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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/533 20210101AFI20240823BHJP
   H01M 50/528 20210101ALI20240823BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20240823BHJP
【FI】
H01M50/533
H01M50/528
H01M10/058
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020047168
(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公開番号】P2021150087
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 祐輝
(72)【発明者】
【氏名】田中 政典
(72)【発明者】
【氏名】並木 佑介
(72)【発明者】
【氏名】山岸 元気
(72)【発明者】
【氏名】根岸 信保
【審査官】小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/073744(WO,A1)
【文献】特開2011-070918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50-50/598
H01M 10/058
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
突出する集電タブを備える電極群と
前記集電タブの突出部分の根元位置とは反対側の端部接続される、前記集電タブに比べて厚いリード部材と、
前記集電タブとの接続部分とは異なる位置で前記リード部材が接続され、前記リード部材を間に介して前記集電タブに電気的に接続される電極端子と
具備し、
前記集電タブには、前記根元位置と前記リード部材への接続位置との間に湾曲するタブ湾曲部が形成され、
前記集電タブの前記根元位置と前記リード部材への前記接続位置との間の直線距離に対する前記根元位置から前記接続位置までの前記集電タブの延設長の比率は、3以上6以下である、
電池。
【請求項2】
前記集電タブの厚さに対する前記リード部材の厚さの比率は、1.4以上3.0以下である、
求項1の電池。
【請求項3】
前記電極群の幅に対する前記集電タブの幅の比率は、0.15以上0.30以下である、請求項1又は2の電池。
【請求項4】
前記リード部材は、前記集電タブと同一の材料から形成される、請求項1乃至3のいずれか1項の電池。
【請求項5】
体積エネルギー密度が100W・h/L以上200W・h/L以下である、請求項1乃至4のいずれか1項の電池。
【請求項6】
前記リード部材は、前記集電タブとの前記接続部分で、前記集電タブに直接的に接合される、請求項1乃至5のいずれか1項の電池。
【請求項7】
前記集電タブを挟、前記突出部分の前記根元位置とは反対側の前記端部で前記集電タブに取付けられるバックアップリードをさらに具備し、
前記リード部材は、前記バックアップリードの一部を前記集電タブとの間で挟むとともに前記バックアップリードを間に介して前記集電タブに接続され、
前記リード部材は、前記集電タブとの前記接続部分で、前記バックアップリードに接合される、
請求項1乃至5のいずれか1項の電池。
【請求項8】
前記電極群は、正極及び負極を備え、
前記集電タブは、前記電極群において突出する正極集電タブ、及び、前記電極群において前記正極集電タブが突出する側に突出する負極集電タブの少なくとも一方であり、
前記リード部材は、前記正極集電タブに接続される正極リード部材、及び、前記負極集電タブに接続される負極リード部材の少なくとも一方であり、
前記電極端子は、前記正極リード部材を間に介して前記正極集電タブに電気的に接続される正極端子、及び、前記負極リード部材を間に介して前記負極集電タブに電気的に接続される負極端子の少なくとも一方である、
請求項1乃至7のいずれか1項の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電池に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池等の電池は、電極群及び電極端子(正極端子及び負極端子)を備える。そして、電池では、電極群と電極端子との間は、リード部材等から構成される通電構造によって、電気的に接続される。近年、車両等に搭載される電池では、大電流での充電及び放電が行われることが、求められている。このため、電極群と電極端子との間の通電構造を、電流が流れ易い構造に形成した電池が、車両等に搭載されている。電池では、一対の電極端子への金属片等の接触によって一対の電極端子が電極群を間に介することなく電気的に接続される等、外部短絡が発生することがある。前述のように電流が流れ易い電池において外部短絡が発生した場合、電池に過電流が流れ、電極群等における発熱が大きくなる可能性がある。
【0003】
このため、前述のように過電流が流れた場合に、電極群と電極端子との間の通電構造の一部を溶断し、電流を遮断する電池が開発されている。ある電池では、通電構造に断面積が小さい部分が設けられ、過電流が流れると、断面積が小さい部分が溶断される。別のある電池では、通電構造を形成するリード部材の一部を、他の部分とは抵抗及び融点が異なる金属から形成される。そして、過電流が流れると、他の部分とは抵抗及び融点が異なる金属から形成され部分が、熱によって溶断される。電極群と電極端子との間の通電構造の一部での溶断によって電流が遮断される前述の電池では、電流(過電流)が遮断された後、例えばSOC(State of charge)が0%の完放電状態まで、さらに放電されることが、求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5958841号公報
【文献】特開2010-257811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、電極群と電極端子との間の通電構造の一部での溶断によって過電流が遮断された後において、放電することが可能な電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、電池は、電極群、リード部材及び電極端子を備える。電極群は、突出する集電タブを備えるリード部材は、集電タブの突出部分の根元位置とは反対側の端部に接続される。リード部材は、集電タブに比べて厚。電極端子は、集電タブとの接続部分とは異なる位置で前記リード部材が接続され、電極端子は、リード部材を間に介して、集電タブに電気的に接続される。集電タブには、根元位置とリード部材への接続位置との間に、湾曲するタブ湾曲部が形成され集電タブの根元位置とリード部材への接続位置との間の直線距離に対する根元位置から接続位置までの集電タブの延設長の比率は、3以上6以下である
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1の実施形態に係る電池を示す概略図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る電池において、集電タブの一方及びその近傍の構成を、電極群の厚さ方向の一方側から視た状態で示す概略図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る電池において、集電タブの一方及びその近傍の構成を、電極群の幅方向の一方側から視た状態で示す概略図である。
図4図4は、第1の実施形態のある変形例に係る電池において、集電タブの一方及びその近傍の構成を、電極群の幅方向の一方側から視た状態で示す概略図である。
図5図5は、実施形態に対する第1の比較構造の電池において、集電タブの一方及びその近傍の構成を、電極群の厚さ方向の一方側から視た状態で示す概略図である。
図6図6は、実施形態に対する第1の比較構造の電池において、集電タブの一方及びその近傍の構成を、電極群の幅方向の一方側から視た状態で示す概略図である。
図7図7は、実施形態に対する第2の比較構造の電池において、集電タブの一方及びその近傍の構成を、電極群の幅方向の一方側から視た状態で示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態等について図面を参照して説明する。
【0009】
図1は、実施形態の一例として第1の実施形態に係る電池1を示す。図1の実施形態では、電池1は、電極群2、外装容器3及び蓋部材5を備える。外装容器3及び蓋部材5のそれぞれは、金属から形成され、電池1の外装部材となる。外装容器3は、底壁6及び周壁7を備え、電極群2が収納される内部空洞8は、底壁6及び周壁7によって規定される。外装容器3では、内部空洞8は、底壁6が位置する側とは反対側へ向かって開口する。蓋部材5は、底壁6とは反対側の端部で周壁7に取付けられ、外装容器3の内部空洞8の開口を塞ぐ。
【0010】
電極群2は、正極11A及び負極11Bを備える。電極群2では、正極11Aと負極11Bとの間にセパレータ(図示しない)が介在する。セパレータは、電気的絶縁性を有する材料から形成され、正極11Aを負極11Bに対して電気的に絶縁する。正極11Aは、正極集電箔等の正極集電体と、正極集電体の表面に担持される正極活物質含有層(図示しない)と、を備える。正極集電体は、正極活物質含有層が未担持の部分として、正極集電タブ12Aを備える。負極11Bは、負極集電箔等の負極集電体と、負極集電体の表面に担持される負極活物質含有層(図示しない)と、を備える。負極集電体は、負極活物質含有層が未担持の部分として、負極集電タブ12Bを備える。
【0011】
前述のように電極群2は、一対の集電タブ12の一方として正極集電タブ12Aを備え、一対の集電タブ12の正極集電タブ12Aとは別の一方として負極集電タブ12Bを備える。電極群2では、正極集電タブ12Aは、負極11B及びセパレータに対して突出する。そして、負極集電タブ12Bは、正極11A及びセパレータに対して、正極集電タブ12Aが突出する側へ突出する。すなわち、一対の集電タブ12は、互いに対して同一の側に、電極群2において突出する。
【0012】
図2及び図3は、図1の電池において、集電タブ12の一方(12A又は12B)及びその近傍の構成を示す。図1乃至図3に示すように、電極群2では、集電タブ12の突出方向(矢印X1で示す方向)、及び、集電タブ12の突出方向とは反対方向(矢印X2で示す方向)が規定される。また、電極群2では、集電タブ12の突出方向に対して交差する(垂直又は略垂直な)幅方向(矢印Y1及び矢印Y2で示す方向)、及び、集電タブ12の突出方向及び幅方向の両方に対して交差する厚さ方向(矢印Z1及び矢印Z2で示す方向)が、規定される。そして、厚さ方向に沿った電極群2の寸法(電極群2の厚さ)は、集電タブ12の突出方向に沿った電極群2の寸法、及び、幅方向に沿った電極群2の寸法(電極群2の幅Wc)のそれぞれに比べて、小さい。このため、電極群2は、扁平形状に形成される。なお、図1及び図2では、厚さ方向の一方側(矢印Z1側)から視た状態で電極群2が示され、図3では、幅方向の一方側(幅方向の内側)から視た状態で電極群2が示される。
