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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】床材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/10 20060101AFI20240823BHJP
   B32B 37/10 20060101ALI20240823BHJP
   B29C 59/04 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
E04F15/10 104A
E04F15/10 104E
B32B37/10
B29C59/04 Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020150040
(22)【出願日】2020-09-07
(65)【公開番号】P2022044424
(43)【公開日】2022-03-17
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000222495
【氏名又は名称】東リ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】316012083
【氏名又は名称】シナネン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(72)【発明者】
【氏名】梶村 康平
(72)【発明者】
【氏名】平田 善紀
(72)【発明者】
【氏名】山崎 一高
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-196079(JP,A)
【文献】特開2006-249839(JP,A)
【文献】特開昭53-141383(JP,A)
【文献】特開2000-054612(JP,A)
【文献】特開2005-324561(JP,A)
【文献】特開2002-326243(JP,A)
【文献】特開平10-196080(JP,A)
【文献】特開平11-131739(JP,A)
【文献】特開2001-311285(JP,A)
【文献】実開昭59-185339(JP,U)
【文献】特開昭51-076815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/00-15/22
B32B 1/00-43/00
B29C 59/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面層とコールドプレス成形層とを積層してなる床材の製造方法であって、
成形型に前記表面層を配置する第一配置工程と、
前記表面層に接するように熱可塑性樹脂を軟化点以上の状態にして配置する第二配置工程と、
前記成形型の内容物を前記熱可塑性樹脂の軟化点より低い温度でプレスするプレス工程と、
前記プレス工程により形成された積層成形体を前記成形型から取り出す回収工程と、
を包含する床材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に柄や模様が付された床材、及び床材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、表面に柄や凹凸模様が付された床材が知られている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に係る床材は、複数の層を重ね合わせた状態で一対のロールの間に通して加圧加熱することにより融着一体化された積層体によって構成される。この積層体は、エンボスロール及び受けロールの間に通され、その際、エンボスロールの凹凸模様が積層体の表面に転写される。
【0003】
複数の層を一体化する手段として、上記の熱融着以外に、例えば、接着剤を介在させた状態で複数の層を重ね合わせて常温でプレスする「コールドプレス」によって接着するものや、コールドプレスを行った後に更に熱を加えてプレスする「ホットプレス」によって接着するものが知られている(例えば、特許文献2,3を参照)。
【0004】
ここで、コールドプレスに関し、樹脂材をその母材である熱可塑性樹脂の軟化温度(軟化点)よりも高い可塑化温度に加熱して可塑状態とし、これを上型と下型とで構成される成形型の内部に配置し、次いで成形型で冷却しながら加圧することにより所定形状に成形する樹脂成形品の製造方法が実用化されている(例えば、特許文献4を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-20248号公報
【文献】国際公開第2012/053036号
【文献】特開2002-18807号公報
【文献】特開2017-177692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に係る床材は、エンボスロールによって凹凸模様を表面に形成できるため、ある程度の意匠性を付与することができる。しかしながら、当該床材を構成する積層体は、複数の層を重ね合わせた状態で一対のロールの間に通して加圧加熱することによって成形されるものであるため、その製造工程上の制約から成形品がシート状の平面的な形状に限定され、立体感のある自由な形、特にシートの厚みを超える立体的な形に成形することは困難である。
【0007】
特許文献2に開示されているような、コールドプレスによる一体化手段でも、製造工程上の制約から成形品がシート状の平面的な形状に限定される。特許文献3では、コールドプレス工程に加えてホットプレス工程が実施されるため、例えば、柄や凹凸模様が付されたポリ塩化ビニル系樹脂で表面層が構成されている場合、熱変形とプレス工程時の圧力とによって表面の柄や凹凸模様が潰れてしまい、意匠性を保つことができない。
【0008】
特許文献4に開示される樹脂成形品の製造方法に利用されるコールドプレス成形は、成形型における上型と下型との型締めにより形成される成形キャビティの形状に沿って可塑状態の樹脂材が充填されるため、成形キャビティの形状に応じて自由な形に成形することは可能であるものの、表面に柄や凹凸模様を付与するといった細かな装飾の付与は苦手としている。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、高い意匠性と自由な成形性とを両立することができる床材、及び当該床材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明に係る床材の特徴構成は、
表面層とコールドプレス成形層とを積層してなることにある。
【0011】
本構成の床材によれば、表面層とコールドプレス成形層とが積層されているので、表面層の表面側に、高い意匠性を付することができる。この意匠性とは、立体的に形成される凹凸模様、平面的に形成される柄などが挙げられる。例えば、凹凸模様は、エンボス加工等により表面に凹凸を形成することによって得られる。柄は、色彩や模様などを意味し、印刷フィルムや多色チップによる意匠層を設けることによって得られる。コールドプレス成形層は、軟化点以上の状態とされた当該コールドプレス成形層の母材を、成形型によって冷却しながらプレス加工を行うことによって成形される層である。表面層とコールドプレス成形層との境界は、軟化点以上の状態とされたコールドプレス成形層の母材の熱とプレス加工時の圧力とによる熱融着によって一体化される。本構成の床材において、表面層の表面側は、プレス加工時の圧力が作用するものの成形型によって冷却されている。このため、表面層の表面側の熱変形を抑えることができ、その結果、表面層の表面側に付与された柄や凹凸模様が潰れずに残り、高い意匠性を確保することができる。一方、コールドプレス成形層においては、軟化点以上の状態とされた母材が冷却によって固化するまで自由な形に成形することができる。従って、従来の床材では実現し得なかった高い意匠性と自由な成形性とを両立することができる。
【0012】
本発明に係る床材において、
