(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 21/00 20060101AFI20240823BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240823BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20240823BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20240823BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
C08L21/00
C08K3/04
C08K3/22
C08L9/00
C09K3/00 P
(21)【出願番号】P 2020212047
(22)【出願日】2020-12-22
【審査請求日】2023-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】517413605
【氏名又は名称】ニッタ化工品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】畦地 利夫
(72)【発明者】
【氏名】足立 亮太
【審査官】松村 駿一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-076168(JP,A)
【文献】特開2000-226464(JP,A)
【文献】特開2009-108236(JP,A)
【文献】特開2010-084102(JP,A)
【文献】特開2018-002953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 21/00
C08K 3/04
C08K 3/22
C08L 9/00
C09K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分、カーボンブラック、および金属酸化物を含有し、
前記カーボンブラックの平均粒子径が45nm以上であり、
前記ゴム成分100質量部に対し、前記カーボンブラックの含有量が50質量部以下で
あり、前記金属酸化物の含有量が40~180質量部であ
り、
前記金属酸化物は酸化亜鉛であり、
防振ゴム用である、ゴム組成物。
【請求項2】
前記ゴム成分はジエン系ゴムを含む請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
鉄道車両用である請求項1
または2のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項4】
さらに硫黄を含む請求項1~
3のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
請求項
4に記載のゴム組成物の加硫物である加硫ゴム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、鉄道車両等の車両、船舶などには、エンジンや車体の振動や騒音を防止するために防振ゴムが用いられている。防振ゴムには、ゴムの物理特性を向上させる目的でカーボンブラックが添加されることがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-164634号公報
【文献】特開2006-104280号公報
【文献】特開2010-84102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば鉄道車両用の防振ゴム用途などにおいて、ゴムには電気絶縁性が求められることがある。また近年、電気絶縁性を有するゴムには高い硬度を有することも求められることがある。
【0005】
ゴムの硬度を高くする方法として、カーボンブラックを増量することや粒径が小さいカーボンブラックを使用することが考えられる。しかしながら、これらの方法ではゴム中においてカーボンブラック同士の接触頻度が高くなり電気絶縁性が損なわれてしまう。このように、カーボンブラックを用いたゴムにおいて電気絶縁性と硬さとは一般的にトレードオフの関係にある。
【0006】
また、カーボンブラックに代えて無機充填剤を配合することが考えられる。しかしながら、無機充填剤を用いた場合、ゴム組成物の粘度が高くなりゴム成形時の加工性が劣るという問題がある。なお、特許文献2および3には、ゴムに酸化亜鉛およびカーボンブラックを配合したゴム組成物の開示がある。しかしながら、引用文献2のゴム組成物はダイアフラム用途であり、電気絶縁性を求められるものではない。また、引用文献3のゴム組成物はタイヤ用途であり、アースを取ることが重要であるためむしろ導電性が高いことが望ましい。
【0007】
