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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】粘着テープ、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20240823BHJP
   C09J 7/21 20180101ALI20240823BHJP
   C09J 7/29 20180101ALI20240823BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J7/21
C09J7/29
C09J201/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020007698
(22)【出願日】2020-01-21
(65)【公開番号】P2021113297
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(74)【代理人】
【識別番号】100165021
【弁理士】
【氏名又は名称】千々松 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100154391
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康義
(72)【発明者】
【氏名】津村 健輔
(72)【発明者】
【氏名】林 研太
(72)【発明者】
【氏名】成松 清士郎
(72)【発明者】
【氏名】神谷 信人
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-115273(JP,A)
【文献】特開2006-152308(JP,A)
【文献】特開平10-140111(JP,A)
【文献】特開2001-131507(JP,A)
【文献】マツモトマイクロスフェアーF、FNシリーズ,松本油脂製薬株式会社,2024年01月24日,URL:https://www.mtmtys.co.jp/product/general/data01.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 7/00-7/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の表面上に設けられ、内部に気泡を含有する粘着剤層とを備え、
前記粘着剤層の外表面の表面粗さ(Rz)が40μm以下であり、
前記気泡が、第1の気泡及び前記基材の表面に接触する第2の気泡を含み、
前記第1の気泡が、熱膨張性マイクロカプセル由来の気泡であり、
前記第2の気泡が、液状揮発成分に由来する気泡であり、
圧縮試験により測定した前記粘着剤層の発泡倍率が1.7倍以上であり、
前記表面粗さ(Rz)は、JIS B 0601に準拠して測定した粗さ曲線において、その平均線から縦方向の最高の山頂から高さ順で5番目までの高さの山高さの平均と、最深の谷底から深さ順に5番目の深さまでの谷深さの平均との和より算出した値である粘着テープ。
【請求項2】
前記粘着剤層は、内部に気泡を含有する発泡粘着剤層と、前記発泡粘着剤層の前記基材側の反対側に内部に気泡を含有しない非発泡粘着剤層とを含む請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項3】
前記粘着剤層に含まれる気泡の平均気泡径が70μm以下である請求項1又は2に記載の粘着テープ。
【請求項4】
前記基材が、紙基材と、前記紙基材の一方の面上に設けられる樹脂層とを備え、前記紙基材の他方の面上に前記粘着剤層が設けられる請求項1~のいずれか1項に記載の粘着テープ。
【請求項5】
前記紙基材がクラフト紙、前記樹脂層がポリエチレン系樹脂層である請求項に記載の粘着テープ。
【請求項6】
基材の表面に発泡性粒子を含有する粘着剤組成物を積層する工程、及び得られた積層体の基材側の表面の温度に比べて前記積層体の前記粘着剤組成物側の表面の温度が低くなるように前記積層体を加熱し、前記粘着剤組成物の基材側にある発泡性粒子を少なくとも発泡させる工程を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の粘着テープの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤層の内部に気泡を有する粘着テープ、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着テープは、様々な分野で使用されており、例えば、梱包用などに使用されるテープとして、クラフト紙を基材としたクラフトテープが広く用いられている。従来、クラフトテープなどの粘着テープにおいては少ない粘着剤の量で粘着力を確保する手法として、粘着剤層中に気泡を含有させ、厚みを増すことが行われている。
【0003】
気泡を粘着剤層中に含有させる方法としては、例えば、特許文献1に開示されるように、テープ基材に揮散性物質を浸透させ、それをガス化させることで微小独立気泡を粘着剤層中に形成する手法が知られている。また、特許文献2に開示されるように、熱膨張性マイクロカプセルを含有する粘着剤を基材に塗布した後に加熱して熱膨張性マイクロカプセルを膨張させ、粘着剤層内部に気泡を形成する手法も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特公平2-29705号公報
【文献】特許2709353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
粘着剤層中に気泡を含有させた粘着テープの中には、製造してから長期間経過すると、被着体に対する貼り付け性が悪くなったり、被着体に長時間貼り付けている間に剥がれてしまったりするものがあった。そこで、本発明は、気泡を含有させても、粘着性能の長期安定性に優れた粘着テープ及びその粘着テープの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨は、以下の[1]~[11]の通りである。