前記表面層及び前記コールドプレス成形層は、同種の材料で構成されていることが好ましい。
【0013】
本構成の床材によれば、表面層及びコールドプレス成形層が同種の材料で構成されているので、表面層とコールドプレス成形層との境界を熱融着によってより強固に一体化することができる。
【0014】
本発明に係る床材において、
前記表面層及び前記コールドプレス成形層は、異種の材料で構成され、両層が接合層を介して積層されていることが好ましい。
【0015】
本構成の床材によれば、表面層及びコールドプレス成形層が異種の材料で構成され、両層が接合層を介して積層されているので、表面層とコールドプレス成形層とが異種の材料であっても、表面層とコールドプレス成形層とを接合層を介して強固に一体化することができる。
【0016】
本発明に係る床材において、
前記表面層は、凹凸模様を有することが好ましい。
【0017】
本構成の床材によれば、表面層は、凹凸模様を有する。これにより、意匠面では、アイキャッチ力を高めることができるとともに、質感を高めて高級感を醸し出すことができる。一方、機能面では、凹凸模様における凹凸が滑り止めの役割をし、防滑性を高めることができる。また、凹凸模様における凹凸の屈曲面の弾性力や部分接触により、平滑面にはない心地の良い感触を得ることができる。
【0018】
本発明に係る床材において、
前記コールドプレス成形層は、積層面に対して垂直方向ないし水平方向に形成された立体構造を有することが好ましい。
【0019】
本構成の床材によれば、コールドプレス成形層は、積層面に対して垂直方向ないし水平方向に形成された立体構造を有する。ここで、「垂直方向ないし水平方向」には、積層面に対して垂直方向又は水平方向のみならず、積層面に対して傾斜した斜め方向も含まれる。従って、立体構造には、垂直方向に延びる部分を有する構造、水平方向に延びる部分を有する構造、及び斜め方向に延びる部分を有する構造の少なくとも一つが含まれる。これにより、表面層が有する機能に加えて、コールドプレス成形層の立体構造が奏する特定の機能が付加されることになり、床材の付加価値を高めることができる。詳細には、特許文献1~3において開示された技術では、上述したように、製造工程上の制約から成形品がシート状の平面的な形状に限定されることになり、本発明の床材の表面層に相当する部材については成形可能であっても、その表面層の厚み以上の突出長さの突出部を成形することはできない。本発明において、コールドプレス成形層は、軟化点以上の状態とされた母材が冷却によって固化するまで自由な形に成形することができる。従って、成形型の成形キャビティの形状の設定により、コールドプレス成形層において、表面層の厚み以上の突出長さの突出部を成形することができる。よって、本構成の床材は、表面層の凹凸模様とコールドプレス成形層の立体構造とを併せ持つこととなり、比較的大きな立体構造と小さい凹凸構造を重畳して形成することができる。これにより、防滑性や排水性の制御を高い水準で行うことができる。さらに、凹凸模様の屈曲面及び立体構造による音の乱反射の作用により、防音、遮音及び吸音の効果を得ることもできる。
【0020】
次に、本発明に係る床材の製造方法の特徴構成は、
表面層とコールドプレス成形層とを積層してなる床材の製造方法であって、
成形型に前記表面層を配置する第一配置工程と、
前記表面層に接するように熱可塑性樹脂を軟化点以上の状態にして配置する第二配置工程と、
前記成形型の内容物を前記熱可塑性樹脂の軟化点より低い温度でプレスするプレス工程と、
前記プレス工程により形成された積層成形体を前記成形型から取り出す回収工程と、
を包含することにある。
【0021】
本構成の床材の製造方法によれば、成形型に表面層が配置され、表面層に接するように、軟化点以上の状態にされた、コールドプレス成形層の母材である熱可塑性樹脂が配置される。そして、成形型の内容物、すなわち表面層とコールドプレス成形層の母材とを、熱可塑性樹脂の軟化点より低い温度でプレスするプレス工程が実施される。これにより、コールドプレス成形層の成形がプレス工程に伴って進行しながら、成形途中のコールドプレス成形層と表面層との境界は、軟化点以上の状態とされたコールドプレス成形層の母材の熱とプレス加工時の圧力とによる熱融着によって一体化される。こうして、プレス工程により形成された積層成形体は、成形型から取り出されて回収される。本構成の床材の製造方法において、表面層の表面側は、プレス加工時の圧力が作用するものの成形型によって冷却されている。このため、表面層の表面側の熱変形を抑えることができ、その結果、表面層の表面側に付与された凹凸模様が潰れずに残り、高い意匠性を確保することができる。一方、コールドプレス成形層においては、軟化点以上の状態とされた母材が冷却によって固化するまで自由な形に成形することができる。従って、従来の床材では実現し得なかった高い意匠性と自由な成形性とを両立することができる。また、本構成の床材の製造方法は、表面層とコールドプレス成型層とを個別に成形した後に互いを接合する方法に比べて、ワンステップの加工で成形できるので、迅速、且つ容易に成形することができるとともに、複雑な構成でも正確に成形ができ、製造効率に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明の第一実施形態に係る床材の積層構造を模式的に示す断面図である。
図2図2は、表面層の積層構造を模式的に示し、(a)は防滑性を高めた表面層の断面図、(b)はクッション性を高めた表面層の断面図である。
図3図3は、本発明の第二実施形態に係る床材の積層構造を模式的に示す断面図である。
図4図4は、本発明が適用される床材の具体例(1)を示し、(a)は階段用床材の全体斜視図、(b)は(a)のA-A線断面の要部拡大図である。
図5図5は、階段用床材を成形するための成形型を示し、(a)は離型状態図、(b)は型締め状態図である。
図6図6は、階段用床材の製造方法の手順を示し、(a)は表面層配置工程の説明図、(b)は熱可塑性樹脂配置工程の説明図、(c)はプレス工程の説明図、(d)は回収工程の説明図である。
図7図7は、本発明が適用される床材の具体例(2)を示し、(a)は玄関用床材の平面図、(b)は(a)のB-B線切断端面の要部拡大図である。
図8図8は、玄関用床材を成形するための成形型を示し、(a)は離型状態図、(b)は型締め状態図である。
図9図9は、玄関用床材を成形する製造方法の手順を示し、(a)は表面層配置工程の説明図、(b)は熱可塑性樹脂配置工程の説明図、(c)はプレス工程の説明図、(d)は回収工程の説明図である。
図10図10は、本発明の床材の製造方法に係る接合層配置工程を示し、(a)は、階段用床材の製造方法に係る接合層配置工程の説明図であり、(b)は、玄関用床材の製造方法に係る接合層配置工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の床材、及び床材の製造方法について、図面を参照しながら説明する。なお、各図において、本発明の床材は複数の層で構成されていることが示されているが、各層の厚み関係は説明容易化のため適宜誇張又は簡略化しており、実際の床材における各層の厚みの大小関係(縮尺)を厳密に反映したものではない。
【0024】
本明細書において、ある層の「上面」又は「上方」は、床材を敷設する床面(水平面)から遠い側の面又は方向を指し、「下面」又は「下方」は、その反対側(床材を敷設する床面に近い側)の面又は方向を指す。
【0025】
〔第一実施形態〕
<床材の全体構成>
図1は、本発明の第一実施形態に係る床材の積層構造を模式的に示す断面図である。図1に示す床材1Aは、表面層2とコールドプレス成形層3とを有し、上方から下方に向かって、表面層2及びコールドプレス成形層3がこの記載順に積層されている。
【0026】
<表面層>
図2は、表面層の積層構造を模式的に示し、(a)は防滑性を高めた表面層の断面図、(b)はクッション性を高めた表面層の断面図である。表面層2には、床材の意匠性を高めるため凹凸模様(図示省略)が形成されている。凹凸模様としては、エンボス、発泡構造、デボス、シボ等が挙げられる。表面層2は、例えば、図2(a)に示す表面層2A、及び図2(b)に示す表面層2Bの何れもが採用可能であり、床材1Aの防滑性を高める場合は、図2(a)に示す表面層2Aが採用され、床材1Aのクッション性を高める場合は、図2(b)に示す表面層2Bが採用される。
