(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】乳母車
(51)【国際特許分類】
B62B 9/14 20060101AFI20240823BHJP
【FI】
B62B9/14
(21)【出願番号】P 2020127353
(22)【出願日】2020-07-28
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】508189474
【氏名又は名称】ニューウェルブランズ・ジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東方 真理子
(72)【発明者】
【氏名】高階 文子
【審査官】大宮 功次
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-291930(JP,A)
【文献】米国特許第06402225(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0096257(US,A1)
【文献】実公平07-019948(JP,Y2)
【文献】特開2006-282040(JP,A)
【文献】特開2008-105509(JP,A)
【文献】登録実用新案第3107811(JP,U)
【文献】登録実用新案第3193849(JP,U)
【文献】実開昭53-103253(JP,U)
【文献】特開2011-234867(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛沫感染を予防するための乳母車であって、
子供を受け入れる座席を形成する本体と、
前記座席の上方を覆うように前記本体に取り付けられる幌と、
前記幌の前端部に接続手段を介して着脱可能に取り付けられ、
その形状が前記幌の形状に沿った湾曲形状であり、その下端部が前記座席に着座した子供の顔の下方位置まで延びるフェイスガードと、
前記座席の前方位置において幅方向に延びる前ガードとを備え、
前記フェイスガードは
、可撓性を有する合成樹脂製であり、前記座席に着座した子供の顔と対向する透明なガード面材を含み、
前記フェイスガードの前端部は、前記前ガードの前方を覆い、前記前ガード下端まで延び、
前記座席から上方には、前記フェイスガードの前端部との間に隙間が設けられて
おり、
前記ガード面材の幅方向両側部には、メッシュで形成され、その幅方向の寸法がフェイスガードの全長の5分の1以下である通気口が設けられている、乳母車。
【請求項2】
前記フェイスガードは、前記ガード面材の下端に幅方向に沿って設けられ、前記ガード面材の形状を維持する芯材をさらに含む、請求項1に記載の乳母車。
【請求項3】
前記接続手段は、前記幌の前端部の幅方向に沿って設けられる係合部と、前記ガード面材の上端の幅方向に沿って設けられ、前記係合部に係合する非係合部とを含む、請求項1
または2に記載の乳母車。
【請求項4】
前記幌の前端縁には、前方に向かって延び、前記係合部が露出することを防ぐ延長布が設けられている、請求項
3に記載の乳母車。
【請求項5】
前記幌には、前記延長布を折り畳んだ状態で保持するための保持手段が設けられている、請求項
4に記載の乳母車。
【請求項6】
前記フェイスガードは、前記幌から取り外した不使用状態で前記芯材を環状に巻くことが可能であり、その幅方向側部を互いに係合する留め具が設けられている、請求項2に記載の乳母車。
【請求項7】
飛沫感染を予防するための乳母車であって、
子供を受け入れる座席を形成する本体と、
3本以上の幌骨と、前記幌骨間に掛け渡されるシート部材とを含む幌と
、
前記座席の前方位置において幅方向に延びる前ガードとを備え、
進行方向前方に位置する2本の幌骨間に掛け渡される前記シート部材には、透明なフェイスガードを含み、
前記フェイスガードは、
可撓性を有する合成樹脂製であり、その形状が前記幌の形状に沿った湾曲形状であり、その前端部は、前記前ガードの前方を覆い、前記前ガード下端まで延び、
前記座席から上方には、前記フェイスガードの前端部との間に隙間が設けられて
おり、
前記フェイスガードの幅方向両側部には、メッシュで形成され、その幅方向の寸法がフェイスガードの全長の5分の1以下である通気口が設けられている、乳母車。
【請求項8】
前記幌は、前記フェイスガードの全面を外方から覆う覆い部をさらに備える、請求項
