(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】積層体及びその製造方法、並びに防音部材
(51)【国際特許分類】
B32B 5/18 20060101AFI20240823BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20240823BHJP
B32B 5/28 20060101ALI20240823BHJP
B29C 70/68 20060101ALI20240823BHJP
E04B 1/82 20060101ALI20240823BHJP
G10K 11/162 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
B32B5/18 101
B32B27/40
B32B5/28 101
B29C70/68
E04B1/82 H
G10K11/162
(21)【出願番号】P 2020186628
(22)【出願日】2020-11-09
【審査請求日】2023-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 寛治
(72)【発明者】
【氏名】山中 佑介
(72)【発明者】
【氏名】澤田 雄次
(72)【発明者】
【氏名】後藤 真
(72)【発明者】
【氏名】出島 怜奈
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-033160(JP,A)
【文献】特表2004-533321(JP,A)
【文献】特開2009-034869(JP,A)
【文献】特開2006-106211(JP,A)
【文献】特開2006-078709(JP,A)
【文献】特開昭56-027331(JP,A)
【文献】特開2002-180362(JP,A)
【文献】特開2010-188894(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B29C 70/00-70/88
E04B 1/62- 1/99
G10K 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続且つ開放な気泡を有し、流れ抵抗が350,000N・s/m
4
以下であるウレタンフォームと、
ガラス繊維および熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物と
を接合してなる、ウレタンフォーム層と樹脂層とを有する積層体であって、
前記積層体の密度が50kg/m
3以上200kg/m
3以下であり、且つ10mm幅で測定したモジュラスが0.01N・m
2以上
であり、
前記積層体の前記ウレタンフォーム層の厚さが27mm以上であり、
前記積層体の前記ウレタンフォーム層の密度は10kg/m
3
以上であり、
前記積層体の前記樹脂層の面密度が0.18g/cm
2
以上であり、
前記10mm幅で測定したモジュラスは、前記積層体から縦100mm、横10mmに切り出した試験片を、支点間距離を105mmに設定した三点曲げ治具の上に前記樹脂層を上にして設置し、前記試験片の前記樹脂層表面に圧子で力を加えて3点曲げ試験を行うことにより算出したものである、積層体。
【請求項2】
前記積層体の前記ウレタンフォーム層の厚さ
が、50mm以下である請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
厚さが
、55mm以下である請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
前記積層体の前記樹脂層の面密度
が、0.50g/cm
2
以下である請求項1~3のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項5】
前記熱硬化性樹脂が、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂及びウレタン樹脂の少なくとも1種類を含む請求項1~4のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項6】
前記積層体の前記ウレタンフォーム層が、
前記積層体の前記樹脂層に隣接している請求項1~5のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の積層体を用いた防音部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体及びその製造方法、並びに防音部材に関する。
【背景技術】
【0002】
吸音や遮音などの目的で、樹脂とウレタンの複合体を用いることが検討されている。
例えば、特許文献1においては、主に建築用内装材等の吸音・緩衝材として壁材等に用いられる吸音・緩衝材として、吸音・緩衝性能を有する合成樹脂発泡体シ-トの一面に粘着材層を形成し、該シートに直線の凹圧歪みラインを形成した吸音・緩衝材が開示されている。
また、特許文献2では、低周波数域で、吸音性に優れた吸音部材を得るために、被膜付き多孔質吸音材の裏面を、貼付面積率が5~70%で、基体に部分的に貼付し、一体化することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-210108号公報
