(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】ホース
(51)【国際特許分類】
F16L 11/08 20060101AFI20240823BHJP
【FI】
F16L11/08 A
(21)【出願番号】P 2020068494
(22)【出願日】2020-04-06
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100174023
【氏名又は名称】伊藤 怜愛
(72)【発明者】
【氏名】福島 吉博
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-036927(JP,A)
【文献】特開平08-159344(JP,A)
【文献】国際公開第2016/208197(WO,A1)
【文献】特開2018-150980(JP,A)
【文献】特開平08-200561(JP,A)
【文献】特開2018-150979(JP,A)
【文献】特開2019-035461(JP,A)
【文献】特開2006-220262(JP,A)
【文献】特開2005-291466(JP,A)
【文献】国際公開第2018/164082(WO,A1)
【文献】特開昭63-042985(JP,A)
【文献】実開平04-060589(JP,U)
【文献】特開昭60-143286(JP,A)
【文献】特開2009-197856(JP,A)
【文献】特開2010-131875(JP,A)
【文献】実開昭61-004089(JP,U)
【文献】登録実用新案第3213787(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第109027449(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間ゴム層と、
前記中間ゴム層の内周側及び外周側にそれぞれ隣接する一対の補強層と、
を備えたホースにおいて、
前記一対の補強層のうち少なくとも一方は、複数のスチールフィラメントを撚り合わせてなるスチールコードから構成されており、
前記複数のスチールフィラメントのうち最外周側に位置するとともに互いに接触する一対のスチールフィラメントと前記スチールコードの外接円との接点どうしの距離である隙間幅をA(mm)とし、前記一対のスチールフィラメントの共通外接線から当該一対のスチールフィラメントどうしの接触点までの距離である隙間深さをB(mm)とし、前記中間ゴム層の厚みをC(mm)としたとき、
(A/B)×C≧1.11(mm)
を満たし、
前記一対のスチールフィラメントどうしの間の隙間のうち、前記共通外接線よりも前記スチールコードの内周側に位置する隙間に、前記中間ゴム層を構成するゴムが入り込んで
おり、
前記ホースの口径は、5~80mmであり、
前記中間ゴム層の厚みは、0.25~0.60mmである、ホース。
【請求項2】
前記スチールコードの剛性をDとしたとき、
(A/B)×C×D≧18.2(mm)
を満たす、請求項1に記載のホース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、中間ゴム層と、中間ゴム層の内周側及び外周側にそれぞれ隣接する一対の補強層と、を備えたホースであって、補強層が、複数のスチールフィラメントを撚り合わせてなるスチールコードから構成されたものがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のようなホースにおいては、中間ゴム層と補強層のスチールフィラメントとの間の隙間量を低減し、ひいては、補強層のスチールフィラメントどうしの間の隙間での中間ゴム層の充填率を向上できる余地があった。
【0005】
本発明は、補強層のスチールフィラメントどうしの間の隙間での中間ゴム層の充填率を向上できる、ホースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のホースは、
中間ゴム層と、
前記中間ゴム層の内周側及び外周側にそれぞれ隣接する一対の補強層と、
を備えたホースにおいて、
前記一対の補強層のうち少なくとも一方は、複数のスチールフィラメントを撚り合わせてなるスチールコードから構成されており、
前記複数のスチールフィラメントのうち最外周側に位置するとともに互いに接触する一対のスチールフィラメントと前記スチールコードの外接円との接点どうしの距離である隙間幅をA(mm)とし、前記一対のスチールフィラメントの共通外接線から当該一対のスチールフィラメントどうしの接触点までの距離である隙間深さをB(mm)とし、前記中間ゴム層の厚みをC(mm)としたとき、
(A/B)×C≧1.11(mm)
を満たす。
本発明のホースによれば、補強層のスチールフィラメントどうしの間の隙間での中間ゴム層の充填率を向上できる。
【0007】