7に記載の乳母車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、乳母車に関し、特に幌が取り付けられた乳母車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、乳母車には、座席に着座した子供へ直接日光が当たらないようにするために、座席部の上方空間を覆う幌が設けられ、そのような幌の前端部に、着脱自在に日除け部材を取り付けることが知られている。
【0003】
特開2005-254837号公報(特許文献1)には、スライドファスナーを介して、幌の前端に幌延長部材を接続させることが開示されている。実用新案登録第3102793号公報(特許文献2)および実用新案登録第3107811号公報(特許文献3)には、クリップなどの接続部材を用いて、乳母車の幌の先端に補助日除け幌部材を着脱可能に設けることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-254837号公報
【文献】実用新案登録第3102793号公報
【文献】実用新案登録第3107811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、ウィルスなどの飛沫感染の問題が懸念されている。そのため、子供を乳母車に乗せて外出する場合、たとえばレインカバーを乳母車に装着して、飛沫感染の予防を図ることが考えられる。しかし、レインカバーを乳母車に装着すると、乳母車全体がレインカバーで覆われることになるため、特に夏などは熱中症の懸念があるとともに、レインカバーの着脱が容易ではない。
【0006】
また、上記特許文献1に開示された幌、および、上記特許文献2,3に開示された補助日除け幌部材は、日除け用に設けられるものであり、ウィルスなどの飛沫感染の予防には適していない。特に特許文献3の補助日除け幌部材を乳母車に取り付けると、座席部全体を覆うことになるため、圧迫感があり、子供に不快感を与えるおそれがある。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、ウィルスなどの飛沫感染を防ぎつつ、座席に着座した子供の圧迫感を軽減することが可能な乳母車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のため、本発明の一態様に係る乳母車は、子供を受け入れる座席を形成する本体と、座席の上方を覆うように本体に取り付けられる幌と、幌の前端部に接続手段を介して着脱可能に取り付けられ、その下端部が座席に着座した子供の顔の下方位置まで延びるフェイスガードとを備え、フェイスガードは、座席に着座した子供の顔と対向する透明なガード面材を含む。
【0009】
好ましくは、フェイスガードは、ガード面材の下端に幅方向に沿って設けられ、ガード面材の形状を維持する芯材をさらに含む。
【0010】
好ましくは、ガード面材の幅方向側部には、通気口が設けられている。
【0011】
好ましくは、接続手段は、幌の前端部の幅方向に沿って設けられる係合部と、ガード面材の上端の幅方向に沿って設けられ、係合部に係合する非係合部とを含む。
【0012】
好ましくは、幌の前端縁には、前方に向かって延び、係合部が露出することを防ぐ延長布が設けられている。
【0013】
好ましくは、幌には、延長布を折り畳んだ状態で保持するための保持手段が設けられている。
【0014】
好ましくは、座席の前方位置において幅方向に延びる前ガードをさらに備え、フェイスガードの前端部は、前ガードの前方を覆い、前ガード下端まで延びる。
【0015】
好ましくは、フェイスガードは、幌から取り外した不使用状態で芯材を環状に巻くことが可能であり、その幅方向側部を互いに係合する留め具が設けられている。
【0016】
本発明の他の一態様に係る乳母車は、子供を受け入れる座席を形成する本体と、3本以上の幌骨と、幌骨間に掛け渡されるシート部材とを含む幌とを備え、進行方向前方に位置する2本の幌骨間に掛け渡されるシート部材には、透明なフェイスガードを含む。
【0017】
好ましくは、幌は、フェイスガードの全面を外方から覆う覆い部をさらに備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ウィルスなどの飛沫感染を防ぎつつ、座席に着座した子供の圧迫感を軽減することが可能な乳母車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態1に係る乳母車を示す斜視図である。
【
図2】同実施形態に係る乳母車の幌を拡大して示す図であり、(A)は側面図であり、(B)は
図2(A)のII部分の断面図である。
【
