(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】温度制御ユニット及び温度制御ユニットの製造方法
(51)【国際特許分類】
F28F 3/08 20060101AFI20240823BHJP
F28F 3/04 20060101ALI20240823BHJP
F28F 21/06 20060101ALI20240823BHJP
F28F 21/08 20060101ALI20240823BHJP
F28D 9/00 20060101ALI20240823BHJP
H01L 23/473 20060101ALI20240823BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240823BHJP
H01M 10/613 20140101ALN20240823BHJP
H01M 10/625 20140101ALN20240823BHJP
H01M 10/6556 20140101ALN20240823BHJP
【FI】
F28F3/08 301Z
F28F3/04 A
F28F21/06
F28F21/08 A
F28F21/08 E
F28D9/00
H01L23/46 Z
H05K7/20 N
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6556
(21)【出願番号】P 2020193816
(22)【出願日】2020-11-20
【審査請求日】2023-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨永 高広
(72)【発明者】
【氏名】木村 和樹
(72)【発明者】
【氏名】森元 海
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0088476(US,A1)
【文献】特開2016-009776(JP,A)
【文献】国際公開第2020/196878(WO,A1)
【文献】特開2017-022374(JP,A)
【文献】特開2015-082590(JP,A)
【文献】特開2020-088109(JP,A)
【文献】国際公開第2020/241314(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 1/00 - 21/00
F28F 1/00 - 99/00
H05K 7/20
H01L 23/34 - 23/473
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属を含むベース部材と、
金属を含むカバー部材と、
前記ベース部材及び前記カバー部材の間に設けられる流路と、
前記ベース部材及び前記カバー部材の間であって前記流路が設けられていない空間を満たす樹脂部と、を備え、
前記ベース部材が前記流路と前記樹脂部とを隔てる壁部を有し、
前記樹脂部が温度制御ユニットの側部の少なくとも一部を形成する、温度制御ユニット。
【請求項2】
金属を含むベース部材と、
金属を含むカバー部材と、
前記ベース部材及び前記カバー部材の間に設けられる流路と、
前記ベース部材及び前記カバー部材の間であって前記流路が設けられていない空間を満たす樹脂部と、を備え、
前記ベース部材は温度制御ユニットの側部に相当する位置に、前記温度制御ユニットの外部と前記流路とを連通する連通口を有し、
前記連通口の前記温度制御ユニットの厚み方向における寸法は下記式(1)を満たす、温度制御ユニット。
式(1)・・・温度制御ユニットの側部表面における寸法A>厚み方向において前記樹脂部と重なる部分の寸法B
【請求項3】
前記連通口の寸法Aが10mm以下である、請求項
2に記載の温度制御ユニット。
【請求項4】
前記ベース部材又は前記カバー部材の端面からの距離が1.5mm以上である領域が前記樹脂部と接合している、請求項1~請求項
3のいずれか1項に記載の温度制御ユニット。
【請求項5】
前記温度制御ユニットの厚み方向の寸法が20mm以下である、請求項1~請求項
4のいずれか1項に記載の温度制御ユニット。
【請求項6】
前記樹脂部が前記温度制御ユニットの側部の少なくとも一部を形成する、
請求項2又は請求項3に記載の温度制御ユニット。
【請求項7】
