IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ IDEC株式会社の特許一覧

特許7542427操作スイッチ、非常停止スイッチおよび制御システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】操作スイッチ、非常停止スイッチおよび制御システム
(51)【国際特許分類】
   H01H 13/02 20060101AFI20240823BHJP
【FI】
H01H13/02 C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020214031
(22)【出願日】2020-12-23
(65)【公開番号】P2022099945
(43)【公開日】2022-07-05
【審査請求日】2023-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000000309
【氏名又は名称】IDEC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103241
【弁理士】
【氏名又は名称】高崎 健一
(72)【発明者】
【氏名】大西 祥太
(72)【発明者】
【氏名】福井 孝男
(72)【発明者】
【氏名】藤谷 繁年
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-311097(JP,A)
【文献】特開2020-140838(JP,A)
【文献】特開2020-198207(JP,A)
【文献】特開平11-204015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 13/00 - 13/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作スイッチにおいて、
手動で押込み操作可能および復帰操作可能に設けられた操作部と、
前記操作部を押込み操作前の状態に保持する第1の保持手段と、
前記操作部を押込み操作後の状態から手動復帰できないようにロックするロック手段と、
前記操作部の手動操作面でない位置に設けられ、前記操作部を押込み操作後の状態から手動復帰できるように前記ロック手段による前記操作部のロック状態を解除するロック解除手段と、
前記操作部を復帰操作前の状態に保持する第2の保持手段と、
を備えた操作スイッチ。
【請求項2】
請求項1において、
前記操作部に操作軸が連結されており、前記ロック手段によるロックおよび前記ロック解除手段によるロック解除が前記操作軸に作用している、
ことを特徴とする操作スイッチ。
【請求項3】
請求項2において、
前記ロック手段が前記操作軸に接近して前記操作軸をロック可能なロック部材を有しており、前記ロック解除手段が前記ロック部材を前記操作軸から離反させるように作用している、
ことを特徴とする操作スイッチ。
【請求項4】
請求項1において、
前記ロック解除手段が、外部からの信号に基づいて駆動されている、
ことを特徴とする操作スイッチ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、
前記ロック解除手段が電磁ソレノイドから構成されている、
ことを特徴とする操作スイッチ。
【請求項6】
請求項1において、
前記操作部の状態を検出する検出部をさらに備えた、
ことを特徴とする操作スイッチ。
【請求項7】
請求項1において、
前記操作部を押込み方向に常時付勢する付勢部材をさらに備えた、
ことを特徴とする操作スイッチ。
【請求項8】
非常停止スイッチにおいて、
手動で押込み操作可能および復帰操作可能に設けられた押しボタンと、
前記押しボタンを押込み操作前の状態に保持する第1の保持手段と、
前記押しボタンを押込み操作後の状態から手動復帰できないようにロックするロック手段と、
前記押しボタンの手動操作面でない位置に設けられ、前記押しボタンを押込み操作後の状態から手動復帰できるように前記ロック手段による押しボタンのロック状態を解除するロック解除手段と、
前記押しボタンを復帰操作前の状態に保持する第2の保持手段と、
を備えた非常停止スイッチ。
【請求項9】
請求項8に記載の非常停止スイッチを備えた制御システムにおいて、
危険エリア内からすべての作業者が退避したか否かを監視する監視手段と、
前記監視手段による監視の結果、前記危険エリアからすべての作業者が退避した場合に、前記ロック解除手段によるロック解除がなされるよう、前記ロック解除手段を制御する制御手段と、
を備えた制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手動で押込み操作可能な操作部/押しボタンを有する操作スイッチ/非常停止スイッチ、および非常停止スイッチを備えた制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
非常停止スイッチは、一般に、手動で押込み操作可能な押しボタンと、これに連結された操作軸と、操作軸の移動により切り替えられる接点とを備えており、作業者が押しボタンを手動で押込み操作すると、押しボタンとともに操作軸が押し込まれることにより、操作軸とともに移動する可動接点が固定接点から離れて接点が開離し、機械やシステムが非常停止状態に移行するようになっている。
【0003】
また、非常停止スイッチにおいては、押しボタンを押込み状態でロックするためのロック機構が設けられている。従来のロック機構によるロック状態は、作業者が押しボタンを手動でたとえばターンする(つまり回転させる)ことにより解除されるように構成されているので、押しボタンのロック解除はだれでも行うことが可能であり、そのため、十分な安全確認がなされないまま、押しボタンがロック解除されて元の位置に復帰してしまうという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、このような問題を解決するため、鍵付き非常停止スイッチが開発され、実用に供されている(たとえば特開2019-75205号公報等参照)。鍵付き非常停止スイッチは、押しボタンの押込み操作面に形成された鍵穴に鍵を挿し込んで操作することにより押しボタンのロック状態を解除するように構成されているので、鍵を所持している特定の者のみが押しボタンのロック解除を行うことが可能であり、そのため、十分な安全確認後に押しボタンのロック解除および復帰操作(リセット操作)が行われることが期待される。
【0005】
しかしながら、実際の生産現場では、押しボタンの鍵穴に鍵を挿し込んだ状態のまま非常停止スイッチが用いられる場合があり、そのような場合、押しボタンのロック解除はだれでも行えるようになってしまい、鍵付きにした意味がなくなってしまう。また、この場合、押しボタンの押込み操作時に鍵が作業者の手に当たって作業者が怪我をしたり、作業者が押しボタンの押込み操作を躊躇するといった新たな問題も発生する。また、国際規格においても、鍵リセット型の非常停止スイッチは推奨されていない。
【0006】
本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、操作部(押しボタン)のロック解除時に鍵を必要とせず、しかも操作部(押しボタン)の押込み後のロック状態を操作部(押しボタン)への直接的な手動操作によって簡単に解除できない操作スイッチ(非常停止スイッチ)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る操作スイッチは、手動で押込み操作可能および復帰操作可能に設けられた操作部と、操作部を押込み操作前の状態に保持する第1の保持手段と、操作部を押込み操作後の状態から手動復帰できないようにロックするロック手段と、操作部の手動操作面でない位置に設けられ、操作部を押込み操作後の状態から手動復帰できるようにロック手段による操作部のロック状態を解除するロック解除手段と、操作部を復帰操作前の状態に保持する第2の保持手段とを備えている。
【0008】
本発明においては、操作部が第1の保持手段により押込み操作前の状態に保持された状態から、操作部を手動で押込み操作すると、ロック手段により操作部が押込み操作後の状態から手動復帰できないようにロックされる。次に、操作部を手動復帰する際には、操作部が第2の保持手段により復帰操作前の状態に保持された状態から、操作部の手動操作面でない位置に設けられたロック解除手段によりロック手段による操作部のロック状態を解除すると、操作部を押込み操作後の状態から手動復帰できるようになる。
【0009】
このように、本発明によれば、ロック手段による操作部のロック状態は手動で解除できず、操作部の手動操作面でない位置に設けられたロック解除手段によって解除される。したがって、本発明では、操作部のロック解除時に操作部に対して抜き差しされる鍵を必要とせず、しかも、操作部のロック状態が操作部への直接的な手動操作によって簡単に解除できない。これにより、操作部のロック解除をだれもが行えるようになるのを回避でき、その結果、安全性および信頼性を向上できる。
【0010】
本発明では、操作部に操作軸が連結されており、ロック手段によるロックおよびロック解除手段によるロック解除が操作軸に作用している。
【0011】
本発明では、ロック手段が操作軸に接近して操作軸をロック可能なロック部材を有しており、ロック解除手段がロック部材を操作軸から離反させるように作用している。
【0012】
本発明では、ロック解除手段が外部からの信号に基づいて駆動されている。
【0013】
本発明では、ロック解除手段が電磁ソレノイドから構成されている。
【0014】
本発明では、操作部の状態を検出する検出部をさらに備えている。
【0015】
本発明では、操作部を押込み方向に常時付勢する付勢部材をさらに備えている
【0016】
本発明に係る非常停止スイッチは、手動で押込み操作可能および復帰操作可能に設けられた押しボタンと、押しボタンを押込み操作前の状態に保持する第1の保持手段と、押しボタンを押込み操作後の状態から手動復帰できないようにロックするロック手段と、押しボタンの手動操作面でない位置に設けられ、押しボタンを押込み操作後の状態から手動復帰できるようにロック手段による押しボタンのロック状態を解除するロック解除手段と、押しボタンを復帰操作前の状態に保持する第2の保持手段とを備えている。
【0017】
本発明においては、押しボタンが第1の保持手段により押込み操作前の状態に保持された状態から、押しボタンを手動で押込み操作すると、ロック手段により押しボタンが押込み操作後の状態から手動復帰できないようにロックされる。次に、押しボタンを手動復帰する際には、押しボタンが第2の保持手段により復帰操作前の状態に保持された状態から、押しボタンの手動操作面でない位置に設けられたロック解除手段によりロック手段による押しボタンのロック状態を解除すると、押しボタンを押込み操作後の状態から手動復帰できるようになる。
【0018】
このように、本発明によれば、ロック手段による押しボタンのロック状態は手動で解除できず、押しボタンの手動操作面でない位置に設けられたロック解除手段によって解除される。したがって、本発明では、押しボタンのロック解除時に押しボタンに対して抜き差しされる鍵を必要とせず、しかも、押しボタンのロック状態が押しボタンへの直接的な手動操作によって簡単に解除できない。これにより、押しボタンのロック解除をだれもが行えるようになるのを回避でき、その結果、安全性および信頼性を向上できる。
【0019】
本発明では、非常停止スイッチを備えた制御システムにおいて、危険エリア内からすべての作業者が退避したか否かを監視する監視手段と、監視手段による監視の結果、危険エリアからすべての作業者が退避した場合に、ロック解除手段によるロック解除がなされるよう、ロック解除手段を制御する制御手段とを備えている。
【発明の効果】
【0020】
