(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】水晶素子搭載基板及び水晶振動部品
(51)【国際特許分類】
H03H 9/02 20060101AFI20240823BHJP
H03B 5/32 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
H03H9/02 A
H03B5/32 H
(21)【出願番号】P 2020020684
(22)【出願日】2020-02-10
【審査請求日】2023-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】三田 悠史
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-211361(JP,A)
【文献】特開2013-192052(JP,A)
【文献】特開2015-220749(JP,A)
【文献】国際公開第2016/132767(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/084841(WO,A1)
【文献】特開2012-217111(JP,A)
【文献】国際公開第2006/095503(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/00- 9/74
H03B 5/30ー 5/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋体が載置されることによって水晶素子を収容する収容空間を形成する水晶素子搭載基板であって、
前記水晶素子が搭載され、セラミック材料で形成される基板本体を備え、
前記基板本体の外縁には、前記基板本体の前記蓋体側の第1主面から前記蓋体側とは反対側の第2主面に亘って延在して前記基板本体を貫通する少なくとも1つのキャスタレーションが形成され、
前記キャスタレーションの前記第1主面側の開口の全体が、前記キャスタレーションを介した前記収容空間の外部と前記収容空間との連通が抑制されるようにカバー部材によって覆われ、
前記カバー部材が前記基板本体よりも脆性である
ことを特徴とする水晶素子搭載基板。
【請求項2】
前記カバー部材は絶縁性を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の水晶素子搭載基板。
【請求項3】
前記カバー部材は、前記第1主面の外縁側の全周に亘って設けられる
ことを特徴とする請求項2に記載の水晶素子搭載基板。
【請求項4】
前記キャスタレーションは、前記第1主面の外縁の角を除く辺上に形成される
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の水晶素子搭載基板。
【請求項5】
前記キャスタレーションは、前記第1主面の外縁の角に形成される
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の水晶素子搭載基板。
【請求項6】
前記カバー部材は、前記第1主面と概ね面一である
ことを特徴とする請求項1から
4のいずれか1項に記載の水晶素子搭載基板。
【請求項7】
前記基板本体の外縁には、複数の前記キャスタレーションが形成され、
複数の前記キャスタレーションは、前記基板本体の中心から互いに異なる距離の位置に形成される一対の前記キャスタレーションを含む
ことを特徴とする請求項1から
4、及び6のいずれか1項に記載の水晶素子搭載基板。
【請求項8】
前記カバー部材は、前記第1主面と概ね面一である
ことを特徴とする請求項5に記載の水晶素子搭載基板。
【請求項9】
前記基板本体の外縁には、複数の前記キャスタレーションが形成され、
複数の前記キャスタレーションは、前記基板本体の中心から互いに異なる距離の位置に形成される一対の前記キャスタレーションを含む
ことを特徴とする請求項5に記載の水晶素子搭載基板。
【請求項10】
前記第2主面には、当該第2主面の外縁の角で交わる一対の辺のそれぞれに前記キャスタレーションが形成されるとともに、前記一対の辺に形成された前記キャスタレーションに接続する第1電極が形成される
ことを特徴とする請求項1から4、及び6から7のいずれか1項に記載の水晶素子搭載基板。
【請求項11】
前記第2主面には、前記角の対角に、前記キャスタレーションのいずれにも接続されない第2電極が形成される
ことを特徴とする請求項
10に記載の水晶素子搭載基板。
【請求項12】
請求項1から4、及び6から7のいずれか1項に記載の水晶素子搭載基板と、
前記基板本体に載置された前記水晶素子と、
前記第1主面側に配置され、前記水晶素子搭載基板とともに前記水晶素子を収容する収容空間を形成する蓋体と、
を備え、
前記蓋体の一部は、前記カバー部材のうち前記開口を覆う部分に載置される
ことを特徴とする水晶振動部品。
【請求項13】
前記基板本体は平板状であり、
前記蓋体にはキャビティが含まれ、
前記基板本体と前記キャビティとによって前記収容空間が形成される
ことを特徴とする請求項
12に記載の水晶振動部品。
【請求項14】
請求項5に記載の水晶素子搭載基板と、
前記基板本体に載置された前記水晶素子と、
前記第1主面側に配置され、前記水晶素子搭載基板とともに前記水晶素子を収容する収容空間を形成する蓋体と、
を備え、
前記蓋体の一部は、前記カバー部材のうち前記開口を覆う部分に載置される
ことを特徴とする水晶振動部品。
【請求項15】
前記基板本体は平板状であり、
前記蓋体にはキャビティが含まれ、
前記基板本体と前記キャビティとによって前記収容空間が形成される
ことを特徴とする請求項
14に記載の水晶振動部品。
【請求項16】
前記第2主面には、当該第2主面の外縁の角で交わる一対の辺のそれぞれに前記キャスタレーションが形成されるとともに、前記一対の辺に形成された前記キャスタレーションに接続する第1電極が形成される
ことを特徴とする請求項
12又は
13に記載の水晶振動部品。
【請求項17】
前記第2主面には、前記角の対角に、前記キャスタレーションのいずれにも接続されない第2電極が形成される
ことを特徴とする請求項
16に記載の水晶振動部品。
【請求項18】
前記第1主面には、前記第2主面の前記一対の辺に形成された前記キャスタレーションに接続する第3電極が形成され、
前記第3電極の一部は前記カバー部材に覆われ、
前記第3電極の前記カバー部材に覆われない部分の一部には導電性材料が設けられ、
前記蓋体は金属から形成されるとともに、前記蓋体の一部が前記導電性材料上に載置される
ことを特徴とする請求項
16又は
17に記載の水晶振動部品。
【請求項19】
前記第1電極及び前記第3電極はグランド電極である
ことを特徴とする請求項
18に記載の水晶振動部品。
【請求項20】
前記第1主面及び前記第2主面のそれぞれには、前記キャスタレーションの少なくとも1つによって互いに接続されるグランド電極が形成され、
