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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/18 20180101AFI20240823BHJP
   G01N 23/083 20180101ALI20240823BHJP
   G01N 23/04 20180101ALI20240823BHJP
【FI】
G01N23/18
G01N23/083
G01N23/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020066589
(22)【出願日】2020-04-02
(65)【公開番号】P2021162523
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-10-31
(73)【特許権者】
【識別番号】595039014
【氏名又は名称】株式会社サキコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100140800
【弁理士】
【氏名又は名称】保坂 丈世
(74)【代理人】
【識別番号】100156281
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 敬
(72)【発明者】
【氏名】山本 洋介
(72)【発明者】
【氏名】北畠 惇史
【審査官】小野 健二
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-146390(JP,A)
【文献】特開2002-350367(JP,A)
【文献】特開2012-163352(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0105682(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00-23/2276
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線源と被検査体との相対位置を変化させ、前記線源からの放射線を前記被検査体に照射し、前記被検査体の画像を取得して前記被検査体を検査する検査装置であって、
前記線源に対する所定の位置に照射される前記線源からの線量を基準線量として記憶する記憶部と、
前記検査において前記被検査体に照射される前記線量を算出する算出部と、を有し、
前記算出部は、前記被検査体の検査をする前に、前記検査における前記被検査体の検査情報、撮影条件及び前記被検査体上の撮像位置を含む移動経路に基づいて、前記検査の開始から終了までの間の任意の期間において、
前記記憶部に記憶された前記基準線量に基づいて、前記線源と前記被検査体との相対位置を固定しながらまたは変化させながら前記撮像位置で前記画像を取得している間の前記線源と前記被検査体との相対位置から前記被検査体に照射される線量の推定値を算出する第1のステップと、
前記記憶部に記憶された前記基準線量に基づいて、前記線源と前記被検査体との相対位置を変化させて前記撮像位置を移動している間の前記線源と前記被検査体との相対位置から前記被検査体に照射される線量の推定値を算出する第2のステップと、
前記第1のステップで算出された前記線量の推定値と前記第2のステップで算出された前記線量の推定値との合計から、前記被検査体に照射される線量の推定値の合計値を算出する第3のステップと、
前記第3のステップで算出された前記合計値を出力する第4のステップと、
を実行する検査装置。
【請求項2】
前記記憶部は、前記線源の特性に関する情報を記憶しており、
前記算出部は、前記第1のステップ及び前記第2のステップにおいて前記被検査体に照射される線量の推定値を算出するときに、前記記憶部に記憶された前記線源の特性に関する情報に基づいて算出される線量を補正する
請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記算出部は、
前記第1のステップ及び前記第2のステップにおいて、前記被検査体全域を複数の部分領域に分割し、前記部分領域毎に前記線量の推定値を算出し、
前記第3のステップにおいて、前記部分領域毎に前記合計値を算出する
請求項1または2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記算出部は、
前記第4のステップにおいて、前記算出部は、前記線量の推定値の前記合計値の分布を画像として出力する
請求項3に記載の検査装置。
【請求項5】
前記記憶部は、前記被検査体に取り付けられた部品に関する情報を記憶しており、
前記算出部は、前記第4のステップにおいて、前記記憶部に記憶された前記部品に関する情報に基づいて、前記部品の位置の前記部分領域から前記部品毎の前記合計値を出力する
