(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】電動コンプレッサーモーター用バランスウェイトおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 7/04 20060101AFI20240823BHJP
C22C 9/04 20060101ALI20240823BHJP
C22C 9/00 20060101ALI20240823BHJP
C22C 38/00 20060101ALI20240823BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20240823BHJP
B22F 1/05 20220101ALI20240823BHJP
C22C 1/04 20230101ALI20240823BHJP
C22C 33/02 20060101ALI20240823BHJP
F16F 15/32 20060101ALI20240823BHJP
H02K 15/16 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
H02K7/04
C22C9/04
C22C9/00
C22C38/00 304
B22F1/00 L
B22F1/00 S
B22F1/05
B22F1/00 P
C22C1/04 A
C22C33/02 B
F16F15/32 Z
H02K15/16 A
(21)【出願番号】P 2023509777
(86)(22)【出願日】2021-08-10
(86)【国際出願番号】 KR2021010549
(87)【国際公開番号】W WO2022035175
(87)【国際公開日】2022-02-17
【審査請求日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】10-2020-0099748
(32)【優先日】2020-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】523047210
【氏名又は名称】ソン、ヨン グク
【氏名又は名称原語表記】SONG, Yeong Guk
【住所又は居所原語表記】103-1002,7-27,Aenigol-gil Ilsandong-gu, Goyang-si Gyeonggi-do 10301,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ヨン グク
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-065574(JP,U)
【文献】特開2001-214230(JP,A)
【文献】特開2001-050350(JP,A)
【文献】特開2000-145894(JP,A)
【文献】特開2003-064440(JP,A)
【文献】特開2011-089178(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/00- 7/20
H02K 15/00- 15/02
H02K 15/04- 15/16
B22F 1/00
B22F 1/05
C22C 1/04
C22C 9/04
C22C 9/00
C22C 33/02
C22C 38/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
黄銅、純銅または鉄を含む主ウェイト物質
の粉末と、
タングステン(W)、モリブデン(Mo)またはタングステンカーバイド(WC)を含む比重調節物質
の粉末との焼結体から構成され、
前記主ウェイト物質の粉末と前記比重調節物質粉末との平均粒度差は10μm以下であって、
電動コンプレッサーモーターの鉄心と内径及び外径が略同一の略半円筒状である
ことを特徴とする、
電動コンプレッサーモーター用バランスウェイト。
【請求項2】
前記主ウェイト物質は黄銅で、前記比重調節物質はタングステンであり、前記タングステンを総重量に対して10wt%以上含むことを特徴とし、比重8.5以上を有することを特徴とする、
請求項1に記載の電動コンプレッサモーター用バランスウェイト。
【請求項3】
目標比重を有するように
黄銅、純銅または鉄を含む主ウェイト物質および
タングステン(W)、モリブデン(Mo)またはタングステンカーバイド(WC)を含む比重調節物質
であって、前記主ウェイト物質の粉末と前記比重調節物質粉末との平均粒度差は10μm以下である粉末を選定する段階と、
前記比重調節物質の粉末と前記主ウェイト物質の粉末を混合して混合粉末を形成する段階と、
前記混合粉末を加圧成形した後に焼結して焼結体を形成する段階と、
前記焼結体を再加圧する段階と、を備え、
電動コンプレッサーモーターの鉄心と内径及び外径が略同一の略半円筒状に形成される
ことを特徴とする、
