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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/10 20060101AFI20240823BHJP
   B62D 49/00 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
B62D25/10 J
B62D25/10 H
B62D49/00 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020215834
(22)【出願日】2020-12-24
(65)【公開番号】P2022101318
(43)【公開日】2022-07-06
【審査請求日】2022-12-29
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】山本 康夫
(72)【発明者】
【氏名】中村 正
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-082703(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0000653(US,A1)
【文献】特開2011-126531(JP,A)
【文献】特開2015-223991(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/10
B62D 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを収容するエンジンルームと、
前記エンジンルームを開くように起立する開き姿勢と前記エンジンルームを閉じるように倒伏する閉じ姿勢とに亘って上下揺動可能なボンネットと、
前記エンジンルームにおいて前記ボンネットと機体に設けられた支持部とに連結され、前記ボンネットを前記開き姿勢側に付勢するダンパーと、が備えられ、
前記ダンパーは、前記ボンネットが前記閉じ姿勢側から前記開き姿勢側に向けて姿勢変更されると起立し、前記ボンネットが前記開き姿勢側から前記閉じ姿勢側に向けて姿勢変更されると倒伏するように、上下揺動可能に構成され、
前記ダンパーが特定の角度の中間姿勢よりも倒伏側の姿勢であるときに、前記ボンネットの荷重に対抗して前記ボンネットを前記閉じ姿勢側から前記開き姿勢側に付勢する付勢力を前記ボンネットに作用させる付勢機構が備えられ、
前記ダンパーは、ロッド部とシリンダ部とを有し、前記ロッド部が前記シリンダ部に対して突出して伸長する側への付勢力を有し、
前記付勢機構は、前記ロッド部と前記シリンダ部とに亘る状態かつ前記ダンパーと一体的に上下揺動する状態で設けられ、前記ダンパーの伸縮方向に沿って伸縮する圧縮スプリングであり、前記ダンパーが起立側の姿勢から前記中間姿勢となったときに前記ロッド部側の部材と前記シリンダ部側の部材とに挟まれて圧縮し始めるように構成されている作業車。
【請求項2】
前記ダンパーが前記中間姿勢よりも起立側の姿勢であるときは、前記圧縮スプリングは、前記ロッド部側の部材と前記シリンダ部側の部材とのうち少なくとも一方と離間している請求項に記載の作業車。
【請求項3】
前記中間姿勢は、前記ダンパーが水平に対して仰角で40から50度に傾斜した姿である請求項またはに記載の作業車。
【請求項4】
前記ダンパーは、一つだけ備えられ、
前記ダンパーは、前記ボンネットの延び方向での中間部における内面部に連結されると共に、前記ボンネットが前記閉じ姿勢のときに前記エンジンの上方を通るように構成されている請求項1からのいずれか一項に記載の作業車。
【請求項5】
前記ボンネットは、天板部、及び、前記天板部の横端部から下向きに延びる側板部を有し、
前記ダンパーは、前記ボンネットが前記開き姿勢のときに、機体側面視において前記側板部と重複する状態となる請求項1からのいずれか一項に記載の作業車。
【請求項6】
前記エンジンよりも後側に設けられた燃料タンクと、
