(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】電気流体力学的およびエアロゾルの組合せ印刷
(51)【国際特許分類】
B41J 2/06 20060101AFI20240823BHJP
B05B 5/03 20060101ALI20240823BHJP
B05B 7/24 20060101ALI20240823BHJP
B41J 2/04 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
B41J2/06
B05B5/03
B05B7/24
B41J2/04
(21)【出願番号】P 2023507754
(86)(22)【出願日】2021-08-04
(86)【国際出願番号】 US2021044571
(87)【国際公開番号】W WO2022031866
(87)【国際公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-03-31
(32)【優先日】2020-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511000957
【氏名又は名称】ザ・リージェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・ミシガン
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF MICHIGAN
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ツェ,ライ・ユィ・レオ
(72)【発明者】
【氏名】バートン,キラ
【審査官】大浜 登世子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103147138(CN,A)
【文献】特開2010-195008(JP,A)
【文献】特開平03-182357(JP,A)
【文献】特開2016-155302(JP,A)
【文献】特表2016-513027(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0103228(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/06
B05B 5/03
B05B 7/24
B41J 2/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷表面上の堆積のためにインクノズル
の抽出開口部から
液体の印刷流体を抽出する抽出場を生成するように構成されたプリンタであって、前記抽出場は
、
電場
であって、前記抽出開口部が少なくとも部分的に前記電場内にあるように、前記インクノズルと前記インクノズルから距離を空けて配置された抽出部とにわたって電圧が印加されたときに生成される、前記電場、
ガス流れ場
であって、前記抽出開口部が前記ガス流れ場内にあるように、前記インクノズルの中心軸から距離を空けて配置された少なくとも1つのガスノズルから放出された少なくとも1つのガスのジェットによって生成される、前記ガス流れ場、およ
び
前記電場と
前記ガス流れ場との組合せ
、
の間で変更可能である、プリンタ。
【請求項2】
前記抽出部は、
前記中心軸に関して前記インクノズルから
径方向に距離を空けて配置される、請求項
1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記組合せは、
前記少なくとも1つのガスノズルから放出されている前記ガスのジェットと同時に前記インクノズルと前記抽出部とにわたって印加される電圧によって生成される、請求項
1または2に記載のプリンタ。
【請求項4】
前記少なくとも1つのガスノズルは、複数のガスノズルである、請求項
1から請求項3のいずれか1項に記載のプリンタ。
【請求項5】
前記抽出場が前記電場であるときに、前記複数のガスノズルの1つのみが前記
少なくとも1つのガスのジェットを放出する、請求項
4に記載のプリンタ。
【請求項6】
液体の印刷流体を収容し、中心軸に沿う抽出開口部を有する、インクノズルと、
前記インクノズルから
径方向に距離を空けて配置された抽出部と、
前記インクノズルの周りに配置された複数のガスノズル
であって、各々のガスノズルが前記中心軸から径方向に距離を空けて配置された、前記複数のガスノズルと、