請求項3または4に記載の検査装置。
【請求項6】
前記算出部は、前記第4のステップにおいて、前記検査情報に基づいて前記部品の位置と、当該部品に照射される前記合計値の分布とを対応付けて画像として出力する
請求項5に記載の検査装置。
【請求項7】
前記算出部は、前記撮像条件を変えて、前記第1のステップから前記第4のステップを実行する
請求項1~6のいずれか一項に記載の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板表面や裏面のはんだ形状を計測する検査装置として、トモシンセシス方式のX線検査装置がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-026334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような検査装置では、被検査体にX線が照射されるが、線量計を用いて被曝量を測定しないと、検査時に被検査体に照射されるX線の線量を知ることができないという課題があった。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、X線などの放射線を照射して線量計を用いた被曝量の測定をすることなく、検査時に被検査体に照射される線量を推定することができる検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明に係る検査装置は、線源と被検査体との相対位置を変化させ、前記線源からの放射線を前記被検査体に照射し、前記被検査体の画像を取得して前記被検査体を検査する検査装置であって、前記線源に対する所定の位置に照射される前記線源からの線量を基準線量として記憶する記憶部と、前記検査において前記被検査体に照射される前記線量を算出する算出部と、を有し、前記算出部は、前記被検査体の検査をする前に、前記検査における前記被検査体の検査情報、撮像条件及び前記被検査体上の撮像位置を含む移動経路に基づいて、前記検査の開始から終了までの間の任意の期間において、前記記憶部に記憶された前記基準線量に基づいて、前記線源と前記被検査体との相対位置を固定しながらまたは変化させながら前記撮像位置で前記画像を取得している間の前記線源と前記被検査体との相対位置から前記被検査体に照射される線量の推定値を算出する第1のステップと、前記記憶部に記憶された前記基準線量に基づいて、前記線源と前記被検査体との相対位置を変化させて前置撮像位置を移動している間の前記線源と前記被検査体との相対位置から前記被検査体に照射される線量の推定値を算出する第2のステップと、前記第1のステップで算出された前記線量の推定値と前記第2のステップで算出された前記線量の推定値との合計から、前記被検査体に照射される線量の推定値の合計値を算出する第3のステップと、前記第3のステップで算出された前記合計値を出力する第4のステップと、を実行する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る検査装置によれば、X線などの放射線を照射することなく、検査時に被検査体に照射される線量を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る検査装置の構成を説明するための説明図である。
図2】上記検査装置の制御部が処理する各機能ブロックを説明するための説明図である。
図3】検査の流れを説明するためのフローチャートである。
図4】被曝量算出処理の流れを説明するためのフローチャートである。
図5】放射線発生器(線源)のタイプを説明するための説明図であって、(a)は透過型X線源を示し、(b)は反射型X線源を示す。
図6】被曝量の分布を説明するための説明図であって、(a)は撮像位置1での被曝量の分布を示し、(b)は停止時の被曝量を示し、(c)は移動時の被曝量を示す。
図7】被曝量の分布を説明するための説明図であって、(a)~(c)は移動範囲内でのそれぞれの位置での被曝量を示す。
図8】撮像位置2での被曝量の分布を説明するための説明図である。
図9】撮像位置1から撮像位置2に移動させたときの被曝量の分布を説明するための説明図であって、(a)は常に放射線発生器から放射線を発生させた場合を示し、(b)は撮像位置でのみ放射線発生器から放射線を発生させた場合を示す。
図10】検査対象領域全てを撮像した際の総被曝量の分布を説明するための説明図である。
図11】基板保持部及び検出器を移動させながら撮像を行ったときの被曝量の分布を説明するための説明図であって、(a)は常に放射線発生器から放射線を発生させた場合を示し、(b)は撮像位置でのみ放射線発生器から放射線を発生させた場合を示す。
図12】フィルターの有無による被曝量を説明するための説明図であって、(a)はフィルターがないときを示し、(b)はフィルターがあるときを示す。