【0013】
また、一対の集電タブ12は、電極群2の幅方向について、互いに対して離れて配置される。そして、外装容器3の内部空洞8では、集電タブ12は、蓋部材5が位置する側へ、突出する。ここで、電極群2の幅方向に沿った集電タブ12(12A,12B)のそれぞれの寸法である集電タブ12のそれぞれの幅Wtを、規定する。図1乃至図3の実施形態では、電極群2の幅Wcに対する集電タブ12のそれぞれの幅Wtの比率Wt/Wcは、0.50より小さい。また、電極群2の幅Wcに対する集電タブ12のそれぞれの幅Wtの比率Wt/Wcは、0.15以上0.30以下であることが、好ましい。なお、集電タブ12のそれぞれの幅方向は、電極群2の幅方向と一致又は略一致する。
【0014】
内部空洞8では、電極群2に、電解液等の電解質(図示しない)が保持される。また、図1乃至図3の実施形態では、蓋部材5の外表面に、一対の電極端子13が取付けられる。電極端子13の一方が電池1の正極端子(13A)となり、電極端子13の他方が電池1の負極端子(13B)となる。このため、電極端子13は、互いに対して反対の極性を有する。電極端子13のそれぞれと蓋部材5の外表面との間には、絶縁部材15が、介在する。電極端子13のそれぞれは、絶縁部材15によって、蓋部材5及び外装容器3に対して電気的に絶縁される。
【0015】
また、図1乃至図3の実施形態の電池1には、一対のリード部材16及び一対のバックアップリード17が設けられる。リード部材16の一方である正極リード部材16Aは、バックアップリード17の一方である正極バックアップリード17Aを間に介して、正極集電タブ12Aに接続される。そして、正極端子13Aは、正極リード部材16Aを間に介して、正極集電タブ12Aに電気的に接続される。リード部材16の正極リード部材16Aとは別の一方である負極リード部材16Bは、バックアップリード17の正極バックアップリード17Aとは別の一方である負極バックアップリード17Bを間に介して、負極集電タブ12Bに接続される。そして、負極端子13Bは、負極リード部材16Bを間に介して、負極集電タブ12Bに電気的に接続される。
【0016】
前述のように、一対の電極端子13のそれぞれは、リード部材16の対応する一方、バックアップリード17の対応する一方、及び、集電タブ12の対応する一方によって形成される通電構造によって、電極群2に電気的に接続される。内部空洞8では、集電タブ12、バックアップリード17、及びリード部材16のそれぞれは、1つ以上の絶縁部材(図示しない)によって、外装容器3及び蓋部材5に対して電気的に絶縁される。
【0017】
電極群2における突出部分となる集電タブ12のそれぞれは、根元位置E1及び突出端を備える。集電タブ12のそれぞれは、突出部分の根元位置E1とは反対側の端部の接続位置E2で、リード部材16の対応する一方へ接続される。このため、集電タブ12のそれぞれは、突出端又はその近傍で、リード部材16の対応する一方に接続される。また、リード部材16のそれぞれは、集電タブ12の対応する一方への接続部分とは異なる位置で、電極端子13の対応する一方へ接続される。このため、リード部材16のそれぞれでは、集電タブ12の対応する一方への接続部分は、電極端子13の対応する一方への接続部分から離れる。
【0018】
集電タブ12のそれぞれでは、前述の幅方向(電極群2の幅方向)、及び、根元位置E1から突出端(接続位置E2)までの延設方向の両方に対して交差する(垂直又は略垂直な)厚さ方向が、規定される。集電タブ12のそれぞれでは、正極集電体及び負極集電体の対応する一方によって形成される複数の帯状部18が、厚さ方向に重ねられた状態で結束される。集電タブ12のそれぞれでは、厚さ方向について両最外層の帯状部18の外表面の間の距離が、厚さTtとして規定される。
【0019】
また、リード部材16のそれぞれは、例えば、板状に形成され、厚さTlを有する。本実施形態では、リード部材16のそれぞれは、集電タブ12のそれぞれに比べて厚い。すなわち、集電タブ12のそれぞれの厚さTtに対するリード部材16のそれぞれの厚さTlの比率Tl/Ttは、1より大きい。また、集電タブ12のそれぞれの厚さTtに対するリード部材16のそれぞれの厚さTlの比率Tl/Ttは、1.4以上3.0以下であることが、好ましい。
【0020】
図1乃至図3の実施形態では、バックアップリード17のそれぞれは、突出部分の根元位置E1とは反対側の端部で、集電タブ12の対応する一方に取付けられる。すなわち、集電タブ12のそれぞれには、突出端及びその近傍にバックアップリード17の対応する一応が取付けられ、リード部材16の対応する一方への接続位置E2及びその近傍に、バックアップリード17の対応する一応が取付けられる。また、集電タブ12のそれぞれは、バックアップリード17の対応する一応によって、厚さ方向の両側から挟まれる。すなわち、バックアップリード17のそれぞれは、集電タブ12の対応する一方を挟んだ状態で、集電タブ12の対応する一方に取付けられる。
【0021】
また、図1乃至図3の実施形態では、リード部材16のそれぞれは、バックアップリード17対応する一方の一部を集電タブ12の対応する一方との間で挟んだ状態で、集電タブ12の対応する一方の接続位置E2に接続される。そして、リード部材16のそれぞれは、集電タブ12の対応する一方との接続部分において、バックアップリード17の対応する一方へ接合される。すなわち、リード部材16のそれぞれでは、集電タブ12の対応する一方との接続部分において、バックアップリード17の対応する一方への接合部21が形成される。
【0022】
また、集電タブ12のそれぞれでは、突出部分の根元位置E1とリード部材16の対応する一方への接続位置E2との間に、タブ湾曲部22が形成される。集電タブ12のそれぞれは、タブ湾曲部22において湾曲される。集電タブ12のそれぞれでは、タブ湾曲部22において延設方向が変更される。例えば、集電タブ12のそれぞれは、タブ湾曲部22において折返される。
【0023】
ここで、集電タブ12のそれぞれにおいて、突出部分の根元位置E1とリード部材16の対応する一方への接続位置E2との間の直線距離D、及び、根元位置E1から接続位置E2までの延設長Ltを規定する。集電タブ12のそれぞれに前述のタブ湾曲部22が設けられるため、集電タブ12のそれぞれでは、直線距離Dに対する延設長Ltの比率Lt/Dは、1より大きい。また、集電タブ12のそれぞれでの直線距離Dに対する延設長Ltの比率Lt/Dは、3以上6以下であることが、好ましい。
【0024】
また、図4は、第1の実施形態の変形例の電池1において、集電タブ12の一方(12A又は12B)及びその近傍の構成を示す。図4では、幅方向の一方側から視た状態で電極群2が示される。図4の変形例の電池1では、バックアップリード17が設けられない。本変形例でも、リード部材16のそれぞれは、集電タブ12の対応する一方の接続位置E2に接続される。そして、リード部材16のそれぞれは、集電タブ12の対応する一方への接続部分とは異なる位置で、電極端子13の対応する一方へ接続される。ただし、本変形例では、リード部材16のそれぞれは、集電タブ12の対応する一方との接続部分において、集電タブ12の対応する一方に直接的に接合される。すなわち、リード部材16のそれぞれでは、集電タブ12の対応する一方との接続部分において、集電タブ12の対応する一方への接合部23が形成される。
【0025】
本変形例でも、集電タブ12のそれぞれにタブ湾曲部22が形成される。また、本変形例でも、前述の比率Wt/Wc,Tl/Tt,Lt/Dのそれぞれは、第1の実施形態等と同様の値になる。前述の比率Wt/Wc,Tl/Tt,Lt/Dのそれぞれの好ましい範囲も、第1の実施形態等と同様になる。
【0026】
また、ある変形例では、電極群2と正極端子13Aとの間の通電構造、及び、電極群2と負極端子13Bとの間の通電構造の一方のみが、前述の実施形態等と同様に形成される。したがって、実施形態等では、電極群2と正極端子13Aとの間の通電構造、及び、電極群2と負極端子13Bとの間の通電構造の少なくとも一方が、前述の実施形態等と同様に形成されればよい。
【0027】
以下、電池1等の実施形態に係る電池の構成要素等について、詳細に説明する。
【0028】
1)正極及び負極
正極は、前述のように、正極集電箔等の正極集電体と、正極集電体の表面に担持される正極活物質含有層と、を備える。正極活物質含有層は、正極集電体の片面又は両面に塗工される。正極活物質含有層は、正極活物質を備え、結着剤及び導電剤を任意に含んでもよい。正極活物質としては、これらに限定されるものではないが、リチウムイオンを吸蔵放出できるカルコゲン化合物及びポリマー等が挙げられ、カルコゲン化合物としては、酸化物及び硫化物が挙げられる。
【0029】
正極活物質となる酸化物としては、リチウム含有ニッケルコバルトマンガン酸化物が挙げられ、リチウム含有ニッケルコバルトマンガン酸化物としては、例えば、LiNiCoMn(0<w≦1、x+y+z=1である)で表される化合物、及び、Li1-sNi1-t-u-vCoMnM1(M1はMg、Al、Si、Ti、Zn、Zr、Ca及びSnからなる群より選択される1以上であり、かつ、-0.2<s<0.5,0<t<0.5、0<u<0.5、0≦v<0.1、t+u+v<1である)で表される化合物を、挙げることができる。また、その他の酸化物として、例えば、リチウム含有コバルト酸化物(例えば、LiCoO)、二酸化マンガン、リチウムマンガン複合酸化物(例えば、LiMn及びLiMnO)、リチウム含有ニッケル酸化物(例えば、LiNiO)、リチウム含有ニッケルコバルト酸化物(例えば、LiNi0.8Co0.2)、リチウム含有鉄酸化物、及び、リチウムを含むバナジウム酸化物を、正極活物質として用いることができる。また、正極活物質となる硫化物としては、二硫化チタン及び二硫化モリブデン等が挙げられる。正極活物質としては、前述の材料から、1種類又は2種類以上を用いることができる。
【0030】
正極活物質含有層に含まれる導電剤としては、これらに限定されるものではないが、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、及び、カーボンナノファイバー等を挙げることができる。導電剤としては、前述の材料から1種を選択してもよく、前述の材料から2種以上を選択してもよい。
【0031】
