(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
G09G 3/36 20060101AFI20240823BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20240823BHJP
G09G 3/34 20060101ALI20240823BHJP
G02F 1/133 20060101ALI20240823BHJP
G02F 1/13357 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
G09G3/36
G09G3/20 641E
G09G3/34 J
G09G3/20 642J
G02F1/133 535
G02F1/133 510
G02F1/133 550
G02F1/13357
(21)【出願番号】P 2020186857
(22)【出願日】2020-11-09
【審査請求日】2023-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小橋 淳二
【審査官】西島 篤宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-284088(JP,A)
【文献】特開2008-003375(JP,A)
【文献】国際公開第2010/035562(WO,A1)
【文献】特開2017-156491(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0295865(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/00 - 3/38
G02F 1/133
G02F 1/13357
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する2枚の基板の間に液晶が封入され、液晶の配向を制御する電位差が与えられる2つの電極を有し、複数の画素が設けられた表示パネルと、
前記表示パネルに光を照射する光源装置と、を備え、
前記表示パネルには、前記複数の画素の各々に設けられたスイッチング素子と、前記スイッチング素子に接続された配線と、が設けられ、
前記光源装置は、第1の色の光を発する第1光源と、第2の色の光を発する第2光源と、第3の色の光を発する第3光源とを有し、
フレーム画像の表示期間は、3つのサブフレーム期間と、前記3つのサブフレーム期間で再現された色を調整する調整サブフレーム期間とを含み、
前記3つのサブフレーム期間は、第1サブフレーム期間と、第2サブフレーム期間と、第3サブフレーム期間とを含み、
前記光源装置は、前記第1サブフレーム期間に第1色度座標に対応する色を再現する光を照射し、前記第2サブフレーム期間に第2色度座標に対応する色を再現する光を照射し、前記第3サブフレーム期間に第3色度座標に対応する色を再現する光を照射し、前記調整サブフレーム期間に差分色を再現する光を照射し、
前記第1色度座標と前記第2色度座標と前記第3色度座標とを頂点とする三角形状の色度座標範囲は、フレーム画像データに含まれる複数の画素データのうち階調値が相対的に低い一部の画素データを除いた画素データの色度座標を内包し、前記第1の色の色度座標と前記第2の色の色度座標と前記第3の色の色度座標とを頂点とする色域の一部であり、
前記差分色は、前記第1色度座標に対応する色と、前記第2色度座標に対応する色と、前記第3色度座標に対応する色と、の混色の補色であ
り、
第1光源からの光の輝度、第2光源からの光の輝度及び前記第3光源の各々からの光の輝度であって、前記フレーム画像の表示期間中に照射される光の輝度は、前記3つのサブフレーム期間のうち1つのサブフレーム期間中に各々が最高輝度で点灯することで照射可能な光の輝度を超え、
前記3つのサブフレーム期間のうち1つのサブフレーム期間中に1つの光源が最高輝度で点灯することで照射可能な光の輝度を基準とした、前記フレーム画像の表示期間中に当該1つの光源から照射される光の輝度の割合は、前記第1光源と、前記第2光源と、前記第3光源とで同等である、
表示装置。
【請求項2】
前記光源装置は、前記表示パネルの側方から光を照射する
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記第1の色は赤色であり、
前記第2の色は緑色であり、
前記第3の色は青色である
請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記液晶は、高分子分散型液晶である
請求項1から3のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記調整サブフレーム期間は、前記フレーム画像の表示期間において、前記第1サブフレーム期間、前記第2サブフレーム期間及び前記第3サブフレーム期間の後である
請求項1から4のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記調整サブフレーム期間は、前記フレーム画像の表示期間において、前記第1サブフレーム期間の後であって前記第2サブフレーム期間の前と、前記第2サブフレーム期間の後であって前記第3サブフレーム期間の前と、前記第3サブフレーム期間の後である
請求項1から4のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項7】
前記調整サブフレーム期間の時間長は、前記光源装置から照射される光の明度に対応する
請求項1から6のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項8】
前記調整サブフレーム期間には、前記差分色に対応する画素信号が一括で前記複数の画素に書き込まれる
請求項1から7のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項9】
前記光源装置は、前記表示パネルの側方から光を照射し、
前記調整サブフレーム期間では、前記光源装置に相対的に近い位置の画素に書き込まれる画素信号の階調値に比して前記光源装置に相対的に遠い位置の画素に書き込まれる画素信号の階調値が高い
請求項1から7のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項10】
前記一部の画素データは、前記フレーム画像データに含まれる複数の画素データの5%以下である、
請求項1から9のいずれか一項に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
同一画素から複数色の光をそれぞれ異なるタイミングで透過させるように画素を制御する所謂フィールドシーケンシャルカラー(FSC:Field Sequential Color)方式で表示出力を行う液晶表示装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
FSC方式では、フレーム画像の表示期間中にそれぞれ異なる色を出力する複数のサブフレーム期間が設けられるが、サブフレーム期間の切り替わり前後で色の変化が激しい場合、カラーブレイクと呼ばれる現象が生じることがある。カラーブレイクとは、各サブフレーム期間で出力される単色の色の画像が表示装置のユーザに視認されてしまう現象である。
【0005】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたもので、カラーブレイクをより抑制できる表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様による表示装置は、対向する2枚の基板の間に液晶が封入され、液晶の配向を制御する電位差が与えられる2つの電極を有し、複数の画素が設けられた表示パネルと、前記表示パネルに光を照射する光源装置と、を備え、前記光源装置は、第1の色の光を発する第1光源と、第2の色の光を発する第2光源と、第3の色の光を発する第3光源とを有し、フレーム画像の表示期間は、3つのサブフレーム期間と、前記3つのサブフレーム期間で再現された色を調整する調整サブフレーム期間とを含み、前記3つのサブフレーム期間は、第1サブフレーム期間と、第2サブフレーム期間と、第3サブフレーム期間とを含み、前記光源装置は、前記第1サブフレーム期間に第1色度座標に対応する色を再現する光を照射し、前記第2サブフレーム期間に第2色度座標に対応する色を再現する光を照射し、前記第3サブフレーム期間に第3色度座標に対応する色を再現する光を照射し、前記調整サブフレーム期間に差分色を再現する光を照射し、前記第1色度座標と前記第2色度座標と前記第3色度座標とを頂点とする三角形状の色度座標範囲は、フレーム画像データに含まれる複数の画素データのうち階調値が相対的に低い一部の画素データを除いた画素データの色度座標を内包し、前記第1の色の色度座標と前記第2の色の色度座標と前記第3の色の色度座標とを頂点とする色域の一部であり、前記差分色は、前記第1色度座標に対応する色と、前記第2色度座標に対応する色と、前記第3色度座標に対応する色と、の混色の補色である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、表示装置の主要構成を示す模式的な回路図である。
【
図3】
