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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】繊維用集束剤および繊維
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/507 20060101AFI20240823BHJP
   D06M 15/53 20060101ALI20240823BHJP
   C03C 25/323 20180101ALI20240823BHJP
   D01F 9/12 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
D06M15/507
D06M15/53
C03C25/323
D01F9/12
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2024000291
(22)【出願日】2024-01-04
【審査請求日】2024-01-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 旬
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2023/238500(WO,A1)
【文献】国際公開第2023/238236(WO,A1)
【文献】国際公開第2023/100901(WO,A1)
【文献】特開2022-054691(JP,A)
【文献】特開2016-223033(JP,A)
【文献】国際公開第2015/045618(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M13/00- 15/715
C03C25/00- 25/70
D01F 9/00- 9/04
C08L 1/00-101/14
C07C67/00- 67/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(1)で表されるエステル化合物(A)および非イオン性界面活性剤(B)を含有する繊維用集束剤であって、
下記化学式(1)において、mが1であるエステル化合物(A1)およびmが2であるエステル化合物(A2)を含有し、
前記エステル化合物(A1)および前記エステル化合物(A2)の質量比が、0.1~10であり、
前記繊維用集束剤の不揮発分中の前記エステル化合物(A1)および前記エステル化合物(A2)の含有割合の合計が、0.5質量%以上30質量%以下であることを特徴とする繊維用集束剤。
【化1】
:C1~C3のアルキレン基R:C1~C4のアルキレン基またはアルケニル基R:それぞれ独立にC2またはC3のアルキレン基(但し、n、n、n、nがそれぞれ2以上である場合、当該アルキレン基は1種単独または2種とすることができる)m:1以上2以下の整数
n1+n2、及びn3+n4の数値が2~6
【請求項2】
前記質量比が0.5~5である請求項1に記載の繊維用集束剤。
【請求項3】
前記含有割合の合計が5~25質量%である請求項1に記載の繊維用集束剤。
【請求項4】
前記繊維用集束剤の1質量%水性液のpHが5.0~8.0である請求項1に記載の繊維用集束剤。
【請求項5】
前記エステル化合物(A)および前記非イオン性界面活性剤(B)の含有割合の合計を100質量%としたとき、前記エステル化合物(A)を1~30質量%、および前記非イオン性界面活性剤(B)を10~99質量%の割合で含有する請求項1に記載の繊維用集束剤。
【請求項6】
前記エステル化合物(A)以外のポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ビニルエステル樹脂から選ばれる少なくとも1つの樹脂(C)をさらに含有する請求項1に記載の繊維用集束剤。
【請求項7】
前記エステル化合物(A)、前記非イオン性界面活性剤(B)および前記樹脂(C)の含有割合の合計を100質量%としたとき、前記エステル化合物(A)を1~30質量%、前記非イオン性界面活性剤(B)を10~99質量%および前記樹脂(C)を0~89質量%(0を除く)の割合で含有する請求項に記載の繊維用集束剤。
【請求項8】
請求項1~の何れか一項に記載の繊維用集束剤が付着していることを特徴とする繊維。
【請求項9】
強化繊維である請求項に記載の繊維。
【請求項10】
炭素繊維またはガラス繊維に前記繊維用集束剤が付着している請求項に記載の繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維用集束剤および繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
集束剤は、炭素繊維などの繊維材料に塗布される薬剤であり、繊維材料の損傷を抑える、繊維材料の集束性を高める、などの目的で使用される。
【0003】
特許文献1には、複合材料強化繊維の集束用樹脂組成物であって、該集束用樹脂組成物を含浸させたウールフェルトの、マトリックス樹脂のメチルエチルケトン溶液(濃度65重量%)への浸透速度(Pe)が1~40secであることを特徴とする繊維の集束用樹脂組成物が記載してある。
【0004】