前記エンジンと前記燃料タンクとの間に設けられた遮熱部材と、
前記燃料タンクよりも後側において立設された支持フレームと、が備えられ、
前記ボンネットは、前記支持フレームの上部に上下揺動可能に支持され、
前記ダンパーは、前記遮熱部材の上部に上下揺動可能に支持されている請求項1からのいずれか一項に記載の作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
作業車には、エンジンを収容するエンジンルームと、エンジンルームを開閉するボンネットと、備えられたものがある。また、この種の作業車において、ボンネットは、エンジンルームを開くように起立する開き姿勢とエンジンルームを閉じるように倒伏する閉じ姿勢とに亘って上下揺動可能に構成され、エンジンルームにおいてボンネットと機体に設けられた支持部とに連結され、ボンネットを開き姿勢側に付勢するダンパーが備えられ、ダンパーは、ボンネットが閉じ姿勢側から開き姿勢側に向けて姿勢変更されると起立し、ボンネットが開き姿勢側から閉じ姿勢側に向けて姿勢変更されると倒伏するように、上下揺動可能に構成されたものがある。この種の作業車としては、たとえば特許文献1に示されるトラクタがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-201158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の場合、ボンネットを開き操作する際、ダンパーがボンネットの閉じ姿勢に対応する倒伏姿勢とボンネットの開き姿勢に対応する起立姿勢との間の特定の角度の中間姿勢に倒伏姿勢から姿勢変化する間において、ダンパーのボンネットに対する連結角度に起因してダンパーの付勢力がボンネットに対して効率よく作用せず、ボンネットを開き操作する手に掛かるボンネットの荷重が大きくてボンネットの開け操作が重くなる。ボンネットを閉じ操作する際も、ダンパーが特定の角度の中間姿勢からボンネットの閉じ姿勢に対応する倒伏姿勢に姿勢変化する間において、ボンネットを開き操作する際と同様に、ボンネットを閉じ操作する手に掛かるボンネットの荷重が大きくてボンネットの閉じ操作が重くなる。
【0005】
本発明は、ボンネットの開閉操作を軽く行える作業車を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
【0007】
【0008】
本発明による作業車は、
エンジンを収容するエンジンルームと、前記エンジンルームを開くように起立する開き姿勢と前記エンジンルームを閉じるように倒伏する閉じ姿勢とに亘って上下揺動可能なボンネットと、前記エンジンルームにおいて前記ボンネットと機体に設けられた支持部とに連結され、前記ボンネットを前記開き姿勢側に付勢するダンパーと、が備えられ、前記ダンパーは、前記ボンネットが前記閉じ姿勢側から前記開き姿勢側に向けて姿勢変更されると起立し、前記ボンネットが前記開き姿勢側から前記閉じ姿勢側に向けて姿勢変更されると倒伏するように、上下揺動可能に構成され、前記ダンパーが特定の角度の中間姿勢よりも倒伏側の姿勢であるときに、前記ボンネットの荷重に対抗して前記ボンネットを前記閉じ姿勢側から前記開き姿勢側に付勢する付勢力を前記ボンネットに作用させる付勢機構が備えられており、
前記ダンパーは、ロッド部とシリンダ部とを有し、前記ロッド部が前記シリンダ部に対して突出して伸長する側への付勢力を有し、前記付勢機構は、前記ロッド部と前記シリンダ部とに亘る状態かつ前記ダンパーと一体的に上下揺動する状態で設けられ、前記ダンパーの伸縮方向に沿って伸縮する圧縮スプリングであり、前記ダンパーが起立側の姿勢から前記中間姿勢となったときに前記ロッド部側の部材と前記シリンダ部側の部材とに挟まれて圧縮し始めるように構成されている。
【0009】
