(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物、タイヤ用トレッドゴム、及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 9/00 20060101AFI20240823BHJP
C08L 7/00 20060101ALI20240823BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240823BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20240823BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20240823BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
C08L9/00
C08L7/00
C08K3/04
C08K3/36
C08K3/22
B60C1/00 A
(21)【出願番号】P 2020163897
(22)【出願日】2020-09-29
【審査請求日】2023-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【氏名又は名称】冨田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 祐貴
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/178232(WO,A1)
【文献】特開2015-232114(JP,A)
【文献】特表2009-500477(JP,A)
【文献】特開平11-181155(JP,A)
【文献】特開2012-193277(JP,A)
【文献】特開2020-180253(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08K
B60C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴムを含むゴム成分と、シリカと、カーボンブラックと、水酸化マグネシウムと、を含む、タイヤ用ゴム組成物であって、
前記シリカと前記カーボンブラックとの総含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して60質量部より多く、
前記シリカの割合が、当該シリカと前記カーボンブラックとの総含有量中、80質量%以上100質量%未満であり、
前記水酸化マグネシウムの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して1質量部以上であ
り、
前記ジエン系ゴムとして、天然ゴム、合成イソプレンゴムの少なくとも1種を、前記ゴム成分100質量部中10質量部以上含み、
前記水酸化マグネシウムの平均粒径と前記シリカの平均粒径とが、下記式(1):
0.2<水酸化マグネシウムの平均粒径/シリカの平均粒径<15
の関係を満たすことを特徴とする、タイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記水酸化マグネシウムは、平均粒径が0.2~1.2μmである、請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記水酸化マグネシウムは、平均粒径が0.4~0.9μmである、請求項2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
前記シリカの割合が、当該シリカと前記カーボンブラックとの総含有量中、90質量%以上100質量%未満である、請求項1~3のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
更に、前記ジエン系ゴムとして、スチレン-ブタジエンゴム、ブタジエンゴムから選ばれる少なくとも1種を含む、請求項
1~4のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物からなることを特徴とする、タイヤ用トレッドゴム。
【請求項7】
請求項
6に記載のタイヤ用トレッドゴムを具えることを特徴とする、タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物、タイヤ用トレッドゴム、及びタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用タイヤでは、走行安全性を確保するために、湿潤路面におけるウェットグリップ性能について、高水準の性能が要求されている。また、近年、環境問題への関心の高まりに伴う世界的な二酸化炭素排出の規制の動きに関連して、自動車の低燃費化に関する要求が高まりつつある。
かかる高水準の性能を確保するため、ゴム組成物の組成やタイヤ形状等の観点から、様々な技術が提案されている。例えば、ゴム組成物の組成について調整を図る技術としては、タイヤのウェットグリップ性能及び耐摩耗性の両性能をバランスよく両立させるために、アルミナ水和物、水酸化アルミニウム等の無機充填剤を、タイヤ用ゴム組成物に用いる技術が提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者らが検討したところ、上記特許文献1に開示された技術は、ウェットグリップ性能及び耐摩耗性のバランスを図れるものの、低ロス性(低燃費性)の観点で、未だ改善の余地があることが分かった。
【0005】
