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  • 特許-熱伝導性樹脂シート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】熱伝導性樹脂シート
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20240823BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240823BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20240823BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20240823BHJP
   C08L 33/08 20060101ALI20240823BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240823BHJP
   C08K 7/00 20060101ALI20240823BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20240823BHJP
   H01L 23/373 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
C08J5/18
C08L101/00
C08L21/00
C08L83/04
C08L33/08
C08K3/013
C08K7/00
H01L23/36 D
H01L23/36 M
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020018476
(22)【出願日】2020-02-06
(65)【公開番号】P2021123661
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(74)【代理人】
【識別番号】100165021
【弁理士】
【氏名又は名称】千々松 宏
(72)【発明者】
【氏名】星山 裕希
(72)【発明者】
【氏名】乾 延彦
(72)【発明者】
【氏名】土屋 賢人
【審査官】脇田 寛泰
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/101445(WO,A1)
【文献】特開2002-164481(JP,A)
【文献】特開2010-260225(JP,A)
【文献】特開2019-024045(JP,A)
【文献】国際公開第2022/190293(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/153377(WO,A1)
【文献】特許第6978639(JP,B1)
【文献】特開2020-196892(JP,A)
【文献】特開2021-054968(JP,A)
【文献】特開2021-054969(JP,A)
【文献】特許第6892725(JP,B1)
【文献】特開2015-029071(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0136895(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C64/00-64/40
67/00-67/08
67/24-69/02
73/00-73/34
B29D1/00-29/10
33/00
99/00
B33Y10/00-99/00
C08J5/00-5/02
5/12-5/22
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
H01L23/29
23/34-23/36
23/373-23/427
23/44
23/467-23/473
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン樹脂を含有し、前記シリコーン樹脂が付加反応型シリコーン樹脂であり、以下の式(1)で示される熱抵抗値変化率Aが15%以下であるか、又は以下の式(2)で示される熱抵抗値変化率Bが7.5%以下であり、30%圧縮強度が2000kPa以下であり、熱伝導性フィラーを含み、 前記熱伝導性フィラーのアスペクト比が5以上であり、前記熱伝導性フィラーの含有量が、樹脂100質量部に対して150~700質量部であり、前記熱伝導性フィラーの配向角度が45°より大きい、熱伝導性樹脂シート。
|(1-10%圧縮時の熱抵抗値/30%圧縮時の熱抵抗値)×100| (1)
|(1-40%圧縮時の熱抵抗値/30%圧縮時の熱抵抗値)×100| (2)
【請求項2】
前記熱抵抗値変化率Aが15%以下であり、かつ熱抵抗値変化率Bが7.5%以下である、請求項1に記載の熱伝導性樹脂シート。
【請求項3】
10%圧縮時の熱抵抗値が5K/W以下である、請求項1又は2に記載の熱伝導性樹脂シート。
【請求項4】
前記熱伝導性フィラー中の非球状フィラーの含有量が90質量%以上である、請求項1~3のいずれかに記載の熱伝導性樹脂シート。
【請求項5】
前記熱伝導性フィラーが窒化ホウ素である、請求項1~4のいずれかに記載の熱伝導性樹脂シート。
【請求項6】
前記熱伝導性フィラーのアスペクト比が10以上、200以下である、請求項に記載の熱伝導性樹脂シート。
