(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】電子回路、電流計測装置、電圧計測装置、電力変換器、およびインバータ
(51)【国際特許分類】
H03F 3/38 20060101AFI20240823BHJP
H02M 7/12 20060101ALI20240823BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20240823BHJP
H02M 1/00 20070101ALI20240823BHJP
H04L 25/02 20060101ALI20240823BHJP
H03K 19/0175 20060101ALN20240823BHJP
H03K 17/689 20060101ALN20240823BHJP
H03K 17/0812 20060101ALN20240823BHJP
H03K 17/08 20060101ALN20240823BHJP
【FI】
H03F3/38 210
H02M7/12 Q
H02M7/12 F
H02M7/48 E
H02M1/00 E
H02M1/00 H
H04L25/02 303B
H03K19/0175 280
H03K17/689
H03K17/0812
H03K17/08 C
(21)【出願番号】P 2020114811
(22)【出願日】2020-07-02
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118876
【氏名又は名称】鈴木 順生
(74)【代理人】
【識別番号】100206243
【氏名又は名称】片桐 貴士
(72)【発明者】
【氏名】高谷 聡
(72)【発明者】
【氏名】石原 寛明
(72)【発明者】
【氏名】鬼塚 浩平
【審査官】福田 正悟
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-165809(JP,A)
【文献】特開昭61-045611(JP,A)
【文献】特開平11-196136(JP,A)
【文献】特開2000-037073(JP,A)
【文献】特開2016-208770(JP,A)
【文献】国際公開第2020/021681(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 3/38
H02M 7/12
H02M 7/48
H02M 1/00
H04L 25/02
H03K 19/0175
H03K 17/689
H03K 17/0812
H03K 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1クロック信号および前記第1クロック信号を遅延させた第2クロック信号を生成する生成回路と、
前記第1クロック信号および前記第2クロック信号の
少なくとも一方を、絶縁部を介する電磁界結合により伝送
し、一部が入力側に、他の一部が出力側に含まれるように配置された第1キャパシタを含む第1電磁界結合部と、
前記第1電磁界結合部から伝送された、前記第1クロック信号および前記第2クロック信号の一方により駆動し、入力信号を前記第1クロック信号および前記第2クロック信号の一方に対応する周波数の第1信号に変換する第1周波数変換器と、
前記第1信号を、絶縁部を介する電磁界結合により伝送
し、一部が入力側に、他の一部が出力側に含まれるように配置された第2キャパシタを含む第2電磁界結合部と、
前記第1クロック信号および前記第2クロック信号の他方を用いて、前記第2電磁界結合部から伝送された前記第1信号を前記入力信号に対応する周波数の第2信号に変換する第2周波数変換器と、
前記第2信号を出力する出力部と、
前記第1電磁界結合部と前記第1周波数変換器の間を、前記第1クロック信号および前記第2クロック信号の一方が伝送される第1線路に接続される第1保護回路と、を備える、電子回路。
【請求項2】
前記第1保護回路は、前記入力信号の中間電位と、前記第1電磁界結合部及び前記第1周波数変換器の接続ノードの電位との電位差が所定の基準値を超えた場合に動作する、請求項1に記載の電子回路。
【請求項3】
前記第1保護回路は、
第1ゲート端子および第1ドレイン端子を有し、前記第1ゲート端子と前記第1ドレイン端子とが接続される第1トランジスタと、
前記第1トランジスタと並列に接続され、第2ゲート端子および第1ソース端子を有し、前記第2ゲート端子と前記第1ソース端子とが接続される第2トランジスタと、を含む、請求項1または2に記載の電子回路。
【請求項4】
前記第1保護回路は、
前記第1トランジスタと直列に接続され、第3ゲート端子および第2ドレイン端子を有し、前記第3ゲート端子と前記第2ドレイン端子とが接続される第3トランジスタと、
前記第2トランジスタと直列に接続され、第4ゲート端子および第2ソース端子を有し、前記第4ゲート端子と前記第2ソース端子とが接続される第4トランジスタと、をさらに含む、請求項3に記載の電子回路。
【請求項5】
前記第1保護回路は、
第1ゲート端子および第1ドレイン端子を有する第1トランジスタと、
前記第1ドレイン端子と接続される第2ゲート端子および前記第1ゲート端子と接続される第2ドレイン端子を有する第2トランジスタと、を含む、請求項1または2に記載の電子回路。
【請求項6】
前記第1保護回路は、
前記第1トランジスタと直列に接続され、前記第1ゲート端子および前記第2ドレイン端子と接続される第3ゲート端子を有する第3トランジスタと、
前記第2トランジスタと直列に接続され、前記第2ゲート端子および前記第1ドレイン端子と接続される第4ゲート端子を有する第4トランジスタと、をさらに含む、請求項5に記載の電子回路。
【請求項7】
前記第1周波数変換器と前記第2電磁界結合部の間を、前記第1信号が伝送される第2線路に接続される第2保護回路をさらに備える、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の電子回路。
【請求項8】
前記入力信号が入力される入力端子と、
前記入力端子と前記第1周波数変換器の間を、前記入力信号が伝送される第3線路に接続される第3保護回路と、をさらに備える、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の電子回路。
【請求項9】
前記第2信号の振幅に基づいて、前記生成回路が遅延させる遅延量を決定する制御回路をさらに備える、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の電子回路。
【請求項10】
前記制御回路は、前記第2信号の振幅の最大値に基づいて、前記生成回路が遅延させる遅延量を決定する、請求項9に記載の電子回路。
【請求項11】
前記第1電磁界結合部および前記第2電磁界結合部のそれぞれは、電気的に絶縁されている絶縁部を介して電磁界結合する、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の電子回路。
【請求項12】
前記電子回路は、第1チップおよび第2チップを含み、
前記第1チップは前記第1電磁界結合部、前記第2電磁界結合部、および第1周波数変換器を含み、
前記第2チップは第2周波数変換器を含む、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の電子回路。
【請求項13】
前記電子回路は、少なくとも第1チップおよび第2チップを含み、
前記第1チップは前記第1電磁界結合部、前記第2電磁界結合部、および第2周波数変換器を含み、
前記第2チップは第1周波数変換器を含む、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の電子回路。
【請求項14】
前記第1電磁界結合部と接続され、前記第1電磁界結合部から伝送された信号を電磁界結合によって伝送する第3電磁界結合部と、
前記第2電磁界結合部と接続され、前記第2電磁界結合部から伝送された信号を電磁界結合によって伝送する第4電磁界結合部と、をさらに備え、
前記電子回路は、少なくとも第1チップおよび第2チップを有し、
前記第1チップは前記第1電磁界結合部および前記第2電磁界結合部を含み、
前記第2チップは前記第3電磁界結合部および前記第4電磁界結合部を含む、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の電子回路。
【請求項15】
電子機器または電気機器の入力電流または出力電流を計測する電流計測装置であって、
請求項1乃至14のいずれか一項に記載の電子回路と、
前記入力電流または前記出力電流を電圧に変換する第1抵抗部と、を備え、
前記入力信号は、前記第1抵抗部の第1端における電圧を示す第1電圧信号および前記第1抵抗部の第2端における電圧を示す第2電圧信号であり、
前記第2信号は、前記入力電流または前記出力電流を示す信号である、電流計測装置。
【請求項16】
電子機器または電気機器の入力電圧を計測する電圧計測装置であって、
請求項1乃至14のいずれか一項に記載の電子回路と、