以上のように本発明によれば、操作部/押しボタンのロック解除時に操作部/押しボタンに対して抜き差しされる鍵を必要とせず、しかも、操作部/押しボタンのロック状態が操作部/押しボタンへの直接的な手動操作によって簡単に解除できないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1の実施例による非常停止スイッチの縦断面概略構成図であって、押しボタンの押込み操作前の状態を示している。
図2】前記非常停止スイッチ(図1)において、押しボタンの押込み操作途中の状態を示している。
図3】前記非常停止スイッチ(図1)において、押しボタンの押込み操作後の状態を示し、ロック手段によるロック状態を示している。
図4】前記非常停止スイッチ(図3)において、ロック解除手段によるロック解除後の状態を示している。
図5】前記非常停止スイッチ(図4)において、押しボタンの手動復帰後の状態を示している。
図6】本発明の第2の実施例による非常停止スイッチの縦断面概略構成図であって、押しボタンの押込み操作前の状態を示しており、前記第1の実施例の図1に相当している。
図7】前記非常停止スイッチ(図6)において、押しボタンの押込み操作後の状態を示し、ロック手段によるロック状態を示しており、前記第1の実施例の図3に相当している。
図8】前記非常停止スイッチ(図7)において、ロック解除手段によるロック解除後の状態を示しており、前記第1の実施例の図4に相当している。
図9】本発明の第3の実施例による非常停止スイッチの縦断面概略構成図であって、押しボタンの押込み操作後の状態を示し、ロック手段によるロック状態を示しており、前記第1の実施例の図3に相当している。
図10】本発明の第4の実施例による非常停止スイッチの縦断面概略構成図であって、押しボタンの押込み操作前の状態を示しており、前記第1の実施例の図1に相当している。
図11】前記非常停止スイッチ(図10)において、押しボタンの押込み操作後の状態を示し、ロック手段によるロック状態を示しており、前記第1の実施例の図3に相当している。
図12】本発明の第5の実施例による非常停止スイッチの縦断面概略構成図であって、押しボタンの押込み操作前の状態を示しており、前記第1の実施例の図1に相当している。
図13】前記非常停止スイッチ(図12)において、押しボタンの押込み操作後の状態を示し、ロック手段によるロック状態を示しており、前記第1の実施例の図3に相当している。
図14】前記非常停止スイッチ(図13)において、ロック解除手段によるロック解除後の状態を示しており、前記第1の実施例の図4に相当している。
図15】本発明の第6の実施例による非常停止スイッチの縦断面概略構成図であって、押しボタンの押込み操作前の状態を示しており、前記第1の実施例の図1に相当している。
図16】前記非常停止スイッチ(図15)において、押しボタンの押込み操作後の状態を示し、ロック手段によるロック状態を示しており、前記第1の実施例の図3に相当している。
図17】本発明の第7の実施例による非常停止スイッチの縦断面概略構成図であって、押しボタンの押込み操作前の状態を示している。
図18】本発明の第8の実施例による非常停止スイッチの縦断面概略構成図であって、押しボタンの押込み操作前の状態を示している。
図19】本発明の第9の実施例による非常停止スイッチの縦断面概略構成図であって、押しボタンの押込み操作前の状態を示している。
図20】本発明の第10の実施例による非常停止スイッチの縦断面概略構成図であって、押しボタンの押込み操作前の状態を示している。
図21】本発明の第11の実施例による非常停止スイッチの縦断面概略構成図であって、押しボタンの押込み操作前の状態を示しており、前記第1の実施例の図1に相当している。
図22】前記非常停止スイッチ(図21)において、押しボタンの押込み操作後の状態を示し、ロック手段によるロック状態を示しており、前記第1の実施例の図3に相当している。
図23】前記非常停止スイッチ(図22)において、ロック解除手段によるロック解除後の状態を示しており、前記第1の実施例の図4に相当している。
図24】前記非常停止スイッチ(図23)において、押しボタンの手動復帰後の状態を示しており、前記第1の実施例の図5に相当している。
図25】本発明の第12の実施例による非常停止スイッチの縦断面概略構成図であって、押しボタンの押込み操作前の状態を示しており、前記第1の実施例の図1に相当している。
図26】前記非常停止スイッチ(図25)において、押しボタンの押込み操作後の状態を示し、ロック手段によるロック状態を示しており、前記第1の実施例の図3に相当している。
図27】前記非常停止スイッチ(図26)において、ロック解除手段によるロック解除後の状態を示しており、前記第1の実施例の図4に相当している。
図28】前記非常停止スイッチ(図27)において、押しボタンの手動復帰後の状態を示しており、前記第1の実施例の図5に相当している。
図29】本発明の第13の実施例による非常停止スイッチの縦断面概略構成図であって、押しボタンの押込み操作前の状態を示しており、前記第1の実施例の図1に相当している。
図30】前記非常停止スイッチ(図29)において、押しボタンの押込み操作後の状態を示し、ロック手段によるロック状態を示しており、前記第1の実施例の図3に相当している。
図31】本発明の第14の実施例による非常停止スイッチの縦断面概略構成図であって、押しボタンの押込み操作前の状態を示している。
図32】前記非常停止スイッチ(図31)において、押しボタンの押込み操作後の状態を示している。
図33】前記非常停止スイッチ(図32)において、ロック手段によるロック状態を示している。
図34】前記非常停止スイッチ(図33)において、ロック解除手段によるロック解除後の状態を示している。
図35】前記非常停止スイッチ(図34)において、押しボタンの手動復帰後の状態を示している。
図36】本発明による非常停止スイッチを備えた制御システム(第15の実施例)の概略ブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。
<第1の実施例>
図1ないし図5は、本発明の第1の実施例による操作スイッチを説明するための図である。図1は押しボタンの押込み操作前の状態を、図2は押しボタンの押込み操作途中の状態を、図3は押しボタンの押込み操作後の状態およびロック手段によるロック状態を、図4はロック解除手段によるロック解除後の状態を、図5は手動復帰後の状態をそれぞれ示している。
【0023】
図1ないし図5はいずれも操作スイッチの縦断面を示しているが、図示の便宜上、各図において断面を表すハッチングは省略されている(以下の第2ないし第14の実施例においても同様)。また、説明の便宜上、各図における上下方向を上下方向(つまり鉛直方向)、左右方向を左右方向(つまり水平方向)と呼称することにする。この第1の実施例では(以下の第2ないし第14の実施例においても同様)、操作スイッチとして非常停止スイッチを例にとる。
【0024】
図1に示すように、非常停止スイッチ1は、手動で押込み操作可能な押しボタン(操作部)2を有している。押しボタン2は、作業者が手で押し込むための手動操作面2Aを有している。押しボタン2の背面側(下側)にはボス部20が設けられており、ボス部20には、軸方向に延びる操作軸3の一端が連結されている。操作軸3は、筐体4の内部において軸方向に移動可能に支持されている。操作軸3の他端には、接点ブロック10が設けられている。接点ブロック10は、押しボタン2の押込み操作により操作軸3が下方に移動したときに、メイン接点(図示せず)がONからOFFに切り替わるように設けられている。押しボタン2のボス部20は、筐体4の一端に形成された開口部4aに対して出没可能に設けられている。操作軸3は、筐体4の他端に形成された開口部4bを挿通可能に設けられている。
【0025】
筐体4の他端側の側部には、電磁ソレノイド5が設けられている。電磁ソレノイド5は、筐体4に連設されたケース55内に収容されている。電磁ソレノイド5は、操作軸3の軸方向と実質的に直交する方向に延びかつ当該方向に移動可能なロック部材50を有しており、ロック部材50は、操作軸3に対して接近・離反可能に設けられている。ロック部材50は、軸方向に延びる軸状部50Aと、その先端に一体に設けられたロック部50Bとを有している。ロック部50Bの先端は、上側に配置された傾斜面50bと、下側に配置された水平面50bとを有している。
【0026】
一方、操作軸3の他端側には、側方に向かって突出する突出部30が一体に設けられている。突出部30は、下側に配置された傾斜面30と、上側に配置された水平面30とを有している。傾斜面30は、ロック部50Bの傾斜面50bと実質的に同一の傾斜角を有し、傾斜面50bと係合可能に設けられており、水平面30は、ロック部50Bの水平面50bと係合可能(つまりロック可能)に設けられている。図1に示す押しボタン操作前の状態においては、突出部30の傾斜面30がロック部50Bの傾斜面50bと係合している。
【0027】
電磁ソレノイド5は、コイルからなるソレノイド本体51を有しており、ソレノイド本体51は、ロック部材50の外周に配設されている。ロック部材50の軸状部50Aの基端側には、半径方向外方に張り出す張出し部52が設けられている。電磁ソレノイド5を収容するケース55内には、圧縮ばね53が配設されている。圧縮ばね53の一端は、張出し部52に圧接し、他端はケース55の内壁面に圧接している。圧縮ばね53の弾性反発力により、ロック部材50は、図1左方に(つまり操作軸3に向かって)常時付勢されている。
【0028】
なお、図1ないし図3および図5は、電磁ソレノイド5に電流が供給されておらず、ソレノイド本体51が非励磁の状態を示しており、図4は、電磁ソレノイド5に電流が供給され、ソレノイド本体51が励磁された状態を示している。
【0029】
操作軸3の一端側には、側方に向かって突出する複数の突出部(または周方向に延びる環状突起部)31が一体に設けられている。各突出部31は、下側に配置された傾斜面31と、上側に配置された傾斜面31とからテーパ状に形成されている。一方、筐体4の内部には複数の凹部4cが設けられており、凹部4c内には、突出部31の各傾斜面31、31にそれぞれ係合し得る傾斜面6、6を先端に有する係合部材6が収容されている。凹部4c内には、さらに圧縮ばね7が配設されている。圧縮ばね7の弾性反発力により、各係合部材6は、対応する各突出部31の傾斜面31または31に弾性的に圧接し得るようになっている。係合部材6および圧縮ばね7は、操作軸3の各突出部31に対して保持力を作用させている。
【0030】
操作軸3の略中央位置には、半径方向外方に張り出す張出し部32が設けられている。筐体4内には、圧縮ばね8が配設されており、圧縮ばね8の一端は、張出し部32に圧接し、他端は筐体4の内壁面4dに圧接している。圧縮ばね8の弾性反発力により、操作軸3および押しボタン2は、図1下方(つまり押しボタン2の押込み方向)、すなわち接点ブロック10のメイン接点がONからOFFに切り替わる方向に常時付勢されている。この場合、圧縮ばね8の設置により、万一スイッチが破損した場合でも、メイン接点をOFF状態のままにして非常停止状態を維持できるというセーフティポテンシャル(登録商標)構造が実現されている。
【0031】
次に、本実施例の作用効果について説明する。
図1に示す押しボタン操作前の状態においては、圧縮ばね7の弾性反発力により操作軸3の側に付勢された各係合部材6の上側の傾斜面6が各突出部31の下側の傾斜面31に圧接して係合しており、各傾斜面6、31および圧縮ばね7が押しボタン2を押込み操作前の状態に保持する第1の保持手段として機能している。また、このとき、圧縮ばね53の弾性反発力によりロック部材50が操作軸3の側に付勢されて操作軸3に接近しており、ロック部50Bの傾斜面50bが突出部30の傾斜面30に圧接して係合している。この場合、各傾斜面50b、30および圧縮ばね53は押しボタン2を押込み操作前の状態に保持する第1の保持手段としても機能している。なお、図1に示す状態においては、圧縮ばね8の弾性反発力で操作軸3が下方に付勢されていることにより、操作軸3の突出部31の下側の傾斜面31が係合部材6の上側の傾斜面6に圧接するとともに、突出部30の傾斜面30がロック部材50のロック部50Bの傾斜面50bに圧接して係合している。