【請求項7】
前記熱伝導性フィラーの配向角度が80°以上である、請求項に記載の熱伝導性樹脂シート。
【請求項8】
前記熱伝導性フィラーの含有量が、樹脂100質量部に対して230450質量部である、請求項に記載の熱伝導性樹脂シート。
【請求項9】
前記樹脂が固体状である、請求項1~8のいずれかに記載の熱伝導性樹脂シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性樹脂シートに関する。
【背景技術】
【0002】
熱伝導性樹脂シートは、主に、半導体パッケージのような発熱体と、アルミニウムや銅等の放熱体との間に配置して、発熱体で発生する熱を放熱体に速やかに移動させる機能を有する。近年、半導体素子の高集積化や半導体パッケージにおける配線の高密度化によって、半導体パッケージの単位面積当たりの発熱量が大きくなっており、これに伴い、従来の熱伝導性樹脂シートに比べ、熱伝導率が向上した、より速やかな熱放散を促すことができる熱伝導性樹脂シートへの需要が高まってきている。
このような熱伝導性樹脂シートとして、熱伝導性フィラーを含有させた熱伝導性樹脂シートが知られている。例えば、特許文献1では、液状のポリブテンと熱伝導性フィラーを含有する熱伝導性樹脂シートに関する発明が記載されており、特許文献2では、エポキシ樹脂と、熱伝導性フィラーとして六方晶窒化ホウ素などを含有する熱伝導性樹脂シートに関する発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-38763号公報
【文献】特開2013-254880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱伝導性樹脂シートは、一般には、熱伝導率を向上させるために、熱伝導性フィラーを含有させると、シートが硬くなってしまい、シートを使用する電子機器内部でハンダクラックや基板の反りなどが生じ、電子部品にダメージを与えることが懸念される。このようなことを防止し、柔軟性の良好な熱伝導性樹脂シートが必要とされている。
【0005】
また、近年、多数の部材を積層したモジュールなどが多く用いられるようになってきており、寸法公差が大きくなることに伴って、種々の圧縮率(幅広い圧縮公差)で使用することが可能な熱伝導性樹脂シートが必要とされている。
従来の熱伝導性樹脂シートは、圧縮率が一定であると熱抵抗値は特定の値となるが、圧縮率が高くなると熱抵抗値は低くなり、逆に圧縮率が低くなると熱抵抗値は高くなるため、圧縮率が変動した場合に安定した放熱性能を示すものではなかった。そのため、圧縮率の低い領域で、所望の放熱性能を満足しない場合があった。また圧縮率が低い領域で、所望の放熱性能を満足する場合であっても、圧縮率を高くするにつれてシートが硬くなり、電子部品などにダメージを与えたり、あるいは所望の圧縮率への調整が困難になる場合があった。
【0006】
本発明は、上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、柔軟であり、かつ圧縮率が変動した場合であっても、安定した放熱性能を示す熱伝導性樹脂シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、圧縮率を変化させた際の熱抵抗値変化率を小さくし、かつ30%圧縮強度を一定値以下とすることにより上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、下記[1]~[10]に関する。
[1]以下の式(1)で示される熱抵抗値変化率Aが15%以下であるか、又は以下の式(2)で示される熱抵抗値変化率Bが7.5%以下であり、30%圧縮強度が2000kPa以下である、熱伝導性樹脂シート。
|(1-10%圧縮時の熱抵抗値/30%圧縮時の熱抵抗値)×100| (1)
|(1-40%圧縮時の熱抵抗値/30%圧縮時の熱抵抗値)×100| (2)
[2]前記熱抵抗値変化率Aが15%以下であり、かつ熱抵抗値変化率Bが7.5%以下である、上記[1]に記載の熱伝導性樹脂シート。
[3]10%圧縮時の熱抵抗値が5K/W以下である、上記[1]又は[2]に記載の熱伝導性樹脂シート。
[4]熱伝導性フィラーを含有する、上記[1]~[3]のいずれかに記載の熱伝導性樹脂シート。
[5]前記熱伝導性フィラーが、非球状フィラーを含有する、上記[4]に記載の熱伝導性樹脂シート。
[6]前記熱伝導性フィラーのアスペクト比が5以上である、上記[4]又は[5]に記載の熱伝導性樹脂シート。
[7]前記熱伝導性フィラーの配向角度が45°より大きい、上記[4]~[6]のいずれかに記載の熱伝導性樹脂シート。
[8]前記熱伝導性フィラーの含有量が、樹脂100質量部に対して150~700質量部である、上記[4]~[7]のいずれかに記載の熱伝導性樹脂シート。
[9]エラストマー樹脂、シリコーン樹脂、及びアクリル樹脂から選択される少なくとも1種以上の樹脂を含有する、上記[1]~[8]のいずれかに記載の熱伝導性樹脂シート。
[10]前記樹脂が液状である、上記[9]に記載の熱伝導性樹脂シート。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、柔軟であり、かつ圧縮率が変動した場合であっても、安定した放熱性能を示す熱伝導性樹脂シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】積層体からなる熱伝導性樹脂シートの模式的断面図である。