そこで、本発明は、上記従来技術の問題を解決し、タイヤのウェットグリップ性能と、低ロス性と、を向上させることが可能なタイヤ用ゴム組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、タイヤのウェットグリップ性能と、低ロス性と、を向上させることが可能なタイヤ用トレッドゴム、並びに、ウェットグリップ性能と、低ロス性と、に優れるタイヤを提供することを更なる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明の要旨構成は、以下の通りである。
【0007】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ジエン系ゴムを含むゴム成分と、シリカと、カーボンブラックと、水酸化マグネシウムと、を含む、タイヤ用ゴム組成物であって、
前記シリカと前記カーボンブラックとの総含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して60質量部より多く、
前記シリカの割合が、当該シリカと前記カーボンブラックとの総含有量中、80質量%以上100質量%未満であり、
前記水酸化マグネシウムの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して1質量部以上であることを特徴とする。
かかる本発明のタイヤ用ゴム組成物は、タイヤに適用することで、タイヤのウェットグリップ性能と、低ロス性と、を向上させることができる。
【0008】
本発明のタイヤ用ゴム組成物において、前記水酸化マグネシウムは、平均粒径が0.2~1.2μmであることが好ましい。この場合、タイヤ用ゴム組成物のウェットグリップ性能が更に向上する。
【0009】
ここで、前記水酸化マグネシウムは、平均粒径が0.4~0.9μmであることが更に好ましい。この場合、タイヤ用ゴム組成物のウェットグリップ性能がより一層向上する。
【0010】
本発明のタイヤ用ゴム組成物の好適例においては、前記シリカの割合が、当該シリカと前記カーボンブラックとの総含有量中、90質量%以上100質量%未満である。この場合、該ゴム組成物を適用することで、タイヤのウェットグリップ性能が更に向上する。
【0011】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、前記ジエン系ゴムとして、天然ゴム、合成イソプレンゴムの少なくとも1種を、前記ゴム成分100質量部中10質量部以上含むことが好ましい。この場合、タイヤ用ゴム組成物の耐破壊性が向上する。
【0012】
ここで、本発明のタイヤ用ゴム組成物は、更に、前記ジエン系ゴムとして、スチレン-ブタジエンゴム、ブタジエンゴムから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。この場合、該ゴム組成物を適用することで、タイヤのウェットグリップ性能と低ロス性(低燃費性)とのバランスが更に良くなる。
【0013】
また、本発明のタイヤ用トレッドゴムは、上記のタイヤ用ゴム組成物からなることを特徴とする。かかる本発明のタイヤ用トレッドゴムは、タイヤのウェットグリップ性能と、低ロス性と、を向上させることができる。
【0014】
また、本発明のタイヤは、上記のタイヤ用トレッドゴムを具えることを特徴とする。かかる本発明のタイヤは、ウェットグリップ性能と、低ロス性と、に優れる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、タイヤのウェットグリップ性能と、低ロス性と、を向上させることが可能なタイヤ用ゴム組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、タイヤのウェットグリップ性能と、低ロス性と、を向上させることが可能なタイヤ用トレッドゴム、並びに、ウェットグリップ性能と、低ロス性(低燃費性)と、に優れるタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明のタイヤ用ゴム組成物、タイヤ用トレッドゴム、及びタイヤを、その実施形態に基づき、詳細に例示説明する。
【0017】
<タイヤ用ゴム組成物>
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ジエン系ゴムを含むゴム成分と、シリカと、カーボンブラックと、水酸化マグネシウムと、を含む。また、本発明のタイヤ用ゴム組成物においては、前記シリカと前記カーボンブラックとの総含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して60質量部より多く、前記シリカの割合が、当該シリカと前記カーボンブラックとの総含有量中、80質量%以上100質量%未満であり、前記水酸化マグネシウムの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して1質量部以上である。
【0018】
本発明のタイヤ用ゴム組成物においては、シリカがウェットグリップ性能と低ロス性との向上に寄与する。また、ゴム組成物がカーボンブラックを含むことで、耐摩耗性を確保でき、更に、ゴム組成物が水酸化マグネシウムを1質量部以上含むことで、ウェットグリップ性能を向上させることができる。また、シリカとカーボンブラックとの総含有量が、ゴム成分100質量部に対して60質量部より多いことで、ゴム組成物の貯蔵弾性率(E’)が向上して、ウェットグリップ性能と低ロス性とのバランスが良くなる。更に、シリカとカーボンブラックとの総含有量中のシリカの割合が80質量%以上であることで、ウェットグリップ性能が向上する。