正極活物質含有層に含まれる結着材としては、これらに限定されるものでないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE:polytetrafluoro ethylene)、ポリフッ化ビニリデン(PVdf:polyvinylidene fluoride)、フッ素系ゴム、スチレン-ブタジエンゴム(SBR:styrene-butadiene rubber)、ポリプロピレン(PP:polypropylene)、ポリエチレン(PE:polyethylene)、アクリル系共重合体を主成分とするバインダ、及び、カルボキシメチルセルロース(CMC:carboxymethyl cellulose)を挙げることができる。結着剤としては、前述の材料から1種を選択してもよく、前述の材料から2種以上を選択してもよい。また、カルボキシメチルセルロースは、増粘剤としても作用する。
【0032】
正極活物質含有層における正極活物質、導電剤及び結着剤の配合割合は、正極活物質が75質量%以上96質量%以下、導電剤が3質量%以上20質量%以下、結着剤が1質量%以上7質量%以下にすることが好ましい。
【0033】
負極は、前述のように、負極集電箔等の負極集電体と、負極集電体の表面に担持される負極活物質含有層と、を備える。負極活物質含有層は、負極集電体の片面又は両面に塗工される。負極活物質含有層は、負極活物質を備え、結着剤及び導電剤を任意に含んでもよい。負極活物質としては、これらに限定されるものではないが、金属、金属合金、金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、黒鉛質材料、及び、炭素質材料等が挙げられる。
【0034】
負極活物質となる金属としては、例えば、アルミニウム及びリチウム等を挙げることができる。また、負極活物質となる金属合金としては、例えば、アルミニウム合金、マグネシウム合金及びリチウム合金等を挙げることができる。金属以外にも、例えば、シリコン等の半金属を、負極活物質として用いることができる。
【0035】
負極活物質となる金属酸化物としては、例えば、チタンを含有する酸化物を挙げることができる。チタンを含有する酸化物としては、リチウムチタン酸化物、単斜晶型ニオブチタン複合酸化物、及び、直方晶型(orthorhombic)チタン含有複合酸化物を挙げることができる。また、リチウムチタン酸化物としては、例えば、スピネル型のチタン酸リチウム(LiTi12)等が挙げられる。また、金属酸化物の他の例としては、TiとともにP、V、Sn、Cu、Ni、Nb及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素を含有する金属複合酸化物を挙げることができる。また、負極活物質となる酸化物として、例えば、SnB0.40.63.1等のアモルファススズ酸化物、SnSiO等のスズ珪素酸化物、WO等のタングステン酸化物、及び、SiO等の珪素含有化合物等が挙げられる。
【0036】
単斜晶型ニオブチタン複合酸化物の例としては、LiTi1-bM1Nb2-cM27+δ(M1は、Zr、Si及びSnからなる群より選択される少なくとも1つであり、M2は、V、Ta及びBiからなる群より選択される少なくとも1つであり、かつ、0≦a≦5、0≦b<1、0≦c<2、-0.3≦δ≦0.3である)で表される化合物、及び、LiTi1-bM3b+cNb2-c7-δ(M3は、Mg、Fe、Ni、Co、W、Ta及びMoより選択される少なくとも1つであり、0≦a≦5、0≦b<1、0≦c<2、-0.3≦δ≦0.3である)で表される化合物が、挙げられる。単斜晶型ニオブチタン複合酸化物の具体例として、LiNbTiO(0≦a≦5)が挙げられる。
【0037】
直方晶型チタン含有複合酸化物の例としては、Li2+dM42-eTi6-fM514+σ(M4は、Sr、Ba、Ca、Mg、Na、Cs、Rb及びKからなる群より選択される少なくとも1つであり、M5は、Zr、Sn、V、Nb、Ta、Mo、W、Y、,Fe、Co、Cr、Mn、Ni及びAlからなる群より選択される少なくとも1つであり、0≦d≦6、0≦e<2、0≦f<6、0≦g<6、-0.5≦σ≦0.5である)で表される化合物が挙げられる。直方晶型チタン含有複合酸化物の具体例としては、Li2+aNaTi14(0≦d≦6)が挙げられる。
【0038】
TiとともにP、V、Sn、Cu、Ni、Nb及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素を含有する金属複合酸化物としては、例えば、TiO-P、TiO-V、TiO-P-SnO、TiO-P-Me(Meは、Cu、Ni及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素である)等を挙げることができる。
【0039】
負極活物質となる金属硫化物としては、例えば、TiS等の硫化チタン、MoS等の硫化モリブデン、及び、FeS、FeS及びLiFeS(添字hは、0.9≦h≦1.2)等の硫化鉄が挙げられる。
【0040】
負極活物質となる金属窒化物としては、例えば、リチウムコバルト窒化物等のリチウム窒化物が挙げられ、リチウムコバルト窒化物としては、例えば、LiCoN(0<j<4、0<k<0.5である)が挙げられる。また、負極活物質となる炭素質材料としては、メソフェーズピッチ系カーボンファイバー(MCF)等のカーボンファイバーが挙げられる。
【0041】
負極活物質含有層に含まれる導電剤は、正極活物質含有層に含まれる導電剤と同一の材料を用いることができる。また、負極活物質含有層に含まれる結着剤は、正極活物質含有層に含まれる結着剤と同一の材料を用いることができる。また、結着剤としてカルボキシメチルセルロースを用いる場合は、カルボキシメチルセルロースは、増粘剤としても作用する。
【0042】
負極活物質含有層における負極活物質、導電剤及び結着剤の配合割合は、負極活物質が70質量%以上96質量%以下、導電剤が2質量%以上20質量%以下、結着剤が2質量%以上10質量%以下にすることが好ましい。
【0043】
正極集電体及び負極集電体のそれぞれとしては、アルミニウム及び銅等の金属を含む箔を使用することができる。金属を含む箔としては、1種類の金属単体の箔に加えて、アルミニウム合金箔等の金属合金の箔が、挙げられる。集電体のそれぞれは、厚さが10μm~20μm程度である。また、正極集電体には、正極活物質含有層が塗布されていない部分が形成され、負極集電体には、負極活物質含有層が塗布されていない部分が形成される。
【0044】
2)セパレータ
セパレータとしては、これらに限定されるものではないが、微多孔性の膜、織布、不織布及び無機物膜を用いることができる。また、セパレータとしては、前述の部材の1種類又は2種類以上を積層した積層物を用いることができる。セパレータは、電極(正極及び負極)のいずれとも別体に形成されもよく、電極の一方と一体に形成されてもよい。セパレータは、不織布であることが好ましい。セパレータを形成する材料としては、繊維及びセラミックス等を用いることができる。繊維としては、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン、エチレン-プロピレン共重合ポリマー、エチレン-ブテン共重合ポリマー、セルロース、ポリエチレンテレフタレート(PET)、及び、ポリアミドイミド(PAI)等が挙げられる。また、セラミックスとしては、アルミナ、チタニア、酸化マグネシウム、及び、チタン酸リチウム等が挙げられる。
【0045】
セパレータの厚さは、2μm以上15μm以下であることが好ましい。また、セパレータの空隙率は、50%以上80%以下であることが好ましい。そして、セパレータは、不織布であり、かつ、空隙率が50%以上80%以下であることが、さらに好ましい。
【0046】
3)電極群
電極群は、捲回型又は積層型に形成される。捲回型の電極群では、正極活物質含有層と負極活物質含有層との間でセパレータが挟まれた状態で、正極、負極及びセパレータが捲回軸を中心として捲回される。積層型の電極群では、複数の正極及び複数の負極が交互に積層され、正極と負極との間にはセパレータが設けられる。
【0047】
正極集電体には、正極活物質含有層が未担持の部分として複数の帯状部が形成され、複数の帯状部が重ねられた状態で結束された部分として、正極集電タブが形成される。また、負極集電体には、負極活物質含有層が未担持の部分として複数の帯状部が形成され、複数の帯状部が重ねられた状態で結束された部分として、負極集電タブが形成される。正極集電タブ及び負極集電タブは、電極群において、互いに対して同一の側に突出する。また、集電タブのそれぞれは、前述した突出部分の根元位置及び突出端を有する。正極集電タブ及び負極集電タブは、電極群の幅方向について、互いに対して離れて配置される。また、捲回構造の電極群では、捲回軸に沿う方向の一方側へ、集電タブのそれぞれが突出する。
【0048】
また、前述のように電極群の幅Wc、及び、集電タブのそれぞれの幅Wtを規定する。比率Wt/Wcは、0.50より小さい。また、集電タブの少なくとも一方において、比率Wt/Wcが0.15以上0.30以下であることが、好ましい。そして、一対の集電タブのそれぞれにおいて、比率Wt/Wcが0.15以上0.30以下であることが、さらに好ましい。
【0049】
4)電解質
電解質は、電極群に保持(含浸)される。電解質としては、電解液を用いることができる。電解液は、電解質塩を有機溶媒に溶解させた非水電解液であってもよく、水溶液等の水系電解液であってもよい。
【0050】
非水電解液に用いられる電解質塩としては、例えば、過塩素酸リチウム(LiClO)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF)、及び、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCFSO)等のリチウム塩が、挙げられる。電解質塩は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。電解質塩の濃度、すなわち、有機溶媒に対する電解質塩の溶解量は、0.5 mol/L以上3 mol/L以下であることが好ましい。
【0051】
非水電解液に用いられる有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC:ethylene carbonate)、プロピレンカーボネート(PC:propylene carbonate)、ブチレンカーボネート(BC:butylene carbonate)、ジメチルカーボネート(DMC:dimethyl carbonate)、ジエチルカーボネート(DEC:diethyl carbonate)、エチルメチルカーボネート(EMC:ethyl methyl carbonate)、γ-ブチロラクトン(γ-BL:γ-butyrolactone)、スルホラン(SL:sulfolane)、アセトニトリル(AN:acetonitrile)、1,2-ジメトキシエタン(1,2-dimethoxy ethane)、1,3-ジメトキシプロパン(1,3-dimethoxy propane)、ジメチルエーテル(dimethyl ether)、テトラヒドロフラン(THF:tetrahydrofuran)、及び、2-メチルテトラヒドロフラン(2MeTHF:2-methyl tetrahydrofuran)等が挙げられる。有機溶媒は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0052】