図2】積層体からなる熱伝導性樹脂シートの使用状態における模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[熱伝導性樹脂シート]
本発明の熱伝導性樹脂シートは、以下の式(1)で示される熱抵抗値変化率Aが15%以下であるか、又は以下の式(2)で示される熱抵抗値変化率Bが7.5%以下であり、30%圧縮強度が2000kPa以下である。
|(1-10%圧縮時の熱抵抗値/30%圧縮時の熱抵抗値)×100| (1)
|(1-40%圧縮時の熱抵抗値/30%圧縮時の熱抵抗値)×100| (2)
【0012】
(熱抵抗変化率)
本発明の熱伝導性樹脂シートは、熱抵抗値変化率Aが15%以下であるか、又は熱抵抗値変化率Bが7.5%以下である。熱抵抗値変化率Aが15%超であり、かつ熱抵抗値変化率Bが7.5%超である場合は、圧縮率が変化した場合に、熱伝導性樹脂シートの放熱性能を安定化させることができない。
また、圧縮率の変化がより大きい場合であっても、放熱性能を安定化させる観点から、熱抵抗値変化率Aが15%以下であり、かつ熱抵抗値変化率Bが7.5%以下であることが好ましい。
上記熱抵抗値変化率Aは、熱伝導性樹脂シートの放熱性能をより安定化させる観点から、好ましくは10%以下であり、より好ましくは5%以下であり、さらに好ましくは2%以下であり、そして0%以上である。
上記熱抵抗値変化率Bは、熱伝導性樹脂シートの放熱性能をより安定化させる観点から、好ましくは7.5以下であり、より好ましくは5%以下であり、さらに好ましくは4%以下であり、そして0%以上である。
【0013】
熱抵抗値変化率Aは、以下の式(1)で求められる。
|(1-10%圧縮時の熱抵抗値/30%圧縮時の熱抵抗値)×100| (1)
式(1)は、(1-10%圧縮時の熱抵抗値/30%圧縮時の熱抵抗値)×100の絶対値を表す。
なお、本明細書において、X%圧縮とは、当初の厚みのX%に相当する厚さ分だけ熱伝導性樹脂シートを圧縮することを意味する。したがって、X%圧縮時の熱抵抗値とは、当初の厚みのX%に相当する厚さ分だけ熱伝導性樹脂シートを圧縮したときの熱抵抗値である。
【0014】
熱抵抗値変化率Bは、以下の式(2)で求められる。
|(1-40%圧縮時の熱抵抗値/30%圧縮時の熱抵抗値)×100| (2)
式(2)は、(1-40%圧縮時の熱抵抗値/30%圧縮時の熱抵抗値)×100の絶対値を表す。
熱抵抗値変化率A及びBは、例えば、後述する熱伝導性フィラーのアスペクト比、配向角度などにより調節することができる。
【0015】
(10~40%圧縮時の熱抵抗値)
本発明の熱伝導性樹脂シートの10%圧縮時の熱抵抗値は、5K/W以下であることが好ましい。これにより10%圧縮時の放熱性能が良好になる。熱伝導性樹脂シートの10%圧縮時の熱抵抗値は、4K/W以下であることがより好ましく、3K/W以下であることがさらに好ましい。
【0016】
また、熱伝導性樹脂シートの15%圧縮時の熱抵抗値及び40%圧縮時の熱抵抗値も、それぞれ、5K/W以下であることが好ましく、4K/W以下であることがより好ましく、3K/W以下であることがさらに好ましい。
【0017】
本発明の熱伝導性樹脂シートは、上記したように熱抵抗値変化率を低くしつつ、10%圧縮時の熱抵抗値、30%圧縮時の熱抵抗値、及び40%圧縮時の熱抵抗値の少なくともいずれかの熱抵抗値を上記範囲とすることが好ましく、これらすべての熱抵抗値を上記範囲とすることがより好ましい。これにより、熱伝導性樹脂シートの放熱性能を高めつつ、放熱性能を安定化することができる。
【0018】
(30%圧縮強度)
本発明の熱伝導性樹脂シートの30%圧縮強度は、2000kPa以下である。30%圧縮強度が2000kPaを超えると、熱伝導性樹脂シートの柔軟性が低下し、シートを使用する電子機器内部の電子部品などにダメージを与えやすくなる。熱伝導性樹脂シートの柔軟性を高める観点から、熱伝導性樹脂シートの30%圧縮強度は、好ましくは1500kPa以下、より好ましくは1000kPa以下、さらに好ましくは800kPa以下である。また、熱伝導性樹脂シートの30%圧縮強度は、通常10kPa以上であり、好ましくは50kPa以上である。
熱伝導性樹脂シートの30%圧縮強度は、後述する熱伝導性樹脂シートを構成する樹脂の種類、架橋の有無、熱伝導性フィラーの種類及び量などにより調節することができる。
圧縮強度は、実施例に記載の方法で求めることができる。
【0019】
(10%圧縮強度)
本発明の熱伝導性樹脂シートの10%圧縮強度は、柔軟性を良好とする観点から、好ましくは1500kPa以下であり、より好ましくは1000kPa以下であり、さらに好ましくは600kPa以下である。また、熱伝導性樹脂シートの10%圧縮強度は、通常10kPa以上であり、好ましくは50kPa以上である。
【0020】
(40%圧縮強度)
本発明の熱伝導性樹脂シートの40%圧縮強度は、柔軟性を良好とする観点から、好ましくは2500kPa以下であり、より好ましくは2200kPa以下であり、さらに好ましくは2000kPa以下である。また、熱伝導性樹脂シートの40%圧縮強度は、通常10kPa以上であり、好ましくは50kPa以上である。
【0021】
(熱伝導率)