従って、シリカとカーボンブラックと水酸化マグネシウムとを含み、シリカとカーボンブラックとの総含有量、シリカの割合、及び水酸化マグネシウムの含有量が特定の範囲にある本発明のタイヤ用ゴム組成物は、タイヤのウェットグリップ性能と、低ロス性と、を向上させることができる。
【0019】
(ゴム成分)
本発明のタイヤ用ゴム組成物のゴム成分は、ジエン系ゴムを含む。ゴム成分100質量部中のジエン系ゴムの含有量は、80質量部以上が好ましく、90質量部以上が更に好ましく、100質量部であることが特に好ましい。該ゴム成分は、ジエン系ゴム以外のゴムを含んでもよいが、ジエン系ゴムのみからなることが好ましい。
【0020】
前記ジエン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)でもよいし、合成ジエン系ゴムでもよく、また、両者を含んでもよい。ここで、合成ジエン系ゴムとしては、合成イソプレンゴム(IR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-イソプレンゴム(SIR)、クロロプレンゴム(CR)等が挙げられる。
前記ジエン系ゴムは、1種単独でもよいし、2種以上のブレンドでもよい。
【0021】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、前記ジエン系ゴムとして、天然ゴム、合成イソプレンゴムの少なくとも1種を、前記ゴム成分100質量部中10質量部以上含むことが好ましい。この場合、ゴム組成物の耐久性が向上し、耐破壊性が向上する。
【0022】
ここで、本発明のタイヤ用ゴム組成物は、更に、前記ジエン系ゴムとして、スチレン-ブタジエンゴム、ブタジエンゴムから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。この場合、ジエン系ゴムとシリカとの親和性が良くなり、シリカの分散性が向上するため、ウェットグリップ性能と低ロス性とのバランスが更に良くなる。
【0023】
本発明のタイヤ用ゴム組成物のゴム成分は、天然ゴムと、スチレン-ブタジエンゴムと、を含むことが好ましい。ゴム成分が天然ゴム及びスチレン-ブタジエンゴムを含む場合、タイヤのウェットグリップ性能と、低ロス性と、を向上させる効果が更に大きくなる。
また、天然ゴム(NR)と、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)と、の質量比(NR/SBR)は、40/60~60/40の範囲が好ましい。天然ゴムとスチレン-ブタジエンゴムとの質量比(NR/SBR)がこの範囲であると、天然ゴムとスチレン-ブタジエンゴムの両方の効果が十分に発揮され、タイヤのウェットグリップ性能と、低ロス性と、を向上させる効果が特に大きくなる。
【0024】
前記ジエン系ゴムは、未変性のゴムでもよいし、変性されているゴムでもよい。
前記ジエン系ゴムが変性されている場合、該ジエン系ゴムは、下記一般式(I)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物、下記一般式(II)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物、下記一般式(III)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物、下記一般式(IV)で表されるカップリング剤、下記一般式(V)で表されるカップリング剤、下記一般式(VI)で表されるリチオアミン、及び、ビニルピリジンからなる群より選択される少なくとも一種によって変性されていることが好ましい。
【0025】
【化1】
上記一般式(I)中、q1+q2=3(但し、q1は0~2の整数であり、q2は1~3の整数である。)である。
R
11は、炭素数1~20の二価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の二価の芳香族炭化水素基である。
R
12及びR
13は、それぞれ独立して、加水分解性基、炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基である。
R
14は、炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、q1が2の場合には同一でも異なっていてもよい。
R
15は、炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、q2が2以上の場合には同一でも異なっていてもよい。
【0026】
【化2】
上記一般式(II)中、r1+r2=3(但し、r1は1~3の整数であり、r2は0~2の整数である。)である。
R
21は、炭素数1~20の二価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の二価の芳香族炭化水素基である。
R
22は、ジメチルアミノメチル基、ジメチルアミノエチル基、ジエチルアミノメチル基、ジエチルアミノエチル基、メチルシリル(メチル)アミノメチル基、メチルシリル(メチル)アミノエチル基、メチルシリル(エチル)アミノメチル基、メチルシリル(エチル)アミノエチル基、ジメチルシリルアミノメチル基、ジメチルシリルアミノエチル基、炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、r1が2以上の場合には同一でも異なっていてもよい。
R
23は、炭素数1~20のヒドロカルビルオキシ基、炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、r2が2の場合には同一でも異なっていてもよい。