前記第1主面における前記グランド電極の一部は前記カバー部材に覆われ、
前記第1主面における前記グランド電極の前記カバー部材に覆われない部分の一部には導電性材料が設けられ、
前記蓋体は金属から形成されるとともに、前記蓋体の一部が前記導電性材料上に載置される
ことを特徴とする請求項
12から
15のいずれか1項に記載の水晶振動部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶素子搭載基板及び水晶振動部品に関する。
【背景技術】
【0002】
水晶振動部品は、水晶片を2枚の電極で挟んでなる水晶素子を収容体に収容した電子部品である。水晶は圧電体であり、電極を介して水晶片に電圧を印加することによって高い周波数精度の発振を起こす。このため、水晶振動部品は、デジタル回路のクロック源などとして重要な電子部品である。下記特許文献1には、このような水晶振動部品の例が記載されている。
【0003】
この特許文献1の水晶振動部品は、水晶素子と、水晶素子搭載基板であるセラミックベースと、セラミックベースに載置される金属蓋とを備える。上記水晶振動部品では、セラミックベースと金属蓋とによって内部に収容空間が形成されており、この収容空間内に水晶素子が配置される。また、セラミックベースの外周縁には、セラミックベースの表面から裏面に亘って延びる複数のキャスタレーションが形成されており、これらキャスタレーションを介して水晶素子に電圧が印加される。また、上記金属蓋は、水晶振動部品を金属蓋側から見る場合に中央側ほど幅狭であり、キャスタレーションと重ならないように構成されている。なお、キャスタレーションとは、基板の側面に凹部が記載されており、この凹部の側面に電極が形成されている構造であり、この電極はキャスタレーション電極や、単にキャスタレーションと呼ばれることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、各種電子機器の小型化が進んでおり、このような電子機器の小型化のためには、これら電子機器に実装される水晶振動部品の大型化は好ましくない。一方で、以下の理由等により、水晶振動部品において水晶素子の収容空間を広げる要請もある。例えば、比較する水晶素子同士の厚みが同一である場合、主面の面積が小さい水晶素子ほど、クリスタルインピーダンスが上って発振し難くなる傾向がある。このため、水晶素子の主面の面積を大きくすることが好ましい。そして、水晶素子の主面の面積を大きくするためには、上記収容空間を広げることが好ましい。また、水晶振動子の発振周波数は、水晶素子の厚み及び面積に依存する。このため、様々な発振周波数に対応可能なパッケージを実現するために、搭載可能な水晶素子の寸法上限を大きくする要請がある。したがって、収容空間を広げることが好ましい。特許文献1の水晶振動部品において、収容空間を広げる手段としてセラミックベースを大きくすることが挙げられるが、水晶振動部品の大型化を招く。そこで、大型化抑制の要請と収容空間拡大の要請とを両立させる手段として、セラミックベースを大きくせずに、金属蓋をキャスタレーションと重なる程度まで大きくすることが考えられる。
【0006】
しかし、収容空間内に外部空気が流入すると、空気抵抗の増加、更には酸素濃度や湿度の変化等によって水晶素子の表面電極が酸化し、表面電極の重量が増加し得る。その結果、水晶素子が発振し難くなり、周波数の変動が生じ得る。したがって、水晶振動部品では、外部空気が収容空間に流入することを抑制するために収容空間内の気密性を保つことが求められる。上記特許文献1の水晶振動部品において金属蓋を大きくすると、金属蓋がキャスタレーションの開口上に載置され得るため、収容空間の気密性が損なわれて外部空気が収容空間内に流入し得る。このため、上記特許文献1の構成では、金属蓋を大きくすることが難しく、上記収容空間を広げることが難しい。
【0007】
そこで、本発明は、水晶振動部品の大型化を抑制しつつ水晶素子の収容空間を広げることを可能にし得る水晶素子搭載基板、及び、大型化が抑制されかつ上記収容空間が広げられ得る水晶振動部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的の達成のため、本発明は、蓋体が載置されることによって水晶素子を収容する収容空間を形成する水晶素子搭載基板であって、前記水晶素子が搭載される基板本体を備え、前記基板本体の外縁には、前記基板本体の前記蓋体側の第1主面から前記蓋体側とは反対側の第2主面に亘って延在して前記基板本体を貫通する少なくとも1つのキャスタレーションが形成され、前記キャスタレーションの前記第1主面側の開口の少なくとも一部が、前記キャスタレーションを介した前記収容空間の外部と前記収容空間との連通が抑制されるようにカバー部材によって覆われることを特徴とするものである。
【0009】
この水晶素子搭載基板では、上記収容空間を形成するために第1主面側に蓋体を配置する場合において、第1主面とキャスタレーションとの境界に蓋体が載置される程度に蓋体を大きくしても、あるいは、蓋体の一部が上記開口上に位置する程度に蓋体を大きくしても、上述のように、上記開口の少なくとも一部が、キャスタレーションを介した収容空間の外部と収容空間との連通が抑制されるようにカバー部材によって覆われるため、収容空間内の気密性が保たれ得る。このため、外部空気がキャスタレーションを介して収容空間に流入することが抑制され得る。したがって、蓋体が上記境界よりも内側に載置される大きさである場合に比べて、収容空間を広げ得る。また、この水晶素子搭載基板によれば、上記のように蓋体を大きくして収容空間を広げ得るため、収容空間を広げるために基板本体を大きくすることを避け得る。したがって、水晶振動部品の大型化を抑制し得る。
【0010】
また、前記カバー部材は前記基板本体よりも脆性であることが好ましい。
【0011】
一般的に、水晶素子搭載基板は、多数個取り基板を分割して個片化することによって形成される。このような多数個取り基板において、上記カバー部材は、隣接する基板個片を跨いで設けることができる。この場合、カバー部材が基板本体より脆性であれば、多数個取り基板を分割する際にカバー部材が容易に破断し得る。したがって、カバー部材をより脆性にすることでカバー部材のヒビやカバー部材の端面のバリなどが抑制され、より良好な状態の水晶素子搭載基板を実現し得る。
【0012】
また、前記カバー部材は絶縁性を有することが好ましい。
【0013】
このような構成により、水晶素子搭載基板に電極を形成した場合に、カバー部材を介して電極間にショートが発生することを抑制し得る。
【0014】
また、カバー部材が絶縁性を有する場合、前記カバー部材は、前記第1主面の外縁側の全周に亘って設けられてもよい。
【0015】
この場合、上記蓋体を配置する場合において、カバー部材と基板本体との段差に蓋体が載置されることを避け得、収容空間の気密性をより効果的に保ち得る。