電気流体力学モード、空気力学モード、および組合せモードを含む、3つの動作のモードと、を備え、
前記電気流体力学モードにおいて電圧が前記インクノズルと前記抽出部とにわたって印加され、
前記空気力学モードにおいてガスのジェットが前記ガスノズルの各々から放出され、
前記組合せモードにおいて前記電圧が印加されかつ前記ガスのジェットが放出される、プリンタ。
【請求項7】
前記ガスのジェットは、抽出された印刷流体を印刷表面に向かわせるため、前記電気流体力学モードにおいて1以上の前記ガスノズルから放出される、請求項
6に記載のプリンタ。
【請求項8】
前記ガスのジェットは、前記電気流体力学モードにおいて1つのみの前記ガスノズルから放出される、請求項
7に記載のプリンタ。
【請求項9】
前記抽出開口部は、前記抽出部に向か
って面する、請求項
6から請求項8のいずれか1項に記載のプリンタ。
【請求項10】
前記インクノズルは、前記抽出開口部で面取りされている、請求項
9に記載のプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本開示は、一般に、印刷に関し、電気流体力学的印刷の可能なプリンタに特に適用できる。
【背景技術】
【0002】
背景
印刷は、可読テキストおよびグラフィック画像を作り出すための技術から、伝統的な顔料または染料以外の堆積材料に適合される場合に有用な積層造形プロセスに発展してきている。電気流体力学的印刷は、eジェット印刷としても知られており、印刷ノズルから帯電または分極した印刷流体の液滴を抽出するための電場に依存する印刷技術であり、サブミクロンまたはナノメートルスケールの液滴サイズおよび空間精度を伴う他のドロップオンデマンド印刷法と比較して非常に高分解能の印刷が可能である。初期のeジェット印刷は、印刷表面が、間に電場が生み出される電極の1つであったため、電気伝導性印刷表面に限られていた。電場での一貫性もまた、印刷が進行したときに場に干渉を引き起こす堆積インクのせいで、問題であった。Bartonらの米国特許第9,415,590号は、導電性印刷表面に依存しない巧みなインクの抽出および方向付け技術によりこれらおよび他の問題に対処した。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
請求の範囲
本発明の一側面に従って、印刷表面上の堆積のためにインクノズルから印刷流体を抽出する抽出場を生成するように構成されたプリンタであって、抽出場は、電場、ガス流れ場、および電場とガス流れ場との組合せの間で変更可能である、プリンタが提供される。
【0004】
プリンタは、個別に、または、いくつかの技術的に実現可能な組み合わせのいずれかで、以下の特徴の1つ以上を含んでもよい。
【0005】
プリンタは抽出部をさらに備え、電場は、インクノズルと抽出部とにわたって印加される電圧によって生成される。任意で、抽出部は、インクノズルから横方向に距離を空けて配置される。
【0006】
プリンタは、少なくとも1つのガスノズルをさらに備え、ガス流れ場は、各ガスノズルから放出されているガスのジェットによって生成される。任意で、
プリンタは、抽出部をさらに含み、電場は、インクノズルと抽出部とにわたって印加される電圧によって生成され、そして、さらに任意で、上記組合せは、各ガスノズルから放出されているガスのジェットと同時にインクノズルと抽出部とにわたって印加される電圧によって生成され、または
少なくとも1つのガスノズルは、複数のガスノズルであり、任意で、プリンタは抽出部をさらに含み、電場は、インクノズルと抽出部とにわたって印加される電圧によって生成され、そして、さらに任意で、抽出場が電場である場合に、複数のガスノズルの1つのみがガスのジェットを放出する。
【0007】
本発明の他の側面に従って、インクノズルと、インクノズルから横方向に距離を空けて配置された抽出部と、インクノズルの周りに配置された複数のガスノズルと、電気流体力学モード、空気力学モード、および組合せモードを含む3つの動作のモードと、を備える、プリンタが提供される。これらのモードは、以下の特性を有し、電気流体力学モードにおいて電圧がインクノズルと抽出部とにわたって印加され、空気力学モードにおいてガスのジェットがガスノズルの各々から放出され、組合せモードにおいて上記電圧が印加されかつ上記ガスのジェットが放出される、プリンタが提供される。
【0008】