また、電解質として、ゲル状電解質を用いてもよい。ゲル状電解質としては、ゲル状非水電解質が挙げられる。ゲル状非水電解質は、非水電解液と高分子材料とを複合化することにより調製される。ゲル状非水電解質に用いられる高分子材料の例には、ポリフッ化ビニリデン(PVdF:polyvinylidene fluoride)、ポリアクリロニトリル(PAN:polyacrylonitrile)、ポリエチレンオキサイド(PEO:polyethylene oxide)、及び、これらの混合物が挙げられる。
【0053】
また電解質としては、リチウムイオンを含有した常温溶融塩(イオン性融体)、高分子固体電解質、及び、無機固体電解質等を用いてもよい。
【0054】
常温溶融塩(イオン性融体)は、有機物カチオンとアニオンとの組合せからなる有機塩の中で、常温(15℃以上25℃以下)で液体として存在し得る化合物を指す。常温溶融塩には、単体で液体として存在する常温溶融塩、電解質塩と混合させることで液体となる常温溶融塩、有機溶媒に溶解させることで液体となる常温溶融塩、及び、これらの混合物が含まれる。二次電池に用いられる常温溶融塩の融点は、例えば、25℃以下である。また、有機物カチオンは、一般に4級アンモニウム骨格を有する。
【0055】
高分子固体電解質は、電解質塩を高分子材料に溶解し、固体化することによって調製される。無機固体電解質は、Liイオン伝導性を有する固体物質である。高分子固体電解質及び無機固体電解質等の固体電解質が電解質として用いられる場合、電極群において、固体電解質が、セパレータの代わりに、正極と負極との間に介在する。この場合、固体電解質により、正極が負極に対して電気的に絶縁される。
【0056】
5)外装部材
外装部材としては、例えば、ラミネートフィルムから形成される外装部材、又は、金属製の外装部材を用いることができる。金属製の外装部材では、壁の厚さは、例えば、1 mm以下であり、0.5 mm以下であることが好ましく、0.2 mm以下であることがさらに好ましい。金属製の外装部材は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金等から形成される。アルミニウム合金は、マグネシウム、亜鉛、及び、ケイ素等の元素を含むことが好ましい。アルミニウム合金が鉄、銅、ニッケル、及び、クロム等の遷移金属を含む場合、遷移金属の含有量は100質量ppm以下であることが好ましい。なお、金属製の外装部材の一例として、図1の実施形態等と同様に、外装容器及び蓋部材から形成されるものが挙げられる。
【0057】
外装部材として用いられるラミネートフィルムの厚さは、例えば、0.5 mm以下であり、0.2 mm以下であることが好ましい。ラミネートフィルムとしては、複数の樹脂層及び金属層を備える多層フィルムが用いられ、多層フィルムでは、複数の樹脂層の間に金属層が介在する。樹脂層は、例えば、ポリプロピレン(PP:polypropylene)、ポリエチレン(PE:polyethylene)、ナイロン、及び、ポリエチレンテレフタレート(PET:polyethylene terephthalate)等の高分子材料を含む。金属層は、軽量化の観点から、アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔から形成されることが好ましい。ラミネートフィルムは、熱融着によりシールを行うことにより、外装部材の形状に成形され得る。
【0058】
外装部材の形状は、特に限定されない。外装部材の形状は、例えば、扁平型(薄型)、角型、円筒型、コイン型、又は、ボタン型等であってもよい。外装部材は、電池の寸法及び電池の用途に応じて適宜選択することができる。
【0059】
6)電極端子
電極端子は、正極集電タブに電気的に接続される正極端子、及び、負極集電タブに電気的に接続される負極端子を備える。正極端子は、リチウムの酸化還元電位に対し3V以上4.5V以下の電位範囲(vs.Li/Li)において電気的に安定であり、かつ、導電性を有する材料から形成することができる。正極端子の材料としては、アルミニウム、又は、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu及びSiからなる群より選択される少なくとも1つを含むアルミニウム合金が挙げられる。正極端子は、正極集電体(正極集電タブ)と同一の材料から形成されることが好ましい。
【0060】
負極端子は、前述した負極活物質のLi吸蔵放出電位において電気化学的に安定であり、かつ、導電性を有する材料から形成することができる。負極端子の材料としては、銅、ニッケル、ステンレス、又は、アルミニウムが挙げられるとともに、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、及びSiからなる群より選択される少なくとも1つを含むアルミニウム合金が挙げられる。負極端子の材料としては、アルミニウム又はアルミニウム合金を用いることが好ましい。負極端子は、負極集電体と同一の材料から形成されることが好ましい。
【0061】
7)電極群と電極端子との間の通電構造
電極群と正極端子との間を電気的に接続する正極側の通電構造は、正極集電タブ及び正極リード部材を備える。また、電極群と負極端子との間を電気的に接続する負極側の通電構造は、負極集電タブ及び負極リード部材を備える。正極集電タブ及び負極集電タブは、前述のように、電極群において、互いに対して同一の側に突出する。集電タブのそれぞれは、突出部分の根元位置とは反対側の端部で、正極リード部材及び負極リード部材の対応する一方に接続される。
【0062】
ある一例では、図3の実施形態等と同様に、集電タブのそれぞれにおいて、突出部分の根元位置とは反対側の端部に、バックアップリードが取付けられる。この場合、集電タブのそれぞれは、バックアップリードによって、挟まれる。そして、リード部材のそれぞれは、バックアップリードの一部を集電タブの対応する一方との間で挟んだ状態で、集電タブの対応する一方に接続される。そして、リード部材のそれぞれは、超音波溶接等によって、バックアップリードへ接合される。このため、リード部材のそれぞれには、集電タブの対応する一方への接続部分に、バックアップリードとの接合部が形成される。
【0063】
別のある一例では、図4の変形例等と同様に、リード部材のそれぞれは、超音波溶接等によって、集電タブの対応する一方に直接的に接合される。この場合、リード部材のそれぞれには、集電タブの対応する一方への接続部分に、集電タブの対応する一方との接合部が形成される。
【0064】
リード部材のそれぞれは、集電タブの対応する一方との接続部分とは異なる位置で、正極端子及び負極端子の対応する一方に接続される。ある一例では、抵抗溶接によって電極端子のそれぞれをリード部材の対応する一方へ接合し、電極端子のそれぞれがリード部材の対応する一方へ接続される。
【0065】
リード部材は、金属等の導電性を有する材料から形成される。正極リード部材は、正極集電タブと同一の材料から形成されることが好ましく、負極リード部材は、負極集電タブと同一の材料から形成されることが好ましい。これにより、集電タブのそれぞれとリード部材の対応する一方との間の接続部分において、電気抵抗が低減される。
【0066】
バックリードが設けられる場合、バックアップリードは、金属等の導電性を有する材料から形成される。正極集電タブに正極バックアップリードが取付けられる場合、正極バックアップリード及び正極リード部材は、正極集電タブと同一の材料から形成されることが好ましい。これにより、正極集電タブと正極バックアップリードとの間の接触抵抗、及び、正極リード部材と正極バックアップリードとの間の接触抵抗が低減され、正極集電タブと正極リード部材との間の接続部分において、電気抵抗が低減される。同様に、負極集電タブに負極バックアップリードが取付けられる場合、負極バックアップリード及び負極リードは、負極集電タブと同一の材料から形成されることが好ましい。これにより、負極集電タブと負極リード部材との間の接続部分において、電気抵抗が低減される。
【0067】
また、電極群と正極端子との間を電気的に接続する正極側の通電構造では、正極集電タブ、正極リード部材、及び、正極端子の全てが同一の材料から形成されることが好ましい。そして、正極バックアップリードが設けられる場合は、正極集電タブ、正極リード部材、正極端子、及び、正極バックアップリードの全てが同一の材料から形成されることが好ましい。同様に、電極群と負極端子との間を電気的に接続する負極側の通電構造では、負極集電タブ、負極リード部材、及び、負極端子の全てが同一の材料から形成されることが好ましい。そして、負極バックアップリードが設けられる場合は、負極集電タブ、負極リード部材、負極端子、及び、負極バックアップリードの全てが同一の材料から形成されることが好ましい。
【0068】
また、前述のように、集電タブのそれぞれの厚さTt、及び、リード部材のそれぞれの厚さTlを規定する。正極側の通電構造及び負極側の通電構造の少なくとも一方では、リード部材は、集電タブに比べて厚い。そして、通電構造の少なくとも一方では、比率Tl/Ttが1.4以上3.0以下であることが、好ましい。そして、正極側及び負極側の通電構造のそれぞれにおいて、比率Tl/Ttが1.4以上3.0以下であることが、さらに好ましい。
【0069】
また、正極集電タブ及び負極集電タブの少なくとも一方では、突出部分の根元位置とリード部材の対応する一方への接続位置との間に、タブ湾曲部が形成される。集電タブは、タブ湾曲部において湾曲される。なお、一対の集電タブのそれぞれに、タブ湾曲部が設けられることが、好ましい。また、通電構造のそれぞれについて、前述のように直線距離Dを規定し、集電タブのそれぞれについて、前述のように延設長Ltを規定する。正極側の通電構造及び負極側の通電構造の少なくとも一方では、比率Lt/Dが1より大きい。そして、一対の通電構造の少なくとも一方では、比率Lt/Dが3以上6以下になることが、好ましい。そして、一対の通電構造のそれぞれにおいて、比率Lt/Dが3以上6以下になることが、さらに好ましい。
【0070】
なお、電極群の幅Wc、及び、集電タブのそれぞれの幅Wt等は、例えば、以下のようにして測定可能である。以下の方法は、電解質に非水電解質が用いられる電池である非水電解質電池において、電極群の幅Wc等を測定する際に、用いられる。幅Wc,Wt等の測定においては、測定の前に、以下の前処理が行われる。
【0071】
