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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】アスファルト組成物
(51)【国際特許分類】
   E01C 7/18 20060101AFI20240823BHJP
   C08G 63/52 20060101ALI20240823BHJP
   C08L 67/06 20060101ALI20240823BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240823BHJP
   C08L 95/00 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
E01C7/18
C08G63/52
C08L67/06
C08L101/00
C08L95/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020182190
(22)【出願日】2020-10-30
(65)【公開番号】P2021076005
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2023-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2019199171
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】垣内 宏樹
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-019325(JP,A)
【文献】特表2019-508608(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0163995(US,A1)
【文献】特開平07-278439(JP,A)
【文献】特開2018-030996(JP,A)
【文献】特開2018-003580(JP,A)
【文献】特開2019-019663(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 7/18
C08G 63/52
C08L 67/06
C08L 101/00
C08L 95/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルト及びポリエステルを含有するアスファルト組成物であって、
前記ポリエステルが、アルコール成分由来の構成単位とカルボン酸成分由来の構成単位とを含み、
前記アルコール成分由来の構成単位は、脂肪族ジオール及び芳香族ジオールからから選ばれる少なくとも一種を含有するアルコール成分由来の構成単位を含み、
前記カルボン酸成分由来の構成単位が、分岐アルキルコハク酸及び分岐アルケニルコハク酸から選ばれる少なくとも一種を含有するカルボン酸成分由来の構成単位を含む、アスファルト組成物。
【請求項2】
前記カルボン酸成分中における分岐アルキルコハク酸及び分岐アルケニルコハク酸の総量が、カルボン酸成分100モル%中、3モル%以上50モル%以下である、請求項1に記載のアスファルト組成物。
【請求項3】
前記カルボン酸成分由来の構成単位が、分岐アルケニルコハク酸由来の構成単位を含む、請求項1又は2に記載のアスファルト組成物。
【請求項4】
前記ポリエステルの含有量が、アスファルト100質量部に対し1質量部以上25質量部以下である、請求項1~3のいずれかに記載のアスファルト組成物。
【請求項5】
熱可塑性エラストマーを更に含有する、請求項1~4のいずれかに記載のアスファルト組成物。
【請求項6】
前記熱可塑性エラストマーが、スチレン/ブタジエンブロック共重合体、スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体、スチレン/ブタジエンランダム共重合体、スチレン/イソプレンブロック共重合体、スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体、スチレン/イソプレンランダム共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、及びエチレン/アクリル酸エステル共重合体から選ばれる少なくとも1種である、請求項5に記載のアスファルト組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載のアスファルト組成物と、骨材と、を含むアスファルト混合物。
【請求項8】
請求項7に記載のアスファルト混合物で舗装された舗装体。
【請求項9】
請求項7に記載のアスファルト混合物を道路に施工してアスファルト舗装材層を形成する工程を含む、道路の舗装方法。
【請求項10】
加熱した骨材と、アスファルトと、ポリエステルとを混合する工程を含む、アスファルト混合物の製造方法であって、
前記ポリエステルが、アルコール成分由来の構成単位とカルボン酸成分由来の構成単位とを含み、
前記アルコール成分由来の構成単位は、脂肪族ジオール及び芳香族ジオールからから選ばれる少なくとも一種を含有するアルコール成分由来の構成単位を含み、
前記カルボン酸成分由来の構成単位が、分岐アルキルコハク酸及び分岐アルケニルコハク酸から選ばれる少なくとも一種を含有するカルボン酸成分由来の構成単位を含む、アスファルト混合物の製造方法。
【請求項11】
前記混合する工程において、
(i)加熱した骨材に、アスファルトを添加及び混合した後、ポリエステルを添加及び混合する、
(ii)加熱した骨材に、アスファルト及びポリエステルを同時に添加及び混合する、又は
(iii)加熱した骨材に、事前に加熱混合したアスファルトとポリエステルとの混合物を添加及び混合する、
請求項10に記載のアスファルト混合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路の舗装に用いられるアスファルト組成物、アスファルト混合物及びその製造方法、舗装体、並びに道路の舗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車道や駐車場、貨物ヤード、歩道等の舗装には、敷設が比較的容易であり、舗装作業開始から交通開始までの時間が短くてすむことから、アスファルト組成物を用いるアスファルト舗装が行われている。
このアスファルト舗装は、骨材をアスファルトで結合したアスファルト混合物によって路面が形成されているので、舗装道路は良好な硬度や耐久性を有している。
しかしながら、アスファルト舗装面は、長期使用によって轍やひび割れが入るため、舗装の補修を行う必要が生じ、維持費用が増大するとともに、自動車の交通に大きな影響を与える結果となっていた。
【0003】
特許文献1には、施工後の舗装面の耐久性に優れるアスファルト組成物を提供することを目的として、アスファルト、熱可塑性エラストマー及びポリエステルを含有してなり、前記ポリエステルが、90℃以上140℃以下の軟化点、及び40℃以上80℃以下のガラス転移点を有し、前記ポリエステルの比率が、アスファルト100質量部に対し1質量部以上17質量部以下であるアスファルト組成物が開示されている。
特許文献2には、常温での施工が可能であって、施工後早期に充分な強度が発現し、効率よく舗装体の形成又は補修を可能とする道路舗装用の組成物を提供することを目的として、酸価が3~100KOHmg/gの樹脂(A)を塩基性化合物で中和した水分散体と、炭素数1~5のアルコキシ基及びアミノ基を有するシランカップリング剤と、を含有し道路の舗装における骨材の結合材又は舗装体の表面層を構成する道路舗装用組成物が開示されている。