図3は、表示装置に適用される制御の一例を示すタイムチャートである。
【
図4】
図4は、画像処理回路の機能構成例を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、CIE1931色空間における色域と、フレーム画像データに含まれる複数の画素データの位置及び分布との関係の一例を示す模式図である。
【
図6】
図6は、比較例としての一般的なFSC方式で採用される第1サブフレーム期間、第2サブフレーム期間、第3サブフレーム期間の色の遷移を示すカラーチャートである。
【
図7】
図7は、実施形態で採用される第1サブフレーム期間、第2サブフレーム期間、第3サブフレーム期間の色の遷移の一例を示すカラーチャートである。
【
図8】
図8は、
図7と同様の第1サブフレーム期間、第2サブフレーム期間、第3サブフレーム期間の色の遷移に対応した調整サブフレーム期間の差分色を示すカラーチャートである。
【
図9】
図9は、変形例で表示装置に適用される制御の一例を示すタイムチャートである。
【
図10】
図10は、光源装置と表示パネルとの位置関係による表示パネルの輝度分布の一例を示す模式図である。
【
図11】
図11は、光源装置と表示パネルとの位置関係を考慮して変形例2で行われる階調値制御の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本開示の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本開示の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0009】
(実施形態1)
図1は、表示装置100の主要構成を示す模式的な回路図である。表示装置100は、ディスプレイパネルモジュールDPMと、画像処理回路70とを備える。ディスプレイパネルモジュールDPMは、表示パネルPと、光源装置Lとを備える。
【0010】
表示パネルPは、表示部7と、信号出力回路8と、走査回路9と、VCOM駆動回路10と、タイミングコントローラ13と、電源回路14とを備える。以下、表示部7が面する表示パネルPの一面を表示面とし、他面を背面とする。また、表示装置100の側方と記載した場合、表示装置100を基準として表示面と背面との対向方向に交差(例えば、直交)する方向に位置する。
【0011】
表示部7には、複数の画素Pixがマトリクス状に配置されている。画素Pixは、スイッチング素子1と、2つの電極とを含む。
図1及び後述する
図2では、2つの電極として、画素電極2と、共通電極6とを図示している。
【0012】
図2は、表示パネルPの概略断面図である。表示パネルPは、対向する2枚の基板と、当該2枚の基板の間に封入された液晶3を有する。以下、当該2枚の基板の一方を第1基板30とし、他方を第2基板20とする。
【0013】
第1基板30は、透光性のガラス基板35と、ガラス基板35の第2基板20側に積層された画素電極2と、画素電極2を覆うように第2基板20側に積層された絶縁層55とを含む。画素電極2は、画素Pix毎に個別に設けられる。第2基板20は、透光性のガラス基板21と、ガラス基板21の第1基板30側に積層された共通電極6と、共通電極6を覆うように第1基板30側に積層された絶縁層56とを含む。共通電極6は、複数の画素Pixで共有される板状又は膜状の形状を有する。
【0014】
実施形態1の液晶3は、高分子分散型液晶である。具体的には、液晶3は、バルク51と、微粒子52とを含む。微粒子52は、バルク51内で画素電極2と共通電極6との電位差に応じて配向が変化する。画素Pix毎に画素電極2の電位が個別に制御されることで、画素Pix毎に少なくとも透光及び分散のいずれかの度合いが制御される。
【0015】
図2を参照して説明した実施形態1では、画素電極2と共通電極6は、液晶3を挟むように対向するが、表示パネルPは、1つの基板に画素電極2と共通電極6が設けられて画素電極2と共通電極6によって発生する電界によって液晶3の配向が制御される構成であってもよい。
【0016】
次に、画素電極2及び共通電極6の電位を制御する仕組みについて説明する。
図1に示すようにスイッチング素子1は、例えば薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)等、半導体を用いたスイッチング素子である。スイッチング素子1のソース又はドレインの一方は、2つの電極の一方(画素電極2)と接続される。スイッチング素子1のソース又はドレインの他方が信号線4と接続される。スイッチング素子1のゲートは、走査線5と接続される。走査線5は、走査回路9の制御下で、スイッチング素子1のソース-ドレイン間を開閉するための電位を与える。当該電位の制御は、走査回路9が行う。
【0017】
図1に示す例では、複数の信号線4は、画素Pixの並び方向のうち一方(行方向)に沿って並ぶ。信号線4は、画素Pixの並び方向のうち他方(列方向)に沿って延出する。信号線4は、列方向に並ぶ複数の画素Pixのスイッチング素子1で共有される。複数の走査線5は、列方向に沿って並ぶ。走査線5は、行方向に沿って延出する。走査線5は、行方向に並ぶ複数の画素Pixのスイッチング素子1で共有される。
【0018】
実施形態1の説明では、走査線5の延出方向をX方向とし、複数の走査線5が並ぶ方向をY方向とする。また、
図1では、複数の走査線5のうちY方向の両端に配置されたものの一方を走査線5aとし、他方を走査線5bとしている。
【0019】
共通電極6は、VCOM駆動回路10と接続される。VCOM駆動回路10は、共通電極6に共通電位として機能する電位を与える。走査回路9が走査線5に対して駆動信号として機能する電位を与えるタイミングで、信号出力回路8が信号線4に対して後述する画素信号を出力することで、画素電極2と共通電極6との間に形成された蓄積容量と容量性負荷である液晶(微粒子52)を充電する。これによって、画素Pixと共通電極6との間の電圧は画素信号に対応した電圧となる。駆動信号が与えられなくなった後、蓄積容量と容量性負荷である液晶(微粒子52)は画素信号を保持する。液晶(微粒子52)の散乱度は、各画素Pixの電圧と共通電極6の電圧に応じて制御される。例えば、液晶3は各画素Pixの電圧と共通電極6との間の電圧が大きくなるほど散乱度が大きくなるような高分子分散型液晶を用いてもよいし、各画素Pixの電圧と共通電極6との間の電圧が小さくなるほど散乱度が大きくなるような高分子分散型液晶を用いてもよい。
【0020】
図2に示すように、表示パネルPの側方には、光源装置Lが配置されている。光源装置Lは、光源11と、光源駆動回路12とを備える。光源11は、赤色(R)の光を発する第1光源11Rと、緑色(G)の光を発する第2光源11Gと、青色(B)の光を発する第3光源11Bと、を有する。第1光源11R、第2光源11G、第3光源11Bはそれぞれ、光源駆動回路12の制御下で発光する。実施形態1の第1光源11R、第2光源11G及び第3光源11Bは、例えば発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)のような発光素子を用いた光源であるが、これに限られるものでなく、発光タイミングを制御可能な光源であればよい。光源駆動回路12は、タイミングコントローラ13の制御下で第1光源11R、第2光源11G、第3光源11Bの発光タイミングを制御する。実施形態1において、赤色(R)は第1原色である。実施形態1において、緑色(G)は第2原色である。実施形態1において、青色(B)は第3原色である。後述する各サブフレーム期間SF及び調整サブフレーム期間Adにおいて、第1光源11R、第2光源11G、第3光源11Bはそれぞれ、単独で発光することができ、第1光源11R、第2光源11G、第3光源11Bのうち2つ又は3つが同時発光できる。
【0021】
光源11から光が照射されると、表示部7は、Y方向の一側面側から照射される光によって照明される。各画素Pixは、Y方向の一側面側から照射される光を透過または散乱させる。散乱の度合いは、画素信号に応じて制御された液晶3の状態による。
【0022】
タイミングコントローラ13は、信号出力回路8、走査回路9、VCOM駆動回路10及び光源駆動回路12の動作タイミングを制御する回路である。実施形態1では、タイミングコントローラ13は、画像処理回路70を介して入力された信号に基づいて動作する。
【0023】
画像処理回路70は、表示装置100の外部からのフレーム画像データI(
図1参照)に基づいた信号を信号出力回路8及びタイミングコントローラ13に出力する。ある1つの画素Pixに割り当てられるRGBの階調値を示すデータを画素データとすると、フレーム画像を出力するために画像処理回路70に入力されるフレーム画像データIは、表示部7に設けられた複数の画素Pixに対する複数の画素データの集合である。なお、画像処理回路70は、表示パネルPを構成する基板の1つに設けられてもよいし、表示パネルPから延出する配線等が設けられるフレキシブルプリント基板に実装されてもよいし、表示パネルPの外部に設けられる構成であってもよい。
【0024】
図3は、表示装置100に適用される制御の一例を示すタイムチャートである。