従って、本発明の目的は、ゴム成形時の加工性に優れ、電気絶縁性および硬度に優れるゴムを成形可能なゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、ゴム成分、カーボンブラック、および金属酸化物を含有し、カーボンブラックの平均粒子径が特定値以上であり、且つカーボンブラックおよび金属酸化物の含有量がそれぞれ特定の範囲内であるゴム組成物によれば、ゴム成形時の加工性に優れ、電気絶縁性および硬度に優れるゴムを成形可能であることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて完成させたものである。
【0009】
すなわち、本発明は、ゴム成分、カーボンブラック、および金属酸化物を含有し、
上記カーボンブラックの平均粒子径が45nm以上であり、
上記ゴム成分100質量部に対し、上記カーボンブラックの含有量が50質量部以下であり、上記金属酸化物の含有量が40~180質量部である、ゴム組成物を提供する。
【0010】
上記ゴム成分はジエン系ゴムを含むことが好ましい。
【0011】
上記ゴム組成物は防振ゴム用であることが好ましい。
【0012】
上記金属酸化物は酸化亜鉛を含むことが好ましい。
【0013】
上記ゴム組成物は鉄道車両用であることが好ましい。
【0014】
上記ゴム組成物はさらに硫黄を含むことが好ましい。
【0015】
また、本発明は、上記ゴム組成物の加硫物である加硫ゴムを提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明のゴム組成物は加工性に優れる。そして、本発明のゴム組成物を用いることで、電気絶縁性および硬度に優れるゴムを成形することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のゴム組成物は、ゴム成分、カーボンブラック、および金属酸化物を少なくとも含む。
【0018】
上記ゴム成分としては、公知乃至慣用のものを用いることができ、例えば、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン-イソプレン共重合体ゴム、ブタジエン-イソプレン共重合体ゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合体ゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム等のジエン系ゴム;ブチルゴム;エチレンプロピレンゴム(EPM);エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM);臭素化ブチルゴム;ポリウレタンゴム;アクリルゴム;フッ素ゴム;シリコーンゴムなどが挙げられる。中でも、ゴムの防振性能により優れる観点から、ジエン系ゴムが好ましい。上記ゴム成分は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0019】
上記カーボンブラックの平均粒子径は、45nm以上であり、好ましくは50nm以上、より好ましくは55nm以上である。上記平均粒子径が45nm以上であることにより、ゴム組成物より成形されるゴムにおいてカーボンブラック同士の接触面積を小さくすることができ、電気絶縁性に優れ、且つ硬さや引張強度等の物性を高くすることができる。上記平均粒子径の上限は、例えば150nm、120nm、100nmであってもよい。上記平均粒子径は、電子顕微鏡による一次粒子の平均粒子径であり、カーボンブラックの凝集体を電子顕微鏡で観察した際の、上記凝集体を構成する一次粒子の平均直径である。上記カーボンブラックは、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。なお、上記カーボンブラックを二種以上含む場合、上記平均粒子径は、ゴム組成物に含まれる上記二種以上のカーボンブラックの混合物について測定して得られる値である。
【0020】
上記カーボンブラックのヨウ素吸着量は、45mg/g未満が好ましく、より好ましくは35mg/g以下、さらに好ましくは30mg/g以下である。上記ヨウ素吸着量が45mg/g未満であると、ゴム組成物より成形されるゴムにおいてカーボンブラックの表面積が小さいため、カーボンブラック同士の接触面積を小さくすることができ、電気絶縁性に優れ、且つ硬さや引張強度等の物性を高くすることができる。上記ヨウ素吸着量は、JIS K6217-1(2008)に基づいて測定することができる。なお、上記カーボンブラックを二種以上含む場合、上記ヨウ素吸着量は、ゴム組成物に含まれる上記二種以上のカーボンブラックの混合物について測定して得られる値である。
【0021】
上記カーボンブラックは、FEF、GPF、SRF、FTが好ましく、より好ましくはGPF、SRFである。これらのカーボンブラックを用いると、電気絶縁性に優れ、且つ硬さや引張強度等の物性を高くすることができる。なお、いわゆるハイストラクチャータイプのカーボンブラックは、振動により発熱しやすいため、ハイストラクチャータイプ以外のカーボンブラックが好ましい。
【0022】
上記カーボンブラックの含有量は、上記ゴム成分の総量100質量部に対して、50質量部以下であり、好ましくは45質量部以下である。上記含有量が50質量部以下であることにより、電気絶縁性に優れる。上記含有量は、ゴムの物性により優れる観点から、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、さらに好ましくは30質量部以上である。
