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特許7542346缶成形装置の往復直線運動機構および缶成形装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】缶成形装置の往復直線運動機構および缶成形装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 22/28 20060101AFI20240823BHJP
   B21D 51/26 20060101ALI20240823BHJP
   B30B 1/26 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
B21D22/28 L
B21D51/26 X
B30B1/26 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020123740
(22)【出願日】2020-07-20
(65)【公開番号】P2022020317
(43)【公開日】2022-02-01
【審査請求日】2023-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】305060154
【氏名又は名称】アルテミラ製缶株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】517311172
【氏名又は名称】株式会社G&P
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】花房 達也
(72)【発明者】
【氏名】矢口 直之
(72)【発明者】
【氏名】平松 英之
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-054065(JP,A)
【文献】米国特許第08894530(US,B1)
【文献】特開2002-317868(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0041132(US,A1)
【文献】特開平02-150548(JP,A)
【文献】特開平06-071352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 22/28
B21D 51/26
B30B 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1中心軸を中心とする内歯歯車を有するハウジングと、
前記第1中心軸と直交する径方向において、前記ハウジングの内側に位置し、前記ハウジングと前記第1中心軸回りに相対回転可能に連結される第1回転体と、
前記第1中心軸と平行な第2中心軸を中心とし前記内歯歯車と噛み合う外歯歯車を有し、前記第1回転体の軸方向一方側に配置され、前記第1回転体と前記第2中心軸回りに相対回転可能に連結される第2回転体と、
前記第2回転体に接続され、前記径方向のうち所定方向に沿って往復直線運動させられるラム軸連結部と、を備え、
前記第2回転体は、
前記外歯歯車と、
前記外歯歯車とは別体とされて前記外歯歯車の軸方向一方側に位置し、前記外歯歯車と前記ラム軸連結部とを接続する接続部と、を有し、
前記ラム軸連結部の一部は、前記接続部と一体に形成され、
前記接続部を取り外すことにより、前記外歯歯車の内部にアクセスできる、
缶成形装置の往復直線運動機構。
【請求項2】
前記第1回転体と前記第2回転体とを前記第2中心軸回りに相対回転可能に連結する軸受を備え、
前記外歯歯車は、軸方向に延びる筒状であり、
前記接続部は、前記外歯歯車の軸方向一方側の開口を塞ぎ、
前記第1回転体は、前記第1回転体の軸方向一方側を向く面から軸方向一方側に突出し、前記外歯歯車の内部に挿入される凸部を有し、
前記軸受は、前記外歯歯車の内周面と前記凸部の外周面との間に介装される、
請求項1に記載の缶成形装置の往復直線運動機構。
【請求項3】
前記接続部は、
前記接続部を軸方向に貫通する第1嵌合孔と、
前記接続部を軸方向に貫通するボルト挿入孔と、を有し、
前記外歯歯車は、
前記外歯歯車の軸方向一方側を向く面に開口する第2嵌合穴と、
前記外歯歯車の軸方向一方側を向く面に開口する雌ネジ穴と、を有し、
前記第2回転体は、
前記第1嵌合孔と前記第2嵌合穴とに嵌合するピン部材と、
前記ボルト挿入孔に挿入されて前記雌ネジ穴に螺着するボルト部材と、を有する、
請求項1または2に記載の缶成形装置の往復直線運動機構。
【請求項4】
前記外歯歯車は、軸方向に延びる筒状であり、
前記接続部は、前記接続部の軸方向他方側を向く面から突出し、前記外歯歯車の内周面または外周面に嵌合する嵌合筒部を有する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の缶成形装置の往復直線運動機構。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の缶成形装置の往復直線運動機構と、
前記所定方向に延び、一端部に前記ラム軸連結部が連結されるラム軸と、
前記ラム軸の他端部に配置されるパンチと、
前記パンチが挿入される貫通孔を有するダイと、
前記ダイの前記貫通孔が開口する端面に押し付けられるカップホルダーと、を備える、
缶成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶成形装置の往復直線運動機構および缶成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有底筒状のDI(Drawing&Ironing)缶が知られている。DI缶は、アルミニウム合金製の円板状のブランクが、カッピング加工およびDI加工等を経ることにより製造される。カッピング加工では、ブランクを絞り加工してカップ状体とする。DI加工では、カップ状体をカップホルダーで押さえつつ、パンチとダイとの間で絞りしごき加工する。
【0003】
カップ状体にDI加工を施す缶成形装置として、例えば特許文献1に記載のものが知られている。この缶成形装置は、往復直線運動機構により、ラム軸を介してパンチを所定のストローク方向に往復直線運動させる。
具体的に、往復直線運動機構は、第1中心軸を中心とする内歯歯車を有する機構フレーム(ハウジング)と、第1中心軸回りに回転自在に機構フレームに支持される第1回転体と、第1中心軸に対して平行に離間した第2中心軸回りに回転自在に第1回転体に支持され、内歯歯車に噛み合う外歯歯車を有する第2回転体と、第2回転体に設けられ、第1中心軸と直交する所定方向に沿って往復直線運動する作用部(ラム軸連結部)と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-54065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の缶成形装置の往復直線運動機構は、第2回転体の外歯歯車とラム軸連結部とが単一の部材により一体に形成されており、この部材を製作するための設備等が限られ、製造コストが嵩んでいた。また、往復直線運動機構の組み立て時や、第1回転体と第2回転体とを連結する軸受などの部品のメンテナンスおよび交換等(以下、メンテナンス等と省略する)の際、外歯歯車およびラム軸連結部を含む上記部材を一体的に装置に組み付けたり取り外したりする必要があり、作業が大掛かりとなって、多くの手間や時間を要していた。
【0006】
本発明は、部材の製作が容易で製造コストを削減でき、組み立てやメンテナンス等の作業性がよい缶成形装置の往復直線運動機構、および缶成形装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の缶成形装置の往復直線運動機構の一つの態様は、第1中心軸を中心とする内歯歯車を有するハウジングと、前記第1中心軸と直交する径方向において、前記ハウジングの内側に位置し、前記ハウジングと前記第1中心軸回りに相対回転可能に連結される第1回転体と、前記第1中心軸と平行な第2中心軸を中心とし前記内歯歯車と噛み合う外歯歯車を有し、前記第1回転体の軸方向一方側に配置され、前記第1回転体と前記第2中心軸回りに相対回転可能に連結される第2回転体と、前記第2回転体に接続され、前記径方向のうち所定方向に沿って往復直線運動させられるラム軸連結部と、を備え、前記第2回転体は、前記外歯歯車と、前記外歯歯車とは別体とされて前記外歯歯車の軸方向一方側に位置し、前記外歯歯車と前記ラム軸連結部とを接続する接続部と、を有し、前記ラム軸連結部の一部は、前記接続部と一体に形成され、前記接続部を取り外すことにより、前記外歯歯車の内部にアクセスできる