【文献】特開平10-8591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の部材のウレタンフォーム層は、スキン層を有したり、ウレタンフォームの気泡が独立気泡であるために非開放であったため、遮音性が十分出せなかった。また、部材の表面が繊維シート、薄いフィルム等であったため、剛性が不十分であった。部材の剛性が不十分であると、部材の形状を維持しにくく、また部材の形状を利用して、騒音源の筐体に部材を固定することができなかった。
【0005】
本発明は、剛性を維持し、軽量かつ、特に高周波音に対する防音性に優れた積層体及び防音部材、並びに前記積層体の製造方法を提供することを目的とし、該目的を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
<1> 連続且つ開放な気泡を有し、流れ抵抗が350,000N・s/m4以下、且つ密度が10kg/m3以上であるウレタンフォーム層と、熱硬化性樹脂を含む樹脂層とを備え、密度が50kg/m3以上200kg/m3以下であり、且つ10mm幅で測定したモジュラスが0.01N・m2以上である積層体。
【0007】
<2> 前記ウレタンフォーム層の厚さが、16~50mmである<1>に記載の積層体。
<3> 厚さが20~55mmである<1>又は<2>に記載の積層体。
<4> 前記樹脂層の面密度が0.15~0.50g/cm2である<1>~<3>のいずれか1つに記載の積層体。
<5> 前記熱硬化性樹脂が、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂及びウレタン樹脂の少なくとも1種類を含む<4>に記載の積層体。
<6> 前記ウレタンフォーム層が、前記樹脂層に隣接している<1>~<5>のいずれか1つに記載の積層体。
【0008】
<7> <1>~<6>のいずれか1つに記載の積層体を用いた防音部材。
【0009】
<8> 型内にウレタンスラブを設置し、前記ウレタンスラブ上に熱硬化性樹脂原料及び硬化剤を含む板状組成物をチャージし、プレスで賦形と同時に、熱硬化性樹脂を含む樹脂層とウレタンフォーム層と接合する積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、剛性を維持し、軽量かつ、特に高周波音に対する防音性に優れた積層体及び防音部材、並びに前記積層体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<積層体>
本発明の積層体は、連続且つ開放な気泡を有し、流れ抵抗が350,000N・s/m4以下、且つ密度が10kg/m3以上であるウレタンフォーム層と、熱硬化性樹脂を含む樹脂層とを備え、密度が50kg/m3以上200kg/m3以下であり、且つ10mm幅で測定したモジュラスが0.01N・m2以上である。
本発明の積層体は、上記構成のウレタンフォーム層と樹脂層以外の層を備えていてもよいが、高温環境下および高湿環境下における層同士の剥離を抑制する観点から、ウレタンフォーム層は、樹脂層に隣接することが好ましい。
本発明の積層体は、連続且つ開放な気泡を有することで、音波が気孔の内部まで入り込み、気孔の隔壁を振動させて熱エネルギーに変換することにより吸音することができる。また、流れ抵抗が350,000N・s/m4以下、且つ密度が10kg/m3以上であるウレタンフォーム層を備えることで、音波が容易にレタンフォーム層の内部に入り、高周波音に対する防音性に優れる。また、熱硬化性樹脂を含む樹脂層を備えることで、軽量でありながら剛性を維持することができ、10mm幅の積層体のモジュラスが0.01N・m2以上となる。
【0012】
(モジュラス)
積層体のモジュラスは、10mm幅で測定したモジュラスが0.01N・m2以上である。
積層体の剛性をより向上する観点から、10mm幅の積層体のモジュラスは、0.02N・m2以上であることが好ましく、0.03N・m2以上であることがより好ましい。
積層体のモジュラスの上限は特に制限されないが、通常、0.07N・m2以下であることが好ましく、0.06N・m2以下であることがより好ましい。
積層体のモジュラスは、下記手法により測定することができる。
【0013】
積層体を縦100mm、横10mmの試験片に切り出す。樹脂層を研削で切り出した後ウレタンを刃物で裁断してもよいし、ウォータージェットなどで一度に切り出してもよい。試験片の樹脂層の端部をクリップなどの金具などで挟み固定して、L=105mmの間隔の支点間距離に設定した三点曲げ治具(JIS K7171(2010)準拠)の上に樹脂層を上にして設置し、試験片の樹脂層表面に圧子で力を加えて3点曲げ試験を行う。剛性は試験力と変位の傾きから算出することができる。圧子で加えた荷重(W)[N]、試験片の撓み(δ)[mm]、及び支点間距離(L)[mm]から、下記式により積層体のモジュラス(EI)[N・mm2]を算出できる。
EI=〔(ΔW/Δδ)×L3〕/(48)
なお、ΔW/Δδは3点曲げ試験の初期の傾きから算出される。
【0014】
(密度)
積層体は、密度が50kg/m3以上200kg/m3以下である。
積層体の密度(ρL)が50kg/m3未満であると、積層体の剛性を得ることができない。また、積層体の密度(ρL)が200kg/m3を超えると、高周波に対する十分な防音性効果が得られない。
