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特許7542350レーザアニール装置、レーザアニール方法、及び半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】レーザアニール装置、レーザアニール方法、及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/268 20060101AFI20240823BHJP
   H01L 21/20 20060101ALI20240823BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240823BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20240823BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20240823BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20240823BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
H01L21/268 T
H01L21/20
H01L21/268 J
H01L29/78 627G
H01L21/68 A
H01L21/68 N
H01L21/66 L
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020124227
(22)【出願日】2020-07-21
(65)【公開番号】P2022020938
(43)【公開日】2022-02-02
【審査請求日】2023-05-02
(73)【特許権者】
【識別番号】521476506
【氏名又は名称】JSWアクティナシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】大森 賢一
(72)【発明者】
【氏名】鄭 石煥
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 亮介
(72)【発明者】
【氏名】奥 信夫
【審査官】▲はま▼中 信行
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-064048(JP,A)
【文献】特開2012-119512(JP,A)
【文献】特開2006-019408(JP,A)
【文献】特開2002-359194(JP,A)
【文献】特開2005-072313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/268
H01L 21/20
H01L 21/336
H01L 21/677
H01L 21/683
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を浮上させる浮上ステージと、
前記基板上の膜を結晶化させるためのレーザ光を発生させるレーザ光源と、
上面視において第1の方向に沿ったライン状の照射領域を基板上に形成するよう、前記レーザ光を前記浮上ステージ上の前記基板に導くアニール光学系と、
上面視において前記第1の方向と交差する第2の方向に沿って、前記浮上ステージ上に浮上している基板を移動させて、前記基板に対する前記照射領域の相対的な位置を変化させる移動機構と、
前記基板を第3の方向に沿って照明するための照明光を発生させる照明光源であって、前記照明光が前記浮上ステージ上の前記基板において前記第1の方向に沿ったライン照明領域を形成するようにライン照明を行い、前記第1の方向と鉛直方向とを含む平面視において、前記第3の方向が前記鉛直方向及び第1の方向から傾いた方向である照明光源と、
前記第1の方向に沿ったライン状の視野で前記浮上ステージ上の前記基板のアニールされた箇所を撮像するよう、前記照明光で照明された前記基板で第4の方向に反射した検出光を検出する検出器であって、前記第1の方向と鉛直方向とを含む平面視において、前記第4の方向が前記鉛直方向及び第1方向から傾いた方向である検出器と、を備えたレーザアニール装置。
【請求項2】
前記第1の方向において、前記検出器の視野が、前記レーザ光の照射領域よりも広くなっている請求項1に記載のレーザアニール装置。
【請求項3】
前記検出器の撮像面が、前記基板の表面と平行になっており、
前記検出器が第1の方向に沿って設けられた複数の画素を有している請求項1、又は2に記載のレーザアニール装置。
【請求項4】
記検出器での撮像結果に基づいて、前記膜の結晶状態のムラが評価され、
評価結果に基づいて、前記レーザ光源の出力が調整される請求項1~3のいずれか1項に記載のレーザアニール装置。
【請求項5】
前記鉛直方向と前記第3の方向との間の角度を変えるように、前記照明光源を第1の方向周りに回転させる回転機構をさらに備えた請求項1~4のいずれか1項に記載のレーザアニール装置。
【請求項6】
(a)レーザ光源を用いて、基板上の膜を結晶化させるためのレーザ光を発生させるステップと、
(b)上面視において第1の方向に沿ったライン状の照射領域を基板上に形成するよう、浮上ステージ上を浮上している前記基板に前記レーザ光を導くステップと、
(c)上面視において前記第1の方向と交差する第2の方向に沿って、前記浮上ステージ上を浮上している前記基板を移動させて、前記基板に対する前記照射領域の相対的な位置を変化させるステップと、
(d)照明光源を用いて、前記基板を第3の方向に沿って照明するための照明光を発生させるステップであって、前記照明光が前記浮上ステージ上の前記基板において前記第1の方向に沿ったライン照明領域を形成するようにライン照明を行い、前記第1の方向と鉛直方向とを含む平面視において、前記第3の方向が前記鉛直方向及び前記第1の方向から傾いた方向であるステップと、
(e)前記第1の方向に沿ったライン状の視野で前記浮上ステージ上の前記基板のアニールされた箇所を撮像するよう、前記照明光で照明された前記基板で第4の方向に反射した検出光を検出器で検出するステップであって、前記第1の方向と鉛直方向とを含む平面視において、前記第4の方向が前記鉛直方向及び前記第1の方向から傾いた方向であるステップと、を備えたレーザアニール方法。