[1]基材と、前記基材の表面上に設けられ、内部に気泡を含有する粘着剤層とを備え、前記粘着剤層の外表面の表面粗さ(Rz)が40μm以下である粘着テープ。
[2]前記粘着剤層は、内部に気泡を含有する発泡粘着剤層と、前記発泡粘着剤層の前記基材側の反対側に内部に気泡を含有しない非発泡粘着剤層とを含む上記[1]に記載の粘着テープ。
[3]前記気泡が、前記基材の表面から離れた位置に配置される第1の気泡を含む上記[1]又は[2]に記載の粘着テープ。
[4]前記第1の気泡が、発泡性粒子由来の気泡である上記[3]に記載の粘着テープ。
[5]前記第1の気泡が、中空粒子内部に形成された気泡である上記[3]に記載の粘着テープ。
[6]前記気泡が、前記基材の表面に接触する第2の気泡をさらに含む上記[3]~[5]のいずれか1つに記載の粘着テープ。
[7]圧縮試験により測定した前記粘着剤層の発泡倍率が1.7倍以上である上記[1]~[6]のいずれか1つに記載の粘着テープ。
[8]前記粘着剤層に含まれる気泡の平均気泡径が55μm以下である上記[1]~[7]のいずれか1つに記載の粘着テープ。
[9]前記基材が、紙基材と、前記紙基材の一方の面上に設けられる樹脂層とを備え、前記紙基材の他方の面上に前記粘着剤層が設けられる上記[1]~[8]のいずれか1つに記載の粘着テープ。
[10]前記紙基材がクラフト紙、前記樹脂層がポリエチレン系樹脂層である上記[9]に記載の粘着テープ。
[11]基材の表面に発泡性粒子を含有する粘着剤組成物を積層する工程、及び得られた積層体の基材側の表面の温度に比べて前記積層体の前記粘着剤組成物側の表面の温度が低くなるように前記積層体を加熱し、前記粘着剤組成物の基材側にある発泡性粒子を少なくとも発泡させる工程を含む、粘着テープの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、気泡を有していても粘着性能の長期安定性に優れた粘着テープ及びその粘着テープの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る粘着テープを示す模式的な断面図である。
図2】本発明の一実施形態において、基材を詳細に示した粘着テープを示す模式的な断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る粘着テープの変形例を示す模式的な断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る粘着テープの変形例を示す模式的な断面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る粘着テープの変形例を示す模式的な断面図である。
図6】圧縮試験により発泡倍率を測定する方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係る粘着テープについて詳細に説明する。本実施形態において、粘着テープ10は、図1に示すように、基材11と、基材11の一方の表面11A上に設けられ、内部に気泡21を有する粘着剤層20を備える。
【0010】
[粘着剤層]
粘着剤層20の外表面20Aの表面粗さ(Rz)が40μm以下である。粘着剤層20の外表面20Aの表面粗さ(Rz)が40μmよりも大きいと、粘着テープ10における粘着性能の長期安定性が悪くなる場合がある。以下の理由は本発明を限定しないが、粘着剤層20の外表面20Aの表面粗さ(Rz)が40μmよりも大きいと、粘着テープ10における粘着性能の長期安定性が悪くなるのは、以下の理由によるものと考えられる。
粘着剤層20の外表面20Aの表面粗さ(Rz)が40μmよりも大きい場合、粘着剤層20の外表面20Aの近傍に気泡径の大きな気泡が存在していると考えられる。気泡が粘着剤層20の外表面20Aの近傍に存在する場合、気泡は破泡しやすくなる。また、その気泡の気泡径が大きいと、気泡はさらに破泡しやすくなる。このため、粘着剤層20の外表面20Aの表面粗さ(Rz)が40μmよりも大きいと、粘着テープ10を長期間保管している間に、気泡の破泡が起こり、粘着テープ10における粘着性能の長期安定性が悪くなると考えられる。
【0011】
粘着テープ10における粘着性能の長期安定性の観点から、粘着剤層20の外表面20Aの表面粗さ(Rz)は、好ましくは30μm以下であり、より好ましくは25μm以下であり、さらに好ましくは20μm以下である。粘着剤層20の外表面20Aの表面粗さ(Rz)の範囲の下限値は特に限定されないが、例えば0μm以上である。なお、粘着剤層20の外表面20Aの表面粗さ(Rz)は、後述の実施例に記載の方法に基づき測定された値を意味する。
【0012】
粘着剤層20の外表面付近に気泡を存在させないか、又は存在させたとしても気泡の気泡径を小さくすることにより、粘着剤層20の外表面20Aの表面粗さ(Rz)を40μm以下とすることができる。なお、粘着剤層20の外表面付近に気泡を存在させないことにより、外表面付近に存在する気泡が破泡して粘着テープの粘着性能が悪くなることを防止できる。これにより、粘着テープ10を被着体に長時間貼り付けてもはがれにくい。また、粘着剤層20の外表面付近の気泡の気泡径を小さくすることにより、外表面付近に存在する気泡による粘着剤層の外表面における凸部が発生しても、粘着剤の外表面における表面粗さ(Rz)も小さくなり、40μm以下とすることができる。なお、小さな気泡は破泡しにくい。
【0013】
粘着剤層20は、内部に気泡を含有する発泡粘着剤層23と、発泡粘着剤層23の基材11側の反対側に内部に気泡を含有しない非発泡粘着剤層22とを含むことが好ましい。これにより、粘着剤層20の外表面20Aの表面粗さ(Rz)を40μm以下とすることが容易になる。その結果、粘着テープ10における粘着性能の長期安定性が改善される。なお、発泡粘着剤層23と非発泡粘着剤層22とは、通常、気泡の有無しか差異がないので、発泡粘着剤層23と非発泡粘着剤層22との間の界面は明確ではない。
【0014】