積層体の密度は80kg/m3以上であることが好ましく、110kg/m3以上であることがより好ましく、120kg/m3以上であることが更に好ましく、また、190kg/m3以下であることが好ましく、180kg/m3以下であることがより好ましく、160kg/m3以下であることが更に好ましい。
積層体の密度は、JIS K 7112(1999年)に準拠した方法により測定することができる。
【0015】
(厚さ)
また、積層体の厚さ(TL)は、20~55mmであることが好ましい。
積層体の厚さが、20mm以上であることで、積層体の剛性をより向上することができ、55mm以下であることで積層体をより軽量にすることができる。
積層体の厚さは25mm以上であることがより好ましい。また、積層体の厚さは50mm以下であることがより好ましく、40mm以下であることが更に好ましく、30mm以下であることが特に好ましい。
【0016】
(面密度)
積層体の面密度(ρAL)は、0.17~0.70g/cm2であることが好ましい。
積層体の面密度が、0.17g/cm2以上であることで、質量により周波数全域の透過損失を増大させることができ、0.70g/cm2以下であることで本積層体を適用する部材を軽量化することができる。
積層体の面密度は0.20g/cm2以上であることがより好ましく、0.22g/cm2以上であることが更に好ましい。また、積層体の面密度は0.60g/cm2以下であることがより好ましく、0.55g/cm2以下であることが更に好ましい。
積層体の面密度は、打抜き刃などの加工により所定の形状に加工した後、秤で計測することができる。
【0017】
〔ウレタンフォーム層〕
ウレタンフォーム層は、連続且つ開放な気泡を有し、流れ抵抗が350,000N・s/m4以下、且つ密度が10kg/m3以上である。
ウレタンフォーム層が備える気泡が、連続かつ開放な気泡であることで、ウレタンフォーム層が高周波音を吸音し易い。気泡は、例えば楕円体である場合、楕円体の一か所で解放していてもよいし、複数個所で解放していてもよし、全部が開放していてもよく、防音効果を高める観点から、全部が開放していることが好ましい。ただし、ウレタンフォーム層が、例えば、樹脂層と隣接する場合、ウレタンフォーム層の樹脂層側の気泡は、通常、非開放である。
【0018】
(流れ抵抗)
流れ抵抗は、ウレタンフォーム層中の空気の流れにくさを表す指標であり、350,000N・s/m4を超えると、高周波音に対する防音効果を発現することができない。
積層体の高周波音に対する防音効果をより高める観点から、ウレタンフォーム層の流れ抵抗は、300,000N・s/m4以下であることが好ましく、200,000N・s/m4以下であることがより好ましく、100,000N・s/m4以下であることが更に好ましい。
ウレタンフォーム層の流れ抵抗の下限は特に限定されないが、500N・s/m4以上であることが好ましく、800N・s/m4以上であることがより好ましく、1,000N・s/m4以上であることが更に好ましい。
流れ抵抗は、例えば、日本音響エンジニアリング社製の流れ抵抗測定装置により測定することができる。
なお、積層体の製造にあたり、ウレタンフォーム層の原料として用いるウレタンスラブの流れ抵抗と、製造された積層体のウレタンフォーム層の流れ抵抗とは、通常、変わらず、同等である。
【0019】
(厚さ)
ウレタンフォーム層の厚さは、16~50mmであることが好ましい。
ウレタンフォーム層の厚さが、16mm以上であることで、高周波音に対する防音効果をより向上することができ、50mm以下であることで積層体をより軽量にすることができる。
ウレタンフォーム層の厚さは17mm以上であることがより好ましく、20mm以上であることが更に好ましい。また、ウレタンフォーム層の厚さは45mm以下であることがより好ましく、40mm以下であることが更に好ましい。
【0020】
(密度)
ウレタンフォーム層の密度(ρu)は、10kg/m3以上である。
ウレタンフォーム層の密度(ρu)が、10kg/m3未満であると、高周波音に対する防音効果を向上することができない。密度の上限は特に制限されないが、積層体の質量増を抑える観点から、90kg/m3以下であることが好ましい。
ウレタンフォーム層の密度は17kg/m3以上であることがより好ましく、20kg/m3以上であることが更に好ましい。また、ウレタンフォーム層の密度は85kg/m3以下であることがより好ましく、80kg/m3以下であることが更に好ましい。
ウレタンフォーム層の密度は、JIS K7222(2005年)の見掛け密度の測定方法に準拠した方法により測定することができる。
【0021】
(せん断弾性率)
ウレタンフォーム層のせん断弾性率(E)は、300,000N/m2以下であることが好ましい。
ウレタンフォーム層のせん断弾性率が、300,000N/m2以下であることで、高周波音に対する防音効果をより向上することができる。せん断弾性率の下限は特に制限されないが、通常、50N/m2以上である。
ウレタンフォーム層のせん断弾性率は60,000N/m2以上であることがより好ましく、70,000N/m2以上であることが更に好ましい。また、ウレタンフォーム層のせん断弾性率は250,000N/m2以下であることがより好ましく、200,000N/m2以下であることが更に好ましい。
ウレタンフォーム層のせん断弾性率は、日本音響エンジニアリング社製の弾性率測定システムなどを利用して測定することができ、サンプルにせん断力を加えた状態で加振し振動伝達特性から、弾性率を測定する。