本発明のホースにおいては、
前記スチールコードの剛性をDとしたとき、
(A/B)×C×D≧18.2(mm)
を満たすと、好適である。
これにより、補強層のスチールフィラメントどうしの間の隙間での中間ゴム層の充填率をさらに向上できる。
【0008】
本発明のホースにおいては、
前記一対のスチールフィラメントどうしの間の隙間に、前記中間ゴム層を構成するゴムが入り込んでいると、好適である。
これにより、補強層のスチールフィラメントどうしの間の隙間での中間ゴム層の充填率をさらに向上できる。
【0009】
本発明のホースにおいては、
前記一対のスチールフィラメントどうしの間の隙間のうち、前記共通外接線よりも前記スチールコードの内周側に位置する隙間に、前記中間ゴム層を構成するゴムが入り込んでいると、好適である。
これにより、補強層のスチールフィラメントどうしの間の隙間での中間ゴム層の充填率をさらに向上できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、補強層のスチールフィラメントどうしの間の隙間での中間ゴム層の充填率を向上できる、ホースを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係るホースを概略的に示す、斜視図である。
【
図2】本発明の他の実施形態に係るホースを概略的に示す、斜視図である。
【
図3】本発明のさらに他の実施形態に係るホースの一部を概略的に示す、ホースの断面図である。
【
図4】本発明の任意の実施形態に係るホースを構成し得るスチールコードの一例を概略的に示す、スチールコードの断面図である。
【
図5】本発明の任意の実施形態に係るホースを構成し得るスチールコードの他の例を概略的に示す、スチールコードの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のホースは、例えば高圧ホースに好適に利用できる。また、本発明のホースは、液体(油又は水等)等の流体を伝送するのに用いられると好適なものである。本発明のホースは、例えば、建設機械や工場設備(油圧駆動装置等)等に装着された状態で使用されると好適である。本発明のホースは、高圧ホースとして構成される場合、所定の最高使用圧力が、例えば、1Ma以上、10MPa以上、20Ma以上、あるいは、30Ma以上等に設定されることができる。本発明のホースの口径は、例えば5~80mmとすることができる。
以下に、図面を参照しつつ、本発明に係るホースの実施形態を例示説明する。
【0013】
本発明の任意の実施形態に係るホース1は、例えば
図1に示す実施形態や
図2に示す別の実施形態のように、内側ゴム層11と、1つ又は複数の中間ゴム層13と、複数の補強層12と、外側ゴム層14と、を備えることができる。内側ゴム層11と、1つ又は複数の中間ゴム層13と、複数の補強層12と、外側ゴム層14とは、同軸状に径方向に積層されている。内側ゴム層11、中間ゴム層13、及び外側ゴム層14は、それぞれゴムから構成されている。内側ゴム層11は、最も内周側のゴム層である。外側ゴム層14は、最も外周側のゴム層である。上記1つ又は複数の中間ゴム層13と上記複数の補強層12とは、それぞれ、内側ゴム層11よりも外周側、かつ、外側ゴム層14よりも内周側に、位置している。中間ゴム層13の内周側及び外周側には、それぞれ、別々の補強層12(一対の補強層12)が、他の層を間に挟むことなく、隣接している。ただし、後に説明する
図3に示すように、中間ゴム層13の少なくとも一部は、中間ゴム層13の内周側及び外周側に隣接する各補強層12の一部と、同じ径方向位置に位置していると、好適である。中間ゴム層13は、その内周側及び外周側に隣接する一対の補強層12が相互にずれることを抑制するとともに、当該一対の補強層12が相互に接触して摩耗することを抑制する機能を有する。補強層12は、ホース1の耐圧性を確保する機能を有する。
補強層12の層数は、例えば2~6層とすることができる。
なお、任意の複数の補強層12どうしが、中間ゴム層13を間に挟むことなく、径方向に隣接していてもよい。
補強層12及び中間ゴム層13どうしは、接着(加硫接着かつ/又は接着剤による接着)されていると、好適である。
【0014】
本明細書において、「径方向」、「外周側」、「内周側」とは、特に断りが無い限り、ホース1の中心軸線を中心軸線としたときの「径方向」、「外周側」、「内周側」を、それぞれ指す。また、本明細書において、「軸線方向」とは、ホース1の中心軸線に平行な方向を指す。また、「軸直方向」とは、「軸線方向」に対し垂直な方向を指す。
【0015】
図示は省略するが、本発明の任意の実施形態に係るホース1は、外側ゴム層14の外周側を覆う、例えばビニール製又は金属製等の保護カバー(外装保護部品)を、さらに備えてもよい。保護カバーにより、熱や外傷等からの保護を強化できる。この場合、保護カバーは、外側ゴム層14に対して接着されていなくてもよい。
