(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】診断および療法の目的のために腎被膜にアクセスするためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/34 20060101AFI20240823BHJP
A61M 25/04 20060101ALI20240823BHJP
A61M 25/09 20060101ALI20240823BHJP
A61M 25/10 20130101ALI20240823BHJP
A61F 2/958 20130101ALI20240823BHJP
A61B 18/12 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
A61B17/34
A61M25/04
A61M25/09
A61M25/10
A61F2/958
A61B18/12
(21)【出願番号】P 2021568007
(86)(22)【出願日】2020-05-12
(86)【国際出願番号】 US2020032523
(87)【国際公開番号】W WO2020232023
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2023-05-09
(32)【優先日】2019-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504311419
【氏名又は名称】タフツ メディカル センター インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】カプール, ナビン ケー.
(72)【発明者】
【氏名】カラス, リチャード エイチ.
【審査官】星名 真幸
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0274783(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/34
A61M 25/04
A61M 25/10
A61M 25/09
A61F 2/958
A61B 18/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の腎臓の腎被膜の被膜下空間にアクセスするためのシステムであって、
前記患者の腎臓内から前記患者の腎臓の前記腎被膜の前記被膜下空間内の位置に前進させられるように構成されるガイドワイヤと、
遠位領域と、近位領域と、それらの間に延在する前記ガイドワイヤを受け取るように定寸および成形される管腔とを有する細長シャフトを備える
マイクロカテーテルであって、前記
マイクロカテーテルの前記遠位領域は、
前記被膜下空間内で、診断手技もしくは療法手技またはそれらの両方を実施するために、前記患者の腎臓の前記腎被膜の前記被膜下空間内に配置されるように
定寸および成形される、
マイクロカテーテルと
を備える、システム。
【請求項2】
前記
マイクロカテーテルの前記遠位領域はさらに、前記腎被膜の前記被膜下空間を囲繞する線維被膜内に穿刺を形成し、前記線維被膜の外側の空間にアクセスするように構成され、前記システムはさらに、
膨張カテーテルであって、前記膨張カテーテルは、前記膨張カテーテルの上に配置される拡張可能部材を有し、前記拡張可能部材は、前記線維被膜内の穿刺に前進させられ、前記穿刺を膨張させられたサイズまで膨張させるように構成される、膨張カテーテルと、
前記線維被膜の前記膨張さ
せられた穿刺の中に係留し、前記穿刺の前記膨張さ
せられたサイズを維持するように構成されるスペーサデバイスと
を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記膨張させられた穿刺は、前記
患者の腎臓内の実質内圧を軽減させ、それによって、腎機能を改善するように構成される、請求項
2に記載のシステム。
【請求項4】
前記
マイクロカテーテルは、前記線維被膜を解離し前記穿刺を前記線維被膜内に形成するように構成される電気焼灼器を有するワイヤを備える、請求項
2に記載のシステム。
【請求項5】
前記拡張可能部材は、前記穿刺内で拡張し前記線維被膜内の前記穿刺を前記膨張させられたサイズまで膨張させるように構成されるバルーンを備える、請求項
2に記載のシステム。
【請求項6】
前記スペーサデバイスは、一方向弁を備える、請求項
2に記載のシステム。
【請求項7】
センサをさらに備え、前記センサは、前記
マイクロカテーテルを介して前記被膜下空間内に配置され、生理学的パラメータを測定し、前記測定された生理学的パラメータを示す信号を発生させるように構成される、請求項1
または請求項2に記載のシステム。
【請求項8】
非一過性のコンピュータ読み取り可能な媒体をさらに備え、前記非一過性のコンピュータ読み取り可能な媒体は、その上に記憶された命令を有し、前記命令は、前記センサに動作可能に結合された外部コンピュータのプロセッサによって実行されると、前記プロセッサに、前記測定された生理学的パラメータを示す前記信号を受信および処理させる、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記処理された信号は、閉ループフィードバックシステムにおいて使用されるように構成される、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記センサは、センサワイヤを備える、請求項7に記載のシステム。
【請求項11】
前記センサは、チップである、請求項7に記載のシステム。
【請求項12】
前記
マイクロカテーテルは、薬物、幹細胞、遺伝子療法のためのウイルス、RNAi、ナノ粒子、または色素のうちの少なくとも1つを前記被膜下空間の中に送達するように構成される、請求項1
または請求項2に記載のシステム。
【請求項13】
前記薬物は、腎線維症を低減させるか、利尿薬を用いて流体除去を向上させるか、もしくは局在化された疾患を治療するか、またはそれらの任意の組み合わせを行うように構成される、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
治療される前記局在化された疾患は、癌である、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記
マイクロカテーテルはさらに、前記
マイクロカテーテルの前記遠位領域上に配置される拡張可能部材を備え、前記拡張可能部材は、前記腎被膜の前記被膜下空間内で拡張し、前記
患者の腎臓を囲繞する線維被膜を変位させるように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記ガイドワイヤは、動脈、静脈、またはリンパ管のうちの少なくとも1つを介して、血管内で前進させられるように構成される、請求項1
または請求項2に記載のシステム。
【請求項17】
前記ガイドワイヤは、前記患者の尿管を介して非血管的に前進させられるように構成される、請求項1
または請求項2に記載のシステム。
【請求項18】
前記ガイドワイヤは、経表皮的に前進させられるように構成される、請求項1
または請求項2に記載のシステム。
【請求項19】
前記命令は、前記プロセッサによって実行されると、
前記信号に基づく前記測定された生理学的パラメータを閾値生理学的パラメータと比較することと、
前記測定された生理学的パラメータが前記閾値生理学的パラメータを上回る場合、アラートを発生させることと
を前記プロセッサにさらに行わせる、請求項8に記載のシステム。
【請求項20】
前記測定された生理学的パラメータを示す前記信号を受信し、前記患者の腎臓内の血流に影響を及ぼすように構成される補助デバイスをさらに備える、請求項7に記載のシステム。
【請求項21】
前記補助デバイスは、前記測定された生理学的パラメータを示す前記受信された信号に基づいてフィードバック信号を発生させるようにさらに構成される、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
流体を前記患者の身体の外側で収集し、腎圧を直接低減させるために、前記
マイクロカテーテルの
遠位端を通して前記被膜下空間内から
前記流体を直接除去するように構成される機構をさらに備える、請求項1
または請求項2に記載のシステム。
【請求項23】
前記拡張可能部材は、圧潰するようにさらに構成され、
前記
マイクロカテーテルおよび拡張可能部材は、前記被膜下空間から除去されるように構成される、請求項15に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2019年5月14日に出願された米国仮特許出願第62/847,781号の優先権の利益を主張し、その全内容が参照することによって本明細書に援用される。
