間又は割合
の少なくとも1つの値が予め定められた閾値以上であった場合をもって前記通信障害要素が発生したと検知し、
前記通信障害要素が発生したこと又は前記通信障害要素の値を、前記通信障害要素が発生した時刻とともに時系列情報として記憶し、
さらに、
予め定められた時間間隔を周期として区切り、前記周期ごとに同じ前記ノイズ発生パターンが繰り返されることを前提条件とし、前記時系列情報に基づいて、前記通信障害要素の発生をモデル化して前記ノイズ発生パターンを推定すること
を特徴とする無線通信方式。
【請求項7】
無線ネットワークを介してデータ通信を行う無線通信プログラムであって、
通信中のデータに発生するビットエラーを含む訂正可能なエラーに対し、データを再送することなく前記エラーを訂正可能なように、データ送信においては送信データの符号化処理を行い、データ受信においては受信データの復号化処理を行う手順と、
前記エラーが訂正できたか否かを含む前記無線ネットワークを介したデータ通信の成否及び前記無線ネットワークの電波環境を測定した結果の少なくとも1つに基づいて、周期的に発生するノイズを含む通信障害要素の発生タイミングと前記通信障害要素の継続時間とを含んだノイズ発生パターンを推定する手順と、
前記ノイズ発生パターンに基づいて、前記無線ネットワークにデータを送信しても受信側装置に前記送信データが正常に届かない時間を設定し、前記送信データが正常に届かない時間の間は、
送信側装置から前記無線ネットワークへの前記送信データの送信を待機させる手順と、
を備え
、
前記ノイズ発生パターンの推定の手順は、
(e)前記送信データのうち、前記受信側装置に正常に届かなかった数又は割合
(f)前記受信データのうち、前記送受信装置が正常に受信できなかった数又は割合
(g)前記電波環境の測定において観測された信号強度が予め定められた閾値以上であった中で、前記送受信装置がデータを送受信していた場合を除いた回数又は割合
(h)前記電波環境の測定において観測されたチャネル使用時間が予め定められた閾値以上であった中で、前記送受信装置がデータを送受信していた場合を除いた時間又は割合
の少なくとも1つの値が予め定められた閾値以上であった場合をもって前記通信障害要素が発生したと検知し、
予め定められた時間間隔を周期として区切り、前記区切られた周期に対して、
前記区切られた周期中の、ある周期において、このある周期でのノイズ発生パターンでは前記通信障害要素が発生していないと推定された第1時間帯と、前記通信障害要素が発生したと推定された第2時間帯とを記憶し、
前記区切られた周期中の、前記ある周期以外で予め定められた回数以上連続した周期において、これらの前記第1時間帯と、前記第2時間帯とを記憶し、
前記連続した周期でのノイズ発生パターンでは前記第1時間帯と記憶された時間帯のうち、前記ある周期でのノイズ発生パターンでは前記第2時間帯と記憶された場合に、前記時間帯が前記第2時間帯に含まれるように、前記ノイズ発生パターンを更新し、
前記連続した周期でのノイズ発生パターンでは前記第2時間帯と記憶された時間帯のうち、前記ある周期でのノイズ発生パターンでは前記第1時間帯と記憶された場合に、前記時間帯が前記第1時間帯に徐々に含まれるように、予め定められた時間又は割合で前記第2時間帯を前記第1時間帯に変更するように、前記ノイズ発生パターンを更新する手順を含むこと
を特徴とする無線
通信プログラム。
【請求項8】
無線ネットワークを介してデータ通信を行う無線通信プログラムであって、
通信中のデータに発生するビットエラーを含む訂正可能なエラーに対し、データを再送することなく前記エラーを訂正可能なように、データ送信においては送信データの符号化処理を行い、データ受信においては受信データの復号化処理を行う手順と、
前記エラーが訂正できたか否かを含む前記無線ネットワークを介したデータ通信の成否及び前記無線ネットワークの電波環境を測定した結果の少なくとも1つに基づいて、周期的に発生するノイズを含む通信障害要素の発生タイミングと前記通信障害要素の継続時間とを含んだノイズ発生パターンを推定する手順と、
前記ノイズ発生パターンに基づいて、前記無線ネットワークにデータを送信しても受信側装置に前記送信データが正常に届かない時間を設定し、前記送信データが正常に届かない時間の間は、
送信側装置から前記無線ネットワークへの前記送信データの送信を待機させる手順と、
を備え
、
前記ノイズ発生パターンの推定の手順は、
(a)前記送信データのうち、前記受信側装置に正常に届かなかった数又は割合
(b)前記受信データのうち、前記送受信部が正常に受信できなかった数又は割合
(c)前記電波環境の測定において観測された信号強度が予め定められた閾値以上であった中で、前記送受信部がデータを送受信していた場合を除いた回数又は割合
(d)前記電波環境の測定において観測されたチャネル使用時間が予め定められた閾値以上であった中で、前記送受信部がデータを送受信していた場合を除いた時間又は割合
の少なくとも1つの値が予め定められた閾値以上であった場合をもって前記通信障害要素が発生したと検知し、
前記通信障害要素が発生したこと又は前記通信障害要素の値を、前記通信障害要素が発生した時刻とともに時系列情報として記憶し、
さらに、
予め定められた時間間隔を周期として区切り、前記周期ごとに同じ前記ノイズ発生パターンが繰り返されることを前提条件とし、前記時系列情報に基づいて、前記通信障害要素の発生をモデル化して前記ノイズ発生パターンを推定する手順を含むこと
を特徴とする無線
通信プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、無線通信装置、無線通信方式及び無線通信プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば製造現場では、工具等にセンサーを取り付けて情報を収集したり、AGV(Automated Guided Vehicle)を操作して部品を運搬したりすることで、生産性の向上が図られつつある。これらの工具やAGV等は人や物の移動にあわせて動くため、リアルタイムな情報収集や操作のためには無線通信が必要となる。
【0003】
また、製造現場では、機械等の動作等によってノイズが発生し、通信中のデータにエラーを発生させる等の悪影響を及ぼし、通信遅延等の無線通信のQoS(Quality of Service)要件を満たせなくなる、という事情がある。
