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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】熱交換器、及び車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
   F28F 9/02 20060101AFI20240823BHJP
   F25B 39/00 20060101ALI20240823BHJP
   B60H 1/22 20060101ALI20240823BHJP
   B60H 1/32 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
F28F9/02 301Z
F25B39/00 E
F28F9/02 301D
B60H1/22 651B
B60H1/32 613E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020165026
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022056998
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2023-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】仲戸 宏治
(72)【発明者】
【氏名】中川 信也
(72)【発明者】
【氏名】立野井 秀哲
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-194251(JP,A)
【文献】国際公開第2018/173356(WO,A1)
【文献】特開2013-015289(JP,A)
【文献】特開2002-130866(JP,A)
【文献】特開2014-222143(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 9/02
F25B 39/00
B60H 1/22
B60H 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒が流通する1つの第一導出入部、及び、一端が該第一導出入部に接続されている複数の第一伝熱管を有する第一熱交換部と、
前記複数の第一伝熱管の他端に接続されているヘッダ管と、
2以上設けられ、冷媒が流通する第二導出入部、及び、一端が前記ヘッダ管に接続され、他端が前記第二導出入部に接続されている複数の第二伝熱管を有する第二熱交換部と、
を備え、
暖房時には前記第一熱交換部側から前記第二熱交換部側に向かって冷媒が流通し、
冷房時には前記第二熱交換部側から前記第一熱交換部側に向かって冷媒が流通し、
前記第一熱交換部に比べて前記第二熱交換部の方が、冷媒と空気との熱交換に供される面積である熱交換面積が大きく、
前記ヘッダ管の内部に複数設けられ、該ヘッダ管の内径よりも小さな径の開口を有する流速調整部をさらに備え、複数の前記流速調整部同士の間の間隔は、上方に向かうに従って次第に小さくなっている熱交換器。
【請求項2】
冷媒が流通する1つの第一導出入部、及び、一端が該第一導出入部に接続されている複数の第一伝熱管を有する第一熱交換部と、
前記複数の第一伝熱管の他端に接続されているヘッダ管と、
2以上設けられ、冷媒が流通する第二導出入部、及び、一端が前記ヘッダ管に接続され、他端が前記第二導出入部に接続されている複数の第二伝熱管を有する第二熱交換部と、
を備え、
暖房時には前記第一熱交換部側から前記第二熱交換部側に向かって冷媒が流通し、
冷房時には前記第二熱交換部側から前記第一熱交換部側に向かって冷媒が流通し、
前記第一熱交換部に比べて前記第二熱交換部の方が、前記第一伝熱管、及び前記第二伝熱管の流路断面積の総和が大きく、
前記ヘッダ管の内部に複数設けられ、該ヘッダ管の内径よりも小さな径の開口を有する流速調整部をさらに備え、複数の前記流速調整部同士の間の間隔は、上方に向かうに従って次第に小さくなっている熱交換器。
【請求項3】
前記複数の第一伝熱管、及び前記複数の第二伝熱管は、水平方向に延びるとともに、上下方向に間隔をあけて配列され、
前記第一導出入部は、前記第二導出入部の下方に配置されている請求項1又は2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記第二伝熱管の数は、前記第一伝熱管の数よりも多い請求項1から3のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項5】
請求項1からのいずれか一項に記載の熱交換器を備える車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱交換器、及び車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用空調装置の一例として、下記特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に係る装置は、圧縮機と、室内凝縮器と、室外熱交換器と、室内蒸発器と、複数の減圧手段と、を主に備えている。このうち、室外熱交換器は、暖房運転モード時には、低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させる蒸発器として機能し、冷房運転モード時等には、高圧冷媒を放熱させる放熱器として機能する。