また、本発明の缶成形装置の一つの態様は、上述の缶成形装置の往復直線運動機構と、前記所定方向に延び、一端部に前記ラム軸連結部が連結されるラム軸と、前記ラム軸の他端部に配置されるパンチと、前記パンチが挿入される貫通孔を有するダイと、前記ダイの前記貫通孔が開口する端面に押し付けられるカップホルダーと、を備える。
【0008】
本発明によれば、第2回転体の外歯歯車と接続部とが互いに別体であるので、少なくとも外歯歯車を単体で製作することができる。特別な設備等を必要とすることなく、外歯歯車を容易に製作でき、製造コストを削減できる。また、往復直線運動機構の組み立て時や、第1回転体と第2回転体とを連結する軸受などの部品のメンテナンス等の際、外歯歯車と接続部とを別々に装置に組み付けたり取り外すことができる。具体的には、作業者が往復直線運動機構(装置)の軸方向一方側から、外歯歯車と接続部とをこの順に装置に組み付けたり、接続部と外歯歯車とをこの順に装置から取り外したりできる。これにより各作業が簡素化されて、作業時間が短縮する。よって本発明によれば、部材の製作が容易で製造コストを削減でき、組み立てやメンテナンス等の作業性がよい。
【0009】
上記缶成形装置の往復直線運動機構は、前記第1回転体と前記第2回転体とを前記第2中心軸回りに相対回転可能に連結する軸受を備え、前記外歯歯車は、軸方向に延びる筒状であり、前記接続部は、前記外歯歯車の軸方向一方側の開口を塞ぎ、前記第1回転体は、前記第1回転体の軸方向一方側を向く面から軸方向一方側に突出し、前記外歯歯車の内部に挿入される凸部を有し、前記軸受は、前記外歯歯車の内周面と前記凸部の外周面との間に介装されることが好ましい。
【0010】
この場合、作業者が軸方向一方側から接続部を取り外すことにより、外歯歯車の内部の軸受に容易にアクセスできる。つまり、外歯歯車を装置から取り外さなくても、軸受にアクセスすることができる。また必要に応じて、外歯歯車や軸受を装置から取り外すことが容易である。このため、メンテナンス等の作業性が向上する。また、軸受の取り付け構造を簡素化でき、往復直線運動機構をコンパクトに構成できる。
【0011】
上記缶成形装置の往復直線運動機構において、前記接続部は、前記接続部を軸方向に貫通する第1嵌合孔と、前記接続部を軸方向に貫通するボルト挿入孔と、を有し、前記外歯歯車は、前記外歯歯車の軸方向一方側を向く面に開口する第2嵌合穴と、前記外歯歯車の軸方向一方側を向く面に開口する雌ネジ穴と、を有し、前記第2回転体は、前記第1嵌合孔と前記第2嵌合穴とに嵌合するピン部材と、前記ボルト挿入孔に挿入されて前記雌ネジ穴に螺着するボルト部材と、を有することが好ましい。
【0012】
この場合、ピン部材によって、接続部と外歯歯車とを第2中心軸回りに位置決めした状態で、ボルト部材により接続部と外歯歯車とを固定できる。このため、接続部に接続されるラム軸連結部と、外歯歯車との位置精度が安定して確保される。また往復直線運動機構の稼働時などにおいて、接続部と外歯歯車との間に生じる第2中心軸回りの周方向の力を、ボルト部材よりも剛性を確保しやすいピン部材によって受けることができる。これにより、ボルト部材の損傷等が抑制される。接続部と外歯歯車との第2中心軸回りの周方向への相対移動がピン部材によって規制され、接続部と外歯歯車との軸方向への相対移動がボルト部材によって規制される。
【0013】
上記缶成形装置の往復直線運動機構において、前記外歯歯車は、軸方向に延びる筒状であり、前記接続部は、前記接続部の軸方向他方側を向く面から突出し、前記外歯歯車の内周面または外周面に嵌合する嵌合筒部を有することが好ましい。
【0014】
この場合、外歯歯車と嵌合筒部とが嵌合することにより、第2中心軸と直交する径方向において、外歯歯車と接続部とが位置決めされる。また往復直線運動機構の稼働時などにおいて、接続部と外歯歯車との間に生じる第2中心軸と直交する径方向の力を、ボルト部材よりも剛性を確保しやすい嵌合筒部によって受けることができる。これにより、ボルト部材の損傷等が抑制される。接続部と外歯歯車との第2中心軸と直交する径方向への相対移動が、嵌合筒部によって規制される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一つの態様の缶成形装置の往復直線運動機構、および缶成形装置によれば、部材の製作が容易で製造コストを削減でき、組み立てやメンテナンス等の作業性がよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本実施形態の缶成形装置を模式的に示す概略図である。
図2図2は、本実施形態の缶成形装置の往復直線運動機構を示す斜視図である。
図3図3は、本実施形態の缶成形装置の往復直線運動機構を示す正面図である。
図4図4は、図3のIV-IV断面を示す断面図である。
図5図5は、第1回転体、凸部、第1錘部および軸体を示す斜視図である。
図6図6は、第2回転体、凹部、第2錘部およびラム軸連結部を示す斜視図である。
図7図7は、図3のVII-VII断面を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態の缶成形装置1、および缶成形装置1の往復直線運動機構10(以下、単に往復直線運動機構10と呼ぶ場合がある)について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態の缶成形装置1は、ワークであるカップ状体WにDI加工を施してDI缶100とする、DI缶製造装置である。
【0018】
まず、DI缶100について説明する。
DI缶100は、有底筒状である。DI缶100は、飲料等の内容物が充填、密封される2ピース缶やボトル缶等の缶体に用いられる。2ピース缶の場合、缶体は、DI缶100と、DI缶100の開口端部に巻き締められる円板状の缶蓋と、を備える。ボトル缶の場合、缶体は、DI缶100にネッキング加工およびねじ加工等が施されたボトル缶本体と、ボトル缶本体の開口端部に螺着されるキャップと、を備える。
【0019】
DI缶100は、アルミニウム合金製等の板材から打ち抜いた円板状のブランクに、カッピング工程(絞り工程)およびDI工程(絞りしごき工程)を施すことにより、有底筒状に形成される。具体的にDI缶100は、例えば2ピース缶の場合、板材打ち抜き工程、カッピング工程、DI工程、トリミング工程、印刷工程、塗装工程、ネッキング工程およびフランジング工程をこの順に経て、製造される。
【0020】
DI缶100を製造する過程では、ブランクをカッピングプレスによって絞り加工(カッピング加工)し、カップ状体Wに成形する。つまりカップ状体Wは、上記カッピング工程において、ブランクからDI缶100へ移行する過程で作製される成形中間体である。カップ状体Wは、DI缶100よりも周壁の高さ(缶軸方向に沿う長さ)が小さく、直径が大きい有底筒状である。
【0021】
次に、缶成形装置1について説明する。
缶成形装置1は、上記DI工程に用いられるものであり、カップ状体WにDI加工、すなわち絞り(再絞り)しごき加工を施して、カップ状体Wよりも周壁の高さが大きく、直径が小さいDI缶100に成形する。また缶成形装置1は、上記DI工程において、DI缶100の缶底をドーム形状に成形する。
【0022】
缶成形装置1は、往復直線運動機構10と、往復直線運動機構10の後述するラム軸連結部35が往復直線運動させられる所定方向(以下、ストローク方向Sと呼ぶ場合がある)に延び、一端部にラム軸連結部35が連結されるラム軸3と、ラム軸3の他端部に配置されるパンチ2と、ラム軸3の中心軸Oの軸方向に沿ってラム軸3を往復移動自在に支持するラム軸受5と、パンチ2が挿入される貫通孔7を有するダイ8と、ダイ8の貫通孔7が開口する端面9に押し付けられるカップホルダー6と、パンチ2との間でDI缶100の缶底を挟み込みドーム状に成形するドーマー11と、を備える。
ラム軸3、パンチ2、ラム軸受5、ダイ8の貫通孔7、カップホルダー6およびドーマー11の各中心軸Oは、互いに同軸に配置される。本実施形態では、これらの部材の共通軸である中心軸Oが、水平方向に延びる。
【0023】
また缶成形装置1は、ダイ8の端面9上にカップ状体Wを供給するカップフィーダー(図示省略)と、この端面9上にカップ状体Wを保持する受け座(図示省略)と、成形後のDI缶100を装置外部へ搬送する缶搬送機構(図示省略)と、パンチ2の先端面および外周面の少なくともいずれかに開口するエア吐出孔からエアを吐出し、パンチ2からDI缶100を離型させるエア吐出機構(図示省略)と、往復直線運動機構10に同期して駆動され、往復直線運動機構10のラム軸連結部35とは異なるストローク長でカップホルダー6を中心軸Oの軸方向に往復移動させるカップホルダー駆動機構(図示省略)と、駆動モータ等の駆動源(図示省略)と、を備える。
