(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】電力供給装置および電力供給システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/38 20060101AFI20240823BHJP
G01R 31/56 20200101ALI20240823BHJP
【FI】
H02J3/38 110
G01R31/56
(21)【出願番号】P 2020191498
(22)【出願日】2020-11-18
【審査請求日】2023-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊田 一穂
(72)【発明者】
【氏名】中村 創一郎
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-54090(JP,A)
【文献】特開2020-92532(JP,A)
【文献】特開2006-184241(JP,A)
【文献】特開2015-122916(JP,A)
【文献】特開2020-112387(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/38
G01R 31/56
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統と負荷とを接続する電力ラインに対して有効電流および必要に応じて無効電流を出力する電力変換部と、
前記電力系統への逆潮流を検出するために前記電力ラインに設けられた電流センサの電流検出値に基づいて、前記逆潮流が発生しないように前記電力変換部の電力制御処理を行うとともに、前記電流センサの脱落検出処理を行う制御部と、
前記電流センサから前記電流検出値に応じた電流信号が入力され、前記電流信号に基づいて生成した検出信号を前記制御部に出力する検出回路と、
を備え、
前記制御部は、前記脱落検出処理として、
前記電流検出値が所定時間継続して所定の閾値以下か否かの脱落判定を行う第1判定処理と、
前記電流検出値が前記所定時間継続して前記閾値以下の場合に前記有効電流および前記無効電流の少なくとも一方の出力状態を変化させる電流調整処理と、
前記出力状態を変化させた状態で前記脱落判定を再度行う第2判定処理と、
を実行
し、
前記検出回路は、
前記電流センサに接続され、前記電流信号が入力される入力端と、
オペアンプを含み、前記検出信号を生成する生成回路と、
前記入力端と前記生成回路との間に設けられ、オン状態のときに前記電流信号が前記生成回路に入力され、オフ状態のときに前記電流信号が前記生成回路に入力されないようするスイッチと、を含み、
前記制御部は、
前記スイッチをオフ状態にして、前記検出信号のゼロ点を調整するキャリブレーション処理を行い、前記キャリブレーション処理の終了後に前記スイッチをオン状態にする
ことを特徴とする電力供給装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記電流調整処理として、前記有効電流の出力を低下させることを特徴とする請求項1に記載の電力供給装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第2判定処理の前記脱落判定において前記電流検出値が前記所定時間継続して前記閾値以下の場合、前記有効電流の出力を低下させた状態かつ前記電力ラインの前記電力系統の側に前記無効電流を出力した状態で、前記脱落判定を再度行うことを特徴とする請求項2に記載の電力供給装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記電流調整処理として、前記電力ラインの前記電力系統の側に前記無効電流を出力することを特徴とする請求項1に記載の電力供給装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記制御部に電源電圧が供給されたとき、および前記電力変換部の前記電力制御処理を開始するときに、前記キャリブレーション処理を行い、
前記電力制御処理の実施中で、かつ前記キャリブレーション処理の終了後に、前記脱落検出処理を行うことを特徴とする請求項
1に記載の電力供給装置。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれかに記載の電力供給装置および電流センサを含む電力供給システムであって、
前記電流センサは、
単相3線式の電力ラインのU相を流れるU相電流を検出する第1電流センサと、
前記電力ラインのW相を流れるW相電流を検出する第2電流センサと、