さらに、この室外熱交換器では、暖房運転モード時/冷房運転モード時を問わず、常に同一の入口、及び出口から冷媒が流出入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-233676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のように室外熱交換器の冷媒の流れ方向が常に変わらない場合、冷房運転モード時と暖房運転モード時とで、それぞれ効率が最適化できない虞がある。ここで、入口側と出口側とで異なる数の伝熱管を有し、これら伝熱管同士が1つのヘッダ管で接続されている熱交換器を考える。この場合、例えば、冷房運転モード時に効率が最大となるようにするためには、冷媒の特性上、熱交換器の入口側の伝熱管の数(パス数)を増やし、出口側のパス数を減らすことが望ましい。一方で、暖房運転モード時に効率が最大となるようにするためには、入口側のパス数を減らし、出口側のパス数を増やすことが望ましい。このように、異なる運転モード同士の間で最適な熱交換器の構成が相反しており、そのために熱交換器の効率向上が阻害される虞があった。
【0005】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、運転状態によらず熱交換効率がさらに向上した熱交換器、及び車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る熱交換器は、冷媒が流通する1つの第一導出入部、及び、一端が該第一導出入部に接続されている複数の第一伝熱管を有する第一熱交換部と、前記複数の第一伝熱管の他端に接続されているヘッダ管と、2以上設けられ、冷媒が流通する第二導出入部、及び、一端が前記ヘッダ管に接続され、他端が前記第二導出入部に接続されている複数の第二伝熱管を有する第二熱交換部と、を備え、暖房時には前記第一熱交換部側から前記第二熱交換部側に向かって冷媒が流通し、冷房時には前記第二熱交換部側から前記第一熱交換部側に向かって冷媒が流通し、前記第一熱交換部に比べて前記第二熱交換部の方が、冷媒と空気との熱交換に供される面積である熱交換面積が大きく、前記ヘッダ管の内部に複数設けられ、該ヘッダ管の内径よりも小さな径の開口を有する流速調整部をさらに備え、複数の前記流速調整部同士の間の間隔は、上方に向かうに従って次第に小さくなっている
【0007】
本開示に係る熱交換器は、冷媒が流通する1つの第一導出入部、及び、一端が該第一導出入部に接続されている複数の第一伝熱管を有する第一熱交換部と、前記複数の第一伝熱管の他端に接続されているヘッダ管と、2以上設けられ、冷媒が流通する第二導出入部、及び、一端が前記ヘッダ管に接続され、他端が前記第二導出入部に接続されている複数の第二伝熱管を有する第二熱交換部と、を備え、暖房時には前記第一熱交換部側から前記第二熱交換部側に向かって冷媒が流通し、冷房時には前記第二熱交換部側から前記第一熱交換部側に向かって冷媒が流通し、前記第一熱交換部に比べて前記第二熱交換部の方が、前記第一伝熱管、及び前記第二伝熱管の流路断面積の総和が大きく、前記ヘッダ管の内部に複数設けられ、該ヘッダ管の内径よりも小さな径の開口を有する流速調整部をさらに備え、複数の前記流速調整部同士の間の間隔は、上方に向かうに従って次第に小さくなっている
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、運転状態によらず熱交換効率がさらに向上した熱交換器、及び車両用空調装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施形態に係る車両用空調装置の構成を示す系統図である。
図2】本開示の実施形態に係る車両用空調装置の構成を示す系統図であって、暖房時の冷媒の流れを示している。
図3】本開示の実施形態に係る車両用空調装置の構成を示す系統図であって、冷房時の冷媒の流れを示している。
図4】本開示の実施形態に係る室外熱交換器(熱交換器)の構成を示す断面図であって、暖房時の冷媒の流れを示している。
図5】本開示の実施形態に係る室外熱交換器(熱交換器)の構成を示す断面図であって、冷房時の冷媒の流れを示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(車両用空調装置の構成)
以下、本開示の実施形態に係る車両用空調装置、及び熱交換器について、図1から図5を参照して説明する。
本実施形態の車両用空調装置は、EV車(Electric Vehicle)、HEV車(HybridElectric Vehicle)、PHEV車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)等に搭載される。
【0011】
この車両用空調装置は、図1に示すように、HVAC(Heating Ventilation and Air Conditioning)ユニット10と、圧縮機20、室外熱交換器21(熱交換器)、第一膨張弁22、第二膨張弁23、三方弁25、二方弁26、バッファタンク27、これら相互を接続する冷媒ライン40、膨張弁制御用検知器30、及び制御器50を備える。
【0012】
(HVACユニットの構成)
HVACユニット10は、ユニットダクト11、送風機12、室内蒸発器13、室内凝縮器14、エアミックスダンパ15、及び補助ヒータ16を有する。
【0013】