前記ベース部材及び前記カバー部材の前記樹脂部と接している部分の表面は粗化処理されている、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の温度制御ユニット。
【請求項8】
金属を含むベース部材と、
金属を含むカバー部材と、
前記ベース部材及び前記カバー部材の間に設けられる流路と、
前記ベース部材及び前記カバー部材の間であって前記流路が設けられていない空間を満たす樹脂部と、を備える温度制御ユニットの製造方法であって、
前記ベース部材及び前記カバー部材を金型に配置する工程と、
前記ベース部材及び前記カバー部材の間に溶融した樹脂を供給する工程と、を含む、温度制御ユニットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度制御ユニット及び温度制御ユニットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータに搭載するCPU、電気自動車に搭載する二次電池のような作動時に発熱する物体(発熱体)を冷却するための手段として、水等の液状の冷媒を用いる冷却装置が種々提案されている。たとえば、金属等の放熱性に優れる材料からなる筐体の内部に冷媒を流通させるための流路を備える冷却装置が知られている。
【0003】
上記のような構成の冷却装置は、装置を構成する金属部材がろう付けにより接合されているのが一般的である。また、特許文献1では、部位ごとに溶接とスポット溶接とを使い分けて製造される冷却装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の冷却装置は、装置を構成する部材同士をロウ付けにより接合した後、更に、ジョイントなどの部品をロウ付けにより筐体に接合する方法が採用される。このように、二段階のロウ付けとなるため、工程が複雑になることに加え、ロウ付けプロセスで受ける熱の影響により筐体の強度が低下してしまう問題があった。
さらに、特に液状の冷媒を用いる冷却装置では、冷媒の流路外への漏出が生じないように内部の密閉性が充分に確保される必要がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、内部の密閉性に優れる温度制御ユニット及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1>金属を含むベース部材と、金属を含むカバー部材と、前記ベース部材及び前記カバー部材の間に設けられる流路と、前記ベース部材及び前記カバー部材の間であって前記流路が設けられていない空間を満たす樹脂部と、を備える温度制御ユニット。
<2>前記ベース部材が、前記流路と前記樹脂部とを隔てる壁部を有する、<1>又は<2>に記載の温度制御ユニット。
<3>前記ベース部材又は前記カバー部材の端面からの距離が1.5mm以上である領域が前記樹脂部と接合している、<1>に記載の温度制御ユニット。
<4>前記ベース部材及び前記カバー部材の前記樹脂部と接している部分の表面は粗化処理されている、<1>~<3>のいずれか1項に記載の温度制御ユニット。
<5>前記カバー部材は前記温度制御ユニットの外部と前記流路とを連通する連通口を有する、<1>~<4>のいずれか1項に記載の温度制御ユニット。
<6>前記ベース部材は前記温度制御ユニットの側部に相当する位置に、前記温度制御ユニットの外部と前記流路とを連通する連通口を有し、
前記連通口の前記温度制御ユニットの厚み方向における寸法は下記式(1)を満たす、<1>~<4>のいずれか1項に記載の温度制御ユニット。
式(1)・・・温度制御ユニットの側部表面における寸法A>厚み方向において前記樹脂部と重なる部分の寸法B
<7>前記連通口の寸法Aが10mm以下である、<6>に記載の温度制御ユニット。
<8>前記温度制御ユニットの厚み方向の寸法が20mm以下である、<1>~<7>のいずれか1項に記載の温度制御ユニット。
<9>前記樹脂部が前記温度制御ユニットの側部の少なくとも一部を形成する、<1>~<8>のいずれか1項に記載の温度制御ユニット。