本発明の熱伝導性樹脂シートの熱伝導率は4W/m・K以上であることが好ましい。熱伝導率が4W/m・K以上であると、発熱体から発生する熱を放熱することができる。熱伝導性樹脂シートの放熱性を向上させる観点から、熱伝導性樹脂シートの熱伝導率は、好ましくは6W/mK以上であり、より好ましくは8W/m・K以上である。また、熱伝導性樹脂シートの熱伝導率は、高ければ高い方がよいが、通常、100W/m・K以下である。熱伝導率は、例えば、後述する熱伝導性フィラーの含有量や配向などを調節することで、所望の値に調整しやすくなる。
【0022】
(熱伝導性フィラー)
本発明の熱伝導性樹脂シートは、熱伝導性フィラーを含有することが好ましい。熱伝導性フィラーは熱伝導性樹脂シート中の樹脂成分中に分散され、熱抵抗値が低くなる。
熱伝導性フィラーの平均粒子径は、好ましくは0.1~300μm、より好ましくは0.5~100μm、更に好ましくは5~50μmである。平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置により粒度分布を測定して求めることができる。
【0023】
熱伝導性フィラーは、球状フィラーでも非球状フィラーでもよいが、熱伝導性樹脂シートの熱抵抗値及び熱抵抗値変化率を低くする観点から、非球状フィラーを少なくとも含有することが好ましい。なお、熱伝導性フィラーは、一種のみを用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0024】
非球状フィラーとしては、例えば、鱗片状、薄片状などの板状フィラー、針状フィラー、繊維状フィラー、樹枝状フィラー、不定形状フィラー、凝集フィラーなどが挙げられる。中でも、熱伝導性樹脂シートの熱伝導性を良好とする観点から、板状フィラーが好ましい。
ここで、「球状」とはアスペクト比が1.0~2.0、好ましくは1.0~1.5の形状であることを意味し、必ずしも真球であることを意味しない。なお、球状フィラーの場合のアスペクト比は、長径/短径比を意味する。また、「非球状」とは上記球状以外の形状、すなわちアスペクト比が2を超える形状を意味する。
【0025】
熱伝導性フィラーのアスペクト比は、熱抵抗値変化率を低くする観点から、5以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、そして通常は200以下である。
なお、2種以上の熱伝導性フィラーを用いる場合は、上記アスペクト比は、それぞれの熱伝導性フィラーのアスペクト比を加重平均して算出した、平均アスペクト比とする。
【0026】
熱伝導性樹脂シートは、アスペクト比が高い熱伝導性フィラーを後述するように高い配向角度で配向させることで、厚み方向の熱伝導率が向上すると共に、熱抵抗値変化率を低くすることが可能となる。
なお、非球状フィラーにおいて、アスペクト比とは、フィラーの最大長さの最小長さに対する比(最大長さ/最小長さ)であり、例えば、形状が板状である場合は、フィラーの最大長さの厚みに対する比(最大長さ/厚み)である。アスペクト比は走査型電子顕微鏡で、十分な数(例えば250個)の熱伝導性フィラーを観察して平均値として求めるとよい。
【0027】
熱伝導性フィラーの熱伝導率は特に限定されないが、好ましくは12W/m・K以上であり、より好ましくは15~70W/m・K、さらに好ましくは25~70W/m・Kである。熱伝導率がこのような範囲であると、熱抵抗値及び熱抵抗値変化率を低くすることができる。
【0028】
熱伝導性フィラーの材質としては、例えば、炭化物、窒化物、酸化物、水酸化物、金属、炭素系材料などが挙げられる。
炭化物としては、例えば、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化アルミニウム、炭化チタン、炭化タングステンなどが挙げられる。
窒化物としては、例えば、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化ホウ素ナノチューブ、窒化アルミニウム、窒化ガリウム、窒化クロム、窒化タングステン、窒化マグネシウム、窒化モリブデン、窒化リチウムなどが挙げられる。
酸化物としては、例えば、酸化鉄、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)(酸化アルミニウムの水和物(ベーマイトなど)を含む。)、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ジルコニウムなどが挙げられる。また、酸化物として、チタン酸バリウムなどの遷移金属酸化物などや、さらには、金属イオンがドーピングされている、例えば、酸化インジウムスズ、酸化アンチモンスズなどが挙げられる。
【0029】
水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどが挙げられる。
金属としては、例えば、銅、金、ニッケル、錫、鉄、または、それらの合金が挙げられる。
炭素系材料としては、例えば、カーボンブラック、黒鉛、ダイヤモンド、グラフェン、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、ナノホーン、カーボンマイクロコイル、ナノコイルなどが挙げられる。
上記以外の熱伝導性フィラーとして、ケイ酸塩鉱物であるタルクを挙げることができる。
これら熱伝導性フィラーは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0030】