【0023】
上記金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウムなどが挙げられる。中でも、酸化亜鉛、酸化チタンが好ましく、より好ましくは酸化亜鉛である。上記金属酸化物を含むことにより、加工性を低下させずにゴムの硬さや引張強度等の物性を高くすることができ、そしてカーボンブラックの配合量を抑えることができるため電気絶縁性に優れる。上記金属酸化物は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0024】
上記金属酸化物の含有量は、上記ゴム成分の総量100質量部に対して、40~180であり、好ましくは80~160質量部、より好ましくは90~150質量部である。上記含有量が40質量部以上であることによりゴムの硬さに優れる。上記含有量が180質量部以下であることによりゴム組成物の粘度を適度に維持することができ加工性に優れる。
【0025】
上記カーボンブラックに対する上記金属酸化物の質量比(金属酸化物/カーボンブラック)は、特に限定されないが、1.0~4.5が好ましく、より好ましくは1.5~4.3、さらに好ましくは2.0~4.0である。上記質量比が上記範囲内であると、加工性、電気絶縁性、ゴムの硬さがバランスよく優れる。
【0026】
本発明のゴム組成物中のゴム成分、カーボンブラック、および金属酸化物の合計割合は、本発明のゴム組成物の総量100質量%に対して、80質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。上記合計割合は、例えば100質量%未満であり、好ましくは99質量%以下である。
【0027】
本発明のゴム組成物は、さらに、硫黄を含むことが好ましい。硫黄を含むことにより、上記ゴム成分を架橋して加硫ゴムを成形することができる。上記硫黄は、公知乃至慣用のゴム加硫用の硫黄を用いることができる。例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などが挙げられる。硫黄は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0028】
本発明のゴム組成物中の硫黄の含有量は、特に限定されないが、上記ゴム成分の総量100質量部に対して、0.5~3質量部であることが好ましい。上記含有量が0.5質量部以上であると、加硫ゴムの架橋密度が充分となり、機械的特性がより優れる。上記含有量が3質量部以下であると、加硫ゴムの耐熱性の低下を抑制できる。
【0029】
本発明のゴム組成物は、さらに、加硫促進剤を含むことが好ましい。上記加硫促進剤は、公知乃至慣用のゴム加硫用として通常用いられるものを用いることができる。上記加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤などが挙げられる。加硫促進剤は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。加硫促進剤の含有量は、上記ゴム成分の総量100質量部に対して、例えば0.05~10質量部、好ましくは0.5~5質量部である。
【0030】
本発明のゴム組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内で、上述した各成分以外のその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、ゴム工業で使用される配合剤を使用でき、例えば、難燃剤、シランカップリング剤、老化防止剤、金属酸化物以外の加硫助剤、加硫遅延剤、加工助剤、軟化剤、可塑剤などが挙げられる。上記その他の成分は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0031】
上記加工助剤は、公知乃至慣用のゴム加硫用として通常用いられるものを用いることができる。上記加工助剤としては、例えば、ステアリン酸等の脂肪酸、ステアリン酸金属塩、高融点ワックス、低分子量ポリエチレン、ポリエチレングリコール、オクタデシルアミン等の滑剤などが挙げられる。加工助剤は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。加工助剤の含有量は、上記ゴム成分の総量100質量部に対して、例えば0.05~10質量部、好ましくは0.5~5質量部である。
【0032】
上記老化防止剤としては、例えば、芳香族アミン系老化防止剤、アミン-ケトン系老化防止剤、モノフェノール系老化防止剤、ビスフェノール系老化防止剤、ポリフェノール系老化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系老化防止剤、チオウレア系老化防止剤などが挙げられる。老化防止剤は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0033】
