(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】膝蓋骨キットおよびその使用方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/38 20060101AFI20240823BHJP
【FI】
A61F2/38
(21)【出願番号】P 2019571715
(86)(22)【出願日】2018-06-29
(86)【国際出願番号】 US2018040404
(87)【国際公開番号】W WO2019006370
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-06-24
(32)【優先日】2017-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501441669
【氏名又は名称】イグザクテック・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(72)【発明者】
【氏名】ローラン・アンジボー
(72)【発明者】
【氏名】ニック・ストラウド
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン・ランズダウン
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0026894(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0005708(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0007330(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が膝関節内に永久的に移植するように構成された対応する複数の膝蓋骨インプラントの1つをシミュレートするように構成されている、患者の膝関節内に試験的に移植するように構成された複数の試験用膝蓋骨インプラント;
患者の膝関節の生来の膝蓋骨の切除された表面に移植するように構成された感知装置;
コンピュータ実行可能プログラムコードを実行する際に、プロセッサが少なくとも以下の:
(i)該感知装置が患者の膝関節内に配置されている間の感知装置から、膝関節が第1の時間期間中に可動域を移動する間に、膝関節内の第1の一連の反力を表す第1のデータセットを受け取る動作、
(ii)該感知装置が患者の膝関節内に配置されている間の感知装置から、膝関節が第
2の時間期間中に可動域を移動する間に、膝関節内の第2の一連の反力を表す第2のデータセットを受け取る動作、
(iii)該第2のデータセットおよび該第1のデータセットの間の差を計算する動作、および
(iv)該差に基づく命令を提供する動作
を実行するように構成された具体的にプログラムされた演算プロセッサとなるように構成された、コンピュータ実行可能プログラムコードを電子的に記憶する非一時的メモリ
を含み、
該感知装置が、該試験用膝蓋骨インプラントの選択された1つと接触するように構成され、
該感知装置が、該試験用膝蓋骨インプラントの選択された1つが該感知装置
と接触する間および膝関節が可動域を移動する間に膝関節内に少なくとも1つの反力を記録するように構成された少なくとも1つの力センサを含み、
第1の時間期間中に試験用膝蓋骨インプラントの内の第1の試験用膝蓋骨インプラントが膝関節内に取り付けられ、
該命令が、(a)該差が閾値を超える場合、第2の試験用膝蓋骨インプラントを選択するための命令、または(b)該差が閾値を超えない場合、第1の試験用膝蓋骨インプラントに適合する実際のインプラントを進めるための命令のいずれかを含むことを特徴とする、関節修復手術に使用するためのシステム。
【請求項2】
複数の実際のインプラントを更に含み、複数の実際のインプラントの各々は、複数の試験用インプラントの内の1つに対応する、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記閾値は、絶対閾値または相対閾値のいずれかである、請求項1記載のシステム。
【請求項4】
前記感知装置は、複数の力センサを備え、前記第2のデータセットおよび前記第1のデータセットは、異なる方向を含み、前記試験用インプラントの内の前記第2の試験用インプラントは、前記試験用インプラントの内の前記第1の試験用インプラントとは異なる角度オフセットを有する、請求項1記載のシステム。
【請求項5】
前記感知装置は、抵抗素子、容量素子、ピエゾ抵抗素子、ピエゾ素子、液圧式素子、空気圧式素子、磁気弾性素子、振動素子、光学素子、またはそれらの組み合わせの内の少なくとも1つを含む、請求項1記載のシステム。
【請求項6】
前記第2のデータセットおよび前記第1のデータセットは異なる大きさを含み、前記試験用インプラントの内の前記第2の試験用インプラントは、前記試験用インプラントの内の前記第1の試験用インプラントとは異なる厚さを有する、請求項1記載のシステム。
【請求項7】
前記第1のデータセットおよび前記第2のデータセットは異なる位置オフセットを含み、前記試験用インプラントの内の前記第2の試験用インプラントは、前記試験用インプラントの内の前記第1の試験用インプラントとは異なる位置オフセットを有する、請求項1記載のシステム。
【請求項8】
前記第2のデータセットおよび前記第1のデータセットの間の差を計算する動作は、前記第2のデータセットおよび前記第1のデータセットの間の差が統計学的に有意であるかどうかを決定することを含む、請求項1記載のシステム。
【請求項9】
最小二乗法が、前記第2のデータセットおよび前記第1のデータセットの間の差が統計学的に有意であるか否かを決定するために使用される、請求項8記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、発明の名称「膝蓋骨キットおよびその使用方法」の2017年6月30日に出願日を有する同時係属中の米国仮特許出願第60/527、547号の共有する利益に関し、かつ上記利益を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明の技術分野は、膝関節の外科的修復に関する。より詳細には、本発明の技術分野は、全人工膝関節形成術(「TKA」)に関し、最も注目すべきは、TKAの膝蓋大腿関節に関する。
【背景技術】
【0003】
TKAは、末期膝関節炎の安全かつ効果的な治療と考えられてきた。膝関節置換手術を行った人々の90%以上は、膝痛の劇的な減少と、日常生活の一般的な活動を実行する能力の有意な改善とを経験する。一次移植後の最初の5年以内に、変更率は2.8%であり、構成要素の交換のない再手術の割合は4.3%である。
【0004】
TKAは非常に成功した方法であるが、0.4%~49%の範囲の報告と共に、患者の約5~10%がTKA後の膝前部痛を経験する。関節感染の後、膝蓋大腿部の問題は、TKAに続く再手術または修正手術の理由である。痛みおよび再手術のリスクの管理が必要であるために、膝蓋大腿部の問題は、実質的に更なる医療費を意味する。
【0005】
膝前部痛の原因は、多要因であり、機能的問題(例えば、筋肉の不均衡、動的な外反)および機械的問題(例えば、人工部品の不適切な位置合わせおよび不正確な位置決め)に分割することができる。膝関節置換後の膝蓋大腿部問題の機械的原因は、関節力および接触圧力の伝達の変化をもたらす、関節における不安定性を増大させるか否かに応じて、または、それらが筋肉応力中心距離(muscular lever arm)に影響を及ぼすか否かに応じて区別することができる。これらの寄与因子は、膝蓋大腿部不安定性、プロテーゼ設計、膝蓋骨低位/高位、軟骨溶解、大腿骨構成要素の前後方向オフセット誤差、大腿骨構成要素の内外旋(internal‐external rotation)、脛大腿骨不安定性、無血管壊死および滑膜過形成である。これらの原因のすべては、TKA後に膝前部痛を有する患者の痛みおよび機能障害をもたらす可能性がある。
【発明の概要】
【0006】
例示的な実施形態は、TKA中に使用するためのキットおよび関連する方法に関する。
【0007】
1つの実施形態では、コンピュータで実施される方法は、少なくとも1つのセンサを患者の関節内に配置するステップ;関節が第1の時間期間中に可動域を移動する間に、プロセッサによって、患者の関節内に配置された少なくとも1つのセンサから、関節内の第1の一連の反力を表す第1のデータセットを受け取るステップ;関節が第2の時間期間中に可動域を移動する間に、プロセッサによって、患者の関節内に配置された少なくとも1つのセンサから、関節内の第2の一連の反力を表す第2のデータセットを受け取るステップ;プロセッサによって、該第2のデータセットおよび該第1のデータセットの間の差を計算するステップ;並びにプロセッサによって、該差に基づく命令を提供するステップを含み、該センサは、関節が可動域を移動する間に、関節内に少なくとも1つの反力を記録するように構成され、第2の時間期間中に第1の試験用インプラント(trial implant)が関節内に取り付けられ、該命令が、(a)該差が閾値を超える場合、第2の試験用インプラントを選択するための命令、または(b)該差が閾値を超えない場合、第1の試験用インプラントに適合する実際のインプラントを進めるための命令のいずれかを含む。
【0008】
1つの実施形態では、前記第2のデータセットおよび前記第1のデータセットの間の差を計算するステップが、前記第2のデータセットおよび前記第1のデータセットの間の差が統計学的に有意であるか否かを決定することを含む。1つの実施形態では、最小二乗法を用いて、前記第2のデータセットおよび前記第1のデータセットの間の差が統計学的に有意であるか否かを決定する。
【0009】
1つの実施形態では、前記閾値は、絶対閾値または相対閾値のいずれかである。1つの実施形態では、前記第2のデータセットおよび前記第1のデータセットの間の差が異なる方向性を含み、前記第2の試験用インプラントが前記第1の試験用インプラントとは異なる角度オフセットを有し、前記少なくとも1つのセンサが、複数のセンサを含む。
【0010】
1つの実施形態では、前記少なくとも1つのセンサは、抵抗素子、容量素子、ピエゾ抵抗素子、ピエゾ素子、液圧式素子、空気圧式素子、磁気弾性素子、振動素子、光学素子、またはそれらの組み合わせの内の少なくとも1つを含む。1つの実施形態では、前記第2のデータセットおよび前記第1のデータセットの間の差は異なる大きさを含み、前記第2の試験用インプラントは、前記第1の試験用インプラントとは異なる厚さを有する。