【0027】
まず、床材1Aの防滑性を高めることができる表面層2Aについて、図2(a)を用いて説明する。図2(a)に示す表面層2Aは、上方から下方に向かって、耐摩耗層11、保護層12、意匠層13、上側樹脂層14、樹脂含浸ガラスシート15、及び下側樹脂層16がこの記載順に積層されている。
【0028】
[耐摩耗層]
耐摩耗層11は、最も表側に位置する層であって、表面層2Aの必須構成要素ではないが、傷付きなどを防止したり、耐摩耗性を向上させたりする。耐摩耗層11は、透明又は不透明でもよいが、保護層12の裏面側に設けられた意匠層13などの柄を視認できるようにするため、透明であることが好ましい。耐摩耗層11は、耐傷付き性を発揮しつつ、全体がもろくならず、耐衝撃性にも優れるという理由から、層厚が2~50μmであることが好ましく、5~35μmであることがより好ましい。特に、層厚が2μm以上で十分な耐傷性が得られ、層厚が50μm以下で床材全体の剛性が高くなりすぎず、割れにくく、加工性に優れる。
【0029】
耐摩耗層11は、汎用的であることから、紫外線硬化樹脂などの電離放射線硬化性樹脂を用いることがより好ましい。前記硬化性樹脂としては、紫外線硬化性樹脂などの電離放射線硬化性樹脂以外に、熱硬化性樹脂、非電離放射線により硬化する樹脂などが挙げられる。電離放射線硬化性樹脂組成物を用いる場合、耐摩耗層11は、重合開始剤、その他の各種添加剤など含み、必要に応じて骨材を含む。電離放射線により硬化する樹脂としては、加工性の良さ及び汎用的であることから、ウレタン系、エポキシ系、アクリル系等の紫外線硬化樹脂を用いることが好ましく、フッ素樹脂、シリコーン樹脂等を添加してもよい。また、骨材としては、アルミナ等の無機粒子を用いることができ、これにより、防滑性、耐摩耗性、耐久性を向上させることができる。
【0030】
[保護層]
保護層12は、表面層2Aに付着した汚れを容易に除去できるようにするために設けられた層である。すなわち、保護層12は、表面層2Aに汚れ除去性を付与する。保護層12は、必要に応じて設けられる。保護層12は、透明又は不透明の何れでもよいが、保護層12の裏面側に設けられた意匠層13の柄や着色を視認できるようにするため、透明であることが好ましい。
【0031】
保護層12の素材としては、樹脂材料が好適である。樹脂材料は、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアクリル酸系樹脂、ポリエステル系樹脂等の熱可塑性樹脂が用いられ、これらのうち、ポリ塩化ビニル系樹脂が好ましい。保護層12の厚みは、0.03~1mmであり、好ましくは0.1~0.8mmである。
【0032】
[意匠層]
意匠層13は、所望の柄を表現し、表面層2Aの表面に意匠性を付与する層である。例えば、意匠層13は、熱可塑性樹脂により形成される。前記熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル樹脂、オレフィン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メタクリレート樹脂などのアクリル系樹脂、アミド系樹脂、エステル系樹脂、酢酸ビニル、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマーなどの各種エラストマー、ゴムなどが挙げられる。なかでも、耐久性や加工性に優れることから、塩化ビニル樹脂が好ましい。また、熱可塑性樹脂に、充填剤、可塑剤、難燃剤、安定剤、酸化防止剤、滑剤、着色剤、発泡剤などの各種添加剤を配合してもよい。
【0033】
意匠層13は、印刷の施された印刷フィルムで形成してもよく、着色剤を添加した熱可塑性樹脂で成形してもよく、複数色の樹脂チップを添加し練り込むことにより形成してもよい。
【0034】
意匠層13の厚みは、0.50~1.50mmであり、0.60~1.00mmが好ましく、0.65~0.80mmがより好ましい。
【0035】
また、上側樹脂層14に着色剤などを添加することによって柄を表出させる場合、上記意匠層13を除いてもよい。
【0036】
[上側樹脂層及び下側樹脂層]
上側樹脂層14及び下側樹脂層16は、表面層2Aの強度及び重量を構成する主たる部分である。上側樹脂層14及び下側樹脂層16の厚みは、特に限定されず、適宜設定できる。上側樹脂層14の厚みと下側樹脂層16の厚みとは、同じでもよいし、異なっていてもよい。上側樹脂層14の厚みは、0.05~1.0mmであり、好ましくは0.1~0.8mmである。下側樹脂層16の厚みは、0.5~3.0mmであり、好ましくは0.7~2.0mmである。
【0037】
上側樹脂層14及び下側樹脂層16の素材としては、熱可塑性樹脂が好適である。熱可塑性樹脂としては、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等のポリ塩化ビニル系樹脂;ポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン系樹脂;エチレン-酢酸ビニル共重合体等のポリ酢酸ビニル系樹脂;ポリメチルメタクリレート等のポリアクリレート系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリエステル系樹脂;オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー等の各種エラストマー等が挙げられる。これらは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。上側樹脂層14及び下側樹脂層16の少なくとも何れか一方は、優れた可撓性を有し、さらに、樹脂含浸ガラスシート15と接合し易いことから、ポリ塩化ビニル系樹脂を主成分とする樹脂層であることが好ましく、上側樹脂層14及び下側樹脂層16の双方が、ポリ塩化ビニル系樹脂を主成分とすることがより好ましい。ポリ塩化ビニル系樹脂を主成分とする樹脂層を有する表面層2Aは、柔軟性に優れているので、歩行感が良好であり、さらに、湾曲させながら床面に施工できる。また、ポリ塩化ビニル系樹脂は、安価である上、これを用いると、表面層2Aの製造も簡易となる。上側樹脂層14及び下側樹脂層16が何れもポリ塩化ビニル系樹脂を主成分とする場合、当該ポリ塩化ビニル系樹脂は、モノマーの種類及び重合度が同じでもよく、異なっていてもよい。
【0038】
なお、本明細書において、主成分とは、添加剤を除いた樹脂成分のことをいい、その層を構成する成分(ただし、添加剤を除く)が複数ある場合、その中で最も含有量が多い成分(重量比)をいう。この添加剤としては、例えば、可塑剤、充填剤、安定剤などが挙げられる。主成分の含有量は、その層を構成する成分全体を100質量%とした場合、50質量%を超え、好ましくは、70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上である。主成分の含有量の上限は、100質量%である。主成分の含有量が100質量%未満である場合において、その層に含まれる主成分以外の成分は特に限定されず、従来公知の成分を含み得る。
【0039】
[樹脂含浸ガラスシート]
樹脂含浸ガラスシート15は、経時的な収縮や膨張による表面層2Aのサイズ変動を抑制するために用いられ、詳細図示による説明は省略するが、ガラス繊維を含むガラスシートに樹脂を含浸させたものである。樹脂含浸ガラスシート15は、強度が高く、温度によるサイズ変動が少ないというガラス繊維の特性を有し、表面層2Aのサイズ安定性や剛性などの機械的強度を高め、温度変化や経時的な収縮、膨張によるサイズ変化、反りを抑制することができる。樹脂含浸ガラスシート15の基材であるガラスシートは、複数の繊維が重なり合って層を成しており、ガラス不織布やガラス織布等を用いることができるが、ガラス不織布が好適に用いられる。ガラス不織布は、サイズ安定性に優れるため、表面層2Aの全体のサイズ安定性に大きく寄与する上、表面層2Aの曲げ強度及び引張り強度を向上させることができる。また、ガラス織布は、繊維が概ね規則的に配列されているので、表面層2Aの表面に織り目が表出して凹凸模様の見た目に影響することがあるが、ガラス不織布を用いた場合には表面層2Aの凹凸模様に影響せず、そのまま維持することができる。なお、樹脂含浸ガラスシート15は、サイズ変動が大きくてもよい場合や、他の構成でサイズ変動を抑制できる場合、などは省いてもよい。