ユニットダクト11は、車両のインストルメントパネル内に配置されている。このユニットダクト11は、空気入口11aと空気出口11bとを有する。送風機12は、外気と室内空気とのうち一方の空気を選択的に吸い込んで、これを室内空気として、ユニットダクト11の空気入口11aからユニットダクト11内に送り込む。室内蒸発器13は、ユニットダクト11内に配置されている。この室内蒸発器13は、冷媒が流入する入口13aと、冷媒が流出する出口13bと、を有する。室内蒸発器13は、送風機12からの室内空気と冷媒とを熱交換させて、冷媒を加熱して蒸発させる一方で、室内空気を冷却する。室内凝縮器14は、ユニットダクト11内で、室内蒸発器13よりも空気出口11b側の位置に配置されている。この室内凝縮器14は、冷媒が流入する入口14aと、冷媒が流出する出口14bと、を有する。室内凝縮器14は、送風機12からの室内空気と冷媒とを熱交換させて、冷媒を冷却して凝縮させる一方で、室内空気を加熱する。エアミックスダンパ15は、ユニットダクト11内で、室内蒸発器13と室内凝縮器14との間に、室内凝縮器14に沿って配置されている。エアミックスダンパ15は、制御器50からの指示に応じて、ユニットダクト11内に流入した空気のうち、室内凝縮器14を通過させる空気の量と、室内凝縮器14を通過させずにバイパスさせる空気の量とを調節する。補助ヒータ16は、ユニットダクト11内で、室内凝縮器14よりも空気出口11b側に配置されている。この補助ヒータ16は、室内凝縮器14で空気を加熱しても、この空気の温度が目的の温度まで上がらない場合に、制御器50からの指示に応じて、この空気を加熱する。ユニットダクト11の空気出口11bは、インストルメントパネル等に設けられていう吹き出し口に接続されている。
【0014】
(圧縮機の構成)
圧縮機20は、冷媒を吸い込む吸込口20aと、冷媒を吐出すると吐出口20bと、を有する。圧縮機20は、吸込口20aから吸い込んだ冷媒を圧縮して吐出口20bから吐出させる。この圧縮機20は、制御器50からの指示に応じて、駆動量である回転数を変更することができる。
【0015】
(室外熱交換器の概要)
室外熱交換器21は、冷媒が出入りする第一口21a及び第二口21bを有する。室外熱交換器21は、冷媒と外気とを熱交換させる。室外熱交換器21の構成については後述する。
【0016】
(第一膨張弁、第二膨張弁、三方弁、二方弁の構成)
第一膨張弁22及び第二膨張弁23は、いずれも電磁弁である。これらの膨張弁は、いずれも、弁ケースと、弁ケース内に配置されている弁体と、弁ケース内で弁体を移動させて弁開度を変化させる電磁駆動機構と、を有する。弁ケースは、冷媒が出入りする第一口22a,23a及び第二口22b,23bを有する。
【0017】
三方弁25及び二方弁26は、いずれも電磁弁である。三方弁25は、弁ケースと、弁ケース内に配置されている弁体と、弁ケース内で弁体を移動させる電磁駆動機構と、を有する。弁ケースは、冷媒が流入する入口25aと、冷媒が流出する第一出口25b及び第二出口25cと、を有する。弁体は、入口25aと第一出口25bとが連通している冷房状態と、入口25aと第二出口25cとが連通している暖房状態と、に変位可能である。電磁駆動機構は、制御器50からの指示に応じて、弁体を暖房状態又は冷房状態に変位させる。
【0018】
バッファタンク27は、冷媒を一時的に溜めておくタンクである。
【0019】
(膨張弁制御用検知器の構成)
膨張弁制御用検知器30は、冷媒ライン40に設けれ、冷媒ライン40内の冷媒の状態量を検知する。この膨張弁制御用検知器30は、冷媒の温度を検知する一つの温度計31、及び冷媒の圧力を検知する一つの圧力計32を有する一組のみの検知器で構成される。温度計31及び圧力計32は、いずれも、冷媒ライン40に設けられている。
【0020】
(冷媒ラインの構成)
冷媒ライン40は、吐出ライン41、熱交換器第一口ライン42、熱交換器第二口ライン43、膨張弁間ライン44、吸込ライン45、第一暖房専用ライン46、及び第二暖房専用ライン47、を有する。
【0021】
吐出ライン41は、圧縮機20の吐出口20bと三方弁25の入口25aとを接続する。この吐出ライン41は、第一吐出ライン41a及び第二吐出ライン41bを有する。第一吐出ライン41aは、圧縮機20の吐出口20bと室内凝縮器14の入口14aとを接続する。第二吐出ライン41bは、室内凝縮器14の出口14bと三方弁25の入口25aとを接続する。よって、室内凝縮器14は、吐出ライン41に設けられている。
【0022】
熱交換器第一口ライン42は、三方弁25の第一出口25bと室外熱交換器21の第一口21aとを接続する。熱交換器第二口ライン43は、室外熱交換器21の第二口21bと第二膨張弁23の第一口23aとを接続する。膨張弁間ライン44は、第二膨張弁23の第二口23bと第一膨張弁22の第一口22aとを接続する。
【0023】
吸込ライン45は、第一膨張弁22の第二口22bと、圧縮機20の吸込口20aとを接続する。この吸込ライン45は、第一吸込ライン45a、第二吸込ライン45b、及び第三吸込ライン45cを有する。第一吸込ライン45aは、第一膨張弁22の第二口22bと室内蒸発器13の入口13aとを接続する。第二吸込ライン45bは、室内蒸発器13の出口13bとバッファタンク27の入口27aとを接続する。第三吸込ライン45cは、バッファタンク27の出口27bと圧縮機20の吸込口20aとを接続する。よって、室内蒸発器13及びバッファタンク27は、吸込ライン45に設けられている。
【0024】
第一暖房専用ライン46は、三方弁25の第二出口25cと膨張弁間ライン44とを接続する。第二暖房専用ライン47は、室外熱交換器21の第一口21aと第二吸込ライン45bとを接続する。この第一暖房専用ライン46は、弁を含む機器を介さずに膨張弁間ライン44に直接接続され、暖房時及び冷房時に液相の冷媒が存在する膨張弁間接続ラインを成す。
【0025】
二方弁26は、第二暖房専用ライン47に設けられている。膨張弁制御用検知器30は、膨張弁間ライン44内で、第二膨張弁23の第二口23bと、第一暖房専用ライン46との接続位置との間に設けられ、これらの間の冷媒の状態量を検知する。