前段落のプリンタは、個別に、または、いくつかの技術的に実現可能な組み合わせのいずれかで、以下の特徴の1つ以上を含んでもよい。
【0009】
ガスのジェットは、抽出された印刷流体を印刷表面に向かわせるため、電気流体力学モードにおいて1以上のガスノズルから放出され、そして、任意で、ガスのジェットは、電気流体力学モードにおいて1つのみのガスノズルから放出される。
【0010】
インクノズルは、抽出部に向かう方向に面している抽出開口部を備え、そして、任意で、インクノズルは、抽出開口部で面取りされている。
【0011】
図面の簡単な説明
本発明の好ましい例示的な実施形態が、添付された図面と併せて以下に説明され、同様の名称は同様の要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】マルチモード印刷ヘッドの一部を示す等角図である。
【
図3】電気流体力学モードにおいて動作している
図1および2の印刷ヘッドを示す概略図である。
【
図4】空気力学モードにおいて動作している
図1~3の印刷ヘッドを示す概略図である。
【
図5】組合せモードにおいて動作している
図1~4の印刷ヘッドを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施形態の説明
以下に説明されるのは、少なくとも1つのモードが電気流体力学的印刷においてインク抽出のために使用されるタイプの電場を採用する、マルチモード印刷が可能なプリンタである。
図1は、基板20または従前の被印刷材料(
図2)の表面等の、印刷表面18上の堆積のためにインクノズル16から印刷流体14を抽出する抽出場を生成するように構成されたプリンタ12の印刷ヘッド10の一部を概略的に示す。さらに以下に論じられるように、抽出場は、電場、ガス流れ場、および電場とガス流れ場との組合せの間で変更可能である。さらに、抽出場は、工程パラメータの変更のみを介して変更可能かつ調節可能であり、印刷ヘッド10またはプリンタ12の物理的な構成要素の変更を必要としない。そのようなプリンタ12は、たとえば、同じ印刷ジョブ中において、極めて正確であるが比較的により遅いeジェット印刷と、正確性がより小さいが比較的により速いエアロゾル印刷とを変更するなど、シングルモードプリンタで達成不可能な工程柔軟性を提供する。
【0014】
図2の断面図をさらに参照すると、図示された印刷ヘッド10は、インクノズル16、抽出部22、および1以上のガスノズル24を含む。これらの構成要素は全て、印刷ヘッド10の一部としてお互いに関して一緒に動く、および/または、静止するように構成される。プリンタ12は、たとえば、印刷ヘッドが印刷表面において画定された堆積パターンまたは経路に沿って案内されることができるような、印刷ヘッド10と印刷表面との間の相対的な移動を提供するように構成される移動システムとともに、印刷ヘッド10が取り付けられるトレイまたは搬送部を含んでもよい。プリンタのための多軸移動システムが一般的に知られており、軸専用サーボ、ガイド、ホイール、ギア、ベルトなどを含んでもよい。適切な移動システムは、Bartonらによって米国特許第9,415,590号に開示されている。移動システムは、あらゆる方向においてかつあらゆる経路に沿って、全ての形状の基板上に、印刷流体を印刷ヘッドが堆積することを可能にするために、印刷ヘッドおよび/または印刷基板を、複数の軸に沿ってかつ複数の軸に関して、移動および回転させるように構成されてもよい。印刷ヘッド10は、たとえば、ロボットアームの端部に取り付けられ得る。
【0015】
インクノズル16は、中心軸(A)に沿って延び、その遠位端に抽出開口部26を有する。ノズル16は、動作中5psiから30psi(35~200kPa)の範囲の背圧で制御可能に加圧されてもよく印刷していないときはゼロにされてもよい印刷流体14の源と流体連通している。図示された例では、インクノズル16は、抽出開口部26が斜面内に広がって抽出部22に向かう方向に面するように、その端部で面取りされている。この特徴は、ノズル16の先端で印刷流体14のメニスカスをもたらし、これは、抽出場がない場合でも、背圧があるときに、ノズルの中心軸(Z方向)に関して非対称であって、抽出部に向かってガスノズル24のうちの1つの経路の中へ傾斜する。
【0016】