本構成によると、ボンネットを開き操作する際、ダンパーがボンネットの閉じ姿勢に対応する倒伏姿勢から特定の角度の中間姿勢に姿勢変化する間において、ダンパーの付勢力がボンネットに対して効率よく作用しなくても、ボンネットが付勢機構によって開き姿勢側に付勢されるので、ボンネットを開き操作する手に掛かる荷重が小さくなる。ボンネットを閉じ操作する際、ダンパーが特定の角度の中間姿勢からボンネットの閉じ姿勢に対応する倒伏姿勢に姿勢変化する間において、ダンパーの付勢力がボンネットに対して効率よく作用しなくても、ボンネットが付勢機構によって開き姿勢側に付勢されるので、ボンネットを閉じ操作する手に掛かる荷重が小さくなり、ボンネットの開閉操作を軽く行える。
また、本構成によると、ボンネットを開き姿勢側に付勢するアシスト構造を、ダンパーが起立側の姿勢から中間姿勢となったときにロッド部側の部材とシリンダ部側の部材とに挟まれて圧縮し始める圧縮スプリングを設けるだけの簡素な構造で済ませながらボンネットの開閉操作を軽く行えるようにできる。
【0010】
本発明においては、
前記ダンパーが前記中間姿勢よりも起立側の姿勢であるときは、前記圧縮スプリングは、前記ロッド部側の部材と前記シリンダ部側の部材とのうち少なくとも一方と離間していると好適である。
【0011】
本構成によると、ダンパーが特定の中間姿勢から起立側の姿勢にあるとき、圧縮スプリングが作用せず、ダンパーが特定の中間姿勢よりも倒伏側の姿勢にあるときに圧縮スプリングが作用する状態を的確に得やすいので、ダンパーが特定の中間姿勢から起立側の姿勢にあるとき、ボンネットがダンパーだけで付勢されてボンネットを開閉し易いようにしつつ、ダンパーが特定の中間姿勢よりも倒伏側の姿勢にあるとき、ボンネットが圧縮スプリングによって付勢されてボンネットの開閉操作を軽く行えるようにできる。
【0012】
本発明においては、
前記中間姿勢は、前記ダンパーが水平に対して仰角で40から50度に傾斜した姿であると好適である。
【0013】
本構成によると、ダンパーの付勢力、あるは圧縮スプリングの付勢力、あるいはボンネットの重さそれぞれの違い、あるいはそれらの二つ以上の値の違いにかかわらず、ダンパーが起立側に姿勢から中間姿勢にとなったときに圧縮スプリングが的確に圧縮し始めるように設定できるので、ダンパーの付勢力、あるは圧縮スプリングの付勢力、あるいはボンネットの重さの違いにかかわらず、ボンネットの開閉操作を軽く行えるようにできる。
【0014】
本発明においては、
前記ダンパーは、一つだけ備えられ、前記ダンパーは、前記ボンネットの延び方向での中間部における内面部に連結されると共に、前記ボンネットが前記閉じ姿勢のときに前記エンジンの上方を通るように構成されていると好適である。
【0015】
本構成によると、ダンパーをボンネットの延び方向での先端側に連結するよりも中間部に連結する方がダンパーの付勢力がボンネットに効率よく作用するので、ダンパーを一つだけで済ませつつボンネットを軽く開閉できるようにできる。
【0016】
本発明においては、
前記ボンネットは、天板部、及び、前記天板部の横端部から下向きに延びる側板部を有し、前記ダンパーは、前記ボンネットが前記開き姿勢のときに、機体側面視において前記側板部と重複する状態となると好適である。
【0017】
本構成によると、ボンネットを開き姿勢にして機体横外側方からエンジンルームのメンテナンス作業を行う際、ダンパーが障害にならないので、メンテナンス作業を行い易い。
【0018】
本発明においては、
前記エンジンよりも後側に設けられた燃料タンクと、前記エンジンと前記燃料タンクとの間に設けられた遮熱部材と、前記燃料タンクよりも後側において立設された支持フレームと、が備えられ、前記ボンネットは、前記支持フレームの上部に上下揺動可能に支持され、前記ダンパーは、前記遮熱部材の上部に上下揺動可能に支持されていると好適である。
【0019】
本構成によると、ダンパーの支持部材に遮熱部材を活用してダンパーの機体側の支持構造を簡素化しつつ、ダンパーの機体側の支持箇所をボンネットの機体側の支持箇所と異な箇所に設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】上ボンネットが開き姿勢にある状態でのトラクタの全体を示す左側面図である。