【0040】
ガラスシートに含浸させる樹脂としては、上側樹脂層14及び下側樹脂層16の何れにも接着するものであれば特に限定されず、従来公知の樹脂を用いることができる。樹脂としては、上側樹脂層14及び下側樹脂層16で例示したような熱可塑性樹脂が挙げられる。上側樹脂層14及び下側樹脂層16がポリ塩化ビニル系樹脂を主成分とする場合、ガラスシートに含浸させる樹脂もポリ塩化ビニル系樹脂を主成分とするものであれば、上側樹脂層14及び下側樹脂層16に対して優れた接着性を示すため好ましい。ガラスシートに含浸させる樹脂の性状は、ペースト状のものが含浸し易く、加工性に優れるので好ましい。
【0041】
次に、床材1Aのクッション性を高めることができる表面層2Bについて、図2(b)を用いて説明する。図2(b)に示す表面層2Bは、発泡層23と、発泡層23の上面に積層される意匠層24と、意匠層24の上面に積層される保護層22と、発泡層23中に埋設積層されるガラス繊維布21とを備えている。表面層2Bにおいて、ガラス繊維布21を埋設積層する位置は、表面層2Bの全厚みの中心線Sより上面側の発泡層23中とされる。なお、必要に応じて、保護層22とガラス繊維布21との間に意匠性を有する装飾層(図示省略)を設けてもよい。
【0042】
[ガラス繊維布]
ガラス繊維布21としては、発泡性樹脂組成物を含浸し得るように適度な隙間を有するものが好ましい。具体的には、目付が15~80g/m程度であり、平均厚みが0.15~0.60mm程度のシート状、マット状の不織布又は織布を用いることができる。なお、目付が15g/m未満の場合、繊維間隙に発泡性樹脂組成物が入り込み易いものの、主として発泡性樹脂組成物の強度に依存することになる。目付が80g/mを超える場合、繊維間隙に発泡性樹脂組成物が入り込みにくく、繊維と発泡性樹脂組成物との絡み付きが不足することになる。何れの場合も十分なアンカー効果を得られない虞がある。
【0043】
ガラス繊維布21の積層方法としては、従来の発泡製品の製造方法において、ガラス繊維布21を埋没させたペースト状の発泡性樹脂組成物を赤外線ヒーター等の通常の加熱器で発泡させることにより、該ガラス繊維布21を発泡製品中に埋没して積層する方法、流動状態の発泡性樹脂組成物をガラス繊維布21にコーティングして強制的に含浸させる方法、流動状態の発泡性樹脂組成物を離型紙等のキャリア上にナイフコーター等でコーティングした後、該ガラス繊維布21を載置して該発泡性樹脂組成物を含浸させて加熱し発泡させる方法等、任意の方法が適用できる。
【0044】
[保護層]
保護層22としては、前述した保護層11の成分の説明で例示したものを使用することができる。
【0045】
<コールドプレス成形層>
図1に示す床材1Aにおいて、コールドプレス成形層3は、軟化点以上の状態とされた当該コールドプレス成形層3の母材(樹脂)を、後述する成形型60(上型61、下型62),90(上型91、下型92)によって冷却しながらプレス加工を行うことによって成形される層である。ここで、「軟化点」とは、樹脂が外部応力を受けた場合に塑性変形可能となる温度であり、軟化点は通常、樹脂のガラス転移温度(Tg)と溶融温度(Tm)との間にある。コールドプレス成形層3の母材としては、前述した上側樹脂層14及び下側樹脂層16の成分の説明で例示した熱可塑性樹脂を使用することができ、とりわけポリ塩化ビニル系樹脂が好適である。ちなみに、ポリ塩化ビニル系樹脂の代表例であるポリ塩化ビニルは、可塑剤の配合量によって異なるが、ガラス転移点(Tg)が約60~85℃、溶融温度(Tm)が約210℃であるから、軟化点は、例えば60~200℃と見積もることができる。
【0046】
コールドプレス成形層は、母材となる樹脂のみで形成してもよいが、木質材や金属材などの他の部材を芯材や基材として内蔵したり、接合することができる。木質材としては、合板やMDF、パーティクルボードやハードボード等が好適に用いられる。金属材としては、鉄、アルミ、ステンレス等が好適に用いられる。木質材や金属材を基材として、コールドプレス成形層をその上に形成すると、建築物との接合や組み込みを容易に行うことができ、利便性を向上させることができる。
【0047】
第一実施形態の床材1Aにおいて、表面層2とコールドプレス成形層3とは、同種の材料で構成されている。ここで、同種の材料とは主成分が同種であることを意味し、主成分が同種とは、同じ材料であるという意味と、同系統の材料であるという意味との両方を含む。同系統の材料としては、樹脂の繰り返し単位を構成するモノマーが同一であるが、重合度が異なるもの、結晶化度が異なるもの、側鎖の置換基が異なるもの等が挙げられる。表面層2及びコールドプレス成形層3を同種の材料で構成することにより、表面層2とコールドプレス成形層3との境界を熱融着によってより強固に一体化することができる。
【0048】
表面層2及びコールドプレス成形層3には、必要に応じて樹脂以外の他の成分が含まれていてもよい。他の成分としては、例えば、可塑剤、繊維、充填剤、安定剤、加工助剤、防黴剤、消臭剤、抗菌剤、難燃剤、酸化防止剤、滑剤、着色剤等が挙げられる。可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート(DOP)、ジヘプチルフタレート(DHP)、ジイソノニルフタレート(DINP)、リン酸トリオクチル(TOP)、リン酸トリフェニル(TPP)、ジオクチルテレフタレート(DOTP)、ジオクチルイソフタレート(DOIP)、ジイソノニルシクロヘキシルフタレート(DINCH)等が挙げられる。繊維としては、樹脂、ガラスなどの短繊維が挙げられる。なかでも、ガラスの短繊維が好ましく、製品の反りを抑え、寸法安定性と強度を高めることができる。繊維長は、0.5~10mmであり、2~9mmが好ましく、4~8mmがより好ましい。充填剤としては、例えば、酸化カルシウム、炭酸バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、クレー、タルク、マイカ、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、珪砂、水酸化アルミニウム等が挙げられる。なお、コールドプレス成形層3において、可塑剤は、10~90部である。また、充填剤は、0~400部である。
【0049】
<密度>
表面層2及びコールドプレス成形層3の密度は、特に、可塑剤の種類や配合量、充填剤の種類や配合量の影響を受けるが、後述する成形型60(上型61、下型62),90(上型91、下型92)を用いたコールドプレス成形での冷却固化時の温度変化の影響も受ける。すなわち、後述する成形型60,90を用いたコールドプレス成形において、表面層2における、成形型60,90と接する部分(上面側部分)は、成形型60,90によって当初から冷却される一方で、表面層2における、コールドプレス成形層3の母材と接する部分(下面側部分)は、その母材との接触によってコールドプレス成形層3の母材の軟化点以上の温度に一旦上昇された後、成形型60,90の温度に近づくように冷却される。これに対し、コールドプレス成形層3は、その成形段階において、当該コールドプレス成形層3の母材が軟化点以上の温度である状態から成形型60,90に接触することで急速に成形型60,90の温度に近づくように冷却される。このように、表面層2の温度変化よりも、コールドプレス成形層3の温度変化の方が大きいため、コールドプレス成形層3の密度は、表面層2の密度より大きくなる傾向がある。また、表面層2が発泡樹脂を含む場合、特にこの傾向が顕著になる。これによって、コールドプレス成形層3によって床材全体を丈夫な構造にしつつ、足裏で直接踏まれる表面層2を柔らかくして踏み心地を良くしたり、下肢疲労軽減効果も付与することができる。
