(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】複合ケーブル及び複合ハーネス
(51)【国際特許分類】
H01B 7/00 20060101AFI20240823BHJP
H01B 7/18 20060101ALI20240823BHJP
H02G 3/04 20060101ALN20240823BHJP
【FI】
H01B7/00 310
H01B7/00 301
H01B7/00 306
H01B7/18 H
H02G3/04 062
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019197258
(22)【出願日】2019-10-30
【審査請求日】2022-08-26
(31)【優先権主張番号】201821780914.4
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】リッキー リー
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正宣
(72)【発明者】
【氏名】ペン リウ
(72)【発明者】
【氏名】田口 朋孝
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-135153(JP,A)
【文献】特開2013-237428(JP,A)
【文献】特開2017-188247(JP,A)
【文献】特開平09-106722(JP,A)
【文献】特開2013-149494(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00
H01B 7/18
H02G 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合ケーブル(5)であって、第1のケーブル(2)と、第2のケーブル(3)と、外側シース(4)と、潤滑材料と、を備え、前記第2のケーブル(3)は、内側シース(32)を含み、前記外側シース(4)は、第1の外側保護層(41)を含み、前記第1の外側保護層(41)は、前記第1のケーブル(2)及び前記第2のケーブル(3)を共に被覆し、前記第1の外側保護層(41)は、前記内側シース(32)と少なくとも部分的に接触し、前記内側シース(32)は、成形温度が前記第1の外側保護層(41)の成形温度よりも高い材料を少なくとも部分的に使用し、前記潤滑材料は、前記第1のケーブル(2)と前記第2のケーブル(3)との間、並びに、前記第1及び第2のケーブル(2、3)と前記外側シース(4)との間に設けられており、
前記第1のケーブル(2)は、電動ブレーキ用ケーブルであり、第1の電線(20)を含み、前記第1の電線(20)は、中心導体(20a)と、中心導体の周囲に被覆された絶縁体(20b)と、を含み、前記中心導体(20a)は、一緒に撚り合わされた直径範囲が0.12mm~0.2mmの複数の裸線を含み、
前記第2のケーブル(3)は、前記第1の電線(20)と互いに撚り合わされて集合体を形成し、前記第2のケーブル(3)は、第2の電線(30)と、シールド層(31)と、内側シース(32)と、を含み、前記第2のケーブル(3)は、2つの互いに撚り合わされた第2の電線(30)を含み、
前記第2の電線(30)は、中心導体(30a)と、前記中心導体(30a)の周囲に被覆された絶縁体(30b)と、を含み、前記中心導体(30a)は、一緒に撚り合わされた直径範囲が0.05mm~0.2mmの複数の裸線を含み、又は、前記中心導体(30a)は、一緒に撚り合わされた直径範囲が0.07mm~0.09mmの複数の裸線を含み、前記第1の外側保護層(41)の材料の成形温度は、前記第1のケーブル(2)の前記絶縁体(20b)の材料の成形温度よりも低い、複合ケーブル。
【請求項2】
前記シールド層(31)は、外部信号の
前記第2の電線(30)の信号に対する干渉を低減するためのテープ状金属材料であり、前記シールド層(31)の厚さ範囲は、0.005~0.05ミリメートルである、請求項
1に記載の複合ケーブル。
【請求項3】
前記内側シース(32)は、第1の内側保護層(32a)及び第2の内側保護層(32b)を含み、前記第1の内側保護層(32a)は、前記シールド層(31)の外周に押出被覆により形成され、前記第2の内側保護層(32b)は、前記第1の内側保護層(32a)の外周に押出被覆により形成され、又は、前記第1の内側保護層(32a)は、前記第2の電線(30)の外周に押出被覆により形成され、前記シールド層(31)は、前記第1の内側保護層(32a)と前記第2の内側保護層(32b)との間に配置され、又は、前記内側シース(32)は、単一層であり、前記第2のケーブル(3)のシールド層(31)の外周に押出被覆により直接形成されている、請求項