【0011】
1つの実施形態では、前記関節がヒトの膝関節であり、前記第1および第2の試験は、膝蓋骨試験である。1つの実施形態では、前記第1のデータセットおよび前記第2のデータセットの間の差は位置オフセットを含み、前記第2の試験用インプラントは前記第1の試験用インプラントとは異なる位置オフセットを有する。
【0012】
1つの実施形態では、関節修復手術に使用するためのシステムは、関節が可動域を移動する間に関節内に少なくとも1つの反力を記録するように構成された少なくとも1つのセンサを含む、患者の関節内に移植するように構成された感知装置;各々が関節内に永久的に移植するように構成された対応する複数のインプラントの1つをシミュレートするように構成されている、患者の関節内に試験的に移植するように構成された複数の試験用インプラント;コンピュータ実行可能プログラムコードを実行する際に、プロセッサが少なくとも以下の:
(i)該感知装置が患者の関節内に配置されている間の感知装置から、関節が第1の時間期間中に可動域を移動する間に、関節内の第1の一連の反力を表す第1のデータセットを受け取る動作、
(ii)該感知装置が患者の関節内に配置されている間の感知装置から、関節が第2の時間期間中に可動域を移動する間に、関節内の第2の一連の反力を表す第2のデータセットを受け取る動作、
(iii)該第2のデータセットおよび該第1のデータセットの間の差を計算する動作、および
(iv)該差に基づく命令を提供する動作
を実行するように構成された具体的にプログラムされた演算プロセッサとなるように構成された、コンピュータ実行可能プログラムコードを電子的に記憶する非一時的メモリ
を含み、
第1の時間期間中に試験用インプラントの内の第1の試験用インプラントが関節内に取り付けられ、該命令が、(a)該差が閾値を超える場合、第2の試験用インプラントを選択するための命令、または(b)該差が閾値を超えない場合、第1の試験用インプラントに適合する実際のインプラントを進めるための命令のいずれかを含む。
【0013】
1つの実施形態では、上記システムはまた、複数の実際のインプラントを含み、複数の実際のインプラントの各々は、複数の試験用インプラントの内の1つに対応する。1つの実施形態では、前記複数の試験用インプラントは試験用膝蓋骨である。1つの実施形態では、前記閾値は、絶対閾値または相対閾値のいずれかである。
【0014】
1つの実施形態では、前記感知装置は、複数の力センサを備え、前記第2のデータセットおよび前記第1のデータセットの間の差は、異なる方向性を含み、前記試験用インプラントの内の前記第2の試験用インプラントは、前記試験用インプラントの内の前記第1の試験用インプラントとは異なる角度オフセットを有する。1つの実施形態では、
前記感知装置は、抵抗素子、容量素子、ピエゾ抵抗素子、ピエゾ素子、液圧式素子、空気圧式素子、磁気弾性素子、振動素子、光学素子、またはそれらの組み合わせの内の少なくとも1つを含む。
【0015】
1つの実施形態では、前記第2のデータセットおよび前記第1のデータセットは、異なる大きさを含み、前記試験用インプラントの内の前記第2の試験用インプラントは、前記試験用インプラントの内の前記第1の試験用インプラントとは異なる厚さを有する。1つの実施形態では、前記第1のデータセットおよび前記第2のデータセットの間の差は位置オフセットを含み、前記試験用インプラントの内の前記第2の試験用インプラントは、前記試験用インプラントの内の前記第1の試験用インプラントとは異なる位置オフセットを有する。1つの実施形態では、前記感知装置がレールを含み、前記少なくとも1つの力センサが該レールに沿って直線的に移動可能である。
【0016】
1つの実施形態では、前記第2のデータセットおよび前記第1のデータセットの間の差を計算する動作は、前記第2のデータセットおよび前記第1のデータセットの間の差が統計学的に有意であるかどうかを決定することを含む。1つの実施形態では、最小二乗法が、前記第2のデータセットおよび前記第1のデータセットの間の差が統計学的に有意であるか否かを決定するために使用される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明のいくつかの実施形態は、添付の図面を参照しながら、単なる例として本明細書中に記載される。ここで図面を詳細に参照すると、図示された詳細は例示的なものであり、本発明の実施形態の説明のためのものであることが強調されている。これに関連して、図面を参照した説明は、当業者には、本発明の実施形態がどのように実施され得るかを明らかにする。
【0018】
【
図1】第1の例示的な特性化キットを示す図である。
【
図2A】第2の例示的な特性化キットの正面図である。
【
図3A】
図1の例示的な特性化キットの移植位置の側面図である。
【
図5】インプラント寸法ガイドを重ねた例示的な切除された膝蓋骨を示す図である。
【
図6】
図2Aの例示的な特性化キットが取り付けられた例示的な切除された膝蓋骨を示す図である。
【
図7】
図7Aは屈曲角に対する力の例示的な曲線を示す図であり、
図7Bは
図7Aの例示的な曲線に対応する屈曲角に対する内外側位置の例示的な曲線を示す図である。
【
図8】
図8Aは屈曲角に対する力の入力データセットを示す図であり、
図8Bは
図8Aの入力データセットと比較するための屈曲角に対する力の第1の出力データセットを示す図であり、
図8Cは
図8Aの入力データセットと比較するための屈曲角に対する力の第2の出力データセットを示す図である。
【
図9】
図9Aは屈曲角に対する力の入力データセットを示す図であり、
図9Bは
図9Aの入力データセットと比較するための屈曲角に対する力の第1の出力データセットを示す図であり、
図9Cは
図9Aの入力データセットと比較するための屈曲角に対する力の第2の出力データセットを示す図である。
【
図10】
図10Aは屈曲角に対する内外側位置の入力データセットを示し、
図10Bは
図10Aの入力データセットとの比較のための屈曲角に対する内外側位置の第1の出力データセットを示し、
図10Cは
図10Aの入力データセットとの比較のための屈曲角に対する内外側位置の第2の出力データセットを示す
【
図11】膝蓋骨インプラントの移植のためにそこに開けられた穴を有する例示的な切除された生来の膝蓋骨を示す図である。
【
図12】例示的な演算装置によって実施される例示的な方法のフローチャートを示す。
【
図13】
図13Aは屈曲角に対する内外旋の入力データセットを示す図であり、
図13Bは
図13Aの入力データセットと比較するための屈曲角に対する内外旋の第1の出力データセットを示す図であり、
図13Cは
図13Aの入力データセットとの比較のための屈曲角に対する内外旋の第2の出力データセットを示す図である。
【
図14】例示的な本発明の演算装置の構成要素を概略的に示す図である。
【
図15】切除された膝蓋骨に固定された第3の例示的な特性化キットを示す。
【
図16A】例示的なプロトタイプのセンサの写真を示す図である。
【
図16B】膝関節の初期特性化を実施するために、
図16Aに示されたセンサを備えた膝関節の解剖学的モデルを示す図である。
【
図16C】膝関節のその後の特性化を行うために、
図16Aに示されたセンサを備えた膝関節の解剖学的モデルを示す図である。
【
図17A】第1の特性化中に記録されたデータを表す3D包絡線を示す図である。
【
図17B】
図17Aに示す3D包絡線と比較して、第2の特性化中に記録されたデータを表す3D包絡線を示す図である。
【
図17C】
図17Bに示された比較に基づいて推奨された置換試験の提供を示す図である。
【
図17D】
図17Aに示された3D包絡線と比較して、
図17Cに示された推奨された置換試験を用いて第3の特性化中に記録されたデータを表す3D包絡線を示す図である。
【
図18A】第1の特性化中に記録されたデータを表す3D包絡線を示す図である。
【
図18B】
図18Aに示す3D包絡線と比較して、第2の特性化中に記録されたデータを表す3D包絡線を示す図である。
【
図18C】
図18Bに示された比較に基づいて推奨された置換試験の提供を示す図である。
【
図18D】
図18Aに示す3D包絡線と比較して、
図18Cに示された推奨された置換試験を用いて第3の特性化中に記録されたデータを表す3D包絡線を示す図である。
【
図19A】第1の特性化中に記録されたデータを表す3D包絡線を示す図である。
【
図19B】
図19Aに示された3D包絡線と比較して、第2の特性化中に記録されたデータを表す3D包絡線を示す図である。
【
図19C】
図19Bに示された比較に基づいて推奨された置換試験の提供を示す図である。
【
図19D】
図19Aに示された3D包絡線と比較して、
図19Cに示された推奨された置換試験を用いて第3の特性化中に記録されたデータを表す3D包絡線を示す図である。
【
図20A】良好に整列した接触を有する例示的な膝蓋骨構成要素および大腿骨構成要素を示す図である。
【
図20B】不整合接触を有する
図20Aの例示的な膝蓋骨構成要素および大腿骨構成要素を示している
【
図20C】例示的な角張った膝蓋骨構成要素を有する
図20Aの例示的な大腿骨構成要素を示す図である。
【
図20D】
図20Cの例示的な膝蓋骨構成要素および大腿骨構成要素の間の良好に整列した接触を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
開示された利益および改良の内、本発明の他の目的および利点は、添付の図面を参照して以下の説明から明らかになるであろう。本発明の詳細な実施形態を本明細書中に開示するが、開示された実施形態は、様々な形態で具体化され得る本発明の単なる例示であることを理解すべきである。更に、本発明の様々な実施形態に関連した実施例の各々は、例示を意図するものであり、限定的ではない。
【0020】
明細書および特許請求の範囲を通じて、以下の用語は、文脈がそうでないことを明確に表示しない限り、本明細書に明示的に関連する意味を取る。本明細書中で使用される「1つの実施形態では(in one embodiment)」、「ある1つの実施形態では(in an embodiment)」および「いくつかの実施形態では(in some embodiment)」という語句は、そうかもしれないが、必ずしも同一の実施形態を指すわけではない。更に、本明細書中で使用される場合、「別の実施形態において(in another embodiment)」および「いくつかの他の実施形態では(in some other embodiment)」という語句は、そうかもしれないが、必ずしも異なる実施形態を指すわけではない。従って、以下に説明するように、本発明の様々な実施形態は、本発明の範囲または精神から逸脱することなく、容易に組み合わせることができる。