を含むことを特徴とする電力供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流センサの脱落検出を行う電力供給装置および電力供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力供給システムは、電力供給装置と、外付けの電流センサ(例えば、カレントトランス)とを含む。電力供給装置は、再生可能エネルギーや蓄電池等から得た電力を変換して負荷(家庭負荷)に電力供給を行う。電流センサは、電力系統への逆潮流が発生しないように、電力系統から負荷に流れる電流を検出する。
【0003】
電流センサは、一般に、単相3線式の電力ラインのU相およびW相に取り付けられるが、取り付けが不十分な場合、振動や衝撃等によって脱落することがある。このため、電力供給装置は、電流センサの脱落を検出する機能が必要となる。
【0004】
例えば、特許文献1に記載の電力供給装置は、U相に取り付けられた第1電流センサおよびW相に取り付けられた第2電流センサの取り付け状態を判定する。具体的には、負荷をU相-O相間に接続する前後の第1電流センサおよび第2電流センサの電流検出値の変化量と、負荷をW相-O相間に接続する前後の第1電流センサおよび第2電流センサの電流検出値の変化量とに基づいて、第1電流センサおよび第2電流センサの取り付け状態を判定する。
【0005】
しかしながら、負荷の消費電力と負荷に供給される電力供給装置の出力電力とが完全に釣り合っている場合、第1電流センサおよび第2電流センサには電流が流れないため、特許文献1に記載の電力供給装置は、脱落していない第1電流センサおよび第2電流センサを脱落していると判定(誤判定)してしまうおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、電流センサの脱落を正しく検出することが可能な電力供給装置および電力供給システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る電力供給装置は、
電力系統と負荷とを接続する電力ラインに対して有効電流および必要に応じて無効電流を出力する電力変換部と、
前記電力系統への逆潮流を検出するために前記電力ラインに設けられた電流センサの電流検出値に基づいて、前記逆潮流が発生しないように前記電力変換部の電力制御処理を行うとともに、前記電流センサの脱落検出処理を行う制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記脱落検出処理として、
前記電流検出値が所定時間継続して所定の閾値以下か否かの脱落判定を行う第1判定処理と、
前記電流検出値が前記所定時間継続して前記閾値以下の場合に前記有効電流および前記無効電流の少なくとも一方の出力状態を変化させる電流調整処理と、
前記出力状態を変化させた状態で前記脱落判定を再度行う第2判定処理と、
を実行することを特徴とする。
【0009】
この構成では、1回目の脱落判定において電流センサが脱落していると判定した場合、有効電流および無効電流の少なくとも一方の出力状態を変化させて2回目の脱落判定を行う。例えば、負荷の消費電力と負荷に供給される電力供給装置の出力電力とが完全に釣り合っている場合、電流センサの検出値はゼロになるが、出力状態を変化させて釣り合いを崩すことで、電流センサに電流(電力系統から負荷への電流)を流すことができる。したがって、この構成によれば、電流センサの脱落を正しく検出することができる。
【0010】
上記電力供給装置において、
前記制御部は、前記電流調整処理として、前記有効電流の出力を低下させるよう構成できる。
【0011】
上記電力供給装置において、
前記制御部は、前記第2判定処理の前記脱落判定において前記電流検出値が前記所定時間継続して前記閾値以下の場合、前記有効電流の出力を低下させた状態かつ前記電力ラインの前記電力系統の側に前記無効電流を出力した状態で、前記脱落判定を再度行うよう構成できる。
【0012】
上記電力供給装置において、
前記制御部は、前記電流調整処理として、前記電力ラインの前記電力系統の側に前記無効電流を出力するよう構成できる。
【0013】
上記電力供給装置は、
前記電流センサから前記電流検出値に応じた電流信号が入力され、前記電流信号に基づいて生成した検出信号を前記制御部に出力する検出回路を備え、
前記検出回路は、
前記電流センサに接続され、前記電流信号が入力される入力端と、
オペアンプを含み、前記検出信号を生成する生成回路と、
前記入力端と前記生成回路との間に設けられ、オン状態のときに前記電流信号が前記生成回路に入力され、オフ状態のときに前記電流信号が前記生成回路に入力されないようするスイッチと、を含み、
前記制御部は、