図2】トラクタの全体を示す平面図である。
図3】ダンパーおよび圧縮スプリングの作用を示す説明図である。
図4】ダンパーおよび圧縮スプリングの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一例である実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下の説明では、トラクタ(「作業車」の一例)の走行機体に関し、図1,2に示される矢印Fの方向を「機体前方」、矢印Bの方向を「機体後方」、図1に示される矢印Uの方向を「機体上方」、矢印Dの方向を「機体下方」、図2に示される矢印Lの方向を「機体左方」、矢印Rの方向を「機体右方」とする。
【0022】
〔トラクタの全体の構成〕
図1,2に示されるように、トラクタは、エンジン1などによって構成される機体フレーム2、機体フレーム2の前部に操向操作かつ駆動可能に備えられた左右一対の前車輪3、機体フレーム2の後部に駆動可能に備えられた左右一対の後車輪4を有する走行機体を備えている。機体フレーム2は、エンジン1、エンジン1の後部に前部が連結され、機体前後方向に延びているミッションケース5、エンジン1の下部から前向きに延ばされた前部フレーム6などによって構成されている。走行機体の前部に、エンジン1を有する原動部7が形成されている。走行機体の後部に、運転座席8、前車輪3を操向操作するステアリングホィール9を有する運転部10が形成されている。ミッションケース5の後部に、ロータリ耕耘装置(図示せず)などの各種の作業装置を昇降操作可能に連結するリンク機構11、エンジン1からの動力を取り出し、取り出した動力を連結された作業装置に伝達する動力取出し軸12が備えられている。
【0023】
〔原動部の構成〕
図1、3に示されるように、原動部7は、エンジンルーム13を備えている。エンジンルーム13にエンジン1が収容されている。エンジン1よりも前側に、エンジン1の冷却を行うラジエータ14が設けられている。エンジン1の上方に、エンジン1に供給される燃焼用空気の除塵処理を行うエアクリーナ15、および、エンジン1が排出する排ガスの浄化処理を行う排ガス浄化装置16が設けられている。エンジン1よりも後側に、エンジン1に供給される燃料を貯留する燃料タンク17が設けられている。エンジン1と燃料タンク17との間に、エンジン1から燃料タンク17への熱伝達を抑制する遮熱部材18が立設されている。
【0024】
エンジンルーム13は、原動部7の両側部に設けられ、エンジン1などを横外側方から覆う横ボンネット19、エンジン1などを上方から覆う上ボンネット20によって形成されている。左右の横ボンネット19は、脱着可能な状態で機体に支持されている。
【0025】
図1,3に示されるように、上ボンネット20は、エンジンルーム13を開くように起立する開き姿勢[OP]と、エンジンルーム13を閉じるように倒伏する閉じ姿勢[CL]とに亘って上下揺動可能な状態で機体に支持されている。
【0026】
本実施形態では、図3に示されるように、エンジン1よりも後側において、支持フレーム21が機体フレーム2から上向きに立設されている。支持フレーム21の上部に形成された支持部21aに、上ボンネット20の後部が機体横幅方向に延びる回動軸芯Pのまわりに回動可能に支持されている。上ボンネット20は、後部に位置する回動軸芯Pを揺動軸芯にして開き姿勢[OP]と閉じ姿勢[CL]とに亘って上下揺動可能な状態で支持フレーム21の上部に支持されている。
【0027】
図1,3に示されるように、エンジンルーム13において上ボンネット20と、機体に設けられている支持部18aとにダンパー22が連結されている。ダンパー22は、上ボンネット20を開き姿勢側に付勢するように構成されている。ダンパー22は、上ボンネット20が閉じ姿勢側から開き姿勢側に向けて姿勢変更されると起立し、上ボンネット20が開き姿勢側から閉じ姿勢側に向けて姿勢変更されると倒伏するように上下揺動可能な状態で支持部18aに支持されている。