特許文献1に記載の集束剤は、複合材料に使用される各種の有機繊維または無機繊維に付着処理することにより、繊維の加工工程において各種のガイド類と接触し、摩擦を受けても毛羽や糸切れの発生を抑えることができる(耐擦過性)ものとなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-316980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の集束剤は、樹脂含浸性について改善の余地があった。
【0007】
従って、本発明の目的は、樹脂含浸性、平滑性および集束性に優れた繊維用集束剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る繊維用集束剤は、下記化学式(1)で表されるエステル化合物(A)および非イオン性界面活性剤(B)を含有する繊維用集束剤であって、その特徴構成は、下記化学式(1)において、mが1であるエステル化合物(A1)およびmが2であるエステル化合物(A2)を含有し、前記エステル化合物(A1)および前記エステル化合物(A2)の質量比が、0.1~10であり、前記繊維用集束剤の不揮発分中の前記エステル化合物(A1)および前記エステル化合物(A2)の含有割合の合計が、0.5質量%以上30質量%以下であることを特徴とする点にある。
【0009】
【化1】
【0010】
:C1~C3のアルキレン基
:C1~C4のアルキレン基またはアルケニル基
:それぞれ独立にC2またはC3のアルキレン基(但し、n、n、n、nがそれぞれ2以上である場合、当該アルキレン基は1種単独または2種とすることができる)m:1以上2以下の整数
n1+n2、及びn3+n4の数値が2~6
【0011】
本構成によれば、化学式(1)において、mが1であるエステル化合物(A1)およびmが2であるエステル化合物(A2)の両者を含有することで、樹脂含浸性、平滑性および集束性に優れた繊維用集束剤になり得る。
また、本構成によれば、樹脂含浸性、平滑性および集束性に優れた繊維用集束剤になり得るエステル化合物(A1)およびエステル化合物(A2)の存在割合(質量比および含有割合の合計)を規定することができる。
【0012】
本発明に係る繊維用集束剤の更なる特徴構成は、前記質量比を0.5~5とした点にある。
【0013】
本構成によれば、樹脂含浸性、平滑性および集束性に優れた繊維用集束剤になり得るエステル化合物(A1)およびエステル化合物(A2)の存在割合(質量比)を詳細に規定することができる。
【0014】
本発明に係る繊維用集束剤の更なる特徴構成は、前記含有割合の合計を5~25質量%とした点にある。
【0015】
本構成によれば、樹脂含浸性、平滑性および集束性に優れた繊維用集束剤になり得るエステル化合物(A1)およびエステル化合物(A2)の存在割合(含有割合の合計)を詳細に規定することができる。
【0016】
本発明に係る繊維用集束剤の更なる特徴構成は、前記繊維用集束剤の1質量%水性液のpHを5.0~8.0とした点にある。
【0017】
本構成によれば、水性液のpHが上記の要件を満たすと、樹脂含浸性、平滑性および集束性に優れた繊維用集束剤になり得、特に平滑性が優れた効果が得られる。
【0018】
本発明に係る繊維用集束剤の更なる特徴構成は、前記エステル化合物(A)および前記非イオン性界面活性剤(B)の含有割合の合計を100質量%としたとき、前記エステル化合物(A)を1~30質量%、および前記非イオン性界面活性剤(B)を10~99質量%の割合で含有する点にある。
【0019】
本構成によれば、樹脂含浸性、平滑性および集束性に優れた繊維用集束剤になり得るエステル化合物(A)および非イオン性界面活性剤(B)の含有割合を規定することができる。
【0020】
本発明に係る繊維用集束剤の更なる特徴構成は、前記エステル化合物(A)以外のポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ビニルエステル樹脂から選ばれる少なくとも1つの樹脂(C)をさらに含有する点にある。
【0021】
本構成によれば、樹脂(C)を含有することで、繊維材料に集束性を付与し易くなる。
【0022】
本発明に係る繊維用集束剤の更なる特徴構成は、前記エステル化合物(A)、前記非イオン性界面活性剤(B)および前記樹脂(C)の含有割合の合計を100質量%としたとき、前記エステル化合物(A)を1~30質量%、前記非イオン性界面活性剤(B)を10~99質量%および前記樹脂(C)を0~89質量%(0を除く)の割合で含有する点にある。
【0023】
本構成によれば、樹脂含浸性および平滑性に優れ、集束性により優れた繊維用集束剤になり得るエステル化合物(A)、非イオン性界面活性剤(B)および樹脂(C)の含有割合を規定することができる。
【0024】
本発明に係る繊維の特徴構成は、上記の何れか一項に記載の繊維用集束剤が付着していることを特徴とする点にある。
【0025】
本構成によれば、本発明を樹脂、セラミック、金属などを母材とする複合材料の強化に適用しやすい。
【0026】
本発明に係る繊維の更なる特徴構成は、強化繊維とした点にある。
【0027】
本構成によれば、本発明を樹脂、セラミック、金属などを母材とする複合材料の強化にさらに適用しやすい。
【0028】
本発明に係る繊維の更なる特徴構成は、炭素繊維またはガラス繊維に前記繊維用集束剤が付着した点にある。
【0029】