【0016】
また、前記キャスタレーションは、前記第1主面の外縁の角を除く辺上に形成されてもよい。
【0017】
上記のように、水晶素子搭載基板は、多数個取り基板を分割して個片化することによって形成され得る。この場合において、例えば、キャスタレーションを上記基板個片の四角に形成すると、多数個取り基板の分割によって当該キャスタレーションが4分割され、四分の一円となる。一方、キャスタレーションを基板個片の角を除く辺上に形成すると、多数個取り基板の分割によって当該キャスタレーションが2分割され、半円となる。上記のような多数個取り基板では、複数のキャスタレーションが概ね同じ外径で形成される傾向がある。このため、キャスタレーションを基板個片の角を除く辺上に形成することによって、キャスタレーションを基板個片の四角に形成する場合に比べて、水晶素子搭載基板におけるキャスタレーションを大きくし得る。このような大きなキャスタレーションであれば、例えばはんだによる電極喰われや断線などが生じ難い。そのため、このような構成によって、より良好な状態の水晶素子搭載基板を実現し得る。
【0018】
また、前記キャスタレーションは、前記第1主面の外縁の角に形成されてもよい。
【0019】
この場合、角に形成されるキャスタレーションの開口がカバー部材で覆われるため、蓋体を搭載できる領域を効果的に広げ得る。
【0020】
また、前記第2主面には、当該第2主面の外縁の角で交わる一対の辺のそれぞれに前記キャスタレーションが形成されるとともに、前記一対の辺に形成された前記キャスタレーションに接続する第1電極が形成されてもよい。
【0021】
このように第1電極に対して2つのキャスタレーションが形成されることによって、どちらか一方のキャスタレーション電極が断線となった場合でも、第1主面側の電極と第2主面側の電極との導通を担保し得る。
【0022】
また、第2主面に上記第1電極が形成される場合、前記第2主面には、前記角の対角に、前記キャスタレーションのいずれにも接続されない第2電極が形成されてもよい。
【0023】
また、上記目的達成のため、本発明の水晶振動部品は、上述した第1電極及び第2電極に関する構成を除く上記いずれかに記載された水晶素子搭載基板と、前記基板本体に載置された前記水晶素子と、前記第1主面側に配置され、前記水晶素子搭載基板とともに前記水晶素子を収容する収容空間を形成する蓋体と、を備え、前記蓋体の一部は、前記カバー部材のうち前記開口を覆う部分に載置されることを特徴とするものである。
【0024】
この水晶振動部品によれば、上記収容空間を形成する蓋体は、キャスタレーションの開口上に載置される程度の大きさを有する。このため、蓋体がキャスタレーションよりも基板本体の内側に載置される程度の大きさである場合に比べて、大きな収容空間が確保され得る。また、上記のように、蓋体が載置される開口はカバー部材に覆われているため、蓋体が開口上に載置されても収容空間の気密性が保たれ得る。よって、収容空間に外部空気が流入することが抑制され得る。また、この水晶振動部品によれば、上記のように蓋体を大きくして収容空間を広げ得るため、収容空間を広げるために基板本体を大きくすることを避け得る。したがって、大型化の抑制された水晶振動部品を実現し得る。
【0025】
また、前記基板本体は平板状であり、前記蓋体にはキャビティが含まれ、前記基板本体と前記キャビティとによって前記収容空間が形成されてもよい。
【0026】
基板本体は、平板状であってもよいし、水晶素子を搭載するためのキャビティを有する形状であってもよい。しかし、基板本体が平板状であれば、基板本体に電極などを形成することが容易であり、製造コストの増大等を抑制し得る。
【0027】
また、前記第2主面には、当該第2主面の外縁の角で交わる一対の辺のそれぞれに前記キャスタレーションが形成されるとともに、前記一対の辺に形成された前記キャスタレーションに接続する第1電極が形成されてもよい。
【0028】
このように1つの電極に対して2つのキャスタレーションが形成されることによって、どちらか一方のキャスタレーション電極が断線となった場合でも、第1主面側の電極と第2主面側の電極との導通を担保し得る。
【0029】
また、第2主面に上記第1電極が形成される場合、前記第2主面には、前記角の対角に、前記キャスタレーションのいずれにも接続されない第2電極が形成されてもよい。
【0030】
また、第2主面に上記第1電極が形成される場合、前記第1主面には、前記第2主面の前記一対の辺に形成された前記キャスタレーションに接続する第3電極が形成されてもよい。この場合、前記第3電極の一部は前記カバー部材に覆われ、前記第3電極の前記カバー部材に覆われない部分の一部には導電性材料が設けられることが好ましい。また、前記蓋体は金属から形成されるとともに、前記蓋体の一部が前記導電性材料上に載置されることが好ましい。
【0031】
このような構成により、導電性材料を介して蓋体を第3電極及び第1電極に接続することができる。
【0032】
また、上記導電性材料が設けられる場合において、前記第1電極及び前記第3電極はグランド電極であることが好ましい。
【0033】
この場合、蓋体がグランド電極である第1電極及び第3電極に接続するため、蓋体を電磁シールドとして機能させ得る。このため、周囲の電磁ノイズによる水晶振動部品の性能の低下を抑制し得るとともに、当該水晶素子部品から放射する電磁ノイズを低減し得る。
【0034】
あるいは、前記第1主面及び前記第2主面のそれぞれには、前記キャスタレーションの少なくとも1つによって互いに接続されるグランド電極が形成されてもよい。この場合、前記第1主面における前記グランド電極の一部は前記カバー部材に覆われ、前記第1主面における前記グランド電極の前記カバー部材に覆われない部分の一部には導電性材料が設けられることが好ましい。また、前記蓋体は金属から形成されるとともに、前記蓋体の一部が前記導電性材料上に載置されることが好ましい。
【0035】
この場合、蓋体がグランド電極に接続するため、蓋体を電磁シールドとして機能させ得る。このため、周囲の電磁ノイズによる水晶振動部品の性能の低下を抑制し得るとともに、当該水晶素子部品から放射する電磁ノイズを低減し得る。
【発明の効果】
【0036】
以上のように、本発明によれば、水晶振動部品の大型化を抑制しつつ水晶素子の収容空間を広げることを可能にし得る水晶素子搭載基板、及び、大型化が抑制されかつ上記収容空間が広げられ得る水晶振動部品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明の第1実施形態における水晶振動部品を概略的に示す斜視図である。
【
図2】
図1に示される水晶振動部品をII-II線に沿って切断した様子を概略的に示す断面図である。
【
図3】
図2に示される水晶振動部品をIII-III線に沿って切断した様子を概略的に示す断面図である。
【
図4】