前記入力電圧を分圧する第2抵抗部および第3抵抗部と、を備え、
前記入力信号は、前記第2抵抗部と接続される前記第3抵抗部の第1端における電圧を示す第3電圧信号、および前記第3抵抗部の第2端における電圧を示す第4電圧信号であり、
前記第2信号は、前記入力電圧を示す信号である、電圧計測装置。
【請求項17】
請求項15に記載され、前記入力電流を計測する電流計測装置と、
請求項16に記載の電圧計測装置と、
直流電流を生成するスイッチング素子と、
前記スイッチング素子に供給する電流を生成するゲートドライバと、
前記入力電流の値を示す信号および前記入力電圧の値を示す信号に基づいて、前記ゲートドライバが生成する電流を決定する制御部と、を備える、電力変換器。
【請求項18】
入力電流又は出力電流を計測する複数の電流計測装置と、
請求項16に記載の電圧計測装置と、
前記出力電流を生成する複数のスイッチング素子と、
前記複数のスイッチング素子のそれぞれに対応して設けられ、対応する前記スイッチング素子に供給する電流を生成する複数のゲートドライバと、
前記出力電流の値を示す信号および前記入力電圧の値を示す信号に基づいて、前記ゲートドライバが生成する出力電流を決定する制御部と、を備え、
前記複数の電流計測装置のそれぞれは、
請求項1乃至14のいずれか一項に記載の電子回路と、
前記入力電流または前記出力電流を電圧に変換する第1抵抗部と、を備え、
前記入力信号は、前記第1抵抗部の第1端における電圧を示す第1電圧信号および前記第1抵抗部の第2端における電圧を示す第2電圧信号であり、
前記第2信号は、前記電子機器または電気機器の入力電流または前記出力電流を示す信号である、インバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電子回路、電流計測装置、電圧計測装置、電力変換器、およびインバータに関する。
【背景技術】
【0002】
入力部と出力部の間を、絶縁を介してアナログ信号を伝達する電子回路が開発されている。この電子回路では、アナログ信号を一度高周波信号に変換し、電磁界結合により絶縁を介して伝達し、元のアナログ信号に復元する。この電子回路において、入力信号の電圧や基準電位の変動速度によっては、内部回路への充放電が間に合わず、電子回路が破壊される可能性がある。入力信号の電圧や基準電位の変動に対して、内部回路への充放電を行うことが可能な電子回路が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態が解決しようとする課題は、入力信号の電位や基準電位の変動に対応可能な電子回路、電流計測装置、電圧計測装置、電力変換器、およびインバータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、実施形態の電子回路は、第1クロック信号およびこの第1クロック信号を遅延させた第2クロック信号を生成する生成回路と、この第1クロック信号およびこの第2クロック信号の一方を電磁界結合によって伝送する第1電磁界結合部と、この第1電磁界結合部から伝送された、この第1クロック信号およびこの第2クロック信号の一方により駆動し、第1入力信号をこの第1クロック信号およびこの第2クロック信号の一方に対応する周波数の第1信号に変換する第1周波数変換器と、この第1信号を電磁界結合によって伝送する第2電磁界結合部と、この第1クロック信号およびこの第2クロック信号の他方を用いて、この第2電磁界結合部から伝送されたこの第1信号をこの第1入力信号に対応する周波数の第2信号に変換する第2周波数変換器と、この第2信号を出力する出力部と、この第1電磁界結合部とこの第1周波数変換器の間を、この第1クロック信号およびこの第2クロック信号の一方が伝送される第1線路に接続される第1保護回路を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図4】電子回路10と電子回路100において、入力コモンモード電位V
CMのスルーレートによる電位V
CLKA1の変動を説明する図。
【
図5】第1の実施形態に適用可能な電子回路100’の構成図。
【
図6】第1の実施形態に適用可能な電子回路100”の構成図。
【
図7】保護回路170aおよび170bのバリエーションを説明する図。
【
図9】第1の実施形態に適用可能な電子回路180の構成図。
【
図10】第1の実施形態に適用可能な電子回路180’の構成図。
【
図11】第1の実施形態に適用可能な電子回路100Tの構成図。
【
図12】第1の実施形態に適用可能な電子回路100Aの構成図。
【
図13】第1の実施形態に適用可能な電子回路100Bの構成図。
【
図14】第1の実施形態に適用可能な電子回路100Cの構成図。
【
図15】第1の実施形態に適用可能な電子回路100Dの構成図。
【
図16】第2の実施形態の電力変換器200の構成図。
【
図17】第3の実施形態のインバータ300の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、発明を実施するための実施形態について図面を参照して説明する。開示はあくまで一例にすぎず、以下の実施形態に記載した内容により発明が限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各部分のサイズ、形状等を実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照数字を付して、詳細な説明を省略する場合もある。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の電子回路100の構成図である。電子回路100は、絶縁部101(図面ではIsolation Barrierと称する)を備えており、絶縁部101を介してアナログ信号を伝送する回路である。電子回路100は、アイソレーションアンプとも呼ばれる。電子回路100は、図面ではIsolation Amplifierと称する。
【0009】
電子回路100は、絶縁部101によって入力端子INAおよびINBを含む入力側と出力端子OUTPおよびOUTNを含む出力側とは電気的に絶縁されている。電子回路100は入力側に、変調回路130(図面ではModulation Circuitと称する)、ESD(Electro-Static Discharge)回路160a、160b、保護回路170aおよび170b、電磁界結合部120および140の一部を備える。電子回路100は出力側に、制御回路110(図面ではControl Circuitと称する)、復調回路150(図面ではDe-modulation Circuitと称する)、ESD回路160c、160d、160e、電磁界結合部120および140の一部を備える。また、入力側および出力側は、電磁界結合部120および電磁界結合部140により電磁界結合されている。
【0010】
電気的に絶縁されているとは、完全に絶縁されていることに限定されず、絶縁とみなせる程度に電気を遮断することができればよい。ここで、電子回路100は、出力側には電源VDD2から電源が供給されているが、入力側には電源供給がなされていない。すなわち、制御回路110、復調回路150は電源VDD2から電源供給を受けて駆動するが、変調回路130は電源供給を受けずに駆動する。また、電子回路100は、入力側と出力側とは電気的に絶縁されているため、基準電位が異なる場合がある。ここでは入力側の基準電位を基準電位GND1と称し、出力側の基準電位を基準電位GND2と称する。
【0011】
なお、変調回路130は周波数変換器130(図面ではPassive Mixer)とも称する。
【0012】
制御回路110はロジック回路111(図面ではLogicと称する)およびクロック回路112(図面ではClock Circuit)を備える。
【0013】
ロジック回路111は、電子回路100の構成要素に指令を送る回路である。例えば、ロジック回路111はクロック回路112に対してクロック信号CLKA0およびCLKB0を生成するよう指令したり、フィルタ回路153に対してフィルタリングする周波数を指令する。ロジック回路111は、後述する復調回路150が復調した信号の振幅に基づいてクロック信号CLKA2およびCLKB2の遅延量を決定する。より詳細には、ロジック回路111は復調回路150が復調した信号の振幅の最大値に応じて、クロック信号CLKA2およびCLKB2の遅延量を決定する。ロジック回路111は、クロック回路112に対してクロック信号CLKA0を決定された遅延量だけ位相を遅延させたクロック信号CLKA2およびCLKB0を決定された遅延量だけ遅延させたクロック信号CLKB2を生成するように指令する。
【0014】
クロック回路112は、ロジック回路111からの指令に応じて、クロック信号CLKA0およびCLKB0、決定された遅延量だけ位相が遅れたクロック信号CLKA2およびCLKB2を生成する。クロック信号CLKA0は線路LCLKA0を通じて電磁界結合部120に送られ、クロック信号CLKB0は線路LCLKB0を通じて電磁界結合部120に送られる。決定された遅延量だけ遅れたクロック信号CLKA2およびCLKB2は復調回路150の周波数変換器151に送られて、信号の復調に使われる。