【0050】
<層間剥離強度>
JIS A 1454の層間剥離強度試験方法に準拠して測定される表面層2とコールドプレス成形層3との層間剥離強度は、8~100N/50mmであり、好ましくは、20~95N/50mmであり、より好ましくは、30~90N/50mmである。これにより、床材1Aの通常の使用において、コールドプレス成形層3に対し表面層2が剥離するのを確実に防ぐことができ、床材1Aとしての機能を長期に亘って安定的に保つことができる。層間剥離強度が8N/50mm未満の場合、表面層2及びコールドプレス成形層3の溶着状態を長期に亘って維持できない虞がある。層間剥離強度が100N/50mmを超える場合、異種素材で形成された表面層2とコールドプレス成形層3とを分別処理することができず、リサイクル性の点から望ましくない。なお、表面層2とコールドプレス成形層3とが同種材料で形成される場合、リサイクル時に分別処理してもしなくてもよい。
【0051】
<硬度>
表面層2、コールドプレス成形層3の硬度は、JIS K 6253に準拠して測定した、タイプAデュロメータ硬度のことをいう。具体的には、株式会社テクロックのGS-719Nを用いて測定した値である。表面層2の硬度は、30~118であり、好ましくは、35~100であり、より好ましくは、40~98である。硬度が30未満の場合、表面層2の柔軟性が向上し踏み心地が良くなるものの、表面層2が変形し易くなるため凹凸模様が崩れる虞がある。硬度が118を超える場合、表面層2の凹凸模様は崩れ難くなるが、踏み心地が悪化する虞がある。コールドプレス成形層3の硬度は、75~115であり、好ましくは、90~100であり、より好ましくは、94~96である。硬度が75未満の場合、コールドプレス成形層3の柔軟性が向上し踏み心地が良くなるものの、コールドプレス成形層3が変形し易くなるため立体構造が潰れ易くなる虞がある。硬度が115を超える場合、コールドプレス成形層3の立体構造は潰れ難くなるが、踏み心地が悪化する虞がある。
【0052】
また、コールドプレス成形層3の硬度を、表面層2よりも高くすることで、コールドプレス成形層3によって床材全体を丈夫な構造にしつつ、足裏で直接踏まれる表面層2を柔らかくして踏み心地を良くしたり、下肢疲労軽減効果も付与することができる。この場合、コールドプレス成形層3と表面層2の硬度差は、30以上が好ましく、40以上がより好ましい。上限値は65以下が好ましく、50以下がより好ましい。ここでの硬度差は、以下の計算式によって求められる。
硬度差 = (コールドプレス成形層3の硬度)-(表面層2の硬度)
【0053】
〔第一実施形態の変形例(1)〕
第一実施形態の変形例(1)として、コールドプレス成形層に芯材が内包された床材が挙げられる。芯材としては、例えば、金属や木材、樹脂等、又はこれらの複合材から構成される板状、格子状、網目状等の形状に形成された部材が挙げられる。
【0054】
芯材は、全体がコールドプレス成形層に内包されてもよいが、所要の部分がコールドプレス成形層の表面から突出した突出部を有していてもよい。突出部としては、例えば、雄螺子が形成された螺子軸が挙げられる。このように、螺子軸をコールドプレス成形層の表面から突出させる構成を採用することにより、床材の施工時に、床材の螺子軸に螺合させたナットの締付操作で床材を設置箇所に容易、且つ強固に固定することができる。
【0055】
また、コールドプレス成形層の表面側に芯材の要所を出現させるための所要の開口部を設け、かかる開口部に対応する芯材の部分に、例えば、雌螺子を形成してもよい。このように、コールドプレス成形層の表面側に設けられた開口部を通して、芯材に形成された雌螺子にボルトを螺合可能な構成を採用することにより、床材の施工時に、床材の雌螺子に螺合させたボルトの締付操作で床材を設置箇所に容易、且つ強固に固定することができる。
【0056】
なお、芯材として、木材板を採用することにより、設置箇所に床材を釘や木螺子を用いて容易、且つ強固に固定することができる。また、木材板の所要部分をコールドプレス成形層から露出させるようにしてもよい。この場合、例えば、設置しようとする床面が木質下地である場合、露出された木材部分と木質下地との間に、木材用接着剤等で形成された接着層を介在させる施工法により、床材を設置箇所に容易、且つ強固に固定することができる。
【0057】
上記変形例(1)に係る床材によれば、コールドプレス成形層に芯材が内包されているので、表面層及びコールドプレス成形層の強度に加えて芯材の強度が付加されて床材全体の強度を高めることができる。また、上記変形例(1)に係る床材によれば、表面層及びコールドプレス成形層がそれぞれ有する機能に加えて、芯材が有する機能が付加されるので、付加価値を高めることができる。また、上記変形例(1)に係る床材によれば、コールドプレス成型層に芯材が内包される構成であるので、コールドプレス成型層と芯材との接合強度等を考慮する必要がなく、樹脂材料から構成されるコールドプレス成型層とは素材が異なる金属や木材等の異素材から構成される芯材を採用することが可能となり、芯材として使用される材料の選択肢を増すことができる。
【0058】
上記変形例(1)に係る床材は、以下の(1)~(6)の工程を包含する製造方法により製造することができる。
(1)成形型に表面層を配置する第一配置工程
(2)表面層に接するように熱可塑性樹脂を軟化点以上の状態にして配置する第二配置工程
(3)第二配置工程で配置した熱可塑性樹脂に接するように芯材を配置する第三配置工程
(4)芯材に接するように熱可塑性樹脂を軟化点以上の状態にして配置する第四配置工程
(5)成形型の内容物を熱可塑性樹脂の軟化点より低い温度でプレスするプレス工程
(6)プレス工程により形成された積層成形体を成形型から取り出す回収工程
【0059】
上記の製造方法によれば、従来の床材では実現し得なかった高い意匠性と自由な成形性とを両立しつつ、樹脂材料から構成されるコールドプレス成型層とは素材が異なる金属や木材等の異素材から構成される芯材をコールドプレス成型層に容易に内包させることができる。
【0060】
〔第一実施形態の変形例(2)〕
第一実施形態の変形例(2)として、表面層とコールドプレス成形層と基材とをこの記載順に積層してなる床材が挙げられる。このように、表面層及びコールドプレス成形層に加えて基材が積層される構成を採用することにより、床材の強度を高めることができる。基材としては、例えば、金属や木材、樹脂等、又はこれらの複合材から構成される板状、格子状、網目状等の形状に形成された部材が挙げられる。
【0061】
例えば、設置しようとする床面が木質下地である場合、床材の基材として木材板を採用し、基材と木質下地との間に、木材用接着剤等で形成された接着層を介在させる施工法により、床材を設置箇所に容易、且つ強固に固定することができる。
【0062】
上記変形例(2)に係る床材は、以下の(1)~(6)の工程を包含する製造方法により製造することができる。
(1)成形型に表面層を配置する第一配置工程
(2)表面層に接するように熱可塑性樹脂を軟化点以上の状態にして配置する第二配置工程
(3)第二配置工程で配置した熱可塑性樹脂に接するように基材を配置する第三配置工程
(4)成形型の内容物を熱可塑性樹脂の軟化点より低い温度でプレスするプレス工程
(5)プレス工程により形成された積層成形体を成形型から取り出す回収工程
【0063】
上記の製造方法によれば、従来の床材では実現し得なかった高い意匠性と自由な成形性とを両立しつつ、樹脂材料から構成されるコールドプレス成型層とは素材が異なる金属や木材等の異素材から構成される基材を表面層及びコールドプレス成型層に加えて容易に積層することができる。
【0064】
〔第二実施形態〕