これらの中でも、熱抵抗値変化率を低くする観点から、窒化ホウ素、水酸化マグネシウム、及び酸化マグネシウムが好ましく、窒化ホウ素がより好ましい。
【0031】
熱伝導性フィラーの含有量は、樹脂100質量部に対して、好ましくは150~700質量部であり、より好ましくは200~600質量部であり、更に好ましくは230~450質量部である。150質量部以上であると、熱伝導性樹脂シートの熱抵抗値が低くなる。また、700質量部以下であると、熱伝導性樹脂シートの柔軟性が良好となりやすい。
熱伝導性フィラー中の非球状フィラーの含有量は、熱伝導性フィラー全量基準で、60質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが更に好ましい。
【0032】
(配向)
熱伝導性樹脂シートにおいて、熱伝導性フィラーの配向角度は45°より大きいことが好ましく、50°以上がより好ましく、70°以上がさらに好ましく、80°以上がさらに好ましい。ここで、配向角度とは、熱伝導性フィラーの長軸の、熱伝導性樹脂シートの表面であるシート面に対する角度である。なお、熱伝導性フィラーの長軸は、前記した熱伝導性フィラーの最大長さと方向が一致している。
熱伝導性フィラーの配向角度が上記範囲であると、熱抵抗値変化率を低くすることができる。この理由については、次のように推察される。一般に熱伝導性樹脂シートを圧縮して厚みを薄くすると、熱抵抗値は低下する。これに対して、熱伝導性フィラーが上記のとおりの配向角度であると、圧縮することによる熱抵抗値の降下と、圧縮することによる熱伝導性フィラーの配向の乱れに起因する熱抵抗値の上昇との両方の寄与により、結果として、熱抵抗値変化率が低くなると考えられる。
【0033】
上記配向角度は、熱伝導性樹脂シートの厚さ方向の断面を走査型電子顕微鏡により観察することにより測定できる。例えば、まず、熱伝導性樹脂シートの厚み方向の中央部分の薄膜切片を作製する。そして、走査型電子顕微鏡(SEM)により倍率3000倍で該薄膜切片中の熱伝導性フィラーを観察し、観察されたフィラーの長軸と、シート面を構成する面とのなす角度を測定することにより、求めることができる。本明細書において、45°、50°、70°、80°以上の角度とは、上記のように測定された値の平均値がその角度以上であることを意味する。例えば「配向角度が50°以上」は、50°は平均値であるため、配向角度が50°未満の熱伝導性フィラーの存在を否定するものではない。なお、なす角度が90°を超える場合は、その補角を測定値とする。
【0034】
(樹脂)
本発明の熱伝導性樹脂シートは、樹脂を含有し、その樹脂の種類は、特に制限されないが、柔軟性を良好とする観点から、エラストマー樹脂、シリコーン樹脂、及びアクリル樹脂から選択される1種以上であることが好ましい。
熱伝導性樹脂シートに含有される樹脂は固体状でも液状でもよいが、より柔軟性を良好とする観点から、液状の樹脂であることが好ましい。そのため、熱伝導性樹脂シートは、液状エラストマー樹脂、液状シリコーン樹脂、及び液状アクリル樹脂から選択される1種以上であることが好ましく、中でも後述する液状エラストマー樹脂がより好ましい。
なお、本明細書において、液状とは常温(23℃)かつ常圧(1気圧)で液状であることをいい、固体状とは常温(23℃)かつ常圧(1気圧)で固体状であることをいう。
【0035】
エラストマー樹脂の種類としては、例えば、アクリロニトリルブタジエンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、エチレン-プロピレンゴム、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、水素添加ポリブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、水素添加スチレン-ブタジエンブロック共重合体、水素添加スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、水素添加スチレン-イソプレンブロック共重合体、水素添加スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体等が挙げられる。
これらのエラストマー樹脂は、固体状であっても液状であってもよいが、液状エラストマー樹脂が好ましい。液状エラストマー樹脂としては、特に限定されず、例えば、上記したエラストマー樹脂のうち液状のものを用いることができるが、中でも、液状アクリロニトリルブタジエンゴム、液状エチレン-プロピレン-ジエンゴム、液状ポリイソプレンゴム、液状ポリブタジエンゴムが好ましい。
エラストマー樹脂は、1種のみを用いてもよいし、複数種類を併用してもよい。
【0036】
シリコーン樹脂の種類としては、例えば、縮合反応型シリコーン樹脂、付加反応型シリコーン樹脂、シリコーンオイルなどが挙げられる。シリコーン樹脂は、固体状のシリコーン樹脂であっても、液状シリコーン樹脂であってもよいが、熱伝導性樹脂シートの柔軟性を高める観点から、液状シリコーン樹脂が好ましい。