【0024】
往復直線運動機構10は、駆動源から入力される第1中心軸C1回りの回転駆動力を、中心軸Oに沿うストローク方向Sへの往復直線運動に変換して、ラム軸連結部35に出力する。往復直線運動機構10の具体的な構成については、別途後述する。
ラム軸3は、中心軸Oに沿って延びる軸状である。ラム軸3は、中心軸Oの軸方向において互いに離間して配置される一対のラム軸受5により、摺動自在に支持される。
パンチ2は、中心軸Oに沿って延びる円筒状または円柱状である。
【0025】
一対のラム軸受5は、中心軸Oの軸方向において、往復直線運動機構10とダイ8との間に配置される。一対のラム軸受5のうち、ダイ8に近い位置に配置される一方のラム軸受5は、前軸受5Fであり、往復直線運動機構10に近い位置に配置される他方のラム軸受5は、後軸受5Rである。前軸受5Fおよび後軸受5Rは、例えばハイドロスタティック軸受や静圧軸受等と呼ばれる流体軸受の構造を有する。
【0026】
ダイ8は、中心軸Oの軸方向に並んで複数設けられる。複数のダイ8はそれぞれ、ダイ8を中心軸Oの軸方向に貫通する断面円形の貫通孔7を有する。複数のダイ8は、1つの再絞りダイ8Aと、この再絞りダイ8Aよりもドーマー11側に位置する複数のアイアニングダイ(しごきダイ)8Bと、を有する。特に図示しないが、各アイアニングダイ8Bのドーマー11側には、それぞれパイロットリングが配置される。パイロットリングが設けられることにより、成形時にDI缶100が各アイアニングダイ8Bを外れた(通過した)ときの衝撃でパンチ2が各アイアニングダイ8Bに接触することが抑制される。
また、成形時において再絞りダイ8Aおよび各アイアニングダイ8Bには、潤滑と冷却のためクーラント液が供給される。
【0027】
カップホルダー6は、中心軸Oの軸方向に延びる円筒状のカップホルダースリーブ6aを有する。カップホルダースリーブ6aは、パンチ2の外側に嵌め合わされ、かつパンチ2に対して中心軸Oの軸方向にスライド移動可能である。カップホルダースリーブ6aは、再絞りダイ8Aの端面9に配置されたカップ状体Wの内部に挿入され、カップ状体Wの底壁を端面9に押圧して保持する。すなわちカップホルダー6は、ダイ8の往復直線運動機構10側を向く端面9に、カップ状体Wの底壁を押し付けて支持する。
特に図示しないが、カップホルダー駆動機構は、駆動源から往復直線運動機構10を介して伝達された回転駆動力を、中心軸Oの軸方向への往復運動に変換して、カップホルダー6を中心軸Oの軸方向に往復直線移動させる。
【0028】
ドーマー11は、DI缶100の缶底を成形する金型である。ドーマー11は、中心軸Oの軸方向に延びる略円筒状である。パンチ2がストローク方向Sの前進端位置に配置されたときに、ドーマー11は、中心軸Oの軸方向においてパンチ2と対向する。
【0029】
エア吐出機構は、パンチ2の外面に開口するエア吐出孔(図示省略)と、往復直線運動機構10の後述するエア供給路28(図4参照)と、エア吐出孔とエア供給路28とを連通するエア連通路(図示省略)と、エア供給源(図示省略)と、を有する。
特に図示しないが、エア連通路は、ラム軸3の内部を中心軸Oの軸方向に沿って延びるラム軸流路を有する。エア供給源は、例えばエアコンプレッサ等であり、エア供給路28にエア(圧縮エア)を供給する。
【0030】
缶成形装置1によるカップ状体WへのDI加工は、下記のように行われる。
まず、ワークであるカップ状体Wが、カップ軸(缶軸)を水平方向に延ばし、その開口をパンチ2側へ向けた姿勢で、パンチ2と再絞りダイ8Aとの間に配置される。カップ状体Wの底壁は、再絞りダイ8Aの端面9と対向する。
【0031】
このカップ状体Wに対して、カップホルダー6およびパンチ2が中心軸Oの軸方向に前進移動させられる。すなわち、カップホルダー6およびパンチ2が、ストローク方向Sのうち、往復直線運動機構10からダイ8側つまり前側へ向けて移動する。そしてカップホルダー6が、再絞りダイ8Aの端面9にカップ状体Wの底壁を押し付けてカップ押し付け動作を行いつつ、パンチ2が、カップ状体Wを再絞りダイ8Aの貫通孔7内に押し込んでいくことにより、カップ状体Wに再絞り加工を施す。
【0032】
再絞り加工により、カップ状体Wは小径に成形され、かつカップ軸方向の長さが大きくなる。さらにこのカップ状体Wをパンチ2で押し込んでいき、複数のアイアニングダイ8Bの各貫通孔7を順次通過させつつしごき加工を施す。すなわち、カップ状体Wの周壁をしごいて延伸させ、周壁高さを高くするとともに周壁の厚さを薄くして、有底筒状のDI缶100の形状に成形する。DI缶100は、周壁がしごかれることで冷間加工硬化され、強度が高められる。
【0033】
しごき加工が施されたDI缶100は、パンチ2によりダイ8の貫通孔7からドーマー11側へと押し出される。そしてDI缶100の底部(缶底となる部分)が、パンチ2とドーマー11との間で挟まれ押圧されることにより、DI缶100の底部が、ドーム形状に成形される。
【0034】
次に、往復直線運動機構10について説明する。
図2から図4に示すように、往復直線運動機構10は、内歯歯車16を有するハウジング15と、凸部25を有する第1回転体21と、第1軸受31と、内歯歯車16と噛み合う外歯歯車23および凹部27を有する第2回転体22と、第2軸受(軸受)32と、エア継手部材40と、ラム軸連結部35と、第1錘部51と、第2錘部52と、軸体26と、エア供給路28と、第1オイル供給路36と、第2オイル供給路37と、ギア(図示省略)と、を備える。
【0035】
ハウジング15およびその内歯歯車16、第1回転体21(の凸部25以外の部分)、第1軸受31、軸体26ならびにギアは、第1中心軸C1を中心としており、つまり第1中心軸C1を共通軸として互いに同軸に配置される。凸部25、第2回転体22およびその外歯歯車23、凹部27、第2軸受32ならびにエア継手部材40は、第2中心軸C2を中心としており、つまり第2中心軸C2を共通軸として互いに同軸に配置される。
第1中心軸C1と第2中心軸C2とは、互いに平行であり、かつ互いに離れて配置される。本実施形態では、第1中心軸C1および第2中心軸C2が、水平方向に延びる。
【0036】
以下の説明では、第1中心軸C1が延びる方向および第2中心軸C2が延びる方向を、単に軸方向と呼ぶ。軸方向において、第1回転体21とラム軸連結部35とは、互いに異なる位置に配置される。軸方向のうち、第1回転体21からラム軸連結部35へ向かう方向を軸方向一方側と呼び、ラム軸連結部35から第1回転体21へ向かう方向を軸方向他方側と呼ぶ。なお、軸方向一方側を前側、軸方向他方側を後側と言い換えてもよい。
【0037】
第1中心軸C1と直交する方向を、第1径方向(径方向)と呼ぶ。第1径方向のうち、第1中心軸C1に近づく向きを第1径方向の内側と呼び、第1中心軸C1から離れる向きを第1径方向の外側と呼ぶ。
第1中心軸C1回りに周回する方向を第1周方向と呼ぶ。第1周方向のうち、缶成形装置1の稼働時に、ハウジング15に対して第1回転体21が回転させられる向きを、第1回転方向T1と呼ぶ。
【0038】
第2中心軸C2と直交する方向を、第2径方向と呼ぶ。第2径方向のうち、第2中心軸C2に近づく向きを第2径方向の内側と呼び、第2中心軸C2から離れる向きを第2径方向の外側と呼ぶ。
第2中心軸C2回りに周回する方向を第2周方向と呼ぶ。第2周方向のうち、缶成形装置1の稼働時に、第1回転体21に対して第2回転体22が回転させられる向きを、第2回転方向T2と呼ぶ。
【0039】
図4に示すように、ハウジング15は、第1中心軸C1を中心とする筒状である。ハウジング15は、内歯歯車16と、ハウジング本体17と、を有する。
【0040】
内歯歯車16は、第1中心軸C1を中心とする環状である。内歯歯車16は、円筒状であり、軸方向に延びる。内歯歯車16は、ハウジング15の軸方向一方側の端部に配置される。内歯歯車16は、ハウジング15の軸方向一方側の開口部に位置する。
【0041】
内歯歯車16は、内歯歯車16の内周部に、第1周方向に並ぶ複数の内歯16aを有する。内歯16aは、内歯歯車16の内周部に軸方向の全長にわたって配置される。本実施形態では内歯16aが、ハウジング15の軸方向一方側の開口を通して、往復直線運動機構10の外部に露出される。
【0042】
ハウジング本体17は、第1中心軸C1を中心とする円筒状であり、軸方向に延びる。ハウジング本体17の内部には、第1回転体21および第1軸受31が配置される。ハウジング本体17の軸方向一方側の端部には、内歯歯車16が固定される。
【0043】