前記スイッチをオフ状態にして、前記検出信号のゼロ点を調整するキャリブレーション処理を行い、前記キャリブレーション処理の終了後に前記スイッチをオン状態にすることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、電流センサに流れる電流に影響されることなく、電流センサのキャリブレーション処理を実施することができる。その結果、電流センサの脱落をより正しく検出することができる。
【0015】
上記電力供給装置において、
前記制御部は、
前記制御部に電源電圧が供給されたとき、および前記電力変換部の前記電力制御処理を開始するときに、前記キャリブレーション処理を行い、
前記電力制御処理の実施中で、かつ前記キャリブレーション処理の終了後に、前記脱落検出処理を行うよう構成できる。
【0016】
上記課題を解決するために、本発明に係る電力供給システムは、
上記いずれかの電力供給装置および電流センサを含む電力供給システムであって、
前記電流センサは、
前記電力ラインのU相を流れるU相電流を検出する第1電流センサと、
前記電力ラインのW相を流れるW相電流を検出する第2電流センサと、
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電流センサの脱落を正しく検出することが可能な電力供給装置および電力供給システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態に係る電力供給システムを示す図である。
【
図2】(A)第1実施形態に係る第1検出回路の回路図である。(B)第1実施形態に係る第2検出回路の回路図である。
【
図3】第1実施形態に係る脱落検出処理のフローチャートである。
【
図4】(A)負荷が全波整流負荷で第1スイッチがオン状態のときの第1検出信号とゼロ点を示す図である。(B)負荷が半波整流負荷で第1スイッチがオン状態のときの第1検出信号とゼロ点を示す図である。(C)負荷が半波整流負荷で第1スイッチがオフ状態のときの第1検出信号とゼロ点を示す図である。
【
図5】(A)制御電源の状態を示す図である。(B)動作信号の状態を示す図である。(C)キャリブレーション処理の実施状態を示す図である。(D)第1スイッチおよび第2スイッチの状態を示す図である。
【
図6】第2実施形態に係る電力供給システムを示す図である。
【
図7】第2実施形態に係る脱落検出処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る電力供給装置および電力供給システムの実施形態について説明する。
【0020】
[第1実施形態]
図1に、本発明の第1実施形態に係る電力供給システム1Aを示す。電力供給システム1Aは、本発明の第1実施形態に係る電力供給装置2Aと、第1電流センサ3と、第2電流センサ4とを含む。第1電流センサ3および第2電流センサ4は、本発明の「電流センサ」に相当する。
【0021】
電力供給装置2Aは、電力変換部5と、本発明の「検出回路」に相当する第1検出回路6および第2検出回路7と、制御部8Aと、制御電源(図示せず)とを備える。電力供給装置2Aは、電力系統11と負荷12(本実施形態では、電化製品等の家庭負荷)とを接続する単相3線式の電力ラインに接続され、電力系統11への逆潮流が発生しないように負荷12に対して電力を供給する。単相3線式の電力ラインは、第1電圧線であるU相、第2電圧線であるW相、中性線であるO相の3線からなる。
【0022】
第1電流センサ3は、電力供給装置2AのU相への接続点と電力系統11との間に設けられ、U相を流れるU相電流を検出する。第1電流センサ3は、U相電流の電流検出値に応じた第1電流信号を、電力供給装置2Aの第1検出回路6に出力する。第1電流センサ3は、本実施形態では、カレントトランスで構成される。
【0023】
第2電流センサ4は、電力供給装置2AのW相への接続点と電力系統11との間に設けられ、W相を流れるW相電流を検出する。第2電流センサ4は、W相電流の電流検出値に応じた第2電流信号を、電力供給装置2Aの第2検出回路7に出力する。第2電流センサ4は、本実施形態では、カレントトランスで構成される。
【0024】
電力変換部5は、例えば、AC/DCコンバータで構成され、制御部8Aの制御下で動作する。具体的には、電力変換部5は、蓄電手段13(例えば、電気自動車やプラグインハイブリッド車等の電動車に搭載されたバッテリ)に対して充放電動作(充電動作および/または放電動作)を行う。また、電力変換部5は、電力系統11への逆潮流が発生しないように、有効電流および/または無効電流を電力ラインに出力する。
【0025】
第1検出回路6は、第1電流センサ3から第1電流信号が入力され、第1電流信号に基づいて第1検出信号(例えば、電圧信号)を生成し、生成した第1検出信号を制御部8Aに出力する。
図2(A)に示すように、第1検出回路6は、一対の第1入力端T1,T2と、第1スイッチSW1と、第1抵抗R1と、第1保護回路6aと、第1増幅回路6bと、第1出力端T3とを含む。第1抵抗R1、第1保護回路6aおよび第1増幅回路6bは、本発明の「生成回路」に相当する。なお、第1保護回路6aは省略できる。