【請求項7】
前記第1の方向において、前記検出器の視野が、前記レーザ光の照射領域よりも広くなっている請求項に記載のレーザアニール方法。
【請求項8】
前記検出器の撮像面が、前記基板の表面と平行になっており、
前記検出器が第1の方向に沿って設けられた複数の画素を有している請求項6、又は7に記載のレーザアニール方法。
【請求項9】
記検出器での撮像結果に基づいて、前記膜の結晶状態のムラが評価され、
評価結果に基づいて、前記レーザ光源の出力が調整される請求項6~8のいずれか1項に記載のレーザアニール方法。
【請求項10】
回転機構が、前記鉛直方向と前記第3の方向との間の角度を変えるように、前記照明光源を第1の方向周りに回転する請求項6~9のいずれか1項に記載のレーザアニール方法。
【請求項11】
(S1)基板上に非晶質膜を形成するステップと、
(S2)前記非晶質膜を結晶化して結晶化膜を形成するように、前記非晶質膜をアニールするステップと、を備え、
前記(S2)アニールするステップは、
(A)レーザ光源を用いて、レーザ光を発生させるステップと、
(B)上面視において第1の方向に沿ったライン状の照射領域を基板上に形成するよう、浮上ステージ上を浮上している前記基板に前記レーザ光を導くステップと、
(C)上面視において前記第1の方向と交差する第2の方向に沿って、前記浮上ステージ上を浮上している前記基板を移動させて、前記基板に対する前記照射領域の相対的な位置を変化させるステップと、
(D)照明光源を用いて、前記浮上ステージ上の前記基板を第3の方向に沿って照明するための照明光を発生させるステップであって、前記照明光が前記浮上ステージ上の前記基板において前記第1の方向に沿ったライン照明領域を形成するようにライン照明を行い、前記第1の方向と鉛直方向とを含む平面視において、前記第3の方向が前記鉛直方向及び第1の方向から傾いた方向であるステップと、
(E)前記第1の方向に沿ったライン状の視野で前記浮上ステージ上の前記基板のアニールされた箇所を撮像するよう、前記照明光で照明された前記基板で第4の方向に反射した検出光を検出器で検出するステップであって、前記第1の方向と鉛直方向とを含む平面視において、前記第4の方向が前記鉛直方向及び第1の方向から傾いた方向であるステップと、を備えている半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記第1の方向において、前記検出器の視野が、前記レーザ光の照射領域よりも広くなっている請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記検出器の撮像面が、前記基板の表面と平行になっており、
前記検出器が第1の方向に沿って設けられた複数の画素を有している請求項11、又は12に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
記検出器での撮像結果に基づいて、前記結晶化膜の結晶状態のムラが評価され、
評価結果に基づいて、前記レーザ光源の出力が調整される請求項11~13のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
回転機構が、前記鉛直方向と前記第3の方向との間の角度を変えるように、前記照明光源を第1の方向周りに回転する請求項11~14のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザアニール装置、レーザアニール方法、及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、多結晶シリコン薄膜を形成するためのレーザアニール装置が開示されている。特許文献1では、レーザ光がライン状の照射領域を形成するように、プロジェクションレンズがレーザ光を基板上に集光している。これにより、アモルファスシリコン膜が結晶化して、ポリシリコン膜となる。
【0003】
さらに、特許文献1では、プローブ光が基板を照明している。検出器が、シリコン膜を透過したプローブ光を検出している。このようにすることで、ポリシリコン膜の結晶状態のばらつきを評価することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2018/37756号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなレーザ照射装置では、レーザ光の照射ムラをより正確に評価することが望まれる。
【0006】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施の形態によれば、レーザアニール装置は、レーザ光を発生させるレーザ光源と、上面視において第1の方向に沿ったライン状の照射領域を基板上に形成するよう、前記レーザ光を前記基板に導くアニール光学系と、上面視において前記第1の方向と交差する第2の方向に沿って、前記基板に対する前記照射領域の相対的な位置を変化させる移動機構と、前記基板を第3の方向に沿って照明するための照明光を発生させる照明光源であって、前記第1の方向と鉛直方向とを含む平面視において、前記第3の方向が前記鉛直方向から傾いた方向である照明光源と、前記第1の方向に沿ったライン状の視野で前記基板のアニールされた箇所を撮像するよう、前記照明光で照明された前記基板で第4の方向に反射した検出光を検出する検出器であって、前記第1の方向と鉛直方向とを含む平面視において、前記第4の方向が前記鉛直方向から傾いた方向である検出器と、を備えている。
【0008】
一実施の形態によれば、レーザアニール方法は、(a)レーザ光源を用いて、レーザ光を発生させるステップと、(b)上面視において第1の方向に沿ったライン状の照射領域を基板上に形成するよう、前記レーザ光を前記基板に導くステップと、(c)上面視において前記第1の方向と交差する第2の方向に沿って、前記基板に対する前記照射領域の相対的な位置を変化させるステップと、(d)照明光源を用いて、前記基板を第3の方向に沿って照明するための照明光を発生させるステップであって、前記第1の方向と鉛直方向とを含む平面視において、前記第3の方向が前記鉛直方向から傾いた方向であるステップと、(e)前記第1の方向に沿ったライン状の視野で前記基板のアニールされた箇所を撮像するよう、前記照明光で照明された前記基板で第4の方向に反射した検出光を検出器で検出するステップであって、前記第4の方向が前記第1の方向と鉛直方向とを含む平面視において、前記第4の方向が前記鉛直方向から傾いた方向であるステップと、を備えている。