【0032】
この状態から、図2に示すように、押しボタン2の手動操作面2Aに作業者が押付力Fを作用させて押しボタン2を押し込むと、押しボタン2とともに操作軸3が下方に移動する。すると、操作軸3の一端側において、各突出部31の傾斜面31がそれぞれ対応する各係合部材6の傾斜面6を押圧し、傾斜面31が傾斜面6上を摺動しつつ、圧縮ばね7の弾性反発力に抗して各係合部材6を徐々に凹部4c内に縮退させるとともに、操作軸3の他端側において、突出部30の傾斜面30がロック部材50のロック部50Bの傾斜面50bを押圧し、傾斜面30が傾斜面50b上を摺動しつつ、圧縮ばね53の弾性反発力に抗してロック部材50を徐々にケース55内に縮退させる。
【0033】
次に、図3に示すように、操作軸3の一端側において、各突出部31の下側の傾斜面31が対応する各係合部材6の上側の傾斜面6を乗り越えると、凹部4c内に縮退していた各係合部材6が圧縮ばね7の弾性反発力により伸長して、各係合部材6の下側の傾斜面6が各突出部31の上側の傾斜面31と係合する。また、このとき、図3に示すように、操作軸3の他端側において、突出部30の下側の傾斜面30がロック部50Bの上側の傾斜面50bを乗り越えると、ケース55内に縮退していたロック部材50が圧縮ばね53の弾性反発力により伸長して、ロック部50Bの下側の水平面50bが突出部30の上側の水平面30と係合する。このとき、押しボタン2は押込み操作後の状態にあって、接点ブロック10のメイン接点はONからOFFに切り替わる。
【0034】
図3に示す状態では、作業者が押しボタン2を把持して上方に引っ張り上げようとしても、操作軸3の突出部30の水平面30がロック部50Bの水平面50bと係合しているため、操作軸3を上方へ移動させることができず、操作軸3は上方にロックされており、このとき、押しボタン2は、押込み操作後の状態から手動復帰できないようにロックされたロック状態にある。したがって、ロック部材50のロック部50Bの水平面50b、操作軸3の突出部30の水平面30および圧縮ばね53は、押しボタン2をロックするロック手段として機能している。ロック手段によるロックは操作軸3に対して作用しており、ロック手段は、操作軸3を介して押しボタン2を間接的にロックしている。
【0035】
次に、押しボタン2のロック状態を解除するには、図4に示すように、電磁ソレノイド5に電流を供給(つまり通電)する。電磁ソレノイド5に対して電流を供給するためのロック解除信号は、後述する他の実施例にあるようなモニタ接点からの信号やその他の外部からの信号、たとえば、別の場所に設置した鍵スイッチや、RFID(Radio Frequency Identification)、指紋認証装置、ビーコン(Beacon)等からの信号を用いるようにすればよい。また、これらの信号データを多重化することにより、非常停止スイッチ1の押しボタン2のロック解除が簡単に行われないようにすることができ、作業者の安全をより一層確実に確保できる。なお、図4では(後述する第2ないし第14の実施例においても同様)、電磁ソレノイド5に通電していることを明示するために、ソレノイド本体51を太線で示している。
【0036】
電磁ソレノイド5が通電されると、ソレノイド本体51が励磁されることにより、ロック部材50が圧縮ばね53の弾性反発力に抗してソレノイド本体51内に引き込まれて操作軸3から離反し、その結果、ロック部材50のロック部50Bの水平面50bと操作軸3の突出部30の水平面30との係合状態が解除され、これにより、押しボタン2のロック状態が解除される(図4参照)。このように、ソレノイド本体51は、ロック手段による押しボタン2のロック状態を解除するロック解除手段として機能している。ロック解除手段によるロック解除は操作軸3に対して作用しており、ロック解除手段は、操作軸3を介して押しボタン2を間接的にロック解除している。ロック解除手段は、押しボタン2の手動操作面2Aでない位置に設けられている。
【0037】
また、図4に示す状態は、押しボタン2が手動で復帰操作される前の状態であって、押しボタン2が復帰操作可能な状態にあり、このとき、圧縮ばね7の弾性反発力により、各係合部材6の下側の傾斜面6が操作軸3の各突出部31の上側の傾斜面31に圧接して係合した状態にあり、各傾斜面6、31および圧縮ばね7は、押しボタン2を復帰操作前の状態に保持する第2の保持手段として機能している。
【0038】
この状態から(すなわち、電磁ソレノイド5への通電中に)、作業者が押しボタン2を把持して上方に引っ張り上げる復帰操作を手動で行うと、押しボタン2とともに操作軸3が上方に移動する。すると、操作軸3の一端側において各突出部31の上側の傾斜面31がこれと係合する各係合部材6の下側の傾斜面6を押圧し、圧縮ばね7の弾性反発力に抗して各係合部材6を徐々に凹部4b内に縮退させる。そして、各突出部31の上側の傾斜面31が各係合部材6の下側の傾斜面6を乗り越えると、図5に示すように、凹部4b内に縮退していた各係合部材6が圧縮ばね7の弾性反発力により伸長して、各係合部材6の上側の傾斜面6が各突出部31の下側の傾斜面31と係合する。これにより、押しボタン2が押込み操作後の状態から手動復帰するとともに、接点ブロック10のメイン接点がOFFからONに切り替わる。
【0039】
次に、電磁ソレノイド5への電流供給を停止する。電磁ソレノイド5に対して電流供給を停止するための信号は、上述したロック解除信号の場合と同様に、モニタ接点からの信号やその他の外部からの信号を用いるようにすればよい。電磁ソレノイド5への電流供給の停止により、図5に示すように、ロック部材50が圧縮ばね53の弾性反発力により伸長し、ロック部50Bの上側の傾斜面50bが操作軸3の突出部30の下側の傾斜面30と係合する。これにより、非常停止スイッチ1が押込み操作前の状態に復帰する。
【0040】
このように本実施例によれば、押しボタン2を手動で押込み操作すると(図1図2図3参照)、圧縮ばね53により付勢されたロック部材50が操作軸3に接近して操作軸3をロックすることによって、操作軸3を介して押しボタン2がロックされ、これにより、押しボタン2が押込み操作後の状態から手動復帰できないようにロックされる。また、この圧縮ばね53による押しボタン2のロック状態は、押しボタン2の手動操作面2Aでない位置に設けられたソレノイド本体51によりロック部材50が操作軸3から離反することによって、解除される(図4図5参照)。このように、押しボタン2のロック解除時には押しボタン2に対して抜き差しされる鍵を必要とせず、しかも、押しボタン2の押込み後のロック状態は、押しボタン2への直接的な手動操作によって簡単に解除できない。これにより、押しボタン2のロック解除をだれもが行えるようになるのを回避でき、その結果、安全性および信頼性を向上できる。
【0041】
<第2の実施例>
図6ないし図8は、本発明の第2の実施例による非常停止スイッチを説明するための図である。図6は押しボタンの押込み操作前の状態を、図7は押しボタンの押込み操作後の状態およびロック手段によるロック状態を、図8はロック解除手段によるロック解除後の状態をそれぞれ示している。各図中、前記第1の実施例と同一符号は同一または相当部分を示している。
【0042】
前記第1の実施例では、ロック部材50が軸状部50Aの先端にロック部50Bを有し、操作軸3がロック部50Bに係合する突出部30を有している例を示したが、この第2の実施例では、図6に示すように、ロック部材50にロック部50Bが設けられておらず、操作軸3には、ロック部材50の軸状部50Aにおける断面矩形状の先端部50aが係合し得る断面矩形状の係合凹部3aが形成されている。
【0043】
押しボタン2の押込み操作の際において、押しボタン2とともに操作軸3が下方に移動するにつれて、操作軸3の一端側の突出部31が係合部材6を乗り越えた後に係合部材6が再び突出部31と係合する点については、前記第1の実施例と同様である(図6図7参照)。
【0044】
操作軸3の他端側では、押しボタン2の押込み操作前および押込み操作途中において、ロック部材50の先端部50aは、圧縮ばね53の弾性反発力により操作軸3の外側面に弾性的に当接している(図6参照)。そして、押しボタン2の押込み操作後、操作軸3が下方に移動すると、操作軸3の他端側の係合凹部3aがロック部材50の先端部50aと対向する位置に配置される。すると、圧縮ばね53の弾性反発力により付勢されたロック部材50が操作軸3の側に伸長して、ロック部材50の先端部50aが係合凹部3a内に進入して係合する(図7参照)。このとき、押しボタン2は押込み操作後の状態にあって、接点ブロック10のメイン接点はONからOFFに切り替わる。
【0045】
図7に示す状態では、作業者が押しボタン2を把持して上方に引っ張り上げようとしても、操作軸3の断面矩形状の先端部50aが操作軸3の断面矩形状の係合凹部3aと係合しているため、操作軸3を上方へ移動させることができず、操作軸3は上方にロックされており、このとき、押しボタン2は、押込み操作後の状態から手動復帰できないようにロックされたロック状態にある。したがって、ロック部材50の先端部50a、操作軸3の係合凹部3aおよび圧縮ばね53は、押しボタン2をロックするロック手段として機能している。ロック手段によるロックは操作軸3に対して作用しており、ロック手段は、操作軸3を介して押しボタン2を間接的にロックしている。
【0046】
次に、押しボタン2のロック状態を解除するには、図8に示すように、電磁ソレノイド5に電流を供給(つまり通電)する。電磁ソレノイド5に対して電流を供給するためのロック解除信号は、モニタ接点からの信号やその他の外部からの信号を用いるようにすればよい。電磁ソレノイド5が通電されると、ソレノイド本体51が励磁されることにより、ロック部材50が圧縮ばね53の弾性反発力に抗してソレノイド本体51内に引き込まれて操作軸3から離反し、その結果、ロック部材50の先端部50aと操作軸3の係合凹部3aとの係合状態が解除され、これにより、押しボタン2のロック状態が解除される(図8参照)。ソレノイド本体51は、ロック手段による押しボタン2のロック状態を解除するロック解除手段として機能している。
【0047】
この状態から(すなわち、電磁ソレノイド5への通電中に)、作業者が押しボタン2を把持して上方に引っ張り上げる復帰操作を手動で行うと、押しボタン2とともに操作軸3が上方に移動する。このときの操作軸3の一端側の突出部31と係合部材6の係合状態の変化については前記第1の実施例と同様である。操作軸3が上方に移動すると、接点ブロック10のメイン接点がOFFからONに切り替わる。次に、電磁ソレノイド5への電流供給を停止する。電磁ソレノイド5に対して電流供給を停止するための信号は、モニタ接点からの信号やその他の外部からの信号を用いるようにすればよい。電磁ソレノイド5への電流供給の停止により、押しボタン2が押込み操作前の状態に復帰する(図6参照)。このとき、ロック部材50の先端部50aは、圧縮ばね53の弾性反発力により操作軸3の外側面に弾性的に当接している。
【0048】
この場合においても、前記第1の実施例と同様に、押しボタン2を手動で押込み操作すると(図6図7参照)、圧縮ばね53により付勢されたロック部材50が操作軸3に接近して操作軸3をロックすることによって、操作軸3を介して押しボタン2がロックされ、押しボタン2が押込み操作後の状態から手動復帰できないようにロックされる。また、この圧縮ばね53による押しボタン2のロック状態は、押しボタン2の手動操作面2Aでない位置に設けられたソレノイド本体51によりロック部材50が操作軸3から離反することによって、解除される(図7図8参照)。このように、押しボタン2のロック解除時には押しボタン2に対して抜き差しされる鍵を必要とせず、しかも、押しボタン2の押込み後のロック状態は、押しボタン2への直接的な手動操作によって簡単に解除できない。これにより、押しボタン2のロック解除をだれもが行えるようになるのを回避でき、その結果、安全性および信頼性を向上できる。