電動コンプレッサモーター用バランスウェイトの製造方法。
【請求項4】
前記混合粉末を形成する段階であって、
前記主ウェイト物質の粉末の平均粒度は10μm~140μmであることを特徴とする、
請求項
3に記載の電動コンプレッサモーター用バランスウェイトの製造方法。
【請求項5】
前記混合粉末を形成する段階であって、
前記比重調節物質の粉末の平均粒度は10μm~100μmであることを特徴とする、
請求項
3に記載の電動コンプレッサモーター用バランスウェイトの製造方法。
【請求項6】
前記比重調節物質の粉末の平均粒度が10μm未満である場合、
前記主ウェイト物質および比重調節物質を選定する段階と前記混合粉末を形成する段階との間に、
前記比重調節物質の粉末を顆粒化する段階と、をさらに備えることを特徴とする、
請求項
3に記載の電動コンプレッサモーター用バランスウェイトの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動コンプレッサーモーター用バランスウェイトおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バランスウェイト(balance weight)とは、機械装置の重量のバランスをとる部品で、特にモーターやホイールなどの動的装置に使用され、例えば、電気自動車、洗濯機、エレベーター、エアコンなどに広く使用される。
【0003】
一般に、エアコンや冷蔵庫などの冷房機器の内部には、冷媒を液相に還元するためのコンプレッサーが設けられ、コンプレッサーの特性上、大きなトルクを有して高速回転の可能なモーターが用いられる。このとき、ローテータの回転過程での重量偏差による振動を防止するためにバランスウェイトが必要である。
【0004】
従来、バランスウェイトの材料として鉛(Pb)を使用した。しかし、鉛は加工しやすいが、人体に有害であるため最近ではよく使用されず、長期間の使用時に腐食が発生することができるという問題を有していた。
【0005】
また、韓国公開特許10-2005-0017849号公報ではバランスウェイトの材料として黄銅が使用されたが、黄銅以上で大きく比重を高めることができないため小型化に限界があった。
【0006】
一方、従来のバランスウェイトを製造する方法としてはダイキャスティング(die-casting)技法を主に使用するが、ダイキャスティングとは金属材質の枠に材料となる金属を溶かして高い圧力で注入する方法である。真密度を得ることができる利点があるが、寸法の精度が低く精密な寸法を要求する場合では、追加の切削加工の工程が必要であるため、加工費が多くかかるという欠点がある。また、最近では、加工技術の発展で丸棒を加工して作ることができ、鍛造と加工工程を経て製造することができるが、このような工法は材料損失が多く、製造コストの高い欠点がある。
【0007】
また、切削加工を用いる場合もあるが、これは加工費が多くかかるという欠点がある。
【0008】
現代の多様な機器サイズに符合しながらも経済的な要求を満たすバランスウェイトを製造するために、既存のバランスウェイトに比べて高比重の特性を持ちながらも必要に応じて比重を調節することができる技術の開発が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】韓国公開特許第10-2005-0017849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、所望の比重を実現することができる電動コンプレッサモーター用バランスウェイトおよびその製造方法を提供することにある。
【0011】
本発明が達成しようとする技術的課題は、以上で述べた技術的課題に限定されず、言及されていない他の技術的課題は、以下の記載から本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者に明確に理解されるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記技術的課題を達成するために、本発明の一実施形態は、電動コンプレッサーモーター用のバランスウェイトを提供する。
【0013】
本発明の実施形態において、電動コンプレッサモーター用バランスウェイトは、主ウェイト物質および比重調節物質を含み得る。
【0014】
本発明の実施形態において、前記主ウェイト物質は黄銅、純銅または鉄を含み得る。
【0015】
本発明の実施形態において、前記比重調節物質は、タングステン(W)、モリブデン(Mo)またはタングステンカーバイド(WC)を含み得る。
【0016】
本発明の実施形態において、前記主ウェイト物質は黄銅で、前記比重調節物質はタングステンである。前記タングステンが総重量に対して10wt%以上含まれる電動コンプレッサーモーター用バランスウェイトは、比重8.5以上を有し得る。
【0017】