なお、積層体の製造にあたり、ウレタンフォーム層の原料として用いるウレタンスラブのせん断弾性率と、製造された積層体のウレタンフォーム層のせん断弾性率とは、通常、変わらず、同等である。
【0022】
(セル数)
ウレタンフォーム層は、セル数が20~80個/25mmであることが好ましい。
セル数が20個/25mm以上であることで、高周波音に対する防音効果をより向上することができ、80個/25mm以下であることで剛性の低下を抑制することができる。
ウレタンフォーム層のセル数は25個/25mm以上であることがより好ましく、30個/25mm以上であることが更に好ましい。また、ウレタンフォーム層のセル数は65個/25mm以下であることがより好ましく、60個/25mm以下であることが更に好ましい。
ウレタンフォーム層のセル数は、JIS K6400-1(2004)の附属書1に記載される方法で測定することができる。
【0023】
(多孔度)
ウレタンフォーム層の多孔度は、0.90以上であることが好ましい。
ウレタンフォーム層の多孔度が、0.90以上であることで、高周波音に対する防音効果をより向上することができる。多孔度は通常1.00未満である。
ウレタンフォーム層の多孔度は0.92以上であることがより好ましく、0.95以上であることが更に好ましい。
ウレタンフォーム層の多孔度は、空隙の体積をVV、かさ体積をVTとして、多孔度Φ=VV/VTであるが、ここでは投入材料の真密度とかさ密度から容易に算出することができる。
なお、積層体の製造にあたり、ウレタンフォーム層の原料として用いるウレタンスラブの多孔度と、製造された積層体のウレタンフォーム層の多孔度とは、通常、変わらず、同等である。
【0024】
(面密度)
ウレタンフォーム層の面密度(ρAu)は、0.01~0.30g/cm2であることが好ましい。
ウレタンフォーム層の面密度が、上記範囲であることで、吸音性能を高めることができる。
ウレタンフォーム層の面密度は0.02g/cm2以上であることがより好ましく、0.03g/cm2以上であることが更に好ましい。また、ウレタンフォーム層の面密度は0.27g/cm2以下であることがより好ましく、0.25g/cm2以下であることが更に好ましい。
ウレタンフォーム層の面密度は、定尺でカットした後に秤などで計測する事で算出することができる。
【0025】
ウレタンフォームは、エーテル系ウレタンフォームであってもよいし、エステル系ウレタンフォームであってもよい。
エーテル系ウレタンとは、ウレタンを構成するポリオールの主成分(全ポリオール中80モル%以上)がポリエーテルポリオールであるウレタンをいう。エステル系ウレタンとは、ウレタンを構成するポリオールの主成分(全ポリオール中80モル%以上)がポリエステルポリオールであるウレタンをいう。
耐水性及び耐湿性の観点から、ウレタンフォームは、エーテル系ウレタンフォームであることが好ましい。エーテル系ウレタンにおいて、ポリオールはエステル基を含んでいてもよいが、全ポリオール中のエステル基含有濃度が、20モル%以下であることが好ましい。ポリオールは、ポリエーテルポリオール1種を単独で用いてもよいし、ポリエーテルポリオール以外のポリオール1種又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0026】
本発明におけるウレタンフォームを得る方法は、例えば、ウレタンの合成反応において、水を発泡剤としポリイソシアナートとの反応で二酸化炭素を発生させる方法が用いられる。
ここで、連続且つ開放な気泡を得るには、ウレタンフォームにおいて十分な発泡をさせた発泡体に対し、厚み方向に裁断すればよい。
流れ抵抗を350,000N・s/m4以下とするには、ウレタンの厚みを厚くしたり、セル数を細かくすればよい。
ウレタンフォームの密度を10kg/m3以上とするには、ウレタンの合成反応に用いる水の添加量を適宜調整すればよい。
また、連続且つ開放な気泡を有し、流れ抵抗が350,000N・s/m4以下、且つ密度が10kg/m3以上であるウレタンフォームは、市販品を用いてもよい。
【0027】
〔樹脂層〕
樹脂層は、熱硬化性樹脂を含む。
本発明の積層体が樹脂層を備えることで、剛性に優れる。樹脂層は、熱硬化性樹脂からなることが好ましい。
高周波音に対する防音効果をより向上する観点から、樹脂層は発泡樹脂層であってもよい。
【0028】
(密度)
樹脂層の密度(ρr)は、300~2000kg/m3であることが好ましい。密度が300kg/m3以上であれば、積層体の剛性をより向上することができる。密度が2000kg/m3以下であれば、吸音性効果に影響を及ぼしにくい。上記観点から、熱硬化性樹脂の密度は、700~1950kg/m3であることがより好ましく、1000~1900kg/m3であることが更に好ましい。
【0029】
(熱硬化性樹脂)
熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ビニルエステル系樹脂、フェノール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ユリア系樹脂、メラミン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、ウレタン系樹脂等が例示される。
熱硬化性樹脂は1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