図1に示される水晶振動部品の背面図である。
【
図5】
図3に示される水晶素子搭載基板を製造するための多数個取り基板を示す斜視図である。
【
図6】多数個取り基板にキャスタレーションが形成された後の様子を示す斜視図である。
【
図7】多数個取り基板にカバー部材が設けられた後の様子を示す斜視図である。
【
図8】本発明の第2実施形態における水晶振動部品を概略的に示す斜視図である。
【
図9】
図8に示される水晶振動部品をIX-IX線に沿って切断した様子を概略的に示す断面図である。
【
図10】
図9に示される水晶振動部品をX-X線に沿って切断した様子を概略的に示す断面図である。
【
図11】
図9に示される水晶振動部品の背面図である。
【
図12】本発明の第1実施形態の変形例の一部を
図3と同様の視点で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明に係る水晶素子搭載基板及び水晶振動部品を実施するための形態が添付図面とともに例示される。以下に例示する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、以下の実施形態から変更、改良することができる。なお、以下に参照する図面では、理解を容易にするために、各部材の寸法を変えて示す場合がある。また、本明細書における「頂」、「底」、及び「上」などの位置を表す用語は、図面における位置関係を示すものであり、絶対的な位置を示すものではない。
【0039】
(第1実施形態)
図1は第1実施形態における水晶振動部品1を概略的に示す斜視図であり、
図2は
図1に示される水晶振動部品1をII-II線に沿って切断した様子を概略的に示す断面図である。
図1及び
図2に示すように、この水晶振動部品1は、水晶素子搭載基板2と、蓋体3と、水晶素子30とを主な構成として備える。
【0040】
蓋体3はキャビティ3Cを有する金属製の部材であり、この蓋体3が水晶素子搭載基板2に載置されることによって、水晶素子30を収容するための収容空間Sが形成される。なお、蓋体3を形成する金属としては、例えば、ステンレススチール、銅、アルミニウム等を挙げることができる。
【0041】
水晶素子搭載基板2は、所定の厚みを有する平板状の部材であり、基板本体10と、カバー部材20とを主な構成として備える。基板本体10は、厚み方向における一方側の面である第1主面10Pと、厚み方向における他方側の面である第2主面10Qとを含む。この第1主面10P側に蓋体3が配置されることによって、水晶素子搭載基板2と蓋体3との間に上記収容空間Sが形成される。このような基板本体10は、強度や信頼性の観点等からセラミックス材料で形成されることが好ましく、このセラミックス材料として、例えば、酸化アルミニウムや窒化アルミニウムなどを用いることができる。
【0042】
図3は、
図2に示される水晶振動部品1をIII-III線に沿って切断した様子を概略的に示す断面図である。また、
図4は、水晶振動部品1の背面図、すなわち、基板本体10の第2主面10Qを主に示す図である。
【0043】
図1から
図4に示すように、基板本体10は、厚み方向に偏平な略直方体の外形を有している。基板本体10の各辺上には、1つずつキャスタレーションが形成されている。つまり、基板本体10の外縁には、4つのキャスタレーション11~14が形成されている。これらのキャスタレーション11~14は、平面視及び背面視において半円の外形を有しており、基板本体10の厚み方向の全長に亘って延在している。言い換えれば、キャスタレーション11~14は、基板本体10の蓋体3側の第1主面10Pから蓋体3とは反対側の第2主面10Qに亘って延在して基板本体10を貫通する。こうして、キャスタレーション11~14は、第1主面10P側の開口と、第2主面10Q側の開口とを有する。本実施形態では、キャスタレーション11~14は、基板本体10の外縁の4つの角10A,10B,10C,10Dを除く部分に形成されている。
【0044】
図4に示すように、キャスタレーション11~14のうち、キャスタレーション11及びキャスタレーション13は、互いに隣接して形成されており、第2主面10Qの外縁の角10Aで交わる一対の辺上に形成されている。また、キャスタレーション12は角10Cの近傍に形成されている。また、キャスタレーション14は角10Dの近傍に形成されている。一方、角10Aと対角線上に位置する角10Bの近傍には、キャスタレーションが非形成である。
【0045】
図4に示すように、基板本体10の第2主面10Qには、互いに非接続の4つの電極31~34が形成されている。具体的には、電極31は、角10Aの周りに形成され、キャスタレーション11のキャスタレーション電極11a及びキャスタレーション13のキャスタレーション電極13aに接続される。電極33は、角10Cの周りに形成され、キャスタレーション12のキャスタレーション電極12aに接続される。電極34は、角10Dの周りに形成され、キャスタレーション14のキャスタレーション電極14aに接続される。一方、電極32は、角10Bの周りに形成され、いずれのキャスタレーション電極とも非接続である。ここで、角10Aで交わる一対の辺に形成されたキャスタレーション11,13のキャスタレーション電極11a,13aに接続される電極31を第1電極とし、電極32を第2電極とすると、第2主面10Qには、角10Aから延びる第2主面10Qの対角線上かつ第1電極を基準として角10Aとは反対側に、いずれのキャスタレーション電極にも接続されない第2電極が形成されている。本実施形態において、第1電極である電極31はグランド電極である。
【0046】
これら電極31~34は、印刷により形成されてもよく、めっきが施されてもよい。電極31~34にめっきを施せば、めっきを施さない場合と比較して、電極の劣化、マイグレーション、あるいは、はんだによる電極喰われ等を抑制することができる。また、電極31~34にめっきを施す場合、電解めっきが好ましい。電解めっきであれば選択的にめっきを析出させることができるため、無電解めっきと比較して、電極のマイグレーションや絶縁破壊など抑制し得る。また、電極31~34の形状及び面積は特に限定されないが、概ね同じ形状及び面積であってもよい。
【0047】
図3に示すように、基板本体10の第1主面10Pには、互いに非接続の3つの電極35~37が形成されている。具体的には、電極35は、角10Aの周りに形成され、角10Aで交わる一対の辺に形成されたキャスタレーション電極11a,13aに接続される。この電極35を第3電極とすると、第3電極は、キャスタレーション電極11a,13aを介して第2主面10Qのグランド電極31(第1電極)に接続され、第3電極もグランド電極となる。電極36は、キャスタレーション電極12aに接続されており、角10Cの近傍から第1主面10Pの内側に向かって延在している。こうして、電極36は、キャスタレーション電極12aを介して第2主面10Qの電極33に接続される。電極36のうちキャスタレーション12から離れた部分には、導電性樹脂38が設けられている。電極37は、キャスタレーション電極14aに接続されており、角10Dの近傍から角10Bに向かって延在している。こうして、電極37は、キャスタレーション電極14aを介して第2主面10Qの電極34に接続される。電極37のうち角10B側の部分には、導電性樹脂39が設けられている。導電性樹脂38,39は、角10Bと角10Cを結ぶ辺と概ね平行な線上に並んでいる。なお、角10Bの周りには電極が非形成である。