【0004】
このような無線通信のQoS要件を満たせなくなる事情に対し、特許文献1、特許文献2及び非特許文献1に記載されるような技術が提供されている。
【0005】
特許文献1では、複数の無線通信が混在する環境で、各フローのトラフィック量に応じて無線資源を独占して良い時間を割り当てることで、複数のフローが干渉しあわないようにスケジューリングする技術が開示されている。
【0006】
非特許文献1では、通信する前に他の通信等が行われていないか確認し、信号強度が一定レベル以上の電波が飛んでいる場合は通信を待機することで、他の通信やノイズの影響を回避する仕様が開示されている。
【0007】
特許文献2では、受信信号強度が閾値を超えた電波をノイズと判定し、ノイズの発生時間と非発生時間を計測して、これが周期的に繰り返すという仮定のもとに、ノイズが発生していない間の通信で通信遅延を満たせるように通信レートを設定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2019-118050号公報
【文献】特開2018-019307号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】G. Bianchi, “Performance Analysis of the IEEE 802.11 Distributed Coordination Function,” IEEE Journal on Selected Areas in Communications, vol.18, no.3, pp.535-547, Mar. 2000.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここで、製造現場における通信やノイズには以下のような特徴がある。
(1)通信やノイズの発生には、基本的に完全な周期性はない。しかし、製造現場では、複数の生産工程がそれぞれタクトタイムを周期として連動する。このため、通信やノイズの発生に、ある程度の周期性を見込むことができる。
(2)製造現場では、無線通信に与える影響が軽度なノイズ(インバーターノイズ等)と、重度のノイズ(無線給電等)とが混在している。
【0011】
特許文献1に開示されている技術は、制御可能な複数のフローに対し、互いに干渉しあわないようにスケジューリングすることは可能である。しかし、ノイズは、通信と違ってその発生を制御できないため、スケジューリングできずに悪影響を及ぼす。このため、ノイズが発生する環境ではQoS要件を満たせない、という事情がある。
【0012】
また、非特許文献1に開示されている仕様は、ノイズが発生した際に干渉を回避することができる。しかし、通信しようとしているとき、他の通信やノイズが飛んでいたら通信しないという逐次的な制御である。このため、QoS要件を計画的に満たすことができない、という事情がある。
【0013】
また、特許文献2に開示されている技術は、
図7(a)に示すように、等間隔かつ同じ継続時間だけに発生するノイズNに対して、送信待機時間Wを等間隔かつ同じ継続時間に設定することで、ノイズNを回避して、例えば通信遅延を満たすように通信できる。そして、送信待機時間Wの間の期間を、通信可能な通信スロット時間Tとする。しかし、前述のように製造現場におけるノイズには、ある程度の周期性はあるものの、ノイズが発生する発生タイミング、ノイズが継続する継続時間は多様である。このため、
図7(b)に示すように、通信スロット時間Tに、ノイズN100及びN200がオーバーラップする干渉期間I0~I2が発生してQoSが悪化する、という事情がある。また、通信に影響を与えない軽度なノイズN300もある。軽度なノイズN300が発生した場合であっても通信を止めてしまうことになり、通信時間に無駄が発生して通信効率の向上を阻害する、という事情もある。
【0014】
この発明の実施形態は、通信障害要素が発生する無線環境下においても良好なQoS要件を、計画的かつ効率良く満たすことが可能な無線通信装置、無線通信方式及び無線通信プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明の第1態様に係る無線通信装置は、無線ネットワークを介してデータ通信を行う無線通信装置であって、前記無線ネットワークを介して送信データを送信する送信装置及び受信データを受信する受信装置を有する送受信部と、通信中のデータに発生するビットエラーを含む訂正可能なエラーに対し、データを再送することなく前記エラーを訂正可能なように、データ送信においては前記送信データの符号化処理を行い、データ受信においては前記受信データの復号化処理を行う誤り訂正部と、前記誤り訂正部によって前記エラーが訂正できたか否かを含む前記無線ネットワークを介したデータ通信の成否及び前記無線ネットワークの電波環境を測定した結果の少なくとも1つに基づいて、周期的に発生
するノイズを含む通信障害要素の発生タイミングと前記通信障害要素の継続時間とを含んだノイズ発生パターンを推定するノイズ推定部と、前記ノイズ発生パターンに基づいて、前記無線ネットワークにデータを送信しても受信側装置に前記送信データが正常に届かない時間を設定し、前記送信データが正常に届かない時間の間は、前記送受信部の前記送信装置に前記無線ネットワークへの前記送信データの送信を待機させる送信待機時間を設定する送信待機時間設定部と、を備え、前記ノイズ推定部は(e)前記送信データのうち、前記受信側装置に正常に届かなかった数又は割合(f)前記受信データのうち、前記送受信部が正常に受信できなかった数又は割合(g)前記電波環境の測定において観測された信号強度が予め定められた閾値以上であった中で、前記送受信部がデータを送受信していた場合を除いた回数又は割合(h)前記電波環境の測定において観測されたチャネル使用時間が予め定められた閾値以上であった中で、前記送受信部がデータを送受信していた場合を除いた時間又は割合の少なくとも1つの値が予め定められた閾値以上であった場合をもって前記通信障害要素が発生したと検知し、予め定められた時間間隔を周期として区切り、前記区切られた周期に対して、前記区切られた周期中の、ある周期において