特許文献3には、瀝青質と骨材との付着性を強固にし、その結果、瀝青質に極めて優れた剥離防止剤効果を発現させることを目的として、特定の2価のカルボン酸もしくはその無水物からなる高耐久性加熱瀝青質用添加剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-019325号公報
【文献】特開2005-126998号公報
【文献】特開平07-278439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、アスファルトとポリエステルを含有する組成物を用いた場合、乾燥強度の強いアスファルト組成物が得られるが、よりいっそう、轍が付きにくい耐轍性の優れ、かつ、剥離抵抗性の高い舗装面を形成できるアスファルト組成物が求められる。
また、多雪地域で道路に散布する融雪剤として多用される塩化カルシウムは、その水溶液がアルカリ性を示すため、アスファルト舗装の劣化の原因となっている。しかし、従来技術ではアルカリ条件下での剥離抵抗性が不十分な傾向があるため、アルカリ条件下でも剥離抵抗性が高い舗装面を形成できるアスファルト組成物が特に求められる。
本発明は、施工後の舗装面の耐轍性に優れ、かつ、剥離抵抗性、特にアルカリ条件下での剥離抵抗性、の高いアスファルト組成物、アスファルト混合物及びその製造方法、舗装体、並びに道路の舗装方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の〔1〕~〔5〕に関する。
〔1〕アスファルト及びポリエステルを含有するアスファルト組成物であって、
前記ポリエステルが、アルキルコハク酸及びアルケニルコハク酸から選ばれる少なくとも一種を含有するカルボン酸成分由来の構成単位を含む、アスファルト組成物。
〔2〕上記〔1〕に記載のアスファルト組成物と、骨材と、を含むアスファルト混合物。
〔3〕上記〔2〕に記載のアスファルト混合物で舗装された舗装体。
〔4〕上記〔2〕に記載のアスファルト混合物を道路に施工してアスファルト舗装材層を形成する工程を含む、道路の舗装方法。
〔5〕加熱した骨材と、アスファルトと、ポリエステルとを混合する工程を含む、アスファルト混合物の製造方法であって、前記ポリエステルが、アルキルコハク酸及びアルケニルコハク酸から選ばれる少なくとも一種を含有するカルボン酸成分由来の構成単位を含む、アスファルト混合物の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、施工後の舗装面の耐轍性に優れ、かつ、アルカリ条件下でも剥離抵抗性の高いアスファルト組成物、アスファルト混合物及びその製造方法、舗装体、並びに道路の舗装方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[アスファルト組成物]
本発明のアスファルト組成物(以下、単に「アスファルト組成物」ともいう)は、アスファルト及びポリエステルを含有する。そして、ポリエステルが、アルキルコハク酸及びアルケニルコハク酸から選ばれる少なくとも一種を含有するカルボン酸成分由来の構成単位を含む。
以上によれば、施工後の舗装面の耐轍性(以下、単に「耐轍性」ともいう)に優れるアスファルト組成物が得られる。更にこの技術を応用して、アスファルト混合物及びその製造方法、舗装体、並びに道路の舗装方法を提供することができる。
【0009】
本発明の効果が得られる理由は定かではないが、以下のように考えられる。
ポリエステルを含有するアスファルト組成物は、アスファルテンとポリエステルが相溶し骨材界面の接着を強固にしていると推測される。しかしポリエステルは親水性が高くアルカリ条件で中和してしまうカルボン酸末端を有しているため、アルカリ条件下での安定性が十分でないといった課題がある。本発明では、アルキルコハク酸及びアルケニルコハク酸から選ばれる少なくとも一種を含有するカルボン酸成分由来の構成単位を含むポリエステルをアスファルト混合物に用いることで、疎水性が高く自由度が高いアルキル基又はアルケニル基がアスファルテンやポリエステル親水部を覆うように局在して存在することができる。その結果骨材界面へのアルカリ浸潤を抑制することができ、結果アルカリ条件下でも安定性が高く強固な骨材界面を維持できているものと推測される。
【0010】
本明細書における各種用語の定義等を以下に示す。
「バインダ混合物」とは、アスファルトと熱可塑性エラストマーとを含む混合物を意味し、例えば、後述の熱可塑性エラストマーで改質されたアスファルト(以下、「改質アスファルト」ともいう)を含む概念である。
ポリエステル中、「アルコール成分由来の構成単位」とは、アルコール成分の水酸基から水素原子を除いた構造を意味し、「カルボン酸成分由来の構成単位」とは、カルボン酸成分のカルボキシル基から水酸基を除いた構造を意味する。
「カルボン酸化合物」とは、そのカルボン酸のみならず、反応中に分解して酸を生成する無水物、及びカルボン酸のアルキルエステル(例えば、アルキル基の炭素数1以上3以下)も含む概念である。カルボン酸化合物がカルボン酸のアルキルエステルである場合、カルボン酸化合物の炭素数には、エステルのアルコール残基であるアルキル基の炭素数を算入しない。
【0011】
〔アスファルト〕
アスファルトとしては、例えば、種々のアスファルトが使用できる。例えば舗装用石油アスファルトであるストレートアスファルトの他、改質アスファルトが挙げられる。改質アスファルトとしては、ブローンアスファルト;熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂等の高分子材料で改質したアスファルト等が挙げられる。ストレートアスファルトとは、原油を常圧蒸留装置、減圧蒸留装置等で処理して得られる残留瀝青物質を意味する。また、ブローンアスファルトとは、ストレートアスファルトと重質油との混合物を加熱し、その後空気を吹き込んで酸化させることによって得られるアスファルトを意味する。耐轍性の観点からは、改質アスファルトが好ましい。
【0012】
アスファルト中のアスファルテン含有量は、施工後の舗装面の耐久性、すなわち耐轍性を向上させる観点から、アスファルト100質量%中、好ましくは15質量%以上、より好ましくは18質量%以上、更に好ましくは22質量%以上であり、そして、耐ひび割れ性の観点から、好ましくは40質量%以下、より好ましくは38質量%以下、更に好ましくは36質量%以下ある。
なお、アスファルト中のアスファルテン含有量は、石油学会規格JPI-5S-22-83「アスファルテンのカラムクロマトグラフィーによる組成分析法」により測定した値である。
【0013】
アスファルト組成物中のアスファルトの含有量は、耐轍性向上の観点から、アスファルト組成物100質量%中、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは75質量%以上、更に好ましくは80質量%以上であり、そして、好ましくは98質量%以下、より好ましくは96質量%以下、更に好ましくは95質量%以下である。
【0014】
〔熱可塑性エラストマー〕
アスファルト組成物は、耐轍性向上の観点から、熱可塑性エラストマーを含有することが好ましい。アスファルト及び熱可塑性エラストマーは、これらの混合物であるバインダ混合物として使用されることが好ましい。バインダ混合物としては、熱可塑性エラストマーで改質されたストレートアスファルト(改質アスファルト)等が挙げられる。
【0015】
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン/ブタジエンブロック共重合体(以下、単に「SB」ともいう)、スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体(以下、単に「SBS」ともいう)、スチレン/ブタジエンランダム共重合体(以下、単に「SBR」ともいう)、スチレン/イソプレンブロック共重合体(以下、単に「SI」ともいう)、スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体(以下、単に「SIS」ともいう)、スチレン/イソプレンランダム共重合体(以下、単に「SIR」ともいう)、エチレン/酢酸ビニル共重合体、及びエチレン/アクリル酸エステル共重合体からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。