また、図示は省略するが、本発明の任意の実施形態に係るホース1は、内側ゴム層11とその外周側に隣接する補強層12との間に、例えば有機繊維等の補強糸を編んで形成される補強糸層15を、さらに備えてもよい。
【0016】
以下、補強層12についてさらに詳しく説明する。なお、以下に説明する補強層12の構成は、特に断りが無い限り、本発明の任意の実施形態に係るホース1において、いずれか1つの中間ゴム層13の内周側及び外周側にそれぞれ隣接する一対の補強層12のうち少なくとも一方(好適には両方)が満たしていればよいが、各中間ゴム層13の内周側及び外周側にそれぞれ隣接する一対の補強層12の少なくとも一方(好適には両方)が満たしていると好適であり、ホース1が備える全ての補強層12が満たしているとさらに好適である。
【0017】
補強層12は、スチールコード120から構成されている。補強層12は、例えば、
図1の例のように、スチールコード120をスパイラル状に巻き付けて形成された形態(スパイラル形態)からなるものであってもよいし、あるいは、
図2の例のように、スチールコード120を編組して形成された形態(編組形態)からなるものであってもよい。本発明の任意の実施形態に係るホース1は、全ての補強層12がスパイラル形態からなるものであってもよいし、全ての補強層12が編組形態からなるものであってもよいし、あるいは、編組形態の補強層12とスパイラル形態の補強層12とを備えてもよい。
図1の例のように、ホース1が複数のスパイラル形態の補強層12を備える場合、中間ゴム層13を介して互いに径方向に隣接する一対のスパイラル形態の補強層12どうしは、スチールコード120の巻き付け方向が反対になっていると、好適である。
【0018】
図3は、本発明のさらに他の実施形態に係るホース1の一部を概略的に示す、ホースの断面図である。
図3に示す構成は、上述した
図1及び
図2の各実施形態を含む、任意の実施形態のホース1に適用できる。
図4は、本発明の任意の実施形態に係るホース1を構成し得るスチールコード120の一例を概略的に示す、スチールコードの断面図である。
図4に示すスチールコード120は、
図3に示すスチールコード120と同じである。
図5は、本発明の任意の実施形態に係るホース1を構成し得るスチールコード120の他の例を概略的に示す、スチールコードの断面図である。
図3~
図5に示すように、補強層12を構成するスチールコード120は、複数のスチールフィラメント121を撚り合わせてなるものである。ここで、仮に、スチールコード120を構成する複数のスチールフィラメント121のうち、一部の複数のスチールフィラメント121が撚り合わされていなくても、他の複数のスチールフィラメント121どうしが撚り合わされていれば、全体として、スチールコード120が「複数のスチールフィラメント121を撚り合わせてなる」ものとする。
補強層12を構成するスチールコード120は、例えば
図3~
図4に示す例のように、コアが設けられずにn(nは自然数。2≦n)本のスチールフィラメント121が撚り合わされてなる1×n構造からなるものとすることができる。より具体的に、
図3~
図4の例において、スチールコード120は、コアが設けられずに3本のスチールフィラメント121が撚り合わされてなる1×3構造からなる。
あるいは、補強層12を構成するスチールコード120は、例えば
図5に示す例のように、m(mは自然数。例えば1≦m≦3)本のスチールフィラメント121からなるコアの周囲に、p(pは自然数。例えば5≦p≦9)本のスチールフィラメント121が撚り合わされてなるシース層が設けられた、(m+p)構造からなるものとすることができる。当該コアが複数のスチールフィラメント121からなる場合、当該複数のスチールフィラメント121は、撚り合されてもよいし、撚り合わされていなくてもよい。より具体的に、
図5の例において、スチールコード120は、1本のスチールフィラメント121からなるコアの周囲に、6本のスチールフィラメント121が撚り合わされてなるシース層が設けられた、(1+6)構造からなる。
【0019】
スチールコード120を構成する複数のスチールフィラメント121は、
図3~
図5の各例のようにそれぞれの直径が均一であってもよいし、あるいは、それぞれの直径が不均一であってもよい。
【0020】
本発明の各実施形態に係るホース1は、補強層12のスチールコード120が、つぎの式(1)を満たす。
(A/B)×C≧1.11(mm) ・・・(1)
式(1)において、A(mm)は隙間幅(
図4~
図5)であり、B(mm)は隙間深さ(
図4~
図5)であり、C(mm)は中間ゴム層13の厚み(
図3)である。隙間幅Aは、スチールコード120を構成する複数のスチールフィラメント121のうちスチールコード120の最外周側に位置するとともに互いに接触する任意の一対のスチールフィラメント121a、121bとスチールコード120の外接円Eとの接点P1、P2どうしの距離である(