2に記載の複合ケーブル。
【請求項4】
前記シールド層(31)は、縦方向に巻き付けるように、前記撚り合わされた第2の電線(30)又は前記第1の内側保護層(32a)を巻き付け、又は、前記シールド層(31)は、螺旋状に巻回するように、前記撚り合わされた第2の電線(30)又は前記第1の内側保護層(32a)を巻き付け、前記テープ状のシールド層(31)は、その幅が5パーセント~50パーセント重なり合うように、前記撚り合わされた第2の電線(30)又は前記第1の内側保護層(32a)を螺旋状に巻回している、請求項
3に記載の複合ケーブル。
【請求項5】
前記第1の外側保護層(41)の材料の成形温度は、前記内側シース(32)の前記第2の内側保護層(32b)よりも低く、又は、前記第1の外側保護層(41)の材料の成形温度は、前記単一層の内側シース(32)よりも低い、請求項
3に記載の複合ケーブル。
【請求項6】
前記第1の外側保護層(41)の材料は、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリエチレン(PE)、架橋ポリエチレン(XLPE)又は熱可塑性エラストマ材料(TPE)から選択され、前記内側シース(32)又は前記第2の内側保護層(32b)の材料は、ポリウレタンである、請求項
3に記載の複合ケーブル。
【請求項7】
前記潤滑材料は、前記内側シース(32)の周りに静電吸着により設けられ、前記潤滑材料は、前記第1のケーブル(2)及び前記第2のケーブル(3)が形成した集合体の周りに静電吸着により設けられている、請求項
1に記載の複合ケーブル。
【請求項8】
前記外側シース(4)は、前記第1の外側保護層(41)の周りに被覆された第2の外側保護層(42)をさらに含む、請求項1に記載の複合ケーブル。
【請求項9】
複合ハーネス(1)であって、請求項1乃至
8のいずれか一項に記載の複合ケーブル(5)と、前記複合ケーブル(5)の第1のケーブル(2)及び第2のケーブル(3)のうちの少なくとも一方の端部に設けられたコネクタ又はセンサ部分と、を備える、複合ハーネス。
【請求項10】
前記第1のケーブル(2)の一方の端部に、ブレーキキャリパに接続されたコネクタ(20c)が設けられ、前記第2のケーブル(3)の一方の端部は、車輪速センサのセンサ部分(30c)に接続され、前記第1のケーブル(2)及び第2のケーブル(3)の他方の端部に、共用のコネクタ(6)が設けられ、又は、前記第1のケーブル(2)若しくは前記第2のケーブル(3)のうちの少なくとも一方の他方の端部に個別のコネクタが設けられている、請求項
9に記載の複合ハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用の複合ケーブル及び複合ハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両は通常、車輪速センサを使用することが知られている。車輪速センサは、車輪の回転速度を測定するセンサであり、そのセンサ部分(センサヘッド)は、車輪の付近に設けられる。車輪の付近に設けられたセンサ部分及び車体側に設けられた制御装置(ABS(アンチロックブレーキシステム)電子制御ユニット)は、車輪速センサ用のケーブルで接続されている。
【0003】
また、近年、油圧の代わりに電力を利用してブレーキを制御する電動ブレーキが徐々に普及している。さらに、パーキングブレーキを電動化した電動パーキングブレーキ(EPB)も広く知られており、電動パーキングブレーキにおいては、車輪に設けられたブレーキキャリパ(駆動装置)、及び、車体側に設けられた制御装置は、電動ブレーキ用ケーブルを利用して接続されている。
【0004】
しかしながら、従来は、車輪速センサ用のケーブル及び電動ブレーキ用のケーブルは、接続先がほぼ同じ位置にあっても、別個に敷設されていた。車両の配線スペースが限られており、配線作業が複雑であるため、改善が望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、配線作業を容易に行うことができる複合ケーブル及び複合ハーネスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的のために、本出願の一態様によると、第1のケーブルと、第2のケーブルと、外側シースと、潤滑材料と、を備える複合ケーブルが提供される。第2のケーブルは、内側シースを含み、外側シースは、第1の外側保護層を含み、第1の外側保護層は、第1のケーブル及び第2のケーブルを共に被覆し、第1の外側保護層は、内側シースと少なくとも部分的に接触し、内側シースの少なくとも一部の材料の成形温度は、第1の外側保護層の材料の成形温度よりも高く、潤滑材料は、第1のケーブルと第2のケーブルとの間、並びに、第1及び第2のケーブルと外側シースとの間に設けられている。