【0027】
【化3】
上記一般式(III)中、A
3は、(チオ)エポキシ、(チオ)イソシアネート、(チオ)ケトン、(チオ)アルデヒド、イミン、アミド、イソシアヌル酸トリヒドロカルビルエステル、(チオ)カルボン酸エステル、(チオ)カルボン酸の金属塩、カルボン酸無水物、カルボン酸ハロゲン化物及び炭酸ジヒドロカルビルエステルから選ばれる少なくとも1種の官能基を有する一価の基である。ここで、「(チオ)エポキシ」とは、エポキシ及びチオエポキシを指し、「(チオ)インシアネート」とは、インシアネート及びチオインシアネートを指し、「(チオ)ケトン」とは、ケトン及びチオケトンを指し、「(チオ)アルデヒド」とは、アルデヒド及びチオアルデヒドを指し、「(チオ)カルボン酸エステル」とは、カルボン酸エステル及びチオカルボン酸エステルを指し、「(チオ)カルボン酸の金属塩」とは、カルボン酸の金属塩及びチオカルボン酸の金属塩を指す。
R
31は、単結合又は二価の不活性炭化水素基であり、該二価の不活性炭化水素基は、炭素数が1~20であることが好ましい。
R
32及びR
33は、それぞれ独立に炭素数1~20の一価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基を示し、nは0から2の整数であり、R
32が複数ある場合、複数のR
32は同一でも異なっていてもよく、OR
33が複数ある場合、複数のOR
33は同一でも異なっていてもよい。
また、一般式(III)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物の分子中には、活性プロトン及びオニウム塩は含まれない。
【0028】
一般式(III)において、A3における官能基の中で、イミンはケチミン、アルジミン、アミジンを包含し、(チオ)カルボン酸エステルは、アクリレートやメタクリレート等の不飽和カルボン酸エステルを包含する。また、(チオ)カルボン酸の金属塩の金属としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Al、Sn、Zn等を挙げることができる。
R31のうちの二価の不活性炭化水素基としては、炭素数1~20のアルキレン基を好ましく挙げることができる。該アルキレン基は、直鎖状、枝分かれ状、環状のいずれであってもよいが、特に直鎖状のものが好適である。該直鎖状のアルキレン基の例としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基、ドデカメチレン基、等が挙げられる。
R32及びR33としては、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~18のアルケニル基、炭素数6~18のアリール基、炭素数7~18のアラルキル基等を挙げることができる。ここで、上記アルキル基及びアルケニル基は、直鎖状、枝分かれ状、環状いずれであってもよく、その例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビニル基、プロペニル基、アリル基、へキセニル基、オクテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、等が挙げられる。また、該アリール基は、芳香環上に低級アルキル基等の置換基を有していてもよく、その例として、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等が挙げられる。さらに、該アラルキル基は、芳香環上に低級アルキル基等の置換基を有していてもよく、その例としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
nは0~2の整数であるが、0が好ましく、また、この分子中には活性プロトン及びオニウム塩を有しないことが必要である。
【0029】
上記一般式(III)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物としては、例えば(チオ)エポキシ基含有ヒドロカルビルオキシシラン化合物として、2-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、2-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、(2-グリシドキシエチル)メチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル(メチル)ジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)トリメトキシシラン及びこれらの化合物におけるエポキシ基をチオエポキシ基に置き換えたものを好ましく挙げることができるが、これらの中でも、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及び2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)トリメトキシシランが特に好適である。