【0021】
本明細書中で使用されるように、用語「~に基づく(based on)」は、排他的ではなく、文脈がそうでないことを明確に指示しない限り、記載されていない更なる要因に基づくことを可能にする。更に、本明細書全体を通して、「a」、「an」、および「the」の意味は、複数の意味を含む。「in」の意味は、「in」および「оn」を含む。
【0022】
上記例示的な実施形態は、膝蓋骨の再表面加工を伴うかまたは伴わないTKAに関する。より具体的には、上記例示的な実施形態は、負荷強度、負荷分布および/または屈曲範囲にわたる上記値の追跡の観点から、膝蓋大腿関節の特性化によって決定される最適な膝蓋骨インプラントの選択に関する外科医への積極的な指導を提供することによって膝前部痛の発生を低減することができる膝蓋骨キットシステムに関する。
【0023】
いくつかの実施形態では、膝蓋骨キットシステムは、第1の特性化キット、第2の特性化キット、具体的にプログラムされた/構成された本発明の演算装置およびインプラントキットを含む。いくつかの実施形態では、第1の特性化キットは、膝蓋骨の再表面加工の前に、膝蓋大腿関節の特性化を行うように構成されている。いくつかの実施形態では、第2の特性化キットは、膝蓋骨の再表面加工の後に膝蓋大腿関節の特性化を行うように構成されている。いくつかの実施形態では、例示的な本発明の演算装置は、第1の特性化キットおよび第2の特性化キットからデータを受け取る。いくつかの実施形態では、上記データの処理に基づいて、例示的な本発明の演算装置は、限定するものではないが、膝蓋骨キットから最適な膝蓋骨インプラントを選択するための推奨、および/または最適な膝蓋骨インプラントを最適に位置決めする方法を含む、指導を表示するようにプログラム/構成されてもよい。いくつかの実施形態では、本開示において後に説明されるように、上記指導は、外科的処置時に初期段階で実行される特性化(本明細書中では「入力」と呼ばれる)と、所定の位置で試験要素を用いて後の段階で実行される特性化(本明細書中では「出力」と呼ぶ)との比較に基づく。いくつかの実施形態では、2組の特性化データ間で不一致の場合、本発明の例示的な演算装置は、不一致のレベルを減少させるために指導を発行する。いくつかの実施形態では、変更が実施されたと仮定すると、本発明の例示的な演算装置は、改善を確認するために、修正されたパラメータで後続の特性化から得られるデータを受け取るようにプログラム/構成されてもよい。
【0024】
図1は、第1の例示的な特性化キットを示す。いくつかの実施形態では、特性化キットは、適合センサモジュールおよび無線モジュールを含む。いくつかの実施形態では、適合センサモジュールは、生来の膝蓋骨の関節面に取り付けられるように構成されている。いくつかの実施形態では、上記センサモジュールは、縫合プロセスまたは2つの構成要素を一緒に取り付ける他の既知の技術(例えば、機械的取り付け、化学的取り付け等)によって取り付けられるように構成されている。いくつかの実施形態では、単一のセンサモジュールが、すべてのサイズの膝蓋骨に使用するように構成されている。いくつかの実施形態では、適合センサモジュールがどこで骨接触が生じるかのみ感知することを確認するために、装置は、感知されたデータにおけるノイズの発生を低減するために、センサモジュールの感知領域を減少させる機構を含む。いくつかの実施形態では、実際の感知領域を、生来の膝蓋骨の感知領域と同じになるように物理的に減少させることによって、感知領域が整復される。いくつかの実施形態では、例示的なセンサモジュールは、感知される領域の直径に関するデータを、無線モジュールによって別の装置(例えば、本発明の例示的な演算装置)から受け取ることによって、感知領域を整復させることを可能にするように構成されている。いくつかの実施形態では、感知領域が規定されると、例示的な感知モジュールは、医師が膝蓋骨をその本来の位置に整復させた後に、医師(例えば、外科医)によって実行される一連の関節解析に関するデータを取得するように構成されている。いくつかの実施形態では、無線モジュールは、無線モジュールからデータを無線で受け取るようにプログラム/構成された本発明の例示的な演算装置に感知データを通信し、力およびモーメント(例えば、力の合計、力の中心、内部‐外部軸におけるモーメント、内側‐外側軸のモーメント)または位置における適合センサおよび大腿骨の間の接触に関するリアルタイム視覚化を提供する。
【0025】
いくつかの実施形態では、無線モジュールは、感知要素に物理的に取り付けられ、関節運動を妨げないように配置されるように構成されている。いくつかの実施形態では、無線モジュールは、処理ユニットおよび無線通信のための構成要素を含む。いくつかの実施形態では、第1の特性化キットを用いて実行される特性化は、骨質であってもよい(例えば、遠位大腿骨の作製前および膝蓋骨の作製前に実施される場合)。いくつかの実施形態では、第1の特性化キットを用いて実行される特性化は、ハイブリッドであってもよい(例えば、遠位大腿骨の作製の後であって、膝蓋骨の作製の前に実施される場合)。
【0026】
図2Aは、第2の例示的な特性化キットの上面図を示す。
図2Bは、
図2Aの第2の例示的な特性化キットの側面図を示す。いくつかの実施形態では、第2の特性化キットは、(i)第2の表面がセンサアレイを特徴とするのに対して、第1の表面は、以前に切除された生来の膝蓋骨に対して配置されるように意図され、および/または構成されている、2つの対向する好ましくは平坦な表面を特徴とする扁平レール要素;(ii)異なるインプラントの代表的な関節面および実質的に平坦な対向面を特徴とする複数の可動膝蓋骨試験要素であって、前記実質的に平坦な表面が、前記扁平レール要素の前記第2の表面に接触するように意図されおよび/または構成され、いくつかの実施形態では、前記扁平レール要素に沿って摺動する、可動膝蓋骨試験要素;および(iii)扁平レール要素に取り付けられたセンサアレイによって収集されたデータを、好ましくはその末端の1つに送信することができる無線モジュール;から構成されている取り付けられた膝蓋骨試験要素を含む。いくつかの実施形態では、上記レール要素の第1の表面は、上記レール要素を生来の膝蓋骨の切除された表面に確実に接続するように構成された少なくとも1つのスパイクを含む。いくつかの実施形態では、上記センサアレイは、少なくとも2列の力感知態様を含む。いくつかの実施形態では、膝蓋骨試験要素の実質的に平坦な表面は、扁平レール要素に沿って摺動しない。
【0027】
いくつかの実施形態では、上記センサアレイは、力、圧力、および/または歪みを感知することができる任意のタイプの感知要素を含む。様々な実施形態では、感知要素は、抵抗、静電容量、ピエゾ抵抗、圧電、液圧、空気圧式、磁気弾性、振動、光学、または任意の他の好適な方法を使用して動作する。いくつかの実施形態では、感知要素の出力は、演算装置によって電気的または光学的に解釈される。従って、本開示が、「センサ」、「感知要素」、「力センサ」などの一般的な用語を使用する場合、当業者には、これらの用語は、前述したものなどの任意の好適な種類のセンサを意味することができることは明らかである。
【0028】
いくつかの実施形態では、第2の特性化キットを用いて実施される特性化は、ハイブリッドであってもよい(例えば、遠位大腿骨の作製前および膝蓋骨の作製の後に実施される場合)。いくつかの実施形態では、第2の特性化キットを用いて実施される特性化は、プロテーゼであってもよい(例えば、遠位大腿骨の作製後および膝蓋骨の作製後に実施される場合)。
【0029】
いくつかの実施形態では、演算装置は、第1および第2の特性化キットの無線モジュールからデータを無線で受け取るように構成されている。いくつかの実施形態では、演算装置は、第1の特性化キットと遠位大腿骨との間の接触に対して、第1の特性化キットの無線モジュールからデータを無線で受け取るように構成されている。いくつかの実施形態では、演算装置は、第1の特性化キットと試験用大腿骨要素との間の接触に関して第1の特性化キットの無線モジュールからデータを無線で受け取るように構成されている。いくつかの実施形態では、演算装置は、第2の特性化キットと遠位大腿骨との間の接触に対して、第2の特性化キットの無線モジュールからデータを無線で受け取るように構成されている。いくつかの実施形態では、演算装置は、第2の特性化キットと試験用大腿骨要素との間の接触に関して、第2の特性化キットの無線モジュールからデータを無線で受け取るように構成されている。いくつかの実施形態では、演算装置は、力およびモーメント(例えば、力の合計、力の中心、内部‐外部軸におけるモーメント、内側‐外側軸のモーメント)または位置に関する上記データのいずれかを受け取るように構成されている。いくつかの実施形態では、演算装置は、上記特性化からデータを処理し、情報および指導を伝達することができる表示システムまたは他の既知の好適な媒体によって、外科医にリアルタイム情報および指導を提供するように構成されている。いくつかの実施形態では、演算装置は、コンピュータ、タブレット、スマートフォン、または他の好適な演算装置を含む。いくつかの実施形態では、演算装置は、膝蓋骨キットシステムに関連して提供されるハードウェアおよびソフトウェアを含む。いくつかの実施形態では、演算装置は、膝蓋骨キットシステムに関連して提供され、既存のコンピュータハードウェアにインストールされるように構成されたソフトウェアを含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、インプラントキットは、複数の膝蓋骨インプラントを含む。いくつかの実施形態では、膝蓋骨インプラントは、一体型膝蓋骨インプラントである。いくつかの実施形態では、膝蓋骨インプラントは、金属裏打ちされた膝蓋骨インプラントである。いくつかの実施形態では、膝蓋骨インプラントは、モジュール式の金属裏打ちされた膝蓋骨インプラントである。いくつかの実施形態では、膝蓋骨インプラントの各々は、概してドーム形状の関節面、および概して平坦な対抗面を含む。いくつかの実施形態では、ペグは、膝蓋骨インプラントの各々の平坦な表面から延び、切除された生来の膝蓋骨に固定される。いくつかの実施形態では、膝蓋骨インプラントは、異なる外径、異なる厚さ(ドーム形状の関節面の平坦な表面から天頂への最大距離として定義される)、および異なる角度(平坦な表面とドーム形状の関節面の周囲とによって形成される角度として定義される)で利用可能である。1つの実施形態では、以下の表は、4つの解剖学的サイズオプション、3つの厚さオプション、および2つの角形成サブオプションを含むインプラントキットの範囲を示し、結果として24の膝蓋骨インプラントをもたらす。