図3】同実施形態に係る乳母車の幌の一部とフェイスガードを拡大して示す図であり、(A)は斜視図であり、(B)は
図3(A)のIII部分の断面図であり、(C)は幌の延長布を折り畳んだ状態を示す断面図である。
【
図5】フェイスガードの不使用状態を示す斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態2に係る乳母車を示す斜視図である。
【
図7】同実施形態に係る乳母車の幌を拡大して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0021】
<乳母車の概要>
図1を参照して、本実施の形態に係る乳母車1の概要について説明する。以下の説明において、前後方向は、乳母車の前後方向に対応し、左右方向は、乳母車の前方から見た左右方向に対応している。
【0022】
乳母車1の基本構造としては、一般的な乳母車の構造と同様であってよく、乳母車1は、本体2と、本体2を下方から支持する脚部3と、前ガード4と、押し棒6と、幌7とを備える。脚部3は、前輪31を有する一対の前脚33と、後輪32を有する一対の後脚34とを有する。本体2は、子供を受け入れる座席20を有している。座席20は、たとえば、座部21と、背もたれ部22とを有している。
【0023】
座席20の下方空間には、内部に荷物を収容可能な籠状の荷物収容部35が設けられている。荷物収容部35は、上方が開放した平面視四角形の箱状であり、その角部がそれぞれ前脚33および後脚34に着脱可能に固定されている。
【0024】
前ガード4は、座席20の前方位置において幅方向に延び、座席20の左右両側に配置される一対の手摺部5の前方に連結されている。前ガード4は、手摺部5に着脱自在に設けられるものであってもよい。手摺部5の前端は、前脚33の上端に連結され、その後端は、手摺支持部材37の上端に連結される。手摺支持部材37の下端は、後脚34に当接し、手摺支持部材37と後脚34とはロックされている。
【0025】
押し棒6は、略U字形状であり、その下端が、一対の後脚34に連結している反転ブラケット36に回動可能に取り付けられている。押し棒6は、前後方向に揺動可能に設けられ、対面押し位置および背面押し位置の間で切り換え可能である。なお、
図1に示す状態が背面押しの位置である。
【0026】
本実施の形態に係る乳母車1は、
図1に示す展開状態(背面押し位置)と折り畳み状態とを取り得る。乳母車1を展開状態から折り畳み状態にするには、手摺支持部材37と後脚34とのロックを解除し、反転ブラケット36を上下に反転させ、後脚34の上方に当接していた押し棒6の下端部を後脚34の下方に当接させる。このような折り畳み状態では、前脚33および後脚34の前後方向の間隔が近づき、座席20と背もたれ部22はV字状になり、前ガード4は押し棒6に沿って上方に立ち上がる。
【0027】
<実施の形態1>
(幌について)
次に、
図2をさらに参照して、座席20の上方を覆うように本体2に取り付けられる幌7について説明する。
図2に示すように、幌7は、複数の幌骨71および幌布72を備える。
【0028】
複数の幌骨71は、互いの角度が可変となるよう、その下端部分が連結されている。本実施の形態では、幌骨71は、逆U字形状であり、たとえば5本設けられている。各幌骨71の一端および他端は、それぞれ手摺部5の後端に設けられる回動軸によって回動可能に連結されている。幌骨71は、互いに近づくことで図示しない閉状態とすることができ、互いに離れることで、
図1に示すような開状態にすることができる。なお、
図1,2に示す状態は、幌7が半開した状態であり、幌7が全開した状態では、進行方向の前方に位置する幌骨71が前ガード4に当接する。
【0029】
なお、本実施の形態では、幌骨71が複数設けられるとしたが、少なくとも1本の幌骨が設けられていればよいし、幌骨に代えて、回動軸に連結されておらず、幌骨よりも細い補助幌骨が設けられていてもよい。
【0030】
幌布72は、複数の幌骨71の間に掛け渡され、ドーム型の立体形状を形成する。
図2(B)に示すように、幌布72は、典型的には2層構造であり、幌骨71の外側および内側をそれぞれ覆う外布72aおよび内布72bを含む。外布72aおよび内布72bは、たとえば、それぞれの外周端縁において縫い付けられている。
【0031】
幌布72の内布72bにおいて、幌骨71と対応する位置には、接続手段74としての係合部75が設けられる。係合部75は、幌7の前端部の幅方向に沿って長尺状に設けられる。本実施の形態の接続手段74は、長尺状に延びる線ファスナであるが、たとえば、ボタン、ホック、面ファスナなどであってもよく、部分的に設けられていてもよい。