図4~
図5)。隙間深さBは、上記一対のスチールフィラメント121a、121bの共通外接線Lから上記一対のスチールフィラメント121a、121bどうしの接触点P3までの距離(最短距離)である。中間ゴム層13の厚みC(
図3)は、中間ゴム層13における最内周位置から最外周位置までの厚みを、ホース1の径方向に沿って測るものとする。
【0021】
ここで、本発明の各実施形態に係るホース1の作用効果について説明する。
まず、従来のホースにおいては、中間ゴム層と補強層のスチールフィラメントとの間の隙間量が多いため、中間ゴム層と補強層のスチールフィラメントひいてはスチールコードとの接着性を十分に得られない場合があった。
この点に着目した本発明の発明者は、補強層12のスチールコード120における隙間深さBに対する隙間幅Aの比(A/B)が大きいほど、また、中間ゴム層13の厚みCが大きいほど、中間ゴム層13を補強層12のスチールフィラメント121どうしの間の隙間G1に入り込ませることができ、ひいては、中間ゴム層13と補強層12のスチールフィラメント121との間の隙間量を低減し、補強層12のスチールフィラメント121どうしの間の隙間G1での、中間ゴム層13を構成するゴムの充填率を向上できることを、新たに見出し、本発明をするに至った。
本発明の各実施形態に係るホース1によれば、上記式(1)を満たすことにより、
図3に示すように、中間ゴム層13を補強層12のスチールフィラメント121どうしの間の隙間G1に入り込ませることができ、ひいては、中間ゴム層13と補強層12のスチールフィラメント121との間の隙間量を低減し、補強層12のスチールフィラメント121どうしの間の隙間G1での、中間ゴム層13を構成するゴムの充填率を向上できる。それにより、中間ゴム層13と補強層12のスチールフィラメント121との接触面積を増大させることができるので、中間ゴム層13と補強層12のスチールフィラメント121ひいてはスチールコード120との接着性を向上できる。
【0022】
上記と同様の観点から、本明細書で説明する各例においては、
図3に示すように、スチールコード120を構成する複数のスチールフィラメント121のうちスチールコード120の最外周側に位置するとともに互いに接触する任意の一対のスチールフィラメント121a、121bどうしの間の隙間G1に、中間ゴム層13を構成するゴムが入り込んでいると、好適である。これにより、補強層12のスチールフィラメント121どうしの間の隙間G1での中間ゴム層13の充填率を向上でき、ひいては、中間ゴム層13と補強層12のスチールフィラメント121との接着性を向上できる。
なお、本明細書において、「スチールフィラメント(121)どうしの間の隙間(G1)」とは、スチールコード(120)の断面(
図3)において、スチールコード(120)の外接円(E)と、スチールコード(120)を構成する各スチールフィラメント(121)の表面との間に、区画される隙間を指す。
【0023】
また、本明細書で説明する各例においては、
図3に示すように、スチールコード120を構成する複数のスチールフィラメント121のうちスチールコード120の最外周側に位置するとともに互いに隣接する任意の一対のスチールフィラメント121a、121bどうしの間の隙間G1のうち、当該一対のスチールフィラメント121a、121bの共通外接線Lよりもスチールコード120の内周側に位置する隙間G2に、中間ゴム層13を構成するゴムが入り込んでいると、さらに好適である。これにより、補強層12のスチールフィラメント121どうしの間の隙間G1での中間ゴム層13の充填率をさらに向上でき、ひいては、中間ゴム層13と補強層12のスチールフィラメント121との接着性をさらに向上できる。
【0024】
本明細書で説明する各例において、ホース1は、補強層12のスチールコード120が、
(A/B)×C≧1.3(mm)
を満たすと好適である。
これにより、補強層12のスチールフィラメント121どうしの間の隙間G1での中間ゴム層13の充填率をさらに向上できる。
【0025】
本明細書で説明する各例において、ホース1は、製造性等の観点から、例えば、
(A/B)×C≦2.2(mm)
を満たすと好適である。
【0026】
本明細書で説明する各例において、ホース1は、スチールコード120の剛性をD(指数)としたとき、
(A/B)×C×D≧15.59(mm) ・・・(2)
を満たすと、好適である。
スチールコード120の剛性が高いほど、スチールコード120のスチールフィラメント121は、中間ゴム層13からの圧力に耐えて形状を維持することができるので、中間ゴム層13を補強層12のスチールフィラメント121どうしの間の隙間G1にさらに入り込ませることができ、ひいては、補強層12のスチールフィラメント121どうしの間の隙間G1での中間ゴム層13の充填率をさらに向上できる。