【0026】
(制御器の構成)
制御器50は、車両搭乗者等からモードを受け付け、受け付けたモードに応じて、圧縮機20、三方弁25、二方弁26、第一膨張弁22、第二膨張弁23、送風機12、エアミックスダンパ15、及び補助ヒータ16を制御する。ここで、制御器50が受け付けるモードとしては、暖房モードと冷房モードとがある。
【0027】
次に、以上で説明した車両用空調装置の動作について説明する。
【0028】
まず、制御器50が車両搭乗者等から暖房モードを受け付けた場合(つまり、暖房時)の車両用空調装置の動作について説明する。
【0029】
制御器50は、車両搭乗者等から暖房モードを受け付けると、三方弁25に対して暖房状態になるよう指令を与え、二方弁26に対して開指令を与える。制御器50は、第一膨張弁22に対して閉指令を与え、第二膨張弁23に対して膨張弁制御用検知器30で検知された冷媒の状態量に応じた開度を示す開度指令を与える。制御器50は、HVACユニット10の送風機12に対して駆動指令を与える。制御器50は、HVACユニット10のエアミックスダンパ15に対して、ユニットダクト11内に流入した空気のうち、室内凝縮器14を通過させずにバイパスさせる空気の量よりも、室内凝縮器14を通過させる空気の量が大きくするダンパ開度指令を与える。さらに、制御器50は、圧縮機20に駆動指令も与える。
【0030】
この結果、図2に示すように、三方弁25は、暖房状態になり、三方弁25の入口25aと第二出口25cとが連通状態になる。二方弁26は、開状態になる。第一膨張弁22は、閉状態になる。HVACユニット10の送風機12は、駆動し始める。エアミックスダンパ15の開度は、ユニットダクト11内に流入した空気のうち、室内凝縮器14を通過させずにバイパスさせる空気の量よりも、室内凝縮器14を通過させる空気の量が大きくなる開度になる。圧縮機20は、駆動回転し始める。
【0031】
車両用空調装置が以上の状態になると、圧縮機20で圧縮された気相の冷媒が、第一吐出ライン41aを経て、室内凝縮器14に流入する。この室内凝縮器14には、HVACユニット10の送風機12によりユニットダクト11内に送られてきた空気が通る。室内凝縮器14では、気相の冷媒と空気とが熱交換されて、冷媒が冷却されて凝縮し、空気が加熱される。加熱された空気は、ユニットダクト11からインストルメントパネル等に設けられている吹き出し口から車両内の搭乗者空間に流入する。
【0032】
室内凝縮器14で凝縮した冷媒、つまり液相の冷媒は、第二吐出ライン41bを経て、三方弁25の入口25aから三方弁25内に流入する。なお、図2において、冷媒ライン40中ではハッチングが施されている部分は、液相の冷媒が存在する部分である。三方弁25は、暖房状態で、入口25aと第二出口25cとが連通状態であるため、三方弁25に流入した液相の冷媒は、第一暖房専用ライン46、膨張弁間ライン44の一部、第二膨張弁23を経て、室外熱交換器21の第二口21bからこの室外熱交換器21内に流入する。液相の冷媒は、第二膨張弁23を通っている過程で、減圧されて膨張し、一部が気相になる。室外熱交換器21では、外気と冷媒とが熱交換されて、冷媒が加熱されて蒸発し、外気が冷却される。すなわち、暖房時、室外熱交換器21は、蒸発器として機能する。
【0033】
蒸発した冷媒、つまり気相の冷媒は、室外熱交換器21の第一口21aから流出する。この気相の冷媒は、第二暖房専用ライン47、第二吸込ライン45bの一部、バッファタンク27、第三吸込ライン45cを経て、圧縮機20に流入する。
【0034】
気相の冷媒は、この圧縮機20で圧縮されてから、前述したように、第一吐出ライン41aを経て、室内凝縮器14に流入する。
【0035】
制御器50には、圧縮機20の回転数とサブクール度に関する閾値との関係が記憶されている。なお、サブクール度とは、冷媒の飽和温度と冷媒の実際の温度との偏差である。制御器50に記憶されている関係は、圧縮機20の回転数が大きくなるに連れて、閾値が大きくなる関係である。制御器50は、この関係を用いて、現時点の圧縮機20の回転数に応じた閾値を定める。閾値は、以上で説明したように、圧縮機20の回転数に応じて変わるものの、5~20℃で、好ましくは、5~15℃である。
【0036】
制御器50には、圧力計32で検知された液相冷媒の圧力が入力する。制御器50は、この圧力に基づいて、この冷媒の飽和温度を求める。さらに、制御器50は、この飽和温度と、温度計31で検知された液冷媒の温度との偏差であるサブクール度を求める。制御器50は、このサブクール度と閾値とを比較し、サブクール度が閾値より大きい場合に、開度を現時点よりも大きくする方向の開度指令を第二膨張弁23に与える。また、制御器50は、サブクール度が閾値より小さい場合に、開度を現時点よりも小さくする方向の開度指令を第二膨張弁23に与える。
【0037】
冷媒の減圧量及び膨張量は、膨張弁の開度が小さくほど、大きくなる。このため、膨張弁の開度が小さくなるほど、車両用空調装置の冷暖房能力が高くなる。しかしながら、膨張弁の開度が小さくなるほど、冷媒ライン40での冷媒の圧力損失が大きくなり、冷暖房効率が低下する。すなわち、膨張弁の開度が小さくなるほど、冷暖房能力が高くなる一方で、冷暖房効率が低下する。逆に、膨張弁の開度が大きくなるほど、冷暖房能力が低くなる一方で、冷暖房効率が向上する。
【0038】
次に、制御器50が車両搭乗者等から冷房モードを受け付けた場合の車両用空調装置の動作について説明する。
【0039】