液状シリコーン樹脂としては、柔軟性向上の観点から、好ましくはシリコーンオイルである。シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル等のストレートシリコーンオイル、並びにアミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、メチルスチリル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル等の変性シリコーンオイルが挙げられる。これらの中でもストレートシリコーンオイルが好ましい。
シリコーン樹脂は、1種のみを用いてもよいし、複数種類を併用してもよい。
【0037】
アクリル樹脂の種類としては、例えば、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、及びメタクリル酸エステルから選択される1種以上のアクリル系モノマーを含むモノマー成分の重合体が挙げられ、アクリル系モノマーの重合体であってもよいし、アクリル系モノマーと他のモノマーとの共重合体であってもよい。
アクリル樹脂は、固体状のアクリル樹脂であっても、液状アクリル樹脂であってもよいが、熱伝導性樹脂シートの柔軟性を高める観点から、液状アクリル樹脂が好ましい。
液状アクリル樹脂は、好ましくは、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルから選択される1種以上を含むモノマー成分の重合体が挙げられ、より好ましくはアクリル酸エステルを含むモノマー成分の重合体である。アクリル酸エステルとしては、特に限定されず、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル等が挙げられる。メタクリル酸エステルとしては、特に限定されず、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル等が挙げられる。
アクリル樹脂は、1種のみを用いてもよいし、複数種類を併用してもよい。
【0038】
本発明の熱伝導性樹脂シート中の、エラストマー樹脂、シリコーン樹脂、及びアクリル樹脂から選択される1種以上の樹脂成分の含有量は、樹脂全量基準で、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは100質量%である。
【0039】
本発明の熱伝導性樹脂シート中の樹脂全量基準に対して、液状の樹脂の含有量は、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、更に好ましくは100質量%である。
【0040】
(その他の添加剤)
本発明の熱伝導性樹脂シートには、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、前記熱伝導性フィラー以外の充填材、分解温度調整剤等の熱伝導性樹脂シートに一般的に使用する添加剤を配合されてもよい。
【0041】
(積層体)
本発明の熱伝導性樹脂シートは単層でもよいし、積層体でもよい。熱伝導性を良好とする観点から、樹脂及び非球状フィラーを含む樹脂層が積層された積層体が好ましい。以下、樹脂及び非球状フィラーを含む樹脂層が積層された積層体の実施形態の一例を図1により説明する。
各図において、各フィラーは上下に隣接するフィラーと重複しているが、本発明においてフィラー同士は必ずしも重複していなくてよい。
図1に示すように、熱伝導性樹脂シート1は、複数の樹脂層2を積層した構造を有している。複数の樹脂層2の積層面に対する垂直面が樹脂シート1の表面であるシート面5となる。
【0042】
熱伝導性樹脂シート1の厚み(すなわち、シート面5とシート面5との間の距離)は特に限定されないが、例えば、0.1~30mmの範囲とすることができる。
樹脂層2の1層の厚み(樹脂層幅)は特に限定されないが、好ましくは1000μm以下、より好ましくは500μm以下であり、そして、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、更に好ましくは1μm以上とすることができる。このように厚みを調整することにより、熱伝導性を高めることができる。
樹脂層2は、熱伝導性フィラー6を含有する熱伝導性樹脂層7である。熱伝導性樹脂層7は、樹脂8中に熱伝導性の熱伝導性フィラー6が分散された構造を有する。
各樹脂層2においては、熱伝導性フィラーは、上記のようにシート面に対して45°より大きい角度、より好ましくは50°以上、更に好ましくは60℃以上、更に好ましくは70°以上、更に好ましくは80°以上の角度で配向している。
【0043】
熱伝導性樹脂層7の厚みは、熱伝導性樹脂層7中に含まれる熱伝導性フィラー6の厚みの好ましくは1~1000倍、より好ましくは1~500倍である。
熱伝導性樹脂層7の幅(厚み)を上記範囲とすることにより、熱伝導性フィラー6を、その長軸が、前記シート面に対して90°に近い角度に配向させやすくなる。なお熱伝導性樹脂層7の幅は、上記範囲内であれば均等でなくてもよい。
【0044】
[熱伝導性樹脂シートの製造方法]
本発明の熱伝導性樹脂シートの製造方法は、特に限定されないが、単層の熱伝導性樹脂シートを製造する場合は、例えば、非球状の熱伝導性フィラー、樹脂、及び必要に応じて添加剤を押出機に供給し溶融混練して得た混合物を、押出機からシート状に押出すことによって熱伝導性樹脂シートを成形すればよい。
【0045】
(積層体の製造方法)
本発明の積層体からなる熱伝導性樹脂シートの製造方法は、特に限定されないが、以下に説明するように、混練工程、積層工程、さらに必要に応じてスライス工程を含む方法により製造することができる。