図13】算出された被曝量の出力例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。図1に示すように、本実施形態に係る検査装置1は、パーソナルコンピュータ(PC)等の処理装置で構成される制御部10、モニタ12、及び、撮像部32を有して構成されている。また、撮像部32は、更に、線質変更部14、放射線発生器駆動部16、基板保持部駆動部18、検出器駆動部20、放射線発生器22、基板保持部24、及び、検出器26を有している。
【0010】
放射線発生器22は、X線等の放射線を発生させる装置(線源)であり、例えば加速させた電子をタングステンやダイアモンド等のターゲットに衝突させることで放射線を発生するものである。本実施形態における放射線は、X線の場合について説明するが、これに限定されるものではない。例えば、放射線は、アルファ線、ベータ線、ガンマ線、紫外線、可視光、赤外線でもよい。また、放射線は、マイクロ波やテラヘルツ波でもよい。
【0011】
基板保持部24は、被検査体である基板を保持する。基板保持部24に保持された基板に放射線発生器22で発生させた放射線を照射し、基板を透過した放射線を検出器26で画像として撮像する。以下、検出器26で撮像された基板の放射線透過画像を「透過画像」と呼ぶ。なお、後述するように、本実施形態においては、基板を保持した基板保持部24と検出器26とを放射線発生器22に対して相対移動させて複数の透過画像を取得して、再構成画像を生成する。
【0012】
検出器26で撮像された透過画像は、制御部10に送られ、例えば、フィルター補正逆投影法(Filtered-Backprojection法(FBP法))等の既知の技術を用いて、接合部分のはんだの立体形状を含む画像に再構成される。そして、再構成された画像や透過画像は、制御部10内のストレージや、図示しない外部のストレージに記憶される。以下、透過画像に基づいて接合部分のはんだの立体形状を含む3次元画像に再構成された画像を「再構成画像」と呼ぶ。また、再構成画像から任意の断面を切り出した画像を「断面画像」と呼ぶ。このような再構成画像及び断面画像はモニタ12に出力される。なお、モニタ12には再構成画像や断面画像のみならず、後述するはんだの接合状態の検査結果等も表示される。また、本実施形態における再構成画像は、上述したように、検出器26で撮像された平面画像から再構成されるため「プラナーCT」とも呼ぶ。
【0013】
線質変更部14は、放射線発生器22で発生される放射線の線質を変更する。放射線の線質は、ターゲットに衝突させる電子を加速するために印加する電圧(以下「管電圧」と呼ぶ)や、電子の数を決定する電流(以下「管電流」と呼ぶ)によって定まる。線質変更部14は、これら管電圧と管電流とを制御する装置である。この線質変更部14は変圧器や整流器等、既知の技術を用いて実現できる。
【0014】
ここで、放射線の線質は、放射線の輝度と硬さ(放射線のスペクトル分布)とで定まる。管電流を大きくすればターゲットに衝突する電子の数が増え、発生する放射線の光子の数も増える。その結果、放射線の輝度が大きくなる。例えば、コンデンサ等の部品の中には他の部品と比較して厚みがあるものもあり、これらの部品の透過画像を撮像するには輝度の大きな放射線を照射する必要がある。このような場合に管電流を調整することで放射線の輝度を調整する。また、管電圧を高くすると、ターゲットに衝突する電子のエネルギーが大きくなり、発生する放射線のエネルギー(スペクトル)が大きくなる。一般に、放射線のエネルギーが大きいほど物質の貫通力が大きくなり、物質に吸収されにくくなる。そのような放射線を用いて撮像した透過画像はコントラストが低くなる。このため、管電圧は透過画像のコントラストを調整するのに利用できる。
【0015】
放射線発生器駆動部16は、図示しないモータ等の駆動機構を有しており、放射線発生器22をその焦点を通る軸(この軸の方向を「Z軸方向」とする)に沿って上下に移動させることができる。これにより放射線発生器22と基板保持部24に保持される被検査体(基板)との距離を変えて照射野を変更し、検出器26で撮像される透過画像の拡大率を変更することが可能となる。なお、放射線発生器22のZ軸方向の位置は、発生器位置検出部23により検出され、制御部10に出力される。
【0016】
検出器駆動部20も図示しないモータ等の駆動機構を有しており、検出器回転軌道30に沿って検出器26を回転移動させる。また、基板保持部駆動部18も図示しないモータ等の駆動機構を有しており、基板回転軌道28が設けられた平面上を、基板保持部24を平行移動させる。また、基板保持部24は、検出器26の回転移動と連動して、基板回転軌道28上を回転移動する構成となっている。これにより、基板保持部24が保持する基板と放射線発生器22との相対的な位置関係を変更させながら、投射方向及び投射角度が異なる複数の透過画像を撮像することが可能となる。