<10>前記ベース部材及び前記カバー部材を金型に配置する工程と、前記ベース部材及び前記カバー部材の間に溶融した樹脂を供給する工程と、を含む、<1>~<9>のいずれか1項に記載の温度制御ユニットの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、内部の密閉性に優れる温度制御ユニット及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】温度制御ユニットの内部構造の一例を概略的に示す断面図である。
【
図2】温度制御ユニットの内部構造の一例を概略的に示す平面図である。
【
図3】温度制御ユニットの内部構造の一例を概略的に示す平面図である。
【
図4】温度制御ユニットの内部構造の一例を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよく、また、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、材料中の各成分の量は、材料中の各成分に該当する物質が複数存在する場合は、特に断らない限り、材料中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
本開示において実施形態を図面を参照して説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
【0011】
<温度制御ユニット>
本開示の温度制御ユニットは、金属を含むベース部材と、金属を含むカバー部材と、前記ベース部材及び前記カバー部材の間に設けられる流路と、前記ベース部材及び前記カバー部材の間であって前記流路が設けられていない空間を満たす樹脂部と、を備える温度制御ユニットである。
【0012】
本開示において「温度制御ユニット」とは、内部に設けられる流路に流体を流通させることで、対象物の温度を制御する装置を意味する。温度制御には対象物の冷却、加温、保温、保冷等が含まれる。
【0013】
本開示の温度制御ユニットは、金属を含むベース部材とカバー部材との間に存在する流路が設けられていない空間が樹脂部で満たされた構造を有する。このため、流路の内容物が流路外に漏れ出るのが効果的に抑制される。さらに、温度制御ユニットの膨れ、変形等が効果的に抑制される。
【0014】
温度制御ユニットを構成するベース部材及びカバー部材は、それぞれ金属を含む。ベース部材及びカバー部材に含まれる金属の種類は特に制限されず、温度制御ユニットの用途等に応じて選択できる。たとえば、鉄、銅、ニッケル、金、銀、プラチナ、コバルト、亜鉛、鉛、スズ、チタン、クロム、アルミニウム、マグネシウム、マンガン及び前記金属を含む合金(ステンレス、真鍮、リン青銅等)からなる群から選択される少なくとも一種であってもよい。
熱伝導性の観点からは、金属としてはアルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金が好ましく、銅及び銅合金がより好ましい。
軽量化及び強度確保の観点からは、金属としてはアルミニウム及びアルミニウム合金がより好ましい。
ベース部材及びカバー部材に含まれる金属は、同じであっても異なっていてもよい。
【0015】
本開示においてベース部材及びカバー部材の間に設けられる流路とは、ベース部材及びカバー部材の間に設けられ、流体を流通させるための空間を意味する。
流路を流通させる流体の種類は特に制限されず、温度制御ユニットの用途等に応じて選択できる。たとえば、水、有機溶媒、油等が挙げられる。
【0016】
ある実施態様では、ベース部材が流路と樹脂部とを隔てる壁部を有する。ベース部材が流路と樹脂部とを隔てる壁部を有する場合、たとえば、ベース部材の壁部が形成された側にカバー部材を配置することで、ベース部材とカバー部材との間に流路を容易に形成することができる。
【0017】
図1は、温度制御ユニットの内部構造の一例を概略的に示す断面図である。
図1に示す構造では、温度制御ユニットを構成するベース部材1とカバー部材2とが対向するように配置されている。ベース部材1は、流路と樹脂部とを隔てる壁部4に相当する突出部を有する。このため、ベース部材1とカバー部材2との間に壁部で囲まれた空間としての流路が形成される。さらに、ベース部材1とカバー部材2との間であって流路に相当しない空間が樹脂部3で満たされている。
【0018】
樹脂部3は、流路に相当しない空間を満たすとともに、温度制御ユニットの側部の少なくとも一部を形成するものであってもよい。たとえば、