【0048】
これら電極35~37は、印刷により形成されてもよく、めっきが施されてもよい。電極35~37にめっきを施せば、めっきを施さない場合と比較して、電極の劣化、マイグレーション、あるいは、はんだによる電極喰われ等を抑制することができる。また、電極35~37にめっきを施す場合、電解めっきが好ましい。電解めっきであれば選択的にめっきを析出させることができるため、無電解めっきと比較して、電極のマイグレーションや絶縁破壊など抑制し得る。
【0049】
なお、電極31~37の厚みは、基板本体10の厚みに比べて極めて小さい。そのため、
図1では電極31~37の図示が省略されている。また、上記のような電極31~37の配置は例示的なものであり、上記のような配置に限定されるものではない。
【0050】
水晶素子30は、導電性樹脂38,39によって片持ち梁状に固定され、第1主面10P側に配置される。こうして、水晶素子30は、水晶素子搭載基板2と蓋体3とによって形成される収容空間S内に収容される。水晶素子30の水晶素子搭載基板2側の面及び蓋体3側の面のそれぞれには、不図示の励振用電極が形成されている。本実施形態では、これら励振用電極のうち水晶素子搭載基板2側の面の電極は、導電性樹脂38を介して、第1主面10Pの電極36及び第2主面10Qの電極33に接続される。一方、励振用電極のうち蓋体3側の電極は、導電性樹脂39を介して、第1主面10Pの電極37及び第2主面10Qの電極34に接続される。したがって、電極33,36を介して励振用電極の一方側に電流が供給され、電極34,37を介して励振用電極の他方側に電流が供給されることによって、逆圧電効果が生じて水晶素子30が発振する。
【0051】
図2及び
図3に示すように、基板本体10の第1主面10Pの外縁には、上記カバー部材20が設けられている。本実施形態では、カバー部材20は、第1主面10Pの外縁側の全周に亘って設けられている。このカバー部材20は、キャスタレーション11の第1主面10P側の開口の全体を覆う第1開口上領域21と、キャスタレーション12の第1主面10P側の開口の全体を覆う第2開口上領域22と、キャスタレーション13の第1主面10P側の開口の全体を覆う第3開口上領域23と、キャスタレーション14の第1主面10P側の開口の全体を覆う第4開口上領域24と、を含む。このようなカバー部材20は、第1主面10Pと概ね面一に形成される。
【0052】
本実施形態のカバー部材20は、基板本体10よりも脆性であり、絶縁性を有する。このようなカバー部材20を形成する材料としては、例えばガラス又は樹脂を挙げることができる。カバー部材20をガラスから形成する場合、より脆性に優れる点において結晶化ガラスが好ましい。
【0053】
図3に示すように、本実施形態では、第3電極である電極35の一部は上記カバー部材20に覆われている。また、電極35のカバー部材20に覆われない部分の一部には、導電性材料40が設けられている。本実施形態において、この導電性材料40は、導電性の樹脂であり、第1主面10Pの角10Aの近傍に配置される。導電性材料40の厚み方向における一方側の面は、グランド電極である電極35に全面的に接触している。そのため、導電性材料40は、電極35を介して、キャスタレーション電極11a,13aに接続されている。一方、導電性材料40の厚み方向における他方側の面は、カバー部材20と概ね同一面上に位置している。
【0054】
図2及び
図3に示すように、蓋体3は、カバー部材20上及び導電性材料40上に載置される。本実施形態において、カバー部材20のうち蓋体3が載置される部分には、上述の第1開口上領域21、第2開口上領域22、第3開口上領域23、及び第4開口上領域24が含まれる。つまり、蓋体3は、水晶振動部品1を蓋体3側から見る場合に、キャスタレーション11~14上に載置される寸法であり、蓋体3がキャスタレーション11~14の内側に載置される寸法である場合と比較して大きな寸法である。蓋体3がこのような大きな寸法であることによって、収容空間Sがキャスタレーション11~14の第1主面10P側の開口上まで広がっている。このように収容空間Sが上記開口上まで広がる場合でも、上記開口の全体を覆う第1開口上領域21、第2開口上領域22、第3開口上領域23、及び第4開口上領域24によって、キャスタレーション11~14を介した収容空間Sの外部と収容空間Sとの連通が抑制される。また、蓋体3は、導電性材料40を介して、上述のグランド電極である電極35及び電極31に接続される。
【0055】
上記のような水晶素子搭載基板2及び水晶振動部品1は、例えば以下のようにして製造することができる。
【0056】
まず、
図5に示すような多数個取り基板1Pを準備する。この多数個取り基板1Pは、水晶素子搭載基板2の複数個分の寸法を有するセラミック焼結体であり、セラミックグリーンシートを焼成したものである。なお、セラミックグリーンシートとは、焼成することによりセラミック焼結体となる生シートのことであって、例えば、アルミナ粉末、有機バインダ、溶剤、可塑剤等を適宜混合してスラリーを調製し、調製したスラリーをドクターブレード法やカレンダーロール法等の方法により平坦なシート状に成形した生シートである。なお、
図5における複数の破線は多数個取り基板1Pを分割するための分割線PLであり、これら分割線PLで囲まれる個々の領域である基板個片1Paが上記基板本体10となる。
【0057】
次に、キャスタレーション形成工程を行う。本工程では、
図6に示すように、分割線PLを跨ぐ円形のキャスタレーションを複数形成する。本実施形態において、これらのキャスタレーションは概ね同じ外径に形成される。本工程は、所定の金型をプレスすることによって行ってもよく、この場合、キャスタレーションの形成と同時に分割線PLを形成することも可能である。なお、上記キャスタレーションや分割線PLは、レーザーを照射することによっても形成することができる。ここで、各基板個片1Paに着目すると、各基板個片1Paの外縁に形成された複数のキャスタレーションの位置関係は、
図3及び
図4に示すキャスタレーション11~14の位置関係に対応する。
【0058】
なお、セラミックグリーンシートを焼成する前に例えば上記金型により上記キャスタレーションや分割線PLを形成してもよい。また、セラミックグリーンシートを焼成してセラミック焼結体とした後に例えば上記レーザーにより上記キャスタレーションや分割線PLを形成してもよい。