【0002】
本願は、概して、最小限の侵襲性および/またはカテーテルベースの態様で、療法および/または診断目的のために(例えば、心不全を患う患者において、例えば腎機能障害を治療するために、臓器圧を感知し低減させ、療法を送達し、および/または被膜を破裂させる(被膜剥離)ために)、患者の腎臓の被膜下空間にアクセスするシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
心臓の働きと腎機能とは、密接に結び付けられる。心不全における最も重要な共存症のうちの1つは、腎不全または腎機能不全等の腎機能障害である。急性非代償性心不全のために入院した患者の少なくとも4人に1人は、有意な腎機能障害を有する。腎機能不全は、心不全、心臓発作、または心血管系の副作用を患う患者における罹患率および死亡率の主な原因である。腎機能不全は、腎臓が良好に機能しないときに生じ、これは、低腎動脈血圧か、またはうっ血として知られる腎静脈内の圧力の上昇のいずれかによって引き起こされる腎臓を通る低減させられた血流または灌流に起因し得る。心不全は、低腎動脈血圧および腎静脈うっ血の両方と関連付けられ、したがって、心腎症候群として知られる腎不全の主な原因である。腎臓は、流体を身体から除去するので、初期腎不全はまた、すでに損なわれている心臓を圧倒し得る体液量過剰を誘起することによって、心不全を引き起こし得る。
【0004】
腎機能は、例えば、低いまたは過剰に高い動脈灌流、静脈うっ血、増加された腹腔内圧、および尿管閉塞に起因して、損なわれ得る。以前の研究は、腹腔内圧を増加させることが腎臓および膀胱の外因性圧縮を増加させることを示している。さらに、腎静脈のうっ血もまた、腎臓自体の中の圧力の上昇と関連付けられている。腎臓は、線維被膜内に格納されているので、いったん血液で充血された状態になると、腎臓が拡張するための余地が限定され、これは、腎被膜内の過剰流体の溢出につながり得る。結果として、被膜内の圧力は、増加し、腎臓を圧縮し、これは、腎機能を悪化させることに寄与し得る。正常条件下では、腎臓は、体液および血液の圧力を調整し、血液化学を調整し、有機廃棄物を除去する。腎臓が、心不全を患う患者において生じるように、低血流を受け取ると、脳は、これを脱水の兆候として解釈し、腎臓に、身体を刺激してナトリウムおよび水分を保有させるホルモンを放出させ、したがって、心不全および腎不全の悪化に寄与する。これはまた、不良な腎機能、または透析を要求する腎不全につながり得る。
【0005】
腎内圧を低減させるためのデバイスおよび方法が、検討されている。例えば、Erbeyの米国特許出願公開第2018/0193618号は、尿路内に負圧を生成し、尿生産を促進し、尿を患者から抽出することを説明する。具体的には、Erbeyは、尿管と膀胱との間に延在し、腎臓と膀胱との間の流体流動の開存性を維持する尿管ステントと、膀胱内に配置され、負圧を生成し尿を膀胱から抽出する外部ポンプに結合される膀胱カテーテルとを要求する。
【0006】
加えて、Barbutの米国特許第6,231,551号は、大腿動脈を通して狭窄器を腎動脈の中に導入し、狭窄器を拡張させて下行大動脈から腎動脈までの血流を部分的に閉塞し、それによって、閉塞の遠位の血圧を低減させることを説明する。しかしながら、Barbutの狭窄器は、外科的に埋め込まれるように設計され、これは、医原性傷害のリスクを呈する。さらに、Gelfandの米国特許出願公開第2010/0125288号は、腎灌流圧を低減させて慢性的腎不全を治療するために、腎動脈の部分的閉塞のための制御可能に調節可能な腎臓狭窄化デバイスを説明する。Gelfandは、腎動脈血流を制限するように圧着するための外部ねじを要求する。
【0007】
しかしながら、これらのアプローチはいずれも腎被膜を伴わない。被膜ベースの療法アプローチの主な限定は、大規模な外科手術を伴わずに腎被膜にアクセスすることが不可能であることである。例えば、以前の報告は、腎被膜の外科手術的除去が腎機能を改善することを示している。しかしながら、誰も、外科手術を伴わずに、または経皮的カテーテルベースのアプローチを介して、被膜剥離を実施するための方法を開発していない。したがって、最小限の侵襲性および/またはカテーテルベースの態様で腎被膜にアクセスするためのシステムおよび方法の必要性が存在する。
【0008】
例示的刊行物は、Cruces, et al., “Renal Decapsulation Prevents Intrinsic Renal Compartment Syndrome in Ischemia-Reperfusion-Induced Acute Kidney Injury: A Physiologic Approach,” Crit Care Med. 2018 Feb; 46(2): 216-222. doi: 10.1097/CCM.0000000000002830、Evans, “Renal Decapsulation to Treat Ischemic Acute Kidney Injury: A New Twist in an Old Tale,” Crit Care Med. 2018 Feb; 46(2):332-333. doi: 10.1097/CCM.0000000000002861、Khraibi, et al. “Effect of acute renal decapsulation on pressure natriuresis in SHR and WKY rats,” Am J Physiol. 1989 Nov; 257(5 Pt 2): F785-9、Khraibi, et al. “Effect of renal decapsulation on renal interstitial hydrostatic pressure and Natriuresis,” Am J Physiol. 1989 Jul; 257(1 Pt 2):R44-8、Abildgaard, et al. “Renal vascular adjustments to partial renal venous obstruction in dog kidney,” Circ Res. 1987 Aug; 61(2):194-202、Slegers, et al. “Influence of renal capsule on kidney function in hypertension,” Clin Exp Hypertens A. 1985-1986; 7(12):1751-68、Stothert, “Renal blood flow and intrarenal distribution of blood flow after decapsulation in the postischemic kidney,” Ann Surg. 1980 Apr; 191(4):456-9、Gewertz, “Effect of renal decapsulation on cortical hemodynamics in the postischemic Kidney,” J Surg Res. 1980 Mar; 28(3):252-9、Stothert, “Evaluation of decapsulation of the canine kidney on renal function following acute ischemia,” J Surg Res. 1979 May; 26(5):560-4、Calasi, “Kidney decapsulation and acute renal failure,” Ann Surg. 1978 Apr; 187(4):441-2、Stone, et al. “Renal decapsulation in the prevention of post-ischemic oliguria,” Ann Surg. 1977 Sep; 186(3):343-55、Hebert, “Effect of renal decapsulation on renal function,” Am J Physiol. 