エチレン/アクリル酸エステル共重合体の市販品としては、例えば、「Elvaroy」(デュポン社製)が挙げられる。
【0016】
これらの熱可塑性エラストマーの中でも、耐轍性をより向上させる観点から、スチレン/ブタジエンブロック共重合体、スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体、スチレン/ブタジエンランダム共重合体、スチレン/イソプレンブロック共重合体、スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体、及びスチレン/イソプレンランダム共重合体からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、スチレン/ブタジエンランダム共重合体及びスチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0017】
アスファルト組成物中の熱可塑性エラストマーの含有量は、耐轍性をより向上させる観点から、アスファルト組成物100質量%中、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
【0018】
アスファルト組成物において、熱可塑性エラストマーの比率は、耐轍性をより向上させる観点から、アスファルト100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上、更に好ましくは2質量部以上であり、そして、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは10質量部以下、更に好ましくは5質量部以下である。
【0019】
〔ポリエステル〕
本発明のアスファルト組成物は、アルコール成分由来の構成単位とカルボン酸成分由来の構成単位とを含むポリエステルを含む。ポリエステルは、施工後の舗装面の耐轍性をより向上させる観点から、アルキルコハク酸及びアルケニルコハク酸から選ばれる少なくとも一種を含有するカルボン酸成分由来の構成単位を含む。ポリエステルは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0020】
<アルコール成分>
アルコール成分としては、例えば、ジオール、3価以上8価以下の多価アルコールが挙げられる。ジオールとしては、脂肪族ジオール、芳香族ジオールが挙げられる。これらのアルコール成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0021】
脂肪族ジオールとしては、例えば、炭素数2以上20以下の脂肪族ジオールである。脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-ブテンジオール、1,3-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオールが挙げられる。
3価以上の多価アルコールは、例えば、3価アルコールである。3価以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリンが挙げられる。
【0022】
アルコール成分は、施工後の舗装面の耐轍性をより向上させる観点から、好ましくは、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物を含み、より好ましくは式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物を含む。
【化1】

〔式中、OR1及びR1Oはアルキレンオキシドであり、R1は炭素数2又は3のアルキレン基、x及びyはアルキレンオキシドの平均付加モル数を示す正の数を示し、xとyの和は好ましくは1以上、より好ましくは1.5以上であり、そして、好ましくは16以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは4以下である。〕
【0023】
式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物としては、例えば、ビスフェノールA〔2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン〕のプロピレンオキシド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物が挙げられる。これらのビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0024】
アルコール成分中におけるビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物の量は、アスファルトへの溶融分散性を高め、優れた耐轍性を得る観点から、アルコール成分100モル%中、好ましくは60モル%以上、より好ましくは65モル%以上、更に好ましくは80モル%以上であり、そして、100モル%以下である。ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物を60モル%以上含むアルコール成分由来の構成単位を含むポリエステルは、アスファルトが熱可塑性エラストマーで改質されたアスファルトである場合に、施工後の舗装面の耐轍性を更に向上させることができ、好ましい。特に熱可塑性エラストマーの中では、前述のSBSやSBRがこの効果を発現しやすい。
【0025】
アルコール成分中におけるビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物/ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物のモル比率は、好ましくは5/95以上、より好ましくは10/90以上、更に好ましくは15/85以上、更に好ましくは20/80以上であり、そして、アスファルトへの溶融分散性をより高め、優れた耐轍性を得る観点から、好ましくは90/10以下、より好ましくは60/40以下、更に好ましくは40/60以下、更に好ましくは30/70以下である。
【0026】
<カルボン酸成分>
カルボン酸成分としては、施工後の舗装面の耐轍性をより向上させる観点から、アルキルコハク酸及びアルケニルコハク酸から選ばれる少なくとも一種を含み、アルケニルコハク酸を含むことが好ましい。
【0027】
アルキルコハク酸及びアルケニルコハク酸におけるアルキル基及びアルケニル基の炭素数は、施工後の舗装面の耐轍性をより向上させる観点から、好ましくは9以上、より好ましくは10以上であり、そして、好ましくは18以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下である。
アルキル基及びアルケニル基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよいが、施工後の舗装面の耐轍性をより向上させる観点から、分岐鎖であることが好ましい。分岐構造はアルキル基及びアルケニル基のいかなる部分に存在してもよい。
したがって、ポリエステルは、分岐アルケニルコハク酸由来の構成単位を含むことが好ましい。