【0059】
次に、第1電極形成工程を行う。本工程では、各基板個片1Paにおいて
図3及び
図4に示すような電極が形成されるように、多数個取り基板1Pの厚み方向における一方側の主面1PP及び他方側の主面1PQのそれぞれに電極を形成する。例えば、銀ペーストをスクリーン印刷、インクジェット印刷、あるいはオフセット印刷などで主面1PP,1PQに印刷することによって、
図3及び
図4に示す電極を形成してもよい。
【0060】
次に、第2電極形成工程を行い、上記キャスタレーションのそれぞれの側壁にキャスタレーション電極を形成する。
【0061】
次に、カバー部材形成工程を行う。本工程では、
図7に示すように、多数個取り基板1Pの主面1PPの分割線PLに沿ってカバー部材20を形成する。なお、
図7では、カバー部材20を分かりやすくするために、カバー部材20にハッチングを入れている。また、
図7では、上記第1電極形成工程及び上記第2電極形成工程によって形成された電極の図示が省略されている。本工程により、多数個取り基板1Pに形成されたキャスタレーションの主面1PP側の開口の全体がカバー部材20によって覆われる。本実施形態のカバー部材20は、絶縁性を有し、多数個取り基板1Pを形成するセラミックよりも脆性であり、具体的には結晶化ガラスからなる。このような結晶化ガラスからなるカバー部材20は、例えば、結晶化ガラスペーストをスクリーン印刷などの印刷によって形成した後焼成することによって形成することができる。
【0062】
なお、本工程において、上記カバー部材20の一部に空隙を設け、この空隙(カバー部材非配置領域)に上記導電性材料40を配置してもよい。
【0063】
次に、分割工程を行う。本工程において、分割線PLに沿って多数個取り基板1Pを分割して複数の基板個片1Paを得る。上述のように、多数個取り基板1Pには、円形のキャスタレーションが分割線PLに跨って形成されている。したがって、基板個片1Paのキャスタレーションは半円となる。また、上述のように、カバー部材20は多数個取り基板1Pよりも脆性である。したがって、分割線PLに沿って多数個取り基板1Pを分割した場合でも、カバー部材20は分割線PLに沿って容易に破断し得、カバー部材20にヒビや端面のバリなどが生じることが抑制され得る。
【0064】
以上の工程を得て、基板個片1Paの各キャスタレーションの第1主面10P側の開口の全体がカバー部材20によって覆われ、水晶素子搭載基板2が製造される。
【0065】
その後、この水晶素子搭載基板2のカバー部材20におけるキャスタレーションの開口を覆う部分に蓋体3を載置することによって、水晶振動部品1が完成する。ここで、上述のように、各キャスタレーションの第1主面10P側の開口の全体はカバー部材20によって覆われている。このため、第1主面10P側の開口上に蓋体3を載置しても、キャスタレーションを介した収容空間Sの外部と収容空間Sとの連通が抑制される。
【0066】
以上説明したように、本実施形態の水晶素子搭載基板2は、水晶素子30が搭載される基板本体10を備え、基板本体10の蓋体3側の第1主面10Pから蓋体3側とは反対側の第2主面10Qに亘って延在して基板本体10を貫通するキャスタレーション11~14が形成され、キャスタレーション11~14の第1主面10P側の開口が、キャスタレーション11~14を介した収容空間Sの外部と収容空間Sとの連通が抑制されるようにカバー部材20によって覆われる。
【0067】
このような水晶素子搭載基板2では、収容空間Sを形成するために第1主面10P側に蓋体3を配置する場合において、第1主面10Pとキャスタレーション11~14との境界に蓋体3が載置される程度に蓋体3を大きくしても、あるいは、蓋体3の一部が上記開口上に位置する程度に蓋体3を大きくしても、上述のように、上記開口がキャスタレーション11~14を介した収容空間Sの外部と収容空間Sとの連通が抑制されるようにカバー部材20によって覆われるため、収容空間S内の気密性が保たれ得る。こうして、外部空気が収容空間Sに流入することが抑制され得る。したがって、蓋体3が第1主面10Pとキャスタレーション11~14との境界よりも内側に載置される大きさである場合に比べて、収容空間Sを広げ得る。また、この水晶素子搭載基板2によれば、上記のように蓋体3を大きくして収容空間Sを広げ得るため、収容空間Sを広げるために基板本体10を大きくすることを避け得る。したがって、水晶振動部品1の大型化を抑制し得る。
【0068】
また、本実施形態の水晶振動部品1は、上記水晶素子搭載基板2と、基板本体10に載置された水晶素子30と、上記第1主面10P側に配置され、水晶素子搭載基板2とともに水晶素子30を収容する収容空間Sを形成する蓋体3と、を備え、蓋体3の一部は、カバー部材20の上記第1開口上領域21、第2開口上領域22、第3開口上領域23、及び第4開口上領域24に載置される。
【0069】
このような水晶振動部品1では、上記収容空間Sを形成する蓋体3は、キャスタレーション11~14の開口上に載置される程度の大きさを有する。このため、蓋体3がキャスタレーション11~14よりも基板本体10の内側に載置される程度の大きさである場合に比べて、大きな収容空間Sが確保され得る。また、上記のように、蓋体3が載置される開口はカバー部材20に覆われているため、蓋体3が開口上に載置されても収容空間Sの気密性が保たれ得る。よって、収容空間Sに外部空気が流入することが抑制され得る。また、この水晶振動部品1によれば、上記のように蓋体3を大きくして収容空間Sを広げ得るため、収容空間Sを広げるために基板本体10を大きくすることを避け得る。したがって、大型化の抑制された水晶振動部品1を実現し得る。
【0070】
また、上述のように、本実施形態のカバー部材20は絶縁性を有している。したがって、上述のようにカバー部材20を第1主面10Pの外縁側の全周に設けた場合でも、例えば電極35~37間にショートが発生することを抑制し得る。
【0071】
また、上述のように、本実施形態のカバー部材20は、第1主面10Pの外縁側の全周に亘って設けられている。したがって、カバー部材20と基板本体10との段差に蓋体3を載置することを避け得、収容空間Sの気密性をより高め得る。
【0072】
また、上述のように、本実施形態のキャスタレーション11~14は、第1主面10Pの外縁の角10A~10Dを除く辺上に形成されており、キャスタレーション11~14の開口は半円である。このため、概ね同じ外径のキャスタレーションを多数個取り基板1Pに形成する場合、例えばキャスタレーションを分割線PLの交点上に形成して基板個片における開口を四分の一円にする場合に比べて、キャスタレーションを広げることができる。したがって、はんだによる電極喰われや断線などが抑制され、より良好な状態の水晶素子搭載基板2及び水晶振動部品1が実現され得る。
【0073】