本明細書において、スチールコード120の剛性D(指数)は、つぎの式(3)により求められる。
D=Σ(dn
4×Nn)/0.64×100(指数) ・・・(3)
式(3)において、dn(mm)は、スチールフィラメント121の直径である。Nnは、当該直径dnを有するスチールフィラメント121の数である。nは、スチールフィラメント121の直径毎に付与した番号である。すなわち、nが異なるスチールフィラメント121どうしは、互いに直径が異なる。
例えば、スチールコード120が1×3構造からなり、各スチールフィラメント121の直径がそれぞれd1である場合、当該スチールコード120の剛性Dは、
D=(d1
4×3)/0.64×100(指数)
により求めることができる。
また、例えば、スチールコード120が1+6構造からなり、コアのスチールフィラメント121の直径がd1であり、シース層の各スチールフィラメント121の直径がそれぞれd2である場合、当該スチールコード120の剛性Dは、
D=(d1
4×1+d2
4×6)/0.64×100(指数)
により求めることができる。
【0027】
本明細書で説明する各例において、ホース1は、
(A/B)×C×D≧18.2(mm)
を満たすと、さらに好適である。
これにより、補強層12のスチールフィラメント121どうしの間の隙間G1での中間ゴム層13の充填率をさらに向上できる。
【0028】
本明細書で説明する各例において、ホース1は、製造性等の観点から、例えば、
(A/B)×C×D≦31.2(mm)
を満たすと好適である。
【0029】
本明細書で説明する各例においては、補強層12のスチールフィラメント121どうしの間の隙間G1での中間ゴム層13の充填率を向上させる観点から、補強層12を構成するスチールコード120は、1×n(nは自然数。2≦n)構造からなると好適であり、1×2構造、1×3構造、又は、1×4構造からなると、さらに好適である。
【0030】
本明細書で説明する各例においては、補強層12のスチールフィラメント121どうしの間の隙間G1での中間ゴム層13の充填率を向上させる観点から、中間ゴム層13の厚みC(
図3)は、0.25mm以上であると好適であり、0.30mm以上であるとより好適である。
本明細書で説明する各例においては、製造性等の観点から、中間ゴム層13の厚みCは、0.60mm以下であると好適である。
【0031】
本明細書で説明する各例においては、スチールコード120の断面におけるスチールコード120の外接円Eの直径は、例えば0.3~0.9mmが好適である。
【実施例】
【0032】
本発明のホースの実施例1~2及び比較例1を試作し評価したので、説明する。
実施例1~2、比較例1のホースは、いずれも、中間ゴム層と、中間ゴム層の内周側及び外周側にそれぞれ隣接する一対の補強層と、を備えたものであり、また、各補強層は、複数のスチールフィラメントを撚り合わせてなるスチールコードから構成されていた。各例のホースは、いずれも、各補強層がスパイラル形態からなるものであり、スチールコードの断面におけるスチールコードの外接円の直径が0.6mmであった。各例のホースのその他の構成の詳細は、表1に示すとおりである。なお、実施例1~2は、各スチールフィラメントの直径が0.28mmであった。比較例1は、コアのスチールフィラメントの直径が0.210mmであり、シース層の各スチールフィラメントの直径が0.195mmであった。
表1において、「ピッチ(mm)」とは、補強層のスチールコードを構成する複数のスチールフィラメントの撚りピッチを意味する。
各例のホースに関し、補強層のスチールフィラメントどうしの間の隙間での中間ゴム層の充填の程度を評価した。この評価にあたっては、補強層のスチールフィラメントどうしの間の隙間での中間ゴム層の充填率が非常に高い場合に「〇」と評価し、当該充填率が十分に高い場合に「△」と評価し、当該充填率が十分でない場合に「×」と評価した。その結果を、表1に示す。
【0033】
【0034】
表1からわかるように、上記式(1)を満たす実施例1~2は、上記式(1)を満たさない比較例1に比べ、補強層のスチールフィラメントどうしの間の隙間での中間ゴム層の充填率が高かった。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明のホースは、例えば高圧ホースに好適に利用できる。また、本発明のホースは、液体(油又は水等)等の流体を伝送するのに用いられると好適なものである。
【符号の説明】
【0036】
1:ホース、
11:内側ゴム層、 12:補強層、 120:スチールコード、 121、121a、121b:スチールフィラメント、 13:中間ゴム層、 14:外側ゴム層、
L:共通外接線、 E:外接円、 G1、G2:隙間