図3は、本発明の第二実施形態に係る床材の積層構造を模式的に示す断面図である。第二実施形態において、第一実施形態と同一又は同様のものについては図に同一符号を付すに留めてその詳細な説明を省略し、以下においては、第二実施形態に特有の部分を中心に説明する。
【0065】
図3に示すように、第二実施形態の床材1Bにおいては、表面層2とコールドプレス成形層3とが接合層4を介して積層されている。表面層2とコールドプレス成形層3とは、異種の熱可塑性樹脂で構成されている。
【0066】
接合層4は、アンカー効果を発揮できる素材で構成されるものであれば特に限定されない。接合層4の素材として、例えば、ジュート、ガラス繊維不織布、スパンボンド不織布、多孔質構造を有する発泡樹脂等が挙げられる。一例として、接合層4にスパンボンド不織布が用いられた場合について説明する。後述する成形型60(上型61、下型62),90(上型91、下型92)を用いたコールドプレス成形において、軟化点以上の状態とされたコールドプレス成形層3の母材の熱とプレス加工時の圧力とにより、表面層2におけるコールドプレス成形層3と対向する側の一部、及びコールドプレス成形層3の母材における表面層2と対向する側の一部は、それぞれ溶融状態でスパンボンド不織布の繊維間隙に入り込み、その後、冷却固化することでアンカー効果により表面層2とコールドプレス成形層3とが接合層4(スパンボンド不織布)を介して強固に一体化される。表面層2とコールドプレス成形層3とが異種の材料である場合、両者の接合が上手くいかないことがあるが、こうして、接合層4を介在させることにより、表面層2とコールドプレス成形層3とが異種の材料であっても、表面層2とコールドプレス成形層3とを接合層4を介して強固に一体化することができる。
【0067】
<床材の具体例(1)>
図4は、本発明が適用される床材の具体例(1)を示し、(a)は階段用床材の全体斜視図、(b)は(a)のA-A線断面の要部拡大図である。図4(a)に示す階段用床材31は、平面視矩形状の枚葉状に形成された表面層32(図中網掛けハッチングを付した部分)と、表面層32を下側から支持するコールドプレス成形層33とを備えている。
【0068】
<表面層>
図4(b)に示すように、表面層32は、前記表面層2の表面(上面)に木目模様を模した凹凸加工を施すことにより形成される複数の凹部35と凸部36とを有している。主として、凹部35及び凸部36が、木目調の凹凸模様を構成する。
【0069】
凹部35には、当該凹部35と凸部36との境界部から当該凹部35の底部に向かって下方に傾斜する傾斜面が形成されている。凹部35は、光沢性が低く、粗面的な触感を有する。一方、凸部36の表面は、光沢性が高く、且つ鏡面的な触感を有する。これにより、凸部36の表面は、天然木の晩材の外観及び触感に類似しており、凹部35の表面は、天然木の早材の外観及び触感に類似している。こうして、表面層32には、天然木の木目が再現されており、触感においても天然木に近いものとなっている。
【0070】
<コールドプレス成形層>
コールドプレス成形層33は、第一実施形態に係るコールドプレス成形層3において、階段の踏み面に敷設される踏み面敷設部41と、階段の蹴上げ面の少なくとも上部に敷設される蹴上げ面敷設部42と、階段の段鼻部に敷設される段鼻敷設部43とを備える。
【0071】
踏み面敷設部41の上面には、表面層32が一体的に載置されている。踏み面敷設部41と段鼻敷設部43とは、水平方向に連続するように一体的に配設されている。また、段鼻敷設部43と蹴上げ面敷設部42とは、略直交するように一体的に配設されている。コールドプレス成形層33は、表面層32が積層される積層面を有する踏み面敷設部41に対して、垂直方向に延びる部分(蹴上げ面敷設部42)と、水平方向に張り出された部分(段鼻敷設部43)とを含む立体構造を有している。
【0072】
段鼻敷設部43には、複数の溝状凹部45と複数の筋状凸部46とが形成されている。これら溝状凹部45と筋状凸部46とによって凹凸部50が構成される。溝状凹部45及び筋状凸部46は、段鼻敷設部43から踏み面敷設部41に向かう方向と直交する水平方向に延設される。溝状凹部45及び筋状凸部46は、段鼻敷設部43から踏み面敷設部41に向かう方向に交互に並ぶように配置される。溝状凹部45の深さは、表面層32の厚みと同じ又はそれ以上に設定される。踏み面敷設部41の上面を基準面とした場合の筋状凸部46の突出長さは、表面層32の厚みと同じ又はそれ以上に設定される。
【0073】
蹴上げ面敷設部42は、階段の蹴上げ面の少なくとも上部に掛かるようにするため、踏み面敷設部41から下方への突出長さが、表面層32の厚みの、2~12倍、好ましくは4~10倍、より好ましくは6~8倍に設定される。
【0074】
<階段用床材の成形型>
図5は、階段用床材を成形するための成形型を示し、(a)は離型状態図、(b)は型締め状態図である。図5(a)に示すように、階段用床材31を成形するための成形型60は、凸部61aを有する上型61と、凸部61aに対応する凹部62aを有する下型62とを備え、図5(b)に示すような型締め状態において、凸部61aと凹部62aとが組み合わされたときに、凸部61aと凹部62aとの間に階段用床材31を成形するための成形キャビティ65が形成される。
【0075】
図5(a)に示すように、上型61は、軟化点以上の状態とされたコールドプレス成形層33の母材を押圧するための押圧面66を有する。上型61には、コールドプレス成形層33における蹴上げ面敷設部42(図4(a)を参照)を成形するための切欠き部67が形成されている。下型62は、凹部62a内において表面層32(図4(a)を参照)が載置可能な表面層載置部68を有する。下型62には、コールドプレス成形層33における凹凸部50(図4(a)を参照)を成形するための凹凸部成形部69が表面層載置部68に隣接するように形成されている。
【0076】
<階段用床材の製造方法>
図6は、階段用床材の製造方法の手順を示し、(a)は表面層配置工程の説明図、(b)は熱可塑性樹脂配置工程の説明図、(c)はプレス工程の説明図、(d)は回収工程の説明図である。
【0077】
[表面層配置工程]
まず、図6(a)に示すように、下型62の上方に上型61が位置して成形型60が開いた状態において、表面層32の上面を下方に、下面を上方に向けて、天地を逆転させた状態の表面層32を、下型62の表面層載置部68に配置する。この表面層配置工程は、本発明の「第一配置工程」に相当する。
【0078】
[熱可塑性樹脂配置工程]
次いで、図6(b)に示すように、天地逆転状態で表面層載置部68に載置された表面層32の上に、可塑状態にしたコールドプレス成形層33の母材である熱可塑性樹脂33Mを配置する。なお、ここでの「可塑」とは、熱可塑性樹脂33Mをその軟化点よりも高い可塑化温度(例えば、ポリ塩化ビニルの場合、軟化点(90~200℃)+(10~30℃)程度)となるように熱を加えて流動可能な状態にすることを意味する。この熱可塑性樹脂配置工程は、本発明の「第二配置工程」に相当する。
【0079】
[プレス工程]
次いで、例えば、上型61及び下型62のそれぞれに冷却水を循環させる等の冷却手段(図示省略)により、上型61と下型62とを冷却しながら、図6(c)に示すように、下型62に対し上型61を下降させて型締め状態とし、成形型60の内容物である表面層32と可塑状態の熱可塑性樹脂33M(コールドプレス成形層33の母材)とを、熱可塑性樹脂33Mの軟化点より低い温度、例えば常温ないし常温付近でプレスする。このプレス工程におけるプレス圧は、0.1~20MPaであり、好ましくは0.2~15MPaであり、より好ましくは0.5~10MPaである。なお、「常温」とは、JIS Z8703によれば、20℃±15℃、すなわち5~35℃とされているが、「常温ないし常温付近」は「常温」よりも広い温度範囲を含み得るものであり、例えば20~50℃とすることができる。プレス圧が0.1MPa未満の場合、熱可塑性樹脂33Mを成形キャビティ65の全体に充填できずに成形不良となる虞がある。プレス圧が20MPaを超える場合、離型性が悪化する虞がある。
【0080】