、このある周期でのノイズ発生パターンでは前記通信障害要素が発生していないと推定された第1時間帯と、前記通信障害要素が発生したと推定された第2時間帯とを記憶し、前記区切られた周期中の、前記ある周期以外で予め定められた回数以上連続した周期において、これらの前記第1時間帯と、前記第2時間帯とを記憶し、前記連続した周期でのノイズ発生パターンでは前記第1時間帯と記憶された時間帯のうち、前記ある周期でのノイズ発生パターンでは前記第2時間帯と記憶された場合に、前記時間帯が前記第2時間帯に含まれるように、前記ノイズ発生パターンを更新し、前記連続した周期でのノイズ発生パターンでは前記第2時間帯と記憶された時間帯のうち、前記ある周期でのノイズ発生パターンでは前記第1時間帯と記憶された場合に、前記時間帯が前記第1時間帯に徐々に含まれるように、予め定められた時間又は割合で前記第2時間帯を前記第1時間帯に変更するように、前記ノイズ発生パターンを更新することを特徴とする。
【0016】
この発明の第2態様に係る無線通信装置は、第1態様において、前記ノイズ推定部は、前記ノイズ発生パターンにおいて、前記通信障害要素が発生したと推定された前記第2時間帯が一定のタイミング及び一定の継続時間に収束するように制御する仕組みを、さらに備えることを特徴とする
【0017】
この発明の第3態様に係る無線通信装置は、無線ネットワークを介してデータ通信を行う無線通信装置であって、前記無線ネットワークを介して送信データを送信する送信装置及び受信データを受信する受信装置を有する送受信部と、通信中のデータに発生するビットエラーを含む訂正可能なエラーに対し、データを再送することなく前記エラーを訂正可能なように、データ送信においては前記送信データの符号化処理を行い、データ受信においては前記受信データの復号化処理を行う誤り訂正部と、前記誤り訂正部によって前記エラーが訂正できたか否かを含む前記無線ネットワークを介したデータ通信の成否及び前記無線ネットワークの電波環境を測定した結果の少なくとも1つに基づいて、周期的に発生するノイズを含む通信障害要素の発生タイミングと前記通信障害要素の継続時間とを含んだノイズ発生パターンを推定するノイズ推定部と、前記ノイズ発生パターンに基づいて、前記無線ネットワークにデータを送信しても受信側装置に前記送信データが正常に届かない時間を設定し、前記送信データが正常に届かない時間の間は、前記送受信部の前記送信装置に前記無線ネットワークへの前記送信データの送信を待機させる送信待機時間を設定する送信待機時間設定部と、を備え、前記ノイズ推定部は、(a)前記送信データのうち、前記受信側装置に正常に届かなかった数又は割合(b)前記受信データのうち、前記送受信部が正常に受信できなかった数又は割合(c)前記電波環境の測定において観測された信号強度が予め定められた閾値以上であった中で、前記送受信部がデータを送受信していた場合を除いた回数又は割合(d)前記電波環境の測定において観測されたチャネル使用時間が予め定められた閾値以上であった中で、前記送受信部がデータを送受信していた場合を除いた時間又は割合の少なくとも1つの値が予め定められた閾値以上であった場合をもって前記通信障害要素が発生したと検知し、前記通信障害要素が発生したこと又は前記通信障害要素の値を、前記通信障害要素が発生した時刻とともに時系列情報として記憶し、さらに、予め定められた時間間隔を周期として区切り、前記周期ごとに同じ前記ノイズ発生パターンが繰り返されることを前提条件とし、前記時系列情報に基づいて、前記通信障害要素の発生をモデル化して前記ノイズ発生パターンを推定することを特徴とする。
【0018】
この発明の第4態様に係る無線通信装置は、無線ネットワークを介してデータ通信を行う無線通信装置であって、前記無線ネットワークを介して送信データを送信する送信装置及び受信データを受信する受信装置を有する送受信部と、通信中のデータに発生するビットエラーを含む訂正可能なエラーに対し、データを再送することなく前記エラーを訂正可能なように、データ送信においては前記送信データの符号化処理を行い、データ受信においては前記受信データの復号化処理を行う誤り訂正部と、前記誤り訂正部によって前記エラーが訂正できたか否かを含む前記無線ネットワークを介したデータ通信の成否及び前記無線ネットワークの電波環境を測定した結果の少なくとも1つに基づいて、周期的に発生するノイズを含む通信障害要素の発生タイミングと前記通信障害要素の継続時間とを含んだノイズ発生パターンを推定するノイズ推定部と、前記ノイズ発生パターンに基づいて、前記無線ネットワークにデータを送信しても受信側装置に前記送信データが正常に届かない時間を設定し、前記送信データが正常に届かない時間の間は、前記送受信部の前記送信装置に前記無線ネットワークへの前記送信データの送信を待機させる送信待機時間を設定する送信待機時間設定部と、を備え、前記ノイズ推定部によって推定された前記ノイズ発生パターンにおいて、前記通信障害要素が発生したと推定された時間帯に対し、(i)前記推定された時間帯における前記ノイズの強さ又は頻度の情報(j)前記推定された時間帯の時間幅(k)前記推定された時間帯の近隣の時間帯又は他の周期の同じ時間帯における通信スループット及びデータレートを含む無線通信に係る情報の少なくとも1つに基づいて、前記送信待機時間設定部に、前記推定された時間帯を前記送信待機時間に設定するか又は前記誤り訂正部に誤り訂正の符号化率を増加させるかを決定するノイズ対応方法決定部を、さらに備えることを特徴とする。
【0021】