アルキルコハク酸及びアルケニルコハク酸はそれぞれ、施工後の舗装面の耐轍性をより向上させる観点から、2種類以上を含む混合物であることが好ましい。ここでいう「種類」は、アルキル基又はアルケニル基に由来するものであり、アルキル基又はアルケニル基の炭素数の鎖長が異なるものや構造異性体は、異なる種類のアルキルコハク酸又はアルケニルコハク酸として扱う。
【0028】
したがって、アルキルコハク酸は、施工後の舗装面の耐轍性をより向上させる観点から、炭素数が好ましくは9以上、より好ましくは10以上であり、そして、好ましくは18以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下の分岐鎖のアルキル基を有するアルキルコハク酸の2種以上を含む混合物であることが好ましい。また、アルケニルコハク酸は、施工後の舗装面の耐轍性をより向上させる観点から、好ましくは9以上、より好ましくは10以上であり、そして、好ましくは18以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下の分岐鎖のアルケニル基を有するアルケニルコハク酸の2種以上を含む混合物であることが好ましい。
【0029】
アルキルコハク酸及びアルケニルコハク酸は、アルキレン基を有する化合物(アルキレン化合物)と、マレイン酸、フマル酸及びそれらの酸無水物から選ばれる少なくとも1種とから得られるものであることが好ましい。
【0030】
アルキレン化合物としては、炭素数が好ましくは9以上、より好ましくは10以上であり、そして、好ましくは18以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下である化合物であり、具体的には、エチレン、プロピレン、イソブチレン、ノルマルブチレン等から得られるもの、例えばこれらのトリマー、テトラマー等が好ましく用いられる。アルキレン化合物の合成に使用される好適な原料としては、構造異性体数を増やす観点から、分子量の小さいプロピレンが好ましい。
【0031】
アルキルコハク酸及びアルケニルコハク酸は、任意の製造方法により得ることができるが、例えば、アルキレン化合物と、マレイン酸、フマル酸及びそれらの酸無水物から選ばれる少なくとも1種とを混合し、加熱することで、エン反応を利用することにより得られる(特開昭48-23405号公報、特開昭48-23404号公報、米国特許第3,374,285号明細書等を参照)。マレイン酸、フマル酸及びそれらの酸無水物のなかでは、反応性の観点から、無水マレイン酸が好ましい。アルキレン化合物の合成に使用される好適な触媒としては、液体リン酸、固体リン酸、タングステン、三フッ化ホウ素錯体等が挙げられる。なお、構造異性体の数の制御を容易にし、耐轍性を向上させる観点から、ランダム重合した後に、蒸留により調整する方法が好ましい。
【0032】
カルボン酸成分中におけるアルキルコハク酸及びアルケニルコハク酸の総量は、アスファルトへの溶融分散性を高め、優れた耐轍性を得る観点から、カルボン酸成分100モル%中、好ましくは3モル%以上、より好ましくは8モル%以上、更に好ましくは15モル%以上であり、そして、好ましくは50モル%以下、より好ましくは40モル%以下、更に好ましくは30モル%以下である。
【0033】
アルキルコハク酸及びアルケニルコハク酸以外に用いられる酸成分としては、アルキルコハク酸及びアルケニルコハク酸以外の脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、3価以上の多価カルボン酸が挙げられる。これらのカルボン酸成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0034】
脂肪族ジカルボン酸の主鎖の炭素数は、施工後の舗装面の耐轍性をより向上させる観点から、好ましくは3以上、より好ましくは4以上であり、そして、好ましくは10以下、より好ましくは8以下である。
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、フマル酸、マレイン酸、シュウ酸、マロン酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸が挙げられる。中でも、フマル酸、マレイン酸及びアジピン酸からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、アジピン酸がより好ましい。
【0035】
芳香族ジカルボン酸の例としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が挙げられ、施工後の舗装面の耐轍性をより向上させる観点から、イソフタル酸、テレフタル酸が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。
【0036】
3価以上の多価カルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸が挙げられる。
【0037】
カルボン酸成分中における芳香族ジカルボン酸の含有量は、施工後の舗装面の耐轍性をより向上させる観点から、カルボン酸成分100モル%中、好ましくは50モル%以上、より好ましくは60モル%以上、更に好ましくは70モル%以上であり、そして、好ましくは97モル%以下、より好ましくは92モル%以下、更に好ましくは85モル%以下である。
【0038】
(アルコール成分由来の構成単位に対するカルボン酸成分由来の構成単位のモル比)
アルコール成分由来の構成単位に対するカルボン酸成分由来の構成単位のモル比〔カルボン酸成分/アルコール成分〕は、酸価を調整して耐轍性を向上させる観点から、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.8以上であり、そして、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.3以下、更に好ましくは1.1以下である。
【0039】
本発明のポリエステルは、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステルであってもよい。変性されたポリエステルは、具体的には、特開平11-133668号公報、特開平10-239903号公報、特開平8-20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステルが挙げられる。好ましい変性されたポリエステルは、ポリエステルをポリイソシアネート化合物でウレタン伸長したウレタン変性ポリエステルが挙げられる。
【0040】
(ポリエステルの物性)
ポリエステルの軟化点は、耐轍性を得る観点から、好ましくは90℃以上、より好ましくは95℃以上、更に好ましくは100℃以上であり、そして、好ましくは140℃以下、より好ましくは130℃以下、更に好ましくは125℃以下、更に好ましくは120℃以下、更に好ましくは115℃以下である。
【0041】
ポリエステルの酸価は、骨材へのポリエステルの吸着を促進し、耐轍性をより向上させる観点から、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは3mgKOH/g以上、更に好ましくは5mgKOH/g以上であり、そして、舗装面の耐水性を高める観点から、好ましくは60mgKOH/g以下、より好ましくは40mgKOH/g以下、更に好ましくは30mgKOH/g以下である。
【0042】
ポリエステルの水酸基価は、耐轍性をより向上させる観点から、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは2mgKOH/g以上、更に好ましくは5mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは33mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下、更に好ましくは25mgKOH/g以下、更に好ましくは20mgKOH/g以下である。