【発明の効果】
【0009】
前記一実施の形態によれば、照射ムラをより正確に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態にかかるレーザアニール装置の光学系を示す図である。
図2】レーザアニール装置の搬送機構を模式的に示す上面図である。
図3】基板に対する検出部の配置を示すXZ平面図である。
図4】基板に対する照明光源の配置を示すYZ平面図である。
図5】基板に対する検出器の配置を示すYZ平面図である。
図6】回折条件を説明するための図である。
図7】ポリシリコン膜のSEM写真を示す図である。
図8】有機ELディスプレイの構成を簡略化して示す断面図である。
図9】本実施の形態にかかる半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
図10】本実施の形態にかかる半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
図11】本実施の形態にかかる半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
図12】本実施の形態にかかる半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
図13】本実施の形態にかかる半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
図14】本実施の形態にかかる半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
図15】本実施の形態にかかる半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
図16】本実施の形態にかかる半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
本実施の形態にかかるレーザアニール装置は、例えば、低温ポリシリコン(LTPS:Low Temperature Poly-Silicon)膜を形成するエキシマレーザアニール(ELA:Excimer laser Anneal)装置である。以下、図面を参照して本実施の形態にかかるレーザアニール装置、レーザアニール方法、及び製造方法について説明する。
【0012】
(ELA装置の光学系)
図1を用いて、本実施の形態にかかるELA装置1の構成について説明する。図1は、ELA装置1の光学系を模式的に示す図である。基板100の上面(主面)には、シリコン膜101が形成されている。ELA装置1は、レーザ光L1を基板100上に形成されたシリコン膜101に照射する。これにより、非晶質のシリコン膜(アモルファスシリコン膜:a-Si膜)101を多結晶のシリコン膜(ポリシリコン膜:p-Si膜)101に変換することができる。基板100は、例えば、ガラス基板などの透明基板である。
【0013】
なお、図1では説明の明確化のため、XYZ三次元直交座標系が示されている。Z方向は鉛直方向となり、基板100に垂直な方向である。XY平面は、基板100のシリコン膜101が形成された面と平行な平面である。X方向は、矩形状の基板100の長手方向となり、Y方向は基板100の短手方向となる。また、ELA装置1では、搬送機構(図1では不図示)により基板100を+X方向に搬送しながら、シリコン膜101にレーザ光L1が照射される。なお、図1では、シリコン膜101において、レーザ光L1の照射前のシリコン膜101をアモルファスシリコン膜101aと示し、レーザ光L1の照射後のシリコン膜101はポリシリコン膜101bと示している。
【0014】
ELA装置1は、ステージ10と、レーザ光源21、アニール光学系20と、検出部30と、制御部40と、を備えている。基板100は、ステージ10の上に配置されている。ステージ10は、基板100をエア浮上させる浮上ステージ(浮上ユニット)である。ステージ10は、下側から基板100に向けてガスを噴出させている。よって、ステージ10と基板100との間に微小なエアギャップが形成された状態で、基板100が+X方向に搬送される。
【0015】
アニール光学系20は、アモルファスシリコン膜101aを結晶化するためのレーザ光L1をシリコン膜101に照射するための光学系である。アニール光学系20は、ミラー22、プロジェクションレンズ23、を備えている。アニール光学系20は、レーザ光L1を基板100に導くための光学系として機能する。
【0016】
アニール光学系20は、基板100の上側(+Z側)に配置されている。レーザ光源21はパルスレーザ光源であり、パルスレーザ光を発生させる。レーザ光源21は、例えば、中心波長308nmのエキシマレーザ光を放出するエキシマレーザ光源である。また、レーザ光源21はパルス状のレーザ光L1を放出する。レーザ光源21はレーザ光L1をミラー22に向けて出射する。
【0017】
基板100の上には、ミラー22、及びプロジェクションレンズ23が配置されている。ミラー22は、例えば、波長に応じて選択的に光を透過するダイクロイックミラーである。ミラー22は、レーザ光L1を反射する。
【0018】
レーザ光L1はミラー22で反射して、プロジェクションレンズ23に入射する。プロジェクションレンズ23は、レーザ光L1を基板100上、すなわち、シリコン膜101に投射するための複数のレンズを有している。
【0019】
プロジェクションレンズ23はレーザ光L1を基板100上に集光している。レーザ光L1は、基板100上において、ライン状の照射領域を形成している。すなわち、基板100上において、レーザ光L1は、Y方向(第1の方向ともいう)に沿ったラインビームとなっている。つまり、基板100上に集光されたレーザ光L1は、Y方向を長手方向(長軸方向)とし、X方向を短手方向(短軸方向)とするライン状の照射領域を形成している。また、搬送方向(第2の方向ともいう)に基板100を搬送しながら、レーザ光L1がシリコン膜101に照射される。ここでは、搬送方向がX方向となっている。これにより、Y方向における照射領域の長さを幅とする帯状の領域にレーザ光L1を照射することができる。