本構成によれば、本発明を樹脂、セラミック、金属などを母材とする複合材料の強化に特に適用しやすい。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の繊維用集束剤(以下、単に「集束剤」と称する)は、下記化学式(1)で表されるエステル化合物(A)および非イオン性界面活性剤(B)を含有する繊維用集束剤であって、下記化学式(1)において、mが1であるエステル化合物(A1)およびmが2であるエステル化合物(A2)を含有し、前記エステル化合物(A1)および前記エステル化合物(A2)の質量比が、0.1~10であり、前記繊維用集束剤の不揮発分中の前記エステル化合物(A1)および前記エステル化合物(A2)の含有割合の合計が、0.5質量%以上30質量%以下であることを特徴とする。
【0031】
【化2】
【0032】
:C1~C3のアルキレン基
:C1~C4のアルキレン基またはアルケニル基
:それぞれ独立にC2またはC3のアルキレン基(但し、n、n、n、nがそれぞれ2以上である場合、当該アルキレン基は1種単独または2種とすることができる)
m:1以上2以下の整数
n1+n2、及びn3+n4の数値が2~6
【0033】
はC1~C3のアルキレン基であり、例えばメチレン基あるいはイソプロピリデン基とすることができる。
【0034】
はC1~C4のアルキレン基またはアルケニル基、例えばマレイン酸からカルボキシル基を除いた残基、あるいはフマル酸からカルボキシル基を除いた残基とすることができる。
【0035】
はC2またはC3のアルキレン基、例えばエチレン基、あるいはプロピレン基とすることができる
【0036】
上記の化学式(1)で表されるエステル化合物(A)は、原料となる二価アルコールとカルボン酸が反応して生成される化合物である。二価アルコールは例えば以下のようにして製造することができるが、これに限定されるものではない。
【0037】
即ち、分子量が異なる複数の二価アルコールの混合物を原料として溶媒(テトラヒドロフラン)に溶解し、GPC分取装置を用いて分子量毎に分取する。分取液を加熱冷却装置及び撹拌装置を備えた反応容器に仕込み、例えば80~100℃で20mmHgまで徐々に減圧して溶媒(テトラヒドロフラン)を除去し、二価アルコールを得ることができる。
【0038】
二価アルコールの混合物としては、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加体(三洋化成工業株式会社製ニューポール(登録商標)BPEシリーズ(ニューポール(登録商標)BPE-20、ニューポール(登録商標)BPE-40、ニューポール(登録商標)BPE-100、ニューポール(登録商標)BPE-60など))、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加体(三洋化成工業株式会社製ニューポール(登録商標)BPシリーズ(ニューポール(登録商標)BP-2P、ニューポール(登録商標)BP-3P、ニューポール(登録商標)BP-5Pなど))、などが例示されるが、これらに限定されない。
【0039】
カルボン酸は、例えばマレイン酸、フマル酸、アジピン酸などを使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
上記の二価アルコールおよびカルボン酸を使用し、以下のようにしてエステル化合物(A)を製造することができる。
【0041】
即ち、二価アルコールおよびカルボン酸をフラスコなどの容器に加えて例えば120℃で加熱溶解した後、窒素気流下でテトラブトキシチタンを加えて例えば180℃に加熱してエステル化反応を行うことでエステル化合物を得ることができる。
【0042】
得られたエステル化合物を上記のGPC分取装置を用いて分子量毎に分取した後、それぞれの分取液を加熱冷却装置及び撹拌装置を備えた上記の反応容器に仕込み、例えば90℃で20mmHgまで徐々に減圧してテトラヒドロフランを除去し、化学式(1)で示されるエステル化合物(A)を得ることができる。
【0043】
非イオン性界面活性剤(B)は、当技術分野において通常使用される任意の非イオン性界面活性剤でありうる。非イオン性界面活性剤(B)は、一種類の化合物であってもよいし、複数種類の化合物の混合物であってもよい。
【0044】
非イオン性界面活性剤(B)は、例えばヒドロキシ基を有する化合物のアルキレンオキサイド付加体でありうる。ヒドロキシ基を有する化合物としては、トリスチレン化フェノール、ジスチレン化フェノール、ビスフェノールA等の芳香族アルコールや、ドデシルアルコール、イソドデシルアルコール、テトラデシルアルコール、トリデシルアルコール、2級ドデシルアルコール、2級トリデシルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、オレイルアルコール、イソノニルアルコール等の脂肪族アルコールなどが例示され、芳香族アルコールであることが好ましい。アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドが例示されるが、これらに限定されない。したがって、非イオン性界面活性剤(B)は、好ましくは芳香族アルコールのアルキレンオキサイド付加物でありうる。
【0045】
なお、非イオン性界面活性剤(B)において、複数種類のアルキレンオキサイドが併用されてもよい。アルキレンオキサイドの付加数は、非イオン性界面活性剤(B)一モルあたり6モル以上40モル以下でありうるが、これに限定されない。
【0046】
非イオン性界面活性剤(B)は、一種類の化合物であってもよいし、複数種類の化合物の混合物であってもよい。
【0047】