また、イミン基含有ヒドロカルビルオキシシアン化合物として、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(1-メチルエチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-エチリデン-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(1-メチルプロピリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(4-N,N-ジメチルアミノベンジリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(シクロヘキシリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン及びこれらのトリエトキシシリル化合物に対応するトリメトキシシリル化合物、メチルジエトキシシリル化合物、エチルジエトキシシリル化合物、メチルジメトキシシリル化合物、エチルジメトキシシリル化合物等を好ましく挙げることができるが、これらの中でも、N-(1-メチルプロピリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン及びN-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミンが特に好適である。
【0030】
【化4】
上記一般式(IV)中、R
41、R
42及びR
43は、それぞれ独立して単結合又は炭素数1~20のアルキレン基を示す。
R
44、R
45、R
46、R
47及びR
49は、それぞれ独立して炭素数1~20のアルキル基を示す。
R
48及びR
51は、それぞれ独立して炭素数1~20のアルキレン基を示す。
R
50は、炭素数1~20の、アルキル基又はトリアルキルシリル基を示す。
mは、1~3の整数を示し、pは、1又は2を示す。
R
41~R
51、m及びpは、複数存在する場合、それぞれ独立しており、i、j及びkは、それぞれ独立して0~6の整数を示し、但し、(i+j+k)は、3~10の整数である。
A
4は、炭素数1~20の、炭化水素基、又は、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子、硫黄原子及びリン原子からなる群から選択される少なくとも一種の原子を有し、活性水素を有しない有機基を示す。
【0031】
ここで、前記一般式(IV)で表されるカップリング剤は、テトラキス[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-1,3-プロパンジアミン、テトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミン、及びテトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサンからなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0032】
(R5)aZXb ・・・ (V)
上記一般式(V)中、Zは、スズ又はケイ素であり、Xは、塩素又は臭素である。
(R5)は、1~20個の炭素原子を有するアルキル、3~20個の炭素原子を有するシクロアルキル、6~20個の炭素原子を有するアリール、及び7~20個の炭素原子を有するアラルキルから成る群から選択される。ここで、(R5)として、具体的には、メチル基、エチル基、n-ブチル基、ネオフィル基、シクロヘキシル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基等が挙げられる。
aは0~3であり、bは1~4であるが、ここで、a+b=4である。
【0033】
上記一般式(V)で表されるカップリング剤としては、四塩化スズ、(R5)SnCl3、(R5)2SnCl2、(R5)3SnCl等が好ましく、それらの中でも四塩化スズが特に好ましい。
【0034】
(AM)Li(Q)
y ・・・ (VI)
上記一般式(VI)中、yは、0又は0.5~3であり、(Q)は、炭化水素、エーテル類、アミン類又はそれらの混合物から成る群から選択される可溶化成分であり、(AM)は、下記式(VII):
【化5】
[式(VII)中、R
71及びR
72は、それぞれ独立して、1~12の炭素原子を有する、アルキル、シクロアルキル又はアラルキル基を示す。]又は下記式(VIII):
【化6】
[式(VIII)中、R
81は、3~16のメチレン基を有するアルキレン、1~12個の炭素原子を有する線状若しくは分枝アルキル、シクロアルキル、ビシクロアルキル、アリール、アラルキルを置換基とする置換アルキレン、オキシジエチレン又はN-アルキルアミノ-アルキレン基を示す。]である。
【0035】
上記一般式(VI)のQが存在することによって、リチオアミンが炭化水素溶媒に可溶となる。また、Qには、3~約300の重合単位からなる重合度を有するジエニル若しくはビニル芳香族ポリマー類又はコポリマー類が含まれる。これらのポリマー類及びコポリマー類には、ポリブタジエン、ポリスチレン、ポリイソプレン及びそれらのコポリマー類が含まれる。Qの他の例としては、極性リガンド[例えば、テトラヒドロフラン(THF)、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)等]が挙げられる。
【0036】
上記一般式(VI)で表されるリチオアミンは、有機アルカリ金属との混合物とすることもできる。該有機アルカリ金属は、好適には、一般式:(R91)M、(R92)OM、(R93)C(O)OM、(R94)(R95)NM及び(R96)SO3Mで表される化合物から成る群から選択され、ここで、(R91)、(R92)、(R93)、(R94)、(R95)及び(R96)の各々は、約1~約12個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール及びフェニルから成る群から選択される。金属成分Mは、Na、K、Rb及びCsから成る群から選択される。好適にはMは、Na又はKである。