プレス工程において、上型61の凸部61aで押圧された熱可塑性樹脂33Mは、表面層32上で押し広げられ、その一部が下型62の凹凸部成形部69に充填されるとともに、残部が上型61の切欠き部67と下型62の凹部62aとの間に充填される。こうして、プレス工程の進行に伴ってコールドプレス成形層33の成形が進行する。また、コールドプレス成形層33の成形途中において、コールドプレス成形層33と表面層32との境界は、軟化点以上(可塑化温度)の状態とされた熱可塑性樹脂33Mの熱とプレス加工時の圧力とによる熱融着によって一体化される。
【0081】
表面層32の表面側(図6(a)~(c)においては図の下側)は、プレス加工時の圧力が作用するものの下型62によって冷却されている。このため、表面層32の表面側の熱変形が抑えられ、表面層32の表面側に付与された柄や凹凸模様(本例の場合、木目調の凹凸模様)が潰れずに残る。また、表面層32が木目の意匠層を有する場合であっても、柄が熱変形によって変形することがない。コールドプレス成形層33においては、可塑化温度の状態とされた母材(熱可塑性樹脂33M)が成形キャビティ65(図5(b)を参照)の形状に沿って広がり、成形型60(主として、上型61)による冷却によって固化することで成形キャビティ65の形状に応じた形に成形される。従って、高い意匠性と立体感のある自由な成形性とを両立することができる。
【0082】
[回収工程]
プレス工程が完了したら、図6(d)に示すように、下型62に対し上型61を上昇させて成形型60を開き、積層成形体(階段用床材31)を、成形型60から取り出して回収する。このとき、成形型60からの積層成形体の離型を容易にするため、成形型60に振動を与えたり、積層成形体をエアーで吸引したりしてもよい。
【0083】
[接合層配置工程]
図10(a)は、階段用床材の製造方法に係る接合層配置工程の説明図である。上記の階段用床材31の製造方法は、表面層32とコールドプレス成形層33とが同種の熱可塑性樹脂で構成される場合に適用されるものである。表面層32とコールドプレス成形層33とが異種の熱可塑性樹脂で構成される場合には、上記の表面層配置工程と熱可塑性樹脂配置工程との間に、接合層配置工程が追加される。接合層配置工程においては、上記の表面層配置工程によって天地逆転状態で表面層載置部68上に載置された表面層32の上に、アンカー効果を発揮する接合層4が配置される。その後、熱可塑性樹脂配置工程において、接合層4の上に、可塑状態にした熱可塑性樹脂33M(図6(b)を参照)が配置される。
【0084】
接合層4として、スパンボンド不織布が用いられた場合について説明する。成形型60を用いたコールドプレス成形のプレス工程において、軟化点以上の状態とされた熱可塑性樹脂33Mの熱とプレス加工時の圧力とにより、表面層32における熱可塑性樹脂33Mと対向する側の一部、及び熱可塑性樹脂33Mにおける表面層32と対向する側の一部は、それぞれ溶融状態でスパンボンド不織布の繊維間隙に入り込み、その後、冷却固化することでアンカー効果により表面層32とコールドプレス成形層33とが接合層4(スパンボンド不織布)を介して強固に一体化される。こうして、接合層4を介在させることにより、表面層32とコールドプレス成形層33とが異種の材料であっても、表面層32とコールドプレス成形層33とを接合層4を介して強固に一体化することができる。なお、接合層4は、予め表面層32の最裏面に積層しておいてもよい。
【0085】
<床材の具体例(2)>
図7は、本発明が適用される床材の具体例(2)を示し、(a)は玄関用床材の全体斜視図、(b)は(a)のB-B線切断端面の要部拡大図である。図7(a)に示す玄関用床材71は、平面視矩形状の枚葉状に形成された表面層72と、表面層72を下側から支持するコールドプレス成形層73とを備えている。
【0086】
<表面層>
図7(b)に示すように、表面層72は、後述するコールドプレス成形工程の実施によって形成される複数の凹部75と複数の凸部76とを有している。複数の凹部75と複数の凸部76とは、縦横に隣接して配置されている。複数の凹部75は、隣接する凸部76の間に形成されている。複数の凹部75と複数の凸部76とは、全体としてタイル調の凹凸模様を構成する。
【0087】
[凸部]
複数の凸部76は、平面視略正方形状に形成されている。なお、本明細書において、平面視は、表面層72の表面に対して鉛直方向から見ることをいい、平面視形状は、平面視での輪郭をいう。複数の凸部76は、その平面視形状の大きさが全て同じで、縦横に等間隔で規則的に配置されている。これにより、玄関用床材71の排水性及び防滑性が場所によってバラつくことを防ぐことができる。
【0088】
各凸部76は、突出端に略平坦な頂面を有している。頂面には、意匠性及び防滑性を高めるため、平面視格子網状に突出される網状凸部78が形成されている。網状凸部78は、格子網状の凹凸模様を構成する。
【0089】
[凹部]
複数の凹部75は連続して排水溝79を構成しており、この排水溝79は、各凸部76を取り囲むように平面視格子状に形成されている。
【0090】
<コールドプレス成形層>
図7(a)及び(b)に示すように、コールドプレス成形層73は、排水部80に向けて所定の排水勾配が付された矩形状の床面敷設部81と、床面敷設部81から排水部80に向けて水平方向に張り出される張出部82と、床面敷設部81における張出部82が設けられる側の一辺部を除く残りの三辺部のそれぞれの部分に立設される止水板部83とを備えている。図7(b)に示すように、床面敷設部81の上面には、表面層72が一体的に載置されている。
【0091】
図7(b)に示すように、止水板部83の外側には、床面敷設部81の上面に対し垂直方向、すなわち鉛直方向に真っ直ぐ延びる垂直面83aが形成されている。止水板部83の内側には、床面敷設部81の上面から離れる方向、すなわち上方に向かって外側に傾斜する傾斜面83bが形成されている。
【0092】
コールドプレス成形層73は、積層面に対して垂直方向ないし水平方向に形成された立体構造を有する。すなわち、コールドプレス成形層73は、表面層72が積層される積層面を有する床面敷設部81に対して、垂直方向に延びる部分(止水板部83の垂直面83a)と、水平方向に張り出された部分(張出部82)と、斜めに延びる部分(止水板部83の傾斜面83b)とを含む立体構造を有している。このように、本発明では、自由な立体構造の床材を成形することができる。特に、3つの垂直面83が表面層72を三方から取り囲むような立体構造を有しており、これは押出成形では得られない立体構造である。
【0093】
<玄関用床材の成形型>
図8は、玄関用床材を成形するための成形型を示し、(a)は離型状態図、(b)は型締め状態図である。図8(a)に示すように、成形型は、凸部91aを有する上型91と、凸部91aに対応する凹部92aを有する下型92とを備え、図8(b)に示すような型締め状態において、凸部91aと凹部92aとが図のように組み合わされたときに、凸部91aと凹部92aとの間に玄関用床材71を成形するための成形キャビティ95が形成される。
【0094】
上型91は、軟化点以上の状態とされたコールドプレス成形層73の母材を押圧するための押圧面96を有している。下型92は、凹部92a内において表面層72が載置可能な表面層載置部98を有している。下型92には、コールドプレス成形層73における止水板部83(図7(a)及び(b)を参照)を成形するための止水板部成形部99が表面層載置部98に隣接するように形成されている。
【0095】
<玄関用床材の製造方法>
図9は、玄関用床材を成形する製造方法の手順を示し、(a)は表面層配置工程の説明図、(b)は熱可塑性樹脂配置工程の説明図、(c)はプレス工程の説明図、(d)は回収工程の説明図である。
【0096】
[表面層配置工程]
まず、図9(a)に示すように、下型92の上方に上型91が位置して成形型90が開いた状態において、表面層72の上面を下方に、下面を上方に向けて、天地を逆転させた状態の表面層72を、下型92の表面層載置部98に配置する。この表面層配置工程は、本発明の「第一配置工程」に相当する。
【0097】
[熱可塑性樹脂配置工程]