ハウジング本体17は、第1外輪支持部17gを有する。第1外輪支持部17gは、ハウジング本体17の内周面から第1径方向の内側へ突出し、第1周方向に延びる。第1外輪支持部17gは、第1中心軸C1を中心とする円環板状である。第1外輪支持部17gの一対の板面は、軸方向を向く。
【0044】
第1回転体21は、第1径方向において、ハウジング15の内側に位置する。第1回転体21は、ハウジング15と第1中心軸C1回りに相対回転可能に連結される。
図4および図5に示すように、第1回転体21は、第1中心軸C1を中心とする略円柱状である。第1回転体21は、ハウジング本体17内に配置される。第1回転体21は、ハウジング15内に収容される。
【0045】
第1回転体21は、穴部21aと、鍔部21bと、凸部25と、を有する。
穴部21aは、第1回転体21の軸方向他方側を向く面21eから軸方向一方側に窪み、軸方向に延びる。穴部21aは、第1中心軸C1を中心とする円穴状である。具体的に、穴部21aは、第1回転体21の軸方向他方側を向く面21eのうち外周部以外の部分から、軸方向一方側に窪む。つまり穴部21aは、軸方向他方側に開口する。
【0046】
鍔部21bは、第1回転体21の外周部の軸方向一方側の端部に配置される。鍔部21bは、第1中心軸C1を中心とする円環板状である。鍔部21bは、第1回転体21の外周面から第1径方向の外側に突出し、第1周方向に延びる。鍔部21bの一対の板面は、軸方向を向く。鍔部21bの一対の板面のうち軸方向他方側を向く板面は、第1軸受31の内輪31aに軸方向一方側から接触する。
凸部25については、後述する。
【0047】
第1軸受31は、例えばテーパーローラーベアリング等である。第1軸受31は、第1径方向からの荷重(ラジアル荷重)および軸方向からの荷重(アキシャル荷重)を支持可能である。第1軸受31は、ハウジング15と第1回転体21とを、第1中心軸C1回りに相対回転可能に連結する。
【0048】
第1軸受31は、内輪31aと、スペーサー31dと、外輪31bと、転動体31cと、を有する。
内輪31aは、第1中心軸C1を中心とする筒状である。内輪31aは、第1回転体21の外周面に嵌合する。内輪31aは、軸方向に並んで複数設けられる。本実施形態では第1軸受31が、軸方向に互いに間隔をあけて配置される一対の内輪31aを有する。一対の内輪31a間には、スペーサー31dが配置される。スペーサー31dは、第1中心軸C1を中心とする筒状である。スペーサー31dは、第1回転体21の外周面に嵌合する。
【0049】
一対の内輪31aのうち、軸方向一方側に位置する一方の内輪31aは、軸方向において、鍔部21bとスペーサー31dとの間に配置される。一方の内輪31aの軸方向一方側を向く端面には、鍔部21bが接触する。一方の内輪31aの軸方向他方側を向く端面には、スペーサー31dが接触する。
一対の内輪31aのうち、軸方向他方側に位置する他方の内輪31aは、軸方向一方側を向く端面にスペーサー31dが接触する。
【0050】
外輪31bは、第1中心軸C1を中心とする筒状である。外輪31bは、内輪31aよりも第1径方向の外側に位置する。外輪31bは、ハウジング本体17の内周面に嵌合する。外輪31bは、軸方向に並んで複数設けられる。本実施形態では第1軸受31が、軸方向に互いに間隔をあけて配置される一対の外輪31bを有する。一対の外輪31b間には、第1外輪支持部17gが配置される。
【0051】
一対の外輪31bのうち、軸方向一方側に位置する一方の外輪31bの軸方向他方側を向く端面には、第1外輪支持部17gが接触する。
一対の外輪31bのうち、軸方向他方側に位置する他方の外輪31bの軸方向一方側を向く端面には、第1外輪支持部17gが接触する。
【0052】
転動体31cは、円柱状のローラー等である。転動体31cは、第1径方向において、内輪31aと外輪31bとの間に配置される。転動体31cは、第1周方向に並んで複数設けられる。第1周方向に配列する転動体31cの列(以下、単に転動体31cの列と呼ぶ)は、軸方向に並んで複数列設けられる。本実施形態では第1軸受31が、軸方向に互いに間隔をあけて配置される一対の転動体31cの列を有する。
【0053】
一対の転動体31cの列のうち、軸方向一方側に位置する一方の転動体31cの列は、一方の内輪31aと一方の外輪31bとの間に転動可能に保持される。
一対の転動体31cの列のうち、軸方向他方側に位置する他方の転動体31cの列は、他方の内輪31aと他方の外輪31bとの間に転動可能に保持される。
【0054】
凸部25は、第1回転体21の軸方向一方側を向く面21dから軸方向一方側に突出し、軸方向に延びる。凸部25は、第2中心軸C2を中心とする円柱状である。具体的に、凸部25は、第1回転体21の軸方向一方側を向く面21dのうち第1径方向の外側部分から、軸方向一方側に突出する。
【0055】
凸部25は、外周段部25aを有する。
外周段部25aは、凸部25の外周部の一部を構成する。図示の例では外周段部25aが、凸部25の外周部のうち軸方向他方側の端部に配置される。外周段部25aは、第2中心軸C2を中心とする円環面状であり、軸方向一方側を向く。
【0056】
第2回転体22は、第1回転体21の軸方向一方側に配置される。第2回転体22は、第1回転体21と第2中心軸C2回りに相対回転可能に連結される。
図4および図6に示すように、第2回転体22は、第2中心軸C2を中心とする略有頂筒状である。第2回転体22は、外歯歯車23と、頂壁部(接続部)22bと、ピン部材34と、ボルト部材24と、継手挿入孔22cと、凹部27と、を有する。
【0057】
外歯歯車23は、第2中心軸C2を中心とする筒状であり、軸方向に延びる。外歯歯車23は、略円筒状である。図4に示すように、外歯歯車23の内部には、凸部25が挿入される。外歯歯車23の軸方向他方側を向く面22eの一部は、第1回転体21の軸方向一方側を向く面21dの一部と、軸方向に隙間をあけて対向する。外歯歯車23の軸方向他方側を向く面22eの他の一部は、第1軸受31の一部と、軸方向に隙間をあけて対向する。
【0058】
外歯歯車23は、外歯歯車23の外周部に、第2周方向に並ぶ複数の外歯23aを有する。外歯23aは、外歯歯車23の外周部のうち軸方向一方側の端部以外の部分に配置される。本実施形態では外歯23aが、ハウジング15の軸方向一方側の開口を通して、往復直線運動機構10の外部に露出される。
複数の外歯23aのうち少なくとも1つ以上と、複数の内歯16aのうち少なくとも1つ以上とは、互いに噛み合う。外歯歯車23の外歯23aのピッチ円直径は、内歯歯車16の内歯16aのピッチ円直径の1/2である。
【0059】
図7に示すように、外歯歯車23は、第2外輪支持部23bと、第2嵌合穴23cと、雌ネジ穴23dと、を有する。
第2外輪支持部23bは、外歯歯車23の内周面から第2径方向の内側へ突出し、第2周方向に延びる。第2外輪支持部23bは、第2中心軸C2を中心とする円筒状である。第2外輪支持部23bの一対の端面は、軸方向を向く。
【0060】
第2嵌合穴23cは、外歯歯車23の軸方向一方側を向く面23eに開口する。第2嵌合穴23cは、円穴状であり、軸方向に延びる。本実施形態において第2嵌合穴23cは、軸方向一方側の端部が面23eに開口され、軸方向他方側の端部が閉じられた止め穴である。本実施形態では第2嵌合穴23cが、1つ設けられる。
【0061】
雌ネジ穴23dは、外歯歯車23の軸方向一方側を向く面23eに開口する。雌ネジ穴23dは、円穴状であり、軸方向に延びる。雌ネジ穴23dは、内周面に雌ネジ部を有する。本実施形態において雌ネジ穴23dは、軸方向一方側の端部が面23eに開口され、軸方向他方側の端部が閉じられた止め穴である。雌ネジ穴23dは、第2周方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。複数の雌ネジ穴23dのうち少なくとも1つは、第2嵌合穴23cと第2周方向に並んで配置される。具体的に本実施形態では、軸方向から見て、第2中心軸C2を中心とする図示しない仮想円上に、複数の雌ネジ穴23dと第2嵌合穴23cとが第2周方向に沿って並ぶ(図3参照)。
【0062】
図2において、缶成形装置1の稼働時に、外歯歯車23は、内歯歯車16の内周部に沿って第1回転方向T1に回転(公転)移動しつつ、第2回転方向T2に回転(自転)する。本実施形態では、往復直線運動機構10を軸方向一方側から見て、つまり往復直線運動機構10の正面視で、第1回転方向T1は、第1中心軸C1を中心とする反時計回りの方向であり、第2回転方向T2は、第2中心軸C2を中心とする時計回りの方向である。ただしこれに限らず、往復直線運動機構10を軸方向一方側から見て、第1回転方向T1が、第1中心軸C1を中心とする時計回りの方向であり、第2回転方向T2が、第2中心軸C2を中心とする反時計回りの方向であってもよい。