本構成のように、化学式(1)において、mが1であるエステル化合物(A1)およびmが2であるエステル化合物(A2)の両者を含有することで、樹脂含浸性、平滑性および集束性に優れた繊維用集束剤になり得る。エステル化合物(A1)を含有することで平滑性が優れたものとなり、エステル化合物(A2)を含有することで樹脂含浸性が優れたものとなると考えられる。
【0048】
エステル化合物(A1)およびエステル化合物(A2)の質量比A2/A1は、0.1~10としてあり、0.5~5とするのが好ましい。
【0049】
本発明の集束剤は、繊維用集束剤の不揮発分中のエステル化合物(A1)およびエステル化合物(A2)の含有割合の合計を、0.5質量%以上30質量%以下としてあり、さらに5~25質量%とするのが好ましい。
【0050】
本構成によれば、樹脂含浸性、平滑性および集束性に優れた繊維用集束剤になり得るエステル化合物(A1)およびエステル化合物(A2)の存在割合を規定することができる。
【0051】
本発明の集束剤は、繊維用集束剤の1質量%水性液のpHを5.0~8.0とするのが好ましい。
【0052】
水性液のpHが上記の要件を満たすと、樹脂含浸性、平滑性および集束性に優れた繊維用集束剤になり得、特に平滑性が優れた効果が得られる。
【0053】
本発明の集束剤は、エステル化合物(A)および非イオン性界面活性剤(B)の含有割合の合計を100質量%としたとき、エステル化合物(A)を1~30質量%、および非イオン性界面活性剤(B)を10~99質量%の割合で含有するのが好ましい。
【0054】
本構成では、樹脂含浸性、平滑性および集束性に優れた繊維用集束剤になり得るエステル化合物(A)および非イオン性界面活性剤(B)の含有割合を規定することができる。
【0055】
本発明の集束剤は、エステル化合物(A)以外のポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ビニルエステル樹脂から選ばれる少なくとも1つの樹脂(C)をさらに含有するのが好ましい。
【0056】
ポリエステル樹脂は、ジオール単量体とジカルボン酸単量体との共重合体である。したがってポリエステル樹脂はその分子中に、ジオール単量体(ジオール化合物またはその誘導体である。)に由来する部分構造であるジオール残基と、ジカルボン酸単量体(ジカルボン酸またはその誘導体である。)に由来する部分構造であるジカルボン酸残基と、を有する。ポリエステル樹脂の組成は分子を構成する単量体の割合(モル比率)によって特定される。
【0057】
ポリエステル樹脂を構成するジオール単量体として、一種類または複数種類のジオール化合物が含まれうる。ジオール化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加体(三洋化成工業株式会社製ニューポール(登録商標)BPEシリーズ(ニューポール(登録商標)BPE-20、ニューポール(登録商標)BPE-40、ニューポール(登録商標)BPE-100、ニューポール(登録商標)BPE-60など))、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加体(三洋化成工業株式会社製ニューポール(登録商標)BPシリーズ(ニューポール(登録商標)BP-2P、ニューポール(登録商標)BP-3P、ニューポール(登録商標)BP-5Pなど))、などが例示されるが、これらに限定されない。
【0058】
ポリエステル樹脂を構成するジカルボン酸単量体として、一種類または複数種類のジカルボン酸化合物が含まれうる。ジカルボン酸化合物としては、イソフタル酸、テレフタル酸、フマル酸、マレイン酸、5-スルホイソフタル酸アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩など)などが例示されるが、これらに限定されない。
【0059】
ポリエステル樹脂の非限定的な例として、ジエチレングリコール、イソフタル酸、および5-スルホイソフタル酸ナトリウム塩の共重合体、エチレングリコール、ジエチレングリコール、イソフタル酸、テレフタル酸、および5-スルホイソフタル酸ナトリウム塩の共重合体、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加体およびフマル酸の共重合体(換言すればビスフェノールA、エチレングリコール、およびフマル酸の共重合体である。)、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加体およびマレイン酸の共重合体(換言すればビスフェノールA、エチレングリコール、およびマレイン酸の共重合体である。)、が挙げられる。なお、ポリエステル樹脂は、一種類の化合物であってもよいし、複数種類の化合物の混合物であってもよい。
【0060】
エステル化合物(A)以外のポリエステル樹脂は、上記で例示したポリエステル樹脂の何れか使用することができる。
【0061】
エポキシ樹脂は、例えば三菱ケミカル株式会社製jER(登録商標)シリーズ(jER(登録商標)828、jER(登録商標)834、jER(登録商標)1001、jER(登録商標)1002、jER(登録商標)1004など)、NAN YA PLASTIC CORPORATION製NPESシリーズ(NPES301、NPES302など)、および、住友化学株式会社製スミエポキシ(登録商標)シリーズ(スミエポキシ(登録商標)ELM-434、スミエポキシ(登録商標)ELM-100など)、などでありうるが、これらに限定されない。