これらの中でも生産性の観点から、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂及びウレタン樹脂が好ましく、不飽和ポリエステル系樹脂がより好ましい。
熱硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂原料及び硬化剤を含む組成物を硬化することで得られる。
【0030】
不飽和ポリエステル系樹脂原料としては、不飽和多価カルボン酸と多価アルコ-ルから得られる縮合生成物をビニルモノマ-に溶解させて得られる、公知の不飽和ポリエステル樹脂原料が挙げられる。
不飽和多価カルボン酸としては、無水マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、無水フタル酸、イソフタル酸などを例示できる。多価アルコ-ルとしてはエチレングリコ-ル、1,3-ブチレングリコ-ル、ジエチレングリコ-ル、プロピレングリコ-ルなどを例示できる。ビニルモノマ-としては、スチレン系モノマーなどを例示できる。
【0031】
不飽和ポリエステル系樹脂原料の硬化剤(重合開始剤)として、過酸化物を用いることができる。
過酸化物は、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、パーオキシパーベンゾエート、パーオキシケタール、ジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物が挙げられる。過酸化物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。更に連鎖移動剤を用いてもよい。
硬化剤の添加割合は、不飽和ポリエステル樹脂原料100質量部に対して、0.1~10質量部であることが好ましく、0.3~5.0質量部であることがより好ましい。
【0032】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ系樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ系樹脂;脂環式エポキシ系樹脂;グリシジルエーテル型エポキシ系樹脂;グリシジル化アミン型エポキシ系樹脂;ハロゲン化エポキシ系樹脂;或いは、グリシジル化ポリエステル、グリシジル化ポリウレタン、グリシジル化アクリル等のエポキシ基含有モノマーもしくはオリゴマーの付加重合体等が挙げられる。
エポキシ系樹脂は、単独で用いてもよいし、2種類以上を用いてもよい。
【0033】
エポキシ樹脂の硬化剤として、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物等の酸無水物、ノボラック型フェノール樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のフェノール樹脂、無水フタル酸誘導体、ジシアンジアミド、イミダゾール化合物、アルミニウムキレート、BF3のようなルイス酸のアミン錯体等が挙げられる。これらの硬化剤は単独で用いてもよいし、2種類以上を用いてもよい。
【0034】
熱硬化性樹脂原料及び硬化剤を含む組成物には、発泡剤、増量剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、難然剤、防カビ剤、可塑剤、カップリング剤、電気伝導性フィラー、磁性体フィラー、熱伝導性フィラー、帯電防止剤、弾性微粒子等の改質剤を必要に応じて含有させることができる。
【0035】
(面密度)
樹脂層の面密度(ρAr)は、0.07~0.60g/cm2であることが好ましい。
樹脂層の面密度が、0.07g/cm2以上であることで、剛性を確保することができ、0.50g/cm2以下であることで軽量な積層体を得ことができる。
樹脂層の面密度は0.16g/cm2以上であることがより好ましく、0.17g/cm2以上であることが更に好ましい。また、樹脂層の面密度は0.46g/cm2以下であることがより好ましく、0.41g/cm2以下であることが更に好ましい。
樹脂層の面密度は、積層体の面密度から、投入するウレタンの面密度を差し引くことにより算出するこができる。積層体の面密度は、積層体を定尺にカットした後、秤量し、算出すればよい。
【0036】
(厚さ)
樹脂層の厚さ(Tr)は、0.50~5.00mmであることが好ましい。
樹脂層の厚さが、0.50mm以上であることで、積層体の剛性をより向上することができ、5.00mm以下であることで積層体をより軽量にすることができる。
樹脂層の厚さは0.85mm以上であることがより好ましく、1.10mm以上であることが更に好ましい。また、樹脂層の厚さは3.20mm以下であることがより好ましく、2.80mm以下であることが更に好ましい。
【0037】
<積層体の製造方法>
本発明の積層体の製造方法は、既述のウレタンフォーム層と樹脂層とを積層し得る方法であれば、特に制限されない。ただし、ウレタンフォーム層と樹脂層とは、接着剤又は粘着剤を介して積層せず、ウレタンフォーム層が、樹脂層に隣接するように積層することが好ましい。ウレタンフォーム層が、樹脂層に隣接するように積層されることで、積層体が、高温環境下、高湿環境下等に置かれても、ウレタンフォーム層と樹脂層とが剥離しにくい。
ウレタンフォーム層が、樹脂層に隣接するように積層する積層体の製造方法は、例えば、次の方法が挙げられる。