【0043】
ポリエステルのガラス転移点は、耐轍性を得る観点から、好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上、更に好ましくは50℃以上、更に好ましくは53℃以上であり、そして、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下、更に好ましくは65℃以下、更に好ましくは60℃以下である。
【0044】
軟化点、酸価、水酸基価、及びガラス転移点は、実施例に記載の方法により測定することができる。なお、軟化点、酸価、水酸基価、及びガラス転移点は、原料モノマー組成、分子量、触媒量又は反応条件により調整することができる。
【0045】
(ポリエステルの製造方法)
ポリエステルの製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、上述したアルコール成分及びカルボン酸成分を重縮合することにより製造することができる。
重縮合反応の温度は、特に限定されるものではないが、反応性とモノマー分解温度を制御し、耐轍性を向上させる観点から、好ましくは160℃以上260℃以下である。
【0046】
重縮合反応には、反応性を制御して耐轍性を向上させる観点とコストの観点から、ジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)等のSn-C結合を有していない錫(II)化合物を触媒として、アルコール成分とカルボン酸成分との総量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上、そして、好ましくは1.5質量部以下、より好ましくは0.6質量部以下、用いてもよい。
重縮合反応には、反応性を制御して耐轍性を向上させる観点とコストの観点から、触媒に加えて、没食子酸等のピロガロール化合物を助触媒として、アルコール成分とカルボン酸成分との総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.005質量部以上、更に好ましくは0.01質量部以上、そして、好ましくは0.15質量部以下、より好ましくは0.10質量部以下、更に好ましくは0.05質量部以下、用いてもよい。
【0047】
(ポリエステルの含有量)
アスファルト組成物中のポリエステルの含有量は、コストと耐轍性との両立の観点からは、アスファルト100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上であり、そして、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下、更に好ましくは5質量部以下である。
【0048】
〔分散剤〕
アスファルト組成物は、分散剤を含んでいてもよい。
分散剤は、アスファルトに溶解するものであり、且つポリエステルとの親和性があるものが好ましい。
分散剤としては、例えば、高分子分散剤、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルカノールアミン等の界面活性剤等を挙げることができる。
高分子分散剤としては、例えば、ポリアミドアミンとその塩、ポリカルボン酸とその塩、高分子量不飽和酸エステル、変性ポリウレタン、変性ポリエステル、変性ポリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル系共重合体、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物等が挙げられる。これらの分散剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
分散剤は、高温保管安定性を向上させ、耐轍性を向上させる観点から、好ましくは高分子分散剤である。なお、本発明における「高分子分散剤」とは、重量平均分子量が1,000以上の分散剤を意味する。ポリマー種にもよるが、重量平均分子量としては、好ましくは2,000以上、より好ましくは4,000以上であり、そして、好ましくは80,000以下、より好ましくは40,000以下である。
【0049】
分散剤は、耐轍性を向上させる観点から、好ましくは塩基性官能基を有する。塩基性官能基とは、共役酸のpKaが-3以上となるような基を意味する。塩基性官能基としては、例えば、アミノ基、イミノ基、4級アンモニウム基が挙げられる。
分散剤の塩基価は、高温保管安定性を向上させ、耐轍性を向上させる観点から、好ましくは10mgKOH/g以上、より好ましくは20mgKOH/g以上、更に好ましくは30mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは150mgKOH/g以下、より好ましくは120mgKOH/g以下、更に好ましくは100mgKOH/g以下である。塩基価の測定方法は、JIS K7237:1995に規定の方法により測定する。
【0050】
市販の分散剤としては、例えば、「ディスパー」シリーズの「byk-101」、「byk-130」、「byk-161」、「byk-162」、「byk-170」、「byk-2020」、「byk-2164」、「byk-LPN21324」(以上、ビックケミー(BYK)社製);「ソルスパース」シリーズの「9000」、「11200」、「13240」、「13650」、「13940」、「17000」、「18000」、「24000」、「28000」、「32000」、「38500」、「71000」(以上、ルブリゾール社製);「アジスパー」シリーズの「PB821」、「PB822」、「PB880」、「PB881」(以上、味の素ファインテクノ株式会社製);「エフカ」シリーズの「46」、「47」、「48」、「49」、「4010」、「4047」、「4050」、「4165」、「5010」(以上、BASF社製);「フローレンTG-710」(共栄社化学株式会社製);「TAMN-15」(日光ケミカルズ株式会社製)が挙げられる。
【0051】
分散剤の含有量は、耐轍性を向上させる観点から、ポリエステル100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは4質量部以上であり、そして、好ましくは80質量部以下、より好ましくは60質量部以下、更に好ましくは40質量部以下、更に好ましくは30質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。
【0052】
[アスファルト混合物]
本発明の実施形態に係るアスファルト混合物は、前述のアスファルト組成物、及び骨材を含有する。つまり、アスファルト混合物は、アスファルト、ポリエステル及び骨材を含有し、好ましくはアスファルト、熱可塑性エラストマー、ポリエステル及び骨材を含有する。更に、本発明の実施形態に係る舗装体は、アスファルト混合物で舗装されてなる。
アスファルト混合物中のアスファルト組成物の含有量は、耐轍性をより向上させる観点から、アスファルト混合物100質量%中、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは4質量%以上であり、そして、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは8質量%以下である。
【0053】
〔骨材〕
骨材としては、例えば、砕石、玉石、砂利、砂、再生骨材、セラミックス等を任意に選択して用いることができる。また、骨材としては、粒径2.36mm以上の粗骨材、粒径2.36mm未満の細骨材のいずれも使用することができる。
粗骨材としては、例えば、粒径範囲2.36mm以上4.75mm以下の砕石、粒径範囲4.75mm以上12.5mm以下の砕石、粒径範囲12.5mm以上19mm以下の砕石、粒径範囲19mm以上31.5mm以下の砕石が挙げられる。