この発明の第5態様に係る無線通信方式は、無線ネットワークを介してデータ通信を行う無線通信方式であって通信中のデータに発生するビットエラーを含む訂正可能なエラーに対し、データを再送することなく前記エラーを訂正可能なように、データ送信においては送信データの符号化処理を行い、データ受信においては受信データの復号化処理を行い、前記エラーが訂正できたか否かを含む前記無線ネットワークを介したデータ通信の成否及び前記無線ネットワークの電波環境を測定した結果の少なくとも1つに基づいて、周期的に発生するノイズを含む通信障害要素の発生タイミングと前記通信障害要素の継続時間とを含んだノイズ発生パターンを推定し、前記ノイズ発生パターンに基づいて、前記無線ネットワークにデータを送信しても受信側装置に前記送信データが正常に届かない時間を設定し、前記送信データが正常に届かない時間の間は、送信側装置から前記無線ネットワークへの前記送信データの送信を待機させ、前記ノイズ発生パターンの推定では、(e)前記送信データのうち、前記受信側装置に正常に届かなかった数又は割合(f)前記受信データのうち、前記送受信装置が正常に受信できなかった数又は割合(g)前記電波環境の測定において観測された信号強度が予め定められた閾値以上であった中で、前記送受信装置がデータを送受信していた場合を除いた回数又は割合(h)前記電波環境の測定において観測されたチャネル使用時間が予め定められた閾値以上であった中で、前記送受信装置がデータを送受信していた場合を除いた時間又は割合の少なくとも1つの値が予め定められた閾値以上であった場合をもって前記通信障害要素が発生したと検知し、予め定められた時間間隔を周期として区切り、前記区切られた周期に対して、前記区切られた周期中の、ある周期において、このある周期でのノイズ発生パターンでは前記通信障害要素が発生していないと推定された第1時間帯と、前記通信障害要素が発生したと推定された第2時間帯とを記憶し、前記区切られた周期中の、前記ある周期以外で予め定められた回数以上連続した周期において、これらの前記第1時間帯と、前記第2時間帯とを記憶し、前記連続した周期でのノイズ発生パターンでは前記第1時間帯と記憶された時間帯のうち、前記ある周期でのノイズ発生パターンでは前記第2時間帯と記憶された場合に、前記時間帯が前記第2時間帯に含まれるように、前記ノイズ発生パターンを更新し、前記連続した周期でのノイズ発生パターンでは前記第2時間帯と記憶された時間帯のうち、前記ある周期でのノイズ発生パターンでは前記第1時間帯と記憶された場合に、前記時間帯が前記第1時間帯に徐々に含まれるように、予め定められた時間又は割合で前記第2時間帯を前記第1時間帯に変更するように、前記ノイズ発生パターンを更新することを特徴とする。
この発明の第6態様に係る無線通信方式は、通信中のデータに発生するビットエラーを含む訂正可能なエラーに対し、データを再送することなく前記エラーを訂正可能なように、データ送信においては送信データの符号化処理を行い、データ受信においては受信データの復号化処理を行い、前記エラーが訂正できたか否かを含む前記無線ネットワークを介したデータ通信の成否及び前記無線ネットワークの電波環境を測定した結果の少なくとも1つに基づいて、周期的に発生するノイズを含む通信障害要素の発生タイミングと前記通信障害要素の継続時間とを含んだノイズ発生パターンを推定し、前記ノイズ発生パターンに基づいて、前記無線ネットワークにデータを送信しても受信側装置に前記送信データが正常に届かない時間を設定し、前記送信データが正常に届かない時間の間は、送信側装置から前記無線ネットワークへの前記送信データの送信を待機させ、前記ノイズ発生パターンの推定では、(a)前記送信データのうち、前記受信側装置に正常に届かなかった数又は割合(b)前記受信データのうち、前記送受信部が正常に受信できなかった数又は割合(c)前記電波環境の測定において観測された信号強度が予め定められた閾値以上であった中で、前記送受信部がデータを送受信していた場合を除いた回数又は割合(d)前記電波環境の測定において観測されたチャネル使用時間が予め定められた閾値以上であった中で、前記送受信部がデータを送受信していた場合を除いた時間又は割合の少なくとも1つの値が予め定められた閾値以上であった場合をもって前記通信障害要素が発生したと検知し、前記通信障害要素が発生したこと又は前記通信障害要素の値を、前記通信障害要素が発生した時刻とともに時系列情報として記憶し、さらに、予め定められた時間間隔を周期として区切り、前記周期ごとに同じ前記ノイズ発生パターンが繰り返されることを前提条件とし、前記時系列情報に基づいて、前記通信障害要素の発生をモデル化して前記ノイズ発生パターンを推定することを特徴とする。
【0022】
この発明の第7態様に係る無線通信プログラムは、無線ネットワークを介してデータ通
信を行う無線通信プログラムであって、無線ネットワークを介してデータ通信を行う無線通信方式であって、通信中のデータに発生するビットエラーを含む訂正可能なエラーに対し、データを再送することなく前記エラーを訂正可能なように、データ送信においては送信データの符号化処理を行い、データ受信においては受信データの復号化処理を行う手順と、前記エラーが訂正できたか否かを含む前記無線ネットワークを介したデータ通信の成否及び前記無線ネットワークの電波環境を測定した結果の少なくとも1つに基づいて、周期的に発生するノイズを含む通信障害要素の発生タイミングと前記通信障害要素の継続時間とを含んだノイズ発生パターンを推定する手順と、前記ノイズ発生パターンに基づいて、前記無線ネットワークにデータを送信しても受信側装置に前記送信データが正常に届かない時間を設定し、前記送信データが正常に届かない時間の間は、前記無線ネットワークへの前記送信データの送信を待機させる手順と、を備え、前記ノイズ発生パターンの推定の手順は、(e)前記送信データのうち、前記受信側装置に正常に届かなかった数又は割合(f)前記受信データのうち、前記送受信装置が正常に受信できなかった数又は割合(g)前記電波環境の測定において観測された信号強度が予め定められた閾値以上であった中で、前記送受信装置がデータを送受信していた場合を除いた回数又は割合(h)前記電波環境の測定において観測されたチャネル使用時間が予め定められた閾値以上であった中で、前記送受信装置がデータを送受信していた場合を除いた時間又は割合の少なくとも1つの値が予め定められた閾値以上であった場合をもって前記通信障害要素が発生したと検知し、予め定められた時間間隔を周期として区切り、前記区切られた周期に対して、前記区切られた周期中の、ある周期において、このある周期でのノイズ発生パターンでは前記通信障害要素が発生していないと推定された第1時間帯と、前記通信障害要素が発生したと推定された第2時間帯とを記憶し、前記区切られた周期中の、前記ある周期以外で予め定められた回数以上連続した周期において、これらの前記第1時間帯と、前記第2時間帯とを記憶し、前記連続した周期でのノイズ発生パターンでは前記第1時間帯と記憶された時間帯のうち、前記ある周期でのノイズ発生パターンでは前記第2時間帯と記憶された場合に、前記時間帯が前記第2時間帯に含まれるように、前記ノイズ発生パターンを更新し、前記連続した周期でのノイズ発生パターンでは前記第2時間帯と記憶された時間帯のうち、前記ある周期でのノイズ発生パターンでは前記第1時間帯と記憶された場合に、前記時間帯が前記第1時間帯に徐々に含まれるように、予め定められた時間又は割合で前記第2時間帯を前記第1時間帯に変更するように、前記ノイズ発生パターンを更新する手順を含むことを特徴とする。