【0026】
第1入力端T1は、第1電流センサ3の一方の出力端(本実施形態では、カレントトランスの2次側コイルの一端)に接続され、第1入力端T2は、第1電流センサ3の他方の出力端(本実施形態では、カレントトランスの2次側コイルの他端)に接続される。第1抵抗R1は、一端が第1スイッチSW1を介して第1入力端T1に接続され、他端が第1入力端T2に接続される。第1保護回路6aは、複数のダイオードで構成され、第1抵抗R1の後段に設けられる。第1増幅回路6bは、第1オペアンプOP1と複数の抵抗およびコンデンサで構成され、第1保護回路6aの後段に設けられる。第1出力端T3は、第1オペアンプOP1の出力端子に接続される。
【0027】
第1スイッチSW1は、第1入力端T1と第1抵抗R1との間に介装され、制御部8Aの制御下で、オン状態とオフ状態とが切り替わる。第1スイッチSW1がオン状態のときは、第1電流信号が第1抵抗R1、第1保護回路6aおよび第1増幅回路6bに入力される一方、第1スイッチSW1がオフ状態のときは、第1電流信号が第1抵抗R1、第1保護回路6aおよび第1増幅回路6bに入力されない。
【0028】
第1スイッチSW1がオン状態のときは、第1入力端T1,T2に第1電流信号が入力されると、第1抵抗R1で第1電流信号の信号値に応じた電圧信号が生成される。当該電圧信号は、第1保護回路6aを介して第1増幅回路6bに入力され、第1増幅回路6bで増幅される。第1増幅回路6bで増幅された電圧信号(第1検出信号)は、第1出力端T3から制御部8Aに入力される。
【0029】
第2検出回路7は、第2電流センサ4から第2電流信号が入力され、第2電流信号に基づいて第2検出信号(例えば、電圧信号)を生成し、生成した第2検出信号を制御部8Aに出力する。
図2(B)に示すように、第2検出回路7は、一対の第2入力端T4,T5と、第2スイッチSW2と、第2抵抗R2と、第2保護回路7aと、第2増幅回路7bと、第2出力端T6とを含む。第2抵抗R2、第2保護回路7aおよび第2増幅回路7bは、本発明の「生成回路」に相当する。なお、第2保護回路7aは省略できる。
【0030】
第2入力端T4は、第2電流センサ4の一方の出力端(本実施形態では、カレントトランスの2次側コイルの一端)に接続され、第2入力端T5は、第2電流センサ4の他方の出力端(本実施形態では、カレントトランスの2次側コイルの他端)に接続される。第2抵抗R2は、一端が第2スイッチSW2を介して第2入力端T4に接続され、他端が第2入力端T5に接続される。第2保護回路7aは、複数のダイオードで構成され、第2抵抗R2の後段に設けられる。第2増幅回路7bは、第2オペアンプOP2と複数の抵抗およびコンデンサで構成され、第2保護回路7aの後段に設けられる。第2出力端T6は、第2オペアンプOP2の出力端子に接続される。
【0031】
第2スイッチSW2は、第2入力端T4と第2抵抗R2との間に介装され、制御部8Aの制御下で、オン状態とオフ状態とが切り替わる。第2スイッチSW2がオン状態のときは、第2電流信号が第2抵抗R2、第2保護回路7aおよび第2増幅回路7bに入力される一方、第2スイッチSW2がオフ状態のときは、第2電流信号が第2抵抗R2、第2保護回路7aおよび第2増幅回路7bに入力されない。
【0032】
第2スイッチSW2がオン状態のときは、第2入力端T4,T5に第2電流信号が入力されると、第2抵抗R2で第2電流信号の信号値に応じた電圧信号が生成される。当該電圧信号は、第2保護回路7aを介して第2増幅回路7bに入力され、第2増幅回路7bで増幅される。第2増幅回路7bで増幅された電圧信号(第2検出信号)は、第2出力端T6から制御部8Aに入力される。
【0033】
制御部8Aは、例えば、マイコンで構成される。制御部8Aは、電力供給装置2Aに設けられた制御電源(図示せず)から電源電圧が供給されると起動する。制御電源は、電力系統11から入力された交流電圧に基づいて直流の電源電圧を生成し、生成した電源電圧を制御部8Aに供給する。このため、電力系統11が停電しているときは、制御部8Aは起動しない。
【0034】
制御部8Aは、電力変換部5の動作を制御する電力制御処理を行う機能と、第1電流センサ3および第2電流センサ4の脱落の有無を検出する脱落検出処理を行う機能と、第1検出信号および第2検出信号のゼロ点を調整するキャリブレーション処理を行う機能とを有する。制御部8Aの上記機能は、例えば、マイコンに含まれるCPUが所定のプログラムを実行すること等によって実現される。
【0035】
制御部8Aは、電力制御処理として、電力系統11への逆潮流が発生することなく有効電流および/または無効電流が電力ラインに出力されるように、電力変換部5の動作を制御する。制御部8Aは、例えば、外部から動作信号が入力されると、電力制御処理を開始する。