細骨材は、好ましくは粒径0.075mm以上2.36mm未満の細骨材である。細骨材としては、例えば、川砂、丘砂、山砂、海砂、砕砂、細砂、スクリーニングス、砕石ダスト、シリカサンド、人工砂、ガラスカレット、鋳物砂、再生骨材破砕砂が挙げられる。
上記の粒径はJIS A5001:1995に規定される値である。
これらの中でも、粗骨材と細骨材との組合せが好ましい。
【0054】
なお、細骨材には、粒径0.075mm未満のフィラー(例えば、砂)が含まれていてもよい。フィラーとしては、砂、フライアッシュ、炭酸カルシウム、消石灰等が挙げられる。このうち、乾燥強度向上させ、耐轍性を向上させる観点から、炭酸カルシウムが好ましい。
【0055】
フィラーの平均粒径は、乾燥強度向上させ、耐轍性を向上させる観点から、好ましくは0.001mm以上であり、そして、好ましくは0.05mm以下、より好ましくは0.03mm以下、更に好ましくは0.02mm以下である。フィラーの平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定することができる。ここで、平均粒径とは、体積累積50%の平均粒径を意味する。
【0056】
(フィラー平均粒径の測定方法)
フィラーの平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置「LA-950」(株式会社堀場製作所製)を用い、以下に示す条件で測定した値である。
・測定方法:フロー法
・分散媒:エタノール
・試料調製:2mg/100mL
・分散方法:撹拌、内蔵超音波1分
【0057】
粗骨材と細骨材との質量比率は、耐轍性をより向上させる観点から、好ましくは10/90以上、より好ましくは20/80以上、更に好ましくは30/70以上であり、そして、好ましくは90/10以下、より好ましくは80/20以下、更に好ましくは70/30以下である。
【0058】
骨材の含有量は、耐轍性をより向上させる観点から、アスファルトと熱可塑性エラストマーとポリエステルとの合計100質量部に対して、好ましくは1,000質量部以上、より好ましくは1,200質量部以上、更に好ましくは1,400質量部以上であり、そして、好ましくは3,000質量部以下、より好ましくは2,500質量部以下、更に好ましくは2,000質量部以下である。
【0059】
アスファルト混合物における好適な配合例は、以下のとおりである。
(1)一例のアスファルト混合物は、例えば、30容量%以上45容量%未満の粗骨材と、30容量%以上50容量%以下の細骨材と、5容量%以上10容量%以下のアスファルト組成物とを含む(細粒度アスファルト)。
(2)一例のアスファルト混合物は、例えば、45容量%以上70容量%未満の粗骨材と、20容量%以45容量%以下の細骨材と、3容量%以上10容量%以下のアスファルト組成物とを含む(密粒度アスファルト)。
(3)一例のアスファルト混合物は、例えば、70容量%以上80容量%以下の粗骨材と、10容量%以上20容量%以下の細骨材と、3容量%以上10容量%以下のアスファルト組成物とを含む(ポーラスアスファルト)。
【0060】
アスファルト混合物には、更に必要に応じて、その他の成分を配合してもよい。
なお、従来の骨材とアスファルトを含むアスファルト混合物におけるアスファルトの配合割合については、通常、社団法人日本道路協会発行の「舗装設計施工指針」に記載されている「アスファルト組成物の配合設計」から求められる最適アスファルト量に準じて用いられている。
本発明においては、上記の最適アスファルト量が、アスファルト、熱可塑性エラストマー及びポリエステルの合計量に相当する。したがって、通常、前記最適アスファルト量を、アスファルト、熱可塑性エラストマー及びポリエステルの合計配合量とすることが好ましい。
ただし、「舗装設計施工指針」に記載の方法に限定する必要はなく、他の方法によって決定してもよい。
【0061】
[アスファルト混合物の製造方法]
本発明のアスファルト混合物を製造する方法は特に限定されないが、耐轍性を向上させる観点から、加熱した骨材と、アスファルトと、前述のポリエステルとを混合する工程を含む方法が好ましく、加熱した骨材と、アスファルトと、熱可塑性エラストマーと、前述のポリエステルとを混合する工程を含む方法がより好ましい。
【0062】
アスファルト混合物の具体的な製造方法としては、従来のプラントミックス方式、プレミックス方式等といわれるアスファルト混合物の製造方法が挙げられる。いずれも加熱した骨材にアスファルト(及び必要に応じて熱可塑性エラストマー)及びポリエステルを添加する方法である。添加方法は、例えば、アスファルト(及び必要に応じて熱可塑性エラストマー)及びポリエステルを予め溶解させたプレミックス方式、又はアスファルトに熱可塑性エラストマーを溶解させた改質アスファルトを添加し、その後にポリエステルを投入するプラントミックス法が挙げられる。これらの中でも、耐轍性の観点から、プレミックス方式が好ましい。
より具体的には、アスファルト混合物の製造方法は、当該混合する工程において、好ましくは、
(i)加熱した骨材に、アスファルト(及び必要に応じて熱可塑性エラストマー)を添加及び混合した後、ポリエステルを添加及び混合する、
(ii)加熱した骨材に、アスファルト(及び必要に応じて熱可塑性エラストマー)及びポリエステルを同時に添加及び混合する、又は
(iii)加熱した骨材に、事前に加熱混合したアスファルト(及び必要に応じて熱可塑性エラストマー)とポリエステルとの混合物を添加及び混合する。
これらの中でも、耐轍性の観点から、(iii)の方法が好ましい。
【0063】
(iii)の方法におけるアスファルトとポリエステルとを事前に混合するときの混合温度は、耐轍性の観点から、ポリエステルの軟化点よりも高い温度が好ましく、好ましくは130℃以上、より好ましくは150℃以上、更に好ましくは170℃以上、更に好ましくは180℃以上であり、そして、アスファルトの熱劣化を防止する観点から、好ましくは230℃以下、より好ましくは210℃以下、更に好ましくは200℃以下である。耐轍性を向上させる観点から、混合時間は、例えば、10分以上、好ましくは30分以上、より好ましくは1時間以上、更に好ましくは2時間以上である。時間の上限は、特に限定されないが、例えば約5時間程度である。
【0064】
(i)~(iii)の方法における加熱した骨材の温度は、耐轍性の観点から、ポリエステルの軟化点よりも高い温度が好ましく、好ましくは130℃以上、より好ましくは150℃以上、更に好ましくは170℃以上、更に好ましくは180℃以上であり、アスファルトの熱劣化を防止する観点から、好ましくは230℃以下、より好ましくは210℃以下、更に好ましくは200℃以下である。
【0065】
混合する工程において、耐轍性を向上させる観点から、混合温度は、ポリエステルの軟化点よりも高い温度が好ましく、好ましくは130℃以上、より好ましくは150℃以上、更に好ましくは170℃以上、更に好ましくは180℃以上であり、アスファルトの熱劣化を防止し、耐轍性を向上させる観点から、好ましくは230℃以下、より好ましくは210℃以下、更に好ましくは200℃以下である。混合する工程における混合時間は、例えば、30秒以上、好ましくは1分以上、より好ましくは2分以上、更に好ましくは5分以上であり、時間の上限は、特に限定されないが、例えば約30分程度である。
【0066】
アスファルト混合物の製造方法は、耐轍性をより向上させる観点から、混合する工程後、得られた混合物をポリエステルの軟化点よりも高い温度以上で保持する工程を有することが好ましい。
保持する工程においては、混合物を更に混合してもよいが、前述の温度以上を保持していればよい。