【0015】
電磁界結合部120は、絶縁部101を介して電磁界結合しており、クロック回路112から送られたクロック信号CLKA0およびCLKB0を電磁界結合によって入力側に伝送する。クロック信号CLKA0およびCLKB0は、電磁界結合部120によって伝送される過程において位相ずれが生じ、クロック信号CLKA1およびCLKB1となる。クロック信号CLKA1は線路LCLKA1を通じて周波数変換器130に送られ、クロック信号CLKB1は線路LCLKB1を通じて周波数変換器130に送られる。電磁界結合部120は例えば向かい合ったキャパシタやトランスによって実現され、絶縁部101は向かい合ったキャパシタやトランスの間に位置する。
【0016】
入力端子INAおよびINBには、アナログ信号が入力される。以降、入力端子INAに入力されたアナログ信号を入力信号SINA、入力端子INBに入力されたアナログ信号を入力信号SINBとも称する。入力信号SINAは線路LA0を通じて周波数変換器130に送られ、入力信号SINBは線路LB0を通じて周波数変換器130に送られる。
【0017】
周波数変換器130は、電磁界結合部120から送られたクロック信号CLKA1およびCLKB1により駆動し、入力信号SINAおよびSINBの周波数を変換し、高周波信号SA1、SB1とする。周波数変換器130は、入力信号SINAを高周波信号SA1に変換し、入力信号SINBを高周波信号SB1に変換する。周波数変換器130は、クロック信号CLKA1およびCLKB1により駆動するため、電源の供給を受けない。このような周波数変換器は、パッシブミキサとも称される。高周波信号SA1は線路LA1を通じて電磁界結合部140に送られ、高周波信号SB1は線路LA1を通じて電磁界結合部140に送られる。
【0018】
電磁界結合部140は、絶縁部101を介して電磁界結合しており、周波数変換器130から送られた高周波信号SA1およびSB1を電磁界結合によって伝送する。高周波信号SA1およびSB1は、電磁界結合部140によって伝送される過程において位相ずれが生じ、高周波信号SA2およびSB2となる。高周波信号SA2は線路LA2を通じて復調回路150に送られ、高周波信号SB2は線路LB2を通じて復調回路150に送られる。電磁界結合部140は例えば向かい合ったキャパシタやトランスによって実現され、絶縁部101は向かい合ったキャパシタやトランスの間に位置する。
【0019】
復調回路150は周波数変換器151(図面ではMixerと称する)、増幅器152(図面ではAmp.と称する)、フィルタ回路153(図面ではLPF)、およびバッファ回路154(図面ではBufferと称する)を備える。
【0020】
周波数変換器151は、クロック回路112から送られたクロック信号CLKA2およびCLKB2を用いて、高周波信号SA2およびSB2を復調し、復元信号SA3およびSB3とする。復元信号SA3およびSB3とは、入力信号SINAおよびSINBと同程度の周波数に復元されたアナログ信号である。増幅器152は、周波数変換器151から送られた復元信号SA3およびSB3を増幅して出力する。フィルタ回路153は、増幅器152から送られた復元信号SA3およびSB3をフィルタリングする。本実施形態の一例として、フィルタ回路153はローパスフィルタとする。バッファ回路154は、フィルタ回路153から送られた信号を調整する。
【0021】
復元信号SA3は線路LA3を通じて出力端子OUTPから出力され、復元信号SB3は線路LB3を通じて出力端子OUTNから出力される。また、復元信号SA3およびSB3はロジック回路111にも送られる。復元信号SA3およびSB3は、ロジック回路111においてクロック信号CLKA0およびCLKB0の遅延量の決定に使われる。詳細には、復元信号SA3およびSB3は、元となった高周波信号SA2およびSB2が位相ずれを含んでいるため、クロック信号CLKA2およびCLKA2に付加された遅延量によっては振幅が小さくなる場合がある。ロジック回路111は、復元信号SA3およびSB3の振幅の最大値に応じて、振幅が小さくならない(高周波信号SA2およびSB2の位相ずれを補正する)遅延量を決定する。
【0022】
ESD回路160a~160eは、電子回路100の内部回路を静電気等の電圧変動から保護する回路である。ESD回路160aは線路LA0および基準電位GND1と接続され、ESD回路160bは線路LB0および基準電位GND1と接続され、ESD回路160cは線路LA3、電源VDD2、および基準電位GND2と接続され、ESD回路160dは線路LB3、電源VDD2、および基準電位GND2と接続され、ESD回路160eは電源VDD2および基準電位GND2と接続される。詳しくは後述するが、電子回路100のうち、電源供給を受けない入力側では、入力信号SINAおよびSINBの電圧や基準電位GND1の変動から、電子回路100の内部回路を保護できない場合がある。
【0023】
保護回路170aおよび170bは、電子回路100の入力側の内部回路を電圧変動から保護する回路である。保護回路170aは、電磁界結合部120および周波数変換器130の間を接続する線路LCLKA1および基準電位GND1と接続される。保護回路170bは、電磁界結合部120および周波数変換器130の間を接続する線路LCLKB1および基準電位GND1と接続される。詳しくは後述するが、保護回路170aおよび170bは、ESD回路160aおよび160bでは保護できない場合がある、入力信号SINAおよびSINBの電圧や基準電位GND1の変動においても、電子回路100の内部回路を保護することができる。
【0024】
以上に、電子回路100の構成を説明した。電子回路100は、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)などの集積回路で実装されてもよい。1チップ上にまとめて実装されてもよいし、一部の回路が別のチップ上に実装されてもよい。また、制御回路130の機能は、プロセッサなどの処理部で実現するようにしてもよい。
【0025】
以下、本実施形態における電磁界結合部120および140、周波数変換器130、保護回路170aおよび170bを詳細に説明する。
図2は、電磁界結合部120および140、周波数変換器130、保護回路170aおよび170bの詳細を含む電子回路100の詳細図である。なお
図2では、
図1に表したESD回路160a~160eを省略している。
【0026】
電磁界結合部120および140は、本実施形態ではキャパシタとしている。電磁界結合部120はキャパシタCCLK1およびCCLK2を備え、電磁界結合部140はキャパシタCSIG1およびCSIG2を備える。キャパシタCCLK1、CCLK2、CSIG1、およびCSIG2は、それぞれ電磁界結合している。キャパシタCCLK1は、一方の平板と線路LCLKA0が接続され、もう一方の平板と線路LCLKA1が接続されている。キャパシタCCLK2は、一方の平板と線路LCLKB0が接続され、もう一方の平板と線路LCLKB1が接続されている。キャパシタCSIG1は、一方の平板と線路LA1が接続され、もう一方の平板と線路LA2が接続されている。キャパシタCSIG2は、一方の平板と線路LB1が接続され、もう一方の平板と線路LB2が接続されている。それぞれのキャパシタが備える平板の間に、絶縁部101が位置する。電磁界結合部120および140として、本実施形態ではキャパシタを用いているが、少なくとも1つのキャパシタをトランスに変更してもよい。
【0027】
周波数変換器130は、本実施形態では4つのNMOSトランジスタM1、M2、M3、およびM4を備える(以降、単にトランジスタM1、M2、M3、M4とも称する)。トランジスタM1およびM2は、線路LCLKB1を通じて送られるクロック信号CLKB1がゲート端子に入力されることにより駆動する。トランジスタM3およびM4は、線路LCLKA1を通じて送られるクロック信号CLKA1がゲート端子に入力されることにより駆動する。トランジスタM1~M4が駆動することにより、入力信号SINAおよびSINBは高周波信号SA1およびSB1に変換される。
【0028】
保護回路170aおよび170bは、並列接続されて電流が流れる方向が異なる複数のダイオードを備える。例えば、保護回路170aはダイオードD1aおよびD2aを備え、保護回路160bはダイオードD1bおよびD2bを備える。ダイオードD1aおよびD2aは、線路LCLKA1および基準電位GND1と接続される。ダイオードD1bおよびD2bは、線路LCLKB1および基準電位GND1と接続される。これらのダイオードは、入力信号SINAおよびSINBの電圧や基準電位GND1の変動が予め定められた一定以上となった場合にオンし、線路LCLKA1およびLCLKB1と、基準電位GND1の間で電荷を移動させることにより、線路LCLKA1およびLCLKB1と、基準電位GND1の電位差を電子回路100の内部回路を破壊しない範囲内に抑える。