1975 Sep; 229(3):632-9、Bracey, “Acute renal failure; two cases treated by decapsulation and peritoneal dialysis,” Br J Surg. 1951 Apr; 38(152):482-8、Vermeulen, et al. “Effect of renal decapsulation in experimental mercury nephrosis,” J Urol. 1948 Aug; 60(2):216-20、Lowe, “Renal decapsulation in the treatment of oliguria and anuria,” U S Nav Med Bull. 1947 Nov-Dec; 47(6):959-64、Raines, “Renal decapsulation in the treatment of anuria,” Memphis Med J. 1947 Sep; 22(9):140-3、Culpepper, et al. “Renal decapsulation for oliguria and anuria” Am J Med Sci. 1947 Jul; 124(1):100-8、Felber, “Renal decapsulation,” J Med Assoc Ga. 1946 Jan; 35:7-9、Nichol, “Indications for Decapsulation of the Kidney,” Can Med Assoc J. 1940 Dec; 43(6):577-80、Newman, “Decapsulation of the Kidney for the Treatment of Albuminuria,” Br Med J. 1904 Apr 30; 1(2261):1011-2を含む。
【0009】
例えば腎臓を効果的に被膜剥離するために、最小限の侵襲性および/またはカテーテルベースの態様で腎被膜にアクセスする必要性が存在する。例えば、腎内圧を低減させて腎機能を復元および改善する必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許出願公開第2018/0193618号
【文献】米国特許第6,231,551号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、患者の腎被膜の被膜下空間にアクセスするためのシステムおよび方法を提供する。「被膜下空間」は、腎臓と腎臓を囲繞する線維被膜との間の流体充填空間である。線維被膜および被膜下空間は、集合的に、「腎被膜」である。
【0012】
好ましい実施形態では、患者の腎臓の被膜下空間は、療法および/または診断の目的のために、最小限の侵襲性の態様でアクセスされる。例えば、方法は、ガイドワイヤを患者の腎臓の腎被膜の被膜下空間に隣接する位置に血管内で前進させることと、ガイドワイヤを介してカテーテルの遠位端を血管内で前進させ、例えば動脈、静脈、またはリンパ管を介して、カテーテルの遠位端を患者の腎臓の腎被膜の被膜下空間の中に位置付けることとを含む。カテーテルは、腎臓の被膜下空間内での診断および/または療法送達(単数または複数)のために、診断部分および/または療法部分を遠位端に含み得る。本発明の別の側面によると、非血管アプローチが、膀胱および尿管を通して、または経表皮的に、腎臓にアクセスすることによって、採用され得る。経表皮的アプローチは、一般的外科医および/または介入放射線科医によって実施され得、血管障害を回避し得る。
【0013】
本発明のさらに別の側面によると、被膜下空間は、経皮的に送達されるカテーテルベースのアプローチを使用して、アクセスされ得る。腎被膜へのアクセスを伴って、カテーテルは、種々の手技を実施し、腎機能障害および心不全等の条件を診断および/または治療するために使用され得る。例示的手技は、腎被膜を被膜剥離しおよび/もしくは流体を被膜下空間から直接除去して腎圧を軽減させること、腎圧上昇を測定しおよび/もしくは腎臓内の腎機能/傷害のバイオマーカを累算すること、ならびに/または薬物療法を腎被膜に送達することを含む。
【0014】
システムおよび方法は、増加させられた腎被膜圧を診断/監視する態様で腎被膜にアクセスし、腎機能を改善することが可能である。例えば、本明細書に説明されるシステムおよび方法は、センサを送達し、腎臓の腎被膜の被膜下空間の内側の圧力の上昇を検出し、患者または医師に、腎圧の減少が要求されることをアラートし得る。加えて、または代替として、システムおよび方法は、腎線維症を低減させること、および/もしくは利尿薬を用いて流体除去を向上させることによって、または腎癌等の局在化された疾患を治療するために、または、それらの任意の組み合わせによって、腎機能を具体的に標的化する薬物を腎被膜の中に送達し得る。加えて、または代替として、システムおよび方法は、幹細胞、遺伝子療法のためのウイルス、RNAi、ナノ粒子、または色素のうちの少なくとも1つを被膜下空間内に送達し得る。加えて、または代替として、システムおよび方法は、腎被膜を破裂させ(被膜剥離)、それによって、充血されるときの腎臓の拡張を可能にし、圧力上昇に起因する腎臓への任意の傷害を避けるデバイスを送達し得る。
【0015】
本発明の一側面によると、患者の腎臓の腎被膜の被膜下空間にアクセスするためのシステムが、提供される。システムは、腎臓内から腎被膜の被膜下空間内の位置に前進させられ得るガイドワイヤと、遠位領域、近位領域、およびその間に延在するガイドワイヤを受け取るように定寸および成形された管腔を有する細長シャフトを有するカテーテルとを含む。カテーテルの遠位領域は、診断手技もしくは療法手技または両方を実施するために、被膜下空間内に配置されるように定寸および成形される。
【0016】
本発明の一側面によると、カテーテルの遠位領域はさらに、腎被膜の被膜下空間を囲繞する線維被膜内に穿刺を形成し、線維被膜の外側の空間、例えば後腹膜腔にアクセスするように構造化される。例えば、カテーテルまたはワイヤは、鋭い先端を有することもあるし、または、カテーテルは、線維被膜を解離し穿刺を線維被膜内に形成するための電気焼灼器を有するワイヤであることもある。故に、システムはさらに、上に配置される拡張可能部材(例えばバルーン)を有する、膨張カテーテルを含み得、拡張可能部材は、線維被膜内の穿刺に前進させられ、穿刺を膨張させられたサイズまで膨張させるように構築される。システムはまた、線維被膜の膨張させられた穿刺の中に係留され、前記穿刺の膨前記張させられたサイズを維持し得るスペーサデバイスを含み得る。例えば、膨張させられた穿刺は、腎臓内の実質内圧を軽減させ、それによって、腎機能を改善する。スペーサデバイスは、その中に配置される一方向弁を有し得る。
【0017】
本発明の別の側面によると、システムはさらに、カテーテルを介して被膜下空間内に配置され、生理学的パラメータ(例えば腎被膜圧)を測定するように定寸および成形されたセンサを含み、これは、測定された生理学的パラメータを示す信号を発生させ得る。例えば、センサは、センサワイヤまたはチップであり得る。故に、システムはさらに、上に記憶された命令を有する非一過性コンピュータ可読媒体を含み、命令は、センサに動作可能に結合された外部コンピュータのプロセッサによって実行されると、プロセッサに、測定された生理学的パラメータを示す信号を受信および処理させ得る。例えば、信号(単数または複数)は、例えば、CardioMEMSシステム(CardioMEMS(Atlanta, Georgia)から入手可能)を使用して、有線または無線の通信を介して、遠隔で受信され得る。非一過性コンピュータ可読媒体はさらに、上に記憶された命令を含み、命令は、外部コンピュータのプロセッサによって実行されると、プロセッサに、信号に基づく測定された生理学的パラメータと、プロセッサのメモリ内に記憶された閾値生理学的パラメータとを比較させ、測定された生理学的パラメータが閾値生理学的パラメータを上回る場合、外部コンピュータに、アラートを発生させる。
【0018】
本発明のさらに別の側面によると、カテーテルは、薬物、幹細胞、遺伝子療法のためのウイルス、RNAi、ナノ粒子、または色素のうちの少なくとも1つを被膜下空間の中に送達するように構造化される。例えば、薬物は、腎線維症を低減させるか、利尿薬を用いて流体除去を向上させるか、もしくは癌等の局在化された疾患を治療するか、またはそれらの任意の組み合わせを行い得る。本発明のさらに別の側面によると、カテーテルは、カテーテルの遠位領域上に配置される拡張可能部材、例えばバルーンを含む。拡張可能部材は、腎被膜の被膜下空間内で拡張し、腎臓を囲繞する線維被膜を変位および伸展させ、被膜下空間を拡大するように構造化される。
【0019】
本発明の別の側面によると、患者の腎臓の腎被膜の被膜下空間にアクセスするための方法が、提供される。方法は、ガイドワイヤを患者の腎臓の腎被膜の被膜下空間内の位置に前進させることと、カテーテルの遠位端が腎被膜の被膜下空間内に配置されるように、ガイドワイヤを介してカテーテルの遠位端を前進させることと、カテーテルを使用して、診断手技もしくは療法手技または両方を被膜下空間内で実施することとを含む。