前記混合物は、好適には、該リチオアミン中のリチウム1当量当たり約0.5~約0.02当量から成る混合比で該有機アルカリ金属を含有することもできる。
【0037】
また、前記リチオアミンと有機アルカリ金属との混合物では、重合が不均一にならないようにする補助としてキレート剤を用いることができる。有用なキレート剤には、例えば、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、オキソラニル環状アセタール類及び環状オリゴマー状オキソラニルアルカン類等が挙げられる。特に好ましくは、環状オリゴマー状オキソラニルアルカン類が挙げられ、具体例としては、2,2-ビス(テトラヒドロフリル)プロパンが挙げられる。
【0038】
前記ビニルピリジンとしては、例えば、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン等が挙げられる。
【0039】
上述した種々の変性剤の中でも、N,N-ビス(トリメチルシリル)-3-[ジエトキシ(メチル)シリル]プロピルアミン、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-トリエトキシシリル-1-プロパンアミン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、テトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミン、四塩化スズ、ヘキサメチレンイミンとn-ブチルリチウムとの反応物、4-ビニルピリジン、並びに、2-ビニルピリジンが好ましい。
【0040】
また、本発明のタイヤ用ゴム組成物は、前記スチレン-ブタジエンゴムとして、スチレン結合量が15質量%以下のスチレン-ブタジエンゴムを含むことが更に好ましい。スチレン結合量が15質量%以下のスチレン-ブタジエンゴムを含むゴム組成物をタイヤに適用することで、タイヤのウェットグリップ性能を大幅に向上させることができる。
なお、本明細書において、スチレン-ブタジエンゴムのスチレン結合量は、1H-NMRスペクトルの積分比より求めることができる。
【0041】
(シリカ)
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、シリカを含む。タイヤ用ゴム組成物がシリカを含むことで、ウェットグリップ性能と、低ロス性(低ヒステリシスロス性)と、が向上する。また、低ロス性が向上することで、該ゴム組成物を適用したタイヤの低燃費性を向上させることができる。
【0042】
前記シリカとしては、例えば、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられる。これらシリカは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
前記シリカは、窒素吸着比表面積(BET値)が30~350m2/gであることが好ましく、70~300m2/gであることが更に好ましい。シリカの窒素吸着比表面積(BET値)が30m2/g以上であれば、ウェットグリップ性能が向上し、また、350m2/g以下であれば、低ロス性が向上する。また、シリカの窒素吸着比表面積(BET値)は、80~295m2/gがより好ましく、110~290m2/gがより好ましく、150~285m2/gがより好ましく、190~270m2/gが更に好ましい。
ここで、シリカの窒素吸着比表面積は、JIS K 6430:2008に従いBET法で測定した値である。
【0044】
前記シリカの含有量は、後述する「シリカとカーボンブラックとの総含有量」及び「シリカとカーボンブラックとの総含有量中のシリカの割合」を満たすように適宜選択される。一実施態様においては、シリカの含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して、50質量部以上であることが好ましく、また、100質量部以下であることが好ましい。
【0045】
(カーボンブラック)
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、カーボンブラックを含む。タイヤ用ゴム組成物がカーボンブラックを含むことで、耐摩耗性が向上する。
【0046】
前記カーボンブラックとしては、例えば、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAFグレードのカーボンブラックが挙げられる。これらの中でも、タイヤの耐摩耗性を向上させる観点から、ISAF、SAFグレードのカーボンブラックが好ましい。これらカーボンブラックは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0047】
前記カーボンブラックの含有量は、後述する「シリカとカーボンブラックとの総含有量」及び「シリカとカーボンブラックとの総含有量中のシリカの割合」を満たすように適宜選択される。一実施態様においては、カーボンブラックの含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましく、また、10質量部以下であることが好ましい。
【0048】
本発明のタイヤ用ゴム組成物において、前記シリカと前記カーボンブラックとの総含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して60質量部より多く、また、150質量部以下であることが好ましく、100質量部以下であることが更に好ましい。シリカとカーボンブラックとの総含有量が、ゴム成分100質量部に対して60質量部以下であると、ゴム組成物の貯蔵弾性率(E’)が十分に向上せず、ウェットグリップ性能と低ロス性とのバランスが悪化する。また、シリカとカーボンブラックとの総含有量が、ゴム成分100質量部に対して150質量部以下であると、低ロス性が更に向上する。