【0038】
当該製造方法は、型内にウレタンスラブを設置し、前記ウレタンスラブ上に熱硬化性樹脂原料及び硬化剤を含む板状組成物をチャージし、プレスで賦形と同時に、熱硬化性樹脂を含む樹脂層とウレタンフォーム層と接合する方法である。
【0039】
型は、互いに嵌合する容器状の金型が用いられ、通常、凸状の上型(コア)及び凹状の下型(キャビティ)を有する。ウレタンスラブ及び板状組成物の厚さを制御するために、上型と下型との間の圧受け部にスペーサを設けてもよい。また、製造された積層体を金型から取り出しやすいように、上型又は下型にイジェクタを備えていてもよい。
【0040】
ウレタンスラブ及び板状組成物を金型に入れる前に、予め、上型と下型を加熱しておくことが好ましい。ウレタン側の金型の温度をTu、板状組成物側、すなわち、樹脂層が形成される側の金型の温度をTrとしたとき、TuとTrは同じでも良いが、ウレタンスラブの温度を上げすぎるとウレタンが不可逆的に潰れてしまうため、Tr>Tuが好ましい。
Tr及びTuは、ウレタンスラブの質量及び板状組成物の質量によって異なるが、例えば、樹脂の硬化温度が120℃の場合は、Trは120℃、Tuは115℃などとすればよい。
【0041】
通常、下型(キャビティ)にウレタンスラブを設置し、ウレタンスラブ上に板状組成物をチャージして、上型(コア)を重ねる
【0042】
ウレタンスラブは、連続且つ開放な気泡を有し、流れ抵抗が350,000N・s/m4以下であるウレタンフォームを所望の形状のスラブ(ブロック)に加工したものを用いればよい。ウレタンスラブの形状は、通常、下型(キャビティ)の底面形状と同一の形状にするが、キャビティの底面形状の一部が覆われる形状としてもよい。ウレタンスラブの厚さは、積層体のウレタンフォーム層の厚さの範囲と同じ範囲とすればよい。
【0043】
熱硬化性樹脂原料及び硬化剤を含む板状組成物は、いわゆるSMC(Sheet Molding Compound)を指し、熱硬化性樹脂原料及び硬化剤を含む組成物を板状に成形した熱硬化性樹脂未硬化物である。熱硬化性樹脂原料及び硬化剤は、既述の成分を用いればよく、板状組成物は、発泡剤等の改質剤を含んでいてもよい。
板状組成物(SMC)の形状は、ウレタンスラブと同一の形状にしてもよいし、ウレタンスラブの一部を覆う形状としてもよい。板状組成物(SMC)の投入量(W)は、硬化後の厚さが、積層体の樹脂層の厚さの範囲に収まるように、算出して決定する。
【0044】
次いで、プレスで賦形する。すなわち、上型を下げて、又は、下型を上げて、型締めを行う。このとき、ウレタンスラブと、板状組成物に圧力(プレス圧;P)をかけつつ、所定のキャビティ間隔(L0)まで板状組成物を潰して、この位置で、所定の時間(加圧保持時間;Tp)保持することが好ましい。
【0045】
キャビティ間隔(L0)の調整はプレスの位置制御で行ってもよいし、スペーサの大きさを制御して行ってもよい。
プレス圧(P)、キャビティ間隔(L0)及び加圧保持時間(Tp)は、ウレタンスラブの質量及び板状組成物の質量と組成によって異なるが、例えば、Pは、3~15MPaとすればよく、L0は、2~10mmとすればよく、Tpは2~15分とすればよい。
【0046】
次いで、上型をゆっくりと上げて、又は下型をゆっくりと下げて、成型品(積層体)を金型から取り出す。成型品の取出しは、イジェクタを使用してもよいし、成型品の端部、凸部等を利用して取出してもよい。
【0047】
<防音部材>
本発明の防音部材は、本発明の積層体を用いてなる。
そのため、本発明の防音部材は剛性を維持し、高周波音に対する防音性に優れる。
本発明の防音部材は、剛性と高周波音に対する防音性が求められる部品、製品等に好適である。そのような部品としては、例えば、車両部品、建築部品等が挙げられる。車両部品としては、エンジンカバーに用いることができる。
【実施例】
【0048】
次に、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0049】
<材料>
1.ウレタンスラブ
ウレタンフォーム層形成用材料として、表1に示す特性を有するウレタンスラブを用意した。表1中のウレタン1~ウレタン3は、下記製品である。表1に示すウレタン1~ウレタン3の特性は、メーカー仕様書に記載された値である。
【0050】
ウレタン1:
エーテル系ウレタンフォーム、ブリヂストン製ポリウレタンフォーム「TP」
ウレタン2:
エーテル系ウレタンフォーム、ブリヂストン製ポリウレタンフォーム「VO」
ウレタン3:
エーテル系ウレタンフォーム、ブリヂストン製ポリウレタンフォーム「DO」
【0051】
表1中のウレタン4~ウレタン5は、シミュレーションによる仮想のウレタンスラブである。表1に示すウレタン4~ウレタン5の特性は、シミュレーションに用いた設定値である。
シミュレーションは、日本音響エンジニアリング社製、積層構造音響特性予測ソフトウェア、商品名「STRATI-ARTZ」を用いて行った。
【0052】
【0053】
2.板状組成物
マトリックス樹脂(不飽和ポリエステル樹脂、数平均分子量:3000)70質量部、低収縮剤(ポリスチレンの35%スチレンモノマー溶液)25質量部、粘度調整剤(スチレンモノマー)30質量部、硬化剤(t-ブチルパーオキシベンゾエート)1質量部、重合禁止剤(パラベンゾキノン)0.05質量部、内部離型剤(ステアリン酸亜鉛)10質量部、改質剤(粉末ポリエチレン)4質量部及び充填剤(重質炭酸カルシウム)200質量部を混練してコンパウンドペーストを調製した。次いで、これに増粘剤ペーストとして、増粘剤(酸化マグネシウム)1質量部と樹脂(酸価0の不飽和ポリエステル樹脂)4質量部との混合物を加え、成形材料を作製した。