【0020】
カテーテルの遠位端が、穿刺を線維被膜内に形成するように構造化されると、方法はさらに、カテーテルの遠位端を介して、線維被膜を穿刺し、穿刺を線維被膜内に形成することと、膨張カテーテルを線維被膜の穿刺に送達することと、拡張可能部材を穿刺内で作動させ、線維被膜の穿刺を膨張させられたサイズまで膨張させることと、スペーサデバイスを線維被膜の膨張させられた穿刺内に係留し、穿刺の膨張させられたサイズを維持することとを含み得る。
【0021】
カテーテルが、センサを被膜下空間内に配置するために使用されるとき、方法はさらに、被膜下空間内でセンサを介して、生理学的パラメータ(例えば、腎圧)を測定することと、測定された生理学的パラメータを示す信号を発生させることとを含み得る。本発明の一側面によると、本方法はさらに、センサに動作可能に結合される外部コンピュータを介して、測定された生理学的パラメータを示す信号を受信することを含み得る。故に、方法は、信号に基づく測定された生理学的パラメータと、閾値生理学的パラメータとを比較することと、測定された生理学的パラメータが閾値生理学的パラメータを上回る場合、アラートを発生させることとを含み得る。
【0022】
本発明の別の側面によると、方法はさらに、患者の腎臓内の血流に影響を及ぼすように構成されるデバイスを介して、測定生理学的パラメータを示す信号を受信することを含み得る。代替として、または加えて、方法は、測定生理学的パラメータを示す受信された信号に基づいて、フィードバック信号を発生させることを含み得る。カテーテルが、線維被膜を腎臓から変位させるように構造化されるとき、方法はさらに、カテーテルの遠位端上に配置された拡張可能部材を拡張させ、腎臓を囲繞する線維被膜を変位させることと、拡張可能部材を圧潰することと、カテーテルおよび拡張可能部材を被膜下空間から除去することとを含み得る。
【0023】
カテーテルが、薬物を被膜下空間の中に送達するように構造化されるとき、方法はさらに、カテーテルを介して、薬物を腎被膜の被膜下空間の中に送達することを含み得る。方法はまた、カテーテルの遠位端を通して、流体を被膜下空間内から直接除去することと、流体を患者の身体の外側で収集し、腎圧を直接低減させることとを含み得る。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
患者の腎臓の腎被膜の被膜下空間にアクセスするためのシステムであって、
前記患者の腎臓の腎被膜の被膜下空間内の位置に前進させられるように構成されるガイドワイヤと、
遠位領域と、近位領域と、それらの間に延在する前記ガイドワイヤを受け取るように定寸および成形される管腔とを有する細長シャフトを備えるカテーテルであって、前記カテーテルの前記遠位領域は、診断手技もしくは療法手技またはそれらの両方を実施するために、前記患者の腎臓の前記腎被膜の前記被膜下空間内に配置されるように構成される、カテーテルと
を備える、システム。
(項目2)
前記カテーテルの前記遠位領域はさらに、前記腎被膜の前記被膜下空間を囲繞する線維被膜内に穿刺を形成し、前記線維被膜の外側の空間にアクセスするように構成され、前記システムはさらに、
膨張カテーテルであって、前記膨張カテーテルは、前記膨張カテーテルの上に配置される拡張可能部材を有し、前記拡張可能部材は、前記線維被膜内の穿刺に前進させられ、前記穿刺を膨張させられたサイズまで膨張させるように構成される、膨張カテーテルと、
前記線維被膜の前記膨張された穿刺の中に係留し、前記穿刺の前記膨張されたサイズを維持するように構成されるスペーサデバイスと
を備える、項目1に記載のシステム。
(項目3)
前記膨張させられた穿刺は、前記腎臓内の実質内圧を軽減させ、それによって、腎機能を改善するように構成される、項目3に記載のシステム。
(項目4)
前記カテーテルは、前記線維被膜を解離し前記穿刺を前記線維被膜内に形成するように構成される電気焼灼器を有するワイヤを備える、項目3に記載のシステム。
(項目5)
前記拡張可能部材は、前記穿刺内で拡張し前記線維被膜内の前記穿刺を前記膨張させられたサイズまで膨張させるように構成されるバルーンを備える、項目3に記載のシステム。
(項目6)
前記スペーサデバイスは、一方向弁を備える、項目3に記載のシステム。
(項目7)
センサをさらに備え、前記センサは、前記カテーテルを介して前記被膜下空間内に配置され、生理学的パラメータを測定し、前記測定された生理学的パラメータを示す信号を発生させるように構成される、項目1に記載のシステム。
(項目8)
非一過性のコンピュータ読み取り可能な媒体をさらに備え、前記非一過性のコンピュータ読み取り可能な媒体は、その上に記憶された命令を有し、前記命令は、前記センサに動作可能に結合された外部コンピュータのプロセッサによって実行されると、前記プロセッサに、前記測定された生理学的パラメータを示す信号を受信および処理させる、項目7に記載のシステム。
(項目9)
前記処理された信号は、閉ループフィードバックシステムにおいて使用されるように構成される、項目8に記載のシステム。
(項目10)
前記センサは、センサワイヤを備える、項目7に記載のシステム。
(項目11)
前記センサは、チップである、項目7に記載のシステム。
(項目12)
前記カテーテルは、薬物、幹細胞、遺伝子療法のためのウイルス、RNAi、ナノ粒子、または色素のうちの少なくとも1つを前記被膜下空間の中に送達するように構成される、項目1に記載のシステム。
(項目13)
前記薬物は、腎線維症を低減させるか、利尿薬を用いて流体除去を向上させるか、もしくは局在化された疾患を治療するか、またはそれらの任意の組み合わせを行うように構成される、項目12に記載のシステム。
(項目14)
治療される前記局在化された疾患は、癌である、項目13に記載のシステム。
(項目15)
前記カテーテルはさらに、前記カテーテルの前記遠位領域上に配置される拡張可能部材を備え、前記拡張可能部材は、前記腎被膜の被膜下空間内で拡張し、前記腎臓を囲繞する線維被膜を変位させるように構成される、項目1に記載のシステム。
(項目16)
患者の腎臓の腎被膜の被膜下空間にアクセスするための方法であって、
ガイドワイヤを前記患者の腎臓の前記腎被膜の前記被膜下空間内の位置に前進させることと、
カテーテルの遠位端が前記腎被膜の前記被膜下空間内に配置されるように、前記ガイドワイヤを介して、前記カテーテルの遠位端を前進させることと、
前記カテーテルを使用して、診断手技もしくは療法手技またはその両方を前記被膜下空間内で実施することと
を含む、方法。
(項目17)
前記ガイドワイヤを前記患者の腎臓の前記腎被膜の前記被膜下空間内の位置に前進させることは、動脈、静脈のうちの少なくとも1つを介して、前記ガイドワイヤを血管内で前進させることを含む、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記ガイドワイヤを前記患者の腎臓の前記腎被膜の前記被膜下空間内の位置に前進させることは、前記患者の尿管を介して前記ガイドワイヤを非血管的に前進させることを含む、項目16に記載の方法。
(項目19)
前記ガイドワイヤを前記患者の腎臓の前記腎被膜の前記被膜下空間内の位置に前進させることは、前記ガイドワイヤを経表皮的に前進させることを含む、項目16に記載の方法。
(項目20)
前記カテーテルの前記遠位端はさらに、前記腎被膜の前記被膜下空間を囲繞する線維被膜内に穿刺を形成するように構成され、前記方法はさらに、
前記カテーテルの前記遠位端を介して、前記線維被膜を穿刺し、前記線維被膜内に穿刺を形成することと、
上に配置される拡張可能部材を有する膨張カテーテルを前記線維被膜の前記穿刺に送達することと、
前記拡張可能部材を前記穿刺内で作動させ、前記線維被膜の前記穿刺を膨張させられたサイズまで膨張させることと、
スペーサデバイスを前記線維被膜の前記膨張させられた穿刺内に係留し、前記穿刺の前記膨張させられたサイズを維持することと
を含む、項目16に記載の方法。
(項目21)
前記穿刺の前記膨張させられたサイズを維持することは、前記腎臓内の実質内圧を軽減させ、それによって、腎機能を改善する、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記拡張可能部材は、バルーンを備え、前記拡張可能部材を前記穿刺内で作動させ、前記線維被膜の前記穿刺を前記膨張させられたサイズまで膨張させることは、前記バルーンを前記線維被膜の前記穿刺内で拡張させることを含む、項目20に記載の方法。
(項目23)