【0032】
幌7の前端縁には、前方に向かって延び、係合部75が露出することを防ぐ延長布73が設けられている。延長布73は、幌布72の一部であってもよいし、幌布72とは別の布であり、幌7の前端縁に取り付けられるものであってもよい。
図2(B)に示すように、延長布73を延ばした状態でフェイスガード8を取り付けると、接続手段74が見えないため乳母車1の美観がよい。
【0033】
また、
図3(B)に示すように、フェイスガード8を取り外した状態では、係合部75を使用することがない。そのため、
図3(C)に示すように、延長布73を幌布72の裏面(内布72b)側に折り返すことができる。折り返した延長布73は、たとえば面ファスナ、ホック、ボタンなどの保持手段76を介して、幌布72の裏面に固定されてもよい。その場合には、幌布72の裏面には係止部76aが設けられ、延長布73bの裏面には非係止部76bが設けられていることが好ましい。係止部76aを非係止部76bに固定することで、延長布73を折り返した状態で固定することができる。このようにすることで、係合部75が外部に露出しない状態で固定することができるため、乳母車1の幌7の美観を向上することができる。
【0034】
(フェイスガードについて)
次に、
図3~5をさらに参照して、幌7の前端部に設けられるフェイスガード8について説明する。
図3は、乳母車1の幌7の一部とフェイスガード8を拡大して示す図であり、
図4は、フェイスガード8を示す図であり、
図5は、フェイスガード8の不使用状態を示す斜視図である。
【0035】
フェイスガード8は、接続手段74を介して着脱自在に幌7の前端部に設けられる。フェイスガード8は、シールドの役割を果たし、ウィルスなどの飛沫感染の予防するために、乳母車1の座席20に座った子供の顔面の周囲に設けられるものである。フェイスガード8は、幌骨71の形状に沿った湾曲形状である。
【0036】
フェイスガード8は、その下端部が座席20に着座した子供の顔の下方位置まで延び、かつ、座席20から上方に隙間をあけた位置に設けられる。フェイスガード8の下端位置は、座部21から10cm以上20cm以下であることが好ましい。フェイスガード8の下端位置が座部21から10cm以上であれば、熱中症を防止することができ、フェイスガード8の下端位置が座部21から20cm以下であれば、少なくとも座席20に着座した子供の顔を覆うことができるからである。
【0037】
また、
図1および
図2(A)に示すように、フェイスガード8の前端部は、前ガード4の前方を覆い、前ガード4の下端まで延びる。これにより、前ガード4がフェイスガード8で覆われるため、子供がよく触る前ガード4に、ウィルスなどの飛沫が付着することを防止することができる。
【0038】
特に
図4に示すように、フェイスガード8は、たとえば、平面視において半楕円状である。具体的には、フェイスガード8は、幅方向中央部の前後方向の寸法よりも幅方向両端部の前後方向の寸法の方が小さい。すなわち、フェイスガード8は、幅方向中央部から幅方向両端部にいくにつれ先細りの形状である。また、フェイスガード8の前端縁は円弧状であり、その後端縁は直線状であり、フェイスガード8の前端縁の幅寸法は、後端縁の幅寸法よりも大きい。
【0039】
フェイスガード8は、座席20に着座した子供の顔と対向する透明なガード面材81と、ガード面材81の下端に幅方向に沿って設けられ、ガード面材81の形状を維持する芯材82とを含む。
【0040】
ガード面材81は、座席20に座った子供が外部を見ることができ、乳母車1の使用者(たとえば、親)が座席20に座った子供の状態を確認できることができる程度に透明であればよく、半透明であってもよい。ガード面材81は、たとえば合成樹脂であり、具体的にはビニール、プラスチックなどである。ガード面材81は、可撓性を有していることが好ましいが、折り曲げることが可能な素材であってもよい。また、ガード面材81には、たとえばUV加工、抗菌加工などが施されていることが好ましい。
【0041】
ガード面材81の幅方向両側部には、換気を目的とした通気口83が設けられている。本実施の形態の通気口83は、メッシュで形成されているが、たとえば複数の小さな貫通穴が開いている形状など、通気ができる形状であればよい。フェイスガード8の両側部に通気口83を設けることで、子供の顔が位置する部分から遠い位置にすることができるため、飛沫感染のリスクを低くすることができる。また、各通気口83の左右方向寸法は、フェイスガード8の全長の約5分の1以下であることが好ましい。通気口83を約5分の1より大きくすると、ウィルスなどの飛沫が座席20内に侵入してくる可能性が高くなり、子供と親の相互の視認性も悪くなるからである。