なお、上記の不飽和ポリエステル樹脂(マトリックス樹脂)は、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸とマレイン酸の組み合わせを、グリコール成分として、プロピレングリコールとネオペンチルグリコールとの組み合わせを用い、エステル化反応させて得られたものである。次に、前記増粘剤ペースト添加後に、ガラスロービングをカッターでチョップしてなる長さ約25mmのガラス繊維を、発泡性予備成形体全量に基づき20質量%の割合で加え、常法に従って板状組成物(SMC)を作製した。
【0054】
<積層体の製造>
〔実施例1〕
(1)型温の設定
互いに嵌合する容器状の金型であって、凸状の上型(コア)、凹状の下型(キャビティ)、及びスペーサを有する金型を用いた。
【0055】
(2)ウレタンスラブと板状組成物の設置
ウレタンスラブ(ウレタン1)を、長さ200mm×幅200mm×厚さ30mmに裁断し、板状組成物Aを裁断し、金型への投入量が110.6gになるよう厚さを調整した。
下型(キャビティ)にウレタンスラブを設置し、ウレタンスラブ上に板状組成物Aをチャージした。
【0056】
(3)型締め
次いで、プレス後の積層体におけるウレタン層の厚みが表2に示した数値になるよう、上型を下げて型締めを行った。その後、上型をゆっくりと上げて、成型品を金型から取り出した。このようにして、実施例1の積層体1を製造した。
積層体1は、不飽和ポリエステル樹脂(UP)の樹脂層と、ウレタン1のウレタンフォーム層とからなる二層体である。
【0057】
〔実施例2~実施例4〕
板状組成物(SMC)の種類、ウレタンスラブの種類、及び板状組成物(SMC)の投入量を表2に示す内容に変更したほかは、プレス後の積層体におけるウレタン層の厚みが表2に示した数値になるように、実施例1と同様にして、実施例2~4の積層体2~4を製造した。
積層体2は、不飽和ポリエステル樹脂(UP)の樹脂層と、ウレタン2のウレタンフォーム層とからなる二層体である。
積層体3は、不飽和ポリエステル樹脂(UP)の樹脂層と、ウレタン3のウレタンフォーム層とからなる二層体である。
積層体4は、不飽和ポリエステル樹脂(UP)の発泡樹脂の樹脂層と、ウレタン2のウレタンフォーム層とからなる二層体である。
【0058】
〔実施例5、比較例3~6〕
板状組成物(SMC)の種類、ウレタンスラブの種類、及び板状組成物(SMC)の投入量を表2に示す内容に変更するほかは、プレス後の積層体におけるウレタン層の厚みが表2に示した数値になるように、実施例1と同様にして、実施例5の積層体5及び比較例3~6の積層体103~106を製造する。
積層体5は、積層体1と同様に、不飽和ポリエステル樹脂(UP)の樹脂層と、ウレタン1のウレタンフォーム層とからなる二層体であるが、樹脂層の厚さが大きい点で積層体1と異なる。
積層体103は、不飽和ポリエステル樹脂(UP)の樹脂層と、ウレタン5のウレタンフォーム層とからなる二層体である。
積層体104は、不飽和ポリエステル樹脂(UP)の樹脂層と、ウレタン4のウレタンフォーム層とからなる二層体である。
積層体105は、不飽和ポリエステル樹脂(UP)の発泡樹脂の樹脂層と、ウレタン1のウレタンフォーム層とからなる二層体である。
積層体106は、積層体1と同様に、不飽和ポリエステル樹脂(UP)の樹脂層と、ウレタン1のウレタンフォーム層とからなる二層体であるが、ウレタン層の厚さが小さい点で積層体1と異なる。
【0059】
〔比較例1〕
比較例1は、ウレタンフォーム層を有しない樹脂層のみの成形品101を製造した。
成形品101は、ウレタンスラブを用いずに、キャビティ間隔を保つためのスペーサを用いなかったこと以外は、実施例3と同様のプレス条件で製造した。
成形品101は、不飽和ポリエステル樹脂(UP)の樹脂層からなる単層体である。
【0060】
〔比較例2〕
比較例2の成形品102として、ウレタン1のウレタンフォーム層からなる単層体を用意した。
【0061】
実施例及び比較例の積層体又は成形品の厚さ、面密度及び密度を表2に示す。
実施例1~4の積層体及び比較例1の成形品の面密度は、当該積層体又は成形品を定尺にカットした後、秤量することで測定した。それ以外の実施例及び比較例の積層体の面密度は、樹脂種類、ウレタン種類、プレス後の樹脂層及びウレタン層の厚さから類推したものとする。
【0062】
【0063】
<評価>
実施例及び比較例の積層体又は成形品の防音性及び剛性を、次の方法で確認し、結果を表3及び4に示した。
なお、実施例1~4及び比較例1~2は実測値であり、実施例5及び比較例3~6は、シミュレーションに基づく仮想値である。
【0064】
1.防音性評価
(1)吸音箱を用いた測定
実施例1~3及び5、並びに比較例1~6の積層体又は成形品を試験体として用いた。
500mm×800mm×高さ700mmの大きさで、一辺が開放している吸音箱を開口部が上側になるように置き、吸音箱の中にスピーカーを入れた。次いで、吸音箱の開口部を、中央に200mm×200mmの開口を有する板で塞いだ。この際、板の開口部がスピーカーの真上になるよう位置を調整した。更に、板の開口部を試験体で塞いで、隙間をテープで塞いだ。ウレタンフォーム層を備える積層体及び成形品はウレタンフォーム層側をスピーカーと対峙させ、ウレタンフォーム層を有しない成形品101は樹脂層をスピーカーと対峙させた。