次いで、図9(b)に示すように、天地逆転状態で表面層載置部98に載置された表面層72の上に、可塑状態にしたコールドプレス成形層73の母材である熱可塑性樹脂73Mを配置する。この熱可塑性樹脂配置工程は、本発明の「第二配置工程」に相当する。
【0098】
[プレス工程]
次いで、例えば、上型91及び下型92のそれぞれに冷却水を循環させる等の冷却手段(図示省略)により、上型91と下型92とを冷却しながら、図9(c)に示すように、下型92に対し上型91を下降させて型締めし、成形型90の内容物である表面層72と可塑状態の熱可塑性樹脂73M(コールドプレス成形層73の母材)とを、熱可塑性樹脂73Mの軟化点より低い温度、例えば常温ないし常温付近でプレスする。このプレス工程におけるプレス圧は、0.1~20MPaであり、好ましくは0.2~15MPaでり、より好ましくは0.5~10MPaである。プレス圧が0.1MPa未満の場合、熱可塑性樹脂73Mを成形キャビティ95の全体に充填できずに成形不良となる虞がある。プレス圧が20MPaを超える場合、離型性が悪化する虞がある。
【0099】
プレス工程において、上型91の凸部91aで押圧された熱可塑性樹脂73Mは、表面層72上で押し広げられ、その一部が下型92の止水板部成形部99に充填される。こうして、プレス工程の進行に伴ってコールドプレス成形層73の成形が進行する。また、コールドプレス成形層73の成形途中において、熱可塑性樹脂73Mと表面層72との境界は、軟化点以上(可塑化温度)の状態とされた熱可塑性樹脂73Mの熱とプレス加工時の圧力とによる熱融着によって一体化される。
【0100】
表面層72の表面側(図9(a)~(c)においては図の下側)は、プレス加工時の圧力が作用するものの下型92によって冷却されている。このため、表面層72の表面側の熱変形が抑えられ、表面層72の表面側に付与された柄や凹凸模様(本例の場合、タイル調の凹凸模様や、格子網状の凹凸模様)が潰れずに残る。コールドプレス成形層73においては、可塑化温度の状態とされた熱可塑性樹脂73Mが成形キャビティ95の形状に沿って広がり、成形型90(主として、上型91)による冷却によって固化することで成形キャビティ95の形状に応じた形に成形される。従って、高い意匠性と立体感のある自由な成形性とを両立することができる。
【0101】
[回収工程]
プレス工程が完了したら、図9(d)に示すように、下型92に対し上型91を上昇させて成形型90を開き、プレス工程により形成された積層成形体(玄関用床材71)を、成形型90から取り出して回収する。
【0102】
[接合層配置工程]
図10(b)は、玄関用床材の製造方法に係る接合層配置工程の説明図である。上記の玄関用床材71の製造方法は、表面層72とコールドプレス成形層73とが同種の熱可塑性樹脂で構成される場合に適用されるものである。表面層72とコールドプレス成形層73とが異種の熱可塑性樹脂で構成される場合には、上記の表面層配置工程と熱可塑性樹脂配置工程との間に、接合層配置工程が実施される。接合層配置工程においては、上記の表面層配置工程によって天地逆転状態で表面層載置部98に載置された表面層72の上に、アンカー効果を発揮する接合層4が配置される。その後、熱可塑性樹脂配置工程において、接合層4の上に、可塑状態にした熱可塑性樹脂73M(図9(b)を参照)が配置される。
【0103】
接合層4として、スパンボンド不織布が用いられた場合について説明する。成形型90を用いたコールドプレス成形のプレス工程において、軟化点以上の状態とされた熱可塑性樹脂73Mの熱とプレス加工時の圧力とにより、表面層72における熱可塑性樹脂73Mと対向する側の一部、及び熱可塑性樹脂73Mにおける表面層72と対向する側の一部は、それぞれ溶融状態でスパンボンド不織布の繊維間隙に入り込み、その後、冷却固化することでアンカー効果により表面層72とコールドプレス成形層73とが接合層4(スパンボンド不織布)を介して強固に一体化される。こうして、接合層4を介在させることにより、表面層72とコールドプレス成形層73とが異種の材料であっても、表面層72とコールドプレス成形層73とを強固に一体化することができる。
【0104】
なお、表面層32,72の凹凸模様は、積層前に表面層32,72に付与されたものであることが好ましい。上述したように表面層32,72とコールドプレス成形層33,73とを一体化するように積層する工程においては、コールドプレス成形層33,73を成形するためのプレス加工が実施される。このプレス加工は、積層前に予め表面層32,72に付与された凹凸模様を成形型60,90に接触させて行われる。このとき、凹凸模様にはプレス加工時の圧力が作用するものの、凹凸模様は成形型60,90によって冷却されている。このため、凹凸模様が積層前に予め表面層32,72に付与されたものであっても、凹凸模様の熱変形を抑えることができ、凹凸模様の形態を維持することができる。床材31,71によれば、プレス加工を実施した後において、表面層32,72に、例えばエンボス加工等によって凹凸模様を付与する工程を実施しなくても済むため、生産効率を高めることができる。
【0105】
〔別実施形態〕
本発明は、上記の各実施形態(変形例を含む)にかかる床材の構成を一部改変して実施することも可能である。そのような改変例を以下に別実施形態として説明する。
【0106】
<別実施形態1>
上記の第二実施形態において、本発明が適用される床材の具体例(1)として、段鼻敷設部43と蹴上げ面敷設部42とが略直交する階段用床材を示したが、段鼻敷設部43と蹴上げ面敷設部42との接続形態は種々変更可能である。例えば、図4において、段鼻敷設部43と蹴上げ面敷設部42との接続箇所に湾曲を持たせ、コールドプレス成形層33の全体が角の無い丸みを帯びた形状(図示せず)となるように構成することもできる。また、段鼻敷設部43に形成される複数の溝状凹部45及び筋状凸部46からなる凹凸部50についても、長手方向に沿って湾曲させたり、凹凸の角を面取りするなどすれば、丸みを帯びた柔らかい印象を際立たせることができる。
【0107】
<別実施形態2>
上記の第二実施形態において、本発明が適用される床材の具体例(2)として、床面敷設部81と張出部82と止水板部83とを備えたコールドプレス成形層73を有する玄関用床材を示したが、コールドプレス成形層73は、床材(フローリング)の框を含むように構成することもできる。例えば、図7において、コールドプレス成形層73の止水板部83を垂直方向にさらに延ばし、これを図示しない床材(フローリング)の縁部に接続するようにすれば、コールドプレス成形層73の止水板部83が床材(フローリング)の框として機能し得るものとなる。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は、硬質で立体的な形成が可能なコールドプレス形成層と柔軟で微細な凹凸構造を有して意匠性に優れる表層とを強固に一体化することができる。このため、本発明は、広く建築業界、リフォーム業界等で利用可能な技術であり、例えば、一般住宅、集合住宅、マンション、商業モール、オフィスビル、工場、店舗、駅、学校、病院、公共施設等の各種建造物において、床面を施工する場面で特に有用である。
【符号の説明】
【0109】
1A,1B 床材
2,2A,2B 表面層
3 コールドプレス成形層
4 接合層
31 階段用床材
32 階段用床材の表面層
33 階段用床材のコールドプレス成形層
35 凹部(木目調の凹凸模様)
36 凸部(木目調の凹凸模様)
37 短繊維含有樹脂層(木目調の凹凸模様)
42 蹴上げ面敷設部(立体構造)
43 段鼻敷設部(立体構造)
60 成形型(階段用床材成形用)
71 玄関用床材
72 玄関用床材の表面層
73 玄関用床材のコールドプレス成形層
75 凹部(タイル調の凹凸模様)
76 凸部(タイル調の凹凸模様)
78 網状凸部(格子網状の凹凸模様)
82 張出部(立体構造)
83 止水板部(立体構造)
90 成形型(玄関用床材成形用)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10