【0031】
【0032】
より一般的には、それぞれが量nの厚さオプションの下で利用可能である量mのサイズ、量pの角形成サブオプションの下で利用可能であるそれぞれの厚さを提供するキットは、合計量(m*n*p)の膝蓋骨インプラントを含む。いくつかの実施形態では、取り付けられた試験用膝蓋骨とインプラントキットとの間の寸法適合性がある。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの所定の可動膝蓋骨試験要素の直径は、少なくとも1つの所定の膝蓋骨インプラントの直径と実質的に同じである。いくつかの実施形態では、扁平レール要素と共に組み立てられた少なくとも1つの所定の可動膝蓋骨試験要素の組み合わされた厚さは、少なくとも1つの所定の膝蓋骨インプラントの厚さと実質的に同じである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの所定の可動膝蓋骨試験要素の角形成は、少なくとも1つの所定の膝蓋骨インプラントの角形成と実質的に同じである。
【0033】
いくつかの実施形態では、インプラントキットからの最適なインプラントは、選択された骨質またはハイブリッド特性化(入力)とプロテーゼ特性化(出力)との間の比較によって選択される。いくつかの実施形態では、2組の特性化間の顕著な不一致の場合には、演算装置は、(1)キットから最適なインプラントを選択する指導、および(2)プロテーゼ特性化と初期の骨質またはハイブリッド特性化との間の実質的な一致を得るために、選択された最適なインプラントを位置決めする指導を発行する。
【0034】
以下の説明は、膝蓋骨の再表面加工を伴うTKAを考慮した膝蓋骨キットシステムの例示的な実施形態の使用の系列(sequence)を示し、ここで、試験用可動膝蓋骨は、扁平レール要素の規定された軸に沿って自由に移動することができる。(前述のように、他の実施形態では、試験用膝蓋骨は、扁平レール要素に沿って移動しない。)以下に説明する他の図を参照して説明するが、以下の図面は、本実施形態の説明を容易にすることのみを意図しており、提案された実施形態の幅、範囲、または適用可能性を限定するものと見なすべきではないと解される。更に、以下の系列は、膝蓋骨の作製に関連するステップ、並びに最も注目すべきは、膝蓋大腿関節の特性化および上記特性化に起因する最適な膝蓋骨インプラントの選択に関連するステップにのみ焦点を当てる。近位脛骨および遠位大腿骨の作製に関連するステップは、既知の技術に従って行われる。
【0035】
いくつかの実施形態では、任意の骨切断を行う前に、第1の特性化キットの適合センサモジュールを生来の膝蓋骨に取り付け、適合するセンサの外形を規定し、膝蓋骨をその本来の位置に整復し、膝蓋大腿関節の骨質の特性化を得るために一連の関節解析を実行することにより、骨質の特性化が行われる。
図3Aおよび
図3Bは、膝内の適合センサモジュールの位置を説明する。
図3Aは側面図を示し、
図3Bは上面図を示す。適合センサモジュールの位置は、
図3Aおよび
図3Bの両方において丸で囲まれている。
【0036】
いくつかの実施形態では、生来の膝蓋骨は、既知の技術に従って作製される。いくつかの実施形態では、外科医は、所定の深さおよび方向で、生来の膝蓋骨の関節部分を切除する。
図4A、
図4B、および
図4Cは、生来の膝蓋骨の切除を示す。
図4Aは、切除前の膝蓋骨の裏面の図を示し、
図4Bは、切除前の膝蓋骨の側面図を示し、
図4Cは、切除後の膝蓋骨の側面図を示す。当業者には、切除パラメータが本質的に主観的であり、外科医の知覚に基づいていることが理解される。更に、一部の外科医は、切除された量を参照してもよく、一方、他の外科医は、切除が完了した後に残される骨の厚さを参照してもよい。いくつかの実施形態では、外科医は、既知の技術に従って、生来の膝蓋骨の切除された表面とテンプレートとを比較することによって選択される可動膝蓋骨試験要素の好適な寸法(例えば、円形輪郭の場合には直径または非円形輪郭の場合には近位遠位高さ)を規定する。
図5は、様々な大きさの試験要素に対する切除された生来の膝蓋骨の例示的な比較を示す。いくつかの実施形態では、選択された可動膝蓋骨試験要素は、切除された生来の膝蓋骨の最適な被覆を提供するサイズに関連するものであり、それから張り出していない。このような実施形態では、選択された可動膝蓋骨試験要素は、
図5に示される第2番目に小さい同心円と同じ大きさであり、これは、生来の膝蓋骨の縁部に張り出していない最大の円である。
【0037】
いくつかの実施形態では、一旦関連する寸法が規定されると、外科医は、第2の特性化キットの選択された可動膝蓋骨試験要素を、扁平レール要素の第2の表面と接触させることによって、扁平レール要素を有する第2の特性化キットの選択された可動膝蓋骨試験要素を組み立てる。いくつかの実施形態では、2つの要素が密着していることを可能にする一方で、扁平レール要素に対する可動膝蓋骨試験要素の摺動を可能にするために、前記2つの要素の間の接続は、いくつかのタイプの機械的拘束接続(例えば、T‐レール、蟻継ぎ、戻り止め等)を特徴とする。いくつかの実施形態では、外科医は、次いで、扁平レール要素の第1の表面を、生来の膝蓋骨の切除された表面と接触させて配置することによって、前述の組み立てられた、取り付けられた膝蓋骨試験要素を切除された生来の膝蓋骨に取り付ける。いくつかの実施形態では、以下のステップ中に切除された生来の膝蓋骨と共に取り付けられた膝蓋骨試験要素を維持するために、扁平レール要素の第1の表面は、
図2Bを参照して前述のように、生来の膝蓋骨の切除された表面と確実に接続するように意図された複数のスパイクを特徴とする。いくつかの実施形態では、扁平レール要素は、細長い外観を有する。いくつかの実施形態では、扁平レール要素の長軸は、切除された膝蓋骨の長軸に沿って位置決めされる。
図6は、このように配置された第2の特性化キットを示す。一般に、膝蓋骨の長軸は、内外側軸に沿って位置合わせされる。人体計測研究により、膝蓋骨の内外側幅が一般にその高さよりも大きく、性別または人種に関係なく平均幅/高さ比が1.25であることを確立された。
図6はまた、第2の特性化キットと例示的な本発明の演算装置との間の無線通信を模式的に示しており、それによって本発明の例示的な演算装置に特性化データを送信することができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、次に、外科医は、再表面加工され、切除された(即ち、前述のように取り付けられた)生来の膝蓋骨をその生理学的位置に配置することによって、試験的な整復を行う。いくつかの実施形態では、試験的整復は、遠位大腿骨の作製の前に行われる。いくつかの実施形態では、試験的整復は、遠位大腿骨の作製後に実施される。いくつかの実施形態では、(遠位大腿骨の作製前の場合)本来の大腿骨の滑車溝と一列に整列させる、または(遠位大腿骨の作製後の場合)大腿骨試験要素と一列に整列させることによって、膝蓋骨を位置決めする。いくつかの実施形態では、膝蓋骨を配置後、外科医は膝関節の屈曲をシミュレートする。いくつかの実施形態では、可動膝蓋骨試験要素の関節面と、生来の大腿骨または大腿骨試験要素の凹状滑車との間の圧縮接触の直接的な結果として、センサアレイは、(a)可動膝蓋骨試験要素の表面と扁平レール要素の第2の表面との間に生じる力、(b)上記力の中心の位置、(c)可動式膝蓋骨試験要素によって抵抗されるモーメントの大きさ(内外側軸および内部‐外部軸の両方に沿って)、および(d)扁平レール要素に対する可動膝蓋骨試験要素の内外側位置、の内の少なくとも1つを特性化する。いくつかの実施形態では、センサアレイは、少なくとも2列の力感知態様を含む。いくつかの実施形態では、インピーダンス(例えば、抵抗性、容量性、または誘導性インピーダンス)の変化を解釈することによって、アレイ内の各位置に力が記録される。いくつかの実施形態では、センサ出力は、処理モジュールによって解釈される。いくつかの実施形態では、処理モジュールは、力、モーメント、および空間データを含むデータアレイを計算する。いくつかの実施形態では、処理モジュールは、前述の所望の値(例えば、力、力の中心、膝蓋骨によって抵抗されるモーメントの大きさ)を決定するために、データを解析する。いくつかの実施形態では、処理モジュールは、既知の技術を用いてこのような演算を実行する。
【0039】
前述のように、いくつかの実施形態では、第2の特性化キットを用いた膝蓋大腿関節の特性化は、膝蓋大腿関節に対する大腿骨作製の影響を監視するために、(1)膝蓋骨の作製後であるが、大腿骨の作製の前、(2)膝蓋骨の作製後および大腿骨の作製後、或いは(3)膝蓋骨の作製後であるが、大腿骨の作製の前はもちろん、膝蓋骨の作製後および大腿骨の作製後も[即ち、(1)および(2)の両方]のいずれかに得ることができる。いくつかの実施形態では、外科医は、脚を伸ばした状態で特性化を開始し、脚が完全に屈曲した状態(またはその逆)で停止する。いくつかの実施形態では、前記特性化に関連するデータは、演算装置に無線送信される。いくつかの実施形態では、演算装置は、特性化のリアルタイム視覚化のためのカスタマイズされたグラフィカルユーザインタフェースを表示するために、表示システムを特徴とする。その結果、外科医は、負荷強度、負荷パターン、および完全伸展から完全屈曲までの可動域にわたる位置(取得時間の関数として評価される)に関して、膝蓋大腿関節の正確な記録を得る。
図7A、
図7Bは、前述のような特性化から生じる可能性のある例示的な表示を示す。
図7Aは、屈曲角の関数としての圧縮力の表示を示し、
図7Bは、屈曲角の関数としての内外側位置の表示を示す。
【0040】
いくつかの実施形態では、2つの特性化データセットを比較することによって、外科医は、演算装置からの指導に従うことを選択することができ、必要であれば、可動式膝蓋骨試験要素の幾何学的形状を変更するか、またはその位置を修正することによって、膝蓋大腿関節への変更を行うことができる。提案された実施形態ごとの膝蓋大腿関節の特性化プロセスの優位性を説明することを意図した変更のいくつかの実施例を以下に記載する。これらの実施例は、提案された実施形態の幅、範囲、または適用可能性を限定するものと見なされるべきではない。
【実施例】
【0041】
(実施例1)