【0007】
実現可能な一実施形態において、第1のケーブルは、電動ブレーキ用ケーブルであり、第1の電線を含み、第1の電線は、中心導体と、中心導体の周囲に被覆された絶縁体と、を含み、中心導体は、一緒に撚り合わされた直径範囲が0.12mm~0.2mmの複数の裸線を含む。
【0008】
実現可能な一実施形態において、第2のケーブルは、第1の電線と互いに撚り合わされて集合体を形成し、第2のケーブルは、第2の電線と、シールド層と、内側シースと、を含み、第2のケーブルは、2つの互いに撚り合わされた第2の電線を含む。
【0009】
実現可能な一実施形態において、第2の電線は、中心導体と、中心導体の周囲に被覆された絶縁体と、を含み、中心導体は、一緒に撚り合わされた直径範囲が0.05mm~0.2mmの複数の裸線を含み、又は、中心導体は、一緒に撚り合わされた直径範囲が0.07mm~0.09mmの複数の裸線を含み、第1の外側保護層の材料の成形温度は、第1のケーブルの絶縁体の材料の成形温度よりも低い。
【0010】
実現可能な一実施形態において、シールド層は、外部信号の第2の電線の信号に対する干渉を低減するためのテープ状金属材料であり、シールド層の厚さ範囲は、0.005~0.05ミリメートルである。
【0011】
実現可能な一実施形態において、内側シースは、第1の内側保護層及び第2の内側保護層を含み、第1の内側保護層は、シールド層の外周に押出被覆により形成され、第2の内側保護層は、第1の内側保護層の外周に押出被覆により形成され、又は、第1の内側保護層は、第2の電線の外周に押出被覆により形成され、シールド層は、第1の内側保護層と第2の内側保護層との間に配置され、又は、内側シースは単一層であり、第2のケーブルのシールド層の外周に押出被覆により直接形成されている。
【0012】
実現可能な一実施形態において、シールド層は、撚り合わされた第2の電線又は第1の内側保護層を縦方向に巻き付けるように巻き付け、又は、シールド層は、撚り合わされた第2の電線又は第1の内側保護層を螺旋状に巻回するように巻き付け、テープ状シールド層は、その幅が5パーセント~50パーセント重なり合うように、撚り合わされた第2の電線又は第1の内側保護層を螺旋状に巻回している。
【0013】
実現可能な一実施形態において、第1の外側保護層の材料の成形温度は、内側シースの第2の内側保護層よりも低く、又は、第1の外側保護層の材料の成形温度は、単一層の内側シースよりも低い。
【0014】
実現可能な一実施形態において、第1の外側保護層の材料は、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリエチレン(PE)、架橋ポリエチレン(XLPE)又は熱可塑性エラストマ材料(TPE)から選択され、内側シース又は第2の内側保護層の材料は、ポリウレタンである。
【0015】
実現可能な一実施形態において、潤滑材料は、内側シースの周りに静電吸着により設けられ、潤滑材料は、第1のケーブル及び第2のケーブルが形成した集合体の周りに静電吸着により設けられている。
【0016】
実現可能な一実施形態において、外側シースは、第1の外側保護層の周りに被覆された第2の外側保護層をさらに含む。
【0017】
本出願の別の一態様によると、前述の複合ケーブルと、複合ケーブルの第1のケーブル及び第2のケーブルのうちの少なくとも一方の端部に設けられたコネクタ又はセンサ部分と、を備える複合ハーネスが提供される。
【0018】
実現可能な一実施形態において、第1のケーブルの一方の端部に、ブレーキキャリパに接続されたコネクタが設けられ、第2のケーブルの一方の端部は、車輪速センサのセンサ部分に接続され、第1のケーブル及び第2のケーブルの他方の端部に、共用のコネクタが設けられ、又は、第1のケーブル若しくは第2のケーブルのうちの少なくとも一方の他方の端部に個別のコネクタが設けられている。
【0019】
第1のケーブルと第2のケーブルとが一体化されているため、車両の配線スペースを有効に活用することができ、配線及び取り付け作業を容易に行うことができる。潤滑材料が第1のケーブルと第2のケーブルとの間、並びに、第1及び第2のケーブルと外側シースとの間に設けられているため、第1のケーブルと第2のケーブルとの間の摩擦抵抗、並びに、第1のケーブル及び第2のケーブルと外側シースとの間の摩擦抵抗を低減する。さらに、第1の外側保護層の材料は、成形温度が内側シースの材料の成形温度よりも低く、外側シースと内側シースとの間が結合して溶着することを防ぐ。これにより第1のケーブル及び第2のケーブルと外側シースとの間の摩擦抵抗を小さく保持することができる。したがって、複合ケーブルの柔軟性を高め、取り付け及び使用を容易にする。