図3で例示するように、実施形態1では、フレーム期間Fn,F(n+1)のような各フレーム期間Fに含まれる点灯期間Br中にそれぞれ異なる色の光が照射される第1サブフレーム期間SF1、第2サブフレーム期間SF2、第3サブフレーム期間SF3が含まれるFSC方式が採用されている。以下、フレーム期間Fと記載した場合、フレーム期間Fn,F(n+1),…の各フレーム期間を区別せず包括する。フレーム期間Fn,F(n+1),…は、それぞれ1つのフレーム画像が表示される期間である。フレーム期間F(n+1)は、フレーム期間Fnの次のフレーム期間である。nは自然数である。また、サブフレーム期間SFと記載した場合、第1サブフレーム期間SF1、第2サブフレーム期間SF2、第3サブフレーム期間SF3を区別せず包括する。
【0025】
実施形態1では、フレーム期間Fに含まれる複数のサブフレーム期間SFと、後述する調整サブフレーム期間Adと、の各々で、点灯期間Brに対応した画素信号が書き込まれる。サブフレーム期間SF中の画素信号の書き込みは、書込期間Wrに行われる。調整サブフレーム期間Ad中の画素信号の書き込みは、書込期間AWrに行われる。
【0026】
フレーム期間Fnにおいてある1つの画素Pixに与えられる信号によって再現される色成分が、RGBの階調値で表した場合に(R,G,B)=(r0,g0,b0)であるとする。r0は、RGBの階調値を示す情報を含むフレーム画像データIにおける赤色(R)の階調値であり、表示部7で表示される画像の赤色(R)成分として機能する。g0は、RGBの階調値を示す情報を含むフレーム画像データIにおける緑色(G)の階調値であり、表示部7で表示される画像の緑色(G)成分として機能する。b0は、RGBの階調値を示す情報を含むフレーム画像データIにおける青色(B)の階調値であり、表示部7で表示される画像の青色(B)成分として機能する。
【0027】
ここで、r0は、r0=r1+r2+r3のように、3個の成分に分割できる。また、g0は、g0=g1+g2+g3のように、3個の成分に分割できる。また、b0は、b0=b1+b2+b3のように、3個の成分に分割できる。従って、当該1つの画素Pixで、第1サブフレーム期間SF1に(R,G,B)=(r1,g1,b1)に対応した色再現を行う。また、当該1つの画素Pixに対して、サブフレーム期間SF(m-k)に(R,G,B)=(r(m-k),g(m-k),b(m-k))に対応した色再現を行う。kは、m未満の整数である。例えば、実施形態のようにm=3である場合、k=2である場合とk=1である場合とk=0である場合が順次生じる。なお、k=2である場合については、上述の第1サブフレーム期間SF1がこれに該当する。また、当該1つの画素Pixに対して、サブフレーム期間SFmに(R,G,B)=(rm,gm,bm)に対応した色再現を行う。これによって、当該1つの画素Pixに対して、フレーム期間Fn中に(R,G,B)=(r0,g0,b0)と同様の色成分に対応した色再現を行える。
【0028】
実施形態のように、m=3の場合、(R,G,B)=(r0,g0,b0)は、第1サブフレーム期間SF1に与えられる(R,G,B)=(r1,g1,b1)と、第2サブフレーム期間SF2に与えられる(R,G,B)=(r2,g2,b2)と、第3サブフレーム期間SF3に与えられる(R,G,B)=(r3,g3,b3)と、に分割できる。
【0029】
一例として、(R,G,B)=(r0,g0,b0)=(35,40,30)であるとする。光は、加法混合によって赤色(R)と緑色(G)と青色(B)とを混合することで白色(W)を再現できる。上述の(R,G,B)=(r0,g0,b0)=(35,40,30)の色成分のうち、白色として抽出可能な色成分は、(R,G,B)=(30,30,30)である。従って、例えば、(R,G,B)=(r2,g2,b2)=(30,30,30)とした画素信号を第2サブフレーム期間SF2の書込期間Wrに書き込むことで、当該白色として抽出可能な色成分に対応した画素信号を第2サブフレーム期間SF2中に与えられる。また、このような画素信号が与えられた画素に対して、第2サブフレーム期間SF2の書込期間Wrの後に生じる第2サブフレーム期間SF2の点灯期間Br中に白色(W)の光を照射することで、白色(W)の表示出力を行える。具体的には、第1光源11R、第2光源11G及び第3光源11Bを点灯させることで、光源装置Lは、白色(W)の光を照射できる。ここで、「30」の階調値に対応する画素信号を画素Pixに与え、白色(W)の光を照射することで、(R,G,B)=(r2,g2,b2)=(30,30,30)に対応した画素信号が与えられた状態を再現できる。
【0030】
上述の(R,G,B)=(r0,g0,b0)=(35,40,30)の色成分から白色として抽出可能な色成分を除いた色成分は、(R,G,B)=(5,10,0)である。そこで、例えば、(R,G,B)=(r1,g1,b1)=(5,0,0)とした画素信号を第1サブフレーム期間SF1の書込期間Wrに書き込むことで、赤色(R)の色成分に対応した画素信号を第1サブフレーム期間SF1中に与えられる。また、このような画素信号が与えられた画素Pixに対して、第1サブフレーム期間SF1の書込期間Wrの後に生じる第1サブフレーム期間SF1の点灯期間Br中に赤色(R)の光を表示パネルPに照射することで、赤色(R)の表示出力を行える。具体的には、第1光源11Rを点灯させることで、光源装置Lは、赤色(R)の光を照射できる。ここで、「5」の階調値に対応する画素信号を画素Pixに与え、赤色(R)の光を照射することで、(R,G,B)=(r1,g1,b1)=(5,0,0)に対応した画素信号が与えられた状態を再現できる。また、(R,G,B)=(r3,g3,b3)=(0,10,0)とした画素信号を第3サブフレーム期間SF3の書込期間Wrに書き込むことで、緑色(G)の色成分に対応した画素信号を第3サブフレーム期間SF3中に与えられる。また、このような画素信号が与えられた画素Pixに対して、第3サブフレーム期間SF3の書込期間Wrの後に生じる第3サブフレーム期間SF3の点灯期間Br中に緑色(G)の光を表示パネルPに照射することで、緑色(G)の表示出力を行える。具体的には、第2光源11Gを点灯させることで、光源装置Lは、緑色(G)の光を照射できる。ここで、「10」の階調値に対応する画素信号を画素Pixに与え、緑色(G)の光を照射することで、(R,G,B)=(r3,g3,b3)=(0,10,0)に対応した画素信号が与えられた状態を再現できる。このように、この例では、フレーム期間Fに(R,G,B)=(r0,g0,b0)=(35,40,30)の色成分に対応した出力が行われることになる。なお、この例は、1つの画素Pixに与えられる信号の一例について説明しているに過ぎず、r0,g0,b0の各々の値によっては青色(B)や、白色(W)以外の混色に対応した色再現を行う必要がある場合もある。ここでいう混色とは、赤色(R)と緑色(G)と青色(B)の3色のうち2色以上の色成分を含む色をさす。後述する第1色度座標V1、第2色度座標V2、第3色度座標V3の各々(
図5参照)に対応する色は、混色に該当する。
【0031】
このように、フレーム期間F中に各画素Pixに与えられる信号をm個に分割し、各サブフレーム期間SFの個別に与え、与えられた画素信号に対応した光を光源装置Lから表示パネルPに照射することで、表示パネルPは、入力画像に対応した表示出力を行える。
【0032】
各サブフレーム期間SFの書込期間Wr中には、走査回路9による走査線5への駆動信号の出力によって画素Pixに設けられたTFTをオンさせるとともに信号出力回路8による信号線4への画素信号の出力によって画素Pixに画素信号を書き込む信号制御が行われる。従って、共通の走査線5に接続されて当該走査線5に対する駆動信号に応じて同時にオンされる画素行に含まれる複数のPixに対する画素信号の書き込みタイミングは同時になる。このように共通の走査線5に接続される画素行に書き込まれる画像をライン画像とすると、フレーム画像は、走査線5の並び方向に沿って並ぶ複数のライン画像により構成される。ライン画像は、走査線5の延出方向(信号線4の並び方向)に沿って並ぶ複数の画素Pixによって表示出力される画像である。以下、単に「ライン」と記載した場合、特筆しない限り、ライン画像を出力する画素行をさす。
【0033】
図3及び後述する
図9のタイムチャート等では、例示的に7ライン分の表示領域に対して出力されるライン画像に係る画素信号制御を図示している。例えば、
図3では、各サブフレーム期間SFの書込期間Wr中に、Y方向の一端側に位置する走査線5(例えば、
図1に示す走査線5a)から他方に位置する走査線5(例えば、
図1に示す走査線5b)に向かって走査線5が順次走査されるよう走査回路9から走査線5へ駆動信号が出力される。これによって、
図3に示す7ライン分の表示領域に対して、第1サブフレーム期間SF1の書込期間Wr中にライン画像SL11,SL21,SL31,SL41,SL51,SL61,SL71が順次書き込まれる。また、第2サブフレーム期間SF2の書込期間Wr中にライン画像SL12,SL22,SL32,SL42,SL52,SL62,SL72が順次書き込まれる。また、サブフレーム期間SFmの書込期間Wr中にライン画像SL1m,SL2m,SL3m,SL4m,SL5m,SL6m,SL7mが順次書き込まれる。なお、明示的には図示しないが、サブフレーム期間SFmの前のサブフレーム期間SF(m-k)の書込期間Wr中にライン画像SL1(m-k),SL2(m-k),SL3(m-k),SL4(m-k),SL5(m-k),SL6(m-k),SL7(m-k)が順次書き込まれる。