実施例1では、外科医は、第2の特性化キットを用いて、膝蓋大腿関節のハイブリッド特性化を行う(即ち、膝蓋骨の作製後であるが、大腿骨の作製前)。次に、大腿骨の作製に続いて、外科医は、試験用大腿骨要素を作製された遠位大腿骨上に配置し、次いで、第2の特性化キットを用いて、膝蓋大腿関節のプロテーゼ特性化を行う(膝蓋骨および大腿骨の両方の作製後)。
図8Aは、第1の特性化(入力)から得られる屈曲角の関数としての圧縮力のグラフ図を示し、
図8Bは、第2の特性化(出力1)から得られる屈曲角の関数としての圧縮力のグラフ図を示す。この実施例では、2組の特性化データの再検討により、ハイブリッド特性化(入力)から第2の特性化(出力1)への力の強度の急激な増加が明らかとなる。その結果、この実施例では、演算装置は定量的評価を表示し、力を減少させるために可動膝蓋骨試験要素の厚さを減少させることを提案する。この提案に基づいて、外科医は、以前に選択されたものと同じ外径を有するが、より薄い厚さを有する可動膝蓋骨試験要素を使用することを選択することができる。このような変更に続いて、外科医は、変更の影響を評価するために、膝蓋大腿関節の後続のプロテーゼ特性化を行う。
図8Cは、この第3の特性化(出力2)から得られる屈曲角の関数としての圧縮力のグラフ図を示す。出力2グラフ図は、出力1グラフ図よりも入力グラフ図により類似していることがわかる。
【0042】
(実施例2)
実施例2では、外科医は、第2の特性化キットを用いて、膝蓋大腿関節のハイブリッド特性化を行う(即ち、膝蓋骨の作製後であるが、大腿骨の作製前)。大腿骨の作製に続いて、外科医は、試験用大腿骨要素を作製された遠位大腿骨上に配置し、次いで、第2の特性化キットを用いて、膝蓋大腿関節のプロテーゼ特性化を行う(膝蓋骨および大腿骨の両方の作製後)。
図9Aは、第1の特性化(入力)から得られる屈曲角の関数としての圧縮力のグラフ図を示し、
図9Bは、第2の特性化(出力1)から得られる屈曲角の関数としての圧縮力のグラフ図を示す。この実施例では、2組の特性化データの再検討により、ハイブリッド特性化(入力)から第2の特性化(出力1)への力の強度の急激な増加が明らかとなる。その結果、この実施例では、演算装置は定量的評価を表示し、力を増大させるために可動膝蓋骨試験要素の厚さを増加させることを提案する。この提案に基づいて、外科医は、以前に選択されたものと同じ外径を有するが、より厚い厚さを有する可動膝蓋骨試験要素を使用することを選択することができる。このような変更に続いて、外科医は、変更の影響を評価するために、膝蓋大腿関節の後続のプロテーゼ特性化を行う。
図9Cは、この第3の特性化(出力2)から得られる屈曲角の関数としての圧縮力のグラフ図を示す。出力2グラフ図は、出力1グラフ図よりも入力グラフ図により類似していることがわかる。
【0043】
(実施例3)
この実施例では、外科医は、第2の特性化キットを用いて、膝蓋大腿関節のハイブリッド特性化を行う(即ち、膝蓋骨の作製後であるが、大腿骨の作製前)。大腿骨の作製に続いて、外科医は、試験用大腿骨要素を作製された遠位大腿骨上に配置し、次いで、第2の特性化キットを用いて、膝蓋大腿関節のプロテーゼ特性化を行う(膝蓋骨および大腿骨の両方の作製後)。
図10Aは、第2の特性化キット(入力)を用いて行われる第1の特性化から得られる屈曲角の関数としての可動膝蓋骨試験要素の内外側位置のグラフ図を示し、
図10Bは、第2の特性化キット(出力1)を用いて行われる第2の特性化から得られる屈曲角の関数としての可動膝蓋骨試験要素の内外側位置のグラフ図を示す。この実施例では、2組の特性化データの再検討により、第1の特性化から第2の特性化への膝蓋骨の内外側位置の急激な内側シフトが明らかとなる。その結果、この例では、演算装置は定量的評価を表示し、大腿骨構成要素を外側面に向かってシフトさせるか、または切除された生来の膝蓋骨に対して膝蓋骨インプラントのより内側の位置を選択することを提案する。
このような変化に続いて、外科医は、変化の影響を評価するために、膝蓋大腿関節のその後のプロテーゼ特性化を行う。
図10Cは、第2の特性化キット(出力2)を用いて実施された第3の特性化から得られる屈曲角の関数としての可動膝蓋骨試験要素の内外側位置のグラフ図を示す。出力2グラフ図は、出力1グラフ図よりも入力グラフ図により類似していることがわかる。
【0044】
いくつかの実施形態では、膝蓋大腿関節の満足なプロテーゼ特性化が達成されると、外科医は、直径、厚さ、および角形成に関して、取り付けられた試験要素の構成に適合する膝蓋骨インプラントを使用し、次いで、選択された膝蓋骨インプラントのペグを受容するように意図された少なくとも1つの穴をあけることによって、切除された生来の膝蓋骨の作製を完了する。いくつかの実施形態では、1つの穴をあける。いくつかの実施形態では、複数の穴をあける。
図11は、このようにして穴が開けられた後の切除された生来の膝蓋骨を示す。いくつかの実施形態では、外科医は、上記インプラントの少なくとも1つのペグを作製された膝蓋骨の対応する少なくとも1つの穴に適合させることによって、選択された膝蓋骨インプラントを、作製された切除された生来の膝蓋骨上に埋め込む。いくつかの実施形態では、外科用PMMAセメントを使用して、選択された膝蓋骨インプラントと作製された切除された生来の膝蓋骨との間の接合を改善することができる。
【0045】
図12は、例示的な本発明の演算装置によって実行され得る例示的な方法のフローチャートを示す。ステップ1210において、例示的な本発明の演算装置(即ち、例示的な膝蓋骨キットの構成要素に関して前述したような)は、入力特性化データセットを受け取る。いくつかの実施形態では、入力特性化データセットは、第1の特性化キット(即ち、
図3Aおよび
図3Bに関して前述したような)を使用して得られた骨質の特性化に関する。いくつかの実施形態では、入力特性化データセットは、前述の第1の特性化キットを用いて得られたハイブリッド特性化に関する。いくつかの実施形態では、入力特性化データセットは、前述のような第2の特性化キットを用いて得られたハイブリッド特性化に関する。ステップ1210の後、医師(例えば、外科医)は、試験用大腿骨、試験用脛骨、および取り付けられた試験用膝蓋骨を所定の位置に置く。いくつかの実施形態では、試験用大腿骨および試験用脛骨は、既知の技術に従って配置される。いくつかの実施形態では、取り付けられた試験用膝蓋骨を、
図5および
図6に関して前述したように配置する。試験用大腿骨、試験用脛骨、および取り付けられた試験用膝蓋骨の配置後、膝蓋大腿関節および大腿脛骨関節は、それらの本来の位置に整復される。
【0046】
ステップ1220において、例示的な本発明の演算装置は、特性化データセット出力iを受け取る。いくつかの実施形態では、出力i特性化データセットは、前述のように作製された膝関節のプロテーゼ特性化の性能から得られる(即ち、そこに配置された取り付けられた試験用膝蓋骨を有していた)。ここで、データセット出力iに関して使用される場合、iは、行われた反復の量を表す変数である。
【0047】
ステップ1230において、例示的な本発明の演算装置は、特性化データセット出力iを入力特性化データセットと比較して、これらのデータセット間の類似性を評価する。いくつかの実施形態では、2つのデータセット間の類似性は、既知の統計学的方法(例えば、Kolmogorov‐Smirnov検定、Ramer‐Douglas‐Peuckerアルゴリズム、Procrustes解析、Frechet距離など)を用いて評価される。いくつかの実施形態では、2つの曲線間の類似性は、2つの曲線間の距離を評価することによって評価する。いくつかの実施形態では、2つの曲線間の類似性は、2つの曲線の間の表面積を評価することによって評価される。いくつかの実施形態では、X軸(即ち、屈曲角)に沿った所定の値に対して、上記解析により、入力および出力iデータセット間のY軸(例えば、負荷)に沿った対応する値を比較する。いくつかの実施形態では、類似度の判定基準(metric)は、2つの曲線がより類似しているときに低くなり、2つの曲線がより異なる場合にはより高くなる。
【0048】
一般的に言えば、膝が60度を超えて屈曲すると、膝蓋大腿関節は、伸長時および圧縮荷重下で緩む傾向がある。従って、いくつかの実施形態では、前述の比較は、60度~150度の範囲の屈曲角に焦点を合わせている。いくつかの実施形態では、上記比較は、60度~150度の範囲の屈曲角のみを含む。いくつかの実施形態では、60度~150度の範囲の屈曲角は、この範囲外の屈曲角よりも大きなウェイトを占める。いくつかの実施形態では、外科医はこの範囲を修正してもよい。
【0049】
図12を参照すると、ステップ1240において、例示的な本発明の演算装置は、入力および出力iデータセットの間の類似性を評価して、それらが十分に類似しているかどうかを決定する。いくつかの実施形態では、この評価は、類似度の判定基準(例えば、ステップ1253に関して前述のように決定されたもの)を閾値と比較することによって行われる。いくつかの実施形態では、閾値は、相対値(例えば、250N、5mmなど)である。いくつかの実施形態では、閾値はパーセンテージ(例えば25%)である。いくつかの実施形態では、閾値は予め定められている。いくつかの実施形態では、閾値は、ユーザ設定可能である。入力および出力iデータセットが十分に類似していない場合(即ち、両者の差を記載する類似性判定基準が閾値を超える場合)、方法1200はステップ1250に進む。入力および出力iデータセットが十分に類似している場合(即ち、2つの間の差を記載する類似性判定基準が閾値より小さい場合)、方法1200はステップ1260に進む。
【0050】