粘着剤層20において、気泡21は、基材11の表面11Aから離れた位置に配置される第1の気泡21Aと、基材11の表面11Aに接触する第2の気泡21Bを有する。このように、粘着剤層20が、第1の気泡21Aのみならず、基材11の表面11Aに接触する第2の気泡21Bも有することで、粘着剤層20の外表面20A近傍に多くの気泡を含有させたり、気泡径を必要以上に大きくしたりすることなく、粘着剤層20中の気泡の占有体積を大きくできる。また、第2の気泡21Bなどの気泡径を必要以上に大きくしなくてもよいので、気泡21が破泡しにくくなる。そのため、接着性能を良好にしつつ、少ない粘着剤量で十分な厚みを有する粘着剤層20を形成できる。また、粘着テープ10を被着体に長時間貼り付けても剥がれにくくなる。
【0015】
第2の気泡21Bは、図1に示すように、粘着剤層20において厚さ方向よりも平面方向に広がる形状を有する。また、第2の気泡21Bは、表面11Aに接触する側が平面方向に広がり、表面11Aから遠ざかる位置においては平面方向に小さくなる形状を有し、典型的には半球状となるとよい。第1の気泡21Aは、厚さ方向における中央付近が平面方向に広がり、外表面20A又は表面11A側の端部が平面方向に小さくなる形状を有し、典型的には球状、あるいは平面方向に沿って広がる偏平形状となる。第1及び第2の気泡21A、21Bは、他の気泡に連通しない独立気泡である。
【0016】
本実施形態において、第2の気泡21Bは、後述する製造方法で詳述するとおり、液状揮発成分を揮発することにより形成されるとよい。また、第1の気泡21Aは発泡性粒子由来の気泡であるとよい。発泡性粒子は、後述するように、熱膨張性マイクロカプセルが好ましい。熱膨張性マイクロカプセルは、粘着テープ10においてはすでに膨張されており、粘着剤層20においては外殻内部に気泡を有する中空粒子となる。すなわち、第1の気泡21Aは、中空粒子内部に形成された気泡であることが好ましい。
【0017】
粘着剤層20における気泡21の平均気泡径(D)は、70μm以下であることが好ましい。70μm以下とすると、気泡が大きくなりすぎて破泡等することを防止できる。そのため、粘着剤層20の粘着性能を向上させて、初期貼り付け後の粘着力が高くなりすぎたり、貼り付け後に粘着性能が低下したりすることを防止できる。平均気泡径(D)は、60μm以下がより好ましく、55μm以下がさらに好ましく50μm以下が特に好ましい。
また、気泡21の平均気泡径(D)は、特に限定されないが、気泡を形成しやすくする観点、気泡によって粘着剤量を減らしやすくする観点から、10μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましく、25μm以上がさらに好ましい。
なお、粘着剤層20における気泡21の平均気泡径(D)は、後述の実施例に記載の方法に基づき測定された値を意味する。
【0018】
また、粘着剤層20において、第2の気泡21Bの平均気泡径(D2)は、第1の気泡21Aの平均気泡径(D1)よりも大きいことが好ましい。このような態様により、粘着剤層20の外表面20A付近に存在する気泡の気泡径が小さくなるので、粘着剤層20の粘着性能を良好にしやすくなる。
具体的な第2の気泡21Bの平均気泡径(D2)は、好ましくは20~100μm、より好ましくは30~80μm、さらに好ましくは35~60μmである。
また、第1の気泡21Aの平均気泡径(D1)は、粘着剤層20の厚さよりも小さいことが好ましい。具体的な平均気泡径(D1)は、好ましくは1~50μm、より好ましくは5~40μm、さらに好ましくは10~35μmである。
なお、各気泡の平均気泡径は、粘着剤層20を外表面20A側から平面視して観察することで測定できる。
【0019】
粘着剤層20の発泡倍率(E)は、1.7倍以上であることが好ましい。発泡倍率(E)を1.7倍以上とすると、気泡21により粘着剤層20の厚さを十分に増加させることができ、粘着性能を維持しつつ粘着剤層20における粘着剤量を減らすことができる。このような観点から、粘着剤層20の発泡倍率(E)は、1.8倍以上がより好ましく、1.9倍以上がさらに好ましい。
発泡倍率(E)は、粘着剤量を減らす観点からは高ければ高いほうがよいが、粘着性能の観点からは、3.2倍以下が好ましく、3.0倍以下がより好ましく、2.8倍以下がさらに好ましく、2.4倍以下がよりさらにこのましく、2.0倍以下が特に好ましい。
なお、発泡倍率(E)は、気泡21による粘着剤層20の厚さの増加量を表す指標である。発泡倍率(E)は、具体的には、後述する実施例で示す圧縮試験により気泡21による粘着剤層20の厚さの増加分を求め、その厚さ増加分などに基づいて、未発泡の粘着剤層、及び発泡後の粘着剤層の厚さを求めて、発泡後の粘着剤層の厚さ/未発泡の粘着剤層の厚さにより算出できる。
【0020】
粘着剤層20の第2の気泡21Bによる発泡倍率(E1)は、好ましくは1.1~1.9倍、より好ましくは1.3~1.8倍である。なお、第2の気泡21Bによる発泡倍率とは、第1の気泡21Aが存在しないと仮定した場合の発泡倍率であり、例えば後述する実施例記載の方法により測定可能である。
また、粘着剤層20において、第1の気泡21Aによる発泡倍率増加分(E2)は、好ましくは0.05~1.5倍、より好ましくは0.1~1.3倍である。
なお、発泡倍率増加分(E2)とは、粘着剤層20全体の発泡倍率(E)より、上記第2の気泡21Bによる発泡倍率(E1)を差し引くことで算出できる。
【0021】
粘着剤層20の厚さは、特に限定されないが、粘着剤層20内部に適切に気泡21を形成しつつ、粘着性能を確保する観点から、10μm以上が好ましく、15μm以上がより好ましく、20μm以上がさらに好ましい。また、粘着剤層20の厚さは、150μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましく、50μm以下がさらに好ましい。これら上限値以下とすることで、粘着剤量を少なくできる。また、基材11の表面11Aに接触する第2の気泡21Bを設けた効果を発揮させやすくなる。
【0022】
40℃に温調した恒温槽に4週間保管した粘着テープ10の外表面20Aに対して測定したボールタック値は、5~14が好ましい。ボールタック値が上記範囲内であると、粘着剤層20の貼り付け性の長期安定性が優れていることになり、梱包用の粘着テープなどに好適に使用できるようになる。これら観点から、40℃に温調した恒温槽に4週間保管した粘着テープ20における粘着剤層20のボールタック値は、6~12がより好ましい。なお、ボールタック値は、JISZ 0237:2009に準拠して測定できる。