【0017】
ここで、基板回転軌道28と検出器回転軌道30との回転半径は固定ではなく、自由に変更できる構成となっている。これにより、基板に配置される部品に照射する放射線の照射角度を任意に変更することが可能となる。なお、基板回転軌道28及び検出器回転軌道30の軌道面は、上述したZ軸方向と直交しており、この軌道面において直交する方向をX軸方向及びY軸方向とすると、基板保持部24のX軸方向及びY軸方向の位置は、基板位置検出部29で検出されて制御部10に出力され、検出器26のX軸方向及びY軸方向の位置は、検出器位置検出部31で検出されて制御部10に出力される。
【0018】
制御部10は、上述した検査装置1の全動作を制御する。以下、制御部10の諸機能について図2を用いて説明する。なお、図示されていないが、制御部10にはキーボードおよびマウスなどの入力装置が接続されている。
【0019】
制御部10は、記憶部34、断面画像生成部36、基板検査面検出部38、疑似断面画像生成部40、及び検査部42を含む。なお、図示しないが制御部10は線質変更部14、放射線発生器駆動部16、基板保持部駆動部18、及び検出器駆動部20の作動を制御する撮像制御部も含む。また、これらの各機能ブロックは、各種演算処理を実行するCPU、データの格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAMなどのハードウェア、およびソフトウェアの連携によって実現される。したがって、これらの機能ブロックはハードウェアおよびソフトウェアの組み合わせによって様々な形で実現することができる。
【0020】
記憶部34は、基板の透過画像を撮像するための撮像条件や、被検査体である基板の設計等の情報を記憶する。記憶部34はまた、基板の透過画像や再構成画像(断面画像、疑似断面画像)、及び後述する検査部42の検査結果等を記憶する。記憶部34はさらに、放射線発生器駆動部16が放射線発生器22を駆動する速度、基板保持部駆動部18が基板保持部24を駆動する速度および検出器駆動部20が検出器26を駆動する速度も格納されている。
【0021】
断面画像生成部36は、記憶部34から取得した複数の透過画像に基づいて、断面画像を生成する。これは、例えばFBP法や最尤推定法等、既知の技術を用いて実現できる。再構成アルゴリズムが異なると、得られる再構成画像の性質や再構成に要する時間も異なる。そこで、あらかじめ複数の再構成アルゴリズムやアルゴリズムに用いられるパラメータを用意しておき、ユーザに選択させる構成としてもよい。これにより、再構成に要する時間が短くなることを優先したり、時間はかかっても画質の良さを優先したりするなどの選択の自由度をユーザに提供することができる。生成した断面画像は記憶部34に出力し、この記憶部34に記録される。
【0022】
基板検査面検出部38は、断面画像生成部36が生成した複数の断面画像の中から、基板上の検査の対象となる面(例えば、基板の表面)を映し出している位置(断面画像)を特定する。以後、基板の検査面を映し出している断面画像を「検査面画像」という。検査面画像の検出方法についての詳細は後述する。
【0023】
疑似断面画像生成部40は、断面画像生成部36が生成した断面画像について、連続する所定枚数の断面画像を積み上げることにより、断面画像よりも厚い基板の領域を画像化する。積み上げる断面画像の枚数は、断面画像が映し出す基板の領域の厚さ(以後、「スライス厚」という。)と、疑似断面画像のスライス厚とによって定める。例えば、断面画像のスライス厚が50μmで、疑似断面画像としてBGAのはんだボール(以後単に「はんだ」という。)の高さ(例えば500μm)をスライス厚としようとするならば、500/50=10枚の断面画像を積み上げればよい。この際、はんだの位置を特定するために、基板検査面検出部38が特定した検査面画像が用いられる。
【0024】
検査部42は、断面画像生成部36が生成した断面画像、基板検査面検出部38が特定した検査面画像、及び疑似断面画像生成部40が生成した疑似断面画像に基づいて、はんだの接合状態を検査する。基板と部品とを接合するはんだは基板検査面付近にあるので、検査面画像及び検査面画像に対して放射線発生器22側の領域を映し出している断面画像を検査することで、はんだが基板と部品とを適切に接合しているか否かが判断できる。
【0025】
ここで、「はんだの接合状態」とは、基板と部品とがはんだにより接合し、適切な導電経路が生成されているか否かのことをいう。はんだの接合状態の検査には、ブリッジ検査、溶融状態検査、及びボイド検査が含まれる。「ブリッジ(bridge)」とは、はんだが接合することにより生じた導体間の好ましくない導電経路のことをいう。また、「溶融状態」とは、はんだの溶融不足により、基板と部品との間の接合が不足しているか否かの状態、いわゆる「浮き」か否かの状態をいう。「ボイド(void)」とは、はんだ接合部内の気泡によるはんだ接合の不具合のことをいう。したがって検査部42は、ブリッジ検査部44、溶融状態検査部46、及びボイド検査部48を含む。