図1に示すように、ベース部材1及びカバー部材2の端面を樹脂部3で覆った状態となるように側部を形成してもよい。
樹脂部が温度制御ユニットの側部の少なくとも一部を形成することで、温度制御ユニットの密閉性及び耐衝撃性をより向上させることができる。
【0019】
温度制御ユニットの内部の密閉性を充分に確保する観点からは、ベース部材及び前記カバー部材の間であって流路が設けられていない空間に占める樹脂部が満たしている部分の割合は大きいほど好ましい。たとえば、ベース部材及び前記カバー部材の間であって流路が設けられていない空間の90体積%以上を樹脂部が満たすことが好ましく、95体積%以上を樹脂部が満たすことがより好ましく、100体積%を樹脂部が満たすことがさらに好ましい。
【0020】
温度制御ユニットの内部の密閉性を充分に確保する観点からは、ベース部材又はカバー部材の端面からの距離が1.5mm以上である領域が樹脂部と接合していることが好ましく、ベース部材又はカバー部材の端面からの距離が2.0mm以上である領域が樹脂部と接合していることがより好ましい。
ベース部材又はカバー部材の端面としては、温度制御ユニットの側部におけるベース部材又はカバー部材の端面、ベース部材又はカバー部材に設けられた貫通孔(たとえば、樹脂を供給するためのゲート)の内周面等が挙げられる。
【0021】
図2に示すように、温度制御ユニットの側部におけるベース部材1又はカバー部材2の端面からの距離Xが1.5mm以上、好ましくは2.0mm以上である領域が樹脂部3と接合していることが好ましい。また、カバー部材2に設けられた貫通孔の内周面からの距離Yが1.5mm以上、好ましくは2.0mm以上である領域が樹脂部3と接合していることが好ましい。
【0022】
温度制御ユニットに含まれる樹脂部は、一つであっても複数に分かれていてもよい。樹脂部が複数に分かれている場合としては、たとえば、流路の形状が環状であって、流路の外部に配置される樹脂部と流路の内部に配置される流路とに分かれている場合、複数の流路の間にそれぞれ樹脂部が配置される場合などが挙げられる。
【0023】
温度制御ユニットおよび温度制御ユニットを構成する各部材の寸法は特に制限されず、温度制御ユニットの用途等に応じて選択できる。
【0024】
温度制御ユニットの主面の面積は、たとえば、50cm2~5,000cm2の範囲内であってもよい。
温度制御ユニットの厚み(厚みが一定でない場合は厚みの最小値)は、たとえば、5mm~50mmの範囲内であってもよい。薄型化に対応する観点からは、温度制御ユニットの厚みは20mm以下であってもよい。
【0025】
ベース部材およびカバー部材の厚み(厚みが一定でない場合は厚みの最小値)は、樹脂部を射出成型する際の圧力に耐えられる(変形しない)程度の強度を確保できる観点から、たとえば、0.5mm~10mmであってよく、好ましくは1mm~5mmである。
ベース部材が壁部を有する場合、樹脂部を射出成形する際の圧力に耐えられる程度の強度を確保できる観点から、壁部の厚み(厚みが一定でない場合は厚みの最小値)は、たとえば、1mm~10mmであってよく、好ましくは2mm~5mmである。
ベース部材が壁部を有する場合、樹脂部を射出成形する際の圧力に耐えられる程度の強度を確保できる観点から、壁部の高さ(高さが一定でない場合は高さの最小値)は、たとえば、1mm~10mmであってよく、好ましくは1~8mmであり、より好ましくは1~5mmである。
【0026】
温度制御ユニットにおける流路の形状は特に制限されず、U字型、O字型、I字型、L字型等から選択できる。必要に応じ、流路の内部にヒートシンク等の部品が配置されもよい。
【0027】
図3は、温度制御ユニットの内部構造の一例を概略的に示す平面図(カバー部材を除いた状態)である。
図3に示す構造では、ベース部材1に形成された壁部4で囲まれた部分が流路に相当する。流路の外側の領域は、樹脂部3で満たされている。流路の内部には、ヒートシンク6が配置されている。流路は、温度制御ユニットの側部に設けられた2つの連通口5によって温度制御ユニットの外部と連通している。
【0028】
温度制御ユニットの内部に配置される流路は、連通口を介して温度制御ユニットの外部と連通する。連通口は、温度制御ユニットの外部から流路に流体を供給する供給口と、温度制御ユニットの外部に流体を排出する排出口との組み合わせであってもよい。