【0023】
粘着剤層20を構成する粘着剤は、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤などが挙げられる。これら粘着剤は、アクリル樹脂、ゴム成分、ウレタン樹脂、ポリビニルエーテル、シリコーン樹脂などの粘着剤の主剤となる樹脂成分を含むものであり、その主剤にさらに適宜添加剤などが配合されて構成される。
【0024】
(発泡性粒子)
粘着剤層20は、上記のとおり、発泡性粒子由来の気泡を有するものである。したがって、粘着剤層20は、後述するように、上記主剤に加えて、発泡性粒子を含む粘着剤組成物を加熱させ、発泡させることで形成できる。発泡性粒子としては、加熱することで発泡するものであり、熱分解型発泡剤などでもよいが、熱膨張性マイクロカプセルが好ましい。熱膨張性マイクロカプセルは、加熱されることで外殻内部に気泡を有する中空粒子となる。本実施形態において熱膨張性マイクロカプセルを使用すると、発泡性粒子から発生した気体が粘着剤層20の外部に抜けることが防止され、適正な量の第1及び第2の気泡21A、21Bを粘着剤層20中に並存させやすくなり、発泡倍率を向上させやすくなる。
【0025】
熱膨張性マイクロカプセルは、外殻樹脂の内部に低沸点溶剤等の揮発性物質が内包されたものであり、加熱により外殻樹脂が軟化し、内包された揮発性物質が揮発ないし膨張するため、その圧力で外殻が膨張して粒子径が大きくなるものである。
熱膨張性マイクロカプセルの外殻は、熱可塑性樹脂から形成されることが好ましい。熱可塑性樹脂は、エチレン、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、ブタジエン、クロロプレン等のビニル重合体およびこれらの共重合体、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルから選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。これらの中では、内包された揮発性物質が透過しにくい点からアクリロニトリルの共重合体が好ましい。
【0026】
熱膨張性マイクロカプセルの内部に内包される揮発性物質としては、プロパン、プロピレン、ブテン、ノルマルブタン、イソブタン、イソペンタン、ネオペンタン、ノルマルペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の炭素数3~7の炭化水素、石油エーテル、塩化メチル、メチレンクロリド等のメタンのハロゲン化物、CCl3F、CCl22等のクロロフロオロカーボン、テトラメチルシラン、トリメチルエチルシラン等のテトラアルキルシラン等から選択される1種又は2種以上の低沸点液体が使用される。これらの中では、炭素数3~7の炭化水素を使用することが好ましい。
【0027】
熱膨張性マイクロカプセルは、特に限定されないが、例えば、平均粒径が1~40μm、膨張開始温度(「発泡開始温度」ともいう)が95~150℃程度のものを使用すればよい。なお、平均粒径とは、光学顕微鏡などで粒子を無作為に選択して10点平均により求めればよい。また、膨張開始温度とは、熱膨張性マイクロカプセルの膨張を開始する温度であり、熱機械分析装置(TMA)などにより測定できる。
【0028】
熱膨張性マイクロカプセルの市販品例としては、アクゾノーベル社製「EXPANCEL」、積水化学工業株式会社製「アドバンセル」、松本油脂製薬株式会社製「マツモトマイクロスフェアー」、株式会社クレハ製「マイクロスフェアー」等が挙げられる。
【0029】
また、発泡性粒子として使用される熱分解型発泡剤は、有機系発泡剤、無機系発泡剤のいずれでもよい。有機系発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、アゾジカルボン酸金属塩(アゾジカルボン酸バリウム等)、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物、ヒドラゾジカルボンアミド、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、トルエンスルホニルヒドラジド等のヒドラジン誘導体、トルエンスルホニルセミカルバジド等のセミカルバジド化合物等が挙げられる。
無機系発泡剤としては、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、無水クエン酸モノソーダ等が挙げられる。
【0030】
(ゴム系粘着剤)
粘着剤層20を構成する粘着剤は、上記した中では、ゴム系粘着剤を使用することが好ましい。ゴム系粘着剤を使用することで、粘着剤層20は、一定以上の硬度が付与されて、内部に多くの気泡を形成しても一定の形状を維持しやすくなる。そのため、粘着剤層20は、発泡倍率を高くしても粘着性能を維持しやすくなる。ゴム系粘着剤は、主剤として上記のようにゴム成分を使用するものであり、そのゴム成分としては、天然ゴム、エチレン・プロピレンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、イソプレンゴム、ブチルゴム(IIR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロスルホン化ポリエチレン等が挙げられる。これらの中では天然ゴムが好ましい。また、ゴム成分としては熱可塑性エラストマーであってもよい。
【0031】
ゴム成分は、熱可塑性エラストマーが好ましく、中でもスチレン系熱可塑性エラストマーが好ましい。熱可塑性エラストマーを使用することで、粘着剤をホットメルト粘着剤とすることができ、後述するように微細な気泡を適切に形成しやすくなる。
スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレンとイソプレンをブロック共重合化したものが好ましく使用され、具体的にはスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-イソプレンブロック共重合体(SI)等が挙げられ、中でもSISがより好ましい。
【0032】
