(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】プラグ、コネクタ及びレセプタクル
(51)【国際特許分類】
H01R 13/631 20060101AFI20240823BHJP
H01R 12/71 20110101ALI20240823BHJP
【FI】
H01R13/631
H01R12/71
(21)【出願番号】P 2020178923
(22)【出願日】2020-10-26
【審査請求日】2023-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006758
【氏名又は名称】株式会社ヨコオ
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【氏名又は名称】村井 弘実
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【氏名又は名称】村井 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【氏名又は名称】井上 一
(72)【発明者】
【氏名】田島 康裕
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-040206(JP,A)
【文献】特開平11-329625(JP,A)
【文献】特開平09-320684(JP,A)
【文献】特開2019-071215(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/631
H01R 12/71
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レセプタクルに対して所定の挿抜方向に挿抜されるプラグであって、
前記レセプタクルの挿入部に挿抜される端子部、
を備え、
前記端子部は、
コンタクトと、
前記コンタクトを保持するホルダ部と、
を有し、
前記ホルダ部は、
前記コンタクトを挟んだ少なくとも一方に、先端部が前記コンタクトの挿入方向先端よりも前記挿入方向に向けて突出し、且つ、前記挿抜方向に直交する所定の直交方向に突出したフランジ部
と、前記フランジ部に隣接する主部と、
を有し、
前記フランジ部の先端部は面取り部を有し、
前記面取り部は
、前記挿入部の開口と前記先端部と
の位置合わせ
として機能し、
前記フランジ部は、
前記挿入部に挿入された前記端子部
の前記直交方向の位置を位置決め
し、
前記コンタクトは、前記主部の表面に沿った折り曲げ形状を成す面状の導電体である、
プラグ。
【請求項2】
前記面取り部は、テーパ面である、
請求項1に記載のプラグ。
【請求項3】
前記直交方向に離れた位置に前記端子部を2つ備える、請求項1
又は2に記載のプラグ。
【請求項4】
前記2つの端子部の間に複数のコンタクトピンを備える、請求項
3に記載のプラグ。
【請求項5】
前記端子部を1つだけ備える、請求項1
又は2に記載のプラグ。
【請求項6】
請求項1~
5の何れか一項に記載のプラグと、
前記プラグが前記挿抜方向に挿抜される前記レセプタクルと、
を具備するコネクタ。
【請求項7】
請求項1~
5の何れか一項に記載のプラグの前記端子部が挿抜される
前記挿入部を有し、前記面取り部により前記先端部が前記挿入部の開口と位置合わせされ、前記フランジ部により前記直交方向の位置が位置決めされた前記端子部の前記導電体である前記コンタクトと電気的接続を可能とする、レセプタクル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レセプタクルに対して所定の挿抜方向に挿抜されるプラグ等に関する。
【背景技術】
【0002】
コネクタを構成するプラグとレセプタクルとには、それぞれ導電性の端子が備えられている。ユーザがコネクタの接続操作をする場合、プラグのオス端子をレセプタクルのメス端子に摺動接触させながら挿入する。
【0003】