【0049】
本発明のタイヤ用ゴム組成物において、前記シリカの割合は、当該シリカと前記カーボンブラックとの総含有量中、80質量%以上100質量%未満であり、90質量%以上100質量%未満であることが好ましい。シリカとカーボンブラックとの総含有量中のシリカの割合が80質量%未満であると、ウェットグリップ性能が悪化する。一方、シリカとカーボンブラックとの総含有量中のシリカの割合が90質量%以上であると、ウェットグリップ性能が更に向上する。なお、耐摩耗性の観点から、シリカとカーボンブラックとの総含有量中のシリカの割合は、99質量%以下が好ましく、97質量%以下が更に好ましい(即ち、カーボンブラックの割合は、1質量%以上が好ましく、3質量%以上が更に好ましい)。
【0050】
(水酸化マグネシウム)
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、水酸化マグネシウムを含む。タイヤ用ゴム組成物が水酸化マグネシウムを含むことで、ウェットグリップ性能が向上する。
【0051】
前記水酸化マグネシウムは、平均粒径が0.2~1.2μmであることが好ましく、0.4~0.9μmであることが更に好ましい。水酸化マグネシウムの平均粒径が0.2~1.2μmであると、ゴム組成物のウェットグリップ性能が更に向上し、水酸化マグネシウムの平均粒径が0.4~0.9μmであると、ゴム組成物のウェットグリップ性能がより一層向上する。
また、前記水酸化マグネシウムの平均粒径と、前記シリカの平均粒径と、は、下記式(1):
0.2<水酸化マグネシウムの平均粒径/シリカの平均粒径<15
の関係を満たすことが好ましい。水酸化マグネシウムの平均粒径/シリカの平均粒径が0.2を超えると、水酸化マグネシウムに応力が十分に掛かり、脱離による表面粗化によるウェットグリップ性能の向上効果が十分に得られ、また、水酸化マグネシウムの平均粒径/シリカの平均粒径が15未満であると、ゴム組成物の貯蔵弾性率(E’)が更に向上して、ウェットグリップ性能と低ロス性とのバランスが更に良くなる。
ここで、本明細書において、シリカの平均粒径は、粒度分布計により光散乱法で測定される粒径の平均値であり、水酸化マグネシウムの平均粒径は、遠心沈降法で測定される粒径の平均値である。
【0052】
本発明のタイヤ用ゴム組成物において、前記水酸化マグネシウムの含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して1質量部以上であり、5質量部以上が好ましく、また、50質量部以下であることが好ましい。水酸化マグネシウムの含有量が、ゴム成分100質量部に対して1質量部未満であると、ウェットグリップ性能を向上させる効果が小さい。また、水酸化マグネシウムの含有量が、ゴム成分100質量部に対して50質量部以下であると、低ロス性が更に向上する。また、前記水酸化マグネシウムの含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して、5~50質量部の範囲が好ましく、6質量部以上がより好ましく、7質量部以上がより好ましく、7.5質量部以上がより好ましく、8部以上がより一層好ましく、また、37質量部以下がより好ましく、32質量部以下がより好ましく、27質量部以下がより好ましく、22質量部以下がより好ましく、17質量部以下がより一層好ましい。
【0053】
(その他の成分)
本発明のタイヤ用ゴム組成物には、上述したゴム成分、シリカ、カーボンブラック、水酸化マグネシウムの他、ゴム工業界で通常使用される配合剤、例えば、軟化剤、ステアリン酸、老化防止剤、シランカップリング剤、酸化亜鉛(亜鉛華)、加硫促進剤、加硫剤等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合してもよい。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。
【0054】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、シリカを含み、該シリカの効果を向上させるために、シランカップリング剤を含むことが好ましい。該シランカップリング剤としては、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド等が挙げられる。これらシランカップリング剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。該シランカップリング剤の含有量は、前記シリカ100質量部に対して2~20質量部の範囲が好ましく、5~15質量部の範囲が更に好ましい。
【0055】
前記加硫剤としては、硫黄等が挙げられる。該加硫剤の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して、硫黄分として0.1~10質量部の範囲が好ましく、1~4質量部の範囲が更に好ましい。
【0056】
前記加硫促進剤としては、チアゾール系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤等が挙げられる。これら加硫促進剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。該加硫促進剤の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して、0.1~5質量部の範囲が好ましく、0.2~3質量部の範囲が更に好ましい。