ステップ1250では、例示的な本発明の演算装置は、修正すべき試験用膝蓋骨の少なくとも1つのパラメータに関する指導を発行する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのパラメータは、試験用膝蓋骨のサイズを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのパラメータは、試験用膝蓋骨の厚さを含む。いくつかの実施形態では、指導は、圧縮力を表す出力iデータセットが圧縮力を表す入力データセットよりも大きい場合には、より薄いインプラントを使用する提案を含む。いくつかの実施形態では、この指導は、圧縮力を表す出力iデータセットトが圧縮力を表す入力データセットよりも小さい場合に、より厚いインプラントを使用する提案を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのパラメータは、試験用膝蓋骨の角形成に関する指導を含む。いくつかの実施形態では、上記指導は、可動試験用膝蓋骨の内外旋を表す出力iデータセットが、生来の膝蓋骨の内外旋を表す入力データセットから変化する場合に、可動膝蓋骨試験要素の角形成を修正する提案を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのパラメータは、膝蓋骨インプラントの位置決めに関する指導を含む。いくつかの実施形態では、指導は、可動体膝蓋骨試験要素の内外側位置を表す出力1データセットが、生来の膝蓋骨の位置を表す入力データセットよりも外側位置を示す場合に、切除された生来の膝蓋骨に対する膝蓋骨インプラントのより内側の位置を選択する提案を含む。いくつかの実施形態では、指導は、可動膝蓋骨試験要素の内外側位置を表す出力1データセットが、生来の膝蓋骨の位置を表す入力データセットよりも内側の位置を示す場合に、切除された生来の膝蓋骨に対する膝蓋骨インプラントのより外側の位置を選択する提案を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのパラメータは、内外側軸に沿った大腿骨構成要素の位置に関する指導を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのパラメータは、膝蓋骨インプラントの厚さ、角形成、または位置のうちの1つ以上の組み合わせに関する指導を含む。ステップ1250に続いて、外科医は、例示的な本発明の演算装置によって提供される指導を実施する(例えば、既存の試験用のものを異なるサイズを有するものと置き換える)。続いて、変数「i」が増大し、この方法は、前述したステップ1220に戻る。
【0051】
例示的な本発明の演算装置がステップ1240で、入力および出力iデータセットが十分に類似していると判定した場合、ステップ1260において、例示的な本発明の演算装置は、データセット出力iにおいて得られる特性化のための位置にある、試験用膝蓋骨に合致する膝蓋骨インプラント(即ち、同じサイズおよび/または厚さおよび/または角形成を有する膝蓋骨インプラント)を選択するように外科医に指示する。ステップ1260に続いて、方法1200を完了する。外科医は、方法1200の性能に起因する推奨を実施することができる。いくつかの実施形態では、これは、(例えば、
図11に関して前述したように少なくとも1つの穴を開け、接着剤および/または任意の他の所望の作製物を適用することによって)患者の切除された膝蓋骨の作製を完了すること、および既知の技術を用いて選択されたインプラントを配置することを含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、患者固有の入力データセットを得るのではなく、本明細書中に記載のアルゴリズムは、入力データセットとして履歴特性化データを使用してもよい。いくつかの実施形態では、履歴特性化データは、全ての患者に一般に適用可能なデータセットに基づいていてもよい。いくつかの実施形態では、履歴特性化データは、患者の人口統計データ(例えば、性別、年齢、人種などの少なくとも1つの因子)にカスタマイズされたデータセットに基づいていてもよい。
【0053】
いくつかの実施形態では、前述の扁平レール要素は、前述したセンサアレイに加えて、慣性センサ(例えば、慣性ジャイロスコープ)を含む。いくつかの実施形態では、慣性センサは、膝蓋大腿関節の特性化を提供することを意図した試験整復中に、取り付けられた膝蓋骨試験要素の角度傾斜を追跡するように構成されている。前述したように、生来の膝蓋骨の切除は本質的に主観的であり、生来の膝蓋骨の切除平面の向きは常に最適でなくてもよい。実際の切除平面と好ましい切除平面との間に角度的な不一致がある場合には、関節面の周囲と対抗する平坦な表面との間にいくらかの角度補正(即ち、角形成パラメータ)を有する膝蓋骨インプラントを使用することが有益である。扁平レール要素が慣性センサを含む実施形態では、前述したパラメータに加えて、特性化は、試験的整復中に、取り付けられた膝蓋骨試験要素の角度傾斜に関する情報を提供する。このような実施形態では、実質的な傾斜が存在する場合、前述したアルゴリズムは、可動式膝蓋骨試験要素の角形成を変更することを推奨してもよい。このような実施形態のための膝蓋大腿関節の特性化プロセスの利点を説明することを意図した変更の一例を以下に記載する。この例は、提案された実施形態の幅、範囲、または適用可能性を制限するものと見なされるべきではない。
【0054】
(実施例4)
実施例4では、外科医は、第2の特性化キットを用いて、膝蓋大腿関節のハイブリッド特性化を行う(即ち、膝蓋骨の作製の後であって、大腿骨の作製の前)。次に、大腿骨の作製に続いて、外科医は、試験用大腿骨要素を作製された遠位大腿骨上に配置し、次いで、第2の特性化キットを用いて、膝蓋大腿関節のプロテーゼ特性化を行う(即ち、膝蓋骨および大腿骨の両方の作製の後)。
図13Aは、第2の特性化キット(入力)を用いて実施された第1の特性化から生じる屈曲角の関数としての内外旋のグラフ図を示し、
図13Bは、第2の特性化キット(出力1)を用いて実施された第2の特性化から生じる屈曲角の関数として、可動式試験用膝蓋骨の内外旋のグラフ図を示す。この実施例では、上記2組の特性化の検討により、ハイブリッド特性化(入力)から第2の特性化(出力1)への、取り付けられた膝蓋骨試験要素の方向性の急な傾きが明らかとなる。その結果、この実施例では、演算装置は定量的評価を表示し、内旋を減少させるために可動膝蓋骨試験要素の角形成を修正することを提案する。この提案に基づいて、外科医は、傾斜を補償するために、楔形(角形成サブオプション)に関連する可動膝蓋骨試験要素を使用することを選択してもよい。このような変更に続いて、外科医は、変化の影響を評価するために、膝蓋大腿関節のその後のプロテーゼ特性化を行うことができる。
図13Cは、この第3の特性化(出力2)から生じる屈曲角の関数としての内部‐外部回転のグラフ図を示す。出力2グラフ図は、出力1グラフ図よりも入力グラフ図に類似していることがわかる。
【0055】
図14は、例示的な本発明の演算装置の構成要素を概略的に示す。この図に示すように、例示的な本発明の演算装置は、処理装置、メモリ、ユーザインタフェース、および少なくとも1つの入力/出力装置を含み、それらの各々が、ローカルインタフェース(例えば、バス)に接続されている。いくつかの実施形態では、処理装置は、中央処理装置(「CPU」)または半導体ベースのマイクロプロセッサ(例えば、マイクロチップの形態)を含む。いくつかの実施形態では、メモリは、揮発性メモリ素子(例えば、RAM)および不揮発性メモリ素子(例えば、ハードディスク、ROM、フラッシュなど)のいずれかまたは組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、ユーザインタフェースは、キーボード、キーパッド、および/または表示画面などの、ユーザが演算装置と相互作用する構成要素を含む。いくつかの実施形態では、ユーザインタフェースは、前述したように、外科医に指導を提供するように構成された表示画面を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの入力/出力装置は、他の装置との通信を容易にするように構成されている。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの入力/出力装置は、第1および第2の特性化キットから特性化データを受け取るように構成された無線データリンクを含む。いくつかの実施形態では、メモリは、オペレーティングシステムを含むプログラム(ロジック)と、特性化データを解析し、例えば、例示的な方法1200に関して前述したような推奨を提供するように構成された特性化データ解析プログラムとを含む。いくつかの実施形態では、メモリは、入力特性化データとして使用するための履歴特性化データを記憶するデータベースを含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、慣性センサを含む感知要素を利用して、膝の屈曲角に関する情報を提供することができる。例えば、このような感知要素は、完全伸展から完全屈曲位置までの可動域にわたる屈曲角を正確に検出することができ、従って、取得されたデータを関心のある屈曲角(例えば、60度~120度の屈曲)に制限することができる。
【0057】
いくつかの実施形態では、前述したような取り付けられた膝蓋骨試験要素は、膝ナビゲーションシステムと組み合わせて使用される。膝ナビゲーションは、正面および矢状の機械的整合に関して正確な情報を提供することが知られている。従って、このような実施形態では、膝ナビゲーションシステムによって提供される情報をセンサアレイによって取得されたデータと相互参照することができ、そして膝蓋大腿関節の特性化を膝の屈曲角に関して示すことができる。
【0058】
いくつかの実施形態では、前述のような取り付けられた膝蓋骨試験要素は、膝蓋骨インプラントのペグのための位置決め穴を、取り付けられた膝蓋骨試験要素を直接通してあけることができるように配置される。いくつかの実施形態では、このような構成は、可動膝蓋骨試験要素上の少なくとも1つの穴と、扁平レール要素上の少なくとも1つの開放窓とを含む。
図15は、このように配置された膝蓋骨試験要素を示す。
【0059】
いくつかの実施形態では、前述したような取り付けられた膝蓋骨試験要素は、扁平レール要素に対する可動膝蓋骨試験要素の並進移動を選択的にロックし、ロック解除するように構成された機構を含む。いくつかの実施形態では、この自由度をロックすることによって、外科医は、膝蓋大腿関節の特性化の間、所定の内外側位置をシミュレートすることによって、膝蓋骨インプラントの挙動をより良好に評価することができる。
【0060】
いくつかの実施形態では、可動膝蓋骨試験要素の輪郭(即ち、プロファイル)は、円形ではなく非円形である。いくつかの実施形態では、非円形の輪郭は、楕円形、長方形、または梨形(即ち、梨形状)のいずれかである。いくつかの実施形態では、扁平レール要素に対する可動膝蓋骨試験要素の自由度の数は変化してもよい。いくつかの実施形態では、自由度の数は0(ゼロ)である。いくつかの実施形態では、自由度の数は1つである。いくつかの実施形態では、自由度の数は2である。いくつかの実施形態では、自由度の数は3である。いくつかの実施形態では、自由度は回転である。いくつかの実施形態では、自由度は並進である。いくつかの実施形態では、自由度は、回転および並進の両方である。
【0061】