前記カテーテルは、電気焼灼器を有するワイヤを備え、それによって、前記線維被膜を穿刺することは、前記ワイヤの前記電気焼灼器を介して前記線維被膜を解離し、前記線維被膜内に前記穿刺を形成することを含む、項目20に記載の方法。
(項目24)
前記カテーテルを介してセンサを前記被膜下空間内に配置することと、
前記センサを介して、生理学的パラメータを前記被膜下空間内で測定することと、
前記測定された生理学的パラメータを示す信号を発生させることと
をさらに含む、項目20に記載の方法。
(項目25)
前記センサに動作可能に結合された外部コンピュータを介して、前記測定された生理学的パラメータを示す前記信号を受信することをさらに含む、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記信号に基づく前記測定された生理学的パラメータと、閾値生理学的パラメータとを比較することと、
前記測定された生理学的パラメータが前記閾値生理学的パラメータを上回る場合、アラートを発生させることと
をさらに含む、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記患者の腎臓内の血流に影響を及ぼすように構成される補助デバイスを介して、前記測定された生理学的パラメータを示す前記信号を受信することをさらに含む、項目24に記載の方法。
(項目28)
前記測定された生理学的パラメータを示す前記受信された信号に基づいてフィードバック信号を発生させることをさらに含む、項目24に記載の方法。
(項目29)
前記カテーテルを介して、薬物、幹細胞、遺伝子療法のためのウイルス、RNAi、ナノ粒子、または色素のうちの少なくとも1つを前記腎被膜の前記被膜下空間の中に送達することをさらに含む、項目16に記載の方法。
(項目30)
前記薬物は、腎線維症を低減させるか、利尿薬を用いて流体除去を向上させるか、もしくは局在化された疾患を治療するか、またはそれらの任意の組み合わせを行うように構成される、項目29に記載の方法。
(項目31)
前記カテーテルの前記遠位端を通して前記被膜下空間内から流体を直接除去し、前記流体を前記患者の身体の外側で収集し、腎圧を直接低減させることをさらに含む、項目16に記載の方法。
(項目32)
前記カテーテルの前記遠位端上に配置される拡張可能部材を拡張させ、前記腎臓を囲繞する線維被膜を変位させることと、
前記拡張可能部材を圧潰することと、
前記カテーテルおよび拡張可能部材を前記被膜下空間から除去することと
をさらに含む、項目16に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明の原理による患者の腎被膜の被膜下空間にアクセスするためのある例示的方法におけるステップのフローチャートである。
【0025】
【0026】
【
図3】
図3は、本発明の原理による患者の腎臓を被膜剥離するためのある例示的システムを図示する。
【0027】
【
図4】
図4は、本発明の原理による患者の腎臓を被膜剥離するためのある例示的方法におけるステップのフローチャートである。
【0028】
【
図5-1】
図5A-
図5Gは、本発明のいくつかの実施形態による、
図4の方法の間に行われるステップを図示する。
【
図5-2】
図5A-
図5Gは、本発明のいくつかの実施形態による、
図4の方法の間に行われるステップを図示する。
【
図5-3】
図5A-
図5Gは、本発明のいくつかの実施形態による、
図4の方法の間に行われるステップを図示する。
【
図5-4】
図5A-
図5Gは、本発明のいくつかの実施形態による、
図4の方法の間に行われるステップを図示する。
【0029】
【
図6】
図6は、本発明の原理による患者の腎臓内の生理学的パラメータを測定するためのある例示的システムを図示する。
【0030】
【
図7A】
図7Aは、本発明の原理による患者の腎臓内の生理学的パラメータを測定するためのある例示的方法におけるステップのフローチャートである。
【0031】
【
図7B】
図7Bは、本発明の原理による患者の腎臓内の生理学的パラメータを測定するためのある例示的方法におけるステップのフローチャートである。
【0032】
【
図8】
図8は、本発明のいくつかの実施形態による
図7Aの方法の間に行われるステップを図示する。
【0033】
【
図9】
図9A-
図9Bは、本発明の原理による薬物療法を患者の腎臓に送達するためのある例示的方法を図示する。
【0034】
【
図10】
図10は、本発明の原理による線維被膜を患者の腎臓から変位させるためのある例示的システムを図示する。
【0035】
【
図11】
図11は、本発明の原理による線維被膜を患者の腎臓から変位させるためのある例示的方法におけるステップのフローチャートである。
【0036】
【0037】
【
図13-1】
図13A-13Cは、本発明の原理による患者の腎被膜の被膜下空間にアクセスするための代替システムを図示する。
【
図13-2】
図13A-13Cは、本発明の原理による患者の腎被膜の被膜下空間にアクセスするための代替システムを図示する。
【0038】
【
図14-1】
図14A-14Iは、本発明の原理の付加的概念実証を図示する。
【
図14-2】
図14A-14Iは、本発明の原理の付加的概念実証を図示する。
【
図14-3】
図14A-14Iは、本発明の原理の付加的概念実証を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0039】
腎被膜は、腎臓を囲繞する線維被膜、および腎臓と線維被膜との間の被膜下流体充填空間を含む。本発明の実施形態は、患者の腎臓の腎被膜の被膜下空間にアクセスするための例示的なシステムおよび方法を対象とする。被膜下空間にアクセスするための大規模な外科手術を要求する代わりに、本発明は、最小限の侵襲性であり、腎臓内から、例えば動脈、静脈、もしくはリンパ管等の血管を介して血管内で、または膀胱および尿管を介して非血管的に、または経表皮的に、被膜下空間にアクセする。代替として、または加えて、被膜下空間は、経皮的に送達されるカテーテルベースのアプローチを使用して、アクセスされ得る。
【0040】
ここで
図1を参照すると、患者の腎臓の腎被膜の被膜下空間にアクセスするためのある例示的方法100が、提供される。ステップ102では、ガイドワイヤが、腎臓内から患者の腎臓を囲繞する被膜下空間内の位置に前進される。種々のアプローチが、ガイドワイヤを標的部位に送達するために使用され得る。例えば、ガイドワイヤは、患者の腎静脈を通した経静脈アプローチ、患者の腎動脈を通した経動脈アプローチ、または患者の膀胱および尿管を通した経尿管アプローチを介して、挿入され得る。ステップ104では、カテーテル、例えばマイクロカテーテルの遠位領域が、ガイドワイヤを介して前進させられ、それによって、カテーテルの遠位端が、被膜下空間に進入し、その中に位置付けられる。アクセスが腎被膜の被膜下空間内に提供されると、ステップ106では、多数の診断/療法手技が、下記にさらに詳細に説明されるように、実施され得る。例えば、手技は、限定ではないが、療法手技(例えば、アブレーション、腎被膜の少なくとも一部を破裂させること(被膜剥離)、線維被膜を腎臓から変位させること、および/または流体を被膜下空間から直接除去して腎圧を軽減させること、および/または薬物療法を腎被膜に送達すること)、ならびに、診断手技(例えば、腎臓内の腎圧の上昇等の生理学的パラメータを測定すること、および/または、腎機能/傷害のバイオマーカ(例えば、乳酸)を累算すること、および/または被膜下空間を可視化することを含む心不全等の条件を治療するために実施され得る。
【0041】
ここで
図2A-
図2Hを参照すると、本発明の原理の概念実証が提供される。例えば、
図2Aは、腎臓の腎皮質RC内で前進させられるワイヤ201(例えば、0.018インチワイヤ)を図示する。
図2Bは、ワイヤ201による被膜下空間SSの穿通を図示する。
図2Cは、造影剤とともに、被膜下空間SS内に配置されるワイヤ201を図示し、カテーテル202が、ワイヤ201を経由して前進させられている。
図2Dは、造影剤とともに、腎被膜の被膜下空間SS内に配置されるカテーテル202を有する腎臓を図示する。具体的には、
図2Dは、本開示の原理による腎臓の被膜下の被膜下空間SS内に注入される青色色素を示す画像である。
図2Dに示されるように、青色色素は、被膜下空間SSに制限され、それによって、本明細書に説明されるシステムおよび方法を使用して、被膜下空間SSの中に導入される材料が、被膜下に留まることを確認する。
【0042】
加えて、
図2Eは、ワイヤ201が腎動脈RAを通して前進させられる動脈送達アプローチを図示し、