ゴム系粘着剤は、上記ゴム成分に加えて、粘着性付与剤を含有することが好ましい。粘着性付与剤は、ゴム系粘着剤に粘着性を付与して粘着剤層20の粘着性能を向上させる。粘着性付与剤としては、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、クマロン-インデン樹脂、石油系樹脂、テルペン-フェノール樹脂などが挙げられ、これらの中では石油系樹脂が好ましい。粘着剤における粘着性付与剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば、20~200質量部、好ましくは50~150質量部である。
【0033】
ゴム系粘着剤は、上記粘着性付与剤に加えて、軟化剤を含有してもよい。ゴム系粘着剤は、軟化剤を含有することで、粘着剤が軟化して、塗布性、粘着性能などを良好にしやすくなる。軟化剤としては、パラフィンオイル、ナフテンオイルなどの鉱油(プロセスオイルとも呼ばれる)、液状ポリブテン、液状ラノリン、液状ポリイソプレン、液状ポリアクリレートなどが挙げられる。粘着剤における軟化剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば5~80質量部、好ましくは10~50質量部である。
【0034】
粘着剤層20を構成する粘着剤には、上記以外にも、充填材、酸化防止剤、老化防止剤、紫外線防止剤、顔料等の粘着剤に使用される公知の添加剤が適宜配合されてもよい。
【0035】
[基材]
粘着テープに使用される基材11としては、紙基材、布基材、樹脂フィルムであってもよいし、これらを2以上組み合わせた多層基材であってもよい。例えば、紙基材又は布基材の少なくとも一方の面に樹脂層が設けられた多層基材などでもよい。
紙基材としては、クラフト紙、グラシン紙、上質紙などが挙げられる。布基材としては、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂、綿糸、麻糸等の天然繊維等により構成された織布、編布、不織布等が挙げられる。また、樹脂フィルムとしては、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、アクリル樹脂フィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム、EVAフィルム等が挙げられる。同様に、多層基材に使用される樹脂層としては、ポリエステル樹脂層、ポリオレフィン樹脂層、ポリスチレン樹脂層、アクリル樹脂層、ポリフェニレンスルフィド樹脂層、EVA樹脂層などが挙げられる。
【0036】
これらの中では、基材11は、図2に示すように、紙基材12と、紙基材12の一方の面上に設けられる樹脂層13とを備える多層基材であることが好ましい。この場合、紙基材12の樹脂層13が設けられた面とは反対側の面(他方の面)が基材11の表面11Aを構成し、その他方の面上に粘着剤層20が設けられるとよい。
図2に示すように紙基材12を使用することで、後述する液状揮発成分が基材11に含浸されやすくなり、また、樹脂層13が設けられることで、含浸された液状揮発成分が基材11の裏面11Bから揮発されにくくなる。そのため、粘着剤層20に効率的に第2の気泡21Bを形成しやすくなる。
【0037】
また、紙基材12は、クラフト紙であることが好ましく、樹脂層13はポリオレフィン樹脂層であることが好ましい。紙基材12としてクラフト紙を使用すると、液状揮発成分を基材11中により一層含浸させやすくなり、第2の気泡21Bを十分な量均一に形成しやすくなる。また、クラフト紙を使用すると、粘着テープ10がクラフトテープとなり、梱包用の粘着テープなどとして好適になる。
ポリオレフィン樹脂層に使用されるポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂が好ましいが、ポリエチレン系樹脂がより好ましい。すなわち、樹脂層13はポリエチレン系樹脂層であることが好ましい。ポリエチレン系樹脂を使用することで、耐熱性や、クラフト紙などの紙基材との接着性などが良好となりやすく、さらには、裏面11Bからの液状揮発成分の揮発も防止しやすくなる。
【0038】
基材11の厚さは、特に限定されないが、例えば10~1000μmである。また、基材11が上記のように紙基材12と樹脂層13とを備える多層基材で場合には、紙基材12は坪量で10~150g/mであることが好ましく、40~100g/mであることがより好ましい。坪量を上記範囲内とすると、基材11の厚さを必要以上に大きくすることなく、液状揮発成分を基材11に含浸させやすくなる。また、樹脂層13の厚さは、例えば、5~100μmが好ましく、10~50μmがより好ましい。
【0039】
(離型剤層)
粘着テープ10は、図1、2に示すように基材11の粘着剤層20が設けられる面とは反対側の面(裏面11B)に、離型剤層30が設けられることが好ましい。離型剤層30が設けられることで、粘着テープ10をロール状に巻回して巻回体とする際、粘着剤層20が離型剤層30に接触することになる。そのため、粘着テープ10を巻回体から容易に繰り出すことが可能になる。
離型剤層30は、シリコーン系離型剤、長鎖アルキル系離型剤などの公知の離型剤より形成すればよい。離型剤層30の厚さは、特に限定されないが、その付着量が例えば0.1~10g/m、好ましくは0.3~5g/m程度となるように調製すればよい。
【0040】
粘着テープ10は、上記のとおり、ロール状に巻回して巻回体とするとよい。粘着テープ10は、例えば巻芯を中心にロール状に巻回するとよい。巻回体とする場合には、粘着剤層20が内側、離型剤層30が外側になるように巻回すればよく、それにより、巻回体の最外周面を離型剤層30にできる。また、粘着テープ10は、巻回体とすることで梱包用の粘着テープなどとして好適である。
勿論、粘着テープ10は巻回体とする必要はなく、シート状のままとしてもよい。そのような場合、粘着剤層20の表面には、粘着剤層20を保護するための離型シートなどを貼付してもよく、また、離型剤層30は適宜省略するとよい。
【0041】
[粘着テープの製造方法]