【0034】
上述のライン画像と、上述の一連による(R,G,B)=(r0,g0,b0)との関係を実施形態のm=3の場合に即して例示すると、(R,G,B)=(r1,g1,b1)の画素信号は、第1サブフレーム期間SF1中の書込期間Wr中に書き込まれるライン画像SL11,SL21,SL31,SL41,SL51,SL61,SL71のうちいずれかのライン画像に含まれる。また、(R,G,B)=(r2,g2,b2)の画素信号は、第2サブフレーム期間SF2中の書込期間Wr中に書き込まれるライン画像SL12,SL22,SL32,SL42,SL52,SL62,SL72のうちいずれかのライン画像に含まれる。また、(R,G,B)=(r3,g3,b3)の画素信号は、第3サブフレーム期間SF3中の書込期間Wr中に書き込まれるライン画像SL13,SL23,SL33,SL43,SL53,SL63,SL73のうちいずれかのライン画像に含まれる。
【0035】
図3及び後述する
図9における7ラインの構成及び制御はあくまで説明を分かりやすくするための例示であって、表示部7のライン数を7ラインに制限するものでない。表示部7のライン数は複数であればよく、6以下であってもよいし8以上であってもよい。
【0036】
書込期間Wr中には光源装置Lの光源11は非点灯になる。
図3及び後述する
図9では、光源11が非点灯になることを「Off」で示している。また、
図3及び後述する
図9では、各フレーム期間F中の点灯期間Brに光源11が点灯することを「On」で示している。
【0037】
各サブフレーム期間SFの書込期間Wr中における画素信号の書き込みはライン単位で進行する。言い換えれば、フレーム画像データIとして入力されるフレーム画像に対応する画素信号の書き込みは、一括では行われず、ライン単位で進行する。このため、例えば
図3に示すように、第2サブフレーム期間SF2の書込期間Wrにおけるライン画像SL12の書込み中、第1サブフレーム期間SF1の書込期間Wrに書き込まれたライン画像SL21,SL31,…は保持されている。また、第2サブフレーム期間SF2の書込期間Wrにおけるライン画像SL22の書込み段階に進行しても、第1サブフレーム期間SF1の書込期間Wrに書き込まれたライン画像SL31,SL31,…は保持されている。このように、ライン単位での画素信号の書き込みでは、各新たな画素信号が書き込まれるまで前のフレーム期間Fに書き込まれた画素信号がライン単位で保持される。
【0038】
また、調整サブフレーム期間Adの書込期間AWrで書き込まれる画素信号は全ラインに一括で書き込まれるが、当該調整サブフレーム期間Adの後に生じる次のフレーム期間Fの第1サブフレーム期間SF1の書込期間Wr中における画素信号の書き込みはライン単位で進行する。このため、
図3では、書込期間AWrで書き込まれる画素信号を、ライン単位でライン画像SL1A,SL2A,SL3A,SL4A,SL5A,SL6A,SL7Aとして示している。そして、当該次のフレーム期間Fの第1サブフレーム期間SF1の書込期間Wr中に書き込まれるライン画像SL11,SL21,SL31,SL41,SL51,SL61,SL71の各々の書き込みタイミング差によるライン画像SL1A,SL2A,SL3A,SL4A,SL5A,SL6A,SL7Aの各々の残存期間の差異を示している。
【0039】
一方、調整サブフレーム期間Adの画素信号は、全ラインに対して一括で書き込まれる。具体的には、調整サブフレーム期間Adでは、
図3の書込期間AWrで示すように、全ラインが一括で駆動される。そして、書込期間AWrでは、信号線4を共有する複数の画素Pixに対して共通の画素信号が書き込まれる。これによって、調整サブフレーム期間Adは全ラインの一括書き換えが行われる。書込期間AWr中には光源装置Lの光源11は非点灯になる。
【0040】
以下、サブフレーム期間SFの書込期間Wr及び調整サブフレーム期間Adの書込期間AWrにおいて書き込まれる画素信号の階調値制御ならびに光源装置Lから発せられる光の再現色制御に関する説明を、
図4から
図11を参照して説明する。
【0041】
図4は、画像処理回路70の機能構成例を示すブロック図である。画像処理回路70は、例えば、画像解析部71と、色度座標範囲決定部72と、画素信号生成部73と、光源制御信号生成部74と、を備える。
【0042】
画像解析部71は、フレーム画像データIを解析する。具体的には、画像解析部71は、フレーム画像データIとして画像処理回路70に入力されるフレーム画像データIに含まれる複数の画素データの各々が示す階調値を取得し、色域TRGB(
図5参照)内における当該複数の画素データの座標及び分布を特定する。
【0043】
図5は、CIE1931色空間における色域TRGBと、フレーム画像データIに含まれる複数の画素データの位置及び分布との関係の一例を示す模式図である。なお、CIEは、国際照明委員会(フランス語で、Commission internationale de l‘eclairage)をさす。なお、コンマ(‘)の後の(e)には、本来ならば綴り字記号が付されているが、環境依存文字であるため本明細書ではアルファベットのeで代えている。CIE1931色空間は、1931年に国際照明委員会により定義された色空間である。
【0044】
図5では、CIE1931色空間として定義された色空間CSをxy色度図で示している。また、
図5では、色空間CS内に含まれる色域TRGBを示している。色域TRGBは、第1光色度座標RVと、第2光色度座標GVと、第3光色度座標BVと、を頂点とする三角形内の色域である。第1光色度座標RVは、第1光源11Rが発する赤色(R)の最高輝度の光によって表示装置100が再現できる赤色(R)の最高階調値に対応する座標である。第2光色度座標GVは、第2光源11Gが発する緑色(G)の最高輝度の光によって表示装置100が再現できる緑色(G)の最高階調値に対応する座標である。第3光色度座標BVは、第3光源11Bが発する青色(R)の最高輝度の光によって表示装置100が再現できる青色(B)の最高階調値に対応する座標である。
【0045】
例えば、(R,G,B)=(r0,g0,b0)のr0,g0,b0がそれぞれ取り得る階調値をjビットで表現する方式が採用された場合、r0,g0,b0の最小値は0であり、最大値は(2j-1)である。この場合、第1光色度座標RVが示す階調値は、(R,G,B)=((2j-1),0,0)である。また、第2光色度座標GVが示す階調値は、(R,G,B)=(0,(2j-1),0)である。また、第3光色度座標BVが示す階調値は、(R,G,B)=(0,0,(2j-1))である。一例として、j=8の場合、(2j-1)=255である。jは、自然数である。以下、ここで説明した階調値をjビットで表現する方式を前提とした説明を行う。
【0046】
フレーム画像データIに含まれる複数の画素データは、(R,G,B)=(r0,g0,b0)のように、赤色(R)の階調値と、緑色(G)の階調値と、青色(B)の階調値と、を含む。
図5に示すようなxy色度図において、複数の画素データの各々は、色域TRGB内の一座標に対応する。画像解析部71は、色域TRGB内における当該複数の画素データの各々の座標を特定する。画像解析部71は、特定された当該複数の画素データの各々の座標に基づいて、当該フレームデータに含まれる当該複数の画素データの分布を特定する。
図5では、当該複数の画素データの座標のうち、外れ座標OL1,OL2を除いたほとんどの座標が色度座標範囲TA内に含まれている例を示している。
図5では、黒く塗りつぶされた領域ILで当該ほとんどの座標の集合を模式的に示している。
【0047】
色度座標範囲決定部72は、画像解析部71が特定したフレーム画像に含まれる複数の画素データの座標及び分布に基づいて、当該フレーム画像を表示するフレーム期間Fの第1色度座標V1、第2色度座標V2及び第3色度座標V3を特定する。
【0048】
第1色度座標V1、第2色度座標V2及び第3色度座標V3は、色域TRGB内の座標である。すなわち、第1色度座標V1、第2色度座標V2及び第3色度座標V3はそれぞれ、
図5に示す色域TRGBにおける特定の色を示す座標であって、かつ、第1光源11Rから発せられる光と、第2光源11Gから発せられる光と、第3光源11Bから発せられる光との組み合わせによって再現可能な色に対応する座標である。色度座標範囲決定部72は、第1色度座標V1と第2色度座標V2と第3色度座標V3とを頂点とする三角形状の色度座標範囲TA内に領域ILが収まるよう、第1色度座標V1、第2色度座標V2、第3色度座標V3を特定する。
【0049】