【0026】
ブリッジ検査部44、溶融状態検査部46、及びボイド検査部48の動作の詳細は後述するが、ブリッジ検査部44およびボイド検査部48は、疑似断面画像生成部40が生成した疑似断面画像に基づいてそれぞれブリッジおよびボイドの検査をし、溶融状態検査部46は基板検査面検出部38が特定した検査面画像に基づいてはんだの溶融状態を検査する。なお、ブリッジ検査部44、溶融状態検査部46、及びボイド検査部48における検査結果は記憶部34に記録される。
【0027】
図3は透過画像の撮像及び再構成画像の生成、及び、検査面画像の特定から、はんだの接合状態を検査するまでの流れを示したフローチャートである。本フローチャートにおける処理は、例えば、制御部10が図示しない入力装置から検査開始の指示を受け付けたときに開始する。
【0028】
制御部10は、上述したように、放射線発生器駆動部16により放射線発生器22により放射される放射線の照射野を設定し、基板保持部駆動部18により基板保持部24を移動させるとともに、検出器駆動部20により検出器26を移動させて撮像位置を変更しながら、線質変更部14により放射線発生器22の線質を設定して放射線を基板に照射して透過画像を撮像し、さらに、このようにして撮像された複数枚の透過画像から、断面画像生成部36及び疑似断面画像生成部40により再構成画像を生成する(ステップS100)。
【0029】
次に、制御部10の基板検査面検出部38は、断面画像生成部36から透過画像または再構成画像(断面画像)を受け取り、その中から検査面画像を特定する(ステップS102)。ブリッジ検査部44は、疑似断面画像生成部40からはんだボールを映し出しているはんだボールと同程度のスライス厚の疑似断面画像を取得し、ブリッジの有無を検査する(ステップS104)。ブリッジを検出しない場合には(ステップS106の「N」)、溶融状態検査部46は基板検査面検出部38から検査面画像を取得し、はんだが溶融しているか否かを検査する(ステップS108)。はんだが溶融している場合には(ステップS110の「Y」)、ボイド検査部48は疑似断面画像生成部40からはんだボールを部分的に映し出している疑似断面画像を取得し、ボイドが存在するか否かを検査する(ステップS112)。ボイドが見つからない場合には(ステップS114の「N」)、ボイド検査部48は、はんだの接合状態は正常と判断し(ステップS116)、その旨を記憶部34に出力する。また、ブリッジを検出した場合(ステップS106の「Y」)、はんだが溶融していない場合(ステップS110の「N」)、またはボイドが存在する場合(ステップS114の「Y」)には、それぞれブリッジ検査部44、溶融状態検査部46、およびボイド検査部48ははんだの接合状態は異常と判断して(ステップS118)その旨を記憶部34に出力する。はんだの状態が記憶部34に出力されると、本フローチャートにおける処理は終了する。
【0030】
また、検査装置1の制御部10は、検査時に被検査体(基板)に照射される放射線(X線)の量(線量または被曝量)を演算により算出する被曝量算出部50を有している。この被曝量算出部50は、電子基板、電子部品等の被検査体のX線検査において、実際に線量計を用いた被曝量測定を実施せずに、パーソナルコンピュータ(PC)又は何らかの演算機構が組み込まれた装置である制御部10を用いて、検査装置1の動き(放射線発生器22に対する基板保持部24の相対移動)をシミュレートすることで、被曝量を計算するものである。
【0031】
被曝量算出部50は、予め記憶部34に記憶されている放射線発生器22に関する情報に基づいて基板保持部24に載置されている被検査体の被曝量を計算する。具体的には、予め、線質変更部14により、放射線発生器22に対する管電圧及び管電流等を所定の値に設定して放射線発生器22の直下の所定の位置(放射線発生器22の焦点を通る軸上(Z軸上)の所定の位置)に線量計を配置して測定した値(基準線量)を、Z軸方向の位置(座標)、並びに、管電圧及び管電流等の値と関連付けて記憶部34に記憶する。例えば、線量計を所定の位置に配置し、管電圧を10kV刻み、管電流を50μA刻みで複数計測して記憶部34に記憶する。なお、事前に測定する線量は、放射線発生器22の直下だけでなく、例えば、この直下の測定点からX軸及びY軸方向に移動させて複数の点で測定してもよい。管電圧及び管電流と線量の関係を平面近似や線形補間などを用いることで、事前に測定する情報を減らすことができる。また、被検査体の被曝量は、被検査体(基板保持部24)と放射線発生器22との距離の二乗に反比例して減衰するため、放射線発生器22の直下と周辺でのX線量の減衰量を計算式で求めることにより、事前測定を放射線発生器22の直下の所定の位置のみとすることができる。