また、上述のように、本実施形態では、基板本体10第2主面10Qには、外縁の角で交わる一対の辺にキャスタレーション11,13が形成されるとともに、キャスタレーション電極11a,13aに接続する電極31(第1電極)が形成される。このように1つの電極31に対して2つのキャスタレーション11,13が形成されることによって、どちらか一方のキャスタレーション電極が被覆不良や分割不良によって断線となった場合でも、第1主面10P側の電極35と第2主面10Q側の電極31との導通を担保し得る。
【0074】
また、上述のように、本実施形態の基板本体10の第1主面10Pには、キャスタレーション電極11a,13aに接続する電極35(第3電極)が形成される。この電極35の一部はカバー部材20に覆われる。また、電極35のカバー部材20に覆われない部分の一部には導電性材料40が設けられている。そして、この導電性材料40には、金属製の蓋体3の一部が載置される。このような構成により、蓋体3は、グランド電極である電極31,35に接続される。したがって、上記のように金属からなる蓋体3は、電磁シールドとして機能し、周囲の電磁ノイズによる水晶振動部品の性能の低下を抑制し得るとともに、当該水晶素子部品から放射する電磁ノイズを低減し得る。
【0075】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、基板本体10が平板状であり、蓋体3にはキャビティ3Cが含まれ、基板本体10とキャビティ3Cとによって収容空間Sが形成される例を説明した。しかし、以下のような第2実施形態に係る水晶振動部品100を構成してもよい。この第2実施形態について、
図8から
図11を参照して説明する。なお、上記実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明を省略することがある。
【0076】
図8は本実施形態における水晶振動部品100を概略的に示す斜視図であり、
図9は
図8に示される水晶振動部品100をIX-IX線に沿って切断した様子を概略的に示す断面図であり、
図10は水晶振動部品100を
図9に示されるX-X線に沿って切断した様子を概略的に示す断面図であり、
図11は水晶振動部品100の背面図である。
【0077】
図8から
図11に示すように、水晶振動部品100は、水晶素子搭載基板102と、蓋体103と、水晶素子30とを主な構成として備える。蓋体103は、キャビティ3Cを有する第1実施形態の蓋体3と異なり、平板状の部材である。水晶素子搭載基板102は、基板本体110と、カバー部材20とを主な構成として備える。基板本体110は、平板部111と、平板部111から厚み方向に立設する立設部112とを含む。つまり、基板本体110には、平板部111と立設部112とによってキャビティ110Cが形成されている。この点において、基板本体110は、平板状である第1実施形態の基板本体10と異なる。本実施形態において、蓋体103は金属から形成されている。蓋体103は、立設部112の頂面112T側に配置される。こうして、蓋体103とキャビティ110Cとによって、水晶素子30を収容するための収容空間Sが形成される。
【0078】
基板本体110の外縁部には、4つのキャスタレーション11~14が形成されている。本実施形態におけるキャスタレーション11~14の位置関係は、第1実施形態と概ね同様である。
【0079】
これらキャスタレーション11~14は、基板本体110の厚み方向の全長に亘って延在している。言い換えれば、キャスタレーション11~14は、立設部112の頂面112Tから平板部111の底面111Qに亘って延在しており、平板部111と立設部112とを貫通している。つまり、本実施形態では、頂面112Tが基板本体110の第1主面に相当し、底面111Qが基板本体110の第2主面に相当する。
【0080】
平板部111の上面111Pは、底面111Q及び蓋体103と概ね平行に延在しており、上面111Pの縁部は立設部112の内壁112Iに接続している。
【0081】
水晶振動部品100は、水晶振動部品1と同様に電極31~37を有する。
図11に示すように、電極31~37のうち電極31~34は、基板本体10の底面111Qに形成される電極であり、
図4に示す位置関係と同様の位置関係で形成される。
【0082】
一方、
図9及び
図10に示すように、電極31~37のうち電極35~37は、以下のように形成される。電極36は、頂面112T、内壁112I、及び上面111Pに亘って形成される。電極36のうち上面111Pに形成される部分の所定の位置には、導電性樹脂38が設けられている。電極36は、キャスタレーション電極12aを介して電極33に接続される。電極37は、頂面112T、内壁112I、及び上面111Pに亘って形成される。電極37のうち上面111Pに形成される部分は、内壁112Iの長辺方向に沿って延在しており、所定の位置に導電性樹脂39が設けられる。電極37のうち内壁112Iに形成される部分は、上記長辺方向において導電性樹脂39とは反対側に設けられている。電極37は、キャスタレーション電極14aを介して電極34に接続される。電極35は、頂面112Tに形成されており、内壁112I及び上面111Pには非形成である。電極35は、キャスタレーション電極13aを介して電極31に接続される。本実施形態において、電極31,35は第1実施形態と同様にグランド電極である。
【0083】
導電性樹脂38,39は、内壁112Iの短辺方向に沿って一列に並んでおり、水晶素子30は、導電性樹脂38,39によって上面111P上に片持ち梁状に支持される。
【0084】
本実施形態のカバー部材20は、頂面112Tの外縁側の全周に亘って設けられている。カバー部材20は、キャスタレーション11~14の頂面112T側のそれぞれの開口の全体を覆っており、
図11に示すように、第1開口上領域21、第2開口上領域22、第3開口上領域23、及び第4開口上領域24を含んでいる。また、
図9に示すように、電極35の一部はカバー部材20に覆われており、電極35のカバー部材20に覆われない部分の一部には導電性材料40が設けられる。したがって、この導電性材料40は、電極35を介してキャスタレーション電極13aに接続されている。
【0085】
蓋体103は、カバー部材20及び導電性材料40に重ねられて載置されており、本実施形態では、カバー部材20の第1開口上領域21、第2開口上領域22、第3開口上領域23、及び第4開口上領域24まで延在している。
【0086】
ところで、蓋体103と頂面112Tとの接触面積が小さい場合、蓋体103を安定して載置することが難しくなり得る。また、仮に、カバー部材20を設けない場合において、蓋体103と頂面112Tとの接触面積を広げるために、上記開口と重なる程度まで蓋体103を大きくすると、蓋体103と開口との間から外部空気が収容空間Sに流入し易くなる。このため、カバー部材20を設けない場合、蓋体103と頂面112Tとの接触面積を広げる観点から、内壁112Iの位置をキャスタレーション11~14側に広げることが難しい。つまり、収容空間Sを広げることが難しい。