保持する工程において、混合温度は、ポリエステルの軟化点よりも高い温度が好ましく、好ましくは130℃以上、より好ましくは150℃以上、更に好ましくは170℃以上、更に好ましくは180℃以上であり、そして、アスファルト組成物の熱劣化を防止する観点から、好ましくは230℃以下、より好ましくは210℃以下、更に好ましくは200℃以下である。保持する工程における保持時間は、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1時間以上、更に好ましくは1.5時間以上であり、そして、時間の上限は、特に限定されないが、例えば5時間程度である。
【0067】
[道路舗装方法]
アスファルト混合物は、道路舗装のために使用される。
道路舗装方法は、好ましくは、前述のアスファルト混合物を道路に施工し、アスファルト舗装材層を形成する工程を有する。具体的には、道路舗装方法は、アスファルトと、前述のポリエステルと、加熱した骨材とを混合する、アスファルト混合物を得る工程(工程1)、及び前記工程1で得られたアスファルト混合物を道路に施工してアスファルト舗装材層を形成する工程(工程2)を含むことが好ましい。アスファルト舗装材層は、基層又は表層であることが好ましい。
【0068】
アスファルト混合物は、公知の施工機械編成で、同様の方法によって締固め施工すればよい。加熱アスファルト混合物として使用する場合の締固め温度は、耐轍性の観点から、ポリエステルの軟化点よりも高い温度が好ましく、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、更に好ましくは130℃以上であり、そして、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。
【実施例
【0069】
樹脂等の各物性値については次の方法により測定、評価した。
[測定方法]
〔ポリエステルの酸価及び水酸基価〕
ポリエステルの酸価及び水酸基価は、JIS K0070:1992の方法に基づき測定した。ただし、測定溶媒のみJIS K0070:1992に規定のエタノールとエーテルとの混合溶媒から、アセトンとトルエンとの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更した。
【0070】
〔ポリエステルの軟化点及びガラス転移点〕
(1)軟化点
フローテスター「CFT-500D」(株式会社島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出した。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とした。
(2)ガラス転移点
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却した。次に昇温速度10℃/分で150℃まで昇温しながら測定した。吸熱の最大ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移点とした。
【0071】
製造例A
[分岐アルケニル無水コハク酸の製造]
(1)アルケン混合物(a)の製造
プロピレンテトラマー「ライトテトラマー」(JXTGエネルギー株式会社製)を用いて、183~208℃の加熱条件で分留してアルケン混合物(a)を得た。得られたアルケン混合物(a)は、ガスクロマトグラフィー質量分析において、40個のピークを有していた。
アルケン混合物の分布は、特開2014-013384号公報に記載のアルキレン化合物Aの質量分析ガスクロマトグラフィーによる分析に従って測定した。その結果、C918:0.5質量%、C1020:4質量%、C1122:20質量%、C1224:66質量%、C1326:9質量%、C1428:0.5質量%(炭素数9~14のアルケンに相当するピーク数6)であった。
【0072】
(2)分岐アルケニル無水コハク酸の製造
1Lのオートクレーブ(日東高圧株式会社製)にアルケン混合物(a)542.4g、無水マレイン酸157.2g、抗酸化剤「チェレックス-O」(SC有機化学株式会社製、トリイソオクチルホスファイト)0.4g、重合禁止剤としてブチルハイドロキノン0.1gを仕込み、加圧窒素置換(0.2MPaG)を3回繰り返した。60℃で撹拌開始後、230℃まで1時間かけて昇温して6時間反応を行った。反応温度到達時の圧力は、0.3MPaGであった。反応終了後、80℃まで冷却し、常圧(101.3kPa)に戻して1Lの4つ口フラスコに移しかえた。180℃まで撹拌しながら昇温し、1.3kPaにて残存アルキレン化合物を1時間で留去した。ひきつづき、室温(25℃)まで冷却後、常圧(101.3kPa)に戻して目的物の分岐アルケニル無水コハク酸406.1gを得た。酸価より求めた分岐アルケニル無水コハク酸の平均分子量は256であった。
【0073】
製造例1~8
(ポリエステル樹脂(A1)~(A8)の製造)
表1~2に示すポリエステルのアルコール成分及びテレフタル酸を、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)20g及び没食子酸2gを添加し、マントルヒーター中で3時間かけて235℃まで昇温を行い235℃到達後5時間保持した後、180℃まで冷却した。180℃まで冷却後、上記製造例Aで得られた分岐アルケニル無水コハク酸又は後述の直鎖アルケニル無水コハク酸を投入し、210℃まで2時間かけて昇温後210℃で1時間保持し、8.0kPaにて減圧反応を行った後、表1~2に示す軟化点に達するまで反応を行い、目的のポリエステル樹脂(A1)~(A8)を得た。
なお、直鎖アルケニル無水コハク酸として、ドデセニル無水コハク酸(富士フイルム和光純薬株式会社製、分子量=266)を用いた。
【0074】
製造例9
(ポリエステル樹脂(B1)の製造)
表2に示すポリエステルのアルコール成分及びテレフタル酸を、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)20g及び没食子酸2gを添加し、マントルヒーター中で3時間かけて235℃まで昇温を行い235℃到達後5時間保持した後、8.0kPaにて減圧反応を行った後、表2に示す軟化点に達するまで反応を行い、目的のポリエステル樹脂(B1)を得た。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
実施例1
バインダ混合物として、180℃に加熱したSBS 3質量%含有改質アスファルト(テキサス Ergon社製、アスファルト中のアスファルテン濃度:24質量%)2200gを3Lのステンレス容器に入れて100rpmで撹拌し、ポリエステル樹脂(A1)66g(アスファルト100質量部に対して3質量部)を徐々に添加し、300rpmにて2時間撹拌し、アスファルト組成物(AS-1)を作製した。
【0078】
次に180℃に加熱した骨材(骨材の組成は以下を参照)11kgをアスファルト用混合機に入れ、180℃にて60秒間混合した。
次いで前記アスファルト組成物(AS-1)621gを加え、アスファルト用混合機にて2分間混合した。得られたアスファルト混合物を180℃で2時間保管後、300×300×50cmの型枠に充填し、ローラーコンパクター(株式会社岩田工業所製)を用い、温度150℃、荷重0.44kPaにて25回転圧処理を行い、供試体を作成した。
【0079】
<骨材の組成>
6号砕石 50.9質量部
砕砂1 10.4質量部
砕砂2 22.1質量部
細砂 10.4質量部
石粉 6.2質量部
通過質量%:
ふるい目 15 mm: 100 質量%
ふるい目 10 mm: 85.6質量%
ふるい目 5 mm: 49.7質量%
ふるい目 2.5 mm: 44.6質量%
ふるい目 1.2 mm: 31.6質量%
ふるい目 0.6 mm: 21.3質量%
ふるい目 0.3 mm: 12.7質量%
ふるい目 0.15mm: 7.1質量%
【0080】
実施例2~8