本発明の実施形態における粘着テープの製造方法は、基材の表面に発泡性粒子を含有する粘着剤組成物を積層する工程、及び得られた積層体の基材側の表面の温度に比べて積層体の粘着剤組成物側の表面の温度が低くなるように積層体を加熱し、粘着剤組成物の基材側にある発泡性粒子を少なくとも発泡させる工程を含む。これにより、粘着剤層の外表面の表面粗さ(Rz)を40μm以下である粘着テープを製造することが容易になる。その結果、被着体に対する貼り付け性が良好であり、かつ、被着体に長時間貼り付けても剥がれにくい粘着テープを製造することが容易になる。例えば、積層体を加熱する上記工程では、粘着剤組成物の基材側にある発泡性粒子を発泡させ、粘着剤組成物の基材側とは反対側の表面近傍にある発泡性粒子を発泡させないようにしてもよい。
【0042】
本発明の実施形態における粘着テープの製造方法は、例えば、以下の工程1~工程3を有する。
工程1:基材の表面に液状揮発成分を塗工ないし含浸させる工程
工程2:基材の表面に発泡性粒子を含有する粘着剤組成物を積層する工程
工程3:工程2で得られた積層体を加熱することで、粘着剤組成物より構成される粘着剤層の内部に気泡を形成する工程
【0043】
以下、各工程について詳細に説明する。
(工程1)
本製造法にて使用される基材は、上記したとおりであるが、粘着テープ10に離型剤層30を設ける場合には、基材11の粘着剤層20が設けられる面(表面11A)とは反対側の面(裏面11B)上に離型剤層30を形成するとよい。離型剤層の形成は、例えば、適宜溶剤などにより希釈された離型剤を基材に塗布し、必要に応じて加熱、乾燥などすることで形成するとよい。
【0044】
工程1において使用される液状揮発成分は、常温(23℃)及び常圧(1気圧)で液体であり、加熱により揮発する成分が使用される。液状揮発成分は、例えば、水、エタノール、メタノール、イソプロパノール、n-プロパノールなどのアルコール、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン等の有機溶剤等が挙げられる。これらの中では、安全性に優れ急激に揮発することもないことから、水が好適に用いられる。これらの液状揮発成分は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
【0045】
液状揮発成分を塗工ないし含浸させる方法は、特に限定されないが、例えば、グラビアロール等による転写塗工する方法、スプレー塗布機等によるスプレー塗工方法等が挙げられる。
本製造方法において基材に対する液状揮発成分の付着量は、1~20g/mが好ましい。液状揮発成分の付着量を上記下限値以上とすることで、粘着剤層20に第2の気泡21Bを十分な量形成できる。また、上限値以下とすることで、第2の気泡21Bの気泡径が大きくなりすぎて破泡等することを防止し、粘着性能を向上させやすくなる。これら観点から、基材に対する液状揮発成分の付着量は、1.5~15g/mがより好ましく、2~10g/mがさらに好ましい。
【0046】
(工程2)
工程2は、工程1にて液状揮発成分が塗工ないし含浸された基材の表面に発泡性粒子を含有する粘着剤組成物を積層する工程である。
ここで、粘着剤組成物は、粘着剤を構成する主剤(樹脂成分)、必要に応じて配合される粘着性付与剤、軟化剤、その他の添加剤に加えて、発泡性粒子を含有する。発泡性粒子は、上記のとおりであり、好ましくは熱膨張性マイクロカプセルを使用する。
粘着剤組成物における発泡性粒子の配合量は、粘着剤組成物100質量部に対して、0.05質量部以上が好ましく、0.15質量部以上がさらに好ましく、0.3質量部以上がさらに好ましい。発泡性粒子の配合量をこれら下限値以上とすることで、粘着剤層20において、適切な量の第1の気泡21Aを形成できる。また、上記発泡性粒子の配合量は、1.5質量以下が好ましく、1.0質量部以下がより好ましく、0.5質量部以下がさらに好ましい。発泡性粒子の配合量をこれら上限値以下とすることで、粘着剤層20の外表面20A付近の気泡の量を抑えて、気泡21により粘着性能が低下することを防止する。
【0047】
粘着剤組成物は、溶剤によって希釈された溶剤希釈型であってもよいし、溶剤によって希釈されずにホットメルト型となってもよいが、ホットメルト型が好ましい。ホットメルト型とすることで、粘着剤組成物が熱により容易に軟化して液状揮発成分のガス化を妨げず、また、冷却により容易に固化して生成した気泡を微細な分散状態で保持できる。
【0048】
粘着剤組成物の調製方法は、特に限定されずに、例えば、粘着剤組成物を構成する成分を攪拌機などにおいて混合することで行うとよい。また、ホットメルト型の場合には、主剤である樹脂成分が溶融する温度以上に加熱して混合するとよい。また、発泡性粒子が加熱によって膨張することを防止するために、適宜加圧下で混合を行ってもよい。
粘着剤組成物の積層方法は、特に限定されず、例えば、ロールコーター、ダイコーター、ホットメルトコーター等を用いて、粘着剤組成物を基材に直接塗工する方法が挙げられる。
【0049】
(工程3)
工程3は、工程2で得られた積層体を加熱することで、粘着剤組成物より構成される粘着剤層20の内部に気泡21を形成する工程である。詳細には、工程3では、得られた積層体の基材側の表面の温度に比べて積層体の粘着剤組成物側の表面の温度が低くなるように積層体を加熱する。そして、粘着剤組成物の基材側にある発泡性粒子を発泡させ、粘着剤組成物の基材側とは反対側の表面近傍にある発泡性粒子を発泡させない。例えば、発泡炉として熱風炉を用いる場合、積層体の粘着組成物側に吹き付ける熱風の温度に比べて積層体の基材側に吹き付ける熱風の温度を高くすることにより、上記のように積層体を加熱することができる。これにより、粘着剤組成物中の発泡性粒子は、基材側から発泡を開始する。そして、粘着剤組成物の基材側とは反対側の表面近傍にある発泡性粒子が発泡を開始する前に、積層体を発泡炉から排出することにより、粘着剤組成物の基材側にある発泡性粒子を発泡させ、粘着剤組成物の基材側とは反対側の表面近傍にある発泡性粒子を発泡させないようにすることができる。また、バッチ炉を用いて、積層体の基材側の表面の温度に比べて積層体の粘着剤組成物側の表面の温度が低くなるように積層体を加熱し、粘着剤組成物の基材側とは反対側の表面近傍にある発泡性粒子が発泡を開始する前に、積層体をバッチ炉から取り出してもよい。
【0050】