本発明のゴム組成物は、シリカなど、金属酸化物以外のその他の無機粒子を実質的に含まないことが好ましい。上記その他の無機粒子はゴム組成物の粘度を上昇させやすく加工性を低下させる傾向にある。なお、本明細書において、実質的に含まないとは、意図的に配合しないことを意味し、不可避に混入するものは除外されるものとする。本発明のゴム組成物中の上記その他の無機粒子の含有量は、上記ゴム成分の総量100質量部に対して、10質量部以下が好ましく、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは1質量部以下である。
【0034】
本発明のゴム組成物は、カーボンブラック以外のその他の補強剤を実質的に含まないことが好ましい。上記その他の補強剤としては、例えば、ウォラストナイト等のウィスカーなどが挙げられる。上記その他の補強剤の含有量は、上記ゴム成分の総量100質量部にして、10質量部以下が好ましく、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは1質量部以下である。
【0035】
本発明のゴム組成物は、JIS K6300-1に基づいた125℃のムーニー粘度試験により得られるムーニー粘度最低値(Vm)が、65以下であることが好ましく、より好ましくは63以下である。上記Vmが65以下であると、加硫中の粘度が低く、加工性に優れる。なお、上記Vmは、例えば20以上であり、好ましくは30以上である。
【0036】
本発明のゴム組成物は、JIS K6300-1に基づいた125℃のムーニー粘度試験より得られるスコーチタイム(t5)が、16分以上であることが好ましく、より好ましくは20分以上である。上記t5が16分以上であると、ゴムの焼けが抑制され、加工性に優れる。なお、上記t5は、好ましくは50分以下、より好ましくは40分以下である。上記t5が50分以下であると、加硫速度が遅すぎず、生産性に優れる。
【0037】
本発明のゴム組成物は、150℃にて20分加熱および加硫して得られるゴムの、JIS K6253に基づいたタイプAデュロメーターにて測定されるゴム硬度が、55以上であることが好ましく、より好ましくは60以上である。上記ゴム硬度が55以上であると、硬さが充分であり、機械的強度がより優れる。上記ゴム硬度の上限は、例えば90以下である。上記ゴム硬度が90以下であると、柔軟性に優れ、振動の吸収性に優れる。
【0038】
本発明のゴム組成物は、150℃にて20分加熱および加硫して得られるゴムの、JIS K6251に基づいて測定される引張強度が、18MPa以上であることが好ましく、より好ましくは19MPa以上、さらに好ましくは20MPa以上である。また、上記引張強度の上限は、例えば30MPaである。
【0039】
本発明のゴム組成物は、150℃にて20分加熱および加硫して得られるゴムの、JIS K6251に基づいて測定される破断伸びが、600%以下であることが好ましく、より好ましくは500%以下、さらに好ましくは490%以下である。また、上記破断伸びの下限は、例えば350%である。
【0040】
本発明のゴム組成物は、150℃にて20分加熱および加硫して得られるゴムの、JIS K6262に基づいて測定される70℃で96時間放置後の圧縮永久歪特性の値が、20%以下であることが好ましく、より好ましくは16%以下、さらに好ましくは15%以下である。上記圧縮永久歪特性の値が20%以下であると、長時間加熱後の圧縮永久歪が低いため、ゴムの耐熱性により優れる。
【0041】
本発明のゴム組成物は、150℃にて20分加熱および加硫して得られるゴムの体積抵抗率が、1.0×109Ω・cm以上であることが好ましく、より好ましくは1.0×1010Ω・cm以上、さらに好ましくは1.0×1011Ω・cm以上である。上記体積抵抗率が1.0×109Ω・cm以上であると、ゴムの電気絶縁性がより良好となる。上記体積抵抗率は、例えば、サンプルサイズ100mm×100mm×2mmのゴムを用い、印加電圧500V、温度23℃の条件において測定することができる。
【0042】
本発明のゴム組成物は、上記ゴム成分、上記カーボンブラック、および上記金属酸化物、並びに、必要に応じてその他の成分を、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなどのゴム工業において通常使用される混練機を用いて混練りすることにより製造することができる。
【0043】
また、本発明のゴム組成物における各成分の配合方法は特に限定されず、硫黄、加硫促進剤などの加硫系成分以外の配合成分を予め混練してマスターバッチとし、残りの成分を添加してさらに混練する方法、各成分を任意の順序で添加し混練する方法、全成分を同時に添加して混練する方法などのいずれであってもよい。
【0044】
本発明のゴム組成物を所望の形状に成形することにより、各用途に適したゴムを製造することができる。本発明のゴム組成物を用いて成形されたゴムを「本発明のゴム」と称する場合がある。成形条件として、成形温度は例えば130~180℃、好ましくは140~160℃である。成形時間はゴムの形状に応じて適宜に設定される。