【0063】
図4および図7に示すように、頂壁部22bは、外歯歯車23の軸方向一方側に配置される。頂壁部22bは、外歯歯車23とは別体とされて、外歯歯車23の軸方向一方側に位置する。すなわち、頂壁部22bと外歯歯車23とは、互いに別々の部材として製作される。本実施形態では頂壁部22bが、第2中心軸C2と垂直な方向に拡がる板状である。頂壁部22bは、外歯歯車23の軸方向一方側の端部およびラム軸連結部35の軸方向他方側の端部と接続される。つまり頂壁部22bは、外歯歯車23とラム軸連結部35とを接続する。頂壁部22bは、外歯歯車23の軸方向一方側の開口を塞ぐ。頂壁部22bは、塞ぎ壁部22bまたは前壁部22bと言い換えてもよい。頂壁部22bの軸方向他方側を向く面は、外歯歯車23の軸方向一方側を向く面23eと接触する。
【0064】
図7に示すように、頂壁部22bは、第1嵌合孔22fと、ボルト挿入孔22gと、嵌合筒部22dと、を有する。
第1嵌合孔22fは、頂壁部22bを軸方向に貫通する。第1嵌合孔22fは、円孔状であり、軸方向に延びる。第1嵌合孔22fは、頂壁部22bの軸方向一方側を向く面と軸方向他方側を向く面とに開口する貫通孔である。図示の例では、第1嵌合孔22fの内径が、第2嵌合穴23cの内径と同じである。本実施形態では第1嵌合孔22fが、1つ設けられる。
【0065】
ボルト挿入孔22gは、頂壁部22bを軸方向に貫通する。ボルト挿入孔22gは、多段円孔状であり、軸方向に延びる。ボルト挿入孔22gは、頂壁部22bの軸方向一方側を向く面と軸方向他方側を向く面とに開口する貫通孔である。ボルト挿入孔22gは、第2周方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。複数のボルト挿入孔22gのうち少なくとも1つは、第1嵌合孔22fと第2周方向に並んで配置される。具体的に本実施形態では、軸方向から見て、第2中心軸C2を中心とする図示しない仮想円上に、複数のボルト挿入孔22gと第1嵌合孔22fとが第2周方向に沿って並ぶ(図3参照)。
【0066】
図7に示すように、ボルト挿入孔22gは、頭部配置孔部22hと、軸部配置孔部22iと、段部22jと、を有する。
頭部配置孔部22hは、ボルト挿入孔22gのうち軸方向一方側の部分に位置する。頭部配置孔部22hは、頂壁部22bの軸方向一方側を向く面に開口し、軸方向に延びる。頭部配置孔部22hは、円孔状である。
【0067】
軸部配置孔部22iは、ボルト挿入孔22gのうち軸方向他方側の部分に位置する。軸部配置孔部22iは、頂壁部22bの軸方向他方側を向く面に開口し、軸方向に延びる。軸部配置孔部22iは、円孔状である。軸部配置孔部22iの内径は、頭部配置孔部22hの内径よりも小さい。軸部配置孔部22iと頭部配置孔部22hとは、互いに連通する。
段部22jは、頭部配置孔部22hと軸部配置孔部22iとの間に配置される。段部22jは、第2中心軸C2と垂直な方向に拡がる円環面状であり、軸方向一方側を向く。
【0068】
嵌合筒部22dは、頂壁部22bの軸方向他方側を向く面から、軸方向他方側に突出する。嵌合筒部22dは、第2中心軸C2を中心とする筒状である。嵌合筒部22dは、外歯歯車23内に挿入される。嵌合筒部22dは、外歯歯車23の内周面に嵌合する。
【0069】
ピン部材34は、軸方向に延びる円柱状である。ピン部材34は、第1嵌合孔22fと第2嵌合穴23cとに挿入される。ピン部材34は、第1嵌合孔22fおよび第2嵌合穴23cの各内周面と嵌合する。つまりピン部材34は、第1嵌合孔22fと第2嵌合穴23cとに嵌合する。本実施形態ではピン部材34が、1つ設けられる。
【0070】
ボルト部材24は、軸方向に延びる多段円柱状である。ボルト部材24は、ボルト挿入孔22gに挿入されて雌ネジ穴23dに螺着する。ボルト部材24により、頂壁部22bと外歯歯車23とが固定される。
【0071】
ボルト部材24は、外周面に雄ネジ部が形成された軸部24aと、軸部24aよりも外径が大きい頭部24bと、を有する。
軸部24aの雄ネジ部は、雌ネジ穴23dの雌ネジ部と螺着される。軸部24aのうち軸方向一方側の端部は、軸部配置孔部22i内に配置される。
【0072】
頭部24bは、頭部配置孔部22h内に配置される。頭部24bの軸方向他方側を向く端面は、段部22jと接触する。
軸部24aのうち軸方向一方側の端部の外径は、軸部配置孔部22iの内径よりも小さい。頭部24bの外径は、頭部配置孔部22hの内径よりも小さい。このため、ボルト部材24の外周面とボルト挿入孔22gの内周面との間には、隙間が設けられる。
【0073】
図2および図3に示すように、ボルト部材24は、複数設けられる。複数のボルト部材24は、第2周方向に互いに間隔をあけて配置される。複数のボルト部材24のうち少なくとも1つは、ピン部材34と第2周方向に並んで配置される。具体的に本実施形態では、図3に示すように軸方向から見て、第2中心軸C2を中心とする図示しない仮想円上に、複数のボルト部材24とピン部材34とが第2周方向に沿って並ぶ。図示の例では、軸方向から見て、複数のボルト部材24のうち少なくとも1つが、筒状のラム軸連結部35の内側に配置される。
【0074】
図4に示すように、継手挿入孔22cは、頂壁部22bを軸方向に貫通する。継手挿入孔22cは、第2中心軸C2を中心とする円孔状である。
【0075】
凹部27は、第2回転体22の軸方向他方側を向く面22eから軸方向一方側に窪み、軸方向に延びる。凹部27は、第2中心軸C2を中心とする円穴状である。具体的に、凹部27は、外歯歯車23の軸方向他方側を向く面22eのうち第2径方向の内側部分から、軸方向一方側に窪む。つまり凹部27は、軸方向他方側に開口する。凹部27の軸方向一方側の端部は、頂壁部22bにより塞がれる。凹部27には、凸部25が挿入される。
【0076】
第2軸受32は、例えばテーパーローラーベアリング等である。第2軸受32は、第2径方向からの荷重(ラジアル荷重)および軸方向からの荷重(アキシャル荷重)を支持可能である。第2軸受32は、外歯歯車23の内周面つまり凹部27の内周面と、凸部25の外周面との間に介装される。第2軸受32は、凸部25と凹部27とを、第2中心軸C2回りに相対回転可能に連結する。つまり第2軸受32は、第1回転体21と第2回転体22とを、第2中心軸C2回りに相対回転可能に連結する。
【0077】
第2軸受32は、内輪32aと、スペーサー32dと、外輪32bと、転動体32cと、を有する。
内輪32aは、第2中心軸C2を中心とする筒状である。内輪32aは、凸部25の外周面に嵌合する。内輪32aは、軸方向に並んで複数設けられる。本実施形態では第2軸受32が、軸方向に互いに間隔をあけて配置される一対の内輪32aを有する。一対の内輪32a間には、スペーサー32dが配置される。スペーサー32dは、第2中心軸C2を中心とする筒状である。スペーサー32dは、凸部25の外周面に嵌合する。
【0078】
一対の内輪32aのうち、軸方向一方側に位置する一方の内輪32aは、軸方向において、エア継手部材40の後述する内輪押さえ部41とスペーサー32dとの間に配置される。一方の内輪32aの軸方向一方側を向く端面には、内輪押さえ部41が接触する。一方の内輪32aの軸方向他方側を向く端面には、スペーサー32dが接触する。つまり一方の内輪32aは、内輪押さえ部41とスペーサー32dとにより、軸方向の両側から挟持される。
【0079】
一対の内輪32aのうち、軸方向他方側に位置する他方の内輪32aは、軸方向において、スペーサー32dと外周段部25aとの間に配置される。他方の内輪32aの軸方向一方側を向く端面には、スペーサー32dが接触する。他方の内輪32aの軸方向他方側を向く端面には、外周段部25aが接触する。つまり他方の内輪32aは、スペーサー32dと外周段部25aとにより、軸方向の両側から挟持される。
なお特に図示しないが、他方の内輪32aの軸方向他方側を向く端面に、第1回転体21の軸方向一方側を向く面21dが接触してもよい。この場合、他方の内輪32aは、第1回転体21の軸方向一方側を向く面21dとスペーサー32dとにより、軸方向の両側から挟持される。
【0080】
外輪32bは、第2中心軸C2を中心とする筒状である。外輪32bは、内輪32aよりも第2径方向の外側に位置する。外輪32bは、外歯歯車23の内周面つまり凹部27の内周面に嵌合する。外輪32bは、軸方向に並んで複数設けられる。本実施形態では第2軸受32が、軸方向に互いに間隔をあけて配置される一対の外輪32bを有する。一対の外輪32b間には、第2外輪支持部23bが配置される。
【0081】