【0029】
なお本実施形態では、線路LCLKA1およびLCLKB1とは、直列に接続された抵抗R1およびR2を介して接続されている。抵抗R1およびR2の間には、基準電位GND1が接続されている。これにより、線路LCLKA1およびLCLKB1の動作点は基準電位GND1が基準となる。
【0030】
以上、電子回路100の詳細について説明した。以下、保護回路170aおよび170bがある場合およびない場合それぞれについて、入力信号S
INAおよびS
INBの電圧や基準電位GND1が変動した場合を説明する。説明のために、保護回路170aおよび170bを備えない電子回路10を電子回路100の比較例として
図3に表す。電子回路10は、保護回路170aおよび170bを備えない以外は電子回路100と同様であるため、電子回路10の構成要素には電子回路100の構成要素と同じ番号を付して説明を省略する。
【0031】
図4は、電子回路10および100それぞれにおいて、入力信号S
INAおよびS
INBの電圧や基準電位GND1の変動が大きい場合と小さい場合について説明する。説明の簡単化のために、電子回路10および100の外部において、入力端子INA、INB、および基準電位GND1が短絡されている、または抵抗値が十分小さい抵抗(例えば、1Ω以下の抵抗)を介して接続されているとする。以降、入力端子INAの電位を電位V
INA、入力端子INBの電位を電位V
INB、基準電位GND1の電位を基準電位V
GND1、線路L
CLKA1の電位を電位V
CLKA1、線路L
CLKB1の電位を電位V
CLKB1と称する。また説明のために、入力端子INAおよびINBの中間電位を、入力コモンモード電位V
CMと称する。すなわち、入力コモンモード電位V
CM、電位V
INA、および電位V
INBには、式(1)の関係がある。
【数1】
【0032】
またこの場合、入力端子INA、INB、基準電位GND1の間の電位差は十分小さい。すなわち、式(2)で表される。
【数2】
【0033】
電位VINA、VINB、基準電位VGND1が変動した場合、入力コモンモード電位VCMも変動することが式(2)により表されている。以降、入力コモンモード電位VCMが変動する場合とは、電位VINA、VINB、基準電位VGND1の少なくともいずれかが変動した場合を表す。
【0034】
本実施形態の一例として、入力コモンモード電位V
CMが変動した場合の電位V
CLKA1について説明する。線路L
CLKA1は、線路L
CLKA1自身が有する寄生容量と、線路L
CLKA1と接続される、キャパシタの容量C
CLK1および周波数変換器130の入力容量とに応じた容量を有する。以降、この容量を容量C
1とも称する。線路L
CLKA1は抵抗R
1を介して基準電位GND1と接続されているため、入力コモンモード電位V
CMが変動した場合、電荷は容量C
1と基準電位GND1の間で移動する。これにより、入力コモンモード電位V
CMが変動した場合、電位V
CLKA1も追従して変動する。また、線路L
CLKA1と基準電位GND1は抵抗R
1を介して接続されているため、線路L
CLKA1と基準電位GND1の間にはローパスフィルタが形成される。このローパスフィルタにより、電位V
CLKA1の変動速度(以降、電位の変動速度をスルーレートとも称する)には制限がかかる。ここで、式(3)に表すように、入力コモンモード電位V
CMと電位V
CLKA1の差分を電位差ΔVとする。
【数3】
【0035】
本実施形態の一例として、電位差ΔV=5Vとしたとき、電位V
CLKA1の変動速度の上限は、容量C
1(容量値もC
1と称し、例えば100fFとする)、抵抗R
1(抵抗値もR
1と称し、例えば100kΩとする)、および電位差ΔVとで式(4)に表される。
【数4】
【0036】
すなわち本実施形態では、保護回路170aが備えられない場合、入力コモンモード電位V
CMのスルーレートが500V/μsまでであれば電位V
CLKA1も追従して変動することができる。よって、
図4上段のように、入力コモンモード電位V
CMのスルーレートが比較的低い(例えば50V/μs)場合、電子回路10および100の両方とも電位V
CLKA1は入力コモンモード電位V
CMに追従して変動し、電位差ΔVは一定のレベルを維持する。
【0037】
一方、入力コモンモード電位V
CMのスルーレートが500V/μsを超える場合、電子回路10では、入力コモンモード電位V
CMの変動に対して電位V
CLKA1は追従して変動することができない。例えば
図4下段のように、入力コモンモード電位V
CMのスルーレートが高い(例えば50kV/μs)場合、容量C
1と基準電位GND1の間で電荷の移動が追い付かず、電位V
CLKA1の電位変動が遅れている。この場合、電位差ΔVは一定ではなく大きくなってしまい、電子回路100の入力側における内部回路が大きくなった電位差ΔVによって破壊されてしまう可能性がある。例えば、周波数変換器130に含まれるトランジスタが破壊されてしまう可能性がある。電源供給を受ける回路の場合は、電源に接続されるESD回路を通じて電荷の移動が可能であり、電位差ΔVによる内部回路の破壊を抑制することができる。しかし本実施形態の入力側は電源供給を受けていないため、上記の問題が発生する。また本実施形態では、線路L
CLKA1はトランジスタM
3およびM
4のゲート端子に接続され、線路L
CLKB1はトランジスタM
1およびM
2のゲート端子に接続される。トランジスタM
1~M
4のゲート端子を通じた、線路L
CLKA1および基準電位GND1の間の電荷の移動は起こりづらいため、上記の問題が発生する。
【0038】
これに対し、電子回路100では、電位差ΔVが予め定められた特定の値を超えると、保護回路170aがオンする。
図4の例では容量C
1に電荷を充電するため、ダイオードD
1aがオンする。ダイオードD
1aを介する電荷の充電は、抵抗R
1によるローパスフィルタの影響が小さいため、抵抗R
1を介する場合よりも、より速く電荷を移動させることができる。保護回路170aにより、入力コモンモード電位V
CMのスルーレートが高い場合でも、電位V
CLKA1は追従して変動することができ、電位差ΔVは一定のレベルを維持する。これにより、入力信号S
INAおよびS
INBの電位変動および基準電位GND1の変動が急峻な場合でも、電子回路100の内部回路を保護することができる。電子回路100は、入力信号S
INAおよびS
INBの電位変動および基準電位GND1の変動が急峻な場合でも、入力信号S
INAおよびS
INBを復元信号S
A3およびS
B3として出力することができる。すなわち、電子回路100を高いCMTI(Common Mode Transient Immunity)特性を有する回路とすることができる。
【0039】
なお、
図4の例では今回は容量C
1に電荷を充電するためダイオードD
1aがオンしたが、入力コモンモード電位V
CMの傾きがマイナスの場合、容量C
1から電荷を放電するためダイオードD
2aがオンすることになる。
【0040】
本実施形態の一例として、入力コモンモード電位VCMが変動した場合の電位VCLKA1について説明したが、電位VCLKB1についても同様である。線路LCLKB1は、線路LCLKB1自身が有する寄生容量と、線路LCLKB1と接続される、キャパシタの容量CCLK2および周波数変換器130の入力容量とに応じた容量を有する。以降、この容量を容量C2とも称する。線路LCLKB1は抵抗R1を介して基準電位GND1と接続されているため、入力コモンモード電位VCMが変動した場合、電荷は容量C2と基準電位GND1の間で移動する。これにより、入力コモンモード電位VCMが変動した場合、電位VCLKB1も追従して変動する。また、線路LCLKB1と基準電位GND1は抵抗R2を介して接続されているため、線路LCLKB1と基準電位GND1の間にはローパスフィルタが形成される。このローパスフィルタにより、電位VCLKB1のスルーレートには制限がかかる。保護回路160bが備えられない場合、スルーレートによっては入力コモンモード電位VCMと電位VCLKB1の電位差ΔV2が一定のレベルを保てなくなり、電子回路100の内部回路の破壊につながる。
【0041】
これに対し、電子回路100では、電位差ΔV2が予め定められた特定の値を超えると、保護回路160bがオンする。
図4の例では容量C
2に電荷を充電するため、ダイオードD
1bがオンする。ダイオードD
1bを介する電荷の充電は、抵抗R
2によるローパスフィルタの影響が小さいため、抵抗R
2を介する場合よりも、より速く電荷を移動させることができる。保護回路160bにより、入力コモンモード電位V
CMのスルーレートが高い場合でも、電位V
CLKB1は追従して変動することができ、電位差ΔV2は一定のレベルを維持する。これにより、入力信号S
INAおよびS
INBの電位変動および基準電位GND1の変動が急峻な場合でも、電子回路100の内部回路を保護することができ、電子回路100を高いCMTI特性を有する回路とすることができる。