インクまたは印刷流体14は、加圧下で流れ、堆積後に固化できるあらゆる流体である。固化は、溶媒蒸発、化学反応、冷却、または焼結などの様々な機構を介することができる。いくつかの場合において、印刷流体14は、機能性インクであって、それが印刷された表面上において固化した時点で着色以外の機能を提供する印刷流体である。そのような機能の例には、電気伝導性、誘電特性、物理的構造(たとえば、剛性、弾性、または耐摩耗性)、電磁遮蔽またはフィルタリング、光学特性、電界発光などが含まれる。
【0017】
インクノズル16は、正もしくは負、パルスもしくは定DC電圧、またはAC電圧であり得る、制御可能な電源(V)に、動作可能に接続される。電源(V)はまた、動作停止されるか、ノズル16へのその接続が選択的に遮断されることができる。インクノズル16は、導電性材料(たとえば、ステンレス鋼)または非導電性材料(たとえば、プラスチックまたはガラス)から作られ得る。非導電性ノズル材料は、ノズル16と抽出部22との間のアーク放電の防止を助けることができる。いくつかの実施形態において、ノズル16は、非導電性材料から形成され、その内部表面に沿う導電層(たとえば、銅めっき)を有する。他の実施形態において、ノズル16は導電性材料から形成され、電気的絶縁層がノズル16と抽出部22との間に含まれる。導電性部分を除けば非導電性であるノズル16の導電性部分は、印刷流体14への印加された電荷の分配を助けることができるが、これは必ずしも必要ではない。
【0018】
抽出部22は、電位がノズル16と抽出部との間に印加された場合に、ノズル16と抽出部との間に電場が生成されるように、インクノズル16から距離を空けて配置される。図示された例では、抽出部22が、インクノズル16から、インクノズル16における印加電圧(V)に対する電気的接地で、横方向に距離を空けて配置される。抽出部22は、図のように、金属ロッドまたはワイヤから形成されてもよく、または、ノズル16の抽出開口部26が少なくとも部分的に生成された電場内にあるようにその遠位端の特に近くにおいて、金属もしくは他の導電性部分を有する別の材料から形成されてもよい。
【0019】
図示された印刷ヘッド10は、複数のガスノズル24を有する。この場合、ガスノズル24は管であり、管の各々はインクノズル16と平行に走っておりインクノズルを共に取り囲んでいる。図示されたガスノズル24の1つは、インクノズル16と抽出部22との間に設置されており、プリンタ12が動作しているモードに応じて異なる目的を果たすことができる二重目的ガスノズル24’である。プリンタ12は、ノズル16の抽出開口部26が設けられるガス流れ場を生成するように構成される。ガス流れ場は、ガスのジェットがガスノズル24の各々から放出されるときに生成される。ガスノズル24は、図のように、インクノズルがガスノズルを越えて延びるようにインクノズルの外表面に沿って配置された各ガスノズルの放出端部で、インクノズル16に直接隣接して配置されてもよい。各ガスノズル24は、個別にまたは共に、選択的に遮られるもしくは別途遮断されることができる制御可能な圧力および/または流量で加圧されたガス源に、流体連通している。ガス源の例示的な圧力の範囲は、1psiおよび30psiの間である。ガスは空気、窒素、または不活性ガスであってもよく、いくつかの場合において、抽出された印刷流体と反応するか、さもなければ抽出された印刷流体の状態を調整する成分(たとえば、水蒸気または触媒)を含んでもよい。用いられる場合、二重目的ガスノズル24’からのガスの流れは独立して制御可能である。ガスノズル24は、インクノズル16に対して抽出部22を絶縁するのを助けるため、プラスチックまたはガラスなどの、電気的絶縁材料から形成されてもよい。
【0020】
図面は必ずしも正確な縮尺ではないが、印刷ヘッド10の個々の構成要素のいくつかの非限定的な寸法が、実用的な実施形態のサイズ縮尺の一般的な考えを与えるために以下に提供される。図において明らかなように、印刷ヘッド10はいくらかモジュール式にされることができる。たとえば、インクノズル16、抽出部22、およびガスノズル24は、いずれも、同一または類似の外径を有する円筒状の形状を有してもよい。抽出部22は、200μmから400μmまでの範囲、または、名目上、約300μmの直径を有する金属ワイヤから作ることができる。インクノズル16は、抽出部22と同じ範囲およびまたは同じ直径の外径を有する管から作ることができる。インクノズル16の内径は、100μmから200μmまでの範囲、または、名目上、約150μmであってもよい。各ガスノズル24の放出開口部は、インクノズル16の抽出開口部26の直径以上の直径を有してもよい。一実施形態では、インクノズル16およびガスノズル24の各々は、同じ管類の切断長物から作られる。インクノズル16および抽出部22のそれぞれの遠位端は、図に示されるように印刷表面から同じ距離であってもよく、または、抽出部はインクノズルを100μmから200μm越えて延びてもよい。そしてガスノズル24の放出端部とインクノズルの端部との間のz距離は、200μmから300μmの範囲であってもよい。