【0042】
フェイスガード8の下端縁には、芯材82が設けられる。芯材82は、フェイスガード8の下端縁の全長に沿って設けられる。芯材82は、長尺状であり、ある程度の可撓性を有している。芯材82が設けられることで、
図1および
図3(A)に示すように、フェイスガード8は、幌骨71の形状に沿った湾曲形状を維持する。なお、本実施の形態の芯材82は、フェイスガード8の下端縁の全長に沿って設けられたが、部分的に設けられていてもよいし、屈曲していてもよい。
【0043】
図3(A)に示すように、フェイスガード8の上端縁には、接続手段74の一部を構成する非係合部85が設けられる。非係合部85は、幌7の前端部に設けられる係合部75(線ファスナの一部)に係合する線ファスナである。非係合部85は、ガード面材81の上端の幅方向に沿って設けられる。
【0044】
上述のように、フェイスガード8は、幌7に対して着脱自在に設けられる。フェイスガード8を幌7から取り外した不使用状態では、
図5に示すように、芯材82を環状にすることが可能である。上述のように、芯材82は、可撓性を有しているため折り曲げることはできないが、芯材82を環状に巻いて小さくすることができ、不使用の場合は、荷物収容部35などに収納することができる。
【0045】
フェイスガード8を小さくするには、フェイスガード8の両端部に設けられる一対の留め具84(
図3(A),
図4)を用いる。フェイスガード8を環状にし、留め具84でその幅方向側部を互いに係合させることで、フェイスガード8を小さくした状態で固定することができる。本実施の形態の留め具84は、ホックであるが、たとえばボタン、面ファスナなど、互いに係合できるものであればよい。
【0046】
(使用方法について)
次に、乳母車1の使用方法について説明する。
【0047】
図1に示すように、幌7を全開状態にせずに、半開状態(たとえば、3分の1程度開けた状態)にして、幌7の前端部にフェイスガード8を取り付ける。これにより、フェイスガード8は、座席20に着座した子供の顔の下方位置まで延びるとともに、座席20から上方に隙間が空いている。さらに、フェイスガード8は、前ガード4の前方を覆い、前ガード4の下端まで延びている。フェイスガード8を幌7に取り付けた状態は、たとえば日差しを遮る必要はなく、ウィルスなどの飛沫感染が懸念される屋内などで有効である。
【0048】
屋外などで日差しを遮る必要がある場合は、幌7をフェイスガード8から取り外し、幌7の前端部が前ガード4に当接する位置まで開くように全開にする。これにより、座席20に着座した子供に日差しが当たることを防ぐことができる。
【0049】
また、乳母車1を使用しない場合は、フェイスガード8を幌7に取り付けた状態で、上述した方法で乳母車1を折り畳み状態に変位させる。前ガード4が上方に立ち上がり、座部21と背もたれ部22がV字状となるが、フェイスガード8と幌7で、前ガード4と座席20が上方から覆われた状態になる。そのため、折り畳み状態であっても、子供が着座する座席20と、子供がよく触れる前ガード4に飛沫が付着することを予防することができる。
【0050】
従来の乳母車では、たとえば店舗などの屋内に入る場合に、ウィルスなどの飛沫感染から子供を守るために、乳母車全体をレインカバーで覆ったり、幌を全開状態した状態にしていた。しかし、乳母車全体をレインカバーで覆うと、座席に着座した子供に圧迫感を与えるとともに、通気性がないため、特に夏などは熱中症が懸念される。さらに、幌を全開にすると、室内であるのにも関わらず乳母車内が真っ暗になり、圧迫感があり不快であるとともに、子供も使用者もお互いが見えないため不安感がある。
【0051】
本実施の形態の乳母車1は、透明なフェイスガード8が幌7の前端部に取り付けられており、さらにその下端部が子供の顔の下方位置で、かつ座席20から上方に隙間を空けた位置に設けられている。これにより、座席20に着座した子供の顔にウィルスなどの飛沫が付着することを防止することができるとともに、座席20に着座した子供の圧迫感を軽減することができる。さらに、フェイスガード8の下端部と座席20との間に隙間が設けられているため、通気性を維持することができるとともに、特に夏など高温の場合に熱中症を防ぐことが可能となる。さらに、子供も親も常にお互いの姿を確認することができるため、安心感がある。