【0020】
このように、アニール光学系20は、レーザ光源21からのレーザ光L1を基板100に導いている。レーザ光L1の照射によって、アモルファスシリコン膜101aが結晶化する。基板100に対するレーザ光L1の照射位置を変えながら、レーザ光L1をシリコン膜101に照射する。ステージ10の搬送機構により基板100を+X方向に搬送することで、基板100上に均一なポリシリコン膜101bが形成される。もちろん、基板100を搬送する構成ではなく、プロジェクションレンズなどの光学系を移動させてもよい。つまり、基板100とアニール光学系20とを相対的に移動させることで、レーザ光L1の照射領域が走査されていればよい。
【0021】
さらに、基板100の上に検出部30が配置されている。検出部30は、結晶化したポリシリコン膜101bを撮像するために設けられている。検出部30の構成については後述する。
【0022】
制御部40は、検出部30での撮像結果が入力される。レーザ光L1によって基板100に形成されたシリコン膜101が結晶化している。制御部40は、検出器32での撮像結果に基づいて、シリコン膜101の結晶状態を評価している。制御部40は評価結果に基づいて、レーザ光源21の出力を調整する。例えば、結晶状態にばらつきがある場合、制御部40は、レーザ光源21の出力パワーを高くする。あるいは、制御部40は、評価結果に応じて、基板100の搬送速度を制御してもよい。
【0023】
次に、基板100を搬送する搬送機構について、図2を用いて説明する。図2は、基板100を搬送させるための構成を模式的に示す上面図である。上記のようにステージ10の上に、基板100が配置されている。ステージ10の+Y側には、搬送ユニット11が配置されている。
【0024】
ステージ10は、基板100をガス浮上させる浮上ステージである。ステージ10は、ステージ10の表面からガスを噴出するように構成されている。ステージ10の表面から噴出されたガスが基板100の下面に吹き付けられることで、基板100が浮上する。基板100が搬送される際、ステージ10は、ガスの噴出量により、基板100の浮上量を調整している。
【0025】
基板100の+Y側の端部はステージ10からはみ出している。搬送ユニット11は、浮上している基板100を搬送方向(+X方向)に搬送する。搬送ユニット11は、保持機構12と移動機構13とを備える。保持機構12は、基板100を保持する。例えば、保持機構12は、多孔質体を備える真空吸着機構を用いて構成することができる。あるいは、保持機構12は、吸気孔を有する金属部材を用いて構成することも可能である。さらには、保持機構12は、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)材などの樹脂系材料で形成されていてもよい。保持機構12(真空吸着機構)は、排気ポート(不図示)に接続されており、排気ポートはエジェクタや真空ポンプなどに接続されている。よって、保持機構12にはガスを吸引するための負圧が作用するため、保持機構12を用いて基板100を保持することができる。
【0026】
本実施の形態では、保持機構12は、基板100のレーザ光が照射される面(上面)と逆側の面(下面)、つまり、基板100のステージ10と対向する側の面を吸引することで、基板100を保持している。また、保持機構12は、基板100の+Y方向における端部(つまり、基板100の搬送方向と垂直な方向における端部)を保持している。
【0027】
搬送ユニット11が備える移動機構13は保持機構12と連結されている。移動機構13は、保持機構12を搬送方向(x方向)に移動可能に構成されている。搬送ユニット11(保持機構12及び移動機構13)は、ステージ10の+Y方向の端部側に設けられており、保持機構12で基板100を保持しつつ、移動機構13が搬送方向に移動することで基板100が搬送される。
【0028】
例えば、移動機構13はステージ10の+Y方向の端部を+X方向に沿ってスライドするように構成されている。移動機構13がステージ10の端部を+X方向に沿ってスライドすることで、基板100がX方向に沿って搬送される。このとき、移動機構13の移動速度を制御することで、基板100の搬送速度を制御することができる。移動機構13は、例えば、図示しないモータなどのアクチュエータとリニアガイド機構やエアベアリング等を備えている。
【0029】
上記のように、基板100には、レーザ光が照射されている。図2において、レーザ光L1の照射領域15は、ライン状に形成されている。照射領域15は、Y方向を長手方向とするライン状になっている。
【0030】
さらに、照射領域15の+X側には、検出部30による検出領域16が形成されている。検出領域16は、Y方向の長手方向とするライン状の領域である。検出領域16は、検出部30の検出器の視野に対応する。つまり、検出部30の検出器は、検出領域16からの反射光を検出することで、基板100を撮像する。基板100がX方向に搬送されているため、基板100のほぼ全面を撮像することが可能となる。
【0031】
さらに、検出領域16は、照射領域15の近傍に配置されている。つまり、X方向において、照射領域15と検出領域16が若干の距離を隔てて配置されている。したがって、アニール工程の途中において、レーザ光L1でアニールされた箇所を撮像することが可能となる。したがって、制御部40は、結晶状態のばらつきを速やかに抑制することができる。
【0032】
図3図5を用いて、検出部30の構成について説明する。図3は、基板100に対する検出部30の配置を示す側面図である。図4は検出部30の照明光源31の配置を示す正面図である。図5は検出部30の検出器32の配置を示す正面図である。図3は、XZ平面図となっており、図4図5は、YZ平面図となっている。図3図5では、基板100に形成されたシリコン膜101を省略して図示している。検出部30は、照明光源31と、検出器32とを備えている。