【0062】
ウレタン樹脂は、DISPERCOLL U 54(COVESTRO社製)、スーパーフレックス500M(第一工業製薬株式会社製)、スーパーフレックス650(第一工業製薬株式会社製)、スーパーフレックス860(第一工業製薬株式会社製)、スーパーフレックスE-2000(第一工業製薬株式会社製)などでありうるが、これらに限定されない。
【0063】
ビニルエステル樹脂は、たとえば上記に例示されるいずれかのエポキシ樹脂とメタクリル酸との反応物でありうる。なお、当該反応物を生成する際の反応基質の量比は、エポキシ樹脂のエポキシ価とメタクリル酸の酸価とが等しくなるようにしてもよいし、いずれかが大きくなるようにしてもよい。
【0064】
本発明の集束剤は、上記の何れかの樹脂(C)を含有することで、繊維材料に集束性を付与し易くなる。
【0065】
本発明の集束剤は、エステル化合物(A)、非イオン性界面活性剤(B)および樹脂(C)の含有割合の合計を100質量%としたとき、エステル化合物(A)を1~30質量%、非イオン性界面活性剤(B)を10~99質量%および樹脂(C)を0~89質量%(0を除く)の割合で含有するのが好ましい。
【0066】
本構成によれば、樹脂含浸性および平滑性に優れ、集束性により優れた繊維用集束剤になり得るエステル化合物(A)、非イオン性界面活性剤(B)および樹脂(C)の含有割合を規定することができる。
【0067】
(その他の成分)
本実施形態に係る集束剤は、エステル化合物(A)、非イオン性界面活性剤(B)および樹脂(C)の他の成分を含有していてもよい。かかる他の成分としては、防腐剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤(変性シリコーン等)、樹脂(C)以外の樹脂などが例示されるが、これらに限定されない。
【0068】
また、集束剤が繊維材料のサイジング処理に供される場合の典型的な態様として、エステル化合物(A)等の不揮発分を希釈剤で希釈した態様(一般にサイジング液とも称される)が例示される。かかる希釈剤も、他の成分の一例である。希釈剤としては、水(水道水、工業用水、イオン交換水、蒸留水など)、アセトン、メチルエチルケトン、N-メチル-2-ピロリドンなどが例示されるが、これらに限定されない。なお、不揮発分を希釈剤で希釈した態様の集束剤における不揮発分の濃度は特に限定されないが、たとえば10質量%以上60質量%以下でありうる。集束剤の不揮発分とは、集束剤を105℃で2時間熱風乾燥機にて加熱した後に揮発せずに残った成分をいい、その濃度とは、集束剤の質量に対する当該集束剤中の不揮発分の質量の割合をいう。
【0069】
〔集束剤の製造方法〕
本実施形態に係る集束剤は、エステル化合物(A)および非イオン性界面活性剤(B)、ならびに任意に加えられうる成分を公知の方法で混合することによって得られうる。たとえばエステル化合物(A)および非イオン性界面活性剤(B)、ならびに任意に加えられうる成分を20℃から90℃の間で撹拌しながら5時間かけて水を添加することで製造しうる。
【0070】
〔集束剤の使用方法〕
本実施形態に係る集束剤は、繊維材料のサイジング処理に用いられる。サイジング処理は、繊維材料に集束剤を付着させる処理であり、その方法としては、当分野において繊維材料にこの種の集束剤を付着させる際に通常用いられる方法を適用できる。すなわち、浸漬給油法、スプレー給油法、ローラー給油法、およびガイド給油法などが採用されうる。
なお、それぞれの方法を適用するにあたり、集束剤が水等の希釈剤で適宜希釈されうる。
【0071】
繊維材料に対する集束剤の付着量は特に限定されない。たとえば、集束剤が付着した繊維材料全体に対して集束剤が0.1質量%以上3質量%以下付着していることが好ましい。
【0072】
なお、強化繊維を製造する際に本実施形態に係る集束剤を適用すると、繊維材料に当該集束剤が付着した強化繊維が得られる。この強化繊維は、本発明に係る繊維の一例である。繊維材料は無機繊維であることが好ましく、この場合の強化繊維は集束剤が付着している無機繊維である。また、無機繊維が炭素繊維またはガラス繊維であると、より好ましい。
【0073】
これらの強化繊維は、樹脂、セラミック、金属などを母材とする複合材料に使用されうる。上記の強化繊維と、熱硬化性樹脂であるマトリクス樹脂と、を含むことを特徴とする複合材料は、本発明の一実施形態である。
【0074】
〔その他の実施形態〕
本発明の繊維用集束剤は、下記化学式(1)で表されるエステル化合物(A)および非イオン性界面活性剤(B)を含有する繊維用集束剤であって、下記化学式(1)において、mが1であるエステル化合物(A1)およびmが2であるエステル化合物(A2)を含有するものでありうる。
【0075】
【化3】
【0076】
:C1~C3のアルキレン基
:C1~C4のアルキレン基またはアルケニル基
:それぞれ独立にC2またはC3のアルキレン基(但し、n 、n 、n 、n がそれぞれ2以上である場合、当該アルキレン基は1種単独または2種とすることができる)
m:1以上2以下の整数
,n ,n ,n :それぞれ独立に1以上20以下の整数
【0077】
はC1~C3のアルキレン基であり、例えばメチレン基あるいはイソプロピリデン基とすることができる。
【0078】
はC1~C4のアルキレン基またはアルケニル基、例えばマレイン酸からカルボキシル基を除いた残基、あるいはフマル酸からカルボキシル基を除いた残基とすることができる。