小型のコネクタにおいてプラグをレセプタクルに挿入する場合には、オス端子とメス端子とを正しく正対させて接続させないと、端子に無理な力が作用して変形や損傷が起きる可能性がある。
【0004】
小型のコネクタの中には、そうした変形や損傷を防ぐために、オス端子とメス端子とを正しい位置関係に案内するガイド構造が設けられているものがある。例えば、特許文献1には、プラグに「嵌合ガイドピン」を突設し、レセプタクルに「嵌合ガイド穴」を設けた構成が開示されている。コネクタを接続させる際に、嵌合ガイドピンを嵌合ガイド穴に合わせるようにプラグをレセプタクルに近づけると、オス端子とメス端子とが接触するよりも先に嵌合ガイドピンと嵌合ガイド穴とが係合する。嵌合ガイドピンと嵌合ガイド穴との公差はガタツキがでないように厳しく管理されており、嵌合ガイドピンを嵌合ガイド穴の内面に摺接させながら差し込むことで、オス端子とメス端子とが正しい位置関係に案内される。そして、端子に無理な力が作用しない正しい位置に位置決めされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電子機器に対する小型化の要求があるように、コネクタにも小型化が要求される。上述のようにガイド構造は有益であるが、そのための設置スペースが必要となるため、小型化を阻んでいた。
【0007】
本発明の目的の一例は、挿抜操作時に端子を所定の正対関係に保持するガイド機能を確保しつつコネクタの小型化を可能とする技術を提案すること、である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様は、レセプタクルに対して所定の挿抜方向に挿抜されるプラグであって、前記レセプタクルの挿入部に挿抜される端子部、を備え、前記端子部は、コンタクトと、前記コンタクトを保持するホルダ部と、を有し、前記ホルダ部は、先端部が前記コンタクトの挿入方向先端よりも前記挿抜方向の挿入方向に向けて突出し、且つ、前記挿抜方向に直交する所定の直交方向に突出したフランジ部、を有し、前記フランジ部は、前記挿入部に挿入された前記端子部の前記直交方向の位置を位置決めする、プラグである。
【0009】
この態様によれば、端子部は、レセプタクルとの間での電気的接続を成す機能だけでなく、レセプタクルの挿入部に挿抜されることで挿抜作業中の相対移動方向を規制・安定化させるガイド機能を兼ねる。よって、ガイド機能を担うガイド構造を別途専用に設けた従来のコネクタよりも小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図8】コネクタの接続操作を説明するための図(その1)。
【
図9】コネクタの接続操作を説明するための図(その2)。
【
図10】コネクタの接続操作を説明するための図(その3)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態の例を説明するが、本発明を適用可能な形態は以下の実施形態に限定されない。
各図には共通する方向を示すためのZ軸正方向を上方向とする右手系の直交三軸を示す。コネクタのプラグには、挿抜方向のうち挿入方向(プラグをレセプタクルに接続操作する方向)をZ軸プラス方向としたXpYpZp座標系を示し、コネクタのレセプタクルには、プラグを差し込み可能な2方向のうち一方をZ軸プラス方向としたXrYrZr座標系を示す。XpYpZp座標系はプラグにとっての方向を示し、XrYrZr座標系はレセプタクルにとっての方向を示している。
【0012】
図1は、コネクタ2の構成例を示す斜視外観図である。
コネクタ2は、プラグ10と、当該プラグ10を第1挿抜方向D1と第2挿抜方向D2のどちらからでも挿抜できるレセプタクル50と、を有する。
【0013】
図2は、プラグ10の分解斜視図である。
図3は、プラグ10の上面図である。
図4は、プラグ10の背面図である。
プラグ10は、部品構成として、非導電性の合成樹脂で形成された基部であるハウジング11と、信号端子として用いられる複数のコンタクトピン12(コンタクトプローブ)と、正負の電源用の電極として用いられる2つの面状コンタクト22と、を有する。