また、工程3では、基材に塗工ないし含浸させた液状揮発成分を揮発させることで、基材11の表面11Aに接触する位置に第2の気泡21Bを形成させる。さらに、上記の通り、粘着剤組成物中に含有された発泡性粒子を発泡させることで、基材11の表面11Aから離れた位置に発泡性粒子由来の第1の気泡21Aを形成する。そして、それとともに、粘着剤層20の基材側の反対側に非発泡粘着剤層22を形成する。
【0051】
工程3における積層体の基材側の加熱温度は、液状揮発成分の沸点以上で、かつ発泡性粒子の発泡開始温度以上の温度であればよい。具体的な加熱温度は、好ましくは110℃~170℃、より好ましくは130~165℃である。一方、工程3における積層体の粘着組成物側の加熱温度は、積層体の基材側の加熱温度に比べて、好ましくは20℃以上、より好ましくは25℃以上、さらに好ましくは30℃以上、低い温度であればよい。具体的な加熱温度は、好ましくは85~145℃、より好ましくは105~140℃である。
また、上記加熱温度における加熱時間は、液状揮発成分が揮発し、かつ粘着剤組成物の基材側にある発泡性粒子が発泡する時間以上であり、かつ粘着剤組成物の基材側とは反対側の表面近傍にある発泡性粒子が発泡しない時間以下であれば限定されないが、好ましくは1~20秒、より好ましくは2~10秒であり、さらに好ましくは3~5秒である。
加熱方法は、特に限定されないが、例えば、熱風、赤外線、マイクロウェーブ等が挙げられる。例えば内部が所定の温度に加熱された加熱炉に積層体を通過させればよい。加熱炉の搬送方法は、特に限定されないが、例えば、ロールサポート式、エアフローティング式、ベルト搬送式、ハンギングドライヤー式等が挙げられる。
【0052】
以上のように、本発明の粘着テープを、実施形態を参考に詳細に説明したが、本発明の効果を奏する限り、粘着テープは、上記した構成に限定されない。例えば、第1の気泡21Aを発泡性粒子以外によって形成してもよいし、第2の気泡21Bを液状揮発成分以外によって形成してもよい。さらには、第1及び第2の気泡は、独立気泡である必要もない。また、離型剤層は適宜省略してもよいし、基材11の裏面11Bには離型剤層の代わりに別の層が設けられてもよい。さらに、離型剤層と基材11の裏面11Bの間に適宜別の層が設けられてもよい。
【0053】
本発明の実施形態の粘着テープは、以下のように変形してもよい。
本発明の実施形態の粘着テープの粘着剤層は、第1の気泡及び第2の気泡の両方を含まなくてもよく、第1の気泡及び第2の気泡の一方の気泡を含んでもよい。例えば、図3に示す粘着テープのように、基材11の表面11Aから離れた第1の気泡21Aを含み、粘着剤層20は基板11の表面11Aに接触する第2の気泡を含まなくてもよい。
【0054】
図4に示す粘着テープ10のように、内部に気泡を含有する発泡粘着剤層23の上に、内部に気泡を含有しない非発泡粘着剤層22を形成することにより、粘着剤層20を形成するようにしてもよい。この場合も、粘着剤層20の外表面近傍に存在する非発泡粘着剤層22には、粘着剤層20の外表面20Aに凸部を形成する原因となる気泡が存在しないので、粘着剤層20の外表面20Aの表面粗さ(Rz)を容易に40μm以下にすることができる。例えば、発泡性粒子を含有する粘着剤組成物を基材の上に塗布した後、発泡性粒子を含有しない粘着剤組成物を、発泡性粒子を含有する粘着剤組成物の層の上に塗布し、得られた積層体を発泡させてもよい。また、発泡性粒子を含有する粘着剤組成物を基材の上に塗布し、得られた積層体を発泡させた後、発泡性粒子を含有しない粘着剤組成物を、積層体の上にさらに塗布してもよい。
【0055】
粘着剤層20の外表面20Aの表面粗さ(Rz)が40μm以下にすることができれば、粘着剤層20は、内部に気泡を含有しない非発泡粘着剤層を含まなくてもよい。例えば、図5に示す粘着テープ10のように、粘着剤層20の外表面近傍に存在する第1の気泡21Aの気泡径を小さくすることにより、粘着剤層20の外表面近傍に第1の気泡21Aが存在しても、第1の気粘着剤層20の外表面20Aの表面粗さ(Rz)を40μm以下にすることができる。粘着剤層20の外表面近傍に存在する第1の気泡21Aの気泡径は、例えば40μm以下、好ましくは30μm以下、より好ましくは25μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。
【0056】
また、本発明の実施形態の粘着テープの製造方法は、以下のように変形してもよい。
本発明の実施形態における粘着テープの製造方法の積層体を加熱する工程では、粘着剤組成物の基材側にある発泡性粒子を発泡させ、粘着剤組成物の基材側とは反対側の表面近傍にある発泡性粒子を発泡させなかった。しかし、積層体を加熱する工程で、気泡径を小さくするのであれば(例えば、40μm以下、好ましくは30μm以下、より好ましくは25μm以下、さらに好ましくは20μm以下)、粘着剤組成物の基材側とは反対側の表面近傍にある発泡性粒子を発泡させてもよい。この場合も、粘着剤層の外表面の表面粗さ(Rz)を40μm以下である粘着テープを製造することが容易になる。その結果、気泡を有していても粘着性能の長期安定性に優れた粘着テープを製造することが容易になる。
【実施例
【0057】
以下に本発明の実施例を説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0058】
測定方法及び評価方法は、以下のとおりである。
<平均気泡径(D)>
得られた粘着テープについて、粘着剤層の外表面側から1mm×1mmの領域を光学顕微鏡(キーエンス社製「VHX-6000」)により倍率200倍で観察し、上記領域内の全気泡の気泡径を測定して、その平均値を平均気泡径(D)とした。また、同様の方法により、第1及び第2の気泡の平均気泡径(D1),(D2)を測定した。
【0059】
<発泡倍率(E)>
粘着テープを筒状の巻芯(外径80mm)を中心に50m巻回して巻回体とした。図6に示すように、得られた巻回体50の巻芯の内部に円柱状の固定部51を通し、巻回体50の外周面に可動部52を押し当てて、可動部52を径方向内側に押圧し、巻回体50を径方向に沿って圧縮させた。巻回体50の圧縮には、テンシロン「RTC-1310A」(ORIENTEC社製)を用いた。