【0042】
以上に本実施形態を説明したが、変形例は様々に実装、実行可能である。例えば、本実施形態では一例として、バッファ回路154から出力された復元信号SA3およびSB3がロジック回路111に送られているが、周波数変換器151、増幅器152、またはフィルタ回路153からロジック回路111に送られてもよい。以下、本実施形態における構成および動作の変形例について説明する。
【0043】
(変形例1)
図5は、入力端子INBの電位レベルが基準電位GND1と同様のレベルである電子回路100’の構成図である。入力端子の電位レベルを基準電位GND1と同様のレベルとすることで、ESD回路160bを省略および入力側の端子数を削減することができる。これにより、回路規模の削減、実装面積の削減、コストの低減を図ることができる。
【0044】
(変形例2)
図6は、クロック回路112がクロック信号CLKA0およびCLKB0と、クロック信号CLKA2およびCLKB2の出力先を交換した電子回路100”の構成図である。本実施形態では、電磁界結合部140の伝送による、高周波信号S
A2およびS
B2に付加される位相のずれを、クロック信号CLKA2およびCLKB2によって補正していた。本変形例では、周波数変換器130にて高周波信号に変換する段階で、電磁界結合部140の伝送によって高周波信号に付加される位相のずれに対応させる。
【0045】
クロック回路112は、クロック信号CLKA2およびCLKB2を電磁界結合部120に送り、クロック信号CLKA0およびCLKB0を周波数変換器151に送る。クロック信号CLKA2およびCLKB2は電磁界結合部120による伝送によって位相ずれが生じ、クロック信号CLKA3およびCLKB3となって周波数変換器130に送られる。周波数変換器130は、クロック信号CLKA3およびCLKB3により駆動し、入力信号SINAおよびSINBを高周波信号SA1’およびSB1’に変換する。高周波信号SA1’およびSB1’は電磁界結合部140による伝送によって位相ずれが生じ、高周波信号SA2’およびSB2’となって周波数変換器151に送られる。周波数変換器151は、クロック信号CLKA0およびCLKB0を用いて、高周波信号SA2’およびSB2’の周波数を入力信号SINAおよびSINBと同様の周波数に変換して復元信号SA3およびSB3とする。この復元信号SA3およびSB3は、増幅器152、フィルタ回路153、およびバッファ回路154を通じて、出力端子OUTPおよび出力端子OUTNに出力される。
【0046】
本実施形態および本変形例を合わせると、電磁界結合部120は、クロック信号CLKA0およびCLKB0の組と、クロック信号CLKA2およびCLKB2の組の一方を電磁界結合によって伝送する。周波数変換器130は、クロック信号CLKA0およびCLKB0の位相がずれたクロック信号CLKA1およびCLKB1の組と、クロック信号CLKA2およびCLKB2の位相がずれたクロック信号CLKA3およびCLKB3の組の一方により駆動し、入力信号SINAおよびSINBを、高周波信号SA1およびSB1の組、またはSA1’およびSB1’の組に変換する。高周波信号SA1およびSB1の組、またはSA1’およびSB1’の組は、電磁界結合部140によって高周波信号SA2およびSB2の組、またはSA2’およびSB2’の組となる。周波数変換器151は、クロック信号CLKA0およびCLKB0の組と、クロック信号CLKA2およびCLKB2の組の他方を用いて、高周波信号SA1およびSB1の組、またはSA1’およびSB1’の組を、復元信号SA3およびSB3に変換する。
【0047】
以上説明したように、クロック信号CLKA0およびCLKB0と、クロック信号CLKA2およびCLKB2の出力先は交換されてもよい。なお、電磁界結合部120および140の伝送による位相ずれの特性、周波数変換器151の特性、または線路LCLKA0、LCLKA1、LCLKB0、LCLKB1に設置される電子機器の特性等に応じて、クロック信号CLKA0およびCLKB0はクロック信号CLKA0’およびCLKB0’に調整されてもよい。なおこの場合、クロック信号CLKA2およびCLKB2はクロック信号CLKA2’およびCLKB2’に調整されてもよい。
【0048】
(変形例3)
図7は、保護回路170aおよび170bのバリエーションを説明する図である。
図7(a)は、本実施形態で説明したダイオードを含む保護回路である。保護回路170aにはダイオードD
1aおよびD
2aが備えられ、保護回路170bにはダイオードD
1bおよびD
2bが備えられる。
【0049】
図7(b)は、MOSトランジスタを用いた保護回路170a’および170b’の構成図である。保護回路170a’は、線路L
CLKA1に並列接続されるトランジスタM
1aおよびM
2aを備える。トランジスタM
1aのゲート端子はドレイン端子に接続され、ソース端子は基準電位GND1に接続される。トランジスタM
2aのゲート端子はソース端子に接続され、ソース端子は基準電位GND1に接続される。トランジスタM
1aは電荷を放電する際にオンとなって電流を流し、トランジスタM
2aは電荷を充電する際にオンとなって電流を流す。保護回路170b’はトランジスタM
1bおよびM
2bを備え、トランジスタM
1bはトランジスタM
1aの説明と同様であり、トランジスタM
2bはトランジスタM
2aの説明と同様である。
【0050】
図7(c)は、線路L
CLKA1およびL
CLKB1の両方に接続される保護回路170a”(170b”)の構成図である。以降、単に保護回路170a”とも称する。保護回路170a”は、トランジスタM
1a’およびM
2a’を備える。トランジスタM
1a’のドレイン端子は線路L
CLKA1およびトランジスタM
2a’のゲート端子に接続される。トランジスタM
1a’およびトランジスタM
2a’のソース端子は基準電位GND1に接続される。トランジスタM
2a’のドレイン端子は線路L
CLKB1およびトランジスタM
1a’のゲート端子に接続される。基準電位GND1からトランジスタM
1a’を通じて線路L
CLKA1に対して電荷の充電・放電が行われ、基準電位GND1からトランジスタM
2a’を通じて線路L
CLKB1に対して電荷の充電・放電が行われる。保護回路170a”は、保護回路170a’および170b’の場合と比較してトランジスタの個数を削減することができるため、回路規模を削減することができ、コストを低減させることができる。
【0051】
(変形例4)
図8は、
図7で説明した回路を多段化した保護回路の構成図である。一例として、
図8では
図7で説明した回路の二段化した場合を表しているが、三段以上であってもよい。
【0052】
図7(a)は、本実施形態で説明したダイオードを多段化した保護回路170a2および170b2の構成図である。保護回路170a2には保護回路170aにさらにダイオードD
3aおよびD
4aが備えられ、保護回路170b2には保護回路170bにさらにダイオードD
3bおよびD
4bが備えられる。ダイオードD
3aはダイオードD
1aと同じ向きに電流を流すダイオードであり、ダイオードD
1aと直列に接続されている。ダイオードD
4aはダイオードD
2aと同じ向きに電流を流すダイオードであり、ダイオードD
2aと直列に接続されている。ダイオードD
3bはダイオードD
1bと同じ向きに電流を流すダイオードであり、ダイオードD
1bと直列に接続されている。ダイオードD
4bはダイオードD
2bと同じ向きに電流を流すダイオードであり、ダイオードD
2bと直列に接続されている。
【0053】
保護回路170a2および170b2の動作には、保護回路170aおよび170bと同様に所定の電位差ΔVおよびΔV2が必要であるが、ダイオードを多段化することにより、電位差ΔVおよびΔV2を任意に設定することができる。これにより、線路LCLKA1および線路LCLKB1を流れる信号への影響を低減させることができる。
【0054】
図8(b)は、
図7(b)で説明したトランジスタを多段化した保護回路170a2’および170b2’を説明する図である。保護回路170a2’には保護回路170a’にさらにトランジスタM
3aおよびM
4aが備えられ、保護回路170b2’には保護回路170b’にさらにトランジスタM
3bおよびM
4bが備えられる。トランジスタM
3aはトランジスタM
1aと直列に接続(トランジスタM
1aのソース端子とトランジスタM
3aのドレイン端子とが接続)される。トランジスタM
3aのゲート端子はトランジスタM
3aのドレイン端子と接続され、トランジスタM
3aのソース端子は基準電位GND1に接続される。トランジスタM
4aはトランジスタM
2aと直列に接続(トランジスタM
2aのソース端子とトランジスタM
4aのドレイン端子とが接続)される。トランジスタM
4aのゲート端子はトランジスタM
4aのソース端子と接続され、トランジスタM
4aのソース端子は基準電位GND1に接続される。トランジスタM
1aおよびM
3aは電荷を放電する際にオンとなって電流を流し、トランジスタM