【0014】
面状コンタクト22は、帯状(所定方向に長い面状)の導電体を長手方向に180°折り曲げて形成された板金部品である。折り曲げ部分は曲面を形成しており、面状コンタクト22をXp軸方向から正面視すると、アルファベットのU字状の形状をしている。
【0015】
ハウジング11は、基板等へのネジ止め用の固定部14と、プローブ支持部15と、面状コンタクト22を保持するホルダ部24と、を有する。
【0016】
固定部14は、ハウジング11の背面側(Xp軸マイナス側)に延設された舌片状の部位であって、固定ネジのための挿通孔を有する。
【0017】
図2において、プローブ支持部15は、左右(Yp軸方向)の中央部から上方(Zpプラス方向)へ突設された丘陵状の形状を有している。プローブ支持部15は、複数の上下貫通孔を有し、それぞれにコンタクトピン12が差し込まれて、これを支持・固定する。コンタクトピン12は、プランジャーをプローブ支持部15の上面(Zp軸方向プラス側の面)から露出させ、且つソケットをプローブ支持部15の下面(Zp軸方向マイナス側)から露出させるようにプローブ支持部15にて支持される。
【0018】
図2において、ホルダ部24は、面状コンタクト22を保持する部位であって、ハウジング11の左右両端からそれぞれ上方(Zp軸プラス方向;差し込み方向)へ向けて突設されており、左右のホルダ部24ともに同じ形状をしている。ホルダ部24は、面状コンタクト22を装着して保持する部位である主部26と、挿通孔28と、主部26及びこれに装着された面状コンタクト22を前後方向(Xp軸方向)に挟む一対のフランジ部30と、を有する。フランジ部30は、先端部が面状コンタクト22の挿入方向先端よりも挿抜方向の挿入方向に向けて突出し、且つ、挿抜方向に直交する所定の直交方向(例えばYp軸方向)に主部26よりも突出している。
【0019】
図2において、主部26の上端部は、面状コンタクト22の折り返し部分の曲率に合わせて上方へ突出した曲面を有する。主部26の前後幅(Xp軸方向の長さ)は、面状コンタクト22の帯幅に合わせた大きさになっている。主部26の左右幅(Yp軸方向の長さ)は、面状コンタクト22の左右幅(面状コンタクト22の正面視(Xp軸方向から見た)U字形の幅に相当)に合わせた大きさになっている。
【0020】
図2において、主部26の根元位置の左右(Yp軸方向のプラス側とマイナス側)には、それぞれ、ハウジング11を上下に貫通する挿通孔28が設けられている。面状コンタクト22は、折り返し部分を上に向けた姿勢で、正面視すると逆さのU字となる姿勢で、主部26へ上から被せ、2つの下端をそれぞれ挿通孔28へ挿通させることで、ホルダ部24に装着されて保持される。
【0021】
フランジ部30は、主部26の前側面と後側面とにそれぞれ設けられている。つまり、1つのホルダ部24に2つのフランジ部30がある。各フランジ部30は、主部26の上端(Zp軸プラス側の端部)より上方(Zp軸プラス方向)へ突出している。
【0022】
フランジ部30に係る寸法関係ついてより詳しく述べる。フランジ部30が主部26の前後の側面に設けられていることにより、ホルダ部24の前後幅W1は、面状コンタクト22の幅W2よりも大きくなっている(
図3参照)。ホルダ部24と面状コンタクト22の前後中心は同じ位置にあり、前後2つのフランジ部30が面状コンタクト22を挟む位置にあることで、面状コンタクト22に対する前後方向からの接触を防ぐ。また、フランジ部30が、主部26及び面状コンタクト22よりも左右方向に突出していることにより、ホルダ部24の左右幅W3は、装着された面状コンタクト22の幅W4よりも大きい。
【0023】
また、
図4に示す通り、フランジ部30の先端(Zp軸方向プラス側の端部)は、ホルダ部24に装着された面状コンタクト22の先端(折り返しされた曲面部の上端部)よりも上(Zp軸方向プラス側、挿入方向)に突出している。ハウジング11の上面を基準面とすると、フランジ部30の先端までの高さH1は、装着された面状コンタクト22の先端までの高さH2よりも高い(