【0033】
照明光源31は、基板100の上方に配置され、基板100を照明するための照明光L2を発生する。照明光源31は、ライン照明光源であり、Y方向を長手方向とする照明領域17を形成する。照明光源31は、例えば複数のLED(Light Emitting Diode)を有するLED照明装置である。照明光L2は、図2で示した検出領域16全体を均一に照明している。照明光L2は白色光であってもよく、レーザや単色LEDからの単色光とであっても良い。この場合、照明光L2の波長は、450nm程度とすることができる。
【0034】
照明光源31は、複数のLEDに対応するレンズアレイを有しており、基板100を斜め方向から照明する。照明光源31からの照明光L2の光軸は、Z方向から傾いている。照明光源31は、基板100の上面に対して斜めに傾いた方向に照明光L2を出射する。照明光源31としては、例えば、株式会社シバサキのSKLCシリーズを用いることができる。
【0035】
検出器32は、基板100の上方に配置されている。検出器32は、照明光源31の-X側にずれて配置されている。検出器32は、ポリシリコン膜101bで反射した照明光を検出する。基板100で反射されて検出器32に向かう照明光を検出光L3とする。検出器32は、照明光L2で照明された照明領域17からの検出光L3を検出する。
【0036】
検出器32は、複数の画素を有するラインカメラ(ラインセンサ)である。つまり、検出器32の撮像面32aでは、Y方向に沿って複数の画素が1列に並んでいる。なお、撮像面32aは、XY平面と平行になっており、下方を向いて配置されている。さらに、検出器32は、各画素に対応するレンズを有するレンズアレイを備えていてもよい。
【0037】
検出器32の視野は、図2に示したように、Y方向に沿ったライン状の検出領域16を構成する。検出器32は基板100から斜め方向に反射した検出光L3を検出する。検出器32は、基板100の上面をフォーカス面(ピント面)として、基板100を撮像する。基板100の結晶状態に応じて、検出器32での検出光L3の検出光量が変化する。よって、検出器32で撮像された基板100の撮像画像に基づいて、制御部40が結晶状態を評価することができる。
【0038】
さらに、照明光源31は、回転機構33に取り付けられている。回転機構33は、照明光源31を回転可能に保持している。回転機構33の回転軸はY方向と平行になっている。つまり、回転機構33は、照明光源31をY軸周りに回転させる。これにより、基板100に対する照明光L2の入射方向を調整することができる。回転機構33が照明光源31を回転させることで、照明光L2の光軸の角度が変わる。
【0039】
照明光L2が基板100に入射する方向(以下、第3の方向)と、検出器32で検出される反射光が反射する方向(以下、第4の方向)について詳述する。第3の方向は基板100の近傍において照明光L2が進む方向である。第3の方向は、基板100に対する照明光L2の入射方向となる。つまり、第3の方向とは、基板100の上面において、照明光源31から基板100に向かう照明光学系の光軸(中心軸)の方向である。照明光L2は、第3の方向に沿って基板100に入射する。照明光源31は、第3の方向に沿って照明光L2を入射させるように、斜めに配置されている。
【0040】
YZ平面視において、第3の方向が基板100の上面に対して斜めになっている。YZ平面視において、第3の方向がZ方向から傾いている。したがって、基板100の照明領域17は、照明光源31の直下の領域から、+Y方向にずれている。XY平面視において、Y方向と第3の方向との成す角度をθlightとする。θlightは、例えば、20°~30°とすることができる。
【0041】
照明光L2は、基板100に対して斜入射光線となる。また、XZ平面視において、第3の方向はZ方向から傾いている。基板100の照明領域17は、照明光源31の直下の領域から、X方向にずれている。
【0042】
基板100で第4の方向に反射した検出光L3が検出器32で検出される。第4の方向は、基板100の上面(つまり、ポリシリコン膜101b)で検出器に向かう反射光の進む方向となる。よって、第4の方向に沿って進む検出光L3が検出器32で検出される。例えば、第4の方向は、検出器32の結像光学系の光軸の方向となる。検出光L3は、第4の方向に沿って検出器32に入射する。検出器32は、基板100から第4の方向に反射された検出光L3を検出する。検出器32は、基板100で第4の方向に反射した検出光L3を検出するように、配置されている。
【0043】
YZ平面視において、第4の方向が基板100の上面に対して斜めになっている。YZ平面視において、第4の方向がZ方向から傾いている。したがって、基板100の検出領域16は、検出器32の直下の領域から、+Y方向にずれている。XY平面視において、Y方向と第4の方向との成す角度をθcameraとする。θcameraは、例えば、70°程度とすることができる。
【0044】
検出器32の撮像面32aは、基板100の上面(フォーカス面)と平行になっているが、検出光L3は検出器32の撮像面32aに対して斜入射光線となる。XZ平面視において、第4の方向はZ方向と平行になっている。X方向において、基板100の検出領域16は、検出器32の直下の領域と一致している。なお、XZ平面視において、第4の方向はZ方向から傾いていてもよい。
【0045】
θlightとθcameraとによって、検出器32における検出光L3の検出光量が変わる。具体的には、ポリシリコン膜101bからの検出光L3が干渉することで、検出結果が変化する。ここでは、θlightとθcameraは干渉光が発生しやすい関係式を満たしている。これにより、結晶状態のばらつきを正確に評価することができる。
【0046】
図6は、干渉光が発生する関係式を説明するための図である。図6では、基板の表面に溝が形成されている反射型回折格子を示している。溝は紙面と直交する方向に沿って形成されている。溝の凹凸の周期をdとし、光の波長をλとする。凸部の頂面に対する光の入射角度をθαとし、検出光の角度をθβとする。以下の式(1)を満たす場合に干渉光が観察される。
【0047】
dcosθα-dcosθβ=(λ/2)×2n ・・・(1)