測定前の前処理では、まず、アルゴンで満たされたグローブボックス内で非水電解質電池を分解し、測定対象である電極(正極又は負極)を非水電解質電池から取出す。以下、測定対象である電極を対象電極とする。次に、取出した対象電極を、メチルエチルカーボネート(MEC)で洗浄する。そして、洗浄した対象電極を、温度が25℃、かつ、ゲージ圧が-90Paの雰囲気下で、乾燥させる。そして、乾燥させた対象電極を、以下のようにして測定及び分析する。
【0072】
集電タブの幅Wtの測定では、前述した前処理によって対象電極を取出す。そして、対象電極において、活物質含有層(正極活物質含有層又は負極活物質含有層)が塗布されていない部分の幅(電極群の幅方向に沿った寸法)Wtを測定する。なお、集電タブの幅方向は、前述のように規定され、集電タブの突出方向に対して交差する(垂直又は略垂直である)。測定は、デジタルノギスを用いて行われ、小数点第二位までの寸法を、単位をmmとして測定する。
【0073】
電極群の幅Wcの測定では、電極群を外装部材から取出す。そして、取出した電極群を、有機ドラフトの中で、電解質が全て揮発するまで1週間程度静置する。その後、電極群の厚さ方向について両側から電極群を平板で挟む等し、電極群に400gの荷重を掛ける。そして、400gの荷重が掛けられた状態で、電極群の幅(電極群の幅方向に沿った電極群の寸法)Wcを測定する。なお、電極群の幅方向は、前述のように規定され、集電タブの突出方向に対して交差する(垂直又は略垂直である)。また、電極群の幅方向は、電極群の厚さ方向に対して交差する(垂直又は略垂直である)。測定は、デジタルノギスを用いて行われ、小数点第二位までの寸法を、単位をmmとして測定する。
【0074】
また、電極群と電極端子との間の通電構造について、前述の実施形態等に対する第1の比較構造を図5及び図6に示す。第1の比較構造でも、前述の実施形態等と同様に、集電タブ12の突出方向(矢印X1で示す方向)、電極群2の幅方向(矢印Y1及び矢印Y2で示す方向)、及び、電極群2の厚さ方向(矢印Z1及び矢印Z2で示す方向)等が、規定される。図5では、厚さ方向の一方側(矢印Z1側)から視た状態で電極群2が示され、図6では、幅方向の一方側(幅方向の内側)から視た状態で電極群2が示される。また、第1の比較構造でも、前述の実施形態等と同様に、集電タブ12は、突出部分の根元位置E1、及び、突出端又はその近傍の接続位置E2を有し、集電タブ12では、根元位置E1と接続位置E2との間にタブ湾曲部22が形成される。
【0075】
ただし、第1の比較構造では、通電構造に、導電材料から形成される中間リード25が、設けられる。そして、集電タブ12は、接続位置E2において、中間リード25に接続される。したがって、中間リード25は、集電タブ12との接続部分において、バックアップリード17又は集電タブ12に、超音波溶接等によって接合される。図5及び図6の構造では、通電構造にバックアップリード17が設けられ、中間リード25には、集電タブ12との接続部分に、バックアップリード17との接合部27が形成される。
【0076】
また、第1の比較構造では、中間リード25は、電極群2の厚さ方向について、リード部材16に隣接する。そして、中間リード25及びリード部材16は、電極群2の厚さ方向に重ねられた状態で、配置される。中間リード25は、集電タブ12との接続部分とは異なる位置(離れた位置)で、リード部材16に接続される。第1の比較構造では、中間リード25は、電極群2の幅方向についての両縁のそれぞれで、抵抗溶接等によって、リード部材16に接続される。そして、リード部材16には、電極群2の幅方向について一方側の縁に、中間リード25との接合部26Aが形成され、電極群2の幅方向について接合部26Aとは反対側の縁に、中間リード25との接合部26Bが形成される。また、第1の比較構造では、リード部材16は、中間リード25との接続部分とは異なる位置、すなわち、接合部26A,26Bから離れた位置で、電極端子13に接続される。
【0077】
第1の比較構造では、中間リード25が設けられる。このため、電極群と電極端子との間の通電構造において、電流経路の経路長が、前述の実施形態等に比べて、長い。このため、第1の比較構造では、通電構造の電気抵抗が、前述の実施形態等に比べて、高い。したがって、第1の比較構造の電池では、前述の実施形態等に比べて、出力特性が低下する可能性がある。
【0078】
また、電池では、一対の電極端子への金属片等の接触によって一対の電極端子が電極群を間に介することなく電気的に接続される等、外部短絡が発生することがある。電池において前述のように外部短絡が発生した場合、電池に過電流が流れる可能性がある。
【0079】
第1の比較構造では、リード部材16の中間リード25との接続部分(接合部26A,26B)のそれぞれにおいて、リード部材16と中間リード25との接触面積は小さい。このため、外部短絡等によって電池1に過電流が流れると、集電タブ12が溶断される前に、リード部材16の中間リード25との接合部26A,26Bが溶断され、リード部材16が中間リード25に接続されない状態となる。これにより、電極群2は、電極端子13に電気的に接続されていない状態になる。リード部材16の中間リード25との接合部26A,26Bが溶断された場合、電池1をしばらくの時間静置しても、リード部材16が中間リード25に融着されない。このため、リード部材16の中間リード25との接合部26A,26Bが溶断されてからしばらくの時間が経過しても、電極群2が電極端子13に電気的に接続されていない状態が、維持される。
【0080】
なお、第1の比較構造では、中間リード25が設けられるため、前述の実施形態等に比べて、リード部材16が薄く形成される。例えば、リード部材16の厚さTlは、集電タブ12の厚さTtと、同一又は略同一になる。この場合、集電タブ12の厚さTtに対するリード部材16の厚さTlの比率Tl/Ttは、1又はほぼ1になる。
【0081】
また、電極群と電極端子との間の通電構造について、前述の実施形態等に対する第2の比較構造を図7に示す。図7では、幅方向の一方側(幅方向の内側)から視た状態で電極群2が示される。第2の比較構造では、集電タブ12にタブ湾曲部22が形成されないことを除き、前述の実施形態等と同様に、通電構造が形成される。第2の比較構造では、タブ湾曲部22が設けられないため、集電タブ12は、根元位置E1から接続位置E2まで、真直ぐ又は略真直ぐに延設される。
【0082】
ここで、集電タブ12の根元位置E1と集電タブ12のリード部材16への接続位置E2との間の直線距離D、及び、根元位置E1から接続位置E2までの集電タブ12の延設長Ltを、前述のように規定する。第2の比較構造では、集電タブ12にタブ湾曲部22が設けられないため、直線距離Dは、延設長Ltと同一又は略同一の大きさになる。したがって、直線距離Dに対する延設長Ltの比率Lt/Dは、1又はほぼ1になる。
【0083】
第2の比較構造では、前述の実施形態等と同様に、リード部材16は、集電タブ12に比べて厚い。このため、外部短絡等によって電池1に過電流が流れると、リード部材16等が溶断される前に、集電タブ12が溶断される。これにより、電極群2は、電極端子13に電気的に接続されていない状態になる。ここで、第2の比較構造では、集電タブ12にタブ湾曲部22が設けられず、直線距離D1は、延設長Ltと同一又は略同一の大きさになる。このため、集電タブ12が溶断された後、電池1をしばらくの時間静置しても、集電タブ12の溶断部分は融着されない。このため、集電タブ12が溶断されてからしばらくの時間が経過しても、電極群2が電極端子13に電気的に接続されていない状態が、維持される。
【0084】
前述の実施形態等では、電極群2と電極端子13との間の通電構造(例えば、正極側及び負極側の通電構造の少なくとも一方)において、リード部材16が、集電タブ12より厚く形成される。このため、電池1に過電流が流れた場合には、リード部材16に比べて集電タブ12が、熱によって溶断され易い。
【0085】
また、集電タブ12は、根元位置E1とは反対側の端部の接続位置E2で、リード部材16に接続され、リード部材16は、集電タブ12への接続位置とは異なる位置で電極端子13に接続される。このため、実施形態等の通電構造では、第1の比較構造の中間リード25等は設けられない。したがって、実施形態等の通電構造では、第1の比較構造におけるリード部材16の中間リード25との接合部26A,26B等、過電流によって集電タブ12より溶断され易い部分は、形成されない。
【0086】
前述のような構成であるため、実施形態等の通電構造では、電池1に過電流が流れた場合に、集電タブ12が、熱によって溶断される。これにより、電池1において過電流が遮断され、電極群2等において発熱が大きくなることが、適切に抑制される。
【0087】
また、実施形態等の通電構造では、集電タブ12に、タブ湾曲部22が設けられる。すなわち、集電タブ12では、直線距離Dに対する延設長Ltの前述の比率Lt/Dは、1より大きい。このような構成であるため、過電流によって集電タブ12が前述のように溶断された後、電池1をしばらくの時間静置すると、電池1で発生した熱が放熱され、集電タブ12の溶断部分が融着される。これにより、集電タブ12が溶断されてからしばらくの時間が経過すると、電極群2が電極端子13に再び電気的に接続された状態になる。したがって、集電タブ12の溶断によって過電流が遮断された後において、電池1から放電することが可能になる。これにより、電流(過電流)が遮断された後、例えば、SOC(State of charge)が0%の完放電状態まで電池1を放電してから、電池1を回収可能になり、より安全に電池1を回収可能になる。
【0088】
また、電極群2と電極端子13との間の通電構造のそれぞれでは、集電タブ12の厚さTtに対するリード部材16の厚さTlの比率Tl/Ttを1.4以上にすることにより、電気抵抗がさらに低下する。したがって、一対の通電構造の少なくとも一方において比率Tl/Ttを1.4以上にすることにより、電池1の通常の使用時において、電池1に流れる電流を大きくすることが可能になり、電池1の出力特性及び入力特性が向上する。また、一対の通電構造の両方において比率Tl/Ttを1.4以上にすることにより、通常の使用時における電池の出力特性及び入力特性が、さらに向上する。また、通電構造のそれぞれにおいてTl/Ttを1.4以上にすることにより、過電流が流れた際に、集電タブ12のそれぞれにおいて、複数の帯状部18の間に空隙が発生することが有効に防止される。これにより、過電流が流れた際に、集電タブ12のそれぞれからの放熱が抑制され、集電タブ12が溶断する前にリード部材16が溶断すること等が有効に防止される。
【0089】