【0021】
図3~5はそれぞれ、3つの異なる動作のモードにおけるプリンタ12を示す。
図3は電気流体力学モードを示し、
図4は空気力学またはエアロゾルモードを示し、
図5は組合せモードを示す。
【0022】
図3の電気流体力学(またはeジェット)モードにおいて、抽出場は、抽出部22とインクノズル16との間に生成される電場である。eジェットモードは、最も正確で最も高解像度のモードである。このモードにおいて、印加された電圧(V)は、抽出部22が電気的接地にある状態で、約10Vから約1000Vまでの範囲であってもよい。抽出開口部の大きさ、印刷流体の粘度、背圧、および、帯電または分極されるための印刷流体の能力などのいくつかの要因に応じて、閾値電圧は、抽出部22に向かう帯電した印刷流体の引力によってノズル16から印刷流体14の液滴を抽出するのに十分である。抽出電圧の例示的な範囲は、300Vおよび1000Vの間、たとえば400Vおよび700Vの間である。一貫したメニスカス(すなわち、テイラーコーン)を、抽出された印刷流体の液滴間で抽出開口部26において利用可能にし続けるため、ノズル16から印刷流体を抽出するのに不十分な基準値電圧が、10Vから300Vの範囲、たとえば200Vおよび300Vの間で、保たれてもよい。
【0023】
図3に示されるように、二重目的ガスノズル24’はガスのジェット28’を印刷表面18に向かう方向に供給する。ガスのジェット28’は、複数のガスノズル24全体が供給できるガス流れ場の一部分のみであり、指向性場として呼ばれてもよく、抽出された流体の液滴を印刷表面18に向かわせるという主要な機能を有する。抽出部22に向かって面する抽出開口部であるように、インクノズル16の面取りされた端部は、所望の方向、すなわち、抽出部22に向かってガスのジェット28’の中に、印刷流体14の抽出を促す。このモードにおいて、ノズル16からの印刷流体の抽出のためのガス流れ場は必要とされないので、ガスのジェットが他のガスノズル24から放出されることは必要とされない。インクノズル16から印刷表面18までの距離(H)は、このモードにおいて1から8mmの範囲であってもよい。印刷流体14の結果として生じる細流30は、インクノズル16の中心軸(A)からずれている。印刷流体14の細流30は、
図3における流体の固形の細流として描かれるが、一連の個々の液滴から構成されてもよい。
【0024】
図4の空気力学またはエアロゾルモードにおいて、抽出場は、ガスノズル24および印刷表面18の間に生成されるガス流れ場である。この印刷モードにおいて、ノズル16からの印刷流体14の抽出は、空気力学によってのみ駆動される。電圧はインクノズル16に印加されず(V=0)、抽出部22は接地されていなくても(すなわち、電気的に浮いていても)よい。これは、eジェットモードと比較してより低い解像度のモードであるが、eジェットモードよりかなり高速であり得る。インクノズル16の軸(A)に関して概して対称である、ガス流れ場を生成するため、ガスのジェット28が全てのガスノズル24から放出される。ガスのジェット28の流量は、インクノズル16の端部で低圧領域を誘発するのに十分に高い。
【0025】
低圧領域内のノズルの放出開口部26およびノズル16内の印刷流体にかかる背圧によって、印刷流体14が、ノズル16から抽出され、続いて、放出されたガスと抽出された印刷流体の分散した液滴とを備えるエアロゾル30’に霧化される。インクノズルに収容された印刷流体14はバルク液体形態である一方で、エアロゾルが、これによりインクノズル16の外側に形成される。エアロゾルモードは、印刷流体抽出がインクノズル背圧の閾値より上でのみ生じるように、調節可能であってもよい。印刷流体抽出は、これにより、ガスのジェットが連続的に流れる一方で背圧をそれぞれ減少および増加させることによって、停止および再開され得る。インクノズル16から印刷表面18までの距離(H)は、このモードにおいて3から30mmの範囲であってもよい。印刷流体14の、結果として生じる細流30’は、ノズル軸(A)に関して概して対称であるが、エアロゾルへのその膨張は、堆積された印刷流体の幅を、たとえば0.8mmから3mmの範囲で、eジェットモードのそれより大きくする。