前記技術的課題を達成するために、本発明の他の実施形態は、電動コンプレッサーモーター用バランスウェイトの製造方法を提供する。
【0018】
本発明の実施形態において、電動コンプレッサモーター用バランスウェイト製造方法は、目標比重を有するように主ウェイト物質および比重調節物質を選定する段階と、前記比重調節物質の粉末と前記主ウェイト物質の粉末を混合して混合粉末を形成する段階と、前記混合粉末を加圧成形した後に焼結して焼結体を形成する段階と、前記焼結体を再加圧する段階と、を備える。
【0019】
本発明の実施形態において、前記主ウェイト物質は黄銅、純銅または鉄を含み得る。
【0020】
本発明の実施形態において、前記目標比重を前記主ウェイト物質の比重より高く設定する場合には、前記比重調節物質はタングステン(W)、モリブデン(Mo)またはタングステンカーバイド(WC)を含み得る。
【0021】
本発明の実施形態において、前記主ウェイト物質の粉末の平均粒度は10μm~140μmであり得る。
【0022】
本発明の実施形態において、前記比重調節物質の粉末の平均粒度は10μm~100μmであり得る。
【0023】
本発明の実施形態において、前記比重調節物質の粉末の平均粒度が10μm未満である場合には、前記主ウェイト物質および比重調節物質を選定する段階と前記混合粉末を形成する段階との間に、前記比重調節物質の粉末を顆粒化する段階と、をさらに備え得る。
【発明の効果】
【0024】
本発明の実施形態による電動コンプレッサモーター用バランスウェイトは、比重調節物質の含有量を変化させて必要な比重を実現することができ、比重を高めてサイズを調節することができるため、小型化に有利でモーター設計の改善が可能であり、適用する機器の範囲を広げることができる。
【0025】
また、粉末冶金法を用いるため、加工工程を減らすことができて経済的であり得る。
【0026】
本発明の効果は前記した効果に限定されるものではなく、本発明の詳細な説明または特許請求の範囲に記載された発明の構成から推論可能な全ての効果を含むものと理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の一実施形態による、電動コンプレッサモーター用バランスウェイトの斜視図、平面図、正面図およびA′-A″線断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態による、電動コンプレッサモーター用バランスウェイトのイメージである。
【
図3】本発明の一実施形態による、電動コンプレッサモーター用バランスウェイト製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下では、添付の図面を参照して本発明を説明する。しかしながら、本発明は多様で異なる形態に実施されることがあり、したがって本明細書で記載される実施形態に限定されるものではない。なお、図面において本発明を明確に説明するために説明と関係のない部分は省略しており、明細書全体を通して類似の部分に対しては類似の符号を付した。
【0029】
本明細書全体において、ある部分が他の部分と「連結(接続、接触、結合)」されていると言うとき、これは「直接的に連結」されている場合だけでなく、その中間に他の部材を間に置いて「間接的に連結」されている場合も含む。なお、ある部分がある構成要素を「含む」と言うとき、これは、特に反対の意味を有する記載が存在していない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0030】
本明細書で使用された用語は、単に特定の実施形態を説明するために使用されたものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上明らかに別の意味を示していると判断されない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」または「有する」などの用語は、本明細書に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはそれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、1つ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品またはそれらを組み合わせたものの存在または追加の可能性を予め排除していないと理解されなければならない。
【0031】
本発明の一実施形態による電動コンプレッサモーター用バランスウェイトを説明する。
【0032】
図1は、本発明の一実施形態による電動コンプレッサモーター用バランスウェイトの斜視図、平面図、正面図およびA′-A″線断面図である。
【0033】
図2は、本発明の一実施形態による電動コンプレッサモーター用バランスウェイトのイメージである。
【0034】
図1および