図4参照)。
【0024】
フランジ部30の先端部は、外向きのテーパ面34を有するように面取りされている(
図3において破線で引き出した拡大部を参照)。詳細には、前方側のフランジ部30においては、前方斜め上向きの法線を有する前方テーパ面34fと、左斜め上向き又は右斜め上向きの法線を有する左右テーパ面34sと、を有する。後方側のフランジ部30においては、後方斜め上向きの法線を有する後方テーパ面34rと、左斜め上向き又は右斜め上向きの法線を有する左右テーパ面34sと、を有する。
【0025】
なお、本実施形態では、2つのフランジ部30があるホルダ部24について説明しているが、フランジ部30は、主部26の前側面又は後側面の一方のみに設けられた、上面視T字状のホルダ部であってもよい。つまり、1つのホルダ部24について、主部26に隣接した少なくとも一方の側面にフランジ部30を設けた構成としてもよい。この場合、位置決め効果をより発揮させるために、フランジ部30の各寸法のW1とW2の差、及びW3とW4との差を、
図3に示す2つのフランジ部30があるホルダ部24のそれよりも大きくすることが望ましい。
【0026】
図5は、レセプタクル50の斜視分解図である。
レセプタクル50は、部品構成として、非導電性の基部であるハウジング51と、複数のピン用端子60(60a、60b)と、挿入部70と、を有する。ハウジング51は、左右(Yr軸方向)の中央にピン用端子60を装着する複数の端子取付部53を有し、左右両端に挿入部70が配置される。
【0027】
ピン用端子60(60a、60b)は、コンタクトピン12に1対1に対応して用意される導電体であって、側面視(Yr方向視)すると階段上に折れ曲がった板金部品である。1つのピン用端子60は、第1接触部61と、第2接触部62と、これらを線状に連結する連結部63と、を有する。ピン用端子60は、連結部63の寸法違いで2種類(第1種ピン用端子60a、第2種ピン用端子60b)があり、これら2種類が左右方向へ交互に配列されて、端子取付部53に装着される。
【0028】
第1接触部61は、プラグ10が第1挿抜方向D1(
図1参照)から差し込まれた時にコンタクトピン12と接触するために用意された法線が上向き(Zr軸プラス方向)を向いた矩形面を有する拡幅部である。
【0029】
第2接触部62は、プラグ10が第2挿抜方向D2(
図1参照)から差し込まれた時にコンタクトピン12と接触するために用意された法線が前向き(Xr軸プラス方向)を向いた矩形面を有する拡幅部である。
【0030】
連結部63は、下方から第1接触部61→第2接触部62の順にこれらを一体的に繋ぎ、端子取付部53との係合を担う。下端(Zr軸マイナス側端部)の連結部63は、上下に直状に成形されており、端子取付部53の上下貫通孔に挿通して、下端がレセプタクル50の下面に露出する。上端の連結部63は、鍵型に折り曲げられており、端子取付部53の係合穴に差し込まれて係止される。中間の連結部63の寸法違いで、ピン用端子60は第1種ピン用端子60aと第2種ピン用端子60bとに分けられる。
【0031】
挿入部70は、プラグ10の端子部20が挿入される部位であって、1つのプラグ10に対して1つの挿入部70が用意されている。1つの挿入部70は、直方体の内部空間73と、面状コンタクト22との電気的接続を形成して電力を供給するメス端子80と、を有する。
【0032】
内部空間73は、第1挿抜方向D1に向けて開口する第1開口部71と、第2挿抜方向D2に向けて開口する第2開口部72と、を有する。第1開口部71及び第2開口部72は、開口縁の4辺全てに、法線が内向きのテーパ面74を有する。
【0033】
内部空間73は、プラグ10の端子部20を収容可能な形状とサイズを有する。
但し、内部空間73の内寸と端子部20の外寸(具体的には、ホルダ部24の前後幅W1、ホルダ部24の左右幅W3;