【0057】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、例えば、バンバリーミキサーやロール等を用いて、ゴム成分に、シリカ、カーボンブラック及び水酸化マグネシウムと、必要に応じて適宜選択した各種配合剤とを配合して混練した後、熱入れ、押出等することにより製造することができる。
【0058】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、タイヤのトレッドゴムを始めとする種々のタイヤ部材に利用できる。特には、本発明のタイヤ用ゴム組成物は、タイヤのトレッドゴムに好適である。
【0059】
<タイヤ用トレッドゴム>
本発明のタイヤ用トレッドゴムは、上記のタイヤ用ゴム組成物からなることを特徴とする。かかる本発明のタイヤ用トレッドゴムは、タイヤのウェットグリップ性能と、低ロス性と、を向上させることができる。
なお、本発明のタイヤ用トレッドゴムは、新品タイヤに適用してもよいし、更生タイヤに適用してもよい。
【0060】
<タイヤ>
本発明のタイヤは、上記のタイヤ用トレッドゴムを具えることを特徴とする。かかる本発明のタイヤは、ウェットグリップ性能と、低ロス性(低燃費性)と、に優れる。
【0061】
本発明のタイヤは、適用するタイヤの種類に応じ、未加硫のゴム組成物を用いて成形後に加硫して得てもよく、又は予備加硫工程等を経た半加硫ゴムを用いて成形後、さらに本加硫して得てもよい。なお、本発明のタイヤは、好ましくは空気入りタイヤであり、空気入りタイヤに充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【実施例】
【0062】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0063】
<ゴム組成物の調製及び評価>
表1に示す配合処方で、通常のバンバリーミキサーを用いて、ゴム組成物を製造した。得られたゴム組成物に対し、下記の方法でウェットグリップ性能と低ロス性とを評価した。
【0064】
(1)ウェットグリップ性能及び低ロス性
各サンプルのゴム組成物を、145℃で33分間加硫して加硫ゴムを得た。得られた加硫ゴムに対し、粘弾性測定装置[レオメトリックス社製]を用い、温度0℃又は30℃、歪み2%、周波数15Hzで損失正接(tanδ)を測定した。
ウェットグリップ性能については、0℃でのtanδで評価し、比較例1の0℃でのtanδを100として、指数表示した。指数値が大きい程、0℃でのtanδが大きく、ウェットグリップ性能に優れることを示す。
一方、低ロス性については、30℃でのtanδで評価し、比較例1の30℃でのtanδの逆数を100として、指数表示した。指数値が大きい程、30℃でのtanδが小さく、低ロス性に優れることを示す。結果を表1に示す。
【0065】
【0066】
*1 NR: 天然ゴム
*2 SBR: 下記の方法で合成した変性スチレン-ブタジエンゴム
*3 カーボンブラック: 東海カーボン社製、商品名「シースト」、N234グレード
*4 シリカ: 日本シリカ工業社製、商品名「ニップシールAQ」、窒素吸着比表面積(BET値)=220m2/g、平均粒径=80nm(光散乱法)
*5 水酸化アルミニウム: 昭和電工社製、商品名「H43-M」
*6 水酸化マグネシウム: 協和化学工業社製、商品名「キスマ5Q-S」、平均粒径=0.8μm(遠心沈降法)
*7 シランカップリング剤: ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド
*8 老化防止剤: N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン、大内新興化学工業社製、商品名「ノクラック 6C」を含む、総量
*9 加硫促進剤: N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド、大内新興化学工業社製、商品名「ノクセラーCZ」を含む、総量
【0067】
<SBR(変性スチレン-ブタジエンゴム)の合成方法>
乾燥し、窒素置換した800mLの耐圧ガラス容器に、1,3-ブタジエンのシクロヘキサン溶液及びスチレンのシクロヘキサン溶液を、1,3-ブタジエン67.5g及びスチレン7.5gになるように加え、2,2-ジテトラヒドロフリルプロパン0.6mmolを加え、0.8mmolのn-ブチルリチウムを加えた後、50℃で1.5時間重合を行った。この際の重合転化率がほぼ100%となった重合反応系に対し、変性剤としてN,N-ビス(トリメチルシリル)-3-[ジエトキシ(メチル)シリル]プロピルアミンを、0.72mmol添加し、50℃で30分間変性反応を行った。その後、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)のイソプロパノール5質量%溶液2mLを加えて反応を停止させ、常法に従い乾燥して変性スチレン-ブタジエンゴムを得た。得られた変性スチレン-ブタジエンゴムのミクロ構造を測定した結果、スチレン結合量が10質量%、ブタジエン部分のビニル結合量が40%、ピーク分子量が200,000であった。
【0068】
表1から、シリカとカーボンブラックと水酸化マグネシウムとを含み、シリカとカーボンブラックとの総含有量、シリカの割合、及び水酸化マグネシウムの含有量が特定の範囲にある実施例のゴム組成物は、ウェットグリップ性能と、低ロス性と、に優れることが分かる。