【0079】
はC2またはC3のアルキレン基、例えばエチレン基、あるいはプロピレン基とすることができる。n ,n ,n ,n は1以上20以下の整数としてあるが、1~10とするのが好ましい。
【0080】
本構成によれば、化学式(1)において、mが1であるエステル化合物(A1)およびmが2であるエステル化合物(A2)の両者を含有することで、樹脂含浸性、平滑性および集束性に優れた繊維用集束剤になり得る。
【0081】
本態様の繊維用集束剤は、繊維用集束剤の不揮発分中のエステル化合物(A1)およびエステル化合物(A2)の含有割合の合計を、0.5質量%以上30質量%以下とするのが好ましく、さらに5~25質量%とするのがより好ましい。
【0082】
本構成によれば、樹脂含浸性、平滑性および集束性に優れた繊維用集束剤になり得るエステル化合物(A1)およびエステル化合物(A2)の存在割合を規定することができる。
【0083】
その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。
【実施例
【0084】
〔実施例1〕
本発明の化学式(1)で表されるエステル化合物(A)を以下の手法により製造した。
【0085】
まず、原料となる二価アルコールを製造した。ニューポール(登録商標)BPE-20(三洋化成工業社製)200gおよびニューポール(登録商標)BPE-60(三洋化成工業社製)200gの合計400gを、溶媒であるテトラヒドロフランで固形分濃度が2%になるように溶解し、GPC分取装置(リサイクル分取HPLC:LC-9130NEXT(日本分析工業(株)製))を用いて分子量毎に分取した。
【0086】
その後、それぞれの分取液を加熱冷却装置および撹拌装置を備えた反応容器(ガラス製四つ口フラスコ反応容器)に仕込み、90℃で20mmHgまで徐々に減圧してテトラヒドロフランを除去し、以下の化合物(N-1)~(N-5)(二価アルコール)を得た。
【0087】
・化学式(2)中のRがイソプロピリデン基、Rがエチレン基であり、n+nが2であるビスフェノールAにエチレンオキサイドが2モル付加した化合物(N-1)(分子量316)
・化学式(2)中のRがイソプロピリデン基、Rがエチレン基であり、n+nが3であるビスフェノールAにエチレンオキサイドが3モル付加した化合物(N-2)(分子量360)
・化学式(2)中のRがイソプロピリデン基、Rがエチレン基であり、n+nが4であるビスフェノールAにエチレンオキサイドが4モル付加した化合物(N-3)(分子量404)
・化学式(2)中のRがイソプロピリデン基、Rがエチレン基であり、n+nが5であるビスフェノールAにエチレンオキサイドが5モル付加した化合物(N-4)(分子量448)
・化学式(2)中のRがイソプロピリデン基、Rがエチレン基であり、n+nが6であるビスフェノールAにエチレンオキサイドが6モル付加した化合物(N-5)(分子量492)
【0088】
【化4】
【0089】
また、ニューポール(登録商標)BP-2P(三洋化成工業社製)400gをテトラヒドロフランで固形分濃度が2%になるように溶解し、上記のGPC分取装置を用いて分子量毎に分取した。その後、それぞれの分取液を加熱冷却装置および撹拌装置を備えた上記の反応容器に仕込み、90℃で20mmHgまで徐々に減圧してテトラヒドロフランを除去し、以下の化合物(N-6)(二価アルコール)を得た。
【0090】
・化学式(2)中のRがイソプロピリデン基、Rがプロピレン基であり、n+nが2であるビスフェノールAにプロピレンオキサイドが2モル付加した化合物(N-6)(分子量344)
【0091】
上記のように製造した二価アルコールおよびカルボン酸を使用し、以下のようにしてエステル化合物(A)を製造した。
【0092】
ガラス製の4つ口フラスコにマレイン酸116質量部、化合物(N-1)632質量部を加えて120℃で加熱溶解した後、窒素気流下でテトラブトキシチタン1質量部を加えて180℃に加熱して10時間エステル化反応を行い、エステル化合物を得た。
【0093】
得られたエステル化合物を上記のGPC分取装置を用いて分子量毎に分取した。その後、それぞれの分取液を加熱冷却装置及び撹拌装置を備えた上記の反応容器に仕込み、90℃で20mmHgまで徐々に減圧してテトラヒドロフランを除去し、化学式(1)中のRがイソプロピリデン基、Rがマレイン酸から二つのカルボキシル基を除いた残基、Rがエチレン基、mが1、n+nが2、n+nが2であるエステル化合物(A1-1)(分子量712)を得た。
【0094】
mが1である他のエステル化合物(A1-2)~(A1-7)、およびmが2であるエステル化合物(A2-1)~(A2-7)については、使用するカルボン酸および二価アルコールを変更したことを除いて同様の手法で製造した。表1にエステル化合物(A1-1)~(A1-7)の概要を示し、表2にエステル化合物(A2-1)~(A2-7)の概要を示す。
【0095】
【表1】
【0096】
【表2】
【0097】
〔実施例2〕
上記の集束剤の製造方法によって本発明の集束剤を製造した(本発明例1~11)。即ち、エステル化合物(A)および非イオン性界面活性剤(B)、ならびに任意に加えられうる成分を20℃から90℃の間で撹拌しながら5時間かけて水を添加することで製造した。本発明例1~11において、エステル化合物(A)はエステル化合物(A1)およびエステル化合物(A2)を含有し、非イオン性界面活性剤(B)は以下に示す(B-1)~(B-3)の少なくとも何れかを含有する。