【0028】
図3に示されるように、ダンパー22が上ボンネット20の閉じ姿勢に対応する倒伏姿勢Aと上ボンネット20の開き姿勢に対応する起立姿勢Tとの間の特定の角度の中間姿勢Cよりも倒伏側の姿勢であると、ダンパー22の上ボンネット20に対する連結角度に起因して上ボンネット20を開き姿勢側に付勢するダンパー22の付勢力が上ボンネット20に対して効率よく作用しない。ダンパー22の付勢力の違い、あるいはダンパー22の取付け角の違い、あるいは上ボンネット20の重量の違い、あるいはそれらの二つ以上の違いにより、ダンパー22の付勢力が上ボンネット20に対して効率よく作用しなときにおけるダンパー22の上ボンネット20に対する連結角が異なる。ダンパー22の付勢力の違い、あるいはダンパー22の取付け角の違い、あるいは上ボンネット20の重量の違い、あるいはそれらの二つ以上の違いにより、ダンパー22の中間姿勢Cは、線Sで示される水平に対するダンパー22の仰角Kが40から50度の範囲の角度になる姿勢になる。
【0029】
ダンパー22が中間姿勢Cよりも倒伏側の姿勢であると、ダンパー22の付勢力が上ボンネット20に対して効率よく作用しないので、図3に示されるように、上ボンネット20に作用する付勢機構23が設けられている。付勢機構23は、ダンパー22が中間姿勢Cよりも倒伏側の姿勢であるときに、上ボンネット20を閉じ姿勢側から開き姿勢側に付勢する付勢力を上ボンネット20に作用させるように構成されている。上ボンネット20を開閉操作する際、ダンパー22が倒伏姿勢Aと中間姿勢Cとの間で姿勢変化するとき、ダンパー22の付勢力が上ボンネット20に対して効率よく作用しなくても、上ボンネット20が付勢機構23によって開き姿勢側に付勢され、開閉操作する手に掛かる荷重を付勢機構23によって小さく抑制できる。
【0030】
具体的には、図3に示されるように、ダンパー22の一端部は、遮熱部材18の上部に形成された支持部18aに支持され、遮熱部材18を介して機体に連結されている。ダンパー22の他端部は、上ボンネット20の内部に連結されている。詳述すると、ダンパー22の他端部は、上ボンネット20の延び方向での中間部に連結されている。上ボンネット20の延び方向は、上ボンネット20が支持部21aから上ボンネット20の遊端部にむかって延びる方向である。ダンパー22の上ボンネット20への連結は、上ボンネット20の内部に備えられた補強部材24が有する支持部24aとダンパー22とを連結することによって行われている。
【0031】
図4に示されるように、ダンパー22は、ロッド部22aとシリンダ部22bとを有し、シリンダ部22bに収容された圧縮ガスによってロッド部22aがシリンダ部22bに対して突出して伸長する側への付勢力を有している。ダンパー22は、伸長する側への付勢力によって上ボンネット20を閉じ姿勢側から開き姿勢側へ付勢する。ロッド部22aが機体(遮熱部材18)の支持部18aに連結ピン25の軸芯Xまわりに回動可能に連結されている。シリンダ部22bが上ボンネット20の支持部24aに連結ピン30の軸芯Yまわりに回動可能に連結されている。ダンパー22に、ロッド部22aとシリンダ部22bとに亘って外嵌する筒カバー26が備えられている。筒カバー26の端部がロッド部22aの端部に連結ピン25によって連結されている。筒カバー26は、ロッド部22aがシリンダ部22bに対して出退するとき、シリンダ部22bに対してスライドする。
【0032】
図4に示されるように、付勢機構23は、圧縮スプリングによって構成されている。圧縮スプリングは、コイルスプリングによって構成されている。以下において、付勢機構を圧縮スプリング23と称して説明する。
【0033】
図4に示されるように、圧縮スプリング23は、ロッド部22aとシリンダ部22bとに亘る状態かつダンパー22と一体的に軸芯Xを揺動中心にして揺動することが可能な状態で備えられている。
【0034】