例示的な実施形態は、膝蓋骨の再表面加工を伴う、または再表面加工を伴わない、TKAに特に関連して前述されている。しかし、例示的な実施形態によって具体化された概念は、関節の第1の特性化が行われ、関節から少なくとも1つの骨切断が行われた後に第2の特性化が行われ、第1および第2の特性化の間の比較が、インプラントキットからのインプラントの選択を指導するために利用される他の関節にも適用可能であることは、当業者には理解される。
【0062】
いくつかの実施形態では、例示的な膝蓋骨キットシステムは、任意の第1の特性化キット、第2の特性化キット、演算装置およびインプラントキットを含む。いくつかの実施形態では、第1の特性化キットは、膝蓋骨の再表面加工前に、膝蓋大腿関節の特性化を行うように構成されている。いくつかの実施形態では、第2の特性化キットは、膝蓋骨の再表面加工後に、膝蓋大腿関節の特性化を行うように構成されている。いくつかの実施形態では、演算装置は、第1の特性化キットおよび第2の特性化キットからデータを受け取るように構成されている。いくつかの実施形態では、上記データの解析に基づいて、演算装置は、膝蓋骨キットから最適な膝蓋骨インプラントを選択し、および/または最適に位置決めするために、命令および指導を外科医に提供する。いくつかの実施形態では、命令および指導は、外科処置中の初期段階で実行される特性化(本明細書中では入力と呼ぶ)と、所定の場所で試験用要素を用いて後の段階で実行される特性化(本明細書中では出力と呼ぶ)との比較に基づく。いくつかの実施形態では、2組の特性化データの間で不一致の場合、演算装置は、不一致のレベルを減少させるための命令を発行する。いくつかの実施形態では、外科医が変更を実施することを選択すると仮定すると、改善を確認するために、修正されたパラメータを用いてその後の特性化を行ってもよい。
【0063】
ここで
図16A~
図16Dを参照すると、解剖学的モデルを用いて前述した第2の特性化キットのプロトタイプの評価が、試験用膝蓋骨が下のレールに対して並進運動しない構成で示されている。いくつかの実施形態では、
図16Aに示すように、第2の特性化キットは、取り付けられた膝蓋骨ベースプレートと試験用膝蓋骨(
図16Aには示されていない)との間に配置された3つの力センサを含む。いくつかの実施形態では、3つの力センサによって記録されたデータを解析して、負荷の主方向および大きさを計算する。
図16Bは、膝蓋骨の作製後、および遠位大腿骨の作製前に、膝蓋大腿関節の初期の特性化を行うために使用される例示的な二次的な特性化キットを示す。
図16Cは、遠位大腿骨の作製後に出力特性化を行うのに使用するために作製された例示的な二次的特性化キットを示す。
図16Dは、出力特性化を行うための例示的な二次的特性化キットの使用を示し、示された解剖学的モデルはシミュレートされた可動域を移動する。
【0064】
いくつかの実施形態では、前述の第1の特性化キットを使用して、生来の関節に基づいて、膝蓋大腿関節の初期特性化(入力)を行う。いくつかの実施形態では、前述の第1の特性化キットを使用して、膝蓋骨の作製前および遠位大腿骨の作製後に、膝蓋大腿関節の初期特性化(入力)を行う。いくつかの実施形態では、前述した第2の特性化キットを使用して、膝蓋骨の作製後および遠位大腿骨の作製前に、膝蓋大腿関節の初期特性化(入力)を行う。いくつかの実施形態では、膝蓋大腿関節の初期特性化(入力)は、履歴特性化のデータセットに基づいて決定される。いくつかの実施形態では、次の特性化(出力i)は、前述のような第2の特性化キットを使用して行われる。
【0065】
いくつかの実施形態では、特性化キット(即ち、第1の特性化キットまたは第2の特性化キット)および特性化の系列(即ち、入力または出力)にかかわらず、膝蓋大腿関節の特性化は、膝蓋骨と遠位大腿骨との間のシミュレートされた可動域(例えば、伸展から屈曲への)を移動する関節反力に関係する。いくつかの実施形態では、専用プロファイラを使用して、ユーザ外科医は、2つの特性化の間の比較の感度を定義することができる。いくつかの実施形態では、外科医は、比較のための屈曲の特に関心の範囲(例えば、30°~100°の屈曲)を予め定義することができる。いくつかの実施形態では、外科医は、閾値許容値Tに従って、上記2つの特性化の間の所望の類似性を予め定義することができる。いくつかの実施形態では、上記閾値は、値として表される。いくつかの実施形態では、上記閾値はパーセンテージとして表される。いくつかの実施形態では、外科医は、手術時に利用可能なインプラントの範囲に関する他の情報(例えば、厚さオプション、角形成オプション、または厚さおよび角形成オプション)を予め定義することができる。
【0066】
いくつかの実施形態では、膝蓋大腿関節がシミュレートされた可動域を移動するにつれて、瞬間的な関節反力が記録される。いくつかの実施形態では、関節反力が解析されて、収集された瞬時関節反力の合計に基づいて全体的な3D包絡線を形成する。以下に説明される図面のいくつかに示される3D包絡線は、記録された力情報の表示の1つのモードを示しているだけであることは当業者には明らかであり、他のタイプの二次元または三次元データ視覚化(例えば、ヒストグラム、マップなど)もまた好適であることは当業者には明らかである。いくつかの実施形態では、3D包絡線は、上記処置に沿った所定の段階での膝蓋大腿関節の特性化を表す。グラフィカルユーザインタフェースの一例によれば、(例えば、
図17Aに示されるように)3D包絡線は、取り付けられた試験用膝蓋骨を参照して表される。いくつかの実施形態では、3D包絡線は、力の大きさ(例えば、3D包絡線の大きさ)と、力の向き(例えば、3D包絡線の位置および向きによる)の両方を表す。いくつかの実施形態では、
図12に示される方法に従って動作するシステムによって外科医に提供される指導は、方向性および振幅に関して2つの特性化(出力1対入力)の間の比較に基づいて提供される。
【0067】
いくつかの実施形態では、各3D包絡線は、瞬時関節反力の「平均化」を表す単一の合力によって定義され、その結果、合力は、その向きおよびその振幅によって定義される。いくつかの実施形態では、膝蓋大腿関節の第1の特性化に関連する第1の包絡線からの第1の単一の合力と、膝蓋大腿関節のその後の特性化に関連する後続の包絡線からの次の単一の合力とが、それらのそれぞれの方向性および振幅に基づいて互いと比較される。いくつかの実施形態では、数値解析技術を適用して、どの構成要素(例えば、方向性、振幅、または方向性および振幅の両方)が屈曲角に関して統計学的に有意な差を示すかを決定する。いくつかの実施形態では、数値解析技術は回帰解析である。いくつかの実施形態では、回帰解析は最小二乗法解析を含む。いくつかの実施形態では、(統計学的に有意である場合)膝蓋大腿関節の第1の特性化と後続の特性化との間の計算された差が、適切な膝蓋骨形状を決定する際に外科医に指導を提供するために使用される。いくつかの実施形態では、所定の特性化に使用される試験用膝蓋骨の厚さは、典型的には、主に関節反力の振幅に影響を与え、一方、膝蓋骨の角形成面および関連する調整(即ち、切除された膝蓋骨に垂直な軸の回りの試験用膝蓋骨の軸方向の回転)は、主に、関節反力の向きに影響を及ぼす。
図20A~
図20Dに示すように、膝蓋骨インプラントの角形成は、膝蓋骨構成要素と大腿骨構成要素との間に横方向の整合オフセットを効果的に形成する。
図20Aは、良好に位置合わせされた膝蓋大腿接触を示す。
図20Bに示されるように、大腿骨構成要素の顆溝に対する膝蓋骨の外側不整合は、膝蓋骨上への端部荷重を発生し、それによって、第1の特性化データセットと比較して、第2の特性化の間に測定された合力の向きを変更する。
図20Cに示すように、角形成された膝蓋骨は、このような不整合状態を補償して、適切な膝蓋大腿接触を回復させることができる。特に、角形成された膝蓋骨は、不整合状態の範囲を補償するように調整(即ち、回転)されることができる。
図20Dは、適切な膝蓋大腿接触を示す再組み立てされた関節を示している。いくつかの実施形態では、上記の考察に基づいて、
図12を参照して前述したようにおよび/または後述するように、外科医に指導が提供される。
【0068】
いくつかの実施形態では、瞬時に測定された関節反力の各々は、測定時の膝関節の屈曲の程度に関連付けられる。いくつかの実施形態では、関心のある屈曲角ごとに、膝蓋大腿関節の第1の特性化に関連する第1の関節反力と、膝蓋大腿関節の後続の特性化に関連する後続の関節反力とが、それらのそれぞれの方向性および振幅に基づいて互いと比較される。いくつかの実施形態では、数値解析技術を適用して、どの構成要素(例えば、方向性、振幅、または方向性および振幅の両方)が、屈曲角に関して統計学的に有意な差を示すかを決定する。いくつかの実施形態では、数値解析技術は回帰解析である。いくつかの実施形態では、回帰解析は最小二乗法解析を含む。いくつかの実施形態では、(統計学的に有意である場合)膝蓋大腿関節の第1の特性化と後続の特性化との間の計算された差が、適切な膝蓋骨形状を決定する際に外科医に指導を提供するのに使用される。いくつかの実施形態では、これらの差は、外科医に指導を提供するために平均化される。いくつかの実施形態では、所定の特性化に使用される試験用膝蓋骨の厚さは、典型的には、主に関節反力の振幅に影響を与え、一方、膝蓋骨の角形成面および関連する調整(即ち、切除された膝蓋骨に垂直な軸の回りの試験用膝蓋骨の軸方向の回転)は、典型的には、主に関節反力の向きに影響を及ぼす。この考察に基づいて、基本的なシミュレーションを用いて、(例えば、前述したように)ユーザの外科医に指導を提供する。
【0069】