【0048】
なお、nは0以上の整数である。第4の方向(観察方向)によって、ムラの見え方が異なる。つまり、θαとθ β とが上記の関係を満たす場合、位相が揃って光が強め合う。したがって、第4の方向と第3の方向を所定の角度にすることで、結晶のサイズのばらつきを精度良く評価することができる。
【0049】
図7は、結晶化したシリコン膜101のSEM写真を示す。上記のように、レーザ光L1は基板100上において、Y方向に沿ったライン状の照射領域15を形成している。また、レーザ光L1はパルス光であり、X方向に基板100が搬送されている。
【0050】
Y方向において、結晶サイズのばらつきが比較的小さく、X方向において、結晶サイズのばらつきが比較的大きい。つまり、Y方向においては、結晶が等間隔に規則的に並んでいるため、結晶サイズの均一性が高い。Y方向において、均一に結晶が並んでいるため、干渉光が強くなる傾向がある。一方、X方向において結晶の並びが悪いため、干渉光が弱くなる傾向がある。
【0051】
そこで、本実施の形態では、YZ平面視において、第3の方向及び第4の方向が、Z方向から傾いている。このようにすることで、結晶状態のムラと相関が強い干渉光を検出することができる。つまり、結晶サイズが均一でないと、検出光L3の位相が揃わずに、強め合わなくなる。換言すると、結晶サイズのばらつきに応じて、検出光L3の光量が大きく変動する。よって、照明光源31及び検出器32を斜めに配置することで、結晶状態のばらつきを正確に評価することができる。レーザ光L1の照射ムラを適切の評価することができる。例えば、レーザ光L1のパルス間のばらつきを正確に評価することが可能となる。
【0052】
従って、レーザアニールプロセス中に、レーザ光L1の最適なエネルギー密度(OED:Optimized Energy Density)を判定することができる。そして、制御部40が最適なエネルギー密度となるように、レーザ光源21の出力を決定する。これにより、最適なエネルギー密度でシリコン膜101をアニールすることができるため、生産性を向上することができる。
【0053】
結晶サイズが式(1)の溝の周期dに相当する。Y方向の結晶サイズに応じて、干渉光が発生しやすいθlightとθcameraが設定される。つまり、隣の結晶からの反射光の位相が揃って、強め合う角度で、照明光源31及び検出器32を配置する。ここでは、0次以外の干渉光を検出するようにθlightとθcameraを設定することが好ましい。例えば、±1次(n=±1)の干渉光や±2次(n=±2)の干渉光等を検出するように検出器32及び照明光源31が設置される。
【0054】
上記の説明では、検出器32の設置角度により、第4の方向が決められているが、基板100と検出器32との間にミラーなどの光学素子を設けることで、第4の方向を決めても良い。同様に、照明光源31の設置角度により、第3の方向が決められているが、基板100と照明光源31との間にミラーなどの光学素子を設けることで、第3の方向を決めても良い。
【0055】
このように、照明光源31は基板100を第3の方向に沿って照明するための照明光L2を発生させる。検出器32は、Y方向に沿ったライン状の視野で基板100のアニールされた箇所を撮像するように、照明光L2で照明された基板100で第4の方向に反射した検出光L3を検出する。YZ平面視において、第3の方向がZ方向(鉛直方向)から傾いており、第4の方向がZ方向(鉛直方向)から傾いている。このようにすることで、結晶状態のムラを正確に評価することができる。
【0056】
検出器32の視野が、レーザ光の照射領域15よりも広くなっていることが好ましい。このようにすることで、基板100のアニールされた箇所全体の結晶状態を評価することができる。また、図2では、Y方向において、検出器32の検出領域16と照射領域15が基板100のほぼ全体をカバーしていたが、一部のみに対応していても良い。この場合、基板100の位置をY方向にずらして2回以上X方向に搬送すればよい。
【0057】
なお、搬送ユニット11が基板100をY方向と直交するX方向に搬送しているが、搬送方向は、Y方向と厳密に直交する方向でなくても良い。つまり、搬送方向はY方向と交差する方向であれば、厳密に直交する方向でなくてもよい。また、レーザ光L1によりアニールを行う材料は、シリコン膜に限定されるものではない。
【0058】
本実施の形態では、ステージ10が基板100を浮上させる浮上ステージとなっている。移動機構が、浮上ステージ上に浮上している基板100をX方向に沿って移動させる。このようにすることで、ステージ10の表面で反射する反射光が検出されるのを防ぐことができるため、より正確に結晶状態を評価することができる。
【0059】
本実施の形態にかかるレーザアニール方法では、レーザ光源21を用いて、レーザ光L1を発生させる。上面視においてY方向に沿ったライン状の照射領域15を基板100上に形成するよう、レーザ光L1を基板100に導く。上面視においてY方向と交差するX方向に沿って、基板100に対する照射領域15の相対的な位置を変化させる。照明光源31を用いて、基板100を第3の方向に沿って照明するための照明光L2を発生させる。Y方向に沿ったライン状の視野で基板100のアニールされた箇所を撮像するよう、照明光L2で照明された基板100で第4の方向に反射した検出光L3を検出器32で検出する。YZ平面視において、第3の方向がZ方向から傾いている。YZ平面視において、第4の方向がZ方向から傾いている。これにより、照射ムラを正確に評価することができる。
【0060】
(有機ELディスプレイ)
上記のポリシリコン膜を有する半導体装置は、有機EL(ElectroLuminescence)ディスプレイ用のTFT(Thin Film transistor)アレイ基板に好適である。すなわち、ポリシリコン膜は、TFTのソース領域、チャネル領域、ドレイン領域を有する半導体層として用いられる。
【0061】
以下、本実施の形態にかかる半導体装置を有機ELディスプレイディスプレイに適用した構成について説明する。図8は、有機ELディスプレイの画素回路を簡略化して示す断面図である。図8に示す有機ELディスプレイ300は、各画素PXにTFTが配置されたアクティブマトリクス型の表示装置である。