【0029】
温度制御ユニットにおける連通口の位置は特に制限されず、温度制御ユニットの用途等に応じて選択できる。たとえば、温度制御ユニットのカバー部材に連通口が設けられても、温度制御ユニットのベース部材に連通口が設けられてもよい。また、温度制御ユニットの主面に相当する位置に連通口が設けられても、側部に相当する位置に連通口が設けられてもよい。
【0030】
温度制御ユニットのある実施態様では、ベース部材の温度制御ユニットの側部に相当する位置に連通口が設けられる。
温度制御ユニットの側部に相当する位置に連通口を設けることで、温度制御ユニットの厚み方向の寸法が低減でき、薄型化の点で有利である。
さらに、ベース部材に連通口が設けられることで、たとえば、壁部の形成と連通口の形成とをベース部材のみに対して行うことができ、生産性に優れている。
【0031】
ベース部材が温度制御ユニットの側部に相当する位置に連通口を有する場合、連通口の温度制御ユニットの厚み方向における寸法は下記式(1)を満たすことが好ましい。
式(1)・・・温度制御ユニットの側部表面における寸法A>厚み方向において樹脂部と重なる部分の寸法B
【0032】
連通口の温度制御ユニットの厚み方向における寸法が式(1)を満たすことで、樹脂部材のベース部材およびカバー部材に対する充分な接合強度を確保しながら、温度制御ユニットの薄型化を達成することができる。
【0033】
連通口の温度制御ユニットの厚み方向における寸法が式(1)を満たす場合について、
図4に基づいて詳細に説明する。
図4に示す構造では、ベース部材1とカバー部材2との間に樹脂部3が配置されている。また、ベース部材1は温度制御ユニットの側部の一部を構成し、かつ、温度制御ユニットの側部に相当する位置に連通口5を有している。
【0034】
図4に示す構造では、樹脂部3は、ベース部材1およびカバー部材2に対する接触面積を確保するために、その一部がカバー部材2の下方(ベース部材側)に入り込んでいる。さらに、連通口5の温度制御ユニットの側部表面における寸法Aは、連通口5が樹脂部3と厚み方向において重なる部分(すなわち、樹脂部3の下方に相当する部分)の寸法Bよりも大きい。
【0035】
図4に示す構成では、連通口5の厚み方向における寸法が式(1)を満たすように設計することで、樹脂部3のベース部材1およびカバー部材2に対する接触面積の確保と、温度制御ユニットの薄型化とを両立させている。
【0036】
式(1)において、連通口の厚み方向における寸法Aは特に制限されず、温度制御ユニットの厚み等に応じて選択できる。たとえば、連通口の厚み方向における寸法Aは10mm以下であってもよく、9mm以下であってもよく、8mm以下であってもよい。また、4mm以上であってもよく、5mm以上であってもよく、6mm以上であってもよい。連通口の厚み方向における寸法Aは、連通口の厚み方向における最大径を意味する。
【0037】
式(1)において、連通口の厚み方向における寸法Bは特に制限されず、温度制御ユニットの厚み、厚み方向において重なる樹脂部3の形状等に応じて選択できる。たとえば、連通口の厚み方向における寸法Bは2mm~8mmの範囲内であってもよい。連通口の厚み方向における寸法Bは、連通口の厚み方向における最大径を意味する。
【0038】
式(1)において、連通口の厚み方向における寸法Aと寸法Bとの比(寸法A/寸法B)は、たとえば、1.25~5.00の範囲内であってもよい。寸法Bの値が一定でない場合は、寸法Aと寸法Bの最小値との比が上記範囲内であってもよい。
【0039】
連通口の断面形状は特に制限されず、円形、楕円形、半円形、多角形等から選択できる。
【0040】
温度制御ユニットの密閉性、寸法安定性等の観点からは、樹脂部とベース部材およびカバー部材とは接合した状態であることが好ましい。
本開示において「接合」とは、樹脂部が接着剤、ねじ等の手段を用いずにベース部材およびカバー部材の表面に固着している状態を意味する。これにより、たとえば、別工程で作製した樹脂部を接着剤、ねじ等を用いてベース部材およびカバー部材に取り付ける場合に比べ、樹脂部がベース部材およびカバー部材に強固に固着され、優れた密閉性が達成される。
【0041】
樹脂部とベース部材およびカバー部材とを強固に接合させるためには、ベース部材およびカバー部材の樹脂部と接している部分の表面が粗化処理されていることが好ましい。