制御器50は、車両搭乗者等から冷房モードを受け付けると、三方弁25に対して冷房状態になるよう指令を与え、二方弁26に対して閉指令を与える。制御器50は、第二膨張弁23に対して開指令を与え、第一膨張弁22に対して膨張弁制御用検知器30で検知された冷媒の状態量に応じた開度を示す開度指令を与える。制御器50は、HVACユニット10の送風機12に対して駆動指令を与える。制御器50は、HVACユニット10のエアミックスダンパ15に対して、ユニットダクト11内に流入した空気のほとんどが室内凝縮器14を通過させずにバイパスするダンパ開度指令を与える。さらに、制御器50は、圧縮機20に駆動指令も与える。
【0040】
この結果、図3に示すように、三方弁25は、冷房状態になり、三方弁25の入口25aと第一出口25bとが連通状態になる。二方弁26は、閉状態になる。第二膨張弁23は、開状態になる。HVACユニット10の送風機12は、駆動し始める。エアミックスダンパ15の開度は、ユニットダクト11内に流入した空気のほとんどが、室内凝縮器14を通過させずにバイパスする開度になる。圧縮機20は、駆動回転し始める。
【0041】
車両用空調装置が以上の状態になると、圧縮機20で圧縮された気相の冷媒が、第一吐出ライン41aを経て、室内凝縮器14に流入する。この室内凝縮器14には、HVACユニット10のエアミックスダンパ15の存在により、送風機12でユニットダクト11内に送られてきた空気がほとんど通らない。このため、室内凝縮器14では、気相の冷媒と空気との熱交換量が少なく、冷媒はほとんど凝縮せず、空気はほとんど加熱されない。よって、室内凝縮器14に流入した気相の冷媒は、気相の冷媒のまま、室内凝縮器14から流出する。
【0042】
室内凝縮器14から流出した気相の冷媒は、第二吐出ライン41bを経て、三方弁25の入口25aから三方弁25内に流入する。この三方弁25は、冷房状態で、入口25aと第一出口25bとが連通状態であるため、三方弁25に流入した気相の冷媒は、熱交換器第一口ライン42を経て、室外熱交換器21の第一口21aからこの室外熱交換器21内に流入する。室外熱交換器21では、外気と気相の冷媒とが熱交換されて、冷媒が冷却されて凝縮し、外気が加熱される。すなわち、冷房時、室外熱交換器21は、凝縮器として機能する。
【0043】
凝縮した冷媒、つまり液相の冷媒は、室外熱交換器21の第二口21bから流出する。なお、図3において、冷媒ライン40中ではハッチングが施されている部分は、液相の冷媒が存在する部分である。この液相の冷媒は、熱交換器第二口ライン43、開状態の第二膨張弁23、及び膨張弁間ライン44を経て、第一膨張弁22に流入する。この液相の冷媒は、第一膨張弁22を通っている過程で、減圧されて膨張し、一部が気相になる。この冷媒は、第一吸込ライン45aを経て、室内蒸発器13内に流入する。
【0044】
室内蒸発器13では、HVACユニット10の送風機12によりユニットダクト11内に送られてきた空気と液相の冷媒とが熱交換されて、冷媒が加熱されて蒸発し、空気が冷却される。冷却された空気のほとんどは、エアミックスダンパ15の存在により、室内凝縮器14を通過させずにバイパスし、ユニットダクト11から流出する。そして、この冷却された空気は、インストルメントパネル等に設けられていう吹き出し口から車両内の搭乗者空間に流入する。
【0045】
室内蒸発器13で蒸発した冷媒、つまり気相の冷媒は、室内蒸発器13から、第二吸込ライン45b、バッファタンク27、第三吸込ライン45cを経て、圧縮機20に流入する。
【0046】
気相の冷媒は、この圧縮機20で圧縮されてから、前述したように、第一吐出ライン41aを経て、室内凝縮器14に流入する。
【0047】
制御器50には、暖房モード時と同様、圧力計32で検知された液相冷媒の圧力が入力する。制御器50は、この圧力に基づいて、この冷媒の飽和温度を求める。さらに、制御器50は、この飽和温度と、温度計31で検知された液冷媒の温度との偏差であるサブクール度を求める。制御器50は、このサブクール度と閾値とを比較し、サブクール度が閾値より大きい場合に、開度を現時点よりも大きくする方向の開度指令を第一膨張弁22に与える。また、制御器50は、サブクール度が閾値より小さい場合に、開度を現時点よりも小さくする方向の開度指令を第一膨張弁22に与える。
【0048】
(室外熱交換器の構成)
次いで、図4図5を参照して、室外熱交換器21の構成について詳述する。上述したように室外熱交換器21では、暖房モード時と冷房モード時とで、第一口21a、及び第二口21bを通じて流出入する冷媒の流れ方向が異なっている。以下では、室外熱交換器21の構成を説明した上で、暖房モード時と冷房モード時のそれぞれにおける冷媒の流れについて個別に説明する。
【0049】
図4に示すように、室外熱交換器21は、第一ヘッダ管61と、仕切板61Sと、第一伝熱管70Aと、第二伝熱管70Bと、第二ヘッダ管62(ヘッダ管)と、流速調整部65と、を備えている。
【0050】
(第一ヘッダ管の構成)
第一ヘッダ管61は、上下方向に延びる有底筒状の部材であり、その延在方向の中途には、上述した第一口21a、及び第二口21bがそれぞれ上下方向に間隔をあけて配列されている。より具体的には、第一ヘッダ管61の下部には、1つの第二口21bが形成され、その上方には2つの第一口21aが形成されている。また、第一ヘッダ管61の内部には、円盤状の仕切板61Sが配置されている。仕切板61Sは、第一ヘッダ管61の内部を2つの空間に区画している。仕切板61Sよりも下方の空間は、第二口21bが連通する第一導出入部63とされている。仕切板61Sよりも上方の空間は、2つの第一口21aが連通する第二導出入部64とされている。上下方向における第二導出入部64の寸法は、第一導出入部63の寸法よりも大きい。なお、ここで言う「上下方向」とは、実質的な上下方向を指すものであって、設計上の公差や製造上の誤差は許容される。