この発明の第8態様に係る無線通信プログラムは、無線ネットワークを介してデータ通
信を行う無線通信プログラムであって、通信中のデータに発生するビットエラーを含む訂正可能なエラーに対し、データを再送することなく前記エラーを訂正可能なように、データ送信においては送信データの符号化処理を行い、データ受信においては受信データの復号化処理を行う手順と、前記エラーが訂正できたか否かを含む前記無線ネットワークを介したデータ通信の成否及び前記無線ネットワークの電波環境を測定した結果の少なくとも1つに基づいて、周期的に発生するノイズを含む通信障害要素の発生タイミングと前記通信障害要素の継続時間とを含んだノイズ発生パターンを推定する手順と、前記ノイズ発生パターンに基づいて、前記無線ネットワークにデータを送信しても受信側装置に前記送信データが正常に届かない時間を設定し、前記送信データが正常に届かない時間の間は、送信側装置から前記無線ネットワークへの前記送信データの送信を待機させる手順と、を備え、前記ノイズ発生パターンの推定の手順は、(a)前記送信データのうち、前記受信側装置に正常に届かなかった数又は割合(b)前記受信データのうち、前記送受信部が正常に受信できなかった数又は割合(c)前記電波環境の測定において観測された信号強度が予め定められた閾値以上であった中で、前記送受信部がデータを送受信していた場合を除いた回数又は割合(d)前記電波環境の測定において観測されたチャネル使用時間が予め定められた閾値以上であった中で、前記送受信部がデータを送受信していた場合を除いた時間又は割合の少なくとも1つの値が予め定められた閾値以上であった場合をもって前記通信障害要素が発生したと検知し、前記通信障害要素が発生したこと又は前記通信障害要素の値を、前記通信障害要素が発生した時刻とともに時系列情報として記憶し、さらに、予め定められた時間間隔を周期として区切り、前記周期ごとに同じ前記ノイズ発生パターンが繰り返されることを前提条件とし、前記時系列情報に基づいて、前記通信障害要素の発生をモデル化して前記ノイズ発生パターンを推定する手順を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
この発明の第1態様~第8態様によれば、通信障害要素が発生する無線環境下においても良好なQoS要件を、計画的かつ効率良く満たすことが可能な無線通信装置、無線通信方式及び無線通信プログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る無線通信方式を実行可能な無線通信システムの基本構成の一例を示す模式ブロック図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る無線通信システムが適用された製造現場のイメージの一例を示す模式図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る無線通信方法の一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る無線通信方法によるデータ通信の一例を示すタイムチャートである。
【
図5】
図5(a)~
図5(c)は、第1実施形態に係る無線通信方法によるデータ通信の他例を示すタイムチャートである。
【
図6】第2実施形態に係る無線通信方法を実行可能な無線通信システムの基本構成の一例を示す模式ブロック図である。
【
図7】
図7(a)及び
図7(b)は、発明が解決しようとする課題を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、この発明の実施形態のいくつかを、図面を参照しながら説明する。各図において、共通する部分については共通する参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0026】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る無線通信方式(無線通信方法)を実行可能な無線通信システムの基本構成の一例を示す模式ブロック図である。
図2は、第1実施形態に係る無線通信システムが適用された製造現場のイメージの一例を示す模式図である。
【0027】
<無線通信システム100>
図1に示すように、第1実施形態に係る無線通信方法を実行可能な無線通信システム100は、無線ネットワーク3を介してデータ通信を行う複数の無線通信装置を含んで構成される。
図1には、基本的な一例として1つの第1無線通信装置1及び1つの第2無線通信装置2が示されている。なお、第1無線通信装置1は複数存在していても良く、第2無線通信装置2は複数存在していても良い。
【0028】
第1無線通信装置1は、例えばハードウェアとして送信側装置51に組み込まれる。送信側装置51の例は、無線通信システム100が適用される環境を製造現場とした場合、
図2に示すように、生産ツール(製造工具、製造装置等)51a、ロボット51b、無人搬送車(AGV:Automatic Guided Vehicle)51c、検査装置51d、監視カメラ(撮像装置)51e等である。
【0029】
第2無線通信装置2は、例えばハードウェアとして受信側装置52に組み込まれる。受信側装置52の例は、
図2に示すように、製造現場におけるアクセスポイント(AP)装置52a等である。
【0030】
なお、第1無線通信装置1は、送信側装置51が無線通信装置(既存無線通信装置)を有する場合、第1無線通信装置1が実行する無線通信フローをソフトウェア(無線通信コンピュータプログラム)として送信側装置51に組み込むことも可能である。第2無線通信装置2も同様である。これらの場合、既存無線通信装置が、第1無線通信装置1又は第2無線通信装置2と同様な無線通信装置として動作する。