【0036】
制御部8Aは、脱落検出処理として、第1電流センサ3および第2電流センサ4の脱落の有無を検出する。本実施形態では、制御部8Aは、電力変換部5が電力ラインに有効電流を出力しているときにのみ脱落検出処理を行う。これにより、制御部8Aに対する制御負荷を減らすことができる。
【0037】
図3に、本実施形態における脱落検出処理のフローチャートを示す。制御部8Aは、電力変換部5が電力ラインに有効電流を出力すると、脱落検出処理を開始する。
【0038】
脱落検出処理を開始した制御部8Aは、まず第1判定処理を行う(S1)。第1判定処理において、制御部8Aは、第1検出回路6から入力された第1検出信号の信号値が所定時間継続して所定の閾値以下であるか否かを判定する(第1電流センサ3の脱落判定)。同様に、制御部8Aは、第2検出回路7から入力された第2検出信号の信号値が所定時間継続して所定の閾値以下であるか否かを判定する(第2電流センサ4の脱落判定)。
【0039】
所定時間は、例えば、10秒である。所定の閾値は、例えば、U相およびW相を流れる電流の最大値(振幅)が0.3[A]のときの値に設定される。すなわち、制御部8Aは、第1電流センサ3および第2電流センサ4に流れる電流が10秒間継続して0.3[A]以下であるか否かを判定する。なお、所定時間および/または所定の閾値は、適宜変更することができる。
【0040】
第1検出信号および第2検出信号の信号値が所定の閾値よりも大きいか、または信号値が所定の閾値以下となってもその状態が所定時間継続しなかった場合(S1でNO)、制御部8Aは、第1判定処理を再度行う(S1)。
【0041】
一方、第1検出信号および第2検出信号の少なくとも一方の信号値が所定時間継続して所定の閾値以下となった場合(S1でYES)、制御部8Aは、有効電流および無効電流の少なくとも一方の出力状態を変化させる電流調整処理を行う。本実施形態では、制御部8Aは、電流調整処理として、第1電流センサ3および第2電流センサ4に上記所定の閾値を超える電流が流れるように、電力変換部5による有効電流の出力を低下させて負荷12に対して供給される有効電力を絞る(S2)。例えば、200[W]程度、有効電力を絞る。
【0042】
負荷12の消費電力と負荷12に供給される電力供給装置2Aの有効電力とが完全に釣り合っている場合、第1電流センサ3および第2電流センサ4に流れる電流はゼロになる。そのときに、電力変換部5による有効電流の出力を低下させて負荷12に対して供給される有効電力を絞ると、釣り合いが崩れて、電力系統11から負荷12へ不足分の電流が供給される。その結果、第1電流センサ3および第2電流センサ4に、上記所定の閾値を超える電流が流れる。
【0043】
電流調整処理を行った制御部8Aは、第2判定処理として、電力変換部5による有効電流の出力を低下させた状態で、第1電流センサ3および第2電流センサ4の脱落判定を再度行う(S3)。なお、第1判定処理において第1検出信号のみが信号値≦閾値となった場合、第2判定処理では第1電流センサ3の脱落判定のみ行ってもよい。同様に、第1判定処理において第2検出信号のみが信号値≦閾値となった場合、第2判定処理では第2電流センサ4の脱落判定のみ行ってもよい。
【0044】
第2判定処理において、第1検出信号の信号値が所定時間継続して所定の閾値以下となった場合(S3でYES)、制御部8Aは、第1電流センサ3が脱落していると判定する(S4)。一方、第1検出信号の信号値が所定の閾値よりも大きいか、または信号値が所定の閾値以下となってもその状態が所定時間継続しなかった場合(S3でNO)、制御部8Aは、第1電流センサ3が脱落していないと判定する(S5)。
【0045】
同様に、第2判定処理において、第2検出信号の信号値が所定時間継続して所定の閾値以下となった場合(S3でYES)、制御部8Aは、第2電流センサ4が脱落していると判定する(S4)。一方、第2検出信号の信号値が所定の閾値よりも大きいか、または信号値が所定の閾値以下となってもその状態が所定時間継続しなかった場合(S3でNO)、制御部8Aは、第2電流センサ4が脱落していないと判定する(S5)。
【0046】
本実施形態の脱落検出処理によれば、第1電流センサ3および第2電流センサ4の脱落を正しく検出することができる。例えば、負荷12の消費電力と電力供給装置2Aの出力電力とが完全に釣り合っている場合に、第1電流センサ3および第2電流センサ4が脱落していると判定(誤判定)してしまうのを回避することができる。
【0047】
制御部8Aは、第1電流センサ3および第2電流センサ4のキャリブレーション処理として、第1検出信号および第2検出信号のゼロ点を調整する。
【0048】