ベース部材およびカバー部材の表面に粗化処理が施されていると、表面に形成される凹凸構造に樹脂部の表面の組織が入り込むことでアンカー効果が発現し、強固な接合が得られる。
【0042】
ベース部材およびカバー部材の表面に粗化処理により形成される凹凸構造の状態は、樹脂部との接合強度が充分に得られるのであれば特に制限されない。
凹凸構造における凹部の平均孔径は、たとえば5nm~250μmであってよく、好ましくは10nm~150μmであり、より好ましくは15nm~100μmである。
また、凹凸構造における凹部の平均孔深さは、たとえば5nm~250μmであってよく、好ましくは10nm~150μmであり、より好ましくは15nm~100μmである。
凹凸構造における凹部の平均孔径又は平均孔深さのいずれか又は両方が上記数値範囲内であると、より強固な接合が得られる傾向にある。
【0043】
凹凸構造における凹部の平均孔径および平均孔深さは、電子顕微鏡又はレーザー顕微鏡を用いることによって求めることができる。具体的には、ベース部材およびカバー部材の表面および表面の断面を撮影する。得られた写真から、任意の凹部を50個選択し、それらの凹部の孔径および孔深さから、凹部の平均孔径および平均孔深さをそれぞれ算術平均値として算出することができる。
【0044】
ベース部材およびカバー部材の表面に粗化処理を施す方法は特に制限されず、様々な公知の方法を使用できる。たとえば、特許第4020957号に開示されているようなレーザーを用いる方法;NaOH等の無機塩基、又はHCl、HNO3等の無機酸の水溶液に浸漬する方法;特許第4541153号に開示されているような、陽極酸化により処理する方法;国際公開第2015-8847号に開示されているような、酸系エッチング剤(好ましくは、無機酸、第二鉄イオン又は第二銅イオン)および必要に応じてマンガンイオン、塩化アルミニウム六水和物、塩化ナトリウム等を含む酸系エッチング剤水溶液によってエッチングする置換晶析法;国際公開第2009/31632号に開示されているような、水和ヒドラジン、アンモニア、および水溶性アミン化合物から選ばれる1種以上の水溶液に浸漬する方法(以下、NMT法と呼ぶ場合がある);特開2008-162115号公報に開示されているような温水処理法;ブラスト処理等が挙げられる。粗化処理の方法は、ベース部材およびカバー部材の表面の材質、所望の凹凸構造の状態等に応じて使い分けることが可能である。
【0045】
ベース部材およびカバー部材の表面は、粗化処理に加え、官能基を付加する処理を施してもよい。ベース部材およびカバー部材の表面に官能基を付与することで、ベース部材およびカバー部材と樹脂部との化学的な結合が増え、接合強度がより向上する傾向にある。
【0046】
ベース部材及びカバー部材の表面に官能基を付加する処理は、粗化処理と同時に、又は粗化処理の後に行うことが好ましい。
ベース部材及びカバー部材の表面に官能基を付加する方法は特に制限されず、様々な公知の方法を使用できる。たとえば、官能基を持つ化学物質を水又はメチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルアルコール、アセトン、トルエン、エチルセルソルブ、ジメチルホルムアルデヒド、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、ベンゼン、酢酸エチルエーテル等の有機溶剤に溶解した溶液にベース部材及びカバー部材を浸漬する方法;官能基を持つ化学物質又はこれを含む溶液をベース部材及びカバー部材の表面にコーティング又はスプレーする方法;官能基を持つ化学物質を含むフィルムをベース部材及びカバー部材の表面に貼り付ける方法等が挙げられる。
官能基を付加する処理を粗化処理と同時に行う方法としては、たとえば、官能基を持つ化学物質を含む液体を用いてウェットエッチング処理、化成処理、陽極酸化処理等を行う方法が挙げられる。
【0047】