【0049】
<第3の実施例>
図9は、本発明の第3の実施例による非常停止スイッチを説明するための図である。同図は、押しボタンの押込み操作後の状態およびロック手段によるロック状態を示しており、前記第2の実施例の図7に相当している。図9中、前記第2の実施例と同一符号は同一または相当部分を示している。
【0050】
前記第2の実施例では、ロック部材50の軸状部50Aの先端部50aが係合し得る係合凹部3aが操作軸3に形成された例を示したが、この第3の実施例では、操作軸3には、係合凹部3aの代わりに係合孔3a’が貫通形成されており、ロック部材50の先端部50aが係合孔3a’に挿抜可能(つまり抜差し可能)に設けられている。
【0051】
この場合、押しボタン2の押込み操作に関しては、押しボタン2の押込み操作後に押しボタン2をロックする際に、ロック部材50の先端部50aが操作軸3の係合孔3a’に挿入されて係合し操作軸3をロックする点を除いて、前記第2の実施例と同様である。また、操作軸3および押しボタン2のロック状態の解除に関しては、電磁ソレノイド5に通電してロック部材50をソレノイド本体51内に引き込む際に、ロック部材50の先端部50aが操作軸3の係合孔3a’から離脱するようにする点を除いて、前記第2の実施例と同様である。なお、押しボタン2が押込み操作前の状態に復帰した後は、前記第2の実施例と同様に、ロック部材50の先端部50aは、圧縮ばね53の弾性反発力により操作軸3の外側面に弾性的に当接している。
【0052】
この場合においても、前記第1および第2の実施例と同様に、押しボタン2を手動で押込み操作すると、圧縮ばね53により付勢されたロック部材50が操作軸3に接近して操作軸3をロックすることによって、操作軸3を介して押しボタン2がロックされ、押しボタン2が押込み操作後の状態から手動復帰できないようにロックされる。また、この圧縮ばね53による押しボタン2のロック状態は、押しボタン2の手動操作面2Aでない位置に設けられたソレノイド本体51によりロック部材50が操作軸3から離反することによって、解除される。このように、押しボタン2のロック解除時には押しボタン2に対して抜き差しされる鍵を必要とせず、しかも、押しボタン2の押込み後のロック状態は、押しボタン2への直接的な手動操作によって簡単に解除できない。これにより、押しボタン2のロック解除をだれもが行えるようになるのを回避でき、その結果、安全性および信頼性を向上できる。
【0053】
<第4の実施例>
図10および図11は、本発明の第4の実施例による非常停止スイッチを説明するための図である。図10は押しボタンの押込み操作前の状態を、図11は押しボタンの押込み操作後の状態およびロック手段によるロック状態をそれぞれ示している。各図中、前記第1ないし第3の実施例と同一符号は同一または相当部分を示している。
【0054】
前記第1ないし第3の実施例では、圧縮ばね53の弾性反発力を用いて操作軸3および押しボタン2をロックする、いわゆるスプリングロックタイプの非常停止スイッチを示したが、この第4の実施例では、電磁ソレノイド5に発生する電磁力を用いて操作軸3および押しボタン2をロックする、いわゆるソレノイドロックタイプの非常停止スイッチを示している。
【0055】
前記第1の実施例では、ロック部材50が軸状部50Aの先端にロック部50Bを有ししている例を示したが、この第4の実施例では、図10に示すように、ロック部材50にロック部50Bが設けられておらず、操作軸3には、ロック部材50の軸状部50Aの下面50Aが係合し得る突出部33が設けられている。突出部33は、上側の水平面33と、下側の水平面33とを有している。また、ケース55内において、ソレノイド本体51と圧縮ばね53の位置関係が前記第1ないし第3の実施例とは左右逆になっている。さらに、操作軸3の下端には、押しボタン2が押込み操作されたか否か(つまり押しボタン2の状態)を操作軸3の移動により検出するモニタ接点11が設けられている。モニタ接点11は、固定接点11と、操作軸3に連結されて操作軸3とともに移動することにより、固定接点11に対して開閉する可動接点11とを有しており、モニタ接点11からの信号に基づいて電磁ソレノイド5の駆動が制御されるようになっている。なお、メイン接点については図示を省略している。
【0056】
図10に示すように、押しボタン2が押込み操作されていない状態においては、圧縮ばね53の弾性反発力の作用により、ロック部材50がケース55内に引き込まれており、ロック部材50の軸状部50Aの先端部50aは、操作軸3の突出部33から離反した位置に配置されている。このとき、モニタ接点11は、可動接点11が固定接点11に接触しており、ON状態におかれている。
【0057】
この状態から、押しボタン2が押込み操作されると、図11に示すように、押しボタン2とともに操作軸3が下方に移動して(このときの操作軸3の一端側の突出部31および係合部材6の係合状態の変化は前記第1の実施例と同様)、操作軸3の他端側の突出部33が、ロック部材50の下方に移動する。このとき、メイン接点(図示せず)はONからOFFに切り替わる。また、モニタ接点11は、可動接点11が固定接点11から開離しており、OFF状態に移行する。
【0058】
モニタ接点11がON状態からOFF状態に移行すると、モニタ接点11の接点信号に基づいて、図11に示すように、電磁ソレノイド5が自動的に通電されてソレノイド本体51が励磁され、ロック部材50が圧縮ばね53の弾性反発力に抗してソレノイド本体51から押し出される。押し出されたロック部材50は、先端部50aが操作軸3の外側面に当接する。このとき、ロック部材50の軸状部50Aの下面50Aは、操作軸3の突出部33の上側の水平面33の若干上方に配置されている。
【0059】
この状態においては、作業者が押しボタン2を把持して上方に引っ張り上げようとしても、操作軸3の突出部33の水平面33がロック部材50の軸状部50Aの下面50Aと干渉するため、操作軸3を上方へ移動させることができず、操作軸3は上方にロックされており、このとき、押しボタン2は、押込み操作後の状態から手動復帰できないようにロックされたロック状態にある。すなわち、この場合には、押しボタン2の押込み操作後は、ロック部材50により押しボタン2が自動的にロックされるようになっている。ロック部材50の軸状部50Aの下面50A、操作軸3の突出部33の水平面33およびソレノイド本体51は、押しボタン2をロックするロック手段として機能している。ロック手段によるロックは操作軸3に対して作用しており、ロック手段は、操作軸3を介して押しボタン2を間接的にロックしている。
【0060】
次に、押しボタン2のロック状態を解除するには、電磁ソレノイド5への電流供給を停止する。電磁ソレノイド5に対して電流供給を停止するための信号は、外部からの信号を用いるようにすればよい。電磁ソレノイド5への電流供給の停止により、ロック部材50が圧縮ばね53の弾性反発力によりソレノイド本体51内に引き込まれて、ロック部材50の先端部50aが操作軸3の外側面から離反し、その結果、操作軸3および押しボタン2のロック状態が解除される。圧縮ばね53は、ロック手段による押しボタン2のロック状態を解除するロック解除手段として機能している。
【0061】
この状態から(すなわち、電磁ソレノイド5への電流供給の停止中に)、作業者が押しボタン2を把持して上方に引っ張り上げる復帰操作を手動で行うと、押しボタン2とともに操作軸3が上方に移動する。このときの操作軸3の一端側の突出部31と係合部材6の係合状態の変化については前記第1の実施例と同様である。操作軸3が上方に移動すると、接点ブロック10のメイン接点がOFFからONに切り替わり、モニタ接点11がOFF状態からON状態に戻る。
【0062】
この場合には、押しボタン2の押込み操作後、電磁ソレノイド5への通電によりソレノイド本体51から押し出されたロック部材50が操作軸3に接近して操作軸3をロックすることによって(図11参照)、操作軸3を介して押しボタン2がロックされ、押しボタン2が押込み操作後の状態から手動復帰できないようにロックされる。また、この電磁ソレノイド5による押しボタン2のロック状態は、押しボタン2の手動操作面2Aでない位置に設けられた圧縮ばね53の弾性反発力によりロック部材50が操作軸3から離反することによって、解除される(図10参照)。このように、押しボタン2のロック解除時には押しボタン2に対して抜き差しされる鍵を必要とせず、しかも、押しボタン2の押込み後のロック状態は、押しボタン2への直接的な手動操作によって簡単に解除できない。これにより、押しボタン2のロック解除をだれもが行えるようになるのを回避でき、その結果、安全性および信頼性を向上できる。
【0063】
また、この第4の実施例では、押しボタン2がロック解除された後、押しボタン2の手動による復帰操作が完了するまでの間、電磁ソレノイド5に対して電流を供給し続ける必要がないので、省エネに寄与できる。
【0064】
<第5の実施例>
図12ないし図14は、本発明の第5の実施例による非常停止スイッチを説明するための図である。図12は押しボタンの押込み操作前の状態を、図13はロック手段によるロック状態を、図14はロック解除手段によるロック解除後の状態をそれぞれ示している。各図中、前記第1ないし第4の実施例と同一符号は同一または相当部分を示している。
【0065】
前記第1ないし第3の実施例では、電磁ソレノイド5をロック解除手段として用い、前記第4の実施例では、電磁ソレノイド5をロック手段として用いた例を示したが、この第5の実施例では、電磁ソレノイド5として自己保持型ソレノイドを用いており、電磁ソレノイド5がロック手段およびロック解除手段の双方の機能を有している。自己保持型ソレノイドである電磁ソレノイド5は、ソレノイド本体51が、中央に配置された永久磁石51Aと、その左右に配置された一対のコイル51B、51Cとから構成されており、いずれか一方のコイルに通電してロック部材50を吸引または押出した後は、当該コイルへの電流供給を停止した後においても、そのときのロック部材50の位置が永久磁石51Aの磁力により保持されるように構成されている。これにより、永久磁石51Aの磁力でロック部材50が吸着保持されている間はコイル51B、51Cへの通電が不要となって、省エネを実現できる。また、この第5の実施例においては、ロック部材50の軸状部50Aの先端部50aの形状、および操作軸3の他端側の突出部33の形状については、前記第4の実施例と同様である。なお、メイン接点については図示を省略している。
【0066】
図12に示すように、押しボタン2が押込み操作されていない状態においては、ソレノイド本体51のコイル51Cが通電されることにより、ロック部材50がソレノイド本体51内に吸引される。ロック部材50の吸引後、ソレノイド本体51のコイル51Cへの電流供給が停止されるが、永久磁石51Aの磁力によりロック部材50の吸引状態は維持される。このとき、ロック部材50の軸状部50Aの先端部50aは、操作軸3の他端側の突出部33から離反した位置に配置されている。このとき、このとき、モニタ接点11は、可動接点11が固定接点11に接触しており、ON状態におかれている。
【0067】
この状態から、押しボタン2が押込み操作されると、図13に示すように、押しボタン2とともに操作軸3が下方に移動して(このときの操作軸3の一端側の突出部31および係合部材6の係合状態の変化は前記第1の実施例と同様)、操作軸3の他端側の突出部33が、ロック部材50の下方に移動する。このとき、メイン接点(図示せず)はONからOFFに切り替わる。また、モニタ接点11は、可動接点11が固定接点11から開離しており、OFF状態に移行する。
【0068】
モニタ接点11がON状態からOFF状態に移行すると、モニタ接点11の接点信号に基づいて、図13に示すように、ソレノイド本体51のコイル51Bが自動的に通電されることにより、ロック部材50がソレノイド本体51から押し出される。ロック部材50の押出し後、ソレノイド本体51のコイル51Bへの電流供給が停止されるが、永久磁石51Aの磁力によりロック部材50の押出し状態は維持される。このとき、ロック部材50の軸状部50Aの先端部50aは、操作軸3の外側面に当接している。