本実施形態では、第1電流センサ3に電流が流れていなくても、第1検出回路6の第1増幅回路6bを構成する第1オペアンプOP1および抵抗等のバラつきによって生じる第1オフセット信号が制御部8Aに入力されると、制御部8Aは、第1電流センサ3に電流が流れていると認識する。同様に、第2電流センサ4に電流が流れていなくても、第2検出回路7の第2増幅回路7bを構成する第2オペアンプOP2および抵抗等のバラつきによって生じる第2オフセット信号が制御部8Aに入力されると、制御部8Aは、第2電流センサ4に電流が流れていると認識する。
【0049】
その結果、第1電流センサ3および第2電流センサ4が脱落していても、制御部8Aは、脱落を検出できないおそれがある。このため、第1電流センサ3および第2電流センサ4の脱落をより正しく検出するためには、第1電流センサ3および第2電流センサ4のキャリブレーション処理が必要となる。
【0050】
第1電流センサ3のキャリブレーション処理を行う場合、制御部8Aは、第1検出回路6から入力される第1検出信号の最大値と最小値との平均値をとり、その平均値をゼロ点と認識する。同様に、第2電流センサ4のキャリブレーション処理を行う場合、制御部8Aは、第2検出回路7から入力される第2検出信号の最大値と最小値との平均値をとり、その平均値をゼロ点と認識する。
【0051】
後述するように負荷12が半波整流負荷の場合、通常のキャリブレーション処理では、第1検出信号および第2検出信号のゼロ点を正しく調整できないおそれがある。そこで、本実施形態では、第1検出回路6に第1スイッチSW1を設け、かつ第2検出回路7に第2スイッチSW2を設けるとともに、キャリブレーション処理を行う際に制御部8Aが第1スイッチSW1および第2スイッチSW2をオフ状態にする構成をとっている。キャリブレーション処理の終了後、制御部8Aは、第1スイッチSW1および第2スイッチSW2をオン状態にする。
【0052】
比較のために、
図4(A)および
図4(B)を参照し、第1スイッチSW1をオン状態にしたまま第1電流センサ3のキャリブレーション処理を行った場合について説明する。
図4(A)は負荷12が全波整流負荷の場合を示し、
図4(B)は負荷12が半波整流負荷の場合を示す。
【0053】
図4(A)に示すように、負荷12が全波整流負荷のときにキャリブレーション処理を行った場合、制御部8Aが認識するゼロ点と実際のゼロ点とが一致するので、制御部8Aはゼロ点を正しく認識することができる。
【0054】
一方、
図4(B)に示すように、負荷12が半波整流負荷のときにキャリブレーション処理を行った場合は、制御部8Aが認識するゼロ点と実際のゼロ点との間にズレが生じる。すなわち、制御部8Aはゼロ点の位置を誤って認識してしまう。その結果、脱落検出処理において、第1電流センサ3および第2電流センサ4の脱落を正しく検出することができないおそれがある。
【0055】
次に、
図4(C)を参照し、第1スイッチSW1をオフ状態にして第1電流センサ3のキャリブレーション処理を行った場合について、すなわち本実施形態のキャリブレーション処理について説明する。
【0056】
第1スイッチSW1がオフ状態の場合、第1電流センサ3から出力された第1電流信号は、第1検出回路6の第1抵抗R1、第1保護回路6aおよび第1増幅回路6bに入力されない。このため、第1検出回路6からは第1オフセット信号のみが出力され、制御部8Aは、第1オフセット信号のみに基づいてキャリブレーション処理を行う。
【0057】
制御部8Aは、第1オフセット信号の平均値(
図4(C)では、最大値=最小値=平均値)をゼロ点と認識する。これにより、制御部8Aが認識したゼロ点と実際のゼロ点とが一致する。すなわち、本実施形態では、負荷12が半波整流負荷のときにキャリブレーション処理を行っても、制御部8Aはゼロ点を正しく認識することができる。
【0058】
図5を参照し、キャリブレーション処理の実施のタイミングについて説明する。制御部8Aは、電源電圧が供給されたとき、および電力変換部5の電力制御処理を開始するときに、第1電流センサ3および第2電流センサ4のキャリブレーション処理を行う。
【0059】
例えば、電力系統11が停電から復帰して制御電源がオン状態になり(時刻t1)、制御電源から制御部8Aに電源電圧が供給されると、制御部8Aは、第1電流センサ3および第2電流センサ4のキャリブレーション処理を開始する(時刻t1’)。このとき、制御部8Aは、第1スイッチSW1および第2スイッチSW2をオフ状態にしている。
【0060】
キャリブレーション処理が終了すると(時刻t2)、制御部8Aは、第1スイッチSW1および第2スイッチSW2をターンオンさせる(時刻t2’)。キャリブレーション処理は、例えば、300[ms]程度で終了する。
【0061】