2aおよびM
4aは電荷を充電する際にオンとなって電流を流す。
【0055】
保護回路170b2’の説明は保護回路170a2’の説明と同様である。トランジスタM1aがM1bに、トランジスタM2aがM2bに、トランジスタM3aがM3bに、トランジスタM4aがM4bに、それぞれ対応している。
【0056】
保護回路170a2’および170b2’も、保護回路170a2および170b2と同様に、トランジスタを多段化することにより、電位差ΔVおよびΔV2を任意に設定することができる。これにより、線路LCLKA1および線路LCLKB1を流れる信号への影響を低減させることができる。
【0057】
図8(c)は、
図7(c)で説明したトランジスタを多段化した保護回路170a2”(170b2”)の構成図である。以降、単に保護回路170a2”とも称する。保護回路170a2”には保護回路170a2’にさらにトランジスタM
3a’およびM
4a’が備えられる。トランジスタM
3a’はトランジスタM
1a’と直列に接続(トランジスタM
1a’のソース端子とトランジスタM
3a’のドレイン端子とが接続)される。トランジスタM
3a’のゲート端子はトランジスタM
1a’のゲート端子およびトランジスタM
2a’のドレイン端子と接続される。トランジスタM
3a’のソース端子は基準電位GND1に接続される。トランジスタM
4a’はトランジスタM
2a’と直列に接続(トランジスタM
2a’のソース端子とトランジスタM
4a’のドレイン端子とが接続)される。トランジスタM
4a’のゲート端子はトランジスタM
2a’のゲート端子およびトランジスタM
1a’のドレイン端子と接続される。トランジスタM
4a’のソース端子は基準電位GND1に接続される。基準電位GND1からトランジスタM
1a’およびM
3a’を通じて線路L
CLKA1に対して電荷の充電・放電が行われ、基準電位GND1からトランジスタM
2a’およびM
4a’を通じて線路L
CLKB1に対して電荷の充電・放電が行われる。
【0058】
保護回路170a2”も、保護回路170a2’および170b2’と同様に、トランジスタを多段化することにより、電位差ΔVおよびΔV2を任意に設定することができる。これにより、線路LCLKA1および線路LCLKB1を流れる信号への影響を低減させることができる。また、保護回路170a2”は、保護回路170a2’および170b2’の場合と比較してトランジスタの個数を削減することができるため、回路規模の削減することができ、コストを低減させることができる。
【0059】
(変形例5)
図9は、電子回路100の周波数変換器130および電磁界結合部140の間に、さらに保護回路170cおよび170dを備える電子回路180の構成図である。保護回路170cは線路L
A1および基準電位GND1と接続され、保護回路170dは線路L
B1および基準電位GND1と接続される。保護回路170cおよび170dは、本実施形態における保護回路170aおよび170bと同様であり、変形例3および4のバリエーションも適用可能である。
【0060】
線路LA1の電位を電位VA1、線路LB1の電位を電位VB1とすると、電位VA1およびVB1についても、本実施形態と同様に、入力コモンモード電位VCMの変動に追従して変動する。まず、電位VA1の変動について説明する。線路LA1は、線路LA1自身が有する寄生容量、線路LA1と接続される、キャパシタの容量CSIG1および周波数変換器130の出力容量に応じた容量を有する。以降、この容量を容量C3とも称する。容量C3と基準電位GND1との間の電荷の移動により、電位VA1は入力コモンモード電位VCMの変動に追従して変動する。線路LA1はトランジスタM1およびM4と接続されており、トランジスタM1およびM4のドレイン・ソース間を通じて電荷の移動が可能である。しかし、入力コモンモード電位VCMのスルーレートが急峻となる場合、電荷の移動が間に合わず、電位VA1と入力コモンモード電位VCMの電位差ΔV3が一定のレベルを保てない可能性が生じる。そこで、電位差ΔV3が所定の値となると動作する保護回路170cを備えることにより、線路LA1と基準電位GND1との間の電荷の移動をより速くすることができる。保護回路170cにより、電位差ΔV3を一定のレベルに保つことができ、線路LA1に接続されるトランジスタM1およびM4、キャパシタCSIG1等の回路を保護することができ、電子回路100をより高いCMTI特性を有する回路とすることができる。
【0061】
電位VB1の変動についても、電位VA1の変動と同様である。線路LB1は、線路LB1自身が有する寄生容量と、線路LB1と接続される、キャパシタの容量CSIG2および周波数変換器130の出力容量とに応じた容量を有する。以降、この容量を容量C4とも称する。容量C4と基準電位GND1との間の電荷の移動により、電位VB1は入力コモンモード電位VCMの変動に追従して変動する。線路LB1はトランジスタM2およびM3と接続されており、トランジスタM2およびM3のドレイン・ソース間を通じて電荷の移動が可能である。しかし、入力コモンモード電位VCMのスルーレートが急峻となる場合、電荷の移動が間に合わず、電位VB1と入力コモンモード電位VCMの電位差ΔV4が一定のレベルを保てない可能性が生じる。そこで、電位差ΔV4が所定の値となると動作する保護回路170dを備えることにより、線路LB1と基準電位GND1との間の電荷の移動をより速くすることができる。保護回路170dにより、電位差ΔV4を一定のレベルに保つことができ、線路LB1に接続されるトランジスタM2およびM3、キャパシタCSIG2等の回路を保護することができ、電子回路100をより高いCMTI特性を有する回路とすることができる。
【0062】
(変形例6)
図10は、電子回路180の入力端子INAおよび周波数変換器130との間にさらに保護回路170eを備え、電子回路180の入力端子INBおよび周波数変換器130との間にさらに保護回路170fを備える電子回路180’の構成図である。保護回路170eは線路L
A0および基準電位GND1と接続され、保護回路170fは線路L
B0および基準電位GND1と接続される。保護回路170eおよび170fは、本実施形態における保護回路170aおよび170bと同様であり、変形例3および4のバリエーションも適用可能である。
【0063】
線路LA0の電位を電位VA0、線路LB0の電位を電位VB0とすると、電位VA0およびVB0についても、本実施形態と同様に、入力コモンモード電位VCMの変動に追従して変動する。まず、電位VA0の変動について説明する。線路LA0は、線路LA0自身が有する寄生容量、線路LA0と接続される、入力端子INAの容量および周波数変換器130の入力容量に応じた容量を有する。以降、この容量を容量C5とも称する。容量C5と基準電位GND1との間の電荷の移動により、電位VA0は入力コモンモード電位VCMの変動に追従して変動する。線路LA0は入力端子INAやESD回路160aを通じて電荷の移動が可能である。しかし、入力コモンモード電位VCMのスルーレートが急峻となる場合、電荷の移動が間に合わず、電位VA0と入力コモンモード電位VCMの電位差ΔV5が一定のレベルを保てない可能性が生じる。そこで、電位差ΔV5が所定の値となると動作する保護回路170eを備えることにより、線路LA0と基準電位GND1との間の電荷の移動をより速くすることができる。保護回路170eにより、電位差ΔV5を一定のレベルに保つことができ、線路LA0に接続される入力端子INA、トランジスタM1およびM3等の回路を保護することができ、電子回路100をより高いCMTI特性を有する回路とすることができる。
【0064】
電位VB0の変動についても、電位VA0の変動と同様である。線路LB0は、線路LB0自身が有する寄生容量、線路LB0と接続される、入力端子INBの容量および周波数変換器130の入力容量に応じた容量を有する。以降、この容量を容量C6とも称する。容量C6と基準電位GND1との間の電荷の移動により、電位VB0は入力コモンモード電位VCMの変動に追従して変動する。線路LB0は入力端子INBやESD回路160bを通じて電荷の移動が可能である。しかし、入力コモンモード電位VCMのスルーレートが急峻となる場合、電荷の移動が間に合わず、電位VB0と入力コモンモード電位VCMの電位差ΔV6が一定のレベルを保てない可能性が生じる。そこで、電位差ΔV6が所定の値となると動作する保護回路170fを備えることにより、線路LB0と基準電位GND1との間の電荷の移動をより速くすることができる。保護回路170fにより、電位差ΔV6を一定のレベルに保つことができ、線路LB0に接続される入力端子INB、トランジスタM2およびM4等の回路を保護することができ、電子回路100をより高いCMTI特性を有する回路とすることができる。
【0065】
(変形例7)
図10は、電磁界結合部120および140のキャパシタをトランスとした電子回路100Tの構成図である。電磁界結合部120’はトランスT
CLK、電磁界結合部140’はトランスT