【0069】
この状態においては、作業者が押しボタン2を把持して上方に引っ張り上げようとしても、操作軸3の突出部33の水平面33がロック部材50の軸状部50Aの下面50Aと干渉するため、操作軸3を上方へ移動させることができず、操作軸3は上方にロックされており、このとき、押しボタン2は、押込み操作後の状態から手動復帰できないようにロックされたロック状態にある。すなわち、この場合には、押しボタン2の押込み操作後は、ロック部材50により押しボタン2が自動的にロックされるようになっている。ロック部材50の軸状部50Aの下面50A、操作軸3の突出部33の水平面33およびコイル51B(ならびに永久磁石51A)は、押しボタン2をロックするロック手段として機能している。ロック手段によるロックは操作軸3に対して作用しており、ロック手段は、操作軸3を介して押しボタン2を間接的にロックしている。
【0070】
次に、押しボタン2のロック状態を解除するには、ソレノイド本体51のコイル51Cへの電流供給を開始する。コイル51Cに対して電流供給を開始するためのロック解除信号は、外部からの信号を用いるようにすればよい。コイル51Cへの電流供給により、ロック部材50がソレノイド本体51の内部に吸引されて、ロック部材50の軸状部50Aの先端部50aが操作軸3の外側面から離反し、その結果、押しボタン2のロック状態が解除される(図14参照)。なお、ロック部材50の吸引後、ソレノイド本体51のコイル51Cへの電流供給が停止されるが、永久磁石51Aの磁力によりロック部材50の吸引状態は維持される。コイル51C(ならびに永久磁石51A)は、ロック手段による押しボタン2のロック状態を解除するロック解除手段として機能している。
【0071】
この状態から(すなわち、電磁ソレノイド5への電流供給の停止中に)、作業者が押しボタン2を把持して上方に引っ張り上げる復帰操作を手動で行うと、押しボタン2とともに操作軸3が上方に移動する。このときの操作軸3の一端側の突出部31と係合部材6の係合状態の変化については前記第1の実施例と同様である。操作軸3が上方に移動すると、接点ブロック10のメイン接点がOFFからONに切り替わり、モニタ接点11がOFF状態からON状態に戻る。
【0072】
この場合には、押しボタン2の押込み操作後、ロック手段としてのソレノイド本体51のコイル51Bへの通電によりソレノイド本体51から押し出されたロック部材50が操作軸3に接近して操作軸3をロックすることによって(図12図13参照)、操作軸3を介して押しボタン2がロックされ、押しボタン2が押込み操作後の状態から手動復帰できないようにロックされる。また、このロック状態は、押しボタン2の手動操作面2Aでない位置に設けられたロック解除手段としてのソレノイド本体51のコイル51Cへの通電により、ソレノイド本体51内に吸引されたロック部材50が操作軸3から離反することによって、解除される(図13図14参照)。このように、押しボタン2のロック解除時には押しボタン2に対して抜き差しされる鍵を必要とせず、しかも、押しボタン2の押込み後のロック状態は、押しボタン2への直接的な手動操作によって簡単に解除できない。これにより、押しボタン2のロック解除をだれもが行えるようになるのを回避でき、その結果、安全性および信頼性を向上できる。
【0073】
また、この第5の実施例では、押しボタン2がロック解除された後、押しボタン2の手動による復帰操作が完了するまでの間、電磁ソレノイド5に対して電流を供給し続ける必要がないので、省エネに寄与できる。
【0074】
<第6の実施例>
図15および図16は、本発明の第6の実施例による非常停止スイッチを説明するための図である。図15は押しボタンの押込み操作前の状態を、図16は押しボタンの押込み操作後の状態およびロック手段によるロック状態をそれぞれ示している。各図中、前記第1ないし第5の実施例と同一符号は同一または相当部分を示している。
【0075】
この第6の実施例においては、モニタ接点11が電磁ソレノイド5のロック部材50に設けられている点が前記第1ないし第5の実施例と異なっている。また、第6の実施例では、前記第1の実施例と異なり、操作軸3の外径が突出部30の上下で異なっており、操作軸3の外径は、突出部30から下側部分が上側部分より2dだけ大きくなっている(すなわち、両者の半径の差はdになっている)。なお、第6の実施例において、電磁ソレノイド5のその他の構成、ロック部材50のロック部50Bの形状および操作軸3の他端側の突出部30の形状については、前記第1の実施例と略同様である。
【0076】
図15に示す状態では、ロック部材50のロック部50Bの傾斜面50bが操作軸3の突出部30の傾斜面30と係合するとともに、ロック部50Bの先端が操作軸3の突出部30の下側部分と当接している。このとき、モニタ接点11は、可動接点11が固定接点11から実質的に距離dだけ離れて開離しており、OFF状態におかれている。
【0077】
この状態から押しボタン2を押込み操作すると、押しボタン2とともに操作軸3が下方に移動するにつれて、操作軸3の一端側の突出部31が係合部材6を乗り越えるとともに、操作軸3の他端側の突出部30がロック部材50のロック部50Bを乗り越える。そして、押しボタン2の押込み操作後においては、圧縮ばね53の弾性反発力によりロック部材50が操作軸3に向かって突出し、その結果、図16に示すように、操作軸3の他端側の突出部30の上側の水平面30がロック部材50のロック部50Bの下側の水平面50bと係合するとともに、ロック部50Bの先端が操作軸3の突出部30の上側部分と当接する。このとき、ロック部材50のロック部50Bは、操作軸3に向かって距離dだけ図示左方に移動しており、モニタ接点11は、距離dだけ図示左方に移動した可動接点11が固定接点11と接触して、ON状態に移行する。また、接点ブロック10のメイン接点は、ONからOFFに切り替わる。
【0078】
この状態においては、作業者が押しボタン2を把持して上方に引っ張り上げようとしても、操作軸3の突出部30の水平面30がロック部材50のロック部50Bの水平面50bと係合しているため、操作軸3を上方へ移動させることができず、操作軸3は上方にロックされており、このとき、押しボタン2は、押込み操作後の状態から手動復帰できないようにロックされたロック状態にある。したがって、ロック部材50のロック部50Bの水平面50b、操作軸3の突出部30の水平面30および圧縮ばね53は、押しボタン2をロックするロック手段として機能している。ロック手段によるロックは操作軸3に対して作用しており、ロック手段は、操作軸3を介して押しボタン2を間接的にロックしている。
【0079】
この場合には、ロック部材50のロック部50Bが操作軸3の突出部30の下側部分から上側部分に移動して所定の距離dだけ操作軸3に向かって接近しなければ、モニタ接点11がON状態にならないように構成されているので、操作軸3がロック部50Bによって適切にロックされているか否かをモニタ接点11により確実に検出できるようになる。なお、押しボタン2を押込み操作してもモニタ接点11がON状態に移行しない場合には、モニタランプ(図示せず)を点灯させたり、押しボタン2を照光させたりすることにより、作業者に知らせるようにしてもよく、また警報信号を出力するようにしてもよい。
【0080】
次に、押しボタン2のロック状態を解除するには、外部からの信号に基づいて、電磁ソレノイド5に通電してソレノイド本体51を励磁させることにより、ロック部材50が圧縮ばね53の弾性反発力に抗してソレノイド本体51内に引き込まれ、その結果、ロック部材50のロック部50Bが操作軸3の突出部30から離反して、操作軸3および押しボタン2のロック状態が解除される。このとき、モニタ接点11は、ON状態からOFF状態に移行する。ソレノイド本体51は、ロック手段による押しボタン2のロック状態を解除するロック解除手段として機能している。
【0081】
この状態から(すなわち、電磁ソレノイド5への通電中に)、作業者が押しボタン2を把持して上方に引っ張り上げる復帰操作を手動で行うと、押しボタン2とともに操作軸3が上方に移動する。次に、電磁ソレノイド5への電流供給を停止する。電磁ソレノイド5に対して電流供給を停止するための信号は、外部からの信号を用いるようにすればよい。電磁ソレノイド5への電流供給の停止により、ロック部材50が圧縮ばね53の弾性反発力の作用により操作軸3の側に伸長し、ロック部材50のロック部50Bの上側の傾斜面50bが操作軸3の突出部30の下側の傾斜面30に弾性的に当接して、非常停止スイッチ1が押込み操作前の状態に復帰する(図15参照)。このとき、モニタ接点11はOFF状態のままである。
【0082】
この場合においても、前記第1の実施例と同様に、押しボタン2を手動で押込み操作すると(図15図16参照)、圧縮ばね53により付勢されたロック部材50が操作軸3に接近して操作軸3をロックすることによって、操作軸3を介して押しボタン2がロックされ、押しボタン2が押込み操作後の状態から手動復帰できないようにロックされる。また、この圧縮ばね53による押しボタン2のロック状態は、押しボタン2の手動操作面2Aでない位置に設けられたソレノイド本体51によりロック部材50が操作軸3から離反することによって、解除される。このように、押しボタン2のロック解除時には押しボタン2に対して抜き差しされる鍵を必要とせず、しかも、押しボタン2の押込み後のロック状態は、押しボタン2への直接的な手動操作によって簡単に解除できない。これにより、押しボタン2のロック解除をだれもが行えるようになるのを回避でき、その結果、安全性および信頼性を向上できる。さらに、この場合には、モニタ接点11が電磁ソレノイド5のロック部材50に設けられていることにより、操作軸3が適切にロックされたかどうかをモニタ接点11により確実に検出できるようになる。
【0083】
<第7の実施例>
前記第1ないし第6の実施例では、ロック手段またはロック解除手段が電磁ソレノイド5のソレノイド本体51から構成されており、電磁ソレノイド5に電流が供給されることにより、ロック手段またはロック解除手段としてのソレノイド本体51が励磁されて、押しボタン2がロックまたはロック解除されるようにした例を示したが、本発明の適用はこれに限定されない。この第7の実施例および後述する第8ないし第10の実施例では、電磁ソレノイドの代替手段を用いた例が示されており、各実施例中、前記第1ないし第6の実施例と同一符号は同一または相当部分を示している。また、第7ないし第10の実施例中、同一符号は同一または相当部分を示している。
【0084】
図17に示すように、この第7の実施例では、前記第1の実施例の電磁ソレノイド5の代わりに電動シリンダを採用している。すなわち、ボールねじ101を出力軸に有するサーボモータ100を用いている。ボールねじ101の先端には筒状のスライダ102の一端102Aを取り付けており、スライダ102は、ボールねじ101のねじ部が螺合するねじ孔をその一端102Aに有している。また、スライダ102の他端102Bには、ロック部材50の軸状部50Aの端部が挿通する小径の貫通孔102aが形成されている。ロック部材50の軸状部50Aの端部には、大径部50Cが設けられており、大径部50Cはスライダ102の内部空間に配置されている。当該内部空間には、圧縮ばね103が配設されており、圧縮ばね103の一端は大径部50Cに圧接し、他端はボールねじ101の先端に圧接している。
【0085】
押しボタン2の押込み操作の際には、圧縮ばね103の弾性反発力の作用下でロック部材50のロック部50Bが操作軸3に弾性的に当接した状態(図17参照)から操作軸3が下方に移動して、操作軸3および押しボタン2がロック状態に移行する。また、このロック状態を解除する際には、サーボモータ100を駆動してボールねじ101を回転させることにより、スライダ102を図示右方に移動させる。これにより、スライダ102とともにロック部材50が同方向に移動し、その結果、ロック部材50のロック部50Bが操作軸3の突出部30から離反して、操作軸3および押しボタン2のロック状態が解除される。