図3参照)との嵌め合い寸法の公差(許容誤差)は、(1)挿入部70へ挿抜されるプラグ10を内部空間73の開口部内側面に適度に摺接させることで、コネクタ2の接続操作する際のガイド機能を発揮させ、且つ(2)挿入完了時には、前後方向(Xr軸方向)及び左右方向(Yr軸方向)において「位置決め」として機能するのに適当となるように設定されている。具体的には、
コンタクトピン12の先端が対応する第1接触部61又は第2接触部62の範囲内に位置するように設定されている。
【0034】
図6は、メス端子80の斜視図である。理解を容易にするために、オス端子に相当する面状コンタクト22を追加で示している。
図7は、メス端子80の上面図である。
メス端子80は、内部空間73の底面に装着される導電体の板金部品である。メス端子80は、第1挿抜方向D1又は第2挿抜方向D2から挿入された面状コンタクト22と接触して電気回路を形成する。
【0035】
具体的には、メス端子80は、基部81と、基部81より延設された係合片82と、第1挿抜方向D1へ向けて基部81より延設された4つの腕部83(第1腕部83a、第2腕部83b、第3腕部83c、第4腕部83d)と、を有する。
【0036】
基部81は、前後方向に長い平坦状であり、係合片82によって挿入部70の内部空間73に設けられた係合孔と係合して装着・固定される。
【0037】
腕部83(83a~83d)の第1挿抜方向D1(上下方向)における長さは、第1腕部83aと第2腕部83bは同じ第1の長さを有し、第3腕部83cと第4腕部83dは、第1の長さよりも長い同じ第2の長さを有する。
【0038】
第1腕部83aは、基部81の右側(Yr軸プラス側)から上方に向けて延設され、第2腕部83bは、基部81の左側(Yr軸マイナス側)から上方に向けて延設されている。これらの腕部は、基部81を挟んで対向配置されており、第1腕部ペア84aを形成する。
【0039】
第3腕部83cと第4腕部83dは、第1腕部83a及び第2腕部83bよりも第2挿抜方向D2(前後方向)の後方位置に設けられている。第3腕部83cは、基部81の右側(Yr軸プラス側)から上方に向けて延設され、第4腕部83dは、基部81の左側(Yr軸マイナス側)から上方に向けて延設されている。これらの腕部は基部81を挟んで対向配置されており、第2腕部ペア84bを形成する。
【0040】
第1腕部ペア84aが前方側、第2腕部ペア84bが後方側となるように、複数の腕部ペアが、第2挿抜方向D2に沿って配置されている。第1腕部ペア84aと第2腕部ペア84bは、組毎(ペア毎)に、対向する位置に接点Pを有している。なお、接点Pは理解し易いように便宜的に黒丸の点状で
図6に示しているが、面状コンタクト22の平坦部との接触は点Pを含む腕部83(83a~83d)の前後方向に長い線接触或いは面接触となる。
【0041】
接点Pは、それぞれの腕部83(83a~83d)の上方先端近傍にあり、各腕部ペア84(84a,84b)の左右方向の間が最も狭くなっている部位が該当する。
【0042】
図7に示すように、第1腕部ペア84aは、対向する腕部83の第1開口部71に近い側の端部に、第1開口部71に向けてメス端子80の左右方向における第1腕部83aと第2腕部83bとの距離を拡開する第1傾斜部85を有する。同様に、第2腕部ペア84bは、対向する腕部83の第1開口部71に近い側の端部に、第1開口部71に向けてメス端子80の左右方向における第3腕部83cと第4腕部83dとの距離を拡開する第1傾斜部85を有する。
【0043】
また、第1腕部ペア84aは、対向する腕部83の第2開口部72に近い側の端部に、
第2開口部72に向けてメス端子80の左右方向における第1腕部83aと第2腕部83bとの距離を拡開する第2傾斜部86を有する。同様に、第2腕部ペア84bは、対向する腕部83の第2開口部72に近い側の端部に、第2開口部72に向けてメス端子80の左右方向における第3腕部83cと第4腕部83dとの距離を拡開する第2傾斜部86を有する。
【0044】
第2傾斜部86は、各腕部83(83a~83d)の接点Pから第2開口部72に向けて延設されており、第2傾斜部86の面は接点Pまで連続的に連なっている。各腕部83(83a~83d)における接点Pと、第1傾斜部85と、第2傾斜部86とは、連続する屈曲形状で構成されており、板金加工により成形される。