制御部8Aは、電力制御処理を開始するための動作信号が外部から入力されると(本実施形態では、動作信号がオン)、第1スイッチSW1および第2スイッチSW2をターンオフさせて(時刻t3)、第1電流センサ3および第2電流センサ4のキャリブレーション処理を開始する(時刻t3’)。
【0062】
キャリブレーション処理が終了すると(時刻t4)、制御部8Aは、第1スイッチSW1および第2スイッチSW2をターンオンさせて(時刻t4’)、脱落検出処理を開始する。制御部8Aは、電力制御処理を終了するための動作信号が外部から入力されると(本実施形態では、動作信号がオフ)、脱落検出処理を終了する(時刻t5)。
【0063】
本実施形態に係る電力供給装置2Aによれば、第1電流センサ3および第2電流センサ4に流れる電流に影響されることなく、第1電流センサ3および第2電流センサ4のキャリブレーション処理を実施することができる。その結果、本実施形態に係る電力供給装置2Aは、脱落検出処理において、第1電流センサ3および第2電流センサ4の脱落をより正しく検出することができる。
【0064】
[第2実施形態]
図6に、本発明の第2実施形態に係る電力供給システム1Bを示す。電力供給システム1Bは、本発明の「電力供給装置」に相当する第1電力供給装置2Bと、第1電流センサ3と、第2電流センサ4とを含む。
【0065】
第1電力供給装置2Bは、電力変換部5と、第1検出回路6と、第2検出回路7と、制御部8Bと、制御電源(図示せず)とを備える。第1電力供給装置2Bは、単独で、または第2電力供給装置10とともに、電力系統11への逆潮流が発生しないように負荷12に対して電力を供給する。
【0066】
第2電力供給装置10は、電力系統11と負荷12とを接続する単相3線式の電力ラインに接続され、負荷12に対して電力を供給する。第2電力供給装置10は、例えば、太陽光発電装置である。
【0067】
第1電流センサ3および第2電流センサ4は、第1実施形態と同様の構成である。また、第1電力供給装置2Bの電力変換部5、第1検出回路6、第2検出回路7および制御電源も、第1実施形態と同様の構成である。
【0068】
制御部8Bは、例えば、マイコンで構成される。制御部8Bは、脱落検出処理を除いて、第1実施形態に係る制御部8Aと同様の機能を有する。本実施形態では、電力変換部5が電力ラインに有効電流を出力していないときも脱落検出処理が行われる。脱落検出処理は、第1判定処理と、電流調整処理と、第2判定処理とを含み、このうち第1判定処理および第2判定処理は第1実施形態と共通する。
【0069】
図7に、本実施形態における脱落検出処理のフローチャートを示す。制御部8Bは、キャリブレーション処理が終了すると、第1スイッチSW1および第2スイッチSW2をターンオンさせて、脱落検出処理を開始する。
【0070】
脱落検出処理を開始した制御部8Bは、まず第1判定処理を行う(S11)。第1判定処理において、制御部8Bは、第1検出信号の信号値が所定時間継続して所定の閾値以下であるか否かを判定するとともに(第1電流センサ3の脱落判定)、第2検出信号の信号値が所定時間継続して所定の閾値以下であるか否かを判定する(第2電流センサ4の脱落判定)。
【0071】
第1検出信号および第2検出信号の信号値が所定の閾値よりも大きいか、または信号値が所定の閾値以下となってもその状態が所定時間継続しなかった場合(S11でNO)、制御部8Bは、第1判定処理を再度行う(S11)。
【0072】
一方、第1検出信号および第2検出信号の少なくとも一方の信号値が所定時間継続して所定の閾値以下となった場合(S11でYES)、制御部8Bは、有効電流および無効電流の少なくとも一方の出力状態を変化させる電流調整処理を行う。本実施形態では、制御部8Bは、電流調整処理として電力変換部5に無効電流を出力させて、電力系統11に対して無効電力を供給する(S12)。例えば、200[Var]程度、無効電力を供給する。これにより、第1電流センサ3および第2電流センサ4に上記所定の閾値を超える電流(無効電流)が流れる。
【0073】
第1電力供給装置2Bが出力する有効電力がゼロで、かつ負荷12の消費電力と負荷12に供給される第2電力供給装置10の出力電力とが完全に釣り合っている場合、第1電流センサ3および第2電流センサ4に流れる電流はゼロになる。そのときに、電力系統11に対して無効電力が供給されるように、電力変換部5から無効電流を出力すると、当該無効電流が第1電流センサ3および第2電流センサ4に流れる。
【0074】
電流調整処理を行った制御部8Bは、第2判定処理として、電力系統11側に無効電流を出力した状態で第1電流センサ3および第2電流センサ4の脱落判定を再度行う(S13)。
【0075】