【0086】
<第8の実施例>
前記第7の実施例では、ボールねじ101を出力軸に有するサーボモータ100からなる電動シリンダを採用したが、この第8の実施例では、ボールねじがサーボモータの出力軸とは別体に設けられている。図18に示すように、サーボモータ100の出力軸100aには、タイミングギヤ104が取り付けられており、各ボールねじ101、101の後側端(図示右側端)には、タイミングギヤ105、105がそれぞれ取り付けられている。各タイミングギヤ104、105、105にはタイミングベルト106が巻き掛けられている。各ボールねじ101、101の前側端(図示左側端)には、スライダ107、107がそれぞれ取り付けられている。スライダ107、107には、対応する各ボールねじ101、101が螺合するねじ孔がそれぞれ形成されている。また、各スライダ107、107は間隔を隔てて対向配置されており、ロック部材50の軸状部50Aは当該間隔内を挿通している。ロック部材50の先端の大径部50Cは、各スライダ107、107に当接している。ロック部材50の大径部50Cとタイミングギヤ104との間には、圧縮ばね103が配設されており、圧縮ばね103の一端は大径部50Cに圧接し、他端はタイミングギヤ104に圧接している。この構成により、サーボモータ100の駆動によってタイミングベルト106が回転すると、各ボールねじ101、101が正逆転して、スライダ107、107が各ボールねじ101、101の軸方向に沿って前後方向(図左右方向)に移動するようになっている。
【0087】
押しボタン2の押込み操作の際には、圧縮ばね103の弾性反発力の作用下でロック部材50のロック部50Bが操作軸3に弾性的に当接した状態(図18参照)から操作軸3が下方に移動して、操作軸3および押しボタン2がロック状態に移行する。また、このロック状態を解除する際には、サーボモータ100を駆動して各ボールねじ101、101を回転させることにより、各スライダ07、107を図示右方に移動させる。これにより、各スライダ07、107とともにロック部材50が同方向に移動し、その結果、ロック部材50のロック部50Bが操作軸3の突出部30から離反して、操作軸3および押しボタン2のロック状態が解除される。
【0088】
<第9の実施例>
前記第7の実施例では、スライダ102を移動させるのに電動シリンダを用いたが、この第9の実施例では、ラック・アンド・ピニオンを採用している。図19に示すように、サーボモータ110の出力軸にはピニオン111が取り付けられており、ピニオン111は、前後方向(図示左右方向)に配設されたラック112と噛み合っている。ラック112の前端(図示左側端)には、筒状のスライダ102が設けられている。ロック部材50の先端の大径部50Cはスライダ102の内部空間に挿入されて他端102Bと当接している。この構成により、サーボモータ110の駆動によりピニオン111が正逆転すると、ラック112を介してスライダ102が前後方向(図左右方向)に移動するようになっている。
【0089】
押しボタン2の押込み操作の際には、圧縮ばね103の弾性反発力の作用下でロック部材50のロック部50Bが操作軸3に弾性的に当接した状態(図19参照)から操作軸3が下方に移動して、操作軸3および押しボタン2がロック状態に移行する。また、このロック状態を解除する際には、サーボモータ110を駆動してピニオン111を回転させることにより、ピニオン111と噛み合うラック112を図示右方に移動させる。これにより、スライダ102とともにロック部材50が同方向に移動し、その結果、ロック部材50のロック部50Bが操作軸3の突出部30から離反して、操作軸3および押しボタン2のロック状態が解除される。
【0090】
<第10の実施例>
図20は、本発明の第10の実施例による非常停止スイッチを示している。この第10の実施例では、スライダ115を移動させるのに、圧縮ばねおよびストッパからなる機構を採用している。図20に示すように、スライダ115の一端115Aには、ストッパ116が当接している。ストッパ116は、スライダ115の一端115Aに当接してスライダ115をロックするロック位置と、スライダ115の一端115Aから図示上方に退避してスライダ115のロック状態を解除するロック解除位置(図示せず)とをとり得るように図示上下方向に移動可能に設けられている。スライダ115の一端115Aにおいてストッパ116の近傍の角部には、傾斜面115cが形成されており、ストッパ116の先端には、スライダ115の傾斜面115cに対応する傾斜面116aが形成されている。また、ストッパ116を駆動するためのアクチュエータ117が設けられている。アクチュエータ117は、たとえば、モータにラック・アンド・ピニオンを組み合わせたり、シリンダにリンク機構を組み合わせたり、ソレノイド等を用いたりすることにより構成されている。
【0091】
スライダ115の他端115Bには、前後方向(図左右方向)に配設された複数の圧縮ばね118の一端が圧接している。各圧縮ばね118の他端は、ケース55の内壁面に圧接している。これにより、ロック位置に配置されたスライダ115には、各圧縮ばね118の弾性反発力が作用している。スライダ115の他端115Bは、中央にボス部115Cを有している。ボス部115Cには、ロック部材50の軸状部50Aが挿通する小径の貫通孔115aが形成されており、軸状部50Aの先端の大径部50Cは、スライダ115の内部空間に挿入されてボス部115Cと当接している。
【0092】
押しボタン2の押込み操作の際には、圧縮ばね103の弾性反発力の作用下でロック部材50のロック部50Bが操作軸3に弾性的に当接した状態(図20参照)から操作軸3が下方に移動して、操作軸3および押しボタン2がロック状態に移行する。また、このロック状態を解除する際には、アクチュエータ117を駆動してストッパ116を図示上方に移動させると、ストッパ116によるロック状態が解除される。すると、各圧縮ばね118の弾性反発力により、スライダ115が図示右方に移動する。これにより、スライダ115とともにロック部材50が同方向に移動し、その結果、ロック部材50のロック部50Bが操作軸3の突出部30から離反して、操作軸3および押しボタン2のロック状態が解除される。
【0093】
<第11の実施例>
前記第1の実施例では、操作軸3の一端側に複数の突出部31を一体に設け、各突出部31を傾斜面31、31からテーパ状に形成するとともに(図1ないし図5参照)、押しボタン2の押込み操作前においては各係合部材6の傾斜面6が各突出部31の傾斜面31と係合し(図1参照)、押しボタン2の押込み操作後においては各係合部材6の傾斜面6が各突出部31の傾斜面31と係合するようにした例を示したが(図3参照)、本発明の適用はこれに限定されない。
【0094】
図21ないし図24は、本発明の第11の実施例による操作スイッチを説明するための図である。図21は押しボタンの押込み操作前の状態を、図22は押しボタンの押込み操作後の状態およびロック手段によるロック状態を、図23はロック解除手段によるロック解除後の状態を、図24は手動復帰後の状態をそれぞれ示している。各図中、前記第1の実施例と同一符号は同一または相当部分を示している。
【0095】
これらの図に示すように、操作軸3の一端側には、傾斜面31’、31’からテーパ状に形成された複数の凹部(または周方向に延びるテーパ状の環状溝/周溝)31’が形成されている。各凹部31’は、対応する各係合部材6の先端部分が係合し得る形状および大きさを有している。なお、凹部31’の形状としては半球状でもよく、その場合、係合部材6の先端部分は凹部31’に対応する半球状に形成される。各凹部31’は、図21に示す押しボタン2の押込み操作前においては、各係合部材6の上方に配置されており、各係合部材6の先端は、各凹部31’の下方において操作軸3の外側面に当接している。また、このとき、ロック部材50のロック部50Bの傾斜面50bは、前記第1の実施例と同様に、圧縮ばね53の弾性反発力の作用により操作軸3の突出部30の傾斜面30に圧接して係合している。この場合、各傾斜面50b、30および圧縮ばね53は押しボタン2を押込み操作前の状態に保持する第1の保持手段として機能している。
【0096】
図21に示す状態から押しボタン2を押込み操作すると、押しボタン2とともに操作軸3が下方に移動する。このとき、操作軸3の他端側では、突出部30が圧縮ばね53の弾性反発力に抗してロック部材50をケース55内に縮退させつつ、突出部30がロック部材50のロック部50Bの傾斜面50bを乗り越えて下方に移動すると、圧縮ばね53の弾性反発力の作用によりロック部材50が操作軸3に向かって伸長し、その結果、図22に示すように、操作軸3の他端側の突出部30の上側の水平面30がロック部材50のロック部50Bの下側の水平面50bと係合する。このとき、接点ブロック10のメイン接点は、ONからOFFに切り替わる。
【0097】
この状態においては、前記第1の実施例と同様に、作業者が押しボタン2を把持して上方に引っ張り上げようとしても、操作軸3の突出部30の水平面30がロック部材50のロック部50Bの水平面50bと係合しているため、操作軸3を上方へ移動させることができず、操作軸3は上方にロックされており、このとき、押しボタン2は、押込み操作後の状態から手動復帰できないようにロックされたロック状態にある。したがって、ロック部材50のロック部50Bの水平面50b、操作軸3の突出部30の水平面30および圧縮ばね53は、押しボタン2をロックするロック手段として機能している。
【0098】
また、このとき、操作軸3の一端側においては、各凹部31’がそれぞれ対応する各係合部材6と対向しており、これにより、各係合部材6が圧縮ばね7の弾性反発力の作用により各凹部31’の側に突出して、各係合部材6のテーパ状の先端部分がテーパ状の各凹部31’と係合する。このとき、各凹部31’の下側の傾斜面31’が各係合部材6の下側の傾斜面6と係合するとともに、各凹部31’の上側の傾斜面31’が各係合部材6の上側の傾斜面6と係合している。
【0099】
次に、押しボタン2のロック状態を解除するには、図23に示すように、電磁ソレノイド5に通電してソレノイド本体51を励磁させることにより、ロック部材50が圧縮ばね53の弾性反発力に抗してソレノイド本体51内に引き込まれ、その結果、ロック部材50のロック部50Bが操作軸3の突出部30から離反して、押しボタン2のロック状態が解除される。ソレノイド本体51は、ロック手段による押しボタン2のロック状態を解除するロック解除手段として機能している。
【0100】
また、図23に示す状態は、押しボタン2が手動で復帰操作される前の状態であって、押しボタン2が復帰操作可能な状態にあり、このとき、圧縮ばね7の弾性反発力により、各係合部材6の下側の傾斜面6が操作軸3の各凹部31’の下側の傾斜面31’に圧接して係合した状態にあり、各傾斜面6、31’および圧縮ばね7は、押しボタン2を復帰操作前の状態に保持する第2の保持手段として機能している。
【0101】
この状態から(すなわち、電磁ソレノイド5への通電中に)、作業者が押しボタン2を把持して上方に引っ張り上げる復帰操作を手動で行うと、押しボタン2とともに操作軸3が上方に移動する。このとき、操作軸3の一端側の各凹部31’はそれぞれ対応する各係合部材6を圧縮ばね7の弾性反発力に抗して徐々に縮退させつつ、各凹部31’が各係合部材6を乗り越えると、各係合部材6が圧縮ばね7の弾性反発力の作用により操作軸3の側に突出して、各係合部材6の先端が操作軸3の外側面と当接する。
【0102】