図2を参照すると、本発明の一実施形態による電動コンプレッサモーター用バランスウェイト10は、主ウェイト物質および比重調節物質を含む。
図1及び図2の図示から明らかなように、電動コンプレッサモーター用バランスウェイト10は略半円筒状であって、その内径及び外径が、電動コンプレッサーモーターの鉄心と略同一である。
【0035】
前記主ウェイト物質は、黄銅(brass)、純銅(Cu)または鉄(Fe)を含み得る。
【0036】
前記黄銅の亜鉛と銅の含有量比は、例えば2:8であり得るが、これに限定されない。
【0037】
前記比重制御物質は、前記主ウェイト物質よりも比重が大きい物質であり、例えば、タングステン(W)、モリブデン(Mo)またはタングステンカーバイド(WC)を含み得る。
【0038】
前記主ウェイト物質に比重を増加させる比重調節物質を含有量を調節して含めることにより目標とする比重を有し得る。
【0039】
例えば、前記主ウェイト物質は亜鉛(Zn)と銅(Cu)の含有量比が2:8である黄銅(brass)で、前記比重調節物質はタングステン(W)である。前記タングステンを総重量に対して10wt%以上含む本発明のバランスウェイトは、比重8.5以上を有し得る。
【0040】
また、例えば、前記主ウェイト物質は純銅(Cu)で、前記比重調節物質はタングステン(W)である。前記タングステンを総重量に対して6.5wt%以上含む本発明のバランスウェイトは、比重8.5以上を有し得る。
【0041】
また、例えば、前記主ウェイト物質は鉄(Fe)で、前記比重調節物質はタングステン(W)である。前記タングステンを総重量に対して8.5wt%以上含む本発明のバランスウェイトは、比重7.8以上を有し得る。
【0042】
本発明の他の実施形態による電動コンプレッサモーター用バランスウェイトの製造方法を説明する。
【0043】
図3は、本発明の一実施形態による電動コンプレッサモーター用バランスウェイト製造方法のフローチャートである。
【0044】
図3を参照すると、本発明の一実施形態による電動コンプレッサーモーター用バランスウェイト製造方法は、目標比重を有するように主ウェイト物質および比重調節物質を選定する段階(S100)と、前記比重調節物質粉末と前記主ウェイト物質粉末を混合して混合粉末を形成する段階(S200)と、前記混合粉末を加圧成形した後に焼結して焼結体を形成する段階(S300)と、前記焼結体を再加圧する段階(S400)と、を備える。
【0045】
第1段階では、目標比重を有するように主ウエイト物質および比重調節物質を選定する(S100)。
【0046】
前記主ウェイト物質は、黄銅(brass)、純銅(Cu)または鉄(Fe)を含み得る。
【0047】
前記黄銅の亜鉛と銅の含有量比は、好ましくは2:8であり得るが、これに限定されない。
【0048】
前記比重調節物質は、前記主ウェイト物質よりも比重が大きい物質であり、例えば、タングステン(W)、モリブデン(Mo)またはタングステンカーバイド(WC)を含み得る。
【0049】
前記目標比重を前記主ウェイト物質の比重よりも高く設定する場合、目標比重に適した主ウェイト物質および比重調節物質を選定して含有量を決定することができる。
【0050】
例えば、前記目標比重が8.5以上である場合、前記主ウェイト物質が黄銅で、前記比重調節物質がタングステン(W)であるとき、前記タングステンの含有量は10wt%以上であり得る。
【0051】
また、例えば、前記目標比重が8.5以上である場合に、前記主ウェイト物質が純銅(Cu)で、前記比重調節物質がタングステン(W)であるとき、前記タングステンの含有量は6.5wt%以上であり得る。
【0052】
また、例えば、前記目標比重が7.8以上である場合に、前記主ウェイト物質が鉄(Fe)で、前記比重調節物質がタングステン(W)であるとき、前記タングステンの含有量は8.5wt%以上であり得る。
【0053】
第2段階では、前記比重調節物質粉末と前記主ウェイト物質粉末を混合して混合粉末を形成する(S200)。
【0054】
前記主ウェイト物質粉末の平均粒度は10μm~140μmであり得る。
【0055】
前記主ウェイト物質粉末の平均粒度が10μm未満であるか、または140μmを超えると、成形時の粉末の充填量の変化により重量偏差が大きく発生する可能性がある。
【0056】
また、前記比重調節物質粉末の平均粒度は10μm~100μmであり得る。
【0057】
前記比重調節物質粉末の平均粒度が10μm未満であるか、または100μmを超えると、成形時の粉末充填量の変化により重量偏差が発生することができる。
【0058】
前記比重調節物質粉末の平均粒度が10μm未満である場合には、偏析防止のために顆粒化工程を経て平均粒度を10μm~100μmに作ることができる。顆粒化工程は、以下で再び説明する。
【0059】
前記主ウェイト物質粉末と比重調節物質粉末との平均粒度差は、好ましくは10μm以下であり得る。