【0046】
<混練工程>
熱伝導性フィラーと樹脂とを混練して、熱伝導性樹脂組成物を作製する。
前記の混練は、例えば、熱伝導性フィラーと樹脂とを、プラストミル等の二軸スクリュー混練機や二軸押出機等を用いて、加熱下において混練することが好ましく、これにより、熱伝導性フィラーが樹脂中に均一に分散された熱伝導性樹脂組成物を得ることができる。
次いで、該熱伝導性樹脂組成物をプレスすることにより、シート状の樹脂層(熱伝導性樹脂層)を得ることができる。
【0047】
<積層工程>
積層工程では、前記混練工程で得た樹脂層を積層してn層構造の積層体を作成する。積層方法としては、例えば、混練工程で作製した樹脂層をx分割して積層し、x層構造の積層体を作製後、必要に応じて、熱プレスを行い、その後、更に、必要に応じて、分割と積層と前記の熱プレスを繰り替えして、幅がDμmでn層構造の積層体を作製する方法を用いることができる。
熱伝導性フィラーが板状である場合、積層工程後の積層体の幅(Dμm)、前記熱伝導性フィラーの厚み(dμm)は、0.0005≦d/(D/n)≦1を満足することが好ましく、0.001≦d/(D/n)≦1を満足することがより好ましく、0.02≦d/(D/n)≦1を満足することが更に好ましい。
このように、複数回の成形を行う場合には、各回における成形圧を、1回の成形で行う場合に比べて、小さくすることができるため、成形に起因する積層構造の破壊等の現象を回避することができる。
その他の積層方法として、例えば、多層形成ブロックを備える押出機を用い、前記多層形成ブロックを調製して、共押出し成形により、前記n層構造で、かつ、前記厚さDμmの積層体を得る方法を用いることもできる。
具体的には、第1の押出機及び第2の押出機の双方に前記混練工程で得た熱伝導性樹脂組成物を導入し、第1の押出機及び第2の押出機から熱伝導性樹脂組成物を同時に押出す。第1の押出機及び第2の押出機から押出された熱伝導性樹脂組成物は、フィードブロックに送られる。フィードブロックでは、第1の押出機及び上記第2の押出機から押出された熱伝導性樹脂組成物が合流する。それによって、熱伝導性樹脂組成物が積層された2層体を得ることができる。次に、前記の2層体を多層形成ブロックへと移送し、押出し方向に平行な方向であり、かつ積層面に垂直な複数の面に沿って2層体を複数に分割後、積層して、n層構造で、厚みDμmの積層体を作製することができる。このとき、1層当たりの厚み(D/n)は、多層形成ブロックを調整して所望の値とすることができる。
【0048】
(スライス工程)
前記積層工程で得た積層体を積層方向に対して平行方向にスライスすることにより、熱伝導性樹脂シートを作製することができる。
【0049】
(その他工程)
熱伝導性樹脂シートの製造方法においては、樹脂を架橋する工程を設けることが好ましい。架橋することにより、熱伝導性樹脂シートの耐熱試験後の30%圧縮強度の変化率を小さくしやすくなる。架橋は、例えば、電子線、α線、β線、γ線等の電離性放射線を照射する方法、有機過酸化物を用いる方法等により行えばよい。30%圧縮強度の変化率を小さくする観点から、電子線照射を行う場合の加速電圧は50~800kVが好ましく、200~700kVがより好ましく、400~600kVがさらに好ましい。同様の観点から、電子線照射の照射量は200~1200kGyが好ましく、300~1000kGyがより好ましく、400~800KGyがさらに好ましい。
【0050】
本発明の熱伝導性樹脂シートは、柔軟性であり、かつ圧縮率が変動した場合であっても、安定した放熱性能を示すものである。本発明の熱伝導性樹脂シートは、例えば、電子機器内部の発熱体と放熱体の間に配置させることで、発熱体から放熱体への熱放散を促進させることができる。このことを図1で説明した熱伝導性樹脂シート1を用いて説明する。
図2に示すように、熱伝導性樹脂シート1は、シート面5が発熱体3や放熱体4と接するように配置される。また、熱伝導性樹脂シート1は、発熱体3と放熱体4等の2つの部材の間において、圧縮した状態で配置される。この際、本発明の熱伝導性樹脂シート1は、比較的広い圧縮率においても安定した放熱性能を発揮できる。なお、発熱体3は、例えば、半導体パッケージ等であり、放熱体4は、例えば、アルミニウムや銅などの金属等である。熱伝導性樹脂シート1をこのような状態で使用することにより、発熱体3で発生した熱が、放熱体4へ熱拡散しやすくなり、効率的な放熱が可能となる。
【実施例
【0051】
本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0052】
以下の実施例及び比較例で使用した材料は以下のとおりである。
樹脂
・液状エラストマー1:液状ポリブタジエンゴム、株式会社クラレ社製、商品名「L-1203」
・シリコーン樹脂:2液硬化型のシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン製、商品名「SEMICOSIL 962TC」混合比はA材:B材=1:1)
・アクリル樹脂:ナガセケムテックス社製、商品名「SG-280 EK23」
【0053】
(2)熱伝導性フィラー
(a-1)アルミナ
HUBER社製、商品名「TM2410」
アスペクト比:1.5
(b-1)窒化アルミニウム-1
トクヤマ社製、商品名「HF-01D」
アスペクト比:1.5