【0087】
しかし、本実施形態では、上述のように、キャスタレーション11~14の頂面112T側の開口の全体がカバー部材20によって覆われている。このため、蓋体103の寸法をこれらの開口と重なる程度まで大きくしても、カバー部材20によって、キャスタレーション11~14を介した収容空間Sの外部と収容空間Sとの連通が抑制され、当該開口と蓋体103との間から外部空気が収容空間Sに流入することが抑制される。また、カバー部材20が上記開口上に設けられているため、内壁112Iの位置をキャスタレーション側に広げても、カバー部材20によって蓋体103を安定して載置し得る。したがって、カバー部材20を設けない場合と比較して、収容空間Sを広げ得る。また、内壁112Iの位置をキャスタレーション11~14側に広げても基板本体10の寸法は変わらないため、水晶振動部品100の大型化が抑制され得る。
【0088】
また、本実施形態では、蓋体103が導電性材料40上に載置され、導電性材料40はグランド電極である電極35に接続される。したがって、第1実施形態と同様に、金属からなる蓋体103は電磁シールドとして機能し、周囲の電磁ノイズによる水晶振動部品の性能の低下を抑制し得るとともに、当該水晶素子部品から放射する電磁ノイズを低減し得る。
【0089】
なお、第1実施形態と第2実施形態とを比較した場合、第1実施形態の基板本体10は平板状であるため、キャビティ110Cを有する第2実施形態の基板本体110に比べて、基板本体に電極などを形成することが容易である。このため、第1実施形態の方が第2実施形態に比べて製造コスト等を抑制し得る。
【0090】
以上、本発明に係る水晶素子搭載基板2及び水晶振動部品1について上記第1及び第2実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0091】
例えば、第1及び第2実施形態では、カバー部材20が第1主面の外縁側の全周に亘って設けられる例を説明した。しかし、キャスタレーションの第1主面側の開口が、キャスタレーションを介した収容空間Sの外部と収容空間との連通が抑制されるようにカバー部材20によって覆われるのであれば、カバー部材20を第1主面の外縁側の全周に亘って設ける必要はない。また、カバー部材20を第1主面の外縁側の全周に亘って設けない場合、カバー部材20は必ずしも絶縁性を有していなくてもよい。例えば、複数のキャスタレーション電極に跨いでカバー部材20が設けられない場合、カバー部材20が絶縁性を有しなくても、キャスタレーション電極間におけるショートの発生が抑制され得る。
【0092】
また、第1及び第2実施形態では、上記第3電極である電極35の一部に導電性材料40が配置される例を説明した。しかし、上述のように基板本体における電極の配置は適宜変更することができる。したがって、第1実施形態及び第2実施形態とは異なる電極配置をする場合において、上記第1主面及び上記第2主面のそれぞれに、キャスタレーションの少なくとも1つの電極によって互いに接続されるグランド電極を形成し、上記第1主面におけるグランド電極の一部をカバー部材で覆い、第1主面におけるグランド電極のカバー部材に覆われない部分の一部に導電性材料を設けてもよい。また、この場合において、蓋体を金属から形成するとともに、蓋体の一部を導電性材料上に載置してもよい。このような構成により、蓋体が導電性材料を介してグランド電極に接続されるため、蓋体を電磁シールドとして機能させることができる。
【0093】
また、上述の実施形態では、導電性材料40が設けられる例を説明したが、導電性材料を設けることは必須ではない。
【0094】
また、キャスタレーションの数は4つに限定されるものではなく、1以上3以下であってもよいし、5以上であってもよい。
【0095】
また、キャスタレーションを形成する位置は基板本体10の外縁であれば上記第1実施形態及び上記第2実施形態における位置に限定されるものではない。また、平面視及び背面視におけるキャスタレーションの外形は半円に限られない。例えば、キャスタレーションを第1主面の外縁の角に形成する場合、
図12に示すように、平面視におけるキャスタレーションの外形は四分の一円になり得る。なお、
図12は、第1実施形態の水晶振動部品1の変形例の一部を
図3と同様の視点で示す図である。
【0096】
以下、上記変形例について説明する。この変形例では、キャスタレーション211が基板本体10の角に形成される。また、この変形例では、キャスタレーション211の第1主面側の開口の一部がカバー部材20によって覆われている。このカバー部材20は、水晶振動部品1を蓋体3側から見る場合に、少なくともキャスタレーション211の第1主面側の開口のうち蓋体3と重なる部分に形成されている。この変形例のようにキャスタレーション211が角に形成され、このキャスタレーション211をカバー部材20で覆うことで、蓋体3を搭載できる領域を効果的に広げ得る。また、上記のように、蓋体3側から見る場合に上記開口のうち少なくとも蓋体3と重なる部分がカバー部材20に覆われるため、キャスタレーション211を介した収容空間Sの外部と上記収容空間Sとの連通が抑制される。このように、キャスタレーションの第1主面側の開口が、キャスタレーションを介した収容空間Sの外部と収容空間Sとの連通が抑制されるようにカバー部材20によって覆われるのであれば、上記開口の全体がカバー部材20で覆われる必要はない。また、複数のキャスタレーションのうち一部のキャスタレーションを第1主面の外縁の角を除く辺上に形成し、他のキャスタレーションを第1主面の外縁の角に形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明によれば、水晶振動部品の大型化を抑制しつつ水晶素子の収容空間を広げることを可能にし得る水晶素子搭載基板、及び、大型化が抑制されかつ上記収容空間が広げられ得る水晶振動部品が提供され、電子部品の分野などにおいて利用可能である。
【符号の説明】
【0098】
1・・・水晶振動部品
2・・・水晶素子搭載基板
3・・・蓋体
3C・・・キャビティ
10・・・基板本体
10P・・・第1主面
10Q・・・第2主面
11~14・・・キャスタレーション
20・・・カバー部材
21・・・第1開口上領域
22・・・第2開口上領域
23・・・第3開口上領域
24・・・第4開口上領域
30・・・水晶素子
31・・・電極(第1電極)
32・・・電極(第2電極)
35・・・電極(第3電極)
40・・・導電性材料
100・・・水晶振動部品
102・・・水晶素子搭載基板
103・・・蓋体
110・・・基板本体
112T・・・頂面(第1主面)
111Q・・・底面(第2主面)
211・・・キャスタレーション
S・・・収容空間