【0031】
このように、発明の第1実施形態は、ハードウェア及びソフトウェアの双方で実施可能であるが、実施形態は、主としてハードウェアとして実施した場合を想定して説明する。
【0032】
<第1無線通信装置1>
図1に示すように、第1無線通信装置1は、第1送受信部11、第1誤り訂正部12、ノイズ推定部13、送信待機時間設定部14及び第1通信制御部15を含む。
【0033】
第1送受信部11は、データを無線にて送受信する。
【0034】
第1誤り訂正部12は、通信中のデータに発生するビットエラー等の訂正可能なエラーに対し、データを再送信することなく上記エラーを訂正可能なように、データ送信の場合には、例えば第1送受信部11の送信装置において送信データの符号化処理を行い、データ受信の場合には、例えば第1送受信部11の受信装置において受信データの復号化処理を行う。
【0035】
ノイズ推定部13は、第1誤り訂正部12によって上記エラーが訂正できたか否かを含む無線ネットワーク3を介したデータ通信の通信結果及び無線ネットワーク3の電波環境を測定した結果の少なくとも1つに基づいて、ノイズ発生パターンを推定する。ノイズ発生パターンは、例えば周期的に発生する通信障害要素の発生タイミングと通信障害要素の継続時間とを含む。通信障害要素の一例は、ノイズであり、通信障害要素は、少なくともノイズを含む。本明細書では、“通信障害要素”に関し、必要に応じてノイズ等と略称する。ここで、ノイズ推定部13は、第1誤り訂正部12によってビットエラー等を訂正できた場合には、送信側装置51にデータが正常に届いた又は送信側装置51が受信データとして正常に受信できたと判定し、ノイズ等の検知から除外する。
【0036】
この実施形態に係るノイズ推定部13は、例えば、
(a)送信データのうち、受信側装置52に正常に届かなかった数又は割合
(b)受信データのうち、第1送受信部11が正常に受信できなかった数又は割合
(c)電波環境の測定において観測された信号強度が予め定められた閾値以上であった中で、第1送受信部11がデータを送受信していた場合を除いた回数又は割合
(d)電波環境の測定において観測されたチャネル使用時間が予め定められた閾値以上であった中で、第1送受信部11がデータを送受信していた場合を除いた時間又は割合
の少なくとも1つの値が予め定められた閾値以上であった場合をもって通信障害要素が発生したと検知する。さらに、ノイズ推定部13は、通信障害要素が発生したこと又は通信障害要素の値を、通信障害要素が発生した時刻とともに時系列情報として記憶し、この時系列情報に基づいて、通信障害要素の発生をモデル化してノイズ発生パターンを推定する。
【0037】
さらに、この実施形態に係るノイズ推定部13は、例えば、予め定められた時間間隔を周期として区切り、これら区切られた周期ごとに同じノイズ発生パターンが繰り返されることを前提条件とし、上記時系列情報に基づいて、通信障害要素の発生をモデル化してノイズ発生パターンを推定するように構成することも可能である。モデル化する場合には、例えば、
・周期ごとに同じ時間帯で発生するノイズ等をノイズ発生パターンとして推定する
・周期ごとのノイズ等が発生したこと又はノイズ等の値の時系列情報を統計的に重ね合わせることでノイズ発生パターンを推定する
の少なくとも1つが利用されれば良い。
【0038】
送信待機時間設定部14は、ノイズ推定部13が推定したノイズ発生パターンに基づいて、ノイズ等の影響により、送信データが受信側装置52の受信装置にデータが正常に届かない時間(送信待機時間)を設定する。そして、送信待機時間設定部14は、送信待機時間の間は、送信側装置51のデータ送受信部に無線ネットワークへのデータ送信を待機させる。
【0039】
第1通信制御部15は、第1送受信部11におけるデータの送受信を制御する。データ送信時において、第1通信制御部15は、第1無線通信装置1から第2無線通信装置2へのデータ送信を、送信待機時間中は待機させる。そして、第1無線通信装置1から第2無線通信装置2へのデータ送信を、送信待機時間以外に設定されるデータ送信可能な通信スロット時間中に、実行する。
【0040】
<第2無線通信装置2>
図1に示すように、第2無線通信装置2は、第2送受信部21、第2誤り訂正部22お及び第2通信制御部25を含む。
【0041】
第2送受信部21は、データを無線にて送受信する。
【0042】
第2誤り訂正部22は、第1誤り訂正部12と同様に、上記ビットエラー等を訂正できるように、データ送信の場合には符号化処理を行い、データ受信の場合には復号化処理を行う。
【0043】
第2通信制御部25は、第2送受信部21におけるデータの送受信を制御する。
【0044】
<無線通信フロー(無線通信方法)>
図3は、第1実施形態に係る無線通信方法の一例を示すフローチャートである。
図4は、第1実施形態に係る無線通信方法によるデータ通信の一例を示すタイムチャートである。
【0045】
<<通信障害要素の発生パターンの推定>>
まず、
図3中のステップST1に示すように、無線ネットワーク3に周期的に発生するノイズ等の通信障害要素の発生パターンを推定する。ノイズ等の通信障害要素の発生パターンは、無線ネットワーク3を介したデータ通信の通信結果及び無線ネットワーク3の電波環境を測定した測定結果の少なくとも1つに基づく。これらの通信結果及び/又は測定結果は、例えば、第1送受信部11によって、実際にデータ送受信を行うことで得ることができる。
【0046】
ここで、通信障害要素は、例えば、無線利用環境に設定されたタクトタイムと連動して発生するものを含む。無線利用環境の一例は、例えば
図2に示した製造現場等である。例えば、製造現場では、複数の生産工程がそれぞれ、タクトタイムを周期として連動する。このため、ノイズ等の発生に、ある程度の周期性を見込むことができる。第1実施形態に係る無線通信方法では、例えば、タクトタイムと連動して発生するような通信障害要素に着目し、この通信障害要素の発生タイミング及び継続時間に周期性が有るか否かを探索する。通信障害要素が発生するタイミング、通信障害要素が継続する継続時間等のパターン(ノイズ発生パターン)を、ノイズ推定部13において推定する。
【0047】
<<軽度な通信障害要素の除外>>
次に、