図2Fは、続いて腎被膜の被膜下空間SS内に配置されるワイヤ201を図示し、カテーテル202が、ワイヤ201を経由して前進させられる。
図2Gは、腎被膜の被膜下空間SS内の腎臓の周囲に配置されるワイヤ201を図示する(より暗いコントラストによって示される)。
図2Hは、本開示の原理による腎臓Kの線維被膜FC下の被膜下空間SS内に注入される青色色素を示す画像である。
図2Dと同様に、この画像は、齧歯類モデルの線維被膜FCと腎臓Kとの間の被膜下空間SS内に完全に含有されそこに制限される青色色素によって裏付けられるように、被膜下空間が本発明の原理に従って正常にアクセスされており、それによって、再び、本明細書に説明されるシステムおよび方法を使用して被膜下空間SSの中に導入される材料が被膜下に留まることを確認することを示す。
【0043】
上記に説明されるように、腎被膜の被膜下空間へのアクセスを伴って、腎圧を軽減させるための腎被膜の少なくとも一部の破裂(被膜剥離)等の多数の診断/療法手技が、実施され得る。例えば、システムは、腎被膜の線維被膜内に穿刺を生成して腎臓を被膜剥離し、スペーサを送達して穿刺を維持し腎臓の腎圧を軽減させるために使用され得る。スペーサは、線維被膜にわたる圧力解放を調整するための一方向弁を含み得る。
【0044】
ここで
図3を参照すると、本発明の原理による患者の腎臓の腎被膜を被膜剥離するためのシステムが提供される。システム300は、ガイドワイヤ302と、カテーテル308もしくはカテーテル312(例えば、マイクロカテーテル)と、膨張カテーテル316と、スペーサデバイス320とを含む。医師は、患者の必要性に応じて、カテーテル308と312との間で選択し得る。カテーテル308および312は両方とも、管腔を有し、管腔は、管腔を通してガイドワイヤ302を受け取るように定寸および成形される。加えて、カテーテル308およびカテーテル312は、腎被膜の被膜下空間内に配置されるように定寸および成形された遠位端を有する。カテーテル308は、その遠位端上に配置される鋭い先端310を有する。鋭い先端310は、被膜剥離のための標的組織、例えば腎臓の腎被膜の線維被膜を切り開き、それを通して穿刺を生成し、線維被膜の完全性を破裂させ、それによって、実質内腎圧を低減させるように構築される。例えば、鋭い先端310は、ブレードまたは針の先端であり得る。代替として、システム300は、カテーテル308の代わりに、カテーテル312を含み得る。カテーテル312は、直流または交流の電流が抵抗性金属ワイヤ電極を通過させられて熱を発生させることを可能にする電極先端314を有する電気焼灼器を伴うワイヤである。加熱された電極先端314は、次いで、標的組織に適用され、標的組織を解離し、それを通して穿刺を生成し得る。
【0045】
膨張カテーテル316は、その遠位領域に配置される拡張可能部材318を含む。拡張可能部材318は、カテーテル308または312によって生成された穿刺を所望の拡張サイズに膨張させるように、所望のサイズに拡張され得る。例えば、拡張可能部材318は、膨張カテーテル316の流体管腔と流体連通する拡張可能バルーン内に位置付けられる流体ポートを通して導入される流体を介して、収縮させられた送達状態と膨らませられた膨張状態との間で遷移可能である膨張可能バルーンであり得る。故に、膨張カテーテル316の近位端は、患者の身体の外側の流体源に結合され得る。当業者によって理解されるように、拡張可能部材318は、要求される量の力を付与し、腎臓の線維被膜内の穿刺を膨張させ、それを通して穿刺を生成することが可能である拡張可能ケージ等の当技術分野において公知の任意の他の拡張可能デバイスであり得る。
【0046】
スペーサデバイス320は、腎被膜の線維被膜内に生成された膨張された穿刺を維持し、腎被膜の被膜下空間と線維被膜の外側の空間との間の流体連通を可能にするように設計される。したがって、スペーサデバイス320は、中心開口部を有し、中心開口部は、スペーサデバイス320の近位端322から遠位端324までスペーサデバイス320を通して延在する。近位端322および遠位端324は、スペーサデバイス320を線維被膜の穿刺内に係留するように構築され、流体のみが、スペーサデバイス320にわたってその中心開口部を通して流動するように、シールを形成し得る。例えば、近位端322および遠位端324は、図示されるように、その間の中間区分を上回る距離にわたって外向きに突出し得る。加えて、スペーサデバイス320は、例えば送達カテーテルを介してガイドワイヤ302を経由して前進させられ得る導入シース内での圧潰された送達状態から、例えば線維被膜の穿刺内に係留され得る導入シースの後退時の拡張された展開状態に遷移可能である。
【0047】
ここで
図4を参照すると、療法手技(
図1のステップ106)を実施するためのある例示的方法が、提供される。具体的には、システム300を使用して患者の腎臓の腎被膜を被膜剥離するための方法400が、提供される。方法400のステップのうちのいくつかは、
図5A-
図5Gを参照することによってさらに詳述され得る。最初に、
図5Aに示されるように、ガイドワイヤ302が、腎臓内から腎臓Kを囲繞する被膜下空間SS内の位置に前進させられる(
図1のステップ102)。上記に説明されるように、種々のアプローチが、例えば、患者の腎静脈を通した経静脈アプローチ、患者の腎動脈を通した経動脈アプローチ、または患者の膀胱および尿管を通した経尿管アプローチを介して、ガイドワイヤ302を標的部位に送達するために使用され得る。次に、カテーテル308および/またはカテーテル312の遠位領域が、ガイドワイヤ302を介して前進させられ、それによって、カテーテル308および/またはカテーテル312の遠位端が、
図5Bに図示されるように、被膜下空間SSに進入し、その中に位置付けられる(
図1のステップ104)。
【0048】
ステップ402では、穿刺が、線維被膜FC内に生成される。カテーテル308が選択されると、カテーテル308の鋭い先端310が、
図5Cに図示されるように、線維被膜FCに穿通しその中に穿刺を形成するために十分な力で、線維被膜FCに係合する。カテーテル312が選択されると、電極先端314が、前進させられ、線維被膜FCと係合する。カテーテル312は、次いで、直流または交流の電流がカテーテル312の抵抗性金属ワイヤ電極を通過させられて電極先端314に熱を発生させるようにアクティブ化され得、それによって、
図5Dに図示されるように、電極先端314は、線維被膜FCを解離し、その中に穿刺を形成する。線維被膜FC内に生成された穿刺は、腎臓K内の所定の量の圧力を軽減させるような所望のサイズを有し得る。当業者によって理解されるように、穿刺は、例えば、円形開口または垂直もしくは水平の裂傷を含む種々の形状を有し得る。次いで、カテーテル308および/またはカテーテル312は、除去され、穿刺にわたって定位置にガイドワイヤ302を残し得る。本発明の別の側面によると、カテーテル312が使用されるとき、カテーテル312自体が、ガイドワイヤとして使用され得る。
【0049】
ステップ404では、膨張カテーテル316の遠位領域が、ガイドワイヤ302を介して被膜下空間SSに前進させられ、収縮させられた送達状態における選択されたカテーテルによって生成された線維被膜FCの穿刺内に位置付けられる。本発明の一側面によると、導入シースが、シースの後退が拡張された部材318を暴露するように、膨張カテーテル316を経由して配置され得る。拡張可能部材318は、次いで、拡張可能部材318が
図5Eに図示されるように穿刺をより大きい所望のサイズまで膨張させるように、膨らませられた膨張状態に拡張される。例えば、膨張カテーテル316は、膨張カテーテル316の流体管腔と流体連通する拡張可能部材318内に配置される流体ポートを介して、膨張カテーテル316の流体管腔を通して拡張可能部材318の中に流体を送達することによって作動され得る。拡張可能部材318は、次いで、例えばその中の流体を除去することによって収縮させられ、それによって、拡張可能部材318は、膨らませられた膨張状態から収縮させられた送達状態に遷移し、患者から除去され得る。当業者によって理解されるように、膨張カテーテル316は、カテーテル308および/またはカテーテル312と統合され、それによって、拡張可能部材318が、カテーテル308および/またはカテーテル312の遠位端上に配置され、したがって、より少ない送達ステップおよび構成要素を要求する。
【0050】
ステップ406では、スペーサデバイス320は、スペーサデバイス320が線維被膜FCの膨張させられた穿刺内に位置付けられるまで、圧潰された送達状態でガイドワイヤ302を介して前進させられる。スペーサデバイス320は、次いで、膨張させられた穿刺内で圧潰された送達状態から拡張された展開状態に遷移させられ、それによって、スペーサデバイス320の近位端322は、