また、一対の通電構造の少なくとも一方において、前述の比率Tl/Ttを3.0以下にすることにより、集電タブ12が前述のように溶断するまでに電池1に流れる過電流が、抑制される。これにより、過電流が遮断されるまでに電池1で発生する熱量が、抑制される。また、一対の通電構造の両方において比率Tl/Ttを3.0以下にすることにより、過電流が遮断されるまでに電池1で発生する熱量が、さらに抑制される。また、通電構造のそれぞれにおいてTl/Ttを3.0以下にすることにより、電池1の製造において、集電タブ12のそれぞれをリード部材16の対応する一方に溶接等によって接続し易くなる。また、通電構造のそれぞれにおいてTl/Ttを3.0以下にすることにより、集電タブ12のそれぞれのリード部材16の対応する一方との接続部分の電気的抵抗が、低く確保される。
【0090】
また、通電構造のそれぞれでは、直線距離Dに対する延設長Ltの前述の比率Lt/Dを3以上にすることにより、集電タブ12が溶断した後において、集電タブ12の溶断部分が融着され易くなる。このため、一対の通電構造の少なくとも一方において、比率Lt/Dを3以上にすることにより、過電流が遮断された後において、電池1から確実に放電することが可能になる。そして、一対の通電構造の両方において比率Lt/Dを3以上にすることにより、過電流が遮断された後において、電池1からさらに確実に放電することが可能になる。
【0091】
また、通電構造のそれぞれでは、直線距離Dに対する延設長Ltの前述の比率Lt/Dを6以上にすることにより、電極群2の集電タブ12以外の部分への集電タブ12の接触が、有効に防止される。このため、一対の通電構造の少なくとも一方において、比率Lt/Dを6以下にすることにより、電池1における内部短絡の発生が有効に防止される。そして、一対の通電構造の両方において比率Lt/Dを6以下にすることにより、電池1における内部短絡の発生がさらに有効に防止される。
【0092】
また、電極群2と電極端子13との間の通電構造のそれぞれでは、電極群2の幅Wcに対する集電タブ12の幅Wtの前述の比率Wt/Wcを0.15以上にすることにより、電気抵抗がさらに低下する。このため、一対の通電構造の少なくとも一方において前述の比率Wt/Wcを0.15以上にすることにより、電池1の通常の使用時において、電池1に流れる電流を大きくすることが可能になり、電池1の出力特性及び入力特性が向上する。また、一対の通電構造の両方において比率Wt/Wcを0.15以上にすることにより、通常の使用時における電池の出力特性及び入力特性が、さらに向上する。また、通電構造のそれぞれでは、前述の比率Wt/Wcを0.15以上にすることにより、電池1に過電流が流れた際に、集電タブ12を流れる電流が大きくなり、集電タブ12が溶断され易くなる。また、通電構造のそれぞれにおいて比率Wt/Wcを0.15以上にすることにより、集電タブ12のそれぞれの断面積がある程度の大きさになり、集電タブ12のそれぞれでの電気抵抗がある程度小さく確保される。これにより、ある程度大きい電流が流れた際において、集電タブ12のそれぞれでの発熱が過度に大きくなることが防止され、外装容器3及び蓋部材5に対して通電構造を電気絶縁する絶縁部材の劣化等が、有効に防止される。
【0093】
また、一対の通電構造の両方において比率Wt/Wcを0.30以下にすることにより、正極集電タブ12Aの負極集電タブ12Bへの接触、及び、集電タブ12A,12Bの間の放電等が、有効に防止される。これにより、集電タブ12A,12Bの間の短絡が有効に防止され、電池1における内部短絡の発生が有効に防止される。
【0094】
また、集電タブ12のそれぞれをリード部材16の対応する一方と同一の材料から形成することにより、集電タブ12のそれぞれとリード部材16の対応する一方と間の接続部分において、電気抵抗が低減される。また、通電構造のそれぞれにバックアップリード17が設けられる場合は、バックアップリード17及びリード部材16を集電タブ12と同一の材料から形成することにより、集電タブ12とバックアップリード17との間の接触抵抗、及び、リード部材16とバックアップリード17との間の接触抵抗が、低減される。これにより、集電タブ12のそれぞれとリード部材16の対応する一方と間の接続部分において、電気抵抗が低減される。
【0095】
また、前述のように形成される電池1では、体積エネルギー密度が100W・h/L以上200W・h/L以下であることが、好ましい。体積エネルギー密度を100W・h/L以上にすることにより、通常の使用時等において、充電をすることなく、電池1を長時間使用可能になる。また、体積エネルギー密度が200W・h/L以下になることにより、前述のように集電タブ12の溶断によって過電流が遮断され、かつ、集電タブ12の溶断部分が融着された後において、電池1からの放電時間が短くなる。すなわち、電流(過電流)が遮断された後、SOC(State of charge)が0%の完放電状態まで電池1を短時間で放電することが可能になる。
【0096】
[実施形態等に関連する検証]
また、前述の実施形態等に関連する以下の検証を行った。検証では、実施例1~10、及び、比較例1,2のそれぞれについて、検証を行った。実施例1~10、及び、比較例1,2のそれぞれの条件について、表1を参照に、以下に説明する。なお、表1では、実施例1~10、及び、比較例1,2の全てにおいて共通する条件は、省略する。
【0097】
【表1】
【0098】
(実施例1)
実施例1では、以下のようにして電池を形成した。電池の形成においては、まず、以下のようにして、正極を形成した。正極の正極活物質含有層の形成では、正極活物質として、二次粒子で形成されたリチウム含有ニッケルコバルトマンガン複合酸化物LiNi0.8Co0.1Mn0.1を用いた。仕込み段階の正極活物質では、平均二次粒子径が6μmであり、平均一次粒子径が0.5μmであった。正極活物質含有層では、導電剤としてアセチレンブラックを用い、結着剤としてポリフッ化ビニリデンを用いた。そして、前述の正極活物質、導電剤、及び、結着剤を、93:5:2の重量比でN-メチルピロリドン(NMP)に溶解及び混合させ、ペーストを調製した。これにより、ペースト状の分散液を、正極塗液として調製した。
【0099】
また、正極集電体としては、厚さ12μmの板状のアルミニウム箔を用いた。正極の形成では、前述の正極塗液を、アルミニウム箔の両面に均一に塗布した。そして、アルミニウム箔に塗布された正極塗液の塗膜を乾燥させ、正極活物質含有層を形成した。この際、片面の目付が60g/mとなる状態に、正極活物質含有層を形成した。そして、正極活物質含有層が形成された板状体(アルミニウム箔)を、ロールプレスで圧延した。そして、圧延後の正極を、所定の寸法に裁断した。裁断後の正極は、長手方向に沿った板状に形成された。また、裁断後の正極の正極集電体には、正極活物質含有層が担持されていない複数の帯状部を形成し、複数の帯状部は、正極の長手方向に互いに対して離して形成した。また、複数の帯状部を、長手方向に交差する方向について互いに対して同一の側へ、突出させた。
【0100】
また、電池の形成では、以下のようにして、負極を形成した。負極の負極活物質含有層の形成では、負極活物質として、一次粒子形状のスピネル構造を有するチタン酸リチウムLiTi12を用いた。仕込み段階の負極活物質では、平均粒子径が0.5μmであった。負極活物質含有層では、導電剤としてグラファイトを用い、結着剤としてポリフッ化ビニリデンを用いた。そして、前述の負極活物質、導電剤、及び、結着剤を、90:5:5の重量比でN-メチルピロリドン(NMP)に溶解及び混合させ、ペーストを調製した。これにより、ペースト状の分散液を、負極塗液として調製した。
【0101】
また、負極集電体としては、厚さ15μmの板状のアルミニウム箔を用いた。負極の形成では、前述の負極塗液を、アルミニウム箔の両面に均一に塗布した。そして、アルミニウム箔に塗布された負極塗液の塗膜を乾燥させ、負極活物質含有層を形成した。この際、片面の目付が60g/mとなる状態に、負極活物質含有層を形成した。そして、負極活物質含有層が形成された板状体(アルミニウム箔)を、ロールプレスで圧延した。そして、圧延後の負極を、所定の寸法に裁断した。裁断後の負極は、長手方向に沿った板状に形成された。また、裁断後の負極の負極集電体には、負極活物質含有層が担持されていない複数の帯状部を形成し、複数の帯状部は、負極の長手方向に互いに対して離して形成した。また、複数の帯状部を、長手方向に交差する方向について互いに対して同一の側へ、突出させた。
【0102】
また、正極と負極との間を電気的に絶縁するセパレータとしては、セルロースの不織布を用いた。セパレータでは、厚みが10μmで、空隙率が60%であった。電極群の形成では、セパレータが間に挟まれた状態で、正極及び負極を重ねた。この際、セパレータ、正極、セパレータ、及び、負極の順で重ねられた、積層体を形成した。そして、積層体を捲回することにより、電極群を形成した。電極群の形成では、セパレータが最外周になる状態に、積層体を捲回した。そして、積層体が捲回された捲回体を加熱しながらプレスすることにより、捲回型の電極群を形成した。
【0103】
形成された電極群では、前述した正極集電体の複数の帯状部を重ねられた状態で結束することにより、正極集電タブを形成した。そして、前述した負極集電体の複数の帯状部を重ねられた状態で結束することにより、負極集電タブを形成した。また、電極群では、正極集電タブ及び負極集電タブを、互いに対して同一の側に突出させた。そして、正極集電タブ及び負極集電タブでは、互いに対して、幅(電極群の幅方向に沿った寸法)を同一の大きさに形成した。また、前述のように電極群の幅Wc及び集電タブのそれぞれの幅Wtを規定すると、形成した電極群では、比率Wt/Wcが、0.2であった。
【0104】
また、電極群に保持(含浸)される電解質としては、非水電解液を用いた。非水電解液の調製では、プロピレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとを体積比1:2で混合した混合溶媒を、調製した。そして、この混合溶媒に、電解質塩としてLiPFを、濃度が1.0mol/Lとなるように溶解させて、非水電解液を調製した。
【0105】
また、一対の電極端子(正極端子及び負極端子)のそれぞれと電極群との間の通電構造は、図1乃至図3の実施形態と同様の構造とした。以下、図1乃至図3の実施形態の通電構造を、通電構造α0とする。通電構造α0と同様の構造としたため、集電タブ(正極集電タブ及び負極集電タブ)のそれぞれは、突出部分の根元位置とは反対側の端部で、リード部材の対応する一方に接続した。そして、集電タブのそれぞれは、バックアップリードの対応する一方を間に介して、リード部材の対応する一方に接続した。また、リード部材(正極リード部材及び負極リード部材)のそれぞれは、集電タブの対応する一方との接続部分とは異なる位置で、電極端子の対応する一方に接続した。また、通電構造α0と同様の構造としたため、集電タブのそれぞれに、前述のタブ湾曲部を形成した。
【0106】