【0062】
有機ELディスプレイ300は、基板310、TFT層311、有機層312、カラーフィルタ層313、及び封止基板314を備えている。図17では、封止基板314側が視認側となるトップエミッション方式の有機ELディスプレイを示している。なお、以下の説明は、有機ELディスプレイの一構成例を示すものであり、本実施の形態は、以下に説明される構成に限られるものではない。例えば、本実施の形態にかかる半導体装置は、ボトムエミッション方式の有機ELディスプレイに用いられていてもよい。
【0063】
基板310は、ガラス基板又は金属基板である。基板310の上には、TFT層311が設けられている。TFT層311は、各画素PXに配置されたTFT311aを有している。さらに、TFT層311は、TFT311aに接続される配線(図示を省略)等を有している。TFT311a、及び配線等が画素回路を構成する。
【0064】
TFT層311の上には、有機層312が設けられている。有機層312は、画素PXごとに配置された有機EL発光素子312aを有している。有機EL発光素子312aは、例えば、陽極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、及び陰極が積層された積層構造を有している。トップエミッション方式の場合、陽極は金属電極であり、陰極はITO(Indium Tin Oxide)等の透明導電膜である。さらに、有機層312には、画素PX間において、有機EL発光素子312aを分離するための隔壁312bが設けられている。
【0065】
有機層312の上には、カラーフィルタ層313が設けられている。カラーフィルタ層313は、カラー表示を行うためのカラーフィルタ313aが設けられている。すなわち、各画素PXには、R(赤色)、G(緑色)、又はB(青色)に着色された樹脂層がカラーフィルタ313aとして設けられている。有機層312から放出された白色光は、カラーフィルタ313aを通過すると、RGBの色の光に変換される。なお、有機層312に、RGBの各色を発光する有機EL発光素子が設けられている3色方式の場合、カラーフィルタ層313を省略してもよい。
【0066】
カラーフィルタ層313の上には、封止基板314が設けられている。封止基板314は、ガラス基板などの透明基板であり、有機層312の有機EL発光素子の劣化を防ぐために設けられている。
【0067】
有機層312の有機EL発光素子312aに流れる電流は、画素回路に供給される表示信号によって変化する。よって、表示画像に応じた表示信号を各画素PXに供給することで、各画素PXでの発光量を制御することができる。これにより、所望の画像を表示することができる。
【0068】
有機ELディスプレイ等のアクティブマトリクス型表示装置では、1つの画素PXに、1つ以上のTFT(例えば、スイッチング用TFT、又は駆動用TFT)が設けられている。そして、各画素PXのTFTには、ソース領域、チャネル領域、及びドレイン領域を有する半導体層が設けられている。本実施の形態にかかるポリシリコン膜は、TFTの半導体層に好適である。すなわち、上記の製造方法により製造したポリシリコン膜をTFTアレイ基板の半導体層に用いることで、TFT特性の面内ばらつきを抑制することができる。よって、表示特性の優れた表示装置を高い生産性で製造することができる。
【0069】
(半導体装置の製造方法)
本実施の形態にかかるELA装置を用いた半導体装置の製造方法は、TFTアレイ基板の製造に好適である。TFTを有する半導体装置の製造方法について、図9図16を用いて説明する。図9図16は半導体装置の製造工程を示す工程断面図である。以下の説明では、逆スタガード(inverted staggered)型のTFTを有する半導体装置の製造方法について説明する。
【0070】
まず、図9に示すように、ガラス基板401上に、ゲート電極402を形成する。なお、ガラス基板401は、上記した基板100に相当する。ゲート電極402は、例えば、アルミニウムなどを含む金属薄膜を用いることができる。ガラス基板401上に、スパッタ法や蒸着法により金属薄膜を成膜する。そして、金属薄膜をフォトリソグラフィーにより、パターニングすることで、ゲート電極402が形成される。フォトリソグラフィーグラフィ法では、レジスト塗布、露光、現像、エッチング、レジスト剥離等の処理が行われる。なお、ゲート電極402のパターニングと同工程で、各種の配線等を形成してもよい。
【0071】
次に、図10に示すように、ゲート電極402の上に、ゲート絶縁膜403を形成する。ゲート絶縁膜403は、ゲート電極402を覆うように形成される。そして、図11に示すように、ゲート絶縁膜403の上に、アモルファスシリコン膜404を形成する。アモルファスシリコン膜404は、ゲート絶縁膜403を介して、ゲート電極402と重複するように配置されている。
【0072】
ゲート絶縁膜403は、窒化シリコン膜(SiN)、酸化シリコン膜(SiO膜)、又はこれらの積層膜等などである。具体的には、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により、ゲート絶縁膜403とアモルファスシリコン膜404とを連続成膜する。
【0073】
そして、アモルファスシリコン膜404にレーザ光L1を照射することで、図12に示すように、ポリシリコン膜405を形成する。すなわち、図1等で示したELA装置1によって、アモルファスシリコン膜404を結晶化する。これにより、シリコンが結晶化したポリシリコン膜405がゲート絶縁膜403上に形成される。ポリシリコン膜405は、上記したポリシリコン膜101bに相当する。
【0074】
この時、本実施の形態にかかる検査方法により、ポリシリコン膜405が検査されている。ポリシリコン膜405が所定の基準を満たさない場合、ポリシリコン膜405に再度レーザ光が照射される。このため、ポリシリコン膜405の特性をより均一にすることができる。面内のばらつきを抑制することができるため、表示特性の優れた表示装置を高い生産性で製造することができる。
【0075】
なお、図示を省略するがポリシリコン膜405をフォトリソグラフィー法によりパターニングする。また、イオン注入法などにより、ポリシリコン膜405に不純物を導入してもよい。