図5Fに図示されるように、線維被膜FCの外側から線維被膜FCに係合し、スペーサデバイス320の遠位端324は、被膜下空間SS内から線維被膜FCに係合し、膨張させられた穿刺内にスペーサデバイス320を係留する。例えば、スペーサデバイス320は、送達カテーテル328に、および/または導入シース内に結合されながら、膨張させられた穿刺に送達され得る。
【0051】
故に、スペーサデバイス320がシース内の膨張させられた穿刺内に適切に位置付けられると、シースは、スペーサデバイス320がシースから暴露され拡張された展開状態に拡張する(例えば、自己拡張する、バルーン拡張する)まで、スペーサデバイス320が送達カテーテル328を介して膨張させられた穿刺内の定位置に留まりながら引き戻され得る。送達カテーテル328は、次いで、
図5Gに図示されるように、スペーサデバイス320から結合解除され、ガイドワイヤ302とともに、患者から除去され得る。拡張された展開状態では、腎臓Kの実質内圧は、スペーサデバイス320の中心開口部326を通して、患者の後腹膜腔の中に軽減させられる。
【0052】
スペーサデバイス320は、一方向弁を含み、一方向弁は、中心開口部326内に配置され、被膜下空間SSから線維被膜FCを横断して後腹膜腔の中に流体のみが流動することを可能にすることによって、スペーサデバイス320を通した圧力解放を調整する。例えば、弁は、所定の圧力勾配が被膜下空間SSと線維被膜FCの外側の空間との間で弁を横断して存在するときに流体が弁を通して流動することを可能にし得る。当業者によって理解されるように、方法400は、腎被膜の線維被膜内に複数の穿刺を生成し、複数のスペーサデバイスをそれぞれの穿刺内に展開し、腎臓内の所望の量の圧力を軽減するために、複数回繰り返され得る。
【0053】
上記に説明されるように、腎被膜の被膜下空間へのアクセスを伴って、例えば腎臓内の腎圧の上昇等の生理学的パラメータを測定し、および/または腎機能/傷害のバイオマーカを累算する等の多数の診断および/療法手技が、実施され得る。例えば、システムは、腎圧を測定するために使用され得る。
【0054】
ここで
図6を参照すると、本発明の原理による生理学的パラメータ(例えば、患者の腎臓の腎圧または代謝レベル)を測定するためのシステムが、提供される。システム600は、ガイドワイヤ602と、センサカテーテル608と、外部コンピュータ610とを含む。ガイドワイヤ602は、
図3のガイドワイヤ302と同様に構築される。センサカテーテル608は、1つ以上の生理学的パラメータを感知するように設計される感知構成要素を有する。例えば、センサカテーテル608は、腎被膜の被膜下空間内の圧力を測定するためのセンサワイヤであり得る。代替として、またはそれに加え、センサカテーテル608は、他の生理学的パラメータを測定するためにその遠位端上に配置されるセンサ構成要素を有するカテーテルであり得る。本発明の別の側面によると、センサカテーテル608は、センサカテーテル608の除去時にセンサチップが被膜下空間内に配置されたままであり、外部コンピュータ610と無線で通信し得るように、センサ構成要素、例えばセンサチップを被膜下空間内に送達するために使用され得る。
【0055】
センサカテーテル608および/またはそのセンサ構成要素(集合的に、「センサ」)はさらに、測定された腎圧を示す信号を発生させるように設計される。例えば、センサは、例えば有線または無線通信を介して、外部コンピュータ610に動作可能に結合され、それによって、センサは、測定された腎圧を示す発生させられた信号を伝送し得、外部コンピュータ610が、それを受信し得る。外部コンピュータ610はさらに、命令を有する非一過性コンピュータ可読媒体を含み得、命令は、外部コンピュータ610のプロセッサによって実行されると、プロセッサに、信号に基づく測定された腎圧と、プロセッサのメモリ内に記憶されている閾値腎圧とを比較させ、測定された腎圧が閾値腎圧を上回る場合、外部コンピュータ610にアラートを発生させる。故に、外科医は、患者の腎圧が減少される必要があるときを知らされる。代替として、または加えて、測定された腎圧を示す発生させられた信号は、閉ループフィードバックシステムの一部として使用され得る。
【0056】
本発明の別の側面によると、センサは、測定された生理学的パラメータを示す信号を、腎臓血流に影響を及ぼすために患者内に埋め込まれるかまたは別様に結合される補助デバイス(例えば、心室補助デバイス、透析機械等の機械的循環補助)に伝送するように設計され得る。
【0057】
ここで
図7Aを参照すると、診断手技(
図1のステップ106)を実施するためのある例示的方法が、提供される。具体的には、システム600を使用して患者の腎臓内の生理学的パラメータを測定するための方法700が、提供される。ステップ702では、1つ以上のセンサが、被膜下空間SSの中に前進させられる。例えば、センサは、
図8に図示されるように、センサカテーテル608の遠位領域上に配置され、したがって、センサカテーテル608とともに、ガイドワイヤ602を介して送達され、被膜下空間SS内に位置付けられ得る。本発明の別の側面によると、センサは、マイクロカテーテルの管腔を通して被膜下空間内で送達されるワイヤベースのセンサであり得る。代替として、センサカテーテル608は、感知構成要素、例えばセンサチップ等の圧力センサを被膜下空間に送達するために使用され得、続いて、除去され、センサチップを被膜下空間内に配置されたまま残し得る。故に、センサは、長期診断のために、腎被膜の被膜下空間内に埋め込まれ得る。ステップ704では、1つ以上のセンサが、患者の腎被膜の被膜下空間SS内の1つ以上の生理学的パラメータを感知し得る。例えば、センサは、
図7Bを参照して下記にさらに詳細に説明されるように、被膜下空間内の腎圧を感知し得る。
【0058】
さらに、感知される生理学的パラメータは、患者の腎臓内の血流に影響を及ぼすように設計された、患者内に埋め込まれるかまたは別様にそこに結合される補助デバイスに伝送され得る。加えて、または代替として、フィードバック信号が、感知される生理学的パラメータに基づいて発生され得る。
【0059】
ここで
図7Bを参照すると、システム600を使用して、生理学的パラメータ、例えば患者の腎臓の腎圧を測定するための方法750が、提供される。ステップ752では、センサカテーテル608が、患者の腎被膜の被膜下空間SS内の圧力を測定する。ステップ754では、センサカテーテル608が、測定された腎圧を示す信号を発生させ、ステップ756では、センサカテーテル608が、例えば、無線か、またはセンサカテーテル408および外部コンピュータ610に結合される電気ケーブル(単数または複数)を介してのいずれかで、信号を外部コンピュータ610に伝送する。
【0060】
ステップ758では、外部コンピュータ610の非一過性コンピュータ可読媒体の命令が、外部コンピュータ610のプロセッサによって実行され、プロセッサに、センサカテーテル608から受信される信号に基づく測定された腎圧と、プロセッサのメモリ内に記憶されている閾値腎圧を比較し、測定された腎圧が閾値腎圧を上回るかどうかを決定させる。測定された腎圧が閾値腎圧を上回る場合、外部コンピュータ610は、ステップ760において、アラート、例えば可聴または可視のアラートを発生させ、医師にアラートする。故に、医師は、患者の腎圧が高すぎであり減少される必要があるときに知らされ、したがって、患者の腎臓の腎圧を低減させるための必要ステップを講じることが可能である。センサカテーテル608および/または感知構成要素は、所望の時間量にわたって、患者の腎被膜内に留まり得、手技の完了時に患者から除去され得る。
【0061】
上記に説明されるように、腎被膜の被膜下空間へのアクセスを伴って、薬物療法を腎被膜に送達すること等の多数の診断/療法手技が、実施され得る。例えば、
図9Aに示されるように、薬物溶出カテーテル908の遠位領域が、出口910が腎被膜の被膜下空間SS内の所望の位置に位置付けられるまで、ガイドワイヤを介して前進させられる。次いで、ガイドワイヤが除去され得る。続いて、未だ結合されていない場合、薬物溶出カテーテル908の近位領域が、ガイドワイヤの除去に先立ってリザーバ912に結合され得る。リザーバ912は、薬物療法のために要求される十分な量の腎薬物を貯蔵するように定寸および成形される。例えば、腎薬物は、腎線維症を低減させる薬物、利尿薬を用いて流体除去を向上させる薬物、もしくは腎癌等の局在化された疾患を治療する薬物、またはそれらの任意の組み合わせの薬物であり得る。加えて、リザーバ912は、腎臓薬物をリザーバ912から薬物溶出カテーテル908の管腔を通して送達するためのポンプを含む。