【0060】
前記平均粒度差が10μmを超えると、偏析現象が発生することができる。
【0061】
前記偏析(segregation)とは、比重差が大きいか、または粒度差が大きい2つの粉末を混合するとき、混合過程で局所的な組成の不均一性が生じる現象である。 このような偏析を減らすためには、混合粉末の比重差や粒度差を減らすことで緩和することができる。
【0062】
前記混合は、ミキサー(mixer)を用いて行われるが、例えば、成形工程に必要な潤滑剤を0.5~10wt%添加してダブルコーンミキサー(double cone mixer)またはV型ミキサー(V-type mixer)を用いて遂行され得る。
【0063】
前記混合は、例えば10分~1時間の間遂行されてもよい。
【0064】
第3段階では、前記混合粉末を加圧成形した後に焼結して焼結体を形成する(S300)。
【0065】
前記加圧成形は、4ton~12ton/cm2の圧力で5~12EA/分の間行われることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0066】
前記焼結は、300℃~1450℃の温度で、10分~2時間の間行われることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0067】
例えば、前記主ウェイト物質が黄銅で、前記比重調節物質がタングステン(W)である場合には、N2およびH2を含む雰囲気の中で600~1000℃で20~40分の間焼結して黄銅-タングステンの焼結体を製造することができる。
【0068】
第4段階では、焼結体を再加圧することができる(S400)。
【0069】
バランスウェイトを小型化するためには、密度は高ければ高いほど有利であるが、前記焼結体は気孔を含んでいてもよい。そのため、最大限に密度を高めるために後処理で圧力を加えて気孔を最小化することができる。
【0070】
前記再加圧工程は、前記焼結体を金型に入れて圧力を加えて遂行され得るが、これにより前記焼結体の寸法の精度が高くなり、密度が向上することができる。
【0071】
前記再加圧時の圧力は4ton~12ton/cm2であることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0072】
粉末冶金法は、ダイキャスティング法より製造費が少なくかかるものの、真密度を得ることが難しくて密度の低い欠点があった。そこで、これを補完するために比重の高い比重調節物質を適量添加して比重を合わせるか、またはむしろ大きく高めることができる。
【0073】
例えば、黄銅鍛造品、加工品、ダイキャスティング品などを使用する場合では、その比重は8.67g/cm3であり、粉末冶金工法で製造する場合では、黄銅90wt%に比重調節物質のタングステンを10wt%混合して成形-焼結-再加圧工程を経て8.67g/cm3以上の比重が得られる。なお、必要に応じて比重調節物質をさらに添加する場合では、バランスウェイトの大きさを小さくすることができるため小型化に有利であり得る。
【0074】
なお、粉末冶金法は生産性が高く、材料利用率が良く、寸法の精度が高く、最終の形状に近づけて製造することができるため、切削加工を大幅に省略することができる。
【0075】
追加的に、前記比重調節物質粉末の平均粒度が10μm未満である場合には、前記主ウェイト物質および比重調節物質を選定する段階(S100)と前記混合粉末を形成する段階(S200)との間に、前記比重調節物質の粉末を顆粒化する段階と、をさらに備え得る。
【0076】
前記比重調節物質粉末の平均粒度が10μm未満である場合には、混合工程で粒子分布が不均一な偏析が発生することができ、成形時にも粒子の偏析現象と製品間重量のばらつきが発生することができる。したがって、平均粒度を10μm以上に増加させるために前記顆粒化を行う必要がある。
【0077】
前記顆粒化(granulation)は、前記比重調節物質粉末を液体およびバインダー(binder)を含むスラリー(slurry)材料と混合して熱風の条件で噴射・乾燥して遂行され得る。
【0078】
前記液体は、エタノール(ethnol)または水を使用することができ、これらに限定されない。
【0079】
前記バインダーは、ポリビニルブチラール(PolyVinyl Butyral:PVB)またはポリビニルアルコール(PolyVinyl Alcohol:PVA)を使用することができ、これらに限定されない。前記バインダーは、顆粒化するときに結合力を付与する機能を果たす。
【0080】
前記顆粒化工程により、比重調節物質粉末の平均粒度が10μm以上となるため、偏析現象を防止することができる。
【0081】
製造例1