一対の外輪32bのうち、軸方向一方側に位置する一方の外輪32bの軸方向他方側を向く端面には、第2外輪支持部23bが接触する。
一対の外輪32bのうち、軸方向他方側に位置する他方の外輪32bの軸方向一方側を向く端面には、第2外輪支持部23bが接触する。
【0082】
転動体32cは、円柱状のローラー等である。転動体32cは、第2径方向において、内輪32aと外輪32bとの間に配置される。転動体32cは、第2周方向に並んで複数設けられる。第2周方向に配列する転動体32cの列(以下、単に転動体32cの列と呼ぶ)は、軸方向に並んで複数列設けられる。本実施形態では第2軸受32が、軸方向に互いに間隔をあけて配置される一対の転動体32cの列を有する。
【0083】
一対の転動体32cの列のうち、軸方向一方側に位置する一方の転動体32cの列は、一方の内輪32aと一方の外輪32bとの間に転動可能に保持される。
一対の転動体32cの列のうち、軸方向他方側に位置する他方の転動体32cの列は、他方の内輪32aと他方の外輪32bとの間に転動可能に保持される。
【0084】
第2径方向から見て、内歯歯車16、外歯歯車23、凹部27、第2軸受32および凸部25は、互いに重なる。すなわち、内歯歯車16、外歯歯車23、凹部27、第2軸受32および凸部25はそれぞれ、軸方向において、互いに同じ位置に配置される部分を含む。第2径方向から見て、第2軸受32はその軸方向全長にわたって、内歯歯車16および外歯歯車23と重なる。
軸方向から見て、第2軸受32の第2周方向の一部と、第1軸受31の第1周方向の一部とは、互いに重なって配置される。つまり軸方向から見て、第2軸受32の一部と第1軸受31の一部とは、互いに重なる。
【0085】
エア継手部材40は、凸部25と頂壁部22bとに取り付けられる。エア継手部材40は、内部にエアが流通可能であり、エア供給路28の流路の一部を構成する。
エア継手部材40は、内輪押さえ部41と、外筒42と、内筒43と、を有する。
【0086】
内輪押さえ部41は、第2中心軸C2を中心とし、第2中心軸C2と垂直な方向に拡がる円板状である。内輪押さえ部41の軸方向他方側を向く板面は、凸部25の軸方向一方側を向く面と接触する。内輪押さえ部41は、凸部25とネジ止め等により固定される。内輪押さえ部41の外周部は、凸部25の外周面よりも第2径方向の外側に突出する。内輪押さえ部41の外周部は、第2軸受32の一方の内輪32aに軸方向一方側から接触する。つまり内輪押さえ部41は、第2軸受32の内輪32aを軸方向一方側から押さえる。
【0087】
内輪押さえ部41は、押さえ部エア孔41aを有する。
押さえ部エア孔41aは、内輪押さえ部41を軸方向に貫通する。押さえ部エア孔41aは、第2中心軸C2を中心とする円孔状である。
【0088】
外筒42は、第2中心軸C2を中心とする筒状であり、軸方向に延びる。外筒42は、継手挿入孔22cに挿入される。外筒42は、継手挿入孔22cの内周面に嵌合する。外筒42は、頂壁部22bとネジ止め等により固定される。
【0089】
外筒42は、外筒エア孔42aを有する。
外筒エア孔42aは、外筒42の周壁を第2径方向に貫通する。外筒エア孔42aは、軸方向から見て、ラム軸連結部35の中心軸Aと第2中心軸C2とを結ぶ仮想直線上に位置する。
【0090】
内筒43は、第2中心軸C2を中心とする有頂筒状であり、軸方向に延びる。内筒43の軸方向他方側の端部は、内輪押さえ部41の軸方向一方側を向く板面と接触する。内筒43の内部は、内輪押さえ部41の押さえ部エア孔41aと連通する。内筒43は、内輪押さえ部41とネジ止め等により固定される。つまり内筒43は、内輪押さえ部41を介して凸部25と固定される。内筒43と外筒42とは、第2中心軸C2回りに相対回転可能である。
【0091】
内筒43は、内筒エア溝43aと、内筒エア孔43bと、を有する。
内筒エア溝43aは、内筒43の外周面から第2径方向の内側に窪み、第2周方向に延びる。内筒エア溝43aは、第2中心軸C2を中心とする環状である。内筒エア溝43aは、外筒エア孔42aと連通する。
【0092】
内筒エア孔43bは、内筒43の周壁を第2径方向に貫通する。内筒エア孔43bは、第2径方向に延び、内筒43の内周面と内筒エア溝43aとに開口する。内筒43の内部と内筒エア溝43aとは、内筒エア孔43bを通して互いに連通する。内筒エア孔43bは、第2周方向に並んで複数設けられる。複数の内筒エア孔43bは、第2中心軸C2を中心として放射状に配置される。
【0093】
図2から図4に示すように、ラム軸連結部35は、第2回転体22に接続され、第1径方向のうち所定方向(ストローク方向S)に沿って往復直線運動させられる。ラム軸連結部35は、有底筒状であり、軸方向に延びる。ラム軸連結部35は、軸方向一方側に開口する。
ラム軸連結部35は、頂壁部22bから軸方向一方側に突出する。ラム軸連結部35は、ハウジング15よりも軸方向一方側に位置する。ラム軸連結部35は、頂壁部22bから第2径方向の外側に突出する。本実施形態ではラム軸連結部35の一部(後述するエア筒35a以外の部分)が、頂壁部22bと一体に形成される。
【0094】
ラム軸連結部35の中心軸Aは、第1中心軸C1と平行である。ラム軸連結部35の中心軸Aは、第2中心軸C2に対して平行かつ離れて配置される。中心軸Aと第2中心軸C2との間の第2径方向の距離は、第1中心軸C1と第2中心軸C2との間の第2径方向の距離と等しい。往復直線運動機構10を軸方向から見て、ラム軸連結部35の中心軸Aは、外歯歯車23の外歯23aのピッチ円直径上に位置する。
【0095】
ラム軸連結部35は、エア筒35aを有する。
エア筒35aは、ラム軸連結部35の内部に配置される。エア筒35aは、中心軸Aを中心とする筒状であり、軸方向に延びる。エア筒35aは、内部にエアが流通可能であり、エア供給路28の流路の一部を構成する。
【0096】
図1において、ラム軸連結部35は、ラム軸連結部35の外周部に設けられる連結軸受54(図7参照)を介して、ラム軸3と連結される。この連結軸受54は、ラム軸連結部35とラム軸3とを、中心軸A回りに相対回転可能に連結する。
【0097】
図4および図5に示すように、第1錘部51は、第1回転体21に接続され、第1径方向において、第1中心軸C1を間に挟んで第2中心軸C2とは反対側に位置する。第1錘部51は、第1回転体21およびその凸部25、第2軸受32、第2回転体22およびその凹部27、ラム軸連結部35ならびに第2錘部52が第1中心軸C1回りに回転する際の、第1周方向の回転バランスを良好に維持するためのいわゆるカウンターウェイトとして機能する。
【0098】
第1錘部51は、第1回転体21の軸方向一方側に配置される。第1錘部51は、半円板状である。第1錘部51の軸方向他方側を向く面は、第1回転体21の軸方向一方側を向く面21dと接触する。第1錘部51の第1径方向の外側の端部つまり外周部は、第1回転体21の外周面よりも第1径方向の外側に突出する。第1錘部51の外周部は、軸方向から見て、第1軸受31と重なる。
【0099】
第1錘部51は、第1周方向に並ぶ複数のボルト部材53により、第1回転体21と固定される。各ボルト部材53は、軸方向に延びる。各ボルト部材53は、第1錘部51を軸方向に貫通するボルト挿入孔に挿入されて、第1回転体21の雌ネジ穴に螺着される。
【0100】
図2から図4、および図6に示すように、第2錘部52は、第2回転体22に接続され、第2径方向において、第2中心軸C2を間に挟んでラム軸連結部35とは反対側に位置する。第2錘部52は、第2回転体22およびラム軸連結部35が第2中心軸C2回りに回転する際の、第2周方向の回転バランスを良好に維持するためのいわゆるカウンターウェイトとして機能する。
【0101】
第2錘部52は、頂壁部22bから第2径方向の外側へ突出する。第2錘部52および頂壁部22bは、全体としての形状が略円板状である。第2錘部52は、ラム軸連結部35の一部および頂壁部22bと一体に形成される。
【0102】
図4に示すように、軸体26は、第1中心軸C1を中心とする多段円柱状であり、軸方向に延びる。軸体26は、第1回転体21の軸方向他方側に配置される。軸体26の外径は、第1回転体21の外径よりも小さい。軸体26の軸方向一方側の端部の外径は、軸体26の軸方向一方側の端部以外の部分の外径よりも大きい。軸体26の軸方向一方側の端部は、第1回転体21の穴部21aの開口部内に嵌合する。軸体26の軸方向一方側の端部は、第1回転体21の軸方向他方側の端部とネジ部材等により固定される。つまり軸体26は、第1回転体21と固定される。
【0103】