【0026】
図5の組合せモードにおいて、抽出場は、
図3と併せて説明される電場と、
図4と併せて説明されるガス流れ場との組み合わせである。抽出部22は接地され、電圧(V)がインクノズル16に印加され、そしてガスのジェット28がガスノズル24の全部から放出される。このモードは、エアロゾル形態にある印刷流体の結果として生じる細流30”での電気的補助モードと見なされてもよい。しかしながら、電気流体力学によって補助されている印刷流体抽出の場合、ガスのジェット28の流量がエアロゾルモードのときより低くなるように、すなわち、ノズル16および抽出部22の間の電場からの補助により、ガス流れ場によって作られる低圧領域での圧力が同じくらい低くならなくてもよいように、より低いガス源圧力が用いられ得る。結果として、霧化されたときの印刷流体14の膨張がより小さくなり、堆積された印刷流体の幅(W)がより小さくなる。ガスのジェット28の減少した流量は、環境中に放たれる霧化された(すなわち、印刷表面に堆積されなかった)印刷流体の量の削減という結果をもたらすこともでき、これは有害な印刷流体の場合に特に有用であり、全体の材料使用効率を向上させる。
【0027】
上記の説明および添付された図は単なる例示であり、プリンタは、構成要素の様々な他の組み合わせによってこの開示の利益を実現するために構築され、使用されてもよい。たとえば、印刷ヘッドおよび/またはプリンタが、複数のインクノズルならびに対応する抽出部およびガスノズルを含んでもよい。また、印刷流体抽出のために十分なガス流れ場を提供するために1つのガスノズルだけあることが必要であってもよく、たとえば、インクノズルと同心かつ取り囲んでいる単一のガスノズルが十分とされてもよく、eジェットモードでの指向性場を提供するのに役立ってもよい。もう一つの例として、ガスノズルまたは抽出部のどちらも、インクノズルと平行である必要はない。いくつかの実施形態では、電場の一端を画定する抽出部の動作部分は、たとえば、水平に延びる。そして、いくつかの実施形態では、ガスノズルは、インクノズル軸に向かって内側に角度付けられる。無数の他の変形が可能である。
【0028】
上述の説明は本発明の1以上の実施形態と理解されるべきである。本発明は、本明細書に開示された特定の実施形態に限定されず、むしろ、以下の特許請求の範囲によってのみ定義される。さらに、上述の説明に含まれる記述は、開示された実施形態に関連し、用語または句が上記で明確に定義されている場合を除いて、本発明の範囲または特許請求の範囲で使用される用語の定義に対する限定として解釈されるべきではない。様々な他の実施形態ならびに開示された実施形態に対する様々な変更および修正が、当業者には明らかになるであろう。
【0029】
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、用語「例えば(e.g.)」、「例えば(for example)」、「例えば(for instance)」、「など(such as)」、および「など(like)」、ならびに動詞「備える(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、およびそれらの他の動詞形は、1以上の構成要素または他の項目の列挙と組み合わせて使用される場合、オープンエンドとして各々解釈されるべきであり、列挙が他の追加の構成要素または項目を除外すると見なされるべきではないことを意味する。さらに、「電気的に接続された」という用語およびその変形は、無線電気接続と、1以上のワイヤ、ケーブル、または導体(有線接続)を介して行われる電気接続との両方を包含することを意図している。他の用語は、異なる解釈を必要とする文脈で使用されない限り、それらの最も広い合理的な意味を使用して解釈されるべきである。加えて、「および/または」という用語は、包含的論理和として解釈されるべきである。さらに、たとえば、「A、B、および/またはC」という句は、以下の「A」、「B」、「C」、「AおよびB」、「AおよびC」、「BおよびC」ならびに「A、B、およびC」の全てを網羅するものとして解釈されるべきである。