【0062】
次いで、腎薬物は、
図9Bに図示されるように、リザーバ912から、薬物溶出カテーテル908の薬物送達管腔および被膜下空間SS内の出口910を通して送達され得る。薬物溶出カテーテル908は、薬物送達手技の完了時に患者から除去され得る。
【0063】
加えて、または代替として、薬物溶出カテーテル908の遠位領域は、バルーンの拡張時に薬物療法を送達するように設計された薬物溶出バルーンであり得る。例えば、薬物溶出バルーンは、拡張時に薬物が被膜下空間内の周囲組織および/または流体に接触し薬物を放出するように、薬物でコーティングされることもあるし、または、薬物溶出バルーンは、薬物が、バルーンに送達され、バルーンを拡張させ、細孔を横断して被膜下空間の中に流動するように、多孔性であることもある。薬物を直接腎被膜の被膜下空間に送達すること(例えば局在化された送達)によって、薬物の流失は、薬物が全身性循環の中に導入されないように低減させられる。
【0064】
上記に説明されるように、腎被膜の被膜下空間へのアクセスを伴って、線維被膜を腎臓から変位させて腎圧の変化に適応させる等の多数の診断/療法手技が、実施され得る。例えば、システムは、膨張可能な平坦なウィング付きのバルーンを被膜下空間内に位置付け、バルーンを膨らませ、線維被膜を伸展させ、および/または線維被膜を腎臓から解離し、それによって、被膜下空間を拡張させるために使用され得、したがって、腎被膜は、必ずしも被膜完全性を穿孔または破裂させずに、腎臓体積の変化に適応し得る。
【0065】
ここで
図10を参照すると、本発明の原理による線維被膜を腎臓から変位させるためのシステムが、提供される。システム1000は、ガイドワイヤ1002と、その遠位端に配置される拡張可能部材1006を有するバルーンカテーテル1004とを含む。ガイドワイヤ1002は、
図3のガイドワイヤ302と同様に構築される。拡張可能部材1006は、例えば、膨張可能バルーンであり得る。例えば、バルーン1006は、圧潰状態では平坦構成を有し、膨らませられた状態では拡張構成を有する平坦なウィング付きのバルーンであり得る。故に、バルーン1006は、導入シース内でガイドワイヤ1002を経由して、例えば、血管内で、または非血管的に、被膜下空間に送達され得る。加えて、バルーン1006の内部は、バルーン1006の膨張および収縮のために、カテーテル1004の流体管腔を介して、患者の身体の外部の流体源と流体連通し得る。膨らませられた状態では、バルーン1006は、被膜完全性を穿孔または破裂させずに、線維被膜を腎臓から変位させて線維被膜を伸展させ、および/または線維被膜を腎臓から解離するように定寸および成形される。当業者によって理解されるように、他の拡張可能デバイスが、線維被膜を腎臓から変位させるために使用され得る。
【0066】
ここで
図11を参照すると、療法手技(
図1のステップ106)を実施するためのある例示的方法が、提供される。具体的には、システム1000を使用して線維被膜を腎臓から変位させるための方法1100が、提供される。方法1100のステップのうちのいくつかは、
図12A-
図12Cを参照することによってさらに詳述され得る。
図12Aに図示されるように、上に配置されるバルーン1006を有するバルーンカテーテル1004は、
図1のステップ104に関して上記に説明されるように、被膜下空間SSに前進させられる。
図12Aにさらに示されるように、バルーン1006は、最初は、収縮させられた圧潰状態にある。
【0067】
ステップ1102では、拡張可能部材(例えばバルーン1006)が、
図12Bに示されるように、被膜下空間SS内で拡張状態に膨らませられる。バルーン1006の膨張は、力を印加し、線維被膜FCを腎臓Kから変位させ、それによって、線維被膜FCを伸展させ、および/または線維被膜FCを腎臓Kから解離する。ステップ1104では、バルーン1006は、
図12Cに示されるように、収縮させられ、患者から除去される。被膜下空間からのバルーン1006の除去に応じて、伸展させられた線維被膜FCは、腎臓体積の変化により良好に適応することが可能である。
【0068】
本発明の別の側面によると、被膜下空間内で前進させられるカテーテルは、その遠位端に配置される入口を有し得、その近位端は、被膜下空間内から、患者の身体の外側での収集のためのカテーテルの管腔を通して流体を直接除去し、腎圧を直接低減させるための機構に結合され得る。例えば、機構は、当技術分野において容易に把握される、ポンプ、サイフォン、圧力弁、または他の任意の他の機構を含み得る。
【0069】
本発明の別の側面によると、側方ポート1306を有するカテーテル1304が、マイクロカテーテルを腎被膜の被膜下空間に送達するために使用され得る。例えば、
図13Aに示されるように、ガイドワイヤ1302は、最初に、腎臓K内から、腎臓Kを囲繞する被膜下空間SSに隣接する位置に前進させられ得る。
図13Bに示されるように、カテーテル1304の遠位領域は、腎臓Kを囲繞する被膜下空間SSに隣接して位置付けられるまで、ガイドワイヤ1302を介して前進させられる。次いで、ガイドワイヤ1302は、除去され得る。さらに、
図13Cに示されるように、マイクロカテーテル1308は、第1のカテーテル1304の管腔を通して、側方ポート1306を介してカテーテル1304から外に前進させられ、それによって、マイクロカテーテル1308の遠位端は、被膜下空間SSに入り、その中に位置付けられる。上記に説明されるように、腎被膜の被膜下空間へのアクセスを伴って、多数の診断および/療法手技が実施され得る。
【0070】
ここで
図14A-
図14Iを参照すると、本発明の原理の付加的な概念実証が、提供される。具体的には、手技の信頼できる再現性および速度(例えば10~15分)でワイヤおよびカテーテルを被膜下空間内に設置する能力を例証するために、予備実験が行われた。加えて、実験は、外科手術の必要なく、本発明の原理によるカテーテルベースの技法を使用して、流体を被膜下空間から除去し、センサ、バルーン、ワイヤ、流体、および色素を含む材料を被膜下空間の中に送達し、かつ腎被膜の完全性を破裂させる(すなわち、被膜剥離)ための能力を例証する。
【0071】
例えば、
図14Aは、高血圧、腎動脈疾患、または循環補助ポンプの使用で認められ得るような増加する腎動脈圧RAPと腎被膜圧RCPとの間の関連付けを図示する。垂直線は、対象の腎動脈圧を増加させるための体外膜酸素化(ECMO)機械のアクティブ化の時点を示す。
図14Aに示されるように、RAP過負荷は、RCPを増加させる。
【0072】
図14B-
図14Eは、心不全、肺高血圧症、肝不全、大静脈内の血餅、腹圧過負荷、腎不全、または増加させられた全身性静脈圧もしくは体液量過剰を伴う任意の条件で認められ得るような、増加する腎静脈圧RVPとRCPとの間の関連付けを図示する。例えば、
図14Bは、被膜下空間SS内に配置されるセンサワイヤ1401と、腎静脈RV内に配置される圧力センサ1402と、腎静脈RV内に膨らませられた状態で配置されるバルーン1403とを図示する。バルーン1403の膨張は、腎静脈RVの閉塞を引き起こし、それによって、
図14Cに示されるようにRVPを増加させ、故に、
図14Dに示されるようにRCPを増加させる。
図14C-
図14Eに示されるように、RVP過負荷は、RCPを増加させる。
【0073】
図14F-
図14Iは、腎臓タンポナーデの設定における腎被膜の被膜剥離と低減させられたRVP、すなわち、増加する腎被膜体積/圧力との間の関連付けを図示する。例えば、
図14Fは、被膜下空間SSの中への流体、例えば生理食塩水および造影剤の注射を図示し、それによって、
図14Gに示されるように、RCPを増加させる。具体的には、
図14Gは、腎臓タンポナーデを増加させることが、RVPを増加させ、腎動脈流動を減少させることを図示する。垂直線は、腎被膜の被膜剥離の時点を示す。
図14Hは、腎被膜の穿孔Pを図示する。
図14Gおよび
図14Iにさらに示されるように、腎被膜の被膜剥離後、RCPは、減少し、故に、RVPもまた、低減させられる。
【0074】
本発明の種々の例証的実施形態が上記に説明されるが、種々の変更および修正が、本発明から逸脱することなく、本明細書に行われ得ることが当業者に明白であろう。さらに、本明細書に説明されるシステムおよび方法は、腎臓または心臓以外の器官の被膜剥離のために利用され得ることを理解されたい。添付の請求項は、本発明の真の精神および範囲内に属する全てのそのような変更および修正を網羅するように意図される。