いくつかの実施形態では、第1の特性化と後続の特性化との間に統計学的に有意な差があると判定された場合、指導は以下の原理に基づく。いくつかの実施形態では、後続の特性化(出力i)に関連する関節力の振幅が、初期特性化(入力)に関連する関節力の振幅より大きい場合、次いで、指導が発行されて、試験用膝蓋骨の厚さを減少させる。いくつかの実施形態では、後続の特性化(出力i)に関連する関節力の振幅が、初期特性化(入力)に関連する関節力の振幅よりも小さい場合、指導が発行されて、試験用膝蓋骨の厚さを増加させる。いくつかの実施形態では、後続の特性化(出力i)に関連する関節力の方向性が、初期特性化(入力)に関連する関節力の方向性と異なる場合、次いで、指導が発行されて、試験用膝蓋骨の角形成および関連する調整(即ち、切除された膝蓋骨に垂直な軸に従った試験用膝蓋骨の軸方向回転)を変更することによって、このオフセット不一致を補償する。いくつかの実施形態では、2つの方向性が閾値量以上異なる場合には、異なる方向性が生じるとみなされる。いくつかの実施形態では、閾値量は5度である。いくつかの実施形態では、指導は、後の特性化(出力i)に関連する関節力と、初期特性化(入力)に関連する関節力との間の角度オフセットを解析して、試験用膝蓋骨の修正された角形成に関する指導を提供することによって決定される。いくつかの実施形態では、出力および入力データセットの両方は、特性化中の関節の屈曲角に対して、(例えば、デカルト座標系または極座標系における)3次元力ベクトルのアレイからなる。いくつかの実施形態では、出力データセットと入力データセットとの間の計算された差に対して、線形回帰が実行され、(合力ベクトルのデコンボリューション(deconvolution)により計算した)方向性および力の大きさの影響を統計学的有意性に対して試験する。いくつかの実施形態では、方向性における統計学的有意差は、膝蓋骨の端部荷重を示唆することが理解され、大腿骨顆溝に対する膝蓋骨の並進調節が指示される。いくつかの実施形態では、負荷端部とは反対の方向に調整されている(即ち、方向付けされている)角形成された試験用膝蓋骨を使用する命令を提供する。これは、負荷端部とは反対の方向に方向付けされている(即ち、調整されている)角形成された膝蓋骨の使用を提案する指導を外科医に提供することによって達成される。いくつかの実施形態では、力の大きさの統計学的に有意な差は、膝蓋骨の厚さの調節が必要であることを意味すると理解される。いくつかの実施形態では、外科医は、低減された厚さ(出力が入力よりも大きい場合)または増加された厚さ(出力が入力より小さい場合)を有する試験用膝蓋骨を使用する指導を提供される。いくつかの実施形態では、上記の原理は、上記特性化の間の比較に依存して、および異なる試験用膝蓋骨の利用可能な範囲に応じて、個々に考慮される(即ち、厚さ調整のみを考慮するか、または角形成調整のみを考慮する)か、または組み合わせて考慮される(即ち、厚さ調整および角形成調整の両方を考慮する)。
【0070】
ここで
図17A~
図17Dに関して、例示的な解析が示されている。いくつかの例示的なキットにおいて、膝蓋骨インプラントは、異なる直径および任意の所定の直径に対して異なる角形成(例えば、0°、+5°、および+10°)で利用可能である。いくつかの実施形態では、切開後、外科医は、膝蓋骨を再表面加工し、切除された膝蓋骨に対して第2の特性化キットの第1の試験用膝蓋骨(例えば、0°の角形成)を配置する。次に、いくつかの実施形態では、取り付けられた試験用膝蓋骨(例えば、0°の角形成)と生来の遠位大腿骨との間の関節反力を収集するために、外科医は、関節を整復し、膝蓋大腿関節(入力)の第1の特性化を行う。
図17Aは、このような第1の特性化について前述したような3D包絡線を示す。次に、いくつかの実施形態では、外科医は、遠位大腿骨の作製を行い、対応する大腿骨構成要素を所定の位置に配置する。次に、いくつかの実施形態では、外科医は、取り付けられた試験用膝蓋骨(例えば、0°の角形成)と大腿骨構成要素との間の関節反力を収集するために、関節を(再)整復し、膝蓋大腿関節(出力1)の第2の特性化を行う。
図17Bは、比較のための
図17Aに示されるような第1の特性化のための3D包絡線と共に、このような第2の特性化のための前述のような3D包絡線を示す。いくつかの実施形態では、反力(即ち、ベクトル)は、標準的なベクトル解析に従って、それらの構成直交平面要素または極性要素にデコンボリューションされる。いくつかの実施形態では、各構成要素についての入力および出力1データの間の差が統計学的に有意であるかどうかを決定するために統計学的解析が実行される。いくつかの実施形態では、統計学的解析は回帰解析である。いくつかの実施形態では、
図17Aおよび
図17Bに示される例では、上記解析は、膝蓋大腿関節の第1の特性化と第2の特性化との間の方向性の差が統計学的に有意であることを示し、従って、
図17Cに示されるように、計算された方向性の差を取り消すように方向付けされた非ゼロ角度オフセットを提案する。次に、いくつかの実施形態では、新たに取り付けられた試験用膝蓋骨(例えば、5°の角形成)と大腿骨構成要素との間の関節反力を収集するために、ユーザ外科医は、指導に従い、推奨された試験用膝蓋骨(例えば、5°の角形成を有する)を切除された膝蓋骨に取り付け、膝蓋大腿関節(出力2)の後続の特性化を行う。
図17Dは、比較のための
図17Aに示されるような第1の特性化のための3D包絡線と共に、このような後続の特性化について前述したような3D包絡線を示す。理解されるように、例示的な方法の性能に続いて、2つの包絡線は互いと実質的に整列される。
【0071】
ここで
図18A~
図18Dに関して、例示的な解析を示す。いくつかの例示的なキットでは、膝蓋骨インプラントは、異なる直径および任意の所定の直径に対する異なる厚さ(例えば、0mm、+2mm、+5mm)の下で利用可能である。いくつかの実施形態では、切開後、ユーザ外科医は、膝蓋骨を再表面加工し、切除された膝蓋骨に対して第2の特性化キットの第1の試験用膝蓋骨(例えば、+5mm厚)を配置する。次に、いくつかの実施形態では、ユーザ外科医は、取り付けられた試験用膝蓋骨(例えば、+5mm厚)と生来遠位大腿骨との間の関節反力を収集するために、関節を整復し、膝蓋大腿関節(入力)の第1の特性化を行う。
図18Aは、このような第1の特性化について前述したような3D包絡線を示す。次に、いくつかの実施形態では、ユーザ外科医は、遠位大腿骨の作製を行い、対応する大腿骨構成要素を所定の位置に配置する。次に、いくつかの実施形態では、ユーザ外科医は、取り付けられた試験用膝蓋骨(例えば、+5mm厚)と大腿骨構成要素との間の関節反力を収集するために、関節を(再)整復し、膝蓋大腿関節(出力1)の第2の特性化を行う。
図18Bは、比較のための
図18Aに示されるような第1の特性化のための3D包絡線と共に、このような第2の特性化のための前述のような3D包絡線を示す。いくつかの実施形態では、反力(即ち、ベクトル)は、標準的なベクトル解析に従って、それらの構成直交平面要素または極性要素にデコンボリューションされる。いくつかの実施形態では、各構成要素についての入力および出力1データの間の差が統計学的に有意であるかどうかを決定するために、構成要素を解析する。いくつかの実施形態では、上記解析は統計学的解析である。いくつかの実施形態では、解析は回帰解析である。いくつかの実施形態では、
図18Bに示される例では、上記解析は、膝蓋大腿部関節の第1の特性化と第2の特性化との間の振幅の差が統計学的に有意であることを示し、従って、
図18Cに示されるように、入力特性化と比較して、出力1特性化の増大した振幅を取り消す、低減された膝蓋骨の厚さのオフセットを提案する。次に、いくつかの実施形態では、ユーザ外科医は、新しく取り付けられた試験用膝蓋骨(例えば、+2mm厚)と大腿骨構成要素との間の関節反力を収集するために、指導に従い、推奨された試験用膝蓋骨(例えば、+2mm厚)を切除された膝蓋骨に取り付け、次いで、膝蓋大腿関節(出力2)の後続の特性化を行う。
図18Dは、比較のための
図18Aに示されるような第1の特性化のための3D包絡線と共に、このような後続の特性化について前述したような3D包絡線を示す。理解されるように、例示的な方法の性能に続いて、2つの包絡線は互いと実質的に整列される。
【0072】
ここで
図19A~
図19Dを参照すると、例示的な解析が示されている。いくつかの例示的なキットでは、膝蓋骨インプラントは、異なる直径ならびに任意の所定の直径に対して異なる角形成(例えば、0°、+5°、および+10°)および異なる厚さ(例えば、0mm、+2mm、および+5mm)の下で利用可能である。いくつかの実施形態では、切開後、ユーザ外科医は、膝蓋骨を再表面加工し、切除された膝蓋骨に対して第2の特性化キットの試験用膝蓋骨(例えば、+5mmの厚さ、0度の角形成)を配置する。次に、いくつかの実施形態では、ユーザ外科医は、取り付けられた試験用膝蓋骨(例えば、+5mm厚さ、0度の角形成)と生来遠位大腿骨との間の関節反力を収集するために、関節を整復し、膝蓋大腿関節(入力)の第1の特性化を行う。
図19Aは、このような第1の特性化について前述したような3D包絡線を示す。次に、いくつかの実施形態では、ユーザ外科医は、遠位大腿骨の作製を行い、対応する大腿骨構成要素を所定の位置に配置する。次に、いくつかの実施形態では、ユーザ外科医は、取り付けられた試験用膝蓋骨(例えば、+5mm厚さ、0度の角形成)と大腿骨構成要素との間の関節反力を収集するために、関節を(再)整復し、膝蓋大腿関節(出力1)の第2の特性化を行う。
図19Bは、比較のための
図19Aに示されるような第1の特性化のための3D包絡線と共に、このような第2の特性化のための前述のような3D包絡線を示す。いくつかの実施形態では、反力(即ち、ベクトル)は、標準的なベクトル解析に従って、それらの構成直交平面要素または極性要素にデコンボリューションされる。
いくつかの実施形態では、各構成要素についての入力および出力1データの間の差が統計学的に有意であるかどうかを決定するために、構成要素を解析する。いくつかの実施形態では、上記解析は統計学的解析である。いくつかの実施形態では、上記解析は回帰解析である。いくつかの実施形態では、
図19Bに示される実施例では、上記解析は、膝蓋大腿部関節の第1の特性化と第2の特性化との間の方向性および振幅の差が統計学的に有意であることを示し、従って、
図19Cに示されるように、それぞれ、方向性および振幅の計算された差を取り消すために、非ゼロ角度オフセットおよび減少された厚さオフセットを提案する。次に、いくつかの実施形態では、ユーザ外科医は、新しく取り付けられた試験用膝蓋骨(例えば、+2mmの厚さ、5°の角形成)と大腿骨構成要素との間の関節反力を収集するために、指導に従い、推奨された試験用膝蓋骨(例えば、+2mmの厚さ、5°の角形成)を切除された膝蓋骨に取り付け、次いで、膝蓋大腿関節(出力2)の後続の特性化を行う。
図19Dは、比較のための
図19Aに示されるような第1の特性化のための3D包絡線と共に、このような後続の特性化について前述したような3D包絡線を示す。理解されるように、例示的な方法の性能に続いて、2つの包絡線は互いと実質的に整列される。
【0073】
前述の例示的な実施形態は、患者の膝関節における移植に好適なインプラントの選択を具体的に示す。しかし、本明細書中に記載されたシステムおよび方法は、ヒトおよび他の哺乳動物の他の関節における使用に適合されてもよいことは、当業者には明らかである。
【0074】
本発明の多数の実施形態を説明してきたが、これらの実施形態は例示に過ぎず、限定的ではなく、当業者には多くの変更が明らかであることが理解される。例えば、本明細書中に記載された全ての寸法は、例としてのみ提供され、例示的であり、限定的でないことが意図されている。