正極端子、正極リード部材、及び、正極バックアップリードは、正極集電タブと同一の材料から形成した。そして、負極端子、負極リード部材、及び、負極バックアップリードは、負極集電タブと同一の材料から形成した。このため、電極端子、リード部材及びバックアップリードは、アルミニウムから形成した。リード部材のそれぞれは、超音波溶接によってバックアップリードに接続することにより、集電タブの対応する一方に接続した。また、リード部材のそれぞれは、抵抗溶接によって、電極端子の対応する一方に接続した。
【0107】
また、正極集電タブ及び負極集電タブでは、互いに対して、厚さを同一の大きさに形成した。そして、正極リード部材及び負極リード部材では、互いに対して、厚さを同一の大きさに形成した。また、前述のように集電タブのそれぞれの厚さTt、及び、リード部材のそれぞれの厚さTlを規定すると、比率Tl/Ttが、2.5であった。
【0108】
また、外装部材としては、図1乃至図3の実施形態等と同様に、外装容器及び蓋部材から形成される外装部材を用いた。外装容器及び蓋部材は、アルミニウムから形成した。電池の形成では、外装容器の内部空洞に電極群を収納し、蓋部材をシーム溶接によって外装容器に取付けた。これにより、電極群が配置される内部空洞を密閉した。なお、リード部材のそれぞれを集電タブの対応する一方に接続する前に、リード部材は、蓋部材、電極端子及び絶縁部材等と一体に組付けた。
【0109】
また、電池の形成では、集電タブのそれぞれに前述のタブ湾曲部が形成されていることを、X線画像から確認した。また、前述のように直線距離D及び延設長Ltを規定すると、集電タブのそれぞれでは、比率Lt/Dが5.5であった。また、電池の形成では、電極群が外装容器の内部空洞に配置され、かつ、電極群が一対の電極端子のそれぞれに電気的に接続された状態で、非水電解液を内部空洞に注入した。そして、非水電界液の注入後、内部空洞を密閉し、電池を形成した。
【0110】
(実施例2)
実施例2では、一対の通電構造のそれぞれにおいて、集電タブの厚さTtに対するリード部材の厚さTlの比率Tl/Ttを、3.0とした。前述の事項以外については、実施例1と同様にして、電池を形成した。
【0111】
(実施例3)
実施例3では、以下のようにして、負極を形成した。負極の負極活物質含有層の形成では、負極活物質として、メソフェーズピッチ系カーボンファイバー(MCF)を用いた。また、負極活物質含有層では、導電剤としてグラファイト、結着剤としてスチレン-ブタジエンゴム(SBR)、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)を用いた。そして、前述の負極活物質、導電剤、結着剤、及び、増粘剤を、85:10:3:2の重量比で水に溶解及び混合させ、ペーストを調製した。これにより、ペースト状の分散液を、負極塗液として調製した。
【0112】
また、負極集電体としては、厚さ15μmの板状の銅箔を用いた。負極の形成では、前述の負極塗液を、銅箔の両面に均一に塗布した。そして、銅箔に塗布された負極塗液の塗膜を乾燥させ、負極活物質含有層を形成した。この際、片面の目付が30g/mとなる状態に、負極活物質含有層を形成した。そして、負極活物質含有層が形成された板状体(アルミニウム箔)を、ロールプレスで圧延した。そして、圧延後の負極を、所定の寸法に裁断した。裁断後の負極には、実施例1と同様に、複数の帯状部が形成された。そして、負極集電体の複数の帯状部を重ねられた状態で結束することにより、負極集電タブを形成した。
【0113】
また、負極集電タブを銅から形成したため、負極端子、負極リード部材、及び、負極バックアップリードは、負極集電タブと同一の材料である銅から形成した。前述の事項以外については、実施例1と同様にして、電池を形成した。
【0114】
(実施例4)
実施例4では、片面の目付が75g/mとなる状態に、正極活物質含有層を形成した。そして、片面の目付が75g/mとなる状態に、負極活物質含有層を形成した。このため、実施例4では、正極及び負極のそれぞれは、実施例1に比べて厚く形成した。ただし、実施例4では、電極群の厚さ方向に沿った電極群の寸法(厚さ)、及び、電極群の幅方向に沿った電極群の寸法(幅)は、実施例1と同一又は略同一にした。したがって、実施例4では、実施例1に比べて、電極群における捲回数が減少した。前述の事項以外については、実施例1と同様にして、電池を形成した。
【0115】
(実施例5)
実施例5では、一対の通電構造のそれぞれにおいて、集電タブの厚さTtに対するリード部材の厚さTlの比率Tl/Ttを、1.2とした。前述の事項以外については、実施例1と同様にして、電池を形成した。
【0116】
(実施例6)
実施例6では、一対の通電構造のそれぞれにおいて、集電タブの厚さTtに対するリード部材の厚さTlの比率Tl/Ttを、5.0とした。前述の事項以外については、実施例1と同様にして、電池を形成した。
【0117】
(実施例7)
実施例7では、一対の集電タブのそれぞれにおいて、直線距離Dに対する延設長Ltの前述の比率Lt/Dを、1.5とした。前述の事項以外については、実施例1と同様にして、電池を形成した。
【0118】
(実施例8)
実施例8では、一対の集電タブのそれぞれにおいて、直線距離Dに対する延設長Ltの前述の比率Lt/Dを、10とした。前述の事項以外については、実施例1と同様にして、電池を形成した。
【0119】
(実施例9)
実施例9では、一対の集電タブのそれぞれについて、電極群の幅Wcに対する幅Wtの前述の比率Wt/Wcを、0.10とした。前述の事項以外については、実施例1と同様にして、電池を形成した。
【0120】
(実施例10)
実施例10では、一対の集電タブのそれぞれについて、電極群の幅Wcに対する幅Wtの前述の比率Wt/Wcを、0.45とした。前述の事項以外については、実施例1と同様にして、電池を形成した。
【0121】
(比較例1)
比較例1では、一対の電極端子(正極端子及び負極端子)のそれぞれと電極群との間の通電構造は、図5及び図6の第1の比較構造と同様の構造とした。以下、図5及び図6の第1の比較構造の通電構造を、通電構造α1とする。通電構造α1では、リード部材と集電タブとの間に、前述の中継リードを設けられる。このため、比較例1では、集電タブ(正極集電タブ及び負極集電タブ)のそれぞれを、突出部分の根元位置とは反対側の端部で、中間リードの対応する一方に接続した。そして、集電タブのそれぞれは、バックアップリードを間に介して、中間リードの対応する一方に接続した。また、中間リードのそれぞれは、集電タブの対応する一方との接続部分とは異なる位置で、リード部材(正極リード部材及び負極リード部材)の対応する一方に接続した。そして、リード部材のそれぞれは、中間リードの対応する一方との接続部分とは異なる位置で、電極端子の対応する一方に接続した。また、通電構造α1でも、通電構造α0と同様に、集電タブに、前述のタブ湾曲部を形成した。
【0122】
正極端子、正極リード部材、正極バックアップリード、及び、正極側の中間リードは、正極集電タブと同一の材料から形成した。そして、負極端子、負極リード部材、負極バックアップリード、及び、負極側の中間リードは、負極集電タブと同一の材料から形成した。比較例1では、実施例1と同様に、集電タブのそれぞれは、アルミニウムから形成した。このため、電極端子、リード部材、バックアップリード及び中間リードは、アルミニウムから形成した。中間リードのそれぞれは、超音波溶接によってバックアップリードに接続することにより、集電タブの対応する一方に接続した。また、リード部材のそれぞれは、抵抗溶接によって、電極端子の対応する一方に接続した。
【0123】
通電構造α1では、中間リード及びリード部材は、電極群の厚さ方向に重ねられた状態で、配置した。そして、中間リードは、電極群の幅方向についての両縁のそれぞれで、抵抗溶接によって、リード部材に接続した。また、比較例1では、中間リードを設けたため、実施例1に比べて、リード部材が薄くなった。また、比較例1では、通電構造のそれぞれにおいて、集電タブの厚さTtに対するリード部材の厚さTlの比率Tl/Ttが、1.0となった。前述の事項以外については、実施例1と同様にして、電池を形成した。
【0124】
(比較例2)
比較例2では、一対の電極端子(正極端子及び負極端子)のそれぞれと電極群との間の通電構造は、図7の第2の比較構造と同様の構造とした。以下、図7の第2の比較構造の通電構造を、通電構造α2とする。通電構造α2では、集電タブにタブ湾曲部が形成されないことを除き、通電構造α0と同様にした。比較例2では、集電タブのそれぞれに前述のタブ湾曲部が形成されていないこと、すなわち、集電タブのそれぞれが根元位置からリード部材の対応する一方への接続位置まで直線状又は略直線状に延設されることを、X線画像から確認した。また、比較例2では、一対の集電タブのそれぞれにおいて、直線距離Dに対する延設長Ltの前述の比率Lt/Dは、1.0になった。前述の事項以外については、実施例1と同様にして、電池を形成した。
【0125】
(検証内容)
検証では、実施例1~10、及び、比較例1,2のそれぞれについて、電池の製造時の非水電解液を内部空洞に注入する前に、一対の電極端子(正極端子及び負極端子)の間の抵抗値Rを測定した。抵抗値Rの測定は、電極群が外装容器の内部空洞に配置され、かつ、電極群が一対の電極端子のそれぞれに電気的に接続された状態で、行った。抵抗値Rとしては、電極端子の間に50Vの電圧を3秒間印加した際の抵抗値を、測定した。
【0126】
また、検証では、実施例1~10、及び、比較例1,2のそれぞれについて、製造された電池の体積エネルギー密度を算出した。この際、実施例1~3,5~10、及び、比較例1,2のそれぞれについては、電池を25℃の温度環境下で充電した。この際、電圧が2.7Vになるまで、1Cの充電レートで電池を定電流充電した。そして、定電流充電の後、電圧を2.7Vで維持したまま、電流値が0.01Cになるまで、電池を定電圧充電した。すなわち、製造した電池について、前述した条件で、定電流-定電圧充電を行った。そして、定電圧充電を行った後、電池を50℃以上の高温下で24時間保管した。そして、高温下で保管した後、電池を25℃の温度環境下において5時間保管した。そして、電圧が1.5Vになるまで、1Cの放電レートで電池を定電流放電した。そして、定電流放電において放電されたエネルギーを算出するとともに、算出したエネルギーを外装部材(外装容器及び蓋部材)の体積で除算した値を、電池の体積エネルギー密度Uとして算出した。
【0127】
実施例4については、電池を25℃の温度環境下で充電した。この際、電圧が4.2Vになるまで、1Cの充電レートで電池を定電流充電した。そして、定電流充電の後、電圧を4.2Vで維持したまま、電流値が0.01Cになるまで、電池を定電圧充電した。すんわち、製造した電池について、前述した条件で、定電流-定電圧充電を行った。そして、定電圧充電を行った後、電池を50℃以上の高温下で24時間保管した。そして、高温下で保管した後、電池を25℃の温度環境下において5時間保管した。そして、電圧が3.0Vになるまで、1Cの放電レートで電池を定電流放電した。そして、定電流放電において放電されたエネルギーを算出するとともに、算出したエネルギーを外装部材(外装容器及び蓋部材)の体積で除算した値を、電池の体積エネルギー密度Uとして算出した。