【0032】
被曝量算出部50による処理を、図4図13を用いて説明する。図4に示すように、被曝量算出処理が開始されると、制御部10の被曝量算出部50は、まず、記憶部34から、検査情報を読み込む(ステップS200)。ここで、検査情報とは、検査対象の被検査体のサイズ(基板のサイズ)や、この基板に搭載されている部品の位置、名称及び各々の部品のサイズ等である。次に、被曝量算出部50は、記憶部34から、撮影条件(検査時のX線撮像条件)を読み込む(ステップS202)。ここで、撮影条件とは、放射線発生器22の管電圧、管電流、露光時間、拡大率(放射線発生器22と基板保持部24及び検査器26との距離)、プラナーCTにおけるチルト角(放射線発生器22の焦点を通る軸に対する角度)CT計算に使用する透過画像撮像枚数等である。
【0033】
さらに、被曝量算出部50は、指定された放射線発生器22の種類(線源種類)を取得する(ステップS204)。ここで、線源種類とは、放射線発生器22であるX線源の種類や、このX線源に取り付けられた物理的なフィルターの情報である。なお、この線源種類は予め記憶部34に記憶しておき、この記憶部34から取得してもよいし、図示しないキーボードやマウス等の入力装置を用いて入力されたものを取得してもよい。例えば、X線源の種類としては、図5(a)のようにタングステンターゲットにてX線を発生させ、発生したX線がそのままタングステンを透過する透過型X線源や、図5(b)のようにタングステンターゲットに反射させてX線を発生させる反射型X線源であり、また、フィルターの種類としては、フィルターの材質(例えば亜鉛等)や板状の場合の厚さ(例えば100μmや200μm等)の情報である。また、フィルターは板状のタイプだけでなく、ボウタイフィルターやコリメーターなど、厚さ不均一のものや穴の開いたものでもよい。
【0034】
図4に戻り、被曝量算出部50は、上述したように、基板保持部24を、基板回転軌道28に沿って移動させて撮像が行われる動作をシミュレートして、このときの被曝量を演算して求める。具体的には、被曝量算出部50は、シミュレーション領域で1枚の透過画像撮像時の被曝量を演算で求めて、総被曝量(被曝量の合計値)に加算し(ステップS206)、次の撮像箇所があるか否かを判断し(ステップS208)、次の撮影箇所があると判断した場合(ステップS208のY)、次の撮影箇所への移動中の被曝量を演算で求めて総被曝量に加算し(ステップS210)、ステップS206に戻って処理を繰り返す。移動中の被曝量は微小時間における特定の位置の被曝量を、時間を微小時間ずつ進めながら積算することで求めることができる。被曝量の演算は、撮影条件及び記憶部34に記憶されている基準線量に基づいて、放射線発生器22と被検査体との相対位置から算出される。
【0035】
図6(a)は、ステップS206において、ある撮像位置(例えば撮像位置1)で計算された被曝量を図面として表したものである。黒色矩形内が被検査体(プリント基板等)の外形であり、被曝量算出処理における被曝量の算出の対象領域である。また、破線の矩形が被検査体上に搭載された検査対象の電子部品を示し、同心円状の円形の白色の領域が被曝量を表している。ここでは、被曝量が大きいほど白くなるように表現されている。
【0036】
ここで、撮像中の露光時間を100m秒とし、移動中は数十mmオーダーの距離を100m秒のオーダーで移動した場合、基板保持部24及び検出器26を停止させて撮像した場合の被曝量の分布は、図6(b)のようになり、基板保持部24及び検出器26が移動中の微小時間の被曝量の分布は図6(c)のようなる。このように、基板保持部24及び検出器26が移動中の被曝量は、基板保持部24及び検出器26が停止中の被曝量より少なくなる。
【0037】
また、図7(a)~(c)は、ステップS208で次の撮影箇所があると判断したときに、移動中において計算された被曝量を図面として表したものである。上述したように、所定の時間間隔(微小時間の間隔)で、移動した箇所(3箇所)で計算されたそれぞれの被曝量を示している。
【0038】
さらに、図8は、次の撮像位置(撮像位置2)において、ステップS206で計算された被曝量を示している。
【0039】
図9(a)は、放射線発生器22から放射線を発生させた状態で、撮像と移動を繰り返した場合であって、上述した2つの位置(撮像位置1及び2)で撮像したときの被曝量(図6(a)及び図8)と、移動時の被曝量(図7(a)~(c))とを積算した被曝量を示している。なお、移動時は放射線発生器22からの放射線の発生を停止させたとき(撮像位置でのみ放射線発生器22から放射線を発生させたとき)の被曝量は、図9(b)のようになる。