【0098】
(B-1):トリスチレン化フェノール1モルに対し、エチレンオキサイド20モル、プロピレンオキサイド8モルを付加させた化合物
(B-2):トリスチレン化フェノール1モルに対し、エチレンオキサイド35モルを付加させた化合物
(B-3):ビスフェノールA1モルに対し、エチレンオキサイド20モルを付加させた化合物
【0099】
また、本発明例1~9において、樹脂(C)は以下に示す(EP-1),(EP-2),(EP-3),(PE-1),(PE-2),(PE-3),(PE-4),(PE-5),(PU-1),(VE-1)の少なくとも何れかを含有する。
【0100】
(EP-1):エポトートYD-128(日鉄ケミカル&マテリアル社製)(エポキシ樹脂)
(EP-2):エポトートYD-011(日鉄ケミカル&マテリアル社製)(エポキシ樹脂)
(EP-3):エポトートYD-012(日鉄ケミカル&マテリアル社製)(エポキシ樹脂)
(PE-1):化学式(1)でRがイソプロピリデン基、Rがマレイン酸からカルボキシル基を除いた残基、Rが炭素数2のアルキレン基、n+nが4、n+nが4、mが4である樹脂化合物
(PE-2):化学式(1)でRがイソプロピリデン基、Rがフマル酸からカルボキシル基を除いた残基、Rが炭素数2のアルキレン基、n+nが4、n+nが4、mが3である樹脂化合物
(PE-3):化学式(1)でRがイソプロピリデン基、Rがフマル酸からカルボキシル基を除いた残基、Rが炭素数2のアルキレン基、n+nが8、n+nが8、mが5である樹脂化合物
(PE-4):化学式(1)でRがイソプロピリデン基、Rがマレイン酸からカルボキシル基を除いた残基、Rが炭素数2のアルキレン基、n+nが12、n+nが12、mが6である樹脂化合物
(PE-5):5-ナトリウムスルホイソフタル酸:イソフタル酸:ジエチレングリコールのモル比が4:46:50、数平均分子量が15000であるポリエステル樹脂
(PU-1):DISPERCOLL U 54(COVESTRO社製)の不揮発樹脂部分であるウレタン樹脂
(VE-1):jER828(三菱ケミカル社製)とメタクリル酸をモル比1:2で反応させて生成したビニルエステル樹脂
【0101】
本発明例1~11におけるエステル化合物(A)、非イオン性界面活性剤(B)および樹脂(C)の質量%を表3に示す(合計100質量%)。例えば本発明例1における各構成成分の存在割合は、エステル化合物(A1-1):5質量%、エステル化合物(A2-1):10質量%、非イオン性界面活性剤(B-1):30質量%、樹脂(EP-1):15質量%、樹脂(EP-2):10質量%、樹脂(PE-1):30質量%、である。
【0102】
また、エステル化合物(A1)およびエステル化合物(A2)の重量比A2/A1の値を表3に示す。
【0103】
【表3】
【0104】
尚、本発明例11には、その他の成分として酢酸(E-1)を含んでいる。
【0105】
上記の集束剤の製造方法によって比較例の集束剤を製造した(比較例1~3)。比較例1において、エステル化合物(A)は含有せず、非イオン性界面活性剤(B)は(B-1),(B-2)を含有し、樹脂(C)は(EP-1),(PE-3)を含有する。比較例2において、エステル化合物(A)は(A1-1)を含有し、非イオン性界面活性剤(B)は(B-1)を含有し、樹脂(C)は(EP-1),(EP-2),(PE-1)を含有する。比較例3において、エステル化合物(A)は(A2-1)を含有し、非イオン性界面活性剤(B)は(B-1)を含有し、樹脂(C)は(EP-1),(EP-2),(PE-1)を含有する。比較例1~3におけるエステル化合物(A)、非イオン性界面活性剤(B)および樹脂(C)の質量%を表3に示す(合計100質量%)。
【0106】
<評価方法>
上記の本発明例1~11および比較例1~3について、集束剤の樹脂含浸性、平滑性および集束性について評価を行った。各本発明例および各比較例の集束剤を含むサイジング液(不揮発分濃度4%)をサイジング浴に満たし、当該サイジング浴に炭素繊維を通して集束剤の付与を行った。
【0107】
(樹脂含浸性)
集束剤付与後の炭素繊維束を直径1cmのクロムメッキ梨地ピンを開繊バーとして用いて、炭素繊維束を1cm幅に開繊した。その炭素繊維束上にマトリックス樹脂としてのエポキシ樹脂(商品名jER828:三菱ケミカル社製)を25℃雰囲気で0.06g滴下し、滴下後のエポキシ樹脂の60秒後の最大直径を測定し、この測定結果に基づいて、マトリックス樹脂との含浸性を次の基準で評価した。
【0108】
A:最大直径が4mm以上B:最大直径が4mm未満
【0109】
(平滑性)
集束剤付与後の炭素繊維束を1.5m取り出し、片方をオートグラフのクリンプに挟み、逆端に50gの分銅をぶら下げてその間に500rpmで回転する直径1cmのクロム梨地擦過体を角度135°で接触させ、0.25m/minで引っ張った際の荷重の平均を測定し以下の基準で平滑性を評価した。
【0110】
A:2.5N未満B:2.5N以上3N未満C:3N以上
【0111】
(集束性)
集束剤付与後の炭素繊維束のロールをクリールにセットして毎分5mの速度で解舒し、解舒直後の繊維材料のローラー通過時の様子を観察した。観察結果に応じて、各発明例および各比較例の集束剤によってもたらされる炭素繊維束の集束性を以下の三段階で評価した。
【0112】
A:ローラーに巻き付いた炭素繊維がほとんど見られず、かつ、通過した炭素繊維の纏まりが良好であった。