軸体26は、図示しない第3軸受により、第1中心軸C1回りに回転自在に支持される。軸体26には、図示しない駆動源から第1回転方向T1の回転駆動力が入力される。軸体26および第1回転体21は、駆動源の回転駆動力により、ハウジング15に対して第1回転方向T1に回転させられる。
【0104】
エア供給路28は、往復直線運動機構10の内部に形成されるエアの流路である。エア供給路28は、軸体26の内部、第1回転体21の内部、凸部25の内部、エア継手部材40の内部、第2回転体22の頂壁部22bの内部およびラム軸連結部35の内部にわたって延びる。
【0105】
エア供給路28は、第1エア流路28aと、エアチャンバー29と、第2エア流路28bと、エア継手流路28cと、第3エア流路28dと、第4エア流路28eと、を有する。第1エア流路28a、エアチャンバー29、第2エア流路28b、エア継手流路28c、第3エア流路28dおよび第4エア流路28eは、互いに連通する。図示しないエア供給源からエア供給路28に供給されるエアは、エア供給路28の内部を上流から下流側へ向けて、第1エア流路28a、エアチャンバー29、第2エア流路28b、エア継手流路28c、第3エア流路28dおよび第4エア流路28eの順に流れる。
【0106】
第1エア流路28aは、軸体26の内部に配置される。本実施形態では第1エア流路28aが、軸体26の軸方向他方側の端部に位置し、第1中心軸C1上を軸方向に延びる。
【0107】
エアチャンバー29は、軸体26の内部および第1回転体21の内部にわたって配置される。エアチャンバー29は、軸体26の軸方向他方側の端部以外の部分および第1回転体21の穴部21aにわたって形成される。エアチャンバー29は、第1中心軸C1上を軸方向に延びる。エアチャンバー29は、エア供給路28を構成する各流路の中で、最も流路断面積が大きく、最も容積が大きい。エアチャンバー29は、エアチャンバー29の内部にエア(圧縮エア)を一時的に貯留可能である。
【0108】
第2エア流路28bは、第1回転体21の内部および凸部25の内部にわたって配置される。第2エア流路28bは、第2中心軸C2上を軸方向に延びる。第2エア流路28bの軸方向他方側の端部は、穴部21a内に開口する。第2エア流路28bの軸方向一方側の端部は、凸部25の軸方向一方側を向く面に開口する。
【0109】
エア継手流路28cは、押さえ部エア孔41aと、内筒43の内部(内部空間)と、内筒エア孔43bと、内筒エア溝43aと、外筒エア孔42aと、を有する。第2エア流路28bからエア継手流路28cに流入したエアは、押さえ部エア孔41a、内筒43の内部、内筒エア孔43b、内筒エア溝43aおよび外筒エア孔42aをこの順に流れて、第3エア流路28dに流出する。
【0110】
第3エア流路28dは、頂壁部22bの内部に配置され、第2径方向に延びる。第3エア流路28dは、軸方向から見て、ラム軸連結部35の中心軸Aと第2中心軸C2とを結ぶ仮想直線に沿って延びる。第3エア流路28dの第2径方向の内側の端部は、外筒エア孔42aと接続される。第3エア流路28dの第2径方向の外側の端部は、栓部28fにより閉塞される。
【0111】
第4エア流路28eは、ラム軸連結部35の内部に配置される。第4エア流路28eは、ラム軸連結部35の中心軸A上を軸方向に延びる。第4エア流路28eの軸方向他方側の端部は、第3エア流路28dと接続される。第4エア流路28eの軸方向一方側の端部は、図示しないエア連通路と接続される。第4エア流路28eのうち軸方向他方側の端部以外の部分は、エア筒35a(の内部空間)により構成される。
【0112】
第1オイル供給路36は、ハウジング15を貫通し、第1軸受31にオイルを供給する。本実施形態では第1オイル供給路36が、ハウジング本体17の周壁を貫通する。第1オイル供給路36の第1径方向の外側の端部は、ハウジング本体17の外周面に開口する。第1オイル供給路36の第1径方向の内側の端部は、ハウジング本体17の内周面に開口する。すなわち、第1オイル供給路36は、ハウジング15の内部を延び、第1軸受31に向けて開口する。第1オイル供給路36には、ハウジング本体17の外周部に設けられる第1オイル供給口36a(図2参照)を介して、ハウジング15の外部からオイルが供給される。
【0113】
第1オイル供給路36は、複数設けられる。複数の第1オイル供給路36は、第1周方向に互いに間隔をあけて配置される。複数の第1オイル供給路36には、ハウジング本体17内を直線状に延びる一の第1オイル供給路36と、ハウジング本体17内を屈曲してクランク状に延びる他の第1オイル供給路36と、が含まれる。
【0114】
本実施形態では、少なくとも1つの第1オイル供給路36が、ハウジング本体17のうち、鉛直方向において第1中心軸C1よりも上側に位置する部分に配置される。このため、第1軸受31に上側から供給されるオイルが、第1軸受31全体に安定して行き渡りやすい。
【0115】
図4に示すように、第2オイル供給路37は、内歯歯車16および外歯歯車23を貫通し、第2軸受32にオイルを供給する。第2オイル供給路37は、内歯歯車流路37aと、外歯歯車流路37bと、を有する。
【0116】
内歯歯車流路37aは、内歯歯車16の周壁を貫通する。本実施形態では内歯歯車流路37aが、内歯歯車16を第1径方向に貫通する。内歯歯車流路37aの第1径方向の外側の端部は、内歯歯車16の外周面に開口する。内歯歯車流路37aの第1径方向の内側の端部は、内歯歯車16の内周面つまり内歯16aに開口する。すなわち、内歯歯車流路37aは、内歯歯車16の内部を延び、少なくとも内歯16aに開口する。内歯歯車流路37aには、内歯歯車16の外周部に設けられる第2オイル供給口37cを介して、ハウジング15の外部からオイルが供給される。
【0117】
外歯歯車流路37bは、外歯歯車23の周壁を貫通する。本実施形態では外歯歯車流路37bが、外歯歯車23を第2径方向に貫通する。外歯歯車流路37bの第2径方向の外側の端部は、外歯歯車23の外周面つまり外歯23aに開口する。外歯歯車流路37bの第2径方向の内側の端部は、第2外輪支持部23bの内周面に開口する。すなわち、外歯歯車流路37bは、外歯歯車23の内部を延び、外歯23aに開口する部分、および、第2軸受32に向けて開口する部分を有する。
【0118】
第2オイル供給路37は、複数設けられる。すなわち、内歯歯車流路37aと外歯歯車流路37bの組は、複数組設けられる。本実施形態では第2オイル供給路37が、例えば3つ以上設けられる。すなわち内歯歯車流路37aと外歯歯車流路37bの組は、3組以上設けられる。複数の内歯歯車流路37aは、第1周方向に互いに間隔をあけて配置される。複数の外歯歯車流路37bは、第2周方向に互いに間隔をあけて配置される。
【0119】
特に図示しないが、内歯歯車16に対して外歯歯車23が第1中心軸C1回りの所定位置に配置されたときに、内歯歯車流路37aと外歯歯車流路37bとは、第1径方向において互いに対向し、かつ互いに連通する。詳しくは、外歯歯車23が、第2周方向に自転しつつ内歯歯車16の内周部に沿って第1周方向に公転していき、第1周方向の所定位置に配置されたときに、内歯16aと外歯23aとの噛合部分を介して、内歯歯車流路37aと外歯歯車流路37bとが互いに連通する。これにより、内歯歯車流路37a内のオイルが外歯歯車流路37bに流入し、外歯歯車流路37bに流入したオイルは、外歯歯車流路37b内を第2径方向の内側へ流れ、第2軸受32へ向けて吐出される。
【0120】
内歯歯車16が有する内歯16aの数は、外歯歯車23が有する外歯23aの数の2倍である。このため内歯歯車流路37aと外歯歯車流路37bとは、外歯歯車23の第1中心軸C1回りの周回毎、つまり公転毎に、前記所定位置において互いに対向する。すなわち、内歯歯車流路37aから外歯歯車流路37bへのオイルの流入、および、外歯歯車流路37bから第2軸受32へのオイルの吐出は、外歯歯車23の公転毎に行われる。
【0121】
本実施形態では、少なくとも1つの内歯歯車流路37aが、内歯歯車16のうち、鉛直方向において第1中心軸C1よりも上側に位置する部分に配置される。また少なくとも1つの外歯歯車流路37bは、外歯歯車23のうち、鉛直方向において第2中心軸C2よりも上側に位置する部分において、内歯歯車流路37aと対向し連通する。すなわち、内歯歯車流路37aと外歯歯車流路37bとが連通したときに、内歯歯車流路37aを流れるオイルは、外歯歯車流路37bを通して第2軸受32に上側から供給されるため、オイルが第2軸受32全体に安定して行き渡りやすい。
【0122】