次に、電磁ソレノイド5への電流供給を停止する。電磁ソレノイド5に対して電流供給を停止するための信号は、モニタ接点からの信号やその他の外部からの信号を用いるようにすればよい。電磁ソレノイド5への電流供給の停止により、ロック部材50が圧縮ばね53の弾性反発力の作用により操作軸3の側に伸長し、ロック部材50のロック部50Bの上側の傾斜面50bが操作軸3の突出部30の下側の傾斜面30に弾性的に当接して、非常停止スイッチ1が押込み操作前の状態に復帰する(図24参照)。
【0103】
この場合においても、前記第1の実施例と同様に、押しボタン2を手動で押込み操作すると(図21図22参照)、圧縮ばね53により付勢されたロック部材50が操作軸3に接近して操作軸3をロックすることによって、操作軸3を介して押しボタン2がロックされ、押しボタン2が押込み操作後の状態から手動復帰できないようにロックされる。また、この圧縮ばね53による押しボタン2のロック状態は、押しボタン2の手動操作面2Aでない位置に設けられたソレノイド本体51によりロック部材50が操作軸3から離反することによって、解除される。このように、押しボタン2のロック解除時には押しボタン2に対して抜き差しされる鍵を必要とせず、しかも、押しボタン2の押込み後のロック状態は、押しボタン2への直接的な手動操作によって簡単に解除できない。これにより、押しボタン2のロック解除をだれもが行えるようになるのを回避でき、その結果、安全性および信頼性を向上できる。
【0104】
<第12の実施例>
図25ないし図28は、本発明の第12の実施例による操作スイッチを説明するための図である。図25は押しボタンの押込み操作前の状態を、図26は押しボタンの押込み操作後の状態およびロック手段によるロック状態を、図27はロック解除手段によるロック解除後の状態を、図28は手動復帰後の状態をそれぞれ示している。各図中、前記第1の実施例と同一符号は同一または相当部分を示している。
【0105】
前記第1の実施例では、操作軸3および押しボタン2を常時下方(すなわち、接点ブロック10のメイン接点がONからOFFに切り替わる方向)に付勢する圧縮ばね8を設けた例を示したが、この第12の実施例では、圧縮ばね8の代わりに圧縮ばね8’が設けられている。圧縮ばね8’は、操作軸3の他端側の端部寄りの位置に設けられている。圧縮ばね8’の一端は、操作軸3の他端側の端部寄りの位置において半径方向外方に張り出す張出し部32に下方から当接しており、他端は筐体4の他端側の内壁面に当接している。圧縮ばね8’は、図25に示す押しボタン2の押込み操作前の状態において、撓みのない状態(つまり自由長の状態)におかれている。
【0106】
図25に示す押しボタン操作前の状態においては、前記第1の実施例と同様に、圧縮ばね7の弾性反発力の作用により操作軸3の側に付勢された各係合部材6の上側の傾斜面6が操作軸3の突出部31の下側の傾斜面31に当接しており、各傾斜面6、31および圧縮ばね7が押しボタン2を押込み操作前の状態に保持する第1の保持手段として機能している。また、このとき、圧縮ばね53の弾性反発力の作用によりロック部材50が操作軸3の側に付勢されて操作軸3に接近しており、ロック部材50のロック部50Bの傾斜面50bが操作軸3の突出部30の傾斜面30に当接している。この場合、各傾斜面50b、30および圧縮ばね53は押しボタン2を押込み操作前の状態に保持する第1の保持手段としても機能している。
【0107】
この状態から、押しボタン2の手動操作面2Aに作業者が押付力を作用させて押しボタン2を押し込むと、押しボタン2とともに操作軸3が下方に移動する。すると、操作軸3の一端側において、各突出部31の傾斜面31がそれぞれ対応する各係合部材6の傾斜面6を押圧し、各圧縮ばね7の弾性反発力に抗して各係合部材6を徐々に凹部4c内に縮退させるとともに、操作軸3の他端側において、突出部30の傾斜面30がロック部材50のロック部50Bの傾斜面50bを押圧し、圧縮ばね53の弾性反発力に抗してロック部材50を徐々にケース55内に縮退させる。
【0108】
次に、図26に示すように、操作軸3の他端側において、突出部30の下側の傾斜面30がロック部50Bの上側の傾斜面50bを乗り越えると、ケース55内に縮退していたロック部材50が圧縮ばね53の弾性反発力の作用により伸長して、ロック部50Bの下側の水平面50bが操作軸3の突出部30の上側の水平面30と係合する。このとき、押しボタン2は押込み操作後の状態にあって、接点ブロック10のメイン接点はONからOFFに切り替わる。このとき、操作軸3の一端側においては、各突出部31の下側の傾斜面31が対応する各係合部材6の上側の傾斜面6を乗り越えてさらに若干量下方に移動しており、各突出部31の上側の傾斜面31と各係合部材6の下側の傾斜面6との間には、クリアランスeが形成されている(図26参照)。また、このとき、凹部4c内に縮退していた各係合部材6が圧縮ばね7の弾性反発力により伸長しており、各係合部材6の先端が操作軸3の外側面に当接している。さらに、このとき、圧縮ばね8’は圧縮変形しており、操作軸3の張出し部32に対して上向きの弾性反発力を作用させている。
【0109】
図26に示す状態では、前記第1の実施例と同様に、作業者が押しボタン2を把持して上方に引っ張り上げようとしても、操作軸3の突出部30の水平面30がロック部50Bの水平面50bと係合しているため、操作軸3を上方へ移動させることができず、操作軸3は上方にロックされており、このとき、押しボタン2は、押込み操作後の状態から手動復帰できないようにロックされたロック状態にある。したがって、ロック部材50のロック部50Bの水平面50b、操作軸3の突出部30の水平面30および圧縮ばね53は、押しボタン2をロックするロック手段として機能している。
【0110】
次に、押しボタン2のロック状態を解除するには、図27に示すように、電磁ソレノイド5に電流を供給(つまり通電)する。電磁ソレノイド5に対して電流を供給するためのロック解除信号は、外部からの信号を用いるようにすればよい。電磁ソレノイド5が通電されると、ソレノイド本体51が励磁されることにより、ロック部材50が圧縮ばね53の弾性反発力に抗してソレノイド本体51内に引き込まれて操作軸3から離反し、その結果、ロック部材50のロック部50Bの水平面50bと操作軸3の突出部30の水平面30との係合状態が解除され、これにより、押しボタン2のロック状態が解除される(図27参照)。ソレノイド本体51は、ロック手段による押しボタン2のロック状態を解除するロック解除手段として機能している。このとき、操作軸3は、圧縮ばね8’の弾性反発力の作用を受けて、突出部31の上側の傾斜面31が係合部材6の下側の傾斜面6に圧接するまで上方に若干量移動する(図27参照)。
【0111】
図27に示す状態は、押しボタン2が手動で復帰操作される前の状態であって、押しボタン2が復帰操作可能な状態にあり、このとき、圧縮ばね7の弾性反発力の作用により、各係合部材6の下側の傾斜面6が操作軸3の各突出部31の上側の傾斜面31に圧接して係合した状態にあり、各傾斜面6、31および圧縮ばね7は、押しボタン2を復帰操作前の状態に保持する第2の保持手段として機能している。
【0112】
また、操作軸3が上方に若干量移動したことにより、操作軸3の突出部30の先端面30がロック部材50のロック部50Bの先端面50bに対向配置される(図27参照)。この状態から電磁ソレノイド5への電流供給が停止してロック部材50が圧縮ばね53の弾性反発力の作用で操作軸3側に移動しようとしても、ロック部材50のロック部50Bの先端面50bが操作軸3の突出部30の先端面30と干渉してロック部材50が操作軸3側に移動することができないので、操作軸3がロック状態に戻ることはない。したがって、この場合には、押しボタン2がロック解除された後、押しボタン2の手動による復帰操作が完了するまでの間、電磁ソレノイド5に電流を供給し続ける必要はなく、電磁ソレノイド5の駆動信号はワンパルスでよいので、省エネに寄与できる。ワンパルスの駆動信号を受けると、電磁ソレノイド5はロック部材50がケース55内に一旦縮退するが、その後すぐに圧縮ばね53の弾性反発力の作用によりロック部材50が操作軸3の側に伸長して、ロック部材50の先端面50bが操作軸3の突出部30の先端面30に当接することになる。
【0113】
図27に示す状態から、作業者が押しボタン2を把持して上方に引っ張り上げる復帰操作を手動で行うと、押しボタン2とともに操作軸3が上方に移動する。すると、操作軸3の一端側において各突出部31の上側の傾斜面31がこれと係合する各係合部材6の下側の傾斜面6を押圧し、圧縮ばね7の弾性反発力に抗して各係合部材6を徐々に凹部4b内に縮退させつつ、各突出部31の上側の傾斜面31が各係合部材6の下側の傾斜面6を乗り越えると、図28に示すように、凹部4b内に縮退していた各係合部材6が圧縮ばね7の弾性反発力の作用により伸長して、各係合部材6の上側の傾斜面6が各突出部31の下側の傾斜面31と係合する。
【0114】
また、このとき、操作軸3の他端側では、突出部30がロック部材50のロック部50Bを乗り越えており、圧縮ばね53の弾性反発力の作用によりロック部材50が伸長して、ロック部50Bの上側の傾斜面50bが操作軸3の突出部30の下側の傾斜面30と係合する。このようにして、押しボタン2が押込み操作後の状態から手動復帰するとともに、接点ブロック10のメイン接点がOFFからONに切り替わる。
【0115】
この場合には、前記第1の実施例と同様に、押しボタン2を手動で押込み操作すると(図25図26参照)、圧縮ばね53により付勢されたロック部材50が操作軸3に接近して操作軸3をロックすることによって、操作軸3を介して押しボタン2がロックされ、これにより、押しボタン2が押込み操作後の状態から手動復帰できないようにロックされる。また、この圧縮ばね53による押しボタン2のロック状態は、押しボタン2の手動操作面2Aでない位置に設けられたソレノイド本体51によりロック部材50が操作軸3から離反することによって、解除される(図27図28参照)。このように、押しボタン2のロック解除時には押しボタン2に対して抜き差しされる鍵を必要とせず、しかも、押しボタン2の押込み後のロック状態は、押しボタン2への直接的な手動操作によって簡単に解除できない。これにより、押しボタン2のロック解除をだれもが行えるようになるのを回避でき、その結果、安全性および信頼性を向上できる。
【0116】
<第13の実施例>
図29および図30は、本発明の第13の実施例による非常停止スイッチを示しており、同図中、前記第1ないし第12の実施例と同一符号は同一または相当部分を示している。前記第1ないし第12の実施例では、操作軸3の他端側に押しボタン2のロック手段を設け、操作軸3を介して押しボタン2を間接的にロックした例を示したが、この第13の実施例では、ロック手段が押しボタン2のボス部20側に設けられており、押しボタン2を直接ロックする例が示されている。
【0117】
図29および図30に示すように、押しボタン2のボス部20の外周面には、係合凹部20aが形成されている。一方、筐体4の上部に形成された貫通孔4eには、ロックピン120が挿通しており、ロックピン120は、図示しないアクチュエータ(たとえばシリンダや電磁ソレノイド等)により図示左右方向に移動可能(つまり往復動可能)になっており、先端部が筐体4の開口部4a内に突出するロック位置(図30)と、開口部4aから後退するアンロック位置(図29)とをとり得るようになっている。
【0118】
押しボタン2の押込み操作の際には、図29に示す状態から、操作軸3の各突出部31が各係合部材6を乗り越えて移動することにより、操作軸3が下方に移動する(図30参照)。すると、押しボタン2のボス部20の係合凹部20aが、筐体4の上部のロックピン120と対向配置される。この状態から、図示しないモニタ接点からの信号やその他の外部からの信号に基づいて、アクチュエータ(図示せず)を駆動し、ロックピン120を図示左方に向かってロック位置に移動させることにより、ロックピン120の先端部がボス部20の係合凹部20a内に係合して、押しボタン2がロックされる(図30参照)。
【0119】