【0052】
<実施の形態2>
次に、
図6,7を参照して、実施の形態2に係る乳母車1Aの構成例について説明する。
図6は、実施の形態2に係る乳母車1Aの斜視図であり、
図7は、幌9Aだけを拡大した斜視図である。以下に実施の形態1に示した乳母車1との相違点のみ詳細に説明する。実施の形態1と実施の形態2とは、フェイスガードが着脱可能ではなく、幌7に設けられている点において異なる。
【0053】
図6,7を参照して、乳母車1Aの幌9Aは、5本の幌骨91aA~91eAと、5本の幌骨91aA~91eA間に掛け渡されるシート部材92Aとを含む。幌骨91aA~91eAは、実施の形態1で説明した幌骨71と同様である。シート部材92Aは、実施の形態1で説明した幌布72と同様である。以下の説明において、乳母車1Aの進行方向前方から順に第1幌骨91aA、第2幌骨91bA、第3幌骨91cA、第4幌骨91dA、第5幌骨91eAとして説明する。
【0054】
なお、本実施の形態の乳母車1Aは、幌骨91aA~91eAが5本設けられるとして説明するが、少なくとも3本設けられていればよい。また、幌骨が3本設けられる場合であっても、少なくとも1本が回動軸に取り付けられていればよく、他の2本は回動軸に取り付けられていない補助幌骨であってもよい。
【0055】
進行方向前方に位置する2本の第1幌骨91aAおよび第2幌骨91bAに掛け渡されるシート部材92Aは、透明なフェイスガード93Aを含む。フェイスガード93Aは、上述した実施の形態1のフェイスガード8と同様の素材であり、透明である。本実施の形態のフェイスガード93Aは、第1幌骨91aAおよび第2幌骨91bAの間に掛け渡される幌布を半月状に切り欠いた部分に貼り付けられている。
【0056】
フェイスガード93Aの部分を含めて日除けとして使用したい場合には、フェイスガード93Aの全面を外方から覆う覆い部を用いてもよい。覆い部は、日差しを通さないような素材であり、フェイスガード93Aの全面を覆うように、フェイスガード93Aの大きさよりも大きいことが好ましい。本実施の形態では、覆い部は取り外し可能に設けられており、図示しない接続手段により幌9Aに取り付けられるが、第2幌骨91bAに対応する幌布92Aに縫い付けられていてもよい。
【0057】
第2幌骨91bAおよび第3幌骨91cAの間に掛け渡される幌布を半月状に切り欠いた部分に通気のためのメッシュ状窓部94Aが設けられる。第3幌骨91cAに対応する幌布92Aには、カバー部95Aが縫い付けられている。カバー部95Aは、メッシュ状窓部94Aを塞ぎたい場合には、前方に折り返し、メッシュ状窓部94Aを開放しておきたい場合には、
図7に示すように後方に折り返しておく。また、第3幌骨91cAおよび第4幌骨91dA、第4幌骨91dAおよび第5幌骨91eAの間には幌布92Aが掛け渡されている。
【0058】
本実施の形態の乳母車1Aは、幌9Aの前方に位置する第1幌骨91aAと第2幌骨91bAとの間にフェイスガード93Aを設けたため、ウィルスなどの飛沫感染を防ぎつつ、座席20に着座した子供の圧迫感を軽減することができる。また、フェイスガード93Aを覆う覆い部をさらに設けたため、日除けとしても使用することができるため、ウィルスなどの飛沫感染予防と日除けを両立することができる。
【0059】
なお、本実施の形態では、乳母車1は折り畳み式乳母車であるとして説明したが、折り畳むことができない乳母車であってもよい。さらに、乳母車1の押し棒6は、背対面切替式であるとしたが、背面式または対面式のいずれかに固定されていてもよい。
【0060】
また、本実施の形態のフェイスガード8は、ガード面材81の下端に芯材82が設けられるとしたが、必ずしも芯材82が設けられていなくてもよい。また、仮に芯材82が設けられている場合であっても、ガード面材81に取り付けられていればよく、たとえばガード面材81の上下方向の途中位置などに設けられていてもよい。
【0061】
以上、図面を参照してこの発明の実施の形態を説明したが、この発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0062】
1,1A 乳母車、2 本体、4 前ガード、7,9A 幌、8 フェイスガード、20 座席、71 幌骨、72 延長布、73 延長布、74 接続手段、75 係合部、76 保持手段、81 ガード面材、82 芯材、83 通気口、84 留め具、85 非係合部、91aA~91eA 幌骨、92A シート部材(幌布)、93A フェイスガード、94A メッシュ状窓部。