【0051】
(第一伝熱管、第二伝熱管の構成)
第一ヘッダ管61には、複数の第一伝熱管70A、及び複数の第二伝熱管70Bの一端側がそれぞれ接続されている。より詳細には、第一ヘッダ管61の第一導出入部63には、複数(図4図5の例では3つ)の第一伝熱管70Aの一端が接続されている。第一ヘッダ管61の第二導出入部64には、複数(図4図5の例では5つ)の第二伝熱管70Bの一端が接続されている。つまり、第二伝熱管70Bの数は、第一伝熱管70Aの数よりも多い。なお、図4図5に示す各伝熱管の数、比率は一例であり、設計や仕様に応じて変更することが可能である。
【0052】
第一伝熱管70A、及び第二伝熱管70Bはそれぞれ同等の構成を有している。具体的には、これら第一伝熱管70A、及び第二伝熱管70Bは、内部に冷媒が流通する管状の管本体70Hと、この管本体70Hの外周面に設けられた複数のフィンFと、を有する。管本体70Hは、第一ヘッダ管61の側面から水平方向に延びている。各フィンFは、管本体70Hの外周面上で周方向に延びる環状をなしている。このようなフィンFが、管本体70Hの延在方向に間隔をあけて複数配列されている。なお、ここで言う「水平方向」とは、実質的な水平方向を指すものであって、設計上の公差や製造上の誤差は許容される。
【0053】
上記の第一導出入部63と、複数の第一伝熱管70Aは、第一熱交換部21Aを構成する。また、第二導出入部64と、複数の第二伝熱管70Bは、第二熱交換部21Bを構成する。上述のように第二伝熱管70Bの数は、第一伝熱管70Aの数よりも多いことから、第二熱交換部21Bの熱交換面積(つまり、冷媒と空気の熱交換に供される面積)は、第一熱交換部21Aの熱交換面積よりも大きい。これは、第二熱交換部21Bは気液二相冷媒のうち、気相成分の割合が大きく、圧力損失が大きくなるためである。一方で、第一熱交換部21Aでは液相成分の割合が大きいことから圧力損失は小さい。
【0054】
(第二ヘッダ管の構成)
上記の第一伝熱管70Aの他端、及び第二伝熱管70Bの他端には、第二ヘッダ管62が接続されている。第二ヘッダ管62は、第一ヘッダ管61と同様に上下方向に延びる有底筒状の部材である。第二ヘッダ管62の内部には、流速調整部65としての円盤が複数(一例として2つ)設けられている。流速調整部65は、第二ヘッダ管62の内径よりも小さな径の開口を有する。この開口を通じて、冷媒が上下方向に流通することが可能とされている。特に、開口の径が第二ヘッダ管62の内径よりも小さいことから、流速調整部65が絞り(又はノズル)として機能し、当該流速調整部65を通過した冷媒の流速は通過前に比べて上昇する。つまり、流速調整部65を通過する前に比べて、より遠方にまで冷媒が到達するようになる。図4図5の例では、これら流速調整部65は、第二ヘッダ管62の内部における上部に偏った位置に2つ設けられている。
【0055】
(暖房モード時の室外熱交換器の動作)
図4に示すように、暖房モード時には、第二口21bから気液混相状態の冷媒が室外熱交換器21に流入する。第一ヘッダ管61の第一導出入部63を通じて冷媒は第一伝熱管70A内を流通する。その中途で空気と熱交換することによって冷媒の温度が上がり、やがて冷媒は気相状態となる。その後、第二ヘッダ管62を経て冷媒は第二伝熱管70Bに流入する。その中途で冷媒の温度はさらに上昇し、所定の温度・圧力となって第二導出入部64に流入する。その後、冷媒は第一口21aのいずれか一方から外部に取り出される。本実施形態では一例として、冷媒は下側の第一口21aのみから外部に取り出される。
【0056】
(冷房モード時の室外熱交換器の動作)
図5に示すように、冷房モード時には、第一口21aのいずれか一方から気相状態の冷媒が室外熱交換器21に流入する。本実施形態では一例として、冷媒は上側の第一口21aのみから室外熱交換器21に流入する。第一ヘッダ管61の第二導出入部64を通じて冷媒は第二伝熱管70B内を流通する。その中途で空気と熱交換することによって冷媒の温度は下がり、やがて冷媒は気液混相状態となる。その後、第二ヘッダ管62を経て冷媒は第一伝熱管70Aに流入する。その中途で冷媒の温度はさらに低下し、所定の温度・圧力となって第一導出入部63に流入する。その後、冷媒は第二口21bから外部に取り出される。
【0057】
(作用効果)
【0058】
ここで、暖房時には、熱交換器の内部では、冷媒は入口側では気液混相状態で流通し、出口側では気相となって流通する。つまり、冷媒と空気の熱交換は主として出口側で進行する。したがって、暖房時には出口側の熱交換面積を大きく確保することが肝要となる。上記構成では、暖房時には第一熱交換部21Aが入口側となり、第二熱交換部21Bが出口側となる。第二熱交換部21Bでは、第一熱交換部21Aに比べて、冷媒と空気との熱交換に供される面積である熱交換面積が大きい。これにより、出口側となる第二熱交換部21Bで支配的に熱交換を進めることができる。一方で、冷房時には、熱交換器の内部では、冷媒は入口側では気相状態で流通し、出口側では気液混相状態で流通する。つまり、冷媒と空気の熱交換は主として入口側で進行する。したがって、冷房時には入口側の熱交換面積を大きく確保することが肝要となる。上記構成では、冷房時には第二熱交換部21Bが入口側となり、第一熱交換部21Aが出口側となる。第二熱交換部21Bでは、第一熱交換部21Aに比べて、冷媒と空気との熱交換に供される面積である熱交換面積が大きい。これにより、入口側となる第二熱交換部21Bで支配的に熱交換を進めることができる。このように、上記構成によれば、冷房時と暖房時とで、それぞれの冷媒の状態に応じて、最適な熱交換面積の分配を実現することができる。その結果、冷房モード時と暖房モード時とを問わず、熱交換器の性能を最大化することができる。