【0128】
また、検証では、実施例1~10、及び、比較例1,2のそれぞれについて、製造された電池の出力特性に関する試験を行った。出力特性に関する試験では、電池を、25℃の温度環境下において、SOC(State of charge)が100%の状態からSOCが0%の状態まで放電した。この際、1Cの放電レートで放電した。そして、1Cの放電レートでの放電時の放電容量Caを算出した。その後、実施例1~10、及び、比較例1,2のそれぞれについて、エネルギー密度の算出において前述した条件と同様の条件で、定電流-定電圧充電を行った。そして、定電流-定電圧充電を行った電池を、SOCが100%の状態からSOCが0%の状態まで放電した。この際、10Cの放電レートで放電した。そして、10Cの放電レートでの放電時の放電容量Cbを算出した。
【0129】
そして、10Cの放電レートでの放電容量Cbを1Cの放電レートでの放電容量Caで除算した値を、レート容量維持率ηとして算出した。ここで、レート容量維持率ηは、電池の出力特性を示す指標である。そして、レート容量維持率ηが高い電池は、出力特性が高い。また、出力特性が優れた電池は、内部抵抗が低いため、入力特性も高い。
【0130】
また、検証では、実施例1~10、及び、比較例1,2のそれぞれについて、過電流の遮断後に電池から放電可能であるか否かに関する試験と行った。この試験では、開閉可能なスイッチを備える回路を形成した。この際、回路を形成する金属の長さ及び厚さ等を調製することにより、スイッチが閉じられた状態での回路の内部抵抗を1mΩにした。また、過電流の遮断後に放電可能であるか否かに関する試験では、SOCが100%の状態になるまで、1Cの充電レートで電池を充電した。この際、SOCが100%の状態の電圧は、体積エネルギー密度の算出における定電圧充電で維持される電圧と、同一である。すなわち、実施例1~3,5~10、及び、比較例1,2のそれぞれの電池では、SOCが100%の状態の電圧が2.7Vになり、実施例4の電池では、SOCが100%の状態の電圧が4.2Vになった。また、SOCが100%の状態になるまでの充電は、25±5℃の環境温度で行った。
【0131】
そして、試験では、SOCが100%の状態の電池において、スイッチが閉じた状態の前述の回路を、一対の電極端子(正極端子及び負極端子)に接触させた。これにより、一対の電極端子の間がスイッチを備える回路を介して短絡し、一対の電極端子が電極群を間に介することなく電気的に接続される外部短絡が発生した。したがって、前述のように外部短絡を発生させることにより、電池から強制放電させ、電池に過電流を流した。そして、電池に過電流を流した後、電池を2時間静置した。そして、静置した電池において、一対の電極端子の間の電圧Vを測定した。
【0132】
ここで、電圧Vは、電極群と電極端子との間の通電構造が過電流によって溶断された後、融着されているか否かの指標となる。すなわち、電圧Vは、過電流の遮断後に電池から放電可能であるか否かを示す指標になる。ここで、前述の試験において、電圧Vがある程度の大きさになる場合は、過電流による溶断部分が融着され、一対の電極端子の間に電圧が発生していると考えられる。すなわち、電圧Vがある程度の大きさになる場合は、過電流の遮断後において、電池から放電可能になっていると考えられる。
【0133】
(検証結果)
実施例1~10、及び、比較例1,2のそれぞれについて、前述の試験結果を、表2に示す。
【0134】
【表2】
【0135】
検証の結果、実施例1~10のいずれにおいても、測定した前述の抵抗値Rがある程度の大きさになった。したがって、実施例1~10のそれぞれの電池では、内部短絡の発生が適切に防止されていることが、実証された。また、実施例1~10のいずれにおいても、電池の体積エネルギー密度Uが適切な大きさになった。すなわち、実施例1~10のそれぞれの電池では、体積エネルギー密度Uが100W・h/L以上2000W・h/L以下の範囲内になり、体積エネルギー密度が適切な大きさになることが実証された。また、実施例1~10のいずれにおいても、算出した電池のレート容量維持率ηが、ある程度高くなった。これにより、実施例1~10のそれぞれの電池では、出力特性及び入力特性が高く確保されることが、実証された。
【0136】
また、実施例1~10のいずれにおいても、過電流を遮断してから2時間経過後の電極端子の間の電圧Vが、ある程度の大きさになった。したがって、実施例1~10のそれぞれの電池では、過電流によって集電タブが溶断されても、溶断部分が融着されることが実証された。すなわち、実施例1~10のそれぞれの電池では、過電流の遮断後において、電池から放電可能になっていることが実証された。
【0137】
また、比較例1では、中間リードが設けられるため、電極群と電極端子との間の通電構造において、電流経路の経路長が長くなる。このため、比較例1では、中間リード等を除く他の条件が同一の実施例1に比べて、レート容量維持率ηが低くなった。これにより、比較例1では、実施例1等に比べて、出力特性及び入力特性が低下することが実証された。また、比較例1では、過電流を遮断してから2時間経過後の電極端子の間の電圧Vは、ほぼ0となった。したがって、比較例1では、過電流によって、リード部材と中間リードとの間の接続部分が溶断されること、及び、過電流を遮断してからしばらくの時間が経過しても、溶断部分が融着されないことが、実証された。
【0138】
また、比較例2でも、過電流を遮断してから2時間経過後の電極端子の間の電圧Vは、ほぼ0となった。したがって、集電タブにタブ湾曲部が形成されない比較例2では、過電流を遮断してからしばらくの時間が経過しても、集電タブの溶断部分が融着されないことが、実証された。
【0139】
また、比率Tl/Ttが1.4以上3.0以下の実施例1,2のそれぞれでは、比率Tl/Ttが1.4より小さい実施例5に比べて、レート容量維持率ηが高くなった。したがって、比率Tl/Ttを1.4以上にすることにより、通常の使用時における電池の出力特性及び入力特性が向上することが、実証された。
【0140】
また、比率Lt/Dが3以上6以下の実施例1では、比率Lt/Dが6より大きい実施例8に比べて、非水電解液を注入する前における電極端子の間の抵抗値Rが、高くなった。したがって、比率Lt/Dを6以下にすることにより、電池における内部短絡の発生が有効に防止されることが、実証された。
【0141】
また、比率Wt/Wcが0.15以上0.30以下の実施例1では、比率Wt/Wcが0.15より小さい実施例9に比べて、レート容量維持率ηが高くなった。したがって、比率Wt/Wcを0.15以上にすることにより、通常の使用時における電池の出力特性及び入力特性が向上することが、実証された。
【0142】
また、比率Wt/Wcが0.15以上0.30以下の実施例1では、比率Wt/Wcが0.30より大きい実施例10に比べて、非水電解液を注入する前における電極端子の間の抵抗値Rが、高くなった。したがって、比率Wt/Wcを0.30以下にすることにより、電池における内部短絡の発生が有効に防止されることが、実証された。
【0143】
これらの少なくとも一つの実施形態では、集電タブは、突出部分の根元位置とは反対側の端部で、リード部材に接続され、リード部材では、集電タブとの接続部分に、接合部が形成される。リード部材は、集電タブに比べて厚く、集電タブとの接続部分とは異なる位置で電極端子に接続される。集電タブにおいて突出部分の根元位置とリード部材への接続位置との間には、タブ湾曲部が設けられ、タブ湾曲部では、集電タブが湾曲される。これにより、電極群と電極端子との間の通電構造の一部での溶断によって過電流が遮断された後において、放電することが可能な電池を提供することができる。
【0144】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下、付記を記載する。
[1] 正極及び負極を備える電極群と、
前記電極群において突出する集電タブと、
突出部分の根元位置とは反対側の端部で前記集電タブが接続され、前記集電タブとの接続部分に接合部が形成されるリード部材であって、前記集電タブに比べて厚いリード部材と、
前記集電タブとの前記接続部分とは異なる位置で前記リード部材が接続され、前記リード部材を間に介して前記集電タブに電気的に接続される電極端子と、
前記集電タブにおいて前記突出部分の前記根元位置と前記リード部材への接続位置との間に設けられ、前記集電タブが湾曲されるタブ湾曲部と、
を具備する電池。
[2]前記集電タブの厚さに対する前記リード部材の厚さの比率は、1.4以上3.0以下であり、
前記集電タブの前記突出部分の前記根元位置と前記集電タブの前記リード部材への前記接続位置との間の直線距離に対する前記突出部分の前記根元位置から前記リード部材への前記接続位置までの前記集電タブの延設長の比率は、3以上6以下である、
[1]の電池。
[3]前記電極群の幅に対する前記集電タブの幅の比率は、0.15以上0.30以下である、[1]又は[2]の電池。
[4]前記リード部材は、前記集電タブと同一の材料から形成される、[1]乃至[3]のいずれか1つの電池。
[5]体積エネルギー密度が100W・h/L以上200W・h/L以下である、[1]乃至[4]のいずれか1つの電池。
[6]前記リード部材は、前記集電タブとの前記接続部分の前記接合部で、前記集電タブに直接的に接合される、[1]乃至[5]のいずれか1つの電池。
[7]前記集電タブを挟んだ状態で、前記突出部分の前記根元位置とは反対側の前記端部で前記集電タブに取付けられるバックアップリードをさらに具備し、
前記リード部材は、前記バックアップリードの一部を前記集電タブとの間で挟んだ状態で、前記集電タブに接続され、
前記リード部材は、前記集電タブとの前記接続部分の前記接合部で、前記バックアップリードに接合される、
[1]乃至[5]のいずれか1つの電池。
[8]前記集電タブは、前記電極群において突出する正極集電タブ、及び、前記電極群において前記正極集電タブが突出する側に突出する負極集電タブの少なくとも一方であり、
前記リード部材は、前記正極集電タブに接続される正極リード部材、及び、前記負極集電タブに接続される負極リード部材の少なくとも一方であり、
前記電極端子は、前記正極リード部材を間に介して前記正極集電タブに電気的に接続される正極端子、及び、前記負極リード部材を間に介して前記負極集電タブに電気的に接続される負極端子の少なくとも一方である、
[1]乃至[7]のいずれか1つの電池。
【符号の説明】
【0145】
1…電池、2…電極群、11A…正極、11B…負極、12(12A,12B)…集電タブ、13(13A,13B)…電極端子、16(16A,16B)…リード部材、17(17A,17B)…バックアップリード。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7