巻回体50を圧縮した時のグラフ(移動距離(x軸)vs加重(y軸))において、接線の傾きが一定になった部分の接線を延ばして、x軸との交点におけるxの値を、気泡を含む巻回体の厚さ(A)として算出した。その後、気泡なしのテープサンプルで同様の操作を行い、算出した交点により気泡を含まない巻回体の厚さ(B)を測定し、厚さ(A)から厚さ(B)を減じることで、巻回体に含まれる気泡により増加した厚さを算出し、それをテープの積層数で除すことで、テープ1枚あたりに含まれる気泡による厚さの増加分とした。発泡倍率は、気泡なしのテープサンプルの粘着剤層の厚さを未発泡の粘着剤層の厚さとし、未発泡の粘着剤層の厚さに厚さの増加分を加算した値を発泡後の粘着剤層の厚さとして、発泡後の粘着剤層の厚さ/未発泡の粘着剤層の厚さにより発泡倍率(E)を算出した。
なお、気泡なしのテープサンプルとは、液状揮発成分を基材に塗工ないし含浸せず、かつ粘着剤組成物に発泡性粒子を配合しない点を除いて、各実施例、比較例と同様の方法により、粘着テープを作成したときに得られるサンプルである。
【0060】
<第2の気泡による発泡倍率(E1)、第1の気泡による発泡倍率増加分(E2)>
粘着剤組成物に発泡性粒子を配合しない点を除いて、各実施例、比較例と同様の方法により、粘着テープを作成して、得られたサンプルを発泡性粒子なしのテープサンプルとした。発泡性粒子なしのテープサンプルの発泡倍率を上記と同様に測定して、その発泡倍率を第2の気泡による発泡倍率(E1)とした。また、上記で算出した発泡倍率(E)より、第2の気泡による発泡倍率(E1)を差し引くことで、第1の気泡による発泡倍率増加分(E2)を算出した。
【0061】
<表面粗さ(Rz)>
JIS B 0601に準拠して測定した粗さ曲線において、その平均線から縦方向の最高の山頂から高さ順で5番目までの高さの山高さの平均と、最深の谷底から深さ順に5番目の深さまでの谷深さの平均との和より算出した。
【0062】
<ボールタックの長期安定性>
作製した粘着テープを、40℃に温調した恒温槽に4週間保管した。そして、4週間保管後の粘着テープについて、JISZ 0237:2009に準拠して、傾斜角度30°で粘着剤層のボールタック値を測定した。測定されたボールタック値より以下の評価基準で評価した。
A:ボールタック値が6以上12以下となり、貼り付け性の長期安定性が優れていた。
B:ボールタック値が6より小さく、また12より大きかったが、5以上14以下であり、貼り付け性の長期安定性が良好であった。
C:ボールタック値が5未満又は14より大きくなり、粘着力が不十分となり、或いは、粘着力が大きすぎてリワーク性が不十分となり、貼り付け性の長期安定性が不十分であった。
【0063】
<梱包性能の長期安定性>
作製した粘着テープを、40℃に温調した恒温槽に4週間保管した。400mm×320mm×300mmの寸法を有し、かつフラップ突き合わせ部分の長さが400mmである、市販のダンボール箱を用意した。4週間保管した50mmの幅の粘着テープをフラップ突き合わせ部分に25℃で、そのダンボール箱にI貼りにて貼り合わせ、32g/50mmで圧着した。その後、雰囲気温度25℃、湿度50%RH下で1時間放置した後の剥離率を測定し、以下の評価基準で評価した。剥離率は、使用した粘着テープに対する、剥離した部分の面積割合である。
AA:剥離率が25%以下であり、長期間にわたって優れた粘着性能を維持できた。
A:剥離率が25%より大きく40%以下であり、長期間にわたって一定の粘着性能を維持できた。
B:剥離率が40%より大きく50%以下であり、長期間にわたって実用的に使用できる粘着性能を維持できた。
C:剥離率が50%より大きく、粘着性能を長期間は維持できなかった。
【0064】
[実施例1]
クルパック加工およびウェットストレングス加工が施された坪量73g/mの未晒クラフト紙からなる紙基材の片面に、20μmの厚さとなるようにポリエチレン(PE)を押出ラミネートし、紙基材の一方の面にポリエチレン系樹脂層を形成して、紙基材と樹脂層からなる基材を得た。得られた基材のポリエチレン系樹脂層の上に、シリコーン系離型剤を乾燥後の付着量が1g/mとなるように塗布し乾燥して、基材の裏面に離型剤層を形成した。
次に、基材の表面に、液状揮発成分として水を付着量が9g/mとなるようにスプレー塗工した後、この上に、表1に示す組成を150℃、1.0MPa下で攪拌することにより得られたホットメルト型粘着剤組成物を、塗工幅が300mm、かつ塗布量が30g/mとなるように150℃で塗布して積層体を得た。得られた積層体を発泡炉に通して加熱し、水蒸気発泡および粒子発泡により、実施例1の粘着テープを得た。なお、発泡炉において、積層体の基材側の加熱温度は160℃であり、ホットメルト型粘着剤組成物側の加熱温度は135℃であった。また、加熱時間は4秒であった。
粘着テープにおいて、粒子発泡により得られた気泡(第1の気泡)の平均気泡径は26μm、水蒸気発泡により得られた気泡(第2の気泡)の平均気泡径は50μmであった。
【0065】
【表1】
【0066】
[実施例2並びに比較例1及び2
粘着剤組成物中の発泡性粒子の配合量、粘着剤組成物の塗布温度、及び積層体の加熱条件を表2に示すとおりに変更した点、及び実施例2では、発泡性粒子として、積水化学工業株式会社製「アドバンセルEM304:発泡前粒子径24μm」を使用した点以外は、実施例1と同様に実施した。
【0067】
【表2】
【0068】
実施例1及び2並びに比較例1及び2の評価結果を比較することにより、粘着テープの粘着剤層における外表面の表面粗さ(Rz)を40μm以下にすることによって、粘着テープにおける粘着性能の長期安定性が改善されることがわかった。なお、比較例1は、積層体の基材側の加熱温度が高すぎたために、粘着剤層の外表面近傍の気泡の気泡径が大きくなり、粘着テープの粘着剤層における外表面の表面粗さ(Rz)が40μmよりも大きくなったと考えられる。また、比較例2は、発泡性粒子の配合量が大きかったために、粘着剤層中の気泡が多くなり、気泡径の大きな気泡があふれて粘着剤層の外表面近傍に移動したため、粘着テープの粘着剤層における外表面の表面粗さ(Rz)が40μmよりも大きくなったと考えられる。
【符号の説明】
【0069】
10 粘着テープ
11 基材
12 紙基材
13 樹脂層
20 粘着剤層
21 気泡
21A 第1の気泡
21B 第2の気泡
30 離型剤層
図1
図2
図3
図4
図5
図6