【0059】
また、暖房時には、熱交換器の内部では、冷媒は入口側では気液混相状態で流通し、出口側では気相となって流通する。つまり、冷媒と空気の熱交換は主として出口側で進行する。したがって、暖房時には出口側で冷媒を流れやすくする(つまり、圧力損失を小さく抑える)ことが肝要となる。上記構成では、暖房時には第一熱交換部21Aが入口側となり、第二熱交換部21Bが出口側となる。第二熱交換部21Bでは、第一熱交換部21Aに比べて、第二熱交換部21Bの方が流路断面積の総和が大きくなるように構成されている。これにより、例えば第一熱交換部21Aと第二熱交換部21Bとの間で、流路断面積が等しい場合と比較して、出口側となる第二熱交換部21Bで支配的に熱交換を進めることができる。一方で、冷房時には、熱交換器の内部では、冷媒は入口側では気相状態で流通し、出口側では液状態で流通する。つまり、冷媒と空気の熱交換は主として入口側で進行する。したがって、冷房時には入口側で冷媒を流れやすくする(つまり、圧力損失を小さくする)ことが肝要となる。上記構成では、冷房時には第二熱交換部21Bが入口側となり、第一熱交換部21Aが出口側となる。第二熱交換部21Bでは、第一熱交換部21Aに比べて、第二熱交換部21Bの方が流路断面積の総和が大きくなるように構成されている。これにより、例えば第一熱交換部21Aと第二熱交換部21Bとの間で、流路断面積が等しい場合と比較して、入口側となる第二熱交換部21Bで支配的に熱交換を進めることができる。このように、上記構成によれば、冷房時と暖房時とで、それぞれの冷媒の状態に応じて、最適な流れやすさ(圧力損失)の分布を実現することができる。その結果、冷房モード時と暖房モード時とを問わず、熱交換器の性能を最大化することができる。
【0060】
さらに、上記構成によれば、第一伝熱管70A、及び第二伝熱管70Bが水平方向に延び、上下方向に配列されている。これにより、例えばこれら伝熱管が上下方向に延びている場合に比べて、冷媒が伝熱管内部で偏ってしまう可能性を低減することができる。その結果、熱交換効率をさらに高めることができる。
【0061】
加えて、上記構成によれば、第二伝熱管70Bの数を第一伝熱管70Aの数よりも多くすることのみによって、容易に第二熱交換部21Bの熱交換面積を相対的に大きくし、かつ圧力損失を相対的に小さくすることができる。
【0062】
また、上記構成によれば、ヘッダ管の内部に流速調整部65が設けられている。流速調整部65の開口はヘッダ管の内径よりも小さい。これにより、当該開口を冷媒が通過する際に、その流速が上昇して噴流となる。その結果、ヘッダ管内部の下流側にまで冷媒を十分に行き渡らせることが可能となり、冷媒をより均一に熱交換器内部に分配することができる。
【0063】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0064】
<付記>
各実施形態に記載の熱交換器(室外熱交換器21)、及び車両用空調装置は、例えば以下のように把握される。
【0065】
(1)第1の態様に係る熱交換器は、冷媒が流通する1つの第一導出入部63、及び、一端が該第一導出入部63に接続されている複数の第一伝熱管70Aを有する第一熱交換部21Aと、前記複数の第一伝熱管70Aの他端に接続されているヘッダ管(第二ヘッダ管62)と、2以上設けられ、冷媒が流通する第二導出入部64、及び、一端が前記ヘッダ管に接続され、他端が前記第二導出入部64に接続されている複数の第二伝熱管70Bを有する第二熱交換部21Bと、を備え、暖房時には前記第一熱交換部21A側から前記第二熱交換部21B側に向かって冷媒が流通し、冷房時には前記第二熱交換部21B側から前記第一熱交換部21A側に向かって冷媒が流通し、前記第一熱交換部21Aに比べて前記第二熱交換部21Bの方が、冷媒と空気との熱交換に供される面積である熱交換面積が大きい。
【0066】
ここで、暖房時には、熱交換器の内部では、冷媒は入口側では気液混相状態で流通し、出口側では気相となって流通する。つまり、冷媒と空気の熱交換は主として出口側で進行する。したがって、暖房時には出口側の熱交換面積を大きく確保することが肝要となる。上記構成では、暖房時には第一熱交換部21Aが入口側となり、第二熱交換部21Bが出口側となる。第二熱交換部21Bでは、第一熱交換部21Aに比べて、冷媒と空気との熱交換に供される面積である熱交換面積が大きい。これにより、出口側となる第二熱交換部21Bで支配的に熱交換を進めることができる。一方で、冷房時には、熱交換器の内部では、冷媒は入口側では気相状態で流通し、出口側では気液混相状態で流通する。つまり、冷媒と空気の熱交換は主として入口側で進行する。したがって、冷房時には入口側の熱交換面積を大きく確保することが肝要となる。上記構成では、冷房時には第二熱交換部21Bが入口側となり、第一熱交換部21Aが出口側となる。第二熱交換部21Bでは、第一熱交換部21Aに比べて、冷媒と空気との熱交換に供される面積である熱交換面積が大きい。これにより、入口側となる第二熱交換部21Bで支配的に熱交換を進めることができる。このように、上記構成によれば、冷房時と暖房時とで、それぞれの冷媒の状態に応じて、最適な熱交換面積の分配を実現することができる。その結果、冷房時と暖房時とを問わず、熱交換器の性能を最大化することができる。
【0067】