【0045】
接点Pは、対向する腕部83(83a~83d)の第1傾斜部85の対向距離(左右方向距離W6(
図7参照))が最も小さくなる部位であり、且つ、対向する第2傾斜部86にとっても対向距離(左右方向距離W6)が最も小さくなる部位に当たる。なお、接点Pの左右方向距離W6は、ホルダ部24に装着された面状コンタクト22の左右方向幅W4(
図3参照)よりも僅かに小さく設定されている。
【0046】
図5に戻り、内部空間73の内面には、装着状態のメス端子80の腕部83(83a~83d)に対面する各部位に、腕部83(83a~83d)を収容可能な凹部75(1つの内部空間73当たり4つずつ)が設けられている。
【0047】
レセプタクル50に係る寸法関係について、詳しく述べると、挿入部70の上端位置すなわち第1開口部71の開口位置は、端子取付部53に取り付けられているピン用端子60の第1接触部61よりも、上方(Zr軸プラス側)にある(
図1の高さH3)。挿入部70の前端位置すなわち第2開口部72の開口位置は、端子取付部53に取り付けられているピン用端子60の第2接触部62よりも、前方(Xr軸プラス側)にある(
図1の高さH4)。
【0048】
次に、
図1及び
図8~
図10を、参照しながらプラグ10を第1挿抜方向D1から接続するコネクタ2の接続操作について説明する。
図1に示すように、プラグ10を第1挿抜方向D1からレセプタクル50に接続するには、プラグ10の正面(Xp軸プラス方向)とレセプタクル50の正面(Xr軸プラス方向)とを対向させる相対姿勢にして、プラグ10の端子部20をレセプタクル50の挿入部70へ差し込むようにして近づける。
【0049】
プラグ10において、端子部20の上端位置は、コンタクトピン12の先端よりも突出している。また、レセプタクル50において、挿入部70の第1開口部71の開口位置は、端子取付部53に取り付けられているピン用端子60の第1接触部61よりも上方にある。よって、
図8に示すように、プラグ10をレセプタクル50に接近させると、最初に、端子部20と第1開口部71とが接触する。正確には、端子部20のフランジ部30と第1開口部71とが接触する。
【0050】
フランジ部30の先端には、テーパ面34(34f、34s、34r;
図3参照)が設けられている。また、第1開口部71にもテーパ面74が設けられている(
図5参照)。よって、フランジ部30の先端が、僅かに第1開口部71からずれた位置で接触したとしても、テーパ面34及びテーパ面74によって、端子部20が第1開口部71に対してあるべき位置関係になるように位置合わせのガイド機能が発揮され、スムーズな挿入開始が可能となる。
【0051】
図9に示すように、フランジ部30の先端が第1開口部71に入ってしまうと、フランジ部30の外側面が、挿入部70の内部空間73の内側面と摺接するようになり、第1挿抜方向D1(この場合、挿入方向)へのガイド機能が発揮される。
【0052】
端子部20には、Yp軸方向に離れた位置である前後それぞれにフランジ部30が設けられている。その前後一対のフランジ部30の外側を上面視において囲ったXpYp断面形状は、挿入部70の内部空間73のXrYr断面形状に適合する形状及びサイズである。よって、挿入部70に挿入された端子部20の位置は、一対のフランジ部30によって、挿抜方向に直交する面に平行な方向に位置決めされた状態となる。そのため、プラグ10は、複数のコンタクトピン12それぞれが、対応するピン用端子60の第1接触部61に対して真正面から(Zr軸プラス方向から)接近するように相対姿勢が保持され続ける。この位置決めの機能は、1つの端子部20によっても発揮されるが、プラグ10は、複数の端子部20を備えている。そのため、位置決めの機能が確実且つ安定的に発揮される。
【0053】