この状態においては、作業者が押しボタン2を把持して上方に引っ張り上げようとしても、押しボタン2は、押込み操作後の状態から手動復帰できないようにロックされたロック状態にある。すなわち、この場合には、押しボタン2の押込み操作後は、ロックピン120により押しボタン2が自動的にロックされるようになっている。ロックピン120の先端部、ボス部20の係合凹部20aおよびアクチュエータは、押しボタン2をロックするロック手段として機能している。
【0120】
次に、押しボタン2のロック状態を解除するには、モニタ接点からの信号やその他の外部からの信号に基づいて、アクチュエータの駆動により、ロックピン120を図示右方に向かってアンロック位置に後退させることにより、ロックピン120の先端部をボス部20の係合凹部20aから離脱させるようにすればよい。アクチュエータは、ロック手段による押しボタン2のロック状態を解除するロック解除手段として機能している。
【0121】
この状態から(すなわち、アクチュエータの駆動中に)、作業者が押しボタン2を把持して上方に引っ張り上げる復帰操作を手動で行うと、押しボタン2とともに操作軸3が上方に移動する。このときの操作軸3の一端側の各突出部31と各係合部材6の係合状態の変化については前記第1の実施例と同様である。操作軸3が上方に移動すると、接点ブロック10のメイン接点がOFFからONに切り替わる。
【0122】
この場合には、押しボタン2の押込み操作後、アクチュエータの駆動によりロックピン120を用いて押しボタン2をロックすることによって(図30参照)、押しボタン2が押込み操作後の状態から手動復帰できないようにロックされる。また、このロックピン120による押しボタン2のロック状態は、押しボタン2の手動操作面2Aでない位置に設けられたアクチュエータによりロックピン120が押しボタン2から離反することによって、解除される(図29参照)。このように、押しボタン2のロック解除時には押しボタン2に対して抜き差しされる鍵を必要とせず、しかも、押しボタン2の押込み後のロック状態は、押しボタン2への直接的な手動操作によって簡単に解除できない。これにより、押しボタン2のロック解除をだれもが行えるようになるのを回避でき、その結果、安全性および信頼性を向上できる。
【0123】
なお、上述した例では、ロックピン120のロック位置およびアンロック位置間の移動をいずれもアクチュエータにより行うようにしたが、アクチュエータによるロックピン120の移動はロックピン120をロック位置に移動させる場合にのみ行うようにし、ロックピン120をアンロック位置に保持するのは、アクチュエータでなく、たとえば圧縮ばねを用いるようにしてもよい。この場合には、押しボタン2の手動による復帰操作の最中には、前記第4の実施例と同様に、アクチュエータに対して電流を供給し続ける必要がないので、省エネに寄与できる。
【0124】
<第14の実施例>
図31ないし図35は、本発明の第14の実施例による非常停止スイッチを示しており、各図中、前記第1ないし第13の実施例と同一符号は同一または相当部分を示している。なお、各図では、非常停止スイッチの上側部分のみを示し、下側部分の図示を省略しているが、下側部分には、たとえば前記第13の実施例と同様の構成が採用されている。前記第1ないし第12の実施例では、押しボタン2のロック手段を操作軸3の他端側に設け、操作軸3を介して押しボタン2を間接的にロックした例を示し、前記第13の実施例では、押しボタン2のロック手段を押しボタン2のボス部20側に設け、押しボタン2を直接ロックする例を示したが、この第14の実施例では、押しボタン2のロック手段が係合部材6側に設けられており、係合部材6を介して押しボタン2を間接的にロックする例が示されている。
【0125】
図31ないし図35に示すように、いずれかの係合部材6の下面には、上下方向に延びる係合凹部6aが形成されている。一方、筐体4には、凹部4cに対して出没可能かつ上下方向移動可能に設けられたロックピン122が設けられている。ロックピン122は、上下方向に延びる部材であって筐体4に形成された穴に支持されるとともに、図示しないアクチュエータ(たとえばシリンダや電磁ソレノイド、モータ等)により上下方向に移動可能(つまり往復動可能)になっており、先端部が凹部4c内に突出するロック位置(図33)と、凹部4cから後退するアンロック位置(図31図32図34図35)とをとり得るようになっている。係合部材6の係合凹部6aは、ロック位置およびアンロック位置において、ロックピン122の先端部と上下方向に整列している。
【0126】
押しボタン2の押込み操作の際には、図31に示す状態から、操作軸3の各突出部31が各係合部材6を乗り越えて移動することにより、操作軸3が下方に移動する(図32参照)。この状態から、図示しないモニタ接点からの信号やその他の外部からの信号に基づいて、アクチュエータ(図示せず)を駆動し、ロックピン122を上方に向かってロック位置に移動させることにより、ロックピン122の先端部が凹部4c内に突出して係合部材6の係合凹部6a内に係合し、押しボタン2がロックされる(図33参照)。
【0127】
この状態においては、作業者が押しボタン2を把持して上方に引っ張り上げようとしても、ロックピン122の先端部が係合部材6の係合凹部6a内に係合していることで操作軸3の突出部30が係合部材6を凹部4c内に縮退させることができず、押しボタン2は、押込み操作後の状態から手動復帰できないようにロックされたロック状態にある。すなわち、この場合には、押しボタン2の押込み操作後は、ロックピン122により押しボタン2が自動的にロックされるようになっている。ロックピン122の先端部、係合部材6の係合凹部6aおよびアクチュエータは、押しボタン2をロックするロック手段として機能している。
【0128】
次に、押しボタン2のロック状態を解除するには、モニタ接点からの信号やその他の外部からの信号に基づいて、アクチュエータの駆動により、ロックピン122を凹部4cから後退するように下方に向かってアンロック位置に移動させることによって、ロックピン122の先端部を係合部材6の係合凹部6aから離脱させる(図34参照)。アクチュエータは、ロック手段による押しボタン2のロック状態を解除するロック解除手段として機能している。
【0129】
この状態から(すなわち、アクチュエータの駆動中に)、作業者が押しボタン2を把持して上方に引っ張り上げる復帰操作を手動で行うと、操作軸3の各突出部30が各係合部材6を凹部4c内に縮退させつつ、押しボタン2が操作軸3とともに上方に移動する(図35参照)。
【0130】
この場合には、押しボタン2の押込み操作後、アクチュエータの駆動によりロックピン122を用いて押しボタン2をロックすることによって(図33参照)、押しボタン2が押込み操作後の状態から手動復帰できないようにロックされる。また、このロックピン120による押しボタン2のロック状態は、押しボタン2の手動操作面2Aでない位置に設けられたアクチュエータによりロックピン122を後退させることによって、解除される(図34参照)。このように、押しボタン2のロック解除時には押しボタン2に対して抜き差しされる鍵を必要とせず、しかも、押しボタン2の押込み後のロック状態は、押しボタン2への直接的な手動操作によって簡単に解除できない。これにより、押しボタン2のロック解除をだれもが行えるようになるのを回避でき、その結果、安全性および信頼性を向上できる。
【0131】
なお、上述した例では、ロックピン122のロック位置およびアンロック位置間の移動をいずれもアクチュエータにより行うようにしたが、アクチュエータによるロックピン122の移動はロックピン122をロック位置に移動させる場合にのみ行うようにし、ロックピン122をアンロック位置に保持するのは、アクチュエータでなく、たとえば圧縮ばねを用いるようにしてもよい。この場合には、押しボタン2の手動による復帰操作の最中には、前記第4の実施例と同様に、アクチュエータに対して電流を供給し続ける必要がないので、省エネに寄与できる。また、上述した例では、モニタ接点からの信号やその他の外部からの信号に基づいてアクチュエータを駆動してロックピン122を移動させるようにしたが、操作軸3または押しボタン2の移動と機械的に連動する連動機構(図示せず)を採用することにより、ロックピン122を操作軸3または押しボタン2の移動と連動させて移動させるようにしてもよい。
【0132】
<第15の実施例>
図36は、本発明による非常停止スイッチを備えた制御システムの概略ブロック構成の一例を示している。同図に示すように、この制御システムSは、制御装置S0を有している。制御装置S0には、監視部(監視手段)S1が接続されている。監視部S1は、危険エリア内からすべての作業者が退避したか否かを監視するためのものであって、たとえばRFID(Radio Frequency Identification)を用いて監視を行う。すなわち、すべての作業者にRFタグを携帯させておき、危険エリアの出入口に設置されたタグリーダにより各RFタグに格納されたID情報を読み込むことにより、作業者の出入りを監視する。また、制御装置S0には、ロック部(ロック手段)S2、ロック解除部(ロック解除手段)S3およびモニタ接点S4が接続されている。
【0133】
制御装置S0は、監視部S1による監視の結果、危険エリアからすべての作業者が退避した場合にロック解除部S3によるロック解除がなされるよう(別の言い方をすれば、危険エリアに一人でも作業者が残っている場合にはロック部S2によるロック状態が維持されるよう)、ロック解除部S3(またはロック部S2)を制御する。これにより、安全性を一層向上させた制御システムを実現できる。
【0134】
<第16の実施例>
前記各実施例において、モニタ接点の論理は逆でもよい。すなわち、押しボタン2の押込み操作前にモニタ接点11がOFFであって、押しボタン2の押込み操作後にモニタ接点11がONとなるように構成されていてもよい。
【0135】
<第17の実施例>
ロック部材50の先端部分の形状およびこれが係合する操作軸3の他端側の形状は、前記各実施例に示すものには限定されず、その他任意の適切な形状を採用し得る。また、前記第1、第6ないし第10の実施例において、ロック部材50のロック部50Bの傾斜面50bおよび操作軸3の突出部30の傾斜面30の各傾斜角を適宜変更することによって、押しボタン2の押込み操作時に手動操作面2Aに作用させるべき(つまり押しボタン2の押込みに必要な)押付力Fの大きさを調整することができる。
【0136】
〔その他の変形例〕
上述した各実施例はあらゆる点で本発明の単なる例示としてのみみなされるべきものであって、限定的なものではない。本発明が関連する分野の当業者は、本明細書中に明示の記載はなくても、上述の教示内容を考慮するとき、本発明の精神および本質的な特徴部分から外れることなく、本発明の原理を採用する種々の変形例やその他の実施例を構築し得る。
【0137】
〔他の適用例〕
前記各実施例では、本発明による操作スイッチとして、非常停止スイッチを例にとって説明したが、本発明の適用はこれに限定されず、本発明は、非常停止スイッチ以外のその他の押しボタンスイッチにも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明は、手動で押込み操作可能な操作部を有する操作スイッチに有用である。
【符号の説明】
【0139】
1: 非常停止スイッチ(操作スイッチ)

2: 押しボタン(操作部)
2A: 手動操作面

3: 操作軸

5: 電磁ソレノイド
50: ロック部材
30、50b、53: ロック手段
51: ソレノイド本体(ロック解除手段)
51B: コイル(ロック手段)
51C: コイル(ロック解除手段)

6、7、31: 保持手段
、7、31: 第1の保持手段
、7、31: 第2の保持手段
、6、31、31: 傾斜面

8: 圧縮ばね(付勢部材)

11: モニタ接点(検出部)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0140】
【文献】特開2019-75205号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36