(2)第2の態様に係る熱交換器は、冷媒が流通する1つの第一導出入部63、及び、一端が該第一導出入部63に接続されている複数の第一伝熱管70Aを有する第一熱交換部21Aと、前記複数の第一伝熱管70Aの他端に接続されているヘッダ管(第二ヘッダ管62)と、2以上設けられ、冷媒が流通する第二導出入部64、及び、一端が前記ヘッダ管に接続され、他端が前記第二導出入部64に接続されている複数の第二伝熱管70Bを有する第二熱交換部21Bと、を備え、暖房時には前記第一熱交換部21A側から前記第二熱交換部21B側に向かって冷媒が流通し、冷房時には前記第二熱交換部21B側から前記第一熱交換部21A側に向かって冷媒が流通し、前記第一熱交換部21Aに比べて前記第二熱交換部21Bの方が、前記第一伝熱管70A、及び前記第二伝熱管70Bの流路断面積の総和が大きい。
【0068】
ここで、暖房時には、熱交換器の内部では、冷媒は入口側では気液混相状態で流通し、出口側では気相となって流通する。つまり、冷媒と空気の熱交換は主として出口側で進行する。したがって、暖房時には出口側で冷媒を流れやすくする(つまり、圧力損失を小さく抑える)ことが肝要となる。上記構成では、暖房時には第一熱交換部21Aが入口側となり、第二熱交換部21Bが出口側となる。第二熱交換部21Bでは、第一熱交換部21Aに比べて、第二熱交換部21Bの方が流路断面積の総和が大きい。これにより、出口側となる第二熱交換部21Bで支配的に熱交換を進めることができる。一方で、冷房時には、熱交換器の内部では、冷媒は入口側では気相状態で流通し、出口側では気液混相状態で流通する。つまり、冷媒と空気の熱交換は主として入口側で進行する。したがって、冷房時には入口側で冷媒を流れやすくする(つまり、圧力損失を小さくする)ことが肝要となる。上記構成では、冷房時には第二熱交換部21Bが入口側となり、第一熱交換部21Aが出口側となる。第二熱交換部21Bでは、第一熱交換部21Aに比べて、第二熱交換部21Bの方が流路断面積の総和が大きい。これにより、入口側となる第二熱交換部21Bで支配的に熱交換を進めることができる。このように、上記構成によれば、冷房時と暖房時とで、それぞれの冷媒の状態に応じて、最適な流れやすさ(圧力損失)の分布を実現することができる。その結果、冷房時と暖房時とを問わず、熱交換器の性能を最大化することができる。
【0069】
(3)第3の態様に係る熱交換器では、前記複数の第一伝熱管70A、及び前記複数の第二伝熱管70Bは、水平方向に延びるとともに、上下方向に間隔をあけて配列され、前記第一導出入部63は、前記第二導出入部64の下方に配置されている。
【0070】
上記構成によれば、第一伝熱管70A、及び第二伝熱管70Bが水平方向に延び、上下方向に配列されている。これにより、例えばこれら伝熱管が上下方向に延びている場合に比べて、冷媒が伝熱管内部で偏ってしまう可能性を低減することができる。その結果、熱交換効率をさらに高めることができる。
【0071】
(4)第4の態様に係る熱交換器では、前記第二伝熱管70Bの数は、前記第一伝熱管70Aの数よりも多い。
【0072】
上記構成によれば、第二伝熱管70Bの数を第一伝熱管70Aの数よりも多くすることのみによって、容易に第二熱交換部21Bの熱交換面積を相対的に大きくし、かつ圧力損失を小さく抑えることができる。
【0073】
(5)第5の態様に係る熱交換器は、前記ヘッダ管(第二ヘッダ管62)の内部に設けられ、該ヘッダ管の内径よりも小さな径の開口を有する流速調整部65を有する。
【0074】
上記構成によれば、ヘッダ管の内部に流速調整部65が設けられている。流速調整部65の開口はヘッダ管の内径よりも小さい。これにより、当該開口を冷媒が通過する際に、その流速が上昇して噴流となる。その結果、ヘッダ管内部の下流側にまで冷媒を十分に行き渡らせることが可能となり、冷媒をより均一に熱交換器内部に分配することができる。
【0075】
(6)第6の態様に係る車両用空調装置は、上記いずれか一態様に係る熱交換器を備える。
【0076】
上記構成によれば、より高い熱交換効率を有する熱交換器を備えることから、車両用空調装置としての性能をさらに高めることができる。
【符号の説明】
【0077】
10:HVACユニット
11:ユニットダクト
11a:空気入口
11b:空気出口
12:送風機
13:室内蒸発器
13a:入口
13b:出口
14:室内凝縮器
14a:入口
14b:出口
15:エアミックスダンパ
16:補助ヒータ
20:圧縮機
20a:吸込口
20b:吐出口
21:室外熱交換器(熱交換器)
21a:第一口
21b:第二口
21A:第一熱交換部
21B:第二熱交換部
22:第一膨張弁
22a:第一口
22b:第二口
23:第二膨張弁
23a:第一口
23b:第二口
24:第三膨張弁
24a:第一口
24b:第二口
25:三方弁
25a:入口
25b:第一出口
25c:第二出口
26:二方弁
27:バッファタンク
27a:入口
27b:出口
30:膨張弁制御用検知器
31:温度計
32:圧力計
35:補助熱交換器
36:バッテリークーラー
36a:入口
36b:出口
40:冷媒ライン
41:吐出ライン
41a:第一吐出ライン
41b:第二吐出ライン
42:熱交換器第一口ライン
43:熱交換器第二口ライン
44:膨張弁間ライン
45:吸込ライン
45a:第一吸込ライン
45b:第二吸込ライン
45c:第三吸込ライン
46:第一暖房専用ライン
47:第二暖房専用ライン
48:クーラー入口ライン
49:クーラー出口ライン
50:制御器
61:第一ヘッダ管
61S:仕切板
62:第二ヘッダ管(ヘッダ管)
63:第一導出入部
64:第二導出入部
65:流速調整部
70A:第一伝熱管
70B:第二伝熱管
70H:管本体
F:フィン
図1
図2
図3
図4
図5