具体的には、圧縮スプリング23は、ロッド部22aに支持されるロッド部側の部材27(以下、ロッド側部材27と呼称する。)と、シリンダ部22bに支持されるシリンダ部側の部材28(以下、シリンダ側部材28と呼称する。)との間に位置する状態でダンパー22に外嵌されている。ロッド側部材27は、筒カバー26の端部に連結され、筒カバー26および連結ピン25を介してロッド部22aに支持されている。ロッド側部材27は、ロッド部22aと一体的にシリンダ部22bに対してダンパー22の軸芯に沿う方向に移動可能である。シリンダ側部材28は、シリンダ部22bに一体形成されている。圧縮スプリング23に、シリンダ側部材28によって押圧されることによって圧縮スプリング23を圧縮操作する操作部29が備えられている。操作部29は、シリンダ部22bにスライド可能に外嵌するスペーサ部29aと、スペーサ部29aの圧縮スプリング側の端部に連結された押圧部29bとによって構成されている。
【0035】
圧縮スプリング23とロッド側部材27とは連結されず、圧縮スプリング23は、ロッド側部材27に対して離間可能である。スペーサ部29aとシリンダ側部材28とは連結されず、圧縮スプリング23は、シリンダ側部材28に対して離間可能である。圧縮スプリング23は、ダンパー22が中間姿勢Cよりも起立側の姿勢であるとき、ロッド側部材27とシリンダ側部材28とのうち少なくとも一方から離間していることが可能である。図4では、上ボンネット20が開き姿勢[OP]であるときの起立姿勢でのダンパー22が示されており、圧縮スプリング23は、シリンダ部22bに対してロッド部側に下降してロッド側部材27に当接した状態になっている。また、スペーサ部29aがシリンダ部22bに対してロッド部側に下降して、圧縮スプリング23がシリンダ側部材28に対して離間した状態になっている。
【0036】
ダンパー22が起立側の姿勢から中間姿勢Cになったとき、ダンパー22が中間姿勢Cよりも起立側姿勢であるときよりも縮小し、シリンダ側部材28がスペーサ部29aに当って操作部29がシリンダ側部材28によって圧縮スプリング23に向けてスライド操作される。このとき、ロッド側部材27は、筒カバー26および連結ピン25を介してロッド部22aによって受け止め支持される。ダンパー22が起立側の姿勢から中間姿勢Cになったとき、ロッド側部材27とシリンダ側部材28とが圧縮スプリング23を挟んで圧縮スプリング23の圧縮操作を開始する。
【0037】
図3に示されるように、上ボンネット20が開き姿勢[OP]から閉じ操作されると、ダンパー22が中間姿勢Cになるまでは、圧縮スプリング23とシリンダ側部材28とが離間していて圧縮スプリング23が圧縮されず、上ボンネット20は、ダンパー22のみの付勢力によって上ボンネット20の荷重に抗して支持されつつ、上ボンネット20を下降させる人為操作力によって下降されていく。上ボンネット20の下降に伴ってダンパー22が中間姿勢Cになると、圧縮スプリング23がロッド側部材27とシリンダ側部材28とに挟まれて圧縮し始める。この後、上ボンネット20は、ダンパー22の付勢力と圧縮スプリング23の付勢力との合力によって上ボンネット20の荷重に抗して支持されつつ、上ボンネット20を下降させる人為操作力によって下降されていく。上ボンネット20の閉じ姿勢[CL]への下降は、ダンパー22の付勢力と圧縮スプリング23の付勢力との合力に抗しての上ボンネット20の重力によって行われる。
【0038】
図2,3に示されるように、ダンパー22は、一つだけ備えられ、かつ、上ボンネット20の延び方向での中間部における内面部に補強部材24を介して連結されている。ダンパー22は、上ボンネット20が閉じ姿勢のとき、エンジン1の上方を前後方向に通る状態になる。
【0039】
上ボンネット20は、図1に示されるように、エンジン1などを上方から覆う天板部20aと、天板部20aの両横端部から下向きに延ばされ、エンジン1の上部、エアクリーナ15、排ガス浄化装置16などを横外側方から覆う側板部20bと、天板部20aの前部から下向きに延ばされ、ラジエータ14などを前方から覆うフロントグリル部20cとを備えている。
【0040】