【0020】
本発明の上記及び他の特徴及び利点は、以下に図面を参照して説明する本発明の実施形態からよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態による、複合ケーブルの概略断面図を示す。
【
図2】本発明の一実施形態による、複合ハーネスの概略枠組み図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に図面を参照して、本発明の好ましい実施形態による複合ハーネス及び複合ケーブルについて説明する。
【0023】
図1を参照すると、本発明の一実施形態の複合ケーブル5は、第1のケーブル2と、第2のケーブル3と、第2のケーブル3を被覆する内側シース32と、外側シース4と、潤滑材料(図示せず)とを含む。外側シース4は、第1のケーブル2及び第2のケーブル3を共に被覆する第1の外側保護層41を含み、第1の外側保護層41は、内側シース32と少なくとも部分的に接触している。内側シース32の材料の成形温度は、第1の外側保護層41の材料の成形温度よりも高い。潤滑材料は、第1のケーブル2と第2のケーブル3との間、並びに、第1及び第2のケーブル2、3と外側シース4との間に設けられている。
【0024】
本実施形態においては、第1のケーブル2は、電動ブレーキ用ケーブルであり、主に車両の停止後に所定のボタンを押すことによって車輪の回転を抑制する機構(電動パーキングブレーキ(EPB)機構)を機能させる電流を流すための導電線に使用される。第2のケーブル3は、車輪速センサ用ケーブルであり、車両のアンチロックブレーキシステム又は車両の安定性制御システムに信号を送信するために使用される。他の実施形態においては、第1のケーブル2及び第2のケーブル3は、任意の自動車用ケーブルであってもよい。
【0025】
第1のケーブル2は、第1の電線20を含み、第1の電線20は、中心導体20aと、中心導体20aの周囲に被覆された絶縁体20bと、を含む。中心導体20aは、一緒に撚り合わされた直径範囲が0.12mm~0.2mmの複数の裸線(図示せず)を含む。絶縁体20bの材料は、自動車用の電線に使用される任意の絶縁体、例えば、架橋ポリエチレン(XLPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、又は、熱可塑性エラストマ材料(TPE)であってもよい。本実施形態においては、第1のケーブル2は、2つの第1の電線20を含む。他の実施形態においては、第1のケーブル2は、複数の第1の電線20を含んでもよく、任意選択的に、電動パーキングブレーキ(EPB)用以外の他のケーブルをさらに含んでもよい。
【0026】
第2のケーブル3は、第1のケーブル2の第1の電線20と互いに撚り合わされている。第2のケーブル3は、第2の電線30と、第2の電線30を被覆するシールド層31及び内側シース32と、を含む。
【0027】
第2の電線30は、中心導体30aと、中心導体30aの周囲に被覆された絶縁体30bと、を含む。中心導体30aは、一緒に撚り合わされた直径範囲が0.05mm~0.2mmの複数の裸線(図示せず)を含む。任意選択的に、中心導体30aは、複数の一緒に撚り合わされた直径範囲が0.07mm~0.09mmの複数の裸線を含む。絶縁体30bの材料は、自動車用電線に使用される任意の絶縁体であってもよい。本実施形態においては、第2のケーブル3は、2本の互いに撚り合わされた第2の電線30を含む。他の実施形態においては、第2のケーブル3は、複数の互いに撚り合わされた第2の電線30を含んでもよく、任意選択的に車輪速センサ用ケーブル以外の他のケーブルをさらに含んでもよい。
【0028】
本実施形態においては、内側シース32は、第1の内側保護層32aを含み、第1の内側保護層32aは、第2のケーブル3のシールド層31の外周に被押出被覆により形成される。あるいは、第1の内側保護層32aは、第2の電線30に押出被覆され、さらにシールド層31は、第1の内側保護層32aの外周に被覆される。第1の内側保護層32aの材料は、柔軟性に優れた材料であることが好ましい。内側シース32は、第1の内側保護層32aの周りに配置された第2の内側保護層32bをさらに含んでもよい。第2の内側保護層32bの材料は、第1の内側保護層32aと同一であり又は異なっている。第2の内側保護層32bは、第1の内側保護層32aの外周に押出被覆される。