目標比重を8.5以上に設定した後、主ウェイト物質をCu 80wt%とZn20wt%で組成された黄銅(brass)に選定し、比重調節物質をタングステン(W)に選定した。次に、粒度10~140μmの黄銅粉末を準備し、粒度2~10μmのタングステン粉末を顆粒化して粒度10~100μmのタングステン顆粒粉末を準備した。次に、前記黄銅粉末と前記タングステン顆粒粉末を90:10の重量パーセント含有量比で準備し、潤滑剤でステアリン酸亜鉛(Zinc stearate)粉末を0.7wt%添加してダブルコーンミキサーで10~40分程度混合した。次に、前記混合粉末を粉末自動成形プレスにより圧力4~10ton/cm3で加圧成形し、この成形体を還元性雰囲気(H2+N2ガス)で温度600~900℃で焼結した後、再加圧して黄銅-タングステンの焼結体を製造した。
【0082】
製造例2
前記製造例1で黄銅粉末とタングステン顆粒粉末を85:15の重量パーセント含有量比で準備することを除いては、同様の方法で製造例2の黄銅-タングステンの焼結体を製造した。
【0083】
製造例3
目標比重を8.6以上に設定した後、主ウェイト物質を純銅に選定し、比重調節物質をタングステン(W)に選定した。次に、粒度10~140μmの純銅粉末を準備し、粒度2~10μmのタングステン粉末を顆粒化して粒度10~100μmのタングステン顆粒粉末を準備した。次に、前記純銅粉末と前記タングステン顆粒粉末を93.5:6.5の重量パーセント含有量比で準備し、潤滑剤でステアリン酸亜鉛(Zinc stearate)粉末を0.7wt%添加してダブルコーンミキサーで10~40分程度混合した。次に、前記混合粉末を粉末自動成形プレスにより圧力4~10ton/cm3で加圧成形し、この成形体を還元性雰囲気(H2+N2ガス)で温度900~1080℃で焼結した後、再加圧して純銅-タングステンの焼結体を製造した。
【0084】
製造例4
前記製造例3において、純銅粉末と前記タングステン顆粒粉末を85:15の重量パーセント含有率比で準備することを除いては、同様の方法で製造例4の純銅-タングステンの焼結体を製造した。
【0085】
製造例5
目標比重を7.8以上に設定した後、主ウェイト物質を鉄に選定し、比重調節物質をタングステンに選定した。次に、粒度10~140μmの鉄粉末を準備し、粒度2~10μmのタングステン粉末を顆粒化して粒度10~100μmのタングステン顆粒粉末を準備した。次に、前記鉄粉末と前記タングステン顆粒粉末を91.5:8.5の重量パーセント含有量比で準備し、潤滑剤でステアリン酸亜鉛(Zinc stearate)粉末を0.7wt%添加してダブルコーンミキサーで10~40分程度混合した。次に、前記混合粉末を粉末自動成形プレスにより圧力4~10ton/cm3で加圧成形し、この成形体を還元性雰囲気(H2+N2ガス)で温度1100~1400℃で焼結した後、再加圧して鉄-タングステンの焼結体を製造した。
【0086】
製造例6
製造例5において、鉄粉末と前記タングステン顆粒粉末を85:15の重量パーセント含有率比で準備することを除いては、同様の方法で製造例6の純銅-タングステンの焼結体を製造した。
【0087】
比較例1
亜鉛と銅の含有量比が2:8の黄銅材の鍛造品、加工品またはダイキャスティング品を購入した。
【0088】
比較例2
銅(Cu)100%材質の鍛造品、加工品、ダイキャスティング品を購入した。
【0089】
比較例3
鉄(Fe)100%材質の鍛造品、加工品、ダイキャスティング品を購入した。
【0090】
【0091】
前記表1は、製造例と比較例における測定密度である。前記表1を参照すると、比重調節物質を混合せずに製造した比較例に比べて、比重調節物質を混合して焼結して製造した製造例の密度が高かった。
【0092】
本発明の実施形態による電動コンプレッサモーター用バランスウェイトは、比重調節物質の含有量を変化させて必要な比重を実現することができ、比重を高めて大きさを調節することができ、小型化に有利でモーター設計の改善が可能であり、適用機器の範囲を広げることができる。
【0093】
また、粉末冶金法を用いるため、加工工程を減らすことができて経済的であり得る。
【0094】
前述した本発明の説明は例としてのものであり、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態に容易に変更可能であることが理解できるだろう。したがって、以上で説明した実施形態はすべての点で例としてのものであり、限定的なものではないと理解すべきである。例えば、単一の形態で説明されている各構成要素は分散されて実施されることもあり、同様に分散されていると説明されている構成要素も結合された形で実施されることがある。
【0095】
本発明の範囲は、後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味および範囲、並びにその均等概念から導出される全ての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0096】
10:バランスウェイト