図1,3に示されるように、ダンパー22は、上ボンネット20が開き姿勢[OP]のときに、機体側面視において側板部20bと重複する状態になる。上ボンネット20を開き姿勢[OP]にして機体横外側方からエンジンルーム13に対するメンテナンス作業を行う際、ダンパー22が障害にならない。
【0041】
〔別実施形態〕
(1)上記した実施形態では、伸長する側への付勢力を有するダンパー22を採用した例を示したが、短縮する側への付勢力を有するダンパーを採用したものであってもよい。
【0042】
(2)上記した実施形態では、付勢機構23がダンパー22に支持される例を示したが、ダンパー以外の支持部材に支持されるものであってもよい。また、付勢機構23が圧縮スプリングである例を示したが、引張りスプリングであってもよい。また、付勢機構23がコイルスプリングである例を示したが、板状など如何なる形状のスプリングであってもよい。
【0043】
(3)上記した実施形態では、ダンパー22の中間姿勢Cが水平に対して仰角Kで40から50度に傾斜した姿勢になることを示したが、40度未満の角度で傾斜したもの、あるいは、50度を超える角度で傾斜したものであってもよい。
【0044】
(4)上記した実施形態では、ロッド部側の部材27は、筒カバー26および連結ピン25を介してロッド部22aに支持される構成を採用した例を示したが、これに限らず、ロッド部22aがロッド部側の部材27を直接に支持する構成の採用が可能である。
【0045】
(5)上記した実施形態では、圧縮スプリング23と操作部29とが離間可能である例を示した、圧縮スプリング23と操作部29とが連結されたものであってもよい。圧縮スプリング23は、操作部29を備えず、シリンダ部側の部材28に直接に当って圧縮操作されるものであってもよい。
【0046】
(6)上記した実施形態では、圧縮スプリング23は、ダンパー22が中間姿勢Cよりも起立側の姿勢であるとき、ロッド部側の部材27およびシリンダ部側の部材28のそれぞれに対して離間可能に構成した例を示したが、ロッド部側の部材27とシリンダ部側の部材28との少なくとも一方に対して離間可能に構成したものであってもよい。
【0047】
(7)上記した実施形態では、ダンパー22を一つだけ備えた例を示しが、二つ以上備えたものであってもよい。
【0048】
(8)上記した実施形態では、上ボンネット20が側板部20bを備え、上ボンネット20が開き姿勢[OP]のとき、ダンパー22が側板部20bと重複する例を示したが、これに限らない。上ボンネット20は、側板部20bを備えないものであってもよい。また、上ボンネット20は、側板部20bを備えるものであっても、上ボンネット20が開き姿勢[OP]のとき、ダンパー22が側板部20bと重複しないものであってもよい。
【0049】
(9)上記した実施形態では、上ボンネット20が後部に位置する回動軸芯Pを揺動軸芯にして上下揺動するように構成した例を示したが、上ボンネット20は、前部に位置する回動軸芯を揺動軸芯にして上下揺動するものであってもよい。また、上ボンネット20は、機体前後方向に延びる回動軸芯を揺動軸芯にして機体の横側に揺動して開き姿勢になるものであってもよい。
【0050】
(10)
上記した実施形態では、ダンパー22が遮熱部材18に支持される例を示したが、特別に設けた支持部材など、どのような部材に支持されるものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、トラクタの他、田植機、運搬車、多目的車両など、各種の作業車に適用できる。
【符号の説明】
【0052】
1 エンジン
13 エンジンルーム
17 燃料タンク
18 遮熱部材
18a 支持部
20 ボンネット(上ボンネット)
20a 天板部
20b 側板部
21 支持フレーム
22 ダンパー
22a ロッド部
22b シリンダ部
23 付勢機構(圧縮スプリング)
27 ロッド側の部材
28 シリンダ側の部材
C 中間姿勢
OP 開き姿勢
CL 閉じ姿勢
K 仰角
図1
図2
図3
図4