あるいは、第2の内側保護層32bは、第1の内側保護層32のシールド層31の外周に押出被覆により被覆されて形成され、このためシールド層31は、第1の内側保護層32aと第2の内側保護層32bとの間に配置される。第2の内側保護層32bにより、内側シース32の外表面はより平坦になり、第2のケーブル3の断面形状は円形により近くなる。内側シース32が2つの層を含む場合、シールド層31は、第1の内側保護層32aと第2の内側保護層32bとの間に設けられてもよく、また、第2の電線30を直接巻き付けてもよい。他の実施形態においては、内側シース32は単一層であり、シールド層31の外周に押出被覆により形成された第1の内側保護層32aのみを含み、シールド層31は、第2の電線30を直接巻き付ける。単一層の内側シース32又は内側シース32の第2の内側保護層32bの材料は、例えば、ポリウレタンであり、例えば、PUR 1180A、PUR1185A又はPUR1195Aである。
【0029】
シールド層31は、外部信号の車輪速センサ信号に対する干渉を低減するために使用される。シールド層31は、テープ状金属材料であり、厚さ範囲は、0.005~0.05ミリメートルであることが好ましい。シールド層31は、第2の電線30の周りを巻き付け、又は、第1の内側保護層32aの周りを巻き付ける。シールド層31が第2の電線30の周りを直接巻き付ける場合を例にとると、シールド層31は、撚り合わされた第2の電線30の周りに、縦方向に巻き付けることにより、又は、螺旋状に巻回することにより巻き付けられる。縦方向に巻き付ける様態においては、テープ状のシールド層31の長さ方向の軸と撚り合わされた第2の電線30の長さ方向の軸とが略整列し、シールド層31の長さ方向の縁部は、巻き上げられて重なり合い、その内部で第2の電線30を巻き付ける。螺旋状に巻回する態様においては、テープ状のシールド層31の長さ方向の軸と撚り合わされた第2の電線30の長さ方向の軸とが互いに交差し、シールド層31は、第2の電線30の外部で螺旋状に巻回し、テープ状のシールド層31は、その幅が5パーセント~50パーセント重なり合うように螺旋状に巻回する。螺旋状に巻回する様態と比較して、縦方向に巻き付ける様態の利点は、シールド層31の長さ方向の縁部が巻き上げられて重なり合うと、重なり合い面積は小さくなり、第2のケーブル3の内側シース32の厚さが薄くても、シールド層31の巻き付けの痕跡は、実質的に又は完全に内側シース32の外表面から見えず、内側シース32の外表面の平坦度が確保されることである。シールド層31が第1の内側保護層32aの周りに巻き付けられる場合、巻き付けの様態は、上記同様であることが理解できるため、ここでは説明しない。
【0030】
潤滑材料は、例えば、タルク粉末であり、第2のケーブル3の外部に設けられ、内側シース32の周りに静電吸着により設けられている。第1のケーブル2は、第2のケーブル3と一緒に互いに撚り合わせる必要があるため、第2のケーブル3の周りに設けられた潤滑材料は、第1のケーブル2と第2のケーブル3との間の摩擦抵抗を低減することができ、複合ケーブル5を柔軟に使用することができるようにする。第1のケーブル2と第2のケーブル3とが互いに撚り合わされて集合体を形成すると、第1のケーブル2及び第2のケーブル3が形成した集合体の周りに潤滑材料を静電吸着により設けて、この潤滑材料を第1のケーブル2及び第2のケーブル3が形成した集合体と外側シース4との間に配置する。これにより第1のケーブル2及び第2のケーブル3と外側シース4との間の摩擦抵抗を低減し、複合ケーブル5を柔軟に使用することができるようにする。さらに複合ケーブル5の終端部を処理する際に、外側シース4は、第1のケーブル2及び第2のケーブル3から容易に剥離され、取り付け及び使用が容易になる。前述の潤滑材料の粒径は、約4ナノメートルである。
【0031】
第2のケーブル3の第2の電線30の撚り合い方向は、第2のケーブル3と第1の電線20との撚り合い方向と同一である。あるいは、第2のケーブル3の第2の電線30の撚り合い方向は、第2のケーブル3と第1のケーブル2との撚り合い方向とは反対である。
【0032】