【0065】
吸音箱の外側であって、試験体から20cm離れた場所にマイクロフォンを設置し、スピーカーから音(4kHz)を出し、マイクロフォンで感知した音の強さを測定した。
試験体が無いときの音の強さをI0、試験体が有るときの音の強さをISとして、透過損失(吸音箱、200mm)を下記式から算出した。
透過損失(吸音箱、200mm)=10Log(IS/I0)
【0066】
透過損失の値が大きい程、防音性に優れることを意味する。
透過損失(吸音箱、200mm)の数値が44.0dB以上の結果を○(良好)とし、44.0dB未満の結果を×(不良)として、表3に示した。
【0067】
(2)音響管を用いた測定
実施例1の積層体1、実施例4の積層体4、及び比較例1の成形品101を試験体として用い、ASTM E2611に準拠して、垂直入射音響透過損失を測定した。
長さ495mm、直径40mmの音響管(JIS A1405-1(2007))を用い、音響管の一端にスピーカーを設置し、他端を、試験体で塞いだ。更に音漏れ防止のため、隙間をテープと粘土で塞いだ。ウレタンフォーム層を備える積層体及び成形品はウレタンフォーム層側をスピーカーと対峙させ、ウレタンフォーム層を有しない成形品101は樹脂層をスピーカーと対峙させた。
【0068】
音響管の外側であって、試験体から10cm離れた場所にマイクロフォンを設置し、スピーカーから音(5kHz)を出し、マイクロフォンで感知した音の強さを測定した。
試験体が無いときの音の強さをI0、試験体が有るときの音の強さをISとして、透過損失(音響管、φ40mm)を下記式から算出した。
透過損失(音響管、φ40mm)=10Log(IS/I0)
【0069】
透過損失の値が大きい程、防音性に優れることを意味する。透過損失(音響管、φ40mm)の数値が40.0dB以上の結果を○(良好)とし、40.0dB未満の結果を×(不良)として、表4に示した。
【0070】
2.質量
実施例及び比較例の積層体又は成形品を直径40mmサイズの円形に加工し、質量を測定した。結果を表3及び4に示す。
質量が7.0g以下である場合を○(良好)、7.0g超8.0g以下である場合を△(許容範囲)、8.0g超である場合を×(不良)として表3及び4に示した。
実施例5及び比較例3~6の積層体の質量については、シミュレーションの設定値により計算した。
【0071】
3.積層体又は成形品のモジュラス
実施例及び比較例の積層体又は成形品を10mm幅に裁断し、下記手法によりモジュラスを測定した。
積層体を縦100mm、横10mmの試験片に切り出す。切り出しはウォータージェットで切り出した。試験片の樹脂層の端部をクリップなどの金具などで挟み固定して、L=105mmの間隔の支点間距離に設定した三点曲げ治具(JIS K7171(2010)準拠)の上に樹脂層を上にして設置し、試験片の樹脂層表面に圧子で力を加えて3点曲げ試験を行った。剛性は試験力と変位の傾きから算出した。圧子で加えた荷重(W)[N]、試験片の撓み(δ)[mm]、及び支点間距離(L)[mm]から、下記式により積層体のモジュラス(EI)[N・mm2]を算出した。
EI=〔(ΔW/Δδ)×L3〕/(48)
なお、ΔW/Δδは3点曲げ試験の初期の傾きから算出する。
実施例5及び比較例3~6の積層体のモジュラスについては、シミュレーションの設定値により計算した。
【0072】
4.剛性評価
剛性評価は、樹脂層を有する積層体及び成形品について行った。
積層体1~4及び成形品101~102に凹凸をつけ形状を固定し、受分に形状保持が出来ているかについての評価を表3及び4に示した。また、その他の積層体については、積層体1~4及び成形品101~102の試験結果から類推し、評価を表3及び4に示した。
○:十分に形状保持ができて、剛性が良好
×:十分に形状保持が出来ず、剛性が不良
【0073】
圧子で加えた荷重(W)[N]、試験片の撓み(δ)[mm]、及び支点間距離(L)[mm]から、下記式によりモジュラス(EI)[N・mm2]を算出した。
EI=〔(ΔW/Δδ)×L3〕/(48)
なお、ΔW/Δδは3点曲げ試験の傾きから算出される。
【0074】
5.総合判定
透過損失、質量、10mm幅のモジュラス、及び剛性評価の結果において、×評価を有する場合を、総合判定として×(不良)とし、また、×評価を含まないものを総合判定として○(良好)とした。結果を表3及び4に示す。
【0075】
【0076】
【0077】
表3及び4からわかるように、連続且つ開放な気泡を有し、流れ抵抗が350,000N・s/m4以下、且つ密度が10kg/m3以上であるウレタンフォーム層と熱硬化性樹脂を含む樹脂層とを備える実施例の積層体は、密度が50kg/m3以上200kg/m3以下であり、且つ10mm幅で測定したモジュラスが0.01N・m2以上であり、透過損失が比較例の成形品よりも大きく、防音性に優れ、軽量を維持している上、剛性に優れた。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の積層体は、剛性を維持し、軽量かつ、特に高周波音に対する防音性に優れるため、車両部品、建築部品として好適であり、特に、防音カバー、エンジンカバーとして好適である。