実施例1において、ポリエステル樹脂(A1)をポリエステル樹脂(A2)~(A8)にそれぞれ変更したこと以外は実施例1と同様にして、アスファルト組成物(AS-2)~(AS-8)を作製した。
実施例1において、アスファルト組成物(AS-1)をアスファルト組成物(AS-2)~(AS-8)にそれぞれ変更したこと以外は実施例1と同様にして、供試体を得た。
【0081】
実施例9
実施例1において、ポリエステル樹脂(A1)の添加量を176g(アスファルト100質量部に対して8質量部)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、アスファルト組成物(AS-9)を得た。
実施例1において、アスファルト組成物(AS-1)621gをアスファルト組成物(AS-9)652gに変更したこと以外は実施例1と同様にして、供試体を得た。
【0082】
実施例10
実施例1において、ポリエステル樹脂(A1)の添加量を330g(アスファルト100質量部に対して15質量部)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、アスファルト組成物(AS-10)を得た。
実施例1において、アスファルト組成物(AS-1)621gをアスファルト組成物(AS-10)694gに変更したこと以外は実施例1と同様にして、供試体を得た。
【0083】
比較例1
実施例1において、ポリエステル樹脂(A1)をポリエステル樹脂(B1)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、アスファルト組成物(AS-C1)を作製した。
実施例1において、アスファルト組成物(AS-1)をアスファルト組成物(AS-C1)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、供試体を得た。
【0084】
比較例2
実施例1において、ポリエステル樹脂(A1)を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして、アスファルト組成物(AS-C2)を作製した。
実施例1において、アスファルト組成物(AS-1)621gをアスファルト組成物(AS-C2)603gに変更したこと以外は実施例1と同様にして、供試体を得た。
【0085】
実施例11
バインダ混合物として、180℃に加熱したSBS 3質量%含有改質アスファルト(日本 東亜道路工業株式会社製、アスファルト中のアスファルテン濃度:15質量%)2200gを3Lのステンレス容器に入れて100rpmで撹拌し、ポリエステル樹脂(A1)440g(アスファルト100質量部に対して20質量部)を徐々に添加し、300rpmにて2時間撹拌し、アスファルト組成物(AS-11)を作製した。
実施例1において、アスファルト組成物(AS-1)621gをアスファルト組成物(AS-11)724gに変更したこと以外は実施例1と同様にして、供試体を得た。
【0086】
比較例3
実施例11において、ポリエステル樹脂(A1)をポリエステル樹脂(B1)に変更したこと以外は実施例11と同様にして、アスファルト組成物(AS-C3)を作製した。
実施例1において、アスファルト組成物(AS-1)621gをアスファルト組成物(AS-C3)724gに変更したこと以外は実施例1と同様にして、供試体を得た。
【0087】
比較例4
実施例11において、ポリエステル樹脂(A1)を添加しなかったこと以外は実施例11と同様にして、アスファルト組成物(AS-C4)を作製した。
実施例1において、アスファルト組成物(AS-1)621gをアスファルト組成物(AS-C4)603gに変更したこと以外は実施例1と同様にして、供試体を得た。
【0088】
実施例12
バインダ混合物として、180℃に加熱したストレートアスファルト(昭和シェル石油株式会社製、アスファルト中のアスファルテン濃度:16質量%)2200gを3Lのステンレス容器に入れて100rpmで撹拌し、ポリエステル樹脂(A1)66g(アスファルト100質量部に対して3質量部)を徐々に添加し、300rpmにて2時間撹拌し、アスファルト組成物(AS-12)を作製した。
実施例1において、アスファルト組成物(AS-1)をアスファルト組成物(AS-12)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、供試体を得た。
【0089】
比較例5
実施例12において、ポリエステル樹脂(A1)をポリエステル樹脂(B1)に変更したこと以外は実施例12と同様にして、アスファルト組成物(AS-C5)を作製した。
実施例1において、アスファルト組成物(AS-1)をアスファルト組成物(AS-C5)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、供試体を得た。
【0090】
比較例6
実施例12において、ポリエステル樹脂(A1)を添加しなかったこと以外は実施例12と同様にして、アスファルト組成物(AS-C6)を作製した。
実施例1において、アスファルト組成物(AS-1)をアスファルト組成物(AS-C6)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、供試体を得た。
【0091】
[評価]
〔耐轍性〕
(実施例1~11及び比較例1~4)
60℃恒温室にて60℃に設定した温水に前記供試体を浸漬し、ホイールトラッキング試験機(株式会社岩田工業所製、荷重1370N、鉄輪幅47mm、線圧291.5N/cm)を用いて、速度15回/分にて供試体上に車輪を往復させ、通過回数2,500回時の変位量を測定した。その他の測定条件は、社団法人日本道路協会出版の「舗装調査・試験法便覧」に記載される「B003ホイールトラッキング試験」に準じた。
(実施例12及び比較例5~6)
50℃恒温室にて50℃に設定した温水に前記供試体を浸潤し、上記と同様にしてタイヤ通過回数2,500回時の変位量を測定した。
結果を表3~5に示す。
【0092】
〔剥離抵抗性〕
(実施例1~11及び比較例1~4)
株式会社アーテック製のガラスビー玉(直径17mm)を骨材に見立てた。ビー玉は、180℃に設定した熱風乾燥器中で、約1時間乾燥した。乾燥したビー玉に、180℃に加熱したアスファルト組成物を加え金属ヘラで約1分撹拌混合し、骨材の表面をアスファルト組成物で完全に被覆した。ビー玉100gに対するアスファルト組成物の比率を5.5±0.2gとした。得られたアスファルト被覆サンプルを180℃恒温槽にて45分静置したのち室温まで冷却した。アスファルト被覆サンプルを1mm目開きのメッシュ上に広げ、85℃の1.0mol/L炭酸ナトリウム水溶液(pH11.0)に3分浸漬した。浸漬後、アスファルト組成物が剥離していない部分の面積の割合を測定した。
(実施例12及び比較例5~6)
炭酸ナトリウム水溶液の温度を70℃に変更したこと以外は上記と同様にして測定した。
結果を表3~5に示す。
【0093】
【表3】
【0094】
【表4】
【0095】
【表5】
【0096】
実施例1~10及び比較例1~2の対比、実施例11及び比較例3~4の対比、実施例12及び比較例5~6の対比から、アスファルト組成物が特定のポリエステルを含有することで、施工後の舗装面の耐久性に優れ、轍掘れを抑制できることがわかる。また、アスファルト組成物におけるポリエステル含有量が高いほど、施工後の舗装面の耐久性に優れ、轍掘れを抑制できることがわかる。
また、比較例1~6では、炭酸ナトリウム水溶液に浸漬した後のビー玉表面におけるアスファルト組成物の残留面積が10~20%と低かったのに対し、実施例1~12では、60~91%と非常に高かった。したがって、本発明のアスファルト組成物はアルカリ条件下でも強固な骨材界面を維持でき、その結果として、施工後の舗装面の耐久性に優れ、轍掘れを抑制できることがわかる。