図3中のステップST2に示すように、通信障害要素のうち、軽度なものをノイズ発生パターンから除外する。第1実施形態において、軽度な通信障害要素とは、例えば、第1誤り訂正部12及び第2誤り訂正部22における誤り訂正で回復可能なもの、通信に影響を与えないもの等をいう。軽度な通信障害要素の一例としては、インバーターノイズ等を挙げることができる。このように、ノイズ発生パターンから、軽度な通信障害要素を除外し、重度の通信障害要素が発生した場合に送信を待機させる。これにより、無線リソースの無駄を無くすことができ、通信効率の向上を図ることが可能となる。
【0048】
<<送信待機時間の設定>>
次に、
図3中のステップST3に示すように、推定されたノイズ発生パターンに基づいて、データ送信を待機させる送信待機時間W0~W1を設定する。送信待機時間W0~W1は、等間隔に設定するのではなく、
図4に示すように、ノイズN0~N2等の発生タイミング及びノイズ等が継続する継続時間に応じてフレキシブルに設定される。これにより、送信待機時間W0~W1を等間隔に設定する場合と比較して、ノイズN0~N2等による通信干渉の発生を軽減させることができる。これにより、通信障害要素が発生する無線環境下においても、良好なQoS要件を、計画的かつ効率よく満たすことが可能となる。送信待機時間は、送信待機時間設定部14において設定される。
【0049】
<<通信スロット時間の設定>>
次に、
図3中のステップST4に示すように、送信待機時間W0~W1を除いた時間に、データ送信可能な通信スロット時間T0~T2を設定する。通信スロット時間T0~T2は、例えば、送信待機時間W0~W1の後に、送信待機時間W0~W1とシーケンシャルに設定される。通信スロット時間T0~T2は、例えば、送信待機時間W0~W1が終了したこと及び送信待機時間W0~W1が開始されたことをそれぞれ検知することで設定することもできる。
【0050】
<<データの送信>>
ここまでのステップST1~ST4において、送信側装置51には、送信待機時間W0~W1及び通信スロット時間T0~T2がそれぞれ設定される。この後は、
図3中のステップST5に示すように、データ送信を、設定された送信待機時間W0~W1及び通信スロット時間T0~T2に従って実行すれば良い。送信データTDは、送信側装置51から、例えば第1誤り訂正部12を介して第1送受信部11へ伝達され、第1送受信部11から無線ネットワーク3に向けて送信される。第2送受信部21は、送信データTDを、受信データRDとして受信する。このようなデータ通信を、必要な通信が終了するまで繰り返す。
【0051】
このような第1実施形態によれば、例えば、
(1)通信障害要素が発生する無線環境下において、通信障害要素の発生にある程度の周期性を見込むことが可能である場合、通信障害要素が発生するタイミング、通信障害要素が継続する継続時間等のパターンを推定する。この推定したパターンに応じて、送信待機時間をフレキシブルに設定する。したがって、通信障害要素が発生する無線環境下においても、良好なQoS要件を、計画的かつ効率よく満たすことができる。
(2)軽度な通信障害要素は除外し、重度の通信障害要素が発生した場合に、送信を待機させる。即ち、軽度な通信障害要素が発生した場合には、通信を続行させる。したがって、無線リソースの無駄を無くすことができ、通信効率の向上を図ることができる。
という利点を得ることができる。
【0052】
<データ通信の他例>
図5(a)~
図5(c)は、第1実施形態に係る無線通信方法によるデータ通信の他例を示すタイムチャートである。
この実施形態に係るノイズ推定部13は、上述したように、
(e)送信データのうち、受信側装置52に正常に届かなかった数又は割合
(f)受信データのうち、第1送受信部11が正常に受信できなかった数又は割合
(g)電波環境の測定において観測された信号強度が予め定められた閾値以上であった中で、第1送受信部11がデータを送受信していた場合を除いた回数又は割合
(h)電波環境の測定において観測されたチャネル使用時間が予め定められた閾値以上であった中で、第1送受信部11がデータを送受信していた場合を除いた時間又は割合
の少なくとも1つの値が予め定められた閾値以上であった場合をもって通信障害要素が発生したと検知する。
【0053】
この実施形態に係るノイズ推定部13は、予め定められた時間間隔、例えばタクトタイム0~タクトタイム4…を周期として区切る。これら区切られた周期に対して、ノイズ推定部13は、
図5(a)に示すように、ある周期、例えばタクトタイム2において、タクトタイム2でのノイズ発生パターンでは通信障害要素が発生していないと推定された時間帯(第1時間帯:通信スロット時間T)と通信障害要素が発生したと推定された時間帯(第2時間帯:送信待機時間W)とを記憶する。同様に、タクトタイム2以外で予め定められた回数以上連続した周期、例えば、タクトタイム0、タクトタイム1、タクトタイム3、タクトタイム4…でのノイズ発生パターンにおいても、通信障害要素が発生していないと推定された時間帯(第1時間帯:通信スロット時間T)と通信障害要素が発生したと推定された時間帯(第2時間帯:送信待機時間W)とを記憶する。
【0054】
次に、
図5(b)に示すように、タクトタイム0~タクトタイム4…のうち、予め定められた回数(本例における回数は“2”を想定する)以上連続したタクトタイム0及びタクトタイム1、並びにタクトタイム3及びタクトタイム4でのノイズ発生パターンでは、通信障害要素が発生していないと推定され、第1時間帯(T)と記憶された時間帯のうち、ある周期でのノイズ発生パターンでは第2時間帯(W)と記憶された場合に、時間帯が第2時間帯(W)に含まれるように、ノイズ発生パターンを更新する。このようにして、送信待機時間Waを、タクトタイム0及びタクトタイム1、並びにタクトタイム3及びタクトタイム4の上記時間帯(通信スロット時間T)に追加する。
【0055】
さらに、
図5(c)に示すように、タクトタイム2でのノイズ発生パターンでは、通信障害が発生したと推定され、第2時間帯と記憶された時間帯(W)のうち、上記タクトタイム0及びタクトタイム1、並びにタクトタイム3及びタクトタイム4でのノイズ発生パターンでは通信障害要素が発生したと推定され、第1時間帯と記憶された場合に、時間帯が第1時間帯(T)に徐々に含まれるように、予め定められた時間又は割合で第2時間帯(W)を第1時間帯(T)に変更するように、ノイズ発生パターンを更新する。