ここで、外れ座標OL1,OL2は、必ずしも色度座標範囲TA内に収まらなくてよい。すなわち、色度座標範囲TAは、フレーム画像データIに含まれる複数の画素データの全てを内側に収める必要はない。ただし、フレーム画像データIに含まれる複数の画素データのうち、外れ座標OL1,OL2のように色度座標範囲TAに収まらなくてもよいとされる画素データは、2つの条件を満たす。当該2つの条件のうち1つは、外れ座標OL1,OL2が、フレーム画像データIに含まれる複数の画素データのうち階調値が相対的に低い一部の画素データに該当することである。ここで、「階調値が相対的に低い画素データ」とは、各画素データの代表値を比較した場合に代表値が相対的に低い側から数えて全ての画素データの5%の範囲内に含まれる画素データをさす。代表値は、(R,G,B)=(r0,g0,b0)の形式で表されるr0,g0,b0の3つの階調値のうち最大の値である。当該2つの条件のうち他の1つは、外れ座標OL1,OL2のように色度座標範囲TA外とされる画素データの割合がフレーム画像データIに含まれる複数の画素データの5%以下に収まることである。当該2つの条件を満たすのであれば、色度座標範囲TA外とされる画素データは、外れ座標OL1,OL2のように2つに限られるものでなく、1つ以下であってもよいし3つ以上であってもよい。代表値が相対的に低い画素データは、相対的に視覚的影響が低い画素データであることから、一部が表示出力に反映されなかったとしても色再現性に対する影響が比較的低いことによる。
【0050】
領域ILが色度座標範囲TA内に収まるということは、「領域ILに含まれる画素データのR,G,Bの階調値の組み合わせに対応する色が、第1色度座標V1に対応する色の光と、第2色度座標V2に対応する色の光と、第3色度座標V3に対応する色の光との組み合わせで再現できる」ということである。言い換えれば、画像処理回路70は、領域ILを再現できる第1色度座標V1、第2色度座標V2、第3色度座標V3を特定するために、画像解析部71による画像の解析を行い、その解析に基づいて色度座標範囲決定部72による第1色度座標V1、第2色度座標V2、第3色度座標V3の特定を行う。
【0051】
ここで、実施形態で第1色度座標V1、第2色度座標V2、第3色度座標V3が特定されることによって一般的なFSC方式に比してカラーブレイクを抑制できる仕組みについて、一般的なFSC方式と実施形態で採用されるFSC方式との比較に基づいて説明する。
【0052】
図6は、比較例としての一般的なFSC方式で採用される第1サブフレーム期間SF1、第2サブフレーム期間SF2、第3サブフレーム期間SF3の色の遷移を示すカラーチャートである。
図6ならびに後述する
図7及び
図8では、第1光源11R、第2光源11G、第3光源11Bの最高輝度をMAXで示し、最低輝度をMINで示している。比較例では、
図6に示すように、第1サブフレーム期間SF1の点灯期間Brに第1光源11Rが最高輝度で点灯し、第2光源11G及び第3光源11Bが消灯する。また、比較例では、第2サブフレーム期間SF2の点灯期間Brに第2光源11Gが最高輝度で点灯し、第1光源11R及び第3光源11Bが消灯する。また、比較例では、第3サブフレーム期間SF3の点灯期間Brに第3光源11Bが最高輝度で点灯し、第1光源11R及び第2光源11Gが消灯する。比較例では、このような各サブフレーム期間SFの点灯期間Brの点灯制御に対応して、各サブフレーム期間SFの書込期間Wrにおける画素信号の書き込みが行われる。すなわち、第1サブフレーム期間SF1の書込期間Wrに、画素データのR,G,Bの階調値のうちRの階調値に対応する画素信号が画素Pixに与えられる。また、第2サブフレーム期間SF2の書込期間Wrに、画素データのR,G,Bの階調値のうちGの階調値に対応する画素信号が画素Pixに与えられる。また、第3サブフレーム期間SF3の書込期間Wrに、画素データのR,G,Bの階調値のうちBの階調値に対応する画素信号が画素Pixに与えられる。
【0053】
このような比較例では、第1サブフレーム期間SF1から第2サブフレーム期間SF2に移行する際に表示部7で出力される色が赤色(R)から緑色(G)に変化する。また、第2サブフレーム期間SF2から第3サブフレーム期間SF3に移行する際に表示部7で出力される色が緑色(G)から青色(B)に変化する。また、第3サブフレーム期間SF3から次のフレーム期間Fの第1サブフレーム期間SF1に移行する際に表示部7で出力される色が青色(B)から赤色(R)に変化する。このように、比較例では、サブフレーム期間SFの移行前後で出力される色成分が完全に切り替わる。表示部7を視認するユーザは、比較例で生じるこのような色成分の完全な切り替わりによって、カラーブレイクをより認識しやすくなる。言い換えれば、サブフレーム期間SFの移行前後で出力される色成分の変化の顕著さが、カラーブレイクの認識の顕著さに影響を与えている。
【0054】
図7は、実施形態で採用される第1サブフレーム期間SF1、第2サブフレーム期間SF2、第3サブフレーム期間SF3の色の遷移の一例を示すカラーチャートである。実施形態では、領域ILに含まれる座標が示す色を再現できる第1色度座標V1、第2色度座標V2、第3色度座標V3が特定される。そして、第1色度座標V1に対応する光が第1サブフレーム期間SF1の点灯期間Brに光源11から発せられ、第2色度座標V2に対応する光が第2サブフレーム期間SF2の点灯期間Brに光源11から発せられ、第3色度座標V3に対応する光が第3サブフレーム期間SF3の点灯期間Brに光源11から発せられるよう、光源11が制御される。
【0055】
図5及び
図7では、第1サブフレーム期間SF1、第2サブフレーム期間SF2、第3サブフレーム期間SF3の各々で光源11から発せられる光の色、すなわち、第1色度座標V1、第2色度座標V2、第3色度座標V3の各々に対応する色が、それぞれ赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)の色成分を含んでいる場合を例示している。このような
図5及び
図7で示す例では、
図6で示す比較例に比して、サブフレーム期間SFの移行前後で出力される色成分の変化の度合いが相対的に小さくなる。これによって、表示部7を視認するユーザによるカラーブレイクの認識をより抑制できる。
【0056】
なお、実施形態で各サブフレーム期間SFの書込期間Wrに書き込まれる画素信号が示す階調値の制御は、各画素データが示すR,G,Bの階調値に基づいて行われる。一例として、フレーム画像に含まれる複数の画素データのうち1つの画素データが示すR,G,Bの階調値が、(R,G,B)=(50,140,75)であったとする。また、
図7に示す第1色度座標V1が、第1光源11Rを最高輝度の70%で点灯させ、第2光源11Gを最高輝度の70%で点灯させ、第3光源11Bを最高輝度の10%で点灯させることで再現される色であるとする。また、
図7に示す第2色度座標V2が、第1光源11Rを最高輝度の10%で点灯させ、第2光源11Gを最高輝度の100%で点灯させ、第3光源11Bを最高輝度の20%で点灯させることで再現される色であるとする。また、
図7に示す第3色度座標V3が、第1光源11Rを最高輝度の10%で点灯させ、第2光源11Gを最高輝度の10%で点灯させ、第3光源11Bを最高輝度の100%で点灯させることで再現される色であるとする。この場合、第1サブフレーム期間SF1の書込期間Wrにおいて、照射された光の50%を表示部7の出力に反映する階調値に対応する画素信号を当該1つの画素データが与えられる画素Pixに書き込むことで、第1サブフレーム期間SF1の点灯期間Br中に(R,G,B)=(35,35,5)の階調値に対応する出力が行われる。また、第2サブフレーム期間SF2の書込期間Wrにおいて、照射された光を最大限(100%)表示部7の出力に反映する階調値に対応する画素信号を当該1つの画素データが与えられる画素Pixに書き込むことで、第2サブフレーム期間SF2の点灯期間Br中に(R,G,B)=(10,100,20)の階調値に対応する出力が行われる。また、第3サブフレーム期間SF3の書込期間Wrにおいて、照射された光の50%を表示部7の出力に反映する階調値に対応する画素信号を当該1つの画素データが与えられる画素Pixに書き込むことで、第3サブフレーム期間SF3の点灯期間Br中に(R,G,B)=(5,5,50)の階調値に対応する出力が行われる。これによって、フレーム期間F中に含まれる第1サブフレーム期間SF1、第2サブフレーム期間SF2、第3サブフレーム期間SF3の全てを通して当該1つの画素データが与えられる画素Pixで行われる出力は、(R,G,B)=(50,140,75)に対応したものになる。この1つの画素データの一例に限らず、領域ILに含まれる座標に対応する画素データが示す色は、領域ILを内側に収める色度座標範囲TAの3頂点である第1色度座標V1、第2色度座標V2、第3色度座標V3の各々に対応する光の組み合わせで再現できる。また、外れ座標OL1,OL2のように色度座標範囲TAに含まれない画素データの色再現については、色度座標範囲TAに含まれる近似色に置換されたうえで同様の再現が行われる。ここでいう近似色とは、例えば、色度座標範囲TAで外れ座標OL1(又は外れ座標OL2)に最も近い位置にある座標に対応する色である。このように、フレーム期間F中の各サブフレーム期間SFで光源11から発せられる光に対応した各サブフレーム期間SFの階調値の決定及び決定された階調値に対応する画素信号の生成は、画素信号生成部73が行う。また、第1色度座標V1、第2色度座標V2、第3色度座標V3の各々に対応して第1光源11R、第2光源11G、第3光源11Bの各々の発光の度合いを各サブフレーム期間SFで制御するための信号の生成は、光源制御信号生成部74が行う。
【0057】
ここで、仮に実施形態でフレーム期間F中の出力を第1サブフレーム期間SF1、第2サブフレーム期間SF2、第3サブフレーム期間SF3のみとしてしまった場合に起こり得る現象について説明する。
図6及び