SIGを有する。トランスT
CLKは電磁界結合する一対のコイルであり、このコイルの間に絶縁部130が位置する。トランスT
SIGは電磁界結合する一対のコイルであり、このコイルの間に絶縁部130が位置する。このようにすることで、復元信号のSN比を向上させることができる。また、電磁界結合部120および140は、キャパシタとトランスを組み合わせて構成するようにしてもよい。
【0066】
以上、電子回路100における変形例を説明した。これらの変形例は、組み合わせて用いることができる。この電子回路100はチップへの配置において様々な例が考えられる。以下配置例として説明する。
【0067】
(配置例1)
図12は、電磁界結合部120および140、並びに周波数変換器130を同じチップに配置し、その他の機器を異なるチップに配置する電子回路100Aの構成図である。Chip1には電磁界結合部120および140、並びに周波数変換器130(図面ではPassive Mixerと称する)が配置されている。Chip2には回路部190(図面ではActive Circuitryと称する)が配置されている。回路部190は少なくとも周波数変換器151が含まれ、電子回路100の構成要素のうち、出力側に配置された構成要素を含む。例えば、回路部190は、制御回路110および復調回路150を含む。以降、回路部190の一部は、さらに異なるチップに配置されるようにしてもよい。
【0068】
(配置例2)
図13は、電磁界結合部120および140、並びに周波数変換器151を同じチップに配置し、周波数変換器130を異なるチップに配置する電子回路100Bの構成図である。Chip1には周波数変換器130が配置されている。Chip2には電磁界結合部120および140、並びに回路部190が配置されている。
【0069】
(配置例3)
図14は、電磁界結合部120に直列に接続される電磁界結合部120”、および電磁界結合部140に直列に接続される電磁界結合部140”をさらに備える電子回路100Cの構成図である。電磁界結合部120”および140”は、本実施形態の電磁界結合部120および140と同様でもよいし、電磁界結合部120’および140’を適用してもよい。Chip1には電磁界結合部120および140、並びに周波数変換器130が配置されている。Chip2には電磁界結合部120”および140”、並びに回路部190が配置されている。電磁界結合部を直列に二段構成とすることで、電子回路100の入力端子INAおよびINBと、出力端子OUTPおよびOUTNの間の絶縁性をさらに高めることができる。また、どちらか片側のチップの電磁界結合部が絶縁破壊されたとしても、もう片側で一定以上の絶縁性を保持することができ、安全性が向上する。電磁界結合部120および140は三段以上の構成としてもよい。
【0070】
(配置例4)
図15は、電磁界結合部120および140をさらに異なるチップに配置した電子回路100Dの構成図である。Chip1には周波数変換器130が配置されている。Chip2には電磁界結合部120および140が配置されている。Chip3には回路部190が配置されている。電磁界結合部120および140を周波数変換器130および回路部190と異なるチップに配置することで、電磁界結合部120および140が配置されるChip2は、Chip1およびChip3とは異なるプロセスで製造することができる。Chip2をより耐圧性能の高いプロセス製造することができ、電子回路100Dの入力端子INAおよびINBと、出力端子OUTPおよびOUTNの間の絶縁性をさらに高めることができる。
【0071】
以上、本実施形態およびその変形例、配置例を説明した。本実施形態における電子回路は、電源供給を受けない周波数変換器130とクロック信号を電磁界結合により伝送する電磁界結合部120との間に、保護回路170aおよび170bを備える。保護回路170aおよび170bにより、入力信号の電位VINAおよびVINB、基準電位VGND1の変動が急峻な場合であっても、電子回路100の内部回路を電位差による破壊から保護することができ、電子回路100を高いCMTI特性を有する回路とすることができる。
【0072】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、第1の実施形態で説明した電子回路100を用いた適用例を説明する。
図16は、電子回路100を用いた電力変換器200(図面ではPower Converterと称する)の構成図である。電力変換器200は、交流電源20から入力された電力を直流に変換し、負荷30(図面ではLoadと称する)に対して出力する装置である。電力変換器200は、電子回路100aおよび100b、制御部201(図面ではPFC Controllerと称する)、抵抗部R
D1、R
D2、およびR
SHUNT、インダクタL、ゲートドライバG
D1およびG
D2(図面ではGate Driverと称する)、スイッチング素子P
D1およびP
D2(図面ではPower Deviceと称する)ダイオードD
D1およびD
D2、キャパシタC
Dを備える。
【0073】
電子回路100aおよび100bは、第1の実施形態で説明した電子回路100と同様である。電子回路100aの入力端子INAは抵抗部RSHUNTの一端と接続され、電子回路100aの入力端子INBは抵抗部RSHUNTのもう一端と接続される。抵抗部RSHUNTは電力変換器200への入力電流を電圧に変換する抵抗部である。抵抗部RSHUNTの一端における電圧が電子回路100aの入力信号SINAとして入力され、抵抗部RSHUNTのもう一端における電圧が電子回路100aの入力信号SINBとして入力される。電子回路100aは、電力変換器200の入力電流を計測する電流計測装置として動作する。電子回路100aは、最終的に電力変換器200の入力電流(図ではILと称する)を示す信号を、復元信号SA3およびSB3として制御部201に送る。
【0074】
電子回路100bの入力端子INAは抵抗部R
D1およびR
D2の間に接続され、電子回路100bの入力端子INBは抵抗部R
D2の、抵抗部R
D1と接続する端とは反対の端と接続される。抵抗部R
D1およびR
D2は電力変換器200への入力電圧を分圧する抵抗部である。抵抗部R
D1と接続する抵抗部R
D2の端における電圧が電子回路100bの入力信号S
INAとして入力され、抵抗部R
D2のもう一端における電圧が電子回路100bの入力信号S
INBとして入力される。電子回路100bは、電力変換器200の入力電圧を計測する電圧計測装置として動作する。電子回路100bは、最終的に電力変換器200の入力電圧を示す信号を、復元信号S
A3およびS
B3として制御部201に送る。
図16では、交流電源の2端の間における電圧差はV
ACと表されている。
【0075】
制御部201は、電子回路100aおよび100bから送られる、電力変換器200の入力電流を示す信号および入力電圧を示す信号を用いて、ゲートドライバGD1がスイッチング素子PD1に供給する電流およびゲートドライバGD2がスイッチング素子PD2に供給する電流を決定する。制御部201は、ゲートドライバGD1およびGD2に決定した電流を供給するよう指令する。本実施形態では一例として、制御部201はPFC(Power Factor Collection) Controllerとするが、任意の処理ICを適用可能である。
【0076】
ゲートドライバG
D1は制御部201の指令を受けてスイッチング素子P
D1に電流を供給する。例えば、
図16ではゲートドライバG
D1はスイッチング素子P
D1のゲート端子に電流を供給する。ゲートドライバG
D2は制御部201の指令を受けてスイッチング素子P
D2に電流を供給する。例えば、
図16ではゲートドライバG
D2はスイッチング素子P
D2のゲート端子に電流を供給する。
【0077】
スイッチング素子PD1はゲートドライバGD1から供給された電流に応じてスイッチングを行う。スイッチング素子PD2はゲートドライバGD2から供給された電流に応じてスイッチングを行う。スイッチング素子PD1およびPD2のスイッチングにより、直流電流が生成される。直流電流はダイオードDD1およびDD2、キャパシタCDで調整され、負荷30に出力電流として出力される。
【0078】
以上に本実施形態の電力変換器200を説明した。電力変換器200の変形例は様々に実装、実行可能である。例えば、電力変換器200に備えられる電子回路100aおよび100bは、第1の実施形態で説明した変形例および配置例を適用可能である。本実施形態の電力変換器200は、電子回路100aを電流計測装置として動作させ、電子回路100bを電圧計測装置として動作させる。これにより、電力変換器200の入力電流および入力電圧に応じて、直流の出力電流を制御することができる。電子回路100aおよび100bを用いることにより、電力変換器200の入力電流、入力電圧、基準電位GND1の変動が急峻であっても、電子回路100aおよび100bの内部回路を電位差による破壊から保護することができる。電子回路100aおよび100bが高いCMTI特性を有する回路となることで、制御部201に送られる入力電流および入力電圧を示す信号のノイズが小さくなり、制御部201はゲートドライバGD1およびGD2への指令をより正確に行うことができる。