端子部20が第1開口部71へ挿入された後、間もなくして、面状コンタクト22の上端の折り曲げ部分が、メス端子80の第1傾斜部85に当接する。面状コンタクト22は、先端部を第1傾斜部85に摺接させながら、腕部83(83a~83d)を左右に押し広げつつ更に挿入される。この時、腕部83(83a~83d)は、それぞれ内部空間73の凹部75(
図5参照)へ入るように左右外側へ接触を維持しながら撓んで、端子部20が更に挿入されるためのスペースを空けてゆく。
【0054】
更に挿入が進むと、やがてプラグ10のハウジング11の上面(詳しくは端子部20の根元にあたる部位)とレセプタクル50の挿入部70の上面とが接触するに至り、
図10に示すように挿入完了状態となる。コネクタ2としては接続完了状態となる。
【0055】
接続完了状態になる前に、各コンタクトピン12の先端は、対応するピン用端子60の第1接触部61に接触を開始する。ガイド機能により、両者は正対する相対姿勢のままに接近・接触する。このため、何れのコンタクトピン12も、斜めに接触して無理な力が作用するようなことがなく、挿入過程で本来接触するべきではない他所にぶつかることもない。
【0056】
内部空間73の内寸と端子部20の外寸との嵌め合い寸法公差(許容誤差)は、挿入完了時に前後方向(Xr軸方向)及び左右方向(Yr軸方向)において「位置決め」として機能するのに適当となるように設定されている。このため、各コンタクトピン12は、対応するピン用端子60の第1接触部61の範囲内に確実に接触するように位置決めされる。
【0057】
接続完了状態において、面状コンタクト22は、左右側方の平面部位で、メス端子80の4つの腕部83(83a~83d)と4点で接続する。複数の接点で接続することで、比較的大きな電流を低抵抗で且つ安定的に通流させることが可能になる。
【0058】
コネクタ2の接続を解除するには、プラグ10をレセプタクル50から引き離すように解除操作すればよい。端子部20と挿入部70との位置関係や各部の状態は、上述した接続時の逆を辿る。よって、解除操作過程においても、コンタクトピン12は、解除途中で、本来接触するべきではない他所にぶつかることはない。
【0059】
プラグ10を第2挿抜方向D2からレセプタクル50へ接続する場合は、プラグ10の上端(Zp軸プラス側端部)を、レセプタクル50の正面(Xr軸プラス方向)と対向するように向けて(Xr軸マイナス方向にむけて)、端子部20を第2開口部72に挿入するように接続させればよい。プラグ10を第1挿抜方向D1からレセプタクル50へ接続
する場合と、同様の効果を得ることができる。
【0060】
〔他の実施形態〕
以上、幾つかの実施形態について説明したが、本発明を適用可能な形態は上記形態に限定されるものではなく適宜構成要素の追加・省略・変更を施すことができる。
【0061】
例えば、上記実施形態では、端子部20を2つ設けた構成としたが、
図11に示すコネクタ2Bのプラグ10Bのように、端子部20をハウジング11の左側(或いは右側)に1つだけ設ける構成としてもよい。コネクタ2Bのレセプタクル50Bは、挿入部70を1つだけ有することになる。
【0062】
また、
図12に示すコネクタ2Cのプラグ10Cのように、端子部20の設置位置は、ハウジング11の左右中間位置であってもよい。コネクタ2Cのレセプタクル50Cは、挿入部70を左右中間位置に有することになる。
【0063】
また、
図13に示すコネクタ2Dのプラグように、2つ以上の端子部20を設け、コンタクトピン12を省略した構成としてもよい。当該構成では、面状コンタクト22は、電源用の電極のみならず信号用の電極として用いるとしてもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、レセプタクルという呼称を用いて例示したが、レセプタクルという呼称は便宜上の呼称に過ぎない。ジャックなどの別の呼称の形態も同じ実施形態である。
【0065】
上述した実施形態及びその変形例を含め、本明細書の開示は、次のように概括することができる。
【0066】