【0076】
その後、図13に示すように、ポリシリコン膜405の上に、層間絶縁膜406を形成する。層間絶縁膜406には、ポリシリコン膜405を露出するためのコンタクトホール406aが設けられている。
【0077】
層間絶縁膜406は、窒化シリコン膜(SiN)、酸化シリコン膜(SiO膜)、又はこれらの積層膜等などである。具体的には、CVD法により、層間絶縁膜406を成膜する。そして、フォトリソグラフィー法により、層間絶縁膜406をパターニングすることで、コンタクトホール406aが形成される。
【0078】
次に、図14に示すように、層間絶縁膜406の上に、ソース電極407a、及びドレイン電極407bを形成する。ソース電極407a、及びドレイン電極407bは、コンタクトホール406aを覆うように形成される。すなわち、ソース電極407a、及びドレイン電極407bは、コンタクトホール406a内から層間絶縁膜406の上まで形成される。よって、コンタクトホール406aを介して、ソース電極407a、及びドレイン電極407bは、ポリシリコン膜405と電気的に接続される。
【0079】
これにより、TFT410が形成される。TFT410は、上記したTFT311aに相当する。ポリシリコン膜405において、ゲート電極402と重複する領域がチャネル領域405cとなる。ポリシリコン膜405において、チャネル領域405cよりもソース電極407a側がソース領域405aとなり、ドレイン電極407b側がドレイン領域405bとなる。
【0080】
ソース電極407a、及びドレイン電極407bは、アルミニウムなどを含む金属薄膜により形成されている。層間絶縁膜406上に、スパッタ法や蒸着法により金属薄膜を成膜する。そして、金属薄膜をフォトリソグラフィーにより、パターニングすることで、ソース電極407a、及びドレイン電極407bが形成される。なお、ソース電極407a、及びドレイン電極407bのパターニングと同工程で、各種の配線を形成してもよい。
【0081】
そして、図15に示すように、ソース電極407a、及びドレイン電極407bの上に、平坦化膜408を形成する。平坦化膜408は、ソース電極407a、及びドレイン電極407bを覆うように形成される。さらに、平坦化膜408には、ドレイン電極407bを露出するためのコンタクトホール408aが設けられている。
【0082】
平坦化膜408は、例えば、感光性樹脂膜により形成されている。ソース電極407a、及びドレイン電極407bの上に、感光性樹脂膜を塗布して、露光、現像する。これにより、コンタクトホール408aを有する平坦化膜408をパターニングすることができる。
【0083】
そして、図16に示すように、平坦化膜408の上に、画素電極409を形成する。画素電極409は、コンタクトホール408aを覆うように形成される。すなわち、画素電極409は、コンタクトホール408a内から平坦化膜408の上まで形成される。よって、コンタクトホール408aを介して、画素電極409は、ドレイン電極407bと電気的に接続される。
【0084】
画素電極409は、透明導電膜又はアルミニウムなどを含む金属薄膜により形成される。平坦化膜408の上に、スパッタ法などにより、導電膜(透明導電膜、又は金属薄膜)を成膜する。そして、フォトリソグラフィー法により導電膜をパターニングする。これにより、平坦化膜408の上に画素電極409が形成される。有機ELディスプレイの駆動用TFTの場合、画素電極409の上に、図16で示したような有機EL発光素子312a、カラーフィルタ(CF)313a等が形成される。なお、トップエミッション方式の有機ELディスプレイの場合、画素電極409は、反射率の高いアルミニウムや銀などを含む金属薄膜により形成される。また、ボトムエミッション方式の有機ELディスプレイの場合、画素電極409は、ITOなどの透明導電膜により形成される。
【0085】
以上、逆スタガード(inverted staggered)型のTFTの製造工程を説明したが、本実施の形態にかかる製造方法を逆スタガード(inverted staggered)型のTFTの製造に適用してもよい。もちろん、TFTの製造方法は、有機ELディスプレイ用のTFTの製造に限られるものではなく、LCD(Liquid Crystal Display)用のTFTの製造に適用することもできる。
【0086】
さらに、上記の説明では、本実施の形態にかかるレーザアニール装置が、アモルファスシリコン膜にレーザ光を照射してポリシリコン膜を形成するものとして説明したが、アモルファスシリコン膜にレーザ光を照射してマイクロクリスタルシリコン膜を形成するものであってもよい。さらには、アニールを行うレーザ光はエキシマレーザに限定されるものではない。また、本実施の形態にかかる方法は、シリコン膜以外の薄膜を結晶化するレーザアニール装置に適用することも可能である。すなわち、非晶質膜にレーザ光を照射して、結晶化膜を形成するレーザアニール装置であれば、本実施の形態にかかる方法は適用可能である。本実施の形態にかかるレーザアニール装置によれば、結晶化膜付き基板を適切に検査することができる。
【0087】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0088】
1 ELA装置
10 ステージ
20 アニール光学系
21 レーザ光源
22 ミラー
23 プロジェクションレンズ
30 検出部
31 照明光源
32 検出器
33 回転機構
100 基板
101 シリコン膜
101a アモルファスシリコン膜
101b ポリシリコン膜
300 有機ELディスプレイ
310 基板
311 TFT層
311a TFT
312 有機層
312a 有機EL発光素子
312b 隔壁
313 カラーフィルタ層
313a カラーフィルタ(CF)
314 封止基板
401 ガラス基板
402 ゲート電極
403 ゲート絶縁膜
404 アモルファスシリコン膜
405 ポリシリコン膜
406 層間絶縁膜
407a ソース電極
407b ドレイン電極
408 平坦化膜
409 画素電極
410 TFT
PX 画素
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16