【0079】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、第1の実施形態で説明した電子回路100を用いた適用例を説明する。
図16は、電子回路100を用いたインバータ300の構成図である。インバータ300は、一例としてモータMに電流を供給する三相インバータである。インバータ300は、電子回路100a、100b、100c、100d、制御部301(図面ではMCUと称する)、抵抗部R
D1、R
D2、R
SHUNT1、R
SHUNT2、およびR
SHUNT3、ゲートドライバG
D1、G
D2、G
D3、G
D4、G
D5、G
D6、スイッチング素子P
D1、P
D2、P
D3、P
D4、P
D5、およびP
D6を備える。
【0080】
電子回路100a、100b、100c、および100dは、第1の実施形態で説明した電子回路100と同様である。電子回路100aの入力端子INAは抵抗部RD1およびRD2の間に接続され、電子回路100aの入力端子INBは抵抗部RD2の、抵抗部RD1と接続する端とは反対の端と接続される。抵抗部RD1およびRD2はインバータ300への入力電圧V+を分圧する抵抗部である。抵抗部RD1と接続する抵抗部RD2の端における電圧が電子回路100aの入力信号SINAとして入力され、抵抗部RD2のもう一端における電圧が電子回路100aの入力信号SINBとして入力される。電子回路100aは、インバータ300の入力電圧V+を計測する電圧計測装置として動作する。電子回路100aは、最終的にインバータ300の入力電圧V+を示す信号を、復元信号SA3およびSB3として制御部301に送る。
【0081】
電子回路100bの入力端子INAは抵抗部RSHUNT1の一端と接続され、電子回路100bの入力端子INBは抵抗部RSHUNT1のもう一端と接続される。抵抗部RSHUNT1はスイッチング素子PD1およびPD2が生成する出力電流I1を電圧に変換する抵抗部である。抵抗部RSHUNT1の一端における電圧が電子回路100bの入力信号SINAとして入力され、抵抗部RSHUNT1のもう一端における電圧が電子回路100bの入力信号SINBとして入力される。電子回路100bは、スイッチング素子PD1およびPD2が生成する出力電流I1を計測する電流計測装置として動作する。電子回路100bは、最終的に出力電流I1を示す信号を、復元信号SA3およびSB3として制御部301に送る。
【0082】
電子回路100cの入力端子INAは抵抗部RSHUNT2の一端と接続され、電子回路100cの入力端子INBは抵抗部RSHUNT2のもう一端と接続される。抵抗部RSHUNT2はスイッチング素子PD3およびPD4が生成する出力電流I2を電圧に変換する抵抗部である。抵抗部RSHUNT2の一端における電圧が電子回路100cの入力信号SINAとして入力され、抵抗部RSHUNT2のもう一端における電圧が電子回路100cの入力信号SINBとして入力される。電子回路100cは、スイッチング素子PD3およびPD4が生成する出力電流I2を計測する電流計測装置として動作する。電子回路100cは、最終的に出力電流I2を示す信号を、復元信号SA3およびSB3として制御部301に送る。
【0083】
電子回路100dの入力端子INAは抵抗部RSHUNT3の一端と接続され、電子回路100dの入力端子INBは抵抗部RSHUNT3のもう一端と接続される。抵抗部RSHUNT3はスイッチング素子PD5およびPD6が生成する出力電流I3を電圧に変換する抵抗部である。抵抗部RSHUNT3の一端における電圧が電子回路100dの入力信号SINAとして入力され、抵抗部RSHUNT3のもう一端における電圧が電子回路100dの入力信号SINBとして入力される。電子回路100dは、スイッチング素子PD5およびPD6が生成する出力電流I3を計測する電流計測装置として動作する。電子回路100dは、最終的に出力電流I3を示す信号を、復元信号SA3およびSB3として制御部301に送る。
【0084】
制御部301は、電子回路100a~100dから送られる、インバータ300の入力電圧を示す信号および出力電圧I1、I2、I3を示す信号を用いて、ゲートドライバGD1がスイッチング素子PD1に供給する電流、ゲートドライバGD2がスイッチング素子PD2に供給する電流、ゲートドライバGD3がスイッチング素子PD3に供給する電流ゲートドライバGD4がスイッチング素子PD4に供給する電流ゲートドライバGD5がスイッチング素子PD5に供給する電流ゲートドライバGD6がスイッチング素子PD6に供給する電流を決定する。制御部301は、ゲートドライバGD1~GD6にそれぞれ決定した電流を供給するよう指令する。本実施形態では一例として、制御部301はMCU(Micro Control Unit)とするが、任意の処理ICを適用可能である。
【0085】
ゲートドライバG
D1~G
D6は制御部301の指令を受けてスイッチング素子P
D1~P
D6に電流を供給する。ゲートドライバG
D1~G
D6は、スイッチング素子P
D1~P
D6のそれぞれに対応して設けられており、対応するスイッチング素子に制御部301から指令された電流を供給する。例えば、
図16ではゲートドライバG
D1はスイッチング素子P
D1のゲート端子に、ゲートドライバG
D2はスイッチング素子P
D2のゲート端子に、ゲートドライバG
D3はスイッチング素子P
D3のゲート端子に、ゲートドライバG
D4はスイッチング素子P
D4のゲート端子に、ゲートドライバG
D5はスイッチング素子P
D5のゲート端子に、ゲートドライバG
D6はスイッチング素子P
D6のゲート端子に、それぞれ制御部301から指令された電流を供給する。
【0086】
スイッチング素子PD1~PD6は、ゲートドライバGD1~GD6のうち接続されたゲートドライバから供給された電流に応じてスイッチングを行う。スイッチング素子PD1~PD6のスイッチングにより、出力電流が生成される。例えば、スイッチング素子PD1およびPD2のスイッチングにより出力電流I1が生成され、スイッチング素子PD3およびPD4のスイッチングにより出力電流I2が生成され、スイッチング素子PD5およびPD6のスイッチングにより出力電流I3が生成される。生成された出力電流I1~I3はモータMに出力され、モータMを駆動する。
【0087】
以上に本実施形態のインバータ300を説明した。インバータ300の変形例は様々に実装、実行可能である。例えば、インバータ300に備えられる電子回路100a~100dは、第1の実施形態で説明した変形例および配置例を適用可能である。また、本実施形態で説明した抵抗部RD1、RD2、ゲートドライバGD1およびGD2、スイッチング素子PD1およびPD2は、第2の実施形態で説明したものと同様でもよいし、異なってもよい。
【0088】
本実施形態のインバータ300は、電子回路100aを電圧計測装置として動作させ、電子回路100b~100dを電流計測装置として動作させる。これにより、インバータ300の入力電圧および出力電流I1~I3に応じて、出力電流I1~I3を制御することができる。電子回路100a~100dを用いることにより、インバータ300の入力電圧、出力電流I1~I3、基準電位GND1の変動が急峻であっても、電子回路100a~100dの内部回路を電位差による破壊から保護することができる。電子回路100a~100dが高いCMTI特性を有する回路となることで、制御部301に送られるインバータ300の入力電圧を示す信号および出力電流I1~I3を示す信号のノイズが小さくなり、制御部301はゲートドライバGD1~GD6への指令をより正確に行うことができる。
【0089】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規の実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0090】
10:電子回路
20:交流電源
30:負荷
100、100’、100”100A、100B、100C、100D、100a、100b、100c、100d、100T:電子回路
110:制御回路
111:ロジック回路
112:クロック回路
120、120’、120”:電磁界結合部
130:変調回路(周波数変換器)
140、140’、140”:電磁界結合部
150:復調回路
151:周波数変換器
152:増幅器
153:フィルタ回路
154:バッファ回路
160a、160b、160c、160d、160e:ESD回路
170a、170a’、170a”、170a2、170a2’、170a2”、170b、170b’、170b”、170b2、170b2’、170b2”、170c、170d、170e、170f:保護回路
180、180’:電子回路
190:回路部
200:電力変換器
201:制御部
300:インバータ
301:制御部