図7では、第1サブフレーム期間SF1中に光源11から発せられる光と、第2サブフレーム期間SF2中に光源11から発せられる光と、第3サブフレーム期間SF3中に光源11から発せられる光と、を単純に合成したものを「Total」欄で示している。すなわち、「Total」欄は、フレーム期間F中に表示部7に照射される光の色成分を示している。
【0058】
比較例では、
図6の「Total」欄で示すように、フレーム期間F中に表示部7に照射される光の色成分が単純にR,G,Bの各々の最高輝度を合成した白色(W)の色成分になる。
【0059】
一方、実施形態では、フレーム期間F中に表示部7に照射される光の色成分が、第1色度座標V1の色成分と、第2色度座標V2の色成分と、第3色度座標V3の色成分とを単純に合成した色成分になる。ここで、第1色度座標V1の色成分と、第2色度座標V2の色成分と、第3色度座標V3の色成分とを単純に合成した色成分は、白色(W)を再現するような比率にならないことがある。
図7の「Total」欄では、緑色(G)の色成分が赤色(R)の色成分及び青色(B)の色成分よりも相対的に多く、青色(B)の色成分が赤色(R)の色成分よりも多い例を示している。すなわち、
図7に示す例の場合、フレーム期間F中に表示部7に照射される光の色成分が白色(W)に対応する色成分でない。
【0060】
表示部7から出力されてユーザに視認される光の大部分は、光源11から発せられて画素Pixを介して表示部7の表示面側に導かれてユーザの目に到達する光である。ここで、表示部7から出力されてユーザに視認される光は、さらに、配線散乱による光を含んでいる。配線散乱による光とは、表示部7内に設けられた配線によって反射されてユーザの目に到達する光である。表示部7内に設けられた配線とは、例えば信号線4及び走査線5をさす。各フレーム期間F中で生じる配線散乱による光の色成分は、フレーム期間F中に表示部7に照射される光の色成分に対応する。このため、
図7に示す例では、
図7の「Total」欄で示すように、配線散乱による光の色成分が緑色(G)の色成分が赤色(R)の色成分及び青色(B)の色成分よりも相対的に多く、白色(W)に対応する色成分ではない。
【0061】
フレーム期間F中に表示されるフレーム画像の色は、配線散乱による光の色成分の影響を受ける。従って、
図7に示す例の場合、配線散乱による光の影響で、表示部7で出力されるフレーム画像が意図せず全体的に青色(B)寄りの緑色(G)がかった色としてユーザに視認されてしまう。このように、実施形態では、第1色度座標V1、第2色度座標V2、第3色度座標V3に対応した色の光を第1サブフレーム期間SF1、第2サブフレーム期間SF2、第3サブフレーム期間SF3に割り当てるのみとした状態でフレーム期間F中の色再現を完結させた場合、配線散乱による光の影響で色再現性に関する現象が生じることがある。以下、単に色再現性に関する現象と記載した場合、上述した配線散乱による光の影響で生じる色再現性に関する現象をさす。
【0062】
そこで、実施形態では、さらに改善を行うことを目的として色再現性に関する現象への対応を行っている。具体的には、実施形態では、第1サブフレーム期間SF1、第2サブフレーム期間SF2、第3サブフレーム期間SF3に加えて、調整サブフレーム期間Adをフレーム期間F中に含ませている。調整サブフレーム期間Adは、差分色DCを出力するための期間である。差分色DCは、「第1色度座標V1に対応する色と、第2色度座標V2に対応する色と、第3色度座標V3に対応する色と、の混色」の補色である。ここでいう補色とは、混合の対象となる有彩色との混合によって、無彩色である白色(W)を作ることができる色をさす。すなわち、差分色DCは、混合の対象となる有彩色である「第1色度座標V1に対応する色と、第2色度座標V2に対応する色と、第3色度座標V3に対応する色と、の混色」と混合することで白色(W)を再現できる色である。
【0063】
図8は、
図7と同様の第1サブフレーム期間SF1、第2サブフレーム期間SF2、第3サブフレーム期間SF3の色の遷移に対応した調整サブフレーム期間Adの差分色DCを示すカラーチャートである。
図8では、第1光源11Rを最高輝度の90%で点灯させ、第2光源11Gを非点灯(0%)とし、第3光源11Bを最高輝度の50%で点灯させることで再現される色が差分色DCである場合を例示している。これによって、第1サブフレーム期間SF1、第2サブフレーム期間SF2、第3サブフレーム期間SF3と、調整サブフレーム期間Adと、を含むフレーム期間F中に表示部7に照射される光の色成分が、
図8の「Total」欄で示すように、赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)に共通して最高輝度の180%に対応する色成分になる。
図7及び
図8では、「Total」欄において最高輝度の180%に対応するグラフの高さに符号TOPを付している。すなわち、
図8に示す例では、フレーム期間F中に表示部7に照射される赤色(R)と緑色(G)と青色(B)とが加法混色によって白色(W)を再現するようになる。これによって、配線散乱による光の色成分を白色(W)に対応する色成分とすることができる。従って、実施形態で第1色度座標V1、第2色度座標V2、第3色度座標V3に対応した色の光を第1サブフレーム期間SF1、第2サブフレーム期間SF2、第3サブフレーム期間SF3に割り当てても、調整サブフレーム期間Adに差分色DCを割り当てることで、色再現性に関する現象が発生することを抑制できる。このように、実施形態によれば、カラーブレイクの発生の抑制と、より正確なフレーム画像の色再現と、を両立できる。なお、調整サブフレーム期間Adの期間長が1つのサブフレーム期間の期間長と同じ場合、各画素Pixの階調は0とされることが好ましい。
【0064】
実施形態では、差分色DCの生成は画素信号生成部73が行うが、これは一例であってこれに限られるものでなく、適宜変更可能である。例えば、差分色DCの生成は色度座標範囲決定部72が行ってもよいし、色度座標範囲決定部72、画素信号生成部73とは異なる構成であって差分色DCの生成専用の機能を担う構成が画像処理回路70内にさらに設けられていてもよい。
【0065】
画素信号生成部73は、色度座標範囲決定部72が特定した第1色度座標V1、第2色度座標V2、第3色度座標V3と、フレーム画像に含まれる画素データが示すR,G,Bの階調値と、に基づいて、第1サブフレーム期間SF1、第2サブフレーム期間SF2、第3サブフレーム期間SF3に照射される第1色度座標V1、第2色度座標V2、第3色度座標V3に対応する光で当該R,G,Bの階調値に対応する出力を再現するための画素信号を生成する処理を、フレーム画像に含まれる複数の画素データの各々について個別に行う。具体的には、画素信号生成部73は、上述した1つの画素データの一例のように、第1サブフレーム期間SF1の書込期間Wr、第2サブフレーム期間SF2の書込期間Wr、第3サブフレーム期間SF3の書込期間Wrの各々で個別に画素Pixに書き込まれる画素信号を画素データ毎に生成する。さらに、画素信号生成部73は、調整サブフレーム期間Adの書込期間AWrに書き込まれる画素信号を生成する。調整サブフレーム期間Adの書込期間AWrに書き込まれる画素信号に対応する階調値は、予め定められた階調値である。予め定められた階調値は、例えば最高階調値(2
j-1)であってもよいし、後述する
図11を参照して説明される部分領域A1,A2,…A5毎の階調値であってもよい。
【0066】
実施形態の画像処理回路70は、例えば、画素信号生成部73が生成した各種の画素信号を、フレーム期間F中の各サブフレーム期間SF又は調整サブフレーム期間Adの書込期間AWrに応じたタイミング(
図3参照)で信号出力回路8に出力する。また、画像処理回路70は、画素信号生成部73が生成した画素信号を信号出力回路8に出力するタイミングと同期して、タイミングコントローラ13に同期制御用の信号を出力する。タイミングコントローラ13は、各サブフレーム期間SFの書込期間Wr中、同期制御用の信号に応じて走査回路9からライン単位で駆動信号を出力させ、信号出力回路8に入力された画素信号を信号出力回路8から出力させて各画素Pixに画素信号を書き込む。また、タイミングコントローラ13は、調整サブフレーム期間Adの書込期間AWrに、走査回路9から全ての走査線5に対して同一タイミングで駆動信号を出力させ、信号出力回路8に入力された画素信号を信号出力回路8から出力させて各画素Pixに画素信号を書き込む。
【0067】
光源制御信号生成部74は、点灯期間Br中に光源11から照射される光によって再現される色を、色度座標範囲決定部72が特定した第1色度座標V1、第2色度座標V2、第3色度座標V3と、差分色DCと、の各々に対応させるための制御信号を生成する。当該制御信号は、第1光源11R、第2光源11G、第3光源11Bの各々の発光強度を示す信号である。
【0068】
実施形態の画像処理回路70は、例えば、光源制御信号生成部74が生成した制御信号を、フレーム期間F中の各サブフレーム期間SF又は調整サブフレーム期間Adの点灯期間Brに応じたタイミング(