B:ローラーに巻き付いた炭素繊維がわずかに見られたが、通過した炭素繊維の纏まりが良好であった。
C:ローラーに巻き付いた炭素繊維が多く、通過した炭素繊維にバラケが見られた。
【0113】
<評価結果>
各本発明例および各比較例の樹脂含浸性、平滑性および集束性について、評価結果を表3に示す。
【0114】
樹脂含浸性について、本発明例1~11についてはA評価であるのに対して、比較例1,2についてはB評価が得られた。また、比較例3についてはA評価が得られた。
【0115】
平滑性について、本発明例1~10についてはA評価が得られ、本発明例11についてはB評価が得られた。また、比較例1,2についてはA評価が得られ、比較例3についてはC評価が得られた。
【0116】
集束性について、本発明例1~9についてはA評価が得られ、本発明例10,11についてはB評価が得られた。また、比較例1~3についてはA評価が得られた。
【0117】
本発明の集束剤(本発明例1~11)はエステル化合物(A1)およびエステル化合物(A2)の両者を含んでいる。これに対して、比較例1~3は、エステル化合物(A1)およびエステル化合物(A2)の両者を含まない(何れか一方のみ、あるいは両者を含まない)構成となっている。
【0118】
以上より、本発明の集束剤(本発明例1~11)はエステル化合物(A1)およびエステル化合物(A2)の両者を含むことで、樹脂含浸性、平滑性および集束性に優れた繊維用集束剤になり得ると認められた。
【0119】
本発明例1~11において、エステル化合物(A1)およびエステル化合物(A2)の質量比A2/A1は、1.43~4.00であった。
【0120】
本発明例1~11において、エステル化合物(A1)およびエステル化合物(A2)の含有割合の合計は、5~25質量%であった。
【0121】
エステル化合物(A1)およびエステル化合物(A2)の存在割合が上記の要件を満たすと、樹脂含浸性、平滑性および集束性に優れた繊維用集束剤になり得ると認められた。
【0122】
エステル化合物(A1)およびエステル化合物(A2)の含有割合の合計
を、0.5質量%以上30質量%以下の割合で含有すれば、上記と同様の効果が得られると考えられる。
【0123】
本発明例1~11において、水性液のpHは4.5~7.5であった。
【0124】
水性液のpHが上記の要件を満たすと、樹脂含浸性、平滑性および集束性に優れた繊維用集束剤になり得ると認められた。
【0125】
本発明例1~10においては平滑性についてA評価が得られ、このときの水性液のpHは5.5~7.5であった。そのため、例えば水性液のpHを5.0~8.0とすれば、特に平滑性が優れた効果が得られると考えられる。
【0126】
本発明例10,11では、エステル化合物(A)および非イオン性界面活性剤(B)の含有割合の合計は100質量%であった。即ち、本発明例10,11では、エステル化合物(A)(エステル化合物(A1)およびエステル化合物(A2))の含有割合は20質量%であり、非イオン性界面活性剤(B)の含有割合は78~80質量%であった。
【0127】
各構成成分の存在割合が上記の要件を満たすと、樹脂含浸性、平滑性および集束性に優れた繊維用集束剤になり得ると認められた。
【0128】
エステル化合物(A)および非イオン性界面活性剤(B)の含有割合の合計を100質量%としたとき(本発明例10,11)、エステル化合物(A)を1~30質量%、および非イオン性界面活性剤(B)を10~99質量%の割合で含有すれば、上記と同様の効果が得られると考えられる。
【0129】
本発明例1~9では、エステル化合物(A)、非イオン性界面活性剤(B)および樹脂(C)の含有割合の合計は100質量%であった。即ち、本発明例1~11では、エステル化合物(A)の含有割合は5~25質量%であり、非イオン性界面活性剤(B)の含有割合は25~32質量%であり、樹脂(C)の含有割合は45~65質量%であった。
【0130】
本発明例1~9においては集束性についてA評価が得られているため、本発明例1~9のように樹脂(C)を含有することで、繊維材料に集束性を付与し易くなると認められた。
【0131】
エステル化合物(A)、非イオン性界面活性剤(B)および樹脂(C)の含有割合の合計を100質量%としたとき、エステル化合物(A)を1~30質量%、非イオン性界面活性剤(B)を10~99質量%および樹脂(C)を0~89質量%(0を除く)の割合で含有すれば、上記と同様の効果が得られると考えられる。
【0132】
比較例1~3は、エステル化合物(A1)およびエステル化合物(A2)の両者を含まない構成となっているため、本発明の集束剤のように結晶抑制性、平滑性および集束性の全てが優れた結果にはなり得ないと認められた。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明は、例えば繊維材料のサイジング処理に利用できる。
【要約】
【課題】樹脂含浸性、平滑性および集束性に優れた繊維用集束剤を提供する。
【解決手段】化学式(1)で表されるエステル化合物(A)および非イオン性界面活性剤(B)を含有する繊維用集束剤であって、化学式(1)において、mが1であるエステル化合物(A1)およびmが2であるエステル化合物(A2)を含有することを特徴とする繊維用集束剤。
:C1~C3のアルキレン基、R:C1~C4のアルキレン基またはアルケニル基、R:それぞれ独立にC2またはC3のアルキレン基、m:1以上2以下の整数、n,n,n,n:それぞれ独立に1以上20以下の整数
【選択図】なし