(b-2)窒化アルミニウム-2
トクヤマ社製、商品名「HF-05」
アスペクト比:1.5
(c-1)水酸化アルミニウム-1
日本軽金属株式会社製、商品名「BF013」
アスペクト比:1.5
(d-1)水酸化マグネシウム-1
協和化学工業社製、商品名「HeaCon-H」
アスペクト比:14
(d-2)水酸化マグネシウム-2
神島化学工業社製、商品名「マグシーズW-H4」
アスペクト比:1.5
(e-1)酸化マグネシウム-1
協和化学工業社製、商品名「HeaCon-X」
アスペクト比:12
(f-1)窒化ホウ素-1(鱗片状)
MOMENTIVE社製、商品名「PT100」
アスペクト比:81
(f-2)窒化ホウ素-3(鱗片状)
MOMENTIVE社製、商品名「PT120」
アスペクト比:6
(f-3)窒化ホウ素-4(鱗片状)
MOMENTIVE社製、商品名「PT140」
アスペクト比:45
(f-4)窒化ホウ素-5(鱗片状)
MOMENTIVE社製、商品名「PT160」
アスペクト比:48
(f-5)窒化ホウ素-7(凝集)
MOMENTIVE社製、商品名「PT180」
アスペクト比:7
【0054】
各種物性、評価方法は以下のとおりである。
<配向角度>
熱伝導性樹脂シートの断面を走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製 S-4700)で観察した。倍率3000倍の観察画像から、任意の20個のフィラーについて、シート面とのなす角を測定し、その平均値を配向角度とした。
<熱伝導率>
得られた熱伝導性樹脂シートの厚み方向の熱伝導率を、レーザーフラッシュ法熱定数測定装置(NETZSCH社製「LFA447」)を用いて測定を行った。
<10%~40%圧縮強度>
得られた熱伝導性樹脂シートの10%圧縮強度、30%圧縮強度、及び40%圧縮強度をそれぞれ、エー・アンド・ディ社製「RTG-1250」を用いて測定した。サンプル寸法を2mm×15mm×15mm、測定温度を23℃、圧縮速度を1mm/minとして測定を行った。
【0055】
<10~40%圧縮時の熱抵抗値>
熱伝導性樹脂シートの10%圧縮時の熱抵抗値、30%圧縮時の熱抵抗値、及び40%圧縮時の熱抵抗値を、それぞれの圧縮率で圧縮した状態で、定常法により、メンター・グラフィックス社製の商品名「T3Ster(登録商標)DynTIM Tester」を用いてASTM D5470に準拠して測定した。
<熱抵抗値変化率A、B>
上記のとおり測定した10~40%圧縮時の熱抵抗値から、以下の式(1)により熱抵抗値変化率Aを求め、以下の式(2)により熱抵抗値変化率Bを求めた。
|(1-10%圧縮時の熱抵抗値/30%圧縮時の熱抵抗値)×100| (1)
|(1-40%圧縮時の熱抵抗値/30%圧縮時の熱抵抗値)×100| (2)
【0056】
<放熱性評価>
熱伝導性樹脂シートの10%圧縮時、30%圧縮時、及び40%圧縮時のそれぞれについて、放熱性評価を行った。なお、圧縮強度が2500kPaを超える場合は、柔軟性が低く、熱伝導性樹脂シートとして使用し難いため、熱抵抗値に関わらず、以下のとおり「NG」とした。
〇:熱抵抗値が5K/W以下であり、かつ圧縮強度が2500kPa以下
×:熱抵抗値が5K/W超であり、かつ圧縮強度が2500kPa以下
NG:圧縮強度が2500kPa超
【0057】
(実施例1)
液状エラストマー1(株式会社クラレ社製、商品名「L-1203」)100質量部と、窒化ホウ素(モメンティブ社製、商品名「PT100」)250質量部とからなる混合物を溶融混練後、プレスすることにより厚さ0.5mm、幅80mm、奥行き80mmのシート状の樹脂層を得た。次に積層工程として、得られた樹脂層を16等分して重ねあわせて総厚さ8mm、幅20mm、奥行き20mmの16層からなる積層体を得た。次いで積層方向に平行にスライスし、厚さ2mm、幅8mm、奥行き20mmの熱伝導性樹脂シートを得た。該熱伝導性樹脂シートの積層体を構成する樹脂層の1層の厚みは0.5mmであった。次いで該熱伝導性樹脂シートの両面にそれぞれ加速電圧525kV、線量600kGyの電子線を照射してシートを架橋させた。この熱伝導性樹脂シートについて表1の各項目について評価した。
【0058】
(実施例2~8、比較例1~2)
表1のとおりに組成を変更した以外は、実施例1と同様にして熱伝導性樹脂シートを得た。この熱伝導性樹脂シートについて表1、2の各項目について評価した。
【0059】
(実施例9~10、比較例3~4)
表1のとおり組成を変更し、かつ電子線の照射を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして熱伝導性樹脂シートを得た。この熱伝導性樹脂シートについて表1、2の各項目について評価した。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
各実施例に示す熱伝導性樹脂シートは、30%圧縮強度が低く、柔軟性に優れるシートであった。さらに、熱抵抗値変化率も低く、圧縮率が変動した場合でも安定した放熱性能を示すことが分かった。これに対して、各比較例の熱伝導性樹脂シートは、熱抵抗値変化率が高く、圧縮率が変動した場合に、安定した放熱性能を示さなかった。
【符号の説明】
【0063】
1 熱伝導性樹脂シート
2 樹脂層
3 発熱体
4 放熱体
5 シート面
6 熱伝導性フィラー
7 熱伝導性樹脂層
8 樹脂
図1
図2