図3参照)で、同期制御用の信号と共にタイミングコントローラ13に出力する。タイミングコントローラ13は、制御信号を光源駆動回路12に伝送する。光源駆動回路12は、タイミングコントローラ13の制御下で、点灯期間Br中に制御信号に対応した発光強度で第1光源11R、第2光源11G、第3光源11Bを点灯させる。これによって、第1サブフレーム期間SF1の点灯期間Brに第1色度座標V1に対応した色の光が照射され、第2サブフレーム期間SF2の点灯期間Brに第2色度座標V2に対応した色の光が照射され、第3サブフレーム期間SF3の点灯期間Brに第3色度座標V3に対応した色の光が照射され、調整サブフレーム期間Adの書込期間AWr後に生じる点灯期間Brに差分色DCに対応した色の光が照射される。
【0069】
なお、第1サブフレーム期間SF1の期間長(時間)と、第2サブフレーム期間SF2の期間長(時間)と、第3サブフレーム期間SF3の期間長(時間)と、は同じである。各サブフレーム期間SFにおける書込期間Wrの期間長(時間)及び点灯期間Brの期間長(時間)も統一されている。一方、調整サブフレーム期間Adの期間長(時間)は、各サブフレーム期間SFの期間長(時間)と同一であってもよいし、異なっていてもよい。調整サブフレーム期間Adの書込期間AWrは、全ラインに対する一括書き込みであるので、各サブフレーム期間SFにおける書込期間Wrの期間長(時間)よりも短い期間長(時間)とすることができる。また、調整サブフレーム期間Adの点灯期間Brも、各サブフレーム期間SFにおける点灯期間Brの期間長(時間)よりも短い期間長(時間)とすることができる。なお、調整サブフレーム期間Adにおける各画素Pixの階調を0よりも大きくすることで、あえて配線散乱だけでなく液晶3による散乱も生じさせ、階調に応じて(階調を大きくするほど)、調整サブフレーム期間Adの時間長を短縮するようにしてもいい。
【0070】
例えば、第1光色度座標RV、第2光色度座標GV、第3光色度座標BV(
図4参照)の各々に対応する第1光源11R、第2光源11G、第3光源11Bの各々の発光強度を、第1光源11R、第2光源11G、第3光源11Bの素子が許容するポテンシャル上の最高発光強度(α)よりも低い発光強度(β)とするよう予め設定されているものとする。この場合、各サブフレーム期間SFでは発光強度(β)以下で制御された第1光源11R、第2光源11G、第3光源11Bによる光の照射が行われる。一方、調整サブフレーム期間Adでは、最高発光強度(α)を許容した第1光源11R、第2光源11G、第3光源11Bの制御で差分色DCに対応する光の照射が行われるものとする。この場合、差分色DCに含まれる色成分のうち最も多い色成分に対応する原色(赤色(R)、緑色(G)又は青色(B))が100%の階調値に対応する色成分である場合に最高発光強度(α)で点灯されるようにすることで、調整サブフレーム期間Adの点灯期間Br中も発光強度(β)以下で制御される場合に比して調整サブフレーム期間Adの点灯期間Brを短縮できる。なぜならば、光の色成分量は、発光強度と発光時間の乗算であると解することができる。従って、ある色成分に対応する色を再現する目的において、より明るい光が照射されるのであれば、その明るさの分だけ光の照射時間を短縮できるからである。この例の場合、調整サブフレーム期間Adの点灯期間Brの期間長(時間)は、各サブフレーム期間SFの点灯期間Brの期間長(時間)のα/βとすることができる。なお、調整サブフレーム期間Adの点灯期間Br中も発光強度(β)以下で制御される場合、調整サブフレーム期間Adの点灯期間Brの期間長(時間)は、各サブフレーム期間SFの点灯期間Brの期間長(時間)と同一である。このように、調整サブフレーム期間Adの時間長は、光源11から照射される光の明度に対応する。ここでいう明度とは、表示部7全体を照明するように光源11から照射される光が表示部7全体にもたらす光の明度をさす。
【0071】
以上説明したように、実施形態によれば、表示装置100は、対向する2枚の基板(第1基板30、第2基板20)の間に液晶3が封入され、液晶3の配向を制御する電位差が与えられる2つの電極(画素電極2、共通電極6)を有し、複数の画素Pixが設けられた表示パネルPと、表示パネルPに光を照射する光源装置Lと、を備える。光源装置Lは、第1の色の光を発する第1光源11Rと、第2の色の光を発する第2光源11Gと、第3の色の光を発する第3光源11Bとを有する。フレーム画像の表示期間(フレーム期間F)は、3つのサブフレーム期間SFと、3つのサブフレーム期間SFで再現された色を調整する調整サブフレーム期間Adとを含む。3つのサブフレーム期間SFは、第1サブフレーム期間SF1と、第2サブフレーム期間SF2と、第3サブフレーム期間SF3とを含む。光源装置Lは、第1サブフレーム期間SF1に色度座標範囲TAの第1色度座標V1に対応する色を再現する光を照射し、第2サブフレーム期間SF2に色度座標範囲TAの第2色度座標V2に対応する色を再現する光を照射し、第3サブフレーム期間SF3に色度座標範囲TAの第3色度座標V3に対応する色を再現する光を照射し、調整サブフレーム期間Adに差分色DCを再現する光を照射する。色度座標範囲TAは、第1色度座標V1と第2色度座標V2と第3色度座標V3とを頂点とする三角形状の色度座標範囲であって、フレーム画像データIに含まれる複数の画素データのうち階調値が相対的に低い一部の画素データ(例えば、外れ座標OL1,OL2)を除いた画素データの色度座標(例えば、領域ILに含まれる座標)を内包する。また、色度座標範囲TAは、第1光色度座標RVと第2光色度座標GVと第3光色度座標BVとを頂点とする色域TRGBの一部である。一部の画素データ(例えば、外れ座標OL1,OL2)は、フレーム画像データIに含まれる複数の画素データの5%以下である。差分色DCは、第1色度座標V1に対応する色と、第2色度座標V2に対応する色と、第3色度座標V3に対応する色と、の混色の補色である。
【0072】
これによって、サブフレーム期間SFの切り替わり前後の色の差を、第1色度座標V1と第2色度座標V2と第3色度座標V3の色の差に収めることができる。従って、第1光色度座標RVに対応する色と第2光色度座標GVに対応する色と第3光色度座標BVに対応する色との切り替わりに比して、カラーブレイクをより抑制できる。また、調整サブフレーム期間Adに差分色DCを出力することで、カラーブレイクの発生の抑制と、より正確なフレーム画像の色再現と、を両立できる。
【0073】
また、光源装置Lは、表示パネルPの側方から光を照射する。これによって、いわゆるサイドライト方式の表示装置においてカラーブレイクをより抑制できる。
【0074】
また、第1の色は赤色(R)であり、第2の色は緑色(G)であり、第3の色は青色(B)である。これによって、いわゆるRGBの光を照射する光源11が採用された表示装置においてカラーブレイクをより抑制できる。
【0075】
また、表示パネルPは、対向する2枚の基板(例えば、第2基板20、第1基板30)の間に高分子分散型液晶(例えば、液晶3)が封入された表示パネルである。これによって、高分子分散型液晶を利用したFSC方式の表示装置においてカラーブレイクをより抑制できる。
【0076】
また、調整サブフレーム期間Adが、フレーム期間Fにおいて第1サブフレーム期間SF1、第2サブフレーム期間SF2及び第3サブフレーム期間SF3の後である。これによって、より少ない書込期間AWr及び点灯期間Brの回数でより正確なフレーム画像の色再現を行える。
【0077】
また、調整サブフレーム期間Adには、差分色DCに対応する画素信号が一括で複数の画素Pixに書き込まれる。これによって、より短い時間の書込期間AWrでより正確なフレーム画像の色再現を行える。
【0078】
(変形例)
次に、実施形態の変形例について、
図9から
図11を参照して説明する。変形例の説明では、実施形態と同様の構成について同じ符号を付し、説明を省略することがある。
【0079】
(変形例1)
図9は、変形例で表示装置100に適用される制御の一例を示すタイムチャートである。実施形態では、
図3に示すように、調整サブフレーム期間Adが、フレーム期間Fにおいて第1サブフレーム期間SF1、第2サブフレーム期間SF2及び第3サブフレーム期間SF3の後であったが、変形例1では、調整サブフレーム期間が、フレーム期間Fにおいて、第1サブフレーム期間SF1の後であって第2サブフレーム期間SF2の前と、第2サブフレーム期間SF2の後であって第3サブフレーム期間SF3の前と、第3サブフレーム期間SF3の後である。具体的には、変形例における調整サブフレーム期間は、
図9に示す調整サブフレーム期間Ad1と、調整サブフレーム期間Ad2と、調整サブフレーム期間Ad3である。調整サブフレーム期間Ad1は、フレーム期間Fにおいて、第1サブフレーム期間SF1の後であって第2サブフレーム期間SF2の前の調整サブフレーム期間である。調整サブフレーム期間Ad2は、フレーム期間Fにおいて、第2サブフレーム期間SF2の後であって第3サブフレーム期間SF3の前の調整サブフレーム期間である。調整サブフレーム期間Ad3は、フレーム期間Fにおいて、第3サブフレーム期間SF3の後の調整サブフレーム期間である。
【0080】