図5(c)に示す例では、時間帯が。予め定められた時間又は割合で縮小される例が示されている。なお、
図5(c)に示すように、タクトタイム2における第2時間帯(W)の更新に合わせ、タクトタイム0及びタクトタイム1、並びにタクトタイム3及びタクトタイム4における送信待機時間Waを更新するようにしても良い。
【0056】
ノイズ推定部13は、例えば
図5(a)~
図5(c)に示すように、送信待機時間を設定することも可能である。このようなノイズ推定部13においては、ノイズ発生パターンにおいて、通信障害要素が発生したと推定された時間帯W(第2時間帯及び第3時間帯)が一定のタイミング及び一定の継続時間に収束するように制御する仕組みを、さらに備えることも可能である。この仕組みには、例えば、ノイズ等におけるヒステリシスの考慮、及びPID制御等の古典制御方法を利用することが可能である。
【0057】
<無線通信装置の変形例>
また、第1無線通信装置1は、例えばノイズ対応方法決定部を、さらに備えるようにしても良い。
【0058】
ノイズ対応方法決定部は、ノイズ推定部13によって推定されたノイズ発生パターンにおいて、通信障害要素が発生したと推定された時間帯に対し、
(i)推定された時間帯におけるノイズの強さ又は頻度の情報
(j)推定された時間帯の時間幅
(k)推定された時間帯の近隣の時間帯又は他の周期の同じ時間帯における通信スループット及びデータレートを含む無線通信に係る情報
の少なくとも1つに基づいて、送信待機時間設定部14に、推定された時間帯を送信待機時間に設定するか又は誤り訂正部12に誤り訂正の符号化率を増加させるかを決定する。
【0059】
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態に係る無線通信方式(無線通信方法)を実行可能な無線通信システムの基本構成の一例を示す模式ブロック図である。
【0060】
無線利用環境によっては、無線ネットワーク3に重度通信障害要素が突発的に発生する場合もある。第2実施形態は、重度通信障害要素が突発的に発生した場合でも、良好なQoSを維持することが可能な無線通信方法、無線通信システム及び無線通信プログラムに関する。
【0061】
図6に示すように、無線通信システム100bが、無線通信システム100と異なるところは、重度ノイズ検知部71を、さらに含むことである。
【0062】
重度ノイズ検知部71は、無線ネットワーク3に突発的に発生する突発的な重度通信障害要素を検出する。重度ノイズ検知部71は、重度通信障害要素が発生している間、第1無線通信装置1から第2無線通信装置2(
図6では省略)へのデータ送信を待機させる。
【0063】
無線通信システム100bによれば、重度ノイズ検知部71をさらに有するので、重度通信障害要素が突発的に発生した場合、強制的にデータ送信を待機させる。したがって、重度通信障害要素が突発的に発生した場合であっても、良好なQoSを維持することができる。
【0064】
重度ノイズ検知部71は、
図6に示すように、送信側装置51にあっても良いし、受信側装置52にあっても良い。また、送信側装置51及び受信側装置52のそれぞれにあっても良い。さらに、送信側装置51及び受信側装置52以外に、重度ノイズ検知装置として、無線通信システム100bに別途備えられていても良い。
【0065】
重度ノイズ検知部71が重度ノイズを検知したか否かを判定する方法としては、
(l)フレーム送信エラーが発生したことを検知する。
(m)受信フレームにビットエラー等が発生したことを検知する。
(n)重度ノイズを検知するセンサーを設ける
【0066】
(l)の場合、重度ノイズ検知部71は、例えば送信側装置51に備えることができる。
(m)の場合、重度ノイズ検知部71は、例えば受信側装置52に備えることができる。
(n)の場合、重度ノイズ検知部71は、送信側装置51及び/又は受信側装置52に備えることができる。あるいは無線通信システム100bに、送信側装置51及び受信側装置52とは別に備えることができる。
【0067】
このような第2実施形態によれば、第1実施形態から得られる利点に加え、例えば、無線ネットワーク3に重度通信障害要素が突発的に発生した場合であっても、良好なQoSを維持することができる。
【0068】
さらに、この発明の実施形態は、この発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更が可能である。例えば、送信待機時間を設定する送信待機時間設定部14は、送信側装置51に備えられる必要は必ずしもない。送信待機時間設定部14は、受信側装置52に備えることも可能である。送信待機時間設定部14を、受信側装置52に備える場合には、例えばCTS(Clear To Send)等を用いて送信側装置51に送信を許可するようにすればよい。また、送信待機時間設定部14は、通信制御サーバーのような外部装置に備えることも可能である。例えば、このような新規な形態や変形は、この発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明、及び特許請求の範囲に記載された発明の均等物の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0069】
100 :無線通信システム
100b :無線通信システム
1 :第1無線通信装置
11 :第1送受信部
12 :第1誤り訂正部
13 :ノイズ推定部
14 :送信待機時間設定部
2 :第2無線通信装置
21 :第2送受信部
22 :第2誤り訂正部
3 :無線ネットワーク
51 :送信側装置
51a :生産ツール
51b :ロボット
51c :無人搬送車
51d :検査装置
51e :監視カメラ
52 :受信側装置
52a :アクセスポイント(AP)装置
70 :重度ノイズ検知部
N :ノイズ
N100 :ノイズ
N200 :ノイズ
N300 :ノイズ
N0~N2 :ノイズ
W :送信待機時間
W0~W1 :送信待機時間
Wa :送信待機時間
T :通信スロット時間
T0~T2 :通信スロット時間
I0~I2 :干渉期間
TD :送信データ
RD :受信データ