外側シース4は、第1のケーブル2及び第2のケーブル3が形成した集合体の外周に押出被覆在により形成され、外側シース4の第1の外側保護層41は、内側シース32と接触する。内側シース32が2つの層を有する場合、その第2の内側保護層32bは、第1の外側保護層41と接触する。したがって、第1の外側保護層41の材料は、成形温度が内側シース32の第2の内側保護層32bの材料の成形温度よりも低いことが好ましい。内側シース32が1層のみを有する場合、第1の外側保護層41の材料は、その成形温度が単一層の内側シース32の材料の成形温度よりも低いことが好ましい。したがって、第1の外側保護層41の材料は、成形温度が内側シース32の少なくとも一部の材料の成形温度よりも低いことが好ましい。このように、第1の外側保護層41を成形する際、内側シース32は溶解することはなく、第2のケーブル3の内側シース32が第1の外側保護層41と結合して溶着を形成することを防ぎ、これにより第1のケーブル2及び第2のケーブル3と外側シース4との間の摩擦抵抗が小さくなるように保持する。同様に、任意選択的に実際のニーズに応じて、第1の外側保護層41の材料は、成形温度が第1のケーブル2の絶縁体20bの材料の成形温度よりも低く、さらに第1のケーブル2及び第2のケーブル3と外側シース4との間の摩擦抵抗を小さくすることが好ましい。第1の外側保護層41の材料は、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリエチレン(PE)、架橋ポリエチレン(XLPE)、又は、熱可塑性エラストマ材料(TPE)である。外側シース4は、第1の外側保護層41の周りに押出被覆された第2の外側保護層42をさらに含み、このため複合ケーブル5の外表面は、より平坦になり、複合ケーブル5の断面形状は、円形により近くなる。第2の外側保護層42の材料は、第1の外側保護層41と同一であり又は異なっており、内側シース32の材料と同一であり又は同一ではない。
【0033】
上述した実施形態では言及しなかったが、第1のケーブル2及び第2の3以外にも、他の電線を一体化可能であることは言うまでもないことが理解できる。
【0034】
したがって、第1のケーブル2と第2のケーブル3とが一体化されているため、車両の配線スペースを有効に活用することができ、配線及び取り付け作業を容易に行うことができる。潤滑材料が第1のケーブル2と第2のケーブル3との間、並びに、第1及び第2のケーブル2、3と外側シース4との間に設けられているため、第1のケーブル2と第2のケーブル3との間の摩擦抵抗、並びに、第1のケーブル2及び第2のケーブル3と外側シース4との間の摩擦抵抗を低減する。さらに、第1の外側保護層41の材料は、成形温度が内側シース32の材料の成形温度よりも低く、外側シースと内側シースとの間が結合して溶着することを防ぐ。これにより第1のケーブル2、第2のケーブル3と外側シース4との間の摩擦抵抗を小さく保持することができる。したがって、複合ケーブル5の柔軟性を高め、取り付け及び使用を容易にする。
【0035】
図2を参照すると、本発明の一実施形態による複合ハーネス1は、複合ケーブル5と、複合ケーブル5の第1のケーブル2及び第2のケーブル3のうちの少なくとも一方の端部に設けられたコネクタ又はセンサ部分と、を含む。具体的には、第1のケーブル2の一方の端部にブレーキキャリパ(図示せず)に接続されたコネクタ20cが設けられ、第2のケーブル3の一方の端部は、車輪速センサのセンサ部分(センサヘッド)30cに接続され、2つのケーブル2、3の他方の端部に、共用のコネクタ6が設けられている。コネクタ6の一方の端部は、第1のケーブル2及び第2のケーブル3に接続され、他方の端部は、車両の制御装置のインタフェース(図示せず)に接続されている。車両の制御装置は、電動パーキングブレーキ(EPB)と、アンチロックブレーキシステム又は車両の安定性制御システムの制御装置と、を含み、複合ケーブル5の信号を制御装置に送信する。他の実施形態においては、2つのケーブル2、3の他方の端部のコネクタは共用ではなく、2つのケーブル2、3のうちの少なくとも一方の他方の端部に個別のコネクタが設けられている。
【0036】
本発明の特定の実施形態を説明したが、これらは例示としてのみ提示され、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。むしろ、本明細書に記載の構造は、さまざまな他の形態で具体化することができる。また、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の構造形態に対してさまざまな代替及び変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0037】
1 複合ハーネス
2 第1のケーブル
3 第2のケーブル
4 外側シース
5 複合ケーブル
6 共用コネクタ
20 第1の電線
20a 中心導体
20b 絶縁体
20c コネクタ
30 第2の電線
30a 中心導体
30b 絶縁体
30c センサ部分
31 シールド層
32 内側シース
32a 第1の内側保護層
32b 第2の内側保護層
41 第1の外側保護層
42 第2の外側保護層