特に図示しないが、ギアは、第1中心軸C1を中心とする円環板状である。ギアの内周面は、軸体26の軸方向一方側の端部の外周面と嵌合する。ギアの軸方向一方側を向く面は、第1回転体21の軸方向他方側を向く面21eと接触する。ギアは、第1回転体21の軸方向他方側を向く面21eにネジ止め等により固定される。つまりギアは、第1回転体21に設けられる。なおギアは、軸体26に固定されてもよい。ギアの少なくとも一部は、ハウジング15の外部に露出される。ギアは、図示しない連結ギア等を介して、図示しないカップホルダー駆動機構などに連結される。ギアは、第1回転体21および軸体26の第1中心軸C1回りの回転駆動力を、往復直線運動機構10の外部へ出力する。
【0123】
以上説明した本実施形態の往復直線運動機構10では、図示しない駆動源から軸体26および第1回転体21に第1中心軸C1回りの回転駆動力が伝達されると、ハウジング15に対して第1回転体21が、第1中心軸C1回りに回転させられる。第1回転体21が第1中心軸C1回りに回転させられると、第1回転体21に支持された第2回転体22も、第1中心軸C1回りに回転させられる。
【0124】
このとき、第2回転体22の外歯歯車23と、ハウジング15の内歯歯車16とが互いに噛み合っているため、第2回転体22は、第1中心軸C1回りに回転(公転)させられつつ、第2中心軸C2回りにも回転(自転)させられる。往復直線運動機構10を軸方向から見て、第2回転体22が第1中心軸C1回りに公転させられる第1回転方向T1と、第2回転体22が第2中心軸C2回りに自転させられる第2回転方向T2とは、互いに逆向きとなる。
【0125】
第2回転体22に接続されたラム軸連結部35は、第1径方向のうち所定方向つまりストローク方向Sに沿って、往復直線運動する。
このようにして、本実施形態の往復直線運動機構10は、第1回転体21に入力された回転駆動力を、ストローク方向Sへの往復直線運動に変換してラム軸連結部35に出力する。これにより、ラム軸連結部35にラム軸3を介して連結されたパンチ2がストローク方向Sに往復直線運動させられる。パンチ2、ダイ8、カップホルダー6等によりカップ状体WにDI加工を施すことが可能になり、カップ状体WをDI缶100に成形することができる。
【0126】
そして本実施形態によれば、第2回転体22の外歯歯車23と頂壁部22bとが互いに別体であるので、少なくとも外歯歯車23を単体で製作することができる。特別な設備等を必要とすることなく、外歯歯車23を容易に製作でき、製造コストを削減できる。また、往復直線運動機構10の組み立て時や、第1回転体21と第2回転体22とを連結する第2軸受32などの部品のメンテナンス等の際、外歯歯車23と頂壁部22bとを別々に装置に組み付けたり取り外すことができる。具体的には、作業者が往復直線運動機構(装置)10の軸方向一方側から、外歯歯車23と頂壁部22bとをこの順に装置に組み付けたり、頂壁部22bと外歯歯車23とをこの順に装置から取り外したりできる。これにより各作業が簡素化されて、作業時間が短縮する。よって本実施形態によれば、部材の製作が容易で製造コストを削減でき、組み立てやメンテナンス等の作業性がよい。
【0127】
また本実施形態では、外歯歯車23が、第2中心軸C2を中心とする筒状であり、頂壁部22bは、外歯歯車23の軸方向一方側の開口を塞ぎ、第2軸受32は、外歯歯車23の内周面と凸部25の外周面との間に介装される。
この場合、作業者が軸方向一方側から頂壁部22bを取り外すことにより、外歯歯車23の内部の第2軸受32に容易にアクセスできる。つまり、外歯歯車23を装置から取り外さなくても、第2軸受32にアクセスすることができる。また必要に応じて、外歯歯車23や第2軸受32を装置から取り外すことが容易である。このため、メンテナンス等の作業性が向上する。また、第2軸受32の取り付け構造を簡素化でき、往復直線運動機構10をコンパクトに構成できる。
【0128】
また本実施形態では、ピン部材34が、第1嵌合孔22fおよび第2嵌合穴23cと嵌合し、ボルト部材24が、ボルト挿入孔22gに挿入されて雌ネジ穴23dに螺着される。
この場合、ピン部材34によって、頂壁部22bと外歯歯車23とを第2中心軸C2回りに位置決めした状態で、ボルト部材24により頂壁部22bと外歯歯車23とを固定できる。このため、頂壁部22bに接続されるラム軸連結部35と、外歯歯車23との位置精度が安定して確保される。また往復直線運動機構10の稼働時などにおいて、頂壁部22bと外歯歯車23との間に生じる第2周方向の力を、ボルト部材24よりも剛性を確保しやすいピン部材34によって受けることができる。これにより、ボルト部材24の損傷等が抑制される。頂壁部22bと外歯歯車23との第2周方向への相対移動がピン部材34によって規制され、頂壁部22bと外歯歯車23との軸方向への相対移動がボルト部材24によって規制される。
【0129】
また本実施形態では、頂壁部22bが、筒状の外歯歯車23の内周面に嵌合する嵌合筒部22dを有する。
この場合、外歯歯車23と嵌合筒部22dとが嵌合することにより、第2径方向において、外歯歯車23と頂壁部22bとが位置決めされる。また往復直線運動機構10の稼働時などにおいて、頂壁部22bと外歯歯車23との間に生じる第2径方向の力を、ボルト部材24よりも剛性を確保しやすい嵌合筒部22dによって受けることができる。これにより、ボルト部材24の損傷等が抑制される。頂壁部22bと外歯歯車23との第2径方向への相対移動が、嵌合筒部22dによって規制される。
【0130】
また本実施形態では、第1回転体21の第1中心軸C1回りの回転駆動力を、往復直線運動機構10の外部にギアを介して出力することができる。缶成形装置1に設けられる往復直線運動機構10以外の例えばカップホルダー駆動機構等を、往復直線運動機構10の動作と同期させつつ安定して動作させることができる。
【0131】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。
【0132】
第1軸受31および第2軸受32の各内輪31a,32a、各外輪31b,32b、各スペーサー31d,32dの押さえ方つまり固定手段は、前述の実施形態で説明した各構成に限らない。
第1錘部51および第2錘部52の各形状は、前述の実施形態で説明した各形状に限らない。
【0133】
前述の実施形態では、第2嵌合穴23cおよび雌ネジ穴23dがそれぞれ、外歯歯車23の軸方向一方側を向く面23eから軸方向他方側に窪む止め穴である例を挙げたが、これに限らない。第2嵌合穴23cは、外歯歯車23を軸方向に貫通する貫通孔でもよい。雌ネジ穴23dは、外歯歯車23を軸方向に貫通する貫通孔でもよい。
【0134】
前述の実施形態では、第1嵌合孔22f、第2嵌合穴23cおよびピン部材34の組が1つ設けられる例を挙げたが、これに限らない。第1嵌合孔22f、第2嵌合穴23cおよびピン部材34の組は、例えば第2周方向に互いに間隔をあけて複数設けられてもよい。
【0135】
前述の実施形態では、外歯歯車23とラム軸連結部35とを接続する接続部として、板状の頂壁部22bを例に挙げたが、これに限らない。すなわち、第2回転体22の接続部は、頂壁部22b以外の形状、つまり板状以外の例えば柱状やブロック状等であってもよい。
【0136】
前述の実施形態では、嵌合筒部22dが、外歯歯車23の内周面に嵌合する例を挙げたが、これに限らない。嵌合筒部22dは、外歯歯車23の外周面に嵌合してもよい。この場合も、前述と同様の作用効果が得られる。
【0137】
本発明は、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態および変形例等で説明した各構成を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態等によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明の缶成形装置の往復直線運動機構、および缶成形装置によれば、部材の製作が容易で製造コストを削減でき、組み立てやメンテナンス等の作業性がよい。したがって、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0139】
1…缶成形装置、2…パンチ、3…ラム軸、6…カップホルダー、7…貫通孔、8…ダイ、9…端面、10…往復直線運動機構、15…ハウジング、16…内歯歯車、21…第1回転体、21d…第1回転体の軸方向一方側を向く面、22…第2回転体、22b…頂壁部(接続部)、22d…嵌合筒部、22f…第1嵌合孔、22g…ボルト挿入孔、23…外歯歯車、23c…第2嵌合穴、23d…雌ネジ穴、23e…外歯歯車の軸方向一方側を向く面、24…ボルト部材、25…凸部、32…第2軸受(軸受)、34…ピン部材、35…ラム軸連結部、C1…第1中心軸、C2…第2中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7