樹脂部に含まれる樹脂は特に制限されず、温度制御ユニットの用途等に応じて選択できる。たとえば、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン系樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、フッ素系樹脂、ポリサルフォン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリケトン系樹脂等の熱可塑性樹脂(エラストマーを含む)、及びフェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。これらの樹脂は単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
成形性の観点からは、樹脂部に含まれる樹脂としては熱可塑性樹脂が好ましい。
【0048】
樹脂部に含まれる樹脂は、種々の配合剤を含んでもよい。配合剤としては、充填材、熱安定剤、酸化防止剤、顔料、耐候剤、難燃剤、可塑剤、分散剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤等が挙げられる。
【0049】
樹脂部がベース部材及びカバー部材の表面の表面に接合された状態は、たとえば、溶融した状態の樹脂をベース部材及びカバー部材の表面の表面に付与して形成することができる。ベース部材及びカバー部材の表面に付与する際の樹脂が溶融した状態であると、ベース部材及びカバー部材の表面の表面に対する密着度が向上する(たとえば、ベース部材及びカバー部材の表面の凹凸構造に樹脂が入り込んでアンカー効果が発現する)。このため、樹脂部をベース部材及びカバー部材の表面により強固に接合させることができる。
【0050】
溶融した状態の樹脂をベース部材及びカバー部材の表面に付与する方法は特に制限されず、射出成形等の公知の手法により行うことができる。
たとえば、金型にベース部材及びカバー部材を配置し、ベース部材及びカバー部材のいずれか一方に設けられた貫通穴(ゲート)から溶融した樹脂を注入して樹脂部を形成してもよい。
【0051】
温度制御ユニットは、必要に応じ、温度制御ユニットの内部に配置される流路と外部の配管とを接続するジョイント部、温度制御ユニットの外部に設けられる補強用のリブ等の部品を有していてもよい。
【0052】
温度制御ユニットが部品を有する場合、これらの部品が樹脂を含み、ベース部材及びカバー部材の表面に接合された状態であってもよい。部品に含まれる樹脂は特に制限されず、樹脂部に含まれる樹脂として例示したものから選択できる。
【0053】
<温度制御ユニットの用途>
本開示の温度制御ユニットの用途は、特に制限されない。たとえば、コンピュータに搭載されるCPU、電気自動車に搭載される二次電池等の発熱体の冷却のために好適に用いられる。その他、空調設備、給湯設備、発電設備等の、温度管理が必要とされるあらゆる用途に好適に用いられる。
【0054】
<温度制御ユニットの製造方法>
本開示の温度制御ユニットの製造方法は、ベース部材及びカバー部材を金型に配置する工程と、前記ベース部材及び前記カバー部材の間に溶融した樹脂を供給する工程と、を含む、温度制御ユニットの製造方法である。
【0055】
上記方法では、ベース部材及びカバー部材の間に供給される溶融した樹脂が固化して樹脂部を形成する。
上記方法によれば、たとえば、別工程で作製した樹脂部をベース部材及びカバー部材の間に配置して温度制御ユニットを製造する方法に比べ、ベース部材及びカバー部材に対する樹脂部の密着性に優れ、高い密閉性が確保される。また、樹脂部の形状が複雑である場合にも精度よく樹脂部を形成することができる。
【0056】
上記方法において、ベース部材及びカバー部材の間への溶融した樹脂の供給は、たとえば、ベース部材及びカバー部材のいずれかに設けられた貫通穴(ゲート)を用いて行うことができる。
【0057】
上記方法で使用するベース部材及びカバー部材の詳細及び好ましい態様は、上述した温度制御ユニットに含まれるベース部材及びカバー部材の詳細及び好ましい態様と同様である。
【0058】
上記方法で使用する樹脂の詳細及び好ましい態様は、上述した温度制御ユニットに含まれる樹脂部に含まれる樹脂の詳細及び好ましい態様と同様である。
【0059】
必要に応じ、上記方法は、ジョイント部、リブ等の部品を設ける工程を備えてもよい。
【0060】
上記方法で製造される温度制御ユニットの詳細及び好ましい態様は、上述した温度制御ユニットの詳細及び好ましい態様と同様である。すなわち、上記方法は上述した温度制御ユニットを製造するためのものであってもよい。