【0040】
図10は、放射線発生器22から放射線を発生させた状態で、撮像と移動を繰り返したときの、検査対象領域全てを撮像した際の総被曝量の分布を示している。このように、1回の検査における撮影時と移動時の総被曝量を求めることにより、撮影時のみならず移動時の被曝量も求めることができる。
【0041】
また、上述した処理では、基板保持部24を停止させて撮影して次の撮影箇所に移動する構成に基づいて説明したが、基板保持部24を移動させたまま停止させずに撮影する構成の場合も同様の方法で総被曝量を求めることが可能である。この場合、上述したように、微小時間における特定の位置の被曝量を、時間を微小時間ずつ進めながら積算することで総被曝量を求めることができる。この場合の被曝量を図11(a)に示す。また、基板保持部24が移動しているときに、放射線発生器22からX線が照射されない構成の場合は、図11(b)に示すように、移動中の被曝量は0となる。
【0042】
なお、ステップS206の撮影時の被曝量の計算、及び、ステップS210の移動時の被曝量の計算において、放射線発生器22からの基板保持部24の位置(距離)に基づいて算出された被曝量に対して、放射線発生器22に対する角度に応じた不均一性やムラを補正するように構成してもよい。たとえば、図5(a)に示すように、X線を100μmの厚さの板状のフィルター22aを透過させる場合、直下の被検査体に対しては100μmの通過長になるが、45度方向では√2倍の141μmの通過長となるため、この通過長の違いを補正する。図12(a)はフィルター22aがない場合の被曝量を示している。これに対し、図12(b)はフィルター22aを配置した場合の被曝量を示している。このように、外側に行くほどフィルターの通過距離が長くなり、X線の減衰量も大きくなるため、被曝量も少なくなっている。一方、X線吸収の少ないベリリウム窓の場合は、斜め方向の吸収もほとんどないため、補正を行う必要はない。
【0043】
また、ステップS206及びステップS210の被曝量の計算においては、シミュレーション対象の基板全域(基板保持部24の基板が載置される領域)を、特定のサイズ(例えば1mm)の部分領域に分割し、それぞれの部分領域の被曝量を計算して、それぞれの部分領域の総被曝量に加算することにより、被検査体上の総被曝量の分布を求めることができる。
【0044】
図4に戻り、被曝量算出部50は、次の撮影箇所がないと判断した場合(ステップS208のN)、上述した総被曝量の分析処理を行う(ステップS212)。例えば、上述したように、基板全域を部分領域に分割し、各々の部分領域の総被曝量を算出した場合は、被曝量の分布を求める処理を行う。また、基板上に配置されている部品毎に、この部品の領域内の部分領域の総被曝量の合計を求めることにより、部品毎の被曝量(合計値)を求めることができる。例えば、図10において、破線で示されている部品の面積と被曝量分布に応じて、各部品の総被曝量が求められる。
【0045】
最後に、被曝量算出部50は、分析結果(算出結果)を出力する(ステップS214)。出力先は記憶部34でもよいし、モニタ12でもよい。図13は、モニタ12の画面12aに、分析結果を出力した例である。例えば、基板全域を画面上の領域12bとして表示し、被曝量の分布を所定の被曝量毎に等高線で表示することができる。このとき、最も被曝している領域を赤で表示し、最も被曝していない領域を青で表示し、それ以外の領域を他の色で表示することができる。また、被曝量を数値として表示してもよい。
【0046】
また、部品毎の被曝量を算出した場合は、画面上の領域12cに、被曝量の多い順に部品を並べて、被曝量とともに表示することができる。また、領域12bに基板上の被曝量の分布を表示するときに、基板の画像を重ねて表示することで、基板上に搭載されている部品と被曝量の分布との関係を目視で確認することができる。
【0047】
以上のように、制御部10の被曝量算出部50により、検査において被検査体が被曝する量を演算により求めることにより、実際に被検査体にX線を照射する前(検査の前)に予め被検査体が被曝する量を推定することができる。ユーザは、所定の撮像条件(上述したように、CT計算のための透過画像撮像枚数、管電圧、管電流、露光時間、拡大率等)を設定して被曝量を算出してモニタ12に表示させ、さらに、画質やタクトタイムを考慮して撮像条件を変更して再度被曝量を算出してモニタ12に表示させるという処理を繰り返すことにより、最適な被曝量となる撮像条件を設定することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 検査装置
10 制御部
22 放射線発生器(線源)
34 記憶部
50 被曝量算出部(算出部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13