本開示の態様は、レセプタクルに対して所定の挿抜方向に挿抜されるプラグであって、前記レセプタクルの挿入部に挿抜される端子部、を備え、前記端子部は、コンタクトと、前記コンタクトを保持するホルダ部と、を有し、前記ホルダ部は、先端部が前記コンタクトの挿入方向先端部よりも前記挿抜方向の挿入方向に向けて突出し、且つ、前記挿抜方向に直交する所定の直交方向に突出したフランジ部、を有し、前記フランジ部は、前記挿入部に挿入された前記端子部の前記直交方向の位置を位置決めする、プラグである。
【0067】
本開示の態様によれば、端子部は、レセプタクルとの間での電気的接続を成す機能だけでなく、レセプタクルの挿入部に挿抜されることで挿抜作業中の相対移動方向を規制・安定化させるガイド機能を兼ねる。よって、ガイド機能を担うガイド構造を別途専用に設けた従来のコネクタよりも小型化できる。
【0068】
前記ホルダ部の前記先端部は、テーパ面を有してもよい。
【0069】
これにより、端子部が挿入部へスムーズに挿入されるようになる。
【0070】
前記ホルダ部は、前記コンタクトを挟んだ少なくとも一方に前記フランジ部を有し、前記一対のフランジ部が、前記挿入部に挿入された前記端子部の位置であって前記挿抜方向に直交する面に平行な方向の位置、を位置決めするとしてもよい。
【0071】
これにより、ガイド機能の作用効果を高めることができる。
【0072】
前記コンタクトは、面状の導電体であってもよい。
【0073】
これにより、面状の部位で、複数の接点で電気的接続可能になり、比較的大きな電流を低抵抗で且つ安定的に通流させることが可能になる。
【0074】
前記コンタクトは、折り曲げ形状の導電体であってもよい。
【0075】
これにより、1つのコンタクトで、通電接触用のより広い面積を確保できる。
【0076】
前記ホルダ部は、前記フランジ部に隣接して主部を有し、前記コンタクトは、前記主部の表面に沿った折り曲げ形状を成す面状の導電体であってもよい。
【0077】
これにより、コンタクトを確実に保持しつつ、1つのコンタクトで、通電接触用のより広い面積を確保できる。
【0078】
前記直交方向に離れた位置に前記端子部を2つ備えてもよい。
【0079】
これにより、端子部が兼ねるガイド機能を向上させることができる。
【0080】
前記2つの端子部の間に複数のコンタクトピンを備えてもよい。
【0081】
これにより、1つのコネクタで複数の電気的接続を実現できる。
【0082】
また、別の態様として、上記態様の何れかのプラグと、前記プラグが前記挿抜方向に挿抜される前記レセプタクルと、を具備するコネクタを構成してもよい。
【0083】
この別の態様によれば、上記態様と同様の効果を得るコネクタを実現できる。
【0084】
また、別の態様として、上記態様の何れかのプラグの前記端子部が挿抜されることで当該プラグと電気的接続を可能とする、レセプタクルを構成してもよい。
【0085】
そして、前記レセプタクルは、前記挿入部がテーパ面を有してもよい。
【0086】
これにより、端子部を挿入部への挿入がスムーズになる。
【符号の説明】
【0087】
2,2B,2C,2D…コネクタ
10,10B,10C…プラグ
11…ハウジング
12…コンタクトピン
14…固定部
15…プローブ支持部
20…端子部
22…面状コンタクト
24…ホルダ部
26…主部
28…挿通孔
30…フランジ部
34…テーパ面
34f…前方テーパ面
34r…後方テーパ面
34s…左右テーパ面
50,50B,50C…レセプタクル
51…ハウジング
53…端子取付部
60…ピン用端子
60a…第1種ピン用端子
60b…第2種ピン用端子
61…第1接触部
62…第2接触部
63…連結部
70…挿入部
71…第1開口部
72…第2開口部
73…内部空間
74…テーパ面
75…凹部
80…メス端子
81…基部
82…係合片
83…腕部
83a…第1腕部
83b…第2腕部
83c…第3腕部
83d…第4腕部
84…腕部ペア
84a…第1腕部ペア
84b…第2腕部ペア
85…第1傾斜部
86…第2傾斜部
D1…第1挿抜方向
D2…第2挿抜方向
H1…高さ
H2…高さ
H3…高さ
H4…高さ
W3…左右幅
W4…左右方向幅
W6…左右方向距離