第2判定処理において、第1検出信号の信号値が所定時間継続して所定の閾値以下となった場合(S13でYES)、制御部8Bは、第1電流センサ3が脱落していると判定する(S14)。一方、第1検出信号の信号値が所定の閾値よりも大きいか、または信号値が所定の閾値以下となってもその状態が所定時間継続しなかった場合(S13でNO)、制御部8Bは、第1電流センサ3が脱落していないと判定する(S15)。
【0076】
同様に、第2判定処理において、第2検出信号の信号値が所定時間継続して所定の閾値以下となった場合(S13でYES)、制御部8Bは、第2電流センサ4が脱落していると判定する(S14)。一方、第2検出信号の信号値が所定の閾値よりも大きいか、または信号値が所定の閾値以下となってもその状態が所定時間継続しなかった場合(S13でNO)、制御部8Bは、第2電流センサ4が脱落していないと判定する(S15)。
【0077】
本実施形態の脱落検出処理によれば、第1電流センサ3および第2電流センサ4の脱落を正しく検出することができる。例えば、第1電力供給装置2Bが出力する有効電力がゼロで、かつ負荷12の消費電力と負荷12に供給される第2電力供給装置10の出力電力とが完全に釣り合っている場合に、第1電流センサ3および第2電流センサ4が脱落していると判定(誤判定)してしまうのを回避することができる。
【0078】
[変形例]
以上、本発明に係る電力供給装置および電力供給システムの実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0079】
本発明に係る電力供給装置は、電力系統と負荷とを接続する電力ラインに対して有効電流および無効電流を出力する電力変換部と、電力系統への逆潮流を検出するために設けられた電流センサの電流検出値に基づいて、逆潮流が発生しないように電力変換部の電力制御処理を行うとともに電流センサの脱落検出処理を行う制御部とを備え、制御部は、脱落検出処理として、電流検出値が所定時間継続して所定の閾値以下か否かの脱落判定を行う第1判定処理と、有効電流および無効電流の少なくとも一方の出力状態を変化させる電流調整処理と、出力状態を変化させた状態で脱落判定を再度行う第2判定処理と、を実行するのであれば、適宜構成を変更できる。
【0080】
本発明の電流センサは、第1電流センサ3および第2電流センサ4の少なくとも一方を含んでいればよい。ただし、電力系統への逆潮流を確実に防ぐためには、第1電流センサ3および第2電流センサ4の双方を含むことが好ましい。
【0081】
本発明の制御部は、少なくとも、電力変換部の電力制御処理と、電流センサの脱落検出処理とを行えばよい。ただし、脱落検出処理において、電流センサの脱落をより正しく検出するためには、電流センサのキャリブレーション処理を実施することが好ましい。
【0082】
第1実施形態の制御部8Aは、電力変換部5が電力ラインに有効電流を出力していないときも脱落検出処理を行ってよい。この場合、制御部8Aは、電流調整処理として、第1電流センサ3および第2電流センサ4に所定の閾値を超える電流が流れるように、電力変換部5に無効電流を出力させて、電力系統11に対して無効電力を供給してもよい。
【0083】
第2実施形態の制御部8Bは、電流調整処理として、第1電流センサ3および第2電流センサ4に所定の閾値を超える電流が流れるように、電力変換部5による有効電流の出力を低下させて負荷12に対して供給される有効電力を絞ってもよい。さらに、有効電流の出力を低下させた状態で行われる脱落判定において、第1検出信号および第2検出信号の少なくとも一方の信号値が所定時間継続して所定の閾値以下となった場合、制御部8Bは、有効電流の出力を低下させた状態かつ電力変換部5から電力系統11の側に無効電流を出力した状態で、再度脱落判定を行ってもよい。
【0084】
第1検出回路6は、第1電流センサ3からU相電流の電流検出値に応じた第1電流信号が入力され、第1電流信号に基づいて生成した第1検出信号を制御部に出力するのであれば、適宜構成を変更できる。制御部がキャリブレーション処理を実施する場合は、第1検出回路は、制御部の制御下でオン/オフする第1スイッチを備えることが好ましい。
【0085】
第2検出回路7は、第2電流センサ4からW相電流の電流検出値に応じた第2電流信号が入力され、第2電流信号に基づいて生成した第2検出信号を制御部に出力するのであれば、適宜構成を変更できる。制御部がキャリブレーション処理を実施する場合は、第2検出回路は、制御部の制御下でオン/オフする第2スイッチを備えることが好ましい。
【符号の説明】
【0086】
1A,1B 電力供給システム
2A 電力供給装置
2B 第1電力供給装置
3 第1電流センサ
4 第2電流センサ
5 電力変換部
6 第1検出回路
6a 第1保護回路
6b 第1増幅回路
7 第2検出回路
7a 第2保護回路
7b 第2増幅回路
8A,8B 制御部
10 第2電力供給装置
11 電力系統
12 負荷
13 蓄電手段