調整サブフレーム期間Ad1、調整サブフレーム期間Ad2、調整サブフレーム期間Ad3はそれぞれ、実施形態における調整サブフレーム期間Adと同様、書込期間AWrを含む。調整サブフレーム期間Ad1、調整サブフレーム期間Ad2及び調整サブフレーム期間Ad3の書込期間AWrは、実施形態における調整サブフレーム期間Adの書込期間AWrと同様、予め定められた階調値を一括で全ラインに書き込む書込み期間である。調整サブフレーム期間Ad1の書込期間AWrは、第1サブフレーム期間SF1の点灯期間Brの後に生じる。調整サブフレーム期間Ad2の書込期間AWrは、第2サブフレーム期間SF2の点灯期間Brの後に生じる。調整サブフレーム期間Ad3の書込期間AWrは、第3サブフレーム期間SF3の点灯期間Brの後に生じる。
【0081】
調整サブフレーム期間Ad1は、書込期間Wrの後に生じる点灯期間Br21を含む。調整サブフレーム期間Ad2は、書込期間Wrの後に生じる点灯期間Br22を含む。調整サブフレーム期間Ad3は、書込期間Wrの後に生じる点灯期間Br23を含む。点灯期間Br21,Br22,Br23には、実施形態における調整サブフレーム期間Adの点灯期間Brと同様、差分色DCに対応した色の光が照射される。
【0082】
点灯期間Br21の期間長(時間)と、点灯期間Br22の期間長(時間)と、点灯期間Br23の期間長(時間)と、を足し合わせた時間は、実施形態における点灯期間Brの期間長(時間)に対応する。点灯期間Br21の期間長(時間)と、点灯期間Br22の期間長(時間)と、点灯期間Br23の期間長(時間)と、は等しいことが望ましいが、一部又は全部が異なっていてもよい。
【0083】
なお、調整サブフレーム期間Ad1,Ad2,Ad3の書込期間AWrで書き込まれる画素信号は全ラインに一括で書き込まれるが、書込期間AWrの後に生じるサブフレーム期間SFの書込期間Wr中における画素信号の書き込みはライン単位で進行する。このため、
図9では、書込期間AWrで書き込まれる画素信号を、ライン単位でライン画像SL1B,SL2B,SL3B,SL4B,SL5B,SL6B,SL7Bとして示している。そして、各書込期間AWrの後のサブフレーム期間SFの書込期間Wr中に書き込まれるライン画像の書き込みタイミング差によるライン画像SL1B,SL2B,SL3B,SL4B,SL5B,SL6B,SL7Bの各々の残存期間の差異を示している。
【0084】
(変形例2)
図10は、光源装置Lと表示パネルPとの位置関係による表示パネルPの輝度分布の一例を示す模式図である。
図2に示すように、光源装置Lは、表示パネルPの側方から光を照射する。このため、
図10に示すように、光源装置Lからの光で照明される表示パネルPは、光源装置Lに相対的に近い側が相対的に明るくなり、光源装置Lに相対的に遠い側が相対的に暗くなる輝度分布を示すことがある。このように、何の補正もない場合、表示パネルPの側方から光を照射する光源装置Lからの光によって表示パネルPの表示部7に明るさの不統一が生じることがある。
【0085】
図11は、光源装置Lと表示パネルPとの位置関係を考慮して変形例2で行われる階調値制御の一例を示す模式図である。
図11に示すように、変形例2では、表示パネルPの表示部7に含まれるフレーム画像の表示領域を複数の部分領域A1,A2,…,A5に分割する。変形例2の画素信号生成部73は、光源装置Lに相対的に近い部分領域A1に対する画素信号を、相対的に階調度が低い画素信号とする。また、変形例2の画素信号生成部73は、光源装置Lに相対的に近い部分領域A5に対する画素信号を、相対的に階調度が高い画素信号とする。これによって、部分領域A1では、光源装置Lから表示パネルPに照射される光の輝度は相対的に高いが、画素Pixによって表示面側に導かれる光の散乱度合いは相対的に低くなる。また、部分領域A3では、光源装置Lから表示パネルPに照射される光の輝度は相対的に低いが、画素Pixによって表示面側に導かれる光の散乱度合いは相対的に高くなる。このように部分領域A1に含まれる画素Pixによる光の散乱度合いと部分領域A5に含まれる画素Pixによる光の散乱度合いとを異ならせることで、部分領域A1と部分領域A5の見た目の明るさをより近い明るさにできる。
【0086】
上述の部分領域A1と部分領域A5との関係と同様の考え方で、変形例2の画素信号生成部73は、光源装置Lに対する位置が部分領域A1と部分領域A5の中間に位置する部分領域A3に対する画素信号を、部分領域A1よりも相対的に階調度が高く、部分領域A5よりも相対的に階調度が低い画素信号とする。また、変形例2の画素信号生成部73は、光源装置Lに対する位置が部分領域A1と部分領域A3の中間に位置する部分領域A2に対する画素信号を、部分領域A1よりも相対的に階調度が高く、部分領域A3よりも相対的に階調度が低い画素信号とする。変形例2の画素信号生成部73は、光源装置Lに対する位置が部分領域A3と部分領域A5の中間に位置する部分領域A4に対する画素信号を、部分領域A3よりも相対的に階調度が高く、部分領域A5よりも相対的に階調度が低い画素信号とする。
【0087】
図11では、光源装置Lに対する位置がそれぞれ異なる部分領域A1,A2,…,A5の分割数が5であるが、分割数は複数であればよく、4以下でも6以上であってもよい。また、部分領域A1,A2,…,A5毎の階調度の相対的な高低関係は、予め行われた測定等で求められた光源装置Lから表示パネルPに照射される光の輝度分布(
図10参照)に基づいて定めることができる。
【0088】
変形例2の画素信号生成部73によって部分領域A1,A2,…,A5毎の階調度の相対的な高低関係が与えられる画素信号は、書込期間AWrに書き込まれる信号を対象とし、書込期間Wrに書き込まれる画素信号を対象としないようにする第1の方式を採用してもよいし、書込期間Wr及び書込期間AWrに書き込まれる信号の両方を対象とする第2の方式を採用してもよい。ここで、第1の方式が採用された場合、実施形態の調整サブフレーム期間Ad(変形例1の調整サブフレーム期間Ad1,Ad2,Ad3)では、光源装置Lに相対的に近い位置の画素Pixに書き込まれる画素信号の階調値に比して光源装置Lに相対的に遠い位置の画素Pixに書き込まれる画素信号の階調値が高いことになる。第1の方式を採用することで、画素信号生成部73による画素信号の階調値の決定アルゴリズムをより簡素化することができる。第2の方式を採用することで、フレーム画像の表示時における表示パネルP全体の見た目の明るさの均一化及び色再現性の精度をより高められる。
【0089】
なお、
図1に示す信号線4の延出方向と走査線5の延出方向との関係及び表示パネルPと光源装置Lとの位置関係を考慮すると、部分領域A1,A2,…,A5の並び方向は、複数の走査線5の並び方向になる。従って、
図1に示す例に変形例2の第1の方式を適用した場合、1つのラインに画素信号を与えるタイミングで信号線4に与えられる画素信号を統一できるが、部分領域A1,A2,…,A5毎に画素信号を与えるタイミングを異ならせる必要がある。これに対し、
図1に示す信号線4の延出方向と走査線5の延出方向との関係を逆転させることで、部分領域A1,A2,…,A5の並び方向は、複数の信号線4の並び方向になる。これによって、変形例2の第1の方式を適用した場合、画素信号を部分領域A1,A2,…,A5の各々の位置に対応して異ならせつつ、全ラインに対して同時に駆動信号を与えて一括で全ての画素Pixを更新できる。
【0090】
変形例1と変形例2は、いずれか一方を実施形態に適用してもよいし、両方を実施形態に適用してもよい。
【0091】
また、上述の実施形態では、液晶3が高分子分散型液晶であり、いわゆるPDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)の表示パネルPが採用されているが、表示パネルPはこれに限られるものでない。表示パネルPは、反射型、透過型又は半透過型の液晶表示パネルであってもよい。
【0092】
また、光源装置Lは表示パネルPの側方に位置するいわゆるサイドライトに限られるものでなく、フロントライト等、画素Pixによって光の散乱を制御できる位置から光を照射するものであればよい。
【0093】
また、第1光源11R、第2光源11G、第3光源11Bの光の色の組み合わせは赤色(R)、緑色(G)、青色(B)に限られるものでない。例えば、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)等、他の色の組み合わせであってもよい。
【0094】
また、
図5を参照して説明した領域IL、外れ座標OL1,OL2と色度座標範囲TAとの関係、色域TRGBに対する領域IL及び色度座標範囲TAの位置関係、色空間CSに対する色域TRGBの位置関係等はあくまで一例であってこれに限られるものでない。領域IL及び色度座標範囲TAは、フレーム画像データIに応じたものになる。また、実施形態及び変形例(実施形態等)で採用できる色空間はCIE1931で定義された色空間に限られるものでなく、フレーム画像の出力制御に採用可能なあらゆる色空間を採用できる。
【0095】
また、実施形態等において述べた態様によりもたらされる他の作用効果について本明細書記載から明らかなもの、又は当業者において適宜想到し得るものについては、当然に本開示によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0096】
3 液晶
11 光源
11R 第1光源
11G 第2光源
11B 第3光源
70 画像処理回路
71 画像解析部
72 色度座標範囲決定部
73 画素信号生成部
74 光源制御信号生成部
100 表示装置
DPM ディスプレイパネルモジュール
L 光源装置
P 表示パネル