【0045】
本発明のゴムは、JIS K6253に準拠したタイプAデュロメーターにて測定されるゴム硬度が、上述の本発明のゴム組成物を150℃にて20分加熱および加硫して得られるゴムについて好ましい範囲として説明された値であることが好ましい。JIS K6251に基づいて測定される引張強度および破断伸び、JIS K6262に基づいて測定される70℃で96時間放置後の圧縮永久歪特性の値、および体積抵抗率についても同様である。
【0046】
本発明のゴムの用途としては、例えば、空気ばね、防振ゴム、ゴムホース、ベルト、電線被覆ゴムなどが挙げられる。中でも、硬さなどの機械的特性に優れるため、防振ゴムが好ましい。すなわち、本発明のゴム組成物は、防振ゴム用であることが好ましい。また、本発明のゴムは、電気絶縁性に優れるため、鉄道車両用途に用いられることが好ましい。
【実施例】
【0047】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に
のみ限定されるものではない。ここで実施例3は参考例1と読み替えるものとする。
【0048】
(ゴム組成物の調製)
ゴム成分100質量部に対して、表1の配合処方に従って各成分を配合し、通常のバンバリーミキサーを用いて混練して実施例1~3および比較例1~5のゴム組成物を調製した。表1に記載の各成分を以下に示す。なお、表に記載の各成分の配合量の単位は相対的な「質量部」であり、表中の「-」は、その成分を配合していないことを示す。
【0049】
天然ゴム:RSS#3
カーボンブラックGPF:商品名「シーストV」、平均粒子径62nm、ヨウ素吸着量26mg/g、東海カーボン株式会社製
カーボンブラックSRF:商品名「シーストS」、平均粒子径66nm、ヨウ素吸着量30mg/g、東海カーボン株式会社製
シリカ:商品名「ニップシールAQ」、東ソー・シリカ株式会社製
アロマオイル:商品名「アロマックス3」、JXTGエネルギー株式会社製
老化防止剤:商品名「アンチゲン6C」、住友化学株式会社製
硫黄:油処理150メッシュ粉末硫黄、鶴見化学工業株式会社製
加硫促進剤:商品名「ノクセラーNS-P」、大内新興化学工業株式会社製
【0050】
(ゴムの作製)
実施例および比較例で得られたゴム組成物を金型に流し込み、150℃にて20分加熱および加硫して加硫ゴムを作製した。
【0051】
実施例および比較例で得られたゴム組成物および加硫ゴムについて、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0052】
<ゴム組成物の加工性(加硫速度)>
実施例および比較例で得られたゴム組成物について、JIS K6300-1に準拠し、ムーニー粘度計により、125℃のムーニー粘度最低値(Vm)およびスコーチタイム(t5[分])を測定した。Vmが小さいほど加硫中の粘度が低いことを示し、t5が小さいほど加硫速度が速くなることを示す。Vmが小さいと加工性が優れる。また、t5が小さいと加硫速度が速く加工性が劣り、t5が大きいと加硫速度が遅く加工性が優れる。なお、t5が大きすぎると加硫の時間が長くなり生産性が劣ることとなる。
【0053】
<ゴム硬度および引張特性>
実施例および比較例で得られた加硫ゴムについて、JIS K6253に準拠し、タイプAデュロメーターにてゴム硬度を測定した。さらに、JIS3号ダンベルを使用して作製したサンプルを、JIS K6251に準拠して引張強度[MPa]および破断伸び[%]を測定した。
【0054】
<電気絶縁性(体積抵抗率)>
東亜ディーケーケー株式会社製「ULTRA MEGOHMMETER」を使用し、印加電圧500V、サンプルゴム形状100×100[mm]、厚さ2[mm]、シート主電極外径5cm、23℃にて体積抵抗率[Ω・cm]を測定した。
【0055】
<耐熱性(圧縮永久歪特性)>
実施例および比較例で得られた加硫ゴムについて、JIS K6262に準拠し、厚さ方向に25%圧縮し70℃で96時間放置後の圧縮永久歪特性[%]の値を測定した。数値が小さいほど、長時間加熱後の圧縮永久歪が低いため、加硫ゴムの耐熱性に優れることを意味する。
【0056】
【0057】
表1に示すとおり、実施例のゴム組成物は、加工性に優れ、成形したゴムの硬さおよび電気絶縁性に優れていた。また、引張強度、破断伸び、耐熱性等の他の機械的特性にも優れていた。一方、カーボンブラックの含有量が多い場合(比較例1)、電気抵抗が確認できず電気絶縁性に劣っていた。また、金属酸化物の含有量が少ない場合(比較例2)、硬さが不充分であった。また、カーボンブラックおよび金属酸化物の含有量を抑えつつシリカを用いた場合(比較例3)、および金属酸化物の含有量が多い場合(比較例4)のいずれも、スコーチ時間(t5)が短い、あるいはムーニー粘度最低値(Vm)が高く加工性が劣っていたり、引張強度が劣っていたりした。また、カーボンブラックの含有量が多い場合において金属酸化物の含有量を多くした場合であっても(比較例5)、電気抵抗が確認できず電気絶縁性に劣っており、またスコーチ時間(t5)が短い、あるいはムーニー粘度最低値(Vm)が高く加工性が劣っていた。